(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20241220BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
B62D1/04
B60R21/203
(21)【出願番号】P 2023538478
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2022028331
(87)【国際公開番号】W WO2023008304
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2021122214
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】金 眞根
(72)【発明者】
【氏名】熊川 裕康
(72)【発明者】
【氏名】ゴー ロデル
(72)【発明者】
【氏名】浅井 宏明
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-151779(JP,A)
【文献】特開平11-126537(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0215337(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
B62D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイール本体と、エアバッグモジュールと、前記エアバッグモジュールを前記ステアリングホイール本体から離れる方向に付勢する少なくとも一つのコイルバネと、を備え、
前記少なくとも一つのコイルバネは、
当該コイルバネの軸線が自由状態からずれた状態で前記ステアリングホイール本体と前記エアバッグモジュールとの間に配置され、自由状態における当該コイルバネの軸線に交差する方向にも前記エアバッグモジュールに力を印加するように構成されている、ステアリングホイール。
【請求項2】
前記少なくとも一つのコイルバネは、
前記エアバッグモジュール側の第1のバネ端部と、
前記ステアリングホイール本体側の第2のバネ端部と、を有し、
前記少なくとも一つのコイルバネは、
前記第1のバネ端部と前記第2のバネ端部とが、自由状態における当該コイルバネの軸線に直交する方向にずれて配置されている、請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記ステアリングホイール本体は、前記第1のバネ端部に対して、前記第2のバネ端部を前記直交する方向にずらす干渉部位を有している、請求項2に記載のステアリングホイール。
【請求項4】
前記干渉部位は、前記ステアリングホイール本体の骨格を形成する芯金に形成されている、請求項3に記載のステアリングホイール。
【請求項5】
前記芯金は、前記第2のバネ端部を受ける座面を有しており、
前記干渉部位は、前記座面の近傍から立ち上がる突出部として形成されている、請求項4に記載のステアリングホイール。
【請求項6】
前記干渉部位は、前記第2のバネ端部において当該コイルバネの軸線の方向に連続する少なくとも二つの線材部分に接触するように構成されている、請求項3から5のいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項7】
前記少なくとも二つの線材部分は、当該コイルバネにおける座巻の部分を含んでいる、請求項6に記載のステアリングホイール。
【請求項8】
前記第1のバネ端部は、前記エアバッグモジュールに固定されている一方、前記前記第2のバネ端部は、前記ステアリングホイール本体に固定されておらず、
前記第2のバネ端部は、前記エアバッグモジュールが前記ステアリングホイール本体に取り付けられる際に、前記干渉部位に接触して、前記直交する方向にずれて前記ステアリングホイール本体の座面に受けられるように構成されている、請求項3から5のいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項9】
前記ステアリングホイール本体の前記座面は、前記直交する方向において平坦な面を有している、請求項8に記載のステアリングホイール。
【請求項10】
前記ステアリングホイール本体の前記座面は、前記第2のバネ端部を位置決めする位置決め部を有している、請求項8に記載のステアリングホイール。
【請求項11】
前記エアバッグモジュールは、第1の方向に向かって前記ステアリングホイール本体に取り付けられ、
前記少なくとも一つのコイルバネは、前記第1の方向と交差する方向であって前記エアバッグモジュールを押し上げる方向に前記エアバッグモジュールに力を印加する、請求項8に記載のステアリングホイール。
【請求項12】
前記第1の方向は、当該コイルバネの自由状態における軸線の方向である、請求項11に記載のステアリングホイール。
【請求項13】
前記エアバッグモジュールは、前記第2のバネ端部に対して、前記第1のバネ端部を前記直交する方向にずらす干渉部位を有している、請求項2に記載のステアリングホイール。
【請求項14】
前記少なくとも一つのコイル
バネは、前記エアバッグモジュールの中心から見て下側に位置している、請求項1から5のいずれか一項又は請求項13に記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両衝突時に運転者の安全を守るために、フロントエアバッグ機能を有するステアリングホイールが広く採用されている。例えば、特許文献1に開示されたステアリングホイールでは、エアバッグ装置がスナップフィットにより3つのホーンスイッチ機構を介してステアリングホイール本体に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のステアリングホイールでは、エアバッグ装置がステアリングホイール本体に取り付けられた後、自重によってわずかにずり下がり、ステアリングホイール本体に対して位置ずれが生じることがある。このような位置ずれが生じると、例えば、エアバッグ装置とステアリングホイール本体との間において上側では隙間が大きく、下側では隙間が小さくなるなど、ステアリングホイール全体の意匠性を低下させ得る。また、他の作用にも影響を及ぼす可能性があり得る。
【0005】
本発明は、エアバッグモジュールの位置の安定化に寄与することができるステアリングホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るステアリングホイールは、ステアリングホイール本体と、エアバッグモジュールと、エアバッグモジュールをステアリングホイール本体から離れる方向に付勢する少なくとも一つのコイルバネと、を備え、少なくとも一つのコイルバネは、当該コイルバネの軸線が自由状態からずれた状態でステアリングホイール本体とエアバッグモジュールとの間に配置され、自由状態における当該コイルバネの軸線に交差する方向にもエアバッグモジュールに力を印加するように構成されている。
【0007】
この態様によれば、軸線が自由状態からずれて配置されたコイルバネには、自由状態における軸線に交差する方向へのバイアスが生じる。これにより、コイルバネによって、エアバッグモジュールには、ステアリングホイール本体から離れる方向のみならず、当該交差する方向にも付勢される力が作用されるようになる。この交差する方向への力を利用することで、エアバッグモジュールの位置の安定化を図ることができる。例えば、この交差する方向への力を、エアバッグモジュールの自重によるずり下がりを抑制するような方向に向けることで、ステアリングホイール本体に対するエアバッグモジュールの位置を本来の位置に指向することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るステアリングホイールの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1のステアリングホイールについて、エアバッグモジュールをステアリングホイール本体から取り外した状態を示す分解斜視図である。
【
図3】
図2のステアリングホイール本体の中心部の拡大斜視図である。
【
図4】
図2のエアバックモジュールを底部側から示す斜視図である。
【
図6】
図1のステアリングホイールのコイルバネ及びその周辺の構造を示す図であり、(a)は、エアバッグモジュールをステアリングホイール本体に取り付ける前のコイルバネの状態を示し、(b)は、エアバッグモジュールをステアリングホイール本体に取り付けた後のコイルバネの状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好適な実施形態に係るステアリングホイールについて説明する。
【0010】
ステアリングホイールは、自動車などの車両の運転席側に配置されるものであり、複数の機能を有している。例えば、ステアリングホイールは、車両の操舵装置としての機能を有している。具体的には、ステアリングホイールは、一般に傾斜した状態で車体に備えられるステアリングシャフトの上端部に装着される。そして、運転手からの操舵力がステアリングホイールからステアリングシャフトに伝達され、ステアリングギア等を介して車輪に伝達され、車輪の向きが変更される。
【0011】
また、ステアリングホイールは、車両緊急時のフロントエアバッグとしての機能を有している。車両緊急時とは、例えば、車両の衝突が発生した時をいう。フロントエアバッグとしての機能は、主として、ステアリングホイール本体に取り付けられたエアバッグモジュールによって達成される。これらの機能に加え、ステアリングホイールは、ホーン装置としての機能を有していてもよい。また、ステアリングホイールは、車両からステアリングホイールへの振動を減衰するダイナミックダンパとしての機能を有していてもよく、かかる機能はエアバッグモジュールをダンパマスとして用いることで達成される。
【0012】
ある実施態様のステアリングホイールでは、エアバッグモジュールがステアリングホイール本体にダンパユニット等を介して第1の方向に向かって取り付けられる。この「第1の方向」とは、例えば、ステアリングシャフトの軸方向又は長手方向となり得る。そして、取り付け状態では、エアバッグモジュールとステアリングホイール本体との間に配置した少なくとも一つのコイルバネによって、第1の方向と交差する方向へとエアバッグモジュールを押し上げ、それによりエアバッグモジュールの位置の安定化を図っている。以下では、「第1の方向」が、ステアリングシャフトの軸方向に一致するものとして説明する。
【0013】
また、以下では、説明の便宜のために、XYZの三軸を次のとおり定義する。ステアリングシャフトの軸方向(すなわち第1の方向)を「Z軸方向」とし、Z軸方向に直交する平面においてアナログ12時間時計の9時と3時とを結ぶ方向を「X軸」の方向とし、また、同時計の12時と6時とを結ぶ方向を「Y軸」の方向とする。X軸の方向は、ステアリングホイール又は車両の幅方向に相当する方向であり得る。Y軸の方向は、車両の前後方向(車両が直進するときの進行方向)であり得る。また、X軸及びY軸によって構成される平面を「XY面」と呼ぶ。さらに、
図1においてXYZの三軸の矢印が向く方向を「プラス側」とし、その反対の方向を「マイナス側」とする。したがって、例えば、Y軸方向のプラス側とは上記のアナログ12時間時計の12時の側となり、Y軸方向のマイナス側とは同時計の6時の側となる。
【0014】
図1及び2に示すように、ステアリングホイール1は、ステアリングホイール本体2及びエアバッグモジュール3を有している。また、ステアリングホイール1は、ダンパユニット4a及び支持ユニット4bを有している。エアバッグモジュール3は、ダンパユニット4a及び支持ユニット4bを介してステアリングホイール本体2にZ軸方向に向かって取り付けられる。
【0015】
ステアリングホイール本体2は、その骨格を形成する芯金2aを有する。芯金2aは、例えば、鉄、アルミニウム、マグネシウムなどの金属により成形される。芯金2aは、中央にボス部20を、外周にリム部21を有し、さらに、ボス部20とリム部21とを連結するスポーク部22を有している。リム部21は、運転者が把持する部分であり、ここでは円環状に形成されている。スポーク部22は、複数(ここでは2つ)あり、それぞれボス部20から外方に延出してリム部21に連結されている。他の実施態様では、スポーク部22は3つ以上あってもよい。
【0016】
また、ステアリングホイール本体2は、芯金2a上に、一つ以上の層を有するものであってもよい。例えば、リム部21及びスポーク部22上に、発砲ポリウレタン樹脂などの軟質合成樹脂被覆の層を有してもよい。また、リム部21上に、外側に向かって順次、絶縁層としてのウレタン層と、ステアリングホイール本体2を温めるヒーター機能のためのヒーター電極の層と、絶縁層としての表皮層と、運転者によるステアリングホイール本体2の把持を検知するためのセンサ電極の層と、を有するものであってもよい。
【0017】
図3に示すように、ボス部20は、ステアリングシャフト100(参照:
図5)が取り付けられるシャフト取付け部23と、シャフト取付け部23を中央に凹状に形成したベース部24と、を有している。ベース部24は、そのX軸方向の両端から斜めに立ち上がる傾斜部25、25をスポーク部22に連結している。また、ベース部24は、Y軸方向のマイナス側におけるX軸方向の両端同士がブリッジ部26でつながれている。ブリッジ部26の中央部には、シャフト取付け部23に向かって突出するタブ係合部26aが形成されている。タブ係合部26aには、エアバッグモジュール3のタブ39が弾性的に係合される(参照:
図1及び2)。
【0018】
ベース部24には、シャフト取付け部23を挟んでX軸方向の両側に複数(ここでは2つ)の取付け孔27、27が貫通形成されており(参照:
図5)、各取付け孔27には筒状のカラー51が装着されている。カラー51は、ダンパユニット4aを取り付けるために用いられる。例えば、カラー51は、一端にフランジ部53を有する筒部の途中に切り欠きを有しており(参照:
図5)、筒部内にダンパユニット4aのピン41が挿入される。
【0019】
また、ベース部24には、取付け孔27、27よりもY軸方向マイナス側の位置に座面28、28を有している。座面28は、支持ユニット4bの一端を受ける。座面28、28とブリッジ部26との間には、ベース部24の表面からZ軸方向のプラス側に突出する凸部29、29が形成されている。凸部29の頂面29aには、ホーン機構70の固定接点72が設けられている。また、凸部29の根元部には、支持ユニット4bの一端に干渉する干渉部位90が設けられている(詳細は後述する)。
【0020】
図4に示すように、エアバッグモジュール3は、エアバッグクッション30(
図5参照)と、ハウジング31と、インフレータ32と、エアバッグクッション30を覆うようにハウジング31に取り付けられたモジュールカバー33と、ハウジング31に取り付けられたロックプレート34と、有している。エアバッグクッション30は、例えば折り畳まれた状態となっている。
【0021】
ハウジング31は、XY面に沿った底面を有する底壁36と、底壁36から立ちあがる周壁37と、を有しており、全体として浅皿状に形成されている。底壁36は、中央にインフレータ32が取り付けられ、その周囲にロックプレート34が取り付けられている。
【0022】
また、ハウジング31には、ばね性を有するタブ39が取り付けられている。タブ39は、
図2及び4に示すように、片持ちの板バネ391と、板バネ391の自由端側に設けられたインシュレータ392と、を有している。板バネ391は、一端が周壁37のY軸方向マイナス側の面に取り付けられ、Z軸方向のマイナス側に向かって延びている。板バネ391及びインシュレータ392によって画成される受入れ開口394にタブ係合部26aが挿通される。この挿通状態では、インシュレータ392の受入れ開口394側の端面(上面)がタブ係合部26aの下面に当接又は対向し、また、インシュレータ392のY軸方向マイナス側の面がタブ係合部26aの根元部分(芯金2aのブリッジ部26の側面)に弾性的に当接する。これにより、ステアリングホイール本体2の振動が板バネ391の弾性作用によって減衰される。
【0023】
インフレータ32は、ガス噴出孔を有する低背の中空円盤体を有する。車両緊急時、インフレータ32が、車両のセンサから信号を受信して作動し、エアバッグクッション30にガスを瞬時に供給する。ガスの供給を受けたエアバッグクッション30は、急速に膨張してモジュールカバー33を破裂させて、車室空間の運転者側に向かって膨張し、運転者を拘束する。
【0024】
モジュールカバー33は、例えば樹脂により形成され、ステアリングホイール1の運転者側に向かう意匠面を構成する。また、モジュールカバー33は、ホーンを鳴らすときに運転者が押すホーンスイッチとして機能する。詳細には、モジュールカバー33が運転者によってZ軸方向のマイナス側に押されると、エアバッグモジュール3がダンパユニット4a及び支持ユニット4bの付勢力に抗してステアリングホイール本体2に近づく。このとき、エアバッグモジュール3側に設けたホーン機構70の可動接点71が、ステアリングホイール本体2側に設けたホーン機構70の固定接点72に接触する。この接触により、ホーン機構70は、ホーン作動状態となり、ホーンを鳴らすようになっている。一方、エアバッグモジュール3の押し下げが解放されると、エアバッグモジュール3はダンパユニット4a及び支持ユニット4bの付勢力によって元の位置に戻され、ホーン非作動状態となる。
【0025】
ロックプレート34は、例えば一枚の金属プレートをプレス成形してなる。ロックプレート34は、ハウジング31の底壁36から離間するように隆起した部位に開口部34a、34aを有している(参照:
図5)。この各開口部34aにダンパユニット4aのピン41が挿通されている。また、ロックプレプレート34の平板部には、支持ユニット4bのブッシュ61が固定され、さらに、この固定箇所よりもY軸方向マイナス側にホーン機構70の可動接点71が配置されている。
【0026】
他の実施態様では、ロックプレート34を省略することも可能である。その場合、ロックプレート34に関連する構成及び機能は、エアバッグモジュール3の別の部材、例えばハウジング31に設けられる。そして、ステアリングホイール本体2に対向するエアバッグモジュール3の底部は、ロックプレート34がある場合には主としてロックプレート34によって構成され、ロックプレート34がない場合には主としてハウジング31の底壁36によって構成される。
【0027】
図4に示すように、ダンパユニット4a及び支持ユニット4bは、それぞれ複数(ここでは2つずつ)あり、エアバッグモジュール3の底部に配設されている。2つのダンパユニット4a、4aは、Y軸方向のプラス側において、また、2つの支持ユニット4b、4bは、Y軸方向のマイナス側において、それぞれ、X軸方向の両側に配設されている。別の見方をすれば、エアバッグモジュール3をZ軸方向に直交する平面においてアナログ12時間時計で見た場合、概略、2時及び10時の方向にダンパユニット4a、4aが配置され、4時及び8時の方向に支持ユニット4b、4bが配置されているとみることもできる。
【0028】
なお、ダンパユニット4a及び支持ユニット4bの数及び配置個所は、適宜設定することができる。例えば、他の実施態様では、支持ユニット4bの数を3つとし、アナログ12時間時計で見た場合に、3時、6時及び9時の方向に配置してもよい。また、ダンパユニット4aを省略してもよい。
【0029】
図4及び5に示すように、ダンパユニット4aは、ピン41、スプリング42及びダンパアッセンブリ43を有しており、ステアリングホイール本体2の振動をエアバッグモジュール3に伝達するモジュールダンパを構成している。すなわち、ダンパユニット4aは、車両からの振動を減衰するダイナミックダンパとして機能する。
【0030】
ダンパアッセンブリ43は、ロックプレート34の開口部34aに取り付けられている。ダンパアッセンブリ43は、弾性体45と、弾性体45を保持するインナースリーブ46及びアウタースリーブ47と、弾性体45の上面を覆う環状ピース48と、を有している。弾性体45は、ステアリングホイール1の振動を抑制するためのものであり、例えばゴムやシリコン等により、環体状に形成されている。インナースリーブ46、アウタースリーブ47及び環状ピース48は、例えば樹脂から形成され、これらが囲む空間に弾性体45を保持している。
【0031】
インナースリーブ46の内側には、ピン41が挿通されている。インナースリーブ46は、ピン41に対してZ軸方向に摺動可能に構成されている。アウタースリーブ47は、開口部34aに取り付けられる。かかる取り付けによって、ダンパユニット4aがエアバッグモジュール3の底部に固定される。したがって、エアバッグモジュール3がZ軸方向において移動すると、エアバッグモジュール3と一緒にダンパアッセンブリ43もZ軸方向に移動し、この移動の際に、ダンパアッセンブリ43のインナースリーブ46がピン41に対して摺動する。
【0032】
ピン41は、Z軸方向に延びており、インナースリーブ46の内側において開口部34aに挿通されている。ピン41のZ軸方向における一端は、フランジ状に形成されており、このフランジ部の下側にダンパアッセンブリ43の上部が位置している。また、ピン41のZ軸方向における他端部は、カラー51の内側に挿入されて取付け孔27に挿通されている。ピン41の先端部の係止溝44には、芯金2aに取り付けられた保持スプリング52が係止され、これにより、ピン41が芯金2aに対して固定される。
【0033】
スプリング42は、ピン41の外周を取り巻くようにして設けられたコイルスプリングからなり、エアバッグモジュール3をステアリングホイール本体2から離れる方向に付勢する。スプリング42は、一端がインナースリーブ46の保持部46aに保持され、他端が自由端となっており、この自由端がカラー51のフランジ部53上に着座する。
【0034】
再び
図4に示すように、支持ユニット4bは、ブッシュ61及びコイルバネ62を有している。ブッシュ61は、ロックプレート34に固定されている。コイルバネ62は、エアバッグモジュール3をステアリングホイール本体2から離れる方向に付勢する。コイルバネ62は、一端がブッシュ61に保持され、他端が自由端となっており、この自由端がボス部20の座面28に着座する。コイルバネ62の外径は、ダンパユニット4aのスプリング42の外径よりも小さい。
【0035】
ここで、ステアリングホイール本体2に対するエアバッグモジュール3の取付け(組付け)に際しては、まず、
図2及び4に示すように、エアバッグモジュール3にダンパユニット4a及び支持ユニット4bを設けておく。その上で、エアバッグモジュール3をZ軸方向マイナス側に移動させ、ダンパユニット4aのピン41をカラー51の内部に挿入し、保持スプリング52で係止させる(参照:
図5)。かかる係止によって、エアバッグモジュール3と芯金2aとが連結される。この連結状態となると、ダンパユニット4aのスプリング42及び支持ユニット4bのコイルバネ62がエアバッグモジュール3の底部とステアリングホイール本体2との間に介在し、エアバッグモジュール3がステアリングホイール本体2に対して弾性的に支持される。
【0036】
次に、
図6を参照して、コイルバネ62及びその周辺の構造について説明する。
図6(a)は、エアバッグモジュール3をステアリングホイール本体2に取り付ける前のコイルバネ62の状態を示し、
図6(b)は、エアバッグモジュール3をステアリングホイール本体2に取り付けた後のコイルバネ62の状態を示している。
【0037】
コイルバネ62は、エアバッグモジュール3側の第1のバネ端部81と、ステアリングホイール本体2側の第2のバネ端部82と、を有している。第1のバネ端部81及び第2のバネ端部82は、それぞれ、コイルバネ62の両端部に位置している。エアバッグモジュール3をステアリングホイール本体2に取り付ける前の状態では、第1のバネ端部81は固定端になり、第2のバネ端部82は自由端になっている。ここでは、第1のバネ端部81は、エアバッグモジュール3の底部に固定されたブッシュ61に保持されている。また、第2のバネ端部82は、エアバッグモジュール3をステアリングホイール本体2に取り付けた際に、ステアリングホイール本体2の座面28に着座するようになっている。
【0038】
コイルバネ62は、例えば圧縮コイルバネで構成されている。コイルバネ62は、ばねの巻き数が複数となっており、第1のバネ端部81及び第2のバネ端部82は、コイルバネにおける座巻の部分を含んでいる。座巻は、例えば1.0巻きであるが、これに限らず、例えば1.5巻き等であってもよい。
【0039】
コイルバネ62は、その軸線が自由状態からずれた状態でステアリングホイール本体2とエアバッグモジュール3との間に配置される。
【0040】
具体的には、
図6(a)に示すように、コイルバネ62が自由状態にある場合、コイルバネ62の軸線L1は、Z軸方向に平行に延在する。軸線L1は、コイルバネ62の中心を通る中心線(コイルバネ軸)であり、コイルバネ62の両端の座巻中心も通っている。
【0041】
一方、
図6(b)に示すように、エアバッグモジュール3をステアリングホイール本体2に取り付けた場合、コイルバネ62の軸線L2は、自由状態の軸線L1からずれた状態(以下「オフセット状態」という。)となる。軸線L2は、軸線L1と同様に、コイルバネ62の中心を通る中心線であり、コイルバネ62の両端の座巻中心も通っているが、Z軸方向に対してわずかに傾斜している。ここでは、軸線L2は、第1のバネ端部81の中心が第2のバネ端部82の中心よりもY軸方向のマイナス側に位置するように、Z軸方向に対して傾斜している。このように、オフセット状態では、第1のバネ端部81と第2のバネ端部82とが、自由状態の軸線L1に直交する方向(ここではY軸方向)にずれて配置される。
【0042】
オフセット状態で配置されたコイルバネ62には、自由状態の軸線L1に交差する方向(ここではY軸方向のプラス側)へのバイアスが生じる。これにより、コイルバネ62によって、エアバッグモジュール3には、ステアリングホイール本体2から離れる方向への力F1のみならず、自由状態の軸線L1に交差する方向(Y軸方向のプラス側)への力F2が印加される。力F1と力F2との合力は、エアバッグモジュール3の取付け方向(第1の方向、Z軸方向)に交差する方向であって、エアバッグモジュール3を押し上げる方向となっている。したがって、コイルバネ62によって、ステアリングホイール本体2に対するエアバッグモジュール3の自重によるずれ下がりが抑制される。
【0043】
ここで、ステアリングホイール本体2には、コイルバネ62をオフセット状態にするための構造が設けられている。
【0044】
例えば、ステアリングホイール本体2は、干渉部位90を有している。干渉部位90は、第1のバネ端部81に対して、第2のバネ端部82をコイルバネ62の軸線L1に直交する方向(ここではY軸方向)にずらすように構成されている。例えば、干渉部位90は、コイルバネ62のうち、第2のバネ端部82にのみ接触し、第2のバネ端部82をY軸方向プラス側に押すことで、第1のバネ端部81に対する位置ずれを生じさせる。これにより、コイルバネ62はオフセット状態となる。なお、干渉部位90による干渉量(第2のバネ端部82をY軸方向プラス側に押す力)は、コイルバネ62のバネ定数などを考慮の上、設定することができる。
【0045】
干渉部位90は、第2のバネ端部82に対して、一つ又は複数の干渉ポイントを有することができる。例えば、干渉部位90は、第2のバネ端部82において当該コイルバネ62の軸線の方向に連続する少なくとも二つの線材部分82a、82bに接触するように構成することができる。線材部分82a、82bは、コイルバネ62を構成するバネ線材の一部である。また、線材部分82a、82bは、ばねの巻き数を構成する部分であり、線材部分82bは、線材部分82aに対して次の巻き数を構成する部分となる。ここでは、線材部分82aは、コイルバネ62における座巻の部分となっている。
【0046】
干渉部位90は、ステアリングホイール本体2の芯金2aに形成することもできるし、芯金2aとは別の部材をステアリングホイール本体2に設けることで構成することもできる。ここでは、干渉部位90は、座面28の近傍から立ち上がる突出部として芯金2aに形成されている。詳細には、干渉部位90は、芯金2aの凸部29の根元部に形成されている。凸部29のY軸方向プラス側の面は、上端が下端よりもY軸方向マイナス側に位置するように傾斜しており、その根元部(下端部)が、干渉部位90として機能する。
【0047】
干渉部位90は、エアバッグモジュール3をステアリングホイール本体2に取り付ける際に、コイルバネ62の第2のバネ端部82に接触する。かかる接触によって、第2のバネ端部82が、軸線L1に直交する方向(ここではY軸方向のプラス側)にずれて、座面28に受けられる。その結果、コイルバネ62の軸線L2が軸線L1から傾くことになる。
【0048】
座面28は、軸線L1に直交する方向において平坦な面を有しており、第2のバネ端部82は、座面28の当該平坦面に着座する。他の実施態様では、座面28は、第2のバネ端部82を位置決めする位置決め部を有してもよい。例えば、座面28は、第2のバネ端部82の線材部分82aを受け入れる又は篏合される位置決め部を、平坦面又はその近傍に有してもよい。位置決め部を設けておくことで、バイアスがかかるコイルバネ62の位置を安定させることができる。
【0049】
以上説明した本実施形態の作用効果を説明する。
上述のとおり、実施形態に係るステアリングホイール1は、ステアリングホイール本体2と、エアバッグモジュール3と、エアバッグモジュール3をステアリングホイール本体2から離れる方向に付勢する少なくとも一つのコイルバネ62と、を備え、コイルバネ62は、その軸線が自由状態からずれた状態でステアリングホイール本体2とエアバッグモジュール3との間に配置され、自由状態における当該コイルバネの軸線L1に交差する方向にもエアバッグモジュール3に力を印加するように構成されている。
【0050】
この態様によれば、オフセット状態で配置されたコイルバネ62には、自由状態における軸線L1に交差する方向(ここではY軸方向プラス側)へのバイアスが生じる。これにより、コイルバネ62によって、エアバッグモジュール3には、ステアリングホイール本体2から離れるZ軸方向プラス側のみならず、Y軸方向プラス側にも付勢される力が作用されるようになる。すなわち、オフセット状態で配置されたコイルバネ62によるY軸方向プラス側且つZ軸方向プラス側の範囲に向かう合力が、エアバッグモジュール3に作用する。これにより、ステアリングホイール本体2に対するエアバッグモジュール3の自重によるずれ下がりが抑制されるように、エアバッグモジュール3が押し上げられ、ステアリングホイール本体2に対するエアバッグモジュール3の位置(特に、Y軸方向の位置)が、本来の取り付け位置に指向される。
【0051】
したがって、エアバッグモジュール3の位置の安定化に寄与することができる。これにより、例えばエアバッグモジュールカバー33とステアリングホイール本体2との本来の位置関係が保持され、ステアリングホイール1全体の意匠性の向上を実現することができる。また、このようなエアバッグモジュール3の位置の安定化を、ステアリングホイール本体2とエアバッグモジュール3との間に介在させるコイルバネ62の特性を有効に利用して達成することができる。既存のステアリングホイールにおいては、ステアリングホイール本体とエアバッグモジュールとの間にコイルスプリングを介在させているものがあり、このような既存のコイルスプリングを有効に利用することでエアバッグモジュール3の位置の安定化を図ることができる。
【0052】
また、実施形態によれば、コイルバネ62は、第1のバネ端部81と第2のバネ端部82とが軸線L1に直交する方向にずれて配置されている。このように、コイルバネ62の軸線のずらしを、コイルバネ62の両端部を軸線L1に直交する方向にずらすという簡易な方法により行うことができる。
【0053】
また、実施形態によれば、ステアリングホイール本体2は、第1のバネ端部81に対して、第2のバネ端部82を軸線L1に直交する方向にずらす干渉部位90を有している。これにより、ステアリングホイール2側に設けた構造により、コイルバネ62をオフセット状態にすることができる。
【0054】
また、実施形態によれば、干渉部位90は、ステアリングホイール本体2の骨格を形成する芯金2aに形成されている。これにより、芯金2aを有効に利用して、コイルバネ62をオフセット状態にするための干渉部位90を設けることができる。
【0055】
また、実施形態によれば、干渉部位90は、第2のバネ端部82を受ける座面28の近傍から立ち上がる突出部として形成されている。これにより、干渉部位90の剛性、強度を確保することができる。また、実施形態では、かかる突出部は、ホーン機構70の固定接点72を設けた凸部29の根元部となっている。このため、ホーン機構70に使用する構造を有効に利用して、コイルバネ62をオフセット状態にすることができる。
【0056】
また、実施形態によれば、干渉部位90は、第2のバネ端部82の少なくとも二つの線材部分82a、82bに接触するように構成されている。これにより、干渉部位90による接触面積(干渉面積)を増やすことができ、第2のバネ端部82を安定して又は確実に押すことができる。
【0057】
また、実施形態によれば、コイルスプリング62は、エアバッグモジュール3の中心から見て下側に位置している。これにより、ステアリングホイール本体2に対するエアバッグモジュール3の自重によるずれ下がりを効果的に抑制することができる。また、この結果、エアバッグモジュール3の中心から見て上側に位置するダンパユニット4a、4aにおいても、エアバッグモジュール3とステアリングホイール本体2との位置(Y軸方向の位置)が安定するため、ダンパユニット4a、4aによる減衰効果が安定するようになる。
【0058】
また、実施形態によれば、コイルスプリング62は、エアバッグモジュール3の中心から見て左右両側にそれぞれ位置している。これにより、エアバッグモジュール3を左右方向においてバランスよく押し上げることができる。
【0059】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0060】
例えば、コイルスプリング62の数は、2つに限らず、3つ以上であってもよいし、1つであってもよい。1つの場合には、アナログ12時間時計の6時の方向にコイルスプリング62を配置してもよい。
【0061】
また、干渉部位90は、ステアリングホイール本体2側ではなく、エアバッグモジュール3側に設けてもよい。例えば、エアバッグモジュール3の底部に干渉部位を設け、かかる干渉部位が、第2のバネ端部82に対して、第1のバネ端部81をコイルバネ62の軸線L1に直交する方向にずらすようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…ステアリングホイール、2…ステアリングホイール本体、2a…芯金、3…エアバッグモジュール、4a…ダンパユニット、4b…支持ユニット、20…ボス部、21…リム部、22…スポーク部、23…シャフト取付け部、24…ベース部、25…傾斜部、26…ブリッジ部、26a…タブ係合部、27…取付け孔、28…座面、29…凸部、29a…頂面、30…エアバッグクッション、31…ハウジング、32…インフレータ、32a…固定プレート、33…モジュールカバー、34…ロックプレート、34a…開口部、36…底壁、37…周壁、39…タブ、41…ピン、42…スプリング、43…ダンパアッセンブリ、44…係止溝、45…弾性体、46…インナースリーブ、46a…保持部、47…アウタースリーブ、48…環状ピース、51…カラー、52…保持スプリング、53…フランジ部、61…ブッシュ、62…コイルバネ、70…ホーン機構、71…可動接点、72…固定接点、81…第1のバネ端部、82…第2のバネ端部、82a、82b…線材部分、90…干渉部位、100…ステアリングシャフト、391…板バネ、392…インシュレータ、394…受入れ開口、F1、F2…力、L1…自由状態における軸線、L2…オフセット状態における軸線