(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】画像処理装置、機械学習装置、及び、推論装置
(51)【国際特許分類】
D04B 35/12 20060101AFI20241220BHJP
B65H 63/08 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
D04B35/12
B65H63/08 C
(21)【出願番号】P 2022528513
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2021018531
(87)【国際公開番号】W WO2021246139
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2020096081
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100214248
【氏名又は名称】青山 純
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】下山 恭生
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-277069(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109162016(CN,A)
【文献】特開2000-053326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 3/00-19/00
D04B23/00-39/08
B65H55/00-55/04
B65H61/00-63/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンを含む撮像画像を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記撮像画像に対して画像処理を行うことにより、前記撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーンの状態を検出する糸コーン状態検出部と、を備
え、
前記糸コーン状態検出部は、
任意数の糸コーンを含む撮像画像と当該撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーンの各々を囲む任意数の領域との相関関係を機械学習させた第1の学習済みモデルに、前記取得部により取得された前記撮像画像を入力することにより、当該撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーンの各々を囲む任意数の領域を特定し、
1つの糸コーンを含む撮像画像と当該撮像画像に含まれる前記1つの糸コーンの糸残量との相関関係を機械学習させた第2の学習済みモデルに、前記取得部により取得された前記撮像画像のうち前記任意数の領域の各々で規定される、1つの糸コーンを含む撮像画像をそれぞれ入力することにより、当該撮像画像に含まれる前記1つの糸コーンの糸残量をそれぞれ検出する、
画像処理装置。
【請求項2】
編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンを含む撮像画像を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記撮像画像に対して画像処理を行うことにより、前記撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーンの状態を検出する糸コーン状態検出部と、を備
え、
前記糸コーン状態検出部は、
前記画像処理を行うことにより、前記撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーンと複数の張力付与装置との接続関係を検出する、
画像処理装置。
【請求項3】
前記糸コーン状態検出部は、
任意数の糸コーンを含む撮像画像と当該撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーン及び複数の張力付与装置の接続関係との相関関係を機械学習させた学習済みモデルに、前記取得部により取得された前記撮像画像を入力することにより、当該撮像画像に含まれる前
記任意数の糸コーンと前記複数の張力付与装置との接続関係を検出する、
請求項
2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンと複数の張力付与装置との接続関係を検出するために用いられる機械学習装置であって、
任意数の糸コーンを含む撮像画像からなる入力データと、前記入力データに対応付けられ、当該撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーン及び複数の張力付与装置の接続関係からなる出力データとで構成される学習用データセットを複数組記憶する学習用データセット記憶部と、
前記学習用データセットが複数組入力されることで、前記入力データと前記出力データとの相関関係を推論する学習モデルを学習する機械学習部と、
前記機械学習部により学習された前記学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、を備える、
機械学習装置。
【請求項5】
編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンと複数の張力付与装置との接続関係を検出するために用いられる推論装置であって、
前記推論装置は、メモリと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
任意数の糸コーンを含む撮像画像が入力される処理と、
前記撮像画像が入力されると、当該撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーンと複数の張力付与装置との接続関係を推論する処理と、を実行するように構成される、
推論装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、機械学習装置、及び、推論装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
編機では、編糸が巻回された複数の糸コーンが編機の上又は周辺に配置され、編地(例えば、ニット製品等)を編成する編成動作にて各種の糸コーンが使用される。編機の作業者は、編成する編地に応じて色や太さ等の種類が異なる編糸の糸コーンに交換し、糸コーンの編糸が無くなった場合には、編機の編成動作が停止し、生産性が低下するため、目視により糸コーンの糸残量を監視する必要があった。また、糸コーンから繰り出される編糸は、例えば、編機の装置上部に並設された複数の張力付与装置のいずれかに接続されて、その張力付与装置を経由して所定の張力が付与された状態で編針に供給される。編機の使用者は、所望の編地を編成するために、糸コーンから繰り出される編糸を所定の張力付与装置に正しく接続することが求められるが、編糸を介して糸コーンと張力付与装置とを接続する作業において作業ミスが発生することがあった。
【0003】
糸コーンの糸残量を検出する装置としては、各種の検出方式を採用した糸残量検出装置が提案されている。例えば、特許文献1には、糸コーンの側面に光を照射し、その反射光を受光して糸残量を検出する糸残量検出装置が開示されている。また、特許文献2には、糸コーンの底面に向けて照射した光が、糸コーンの糸径が小さくなった場合に糸コーンの側面を通過して、奥側の反射用ミラーに反射した反射光を受光センサで受光することで、糸残量を検出する糸残量検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-277069号公報
【文献】特許第2871318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2にそれぞれ開示された糸残量検出装置では、個々の糸コーンの近傍に、光学式センサや反射用ミラー等の光学系部品を配置する必要があるため、光学系部品の部品点数が多くなり、糸コーンが密集して配置される環境においては、光学系部品の配置スペースが限定され、組立時の光路調整も困難であった。また、糸残量を検出するには、光学系部品に対する糸コーンの相対的な配置関係が一意に決まっているため、作業者により糸コーンが任意の位置に配置された場合は当然ながら、糸コーンの配置が光学系部品の検出範囲から少しでも外れただけで糸残量を検出することができず、作業性が悪く汎用性に欠けていた。また、特許文献1及び特許文献2にそれぞれ開示された糸残量検出装置では、糸コーンから繰り出される編糸がいずれの張力付与装置に接続されているか、すなわち、糸コーンと張力付与装置との接続関係を検出することができなかった。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑み、編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンについての糸残量や張力付与装置との接続関係、配置された位置といった糸コーンの状態を簡単な構成で検出可能であり、作業性及び汎用性が高い画像処理装置、機械学習装置、及び、推論装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る画像処理装置(4A、4B、4C)は、
編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンを含む撮像画像を取得する取得部(40)と、
前記取得部(40)により取得された前記撮像画像に対して画像処理を行うことにより、前記撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーンの状態を検出する糸コーン状態検出部(41)と、を備える、
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の態様に係る機械学習装置(6A)は、
編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンの糸残量を検出するために用いられる機械学習装置(6A)であって、
任意数の糸コーンを含む撮像画像からなる入力データと、前記入力データに対応付けられ、当該撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーンの糸残量からなる出力データとで構成される学習用データセットを複数組記憶する学習用データセット記憶部(61)と、
前記学習用データセットが複数組入力されることで、前記入力データと前記出力データとの相関関係を推論する学習モデルを学習する機械学習部と、
前記機械学習部により学習された前記学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、を備える。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明の第3の態様に係る推論装置(5A)は、
編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンの糸残量を検出するために用いられる推論装置(5A)であって、
前記推論装置は、メモリと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
任意数の糸コーンを含む撮像画像が入力される処理と、
前記撮像画像が入力されると、当該撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーンの糸残量を推論する処理と、を実行するように構成される。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明の第4の態様に係る機械学習装置(6B1)は、
編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンの状態を検出するために用いられる機械学習装置(6B1)であって、
任意数の糸コーンを含む撮像画像からなる入力データと、前記入力データに対応付けられ、当該撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーンの各々を囲む任意数の領域を規定する領域情報からなる出力データとで構成される学習用データセットを複数組記憶する学習用データセット記憶部(61)と、
前記学習用データセットが複数組入力されることで、前記入力データと前記出力データとの相関関係を推論する学習モデルを学習する機械学習部(62)と、
前記機械学習部(62)により学習された前記学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶部(63)と、を備える。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明の第5の態様に係る推論装置(5B1)は、
編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンの状態を検出するために用いられる推論装置(5B1)であって、
前記推論装置は、メモリと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
任意数の糸コーンを含む撮像画像が入力される処理と、
前記撮像画像が入力されると、当該撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーンの各々を囲む任意数の領域を規定する領域情報を推論する処理と、を実行するように構成される。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明の第6の態様に係る機械学習装置(6B2)は、
編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンの糸残量を検出するために用いられる機械学習装置(6B2)であって、
1つの糸コーンを含む撮像画像からなる入力データと、前記入力データに対応付けられ、当該撮像画像に含まれる前記1つの糸コーンの糸残量からなる出力データとで構成される学習用データセットを複数組記憶する学習用データセット記憶部(61)と、
前記学習用データセットが複数組入力されることで、前記入力データと前記出力データとの相関関係を推論する学習モデルを学習する機械学習部(62)と、
前記機械学習部(62)により学習された前記学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶部(63)と、を備える。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明の第7の態様に係る推論装置(5B2)は、
編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンの糸残量を検出するために用いられる推論装置(5B2)であって、
前記推論装置は、メモリと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
1つの糸コーンを含む撮像画像が入力される処理と、
前記撮像画像が入力されると、当該撮像画像に含まれる前記1つの糸コーンの糸残量を推論する処理と、を実行するように構成される、
推論装置(5B2)。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明の第8の態様に係る機械学習装置(6C)は、
編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンと複数の張力付与装置との接続関係を検出するために用いられる機械学習装置(6C)であって、
任意数の糸コーンを含む撮像画像からなる入力データと、前記入力データに対応付けられ、当該撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーン及び複数の張力付与装置の接続関係からなる出力データとで構成される学習用データセットを複数組記憶する学習用データセット記憶部(61)と、
前記学習用データセットが複数組入力されることで、前記入力データと前記出力データとの相関関係を推論する学習モデルを学習する機械学習部(62)と、
前記機械学習部(62)により学習された前記学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶部(63)と、を備える。
【0015】
また、上記目的を達成するために、本発明の第9の態様に係る推論装置(5C)は、
編機の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンと複数の張力付与装置との接続関係を検出するために用いられる推論装置(5C)であって、
前記推論装置は、メモリと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
任意数の糸コーンを含む撮像画像が入力される処理と、
前記撮像画像が入力されると、当該撮像画像に含まれる前記任意数の糸コーンと複数の張力付与装置との接続関係を推論する処理と、を実行するように構成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像処理装置(4A~4C)及び推論装置(5A、5B1、5B2、5C)によれば、撮像画像に含まれる任意数の糸コーンの状態(例えば、糸コーンの糸残量、糸コーンと張力付与装置との接続関係、糸コーンが配置された位置等)を検出することができる。そのため、個々の糸コーンに対して光学的部品を設置する必要がなく、また、糸コーンが編機の上又は周辺に配置されたときの糸コーンの数や位置等の条件に制約されることなく、糸コーンの状態を検出することができる。したがって、糸コーンの状態を簡単な構成で検出可能であり、作業性及び汎用性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の機械学習装置(6A、6B1、6B2、6C)によれば、任意数の糸コーンを含むカメラ撮像画像から、当該カメラ撮像画像に含まれる任意数の糸コーンの状態(例えば、糸コーンの糸残量、糸コーンと張力付与装置との接続関係、糸コーンが配置された位置等)を的確に検出(推定)することが可能な学習済みモデル(5A、5B1、5B2、5C)を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に係る横編機1の一例を示す斜視図である。
【
図2】カメラ3により撮像されたカメラ撮像画像30の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る画像処理装置4Aを備える横編機1の一例を示す概略ブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係る画像処理装置4Aによる画像処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第1の実施形態に係る機械学習装置6Aの一例を示す概略ブロック図である。
【
図6】第1の実施形態に係る機械学習装置6Aにて用いられるCNNに基づく推論モデル50Aの一例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る機械学習方法の例を示すフローチャートである。
【
図8】第2の実施形態に係る画像処理装置4Bを備える横編機1の一例を示す概略ブロック図である。
【
図9】第2の実施形態に係る画像処理装置4Bによる画像処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図10】第2の実施形態に係る第1の機械学習装置6B1の一例を示す概略ブロック図である。
【
図11】第2の実施形態に係る第1の機械学習装置6B1にて用いられるCNNに基づく第1の推論モデル50B1の一例を示す図である。
【
図12】第2の実施形態に係る第2の機械学習装置6B2の一例を示す概略ブロック図である。
【
図13】第2の実施形態に係る第2の機械学習装置6B2にて用いられるCNNに基づく第2の推論モデル50B2の一例を示す図である。
【
図14】第3の実施形態に係る画像処理装置4Cを備える横編機1の一例を示す概略ブロック図である。
【
図15】第3の実施形態に係る画像処理装置4Cによる画像処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図16】第3の実施形態に係る機械学習装置6Cの一例を示す概略ブロック図である。
【
図17】第3の実施形態に係る機械学習装置6Cにて用いられるCNNに基づく推論モデル50Cの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明を実施するための各実施形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る横編機1の一例を示す斜視図である。
【0021】
横編機1は、床面に設置される下部フレーム11Aと、複数の編針12を進退可能に支持するともに、前後に対向させた状態で下部フレーム11A上に配置された一対のニードルベッド13と、ニードルベッド13に沿って移動し、編針12を進退操作するキャリッジ14と、ニードルベッド13及びキャリッジ14を収納し、任意数の糸コーン2が上面に載置される天板15とを備える。また、横編機1は、その周辺に、任意の数の糸コーン2が載置されるクリールスタンドを備えていてもよい。
【0022】
また、横編機1は、天板15に載置された任意数の糸コーン2から編針12に編糸20を供給する機構として、上部フレーム11Bに取り付けられ、天板15の上部に配置される複数の張力付与装置16と、下部フレーム11Aの左右に設けられたサイドテンション部17と、キャリッジ14の移動時にキャリッジ14に選択可能に連結される複数のヤーンフィーダ18とを備える。糸コーン2からの編糸20は、張力付与装置16、サイドテンション部17、ヤーンフィーダ18、及び、編針12の順に供給されることで、編地が編成される。
【0023】
さらに、横編機1は、天板15に載置された任意数の糸コーン2の状態を検出するシステムとして、上部フレーム11Bの左右に取り付けられた2台のカメラ3と、下部フレーム11A内に収納された画像処理装置4Aとを備える。
【0024】
カメラ3は、CMOSセンサやCCDセンサ等のイメージセンサで構成されている。カメラ3は、天板15の上方から天板15を撮像し、天板15に載置された糸コーン2がカメラ3の画角内に収まるように、位置や向きが調節されている。なお、カメラ3は、パン・チルト・ズームの機能を備えるものでもよい。また、カメラ3の台数は2台に限られず、1台でもよいし、3台以上でもよい。カメラ3の取付位置は適宜変更してもよく、例えば、横編機1の上方の天井に取り付けられていてもよい。
【0025】
図2は、カメラ3により撮像されたカメラ撮像画像30の一例を示す図である。
【0026】
カメラ撮像画像30には、天板15に載置された任意数の糸コーン2が含まれている。
図2の例では、5つの糸コーン2A~2Eが含まれている。糸コーン2は、円錐台状の芯部21に編糸20が巻回されており、天板15の上面の任意の位置に載置することが可能である。そのため、カメラ撮像画像30に含まれる糸コーン2の数は、一定数ではなく、任意数である。なお、カメラ撮像画像30には、天板15に載置された糸コーン2のみならず、横編機1の周辺に備えられるクリールスタンド等に載置された、横編機1の周辺の任意数の糸コーン2が含まれていてもよい。
【0027】
また、カメラ撮像画像30に含まれる糸コーン2の撮像状態(例えば、外形形状や外形サイズ)は、芯部21の外径寸法、編糸20の太さや巻数、編糸20の使用状態に応じて異なるだけでなく、糸コーン2とカメラ3との相対的な位置関係に応じても異なる。さらに、カメラ撮像画像30において、カメラ3から見て手前側の糸コーン2により奥側の糸コーン2の一部が隠れた状態で撮像されることもある。なお、カメラ撮像画像30には、任意数の糸コーン2以外に、各糸コーン2から繰り出されて張力付与装置16に接続された編糸20が含まれており、さらに糸コーン2以外の物体が含まれていてもよく、例えば、張力付与装置16が含まれていてもよい。
【0028】
図2に示すカメラ撮像画像30に含まれる5つの糸コーン2A~2Eにおいて、糸コーン2Aは、天板15に載置された直後の状態、すなわち、未使用状態である。そして、未使用状態から編糸20が徐々に使用されることで、糸コーン2B、2Cのように、外径が小さくなるとともに、糸残量が少なくなる。そして、糸コーン2Dのように、編糸20の隙間から芯部21の一部が視認される状態となった後、最終的には、糸コーン2Eのように、「糸無し」の状態となり、芯部21全体が表出する。なお、4つの糸コーン2A~2Dは、「糸有り」の状態であり、さらに詳細な糸残量としては、例えば、「残り100%」、「残り70%」、「残り40%」、「残り10%」と表される。
【0029】
図3は、第1の実施形態に係る画像処理装置4Aを備える横編機1の一例を示す概略ブロック図である。
【0030】
横編機1は、電気的な構成として、カメラ3及び画像処理装置4Aの他に、マイクロコントローラ等で構成される制御盤100と、タッチパネルやスイッチ等で構成される操作表示盤101とを備える。制御盤100は、モータ等のアクチュエータやセンサ(いずれも不図示)に接続され、横編機1の各部を制御することで、横編機1による編成動作を制御する。操作表示盤101は、作業者の操作を受け付けるとともに、各種の情報を表示や音で出力する。
【0031】
(画像処理装置4A)
画像処理装置4Aは、汎用又は専用のコンピュータ等で構成されており、例えば、CPU、GPU等の演算手段と、ROM、RAM等で構成される記憶手段と、有線又は無線によりネットワークや他の機器と通信するための通信部と、これら各部を接続するバスとを備える。なお、画像処理装置4Aは、制御盤100の一部の機能として、制御盤100に組み込まれていてもよい。また、画像処理装置4Aは、それ単独で動作する装置として提供されるもののみならず、任意のプロセッサに、以下に説明する動作を実行させるためプログラム又は当該動作を実行させるための1乃至複数の命令を格納した非一時的なコンピュータ読取可能媒体の形式で提供されるものを含む。
【0032】
画像処理装置4Aは、
図3に示すように、取得部40と、糸コーン状態検出部41と、学習済みモデル記憶部42と、出力処理部43とを備える。取得部40、糸コーン状態検出部41及び出力処理部43は上記演算手段により構成され、学習済みモデル記憶部42は上記記憶手段により構成される。
【0033】
取得部40は、カメラ3に接続されて、カメラ3で撮像された撮像画像を取得するためのインタフェースとして機能する。取得部40は、カメラ3により撮像されたカメラ撮像画像30として、横編機1の上又は周辺(本実施形態では、天板15の上面)に配置された任意数の糸コーン2を含むカメラ撮像画像30を取得する。なお、画像処理装置4Aが取得部40を介してカメラ3に接続される際の接続方式や通信方式は、任意の方式でよい。
【0034】
糸コーン状態検出部41は、取得部40により取得されたカメラ撮像画像30に対して画像処理を行うことにより、カメラ撮像画像30に含まれる任意数の糸コーン2の状態を検出する。糸コーン2の状態としては、例えば、糸コーン2の糸残量、糸コーン2の位置、外形形状、及び、外形サイズ、並びに、編糸20の種類(色や太さ)、糸コーン2と張力付与装置16との接続関係等が挙げられる。なお、糸コーン状態検出部41は、上述した糸コーン2の各種の状態のうち、1つの状態を検出するものでもよいし、複数の状態を検出するものでもよい。
【0035】
本実施形態では、糸コーン状態検出部41は、任意数の糸コーン2の状態として、糸コーン2の糸残量を検出する場合について説明する。また、糸コーン状態検出部41は、カメラ撮像画像30に対する画像処理として、カメラ撮像画像30を入力データとして学習済みモデル5Aに入力し、当該学習済みモデル5Aを用いた推論処理により当該学習済みモデル5Aから推論結果(糸コーン2の糸残量)を出力する一連の処理を行う場合について説明する。
【0036】
学習済みモデル5Aは、後述する機械学習装置6A及び機械学習方法を用いた機械学習により、任意数の糸コーンを含むカメラ撮像画像30と当該カメラ撮像画像30に含まれる任意数の糸コーン2の糸残量との相関関係を機械学習させたものである。
【0037】
なお、糸コーン状態検出部41は、学習済みモデル5Aを用いた推論処理を行う機能のみならず、推論処理の前処理として、取得部40により取得された入力データとしてのカメラ撮像画像30に所定の画像調整(例えば、画像フォーマット、画像サイズ、画像フィルタ、画像マスク等)を適用して学習済みモデル5Aに入力する前処理機能や、推論処理の後処理として、学習済みモデル5Aが出力した出力データ(推論結果)に、例えば、所定の演算式や論理式を適用することで、糸コーン2の糸残量を最終的に判断する後処理機能をも含んでいる。また、糸コーン状態検出部41の推論結果は、図示しない記憶手段に記憶してもよく、記憶された過去の推論結果は、例えば、学習済みモデル記憶部42内の学習済みモデル5Aの推論精度の更なる向上のための、オンライン学習や再学習に用いられる学習用データセットとして利用してもよい。
【0038】
出力処理部43は、糸コーン状態検出部41により検出された検出結果、すなわち、糸コーン2の状態を出力するための処理である。具体的な出力の手段は、種々の手段を採用することが可能であり、例えば、検出結果を、操作表示盤101を介して表示や音で作業者に報知したり、横編機1の動作履歴として制御盤100の記憶手段に記憶したり、横編機1の上位の生産管理システムに送信したりしてもよい。その際、出力処理部43は、横編機1から必要なデータ(例えば、編成データ等)を取得してもよい。
【0039】
上記の構成を備える画像処理装置4Aによる画像処理方法について、
図4を参照して説明する。
図4は、第1の実施形態に係る画像処理装置4Aによる画像処理方法の一例を示すフローチャートである。なお、
図4に示す一連の画像処理工程は、画像処理装置4Aにより所定のタイミングにて繰り返し実行されるものである。所定のタイミングは、任意のタイミングでよく、例えば、所定の時間間隔毎や生産数毎でもよいし、所定の事象発生時(作業者の操作時、段取り時、停止時等)でもよい。以下では、画像処理工程が、横編機1が編成動作を行っている最中に実行される場合について説明する。
【0040】
横編機1による編成動作が行われると、それに伴って天板15に載置された糸コーン2から編糸20が供給され、編地が編成される。そして、上記の所定のタイミングになると、取得部40は、カメラ3により天板15上の糸コーン2が撮像されたカメラ撮像画像30を取得する(ステップS100)。
【0041】
次に、糸コーン状態検出部41が、学習済みモデル記憶部42に格納された学習済みモデル5Aを参照し、当該学習済みモデル5Aを用いた推論処理を行う(ステップS110)。その際、推論処理に用いられる学習済みモデル5Aは、所定のプログラムや作業員の操作に基づいて事前に特定されていることが好ましい。
【0042】
具体的には、糸コーン状態検出部41は、取得部40により取得されたカメラ撮像画像30に前処理を施して、学習済みモデル5Aに入力するとともに、当該学習モデル済みモデル5Aからの出力データに対して後処理を施すことにより、学習済みモデル5Aの推論結果として、当該カメラ撮像画像30に含まれる任意数の糸コーン2の糸残量を検出する。
図4に例示したステップS110の推論結果は、カメラ撮像画像30から5つの糸コーン領域A~E(左下座標及び右上座標)に囲まれた5つの糸コーンがそれぞれ検出されるととともに、5つの糸コーン2の糸残量がそれぞれ多値で検出されたものである。具体的には、4つの糸コーン領域A~Dの各々に囲まれた4つの糸コーン2の糸残量はそれぞれ「残り100%」、「残り70%」、「残り40%」、「残り10%」であり、糸コーン領域Eに囲まれた1つの糸コーン2の糸残量は「糸無し」である。
【0043】
次に、出力処理部43は、ステップS110にて糸コーン状態検出部41による推論処理が行われた結果に基づいて、いずれかの糸コーン2に対する糸残量の検出結果が「糸無し」を示すか否かを判定する(ステップS120)。そして、出力処理部43が、ステップS120にて肯定的に判定した場合(ステップS120でYes)には、推論結果が「糸無し」であること、すなわち、横編機1の編成動作が停止することを、例えば、操作表示盤101により作業者に報知する(ステップS130)。
図4に例示した推論結果では、糸コーン領域Eで規定される位置に存在する糸コーン2について「糸無し」であることを報知する。その際、出力処理部43は、検出結果が「糸無し」であることを制御盤100に通知することで横編機1の編成動作を停止させるようにしてもよい。
【0044】
一方、全ての糸コーン2に対する糸残量の検出結果が「糸無し」でなく、出力処理部43が、ステップS120にて否定的に判定した場合(ステップS120でNo)、さらに、いずれかの糸コーン2に対する糸残量の検出結果が所定の糸残量予告値(例えば、10%)以下を示すか否かを判定する(ステップS140)。そして、出力処理部43が、ステップS140にて肯定的に判定した場合(ステップS140でYes)には、推論結果が「糸無し予告」であること、すなわち、糸コーン2が間もなく「糸無し」となり、横編機1の編成動作が間もなく停止することを作業者に報知する(ステップS150)。その際、出力処理部43は、検出結果が「糸無し予告」であることを制御盤100に通知するようにしてもよい。
【0045】
一方、全ての糸コーン2に対する糸残量の検出結果が糸残量予告値以下でなく、出力処理部43が、ステップS140にて否定的に判定した場合(ステップS140でNo)、作業者に報知することなく、画像処理工程を終了する。なお、出力処理部43は、検出結果が「糸無し」及び「糸無し予告」でないこと、すなわち、「糸有り」であることを出力してもよく、例えば、制御盤100に通知するようにしてもよい。
【0046】
なお、出力処理部43は、検出結果として「糸無し」及び「糸無し予告」を出力するようにしたが、いずれか一方を出力するようにしてもよく、その場合には、ステップS120、S130か、ステップS140、S150のいずれかが省略されてもよい。また、張力付与装置16が、「糸無し」を検出する機能を有する場合には、張力付与装置16にて「糸無し」を検出し、出力処理部43は、検出結果として「糸無し予告」を出力するように、ステップS120、S130が省略されてもよい。さらに、糸残量が2値で検出されて、例えば、糸コーン領域A~Dに囲まれた4つの糸コーン2の糸残量の検出結果が「糸有り」、糸コーン領域Eに囲まれた1つの糸コーン2の糸残量の検出結果が「糸無し」と検出される場合には、ステップS140、S150が省略されてもよい。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る画像処理装置4A及び画像処理方法によれば、カメラ撮像画像30に含まれる任意数の糸コーン2の状態(本実施形態では糸残量を例に説明)を検出することができる。そのため、個々の糸コーン2に対して光学的部品を設置する必要がなく、また、糸コーン2が編機の上又は周辺に配置されたときの糸コーン2の数や位置等の条件に制約されることなく、糸コーン2の状態を検出することができる。したがって、糸コーン2の状態を簡単な構成で検出可能であり、作業性及び汎用性を向上させることができる。
【0048】
(機械学習装置6A)
次に、横編機1の上又は周辺に配置された任意数の糸コーン2の糸残量を検出するために用いられる機械学習装置6Aについて、
図5を参照して説明する。
図5は、第1の実施形態に係る機械学習装置6Aの一例を示す概略ブロック図である。
【0049】
機械学習装置6Aは、任意数の糸コーン2を含む任意数糸コーン撮像画像31に基づいて糸コーン2の糸残量を検出(推定)することが可能な学習モデル(学習済みモデル5A)を生成する。なお、機械学習装置6Aにより生成された学習済みモデル5Aは、画像処理装置4Aに提供され、学習済みモデル記憶部42に格納されることで、糸コーン状態検出部41による推論処理に用いられる。なお、ここでは、画像処理装置4Aと機械学習装置6Aとを別々の装置として示しているが、画像処理装置4Aと機械学習装置6Aとは単一の装置として構成されていてもよい。
【0050】
機械学習装置6Aは、汎用又は専用のコンピュータ等で構成されており、例えば、CPU、GPU等の演算手段と、ROM、RAM等で構成される記憶部と、有線又は無線によりネットワークや他の機器と通信するための通信部と、これら各部を接続するバスとを備える。なお、機械学習装置6Aは、それ単独で動作する装置として提供されるもののみならず、任意のプロセッサに、以下に説明する動作を実行させるためプログラム又は当該動作を実行させるための1乃至複数の命令を格納した非一時的なコンピュータ読取可能媒体の形式で提供されるものを含む。
【0051】
機械学習装置6Aは、
図5に示すように、学習用データセット取得部60と、学習用データセット記憶部61と、機械学習部62と、学習済みモデル記憶部63とを備える。学習用データセット取得部60及び機械学習部62は、上記演算手段により構成され、学習用データセット記憶部61及び学習済みモデル記憶部63は上記記憶手段により構成される。
【0052】
学習用データセット取得部60は、例えば、通信部を介して接続された各種機器から学習(トレーニング)用データセットを構成する複数のデータを取得するためのインタフェースユニットである。ここで、学習用データセット取得部60に接続される各種機器としては、例えば、外部装置7や、作業者が使用する端末装置8等が挙げられる。なお、
図5では、機械学習装置6A、外部装置7及び端末装置8を別々の装置として示しているが、これらの装置は適宜組み合わせてもよく、例えば、外部装置7及び端末装置8が単一の装置で構成されていてもよいし、機械学習装置6A、外部装置7及び端末装置8が単一の装置で構成されていてもよい。
【0053】
学習用データセット取得部60は、任意数糸コーン撮像画像31を入力データとして、例えば、外部装置7から取得するとともに、当該任意数糸コーン撮像画像31に含まれる任意数の糸コーン2の糸残量を出力データとして、例えば、端末装置8から取得する。そして、これらの入力データと出力データとを対応付けることで、一の学習用データセットを構成する。
【0054】
任意数糸コーン撮像画像31は、
図2に示すように、任意数の糸コーン2を含む画像である。任意数糸コーン撮像画像31は、カメラ3により横編機1の上又は周辺(本実施形態では、天板15の上面)に配置された任意数の糸コーン2が撮像されたものでもよいし、例えば、データ作成用のカメラにより天板15を模擬した模擬台に配置された任意数の糸コーン2が撮像されたものでもよい。
【0055】
糸コーン2の糸残量は、糸コーン2の芯部21に巻回されている編糸20の残量を示す情報であり、そのデータ形式としては種々のものを採用することができる。例えば、糸コーン2の糸残量は、「糸無し」及び「糸有り」のいずれかを表す情報で構成することができる。この場合、糸残量は、2値に分類され、例えば、「糸無し」であることを示す値を「0」とし、「糸有り」であることを示す値を「1」として、端末装置8を用いて作業者により入力データに対応付けた形で該当する値が入力されればよい。また、糸コーン2の糸残量は、段階的な情報で構成することができる。この場合、糸残量は、多値に分類され、例えば、11段階で表す際には、「糸無し」であることを示す値を「0」とし、糸残量が「残り10%」、「残り20%」、…、「残り100%」(未使用状態)であることを示す値を「0.1」、「0.2」、…、「1」として、端末装置8を用いて作業者により入力データに対応付けた形で該当する値が入力されればよい。
【0056】
学習用データセット記憶部61は、学習用データセット取得部60で取得した学習用データセットを格納するためのデータベースである。学習用データセット記憶部61を構成するデータベースの具体的な構成については適宜変更してもよい。例えば、
図5では、学習用データセット記憶部61と、学習済みモデル記憶部63とを別々の記憶部として示しているが、これらは単一の記憶部(データベース)で構成されていてもよい。
【0057】
機械学習部62は、学習用データセット記憶部61に記憶された複数の学習用データセットを用いて機械学習を実施することで、複数の学習用データセットに含まれる入力データと出力データとの相関関係を推論する学習モデル(学習済みモデル5A)を生成する。なお、実施形態においては、機械学習の具体的な学習手法として、後述する畳み込みニューラルネットワーク(CNN(Convolutional Neural Network))を採用している。
【0058】
学習済みモデル記憶部63は、機械学習部62により生成された学習済みモデル5Aを格納するためのデータベースである。学習済みモデル記憶部63に記憶された学習済みモデル5Aは、要求に応じて、インターネットを含む通信回線や記憶媒体を介して実システム(画像処理装置4A)に適用される。
【0059】
次に、上述のようにして取得された複数の学習用データセットを用いた、機械学習部62における学習手法について、
図6を参照して説明する。
図6は、第1の実施形態に係る機械学習装置6Aにて用いられるCNNに基づく推論モデル50Aの一例を示す図である。
【0060】
推論モデル50Aは、入力層51と、中間層52と、出力層53とを備える。推論モデル50Aは、画像に含まれる物体の検出(物体検出)と、その検出した物体の状態の検出(状態検出)とを行い、画像に複数の物体が含まれている場合には、各物体について物体検出と状態検出とを行う。
【0061】
入力層51は、入力データとしての画像に対応する数のニューロンを有し、各ピクセルの画素値が各ニューロンにそれぞれ入力される。
【0062】
中間層52は、畳み込み層520、プーリング層521及び全結合層522から構成されている。畳み込み層520及びプーリング層521は、例えば、交互に複数層設けられている。畳み込み層520及びプーリング層521は、入力層51を介して入力された画像から特徴量を抽出する。全結合層522は、畳み込み層520及びプーリング層521により画像から抽出された特徴量を、例えば、活性化関数によって変換し、特徴ベクトルとして出力する。なお、全結合層522は、複数層設けられていてもよい。
【0063】
出力層53は、全結合層522から出力された特徴ベクトルに基づいて、推論結果として、物体検出結果と状態検出結果とを含む出力データを出力する。物体検出結果は、例えば、検出した物体を囲む領域(例えば、矩形、円形等)を規定する情報であり、矩形の場合には、左下座標及び右上座標でもよいし、中心座標並びに幅及び高さでもよい。状態検出結果は、例えば、検出した物体の状態を示す情報であり、離散値でもよいし、連続値でもよい。また、出力データは、これらの他に、例えば、推定結果の確からしさを示すスコアを含むものでもよい。
【0064】
推論モデル50Aの各層の間には、層間のニューロンをそれぞれ接続するシナプスが張られており、中間層52の畳み込み層520及び全結合層522の各シナプスには、重みが対応付けられている。
【0065】
本実施形態に係る機械学習部62は、学習用データセットを推論モデル50Aに入力し、任意数糸コーン撮像画像31と当該任意数糸コーン撮像画像31に含まれる任意数の糸コーン2の糸残量との相関関係を学習する。具体的には、機械学習部62は、学習用データセットを構成する任意数糸コーン撮像画像31を入力データとして、推論モデル50Aの入力層51に入力する。なお、機械学習部62は、任意数糸コーン撮像画像31を入力層51に入力する際の前処理として、所定の画像調整(例えば、画像フォーマット、画像サイズ、画像フィルタ、画像マスク等)を任意数糸コーン撮像画像31に施してもよい。
【0066】
そして、機械学習部62は、出力層53から推論結果として出力された出力データが示す糸残量(状態検出結果)と、当該学習用データセットを構成する糸残量(教師データ)とを比較する誤差関数を用いて、誤差関数の評価値が小さくなるように、各シナプスに対応付けられた重みを調整する(バックプロバケーション)ことを反復する。
【0067】
次に、機械学習部62は、上述した一連の各ステップを所定の回数反復実施することや、誤差関数の評価値が許容値より小さくなること等の所定の学習終了条件が満たされたと判断した場合には、学習を終了し、その推論モデル50A(各シナプスのそれぞれに対応付けられた全ての重み)を、学習済みモデル5Aとして学習済みモデル記憶部63に格納する。
【0068】
(機械学習方法)
次に、上述した機械学習装置6Aに関連して、機械学習方法について、
図7を参照して説明する。
図7は、第1の実施形態に係る機械学習方法の例を示すフローチャートである。
【0069】
以下に示す機械学習方法においては、上述した機械学習装置6Aにより実行される場合について説明する。まず、機械学習を開始するための事前準備として、所望の数の学習用データセットを準備し、準備した複数個の学習用データセットを学習用データセット記憶部61に記憶する(ステップS200)。ここで準備する学習用データセットの数については、最終的に得られる学習済みモデル5Aに求められる推論精度を考慮して設定するとよい。
【0070】
学習用データセットを準備する方法には、いくつかの方法を採用することができる。例えば、横編機1の編成動作時に、カメラ3を用いて様々な状態の糸コーン2を撮像し、その撮像した任意数糸コーン撮像画像31に関連付ける形で作業者が、任意数糸コーン撮像画像31に含まれる糸コーン2の糸残量を、端末装置8等を用いて特定・入力することで、学習データセットを構成する入力データと出力データとを準備する。そして、このような作業を繰り返すことで所望の数の学習用データセットを準備する方法を採用してもよい。また、このような方法以外にも、例えば、データ作成用のカメラにより天板15を模擬した模擬台に配置された糸コーン2を撮像することで学習用データセットを取得する等、種々の方法を採用してもよい。その際、学習用データセットとしては、糸残量として、糸有り及び糸無しの様々な状態にある糸コーン2を含む任意数糸コーン撮像画像31を準備するだけでなく、様々な位置に配置され、様々な外形形状、外形サイズを有する、様々な数の糸コーン2を含む任意数糸コーン撮像画像31を準備することが好ましい。
【0071】
次に、機械学習部62における学習を開始すべく、学習前の推論モデル50Aを準備する(S210)。ここで準備される学習前の推論モデル50Aは、その構造としては、例えば、
図6に例示した構造を有し、且つ各シナプスの重みが初期値に設定されている。そして、学習用データセット記憶部61に記憶された複数個の学習用データセットから、例えばランダムに一の学習用データセットを選択し(ステップS220)、当該一の学習用データセット中の入力データを、準備された学習前の推論モデル50Aに入力する(ステップS230)。
図6に例示した学習用データセットでは、入力データは、5つの糸コーン領域A~E(左下座標及び右上座標)の各々で規定される領域に5つの糸コーン2が含まれる任意数糸コーン撮像画像31であり、出力データは、5つの糸コーン領域A~Eの各々に囲まれた5つの糸コーン2の糸残量がそれぞれ「残り100%」、「残り70%」、「残り40%」、「残り10%」、「糸無し」であることを示す情報である。
【0072】
上記ステップS230の結果として出力層53から推論結果として出力された糸残量(状態検出結果)は、学習前のニューラルネットワークモデルによって生成されたものであるため、ほとんどの場合望ましい結果とは異なる値、すなわち、正しい糸コーン2の糸残量とは異なる情報を示す。そこで、次に、ステップS220において取得された一の学習用データセット中の教師データとしての糸残量と、ステップS230において出力層53から出力された糸残量(状態検出結果)とを用いて、機械学習を実施する(ステップS240)。
【0073】
ここでの機械学習とは、例えば、教師データを構成する糸残量と出力層53から出力された糸残量(状態検出結果)とを比較し、好ましい推論モデル50Aが得られるよう、学習前の推論モデル50A内の各シナプスに対応付けられた重みを調整する処理(バックプロパゲーション)である。なお、学習前の推論モデル50Aの出力層53から出力される出力データの形式は、学習対象としての学習用データセット中の教師データと同様の形式である。
【0074】
図6に例示した推論結果は、任意数糸コーン撮像画像31から5つの糸コーン領域A~E(左下座標及び右上座標)の各々に含まれる5つの糸コーン2がそれぞれ検出されるととともに、5つの糸コーン領域A~Eの各々に囲まれた5つの糸コーン2の糸残量がそれぞれ「残り100%」、「残り60%」、「残り40%」、「残り10%」、「糸無し」であることを示す。そのため、糸コーン領域Bに囲まれた糸コーン2の糸残量について教師データとの間に誤差が生じていることから、当該誤差に基づいて推論モデル50Aの重みが調整される。
【0075】
ステップS240において機械学習が実施されると、さらに機械学習を継続する必要があるか否かを、例えば、学習用データセット記憶部61内に記憶された未学習の学習用データセットの残数に基づいて特定する(ステップS250)。そして、学習終了条件が満たされておらず機械学習を継続する場合(ステップS250でNo)には、ステップS220に戻り、学習終了条件が満たされて機械学習を終了する場合(ステップS250でYes)には、ステップS260に移る。上記機械学習を継続する場合には、学習中の推論モデル50Aに対してステップS220~S240の工程を未学習の学習用データセットを用いて複数回実施する。最終的に生成される学習済みモデル5Aの精度は、一般にこの回数に比例して高くなる。
【0076】
機械学習を終了する場合(ステップS250でYes)には、各シナプスに対応付けられた重みが調整されることで生成された推論モデル50Aを学習済みモデル5Aとして、学習済みモデル記憶部63に記憶し(ステップS260)、一連の機械学習工程を終了する。
【0077】
上述した機械学習装置6Aの学習手法及び機械学習方法においては、1つの学習済みモデル5Aを生成するために、1つの(学習前の)推論モデル50Aに対して複数回の機械学習処理を繰り返し実行することでその精度を向上させ、画像処理装置4Aに適用するに足る学習済みモデル5Aを取得するものを説示している。しかし、本発明はこの取得方法に限定されない。例えば、所定回数の機械学習を実施した学習済みモデル5Aを一候補として複数個の学習済みモデル記憶部63に格納しておき、この複数個の学習済みモデル群に妥当性判断用のデータセットを入力して出力層(のニューロンの値)を生成し、出力層で特定された値の精度を比較検討して、画像処理装置4Aに適用する最良の学習済みモデル5Aを1つ選定するようにしてもよい。なお、妥当性判断用データセットは、学習に用いた学習用データセットと同様のデータセットで構成され、且つ学習に用いられていないものであればよい。
【0078】
以上のように、本実施形態に係る機械学習装置6A及び機械学習方法によれば、任意数の糸コーン2を含むカメラ撮像画像30から、当該カメラ撮像画像30に含まれる任意数の糸コーン2の状態(本実施形態では糸残量を例に説明)を的確に検出(推定)することが可能な学習済みモデル5Aを生成することができる。
【0079】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、機械学習装置6Aが、1つの学習済みモデル5Aを生成し、画像処理装置4Aが、当該1つの学習済みモデル5Aにカメラ撮像画像30を入力することにより、当該カメラ撮像画像30に含まれる糸コーン2の糸残量を検出するものである。これに対し、第2の実施形態では、第1及び第2の機械学習装置6B1、6B2が、第1及び第2の学習済みモデル5B1、5B2をそれぞれ生成し、画像処理装置4Bが、当該第1及び第2の学習済みモデル5B1、5B2を、第1の学習済みモデル5B1を前段、第2の学習済みモデル5B2を後段として直列的に接続したモデル構造を有しており、第1の学習済みモデル5B1にカメラ撮像画像30を入力することにより、当該カメラ撮像画像30に含まれる糸コーン2の糸残量を検出するものである。その他の基本的な構成及び動作は、第1の実施形態と同様のため、以下では第2の実施形態の特徴部分を中心に説明する。なお、以下では第1及び第2の機械学習装置6B1、6B2は、別々の装置として説明するが、第1及び第2の機械学習装置6B1、6B2は、単一の装置で構成されていてもよい。
【0080】
(画像処理装置4B)
図8は、第2の実施形態に係る画像処理装置4Bを備える横編機1の一例を示す概略ブロック図である。画像処理装置4Bの学習済みモデル記憶部42には、第1の学習済みモデル5B1と、第2の学習済みモデル5B2とが格納されている。
【0081】
第1の学習済みモデル5B1は、後述する第1の機械学習装置6B1及び機械学習方法を用いた機械学習により、任意数の糸コーン2を含む任意数糸コーン撮像画像31と、当該任意数糸コーン撮像画像31に含まれる任意数の糸コーン2の各々を囲む任意数の領域との相関関係を機械学習させたものである。
【0082】
第2の学習済みモデル5B2は、後述する第2の機械学習装置6B2及び機械学習方法を用いた機械学習により、1つの糸コーン2を含む単一糸コーン撮像画像33と当該単一糸コーン撮像画像33に含まれる1つの糸コーン2の糸残量との相関関係を機械学習させたものである。
【0083】
図9は、第2の実施形態に係る画像処理装置4Bによる画像処理方法の一例を示すフローチャートである。
【0084】
所定のタイミングにおいて、取得部40は、カメラ3により天板15上の糸コーン2が撮像されたカメラ撮像画像30を取得する(ステップS100)。
【0085】
次に、糸コーン状態検出部41は、学習済みモデル記憶部42に格納された第1の学習済みモデル5B1を参照し、当該第1の学習済みモデル5B1を用いた推論処理を行う(ステップS111)。具体的には、糸コーン状態検出部41は、第1の学習済みモデル5B1に、取得部40により取得されたカメラ撮像画像30を入力することにより、当該カメラ撮像画像30に含まれる任意数の糸コーン2の各々を囲む任意数の領域を特定する。
図9に例示したステップS111の推論結果は、カメラ撮像画像30から5つの糸コーン2が検出され、5つの糸コーン2の各々を囲む糸コーン領域A~Eが、左下座標及び右上座標の2点でそれぞれ特定されたものである。
【0086】
次に、糸コーン状態検出部41は、学習済みモデル記憶部42に格納された第2の学習済みモデル5B2を参照し、当該第2の学習済みモデル5B2を用いた推論処理を行う(ステップS112)。具体的には、糸コーン状態検出部41は、第2の学習済みモデル5B2に、取得部40により取得されたカメラ撮像画像30のうち、任意数の領域の各々で規定される、1つの糸コーン2を含む領域画像32をそれぞれ入力することにより、当該領域画像32に含まれる1つの糸コーン2の糸残量をそれぞれ検出する。
図9に例示したステップS112の推論結果は、5つの糸コーン領域A~E(左下座標及び右上座標)の各々で特定された5つの領域画像32から5つの糸コーンの糸残量がそれぞれ多値で検出されたものであり、糸コーン領域A~D(左下座標及び右上座標)に囲まれた4つの糸コーン2の糸残量はそれぞれ「残り100%」、「残り70%」、「残り40%」、「残り10%」であり、糸コーン領域Eに囲まれた1つの糸コーン2の糸残量は「糸無し」である。
【0087】
次に、ステップS111、S112において、糸コーン状態検出部41による推論処理が行われた結果、いずれかの糸コーン2に対する糸残量の検出結果が「糸無し」である場合(ステップS120でYes)には、出力処理部43は、「糸無し」を報知し(ステップS130)、いずれかの糸コーン2に対する糸残量の検出結果が糸残量予告値以下である場合(ステップS140でYes)には、出力処理部43は、「糸無し予告」を報知する(ステップS150)。一方、いずれの糸コーン2に対する糸残量の検出結果も「糸無し」及び「糸無し予告」を示さない、すなわち、全ての糸コーン2に対する糸残量の検出結果が「糸有り」を示す場合(ステップS120でNo、かつ、ステップS140でNo)には、そのまま画像処理工程を終了する。
【0088】
以上のように、本実施形態に係る画像処理装置4B及び画像処理方法によれば、第1の実施形態に係る画像処理装置4A及び画像処理方法と同様に、カメラ撮像画像30に含まれる任意数の糸コーン2の状態(本実施形態では糸残量を例に説明)を検出することができる。そのため、個々の糸コーン2に対して光学的部品を設置する必要がなく、また、糸コーン2が編機の上又は周辺に配置されたときの糸コーン2の数や位置等の条件に制約されることなく、糸コーン2の状態を検出することができる。したがって、糸コーン2の状態を簡単な構成で検出可能であり、作業性及び汎用性を向上させることができる。
【0089】
(第1の機械学習装置6B1)
次に、横編機1の上又は周辺に配置された任意数の糸コーン2の状態を検出するために用いられる第1の機械学習装置6B1について、
図10、
図11を参照して説明する。
図10は、第2の実施形態に係る第1の機械学習装置6B1の一例を示す概略ブロック図である。
図11は、第2の実施形態に係る第1の機械学習装置6B1にて用いられるCNNに基づく第1の推論モデル50B1の一例を示す図である。
【0090】
第1の機械学習装置6B1は、任意数の糸コーン2を含む任意数糸コーン撮像画像31に基づいて、当該任意数糸コーン撮像画像31に含まれる任意数の糸コーン2の各々を囲む任意数の領域を特定(推定)することが可能な学習モデル(第1の学習済みモデル5B1)を生成する。
【0091】
学習用データセット取得部60は、任意数糸コーン撮像画像31を入力データとして、例えば、外部装置7から取得するとともに、当該任意数糸コーン撮像画像31に含まれる任意数の糸コーン2の各々を囲む任意数の領域を出力データとして、例えば、端末装置8から取得する。そして、これらの入力データと出力データとを対応付けることで、一の学習用データセットを構成し、学習用データセット記憶部61に格納する。
図11に例示した学習用データセットでは、入力データは、5つの糸コーン領域A~E(左下座標及び右上座標)の各々で規定される領域に5つの糸コーン2が含まれる任意数糸コーン撮像画像31であり、出力データは、5つの糸コーン2の各々を囲む糸コーン領域A~E(左下座標及び右上座標)を特定する情報である。なお、学習用データセットを構成する入力データは、その一部又は全てが1つの糸コーン2を含む単一糸コーン撮像画像であってもよい。
【0092】
機械学習部62は、学習用データセット記憶部61に記憶された複数の学習用データセットを用いて機械学習を実施することで、複数の学習用データセットに含まれる入力データと出力データとの相関関係を推論する学習モデル(第1の学習済みモデル5B1)を生成する。
【0093】
具体的には、機械学習部62は、学習用データセットを構成する任意数糸コーン撮像画像31を、
図11に示す第1の推論モデル50B1の入力層51に入力することで出力層53から推論結果として出力された領域(物体検出結果)と、当該学習用データセットを構成する領域(教師データ)とを比較することにより、機械学習を実施する。
図11に例示した推論結果は、任意数糸コーン撮像画像31から5つの糸コーン領域A~D(左下座標及び右上座標)の各々に含まれる4つの糸コーン2がそれぞれ検出されるととともに、5つの糸コーン2の各々を囲む糸コーン領域A~Dが、左下座標及び右上座標の2点でそれぞれ特定されたものである。糸コーン領域A~Eについて推論結果と教師データとの間に誤差が生じている場合には、当該誤差に基づいて第1の推論モデル50B1の重みが調整される。
【0094】
そして、学習終了条件が満たされて機械学習を終了すると、機械学習部62は、その第1の推論モデル50B1を第1の学習済みモデル5B1として学習済みモデル記憶部63に格納する。
【0095】
(第2の機械学習装置6B2)
次に、横編機1の上又は周辺に配置された任意数の糸コーン2の糸残量を検出するために用いられる第2の機械学習装置6B2について、
図12、
図13を参照して説明する。
図12は、第2の実施形態に係る第2の機械学習装置6B2の一例を示す概略ブロック図である。
図13は、第2の実施形態に係る第2の機械学習装置6B2にて用いられるCNNに基づく第2の推論モデル50B2の一例を示す図である。
【0096】
第2の機械学習装置6B2は、1つの糸コーン2を含む単一糸コーン撮像画像33に基づいて、当該単一糸コーン撮像画像33に含まれる1つの糸コーン2の糸残量を検出(推定)することが可能な学習モデル(第2の学習済みモデル5B2)を生成する。
【0097】
学習用データセット取得部60は、単一糸コーン撮像画像33を入力データとして、例えば、外部装置7から取得するとともに、当該単一糸コーン撮像画像33に含まれる1つの糸コーン2の糸残量を出力データとして、例えば、端末装置8から取得する。そして、これらの入力データと出力データとを対応付けることで、一の学習用データセットを構成し、学習用データセット記憶部61に格納する。
図13に例示した学習用データセットでは、入力データは、1つの糸コーン2が含まれる単一糸コーン撮像画像33であり、出力データは、1つの糸コーン2の糸残量が「残り70%」であることを示す情報である。
【0098】
機械学習部62は、学習用データセット記憶部61に記憶された複数の学習用データセットを用いて機械学習を実施することで、複数の学習用データセットに含まれる入力データと出力データとの相関関係を推論する学習モデル(第2の学習済みモデル5B2)を生成する。
【0099】
具体的には、機械学習部62は、学習用データセットを構成する単一糸コーン撮像画像33を、
図12に示す第2の推論モデル50B2の入力層51に入力することで出力層53から推論結果として出力された糸残量(状態検出結果)と、当該学習用データセットを構成する糸残量(教師データ)とを比較することにより、機械学習を実施する。
図13に例示した推論結果は、単一糸コーン撮像画像33に含まれる1つの糸コーン2の糸残量が、「残り60%」であることを示す。そのため、糸コーン2の糸残量について教師データとの間に誤差が生じていることから、当該誤差に基づいて第2の推論モデル50B2の重みが調整される。
【0100】
そして、学習終了条件が満たされて機械学習を終了すると、機械学習部62は、その第2の推論モデル50B2を第2の学習済みモデル5B2として学習済みモデル記憶部63に格納する。
【0101】
以上のように、本実施形態に係る第1及び第2の機械学習装置6B1、6B2及び機械学習方法によれば、第1の実施形態に係る機械学習装置6A及び機械学習方法と同様に、任意数の糸コーン2を含むカメラ撮像画像30から、当該カメラ撮像画像30に含まれる任意数の糸コーン2の状態(本実施形態では糸残量を例に説明)を的確に検出(推定)することが可能な第1及び第2の学習済みモデル5B1、5B2を生成することができる。
【0102】
特に、第1の機械学習装置6B1は、カメラ撮像画像30に含まれる任意数の糸コーン2の各々を囲む領域を特定する、糸コーン2の物体検出に特化した第1の学習済みモデル5B1を生成し、第2の機械学習装置6B2は、1つの糸コーン2の状態を検出する、糸コーン2の状態検出に特化した第2の学習済みモデル5B2を生成する。そのため、学習用データセットとして、様々な条件を組み合わせた多数の撮像画像を準備する必要がなく、第1及び第2の学習済みモデル5B1、5Bの各々に適した学習用データセットを用意すればよいため、学習用データセットを準備する手間が軽減されるとともに、第1及び第2の学習済みモデル5B1、5B2の推論精度を向上させることができる。
【0103】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、機械学習装置6Aが、学習済みモデル5Aを生成し、画像処理装置4Aが、当該学習済みモデル5Aにカメラ撮像画像30を入力することにより、当該カメラ撮像画像30に含まれる糸コーン2の糸残量を検出するものである。これに対し、第3の実施形態では、機械学習装置6Cが、学習済みモデル5Cを生成し、画像処理装置4Cが、当該学習済みモデル5Cにカメラ撮像画像30を入力することにより、当該カメラ撮像画像30に含まれる糸コーン2と張力付与装置16との接続関係を検出するものである。その他の基本的な構成及び動作は、第1の実施形態と同様のため、以下では第3の実施形態の特徴部分を中心に説明する。
【0104】
(画像処理装置4C)
図14は、第3の実施形態に係る画像処理装置4Cを備える横編機1の一例を示す概略ブロック図である。画像処理装置4Cの学習済みモデル記憶部42には、学習済みモデル5Cが格納されている。
【0105】
学習済みモデル5Cは、後述する機械学習装置6C及び機械学習方法を用いた機械学習により、任意数の糸コーン2を含む任意数糸コーン撮像画像31と当該任意数糸コーン撮像画像31に含まれる任意数の糸コーン2及び複数の張力付与装置16の接続関係との相関関係を機械学習させたものである。具体的には、任意数糸コーン撮像画像31には、
図2に示すように、任意数の糸コーン2と、各糸コーン2から繰り出されて張力付与装置16に接続された編糸20が含まれているため、学習済みモデル5Cは、任意数糸コーン撮像画像31から、任意数の糸コーン2が配置された位置と、各糸コーン2から繰り出された編糸20がそれぞれ延びる方向と、編糸20がそれぞれ延びる方向に存在する各張力付与装置16の位置との間における特徴量を抽出し、糸コーン2と張力付与装置16との接続関係として機械学習させたものである。
【0106】
図15は、第3の実施形態に係る画像処理装置4Cによる画像処理方法の一例を示すフローチャートである。以下では、複数の張力付与装置16は、n個からなり、例えば、装置左側から順番に「1,2,3,…,n」と通し番号が振られているものとして説明する。
【0107】
所定のタイミングにおいて、取得部40は、カメラ3により天板15上の糸コーン2が撮像されたカメラ撮像画像30を取得する(ステップS100)。
【0108】
次に、糸コーン状態検出部41は、学習済みモデル記憶部42に格納された学習済みモデル5Cを参照し、当該学習済みモデル5Cを用いた推論処理を行う(ステップS113)。具体的には、糸コーン状態検出部41は、学習済みモデル5Cに、取得部40により取得されたカメラ撮像画像30を入力することにより、任意数の糸コーン2が配置された位置と、各糸コーン2から繰り出された編糸20がそれぞれ延びる方向と、編糸20がそれぞれ延びる方向に存在する各張力付与装置16の位置との間における特徴量が抽出されることで、当該カメラ撮像画像30に含まれる任意数の糸コーン2及び複数の張力付与装置16の接続関係を検出する。
【0109】
図15に例示したステップS113の推論結果は、カメラ撮像画像30から5つの糸コーン領域A~E(左下座標及び右上座標)の各々に含まれる5つの糸コーン2がそれぞれ検出されるとともに、糸コーン領域Aに囲まれた糸コーン2から延びる編糸20が「1」番目の張力付与装置16に接続され、糸コーン領域Cに囲まれた糸コーン2から延びる編糸20が「4」番目の張力付与装置16に接続され、糸コーン領域Dに囲まれた糸コーン2から延びる編糸20が「10」番目の張力付与装置16に接続され、糸コーン領域Bに囲まれた糸コーン2から延びる編糸20が「17」番目の張力付与装置16に接続され、その他の張力付与装置には糸コーン2が接続されていないことを示す。なお、糸コーン領域Eに囲まれた「糸無し」状態の糸コーン2は、張力付与装置16に接続されていないものとして検出される。
【0110】
次に、出力処理部43は、ステップS113にて糸コーン状態検出部41により検出された糸コーン2と張力付与装置16との接続関係が、横編機1の編成データで設定された接続関係と一致するか否かを判定し、両者の接続関係が一致しない場合(ステップS121でYes)には、「作業ミス」が発生したことを作業者に報知する(ステップS131)。一方、出力処理部43が、両者の接続関係が一致すると判定した場合(ステップS121でNo)には、そのまま画像処理工程を終了する。
【0111】
以上のように、本実施形態に係る画像処理装置4C及び画像処理方法によれば、カメラ撮像画像30に含まれる任意数の糸コーン2の状態、特に、本実施形態では、糸コーン2と張力付与装置16との接続関係を検出することができる。そのため、個々の糸コーン2に対して光学的部品を設置する必要がなく、また、糸コーン2が編機の上又は周辺に配置されたときの糸コーン2の数や位置等の条件に制約されることなく、糸コーン2の状態を検出することができる。したがって、糸コーン2の状態を簡単な構成で検出可能であり、作業性及び汎用性を向上させることができる。
【0112】
(機械学習装置6C)
次に、横編機1の上又は周辺に配置された任意数の糸コーンと複数の張力付与装置との接続関係を検出するために用いられる機械学習装置6Cについて、
図16、
図17を参照して説明する。
図16は、第3の実施形態に係る機械学習装置6Cの一例を示す概略ブロック図である。
図17は、第3の実施形態に係る機械学習装置6Cにて用いられるCNNに基づく推論モデル50Cの一例を示す図である。
【0113】
機械学習装置6Cは、任意数の糸コーン2を含む任意数糸コーン撮像画像31に基づいて、当該任意数糸コーン撮像画像31に含まれる任意数の糸コーン2及び複数の張力付与装置16の接続関係との相関関係を検出(推定)することが可能な学習モデル(学習済みモデル5C)を生成する。
【0114】
学習用データセット取得部60は、任意数糸コーン撮像画像31を入力データとして、例えば、外部装置7から取得するとともに、当該任意数糸コーン撮像画像31に含まれる任意数の糸コーン2及び複数の張力付与装置16の接続関係を出力データとして、例えば、端末装置8から取得する。そして、これらの入力データと出力データとを対応付けることで、一の学習用データセットを構成し、学習用データセット記憶部61に格納する。
図17に例示した学習用データセットでは、入力データは、3つの糸コーン領域A~C(左下座標及び右上座標)の各々で規定される領域に3つの糸コーン2が含まれる任意数糸コーン撮像画像31であり、出力データは、糸コーン領域Aに囲まれた糸コーン2が「2」番目の張力付与装置16に接続され、糸コーン領域Bに囲まれた糸コーン2が「4」番目の張力付与装置16に接続され、糸コーン領域Cに囲まれた糸コーン2が「15」番目の張力付与装置16に接続されていることを示す情報である。
【0115】
機械学習部62は、学習用データセット記憶部61に記憶された複数の学習用データセットを用いて機械学習を実施することで、複数の学習用データセットに含まれる入力データと出力データとの相関関係を推論する学習モデル(学習済みモデル5C)を生成する。
【0116】
具体的には、機械学習部62は、学習用データセットを構成する任意数糸コーン撮像画像31を、
図17に示す推論モデル50Cの入力層51に入力することで出力層53から推論結果として出力された接続関係(状態検出結果)と、当該学習用データセットを構成する接続関係(教師データ)とを比較することにより、機械学習を実施する。
図17に例示した推論結果は、任意数糸コーン撮像画像31から3つの糸コーン領域A~C(左下座標及び右上座標)の各々に含まれる5つの糸コーン2がそれぞれ検出されるととともに、糸コーン領域Cに囲まれた糸コーン2が張力付与装置「2」に接続され、糸コーン領域Bに囲まれた糸コーン2が張力付与装置「3」に接続され、糸コーン領域Aに囲まれた糸コーン2が張力付与装置「15」に接続されていることを示す。そのため、糸コーン領域Bに囲まれたる糸コーン2の接続関係について教師データとの間に誤差が生じており、当該誤差に基づいて推論モデル50Cの重みが調整される。
【0117】
そして、学習終了条件が満たされて機械学習を終了すると、機械学習部62は、その推論モデル50Cを学習済みモデル5Cとして学習済みモデル記憶部63に格納する。
【0118】
なお、本実施形態では、推論モデル50Cの出力層53には、n個の張力付与装置16を対応させて、張力付与装置16の通し番号(識別情報)と、各張力付与装置16に接続された糸コーン2の領域とを組み合わせて割り当てたものとして説明した。これに対し、出力層53には、任意数の糸コーン2の領域を対応させて、糸コーン2の領域と、各糸コーン2に接続された張力付与装置16の通し番号とを組み合わせて割り当てられてもよい。その場合には、出力層53のデータ形式に合わせて、学習用データセットを構成する出力データの形式を変更すればよい、
【0119】
以上のように、本実施形態に係る機械学習装置6C及び機械学習方法によれば、任意数の糸コーン2を含むカメラ撮像画像30から、当該カメラ撮像画像30に含まれる任意数の糸コーン2の状態、特に、本実施形態では、糸コーン2と張力付与装置16との接続関係を的確に検出(推定)することが可能な学習済みモデル5Cを生成することができる。
【0120】
(他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に制約されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【0121】
(推論装置)
例えば、本発明は、上述した画像処理装置4A~4Cの態様によるもののみならず、推論を行うための推論装置5A、5B1、5B2、5Cの態様で提供することもできる。その場合、推論装置5A、5B1、5B2、5Cとしては、メモリと、少なくとも1つのプロセッサとを含み、このうちのプロセッサが、一連の処理を実行するものとすることができる。当該一連の処理とは、任意数の糸コーンを含むカメラ撮像画像30が入力される処理と、カメラ撮像画像30が入力されると、当該カメラ撮像画像30に含まれる任意数の糸コーン2の状態(例えば、糸コーンの糸残量、糸コーンと張力付与装置との接続関係、糸コーンが配置された位置等)を推論する処理とを含む。本発明を上述した推論装置5A、5B1、5B2、5Cの態様で提供することで、画像処理装置4A~4Cを実装する場合に比して簡単に種々の装置への適用が可能となる。このとき、推論装置が糸コーン2の状態を推論する処理を行うに際しては、上述したように、本発明における機械学習装置6A、6B1、6B2、6A及び機械学習方法によって学習された学習済みモデル5A、5B1、5B2、5Cを用い、画像処理装置4A~4Cの糸コーン状態検出部41が実施する推論手法を適用してもよいことは、当業者にとって当然に理解され得るものである。
【0122】
また、上記実施形態では、画像処理装置4A~4Cは、横編機1A~1Cに適用されたものとして説明した。これに対し、画像処理装置4A~4Cは、例えば、丸編機、経編機等の任意の形式の編機に適用されてもよい。また、画像処理装置4A~4Cは、例えば、編機の製造工場にて編機に取り付けられてもよいし、工場出荷後に編機に後付けされてもよいし、工場出荷後に画像処理装置4A~4Cが備える各部の機能が編機の制御盤100に追加されてもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、画像処理装置4A~4Cは、カメラ撮像画像30に対する画像処理として、学習済みモデルを用いた推論処理を行うものとして説明した。これに代えて、画像処理装置4A~4Cは、カメラ撮像画像30に対して、糸コーン2の特徴を表す認識パラメータを用いたパターンマッチング等のパターン認識処理を行うようにしてもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、機械学習の学習手法として、CNNに基づく推論モデル50A、50B1、50B2、50Cを用いたものとして説明したが、これに限定されるものではなく、上記実施形態における入出力の相関関係を学習用データセットから学習することができるものであれば、他の学習手法を採用してもよい。例えば、ニューラルネットワーク、アンサンブル学習(ランダムフォレスト、ブースティング等)、CNNを応用したR-CNN(Region-based Convolutional Neural Network)、Fast-R-CNN、及び、Faster-R-CNN、YOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot multibox Detector)等の学習手法が用いられてもよい。その際、入力層51に対する入力データ及び出力層53に対する出力データのデータ形式は適宜してもよい。
【符号の説明】
【0125】
1…横編機、2、2A~2E…糸コーン、3…カメラ、4A~4C…画像処理装置、5A…学習済みモデル、5B1…第1の学習済みモデル、5B2…第2の学習済みモデル、5C…学習済みモデル、6A…機械学習装置、6B1…第1の機械学習装置、6B2…第2の機械学習装置、6C…機械学習装置、7…外部装置、8…端末装置、11A…下部フレーム、11B…上部フレーム、12…編針、13…ニードルベッド、14…キャリッジ、15…天板、16…張力付与装置、17…サイドテンション部、18…ヤーンフィーダ、20…編糸、21…芯部、30…カメラ撮像画像、31…任意数糸コーン撮像画像、33…単一糸コーン撮像画像、40…取得部、41…糸コーン状態検出部、42…モデル記憶部、43…出力処理部、50A…推論モデル、50B1…第1の推論モデル、50B2…第2の推論モデル、50C…推論モデル、51…入力層、52…中間層、53…出力層、60…学習用データセット取得部、61…学習用データセット記憶部、62…機械学習部、63…モデル記憶部、100…制御盤、101…操作表示盤、520…畳み込み層、521…プーリング層、522…全結合層