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特許7607772一体同時焼成インダクタ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】一体同時焼成インダクタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/04 20060101AFI20241220BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20241220BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20241220BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
H01F41/04 B
H01F41/02 D
H01F27/255
H01F1/147 166
H01F1/147 191
H01F1/147 133
H01F41/02 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023534000
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 CN2021132664
(87)【国際公開番号】W WO2022116874
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】202011412397.7
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202022886600.6
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517366220
【氏名又は名称】横店集団東磁股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼相▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲ツォン▼
(72)【発明者】
【氏名】金志洪
(72)【発明者】
【氏名】徐君
(72)【発明者】
【氏名】王林科
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲寧▼
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-090158(JP,A)
【文献】特開2010-123864(JP,A)
【文献】特開2008-258234(JP,A)
【文献】特開2006-024869(JP,A)
【文献】特表2000-504785(JP,A)
【文献】特開平09-320830(JP,A)
【文献】特開2005-268685(JP,A)
【文献】特開2018-053319(JP,A)
【文献】国際公開第2009/075110(WO,A1)
【文献】特開2020-150066(JP,A)
【文献】特開昭60-001816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00- 8/00
B22F 10/00-12/90
C22C 1/04- 1/05
C22C 33/02
H01F 1/12- 1/38
H01F 1/44- 3/14
H01F 27/24-27/26
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体同時焼成インダクタの製造方法であって、前記製造方法は、キャビティ内に磁粉をバッチで充填し、隣接する2層の磁粉の種類は異なり、そのうちの1層の磁粉に少なくとも1本の導線を埋め込み、導線の両端はキャビティから延出し、次に順次プレス成形及び熱処理して磁心を得て、磁心から延出する導線を折り曲げ、錫メッキを施した後に前記同時焼成インダクタを得ることを含み、
前記磁粉は、軟磁性粉末を順次絶縁被覆、二次被覆及び造粒処理した後に前記磁粉を得る方法を用いて製造されたものであり、
前記導線はエナメル線のない裸線であり、前記導線の形状は異形導線であり、前記異形導線の形状はS字型、L字型、U字型、W字型又はE字型を含み、
前記熱処理過程は保護雰囲気下で行われ、前記保護雰囲気で使用されるガスは窒素及び/又は不活性ガスであり、前記熱処理温度は650~850℃である、ことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記軟磁性粉末は、FeSiCr、FeSi、FeNi、FeSiAl、カルボニル基鉄粉、カルボニル鉄ニッケル粉、FeNiMo、Fe基アモルファスナノ結晶材料、Co基アモルファスナノ結晶軟磁性材料又はNi基アモルファスナノ結晶軟磁性材料を含む、ことを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁被覆で使用される被覆プロセスはリン化、酸性化、酸化又は窒化を含む、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法
【請求項4】
前記絶縁被覆で使用される被覆プロセスはリン化処理を用いて軟磁性粉末を絶縁被覆し
記リン化処理は軟磁性粉末と希釈したリン酸を混合して撹拌し、ベークした後にリン化処理した軟磁性粉末を得ることを含み
セトンを用いてリン酸を希釈し
記リン酸とアセトンの質量比は1:(60~70)であり、
前記リン酸とアセトンを混合して1~6分間撹拌してから、5~10分間静置して使用に備え
記軟磁性粉末と希釈したリン酸を混合して30~60分間撹拌し
記ベーク温度は90~110℃であり
記ベーク時間は1~1.5hである、ことを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記二次被覆は被覆材料と絶縁被覆した軟磁性粉末を混合して撹拌することを含み
記被覆材料は軟磁性粉末の2~10wt%であり
記被覆材料はフェノール樹脂、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂を含み
記被覆材料と軟磁性粉末を混合して40~60分間撹拌する、ことを特徴とする、請求項~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記造粒処理は二次被覆した軟磁性粉末を造粒し、造粒完了後に順次干し、乾燥及び冷却し、前記磁粉を得ることを含み
記造粒過程は40~60メッシュの造粒機で行われ
記干し時間≦3hであり
した軟磁性粉末を30~50メッシュの篩にかけてから乾燥処理し
記乾燥温度は50~70℃であり
記乾燥時間は0.8~1.2hであり
記冷却過程は自然冷却であり
却した軟磁性粉末を30~50メッシュの篩にかけてから、篩過した軟磁性粉末に補助原料を加えて前記磁粉を得て
記補助原料は酸化マグネシウム、潤滑粉又は離型粉を含む、ことを特徴とする、請求項~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
3つのバッチでキャビティ内に第1の磁粉、第2の磁粉及び第1の磁粉を順次充填し
記導線を第2の磁粉に埋め込む、ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
記導線は銅線であり
記導線は矩形断面の扁平導線であり
記導線は水平面上に並べて間隔を置いてそのうちの1層の磁粉の内部に敷設される、ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記プレス方式はホットプレス又はコールドプレスであり
記ホットプレス圧力≧800Mpaであり
記ホットプレス温度は90~180℃であり
記ホットプレス時間は5~100sであり
記熱処理はアニーリング処理であり
記熱処理時間は30~50minである、ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法を用いて製造された同時焼成インダクタであって、前記同時焼成インダクタは磁心と磁心の内部に位置する少なくとも1本の導線とを含み、前記磁心は順次積層して設けられた少なくとも2層の磁粉層を含み、隣接する2層の磁粉層で使用された磁粉の種類は異なり、前記導線はそのうちの1層の磁粉層に位置し、導線の両端は磁心から延出し、磁心から延出する導線部分は折り曲げられた後に磁心の外壁に密着
前記導線はエナメル線のない裸線であり、前記導線の形状は異形導線であり、前記異形導線の形状はS字型、L字型、U字型、W字型又はE字型を含む、ことを特徴とする、同時焼成インダクタ。
【請求項11】
記導線は銅線であり
記導線は矩形断面の扁平導線であり
記導線は水平面上に並べて間隔を置いてそのうちの1層の磁粉の内部に敷設される、ことを特徴とする、請求項10に記載の同時焼成インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はインダクタの技術分野に属し、一体同時焼成インダクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル機器、家電製品、自動車、工業機器、データセンタサーバ、通信基地局サーバなどの機器の大規模な使用に伴い、エネルギー消費は重要な考慮事項となっている。部材の小型化、多機能、高性能化、省電力化はますます発展しており、搭載された電子素子は、小型化/薄型化且つ高性能化がさらに要求されている。DC-DCコンバータにおける効率を向上させ、発熱を低減することは、電子素子の小型化における重要な条件である。特にコア電源回路は、DC-DCコンバータICの高速変換と使用されるインダクタの低インピーダンス化のさらなる発展に伴い、小型化/薄型化、低直流インピーダンス、高電流の対応、及び高信頼性がますます要求されている。
【0003】
現在、第3世代の半導体をパワーデバイスに使用することは徐々が主流になっており、特に窒化ガリウム(GaN)と炭化ケイ素(SiC)の技術は相対的に成熟しており、高温、高電圧、大電流に耐える高周波パワーデバイスに適用されている。そのうち、パワー半導体は主な使用分野である。窒化ガリウムは、高周波回路で顕著な利点があり、現在のモバイル通信での強力な競争者である。現在、主な運用シナリオは、主に基地局側のパワーアンプ、航空宇宙などの軍事分野に集中しており、同時にコンシューマーエレクトロニクス分野にも徐々に移行している。高出力パワー、高エネルギー効率特性を有することにより、既定のパワーレベルでより小さい体積を実現できるため、電源急速充電製品に使用できる。炭化ケイ素材料の物理性能は、ケイ素などの材料よりも優れており、炭化ケイ素単結晶の禁制帯幅はケイ素材料の約3倍、熱伝導率はケイ素材料の3.3倍、電子飽和移動速度はケイ素の2.5倍、破壊電界強度はケイ素の5倍であり、高温、高電圧、高周波、高パワーの電子デバイスにおいて代替のきかない利点がある。テスラなどの高級自動車市場で炭化ケイ素パワー半導体の運用が成功するにつれて、将来、自動車分野は炭化ケイ素の成長の主な動力となる。
【0004】
パワー半導体は電子装置における電気エネルギー変換と回路制御の核心であり、電子装置における電圧、周波数、直流-交流変換などの機能を実現する核心部材である。パワーIC、IGBT、MOSFET、ダイオードは最も広く運用している4種のパワー半導体製品である。パワー半導体と連携して電源の電気エネルギー変換効率を向上させるインダクタ、コンデンサなどの電子素子/デバイスは同様に第3世代の半導体の発展動向に合わせる必要がある。高周波、大電流、高飽和電流、高信頼性のインダクタもエネルギー効率の高い電源の必要な構成要素である。
【0005】
従来の大電流に耐えるインダクタは、一般に軟磁性材料を個別の部材にし、次にコイルを磁心に配置し、エアギャップを設計することにより、インダクタデバイスの高飽和重畳電流を実現する。このような形式のインダクタはエアギャップを開く必要と組織する必要があるため、サイズが大きくなりがちで、特に厚さ方向は3mmを超え、さらに7mmに達することがよくある。これは、ソフトフェライト材料自体の特徴によるものであり、透磁率は高いがその飽和磁束密度が低く、外部磁場で飽和しやすいため、飽和電流に耐える能力を高めるために、エアギャップを開くことで実効透磁率を低減する必要がある。追加されるエアギャップはデバイスのサイズを増加するとともに、製造プロセスで組立と公差に合わせる必要があり、製品製造の歩留まりに一定の影響を及ぼす。
【0006】
金属圧粉磁心材料は、その高飽和磁束密度、高温安定性、耐衝撃性、低ノイズなどの特性のため、近年急速に発展しており、特に一体成形インダクタの分野でFeSiCr、カルボニル基鉄、鉄ニッケルなどの金属軟磁性材料の使用は飛躍的に進歩している。一体成形インダクタは金属軟磁性材料を使用し、コイルを金属圧粉心に配置して一体成形する。
【0007】
CN205230770Uは、垂直薄型大電流インダクタを開示しており、該インダクタは、上磁心、下磁心及び上磁心と下磁心の間に設けられたインダクタンスコイルを含み、前記インダクタンスコイルは扁平型金属銅線で巻かれた後に、延出する上下2つの扁平ピンは90度に折り曲げられ、且つ2つ扁平ピンの方向は反対方向であり、前記上磁心は方形本体であり、下磁心にインダクタンスコイルを収容するための凹溝が設けられ、凹溝の中部にインダクタンスコイルを固定するための位置決め柱が設けられる。このようなインダクタンス素子は、巻線のため、コイルにエナメル線を使用し、成形圧力が大きくなりにくくする必要があり、エナメル線ではない場合、コイルの絶縁層が損傷されて層間短絡を引き起こしやすい。次に、成形圧力による応力のため、磁心材料に応力異方性が発生し、材料のヒステリシス損失を増加させる。これに鑑み、金属圧粉心をUピースとIピースにし、圧粉磁心を焼成した後に扁平銅線をその間に挟み、インダクタを組み立てるDUI型インダクタ製品も開発されている。
【0008】
CN110718359Aは、磁性粉末と熱硬化性樹脂の混合物を用いて2組の完全に同じプラテン本体を予備成形し、プラテン本体はプレス面を有し、プレス面は具体的に両側が高く、中央が低い表面実装一体成形インダクタの製造構造及びその方法を開示している。成形金型では、2組のプラテン本体をそれぞれ内蔵コイルの真上方と真下方に配置し、プラテン本体のプレス面は内蔵コイルに向かい、且つ内蔵コイルの両極はプラテン本体の両端部の範囲をそれぞれ超える必要があり、加圧又は/及び加熱で2組のプラテン本体と内蔵コイルを素材に一体成形する。成形後、内蔵コイルの両極は素材の外側に露出し、素材の両端に外部電極を形成する。
【0009】
しかし、このように作製するインダクタは、いくつかの部材を一緒に組み立てる必要があり、コイルと磁心の間に余分なエアギャップが導入されやすく、実効透磁率が低下する。また、ある部材を薄いシートにする必要があるため、製品の成形精度が不十分であり、研磨加工を行う必要があり、プロセスコストが高くなり、製品の歩留まりが低下する。
【発明の概要】
【0010】
以下は、本明細書を詳しく説明する主題の概要である。本概要は、請求項の保護範囲を制限するためのものではない。
【0011】
従来の技術に存在する不足について、本願の目的は一体同時焼成インダクタ及びその製造方法を提供することにあり、本願に係る製造方法は一体成形プロセスを用いてインダクタを製造し、過多な部材の組み立て工程を回避し、一体成形後に熱処理し、応力を十分に解放し、材料のヒステリシス損失を低減し、軽負荷状態では、デバイスの損失が低下し、これにより導線と磁心の間に余分なギャップがなくなり、磁心においてエアギャップが均一に分布し、渦電流損失の振動ノイズを低減する。
【0012】
この目的を達成するために、本願は以下の技術案を採用する。
第1の態様では、本願は一体同時焼成インダクタの製造方法を提供し、前記製造方法は、
キャビティ内に磁粉をバッチで充填し、隣接する2層の磁粉の種類は異なり、そのうちの1層の磁粉に少なくとも1本の導線を埋め込み、導線の両端はキャビティから延出し、次に順次プレス成形及び熱処理して磁心を得て、磁心から延出する導線を折り曲げ、錫メッキを施した後に前記同時焼成インダクタを得ることを含む。
【0013】
本願に係る製造方法は一体成形プロセスを用いてインダクタを製造し、多すぎる部材の組み立て工程を回避し、一体成形後に熱処理し、応力を十分に解放し、材料のヒステリシス損失を低減し、軽負荷状態では、デバイスの損失が低下し、導線と磁心の間に余分なギャップはなく、磁心においてエアギャップが均一に分布し、渦電流損失の振動ノイズを低減する。また、プレス工程では、複数バッチで添加する方法で異なる粉末を添加することにより、プレス過程における導線の変形量を最小限に抑え、磁心材料のアンチワインドアップ能力を向上させ、異なる磁粉材料のそれぞれの利点を十分に発揮し、デバイスの特性をよりよく発揮させ、正の温度係数と負の温度係数の軟磁性材料を組み合わせて使用することにより、デバイスの温度安定性を効果的に向上させることができる。
【0014】
本願の好ましい技術案として、前記磁粉は、軟磁性粉末を順次絶縁被覆、二次被覆及び造粒処理した後に前記磁粉を得る方法を用いて製造されたものである。
【0015】
好ましくは、前記軟磁性粉末は、FeSiCr、FeSi、FeNi、FeSiAl、カルボニル基鉄粉、カルボニル鉄ニッケル粉、FeNiMo、Fe基アモルファスナノ結晶材料、Co基アモルファスナノ結晶軟磁性材料又はNi基アモルファスナノ結晶軟磁性材料を含む。
【0016】
本願の好ましい技術案として、前記絶縁被覆で使用される被覆プロセスはリン化(phosphorization)、酸性化、酸化又は窒化を含み、さらに好ましくは、リン化処理を用いて軟磁性粉末を絶縁被覆する。
【0017】
本願に係る絶縁被覆プロセスとは、金属軟磁性粉末の表面の絶縁性及び耐食性を向上させる金属軟磁性材料の被覆プロセスを指し、リン化、酸性化、徐酸化、窒化などの表面処理を含み、主に高抵抗率の粉末材料を添加するか、又は金属軟磁性粒子の表面に、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、カオリン、ジルコニア、マイカ粉末などの材料を含む高抵抗率被覆層をイン‐サイチ成長させることにより、金属軟磁性粉末間の絶縁性を向上させる。異なる種類の金属軟磁性合金粉末に対し、異なる被覆方法と被覆プロセスで最高の被覆效果を達成する必要がある。
【0018】
好ましくは、前記リン化処理は軟磁性粉末と希釈したリン酸を混合して撹拌し、ベークした後にリン化処理した軟磁性粉末を得ることを含む。
【0019】
好ましくは、アセトンを用いてリン酸を希釈する。
【0020】
好ましくは、前記リン酸とアセトンの質量比は1:(60~70)であり、例えば、1:60、1:61、1:62、1:63、1:64、1:65、1:66、1:67、1:68、1:69又は1:70であってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0021】
好ましくは、前記リン酸とアセトンを混合して1~6分間撹拌し、例えば、1min、2min、3min、4min、5min又は6minであってもよく、次に5~10分間静置して使用に備え、例えば、5min、6min、7min、8min、9min又は10minであってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0022】
好ましくは、前記軟磁性粉末と希釈したリン酸を混合して30~60分間撹拌し、例えば、30min、35min、40min、45min、50min、55min又は60minであってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0023】
好ましくは、前記ベーク温度は90~110℃であり、例えば、90℃、92℃、94℃、96℃、98℃、100℃、103℃、104℃、106℃、108℃又は110℃であってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0024】
好ましくは、前記ベーク時間は1~1.5hであり、例えば、1.0h、1.1h、1.2h、1.3h、1.4h又は1.5hであってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0025】
本願の好ましい技術案として、前記二次被覆は被覆材料と絶縁被覆した軟磁性粉末を混合して撹拌することを含む。
【0026】
好ましくは、前記被覆材料は軟磁性粉末の2~10wt%であり、例えば、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%又は10wt%であってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0027】
好ましくは、前記被覆材料はフェノール樹脂、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂を含む。
【0028】
好ましくは、前記被覆材料と軟磁性粉末を混合して40~60分間撹拌し、例えば、40min、42min、44min、46min、48min、50min、52min、54min、56min、58min又は60minであってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0029】
本願の好ましい技術案として、前記造粒処理は二次被覆した軟磁性粉末を造粒し、造粒完了後に順次干し、乾燥及び冷却し、前記磁粉を得ることを含む。
【0030】
好ましくは、前記造粒過程は40~60メッシュの造粒機で行われ、例えば、40メッシュ、42メッシュ、44メッシュ、46メッシュ、48メッシュ、50メッシュ、52メッシュ、54メッシュ、56メッシュ、58メッシュ又は60メッシュであってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0031】
好ましくは、前記干し時間≦3hであり、例えば、0.5h、1h、1.5h、2h、2.5h又は3hであってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0032】
好ましくは、干した軟磁性粉末を30~50メッシュの篩にかけてから乾燥処理し、例えば、30メッシュ、32メッシュ、34メッシュ、36メッシュ、38メッシュ、40メッシュ、42メッシュ、44メッシュ、46メッシュ、48メッシュ又は50メッシュであってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0033】
好ましくは、前記乾燥温度は50~70℃であり、例えば、50℃、52℃、54℃、56℃、58℃、60℃、62℃、64℃、66℃、68℃又は70℃であってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0034】
好ましくは、前記乾燥時間は0.8~1.2hであり、例えば、0.8h、0.9h、1.0h、1.1h又は1.2hであってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0035】
好ましくは、前記冷却過程は自然冷却である。
【0036】
好ましくは、冷却した軟磁性粉末を30~50メッシュの篩にかけてから、篩過した軟磁性粉末に補助原料を加えて前記磁粉を得て、例えば、30メッシュ、32メッシュ、34メッシュ、36メッシュ、38メッシュ、40メッシュ、42メッシュ、44メッシュ、46メッシュ、48メッシュ又は50メッシュであってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0037】
好ましくは、前記補助原料は酸化マグネシウム、潤滑粉又は離型粉を含む。
【0038】
本願の好ましい技術案として、3つのバッチごとにキャビティ内に第1の磁粉、第2の磁粉及び第1の磁粉を順次充填する。
【0039】
好ましくは、前記導線を第2の磁粉に埋め込む。
【0040】
本願の好ましい技術案として、前記導線はエナメル線のない裸線である。
【0041】
好ましくは、前記導線は銅線である。
【0042】
好ましくは、前記導線は矩形断面の扁平導線である。
【0043】
好ましくは、前記導線の形状は直導線又は異形導線である。
【0044】
好ましくは、前記異形導線の形状はS字型、L字型、U字型、W字型又はE字型を含む。
【0045】
好ましくは、前記導線は水平面上に並べて間隔を置いてそのうちの1層の磁粉の内部に敷設される。
【0046】
本願で設計されたインダクタは低直流抵抗が要求され、且つ銅線は金属軟磁性材料と一緒に高温熱処理を受ける必要があり、エナメル線のない扁平銅導線を用いて高温熱処理し、圧粉心の損失を更に低減することができ、必要に応じてI字型、S字型、L字型、U字型、W字型及びE字型などを含む銅線の形状を設計することもできる。1型1件の成形プロセスを使用してもよく、リードフレーム固定の方式でインラインプレス成形してもよい。
【0047】
本願の好ましい技術案として、前記プレス方式はホットプレス又はコールドプレスである。
【0048】
造粒粉の特性とインダクタンスの需要に応じて、ホットプレス成形の方式を使用可能である。ホットプレス成形時に必要な圧力がより小さく、ホットプレス成形後に磁心と導線をより密着させることができ、且つ必要な圧力はより小さいが、ホットプレスはプレス効率の低下をもたらす。
【0049】
好ましくは、前記ホットプレス圧力≧800Mpa/cmであり、例えば、800Mpa/cm、810Mpa/cm、820Mpa/cm、830Mpa/cm、840Mpa/cm、850Mpa/cm、860Mpa/cm、870Mpa/cm、880Mpa/cm、890Mpa/cm又は900Mpa/cmであってもよく、さらに好ましくは2000MPa/cmである。
【0050】
本願では、エナメル線の制限がないため、磁粉の成形圧力を用いてより高密度の磁心を得ることができ、好ましくは、圧力が800Mpa/cmを超え、さらに2000MPa/cmに達してもよく、金型の寿命とプレス装置の能力に応じてインダクタンスの最適な圧力を選択する。
【0051】
好ましくは、前記ホットプレス温度は90~180℃であり、例えば、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃又は180℃であってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0052】
好ましくは、前記ホットプレス時間は5~100sであり、例えば、5s、10s、20s、30s、40s、50s、60s、70s、80s、90s又は100sであってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0053】
好ましくは、前記熱処理はアニーリング処理である。
【0054】
好ましくは、前記熱処理過程は保護雰囲気下で行われる。
【0055】
好ましくは、前記保護雰囲気で使用されるガスは窒素及び/又は不活性ガスである。
【0056】
好ましくは、前記熱処理温度は650~850℃であり、例えば、650℃、660℃、670℃、680℃、690℃、700℃、710℃、720℃、730℃、740℃、750℃、760℃、770℃、780℃、790℃、800℃、910℃、920℃、930℃、940℃又は950℃であってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0057】
好ましくは、前記熱処理時間は30~50minであり、例えば、30min、32min、34min、36min、38min、40min、42min、44min、46min、48min又は50minであってもよいが、列挙されている数値に限定されず、該数値範囲内の他の列挙されていない数値も同様に適用される。
【0058】
本願では、プレスされたグリーンインダクタを熱処理して磁心を高密度化し、より高い飽和磁束密度、より高い透磁率及びより低い損失を得るとともに、インダクタデバイスの強度を向上させる。異なる材料について、異なる熱処理温度を選択する。例えば、FeSiB、FeSiBCr、FeNiSiBPCなどのアモルファス金属軟磁性粉末について、熱処理温度は粉末の結晶化温度を超えることができず、ナノ結晶金軟磁性合金粉末について、熱処理温度は結晶化温度よりは高いが結晶粒成長温度よりは高くない必要があり、具体的な熱処理温度は、示差走査熱量計でテストした曲線に従って熱処理プロセスを設定する必要があり、ガスアトマイズ、又は水アトマイズ、又は水とガスの複合アトマイズ、又は多段アトマイズされたFeSiAl、FeNi、FeNiMo、FeSiなどの軟磁性粉末について、粉末の組み合わせに応じて高温熱処理を選択する必要があり、熱処理温度は650℃を超え、850℃未満である。熱処理時に、窒素、アルゴンなどの不活性ガス保護を使用しもよく、水素、水素/窒素混合ガスなどの還元性ガス保護の方式で熱処理してもよい。本願でエナメル線のない導線を使用し、且つ導線形状はI字型、S字型、L字型、U字型、W字型及びE字型などであるため、導線同士の接触がなく、導線間の短絡問題が存在しない。
【0059】
第2の態様では、本願は第1の態様に記載の製造方法で製造された同時焼成インダクタを提供し、前記同時焼成インダクタは磁心と磁心の内部に位置する少なくとも1本の導線とを含み、前記磁心は順次積層して設けられた少なくとも2層の磁粉層を含み、隣接する2層の磁粉層で使用された磁粉の種類は異なり、前記導線はそのうちの1層の磁粉層に位置し、導線の両端は磁心から延出し、磁心から延出する導線部分は折り曲げられた後に磁心の外壁に密着する。
【0060】
本願の好ましい技術案として、前記導線はエナメル線のない裸線である。
【0061】
好ましくは、前記導線は銅線である。
【0062】
好ましくは、前記導線は矩形断面の扁平導線である。
【0063】
好ましくは、前記導線の形状は直導線又は異形導線である。
【0064】
好ましくは、前記異形導線の形状はS字型、L字型、U字型、W字型又はE字型を含む。
【0065】
好ましくは、前記導線は水平面上に並べて間隔を置いてそのうちの1層の磁粉の内部に敷設される。
【0066】
従来の技術と比べて、本願の有益な効果は次の通りである。
本願に係る製造方法は一体成形プロセスを用いてインダクタを製造し、過多な部材の組み立て工程を回避し、一体成形後に熱処理し、応力を十分に解放し、材料のヒステリシス損失を低減し、軽負荷状態では、デバイスの損失が低下し、これにより導線と磁心の間に余分なギャップがなくなり、磁心においてエアギャップが均一に分布し、渦電流損失の振動ノイズを低減する。また、プレス工程では、複数バッチで添加する方法で異なる粉末を添加することにより、プレス過程における導線の変形量を最小限に抑え、磁心材料のアンチワインドアップ能力を向上させ、異なる磁粉材料のそれぞれの利点を十分に発揮し、デバイスの特性をよりよく発揮させ、正の温度係数と負の温度係数の軟磁性材料を組み合わせて使用することにより、デバイスの温度安定性を効果的に向上させることができる。
【0067】
詳細な説明を読んで理解した後に、他の態様を理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】本願の実施例1で製造された同時焼成インダクタの構造模式図である。
図2】本願の実施例2で製造された同時焼成インダクタの構造模式図である。
図3】本願の実施例3で製造された同時焼成インダクタの構造模式図である。
図4】本願の実施例4で製造された同時焼成インダクタの構造模式図である。
図5】本願の実施例5で製造された同時焼成インダクタの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本願の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などの用語により指示した方位又は位置関係は、図面に基づいて示される方位又は位置関係であり、本願の説明を容易にし、説明を簡略化するためのものにすぎず、言及した装置又は素子は、特定の方位を有し、特定の方位から構成して操作しなければならないことを指示又は暗に指示するものではなく、したがって、本願を限定するものと理解できない。また、「第1」、「第2」などの用語は目的を説明するものにすぎず、相対的な重要性を指示又は暗に指示したり、指示された技術的特徴の数を暗黙的に指定したりするものと理解できない。これにより、「第1」、「第2」などの特徴が限定されることは、その特徴の1つ又は複数を明示的又は暗黙的に含むことができる。本願の説明において、特に明記しない限り、「複数」は2つ以上を意味する。
【0070】
なお、本願の説明において、「設ける」「繋がる」、「連結」という用語は、別途明確に規定・限定されない限り、広義に理解されるべきであり、例えば、固定連結であってもよく、取り外し可能な連結又は一体的連結であってもよく、機械的連結であってもよく、電気的接続であってもよく、直接繋がってもよく、中間媒体を介して間接的に繋がってもよく、2つの素子の内部の連通であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて、本願における上記用語の具体的な意味を理解できる。
【0071】
以下、図面を参照しながら、具体的実施形態によって本願の技術案をさらに説明する。
【0072】
実施例1
本実施例は一体同時焼成インダクタの製造方法を提供し、前記製造方法は次のステップを含んだ。
(1)キャビティ内に0.2gの第1の磁粉を充填し、矩形断面の扁平銅導線1を、エナメル線を取り除いた後に第1の磁粉の表面に置き、導線1の両端はキャビティから延出し、導線1の形状は直導線1であり、長さは14mm、幅は2.6mm、厚さは0.3mmであり、キャビティを発振させ、導線1を第1の磁粉の内部に埋め込み、第1の磁粉を平らにし、次にキャビティ内に0.6gの第2の磁粉を充填し、キャビティを発振させ、第2の磁粉を平らにし、最後にキャビティ内に0.2gの第1の磁粉を充填し、キャビティを発振させ、第1の磁粉を平らにし、
(2)キャビティ内に充填された磁粉をプレス成形し、プレス方法はホットプレスであり、ホットプレス圧力は300Mpa/cm、ホットプレス温度は180℃、ホットプレス時間は30sであり、
(3)成形後、窒素雰囲気下でアニーリング熱処理して磁心を得て、熱処理温度は700℃、熱処理時間は30minであり、
(4)磁心から延出する導線1を順次含浸、溶射、折り曲げ、錫メッキを施した後に、11.0mm×5.0mm×2.0mmのサイズの同時焼成インダクタを得て、ここで、含浸処理は真空含浸であり、溶射過程で使用された溶射液はエポキシ樹脂である。
【0073】
ここで、ステップ(1)における第1の磁粉は下記の方法を用いて製造された。
(a)絶縁被覆:アセトンを用いてリン酸を希釈し、リン酸とアセトンの質量比は1:60であり、リン酸とアセトンを混合して1分間撹拌してから、5分間静置して使用に備え、D50=20μmのFeSi軟磁性粉末と希釈したリン酸を混合して30分間撹拌し、90℃で1時間ベークした後に、リン化処理した軟磁性粉末を得て、
(b)二次被覆:被覆材料とステップ(c)で得られた軟磁性粉末を混合して40分間撹拌し、被覆材料は軟磁性粉末の2wt%であり、被覆材料はフェノール樹脂であり、
(c)造粒処理:二次被覆した軟磁性粉末を40メッシュの造粒機で造粒し、造粒完了後に干し、干し時間は2hであり、干した軟磁性粉末を30メッシュの篩にかけてから、50℃で0.8時間乾燥処理し、自然冷却した後に30メッシュの篩にかけてから、篩過した軟磁性粉末に酸化マグネシウムを加えて前記第1の磁粉を得た。
【0074】
第2の磁粉は第1の磁粉と同じ操作ステップ及びプロセスパラメータを用いて製造され、区別は、ステップ(a)で使用された軟磁性粉末をFeSiAl磁粉に置き換えることにあり、FeSiAl磁粉は同様に絶縁被覆、二次被覆及び造粒処理された後に第2の磁粉を得て、各操作ステップで使用されるプロセスパラメータは完全に同じである。
【0075】
図1に示すように、製造された同時焼成インダクタに、キャビティ内の第1の磁粉、第2の磁粉及び第1の磁粉を順次充填し、第1の磁粉層2、第2の磁粉層3及び第3の磁粉層4をそれぞれ形成し、導線1は第1の磁粉層2に位置した。製造された同時焼成インダクタに対してインダクタンス特性テストを行ったところ、初期インダクタンスL(0A)=150nH、飽和電流90A、温度上昇電流85Aを測定した。12V-1Vの降圧回路を用いて効率テストを行い、テスト中にスイッチング電源周波数が500kHz、電子負荷が5Aのとき、効率は81.5%に達し、電子負荷が25Aのとき、効率は90.3%に達した。
【0076】
実施例2
本実施例は一体同時焼成インダクタの製造方法を提供し、前記製造方法は次のステップを含んだ。
(1)キャビティ内に0.3gの第1の磁粉を充填し、キャビティを発振させ、第1の磁粉を平らにし、次に0.5gの第2の磁粉を充填し、矩形断面の扁平銅導線1を、エナメル線を取り除いた後に第2の磁粉の表面に置き、導線1の両端はキャビティから延出し、導線1の形状はS字型であり、長さは10mm、幅は2.6mm、厚さは0.30mmであり、キャビティを発振させ、導線1を第2の磁粉の内部に埋め込み、第2の磁粉を平らにし、最後に0.3gの第1の磁粉を充填し、キャビティを発振させ、第1の磁粉を平らにし、
(2)キャビティ内に充填された磁粉をプレス成形し、プレス方法はホットプレスであり、ホットプレス圧力は400Mpa/cm、ホットプレス温度は180℃、ホットプレス時間は30sであり、
(3)成形後、不活性雰囲気下でアニーリング熱処理して磁心を得て、熱処理温度は650℃、熱処理時間は50minであり、
(4)磁心から延出する導線1を順次含浸、溶射、折り曲げ、錫メッキを施した後に、8.0mm×6.0mm×1.9mmのサイズの同時焼成インダクタを得て、ここで、含浸処理は真空含浸であり、溶射過程で使用された溶射液はエポキシ樹脂である。
【0077】
ここで、ステップ(1)における第1の磁粉は下記の方法を用いて製造された。
(a)絶縁被覆:アセトンを用いてリン酸を希釈し、リン酸とアセトンの質量比は1:63であり、リン酸とアセトンを混合して3分間撹拌してから、6分間静置して使用に備え、FeNi軟磁性粉末と希釈したリン酸を混合して40分間撹拌し、95℃で1.2時間ベークした後に、リン化処理した軟磁性粉末を得て、
(b)二次被覆:被覆材料とステップ(c)で得られた軟磁性粉末を混合して45分間撹拌し、被覆材料は軟磁性粉末の5wt%であり、被覆材料はエポキシ樹脂であり、
(c)造粒処理:二次被覆した軟磁性粉末を43メッシュの造粒機で造粒し、造粒完了後に干し、干し時間は2.3hであり、干した軟磁性粉末を35メッシュの篩にかけてから、55℃で1時間乾燥処理し、自然冷却した後に35メッシュの篩にかけてから、篩過した軟磁性粉末に潤滑粉を加えて前記第1の磁粉を得た。
【0078】
第2の磁粉は第1の磁粉と同じ操作ステップ及びプロセスパラメータを用いて製造され、区別は、ステップ(a)で使用された軟磁性粉末をFeSiAl磁粉に置き換えることにあり、FeSiAl磁粉は同様に絶縁被覆、二次被覆及び造粒処理した後に第2の磁粉を得て、各操作ステップで使用されるプロセスパラメータは完全に同じである。
【0079】
図2に示すように、製造された同時焼成インダクタに、キャビティ内の第1の磁粉、第2の磁粉及び第1の磁粉を順次充填し、第1の磁粉層2、第2の磁粉層3及び第3の磁粉層4をそれぞれ形成し、導線1は第2の磁粉層3に位置した。製造された同時焼成インダクタに対してインダクタンス特性テストを行ったところ、初期インダクタンスL(0A)=160nH、飽和電流95A、温度上昇電流90Aを測定した。12V-1Vの降圧回路を用いて効率テストを行い、テスト中にスイッチング電源周波数が500kHz、電子負荷が5Aのとき、効率は81.6%に達し、電子負荷が25Aのとき、効率は90.6%に達した。
【0080】
実施例3
本実施例は一体同時焼成インダクタの製造方法を提供し、前記製造方法は次のステップを含んだ。
(1)キャビティ内に0.2gの第1の磁粉を充填し、キャビティを発振させ、第1の磁粉を平らにし、次に0.6gの第2の磁粉を充填し、キャビティを発振させ、第2の磁粉を平らにし、最後に0.2gの第1の磁粉を充填し、矩形断面の扁平銅導線1を、エナメル線を取り除いた後に第1の磁粉の表面に置き、導線1の両端はキャビティから延出し、導線1の形状は「w」字型であり、長さは18mm、幅は2.8mm、厚さは0.26mmであり、キャビティを発振させ、導線1を第1の磁粉の内部に埋め込み、第1の磁粉を平らにし、
(2)キャビティ内に充填された磁粉をプレス成形し、プレス方法はホットプレスであり、ホットプレス圧力は400Mpa/cm、ホットプレス温度は180℃、ホットプレス時間は30sであり、
(3)成形後、窒素雰囲気下でアニーリング熱処理して磁心を得て、熱処理温度は690℃、熱処理時間は40minであり、
(4)磁心から延出する導線1を順次含浸、溶射、折り曲げ、錫メッキを施した後に、7.5mm×6.5mm×1.8mmのサイズの同時焼成インダクタを得て、ここで、含浸処理は真空含浸であり、溶射過程で使用された溶射液はエポキシ樹脂である。
【0081】
ここで、ステップ(1)における第1の磁粉は下記の方法を用いて製造された。
(a)絶縁被覆:アセトンを用いてリン酸を希釈し、リン酸とアセトンの質量比は1:65であり、リン酸とアセトンを混合して5分間撹拌してから、8分間静置して使用に備え、D50=10μmのFe粉と希釈したリン酸を混合して50分間撹拌し、100℃で1.3時間ベークした後に、リン化処理した軟磁性粉末を得て、
(b)二次被覆:被覆材料とステップ(c)で得られた軟磁性粉末を混合して55分間撹拌し、被覆材料は軟磁性粉末の7wt%であり、被覆材料はシリコーン樹脂であり、
(c)造粒処理:二次被覆した軟磁性粉末を50メッシュの造粒機で造粒し、造粒完了後に干し、干し時間は2.5hであり、干した軟磁性粉末を40メッシュの篩にかけてから、63℃で1.1時間乾燥処理し、自然冷却した後に40メッシュの篩にかけてから、篩過した軟磁性粉末に離型粉を加えて前記第1の磁粉を得た。
【0082】
第2の磁粉は第1の磁粉と同じ操作ステップ及びプロセスパラメータを用いて製造され、区別は、ステップ(a)で使用された軟磁性粉末をFeSiAl磁粉に置き換えることにあり、FeSiAl磁粉は同様に絶縁被覆、二次被覆及び造粒処理した後に第2の磁粉を得て、各操作ステップで使用されたプロセスパラメータは完全に同じである。
【0083】
図3に示すように、製造された同時焼成インダクタに、キャビティ内の第1の磁粉、第2の磁粉及び第1の磁粉を順次充填し、第1の磁粉層2、第2の磁粉層3及び第3の磁粉層4をそれぞれ形成し、導線1は第3の磁粉層4に位置した。製造された同時焼成インダクタに対してインダクタンス特性テストを行ったところ、初期インダクタンスL(0A)=150nH、飽和電流100A、温度上昇電流90Aを測定した。12V-1Vの降圧回路を用いて効率テストを行い、テスト中にスイッチング電源周波数が500kHz、電子負荷が5Aのとき、効率は80.8%に達し、電子負荷が25Aのとき、効率は91.2%に達した。
【0084】
実施例4
本実施例は一体同時焼成インダクタの製造方法を提供し、前記製造方法は次のステップを含んだ。
(1)キャビティ内に0.2gの第1の磁粉を充填し、矩形断面の扁平銅導線1を、エナメル線を取り除いた後に第1の磁粉の表面に置き、導線1の両端はキャビティから延出し、導線1の形状は直導線1であり、長さは10mm、幅は2.0mm、厚さは0.36mmであり、キャビティを発振させ、導線1を第1の磁粉の内部に埋め込み、第1の磁粉を平らにし、次にキャビティ内に0.6gの第2の磁粉を充填し、キャビティを発振させ、第2の磁粉を平らにし、最後にキャビティ内に0.2gの第3の磁粉を充填し、キャビティを発振させ、第3の磁粉を平らにし、
(2)キャビティ内に充填された磁粉をプレス成形し、プレス方法はコールドプレスであり、コールドプレス圧力は500Mpa/cm、コールドプレス温度は180℃、コールドプレス時間は30sであり、
(3)成形後、窒素雰囲気下でアニーリング熱処理して磁心を得て、熱処理温度は850℃、熱処理時間は30minであり、
(4)磁心から延出する導線1を順次含浸、溶射、折り曲げ、錫メッキを施した後に、8.0mm×5.0mm×3.0mmのサイズの同時焼成インダクタを得て、ここで、含浸処理は真空含浸であり、溶射過程で使用された溶射液はエポキシ樹脂である。
【0085】
ここで、ステップ(1)における第1の磁粉は下記の方法を用いて製造された。
(a)絶縁被覆:アセトンを用いてリン酸を希釈し、リン酸とアセトンの質量比は1:70であり、リン酸とアセトンを混合して6分間撹拌してから、10分間静置して使用に備え、D50=10μmのFeNi粉と希釈したリン酸を混合して60分間撹拌し、110℃で1.5時間ベークした後に、リン化処理した軟磁性粉末を得て、
(b)二次被覆:被覆材料とステップ(c)で得られた軟磁性粉末を混合して60分間撹拌し、被覆材料は軟磁性粉末の10wt%であり、被覆材料はシリコーン樹脂であり、
(c)造粒処理:二次被覆した軟磁性粉末を60メッシュの造粒機で造粒し、造粒完了後に干し、干し時間は3hであり、干した軟磁性粉末を50メッシュの篩にかけてから、70℃で1.2時間乾燥処理し、自然冷却した後に50メッシュの篩にかけてから、篩過した軟磁性粉末に酸化マグネシウム補助原料を加えて前記第1の磁粉を得た。
【0086】
第2の磁粉は第1の磁粉と同じ操作ステップ及びプロセスパラメータを用いて製造され、区別は、ステップ(a)で使用された軟磁性粉末をFeSiAl軟磁性粉末に置き換えることにあり、FeSiAl軟磁性粉末は同様に絶縁被覆、二次被覆及び造粒処理した後に第2の磁粉を得て、各操作ステップで使用されたプロセスパラメータは完全に同じである。
【0087】
第3の磁粉は第1の磁粉と同じ操作ステップ及びプロセスパラメータを用いて製造され、区別は、ステップ(a)で使用された軟磁性粉末をD50=20μmのFeSi軟磁性粉末に置き換えることにあり、FeSi軟磁性粉末は同様に絶縁被覆、二次被覆及び造粒処理した後に第3の磁粉を得て、各操作ステップで使用されたプロセスパラメータは完全に同じである。
【0088】
図4に示すように、製造された同時焼成インダクタに、キャビティ内の第1の磁粉、第2の磁粉及び第3の磁粉を順次充填し、第1の磁粉層2、第2の磁粉層3及び第3の磁粉層4をそれぞれ形成し、導線1は第1の磁粉層2に位置した。製造された同時焼成インダクタに対してインダクタンス特性テストを行ったところ、初期インダクタンスL(0A)=120nH、飽和電流70A、温度上昇電流65Aを測定した。12V-1Vの降圧回路を用いて効率テストを行い、テスト中にスイッチング電源周波数が500kHz、電子負荷が5Aのとき、効率は79.5%に達し、電子負荷が25Aのとき、効率は88.3%に達した。
【0089】
実施例5
本実施例は一体同時焼成インダクタの製造方法を提供し、前記製造方法は次のステップを含んだ。
(1)キャビティ内に0.2gの第1の磁粉を充填し、矩形断面の扁平銅導線1を、エナメル線を取り除いた後に第1の磁粉の表面に置き、導線1の両端はキャビティから延出し、導線1の形状は直導線1であり、長さは14mm、幅は2.2mm、厚さは0.35mmであり、キャビティを発振させ、導線1を第1の磁粉の内部に埋め込み、第1の磁粉を平らにしてから、0.3gの第2の磁粉、0.5gの第3の磁粉、0.3gの第2の磁粉及び0.2gの第1の磁粉を順次充填し、磁粉を充填するたびにキャビティを発振させて磁粉の表面を平らにし、
(2)キャビティ内に充填された磁粉をプレス成形し、プレス方法はコールドプレスであり、コールドプレス圧力は1600Mpa/cmであり、
(3)成形後、窒素雰囲気下でアニーリング熱処理して磁心を得て、熱処理温度は690℃、熱処理時間は40minであり、
(4)磁心から延出する導線1を順次含浸、溶射、折り曲げ、錫メッキを施した後に、10.0mm×5.0mm×2.0mmのサイズの同時焼成インダクタ(図1に示す)を得て、ここで、含浸処理は真空含浸であり、溶射過程で使用された溶射液はエポキシ樹脂である。
【0090】
ここで、ステップ(1)における第1の磁粉は下記の方法を用いて製造された。
(a)絶縁被覆:アセトンを用いてリン酸を希釈し、リン酸とアセトンの質量比は1:65であり、リン酸とアセトンを混合して5分間撹拌してから、8分間静置して使用に備え、D50=20μmのFeSi軟磁性粉末と希釈したリン酸を混合して50分間撹拌し、100℃で1.3時間ベークした後に、リン化処理した軟磁性粉末を得て、
(b)二次被覆:被覆材料とステップ(c)で得られた軟磁性粉末を混合して55分間撹拌し、被覆材料は軟磁性粉末の7wt%であり、被覆材料はフェノール樹脂であり、
(c)造粒処理:二次被覆した軟磁性粉末を50メッシュの造粒機で造粒し、造粒完了後に干し、干し時間は2.5hであり、干した軟磁性粉末を40メッシュの篩にかけてから、63℃で1.1時間乾燥処理し、自然冷却した後に40メッシュの篩にかけてから、篩過した軟磁性粉末に酸化マグネシウムを加えて前記第1の磁粉を得る。
【0091】
第2の磁粉は第1の磁粉と同じ操作ステップ及びプロセスパラメータを用いて製造され、区別は、ステップ(a)で使用された軟磁性粉末をD50=10μmのFeNi軟磁性粉末に置き換えることにあり、FeNi軟磁性粉末は同様に絶縁被覆、二次被覆及び造粒処理した後に第2の磁粉を得て、各操作ステップで使用されたプロセスパラメータは完全に同じである。
【0092】
第3の磁粉は第1の磁粉と同じ操作ステップ及びプロセスパラメータを用いて製造され、区別は、ステップ(a)で使用された軟磁性粉末をFeSiAl磁粉に置き換えることにあり、FeSiAl磁粉は同様に絶縁被覆、二次被覆及び造粒処理した後に第3の磁粉を得て、各操作ステップで使用されたプロセスパラメータは完全に同じである。
【0093】
図5に示すように、製造された同時焼成インダクタに、キャビティ内の第1の磁粉、第2の磁粉、第3の磁粉、第2の磁粉及び第1の磁粉を順次充填し、第1の磁粉層2、第2の磁粉層3、第3の磁粉層4、第4の磁粉層5及び第5の磁粉層6をそれぞれ形成し、導線1は第1の磁粉層2に位置した。製造された同時焼成インダクタに対してインダクタンス特性テストを行ったところ、初期インダクタンスL(0A)=165nH、飽和電流105A、温度上昇電流90Aを測定した。12V-1Vの降圧回路を用いて効率テストを行い、テスト中にスイッチング電源周波数が500kHz、電子負荷が5Aのとき、効率は82.0%に達し、電子負荷が25Aのとき、効率は91.5%に達した。
【0094】
比較例1
本実施例は一体同時焼成インダクタの製造方法を提供し、前記製造方法は次のステップを含んだ。
(1)キャビティ内に1gの磁粉を充填し、矩形断面の扁平銅導線1を、エナメル線を取り除いた後に磁粉に埋め込み、導線1の形状は直導線1であり、長さは14mm、幅は2.6mm、厚さは0.3mmであり、
(2)キャビティ内に充填された磁粉をプレス成形し、プレス方法はホットプレスであり、ホットプレス圧力は400Mpa/cm、ホットプレス温度は160℃、ホットプレス時間は25sであり、
(3)成形後、窒素雰囲気下でアニーリング熱処理して磁心を得て、熱処理温度は700℃、熱処理時間は30minであり、
(4)磁心から延出する導線1を順次含浸、溶射、折り曲げ、錫メッキを施した後に、11.0mm×5.0mm×2.0mmのサイズの同時焼成インダクタを得て、ここで、含浸処理は真空含浸であり、溶射過程で使用された溶射液はエポキシ樹脂である。
【0095】
ここで、ステップ(1)における磁粉は下記の方法を用いて製造された。
(a)絶縁被覆:アセトンを用いてリン酸を希釈し、リン酸とアセトンの質量比は1:60であり、リン酸とアセトンを混合して1分間撹拌してから、5分間静置して使用に備え、D50=20μmのFeSi軟磁性粉末と希釈したリン酸を混合して30分間撹拌し、90℃で1時間ベークした後に、リン化処理した軟磁性粉末を得て、
(b)二次被覆:被覆材料とステップ(c)で得られた軟磁性粉末を混合して40分間撹拌し、被覆材料は軟磁性粉末の2wt%であり、被覆材料はフェノール樹脂であり、
(c)造粒処理:二次被覆した軟磁性粉末を40メッシュの造粒機で造粒し、造粒完了後に干し、干し時間は2hであり、干した軟磁性粉末を30メッシュの篩にかけてから、50℃で0.8時間乾燥処理し、自然冷却した後に30メッシュの篩にかけてから、篩過した軟磁性粉末に酸化マグネシウム補助原料を加えて前記磁粉を得た。
【0096】
製造された同時焼成インダクタに対してインダクタンス特性テストを行ったところ、初期インダクタンスL(0A)=140nH、飽和電流50A、温度上昇電流40Aを測定した。12V-1Vの降圧回路を用いて効率テストを行い、テスト中にスイッチング電源周波数が500kHz、電子負荷が5Aのとき、効率は82.3%に達し、電子負荷が25Aのとき、効率は88.3%に達した。
【符号の説明】
【0097】
1-導線;2-第1の磁粉層;3-第2の磁粉層;4-第3の磁粉層;5-第4の磁粉層;6-第5の磁粉層。
図1
図2
図3
図4
図5