(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】積層体、リチウムイオン二次電池用の負極集電体、及びリチウムイオン二次電池用の負極
(51)【国際特許分類】
B32B 15/01 20060101AFI20241220BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20241220BHJP
C25D 5/14 20060101ALI20241220BHJP
C25D 7/06 20060101ALI20241220BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
B32B15/01 H
B32B15/20
C25D5/14
C25D7/06 A
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2022577040
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2021046593
(87)【国際公開番号】W WO2022158188
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2021007180
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】堀川 雄平
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】垣内 拓也
(72)【発明者】
【氏名】柳田 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】内藤 悠基
(72)【発明者】
【氏名】田代 崇宏
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-077462(JP,A)
【文献】特開平02-194182(JP,A)
【文献】特開2015-114690(JP,A)
【文献】特開2015-170561(JP,A)
【文献】特開2019-186134(JP,A)
【文献】特開2005-197205(JP,A)
【文献】特開2020-180366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
H01M4/00-4/62
C23C18/00-20/08
C25D5/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を含む第一金属層と、
ニッケルを含み、前記第一金属層に直接積層された第二金属層と、
を備え、
前記第二金属層の第一表面は、前記第一金属層に接する面であり、
前記第二金属層の第二表面は、前記第一表面の裏面であり、
前記第二金属層の厚み方向は、前記第一表面に略垂直であり、且つ前記第一表面から前記第二表面へ向かう方向であり、
前記第二金属層におけるニッケルの含有率の単位は、質量%であり、
前記第二金属層におけるニッケルの含有率は、前記厚み方向に沿って増加
し、
前記第一金属層の厚みは、T1と表され、
前記第二金属層の厚みは、T2と表され、
T2/T1は、0.6以上1.0以下である、
積層体。
【請求項2】
前記第二金属層は、リン及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含む、
請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第二金属層は、前記厚み方向において積層された複数のニッケル含有層からなり、
前記複数のニッケル含有層其々におけるニッケルの含有率は、互いに異なる、
請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第二金属層におけるニッケルの含有率は、前記第一表面の近傍において最も低く、前記厚み方向に沿って段階的に増加し、前記第二表面の近傍において最も高い、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記第二金属層におけるニッケルの含有率は、前記第一表面の近傍において最も低く、前記厚み方向に沿って連続的に増加し、前記第二表面の近傍において最も高い、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の積層体を備える、
リチウムイオン二次電池用の負極集電体。
【請求項7】
請求項
6に記載の負極集電体と、
負極活物質を含む負極活物質層と、
を備え、
前記負極活物質層は、前記第二金属層の前記第二表面に直接積層されている、
リチウムイオン二次電池用の負極。
【請求項8】
前記負極活物質は、ケイ素を含む、
請求項
7に記載の負極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体、リチウムイオン二次電池用の負極集電体、及びリチウムイオン二次電池用の負極に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池用の負極集電体は、負極集電体に積層された負極活物質層の体積が充放電に伴って変動することに因り、繰り返しの負荷(圧縮応力及び引張応力)を受ける。この負荷に因る負極集電体の変形は、電池本体の変形又は電極間のショートを引き起こす。したがって、負極集電体には負荷(特に引張応力)に対する耐久性(高い引張強度)が求められる。例えば、下記特許文献1は、抗張力を有する負極集電体として、電極箔と硬質ニッケルめっき層とが積層された負極集電体を開示している。下記特許文献2は、割れや千切れを抑制するための十分な強度を有する集電体として、銅からなる第一金属層と、ニッケル又はニッケル合金からなる第二金属層とが積層された集電体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005‐197205号公報
【文献】特開2019‐186134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の金属層から構成される積層体が引張応力を受ける場合、亀裂(crack)が金属層中に形成され、亀裂が拡張及び進展する。亀裂の拡張及び進展に因り、金属層又は積層体が破断してしまう。
【0005】
本発明の一側面の目的は、高い引張強度を有する積層体、当該積層体を含むリチウムイオン二次電池用の負極集電体及び負極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る積層体は、銅を含む第一金属層と、ニッケルを含み、第一金属層に直接積層された第二金属層と、を含み、第二金属層の第一表面は、第一金属層に接する面であり、第二金属層の第二表面は、第一表面の裏面であり、第二金属層の厚み方向は、第一表面に略垂直であり、且つ第一表面から第二表面へ向かう方向であり、第二金属層におけるニッケルの含有率の単位は、質量%であり、第二金属層におけるニッケルの含有率は、厚み方向に沿って増加する。
【0007】
第二金属層は、リン及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含んでよい。
【0008】
第二金属層は、厚み方向において積層された複数のニッケル含有層からなっていてよく、複数のニッケル含有層其々におけるニッケルの含有率は、互いに異なってよい。
【0009】
第一金属層の厚みは、T1と表され、第二金属層の厚みは、T2と表され、T2/T1は、0.6以上1.0以下であってよい。
【0010】
第二金属層におけるニッケルの含有率は、第一表面の近傍において最も低くてよく、厚み方向に沿って段階的に増加してよく、第二表面の近傍において最も高くてよい。
【0011】
第二金属層におけるニッケルの含有率は、第一表面の近傍において最も低くてよく、厚み方向に沿って連続的に増加してよく、第二表面の近傍において最も高くてよい。
【0012】
本発明の一側面に係るリチウムイオン二次電池用の負極集電体は、上記の積層体を含む。
【0013】
本発明の一側面に係るリチウムイオン二次電池用の負極は、上記の負極集電体と、負極活物質を含む負極活物質層と、を含み、負極活物質層は、第二金属層の第二表面に直接積層されている。
【0014】
負極活物質は、ケイ素を含んでよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によれば、高い引張強度を有する積層体、当該積層体を含むリチウムイオン二次電池用の負極集電体及び負極が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体(負極集電体)、及び当該積層体を含む負極の模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、第二金属層におけるニッケルの含有率の分布の一例を示すグラフである。
【
図3】
図3は、第二金属層におけるニッケルの含有率の分布の他の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、積層体の引張強度を評価するための屈曲試験の概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態が説明される。図面において、同等の構成要素には同等の符号が付される。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本実施形態に係る積層体は、リチウムイオン二次電池用の負極集電体である。
図1に示されるように、本実施形態に係る積層体10は、第一金属層1及び第二金属層2を有する。第一金属層1は、銅(Cu)を含む。第二金属層2は、ニッケル(Ni)を含む。
図1に示される積層体10の場合、第二金属層2は、第一金属層1の両方の表面に直接積層されている。ただし、第二金属層2は、第一金属層1の一方の表面のみに直接積層されてもよい。第二金属層2の第一表面S1は、第一金属層1に接する面である。第二金属層2の第一表面S1は、第一金属層1と第二金属層2との間の界面と言い換えられてよい。第二金属層2の第二表面S2は、第一表面S1の裏面である。第二金属層2の厚み方向Dは、第一表面S1に略垂直であり、且つ第一表面S1から第二表面S2へ向かう方向である。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用の負極20は、積層体10(負極集電体)及び負極活物質層3を有する。負極活物質層3は、負極活物質を含む。負極活物質層3は、各第二金属層2の第二表面S2に直接積層されている。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、負極20、正極、セパレータ及び電解液を含んでよい。セパレータ及び電解液は、負極20及び正極の間に配置される。電解液はセパレータを透過する。正極は、正極集電体と、正極集電体に積層された正極活物質層とを含んでよい。例えば、正極集電体は、アルミニウム箔又はニッケル箔であってよい。正極活物質層は、正極活物質を含む。例えば、正極活物質は、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMnO
2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn
2O
4)、LiNi
xCo
yMn
zM
aO
2(x+y+z+a=1、0≦x<1、0≦y<1、0≦z<1、0≦a<1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn及びCrからなる群より選ばれる一種類以上の元素である。)、リチウムバナジウム化合物(LiV
2O
5)、オリビン型LiMPO
4(Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al及びZrより選ばれる一種類以上の元素、又はVOである。)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、LiNi
xCo
yAl
zO
2(0.9<x+y+z<1.1)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン及びポリアセンからなる群より選ばれる一種以上の化合物であってよい。正極活物質層は、炭素又は金属粉等の導電助剤を更に含んでよい。正極活物質層は、バインダー(接着剤又は樹脂)を更に含んでよい。セパレータは、電気的絶縁性を有する多孔質の高分子からなる一つ以上の膜(フィルム又は積層体)であってよい。電解液は、溶媒及び電解質(リチウム塩)を含む。溶媒は、水又は有機溶媒であってよい。例えば、電解質(リチウム塩)は、LiPF
6、LiClO
4、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiCF
3CF
2SO
3、LiC(CF
3SO
2)
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3CF
2SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)、LiN(CF
3CF
2CO)
2及びLiBOBからなる群より選ばれる一種以上のリチウム化合物であってよい。
【0020】
第二金属層2におけるNiの含有率の単位は、質量%である。第二金属層2におけるNiの含有率は、第二金属層2の厚み方向Dに沿って増加する。つまり、第二金属層2におけるNiの含有率は、第一表面S1の近傍において最も低く、第一表面S1から第二表面S2に向かって徐々に又は段階的に増加し、第二表面S2の近傍において最も高い。
図2のグラフは、第二金属層2におけるNiの含有率の分布の一例を示す。
図2のグラフの横軸は、第二金属層2の厚み方向Dにおける第一表面S1からの距離dである。
図2のグラフの縦軸は、第二金属層2において第一表面S1からの距離がdである位置におけるNiの含有率([Ni])である。
図2に示されるように、第二金属層2におけるNiの含有率は、厚み方向Dに沿って連続的に(徐々に)増加してよい。第二金属層2におけるNiの含有率の分布は、直線で表されてよい。第二金属層2におけるNiの含有率の分布は、曲線で表されてもよい。
【0021】
第二金属層2におけるNiの含有率が厚み方向Dに沿って増加することにより、積層体10は高い引張強度を有することができる。引張強度とは、第二金属層2の表面に平行な方向における引張応力に対する積層体10の耐久性を意味する。積層体10が高い引張強度を有するメカニズムは、下記の通りである。ただし、下記のメカニズムは仮説であり、本発明の技術的範囲は下記のメカニズムによって限定されるものではない。
【0022】
積層体10は、第一金属層1のみならず第一金属層1に積層された第二金属層2を有するので、積層体10は、Cuを含む一つの金属層のみからなる従来の集電体よりも高い引張強度を有することができる。ただし、積層体10の高い引張強度は積層構造だけではなく、第二金属層2において厚み方向Dに沿って増加するNiの含有率にも起因する。
第二金属層2におけるNiの含有率が高いほど、第二金属層2の弾性率は低い。第二金属層2の弾性率が低いほど、第二金属層2は軟らかい。したがって、第二金属層2の弾性率が低いほど、第二金属層2は引張応力に応じて変形し易く、第二金属層2の変形に伴う第二金属層2における亀裂及び破断が抑制され易い。
一方、第二金属層2におけるNiの含有率が低いほど、第二金属層2の弾性率は高い。第二金属層2の弾性率が高いほど、第二金属層2は硬い。したがって、第二金属層2の弾性率が高いほど、第二金属層2は引張応力に応じて変形し難く、第二金属層2の変形に伴う第二金属層2における亀裂及び破断が起き易い。
第二金属層2におけるNiの含有率は厚み方向Dに沿って増加するので、第二金属層2の弾性率は厚み方向Dに沿って低下する。つまり、第二金属層2の弾性率は第一表面S1の近傍において最も高く、第一表面S1から第二表面S2に向かって徐々に又は段階的に低下し、第二表面S2の近傍において最も低い。したがって、第二金属層2において弾性率が最も低い第二表面S2が負極活物質層3に接する。その結果、負極活物質層3の体積変動に因って繰り返し第二表面S2へ作用する引張応力に応じて、第二金属層2が変形し易く、第二金属層2の変形に伴う第二金属層2における亀裂及び破断が抑制される。つまり、負極活物質層3の体積変動に因って変形し易い第二表面S2側は、変形に伴う亀裂及び破断を抑制するために充分に低い弾性率を有し、負極活物質層3の体積変動の影響を受け難い第一表面S1側は、十分な硬さ(高い弾性率)を有しているので、第二金属層2全体の十分に高い引張強度が達成される。換言すれば、第二金属層2の弾性率が第一表面S1から第二表面S2に向かって徐々に又は段階的に低下することにより、負極活物質層3の体積変動に因って第二金属層2に作用する応力が分散し、第二金属層2の変形に伴う第二金属層2における亀裂及び破断が抑制される。
【0023】
リチウムイオン二次電池のエネルギー密度の増加のために、電池のパッケージに収容された負極は、セパレータ、電解質及び正極と積層された状態で、ロール状に巻かれたり、折り曲げられたりする。負極を構成する積層体(負極集電体)において折り曲がった部分には応力が作用し易いので、従来の積層体において折り曲がった部分では亀裂及び破断が発生し易い。一方、本実施形態に係る積層体10は高い機械的強度(特に引張強度)を有するため、積層体10において折り曲がった部分における亀裂及び破断が抑制される。
【0024】
第二金属層2は、厚み方向Dにおいて積層された複数のニッケル含有層からなっていてよく、複数のニッケル含有層其々におけるNiの含有率は、互いに異なってよい。換言すれば、Niの含有率に基づいて複数のニッケル含有層が互いに識別されてよい。各ニッケル含有層中において、Niの含有率は一定であってよい。各ニッケル含有層中において、Niの含有率は厚み方向Dに沿って増加してもよい。各ニッケル含有層の厚みは、均一であってよい。第二金属層2を構成するニッケル含有層の数nは、2以上である整数であり、特に限定されない。例えば、第二金属層2を構成する任意の一対のニッケル含有層は、第(k-1)ニッケル含有層及び第kニッケル含有層と表される。kは2以上n以下である任意の整数である。第kニッケル含有層は、第二金属層2の厚み方向Dにおいて第(k-1)ニッケル含有層に直接積層される。kが2である場合、第(k-1)ニッケル含有層(つまり第1ニッケル含有層)は、第一金属層1に直接積層される。第一金属層1と第kニッケル含有層との距離は、第一金属層1と第(k-1)ニッケル含有層との距離よりも大きく、第kニッケル含有層におけるNiの含有率は、第(k-1)ニッケル含有層におけるNiの含有率よりも高い。
【0025】
例えば、第二金属層2を構成するニッケル含有層の数nが3である場合、第二金属層2は、第1ニッケル含有層、第2ニッケル含有層、及び第3ニッケル含有層からなる。第1ニッケル含有層は第一金属層1に直接積層され、第2ニッケル含有層は第1ニッケル含有層に直接積層され、第3ニッケル含有層は第2ニッケル含有層に直接積層される。
図3のグラフは、nが3である場合の第二金属層2におけるNiの含有率の分布を示す。
図3のグラフの横軸は、
図2のグラフの横軸と同じであり、
図3のグラフの縦軸は、
図2のグラフの縦軸と同じである。
図3に示されるように、第3ニッケル含有層L3におけるNiの含有率は、第2ニッケル含有層L2におけるNiの含有率よりも高く、第2ニッケル含有層L2におけるNiの含有率は、第1ニッケル含有層L1におけるNiの含有率よりも高い。第1ニッケル含有層L1、第2ニッケル含有層L2、及び第3ニッケル含有層L3其々の内部において、Niの含有率は一定であってよく、第二金属層2におけるNiの含有率は、厚み方向Dに沿って段階的に増加してよい。
【0026】
Niは、第二金属層2の主成分であってよい。つまり、第二金属層2が複数種の元素含む場合、Niの含有率が最も高くてよい。第二金属層2におけるNiの含有率は、例えば、60質量%以上100質量%未満、又は60質量%以上99質量%以下であってよい。第二金属層2が三種以上の元素を含む場合、第二金属層2におけるNiの含有率は、50質量%未満であってもよい。第二金属層2の一部は、Ni単体であってよい。第二金属層2の少なくとも一部又は全体は、Niを含む合金、又はNiを含む金属間化合物であってよい。第二金属層2中のNiの含有率が上記の範囲内である場合、積層体10が高い引張強度を有し易い。
【0027】
第二金属層2におけるNiの含有率は、第二金属層2の第一表面S1近傍において最小である。第二金属層2におけるNiの含有率の最小値は、[Ni]MINと表される。第二金属層2におけるNiの含有率は、第二金属層2の第二表面S2近傍において最大である。第二金属層2におけるNiの含有率の最大値は、[Ni]MAXと表される。Δ[Ni]は、[Ni]MAX-[Ni]MINと定義される。Δ[Ni]は、1質量%以上15質量%以下、又は5質量%以上12質量%以下であってよい。Δ[Ni]が上記の範囲内である場合、積層体10が高い引張強度を有し易い。
【0028】
第二金属層2は、リン(P)及びタングステン(W)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素(添加元素)を更に含んでよい。第二金属層2を構成する全元素のうち、Ni以外の全元素は添加元素であってよい。第二金属層2における添加元素の含有率の合計が、第二金属層2の厚み方向Dに沿って減少することに因り、第二金属層2におけるNiの含有率は、第二金属層2の厚み方向Dに沿って増加する。つまり、第二金属層2における添加元素の含有率の合計は、第一表面S1の近傍において最も高く、第一表面S1から第二表面S2に向かって徐々に又は段階的に減少し、第二表面S2の近傍において最も低い。第二金属層2は、P及びW以外の他の添加元素を更に含んでよい。第二金属層2が、P及びW以外の他の添加元素を含む場合、第二金属層2は、P及びWを含まなくてもよい。
【0029】
第二金属層2は、電解めっき法又は無電解めっき法によって形成されてよい。電解めっき法又は無電解めっき法によって形成された第二金属層2の熱処理が実施されてもよい。後述される実施例が示すように、電解めっき法又は無電解めっき法によれば、第二金属層2におけるNiの含有率を、第二金属層2の厚み方向Dに沿って増加させることができる。例えば、第二金属層2におけるNiの含有率の分布の制御因子は、めっき液の組成、めっき液における各原料の含有量及びその比率、めっき液の温度、めっき液のpH、第一金属層1の電流密度、及びめっきの実施時間等であってよい。めっき液に含まれる原料は、例えば、Niを含む化合物、及び上記添加元素を含む化合物であってよい。各ニッケル含有層の形成に用いるめっき液においてNiを含む化合物の含有量が大きいほど、各ニッケル含有層におけるNiの含有率は高い。上記の制御因子において異なる複数回のめっき法の実施により、Niの含有率において異なる複数のニッケル含有層からなる第二金属層2が形成されてよい。つまり、第二金属層2の厚み方向Dに沿って第二金属層2におけるNiの含有率が増加するように、第二金属層2を構成する複数のニッケル含有層其々におけるNiの含有率が制御されてよい。電解めっき中の第一金属層の電流密度を時間の経過に伴って連続的に又は段階的に増加させることにより、厚み方向Dに沿ってNiの含有率が増加する第二金属層2が形成されてもよい。
【0030】
Cuは、第一金属層1の主成分であってよい。第一金属層1はCuのみからなっていてよい。第一金属層1はCuを含む合金からなっていてもよい。第一金属層1がCuを含むことにより、積層体10は、リチウムイオン二次電池用の負極集電体に要求される高い導電性を有することができる。
【0031】
負極活物質層3に含まれる負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる物質であればよく、特に限定されない。例えば、負極活物質層3に含まれる負極活物質は、ケイ素(Si)を含んでよい。ケイ素を含む負極活物質は、他の負極活物質に比べて、リチウムイオン二次電池の充放電に伴って膨張及び収縮し易い。充放電に伴う負極活物質層3の体積の変動に因り、積層体10(第二金属層2)は繰り返しの引張応力を受ける。しかし、本実施形態に係る積層体10は高い引張強度を有するため、負極活物質層3の体積の変動に因る積層体10の破断が抑制される。
【0032】
ケイ素を含む負極活物質は、ケイ素の単体、ケイ素を含む合金、又はケイ素を含む化合物(酸化物若しくはケイ酸塩等)であってよい。例えば、ケイ素を含む合金は、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)及びクロム(Cr)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含んでよい。例えば、ケイ素を含む化合物は、ホウ素(B)、窒素(N)、酸素(O)及び炭素(C)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含んでよい。例えば、ケイ素を含む負極活物質は、SiB4、SiB6、Mg2Si、Ni2Si、TiSi2、MoSi2、CoSi2、NiSi2、CaSi2、CrSi2、Cu5Si、FeSi2、MnSi2、NbSi2、TaSi2、VSi2、WSi2、ZnSi2、SiC、Si2N2、Si2N2O、SiOX(0<X≦2)及びLiSiOからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であってよい。負極活物質は、ケイ素を含む繊維(ナノワイヤー等)、又はケイ素を含む粒子(ナノ粒子等)であってよい。負極活物質層3は、バインダーを更に含んでよい。バインダーは、負極活物質を互いに結着し、負極活物質層3を第二金属層2の表面と結着する。
【0033】
第一金属層1の厚みT1は、例えば、1μm以上8μm以下であってよい。一つの第二金属層2の厚みT2は、例えば、0.3μm以上4μm以下、又は1.0μm以上2μm以下であってよい。複数の第二金属層2の厚みT2の合計は、T2
TOTALと表されてよく、T2
TOTAL/T1は0.6以上1.0以下であってよい。例えば
図1に示されるように、積層体10が2つの第二金属層2を有する場合、T2
TOTALは、2つの第二金属層2の厚みの和である。T2
TOTAL/T1が0.6以上である場合、積層体10は十分に高い引張強度を有し易い。T2
TOTAL/T1が小さいほど、積層体10(第二金属層2)の原料のコストが抑制される。T2
TOTAL/T1が1.0以下である場合、積層体10を含むリチウムイオン二次電池が十分に高いエネルギー密度を有し易い。積層体10を構成する第二金属層2が1層のみである場合も、上記と同様の理由から、T2/T1は0.6以上1.0以下であってよい。一つの負極活物質層3の厚みT3は、例えば、10μm以上300μm以下であってよい。第一金属層1の厚みT1、第二金属層2の厚みT2及び負極活物質層3の厚みT3其々は、均一であってよい。
【0034】
積層方向に垂直な方向における第一金属層1、第二金属層2及び負極活物質層3其々の寸法は、互いに略同じであってよい。例えば、積層方向に垂直な方向における第一金属層1、第二金属層2及び負極活物質層3其々の幅は、数十mm以上数百mm以下であってよい。積層方向に垂直な方向における第一金属層1、第二金属層2及び負極活物質層3其々の長さは、数十mm以上数千mm以下であってよい。
【0035】
本発明は必ずしも上述された実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の種々の変更が可能であり、これ等の変更例も本発明に含まれる。
【0036】
例えば、第二金属層は、気相成長法によって形成されてよい。気相成長法は、例えば、スパッタリング等の有機金属物理蒸着法(MOPVD)、又は有機金属化学蒸着法(MOCVD)であってよい。
【0037】
本発明に係る積層体は、放熱材又は電磁波シールド材として用いられてよい。放熱材又は電磁波シールド材の加工に伴い、引張応力が放熱材又は電磁波シールド材に作用する。本発明に係る積層体は高い引張強度を有するので、加工に伴う放熱材又は電磁波シールド材の破損を抑制することができる。
【実施例】
【0038】
以下の実施例及び比較例により、本発明が詳細に説明される。本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0039】
[第一金属層の前処理]
第一金属層として、市販の電解銅箔が用いられた。第一金属層の厚みは、4.5μmであった。第一金属層の厚みは均一であった。第一金属層を酸性の脱脂液中に1分間浸漬することにより、第一の金属層の表面に付着した有機物が除去された。脱脂液としては、上村工業株式会社製のスルカップMSC‐3‐Aが用いられた。脱脂後、第一金属層を純水に1分間浸漬することにより、第一金属層が洗浄された。
【0040】
洗浄後、第一金属層を希硫酸中に1分間浸漬することにより、第一の金属層の表面に存在する自然酸化膜が除去された。希硫酸の濃度は、10質量%であった。自然酸化膜の除去後、第一金属層を純水中に1分間浸漬することにより、第一金属層が洗浄された。
【0041】
以上の前処理を経た第一金属層を用いた下記の方法で実施例1~13及び比較例1~5其々の積層体が作製された。
【0042】
(実施例1)
以下の電解めっきにより、第一金属層の両方の表面に第二金属層が形成された。つまり、電解めっきにより、第一金属層と第一金属層の両方の表面に積層された第二金属層から構成される積層体が形成された。
実施例1の第二金属層は、第一金属層の表面に直接積層された第1ニッケル含有層L1と、第1ニッケル含有層L1に直接積層された第2ニッケル含有層L2と、第2ニッケル含有層L2に直接積層された第3ニッケル含有層L3とからなっていた。第一金属層に接する第1ニッケル含有層L1の表面が、第二金属層の第一表面に相当する。
【0043】
電解めっきでは、電源に接続された第一金属層及び他の電極がめっき液中に浸漬され、第一金属層及び他の電極に電流が印加された。めっき液は、硫酸ニッケル六水和物、タングステン酸ナトリウム二水和物、及びクエン酸三ナトリウムを含んでいた。めっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、60g/Lであった。めっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、100g/Lであった。めっき液中のクエン酸三ナトリウムの含有量は、145g/Lであった。めっき液のpHは、5.0に調整された。めっき液の温度は、50℃に調整された。
【0044】
<第1ニッケル含有層L1の形成>
電解めっき中の第一金属層の電流密度を2A/dm2に調整し、電解めっきを1.3分継続することにより、第1ニッケル含有層L1が第一金属層の表面に形成された。
【0045】
<第2ニッケル含有層L2の形成>
第2ニッケル含有層L2を形成する前に、第1ニッケル含有層L1が形成された第一金属層を1分間純水中に浸漬することにより、第1ニッケル含有層L1の表面が洗浄された。
第1ニッケル含有層L1が形成された第一金属層が、他の電極と共にめっき液中に浸漬された。電解めっき中の第一金属層の電流密度を3A/dm2に調整し、電解めっきを0.8分継続することにより、第2ニッケル含有層L2が第1ニッケル含有層L1の表面に形成された。
【0046】
<第3ニッケル含有層L3の形成>
第3ニッケル含有層L3を形成する前に、第2ニッケル含有層L2が形成された第一金属層を1分間純水中に浸漬することにより、第2ニッケル含有層L2の表面が洗浄された。
第2ニッケル含有層L2が形成された第一金属層が、他の電極と共にめっき液中に浸漬された。電解めっき中の第一金属層の電流密度を5A/dm2に調整し、電解めっきを0.5分継続することにより、第3ニッケル含有層L3が第2ニッケル含有層L2の表面に形成された。
【0047】
以上のめっき法によって形成された積層体を1分間純水中に浸漬することにより、積層体が洗浄された。積層体の洗浄後、積層体に付着した水分が除去された。水分の除去後、110℃で6時間、積層体の熱処理が行われた。
【0048】
以上の方法により、実施例1の積層体が作製された。実施例1の場合、露出する第3ニッケル含有層L3の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0049】
(実施例2)
実施例2の場合、第二金属層として、第1ニッケル含有層L1のみが第一金属層の両方の表面に形成された。実施例2の第1ニッケル含有層L1の形成過程では、電解めっき中の第一金属層の電流密度を、時間の経過に伴って2A/dm2から5A/dm2まで連続的に増加させた。実施例2の電解めっきの継続時間は、電解めっき中の第一金属層の積算電流が実施例1と同じになるように調整された。
【0050】
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例2の積層体が作製された。実施例2の場合、露出する第1ニッケル含有層L1の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0051】
(実施例3)
実施例3の第1ニッケル含有層L1の形成過程では、第一金属層の電流密度が2A/dm2に調整され、電解めっきが1.3分継続した。
実施例3の第2ニッケル含有層L2の形成過程では、第一金属層の電流密度が3A/dm2に調整され、電解めっきが0.7分継続した。
実施例3の第3ニッケル含有層L3の形成過程では、第一金属層の電流密度が4A/dm2に調整され、電解めっきが0.4分継続した。
実施例3の場合、純水を用いた第3ニッケル含有層L3の表面の洗浄後、第4ニッケル含有層L4が第3ニッケル含有層L3の表面に形成された。つまり、実施例3の第二金属層は、第一金属層の表面に直接積層された第1ニッケル含有層L1と、第1ニッケル含有層L1に直接積層された第2ニッケル含有層L2と、第2ニッケル含有層L2に直接積層された第3ニッケル含有層L3と、第3ニッケル含有層L3に直接積層された第4ニッケル含有層L4とからなっていた。
第4ニッケル含有層L4の形成過程では、第一金属層の電流密度が5A/dm2に調整され、電解めっきが0.2分継続した。
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例3の積層体が作製された。実施例3の場合、露出する第4ニッケル含有層L4の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0052】
(実施例4)
実施例4の第1ニッケル含有層L1の形成過程では、第一金属層の電流密度が2A/dm2に調整され、電解めっきが5分継続した。
実施例4の第2ニッケル含有層L2の形成過程では、第一金属層の電流密度が5A/dm2に調整され、電解めっきが0.5分継続した。
実施例4の場合、第3ニッケル含有層L3は形成されなかった。
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例4の積層体が作製された。実施例4の場合、露出する第2ニッケル含有層L2の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0053】
(実施例5)
実施例5の場合、電解めっきではなく以下の無電解めっきにより、第一金属層の両方の表面に第二金属層が形成された。実施例5の第二金属層は、第一金属層の表面に直接積層された第1ニッケル含有層L1と、第1ニッケル含有層L1に直接積層された第2ニッケル含有層L2と、第2ニッケル含有層L2に直接積層された第3ニッケル含有層L3とからなっていた。
【0054】
<触媒処理>
第1ニッケル含有層L1の形成前に、第一金属層の表面の触媒処理が実施された。触媒処理では、第一金属層を触媒処理液中に1分間浸漬することにより、第一金属層の表面に触媒(硫酸パラジウム)を付着させた。触媒処理液の温度は40℃に調整された。触媒処理液としては、上村工業株式会社製のアクセマルタMNK‐4‐Mが用いられた。
【0055】
<第1ニッケル含有層L1の形成>
第1ニッケル含有層L1の形成過程では、第一金属層が無電解ニッケルめっき液中に浸漬された。第1ニッケル含有層L1の形成に用いられた無電解ニッケルめっき液は、奥野製薬工業株式会社製のICPニコロンSOFであった。無電解ニッケルめっき液は、還元剤として、次亜リン酸ナトリウムを含んでいた。無電解ニッケルめっき液の温度は85℃に調整された。無電解めっきの継続時間は2.5分であった。
【0056】
<第2ニッケル含有層L2の形成>
第2ニッケル含有層L2を形成する前に、第1ニッケル含有層L1が形成された第一金属層を1分間純水中に浸漬することにより、第1ニッケル含有層L1の表面が洗浄された。第1ニッケル含有層L1の表面の洗浄後、第2ニッケル含有層L2の形成前に、上記の方法で、第1ニッケル含有層L1の表面の触媒処理が実施された。
第2ニッケル含有層L2の形成過程では、第1ニッケル含有層L1が形成された第一金属層が、無電解ニッケルめっき液中に浸漬された。第2ニッケル含有層L2の形成に用いられた無電解ニッケルめっき液は、奥野製薬工業株式会社製のICPニコロンGMであった。無電解ニッケルめっき液は、還元剤として、次亜リン酸ナトリウムを含んでいた。無電解ニッケルめっき液の温度は80℃に調整された。無電解めっきの継続時間は2.5分であった。
【0057】
<第3ニッケル含有層L3の形成>
第3ニッケル含有層L3を形成する前に、第2ニッケル含有層L2が形成された第一金属層を1分間純水中に浸漬することにより、第2ニッケル含有層L2の表面が洗浄された。第2ニッケル含有層L2の表面の洗浄後、第3ニッケル含有層L3の形成前に、上記の方法で、第2ニッケル含有層L2の表面の触媒処理が実施された。
第3ニッケル含有層L3の形成過程では、第2ニッケル含有層L2が形成された第一金属層が、無電解ニッケルめっき液中に浸漬された。第3ニッケル含有層L3の形成に用いられた無電解ニッケルめっき液は、奥野製薬工業株式会社製のトップニコロンLPHであった。無電解ニッケルめっき液は、還元剤として、次亜リン酸ナトリウムを含んでいた。無電解ニッケルめっき液の温度は90℃に調整された。無電解めっきの継続時間は2分であった。第3ニッケル含有層L3の形成後、積層体を1分間純水中に浸漬することにより、積層体が洗浄された。
【0058】
以上の方法により、実施例5の積層体が作製された。実施例5の場合、露出する第3ニッケル含有層L3の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0059】
(実施例6)
実施例6の場合、第3ニッケル含有層L3は形成されなかった。この事項を除いて実施例5と同様の方法で、実施例6の積層体が作製された。実施例6の場合、露出する第2ニッケル含有層L2の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0060】
(実施例7)
実施例1のめっき液とは組成が異なるめっき液を用いて、実施例7の電解めっきが実施された。実施例7のめっき液は、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、ホウ酸、クエン酸三ナトリウム、及び亜リン酸水素ナトリウムを含んでいた。実施例7のめっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、100g/Lであった。実施例7のめっき液中の塩化ニッケル六水和物の含有量は、30g/Lであった。実施例7のめっき液中のホウ酸の含有量は、30g/Lであった。実施例7のめっき液中のクエン酸三ナトリウムの含有量は、30g/Lであった。実施例7のめっき液中の亜リン酸水素ナトリウムの含有量は、20g/Lであった。実施例7のめっき液のpHは、3.5に調整された。実施例7のめっき液の温度は、60℃に調整された。
【0061】
実施例7の場合、第二金属層として、第1ニッケル含有層L1のみが第一金属層の両方の表面に形成された。実施例7の第1ニッケル含有層L1の形成過程では、電解めっき中の第一金属層の電流密度を、時間の経過に伴って0.5A/dm2から4A/dm2まで連続的に増加させた。実施例7の電解めっきの継続時間は、電解めっき中の第一金属層の積算電流が実施例5と同じになるように調整された。
【0062】
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例7の積層体が作製された。実施例7の場合、露出する第1ニッケル含有層L1の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0063】
(実施例8)
実施例8の第1ニッケル含有層L1は、実施例1のめっき液とは組成が異なる第1めっき液を用いた電解めっきによって形成された。
実施例8の第1めっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、60g/Lであった。実施例8の第1めっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、30g/Lであった。実施例8の第1めっき液中のクエン酸三ナトリウムの含有量は、80g/Lであった。実施例8の第1めっき液のpHは、7.0に調整された。実施例8の第1ニッケル含有層L1の形成過程では、第一金属層の電流密度が5A/dm2に調整され、電解めっきが1分継続した。
【0064】
実施例8の第2ニッケル含有層L2は、実施例1のめっき液とは組成が異なる第2めっき液を用いた電解めっきによって形成された。
実施例8の第2めっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、70g/Lであった。実施例8の第2めっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、15g/Lであった。実施例8の第2めっき液中のクエン酸三ナトリウムの含有量は、80g/Lであった。実施例8の第2めっき液のpHは、7.0に調整された。実施例8の第2ニッケル含有層L2の形成過程では、第一金属層の電流密度が5A/dm2に調整され、電解めっきが1分継続した。
【0065】
実施例8の第3ニッケル含有層L3は、実施例1のめっき液とは組成が異なる第3めっき液を用いた電解めっきによって形成された。
実施例8の第3めっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、70g/Lであった。実施例8の第3めっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、8g/Lであった。実施例8の第3めっき液中のクエン酸三ナトリウムの含有量は、80g/Lであった。実施例8の第3めっき液のpHは、7.0に調整された。実施例8の第3ニッケル含有層L3の形成過程では、第一金属層の電流密度が5A/dm2に調整され、電解めっきが1分継続した。
【0066】
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例8の積層体が作製された。実施例8の場合、露出する第3ニッケル含有層L3の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0067】
(実施例9)
実施例9の第1ニッケル含有層L1は、実施例1のめっき液とは組成が異なる第1めっき液を用いた電解めっきによって形成された。
実施例9の第1めっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、30g/Lであった。実施例9の第1めっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、60g/Lであった。実施例9の第1めっき液中のクエン酸三ナトリウムの含有量は、80g/Lであった。実施例9の第1めっき液のpHは、7.0に調整された。実施例9の第1ニッケル含有層L1の形成過程では、第一金属層の電流密度が5A/dm2に調整され、電解めっきが3分継続した。
【0068】
実施例9の第2ニッケル含有層L2は、実施例1のめっき液とは組成が異なる第2めっき液を用いた電解めっきによって形成された。
実施例9の第2めっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、40g/Lであった。実施例9の第2めっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、45g/Lであった。実施例9の第2めっき液中のクエン酸三ナトリウムの含有量は、80g/Lであった。実施例9の第2めっき液のpHは、7.0に調整された。実施例9の第2ニッケル含有層L2の形成過程では、第一金属層の電流密度が5A/dm2に調整され、電解めっきが3分継続した。
【0069】
実施例9の場合、第3ニッケル含有層L3は形成されなかった。
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例9の積層体が作製された。実施例9の場合、露出する第2ニッケル含有層L2の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0070】
(実施例10)
実施例10の第1ニッケル含有層L1は、実施例1のめっき液とは組成が異なる第1めっき液を用いた電解めっきによって形成された。
実施例10の第1めっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、70g/Lであった。実施例10の第1めっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、15g/Lであった。実施例10の第1めっき液中のクエン酸三ナトリウムの含有量は、80g/Lであった。実施例10の第1めっき液のpHは、7.0に調整された。実施例10の第1ニッケル含有層L1の形成過程では、第一金属層の電流密度が5A/dm2に調整され、電解めっきが2分継続した。
【0071】
実施例10の第2ニッケル含有層L2は、実施例1のめっき液とは組成が異なる第2めっき液を用いた電解めっきによって形成された。
実施例10の第2めっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、70g/Lであった。実施例10の第2めっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、8g/Lであった。実施例10の第2めっき液中のクエン酸三ナトリウムの含有量は、80g/Lであった。実施例10の第2めっき液のpHは、7.0に調整された。実施例10の第2ニッケル含有層L2の形成過程では、第一金属層の電流密度が5A/dm2に調整され、電解めっきが1分継続した。
【0072】
実施例10の第3ニッケル含有層L3は、実施例1のめっき液とは組成が異なる第3めっき液を用いた電解めっきによって形成された。
実施例10の第3めっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、70g/Lであった。実施例10の第3めっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、4g/Lであった。実施例10の第3めっき液中のクエン酸三ナトリウムの含有量は、80g/Lであった。実施例10の第3めっき液のpHは、7.0に調整された。実施例10の第3ニッケル含有層L3の形成過程では、第一金属層の電流密度が5A/dm2に調整され、電解めっきが1分継続した。
【0073】
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例10の積層体が作製された。実施例10の場合、露出する第3ニッケル含有層L3の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0074】
(実施例11)
実施例11の場合、第1ニッケル含有層L1及び第2ニッケル含有層L2が以下の一回の電解めっきのみによって形成された。
実施例11のめっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、80g/Lであった。実施例11のめっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、5g/Lであった。実施例11のめっき液中のクエン酸三ナトリウムの含有量は、80g/Lであった。実施例11のめっき液のpHは、7.0に調整された。実施例11の電解めっき中の第一金属層の電流密度は、5A/dm2に調整された。実施例11の電解めっきは3分継続した。実施例11の電解めっき中、めっき浴は揺動されることなく静止していた。
実施例11においてニッケル含有量の異なる2層が形成された理由は明らかではないが、以下の機構により第1ニッケル含有層L1及び第2ニッケル含有層L2が形成されたものと考えられる。
実施例11のめっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、実施例1のめっき液に比べて低くなるように調整された。めっき析出によりタングステン成分の濃度は、被めっき物近傍で局所的に減少する。しかし、実施例11のめっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は実施例1のめっき液に比べて低かったので、被めっき物近傍でのタングステン成分の濃度勾配が顕著に抑制された。したがって第二金属層へのタングステン成分の供給が抑制された。さらに被めっき物を揺動させずに静止させたため、めっき液中での揺動による撹拌効果が抑えられることで、更に第二金属層へのタングステン成分の供給が抑制された。その結果、めっき初期にタングステンの含有量が比較的大きい第1ニッケル含有層L1が形成された後、タングステンの含有量が比較的小さい第2ニッケル含有層L2が形成された。
実施例11の場合、第3ニッケル含有層L3は形成されなかった。
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例11の積層体が作製された。実施例11の場合、露出する第2ニッケル含有層L2の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0075】
(実施例12)
実施例12の場合、第1ニッケル含有層L1及び第2ニッケル含有層L2が以下の一回の電解めっきのみによって形成された。
実施例12のめっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、80g/Lであった。実施例12のめっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、3g/Lであった。実施例12のめっき液中のクエン酸三ナトリウムの含有量は、80g/Lであった。実施例12のめっき液のpHは、7.0に調整された。実施例12の電解めっき中の第一金属層の電流密度は、5A/dm2に調整された。実施例12の電解めっきは3分継続した。実施例12の電解めっき中、めっき浴は揺動されることなく静止していた。
実施例12におけるめっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、実施例11におけるめっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量よりも低くなるように調整された。その結果、めっき初期にタングステンを含む第1ニッケル含有層L1が形成された後、タングステンを含まない第2ニッケル含有層L2が形成された。
実施例12の場合、第3ニッケル含有層L3は形成されなかった。
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例12の積層体が作製された。実施例12の場合、露出する第2ニッケル含有層L2の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0076】
(実施例13)
実施例13の場合、第1ニッケル含有層L1及び第2ニッケル含有層L2が以下の一回の電解めっきのみによって形成された。
実施例13のめっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、80g/Lであった。実施例13のめっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、1g/Lであった。実施例13のめっき液中のクエン酸三ナトリウムの含有量は、80g/Lであった。実施例13のめっき液のpHは、7.0に調整された。実施例13の電解めっき中の第一金属層の電流密度は、5A/dm2に調整された。実施例13の電解めっきは3分継続した。実施例13の電解めっき中、めっき浴は揺動されることなく静止していた。
実施例12と同様に、実施例13におけるめっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量は、実施例11におけるめっき液中のタングステン酸ナトリウム二水和物の含有量よりも低くなるように調整された。その結果、めっき初期にタングステンを含む第1ニッケル含有層L1が形成された後、タングステンを含まない第2ニッケル含有層L2が形成された。
実施例13の場合、第3ニッケル含有層L3は形成されなかった。
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例13の積層体が作製された。実施例13の場合、露出する第2ニッケル含有層L2の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0077】
(比較例1)
比較例1の場合、第二金属層として、第1ニッケル含有層L1のみが第一金属層の両方の表面に形成された。
実施例1のめっき液とは組成が異なるめっき液を用いて、比較例1の電解めっきが実施された。比較例1のめっき液は、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、及びホウ酸を含んでいた。比較例1のめっき液中の硫酸ニッケル六水和物の含有量は、240g/Lであった。比較例1のめっき液中の塩化ニッケル六水和物の含有量は、45g/Lであった。比較例1のめっき液中のホウ酸の含有量は、30g/Lであった。めっき液のpHは、4.2に調整された。めっき液の温度は、40℃に調整された。
比較例1の第1ニッケル含有層L1の形成過程では、電解めっき中の第一金属層の電流密度が5A/dm2に調整され、電解めっきが1.5分継続した。
【0078】
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、比較例1の積層体が作製された。比較例1の場合、露出する第1ニッケル含有層L1の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0079】
(比較例2)
比較例2の場合、第二金属層として、第1ニッケル含有層L1のみが第一金属層の両方の表面に形成された。
比較例2の場合、電解めっき中の第一金属層の電流密度を5A/dm2に調整し、電解めっきを2分継続することにより、第1ニッケル含有層L1が第一金属層の表面に形成された。
【0080】
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、比較例2の積層体が作製された。比較例2の場合、露出する第1ニッケル含有層L1の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0081】
(比較例3)
比較例3の場合、第二金属層として、第1ニッケル含有層L1のみが第一金属層の両方の表面に形成された。
比較例3の第1ニッケル含有層L1の形成過程では、無電解めっきの継続時間は7分であった。
【0082】
上記の事項を除いて実施例5と同様の方法で、比較例3の積層体が作製された。比較例3の場合、露出する第1ニッケル含有層L1の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0083】
(比較例4)
比較例4の第1ニッケル含有層L1の形成過程では、無電解めっきの継続時間は15分であった。
【0084】
上記の事項を除いて比較例3と同様の方法で、比較例4の積層体が作製された。比較例4の場合、露出する第1ニッケル含有層L1の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0085】
(比較例5)
比較例5の第1ニッケル含有層L1の形成過程では、電解めっき中の第一金属層の電流密度が5A/dm2に調整され、電解めっきが0.2分継続した。
比較例5の第2ニッケル含有層L2の形成過程では、電解めっき中の第一金属層の電流密度が4A/dm2に調整され、電解めっきが0.4分継続した。
比較例5の第3ニッケル含有層L3の形成過程では、電解めっき中の第一金属層の電流密度が3A/dm2に調整され、電解めっきを0.7分継続した。
【0086】
上記の事項を除いて実施例1と同様の方法で、比較例5の積層体が作製された。比較例5の場合、露出する第3ニッケル含有層L3の表面が、第二金属層の第二表面に相当する。
【0087】
[積層体の分析]
以下の方法により、実施例1~13及び比較例1~5其々の積層体が分析された。
【0088】
積層方向(第二金属層の第一表面に垂直な方向)において、積層体が切断された。積層体の断面が、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察された。積層体の断面に露出する第二金属層の組成が、第二金属層の厚み方向Dに沿って、エネルギー分散型X線分光(EDS)によって分析された。
【0089】
実施例1~13及び比較例1~5其々の第二金属層は、下記表1に示される構成元素を含むことが確認された。
【0090】
実施例1~13及び比較例1~5其々の第二金属層を構成する各ニッケル含有層におけるNiの含有率[Ni]は、下記表1に示される。表1中のL1は、第1ニッケル含有層を意味する。表1中のL2は、第2ニッケル含有層を意味する。表1中のL3は、第3ニッケル含有層を意味する。表1中のL4は、第4ニッケル含有層を意味する。実施例2及び7を除き、各ニッケル含有層におけるNiの含有率[Ni]は、略一定であった。
【0091】
実施例2及び7の場合、第二金属層(第1ニッケル含有層L1)におけるNiの含有率[Ni]は、第二金属層の厚み方向Dに沿って連続的に増加していた。つまり実施例2及び7の場合、第二金属層におけるNiの含有率は、第二金属層の第一表面近傍において最小であり、第二金属層の第二表面近傍において最大であった。
実施例2の場合、第二金属層におけるNiの含有率の最小値は、62質量%であり、第二金属層におけるNiの含有率の最大値は、69質量%であった。
実施例7の場合、第二金属層におけるNiの含有率の最小値は、87質量%であり、第二金属層におけるNiの含有率の最大値は、99質量%であった。
【0092】
実施例1~13及び比較例5其々のΔ[Ni]は、下記表1に示される。Δ[Ni]の定義は上述の通りである。
【0093】
実施例1~13及び比較例1~5のいずれの場合も、第二金属層を構成する各ニッケル含有層の厚みは、均一であった。各ニッケル含有層の厚みが積層体の断面において測定された。各ニッケル含有層の厚みは、下記表1に示される。
【0094】
[屈曲試験]
実施例1~13及び比較例1~5其々の積層体を用いて、JISC5016に従う以下の屈曲試験が実施された。屈曲試験の概要は、
図4に示される。
【0095】
屈曲試験に用いられた積層体10の形状は、長方形であった。積層体10の長辺の長さ(積層方向に垂直な方向における積層体10の長さ)は、150mmであった。積層体10の短辺の長さ(積層方向に垂直な方向における積層体の幅)は、50mmであった。
【0096】
積層体10よりも硬い円柱体14が屈曲試験に用いられた。円柱体14の高さは、積層体10の短辺の長さよりも大きかった。円柱体14の外周面の曲率半径Rは、5mmであった。
【0097】
円柱体14の高さ方向が積層体10の短辺と平行になるように、円柱体14の外周面が積層体10の長辺方向における積層体10の中央部に接触していた。積層体10の表面(第二金属層の第二表面)が円柱体14の外周面に密着するように、積層体10が折り曲げられた。折り曲げられた積層体10の一方の端部12は、治具(jig)13において固定された。折り曲げられた積層体10の他方の端部15を、方向B(積層体10の長辺方向)に沿って1分間繰り返し往復させた。端部15の往復の移動距離は、30mmであった。往復の周期は、150回/分であった。
【0098】
積層体10の端部15を1分間繰り返し往復させた後、積層体10において円柱体14の外周面に密着していた箇所(第二金属層の第二表面)において、表面抵抗率SR(単位:Ω/sq)が測定された。表面抵抗率SRは、四端子法で測定された。上記の屈曲試験の前においても、表面抵抗率SR0が測定された。屈曲試験前にSR0が測定された箇所は、SRが測定された箇所と同じであった。下記数式1によって定義される表面抵抗増加率ΔSR(単位:%)が算出された。
ΔSR=100×(SR-SR0)/SR0 (1)
【0099】
上記の屈曲試験においては、円柱体14の外周面に密着する積層体10の表面(第二金属層の第二表面)において引張応力が作用する。この引張応力に因って積層体10(第二金属層)に形成された亀裂の数が多く、亀裂によって形成された断面積が大きいほど、表面抵抗増加率ΔSRは高い。換言すれば、積層体10の引張強度が高いほど、積層体10(第二金属層)における亀裂が抑制され易く、表面抵抗増加率ΔSRは低い。
【0100】
上述された施例1~13及び比較例1~5其々の屈曲試験の結果は、下記表1に示される。表1中のAは、表面抵抗増加率ΔSRが、0%以上5%未満であることを意味する。表1中のBは、表面抵抗増加率ΔSRが、5%以上10%未満であることを意味する。表1中のCは、表面抵抗増加率ΔSRが、10%以上15%未満であることを意味する。表1中のDは、表面抵抗増加率ΔSRが、15%以上であることを意味する。
【0101】
【産業上の利用可能性】
【0102】
例えば、本発明の一側面に係る積層体は、リチウムイオン二次電池の負極集電体に用いられてよい。
【符号の説明】
【0103】
1…第一金属層、2…第二金属層、3…負極活物質層、10…積層体(集電体)、20…負極、D…第二金属層の厚み方向、S1…第二金属層の第一表面、S2…第二金属層の第二表面。