(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】プリーツ形状の評価方法およびプリーツ体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/00 20060101AFI20241220BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
B01D39/00 B
G01B11/02 H
(21)【出願番号】P 2023058792
(22)【出願日】2023-03-31
【審査請求日】2024-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】菅ノ澤 洸斗
(72)【発明者】
【氏名】岡部 真悟
(72)【発明者】
【氏名】木村 英里香
(72)【発明者】
【氏名】越村 太一
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116378(JP,A)
【文献】特開2017-173088(JP,A)
【文献】特開2024-013193(JP,A)
【文献】特開2022-089024(JP,A)
【文献】特許第6661815(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00 - 39/20
G01B 11/02 - 11/06
G06N 20/00 - 20/20
G06F 30/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の材料(30)をプリーツ状に加工して得られるプリーツ体(20)のプリーツ形状の評価方法であって、
前記プリーツ体(20)の画像データ(56)から前記プリーツ形状に関する特徴量を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された前記特徴量に基づいて前記プリーツ形状を評価する評価工程と、
を備
え、
前記プリーツ体は、濾材である、
評価方法。
【請求項2】
前記評価工程では、前記抽出工程で抽出された前記特徴量を所定の基準と比較する工程を含む、
請求項
1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記特徴量は、
プリーツピッチ(a)、
プリーツ高さ(b)、
折り線が延びる方向を第1方向とし、前記プリーツ形状が連続する方向を第2方向とし、前記第1方向と前記第2方向の両方に垂直な方向を第3方向とした場合に、第1方向視において隣り合う山と谷を繋ぐ連絡部分(35)の前記第2方向における長さ(c)、
前記第1方向視における前記連絡部分の曲がり度合い、
前記第1方向視において互いに隣り合う前記連絡部分同士の対称性、
前記プリーツ体にプリーツ間隔を保持する間隔保持部(26、27、28、29)が設けられている場合の前記間隔保持部の長さと幅、
および、
これらの組合せ、
のいずれかである、
請求項1または2に記載の評価方法。
【請求項4】
シート状の材料(30)をプリーツ状に加工して得られるプリーツ体(20)のプリーツ形状の評価方法であって、
前記プリーツ体(20)の画像データ(56)から前記プリーツ形状に関する特徴量を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された前記特徴量に基づいて前記プリーツ形状を評価する評価工程と、
前記プリーツ体の前記画像データと前記プリーツ体の前記画像データに対応付けられた評価済データとの組を複数用いて前記プリーツ体の前記画像データと前記評価済データとの関係を機械学習することで評価モデル(59)を作成する評価モデル学習工程
と、
を備え、
前記評価工程では、前記抽出工程で抽出された前記特徴量を、前記評価モデル学習工程で作成した前記評価モデルに基づいて評価する、
評価方法。
【請求項5】
シート状の材料(30)をプリーツ状に加工して得られるプリーツ体(20)のプリーツ形状の評価方法であって、
前記プリーツ体(20)の画像データ(56)から前記プリーツ形状に関する特徴量を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された前記特徴量に基づいて前記プリーツ形状を評価する評価工程と、
前記シート状の材料をプリーツ状に加工する加工機に入力される加工条件データと、前記シート状の材料に関する物性データと、を含む入力条件と、前記入力条件に対応して得られる前記プリーツ体を前記評価工程で評価した評価結果データの組を複数用いて、前記入力条件と前記評価結果データの関係を学習する入力条件学習工程
と、
を備えた、
評価方法。
【請求項6】
前記加工条件データは、前記加工機が有する折刃と折込板の隙間量、前記加工機が前記材料を搬送する際の搬送速度、前記材料に間隔保持部を形成する樹脂が塗布される場合の塗布量、および、これらの組合せのいずれかが含まれる、
請求項
5に記載の評価方法。
【請求項7】
前記入力条件学習工程で得られるモデルに基づいて前記入力条件を出力装置(62)に出力させる、
請求項
5に記載の評価方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の評価方法において出力された前記入力条件を用いて前記プリーツ体を製造する、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリーツ形状の評価方法およびプリーツ体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1(特開2016-026870号公報)に記載のフィルタ濾材のように、シート状のものがプリーツ形状に加工されて用いられるプリーツ体が知られている。
【0003】
このようなプリーツ体は、所望の機能を発揮させるため等の目的で、加工機により意図したプリーツ形状に加工されることが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、シート状物を加工して意図した形状のプリーツ体とするためには、シート状物の材料や物性、加工機の設定条件や使用環境に応じた製造条件の調整が必要になる場合があり、プリーツ形状を目視した熟練者の感覚に基づいた製造条件の調整能力に依存しているのが現状である。
【0005】
このため、プリーツ体のプリーツ形状の客観的な評価を可能にすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点に係る評価方法は、シート状の材料をプリーツ状に加工して得られるプリーツ体のプリーツ形状の評価方法であって、抽出工程と、評価工程と、を備える。抽出工程では、プリーツ体の画像データからプリーツ形状に関する特徴量を抽出する。評価工程では、抽出工程で抽出された特徴量に基づいてプリーツ形状を評価する。
【0007】
この評価方法によれば、プリーツ体のプリーツ形状を客観的に評価することが可能になる。
【0008】
第2観点に係る評価方法は、第1観点の評価方法であって、プリーツ体は、濾材である。
【0009】
この評価方法は、濾材のプリーツ形状を客観的に評価することが可能になるため、濾材の性能も客観的に評価することが可能になる。
【0010】
第3観点に係る評価方法は、第1観点または第2観点の評価方法であって、評価工程では、抽出工程で抽出された特徴量を所定の基準と比較する工程を含む。
【0011】
この評価方法は、プリーツ体のプリーツ形状が所定の基準を満たすものであるか否かを把握することが可能になる。
【0012】
第4観点に係る評価方法は、第1観点から第3観点のいずれかの評価方法であって、特徴量は、プリーツピッチ、プリーツ高さ、第1方向視において隣り合う山と谷を繋ぐ連絡部分の第2方向における長さ、第1方向視における連絡部分の曲がり度合い、第1方向視において互いに隣り合う連絡部分同士の対称性、プリーツ体にプリーツ間隔を保持する間隔保持部が設けられている場合の間隔保持部の長さと幅、および、これらの組合せのいずれかである。ここで、第1方向は、折り線が延びる方向である。第2方向は、プリーツ形状が連続する方向である。第3方向は、第1方向と第2方向の両方に垂直な方向である。
【0013】
この評価方法は、プリーツ形状の評価の客観性を高めることが可能になる。
【0014】
第5観点に係る評価方法は、第1観点から第4観点のいずれかの評価方法であって、評価モデル学習工程をさらに備える。評価モデル学習工程では、プリーツ体の画像データとプリーツ体の画像データに対応付けられた評価済データとの組を複数用いてプリーツ体の画像データと評価済データの関係を機械学習することで評価モデルを作成する。評価工程では、抽出工程で抽出された特徴量を、評価モデル学習工程で作成した評価モデルに基づいて評価する。
【0015】
この評価方法によれば、評価結果の客観性が高まる。
【0016】
第6観点に係る評価方法は、第1観点から第5観点のいずれかの評価方法であって、入力条件学習工程をさらに備える。入力条件学習工程では、入力条件と評価結果データの組を複数用いて、入力条件と評価結果データの関係を学習する。入力条件は、シート状の材料をプリーツ状に加工する加工機に入力される加工条件データと、シート状の材料に関する物性データと、を含む。評価結果データは、入力条件に対応して得られるプリーツ体を評価工程で評価したデータである。
【0017】
この評価方法によれば、評価結果の客観性がさらに高まる。
【0018】
第7観点に係る評価方法は、第6観点の評価方法であって、加工条件データは、加工機が有する折刃と折込板の隙間量、加工機が材料を搬送する際の搬送速度、材料に間隔保持部を形成する樹脂が塗布される場合の塗布量、および、これらの組合せのいずれかが含まれる。
【0019】
この評価方法によれば、評価結果の客観性がさらに高まる。
【0020】
第8観点に係る評価方法は、第6観点または第7観点の評価方法であって、入力条件学習工程で得られるモデルに基づいて入力条件を出力装置に出力させる。
【0021】
この評価方法によれば、客観的な評価に基づいた入力条件を把握することが可能になる。
【0022】
第9観点に係る製造方法は、第8観点の評価方法において出力された入力条件を用いてプリーツ体を製造する。
【0023】
この製造方法は、製造されるプリーツ体において、意図したプリーツ形状を実現させやすい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】間隔保持部が設けられたプリーツ体の一例の概略外観斜視図である。
【
図3】プリーツ体の第1方向視におけるプリーツ形状を示す図である。
【
図4】シート状の材料の一例における断面図である。
【
図6】シート状の材料の延伸に用いた装置の模式図である。
【
図7】シート状の材料の幅方向への延伸に用いた装置(左半分)およびシート状の材料に通気性支持材をラミネートする装置(右半分)を模式的に示す図である。
【
図9】間隔保持部の塗布および再プリーツ加工工程に用いる装置を示す模式図である。
【
図10】再プリーツ加工工程における折刃が後退した状態を示す図である。
【
図11】再プリーツ加工工程における折刃が折り込み位置に移動した状態を示す図である。
【
図12】カメラと評価情報処理装置の一例におけるシステム構成図である。
【
図13】評価情報処理装置による評価処理のフローチャートである。
【
図14】カメラと評価情報処理装置の他の例におけるシステム構成図である。
【
図15】評価情報処理装置による評価処理のフローチャートである。
【
図16】加工機とカメラと評価情報処理装置の一例におけるシステム構成図である。
【
図17】プリーツ体の製造処理のフローチャートである。
【
図18】折刃と折込板の隙間を変えた場合に得られるプリーツ体の側面視写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1)プリーツ形状の評価方法
プリーツ形状の評価方法では、シート状の材料をプリーツ状に加工して得られるプリーツ体のプリーツ形状を評価する。この評価方法では、抽出工程と、評価工程と、を備える。抽出工程では、プリーツ体の画像データからプリーツ形状に関する特徴量を抽出する。評価工程では、抽出工程で抽出された特徴量に基づいてプリーツ形状を評価する。これにより、熟練者の視認によるプリーツ形状の評価に依存することなく、プリーツ体のプリーツ形状を客観的に評価することが可能になる。
【0026】
プリーツ体のプリーツ形状としては、例えば、プリーツ体20の一例の概略外観斜視図である
図1に示すように、シート状の材料30について山折りと谷折をくり返すことで、複数の山折り線Xと複数の谷折り線Yが互いに平行に並ぶように折り込まれたものの形状であってよい。ここで、複数の山折り線Xのそれぞれに直交する直線と、複数の谷折り線Yのそれぞれに直交する直線とは、互いに平行であってよい。
【0027】
なお、プリーツ体の画像データの取得方法は、特に限定されず、例えば、山折り線と谷折り線が延びる方向から撮像されたものであってよい。なお、プリーツ体の画像データは、特に限定されないが、例えば、カメラにより山と谷のペアが3組以上30以下撮影されるように、フレーミングをしてもよい。また、所定位置からのカメラによるプリーツ体の画像取得では、搬送方向にプリーツ体が搬送されていくことで山と谷のペアが所定数移動するような所定時間間隔で撮像することが好ましい。
【0028】
(2)抽出工程
抽出工程では、プリーツ体の画像データからプリーツ形状に関する特徴量を抽出する。ここでの抽出処理は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサやRAMやROM等のメモリを有するコンピュータ等の情報処理装置を用いて抽出することが好ましい。
【0029】
(2-1)プリーツ形状の特徴量
プリーツ形状に関する特徴量としては、例えば、山折り線と谷折り線が延びる方向からプリーツ形状を見た場合に見える曲線や直線の縁部分の形状を数値化させたものであってよく、1つの特徴量だけから構成されていてもよいし、複数の特徴量を含んで構成されていてもよい。これにより、プリーツ形状の評価の客観性を高めることができる。
【0030】
より具体的には、特徴量は、例えば、プリーツピッチ、プリーツ高さ、第1方向視における隣り合う山と谷を繋ぐ連絡部分の第2方向における長さ、第1方向視における連絡部分の曲がり度合い、第1方向視において互いに隣り合う連絡部分同士の対称性、プリーツ体にプリーツ間隔を保持する間隔保持部が設けられている場合の間隔保持部の長さと幅、および、これらの組合せのいずれかである。ここで、第1方向は、複数の山折り線Xと複数の谷折り線Yが延びる方向である。第2方向は、プリーツ形状が連続する方向であって、複数の山折り線Xが並ぶ方向ということもでき、複数の谷折り線Yが並ぶ方向ということもできる。第3方向は、第1方向と第2方向の両方に垂直な方向である。なお、第3方向は、プリーツ形状の濾材については、被処理流体を通過させる方向ということもできる。
【0031】
ここで、プリーツ体は、
図2の概略外観斜視図に示すように、隣り合う山部分同士の間隔を保持するための山間隔保持部26と、隣り合う谷部分同士の間隔を保持するための谷間隔保持部27と、のいずれかまたは両方が設けられていてもよい。山間隔保持部26や谷間隔保持部27等の間隔保持部は、任意であり、プリーツ体において設けられる位置や形状、太さ等も任意である。なお、
図2では、間隔保持部が設けられたプリーツ体20の折り込み隙間を少し広げた状態を示しているが、折り線方向から見た断面図である
図3に示すように、山間隔保持部26は隣り合う山部同士において対向する面が接触しないように間隔を保持する機能を有し、谷間隔保持部27は隣り合う谷部同士において対向する面が接触しないように間隔を保持する機能を有する。なお、
図3では、紙面の奥行き方向が第1方向であり、紙面の左右方向が第2方向であり、紙面の上下方向が第3方向となっている。なお、
図3では、間隔保持部について、山間隔保持部26が第3方向において山折り線Xよりも外側に設けられており、谷間隔保持部27が第3方向において谷折り線Yよりも外側に設けられている場合を例として挙げている。
【0032】
以下、特徴量のパラメータについて、
図3を参照して説明する。
【0033】
プリーツピッチaとしては、互いに隣り合う山折り線X同士の第2方向における長さをいい、複数の谷折り線Y同士の第2方向における長さということもできる。なお、ここで、山折り線Xは、山部分の第3方向における端部をいう。また、谷折り線Yは、谷部分の第3方向における端部をいう。なお、プリーツピッチaの代わりに、プリーツピッチaからシートの厚みを減じた値をパラメータとして用いてもよい。
【0034】
プリーツ高さbは、互いに隣り合う山折り線Xを結ぶ線と、当該隣り合う山折り線Xの間の谷折り線Yから第3方向に延びる線と、の交点Zと当該谷折り線Yの間の第3方向における長さをいう。また、プリーツ高さbは、互いに隣り合う谷折り線Yを結ぶ線と、当該隣り合う谷折り線Yの間の山折り線Xから第3方向に延びる線と、の交点Zと当該山折り線Xの間の第3方向における長さをいう。
【0035】
第1方向視において隣り合う山と谷を繋ぐ連絡部分35の第2方向における長さcは、
図3において、谷とその右側で隣り合う山を繋ぐ連絡部分35aのうち、谷側において最も右側に起伏している部分と、山側において最も左側に起伏している部分と、の第2方向における長さ(c1)をいう。また、第1方向視において隣り合う山と谷を繋ぐ連絡部分35の第2方向における長さcは、
図3において、山とその右側で隣り合う谷を繋ぐ連絡部分35bのうち、山側において最も右側に起伏している部分と、谷側において最も左側に起伏している部分と、の第2方向における長さ(c2)をいう。ここで、
図3において、右側を第2方向における一方側ということができ、左側を第2方向における他方側ということができる。
【0036】
第1方向視における連絡部分の曲がり度合いは、特に限定されないが、例えば、連絡部分の第3方向における長さdに対する当該連絡部分の第2方向における長さcの比(c/b)とすることができる。当該比の値が大きいほど、曲がり度合いが大きいと評価することができる。そして、例えば、プリーツ体がフィルタ濾材である場合には、比(c/b)の値が大きいほど、曲がり度合いが大きく、流体を通過させる際の流路が狭くなり、有効表面積が減少することで、圧力損失が増大してしまう、と評価することができる。
【0037】
第1方向視において互いに隣り合う連絡部分同士の対称性は、特に限定されないが、例えば、互いに隣り合う連絡部分の曲がり度合いの相違であってよい。より具体的には、例えば、互いに隣り合う連絡部分の比(c/b)の差としてもよい。
【0038】
プリーツ体にプリーツ間隔を保持する間隔保持部が設けられている場合の間隔保持部の長さとしては、山折り線Xまたは谷折り線Yに交差する方向に延びる部分の長さであってよい。なお、当該長さの代わりに、例えば、プリーツ高さbに対する間隔保持部の第3方向の長さの比を用いてもよい。
【0039】
プリーツ体にプリーツ間隔を保持する間隔保持部が設けられている場合の間隔保持部の幅は、山折り線Xまたは谷折り線Yと平行な方向である第1方向における長さであってよい。
【0040】
また、プリーツ体にプリーツ間隔を保持する間隔保持部が第1方向に所定間隔で設けられている場合には、当該第1方向における間隔をさらに特徴量として用いてもよい。
【0041】
(3)評価工程
評価工程では、抽出工程で抽出された特徴量に基づいてプリーツ形状を評価する。ここでの評価処理は、例えば、各種情報処理を行うCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサやRAMやROM等のメモリを有するコンピュータ等の評価情報処理装置を用いて抽出することが好ましい。
【0042】
評価工程では、例えば、抽出工程で抽出された特徴量を、所定の基準と比較する工程を含むことが好ましい。これにより、プリーツ体のプリーツ形状が所定の基準を満たすものであるか否かを把握することが可能になる。
【0043】
なお、所定の基準としては、上述した特徴量毎に設けられていてもよいし、上述した特徴量のうちの少なくともいずれか2つ以上を用いた数式により定められたものであってもよい。
【0044】
また、所定の基準の定め方は、特に限定されるものではなく、例えば、得られたプリーツ体のプリーツ形状が所望の条件を満たしていることを保証するための基準であってよい。
【0045】
また、例えば、プリーツ体がフィルタ濾材である場合には、得られたプリーツ体に対して被処理流体を通過させる場合の圧力損失が所定条件を満たすことになる所定の基準を定めるようにしてもよい。
【0046】
(4)プリーツ体の用途
プリーツ状に加工してされるシート状態の材料30は、特に限定されないが、例えば、濾材、吸着体等が挙げられる。このような濾材や吸着体は、複数の層を有して構成されるものであってもよい。濾材としては、例えば、
図4の断面図に示すように、主捕集層31と、その一方に積層された第1支持層32と、他方に積層された第2支持層33と、を備えたものであってよい。また、濾材としては、主捕集層31に対して、被処理流体を通過させる方向における一方側または他方側にのみ積層された支持層を有するものであってもよい。
【0047】
なお、濾材としては、被処理流体が気体であるエアフィルタ濾材であってもよいし、被処理流体が液体の濾材であってもよいし、被処理流体が粉体の濾材であってもよいし、被処理流体が気体、液体、粉体の少なくとも2つ以上の混合物であってもよい。
【0048】
濾材としては、例えば、ガラス繊維製濾材、有機繊維製濾材、ナノファイバーを備えた濾材が挙げられる。有機繊維製濾材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという場合がある。)からなる多孔膜(以下、PTFE多孔膜という場合がある。)等のフッ素樹脂多孔膜が挙げられる。このようなフッ素樹脂多孔膜は、ガラス繊維製濾材に比べて同じ圧力損失で比較したとき塵の捕集効率が高いことから、特に、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)やULPAフィルタ(Ultra low Penetration Air Filter)に好適に用いられている。
【0049】
ここで、プリーツ形状の濾材は、複数の山折り線Xが位置する平面と複数の谷折り線Yが位置する平面とのそれぞれに交差する方向に被処理流体を通過させて用いる場合に、プリーツ形状が抵抗を受けて変形することで、濾材の下流側で互いに対向する面同士が接してしまい、通過抵抗の増大や有効濾過面積の減少が生じ、性能低下が生じうる。このプリーツ形状の変形は、プリーツ形状の均一性が低い場合に生じやすいため、得られたプリーツ体のプリーツ形状の均一性が高いことが求められる。これに対して、この評価方法では、濾材のプリーツ形状を客観的に評価することが可能になるため、濾材の性能も客観的に評価することが可能になる。また、この評価方法によりプリーツ形状について良好な評価を得たプリーツ体は、濾材の性能が良好であることを推定することも可能になる。
【0050】
(5)プリーツ体を備えるユニット
次に、
図5を参照して、プリーツ体を備えるユニットについて説明する。
【0051】
プリーツ体を備えるユニット100は、上記説明したプリーツ体20と、プリーツ体20を収容する枠体25と、を備えている。
【0052】
枠体25は、例えば、樹脂や金属等の板材を組み合わせて作られ、プリーツ体20と枠体25の間は好ましくはシール剤によりシールされる。シール剤は、プリーツ体20と枠体25の間のリークを防ぐためのものであり、例えば、エポキシ、アクリル、ウレタン系などの樹脂製のものが用いられる。
【0053】
(6)濾材の製造方法
図6および
図7に、シート状の材料の例である濾材の製造方法について、一例の概要を示す。なお、ここでは、フッ素樹脂多孔膜の一例であるPTFE多孔膜を例に挙げて説明する。
【0054】
図6において、1は巻き出しロール、2は巻き取りロール、3~5はロール、6,7はヒートロール、8~12はロールをそれぞれ示す。また、
図7において、14は巻き出しロール、15は余熱ゾーン、16は延伸ゾーン、17は熱固定ゾーン、19はラミネートロール、21は巻き取りロールをそれぞれ示す。
【0055】
多孔膜作製工程では、
図6に示す工程と
図7の左半分に示す工程とにより、PTFE未焼成フィルムを2軸延伸してPTFE多孔膜を作製する。このようなフッ素樹脂多孔膜は、薄く、柔らかいものであるため、以下の工程で、支持材を積層することで支持させる。
【0056】
熱ラミネート工程では、
図7の右半分に示す工程により、PTFE多孔膜の両側に不織布からなる通気性支持材18を熱ラミネートしてフィルタ濾材であるシート状の材料30を得る。
【0057】
巻き取り工程では、フィルタ濾材であるシート状の材料30を巻き取りロール21に巻き取る。
【0058】
なお、フィルタ濾材は、HEPAフィルタ、ULPAフィルタ、または中性能フィルタとして用いることが可能であるものが好ましい。フッ素樹脂多孔膜を利用したこれらのフィルタ濾材は、繊維径が非常に細かく、微細な繊維構造を有するとともに膜厚が小さい。なお、フッ素樹脂多孔膜の膜厚は、例えば、1μm以上100μm以下であってよく、圧力損失を低減させる観点から、1μm以上50μm以下が好ましく、1μm以上30μm以下がより好ましい。また、フッ素樹脂多孔膜の平均繊維径は、例えば、0.01μm以上0.25μm以下であってよく、0.05μm以上0.2μm以下であることが好ましい。当該平均繊維径は、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、数平均繊維径として算出してもよい。
【0059】
(7)プリーツ体の製造方法
図8および
図10に、プリーツ体20の製造方法の一例の概要を示す。
【0060】
プリーツ体の製造方法では、巻き出し工程と、プリーツ加工工程と、展開工程と、間隔保持部塗布工程と、再プリーツ加工工程と、が行われる。
【0061】
巻き出し工程では、上記巻き取り工程で巻き取りロール21に巻き取られたシート状の材料30を巻き出す。なお、巻き取りロール21に巻き取られた材料30は、巻き癖が生じている場合があり、巻き取りロール21の半径が短い箇所ほど大きな曲率で巻き取られているため、巻き癖が大きくなる傾向にある。
【0062】
プリーツ加工工程では、
図8に示すように、加工機の一対の上折刃41と下折刃42を用いることで、シート状の材料30を、交互に折り返して波型形状に加工(プリーツ加工)して、波型の折り線を形成する。なお、加工機は、上折刃41と下折刃42の間の折り込み加工箇所に対してシート状の材料30を送り出しながら、上折刃41と下折刃42により材料30を折り込む。このため、材料30には、搬送進行方向に力が作用した状態で上折刃41と下折刃42により折り込まれることになる。ここで、加工機では、設定入力を受け付けること等により、材料30の搬送速度を調節可能である。その後、波型形状に加工された材料30を、ヒータ22により加熱することで、折り癖をつける。
【0063】
展開工程では、
図9に示すように、プリーツ加工された材料30をシート状に展開する。
【0064】
間隔保持部塗布工程では、
図9に示すように、展開された材料30に対して、加工機が、山間隔保持部26、28、谷間隔保持部27、29等の間隔保持部を形成する樹脂等の材料を塗布する。間隔保持部の塗布は、材料30の搬送方向と厚み方向の両方に直交する方向に所定間隔で配置されたノズルから、溶融状態の樹脂を塗布させること等により行われる。なお、加工機は、設定入力を受け付けること等により、間隔保持部の塗布量を調節することができる。具体的には、搬送速度に対する溶融状態の樹脂の吐出速度を調節することにより、塗布量が調節される。
【0065】
再プリーツ加工工程では、間隔保持部が塗布された材料30に対して、加工機の一対の上折刃43と下折刃44を用いて、再度プリーツ加工してプリーツ体20を得る。なお、上折刃43と下折刃44は、間隔保持部と干渉しないように、櫛歯形状となっている。なお、上述のプリーツ加工工程と同様に、加工機は、上折刃43と下折刃44の間の折り込み加工箇所に対してシート状の材料30を送り出しながら、上折刃43と下折刃44により材料30を折り込む。このため、材料30には、搬送進行方向に力が作用した状態で上折刃43と下折刃44により折り込まれることになる。ここで、加工機では、設定入力を受け付けること等により、材料30の搬送速度を調節可能である。
【0066】
なお、再プリーツ加工工程では、
図10に示すように、上折刃43が上方に退き下折刃44が下方に退いた状態で、材料30が搬送方向に搬送される状態から、
図11に示すように、上折刃43が下方の折り込み位置に降下し、下折刃44が上方の折り込み位置に上昇することで、材料30をプリーツ形状に加工していく。なお、以下、プリーツ加工工程と再プリーツ加工工程の両方を含めてプリーツ加工と称する場合がある。ここで、
図11に示すように、プリーツ加工機では、設定入力を受け付けること等により、プリーツ高さbまたはプリーツ高さbに対して所定量だけ大きな長さに対応するように、上折込板45と下折込板46との上下方向の間隔uが調節される。さらに、プリーツ加工機では、設定入力を受け付けること等により、下折込板46の上面と上折刃43の下端とが最も近接する際の上下方向の隙間sが調節される。同様に、プリーツ加工機では、設定入力を受け付けること等により、上折込板45の下面と下折刃44の上端とが最も近接する際の上下方向の隙間tが調節される。
【0067】
以上のように、プリーツ加工機では、材料30の搬送速度、隙間s、隙間t、間隔保持部を形成する樹脂等の材料の塗布量の調節等により、得られるプリーツ体の形状が変わりうる。例えば、材料30の搬送速度が変わると上折刃43や下折刃44等の折刃から材料30に掛かる圧力が変化し、隣り合う山と谷を繋ぐ連絡部分35の第2方向における長さcの変化やプリーツピッチaの変化が生じる場合があり、得られるプリーツ体の形状が変わりうる。また、間隔保持部を形成する樹脂等の材料の塗布量が変わると、プリーツピッチaの変化が生じる場合があり、得られるプリーツ体の形状が変わりうる。さらに、隙間sや隙間tが変わると、上折刃43や下折刃44等の折刃から材料30に掛かる圧力が変化し、材料30において折刃により折られる位置が変化し、隣り合う山と谷を繋ぐ連絡部分35の第2方向における長さcの変化やプリーツピッチaの変化が生じる場合があり、得られるプリーツ体の形状が変わりうる。その他、材料30の剛性が大きい場合や材料30の厚みが大きい場合には、プリーツ加工による折癖が付きにくいことで得られるプリーツ体の形状が変わりうる。
【0068】
プリーツ体の画像データは、例えば、再プリーツ加工工程を経て得られるプリーツ体をカメラ48で撮像することで得られる。
【0069】
(8)プリーツ形状の評価の一例
以下に、エアフィルタ濾材として用いられるプリーツ体について、第1方向視における隣り合う山と谷を繋ぐ連絡部分の第2方向における長さcの1つの画像中の平均値を指標として、プリーツ形状を評価情報処理装置50とカメラ48を用いて評価する場合を例に挙げて説明する。
【0070】
ここでは、
図9に示すように、カメラ48は、再プリーツ加工工程を終えて、プリーツ形状が形成されたプリーツ体を、折り目の延長方向から撮影するように設けられている。また、
図12に示すように、カメラ48は、撮像したプリーツ体の画像データ49を記録しており、通信回線を介して評価情報処理装置50に送付することができる。
【0071】
評価情報処理装置50は、各種情報処理を行うCPUやGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ51と、RAMやROM等を有して構成されるメモリ53と、データを表示出力することが可能なディスプレイ52と、を有している、コンピュータ等の情報処理装置である。メモリ53には、カメラ48から送られてきた画像データ49を、そのまま画像データ56として格納される。また、メモリ53には、画像データ56を指標化させるための指標化プログラム54と、基準値データ55と、が格納されている。
【0072】
以上に示す構成において、評価情報処理装置50による評価処理フローを
図13に示す。
【0073】
ステップS11では、プロセッサ51は、カメラ48から送信されてきた画像データ49を、そのまま画像データ56としてメモリ53に格納させる。
【0074】
ステップS12では、プロセッサ51は、メモリ53に格納されている指標化プログラム54をステップS11で取得した画像データ56について実行することで、当該画像データ56に対応した特徴量である指標値を算出する。具体的には、1つの画像データ56に含まれる複数の連絡部分35(
図3参照)の第2方向における長さcの平均値を指標値として算出する。具体的には、
図3に示すc1とc2の1つの画像中の合計を1つの画像中の連絡部分35の数で除して得られる値を指標値として算出する。
【0075】
ステップS13では、プロセッサ51は、ステップS12で算出した指標値が、メモリ53に格納されている基準値データの示す基準値よりも小さいか否かを判断する。そして、小さいと判断された場合には、ステップS14に移行し、大きいと判断された場合には、ステップS16に移行する。
【0076】
ステップS14では、プロセッサ51は、プリーツ体20の連絡部分35の第2方向における長さcの平均値が基準値よりも小さいため、起伏が小さく、プリーツ形状が良好であると判断する。
【0077】
ステップS15では、プロセッサ51は、良品であることをディスプレイ52に表示出力し、次の画像データの取得の処理へ移行する。
【0078】
ステップS16では、プロセッサ51は、プリーツ体20の連絡部分35の第2方向における長さcの平均値が基準値よりも大きいため、起伏が大きく、プリーツ形状が不良であると判断する。
【0079】
ステップS17では、プロセッサ51は、不良品であることをディスプレイ52に表示出力し、次の画像データの取得の処理へ移行する。
【0080】
なお、以上の処理において、基準値データ55は、既に得られているプリーツ体20のうち良好なプリーツ形状を有していると視認されるものの指標値に基づいて定めるようにしてもよい。また、基準値データ55は、既に得られているプリーツ体20のうち所定の圧力損失の測定値が所定値よりも低いことが確認されたものの指標値に基づいて定めるようにしてもよい。
【0081】
(9)評価方法の機械学習の一例
以下に、エアフィルタ濾材として用いられるプリーツ体について、第1方向視における隣り合う山と谷を繋ぐ連絡部分の第2方向における長さcの1つの画像中の平均値を指標として、プリーツ形状を
図14に示すように構成された評価情報処理装置50aとカメラ48を用いて機械学習により評価する場合を例に挙げて説明する。なお、評価情報処理装置50aは、メモリ53に評価用機械学習プログラム58を格納しており、評価結果と対応する画像データとを対応付けた評価対応関係データ57をメモリ53に蓄積するように格納させ、機械学習により得られる評価モデル59をメモリ53に格納させる点で、評価情報処理装置50とは異なる。
【0082】
以上に示す構成において、評価情報処理装置50aによる評価処理フローを
図15に示す。なお、ステップS11~S15およびS17までは、上記評価情報処理装置50による評価処理フローと同様であるため、割愛する。上記ステップS15またはS17の処理を終えた後は、それぞれステップS18に移行する。
【0083】
ステップS18では、プロセッサ51は、ステップS15における評価結果を対応する画像データと共に対応づけて評価対応関係データ57としてメモリ53に格納させる。同様に、ステップS17における評価結果を対応する画像データと共に対応づけて評価対応関係データ57としてメモリ53に格納させる。
【0084】
ステップS19では、プロセッサ51は、評価対応関係データ57が所定量以上蓄積されているか否かを判断する。ここで、評価対応関係データ57の蓄積量が所定量未満である場合には、ステップS11に戻って評価対応関係データ57の蓄積を続ける。また、評価対応関係データ57の蓄積量が所定量以上である場合には、ステップS20に移行する。
【0085】
ステップS20では、プロセッサ51は、評価対応関係データ57に含まれる画像データと評価結果の複数組のデータを用いて、ディープラーニング等によりニューラルネットワークを機械学習させ、評価モデル59を得る。なお、機械学習のアルゴリズムとしては、ディープラーニングに限られず、サポートベクターマシン、ガウシアンプロセス、決定木、ランダムフォレスト等の公知のアルゴリズムを用いてもよい。
【0086】
ステップS21では、プロセッサ51は、ステップS20で得た評価モデル59を、メモリ53に格納させる。これにより、ステップS12における指標化において、メモリ53に格納されている評価モデル59を用いた指標化を行い、評価を続ける。
【0087】
以上のように、機械学習により得られる評価モデル59を用いてプリーツ体のプリーツ形状を指標化させて評価を行うことにより、プリーツ体のプリーツ形状の客観的な評価が可能になる。
【0088】
なお、上記機械学習では、特に限定されず、例えば、良品と判断されるプリーツ体の画像データに共通する特徴を機械学習により抽出させることで、新たな指標化を可能とする評価モデル59を得るものであってもよい。そして、評価モデル59により指標化される値に対応するように、基準値を更新させるようにしてもよい。この場合には、プリーツ形状の評価をより客観的なものとすることができる。なお、ここでの、画像データから抽出される特徴量としては、上述の「(2-1)プリーツ形状の特徴量」において説明したもののいずれかまたはその組合せが用いられるようにしてもよい。
【0089】
(10)プリーツ体の製造時の情報処理
以下、プリーツ体の製造時の情報処理を、加工機60と評価情報処理装置50とカメラ48を例に用いて、
図16のブロック図と、
図17のフローチャートに基づいて説明する。なお、ここでは、加工機60と評価情報処理装置50とカメラ48とは互いに通信可能に接続されている。
【0090】
加工機60は、各種情報処理を行うCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ61と、RAMやROM等のメモリ70と、ディスプレイ62と、温度センサ63と、湿度センサ64と、受付部65と、搬送部66と、折刃部67と、塗布部68と、ロール部69等を備えている。
【0091】
温度センサ63は、プリーツ加工が行われる空間の気温を把握するためのセンサである。
【0092】
湿度センサ64は、プリーツ加工が行われる空間の湿度を把握するためのセンサである。
【0093】
受付部65は、各種情報の入力を受け付ける。ここでは、加工しようとする濾材としてのシート状の材料30の物性データ、プリーツ体のプリーツ高さbに応じた上折込板45と下折込板46との上下方向の間隔uの設定データ、下折込板46の上面と上折刃43の下端とが最も近接する際の上下方向の隙間sの設定データ、上折込板45の下面と下折刃44の上端とが最も近接する際の上下方向の隙間tの設定データ、間隔保持部の塗布量の設定データ、各ローラの回転速度の設定データ等の入力を受け付ける。例えば、シート状の材料30の物性データとしては、材料30の剛性を示す情報、材料30の厚みを示す情報、材料30を構成する材質を示す情報、材料30の所定の圧力損失を示す情報、材料30の所定の捕集効率を示す情報、材料30のうちのフッ素樹脂多孔膜等の主捕集層における平均繊維径を示す情報等が挙げられる。
【0094】
搬送部66は、プリーツ加工時の各ローラの回転速度の調節を行う。
【0095】
折刃部67は、プリーツ加工時における上折込板45と下折込板46との上下方向の間隔u、下折込板46の上面と上折刃43の下端とが最も近接する際の上下方向の隙間s、上折込板45の下面と下折刃44の上端とが最も近接する際の上下方向の隙間t等を、受付部65の受付情報に基づいて調節する。
【0096】
塗布部68は、プリーツ加工時における間隔保持部の塗布量を、受付部65の受付情報に基づいて調節する。
【0097】
ロール部69は、プリーツ加工時において巻き取りロール21から送り出される材料30の各部分についての巻き癖の程度を示す情報を把握する。ロール部69は、例えば、巻き取りロール21から送り出される材料30が位置していた巻き取りロール21における半径の情報を用いて、当該半径が小さい箇所に位置していた部分ほど巻き癖が大きいものとして把握する。この巻き癖の程度の判断は、巻き取りロール21からの送り出しと併せて行われる。なお、巻き取りロール21における半径の情報ではなく、材料30の全長と厚みの関係から巻き癖を把握するようにしてもよい。
【0098】
ディスプレイ62は、各種制御時の情報の表示出力を行う。
【0099】
プロセッサ61は、受付部65で受け付けた、プリーツ体のプリーツ高さbに応じた上折込板45と下折込板46との上下方向の間隔uの設定データ、下折込板46の上面と上折刃43の下端とが最も近接する際の上下方向の隙間sの設定データ、上折込板45の下面と下折刃44の上端とが最も近接する際の上下方向の隙間tの設定データ、間隔保持部の塗布量の設定データ、各ローラの回転速度の設定データ等を実現させるように、加工機60の各部分を駆動制御することで、プリーツ加工を行う。
【0100】
このプリーツ加工時には、加工されるシート状の材料30の物性データ、ロール部69が把握した巻き癖の程度の情報、温度センサ63が把握した温度情報、湿度センサ64が把握した湿度情報、上折込板45と下折込板46との上下方向の間隔uの設定データ、下折込板46の上面と上折刃43の下端とが最も近接する際の上下方向の隙間sの設定データ、上折込板45の下面と下折刃44の上端とが最も近接する際の上下方向の隙間tの設定データ、間隔保持部の塗布量の設定データ、各ローラの回転速度の設定データ等の製造時条件をリアルタイムで把握し、当該製造時条件を当該製造時条件で得られたプリーツ体と対応させつつメモリ70に格納させる。なお、対応関係の特定は、特に限定されず、搬送速度、搬送距離、加工時刻等からプロセッサ61が適宜算出して求めてもよい。
【0101】
そして、得られたプリーツ体は、上述と同様にして、評価情報処理装置50では、カメラ48で取得され、送信されてくる画像データ49を、メモリ53に画像データ56として格納させつつ、指標化を行って評価する。当該評価結果は、評価情報処理装置50から加工機60側に送信され、対応する製造時条件と対応させ、製造時条件と評価結果の関係を示す製造時条件対応関係データ71としてメモリ70に格納されていく。
【0102】
そして、製造時条件対応関係データ71が所定量蓄積された場合には、製造時条件と評価結果の関係を示す製造時条件対応関係データを用いて、ディープラーニング等によりニューラルネットワークを機械学習させて、製造時条件モデル72を得て、メモリ70に格納させる。なお、機械学習のアルゴリズムとしては、ディープラーニングに限られず、サポートベクターマシン、ガウシアンプロセス、決定木、ランダムフォレスト等の公知のアルゴリズムを用いてもよい。
【0103】
製造時条件モデル72が得られた後は、プロセッサ61は、受付部65で受け付けた、プリーツ体のプリーツ高さbに応じた上折込板45と下折込板46との上下方向の間隔uの設定データ、加工されるシート状の材料30の物性データ、ロール部69が把握した巻き癖の程度の情報、温度センサ63が把握した温度情報、湿度センサ64が把握した湿度情報を、製造時条件モデル72に入力することで把握される加工機制御量を実現させるように、加工機60の各部分を駆動制御することで、プリーツ加工を行う。ここで、加工機制御量としては、下折込板46の上面と上折刃43の下端とが最も近接する際の上下方向の隙間s、上折込板45の下面と下折刃44の上端とが最も近接する際の上下方向の隙間t、間隔保持部の塗布量、各ローラの回転速度が挙げられる。
【0104】
以上の処理を、
図15のフローチャートに従ってあらためて説明する。
【0105】
ステップS31では、加工機60のプロセッサ61は、受付部65を介して、シート状の材料30の物性データ、プリーツ体のプリーツ高さbに応じた上折込板45と下折込板46との上下方向の間隔uの設定データ、下折込板46の上面と上折刃43の下端とが最も近接する際の上下方向の隙間sの設定データ、上折込板45の下面と下折刃44の上端とが最も近接する際の上下方向の隙間tの設定データ、間隔保持部の塗布量の設定データ、各ローラの回転速度の設定データ、加工されるシート状の材料30の物性データ等の入力を受け付ける。また、プロセッサ61は、ロール部69が把握した巻き癖の程度の情報、温度センサ63が把握した温度情報、湿度センサ64が把握した湿度情報をそれぞれ受け付ける。これらにより、プロセッサ61は、設定データに応じた製造時条件を把握する。なお、設定データとしては、特に限定されず、所望のプリーツ形状を得るために経験的に把握された条件であってよい。
【0106】
ステップS32では、プロセッサ61は、ステップS32で把握した製造時条件に従ってプリーツ加工を行い、プリーツ体を得る。
【0107】
ステップS33では、評価情報処理装置50のプロセッサ51は、ステップS32で把握した製造時条件で製造されたプリーツ体のプリーツ形状を評価する。
【0108】
ステップS34では、加工機60のプロセッサ61は、評価情報処理装置50から送られてきたステップS33での評価結果と、対応する製造時条件と、を対応させて製造時条件対応関係データ71としてメモリ70に格納させる。
【0109】
ステップS35では、プロセッサ61は、製造時条件対応関係データ71として格納されたデータ量が所定量以上蓄積されているか否かを判断する。データ量が十分に蓄積している場合には、ステップS38に移行する。データ量が不十分である場合には、ステップS31に戻り、製造および評価による関係データの取得を続ける。
【0110】
ステップS36では、プロセッサ61は、製造時条件対応関係データ71に含まれる製造時条件と評価結果の複数組のデータを用いて、ディープラーニング等によりニューラルネットワークを機械学習させ、製造時条件モデル72を得る。
【0111】
ステップS37では、プロセッサ61は、ステップS36で得た製造時条件モデル72を、メモリ70に格納させる。
【0112】
ステップS38では、プロセッサ61は、加工機制御量以外の製造時条件を把握する。具体的には、上折込板45と下折込板46との上下方向の間隔u、加工されるシート状の材料30の物性データ、ロール部69が把握した巻き癖の程度の情報、温度センサ63が把握した温度情報、湿度センサ64が把握した湿度情報を把握する。
【0113】
ステップS39では、プロセッサ61は、ステップS38で得た加工機制御量以外の製造時条件を、ステップS36で得た製造時条件モデル72に入力することにより、製造時条件を把握する。そして、得られた製造時条件に従ってプリーツ加工を行い、プリーツ体を得る。なお、ここで特定された製造時条件は、ディスプレイ62に表示出力される。
【0114】
ステップS40では、評価情報処理装置50のプロセッサ51は、ステップS39で製造されたプリーツ体のプリーツ形状を評価する。
【0115】
ステップS41では、加工機60のプロセッサ61は、評価情報処理装置50から送られてきたステップS40での評価結果と、対応する製造時条件と、を対応させて製造時条件対応関係データ71としてメモリ70に格納させる。
【0116】
ステップS42では、プロセッサ61は、製造時条件対応関係データ71として格納されたデータ量がさらに所定量以上蓄積されているか否かを判断する。データ量が十分に蓄積している場合には、ステップS36に移行し、機械学習を行うことで製造時条件モデル72を更新させる。データ量が不十分である場合には、ステップS38に戻り、製造および評価による製造時条件対応関係データ71の取得を続ける。
【0117】
以上のように、製造時条件モデルにより定まる製造時条件を用いてプリーツ体を製造することにより、客観的に良好と判断されうるプリーツ形状を備えたプリーツ体を、バラツキを抑制しながら安定して製造することが可能になる。
【0118】
また、製造時条件モデルを得ることにより、上折込板45と下折込板46との上下方向の間隔u、加工されるシート状の材料30の物性データ、ロール部69が把握した巻き癖の程度の情報、温度センサ63が把握した温度情報、湿度センサ64が把握した湿度情報等の加工機制御量以外の製造時条件が変化した場合であっても、客観的に良好と判断されうるプリーツ形状を備えたプリーツ体を、バラツキを抑制しながら安定して製造することが可能になる。
【0119】
なお、上記製造時条件のうち、下折込板46の上面と上折刃43の下端とが最も近接する際の上下方向の隙間sの設定データ、上折込板45の下面と下折刃44の上端とが最も近接する際の上下方向の隙間tの設定データを例に挙げて、これらの設定データを変えた場合に得られるプリーツ体のプリーツ形状が変化する様子を確認した。
【0120】
ここでは、1つのプリーツ体の製造時条件における隙間sと隙間tは同じ値とし、隙間sと隙間tについて、(a)<(b)<(c)<(d)<(e)の関係となるように製造時条件を変えて、
図18に示すプリーツ体(a)、(b)、(c)、(d)、(e)を得た。
【0121】
図18から明らかなように、隙間sと隙間tと、プリーツ体のプリーツ形状に相関があることが確認された。
【0122】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0123】
20 プリーツ体
26、27、28、29 間隔保持部
30 シート状の材料
35 連絡部分
56 画像データ
59 評価モデル
62 ディスプレイ(出力装置)
a プリーツピッチ
b プリーツ高さ
c 連絡部分の第2方向における長さ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0124】