(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】電解銅箔の製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 1/04 20060101AFI20241220BHJP
C25D 3/58 20060101ALI20241220BHJP
C25D 21/12 20060101ALI20241220BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20241220BHJP
C25D 21/14 20060101ALN20241220BHJP
【FI】
C25D1/04 311
C25D3/58
C25D21/12 J
C25D21/12 D
H01M4/66 A
C25D21/14 D
(21)【出願番号】P 2023544266
(86)(22)【出願日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 KR2023004101
(87)【国際公開番号】W WO2023219264
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0057721
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519197594
【氏名又は名称】高麗亞鉛株式会社
【氏名又は名称原語表記】KOREA ZINC CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】523275455
【氏名又は名称】ケイゼム コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ホ,セ クォン
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ギュン
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099911(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106968000(CN,A)
【文献】特表2020-530878(JP,A)
【文献】特開2012-211369(JP,A)
【文献】特開2001-123290(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111321437(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00-3/66
H01M 4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解銅箔の製造方法において、
銅(Cu)及びニッケル(Ni)を硫酸に溶解して銅イオン及びニッケルイオンを含む電解液を製造する段階;並びに
前記電解液中に互いに離隔して配置される陽極板及び陰極回転ドラムに電流を供給して銅層を設ける段階を含み、
前記ニッケルイオンの濃度は50ppm~350ppmであ
り、
前記銅イオンの濃度は70g/L~100g/Lであり、
前記硫酸の濃度は80g/L~150g/Lであり、
前記電解液中に供給される電流の密度は4,500A/m
2
~6,500A/m
2
であり、
前記電解銅箔のカール(Curl)の測定値は12mm以下である、電解銅箔の製造方法。
【請求項2】
前記ニッケルイオンの濃度は80ppm~280ppmである、請求項1に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項3】
前記電解銅箔のカール(Curl)の測定値は10mm以下である、請求項
2に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項4】
前記電解液を用意する段階で有機添加剤をさらに投入し、
前記有機添加剤は伸び率調整剤、引張強度調整剤及び光沢度調整剤のうち少なくともいずれか1つを含
み、
前記伸び率調整剤はカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、オクタンジオール‐ビス‐ポリアルキレングリコールエーテル及びポリグリセリンのうち少なくともいずれか1つを含み、
前記引張強度調整剤はチオ尿素系化合物及び窒素を含むヘテロ環にチオール基が連結された化合物のうち少なくともいずれか1つを含み、
前記光沢度調整剤は硫黄原子を含む化合物であるスルホン酸(sulfonic acid)またはその金属塩を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項5】
前記伸び率調整剤の濃度は1ppm~20ppmである、請求項
4に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項6】
前記引張強度調整剤はジエチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、アセチレンチオ尿素及び2‐チオウラシル(2‐thiouracil)のうち少なくともいずれか1つを含む、請求項
4に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項7】
前記引張強度調整剤の濃度は5ppm~50ppmである、請求項
6に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項8】
前記光沢度調整剤はチオリン酸‐トリス‐(ω‐スルホプロピル)エステル三ナトリウム塩、3‐メルカプト‐1‐プロパンスルホン酸(MPS)、ビス‐(3‐スルホプロピル)‐ジスルフィド二ナトリウム塩(SPS)及びチオグリコール酸のうち少なくともいずれか1つを含む、請求項
4に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項9】
前記光沢度調整剤の濃度は1ppm~30ppmである、請求項
8に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項10】
前記電解銅箔の厚さは10μm以下である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の電解銅箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は銅イオン及びニッケルイオンを含む電解液中に陽極板及び陰極回転ドラムを配置し、電流を供給して電解銅箔を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池は電気エネルギーを化学エネルギーに変えて保存したのち、電気が必要な際に化学エネルギーを再び電気エネルギーに変換させることによって電気を発生させるエネルギー変換機器の一種である。二次電池は再充電が可能であるという点で充電式電池(rechargeable battery)とも呼ばれる。
【0003】
このような二次電池のうち、リチウム二次電池は高い作動電圧、高いエネルギー密度及び優れた寿命の特性を有する。近年、スマートフォン、ノートパソコンなど携帯用電子機器の使用の増加、及び電気自動車の商用化により、リチウム二次電池の需要が急増している。このような二次電池は銅箔からなる負極集電体を含むが、銅箔のうち、電解銅箔が二次電池の負極集電体に広く用いられている。二次電池に対する需要の増加とともに、高容量、高効率及び高品質の二次電池に対する需要が増加するに伴って、二次電池の特性を向上させることができる銅箔が要求されている。特に、二次電池の高容量化及び安定した容量の維持を担保できる銅箔が要求されている。
【0004】
最近では電解銅箔の製造工程が主にロールツーロール(Roll To Roll)方式で連続的に生産することによって大量生産が可能であり、幅が広く厚さが薄い銅箔を生産できるという長所がある。最近では厚さ10μm以下の銅箔が要求されており、特に通常8μm及び6μmの厚さの銅箔が主に使用される。
【0005】
銅箔の厚さが薄いほど同一空間に含まれる集電体数を増加させることができるため、二次電池の容量を増加させることができる。しかし、銅箔が薄いほどカール(Curl)が発生し、銅箔の巻取時の銅箔の破れまたはシワ(wrinkle)のような不良が発生するので、極薄膜(very thin film)形態の銅箔を製造することが困難になる。従って、非常に薄い厚さを有する銅箔を製造するために、銅箔のカールの発生を防止しなければならない。
【0006】
このような点を考慮すると、銅箔の製造過程だけでなく銅箔を用いた二次電池用電極または二次電池の製造過程においても、銅箔のカール、シワまたは破れが発生しないようにしなくてはならない。特に、ロールツーロール工程による銅箔または銅箔を用いた二次電池用電極の製造過程において、巻取過程または活物質のコーティング過程で銅箔の縁が破れるなどの不良が発生しないようにしなくてはならない。
【0007】
従来においては、電解銅箔のカールの発生を抑制するために有機化合物系列の添加剤の投入量を調節してカールの特性を調節しようとしていた。例えば、特許文献1には、カールの特性を改善するために有機化合物としてサッカリンを用いる技術が開示されており、特許文献2には、物性調節用の有機化合物の代わりにヒ素を含む金属塩を含む光沢剤を電解液に添加して銅箔のカールの特性を改善しようとする技術が開示されている。
【0008】
しかし、サッカリンなどの添加剤を投入すると銅箔のカールの特性を調節することができるが、銅箔の基本物性の変化を伴い、物性調節用の添加剤の投入量もともに調節しなければならないなど、工程管理が難しくなり、ヒ素(As)は酸性溶液では亜砒酸(H3AsO3)として存在し、亜砒酸は主に殺鼠剤や殺虫剤の原料として用いられるなど、毒性が強いために取り扱い時に注意が必要になるという問題がある。
【0009】
このような問題点を解決するために、電解銅箔の物性を調節する添加剤の投入量を変化させず、管理が容易で、かつ電解銅箔のカールの特性を簡単に調節できる電解銅箔の製造技術が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国登録特許第10‐0389061号公報
【文献】特開第2020‐530878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は電解銅箔の製造過程において発生し得るカール(Curl)を防止することによって、電解銅箔の破れまたはシワのような不良の発生を防止するためのものであり、電解銅箔の製造のための電解液にニッケル(Ni)イオンを添加することによって電解銅箔のカールの発生を防止することができる電解銅箔の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施例による電解銅箔の製造方法は、銅(Cu)及びニッケル(Ni)を硫酸に溶解して銅イオン及びニッケルイオンを含む電解液を準備する段階;並びに前記電解液中に互いに離隔して配置される陽極板及び陰極回転ドラムに電流を供給して銅層を設ける段階を含み、前記ニッケルイオンの濃度は50ppm~350ppmである。
【0013】
前記電解銅箔のカール(Curl)の測定値は12mm以下である。
【0014】
前記ニッケルイオンの濃度は80ppm~280ppmである。
【0015】
前記電解銅箔のカール(Curl)の測定値は10mm以下である。
【0016】
前記電解液に供給される電流の密度は4,500A/m2~6,500A/m2である。
【0017】
前記銅イオンの濃度は70g/L~100g/Lであり、前記硫酸の濃度は80g/L~150g/Lである。
【0018】
前記電解液を準備する段階において、有機添加剤を投入し、前記有機添加剤は伸び率調整剤、引張強度調整剤及び光沢度調整剤のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0019】
前記伸び率調整剤は、非イオン性水溶性高分子を含み、前記引張強度調整剤はチオ尿素系化合物及び窒素を含むヘテロ環にチオール基が連結された化合物のうち少なくともいずれか1つを含み、前記光沢度調整剤は硫黄原子を含む化合物であるスルホン酸(sulfonic acid)またはその金属塩を含む。
【0020】
前記伸び率調整剤はカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、オクタンジオール‐ビス‐ポリアルキレングリコールエーテル及びポリグリセリンのうち少なくともいずれか1つを含む。
【0021】
前記伸び率調整剤の濃度は1ppm~20ppmである。
【0022】
前記引張強度調整剤はジエチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、アセチレンチオ尿素及び2‐チオウラシル(2-thiouracil)のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0023】
前記引張強度調整剤の濃度は5ppm~50ppmである。
【0024】
前記光沢度調整剤はチオリン酸‐トリス‐(ω‐スルホプロピル)エステル三ナトリウム塩、3‐メルカプト‐1‐プロパンスルホン酸(MPS)、ビス‐(3‐スルホプロピル)‐ジスルフィド二ナトリウム塩(SPS)及びチオグリコール酸のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0025】
前記光沢度調整剤の濃度は1ppm~30ppmである。
【0026】
前記電解銅箔の厚さは10μm以下である。
【発明の効果】
【0027】
開示された電解銅箔の製造方法によれば、電解銅箔の製造のための電解液に銅イオンとともにニッケルイオンを添加することによって電解銅箔のカールの特性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で具現化が可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0029】
銅箔を製造するために、まず銅(Cu)及びニッケル(Ni)を硫酸に溶解して銅イオン及びニッケルイオンを含む電解液を準備する。電解液を電解槽に収容する。
【0030】
その次に、電解液中に互いに離隔して配置された陽極板と陰極回転ドラムとを4,500A/m2~6,500A/m2の電流密度で通電して銅層を形成する。銅層を電気メッキの原理によって形成する。
【0031】
このように製造された銅層を洗浄槽で洗浄し、洗浄工程では銅層の表面上の不純物を除去する。次に、防錆槽に入れられた防錆液の中に銅層を浸漬して銅層上に防錆膜を形成する。このような防錆膜の形成によって銅箔を作り、前記銅箔を最後に洗浄槽で洗浄して乾燥工程を行った後、ワインダーによって巻き取ることによって銅箔の製造工程が完了する。銅箔の製造工程をその他業界で一般に用いられる工程を通じて製造してもよい。
【0032】
前記のような方式で製造された電解銅箔は二次電池の負極集電体用に用いられる。
【0033】
電解液は70g/L~100g/Lの銅イオン、80g/L~150g/Lの硫酸、50ppm~350ppmのニッケルイオン、好ましくは80ppm~280ppmのニッケルイオンを含む。前記のような銅イオン及び硫酸の濃度条件で銅の電着による銅層の形成を円滑に行うことができる。
【0034】
電解液に含まれた有機添加剤は伸び率調整剤、引張強度調整剤及び光沢度調整剤のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0035】
伸び率調整剤は非イオン性水溶性高分子を含む。伸び率調整剤は電解液中に1ppm~20ppmの濃度を有し、伸び率調整剤は銅箔の伸び率の維持と向上に寄与することができる。
【0036】
伸び率調整剤はカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、オクタンジオール‐ビス‐ポリアルキレングリコールエーテル及びポリグリセリンのうち少なくともいずれか1つを含む。しかし、伸び率調整剤の種類はこれに限定されず、銅箔の製造に用いられ得る他の非イオン性水溶性高分子を伸び率調整剤として用いてもよい。
【0037】
引張強度調整剤はチオ尿素系化合物及び窒素を含むヘテロ環にチオール基が連結された化合物のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0038】
引張強度調整剤は電解液中に5ppm~50ppmの濃度を有し、引張強度調整剤は銅箔の引張強度の維持と向上に寄与する。
【0039】
引張強度調整剤はジエチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、アセチレンチオ尿素及び2‐チオウラシル(2-thiouracil)のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0040】
光沢度調整剤は硫黄原子を含む化合物であるスルホン酸(sulfonic acid)またはその金属塩を含む。光沢度調整剤は電解液中に1ppm~30ppmの濃度を有する。
【0041】
光沢度調整剤は電解液の電荷量を増加させて銅の電着速度を増加させ、銅箔の光沢を増進させる。
【0042】
光沢度調整剤はチオリン酸‐トリス‐(ω‐スルホプロピル)エステル三ナトリウム塩、3‐メルカプト‐1‐プロパンスルホン酸(MPS)、ビス‐(3‐スルホプロピル)‐ジスルフィド二ナトリウム塩(SPS)及びチオグリコール酸のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0043】
以下、本発明による実施例及び比較例を通じて本発明の実施形態の内容を詳細に説明する。ただし、後述する実施例及び比較例は本発明の理解を促すためのものであり、本発明の権利範囲は実施例または比較例によって限定されない。
【実施例1】
【0044】
実施例1では、電解液が入った電解槽、電解液中に互いに離隔して配置される陽極板及び陰極回転ドラムを含む製箔機を用いて銅箔を製造した。電解液は銅及びニッケルを硫酸に溶解して銅イオン及びニッケルイオンを含む電解液であり、電解液中の銅イオンの濃度は80g/L、硫酸の濃度は100g/L、伸び率調整剤(HEC、HydroxyEthyl Cellulose)の濃度は10ppm、引張強度調整剤(ジエチルチオウレア)の濃度は25ppm、光沢度調整剤(SPS、Bis‐(3‐Sulfopropyl)‐disulfide-disodium salt)の濃度は15ppmであり、電解液の温度を54℃に、流量を3,000L/hrに設定した。
【0045】
また、電解液に含まれたニッケルの濃度は下記表1の通りであり、ニッケルの濃度を硫酸ニッケルの投入量で調節した。銅箔の電解は5,769A/m2の電流密度で定電流法(Constant Current Method)により電流を電解槽に供給し、陰極回転ドラムを1.47m/minの速度で回転させて連続的に厚さ8μmの電解銅箔を製造し、ニッケルの濃度に応じて発明例1‐1~1‐13、比較例1‐1~1‐7の銅箔を製造した。
【0046】
発明例1‐1~1‐13及び比較例1‐1~1‐7で製造された銅箔を幅10cm、長さ10cmに切断して試片を準備し、試片を平らな床の上に配置した後、銅箔の縁が床から曲がる高さを測定して表1に示した。
【0047】
【0048】
表1を参照すると、電解液中にニッケルを投入しない比較例1‐1で製造された銅箔のカール(Curl)の測定値は25.7mmと高い値を有する一方、電解液にニッケルイオンの濃度が50ppm~350ppmで投入された発明例1‐1~1‐13により製造された電解銅箔のカール(Curl)の測定値は12mm以下に抑制されていることを確認できる。また、発明例1‐2~1‐10のように電解液中のニッケルイオンの濃度が80ppm~280ppmの場合、電解銅箔のカール(Curl)の測定値が10mm以下に抑制されていることを確認できる。電解銅箔の製造時、電解液にニッケルを適正量投入することによって銅箔内部の残留応力が減少し、これにより電解銅箔のカール(Curl)の測定値が小さくなる。一般に製造された銅箔のカールの測定値が12mm以下の場合、カール(Curl)特性が優れており、カールの測定値が10mm以下の場合、カール特性が非常に優れていると理解されたい。
【0049】
比較例1‐2及び1‐3のように電解液中のニッケルの濃度が50ppm以下の条件で製造された電解銅箔は、ニッケルを全く投入していない比較例1‐1に比べるとカール(Curl)の発生が抑制されはするが、その効果が大きくはないということを確認できる。
【0050】
電解液中のニッケルの濃度が350ppmを超えた比較例1‐4~1‐7で製造された電解銅箔は、カール(Curl)の発生抑制効果が再び減少することを確認でき、これは電解液中のニッケルの濃度が一定範囲を超えると、銅粒子の均一な成長を妨害するために、カール(Curl)の発生抑制効果が減少するものと理解される。
【0051】
従って、電解銅箔の製造のための電解液中のニッケルの濃度を50ppm~350ppm、好ましくは80ppm~280ppmに調節することで、カール(Curl)特性を向上させた電解銅箔を製造することができる。
【実施例2】
【0052】
実施例2では実施例1の電解液で、銅イオンの濃度、硫酸の濃度及びニッケルイオンの濃度を表2のように変更したことを除いては実施例1と同一の条件で電解銅箔を製造した。
【0053】
発明例2‐1~2‐6及び比較例2‐1~2‐4で製造された銅箔を幅10cm、長さ10cmに切断して試片を準備し、試片を平らな床の上に配置した後、銅箔の縁が床から曲がる高さを測定して表2に示した。
【0054】
【0055】
表2を参照すると、銅イオン及びニッケルイオンを含む電解液中にニッケルイオンの濃度が50ppm~350ppmで投入された発明例2‐1~2‐6により製造された電解銅箔のカール(Curl)の測定値は、銅イオンの濃度及び硫酸の濃度が一定の範囲で変化するとしても12mm以下に抑制されることが確認できる。一方、ニッケルイオンの濃度が50ppm~350ppmを逸脱する場合(比較例2‐1~2‐4)はカール(Curl)の発生量が12mmを超えることが確認できる。また、実施例1で確認した通りニッケルイオンの濃度が80ppm~280ppmの場合、即ち、実施例2の発明例2‐2、2‐3、2‐4の場合にも、電解銅箔のカール(Curl)の測定値が10mm以下に抑制されることが確認できる。
【0056】
従って、電解銅箔の製造のための電解液中のニッケルの濃度を50ppm~350ppm、好ましくは80ppm~280ppmに調節することで、カール(Curl)特性を向上させた電解銅箔を製造することができる。
【実施例3】
【0057】
実施例3では実施例1の電解液において、伸び率調整剤(HEC、HydroxyEthyl Cellulose)、引張強度調整剤(ジエチルチオ尿素)、光沢度調整剤(SPS、Bis‐(3‐Sulfopropyl)‐disulfide‐disodium)及びニッケルイオンの濃度を表3のように変更したことを除いては実施例1と同一の条件で電解銅箔を製造した。
【0058】
発明例3‐1~3‐8及び比較例3‐1~3‐4で製造された銅箔を幅10cm、長さ10cmに切断して試片を準備し、試片を平らな床の上に配置した後、銅箔の縁が床から曲がる高さを測定して表3に示した。
【0059】
【0060】
表3を参照すると、電解液中にニッケルイオンの濃度が50ppm~350ppmで投入された発明例3‐1~3‐8により製造された電解銅箔のカール(Curl)の測定値は、伸び率調整剤(HEC、HydroxyEthyl Cellulose),引張強度調整剤(ジエチルチオ尿素)、光沢度調整剤(SPS、Bis‐(3‐Sulfopropyl)‐disulfide‐disodium)の濃度が一定の範囲で変化するとしても12mm以下に抑制されることが確認できる。一方、ニッケルイオンの濃度が50ppm~350ppmを逸脱する場合(比較例3‐1~3‐4)は、カール(Curl)の発生量が12mmを超えることが確認できる。
【0061】
また、実施例1で確認した通り、ニッケルイオンの濃度が80ppm~280ppmの場合、即ち、実施例3の発明例3‐2、3‐3、3‐4の場合にも、電解銅箔のカール(Curl)の測定値が10mm以下に抑制されることが確認できる。
【0062】
従って、電解銅箔の製造のための電解液中のニッケルの濃度を50ppm~350ppm、好ましくは80ppm~280ppmに調節することで、カール(Curl)の特性を向上させた電解銅箔を製造することができる。
【0063】
本発明の発明例によれば、電解銅箔の製造過程において発生し得るカール(Curl)の発生を防止することによって、電解銅箔の破れなどを防止することができる。
【0064】
本明細書では本発明を一部の実施例と関連して説明したが、本発明の属する技術分野における通常の技術者が理解できる本発明の思想及び範囲を逸脱しない範囲で多様な変形及び変更をしてもよいという点を理解すべきである。また、そのような変形及び変更は本明細書に添付された特許請求の範囲内に属するものと考えるべきである。