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▶ グローバス メディカル インコーポレイティッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】脛骨トレイ挿入器
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/46 20060101AFI20241220BHJP
   A61F 2/38 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
A61F2/46
A61F2/38
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023027180
(22)【出願日】2023-02-24
(65)【公開番号】P2023124854
(43)【公開日】2023-09-06
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】17/652,492
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507400686
【氏名又は名称】グローバス メディカル インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マリウス コバニ
(72)【発明者】
【氏名】ドリュー マイク
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ザッパコスタ
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ストゥンポ
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第0780090(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/46
A61F 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝関節形成術のためのシステムであって、前記システムが、
挿入物受容空間を画定する周囲壁を有する脛骨トレイであって、前記周囲壁が一対の後部ノッチ及び単一の前部ノッチを画定する、脛骨トレイと、
一対の固定された後部タブを有する本体と、前部タブを有する移動可能な前部タブ本体と、前記前部タブ本体の動きを制御するための回転可能なシャフトと、を有する挿入器であって、前記シャフトが回転し前記前部タブ本体が拡張位置に並進するときに、前記後部タブが前記脛骨トレイの前記後部ノッチに受容可能であり、前記前部タブが前記脛骨トレイの前記前部ノッチに受容可能である、挿入器と、を備え
前記挿入器の前記本体が、上向きに突出する首部と前方に突出する腕部とを有する足部を含み、前記足部が、キー溝によって二分岐され、前記前部タブ本体が、前記キー溝に受容可能であり、
前記前部タブ本体が、反対方向に外向きに突設された一対のキー溝ウイングを含み、前記キー溝が、それぞれの前記キー溝ウイングを受容し、それにより、拡張が起こっている間の前後方向の角形成を防止するように構成された凹部を画定する、システム。
【請求項2】
前記脛骨トレイが、外側凸状側を形成する前部側と、2つのローブを分離する内側凹状側を含む後部側と、を有するインゲン豆形状を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記脛骨トレイが、前記脛骨トレイの遠位表面に取り付けられたキールを含み、前記キールが、一対の冠状フィン及び少なくとも1つの矢状フィンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記挿入器が、前記本体及び前記前部タブ本体に圧入される複数のプラグを含み、前記複数のプラグが前記本体の底部から突出し、それにより、前記本体が前記脛骨トレイの前記挿入物受容空間に接触しないことを確実にする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
膝関節形成術のための、挿入物受容空間を画定する周囲壁を有する脛骨トレイであって、前記周囲壁が一対の後部ノッチ及び単一の前部ノッチを画定する、脛骨トレイを埋め込むための挿入器であって、
対の固定された後部タブを有する本体と、
前部タブを有する移動可能な前部タブ本体と
前記前部タブ本体の動きを制御するための回転可能なシャフトと、を含み、
前記シャフトが回転し前記前部タブ本体が拡張位置に並進するときに、前記後部タブが前記脛骨トレイの前記後部ノッチに受容可能であり、前記前部タブが前記脛骨トレイの前記前部ノッチに受容可能であり、
前記本体が、上向きに突出する首部と前方に突出する腕部とを有する足部を含み、
前記足部が、キー溝によって二分岐され、前記前部タブ本体が、前記キー溝に受容可能であり、
前記前部タブ本体が、反対方向に外向きに突設された一対のキー溝ウイングを含み、前記キー溝が、それぞれの前記キー溝ウイングを受容し、それにより、拡張が起こっている間の前後方向の角形成を防止するように構成された凹部を画定し、
さらに、ハンドルを含み、前記本体がハンドルに結合されており、
前記前部タブは、前記本体の内部で移動可能であり、ねじ山付き開口部を含み、
前記シャフトが、前記前部タブの前記ねじ山付き開口部と係合するねじ山付き部分を有し、前記本体及び前記タブ本体を通って位置決めされ、前記シャフトが回転すると、前記タブ本体が前記本体の外側に、ロック位置まで並進する挿入
【請求項6】
前記足部が、インゲン豆状の外形を有する、請求項に記載の挿入
【請求項7】
前記前部タブ本体が、上向きに突設された舌部を有する基部を含み、前記舌部が、前記ねじ山付き開口部を画定する、請求項に記載の挿入
【請求項8】
前記ねじ山付き開口部が、3条リードねじ穴であり、前記シャフトが、前記前部タブ本体の並進速度を増加させるために前記3条リードねじ穴と相互作用するように構成された3条リードシャフトを含む、請求項に記載の挿入
【請求項9】
前記前部タブが、前記基部の前部部分に沿って位置決めされ、前記前部タブが、前記前部タブ本体の全幅に沿って延在する、請求項に記載の挿入
【請求項10】
前記ハンドルが、遠位でねじ山付き端部で終端する細長い本体を含み、前記ねじ山付き端部が、前記本体の対応するねじ山とかみ合う、請求項に記載の挿入
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、膝関節形成術、より詳細には、膝関節形成術器具、インプラント、及び膝関節形成術インプラントを設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膝関節形成術は、しばしば膝置換術と呼ばれ、例えば関節炎によって損傷した膝を再構築し、表面を直すために使用される外科手技である。全膝関節形成術(total knee arthroplasty、TKA)デバイスは、脛骨大腿関節及び膝蓋大腿関節の両方に取って代わることができる。脛骨大腿関節は、脛骨及び大腿骨が関節運動するところである。膝蓋大腿関節は、膝蓋骨及び大腿骨が関節運動するところである。脛骨大腿関節を置換するために、膝関節形成術は、大腿骨の遠位端部に固設される大腿骨トライアル(又はインプラント)、脛骨の近位端部に固設される脛骨トレイ(又はインプラント)、及びそれらの間に配設される挿入物を含み得る。大腿骨及び脛骨インプラントは、それぞれ、膝関節を形成する大腿骨及び脛骨の端部を覆い、それによって膝を再建する。膝蓋大腿関節を置換するために、膝関節形成術は、膝蓋骨の裏側に取って代わり、大腿骨トライアル又はインプラントと相互作用する置換関節運動表面を形成するための膝蓋骨人工器官(又はインプラント)を含み得る。
【0003】
この手技の脛骨部分には、脛骨トレイと関節接合スペーサ挿入物とを含む脛骨インプラント組立体で置換される、近位脛骨の平面切除が含まれ得る。脛骨トレイは、脛骨の海綿骨に追加の支持を提供し、海綿骨への追加の固定を提供するために、キール構造を含んでもよい。脛骨トレイのキールが切除された脛骨に着座することを可能にするために、キール穿孔器を利用して、初期空洞を作製してもよい。脛骨トレイの配置は、キール穿孔空洞によって部分的に予め決定されるが、脛骨トレイを埋め込むときに外科医によってわずかに変更され得る。脛骨トレイと、埋め込みの間、脛骨トレイの6自由度の動き及び正確な配置の制御を可能にする、トレイを埋め込むように構成された挿入器器具と、の改良が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
この必要性及び他の必要性を満たすために、脛骨トレイインプラントを設置するインプラント、器具、システム、及び方法が提供される。特に、挿入器器具は、1つ以上のロック機構で脛骨トレイにロックするように構成することができる。例えば、脛骨トレイは、挿入器の対応するタブを受容するように構成された1つ以上のポケットを含み得る。挿入器の1つの前部タブは、脛骨トレイのポケットのうちの1つと係合及び係合解除するように摺動可能であり得る。脛骨トレイは、6自由度の動きの改善された制御を提供するために、挿入器に取り付け可能である。このようにして、外科医は、外科医の好み及び所望する患者転帰に基づいて脛骨トレイの配置を調整することができる。挿入器はまた、修正手技中に脛骨トレイを引き抜くために使用されてもよい。インプラントは、挿入器に使用されるのと同じポケットを介して脛骨トレイに取り付け可能な挿入物を更に含むことができる。
【0005】
一実施形態によれば、膝関節形成術のためのシステムは、脛骨トレイ及び挿入器を含む。脛骨トレイは、挿入物受容空間を画定する周囲壁を有し、周囲壁は、一対の後部ノッチ/アンダーカットと単一の前部ノッチ/アンダーカットとを画定する。挿入器は、一対の固定された後部タブと、前部タブを有する移動可能な前部タブ本体と、前部タブ本体の動きを制御するための回転可能なシャフトと、を有する本体を有する。後部タブは、脛骨トレイの後部ノッチ内に受容可能であり、前部タブは、シャフトが回転し前部タブ本体が拡張位置まで並進すると、脛骨トレイの前部ノッチ内に受容可能である。
【0006】
本システムは、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。脛骨トレイが、外側凸状側を形成する前部側と、2つのローブを分離する内側凹状側を含む後部側と、を有するインゲン豆形状を有し得る。脛骨トレイが、脛骨トレイの遠位表面に取り付けられたキールを含み得、キールは、一対の冠状フィン及び一対の矢状フィンを含み得る。セメントレス手技では、脛骨トレイはまた、脛骨トレイの遠位表面に取り付けられた複数のペグを含み得る。挿入器の本体が、上向きに突出する首部と前方に突出する腕部とを有する足部を含み得る。前部タブ本体がキー溝内に受容可能であるように、足部が、キー溝によって分岐され得る。前部タブ本体が、反対方向に外向きに突設された一対のキー溝ウイングを含み得る。キー溝が、それぞれのキー溝ウイングを受容するように構成された凹部を画定し得、それにより、拡張が起こっている間の前後方向の角形成を防止する。挿入器が、本体及び前部タブ本体に圧入される複数のプラグを含み得る。プラグが、プラグ本体を通って延在する横断ダウエルピンで固設され得る。プラグは本体の底部から突出し得、それにより、本体が脛骨トレイの挿入物受容空間に接触したり損傷を与えたりしないことを確実にする。
【0007】
一実施形態によれば、脛骨トレイを埋め込むための挿入器器具は、本体と、移動可能な前部タブ本体と、回転可能なシャフトと、を含む。本体は、ハンドルに結合されている。本体は、一対の後部タブを含む。移動可能な前部タブ本体は、本体内部に位置する。前部タブ本体は、ねじ山付き開口部及び前部タブを含む。回転可能なシャフトは、前部タブ本体の動きを制御する。シャフトは、前部タブ本体のねじ山付き開口部と係合するねじ山付き部分を有する。シャフトは、本体及び前部タブ本体を通って位置決めされる。シャフトが回転すると、前部タブ本体は、本体の外側に、ロック位置まで並進する。
【0008】
挿入器器具は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。本体が、上向きに突出する首部と前方に突出する腕部とを有する足部を含み得る。足部が、インゲン豆状の外形を有し得る。足部がキー溝によって分岐され得、前部タブ本体がキー溝内に受容可能であり得る。前部タブ本体が、反対方向に外向きに突設された一対のキー溝ウイングを含み得る。キー溝が、それぞれのキー溝ウイングを受容するように構成された凹部を画定し得、それにより、拡張が起こっている間の前後方向の角形成を防止する。前部タブ本体が、ねじ山付き開口部を画定する上向きに突設された舌部を有する、基部を含み得る。ねじ山付き開口部が、3条リードねじ穴であり得、シャフトが、前部タブ本体の並進速度を増加させるために3条リードねじ穴と相互作用するように構成された3条リードシャフトを含み得る。前部タブが、基部の前部部分に沿って位置決めされ得、前部タブは、前部タブ本体の全幅に沿って延在し得る。ハンドルが、遠位でねじ山付き端部で終端する細長い本体を含み得、ねじ山付き端部は、本体の対応するねじ山とかみ合い得る。
【0009】
別の実施形態によれば、脛骨インプラントを埋め込むための方法は、任意の好適な順序で以下のステップのうちの1つ以上を含む。(1)挿入器の本体の固定された後部タブを、脛骨トレイの周囲壁の対応する後部ノッチ内に位置決めするステップ、(2)挿入器の本体の足部が脛骨トレイの挿入物受容空間内に受容されるまで、脛骨トレイを傾斜させるステップ、(3)挿入器の本体を通してシャフトを回転させて、前部タブ本体を並進させ、前部タブを脛骨トレイの前部ノッチ内に拡張させ、それにより挿入器を脛骨トレイにロックするステップ、及び(4)脛骨トレイを所望の位置に移動させ、脛骨トレイを患者の近位脛骨内に埋め込むステップ。挿入器は、内部/外部回転、近位/遠位並進、前方/後方並進、前方/後方角形成、内側/外側並進、及び内反/外反角形成によって脛骨トレイを移動させるように構成され得る。本方法は、挿入器を位置決めする前に、近位脛骨を切除して平面切除面を形成すること、及び/又は近位脛骨に空洞を穿孔することを含み得、空洞は、脛骨トレイのキールを受容するように構成され得る。挿入器を除去した後、挿入物は、脛骨トレイの同じ後部ノッチ及び前部ノッチ内に受容可能なタブによって取り付けられてもよい。
【0010】
また、前後(anterior-posterior、AP)の向き及び/又は内外(medial-lateral、ML)の向きにおいて異なる、脛骨トレイと挿入物とを含む様々なタイプ及びサイズのインプラント若しくはインプラントトライアルと、ロック可能な挿入器器具を含む様々なタイプ及び構成の器具と、手技を実施するための他の構成要素と、を含むキットも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明のより完全な理解、及びその付随する利点及び特徴は、添付の図面と併せて考慮される場合、以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解されるであろう。
図1】一実施形態による、患者の近位脛骨の切除部分に脛骨トレイを埋め込むために脛骨トレイにロックされた、挿入器器具の斜視図を示す。
図2】一実施形態による、挿入物及び脛骨トレイの組み立てられた前部斜視図を示す。
図3】一実施形態による、挿入物及び脛骨トレイ組立体の前面図である。
図4】前方から見た挿入物及び脛骨トレイの分解斜視図を示す。
図5】後方から見た挿入物及び脛骨トレイの分解斜視図を示す。
図6】一実施形態による、後部タブロック機構を含む脛骨トレイと連結された挿入物の断面図及び拡大図を示す。
図7】一実施形態による、後部タブロック機構を含む脛骨トレイと連結された挿入物の断面図及び拡大図を示す。
図8】一実施形態による、前部タブロック機構を含む脛骨トレイと連結された挿入物の断面図及び拡大図を示す。
図9】一実施形態による、前部タブロック機構を含む脛骨トレイと連結された挿入物の断面図及び拡大図を示す。
図10】一実施形態による、挿入器器具の分解図を示す。
図11】一実施形態による、挿入器器具の本体の斜視図である。
図12】一実施形態による、挿入器器具の本体の固定された後部タブの拡大図である。
図13】一実施形態による、移動可能な前部タブ本体を受容するためのキー溝を有する挿入器器具の本体の後面図を示す。
図14】一実施形態による、前部タブ本体の斜視図を示す。
図15】一実施形態による、前部タブ本体を並進させるように構成されたシャフトの斜視図を示す。
図16】一実施形態による、挿入器と脛骨トレイとの間の金属同士の接触を防止するように構成されたプラスチックプラグのうちの1つの斜視図を示す。
図17】ロック解除位置又は後退位置にある図10の挿入器器具の斜視図を示す。
図18】ロック位置又は拡張位置にある図10の挿入器器具の斜視図を示す。
図19】一実施形態による、脛骨トレイへの挿入器の取り付けを示す。
図20】前部タブが拡張し、それにより挿入器を脛骨トレイにロックする、挿入器の断面図を示す。
図21】脛骨トレイと係合された挿入器の前部タブの拡大断面図である。
図22】前部タブが後退し、それにより脛骨トレイを挿入器からロック解除し除去する、挿入器の断面図である。
図23】それぞれ、近位脛骨への脛骨トレイ埋め込みの斜視図、側面図、及び前面図を示し、挿入器を介した6自由度の動きに対する制御を含む。
図24】それぞれ、近位脛骨への脛骨トレイ埋め込みの斜視図、側面図、及び前面図を示し、挿入器を介した6自由度の動きに対する制御を含む。
図25】それぞれ、近位脛骨への脛骨トレイ埋め込みの斜視図、側面図、及び前面図を示し、挿入器を介した6自由度の動きに対する制御を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態は、概して、例えば、全膝関節形成術中に脛骨トレイを埋め込むためのインプラント、器具、システム、及び方法を対象とする。具体的には、実施形態は、埋め込み中に脛骨トレイの制御及び操作性の向上をもたらすために挿入器器具を脛骨トレイにロックするように構成された、器具及びシステムを対象とする。挿入器器具は、挿入物と同じロック特徴、例えば、1つ以上の対応するタブを受容する、脛骨トレイの1つ以上のポケット又はノッチなどを利用し得る。挿入器器具は、脛骨トレイに動かないロック機構を提供するために移動可能な前部タブを含み得る。
【0013】
本発明の例示的な実施形態の追加の態様、利点、及び/又は他の特徴は、以下の詳細な説明を考慮して明らかになるであろう。本明細書で提供される記載された実施形態は、単に例示的かつ例示的であり、限定的ではないことが当業者には明らかであろう。多数の実施形態及びその修正が、本開示の範囲及びそれに対する等価物に該当するものとして企図される。
【0014】
ここで図1を参照すると、患者の脛骨2の近位端部に脛骨トレイ14を埋め込むために、一実施形態に従って挿入器器具10が脛骨トレイ14に取り付けられている。全膝関節形成術(TKA)中、近位脛骨2に対して平面切除4が行われ、人工器官又は脛骨トレイインプラント14と置換され得る。脛骨トレイ14は、患者の解剖学的構造に適合させるために、前後(AP)の向き及び内外(ML)の向きにおいて異なる複数のサイズで提供され得る。トレイ14は、トレイ14の遠位表面24上のキール構造34と、脛骨2の海綿骨に追加の支持を提供/(例えば、セメントレスの状況で)海綿骨への追加の固定を提供する1つ以上の任意選択のペグ42と、を含み得る。脛骨トレイ14のキール34が近位脛骨2に着座することを可能にするために、キール穿孔器(図示せず)を利用して、脛骨2の海綿骨内に初期空洞6を作製してもよい。ペグ42の受容を可能にするために、1つ以上の追加の開口部8が切除部4に形成されてもよい。脛骨2の全ての必要な準備が行われた後、脛骨トレイ14は、切除4され穿孔6された近位脛骨2に埋め込まれる。脛骨トレイ14は、トレイ14の適切な着座が行われることを確実にするために、定位置に嵌入され得る。トレイ14が設置され、挿入器10がそこから除去された後、挿入物16をトレイ14に接続して、脛骨インプラント組立体12を完成させることができる。
【0015】
脛骨トレイ14の配置は、脛骨の準備中に作られるキール穿孔空洞6によって予め決定されるが、トレイ14を埋め込むときに外科医の好みに基づいてわずかに変更されてもよい。これらの変更は、トレイ14の埋め込みのプロセス中の外科医の感覚及び好み、又は他のパラメータに基づいてもよい。外科医が正確な調整を行うために、脛骨トレイ14は、6自由度までの動きの制御を提供する挿入器10に取り付けられ、ロックされる。更に、修正手技中に、例えば挿入器ハンドルに螺合可能に受容されるスラップハンマーを使用することによって、挿入器10が、脛骨トレイ14を抽出及び除去するために使用されてもよい。
【0016】
膝関節形成術を参照して概して説明されるが、本明細書に記載の器具、インプラント、及びシステムは、椎骨間を含む脊椎、大腿骨などの長骨、脛骨、上腕骨、鎖骨、腓骨、尺骨、橈骨、足の骨、手の骨、又は他の好適な骨若しくは関節などの、他の整形外科的場所及び用途に適用され得ることを理解されたい。
【0017】
ここで図2図9を参照すると、脛骨インプラント組立体12が更に詳細に記載されている。図2及び図3は、患者の脛骨2の近位端部に配置するためにサイズ決め及び成形された脛骨トレイ14と、トレイ14内に受容可能なライナー又は挿入物16とを含む、脛骨インプラント組立体12を示す。挿入物16は、大腿骨インプラント(図示せず)と接合するように構成された関節接合面又は関節面52を含む。挿入物16は、脛骨トレイ14と大腿骨インプラントとの間に位置して、自然の膝の運動を模倣し、膝が屈伸及び屈曲する際に支持を提供する。基本的に、挿入物16は、膝が生理学的可動域を通過する際に関節腔のバランスをとり、関節接合面を提供する。
【0018】
インプラント組立体12は、1つ以上の生体適合性材料から構成され得る。例えば、脛骨トレイ14は、チタン、ステンレス鋼、コバルトクロム、炭素複合材、又は好適な合金などの金属から作製され得る。挿入物16は、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(ultra-high molecular weight polyethylene、UHMWPE)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK)、又はそのような材料の組み合わせなどのプラスチック又はポリマーから作製され得る。大腿骨インプラントはまた、コバルトクロム又はチタンなどの金属/金属合金から作製されてもよい。このようにして、構成要素は、滑らかな動きを提供し摩耗を最小限にするために、金属がプラスチックに対して関節接合するように構成されている。これらの材料は、機械加工され、鋳造され、3D印刷、減法製造、又はハイブリッド製造プロセスなどの付加製造から構築されてもよい。本明細書に記載の材料が例示されているが、任意の好適な材料及び構造が個々の構成要素に対して選択され得ることが理解されるであろう。
【0019】
図4及び図5を更に強調すると、脛骨トレイ14は、対向する近位表面22及び遠位表面24を含む、プレート20を含む。脛骨プレート14の遠位表面24は、脛骨2の切除面4に係合するように構成されている。脛骨プレート20は、挿入物16を受容するようにサイズ決め及び成形された挿入物受容空間28を画定する周縁、壁、又はリップ26を有する。プレート20の近位表面22は、挿入物受容空間28の遠位表面又は底部表面を画定する。
【0020】
脛骨プレート14は、前部側30及び対向する後部側32を含む。脛骨トレイ12の外側輪郭は、丸みを帯びていても湾曲していてもよい。例えば、脛骨トレイ12は、インゲン豆形状など、一方の側が窪んだ長い楕円形の一般的な形状を有していてよい。前部側30は、1つの長い側部として外側凸状側を形成し得、後部側32は、2つのローブ又は2つの丸みを帯びた端部を分離する内側凹状側を含み得る。脛骨プレート20及びリップ26は、概して、患者の脛骨2の近位端の特定のサイズ及び形状に適合するように構成された任意の好適なサイズ及び形状を有し得ることが理解されるであろう。
【0021】
脛骨インプラント12は、脛骨ステム又はキール34を含む。脛骨キール34は、患者の脛骨2の近位端部において、切除面4の穿孔された空洞6に挿入されるように構成されている。脛骨キール34は、脛骨プレート20の遠位表面24に取り付けられる。脛骨キール34は、脛骨プレート20の遠位表面24から全体的に遠位に延在する。脛骨キール34は、中実又は中空であり得る(例えば、中実又は中空のコアを有し得る)。
【0022】
脛骨キール34は、冠状フィン36及び/又は矢状フィン38を含む1つ以上のフィン36、38を含み得る。冠状フィン36(例えば、2つのフィン36)は、脛骨キール34の中心から外側に、患者の冠状面(例えば、垂直な左右方向に延在する平面)と略平行な方向に延在し得る。冠状フィン36は、わずかなV字形を形成するために、冠状面に対してわずかな角度、例えば、約15度以下であり得る。矢状フィン38(例えば、2つの矢状フィン)は、脛骨キール34の中心から外側に、患者の矢状面(例えば、垂直な前後方向に延在する平面)と略平行な方向に延在し得る。冠状フィン36及び矢状フィン38は、フィン36、38が遠位に延在するにつれて、内側に先細になっていてもよく、又は狭くなっていてもよい。矢状フィン38の幅もまた、フィン38が遠位に延在するにつれて、内側に(例えば、冠状面に略平行な方向に)先細になっていてもよい。フィン36、38は、空洞6への挿入を改善するために、丸みを帯びた縁部を有し得る。脛骨キール34の最遠位ノーズ又は先端部40は、例えば、冠状面及び/又は矢状面に沿って先細になっていてもよく、又は湾曲していてもよい。近位脛骨6の空洞6内への挿入及び保持を向上させるために、脛骨キール34に対する他の構成又は修正が提供され得ることが理解されるであろう。
【0023】
脛骨トレイ14は、少なくとも1つの係留突起又はペグ42を更に含み得る。各ペグ42は、患者の近位脛骨2の切除部4の対応する開口部8に挿入されるように構成されている。ペグ42は、例えば、セメントレス手技において脛骨2の海綿質骨に更なる支持を提供し、かつ/又は海綿質骨への更なる固定を提供するために、トレイ14上に提供されてもよい。脛骨トレイ14は、セメントを用いても用いなくても埋め込まれ得ることが理解されよう。ペグ42は、脛骨プレート14の遠位表面24から全体的に遠位に延在する。ペグ42は、略円形又は円錐形状(例えば、弾丸形状)を有してもよく、又は他の好適な形状が使用されてもよい。ペグ42は、例えば、丸みを帯びた、面取りされた、鋭利な、又はフィレット状の縁部を有する1つ以上の周囲リブを含み得る。リブは、骨の変位、骨折の危険性を最小限に抑え、かつ/又は骨の内部成長のための表面積を増加させるように構成され得る。ペグ42は、中実又は中空であり得る(例えば、中実又は中空のコアを有し得る)。ペグ42は、脛骨プレート20の遠位表面24の周囲で互いに離間され得る。例えば、ペグ42は、脛骨キール34がペグ42の間の中心に位置決めされた状態で、脛骨キール34の周りに配置されてもよい。所望の支持及び脛骨トレイ14への固定を達成するために、ペグ42の任意の好適な量及び配置が提供されてもよい。ペグ42は、互いに略同一であってもよく、又は別様に構成されてもよい。
【0024】
脛骨インプラント組立体12は、挿入物16が脛骨トレイ14に固定される固定ベアリング膝関節置換の一部を形成してもよい。例えば、挿入物16は、1つ以上のロック部材を用いて、挿入物空間28にスナップ嵌めすることができる。図示されるように、挿入物16は、1つ以上のインターロックタブ48、50及びノッチ44、46によってトレイ14にロックすることができる。トレイ14の周囲壁26は、挿入物16の一部分を受容して挿入物16を脛骨トレイ14の挿入物受容空間28に保持するために使用される、1つ以上の凹部、ポケット、又はノッチ44、46を画定し得る。
【0025】
挿入物16は、脛骨トレイ14の挿入物受容空間28内に受容されるように構成された、上部関節面52と反対側の下部面54とを有する本体を含む。上部関節面52は、大腿骨構成要素又はインプラント(図示せず)と関節接合するように、凹状になっていてもよくかつ起伏がつけられていてもよい。下部面54は、脛骨プレート20の近位面22に接触するように構成されている。挿入物16の外壁56は、一般的に脛骨トレイ14の外形に対応する、インゲン豆形状などの、片側が窪んだ長い楕円形の一般的形状を有し得る。挿入物16の遠位部分は、脛骨トレイ14の挿入物受容空間28内に受容可能な窪んだカラー58を画定する。カラー58は、脛骨トレイ14の対応するポケット又はノッチ44、46と係合するように構成された1つ以上のタブ48、50を画定する。タブ48、50は、弾性タブを形成するために、1つ以上のスリット又はレリーフカットによって画定されてもよい。
【0026】
挿入物16は、挿入物16の後部部分に沿って位置決めされた一対の後部タブ48と、挿入物16の前部部分に沿って位置決めされた単一の前部タブ50とを含み得る。図5で最も明らかなように、後部タブ48は、内側凹部によって分離された2つのローブ上に位置し得る。後部タブ48は各々、患者の冠状面(例えば、垂直な左右方向に延在する平面)と略平行な方向に延在する長さで伸長し得る。後部タブ48は、トレイ14の対応する後部ポケット又はノッチ44内に受容可能である。図4で最も明らかなように、前部タブ50は、挿入物16の凸側の中央に位置し得る。前部タブ50もまた、患者の冠状面と略平行な方向に延在する長さで伸長し得る。前部タブ50は、後部タブ48の各々よりも概して長くてよい。前部タブ50は、トレイ14の対応する前部ポケット又はノッチ46内に受容可能である。
【0027】
脛骨トレイ14は、3つのポケット44、46を利用して、ポリエチレン(ポリ)挿入物16のタブ48、50がトレイ14内にロックされるのを可能にする。後部タブ48は、脛骨トレイ14の後部ポケット44に締結される。脛骨トレイ14の後部に位置する2つのポケット44は、トレイ14のサイズが大きくなるにつれて、内外の向きにおいてわずかにシフトし得る。トレイ14の前部に位置する単一のポケット46は、前後の向きにおいてより大きくシフトし得る。これらのタブ48、50は、ポリ挿入物16、又はトレイ14と連携して動作し得る任意の器具を締結するための、唯一の方法であり得る。
【0028】
図6及び図7を更に強調すると、後部タブ48と後部ノッチ44との連結がより詳細に示されている。カラー58は、タブ48の近位に凹部60を画定し得る。凹部60は、トレイ14の縁部26から突設された内向きリップ62を受容するように構成され得る。リップ62の上部面は、略平面又は平坦であり得る。このようにして、カラー58がトレイ14の挿入物受容空間28に受容されるとき、後部タブ48はノッチ44に受容され、リップ62は凹部60に受容され、それにより挿入物16の後部部分を脛骨トレイ14に固設する。
【0029】
図8及び図9を更に強調すると、前部タブ50と前部ノッチ46との連結がより詳細に示されている。カラー58は、タブ50の上方近位に凹部64を画定し得る。凹部64は、トレイ14の縁部26から突設された内向きリップ66を受容するように構成され得る。リップ66は、凹部64への挿入を補助するために、リップ66の先端に沿って上部面に面取り面(bevel)又は面取り面(chamfer)を画定し得る。前部タブ50の更なる可撓性及び弾力性を可能にするために、前部タブ50の後ろにリリーフカット68が設けられてもよい。このようにして、カラー58が脛骨トレイ14内の挿入物受容空間28に受容されるとき、前部タブ50はノッチ46に受容され、リップ66は凹部64に受容され、それにより挿入物16の前部態様を脛骨トレイ14にロックする。
【0030】
ここで図10図25を参照すると、挿入器器具10は、挿入器10を脛骨トレイ14にロックするために、挿入物16と同じインターロックタブ及び既存のノッチ44、46の構成を利用することができる。脛骨トレイ14に対する挿入器器具10のロック可能機能により、脛骨トレイ14の、埋め込み中の6自由度の動き及び正確な配置に対する制御が可能となる。6自由度には、内部/外部回転、近位/遠位並進、前方/後方並進、前方/後方角形成、内側/外側並進、及び内反/外反角形成が含まれ得る。
【0031】
図10を強調すると、挿入器器具10は、ハンドル104に結合された本体102と、本体102内部で移動可能な前部タブ本体106とを含む。前部タブ本体106は、回転可能なシャフト108によって制御可能であり、シャフト108は、前部タブ本体106を本体102から拡張させ、それにより挿入器10を脛骨トレイ14にロックする。挿入器器具10は、近位端部110から中心長手方向軸Aに沿って遠位端部112まで延在する。近位端部110は、ユーザによって把持可能かつ制御可能なハンドル104を含む。遠位端部112は、脛骨トレイ14と係合するように構成された本体102を含み、それにより嵌入及び挿入中の脛骨トレイ14の動きを制御する。
【0032】
ハンドル104は、器具10の中心長手方向軸Aに沿って概ね位置合わせされ得る。ハンドル104は、遠位でねじ山付き端部116で終端する細長い本体114を含み得る。示される実施形態では、細長い本体114は、形状が略円筒形であってもよく、それを通る中空又は中心チャネルを有してもよい。ねじ山付き端部116は、本体102の対応するねじ山128とかみ合うように構成された1つ以上のねじ山を含み得る。対応するねじ山128はまた、必要に応じて、一般的な器具ハンドルとは対照的に、スラップハンマーに直接取り付けられるのに好適である。ハンドル114のねじ山付き端部116は、細長い本体114の外径に対して縮小された直径を有し得る。ハンドル104の近位端部110は、細長い本体114の外径よりも大きい外径を有する拡大ヘッド118を含み得る。拡大ヘッド18は、槌などの嵌入器具によって打たれるように構成され得る。ハンドル104は、一般的な器具ハンドルを含んでもよく、又はユーザによる操作のために別様に構成されてもよいことを理解されたい。ハンドル104はまた、スラップハンマーを取り付けることを可能にする、ねじ山付き特徴を端部110に含んでもよい。
【0033】
図11図13を強調すると、本体102は、上向き又は近位に突出する首部122と前方に突出する腕部124とを有する、基部又は足部120を含む。首部122は、1つ以上のめねじ山128を有する中央開口部126を画定する。首部122及び中央開口部126は、器具10の中心長手方向軸Aに沿って概ね位置合わせされ得る。ハンドル114のねじ山付き端部116が開口部126にねじ込まれると、ハンドル114は本体102に固設される。ハンドル114を本体102に固設するために、圧入、接着剤、ピンなどを含む他の取り付け方法が使用できることが理解されるであろう。
【0034】
基部又は足部120は、脛骨トレイ14の挿入物受容空間28内に嵌合するように概ねサイズ決め及び成形される。換言すれば、足部120の外壁は、トレイ14の窪み28に概ね対応する同じインゲン豆形状を有し得る。足部120は、前部タブ本体106の一部分を受容するように構成されたキー溝134によって分岐され得る。キー溝134は、前部タブ本体106上の対応するキー溝ウイング150を受容するように構成された1つ以上の溝又は凹部152を含んでもよい。足部120は、足部120の後部部分に沿って位置付けられる1つ以上の後部タブ136を含み得る。後部タブ136は、足部120に固定され得る。後部タブ136は、キー溝134によって分離された2つのローブ上に位置し得る。後部タブ136は各々、患者の冠状面(例えば、垂直な左右方向に延在する平面)と略平行な方向に延在する長さで伸長し得る。後部タブ136は、脛骨トレイ14の対応する後部ポケット又はノッチ44内に受容可能である。後部タブ136は、略平坦又は平面的な上部面138と、丸みを帯びた又は湾曲した下部面139とを有し得る。後部タブ136は、脛骨トレイ14の対応するノッチ44内に係止されるように、平坦な上部138への丸みを帯びた底部139の移行部を有し得る。
【0035】
足部120及び腕部124は、前部タブ本体106を受容するように構成された内側開口部130を画定し得る。開口部130は、器具10の中心長手方向軸Aに対して概ね横方向に位置合わせされ得る。例えば、開口部130は、器具10の中心長手方向軸Aに対して概ね垂直であり得る。腕部124は、開口部130と流体連通するシャフト貫通穴132を画定し得る。シャフト穴132は、回転可能なシャフト108を受容するように構成されている。図20で最も明らかなように、シャフト108は、腕部124の穴132を通り前部タブ本体106を通って延在し得、それにより、前部タブ本体106を固設し、前部タブ本体106の動きを制御する。
【0036】
ここで図14を参照すると、前部タブ本体106は、上向き又は近位に突設された舌部142を有する基部140を含む。基部106は、前部タブ本体106の前部部分に沿って位置決めされた前部タブ144を含む。前部タブ144は、患者の冠状面(例えば、垂直な左右方向に延在する平面)と略平行な方向に延在する長さで伸長し得る。前部タブ144は、前部タブ本体106の全幅に沿って延在してもよい。前部タブ144は、脛骨トレイ14の対応する前部ポケット又はノッチ46内に受容可能である。前部タブ144の上部面145は、平坦又は平面であり得る。前部タブ144は、脛骨トレイ14のノッチ46内に係止されるように、四角形にされたか又は角度を付けられた周辺部を有し得る。タブ144の上部145は、基部106の長さに沿って概ね凹状である湾曲した移行部147を含み得る。前部タブ144の幾何学形状は、最小の脛骨トレイ14(例えば、1T1Fサイズトレイ)に対応し得る。全てのトレイ14の間で幾何学形状が類似するため、前部タブ144もまた、他の全てのトレイサイズの前部ポケット46に係合するように構成されている。
【0037】
挿入器10のタブ136、144は、セット内の全てのトレイサイズに取り付けられるように構成されている。最小のトレイ14(例えば、サイズ1T1Fトレイ)が取り付けられると、タブ134、144の外側幾何学形状がポケット44、46に係合する。最大サイズのトレイ14(例えば、サイズ6T6Fトレイ)が取り付けられると、タブ134、144の内側幾何学形状がポケット44、46に係合する。最小サイズと最大サイズとの間のトレイサイズの任意のポケット44、46は、タブ136、144の平坦部138、145によって係合することができ、これは全てのトレイサイズ間で同様の特徴であってよい。
【0038】
図14を更に強調すると、前部タブ本体106の舌部142は、近位に突設され、器具10の本体102の腕部124の開口部130内に受容可能である。貫通穴146は、舌部142を貫通して設けられている。貫通穴146には、シャフト108のねじ山162に対応する1つ以上のねじ山148を有するめねじ山を内部に付けることができる。貫通穴146のねじ山148は、シャフト108の回転と連動して作用し、それによりタブ本体106が前後の向きに沿って並進することを可能にする。一実施形態では、穴146は、3条リードシャフト108と相互作用し、それにより前部タブ本体106の並進速度を増加させるように構成された、3条リードねじ穴である。並進速度を所望の仕様に調整するために、ねじ山タイプと、単一リードねじ山、2条リードねじ山、若しくは3条リードねじ山との異なる組み合わせを利用することができる。
【0039】
前部タブ本体106は、1つ以上のキー溝ウイング150を含み得る。一実施形態において、基部140は、反対方向に外向きに突設された一対のキー溝ウイング150を含む。キー溝ウイング150は、患者の冠状面(例えば、垂直な左右方向に延在する平面)と略平行な方向に延在する長さで、横方向外向きに延在し得る。各キー溝ウイング150は、多角形面及び直線縁部を有する略多面体の本体を有していてよい。例えば、キー溝ウイング150は立方体又は直方体の形状を有してもよいが、他の好適な形状及び構成が選択されてもよいことが理解されるであろう。ウイング150は、本体102の足部120に画定された対応する溝又は凹部152に嵌合するようにサイズ決め及び成形され得る。キー溝ウイング150は、前部タブ144に対して近位に、かつ舌部142の下に位置決めされ得る。キー溝ウイング150は、拡張が起こっている間の前後方向の角形成を防止するために、本体102内のキー溝134に嵌合するように構成されている。例えば、本体102内のキー溝134は、前部タブ本体106が、前後の向きにおいて3条リード穴146の中心周りのモーメントで角形成しないようにすることができる。
【0040】
ここで図15を参照すると、シャフト108は、前部タブ本体106と連携して動作し、タブ本体106が全てのトレイサイズに適合するように、前後の向きの並進運動を生じさせる。シャフト108は、その長さに沿って延在する1つ以上のねじ山162を有するシャフト本体160を含む。例示的な実施形態では、ねじ山162は、前部タブ本体106を通る穴146の対応する3条リードねじ山148とかみ合うように構成された3条リードねじ山を含む。シャフト108が回転すると前部タブ本体106が前後の方向に沿って並進し、それにより、前部タブ144がロック構成で前部ポケット46に係合することを可能にする。並進速度を所望の仕様に調整するために、ねじ山タイプと、1条/2条/3条リードねじ山との異なる組み合わせを利用することができる。シャフト160の一方の端部は、ユーザによって把持されるように構成された拡大ノブ164を有し得る。拡大ノブ164は、粗い刻み付き表面又は他の摩擦強化表面を有し得、これは、洗浄技術者又は外科医が、前部タブ144をトレイ14内の位置にトルクダウンし、ロック又はロック解除する際の補助となる。シャフト160の反対側の端部の先端部168の近くには、溝166が位置しており、そこでは、組立体を一緒にロックするために全ての部品が完全に組み立てられた後に外部保持リング170が締結される。
【0041】
ここで図16を参照すると、1つ以上のプラグ180は、本体102の底部平面135がトレイ14の近位面22に直接接触しないことを確実にするために、わずかに突出するように構成され得る。一実施形態では、挿入器10は3つのプラグ180を含み、2つはキー溝134の両側の足部120内にあり、1つは前部タブ本体106の基部140内にある。プラグ180は、脛骨トレイ14を損傷し望ましくない応力集中部を生じさせ得る金属同士の接触を回避するために、プラスチックから構成されていてもよい。プラグ180は、器具10がトレイ14内に受容されたときにプレート20の近位面22に接触するように構成された平坦な下部面182を有する、略円筒形の本体を有し得る。プラスチックプラグ180は、本体102に位置する2つの穴184及び前部タブ本体106に位置する1つの穴184に圧入され得る。プラスチックプラグ180の各々は、プラグ本体の開口部188を通って延在するダウエルピン186で固設され得る。前部タブ本体106について、ピン186は、前部タブ本体106の基部140の横断開口部154を通して受容され得る。同様に、各ピン186は、本体102の足部120の横断開口部154を通して受容され得る。各ダウエルピン186は、挿入器10の経時的な使用によってプラグ180の緩みが生じないことを確実にするために、挿入され面一に融合され得る。示される実施形態では、各ダウエルピン186は永久的に固定することができる。
【0042】
組み立てられると、前部タブ本体106は、本体102の開口部130及びキー溝134に挿入される。前部タブ本体106は、前部タブ144を脛骨トレイ14の前部ポケット46内に外向きに拡張するために、前後の方向に沿って開口部130及びキー溝134内で並進することが可能である。挿入物172は、前部タブ本体106の相対的な並進の総量を制限してもよい。シャフト108は、完全に拡張されるまで、両方の本体102、106にねじ込まれる。シャフト160は、本体102及び前部タブ本体106を通って延在する。本体102に接触するシャフト160の部分は、ねじ山付きでなくてもよいし、ねじ山付きでもよい。前部タブ本体106と係合されたシャフト160の部分は、前部タブ本体106を並進させるように前部タブ本体106にねじ接続され得る。シャフト108、ひいては前部タブ本体106は、外部保持リング170を利用して定位置にロックされ得る。第1のプラグ180は、前部タブ本体106の基部140の下部面を通って開口部184内に挿入され得、第2及び第3のプラグ180は、本体102の足部120の下部面135を通ってそれぞれの開口部184内に挿入され得る。プラグ180の各々は、ダウエルピン186によって所定位置に固設され得る。プラグ180は、トレイ14への損傷を防止するために、下方又は遠位に突出する。
【0043】
図17は、後退位置又はロック解除位置にある、前部タブ144を含む前部タブ本体106を示す。図18は、拡張位置又はロック位置にある、前部タブ144を含む前部タブ本体106を示す。明らかなように、前部タブ本体106は、本体102内のキー溝134を通って、ロック解除位置とロック位置との間で並進することができる。
【0044】
図19に示す後退位置では、前部タブ本体106はキー溝134内に位置決めされ、本体102の足部120内に完全に収容されている。脛骨トレイ14は、固定された後部タブ136が脛骨トレイ14の後部ノッチ44に係合することを可能にするように、上方に傾けられる。本体102の足部120が挿入物受容空間28内に完全に着座した後、前部タブ144はトレイ14にロックされ得る。シャフト108が図20に示されるように回転すると、前部タブ本体106は、前方方向に外向きに摺動する。前部タブ本体106のキー溝ウイング150は、拡張が起こっている間の前後方向の角形成を防止する。拡張位置では、前部タブ本体106は外向きに突出し、それにより前部タブ144が脛骨トレイ14の前部ノッチ46に係合し、挿入器10を脛骨トレイ14にロックすることを可能にする。
【0045】
図22は、前部タブ本体106の後退及びトレイ14からの器具10の除去を示す。シャフト108が反対方向に回転し、それにより、脛骨トレイ14の前部ノッチから前部タブ144を解放する。脛骨トレイ14は、固定された後部タブ136を解放し、器具10をトレイ14から自由にするように、下方に傾けられる。ここで、脛骨トレイ14の前部ノッチ44及び後部ノッチ46を同様に利用して、挿入物16が脛骨トレイ14内に位置決めされ、脛骨トレイ14にロックされてもよい。
【0046】
図23図25は、挿入器10を介した6自由度の動きに対する制御を示す。図23は、内部/外部回転を表すハンドル104の周りの曲線矢印と、近位/遠位並進を表す脛骨トレイ14の隣の直線矢印とを示す。図24は、前方/後方並進を表すハンドル104の隣の直線矢印と、前方/後方角形成を表す本体102の隣の曲線矢印とを示す。図25は、内側/外側並進を表すハンドル104の隣の直線矢印と、内反/外反角形成を表す本体102の隣の曲線矢印とを示す。脛骨トレイ14に対する挿入器器具10のロック可能機能により、脛骨トレイ14の、埋め込み中の6自由度の動き及び正確な配置に対する制御が可能となる。
【0047】
本発明は、詳細に、かつ特定の実施形態を参照して記載されているが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内にある提供される本発明の修正及び変形を網羅することが意図されている。例えば、上で開示される様々なデバイスの全ての構成要素が、任意の好適な構成で組み合わされ得るか、又は修正され得ることが明確に意図されている。
図1
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