(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】平行サンプルビームを有する光学分光プローブにおける干渉を軽減するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
G01N21/65
(21)【出願番号】P 2022564685
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(86)【国際出願番号】 CA2020051804
(87)【国際公開番号】W WO2021134129
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2023-12-14
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522259706
【氏名又は名称】トルネード スペクトラル システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベーア,ブラッドフォード ビー.
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100955(JP,A)
【文献】実開昭49-076646(JP,U)
【文献】特表2019-513987(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0218558(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学分光プローブであって、
励起ファイバーと結合しそこからレーザエネルギーを受け平行励起光ビームを生成するための光学素子を有するプローブヘッドと、
前記プローブヘッドに隣接するサンプル光学系であって、
前記平行励起光ビームを受け、前記平行励起光ビームをサンプルに透過させ、前記サンプルから反射された少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームを収集するための2つの非平行面を備える少なくとも1つの光学素子を有する、前記サンプル光学系とを備える、前記光学分光プローブ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光学素子が、前記プローブヘッドと前記サンプルの間に配置されかつ実質的に平行化された励起光ビームを前記サンプルに透過させ前記サンプルから反射された少なくとも1つの実質的に平行化されたアフォーカル戻り散乱光ビームを、前記少なくとも1つの実質的に平行化されたアフォーカル戻り散乱光ビームから生成された結果として生じるスペクトルに干渉フリンジまたはエタロンパターンを誘導することなく受けるための互いに対して傾斜した2つの面を有する、少なくとも1つのくさび形窓を備える、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光学素子が、直列構成または並列構成に配置された複数のくさび形窓を備える、請求項2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光学素子が、前記プローブヘッドと前記サンプルの間に配置された少なくとも1つの発散レンズを備え、前記少なくとも1つの光学素子は、前記平行励起光ビームを前記サンプルへの透過中に発散させ前記少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームを受け、それによって、前記サンプルから反射された前記少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームから生成された結果として生じるスペクトルに干渉フリンジ/エタロンパターンを防ぐように適合された1つ以上の非平面を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光学素子が、直列構成または並列構成に配置された複数の発散レンズを備える、請求項4に記載のプローブ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの光学素子が、前記プローブヘッドと前記サンプルの間に配置された少なくとも1つのアキシコンレンズを備え、前記少なくとも1つのアキシコンレンズは、前記平行励起光ビームを前記サンプルへの透過中にアフォーカルに収束させ前記少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームを受け、それによって、前記サンプルから反射された前記少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームから生成された結果として生じるスペクトルに干渉フリンジ/エタロンパターンを防ぐように適合された1つ以上の円錐面を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの光学素子が、直列構成または並列構成に配置された複数のアキシコンレンズを備える、請求項6に記載のプローブ。
【請求項8】
前記サンプル光学系が、空間フィルタの両側に配置された第1の光学素子および第2の光学素子を有するリイメージャを備え、前記空間フィルタは、中間焦点に配置され、それによって、軸外光が前記プローブヘッドに入り、前記サンプルから反射された実質的に平行化されたアフォーカル戻り散乱光ビームから生成された結果として生じるスペクトルを汚染することを防ぐ、請求項1に記載のプローブ。
【請求項9】
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子が、前記空間フィルタから離間し、前記リイメージャに再結像率1:1を提供するような焦点距離を有する、請求項8に記載のプローブ。
【請求項10】
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子が、前記空間フィルタから離間し、(a)前記サンプルにおける前記平行励起ビームの直径を増大させる1:1よりも大きい、または(b)前記サンプルにおける前記平行励起ビームの直径を減少させる1:1よりも小さい再結像率をリイメージャに提供するような焦点距離を有する、請求項8に記載のプローブ。
【請求項11】
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子の少なくとも1つがレンズである、請求項8~10のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項12】
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子の少なくとも1つが、前記平行励起ビームを垂直軸に対して1軸に沿って再成形するような円柱レンズまたはトロイダルレンズである、請求項8~10のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項13】
前記光学素子の少なくとも1つが、曲面ミラー、アナモフィックプリズム、または、レンズとして機能し前記平行励起ビームに形状を変化させ、方向を変化させ、もしくは発散か収束させる別の光学素子である、請求項8~10のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項14】
前記サンプル光学系が、前記サンプル光学系のための密閉容積を提供しスペクトルキャリブレーション基準として用いるため分光計スペクトル範囲にスペクトル線またはスペクトル帯を有する少なくとも1つのガスを含むエンクロージャ内に含まれる、請求項8~13のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項15】
前記サンプル光学系が、前記サンプル光学系のための密閉容積を提供し前記サンプルのスペクトル計測との干渉を防ぐため分光計スペクトル範囲にスペクトル線またはスペクトル帯を有さない少なくとも1つのガスを含むエンクロージャ内に含まれる、請求項8~13のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項16】
前記サンプル光学系が、前記サンプル光学系のための密閉容積を提供し前記サンプルのスペクトル計測との干渉を防ぐため低密度ガスまたは有効真空を含むエンクロージャ内に含まれる、請求項8~13のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項17】
光学分光プローブであって、
励起ファイバーと結合しそこからレーザエネルギーを受け平行励起光ビームを生成するための光学素子を有するプローブヘッドと、
前記プローブヘッドに隣接するサンプル光学系であって、前記平行励起光ビームを受け、前記平行励起光ビームをサンプルに透過させ、前記サンプルから反射された少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームを収集するように適合された少なくとも1つの光学素子を有する、前記サンプル光学系とを備え、
前記少なくとも1つの光学素子は、両面によって内部反射される前記平行励起光ビームまたは前記少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームの一部が、それぞれ前記平行励起光ビームまたは前記少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームに対して角度を付けて傾斜することになるように配置された2つの面を有する、前記光学分光プローブ。
【請求項18】
請求項17に記載のプローブであって、さらに請求項8~16のいずれか1項にしたがって定義される、前記プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月31日に出願された米国仮特許出願番号第62/955,856号の利益を主張するものであり、米国仮特許出願番号第62/955,856号の全内容は本明細書に援用される。
【0002】
一般に光学分光法の分野に関し、より詳細には、サンプルをレーザビームで照射しサンプルから散乱して戻された光を収集する光学分光サンプルプローブの構成要素に関する様々な実施形態が本明細書に記載される。
【背景技術】
【0003】
ラマン分光法は、特定の波長を有するレーザ光子を含むレーザビームを用いてサンプルを照射し、サンプルは固体、結晶、液体、または気体形状であり得、レーザ光子のごく一部が、それらがサンプルの分子から散乱するとき異なる波長にシフトする分析方法である。波長シフト量は、サンプル分子の構造に依存する。したがって、異なるタイプのサンプル分子は、サンプルからの散乱光において異なる分光パターンを生成し、それを分析して、サンプルの化学的組成を識別かつ定量化することができる。しかしながら、ラマン散乱効果は非常に弱いため、波長によってシフトされた信号は通常、かなり微弱である。かくして、サンプルからの散乱光を可能な限り多く収集しながら、分光分析結果がサンプル全体を表すようにサンプルの十分に大きな面積または体積を照射もすることが有利である。
【0004】
市販のラマンシステムの大部分は、レーザビームをサンプルの小領域上に集中させるのに集光光学系を用い、これは、検出可能なラマン信号を増加させることができるが、いくつかの負の影響も生じさせる。例えば、レーザ加熱によりサンプルに損傷を与える可能性の増大、サンプル全体を表さない場合がある1つの小領域のみにおけるサンプルの計測、そして、光学焦点に対してサンプルを正しい位置に配置するという要件が加わることである。
【発明の概要】
【0005】
本明細書の教示の一態様によれば、励起ファイバーと結合してそこからレーザエネルギーを受け平行励起光ビームを生成するための光学素子を有するプローブヘッドと、プローブヘッドに隣接するサンプル光学系であって、平行励起光ビームを受け、平行励起光ビームをサンプルに透過させ、サンプルから反射された少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームを収集するための2つの非平行面を備える少なくとも1つの光学素子を有するサンプル光学系とを備える光学分光プローブが提供される。
【0006】
少なくとも一実施形態では、少なくとも1つの光学素子は、プローブヘッドとサンプルの間に配置されかつ実質的に平行化された励起光ビームをサンプルに透過させ、サンプルから反射された少なくとも1つの実質的に平行化されたアフォーカル戻り散乱光ビームを、少なくとも1つの実質的に平行化されたアフォーカル戻り散乱光ビームから生成された結果として生じるスペクトルに干渉フリンジまたはエタロンパターンを誘導することなく受けるための互いに対して傾斜した2つの面を有する少なくとも1つのくさび形窓を備える。
【0007】
少なくとも一実施形態では、少なくとも1つの光学素子は、直列構成または並列構成に配置された複数のくさび形窓を備える。
【0008】
少なくとも一実施形態では、少なくとも1つの光学素子は、プローブヘッドとサンプルの間に配置された少なくとも1つの発散レンズを備え、少なくとも1つの光学素子は、平行励起光ビームをサンプルへの透過中に発散させ少なくとも1つのアフォーカル戻り発散光ビームを受け、それによって、サンプルから反射された少なくとも1つのアフォーカル戻り発散光ビームから生成された結果として生じるスペクトルに干渉フリンジ/エタロンパターンを防ぐように適合された1つ以上の非平面を有する。
【0009】
少なくとも一実施形態では、少なくとも1つの光学素子は、直列構成または並列構成に配置された複数の発散レンズを備える。
【0010】
少なくとも一実施形態では、少なくとも1つの光学素子は、プローブヘッドとサンプルの間に配置された少なくとも1つのアキシコンレンズであり、少なくとも1つのアキシコンレンズは、平行励起光ビームをサンプルへの透過中にアフォーカルに収束させ少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームを受け、それによって、サンプルから反射された少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームから生成された結果として生じるスペクトルに干渉フリンジ/エタロンパターンを防ぐように適合された1つ以上の円錐面を有する。
【0011】
少なくとも一実施形態では、少なくとも1つの光学素子は、直列構成または並列構成に配置された複数のアキシコンレンズを備える。
【0012】
少なくとも一実施形態では、少なくとも1つの光学素子は、1つ以上のくさび形窓、1つ以上の発散レンズ、および1つ以上のアキシコンレンズの組み合わせを備え、少なくとも1つの光学素子は、平行励起光ビームをサンプルへの透過中にアフォーカルに収束させ少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームを受け、それによって、サンプルから反射された少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームから生成された結果として生じるスペクトルに干渉フリンジ/エタロンパターンを防ぐように適合された1つ以上の面を有する。
【0013】
少なくとも一実施形態では、サンプル光学系は、空間フィルタの両側に配置された第1の光学素子および第2の光学素子を有するリイメージャを備え、空間フィルタは、中間焦点に配置され、それによって、軸外光が、プローブヘッドに入ること、およびサンプルから反射された実質的に平行化されたアフォーカル戻り散乱光ビームから生成された結果として生じるスペクトルを汚染することを防ぐ。
【0014】
少なくとも一実施形態では、第1の光学素子および第2の光学素子は、空間フィルタから離間し、再結像率1:1をリイメージャに提供するような焦点距離を有する。
【0015】
少なくとも一実施形態では、第1の光学素子および第2の光学素子は、空間フィルタから離間し、(a)サンプルにおける平行励起ビームの直径を増大させる1:1より大きい、または(b)サンプルにおける平行励起ビームの直径を減少させる1:1より小さい再結像率をリイメージャに提供するような焦点距離を有する。
【0016】
少なくとも一実施形態では、第1の光学素子および第2の光学素子の少なくとも1つはレンズである。
【0017】
少なくとも一実施形態では、第1の光学素子および第2の光学素子の少なくとも1つは、平行励起ビームを垂直軸に対して1軸に沿って再成形するような円柱レンズまたはトロイダルレンズである。
【0018】
少なくとも一実施形態では、光学素子の少なくとも1つは、曲面ミラー、アナモルフィックプリズム、または、レンズとして機能し平行励起ビームに形状を変化させ、方向を変化させ、もしくは発散か収束させる別の光学素子である。
【0019】
少なくとも一実施形態では、サンプル光学系は、サンプル光学系のための密閉容積を提供しスペクトルキャリブレーション基準として用いるための分光計スペクトル範囲にスペクトル線またはスペクトル帯を有する少なくとも1つのガスを含むエンクロージャ内に含まれる。
【0020】
少なくとも一実施形態では、サンプル光学系は、サンプル光学系のための密閉容積を提供しサンプルのスペクトル計測との干渉を防ぐため分光計スペクトル範囲にスペクトル線またはスペクトル帯を有さない少なくとも1つのガスを含むエンクロージャ内に含まれる。
【0021】
少なくとも一実施形態では、サンプル光学系は、サンプル光学系のための密閉容積を提供しサンプルのスペクトル計測との干渉を防ぐため低密度ガスまたは有効真空を含むエンクロージャ内に含まれる。
【0022】
別の態様では、本明細書の教示によれば、励起ファイバーと結合しそこからレーザエネルギーを受け平行励起光ビームを生成するための光学素子を有するプローブヘッドと、プローブヘッドに隣接するサンプル光学系であって、平行励起光ビームを受け、平行励起光ビームをサンプルに透過させ、サンプルから反射された少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームを収集するように適合された少なくとも1つの光学素子を有するサンプル光学系とを備える光学分光プローブであって、少なくとも1つの光学素子は、少なくとも1つの光学素子が、平行励起光ビームまたは少なくとも1つのアフォーカル戻り散乱光ビームに対する共振空洞として本質的に機能しないように配置された2つの面を有する、光学分光プローブが提供される。
【0023】
少なくとも一実施形態では、プローブは、さらに、本明細書の教示によって規定される。
【0024】
本出願の他の特徴および利点は、添付の図面と以下の発明を実施するための形態を一緒に考慮すると明らかとなろう。しかしながら、本出願の精神および範囲内の様々な変更および変形はこの発明を実施するための形態から当業者に明らかであろうから、発明を実施するための形態および具体的な例は、出願の好ましい実施形態を示しているが、単なる例示として記載されると理解すべきである。
【0025】
本明細書に記載された様々な実施形態のより良い理解のために、かつ、これらの様々な実施形態が実行され得る方法をより明確に示すために、少なくとも1つの例示的な実施形態を示すここで記載されている添付図面を例として参照する。図面は、本明細書に記載された教示の範囲を限定する意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】主分析装置ユニット(レーザ、分光計、および電源を含む)、プローブ、制御コンピュータ間の関係を示す代表的なラマン分光システムの図である。
【
図2】典型的なプローブヘッドおよびサンプル光学系の構成の図である。
【
図3A】光の平行ビームがプローブヘッドを出ることおよび入ることを、干渉エタロンを誘導することなく可能にするくさび形窓を備えるサンプル光学系と、プローブヘッドの例示的な実施形態の図である。
【
図3B】光のビームがプローブヘッドを出ることおよび入ることを、干渉エタロンを誘導することなく可能とする弱発散レンズを備えるサンプル光学系と、プローブヘッドの例示的な実施形態の図である。
【
図3C】光のビームがプローブヘッドを出ることおよび入ることを、干渉エタロンを誘導することなく可能とするアキシコンレンズを備えるサンプル光学系と、プローブヘッドの例示的な実施形態の図である。
【
図4A】軸外光がプローブヘッドに入ることを防ぎながら、平行ビームを透過させる1:1光学リイメージャを備えるサンプル光学系と、プローブヘッドの例示的な実施形態の図である。
【
図4B】軸外光がプローブヘッドに入ることを防ぎながら、平行ビームを透過させ、また
図4Aのプローブヘッドのサンプル光学系と比べてサンプルのより大きな領域を計測するように平行励起ビームを拡大する2:1光学リイメージャを備える光学系を有するプローブの例示的な実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に記載された例示的な実施形態のさらなる態様および特徴は、添付図面と共に以下の記載から明らかとなろう。
【0028】
本明細書の教示による様々な実施形態が以下に記載されて、クレームされた主題の少なくとも一実施形態の例を提供する。本明細書に記載された実施形態のいずれも、クレームされた主題を限定するものではない。クレームされた主題は、以下に記載されたデバイス、システム、もしくは方法のいずれか1つの特徴の全てを有するデバイス、システム、もしくは方法にまたは本明細書に記載されたデバイス、システム、もしくは方法の複数もしくは全てに共通する特徴に限定されるものではない。いずれのクレームされた主題の実施形態でもない、本明細書に記載されたデバイス、システム、または方法が存在し得る可能性がある。本文書でクレームされていない本明細書に記載された任意の主題は、例えば継続特許出願といった別の保護文書の主題であり得、出願人、発明者または所有者は、本文書におけるその開示により公的な任意のそれら主題を放棄する、否認する、またはそれに専念する意図はない。
【0029】
例示の簡潔さおよび明瞭性のために、相当と認める場合、参照番号は、対応するまたは類似の要素を示すのに図において繰り返され得ることが理解されよう。さらに、多くの具体的な詳細が、本明細書に記載された実施形態の完全な理解を提供するために記載される。しかしながら、本明細書に記載された実施形態がこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることが当業者によって理解されよう。別の例では、よく知られている方法、手順、および構成要素は、本明細書に記載された実施形態を妨げないように、詳細が記載されていない。また、記載は、本明細書に記載された実施形態の範囲を限定するものとして見なされない。
【0030】
本明細書で用いる「結合された」または「結合している」という用語は、これらの用語が用いられる文脈によって異なるいくつかの意味を有し得ることにも留意されたい。例えば、結合されたまたは結合しているという用語は、機械的、光学的、または電気的な意味を有し得る。例えば、本明細書で用いる結合されたまたは結合しているという用語は、2つの要素もしくはデバイスが互いと直接接続され得る、または、特定の文脈に応じて電気信号、電気接続、機械要素、光学素子、もしくは光経路を介して1つ以上の中間要素もしくはデバイスを通して互いと接続され得ることを示し得る。
【0031】
本明細書で用いる「および/または」という単語は、論理和を表すことが意図されることにも留意されたい。すなわち、例えば「Xおよび/またはY」といった表現は、XまたはYまたは両方を一般に意味することが意図される。さらなる例として、「X、Y、および/またはZ」といった表現は、XまたはYまたはZまたはそれらの任意の組み合わせを一般に意味することが意図される。
【0032】
本明細書で用いる「実質的に」、「約」、および「おおよそ」といった程度についての用語は、最終的な結果が大幅に変わらないような、修飾される用語の合理的な量の偏差を意味することに留意されたい。これらの程度についての用語はまた、例えば、この偏差が、修飾する用語の意味を打ち消さない場合、1%、2%、5%、または10%といった、修飾される用語の偏差を含むとして解釈され得る。
【0033】
さらに、本明細書のエンドポイントによる数字範囲の詳述は、その範囲内に包含される全ての数および分数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5を含む)。また、その全ての数および分数は、例えば1%、2%、5%、または10%といった、最終的な結果が大幅に変わらない場合参照されている数の特定の量までの変化を意味する用語「約」によって変更されると推定されることも理解されよう。
【0034】
一態様では、本教示は、研究中のサンプルと干渉するラマン分析装置システムの光学的かつ機械的サブシステムであるラマン「プローブ」の実装における新規の概念を提供する。多くのラマン分析装置システム(
図1に示されたラマンシステム100などの)では、プローブ102は、レーザエネルギーを分析装置ユニット104からプローブ102に伝えるための1つ以上の「励起ファイバー」106およびサンプル110からプローブ102によって収集された散乱光信号を分析装置ユニット104に伝えるための1つ以上の「収集ファイバー」108という複数の光学ファイバーケーブルを介して、主分析装置ユニット104に接続されている。
【0035】
プローブ102はさらに、
図2に示すように「プローブヘッド」102hと「サンプル光学系」102oという2つの広い部分に分割される。プローブヘッド102hは、通常、励起ファイバー106から提供された発散レーザ光ビームを平行にしこの平行ビームをサンプル光学系102oに向かわせるための光学素子を含み、それは、この例では、励起コリメータおよび折り曲げミラーである。プローブヘッド102h内の他の光学素子は、サンプル光学系102oから戻ってきた散乱光の少なくとも1つの平行ビームを受けフィルタリングして非ラマン散乱光を除去するためのダイクロイックフィルタ、およびフィルタリングされた散乱戻り光を次いで収集ファイバー108内へとフォーカスさせるための収集フォーカス装置を含む。
【0036】
サンプル光学系102o(対物光学系または非接触光学系と称されることもある)において、現在の技術水準は、一般に、単一の平凸レンズまたは両凸レンズを伴う。これらのタイプのラマンプローブサンプル光学系では、レンズは、球体の一部である1つ以上の面、または完全な球体であるレンズを有する。そのような光学素子は、光学素子が完全な球体を備えないときでも、当業者には「球面光学系」と呼ばれる。
【0037】
いくつかの分光計測用途において、励起光が、サンプル110の相対的に大きな面積または体積を照射することが有利である。この目標は、サンプル110が平行励起光ビームによって直接照射され、この光の一部が、サンプル110から後方散乱されて実質的に平行化されたアフォーカル戻り散乱光ビームを生成し、それが、プローブヘッド内に戻り、これらの戻りビームのうちの少なくとも1つが、プローブヘッド102hの内部光学系によって収集ファイバー108上に収集されるように、集光サンプル光学系を完全に除去することによって具現化され得る。サンプル110から散乱した他の全ての光ビームは、他の場所で吸収または反射され、かくして、収集ファイバー108によって計測のため分析装置分光計に透過されない。この光学構成は通常、サンプル110からの後方散乱光を、集光された分光プローブができるほどはキャプチャすることはできないが、照射されている、サンプル110のより大きな面積(不透明サンプルの場合)またはより大きな体積(透明サンプルの場合)は、後方散乱光を分析する分光分析装置システムが、サンプル110の小さく潜在的に非代表的な領域上に集光するのではなく、全体としてサンプル110のより代表的な表示を得ていることを意味する。
【0038】
さらに、平行励起ビームは当然のことながら、焦点または焦点面を有さないので、サンプル110からの後方散乱光は、大面積の作動距離にわたって実質的に一定となり、それは、サンプル110とサンプル110に最も近いサンプル光学系102oの面の間の直線距離である。集光分光プローブでは、一方、スペクトル信号、すなわち、プローブによって収集され分光計に送り戻される、サンプル110からの後方散乱光の一部は、サンプル110の位置が変わるにつれて、大きく変動するだろう。そのような場合、サンプル110がサンプル光学系102oの焦点にあるときに、信号強度は、一般に、最大となり、サンプル光学系102oの焦点から離れた方向にサンプル110を移動させると、測定信号量は減少するだろう。集光サンプル光学系のこの態様は、粗いまたは不規則な表面を有する固体サンプル、粉状の固体サンプル、ペレット、もしくはビーズ形状、または励起ビームが静止位置におけるサンプル110と交差しない任意の他のシナリオのスペクトル計測を行うときに非常に問題となり得る。そのような状況では、平行励起ビームは、サンプル110のはるかにより一貫したかつ信頼できる測定を提供し得ることが当業者に知られている。なぜなら、平行励起ビームは、プローブ102とサンプル110の間の距離に関わらず、実質的に同じサイズおよびサンプル110上での照射パターンを維持し、かくして、スペクトル信号は、サンプル110が位置を変えるにつれて大幅には変わらないからである。
【0039】
出射する平行励起ビームおよび少なくとも1つの入射する実質的に平行化されたアフォーカル戻り散乱光ビーム(すなわち、収集ビーム)は、介在光学素子なしで、プローブヘッド102hとサンプル110の間を直接進み得るが、実世界の多くの環境では、サンプルまたは汚染物質がプローブヘッド102h内に進むことそしてプローブヘッド102h内に含まれる光学素子に悪影響を与えることを防ぐために、光学窓または他の保護面が用いられる。しかしながら、平行する面を備える平坦な窓は、ファブリペローエタロンと同種の共振空洞として作用し得、励起ビームまたは収集ビームのいくつかの波長が他の波長よりも効率的に透過されるようになる。
【0040】
エタロンは、2つの反射ガラス板を有し、生成する干渉に基づく光の波長のわずかな差を計測するのに用いられるものであり、いくつかの光学計測状況において有用な分析機能を提供することができるが、ラマン分光法にとって有害である。光学窓の一面または両面上の反射防止膜の場合でも、このエタロンまたは「フリンジ」現象は、励起ビームの透過スペクトルまたは収集ビームの計測スペクトルに周期的なリップルを誘導し、スペクトルデータの解釈を複雑にする。
【0041】
この有害な効果を防ぐために、少なくとも1つの光学素子が用いられ、本明細書の教示によれば、それは、出射するまたは入射する平行ビームに対する共振空洞として本質的に機能しない。ここで
図3Aを参照すると、互いに対して平行とならないように互いと角度を付けて意図的に製造されている、実質的に平坦な正面および背面を有するくさび形窓203を含むサンプル光学系202oを有するプローブ202の1つの例示的な実施形態が示される。くさび形窓203の2つの面からの平行励起ビームの内部反射は、初期平行励起ビームに対して角度を付けて傾斜し、任意の干渉フリンジは、平行励起ビームの直径にわたって平均化する傾向がある。同様に、くさび形窓203の2つの面からの戻ってくる実質的に平行化されたアフォーカル散乱光ビーム(すなわち、サンプル110によって反射された収集ビーム)の少なくとも1つの内部反射は、初期収集ビームに対して角度を付けて傾斜し、任意の干渉フリンジは、収集ビームの直径にわたって平均化する傾向がある。くさび形窓203は、一般に、平行励起ビーム(サンプルビームとも称され得る)よりも大きく、平行サンプルビームが、部分的にブロックされることなくそれを通って通過することを可能にするものであり、くさび形窓203は、サンプル110の温度、圧力、または他の特性に応じて、薄い(約<1mm)、厚い(約>20mm)、または何らかの中間の厚さで変動し得る。例えば、より厚いくさび形窓は、より強くなり、かくして、より高い圧力に耐性を有する可能性があり、または、プローブヘッドの残りの部分を高温のサンプルから保護するようなより大きな熱耐性を有するだろう。プローブ自体はまた、プローブが暴露されることが予想されるサンプル/計測環境の温度、圧力、および他の特性に応じて異なる厚さの窓とともに実装され得る。
【0042】
くさび形窓203の面の面平坦性は、必須ではないが、平行光ビームの1より少ない波長の面変化が、通常、光学構成要素に対して好まれる。くさびの角度(すなわち、くさび形窓203の正面と背面の間の角度)は、好ましくは、干渉効果を低減させるのに十分に大きく、通常約0.25~2.0度であるが、計測シナリオの要件に応じて他の角度が可能である。非常に大きなくさびの角度により、平行サンプルビームと実質的に平行化されたアフォーカル戻り散乱光ビームの少なくとも1つの間の発散角の差が引き起こされ得るが、この効果は、ほとんどの場合最小となろう。他の実施形態は、2つ以上のくさび形窓を、これらの構成が具体的な計測シナリオにおいて有利な場合、並列にまたは直列に利用し得る。例えば、くさび形窓が直列配置されるとき、くさび形窓は、励起ビームおよび戻り収集ビームの少なくとも1つが順にくさび形窓の各々を通って進むように配置されること、そして、複数の窓の面のいずれも他の面と実質的に平行でないこと(すなわち、くさび形窓の垂直軸が互いから水平にオフセットすること)を確実にする(さもなければ、干渉フリンジが生じ得る)こと以外に厳しい配置要件はない。別の例として、くさび形窓が並列配置されるとき、並んで配置された2つ以上のくさび形窓が存在し得、くさび形窓の各々が、サンプルビームまたは戻り光ビームの少なくとも1つの一部がそれを通過することを可能とする。
【0043】
ここで
図3Bを参照すると、平行サンプルビームを、サンプル110に向かって伝搬するにつれてわずかに発散させる1つ以上の曲面を有する窓を含むサンプル光学系302oを有するプローブ302の別の例示的な実施形態が示されている。この例示的な実施形態では、窓は、発散レンズ303と称され得る。少なくとも1つの発散レンズの面の曲率は、好ましくは、干渉効果を防ぐのに十分に大きいが、平行サンプルビームが、通常の使用で予測される様々なサンプル位置の範囲にわたって過度に発散することを防ぐのに十分に小さい。例えば、発散レンズ303は、サンプル光学系302oからサンプル110までが0~50mmのサンプル位置の範囲に対して、100mmの曲率の面半径を有し得る。代替として、サンプル光学系302oにおいて直列にまたは並列に複数の発散レンズを用いることもできる。そうした代替実施形態では、直列構成および並列構成における発散レンズの構成は、くさび形窓の直列構成および並列構成に対して記載された通りである。
【0044】
図3Cをここで参照すると、当業者に「アキシコンレンズ」353として知られる、1つ以上の円錐面を有する窓を含むサンプル光学系352oと、プローブヘッド352の別の例示的な実施形態が示される。アキシコンレンズ353は、それに沿って平行励起ビームが伝搬される軸の周りでくさびが回転対称である別のタイプのくさび形窓として見なすことができる。したがって、アキシコンレンズ353は、円錐形を有する。アキシコンレンズ353を通過後、実質的に平行化された励起ビームは、光線が複数の非平行方向にアキシコン面によって屈折されるので、もはや平行化されているとは見なされないが、アキシコンレンズ353を通過しサンプル110に向かって進んだ励起ビームは、収束しないのでまだアフォーカルでありソースの画像を生成する。アキシコンレンズ353の円錐面(複数可)は、内部反射が反射ビーム(実質的に平行化された励起ビームまたはサンプル110から散乱されたアフォーカル戻り収集ビームの少なくとも1つのいずれかからの)の一部が複数の様々な方向に行くという結果をもたらすので、コヒーレント内部反射が、エタロン効果を生むことを防ぐだろう。例として、アキシコンレンズ303は、プローブヘッド352の遠位端(サンプル110に最も近接している)とサンプル110の位置の間の予想される距離に応じて、約179.9~90度の内部角度(円錐の一側と円錐の他方側の間で測定された角度)を有し得る。アキシコン窓またはレンズ353は、平行サンプルビームを収束させ得るが、光源(すなわち、励起光ファイバー)の焦点画像は、この光学構成によって形成されず、アフォーカル励起ビームの利点は維持される。いくつかの実施形態では、複数のアキシコンレンズが直列にまたは並列に用いられ得る。そうした代替実施形態では、直列構成および並列構成のアキシコンレンズの構成は、くさび形窓の直列構成および並列構成に関して記載された通りである。
【0045】
さらに、代替実施形態では、アキシコン窓、くさび形窓、および/または、発散窓は、一緒に直列構成または並列構成で用いられ得、一面が凹状そして他面が円錐状である窓といった、さらなる代替実施形態で同一の光学素子内で組み合わされる場合もある。
【0046】
図3A、3B、および3Cそれぞれのくさび形窓(複数可)203、発散窓(複数可)303、またはアキシコン窓(複数可)353のいずれでもない他の代替実装例は、(a)一面または両面上に非常に不良な表面平坦性(平行サンプルビームに対して約10以上の波長の表面変化といった)、(b)屈折率の内部変動(例えば、約0.01以上の屈折率の変化)、または(a)と(b)の両方を有する窓を用いて、平行サンプルビームの建設的干渉および相殺的干渉を軽減することを含む。しかしながら、これらの代替実施形態は、そうした表面平坦性または屈折率の変動は再現可能に製造することが難しい場合があるので、そこまで好ましくはない場合がある。
【0047】
従来のプローブを用いる際、実質的に平行化された励起ビームを介した励起およびサンプル110から散乱された平行化されたかつ/またはアフォーカル光ビームの収集に関連する別の潜在的な問題は、望まない軸外光線が、プローブヘッド102hに入り、サンプル110からの後方散乱光のスペクトル計測と干渉し得ることである。例えば、
図2に関して、分光プローブ102hが周囲背景光を有する位置で用いられている場合、この背景光は、サンプル光学系102oを通ってプローブシステム102に入り、収集ファイバー108内に透過され得る。サンプル110から反射している(レイリー散乱を介して)シフトされていないレーザ光も、サンプル光学系102oを通って進み、プローブヘッド102h内のダイクロイックフィルタおよび/またはレーザブロッキングフィルタに到達し得る。これらのフィルタは、特定の小範囲の入射角内のフィルタで受けられた光に対してのみ適切に機能するので、軸外レーザ光は、フィルタを通過し(軸上レーザ光のように吸収または反射されるのではなく)、スプリアススペクトル信号を生成し得る。
【0048】
別の態様では、本明細書の教示によれば、軸外光を抑制するのを助けるために、光学分光プローブに、入射平行ビームを中間焦点に集中させ、ビームが当該中間焦点後に再発散することを可能とし、次いでビームを再平行化するリイメージャリレーを備えるサンプル光学系が設けられる。例えば、ここで
図4Aを参照すると、小さな物理的ピンホール412pまたは中間焦点面412と実質的に同一の位置にある他の開口を備えるサンプル光学系402oを有するプローブヘッド402の例示的な実施形態が示される。リイメージャリレーへ軸上である光は、ピンホール開口412p内に集中され、かくしてそこを通過し、一方、軸外光は、ピンホール開口412pの不透明部分上に集中され、それがプローブヘッド402hに入らないように吸収または反射されるだろう。好ましい実施形態では、ピンホール開口412pを有する壁を構成するのに用いられる材料は、それ自体がスペクトル信号を生成しないステンレス鋼またはアルミニウムといった物質であり得、物質に衝突する励起光がスプリアススペクトル信号を生成しないようにする。再結像光学素子およびピンホール開口を有するこの種の光学的構成は、「空間フィルタ」と称され得る。空間フィルタの第1の面に入射する平行ビームを受けかつ空間フィルタの第2の面上のサンプルからの実質的に平行化されたアフォーカル戻り散乱光ビームの少なくとも1つを受け、第1の面と第2の面は互いと対向して配置される空間フィルタが、分光プローブにおいて今まで用いられたことはない。
【0049】
図4Aの例示的な実施形態では、プローブヘッド402hは、サンプル光学系402oの近位部に配置された、プローブヘッド402hに向かって対面する凸面を有する第1の収束レンズ404と、サンプル110に向かって対面する凸面を有するサンプル光学系402oの遠位部の第2の収束レンズ406の間の中間に配置された空間フィルタを備え、それによって、サンプル光学系402o内に配置された1:1比のリイメージャリレーを実装する。
【0050】
しかしながら、代替実施形態では、サンプル光学系のリイメージャリレーに用いられるレンズまたはミラーの焦点距離を変えることによって、平行ビームをサンプル110の位置において大きくしたりまたは小さくしたりすることが有利となり得る。例えば、
図4Bをここで参照すると、サンプル光学系502oに配置された2:1リイメージャ構成を有するプローブ502の例示的な実施形態が示されている。2:1リイメージャ構成は、中間焦点面512から距離f離れて配置された焦点距離f
1を有する第1の収束レンズ504、および2fである焦点距離f
2を有し中間焦点面512から距離2f離れて配置された第2の収束レンズ506を含む。第2の収束レンズ506は、第1の収束レンズ504よりも約2倍大きく、2:1リイメージャリレーはそれによって、サンプル110上に照らされる平行励起ビームのサイズを2倍大きくする。他の実施形態では、X:1リイメージャリレーが用いられ得、Xは0よりも大きい任意の数である。
【0051】
代替として、他の実施形態では、円柱もしくはトロイダル光学素子(レンズ、ミラー、またはレンズとミラーの組み合わせのいずれか)、1つ以上のプリズム、または他の光学素子を用いて、先に記載したリイメージング効果に加えて、平行ビームの寸法をアナモフィックに変えることもできる。それによって、平行励起ビームは、垂直寸法に沿ってよりも第1の寸法に沿って大きく、プローブヘッドの内部光学系によって収集ファイバー上に集中される実質的に平行化されたアフォーカル戻り散乱光ビームの少なくとも1つは、同様に、垂直寸法に沿ってよりも同じ第1の寸法に沿って大きいものとなる。この例は、円形平行励起ビーム(すなわち、円形断面を有する)を楕円形平行励起ビーム(すなわち、楕円の水平または垂直断面を有する)に、または、正方形平行励起ビームを矩形平行励起ビームに変化させることを含む。例えば、
図4Bを参照すると、サンプル光学系502oの両方の収束レンズ504および506が球面レンズから円柱レンズに変えられ、各円柱レンズは置き換えようとしている球面レンズと同一の焦点距離を有するものであり、ピンホール512pがスリット開口で置き換えられる場合、平行励起ビームは、2つのレンズの回転方位に応じて、サンプル光学系502oに入っていくビームの高さの2倍の高さだが幅は同一またはその逆(すなわち、幅が2倍で高さは同じ)で、サンプル110へ向かってサンプル光学系502oを出得る。ビームの断面形状が、次いで、プローブヘッド502h内部の光学素子を再設計または再配置することなく、所与のサンプルまたは容器の寸法に最も適切な具体的なフォーマットに適合され得、有用な柔軟性を提供する。
【0052】
リイメージャ構成の1つの他の態様は、本明細書の教示によれば、再結像レンズを含むサンプル光学系のエンクロージャハウジング内に位置する任意のガス、特に中間焦点(ピンホール開口の位置と一致)におけるガスが、励起ビームに応じて、さらなるスペクトル信号を生成し得ることである。場合によっては、このさらなるスペクトル信号は、スペクトル計測システムをキャリブレーションするのに有用であり得る。
【0053】
例として、窒素ガス(N2)は、2,331cm-1、線または帯を通常欠いているラマンスペクトルの領域にラマンピークを有する。分光計がこのN2線からのデータ加えてサンプル110のラマン線からのデータを同時に収集することができる場合、この線のピーク高さおよびスペクトル位置を用いて、励起レーザの出力および波長が一定のままであることを検証する、またはレーザのそのような任意の変化を補正するために適切な情報を提供することができる。したがって、この場合、サンプル光学系は、サンプル光学素子に対する密閉容積を提供しスペクトルキャリブレーション基準として用いることができる分光計スペクトル範囲にスペクトル線またはスペクトル帯を有する少なくとも1つのガスを含むエンクロージャ内に含まれる。
【0054】
別の例として、大気中の窒素または酸素からのラマン帯がサンプル110のラマン帯と干渉する場合、リイメージャエンクロージャの内部(2つのレンズの間)は、プローブのサンプル光学系セクション内からスペクトル信号が生成されないように、密封密閉されアルゴンなどの分光学的不活性ガスで充填され得、または、真空を形成するようにポンプアウトさえされ得る。したがって、この場合、サンプル光学系は、サンプル光学素子に対する密閉容積を提供し、(a)サンプルのスペクトル計測と干渉し得る分光計スペクトル範囲にスペクトル線またはスペクトル帯を有さない少なくとも1つのガス、または(b)サンプル110のスペクトル測定との干渉を防ぐため低密度ガスもしくは効率真空を含むエンクロージャ内に含まれる。
【0055】
本明細書に記載された様々な例示的な実施形態は、一般に、サンプル110を照射するのに非集中平行励起ビームを用いるものであり、このことは、励起ビームが、典型的な集中スポット(例えば、通常、サイズ約1マイクロメートル~1mm)よりも大きな(例えば、サイズ約1mm~100mm以上)断面寸法を有することを意味することに留意すべきである。これら励起ビームのより大きなサイズおよび平行化性質は、以下に限定するものではないが、(1)サンプル110にレーザ加熱を介して損傷を与える可能性を増大させ得る、サンプル110の小領域上へのレーザビームの集中を回避すること、(2)サンプル110を、サンプル110全体をより表し得るより大きな領域にわたって計測すること、および(3)計測されたスペクトル信号を実質的に変えることなく、サンプル110が、サンプル光学焦点に対するある範囲の位置内のどこかに配置されることを可能にすることの少なくとも1つといった、多くのタイプのラマン計測に対する特定の利点を提供する。
【0056】
本明細書に記載された出願人の教示は例示的な目的で様々な実施形態と関連するが、本明細書に記載された実施形態は例であることが意図されるので、出願人の教示はそのような実施形態に限定されることは意図されない。一方、本明細書に記載、例示された出願人の教示は、本明細書に記載された実施形態から逸脱せずに、様々な代替、変形、および等価物を包含するものであり、その全体範囲は添付の特許請求の範囲において規定される。