(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】標高差分図作成装置
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
(21)【出願番号】P 2023115272
(22)【出願日】2023-07-13
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 梓
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-243470(JP,A)
【文献】特開2023-90051(JP,A)
【文献】特開2018-18424(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0117984(KR,A)
【文献】特開2017-58207(JP,A)
【文献】"時系列衛星SAR画像を活用した高速道路周辺山地の地盤変動モニタリング",土木学会論文集,2023年01月23日,79巻, 1号,論文ID:22-00022
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報における道路を縦断方向の区間に分割する分割手段と、
前記区間において、前記道路の横断方向に延びる帯状領域を設定する帯状領域設定手段と、
前記区間ごとに、前記帯状領域内における任意の位置の標高値と、当該区間内における前記道路の標高値との差分値を算出する差分値算出手段と、
前記帯状領域内における前記位置ごとに前記差分値
の大きさに応じた
背景色または背景模様を使用して、土砂災害の発生の可能性を把握可能に地図情報を表示する表示手段と、
を有することを特徴とする標高差分図作成装置。
【請求項2】
前記分割手段は、前記道路を車線ごとに前記区間に分割し、
前記帯状領域設定手段は、前記区間における二つの前記横断方向のうち各車線に対して一方向に前記帯状領域を設定することを特徴とする請求項1記載の標高差分図作成装置。
【請求項3】
前記差分値算出手段は、前記帯状領域内における任意の位置ごとに差分値を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の標高差分図作成装置。
【請求項4】
前記任意の位置は、前記帯状領域内を任意の間隔毎に区分した単位領域の位置である、請求項3に記載の標高差分図作成装置。
【請求項5】
地図情報における道路を縦断方向の区間に分割する工程と、
前記区間において、前記道路の横断方向に延びる帯状領域を設定する工程と、
前記区間ごとに、前記帯状領域内における任意の位置の標高値と、当該区間内における前記道路の標高値との差分値を算出する工程と、
前記帯状領域内における前記位置ごとに前記差分値
の大きさに応じた
背景色または背景模様を使用して、土砂災害の発生の可能性を把握可能に地図情報を表示する工程と、
を有することを特徴とする標高差分図作成方法。
【請求項6】
コンピュータを、
地図情報における道路を縦断方向の区間に分割する分割手段、
前記区間において、前記道路の横断方向に延びる帯状領域を設定する帯状領域設定手段、
前記区間ごとに、前記帯状領域内における任意の位置の標高値と、当該区間内における前記道路の標高値との差分値を算出する差分値算出手段、
前記帯状領域内における前記位置ごとに前記差分値
の大きさに応じた
背景色または背景模様を使用して、土砂災害の発生の可能性を把握可能に地図情報を表示する表示手段、
として機能させることを特徴とする標高差分図作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標高差分図作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集中豪雨の増加とそれに伴う土砂災害の増加に伴い、航空レーザ測量の成果を用いて斜面の災害リスク分析を実施し、道路に被害を及ぼす危険斜面や渓流を把握する取り組みが推進されている。また、道路区域内だけではなく、道路区域に隣接する斜面災害、道路区域外に起因する災害への対応も求められている。
【0003】
このような要請に対して、従来は、主に地形データ(微地形強調図・傾斜区分図・等高線データ等)を用いて技術者が道路周辺の標高差を目視判読し、道路に影響を及ぼす危険斜面や渓流の抽出を行っていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】平成18年9月29日付け事務連絡(国土交通省道路局国道・防災課課長補佐、道路防災対策室課長補佐、地方道・環境課課長補佐、有料道路課課長補佐連名)、「道路における災害危険箇所の再確認について」の実施要領、第4条(2)に該当する点検要領
【文献】道路防災点検の手引き (豪雨・豪雪等) 〔改訂版〕- DX時代に向けたチャレンジ -、一般社団法人 全国地質調査業協会連合会、道路防災点検技術講習会テキスト、令和4年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、災害発生時に道路に影響を及ぼすか否かを判定する際に読み取るべき標高差は道路との相対的な標高差であり、道路自体の標高が道路に沿って変化することから目視判読には多大な労力を要していた。また、上りと下りの標高が異なる道路では、路線に応じて基準となる標高を変えて標高差を読み取らなければならず、更なる労力を要していた。
【0006】
さらに、例えば特定の地域の全域といった広範囲を目視判読する場合、多人数での判読作業が必要になるため、技術者の力量により、道路に影響を及ぼす危険斜面や渓流の抽出結果が異なる上、多数の技術者により行っても判読作業に時間を要する、といった問題があった。
【0007】
本発明の目的は、道路の両側においてそれぞれ道路標高の変化を考慮して道路周辺との標高差を表現した標高差分図を作成できる標高差分図作成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の実施形態を含む。
[1]地図情報における道路を縦断方向の区間に分割する分割手段と、前記区間において、前記道路の横断方向に延びる帯状領域を設定する帯状領域設定手段と、前記区間ごとに、前記帯状領域内における任意の位置の標高値と、当該区間内における前記道路の標高値との差分値を算出する差分値算出手段と、前記差分値に応じた態様で地図情報を表示する表示手段と、を有することを特徴とする標高差分図作成装置。
[2]前記分割手段は、前記道路を車線ごとに前記区間に分割し、前記帯状領域設定手段は、前記区間における二つの前記横断方向のうち各車線に対して一方向に前記帯状領域を設定することを特徴とする[1]記載の標高差分図作成装置。
[3]前記差分値算出手段は、前記帯状領域内における任意の位置ごとに差分値を算出することを特徴とする[1]または[2]に記載の標高差分図作成装置。
[4]前記任意の位置は、前記帯状領域内を任意の間隔毎に区分した単位領域の位置である、[3]に記載の標高差分図作成装置。
[5] 地図情報における道路を縦断方向の区間に分割する工程と、前記区間において、前記道路の横断方向に延びる帯状領域を設定する工程と、前記区間ごとに、前記帯状領域内における任意の位置の標高値と、当該区間内における前記道路の標高値との差分値を算出する工程と、前記差分値に応じた態様で地図情報を表示する工程と、を有することを特徴とする標高差分図作成方法。
[6] コンピュータを、地図情報における道路を縦断方向の区間に分割する分割手段、前記区間において、前記道路の横断方向に延びる帯状領域を設定する帯状領域設定手段、前記区間ごとに、前記帯状領域内における任意の位置の標高値と、当該区間内における前記道路の標高値との差分値を算出する差分値算出手段、前記差分値に応じた態様で地図情報を表示する表示手段、として機能させることを特徴とする標高差分図作成プログラム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、道路標高の変化を考慮した標高差分図を作成することができるため、道路に影響を及ぼす危険斜面や渓流の除外条件を容易に把握することができる。この結果、スクリーニングが容易となり、効率的に道路周辺との標高差を目視判読することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態にかかる標高差分図作成装置の例の機能ブロック図である。
【
図2】実施形態にかかる帯状領域の設定処理の説明図である。
【
図3】実施形態にかかる標高差分図の表示例を示す図である。
【
図4】実施形態にかかる標高差分図作成装置の動作例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0012】
図1には、実施形態にかかる標高差分図作成装置100の例の機能ブロック図が示される。標高差分図作成装置100は、分割部10、帯状領域設定部12、差分値算出部14、表示制御部16、記憶部18およびCPU20を含み、装置全体の制御および各種演算を行うコンピュータとして構成されている。CPU20はCPU以外にGPU等のアクセラレーターを含んでいてもよい。
【0013】
CPU20は、分割部10、帯状領域設定部12、差分値算出部14、表示制御部16等として機能する。上記各機能は例えばCPU20とCPU20の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0014】
分割部10は、標高差分図の作成対象である道路(以後、対象道路ということがある。)について道路中心線を生成し、当該道路中心線を任意の距離の区間に分割することによって対象道路を縦断方向の複数の区間に分割する。道路中心線の生成は、例えば表示制御部16により表示装置に対象道路を含んだ地図情報(地図データ)を表示させ、適宜な入力手段(マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル等)により対象道路の中心線上の地点を順次指定し、指定された複数の地点を指定順に結ぶ又は曲線近似することにより実現できる。或いは、道路中心線の生成処理は、従来公知のプログラムによる道路中心線の生成処理を対象道路を含んだ地図データに対して実行することにより実現できる。この場合、道路中心線は、記憶部18に予め記憶された微地形強調図等を読み出して使用し、当該地図上に、道路の上り下りの車線ごとに生成するのが好適である。なお、道路中心線の生成処理は、プログラムによる自動処理でも、自動処理結果を人手で修正する半自動処理でも、あるいは微地形強調図等を目視確認しながら人手で生成する手動処理でもよい。微地形強調図は公知のプログラムにより予め数値標高モデル(DEM)を解析して生成される。微地形強調図に代えて数値標高モデルを表示し或いは自動処理して道路中心線を生成してもよい。また、道路幅が狭い道路の場合等、必要に応じて、車線の区別なく道路の中心に道路中心線を生成する構成としてもよい。
【0015】
また、道路中心線を分割する処理は、分割部10が、上記生成した道路中心線に沿って、上り下りの車線毎に任意の距離(例えば、1m)の間隔で分割点を生成し、道路中心線を隣接する2分割点で挟まれた区間に分割することにより実行する。この場合、生成する分割点の端点(分割の開始点または終点)は、分割部10が自動で設定してもよいし、適宜な入力手段により人手で設定してもよい。
【0016】
その後、分割部10は、隣接する2分割点毎にその中点を生成する。次に、分割部10は、予め記憶部18に記憶されていた対象道路及びその周辺領域を含む数値標高モデルを記憶部18から読み出し、上記各中点における対象道路の標高値を取得する。取得した標高値を各中点が属する上記分割した各区間における対象道路の標高値として設定する。
【0017】
なお、上記微地形強調図や数値標高モデル等の地図情報は、適宜な通信手段により外部のサーバ等から取得して使用する構成としてもよい。上記道路中心線、分割点、区間及び中点の位置情報並びに対象道路の標高値の情報は、分割部10が記憶部18に記憶させる。なお、各区間における対象道路の標高値は、中点の標高値に代えて、当該区間内の道路中心線上の標高値の代表値(平均値、最高値、最低値又は中央値)、中点を中心とする半径1mの円領域における標高値の代表値、あるいは当該区間内の道路中心線に直交する予め道路幅以下に定めた幅の矩形領域における標高値の代表値などとすることもできる。また、ここでは道路中心線を例として示したが、必ずしもこれに限られる訳ではない、例えば、道路中心線の代わりに、道路縁や中央分離帯など、道路の縦断方向に直線状に延びた道路付属物等を用いても良い。
【0018】
帯状領域設定部12は、上記地図情報及び区間の情報を記憶部18から読み出し、微地形強調図等の対象道路を含む地図上で、各区間において、対象道路の横断方向に延びる帯状領域(短冊型領域)を設定する。具体的には、帯状領域設定部12は、各区間において、道路中心線に直交する方向であって、対象道路の周辺に、対象道路の水平方向に延びる帯状領域を設定する。なお、道路中心線が直線状でない区間における横断方向は、道路中心線の接線に直交する方向とすることができる。この場合、帯状領域の幅は区間の長さ(例えば、1m)であり、対象道路の横断方向の長さは判読が要求される周辺範囲の広さに応じて任意に設定できるが、道路周辺の構造物までの距離を考慮し、例えば道路中心線から60mとしてもよい。また、上記帯状領域は、対象道路に上り下りの車線が設定されている場合には、二つの横断方向のうち各車線に対して一方向、すなわち各車線の進行方向左側に設定される。帯状領域設定部12は、各区間に対応付けて当該区間に対して設定した帯状領域を特定するための座標情報(あるいは形状の情報)を記憶部18に記憶させる。
【0019】
差分値算出部14は、対象道路及びその周辺領域を含む数値標高モデル(DEM)と中点の位置情報、各区間の帯状領域の情報とを記憶部18から読み出し、上記区間ごとに、各帯状領域内における任意の位置の標高値を数値標高モデル(DEM)から取得し、各帯状領域に設定された当該区間内における対象道路の標高値との差分値(対象道路の各区間の標高値-帯状領域内における任意の位置の標高値)を算出する。ここで、各帯状領域内における任意の位置は当該帯状領域内を任意の間隔ごとに区分した単位領域の位置とすることができる。各帯状領域内における任意の位置は、例えば、数値標高モデルに設定された複数のメッシュのうち当該帯状領域内に含まれるメッシュの位置とすることができ、任意の位置の標高値は、当該メッシュが有する標高値とすることができる。なお、一つのメッシュが複数の帯状領域内に含まれる場合は、含まれるメッシュの面積が最も広い帯状領域のみについて当該メッシュの位置を単位領域の位置としてもよい。或いは、各帯状領域内における任意の位置は、当該帯状領域内を対象道路の横断方向で区分した単位領域の位置、例えば帯状領域内を対象道路の横断方向で任意の間隔(例えば、1m)毎に区分した単位領域内で上記方向における当該単位領域の中心点の位置とすることができる。これらの場合、上記差分値は、上記帯状領域内を区分した単位領域ごとに算出される。以上述べたように、差分値の算出に当たっては、区間毎に設定された標高値を使用するので、道路標高の変化を考慮して道路周辺との標高差(差分値)を求めることができる。この差分値は、差分値算出部14が記憶部18に記憶させる。
【0020】
表示制御部16は、分割部10、帯状領域設定部12、差分値算出部14からの指示に基づき、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御して、対象道路を含む地図情報、道路中心線、区間とその中点、帯状領域、標高差分図等を表示する。ここで標高差分図とは、差分値算出部14が求めた差分値に応じた態様で表示された対象道路を含む地図情報である。差分値に応じた態様とは、例えば差分値の大きさにより任意に定めた区分に応じて異なる背景色や背景模様を表示すること等をいう。
【0021】
記憶部18は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成され、上記各データ、およびCPU20を動作させるためのプログラム等の、標高差分図作成装置100が行う各処理に必要な情報を記憶する。なお、記憶部18としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。また、記憶部18には、主としてCPU20の作業領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)、およびBIOS等の制御プログラムその他のCPU20が使用するデータが格納される読み出し専用メモリ(ROM)を含めるのが好適である。なお、記憶部18には外部の記憶装置が含まれてもよい。
【0022】
図2には、帯状領域の設定処理の説明図が示される。
図2において、対象道路Rは、中央分離帯Dにより上り線r1と下り線r2とが設定されている道路であって、例えば高速道路である。この対象道路Rは、表示制御部16により適宜な表示装置に対象道路を含む地図情報として表示されている。
【0023】
対象道路Rの上り線r1と下り線r2には、分割部10がそれぞれ道路中心線C1とC2を生成する。次に、分割部10は、それぞれ道路中心線C1、C2に沿って、任意の距離(例えば、水平距離1m。路面に沿った方向での1mでもよい。)の間隔で分割点d1、d2を生成する。
図2の例では、各分割点d1、d2が黒丸(●)で示されている。隣接する分割点d1同士、d2同士により、道路中心線C1、C2が上記任意の距離の区間に分割され、これにより対象道路がその縦断方向の複数の区間に分割される。また、分割部10は、隣接する二つの分割点d1同士、d2同士の間に中点m1、m2を生成する。
図2の例では、各中点m1、m2がバツ印(×)で示されている。上述したように、各中点m1、m2の標高値が各区間の標高値として設定される。
【0024】
帯状領域設定部12は、隣接する分割点d1同士、d2同士により規定される各区間において、道路中心線C1、C2に直交し、区間の長さを幅として対象道路Rの水平方向に延びる帯状領域b1、b2を設定する。この場合、対象道路に上り線r1と下り線r2がある場合、各車線の進行方向左側に帯状領域b1、b2が設定される。帯状領域b1、b2の道路中心線C1、C2に直交する方向(対象道路Rの横断方向)の長さL1、L2は判読が要求される周辺範囲の広さに応じて任意に設定できるが、道路周辺の構造物までの距離を考慮し、例えば60mとすることができる。こうして帯状領域設定部12は、対象道路Rの各区間において横断方向に延びる帯状領域b1、b2を設定する。
【0025】
また、差分値算出部14が差分値を算出する際に使用する各帯状領域内における任意の位置は、数値標高モデルに設定されたメッシュとして求められる。或いは、差分値算出部14が差分値を算出する際に使用する各帯状領域内における任意の位置は、
図2に示される、帯状領域内を対象道路Rの横断方向で区分した単位領域a1、a2内の地点(例えば、当該領域の中心点)として求められる。
【0026】
図3には、標高差分図の表示例が示される。
図3に示された標高差分図は、技術者が落石・崩壊の発生条件、道路への到達条件、道路に土砂が乗り上げる条件を把握する際に利用することを可能とするように表示条件を設定するのが好適である。このような表示条件は、
(A)例えば非特許文献1の点検要領に記載されている落石・崩壊の発生する斜面条件である傾斜角45度以上または斜面高さ15m以上、
(B)土砂災害防止法に基づく基礎調査のマニュアルに記載されている崩壊土砂等の道路への到達条件であって、上記斜面条件を満たしても対岸比高5m以上の場合は土砂が到達しない、すなわち斜面崩壊が発生したとしても、道路との比高5m以上のときは、発生土砂は道路に影響しない(除外条件)等の見解を考慮して決定するのが好適である。
【0027】
図3の例では、中央分離帯Dにより上り線r1と下り線r2とが設定されている対象道路Rが、その周囲の地形図とともに示されており、各車線の進行方向左側に帯状領域b1、b2が設定されている。また、
図3の例では、差分値算出部14は帯状領域b1、b2と重なる数値標高モデルのメッシュごとに差分値を算出している。また、
図3の例では、差分値算出部14が算出した差分値(対象道路(道路面)の標高値-帯状領域内における任意の位置(地盤)の標高値)について、上記(B)の条件である5m未満、5m以上の範囲に区分して色分けし、差分値に応じた態様で表示されている。また、上記(A)の条件についても、ハッチング及び黒枠線により該当領域が表示されている。判読作業を行う技術者は、落石・崩壊が発生する条件(上記斜面条件(A))と、崩壊土砂等が道路に到達する条件である「斜面高さの2倍の距離(最大50m)>斜面法尻から道路までの距離」(落石崩壊、岩盤崩壊の例)及び上記条件(B)を考慮の上、道路への影響を総合的に判断する。
【0028】
図4には、実施形態にかかる標高差分図作成装置100の動作例のフロー図が示される。
図4において、分割部10が地図情報における対象道路について道路中心線を生成する(S1)。この場合、上り下りの車線毎に道路中心線を生成するのが好適である。分割部10は、生成した道路中心線に沿って、任意の距離の間隔で分割点を生成し、道路中心線を隣接する2分割点で挟まれた区間に分割することにより対象道路を縦断方向の複数の区間に分割する(S2)。その後、分割部10は、隣接する2分割点毎に各区間の中点を生成する(S3)。
【0029】
次に、分割部10は、対象道路及びその周辺領域を含む数値標高モデル(DEM)を使用し、上記各中点における対象道路の標高値を取得し(S4)、各中点が属する各区間の標高値として設定する(S5)。
【0030】
帯状領域設定部12は、対象道路を含む地図上で、各区間において、上記道路中心線に直交する方向であって、対象道路の横断方向に延びる帯状領域を設定する(S6)。帯状領域設定部12は、各帯状領域に、S5で設定された区間の標高値を設定する(S7)。
【0031】
差分値算出部14は、対象道路及びその周辺領域を含む数値標高モデル(DEM)を使用し、各帯状領域において任意の間隔毎に数値標高モデル(DEM)から当該地点の標高値を取得し、帯状領域内における任意の位置の標高値として使用して各帯状領域に設定された上記区間内における標高値との差分値を算出する(S8)。なお、上述した通り、任意の位置の標高値として、各帯状領域内に含まれるメッシュが有する標高値を使用してもよい。
【0032】
表示制御部16は、差分値算出部14が求めた差分値に応じた態様で表示された対象道路を含む地図情報である標高差分図等を表示する(S9)。
【0033】
上述した、
図4の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供してもよい。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 分割部、12 帯状領域設定部、14 差分値算出部、16 表示制御部、18記憶部、20 CPU、100 標高差分図作成装置。
【要約】
【課題】道路の両側においてそれぞれ道路標高の変化を考慮して道路周辺との標高差を表現した標高差分図を作成できる標高差分図作成装置を提供する。
【解決手段】地図情報における道路を縦断方向の区間に分割する分割部10と、前記区間において、対象道路の横断方向に延びる帯状領域を設定する帯状領域設定部12と、前記区間ごとに、帯状領域内における任意の位置の標高値と、当該区間内における前記対象道路の標高値との差分値を算出する差分値算出部14と、算出した差分値に応じた態様で標高差分図を表示する表示制御部16と、を有することを特徴とする標高差分図作成装置。
【選択図】
図1