(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システム
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20241220BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
B63B25/16 D
F17C13/00 302A
(21)【出願番号】P 2023543297
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 KR2021019888
(87)【国際公開番号】W WO2022158736
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0007521
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】ハンファ オーシャン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヘ ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン ジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】リー,スン チョル
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-204026(JP,A)
【文献】特開2000-266294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/16
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の再液化システムに設けられて、貯蔵タンクから供給された蒸発ガスを冷却する熱交換器;と、
前記熱交換器で前記蒸発ガスを冷却する冷媒が循環する冷媒循環ラインと、前記冷媒循環ラインに設けられて、前記熱交換器で前記蒸発ガスを冷却した後に前記熱交換器から排出された冷媒を圧縮する冷媒圧縮機と、前記冷媒圧縮機で圧縮された後に前記熱交換器で冷却された冷媒を膨張冷却させて、熱交換器の冷媒として供給する膨張器とを有する冷媒サイクル;と、
前記冷媒サイクルに充填される冷媒を貯蔵するインベントリタンク;と、
前記インベントリタンクから前記冷媒圧縮機の上流に接続されて、前記冷媒サイクルに冷媒を補充する冷媒供給ライン;と、
前記冷媒圧縮機の下流から前記インベントリタンクに接続されて、前記冷媒サイクルの冷媒を前記インベントリタンクに排出させる冷媒排出ライン;と、
前記冷媒排出ラインから分岐する圧力調節ライン:とを備え、
前記冷媒排出ラインまたは圧力調節ラインに前記冷媒サイクルの冷媒を排出させることで、前記冷媒サイクルが減圧され
、
前記冷媒サイクルの減圧時に、前記冷媒排出ラインを介して前記インベントリタンクに優先的に前記冷媒を排出させ、前記インベントリタンクと前記冷媒サイクルとの圧力が逆転した後、前記圧力調節ラインに前記冷媒を排出させることで、前記冷媒サイクルが減圧され、
前記圧力調節ラインを介して排出された冷媒を船外へ排出させずに、冷媒サイクルに補充される冷媒、船内で供給されるユーティリティガス及び船内で供給されるブランケットガスのうちの少なくとも1つとして再利用することを特徴とする、
船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システム。
【請求項2】
前記冷媒排出ラインの前記圧力調節ラインとの分岐点の上流に設けられる第1バルブ;と、
前記圧力調節ラインに設けられる第2バルブ;と、
前記冷媒排出ラインの前記圧力調節ラインとの分岐点の下流に設けられる第3バルブ:とをさらに備
えることを特徴とする、
請求項1記載の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システム。
【請求項3】
前記船舶に設けられて、船舶に供給されるユーティリティN
2を貯蔵するバッファタンク;と、
前記バッファタンクから供給されたユーティリティN
2を、乾燥及び濾過させて、露点を下げる乾燥濾過部;と、
前記乾燥濾過部を経た窒素冷媒を前記インベントリタンクに供給する前に圧縮するブースト圧縮機;とをさらに備える、
請求項2記載の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システム。
【請求項4】
前記圧力調節ラインは前記バッファタンクに接続され、前記バッファタンクは前記インベントリタンクよりも低圧で運用されることを特徴とする、
請求項3記載の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システム。
【請求項5】
前記圧力調節ラインは前記ブースト圧縮機の上流に接続されることを特徴とする、
請求項3記載の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システム。
【請求項6】
前記再液化システムは、前記熱交換器で冷却された蒸発ガスが供給されて相分離する気液分離器を備え、
前記圧力調節ラインは前記気液分離器に接続され、前記冷媒サイクルから排出された冷媒が前記気液分離器内の圧力を維持するための不活性ガスとして、前記気液分離器の上部に供給されることを特徴とする、
請求項3記載の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システム。
【請求項7】
前記インベントリタンクは、前記ブースト圧縮機で圧縮された窒素冷媒が供給されるとともに、供給された窒素冷媒を前記冷媒圧縮機の上流に供給する高圧タンクと、前記高圧タンクよりも低圧で運転される低圧タンクとを備え、
前記圧力調節ラインは前記低圧タンクに接続されることを特徴とする、
請求項3記載の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システム。
【請求項8】
前記低圧タンクの運転圧力は、前記ブースト圧縮機の吸引圧力で運用され、
前記圧力調節ラインに排出された冷媒によって前記低圧タンクを加圧して、前記低圧タンクから前記ブースト圧縮機の上流に冷媒を排出させることで、前記低圧タンクの圧力が維持されることを特徴とする、
請求項7記載の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システムに関する。より詳細には、船舶で発生する蒸発ガスを再液化する再液化システムを循環する冷媒の冷媒サイクルの圧力を調節するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス(natural gas)はメタン(methane)が主成分であり、燃焼時に環境汚染物質を殆ど排出しないため、環境に優れた燃料として注目されている。液化天然ガス(LNG;Liquefied Natural Gas)は、天然ガスを標準大気圧下で約-163℃まで冷却して液化させて得られる。液化天然ガスは、気体状態の天然ガスに比べて体積が約1/600まで減少することから、海上を通じた遠距離輸送に非常に適している。このような理由から、天然ガスは、貯蔵及び移送が容易な液化天然ガスの状態で主に貯蔵及び移送される。
【0003】
天然ガスの液化点は標準大気圧で約-163℃の極低温であることから、LNGを液体状態で維持するため、通常、LNG貯蔵タンクには断熱処理が施される。しかしながら、LNG貯蔵タンクに断熱処理を施しても外部熱を遮断するには限界があり、外部熱がLNG貯蔵タンクまで持続的に伝達される。このため、LNGの輸送過程では、LNG貯蔵タンク内でLNGが持続的に自然気化して蒸発ガス(BOG;Boil-Off Gas、ボイルオフガス)が発生する。
【0004】
LNG貯蔵タンクで持続的に発生する蒸発ガスは、LNG貯蔵タンクの内圧を上昇させる要因となる。貯蔵タンクの内圧が、予め設定される安全圧力以上になると、タンク破損(rupture)などの緊急事態が発生する恐れがあるため、安全バルブを利用して蒸発ガスを貯蔵タンクの外部へ排出する必要がある。しかし、蒸発ガスはLNG損失の一種であり、LNGの輸送効率及び燃料効率において重要な問題であることから、貯蔵タンクで発生する蒸発ガスを処理するために様々な方法が利用される。
【0005】
近年、蒸発ガスを船舶エンジンなどの燃料需要先で使用する方法、蒸発ガスを再液化して貯蔵タンクに回収する方法、またはこれら2つの方法を組み合わせて利用する方法などが開発され、適用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
船舶で蒸発ガスを再液化するために再液化サイクルを適用する場合、採用可能な液化方法として、例えばSMRサイクルやC3MRサイクルを用いた工程がある。C3MRサイクル(Propane-precooled Mixed Refrigerant Cycle)は、天然ガスをプロパンの単一冷媒を用いて冷却した後、混合冷媒を用いて液化及び過冷却する工程である。また、SMRサイクル(Single Mixed Refrigerant Cycle)は、複数の成分で構成された混合冷媒を用いて天然ガスを液化する工程である。
【0007】
これらのSMRサイクルやC3MRサイクルは、すべて混合冷媒を利用する工程であることから、液化工程の進行に伴い冷媒の漏洩が発生し、混合冷媒の組成比が変化することで液化効率が低下する。このため、混合冷媒の組成比を持続的に計測するとともに、不足した冷媒成分を充填して冷媒組成を維持する必要がある。
【0008】
蒸発ガスを再液化するための再液化サイクルの他の方法としては、窒素冷媒を用いる単一サイクルの液化工程がある。
【0009】
窒素冷媒を用いるサイクルは、混合冷媒を用いるものと比較して効率が悪いが、冷媒が不活性であることから安全性が高く、また冷媒の相変化がないため、船舶への適用がより容易であるという利点がある。
【0010】
窒素冷媒を用いる再液化システムの場合、インベントリタンクに充填された冷媒を再液化システムの冷媒サイクルに供給するとともに、負荷に応じて冷媒サイクルに冷媒を充填し、または冷媒サイクルから冷媒を排出させることで、再液化システムの負荷が調節される。
【0011】
本発明は、冷媒サイクルに冷媒を円滑に補充し、または冷媒サイクルから冷媒を円滑に排出させることで、再液化システムの負荷を調節し、窒素冷媒を補給するための装置の使用を低減させることができるシステムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、船舶の再液化システムに設けられて、貯蔵タンクから供給された蒸発ガスを冷却する熱交換器と、前記熱交換器で前記蒸発ガスを冷却する冷媒が循環する冷媒循環ラインと、前記冷媒循環ラインに設けられて、前記熱交換器で前記蒸発ガスを冷却した後に前記熱交換器から排出された冷媒を圧縮する冷媒圧縮機と、前記冷媒圧縮機で圧縮された後に前記熱交換器で冷却された冷媒を膨張冷却させて、熱交換器の冷媒として供給する膨張器とを有する冷媒サイクルと、前記冷媒サイクルに充填される冷媒を貯蔵するインベントリタンクと、前記インベントリタンクから前記冷媒圧縮機の上流に接続されて、前記冷媒サイクルに冷媒を補充する冷媒供給ラインと、前記冷媒圧縮機の下流から前記インベントリタンクに接続されて、前記冷媒サイクルの冷媒を前記インベントリタンクに排出させる冷媒排出ラインと、前記冷媒排出ラインから分岐する圧力調節ラインとを備え、前記冷媒排出ラインまたは圧力調節ラインに前記冷媒サイクルの冷媒を排出させることで、前記冷媒サイクルが減圧され、前記冷媒サイクルの減圧時に、前記冷媒排出ラインを介して前記インベントリタンクに優先的に前記冷媒を排出させ、前記インベントリタンクと前記冷媒サイクルとの圧力が逆転した後、前記圧力調節ラインに前記冷媒を排出させることで、前記冷媒サイクルが減圧され、前記圧力調節ラインを介して排出された冷媒を船外へ排出させずに、冷媒サイクルに補充される冷媒、船内で供給されるユーティリティガス及び船内で供給されるブランケットガスのうちの少なくとも1つとして再利用することを特徴とする、船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システムを提供する。
【0013】
また、本発明においては、前記冷媒排出ラインの前記圧力調節ラインとの分岐点の上流に設けられる第1バルブと、前記圧力調節ラインに設けられる第2バルブと、前記冷媒排出ラインの前記圧力調節ラインとの分岐点の下流に設けられる第3バルブとをさらに備える。
【0014】
また、本発明においては、前記船舶に設けられて、船舶に供給されるユーティリティN2を貯蔵するバッファタンクと、前記バッファタンクから供給されたユーティリティN2を、乾燥及び濾過させて、露点を下げる乾燥濾過部と、前記乾燥濾過部を経た窒素冷媒を前記インベントリタンクに供給する前に圧縮するブースト圧縮機とをさらに備える。
【0015】
また、本発明においては、前記圧力調節ラインは前記バッファタンクに接続され、前記バッファタンクは前記インベントリタンクよりも低圧で運用される。
【0016】
また、本発明においては、前記圧力調節ラインは前記ブースト圧縮機の上流に接続される。
【0017】
また、本発明においては、前記再液化システムは、前記熱交換器で冷却された蒸発ガスが供給されて相分離する気液分離器を備え、前記圧力調節ラインは前記気液分離器に接続され、前記冷媒サイクルから排出された冷媒が前記気液分離器内の圧力を維持するための不活性ガスとして、前記気液分離器の上部に供給される。
【0018】
また、本発明においては、前記インベントリタンクは、前記ブースト圧縮機で圧縮された窒素冷媒が供給されるとともに、供給された窒素冷媒を前記冷媒圧縮機の上流に供給する高圧タンクと、前記高圧タンクよりも低圧で運転される低圧タンクとを備え、前記圧力調節ラインは前記低圧タンクに接続される。
【0019】
また、本発明においては、前記低圧タンクの運転圧力は、前記ブースト圧縮機の吸引圧力で運用され、前記圧力調節ラインに排出された冷媒によって前記低圧タンクを加圧して、前記低圧タンクから前記ブースト圧縮機の上流に冷媒を排出させることで、前記低圧タンクの圧力が維持される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の冷媒サイクルの圧力調節システムは、冷媒サイクルに冷媒を円滑に補充し、または冷媒サイクルから冷媒を円滑に排出させて、再液化システムの負荷(load)を調節することができる。
【0021】
特に、本発明は、再液化システムの負荷を下げるために冷媒サイクルを減圧する場合、冷媒を排出させてインベントリタンクに送り、圧力の逆転によってインベントリタンクに送ることができない冷媒を、バッファタンクや低圧タンク、またはブースト圧縮機の上流に供給して、冷媒サイクルで再利用するか、または再液化システムの気液分離器でブランケットN2(Blanketing N2)として利用することで、船内で窒素を供給するための装置の使用を低減させることができる。その結果、電力消費量が減少し、運営費用(OPEX)を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の基本実施形態の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システムを概略的に示す。
【
図2】本発明の第1実施形態の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システムを概略的に示す。
【
図3】本発明の第2実施形態の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システムを概略的に示す。
【
図4】本発明の第3実施形態の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システムを概略的に示す。
【
図5】本発明の第4実施形態の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の作動上の利点及び実施によって達成する目的について、本発明の実施形態を例に、添付図面及び添付図面に記載された内容を参照して説明する。
【0024】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態の構成及び作用を詳細に説明する。なお、各図面中、本発明の実施形態の同一の構成要素は、可能な限り、同一の参照符号で表記する。
【0025】
後述する本発明の実施形態の船舶には、液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクが設けられる全種類の船舶が含まれる。例えば、本発明の実施形態の船舶には、LNG運搬船(LNG Carrier)、液体水素運搬船、LNG RV(Regasification Vessel)などの自走能力を有する船舶をはじめ、LNG FPSO(Floating Production Storage Offloading)、LNG FSRU(Floating Storage Regasification Unit)などの推進能力を有しない海上浮遊式の海上構造物も含まれる。
【0026】
また、本発明は、ガスを低温に液化して輸送することができ、貯蔵状態で蒸発ガスが発生する全種類の液化ガスの再液化サイクルに適用することができる。このような液化ガスには、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)、LEG(Liquefied Ethane Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化エチレンガス(Liquefied Ethylene Gas)、液化プロピレンガス(Liquefied Propylene Gas)などの液化石油ガスが含まれる。ただし、後述する実施形態では代表的な液化ガスの1つであるLNGの適用を例に説明する。
【0027】
図1は、本発明の基本実施形態の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システムを概略的に示す。
図2~
図5は、本発明の第1~第4実施形態の船舶用再液化システムの冷媒サイクルの圧力調節システムを概略的に示す。
【0028】
本実施形態の冷媒サイクルの圧力調節システムは、船舶の再液化システムの冷媒サイクルに冷媒を供給する冷媒供給部300から、再液化システムの負荷を調節するため冷媒サイクルに冷媒を補充または冷媒サイクルから冷媒を排出させることで冷媒サイクルの圧力が調節される。
【0029】
再液化システムでは、船舶の貯蔵タンクで貯蔵された液化ガスから発生する蒸発ガスが圧縮及び冷却されて再液化され、貯蔵タンクに戻される。再液化システムは、例えば、蒸発ガスを圧縮する圧縮機、圧縮された蒸発ガスを冷却する熱交換器、熱交換器で冷却された蒸発ガスを減圧する減圧装置、減圧装置で減圧された蒸発ガスを気液分離する気液分離器を備える。
【0030】
図1~
図5に示す通り、冷媒サイクルは、熱交換器100で蒸発ガスを冷却する冷媒が循環する構成である。本実施形態の熱交換器100は、冷媒サイクルを循環する冷媒循環ラインCLと貯蔵タンクから圧縮機に供給される未圧縮蒸発ガスラインGLとを冷熱源として、圧縮蒸発ガスラインRLを冷却する。
【0031】
冷媒サイクルは、冷媒が循環する冷媒循環ラインCLと、冷媒循環ラインCLに設けられて、熱交換器100で蒸発ガスを冷却した後に熱交換器100から排出される冷媒を圧縮する冷媒圧縮機210と、冷媒圧縮機210で圧縮された後に熱交換器100で冷却された冷媒を膨張冷却させて、熱交換器100の冷媒として供給する膨張器200とを備える。冷媒圧縮機210と膨張器200とは軸連結されて、冷媒の膨張エネルギーを冷媒の圧縮に利用するコンパンダ(compander)として設けられる。
【0032】
冷媒循環ラインCLを循環して熱交換器100に供給される冷媒として、例えば窒素(N2)を利用することができる。
【0033】
冷媒供給部300は冷媒サイクルに冷媒を供給する部分である。冷媒供給部300は、船舶に供給されるユーティリティN2を貯蔵するバッファタンクNTから供給されるユーティリティN2を乾燥させて露点を下げる乾燥濾過部330と、乾燥濾過部330から供給される窒素を圧縮して、インベントリタンク310に充填するブースト圧縮機320と、ブースト圧縮機320から供給される窒素を貯蔵するとともに、貯蔵された窒素を冷媒サイクルに冷媒として供給するインベントリタンク310とを備える。
【0034】
貯蔵タンクから発生して再液化される蒸発ガス量の変化に伴い、再液化システムで必要な冷熱必要量も変化する。このような場合、膨張器200の可変ノズル(VGN;Variable Geometry Nozzle)を調節せず、冷媒圧縮機210及び膨張器200の圧縮比/膨張比の固定値を維持した状態で、冷媒供給部300から冷媒サイクルに冷媒を一部補充するか、または冷媒循環ラインCLの冷媒の一部を排出させて、冷媒の質量流量を変化させることで、冷媒循環ラインCLの冷熱量を調節し、再液化システムの負荷を調節することができる。
【0035】
そこで、インベントリタンク310から冷媒圧縮機210の上流に接続されて、冷媒サイクルに冷媒を補充する冷媒供給ラインSLと、冷媒圧縮機210の下流からインベントリタンク310に接続されて、冷媒サイクルの冷媒をインベントリタンク310に排出させる冷媒排出ラインDLとが設けられる。
【0036】
より具体的には、再液化システムの冷熱必要量が増加する場合に、VGNを調節せずにコンパンダの圧縮比/膨張比を一定値に固定して運転し、インベントリタンク310から冷媒供給ラインSLを介して冷媒圧縮機210の上流に冷媒を一部補充して、冷媒サイクルの質量流量を増加させる。
【0037】
逆に、再液化システムの冷熱必要量が減少する場合には、冷媒圧縮機210の下流から冷媒排出ラインDLを介してインベントリタンク310に冷媒サイクルの冷媒の一部を排出させて、冷媒サイクルの質量流量を減少させる。このとき、インベントリタンク310の運転圧力と冷媒循環ラインCLから冷媒排出ラインDLを介して排出される冷媒の圧力とが逆転して、それ以上インベントリタンク310に冷媒を排出させることができない場合には、ベントラインVLを介して冷媒供給部300の外部に冷媒を排出させることで、必要な分だけ冷媒サイクルが減圧される。
【0038】
このように冷媒サイクルの質量流量を調節して、再液化システムの負荷が調節される。しかし、ベントラインVLを介して外部に冷媒を排出させることで、容量制御(capacity control)を行う度に冷媒損失が発生するため、その都度インベントリタンク310に冷媒を充填する必要がある。また、冷媒サイクルに冷媒を補充するために、船内のバッファタンクNTからユーティリティN2を供給して、乾燥濾過部330やブースト圧縮機320などの装置を作動させる必要があるため、船内の窒素消費量が増加し、また装置を作動させるために電力消費量が増加する。
【0039】
後述する第1~第4実施形態は、このような問題を解決し、冷媒サイクルの冷熱量を調節するために排出された窒素冷媒を再利用するか、または船内でリサイクルすることで、船内の窒素消費量を減少させて、電力消費量が減少するように工夫したものである。
【0040】
そこで、
図2~
図5に示す通り、冷媒排出ラインDLから圧力調節ラインPLa,PLb,PLc,PLdが夫々分岐して、冷媒排出ラインDLの各圧力調節ラインPLa,PLb,PLc,PLdとの分岐点の上流には、第1バルブV1a,V1b,V1c,V1dが設けられる。また、各圧力調節ラインPLa,PLb,PLc,PLdには、第2バルブV2a,V2b,V2c,V2dが夫々設けられる。さらに、冷媒排出ラインDLの各圧力調節ラインPLa,PLb,PLc,PLdとの分岐点の下流には、第3バルブV3a,V3b,V3c,V3dが夫々設けられる。
【0041】
本実施形態では、冷媒サイクルの減圧時に、各第1バルブV1a,V1b,V1c,V1d及び各第3バルブV3a,V3b,V3c,V3dを開けて、冷媒排出ラインDLを介してインベントリタンク310に優先的に冷媒を排出させ、インベントリタンク310と冷媒サイクルとの圧力が逆転した後、各第3バルブV3a,V3b,V3c,V3dを閉め、各第2バルブV2a、V2b、V2c、V2dを開けて、各圧力調節ラインPLa,PLb,PLc,PLdに冷媒を排出させることで、冷媒サイクルを減圧して冷媒の質量流量を減少させる。各実施形態は、各圧力調節ラインPLa,PLb,PLc,PLdを介して排出される冷媒の利用方法が異なる。
【0042】
まず、
図2に示す第1実施形態のシステムは、圧力調節ラインPLaがバッファタンクNTに接続される。バッファタンクNTはインベントリタンク310よりも低圧で運転されるため、冷媒排出ラインDLを介してインベントリタンク310に冷媒を排出させる。そして、インベントリタンク310と冷媒サイクルとの圧力が逆転した後、第2バルブV2aを開けてバッファタンクNTに冷媒循環ラインCLの冷媒を排出させることで、冷媒サイクルの圧力を調節する。
【0043】
窒素を船外へ排出する代わりにバッファタンクNTへ送って再利用することで、船内のユーティリティN2を生成して供給するための窒素発生器や供給装置などの使用が低減し、電力消費量も減少する。
【0044】
一方、
図3に示す第2実施形態のシステムは、圧力調節ラインPLbが冷媒供給部300のブースト圧縮機320の上流に接続される。インベントリタンク310に送ることができない冷媒を船外へ排出せず、ブースト圧縮機320の上流に供給した後、圧縮後に貯蔵して再利用することで、船内の窒素消費量が減少し、窒素を供給するための装置の使用による電力消費量も減少する。
【0045】
図4に示す第3実施形態のシステムは、圧力調節ラインPLcが再液化システムの気液分離器400の上部に接続される。気液分離器400は、例えば分離した液化ガスを気液分離器400から排出させる際に、真空状態の発生を防止するとともに気液分離器400の内部の圧力を維持するため、不活性ガスが供給される。本実施形態では、圧力調節ラインPLcが気液分離器400の上部に接続され、冷媒サイクルから排出された窒素冷媒を気液分離器400に供給する。このように冷媒サイクルから排出された窒素をブランケットN
2(Blanketing N
2)として利用できるため、船内の窒素消費量が減少し、窒素を供給するための装置の使用による電力消費量も減少する。
【0046】
図5に示す第4実施形態のシステムは、ブースト圧縮機320で圧縮された窒素冷媒が供給されて冷媒圧縮機210の上流に供給する高圧タンク310aと、高圧タンク310aより低圧で運転する低圧タンク310bとを備える。そして、互いに異なる運転圧力を有する2種のタンク310a,310bでインベントリタンクを構成し、圧力調節ラインPLdが低圧タンク310bに接続されるように設けられる。
【0047】
低圧タンク310bの運転圧力は、ブースト圧縮機320の吸引圧力(suction pressure)によって運用される。
【0048】
冷媒サイクルの減圧時には、第1及び第3バルブV1d,V3dを開けて、冷媒排出ラインDLを介してインベントリタンクの中で高圧タンク310aに優先的に冷媒を排出させる。そして、高圧タンク310aと冷媒サイクルとの圧力が逆転した後、第3バルブV3dを閉め、第2バルブV2dを開けて、圧力調節ラインPLdを介して低圧タンク310bに冷媒を排出させることで、冷媒循環ラインCLの冷媒質量流量を減少させる。
【0049】
圧力調節ラインPLdに排出させた冷媒により低圧タンク310bを加圧することで、低圧タンク310bからブースト圧縮機320の上流に冷媒を排出させる。これにより、低圧タンク310bの圧力を維持し、低圧タンク310bから排出された冷媒をブースト圧縮機320で圧縮した後、高圧タンク310aに供給することで、冷媒サイクルに補充することができる。
【0050】
このように冷媒を船外へ排出せず低圧タンク310bに送り、ブースト圧縮機320の上流に供給して再利用することで、船内の窒素消費量が減少し、冷媒サイクルで冷媒を補充する高圧タンク310aの圧力を一定に維持して安定的に運転することができる。また、窒素を供給するための装置の使用による電力消費量も減少する。
【0051】
本発明は上記実施態様に限定されず、本発明の技術的要旨を逸脱しない範囲内で様々な形態で修正または変更できることは、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明である。