(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】ガスタービンプラント、その運転方法、及びその改造方法
(51)【国際特許分類】
F02C 6/14 20060101AFI20241220BHJP
F02C 9/18 20060101ALI20241220BHJP
F02C 7/042 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
F02C6/14
F02C9/18
F02C7/042
(21)【出願番号】P 2023563503
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2022017100
(87)【国際公開番号】W WO2023095361
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2021192907
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】奥井 英貴
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-173160(JP,A)
【文献】特開平10-238366(JP,A)
【文献】特開2000-291447(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0184590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 6/14
F02C 9/18
F02C 7/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮可能な圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気である圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成可能な燃焼器と、前記燃焼ガスで駆動可能なタービンと、を有するガスタービンと、
気体の空気を液化可能な液化設備と、
前記液化設備を制御する液化制御器と、
を備え、
前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータの外周を覆う圧縮機ケーシングと、前記圧縮機ケーシングの内周側に設けられている複数の静翼と、開閉動作することで、前記圧縮機ケーシング内に流入する空気の流量である吸気量を調節可能な吸気量調節器と、を有し、
前記液化設備は、
前記圧縮機からの前記圧縮空気の一部を抽気可能な抽気ラインと、
前記抽気ラインを流れる前記圧縮空気を液化可能な液化系と、
前記抽気ラインを流れる前記圧縮空気の流量を調節可能な抽気量調節弁と、
前記液化系で液化した前記圧縮空気である液体空気を貯蔵可能な液体空気タンクと、
前記液体空気タンク内の前記液体空気又は前記液体空気が気化した気化空気である戻し空気を、前記ガスタービン中で空気又は圧縮空気が流れる流路、又は前記ガスタービンを構成する部品中で前記燃焼ガスに接触する高温部品に導くことが可能な戻し空気ラインと、
前記戻し空気ラインを流れる前記戻し空気の流量を調節可能な戻し量調節弁と、
を有し、
前記液化制御器は、前記吸気量調節器の開度が第一開度のとき又は前記開度と相関性を有するパラメータが前記第一開度に相当する値のときに、前記抽気量調節弁を開けて、前記圧縮空気を前記液化系に導かせ、前記吸気量調節器の開度が前記第一開度よりも大きな開度である第二開度のとき又は前記パラメータが前記第二開度に相当する値のときに、前記戻し量調節弁を開けて、前記戻し空気を前記ガスタービンに導かせ、
前記第一開度は、前記圧縮機ケーシング内に流入する吸気量を、前記ガスタービンの出力が定格出力のときの吸気量よりも少なくしているときの開度である、
ガスタービンプラント。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記第一開度は、前記圧縮機ケーシング内に流入する吸気量を最も少なくすることができる最小開度である、
ガスタービンプラント。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記第二開度は、前記圧縮機ケーシング内に流入する吸気量を最も多くすることができる最大開度である、
ガスタービンプラント。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記液化系は、前記抽気ラインからの前記圧縮空気を冷却可能な冷却装置を備え、
前記冷却装置は、
前記抽気ラインからの前記圧縮空気をさらに圧縮して、高圧縮空気を生成可能なブースト圧縮機と、
前記高圧縮空気の一部を断熱膨張させて、低温低圧空気を生成可能な膨張タービンと、
前記高圧縮空気の他の一部と前記低温低圧空気とを熱交換させて、前記高圧縮空気を冷却可能な第一冷却熱交換器と、
を有する、
ガスタービンプラント。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記液化系は、前記抽気ラインからの前記圧縮空気を冷却可能な冷却装置を備え、
前記冷却装置は、
液化ガスを貯蔵可能な液化ガスタンクと、
前記抽気ラインを流れる前記圧縮空気と前記液化ガスとを熱交換させて、前記圧縮空気を冷却可能な第一冷却熱交換器と、
を有する、
ガスタービンプラント。
【請求項6】
請求項4に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記液化設備は、前記液体空気タンクからの前記液体空気を加熱する加熱系を備える、
ガスタービンプラント。
【請求項7】
請求項6に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記加熱系は、前記液体空気タンクからの前記液体空気を加熱して、前記液体空気が気化した気化空気を生成可能な第一加熱装置を備える、
ガスタービンプラント。
【請求項8】
請求項7に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記第一加熱装置は、
前記液体空気及び前記気化空気を貯蔵可能な気液タンクと、
前記気液タンク内の前記液体空気と前記圧縮空気とを熱交換させて、前記液体空気を加熱して前記液体空気を前記気化空気として前記気液タンク内に戻す一方で、前記圧縮空気を冷却可能な第一加熱熱交換器と、を有し、
前記液化系は、前記圧縮空気を冷却可能な冷却熱交換器として前記第一加熱熱交換器を有する、
ガスタービンプラント。
【請求項9】
請求項4に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記液化設備は、前記液体空気タンクからの前記液体空気を加熱する加熱系を備え、
前記加熱系は、前記液体空気タンクからの前記液体空気を加熱して、前記液体空気が気化した気化空気を生成可能な第一加熱装置を備え、
前記第一加熱装置は、
前記液体空気及び前記気化空気を貯蔵可能な気液タンクと、
前記気液タンクからの前記液体空気と、前記ブースト圧縮機からの前記高圧縮空気の前記他の一部とを熱交換させて、前記液体空気を加熱して前記液体空気を前記気化空気として前記気液タンク内に戻す一方で、前記高圧縮空気の前記他の一部を冷却可能な第一加熱熱交換器と、を有し、
前記液化系は、前記第一冷却熱交換器として前記第一加熱熱交換器を有し、
前記第一冷却熱交換器としての前記第一加熱熱交換器は、前記気液タンクからの前記液体空気及び前記膨張タービンからの前記低温低圧空気と、前記ブースト圧縮機からの前記高圧縮空気の前記他の一部と、を熱交換可能である、
ガスタービンプラント。
【請求項10】
請求項7に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記加熱系は、前記第一加熱装置からの前記気化空気を加熱可能な第二加熱装置を備える、
ガスタービンプラント。
【請求項11】
請求項10に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記液化系は、前記冷却装置に至る前の前記圧縮空気と蓄熱材とを熱交換させて、前記蓄熱材を加熱可能である一方で、前記圧縮空気を冷却可能な第二冷却熱交換器を有し、
前記第二加熱装置は、
前記第二冷却熱交換器で加熱された前記蓄熱材を貯蔵可能な蓄熱タンクと、
前記蓄熱タンクからの前記蓄熱材と前記第一加熱装置からの前記気化空気とを熱交換させて、前記気化空気を加熱可能である一方で、前記蓄熱材を冷却可能な第二加熱熱交換器と、
を有し、
前記第二冷却熱交換器は、前記冷却装置に至る前の前記圧縮空気と前記第二加熱熱交換器で冷却された前記蓄熱材とを熱交換可能である、
ガスタービンプラント。
【請求項12】
請求項11に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記加熱系は、前記第二加熱装置からの前記気化空気を加熱可能な第三加熱装置を備え、
前記戻し空気ラインは、前記第三加熱装置で加熱された前記気化空気を前記戻し空気として、前記ガスタービン中で前記圧縮空気が流れる流路に導くことが可能である、
ガスタービンプラント。
【請求項13】
請求項12に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記ガスタービンから排気された燃焼ガスである排気ガスの熱を利用して蒸気を発生可能な排熱回収ボイラーを備え、
前記第三加熱装置は、前記第二加熱装置からの前記気化空気と前記排熱回収ボイラーからの前記蒸気とを熱交換させて、前記気化空気を加熱可能な第三加熱熱交換器を有する、
ガスタービンプラント。
【請求項14】
請求項1又は2のいずれか一項に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記液化系は、前記液化系での前記圧縮空気の液化過程で、前記圧縮空気中のアルゴンを深冷分離可能なアルゴン分離器を有する、
ガスタービンプラント。
【請求項15】
請求項1又は2に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記戻し空気ラインは、前記戻し空気を前記ガスタービン中で前記圧縮空気が流れる流路に導くことが可能である、
ガスタービンプラント。
【請求項16】
請求項1又は2に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記戻し空気ラインは、前記戻し空気を前記圧縮機ケーシング内の空気が流れる空気流路中に導くことが可能である、
ガスタービンプラント。
【請求項17】
請求項16に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記戻し空気ラインは、前記戻し空気を、前記圧縮機ケーシング内の前記空気流路中で前記吸気量調節器により吸気量が調節される前の空気が流れる流路部分に導くことが可能である、
ガスタービンプラント。
【請求項18】
請求項16に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記圧縮機の前記複数の静翼のうち、少なくとも一の静翼には、前記静翼内を通り、前記静翼の表面で開口している空気通路が形成され、
前記戻し空気ラインは、前記戻し空気を前記静翼の前記空気通路中に導くことが可能である、
ガスタービンプラント。
【請求項19】
請求項18に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記戻し空気ラインは、前記液体空気を前記戻し空気として前記静翼の前記空気通路中に導くことが可能である、
ガスタービンプラント。
【請求項20】
請求項1又は2に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記高温部品には、前記高温部品内を通り、前記高温部品で前記燃焼ガスに接する表面で開口している冷却空気通路が形成され、
前記戻し空気ラインは、前記高温部品の前記冷却空気通路に前記戻し空気を導くことが可能である、
ガスタービンプラント。
【請求項21】
ガスタービンを備え、
前記ガスタービンは、空気を圧縮可能な圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気である圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成可能な燃焼器と、前記燃焼ガスで駆動可能なタービンと、を有し、
前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータの外周を覆う圧縮機ケーシングと、前記圧縮機ケーシングの内周側に設けられている複数の静翼と、開閉動作することで、前記圧縮機ケーシング内に流入する空気の流量である吸気量を調節可能な吸気量調節器と、を有する、
ガスタービンプラントの運転方法において、
前記圧縮機からの前記圧縮空気の一部を抽気する抽気工程と、
前記抽気工程で抽気された前記圧縮空気を液化して液体空気を生成する液化工程と、
前記液体空気又は前記液体空気が気化した気化空気である戻し空気を、前記ガスタービン中で空気又は圧縮空気が流れる流路、又は前記ガスタービンを構成する部品中で前記燃焼ガスに接触する高温部品に導く戻し工程と、
を含み、
前記吸気量調節器の開度が第一開度のとき又は前記開度と相関性を有するパラメータが前記第一開度に相当する値のときに、前記抽気工程及び前記液化工程を実行し、
前記吸気量調節器の開度が前記第一開度より大きな第二開度のとき又は前記パラメータが前記第二開度に相当する値のときに、前記戻し工程を実行し、
前記第一開度は、前記圧縮機ケーシング内に流入する吸気量を、前記ガスタービンの出力が定格出力のときの吸気量よりも少なくしているときの開度である、
ガスタービンプラントの運転方法。
【請求項22】
請求項21に記載のガスタービンプラントの運転方法において、
前記第一開度は、前記圧縮機ケーシング内に流入する吸気量を最も少なくすることができる最小開度である、
ガスタービンプラントの運転方法。
【請求項23】
請求項21又は22に記載のガスタービンプラントの運転方法において、
前記第二開度は、前記圧縮機ケーシング内に流入する吸気量を最も多くすることができる最大開度である、
ガスタービンプラントの運転方法。
【請求項24】
請求項21又は22に記載のガスタービンプラントの運転方法において、
前記液化工程は、前記圧縮空気の液化過程で、前記圧縮空気中のアルゴンを深冷分離するアルゴン分離工程を含む、
ガスタービンプラントの運転方法。
【請求項25】
ガスタービンを備え、
前記ガスタービンは、空気を圧縮可能な圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気である圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成可能な燃焼器と、前記燃焼ガスで駆動可能なタービンと、を有し、
前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータの外周を覆う圧縮機ケーシングと、前記圧縮機ケーシングの内周側に設けられている複数の静翼と、開閉動作することで、前記圧縮機ケーシング内に流入する空気の流量である吸気量を調節可能な吸気量調節器と、を有する、
ガスタービンプラントの改造方法において、
気体の空気を液化可能な液化設備と、前記液化設備を制御する液化制御器とを追加する工程を含み、
前記工程で追加される前記液化設備は、
前記圧縮機からの前記圧縮空気の一部を抽気可能な抽気ラインと、
前記抽気ラインを流れる前記圧縮空気を液化可能な液化系と、
前記液化系で液化した前記圧縮空気である液体空気を貯蔵可能な液体空気タンクと、
前記抽気ラインを流れる前記圧縮空気の流量を調節可能な抽気量調節弁と、
前記液体空気タンク内の前記液体空気又は前記液体空気が気化した気化空気である戻し空気を、前記ガスタービン中で空気又は圧縮空気が流れる流路、又は前記ガスタービンを構成する部品中で前記燃焼ガスに接触する高温部品に導くことが可能な戻し空気ラインと、
前記戻し空気ラインを流れる前記戻し空気の流量を調節可能な戻し量調節弁と、
を有し、
前記工程で追加される前記液化制御器は、前記吸気量調節器の開度が第一開度のとき又は前記開度と相関性を有するパラメータが前記第一開度に相当する値のときに、前記抽気量調節弁を開けて、前記圧縮空気を前記液化系に導かせ、前記吸気量調節器の開度が前記第一開度よりも大きな開度である第二開度のとき又は前記パラメータが前記第二開度に相当する値のときに、前記戻し量調節弁を開けて、前記戻し空気を前記ガスタービンに導かせ、
前記第一開度は、前記圧縮機ケーシング内に流入する吸気量を、前記ガスタービンの出力が定格出力のときの吸気量よりも少なくしているときの開度である、
ガスタービンプラントの改造方法。
【請求項26】
請求項25に記載のガスタービンプラントの改造方法において、
前記液化系は、前記液化系での前記圧縮空気の液化過程で、前記圧縮空気中のアルゴンを深冷分離可能なアルゴン分離器を有する、
ガスタービンプラントの改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンを備えるガスタービンプラント、その運転方法、及びその改造方法に関する。
本願は、2021年11月29日に、日本国に出願された特願2021-192907号に基づき優先権を主張し、この内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えている。
【0003】
以下の特許文献1には、ガスタービン出力を増加させる技術が開示されている。この技術では、圧縮機で圧縮された空気を液化装置で液化し、この液化した空気である液体空気をタンク内に溜めておく。そして、ガスタービンのピークロード時に、タンク内の液体空気を加熱して気化させ、この空気を燃焼器に導入する。この技術では、ガスタービンのピークロード時に、圧縮機からの空気の他に、液体空気が気化した空気が、燃焼器に導入されるため、ガスタービンのピークロード時におけるガスタービン出力を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスタービンプラントの運営者は、電力系統の負荷変動に応じて、ガスタービン出力の変動が要求される。このため、ガスタービン出力調整を柔軟に実施できることが望まれている。
【0006】
そこで、本開示は、ガスタービン出力調整を柔軟に実施できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンプラントは、
空気を圧縮可能な圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気である圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成可能な燃焼器と、前記燃焼ガスで駆動可能なタービンと、を有するガスタービンと、気体空気を液化可能な液化設備と、前記液化設備を制御する液化制御器と、を備える。前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータの外周を覆う圧縮機ケーシングと、前記圧縮機ケーシングの内周側に設けられている複数の静翼と、開閉動作することで、前記圧縮機ケーシング内に流入する空気の流量である吸気量を調節可能な吸気量調節器と、を有する。前記液化設備は、前記圧縮機からの前記圧縮空気の一部を抽気可能な抽気ラインと、前記抽気ラインを流れる前記圧縮空気を液化可能な液化系と、前記抽気ラインを流れる前記圧縮空気の流量を調節可能な抽気量調節弁と、前記液化系で液化した前記圧縮空気である液体空気を貯蔵可能な液体空気タンクと、前記液体空気タンク内の前記液体空気又は前記液体空気が気化した気化空気である戻し空気を、前記ガスタービン中で空気又は圧縮空気が流れる流路、又は前記ガスタービンを構成する部品中で前記燃焼ガスに接触する高温部品に導くことが可能な戻し空気ラインと、前記戻し空気ラインを流れる前記戻し空気の流量を調節可能な戻し量調節弁と、を有する。前記液化制御器は、前記吸気量調節器の開度が第一開度のとき又は前記開度と相関性を有するパラメータが前記第一開度に相当する値のときに、前記抽気量調節弁を開けて、前記圧縮空気を前記液化系に導かせ、前記吸気量調節器の開度が前記第一開度よりも大きな開度である第二開度のとき又は前記パラメータが前記第二開度に相当する値のときに、前記戻し量調節弁を開けて、前記戻し空気を前記ガスタービンに導かせる。前記第一開度は、前記圧縮機ケーシング内に流入する吸気量を、前記ガスタービンの出力が定格出力のときの吸気量よりも少なくしているときの開度である。
【0008】
本態様では、吸気量をガスタービンの出力が定格出力のときの吸気量より少なくしているときの第一開度のとき、圧縮機からの圧縮空気の一部が液化設備に抽気される。このため、この中間ケーシング内から燃焼器に流入する圧縮空気の流量が少なくなる。よって、本態様では、第一開度のとき、圧縮機からの圧縮空気が抽気していない場合よりも、燃焼器で生成される燃焼ガスの流量が少なくなり、ガスタービン出力が低下する。
【0009】
また、本態様では、第一開度よりも大きな開度である第二開度のとき、液体空気タンク内の液体空気又は液体空気が気化した空気である戻し空気が、ガスタービン中で空気又は圧縮空気が流れる流路、又はガスタービンを構成する部品中で燃焼ガスに接触する高温部品に導かれる。例えば、第二開度のとき、戻し空気がガスタービン中で空気又は圧縮空気が流れる流路に導かれる場合、戻し空気がこの流路に導かれない場合によりも、燃焼器で生成される燃焼ガスの流量が多くなり、ガスタービン出力が増加する。また、第二開度のとき、戻し空気がガスタービンの高温部品に導かれる場合、戻し空気が高温部品に導かれない場合によりも、高温部品を冷却するための圧縮空気の流量が少なくなって、燃焼器に流入する空気の流量が多くなり、ガスタービン出力が増加する。
【0010】
よって、本態様では、ガスタービン出力調整を柔軟に実施でき、電力系統の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【0011】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンプラントの運転方法は、以下のガスタービンプラントに適用される。
このガスタービンプラントは、ガスタービンを備える。前記ガスタービンは、空気を圧縮可能な圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気である圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成可能な燃焼器と、前記燃焼ガスで駆動可能なタービンと、を有する。前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータの外周を覆う圧縮機ケーシングと、前記圧縮機ケーシングの内周側に設けられている複数の静翼と、開閉動作することで、前記圧縮機ケーシング内に流入する空気の流量である吸気量を調節可能な吸気量調節器と、を有する。
上記運転方法は、前記圧縮機からの前記圧縮空気の一部を抽気する抽気工程と、前記抽気工程で抽気された前記圧縮空気を液化して液体空気を生成する液化工程と、前記液体空気又は前記液体空気が気化した気化空気である戻し空気を、前記ガスタービン中で空気又は圧縮空気が流れる流路、又は前記ガスタービンを構成する部品中で前記燃焼ガスに接触する高温部品に導く戻し工程と、を含む。前記吸気量調節器の開度が第一開度のとき又は前記開度と相関性を有するパラメータが前記第一開度に相当する値のときに、前記抽気工程及び前記液化工程を実行し、前記吸気量調節器の開度が前記第一開度より大きな第二開度のとき又は前記パラメータが前記第二開度に相当する値のときに、前記戻し工程を実行する。前記第一開度は、前記圧縮機ケーシング内に流入する吸気量を、前記ガスタービンの出力が定格出力のときの吸気量よりも少なくしているときの開度である。
【0012】
本態様の運転方法を実行することで、前記一態様におけるガスタービンプラントと同様、ガスタービン出力調整を柔軟に実施でき、電力系統の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【0013】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンプラントの改造方法は、以下のガスタービンプラントに適用される。
このガスタービンプラントは、ガスタービンを備える。前記ガスタービンは、空気を圧縮可能な圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気である圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成可能な燃焼器と、前記燃焼ガスで駆動可能なタービンと、を有する。前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータの外周を覆う圧縮機ケーシングと、前記圧縮機ケーシングの内周側に設けられている複数の静翼と、開閉動作することで、前記圧縮機ケーシング内に流入する空気の流量である吸気量を調節可能な吸気量調節器と、を有する。
上記改造方法は、気体空気を液化可能な液化設備と、前記液化設備を制御する液化制御器とを追加する工程を含む。前記工程で追加される前記液化設備は、前記圧縮機からの前記圧縮空気の一部を抽気可能な抽気ラインと、前記抽気ラインを流れる前記圧縮空気を液化可能な液化系と、前記液化系で液化した前記圧縮空気である液体空気を貯蔵可能な液体空気タンクと、前記抽気ラインを流れる前記圧縮空気の流量を調節可能な抽気量調節弁と、前記液体空気タンク内の前記液体空気又は前記液体空気が気化した気化空気である戻し空気を、前記ガスタービン中で空気又は圧縮空気が流れる流路、又は前記ガスタービンを構成する部品中で前記燃焼ガスに接触する高温部品に導くことが可能な戻し空気ラインと、前記戻し空気ラインを流れる前記戻し空気の流量を調節可能な戻し量調節弁と、を有する。前記工程で追加される前記液化制御器は、前記吸気量調節器の開度が第一開度のとき又は前記開度と相関性を有するパラメータが前記第一開度に相当する値のときに、前記抽気量調節弁を開けて、前記圧縮空気を前記液化系に導かせ、前記吸気量調節器の開度が前記第一開度よりも大きな開度である第二開度のとき又は前記パラメータが前記第二開度に相当する値のときに、前記戻し量調節弁を開けて、前記戻し空気を前記ガスタービンに導かせる。前記第一開度は、前記圧縮機ケーシング内に流入する吸気量を、前記ガスタービンの出力が定格出力のときの吸気量よりも少なくしているときの開度である。
【0014】
本態様の改造方法により改造されたガスタービンプラントでは、前記一態様におけるガスタービンプラントと同様、ガスタービン出力調整を柔軟に実施でき、電力系統の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様では、ガスタービン出力調整を柔軟に実施でき、電力系統の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示に係る第一実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
【
図2】本開示に係る第一実施形態におけるIGV開度とガスタービン出力との関係を示すグラフである。
【
図3】本開示に係る第一実施形態における液化制御器の動作を示すフローチャートである。
【
図4】本開示に係る第二実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
【
図5】本開示に係る第二実施形態における圧縮機の静翼の断面図である。
【
図6】本開示に係る第三実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
【
図7】本開示に係る第四実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
【
図8】本開示に係る液化系の変形例の系統図である。
【
図9】
図8に示す変形例の液化系を備える液化設備に対する液化制御器の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示に係るガスタービンプラントの各種実施形態及び各種変形例について、図面を用いて説明する。
【0018】
「第一実施形態」
以下、本開示に係るガスタービンプラントの第一実施形態について、
図1~
図3を用いて説明する。
【0019】
本実施形態のガスタービンプラントは、
図1に示すように、ガスタービン1と、ガスタービン1の駆動で電力を発生するGT発電機38と、GT発電機38からの電力を電力系統PSに供給可能なGT電力供給設備39と、タービン冷却装置30と、ガスタービン1から排気された排気ガスの熱を利用する排熱利用設備40と、気体の空気を液化可能な液化設備50と、制御装置100と、を備える。
【0020】
ガスタービン1は、空気Aを圧縮する圧縮機10と、圧縮機10で圧縮された空気である圧縮空気CA中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器17と、高温高圧の燃焼ガスにより駆動するタービン20と、を備える。
【0021】
圧縮機10は、ロータ軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ11と、この圧縮機ロータ11を覆う圧縮機ケーシング14と、複数の静翼列12tと、吸気量調節器(以下、IGV(inlet guide vane)とする)15と、を有する。ここで、ロータ軸線Arが延びる方向を軸線方向Daとし、この軸線方向Daの両側のうち、一方側を軸線上流側Dau、他方側を軸線下流側Dadとする。
【0022】
圧縮機ロータ11は、ロータ軸線Arを中心として軸線方向Daに延びる圧縮機ロータ軸11aと、この圧縮機ロータ軸11aに固定されている複数の動翼列11tと、を有する。複数の動翼列11tは、軸線方向Daに並んでいる。複数の動翼列11tは、いずれも、ロータ軸線Arに対する周方向に並ぶ複数の動翼11bを有する。複数の静翼列12tのそれぞれは、複数の動翼列11tのうちのいずれか一の動翼列11tの軸線下流側Dadに配置されている。複数の静翼列12tは、いずれも、ロータ軸線Arに対する周方向に並ぶ複数の静翼12vを有する。複数の静翼12vは、圧縮機ケーシング14の内周側の部分に固定されている。
【0023】
IGV15は、圧縮機ケーシング14内であって複数の動翼列11tよりも軸線上流側Dauに配置されている複数のガイドベーン15vと、複数のガイドベーン15vに開閉動作させる駆動器15dと、を有する。このIGV15は、圧縮機ケーシング14内に流入する空気の流量である吸気量を調節することができる。
【0024】
タービン20は、圧縮機10の軸線下流側Dadに配置されている。このタービン20は、燃焼器17からの燃焼ガスにより、ロータ軸線Arを中心として回転するタービンロータ21と、このタービンロータ21を覆うタービンケーシング24と、複数の静翼列22tと、を有する。
【0025】
タービンロータ21は、ロータ軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるタービンロータ軸21aと、このタービンロータ軸21aに固定されている複数の動翼列21tと、を有する。複数の動翼列21tは、軸線方向Daに並んでいる。複数の動翼列21tは、いずれも、ロータ軸線Arに対する周方向に並ぶ複数の動翼21bを有する。複数の静翼列22tのそれぞれは、複数の動翼列21tのうちのいずれか一の動翼列21tの軸線上流側Dauに配置されている。複数の静翼列22tは、いずれも、ロータ軸線Arに対する周方向に並ぶ複数の静翼22vを有する。複数の静翼22vは、タービンケーシング24の内周側の部分に固定されている。
【0026】
タービンロータ21と圧縮機ロータ11とは、同一のロータ軸線Arを中心として一体回転可能に相互に連結されて、ガスタービンロータ2を成す。このガスタービンロータ2には、GT発電機38のロータが接続されている。
【0027】
ガスタービン1は、さらに、中間ケーシング4を備える。中間ケーシング4は、ロータ軸線Arが延びている方向で、圧縮機ケーシング14とタービンケーシング24との間に配置され、圧縮機ケーシング14とタービンケーシング24とを連結する。ガスタービンケーシング3は、圧縮機ケーシング14、中間ケーシング4及びタービンケーシング24を有する。この中間ケーシング4内には、圧縮機10から吐出された圧縮空気CAが流入する。燃焼器17は、中間ケーシング4に固定されている。燃焼器17には、燃料ライン5が接続されている。燃料ライン5には、この燃料ライン5を流れる燃料の流量を調節する燃料調節弁6が設けられている。燃焼器17は、燃焼筒(又は尾筒)17cと、燃焼筒17c内に燃料を噴射する燃料ノズル17nと、を有する。
【0028】
GT電力供給設備39は、GT発電機38と電力系統PSとを電気的に接続するGT電力線39aと、このGT電力線39a中に設けられているGT遮断器39b及びGT変圧器39tと、を有する。GT電力線39aには、このGT電力線39aを流れる電力を計測するGT電力計39mが設けられている。
【0029】
タービン冷却装置30は、冷却用抽気ライン31と、冷却器32と、冷却空気ライン33と、を備える。冷却用抽気ライン31は、圧縮機10からの圧縮空気CAを抽気可能である。このため、この冷却用抽気ライン31の一端は、圧縮機10からの圧縮空気CAが流れる流路を形成する中間ケーシング4に接続されている。冷却用抽気ライン31には、この抽気ライン51を流れる圧縮空気CAの流量を調節する冷却用抽気量調節弁31vが設けられている。冷却器32は、冷却用抽気ライン31の他端に接続され、抽気ライン51を流れてきた圧縮空気CAを冷却する。冷却空気ライン33は、冷却器32に接続され、冷却器32で冷却された圧縮空気CAである冷却空気が流れる。冷却空気ライン33は、主冷却空気ライン33mと、燃焼器冷却空気ライン33cと、動翼冷却空気ライン33bと、静翼冷却空気ライン33vと、を有する。燃焼器冷却空気ライン33c、動翼冷却空気ライン33b、及び静翼冷却空気ライン33vは、いずれも、主冷却空気ライン33mから分岐したラインである。
【0030】
ガスタービン1を構成する部品のうち、燃焼器17の燃焼筒17cと、タービン20の複数の動翼21b及び複数の静翼22vは、いずれも、燃焼ガスが接する高温部品である。これらの高温部品には、高温部品内を通り、この高温部品で燃焼ガスに接する表面で開口している冷却空気通路23が形成されている。タービンロータ軸21aには、このタービンロータ軸21a内を通り、複数の動翼21bのうち、いずれかの動翼21bの冷却空気通路23に連通する冷却空気通路21apが形成されている。
【0031】
燃焼器冷却空気ライン33cは、高温部品の一種である燃焼筒17cの冷却空気通路に接続されている。動翼冷却空気ライン33bは、タービンロータ軸21aの冷却空気通路21apを介して、高温部品の一種である動翼21bの冷却空気通路23に接続されている。静翼冷却空気ライン33vは、複数の静翼22vのうちのいずれかの静翼22vの冷却空気通路23に接続されている。
【0032】
本実施形態では、燃焼器冷却空気ライン33c、動翼冷却空気ライン33b、及び静翼冷却空気ライン33vのうち、燃焼器冷却空気ライン33c、及び静翼冷却空気ライン33vに、冷却空気調節弁34が設けられている。しかしながら、燃焼器冷却空気ライン33c、動翼冷却空気ライン33b、及び静翼冷却空気ライン33vのうち、いずれか二つの空気ラインに冷却空気調節弁34が設けられていればよい。本実施形態のタービン冷却装置30は、燃焼器17の燃焼筒17cと、タービン20の複数の動翼21b及び複数の静翼22vとの全てに冷却空気を供給し、これらの高温部品の全てを冷却する。しかしながら、タービン冷却装置30は、燃焼器17の燃焼筒17cと、タービン20の複数の動翼21b及び複数の静翼22vとのうち、いずれか一の高温部品にのみ冷却空気を供給し、この一の高温部品のみを冷却してもよい。
【0033】
排熱利用設備40は、排熱回収ボイラー41と、煙突42と、排熱回収ボイラー41からの蒸気で駆動する蒸気タービン43と、排熱回収ボイラー41で発生した蒸気を蒸気タービン43に導くことができる主蒸気ライン44と、蒸気タービン43から排気された蒸気を水に戻す復水器45と、復水器45内の水を排熱回収ボイラー41に導くことができる給水ライン46と、給水ライン46中に設けられている給水ポンプ47と、蒸気タービン43の駆動で発電するST発電機48と、ST発電機48からの電力を電力系統PSに供給可能なST電力供給設備49と、を備える。
【0034】
排熱回収ボイラー41は、タービン20から排気された燃焼ガスである排気ガスの熱を利用して水を蒸発させて蒸気できる。この排熱回収ボイラー41は、タービンケーシング24に接続されているダクト41dと、ダクト41d内に配置されている伝熱管41tと、を有する。ダクト41d内には、タービン20からの排気ガスが流れる。また、伝熱管41t内には、液体の水又は気体の水が流れる。伝熱管41tの一端は、水入口を成し、給水ライン46に接続されている。また、伝熱管41tの他端は、蒸気出口を成し、主蒸気ライン44に接続されている。煙突42は、排熱回収ボイラー41のダクト41dに接続されている。
【0035】
ST電力供給設備49は、ST発電機48と電力系統PSとを電気的に接続するST電力線49aと、このST電力線49a中に設けられているST遮断器49b及びST変圧器49tと、を有する。ST電力線49aには、このST電力線49aを流れる電力を計測するST電力計49mが設けられている。
【0036】
液化設備50は、抽気ライン51と、抽気量調節弁52と、液化系60と、液体空気タンク53と、加熱系80と、戻し空気ライン54と、液体空気ポンプ56と、戻し量調節弁57と、を備える。
【0037】
抽気ライン51は、圧縮機10からの圧縮空気CAの一部を抽気可能である。このため、この抽気ライン51の一端は、圧縮機10からの圧縮空気CAが流れる流路を形成する中間ケーシング4に接続されている。抽気量調節弁52は、この抽気ライン51に設けられている。この抽気量調節弁52は、抽気ライン51を流れる圧縮空気CAの流量を調節可能である。
【0038】
液化系60は、一次冷却器(第二冷却熱交換器)61と、二次冷却器62と、冷却装置63と、気液分離タンク77と、液体空気供給ライン78と、液体空気供給調節弁79と、を有する。
【0039】
冷却装置63は、抽気ライン51からの圧縮空気CAを冷却可能である。この冷却装置63は、ブースト圧縮機64と、膨張タービン65と、三次冷却器66と、四次冷却器(第一冷却熱交換器)67と、高圧縮空気主ライン68mと、高圧縮空気分岐ライン68bと、高圧縮空気調節弁68vと、低温低圧空気主ライン69mと、低温低圧空気分岐ライン69bと、気液混合ライン74と、膨張弁75と、を有する。
【0040】
ブースト圧縮機64の吸気口には、前述の抽気ライン51の他端が接続されている。このブースト圧縮機64は、抽気ライン51からの圧縮空気CAをさらに圧縮して、高圧縮空気HCAを生成可能である。ブースト圧縮機64の吐出口と四次冷却器67の高圧縮空気入口とは高圧縮空気主ライン68mで接続されている。この高圧縮空気主ライン68m中には、海水、河川水、地下水等の冷却媒体と高圧縮空気HCAとを熱交換可能な三次冷却器66が設けられている。高圧縮空気分岐ライン68bは、高圧縮空気主ライン68m中で、三次冷却器66と四次冷却器67との間の位置から分岐したラインである。この高圧縮空気分岐ライン68bは、膨張タービン65の吸込口に接続されている。この高圧縮空気分岐ライン68bには、この高圧縮空気分岐ライン68bを流れる高圧縮空気HCAの流量を調節する高圧縮空気調節弁68vが設けられている。膨張タービン65は、高圧縮空気分岐ライン68bからの高圧縮空気HCAを断熱膨張させて、低温低圧空気LLAを生成可能である。膨張タービン65の排気口には、低温低圧空気主ライン69mの一端が接続されている。この低温低圧空気主ライン69mの他端は、四次冷却器67の低温低圧空気入口に接続されている。よって、四次冷却器(第一冷却熱交換器)67は、三次冷却器66を通過した高圧縮空気HCAと膨張タービン65からの低温低圧空気LLAとを熱交換させて、高圧縮空気HCAを冷却可能である。四次冷却器(第一冷却熱交換器)67により冷却された高圧縮空気HCAの一部は、液体空気LAになり、残りが冷却された高圧縮空気HCAとして残る。一方、高圧縮空気HCAとの熱交換で加熱された低温低圧空気LLAは、四次冷却器67から大気に放出される。低温低圧空気分岐ライン69bは、低温低圧空気主ライン69mから分岐したラインである。この低温低圧空気分岐ライン69bは、気液分離タンク77に接続されている。四次冷却器67の気液混合出口と気液分離タンク77とは、気液混合ライン74で接続されている。この気液混合ライン74には、四次冷却器(第一冷却熱交換器)67からの冷却された高圧縮空気HCA及び液体空気LAが流れる。この気液混合ライン74には、膨張弁75が設けられている。この膨張弁75により、気液混合ライン74を流れる流体が断熱膨張して、この流体の液化が促進される。
【0041】
抽気ライン51中で、抽気量調節弁52とブースト圧縮機64との間の位置には、一次冷却器(第二冷却熱交換器)61が設けられている。この一次冷却器(第二冷却熱交換器)61は、抽気ライン51を流れる圧縮空気CAと蓄熱材HGとを熱交換させて、蓄熱材HGを加熱する一方で、圧縮空気CAを冷却可能である。抽気ライン51中で、一次冷却器61とブースト圧縮機64との間の位置には、二次冷却器62が設けられている。この二次冷却器62は、一次冷却器61からの圧縮空気CAと海水、河川水、地下水等の冷却媒体とを熱交換させて、圧縮空気CAを冷却可能である。
【0042】
気液分離タンク77には、気液混合ライン74を介して、四次冷却器(第一冷却熱交換器)67からの高圧縮空気HCA及び液体空気LAが流入可能である。この気液分離タンク77内では、液体空気LAと気体の空気とが分離される。気体の空気は、低温低圧空気分岐ライン69b及び四次冷却器67を介して、大気放出される。
【0043】
液体空気供給ライン78は、気液分離タンク77と液体空気タンク53とを接続する。
液体空気供給調節弁79は、液体空気供給ライン78を流れる液体空気LAの流量を調節可能である。
【0044】
加熱系80は、液体空気タンク53からの液体空気LAを加熱して、液体空気LAが気化した気化空気VAを生成可能な第一加熱装置81と、第一加熱装置81からの気化空気VAを加熱可能な第二加熱装置88と、第二加熱装置88からの気化空気VAを加熱可能な第三加熱装置95と、を備える。なお、以下では、液体空気LAと気化空気VAとを総称して、戻し空気RAとする。
【0045】
第一加熱装置81は、液体空気LAと液体空気LAが気化した気化空気VAとを貯蔵可能な気液タンク82と、一次加熱器(第一加熱熱交換器)67と、加熱用液体空気ライン83と、加熱用液体空気ポンプ84と、加熱用液体空気調節弁85と、気化空気戻しライン86と、を有する。
【0046】
加熱用液体空気ライン83は、気液タンク82の液体空気出口と一次加熱器67の液体空気入口と、を接続する。この加熱用液体空気ライン83には、加熱用液体空気ポンプ84及び加熱用液体空気調節弁85が設けられている。気化空気戻しライン86は、一次加熱器67の気化空気出口と気液タンク82の気化空気入口とを接続する。
【0047】
一次加熱器(第一加熱熱交換器)67は、圧縮空気CAと液体空気LAとを熱交換させる熱交換器で、前述の四次冷却器(第一冷却熱交換器)67でもある。よって、この一次加熱器(第一加熱熱交換器)67は、気液タンク82からの液体空気LA及び低温低圧空気主ライン69mからの低温低圧空気LLAと、高圧縮空気主ライン68mからの高圧縮空気HCAと、を熱交換可能である。なお、第一加熱装置81の一次加熱器(第一加熱熱交換器)67、加熱用液体空気ライン83、加熱用液体空気ポンプ84、加熱用液体空気調節弁85、及び気化空気戻しライン86は、液化系60における冷却装置63の一部も構成する。
【0048】
第二加熱装置88は、流動性を有する蓄熱材HGを貯蔵可能な蓄熱タンク89と、二次加熱器(第二加熱熱交換器)91と、蓄熱材供給ライン92と、蓄熱材供給機92pと、高温蓄熱材ライン93と、蓄熱材調節弁93vと、低温蓄熱材ライン94と、を有する。
【0049】
蓄熱材供給ライン92は、蓄熱タンク89の蓄熱材出口と二次加熱器91の蓄熱材入口とを接続する。この蓄熱材供給機92pは、蓄熱材供給ライン92に設けられている。蓄熱材供給機92pは、蓄熱材供給ライン92を流れる蓄熱材HGが気体の場合には、ブロワーであり、蓄熱材供給ライン92を流れる蓄熱材HGが液体の場合には、ポンプである。
【0050】
二次加熱器(第二加熱熱交換器)91は、蓄熱タンク89からの蓄熱材HGと気化空気VAとを熱交換させて、気化空気VAを加熱可能である一方で、蓄熱材HGを冷却可能である。
【0051】
高温蓄熱材ライン93は、二次加熱器91の蓄熱材出口と、一次冷却器(第二冷却熱交換器)61の蓄熱材入口とを接続する。よって、一次冷却器(第二冷却熱交換器)61は、二次加熱器(第二加熱熱交換器)91で冷却された蓄熱材HGと圧縮空気CAとを熱交換させて、圧縮空気CAを冷却可能である一方で、蓄熱材HGを加熱可能である。高温蓄熱材ライン93には、この高温蓄熱材ライン93及び蓄熱材供給ライン92を流れる蓄熱材HGの流量を調節可能な蓄熱材調節弁93vが設けられている。低温蓄熱材ライン94は、一次冷却器(第二冷却熱交換器)61の蓄熱材出口と蓄熱タンク89の蓄熱材入口とを接続する。よって、蓄熱タンク89には、一次冷却器(第二冷却熱交換器)61で加熱された蓄熱材HGが流入する。
【0052】
第三加熱装置95は、三次加熱器(第三加熱熱交換器)96と、分岐蒸気ライン97と、分岐蒸気調節弁97vと、を有する。
【0053】
分岐蒸気ライン97は、排熱利用設備40の主蒸気ライン44から分岐したラインである。この分岐蒸気ライン97は、三次加熱器96の蒸気入口に接続されている。分岐蒸気ライン97には、分岐蒸気調節弁97vが設けられている。三次加熱器(第三加熱熱交換器)96は、第二加熱装置88で加熱された気化空気VAと蒸気とを熱交換させて、気化空気VAを加熱可能である一方で、蒸気を冷却可能である。三次加熱器96で、気化空気VAとの熱交換で冷却された蒸気は、例えば、復水器45に戻される。
【0054】
戻し空気ライン54は、液体空気ライン55と、気化空気ライン58とを有する。液体空気ライン55は、液体空気タンク53の液体空気出口と気液タンク82の液体空気入口とを接続する。この液体空気ライン55には、液体空気ポンプ56と、戻し量調節弁57とが設けられている。戻し量調節弁57は、戻し空気ライン54を流れる戻し空気RAの流量を調節可能である。気化空気ライン58は、気液タンク82の気化空気出口と、圧縮機10からの圧縮空気CAが流れる流路を形成する中間ケーシング4とを接続する。気化空気ライン58には、二次加熱器(第二加熱熱交換器)91が設けられている。気化空気ライン58中で、二次加熱器(第二加熱熱交換器)91と中間ケーシング4との間には、三次加熱器(第三加熱熱交換器)96が設けられている。
【0055】
制御装置100は、燃料制御器101と、IGV制御器102と、液化制御器103と、を有する。
【0056】
燃料制御器101には、GT電力計39mで計測された電力値及びST電力計49mで計測された電力値が入力する。GT電力計39mで計測された電力値は、ガスタービン1の実際の出力値である。ST電力計49mで計測された電力値は、蒸気タービン43の実際の出力値である。このため、GT電力計39mで計測された電力値とST電力計49mで計測された電力値とを加算した電力値は、ガスタービンプラントの実際の出力値である。燃料制御器101には、さらに、外部から負荷指令LCも入力する。この負荷指令LCは、ガスタービンプラントの要求出力値を示す。燃料制御器101は、GT電力計39mで計測された電力値とST電力計49mで計測された電力値とを加算した電力値、つまりガスタービンプラントの実際の出力値と、負荷指令LCが示すガスタービンプラントの要求出力値との偏差等に応じて、燃焼器17に供給する燃料流量を求める。燃料制御器101は、さらに、この燃料流量に応じた燃料調節弁6の弁開度を求め、この弁開度を燃料調節弁6に送る。
【0057】
IGV制御器102は、
図2に示すように、燃料制御器101が求めた燃料流量又はこの燃料流量に応じたガスタービン出力と、IGV開度θとの関係を示す関数を有する。この関数は、燃料制御器101が求めた燃料流量又はこの燃料流量に応じたガスタービン出力が大きくなるに連れて、IGV開度θが大きくなる関数である。なお、IGV開度θとは、複数のガイドベーン15vの開度である。IGV開度θ、つまり複数のガイドベーン15vの開度が大きくなると、圧縮機10の吸気量が多くなる。IGV制御器102は、この関数を用いて、燃料制御器101が求めた燃料流量又はガスタービン出力に応じたIGV開度θを求める。そして、IGV制御器102は、このIGV開度θをIGV15の駆動器15dに送る。
【0058】
液化制御器103は、IGV開度θ又は負荷指令LCに応じて、液化設備50の動作を制御する。この液化制御器103の動作、この動作に基づく液化設備50の動作については、後ほど詳細に説明する。なお、負荷指令LCは、以上で説明したように、IGV開度θと相関性を有するパラメータの一種である。
【0059】
以上で説明した制御装置100は、コンピュータである。よって、この制御装置100は、ハードウェア的には、各種演算を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUのワークエリアになるメモリ等の主記憶装置と、ハードディスクドライブ装置等の補助記憶装置と、キーボードやマウス等の入力装置と、表示装置と、を有する。燃料制御器101、IGV制御器102及び液化制御器103等の制御装置100における各機能部は、例えば、補助記憶装置に記憶された制御プログラムをCPUが実行することで、機能する。
【0060】
次に、以上で説明したガスタービンプラントの動作について説明する。
【0061】
ガスタービン1の圧縮機10は、空気Aを圧縮して圧縮空気CAを生成する。圧縮機10からの圧縮空気CAは、中間ケーシング4を経て、燃焼器17に流入する。燃焼器17には、燃料も流入する。燃焼器17の燃焼筒17c内では、圧縮空気CA中で燃料が燃焼して、高温高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスは、燃焼器17からタービン20内の燃焼ガス流路に送られ、タービンロータ21を回転させる。このタービンロータ21の回転で、ガスタービンロータ2に接続されているGT発電機38は発電する。
【0062】
前述したように、燃焼器17の燃焼筒17cと、タービン20の複数の動翼21b及び複数の静翼22vは、いずれも、燃焼ガスが接する高温部品である。これら高温部品の耐久性を高めるため、本実施形態では、これらの高温部品に冷却空気を供給して、これらの高温部品を冷却する。具体的に、本実施形態では、圧縮機10からの圧縮空気CAが流れる中間ケーシング4から圧縮空気CAを抽気して、この圧縮空気CAを冷却器32で冷却して冷却空気とする。そして、この冷却空気を各高温部品に送る。
【0063】
タービンロータ21を回転させた燃焼ガスは、排気ガスとしてタービン20から排気され、排熱回収ボイラー41のダクト41dを介して、煙突42から大気に放出される。排熱回収ボイラー41のダクト41d内では、ここを排気ガスが通る過程で、このダクト41d内に配置されている伝熱管41t内の水又は蒸気と排気ガスとが熱交換されて、高温高圧の蒸気が生成される。
【0064】
この蒸気は、主蒸気ライン44を経て、蒸気タービン43に送られる。蒸気タービン43は、この蒸気により駆動する。蒸気タービン43の駆動で、蒸気タービン43に接続されているST発電機48は発電する。蒸気タービン43から排気された蒸気は、復水器45で水に戻される。復水器45内の水は、給水ライン46を経て、排熱回収ボイラー41の伝熱管41t内に戻される。
【0065】
前述したように、制御装置100の燃料制御器101は、負荷指令LCが示すガスタービンプラントの要求出力値とガスタービンプラントの実際の出力値との偏差等に応じて、燃焼器17に供給する燃料流量を求める。このため、負荷指令LCが示すガスタービンプラントの要求出力値が大きくなると、燃焼器17に供給する燃料流量が多くなり、負荷指令LCが示すガスタービンプラントの要求出力値が小さくなると、燃焼器17に供給する燃料流量が少なくなる。また、IGV制御器102は、
図2に示す関数を用いて、燃料流量又はガスタービン出力に応じたIGV開度θを求める。このため、燃料流量が多くなり、ガスタービン出力が大きくなると、IGV開度θは大きくなり、燃料流量が少なくなり、ガスタービン出力が小さくなると、IGV開度θは小さくなる。
【0066】
IGV開度θには、
図2に示すように、最小開度minと最大開度maxとがある。ガスタービン出力が定格出力のとき、IGV開度θは最大開度maxになっている。また、ガスタービン出力が最低出力のとき、IGV開度θは最小開度minになっている。ここで、最小開度minを第一開度θ1とし、最大開度maxを第二開度θ2とする。よって、第一開度θ1は、圧縮機ケーシング14内に流入する吸気量を、ガスタービン出力が定格出力のときの吸気量より少なくしているときの開度である。
【0067】
図3に示すように、液化制御器103は、IGV開度θが第一開度θ1であるか第二開度θ2であるかを監視する(開度監視工程S1)。この液化制御器103は、IGV制御器102がIGV15に送る制御信号が示すIGV開度θと、燃料制御器101が定めた燃料流量と、GT電力計39mからの電力値とのうち、いずれかから、IGV開度θが第一開度θ1であるか第二開度θ2であるかを判断する。
【0068】
液化制御器103は、開度監視工程S1で、IGV開度θが第一開度θ1(最小開度min)であると判断すると、抽気量調節弁52に対して開指示を出力する。この結果、抽気量調節弁52が開き、抽気工程S2が実行される。この抽気工程S2では、中間ケーシング4内の圧縮空気CAが抽気ライン51を介して液化系60に流入する。
【0069】
液化制御器103は、さらに、IGV開度θが第一開度θ1(最小開度min)であると判断すると、液化系60を駆動させる。この結果、液化工程S3及び気化工程S4が実行される。液化工程S3では、まず、一次冷却器(第二冷却熱交換器)61で、抽気ライン51を流れる圧縮空気CAと蓄熱材HGとが熱交換され、蓄熱材HGが加熱される一方で、圧縮空気CAが冷却される。加熱された蓄熱材HGは、蓄熱タンク89内に流入する。一方、冷却された圧縮空気CAは、二次冷却器62で、海水、河川水、地下水等の冷却媒体と熱交換され、圧縮空気CAがさらに冷却される。
【0070】
二次冷却器62で冷却された圧縮空気CAは、ブースト圧縮機64により圧縮された高圧縮空気HCAになる。この高圧縮空気HCAは、三次冷却器66で、海水、河川水、地下水等の冷却媒体と熱交換され、冷却される。三次冷却器66で冷却された高圧縮空気HCAの一部は、高圧縮空気分岐ライン68bを介して、膨張タービン65に流入する。この高圧縮空気HCAは、膨張タービン65で断熱膨張され、低温低圧空気LLAになる。
低温低圧空気LLAは、低温低圧空気主ライン69mを介して、四次冷却器67に流入する。また、この液化工程S3では、第一加熱装置81の加熱用液体空気ポンプ84が駆動すると共に、第一加熱装置81の加熱用液体空気調節弁85が開く。このため、四次冷却器67には、第一加熱装置81の気液タンク82内の液体空気LAを流入する。この結果、四次冷却器(第一冷却熱交換器)67では、気液タンク82からの液体空気LA及び低温低圧空気主ライン69mからの低温低圧空気LLAと、高圧縮空気HCAの他の一部とが熱交換され、高圧縮空気HCAの他の一部は冷却されて、少なくとも一部が液体空気LAになる。この液体空気LAは、四次冷却器67で液化されなかった高圧縮空気HCAと共に、気液混合ライン74に流入する。気液混合ライン74に流入した流体は、この気液混合ライン74に設けられている膨張弁75により断熱膨張され、液化が促進される。気液タンク82からの液体空気LAは、四次冷却器(一次加熱器、第一加熱熱交換器)67での高圧縮空気HCAと熱交換で、加熱されて気化し、気液タンク82に戻る。このため、この液化工程S3において、気液タンク82内の液体空気LAが次第に減少し、気液タンク82内の気化空気VAが次第に増加する。すなわち、この液化工程S3では、液体空気LAを気化して、気化空気VAを生成する気化工程S4も実行される。また、膨張タービン65からの低温低圧空気LLAは、四次冷却器67での高圧縮空気HCAと熱交換で、加熱された後、大気に放出される。
【0071】
膨張弁75で液化が促進された流体は、気液分離タンク77に流入し、気体の空気と液体空気LAとに分離する。気液分離タンク77中の液体空気LAは、液体空気供給ライン78を介して、液体空気タンク53に流入する。
【0072】
IGV開度θが第一開度θ1(最小開度min)である際には、以上の抽気工程S2、液化工程S3、及び気化工程S4が継続的に実行される。
【0073】
以上のように、IGV開度θが第一開度θ1(最小開度min)である際には、中間ケーシング4内の圧縮空気CAが抽気されるので、この中間ケーシング4内から燃焼器17に流入する圧縮空気CAの流量が少なくなる。この結果、中間ケーシング4内の圧縮空気CAを抽気していない場合よりも、燃焼器17で生成される燃焼ガスの流量が少なくなり、ガスタービン出力が低下する。
【0074】
液化制御器103は、開度監視工程S1で、IGV開度θが第一開度θ1(最小開度min)ではないと判断すると、抽気量調節弁52を閉じさせて、抽気工程S2が中止すると共に、液化系60を停止させて、液化工程S3を中止する。
【0075】
液化制御器103は、開度監視工程S1で、IGV開度θが第二開度θ2(最大開度max)であると判断すると、戻し量調節弁57に対して開指示を出力すると共に、液体空気ポンプ56及び加熱系80に駆動指示を出力する。この結果、戻し量調節弁57が開き、液体空気ポンプ56及び加熱系80が駆動して、戻し工程S5及び加熱工程S6が実行される。
【0076】
戻し工程S5では、液体空気タンク53内の液体空気LAが戻し空気ライン54中の液体空気ライン55を介して、気液タンク82内に流入する。この結果、気液タンク82内の液体空気LAの量が増加し、この液体空気LAにより気液タンク82内の気化空気VAが押し出される。この気化空気VAは、二次加熱器91、三次加熱器96、及び戻し空気ライン54中の気化空気ライン58を経て、中間ケーシング4内に流入する。加熱工程S6では、気化空気VAが、気化空気ライン58に設けられている二次加熱器91及び三次加熱器96により加熱される。二次加熱器91には、気液タンク82から気化空気VAと、液化工程S3で加熱された蓄熱タンク89からの蓄熱材HGとが流入する。この結果、二次加熱器(第二加熱熱交換器)91では、加熱された蓄熱材HGと気化空気VAとが熱交換され、蓄熱材HGが冷却される一方で、気化空気VAが加熱される。冷却された蓄熱材HGは、一次冷却器(第二冷却熱交換器)61を経てから、蓄熱タンク89に戻る。一方、蓄熱材HGとの熱交換で加熱された気化空気VAは、気化空気ライン58を介して、三次加熱器96に流入する。三次加熱器96には、さらに、排熱回収ボイラー41からの蒸気も流入する。この結果、三次加熱器(第三加熱熱交換器)96では、加熱された気化空気VAと蒸気とが熱交換され、加熱された気化空気VAがさらに加熱される一方で、蒸気が冷却される。冷却された蒸気は、例えば、復水器45に戻さる。一方、さらに加熱された気化空気VAは、前述したように、気化空気ライン58を介して、中間ケーシング4内に流入する。
【0077】
IGV開度θが第二開度θ2(最大開度max)である際には、以上の戻し工程S5及び加熱工程S6が並行して継続的に実行される。
【0078】
以上のように、IGV開度θが第二開度θ2(最大開度max)である際には、中間ケーシング4内に加熱された気化空気VAが流入するので、この中間ケーシング4内から燃焼器17に流入する圧縮空気CA(加熱された気化空気VAを含む)の流量が多くなる。
この結果、中間ケーシング4内の気化空気VAを流入させない場合よりも、燃焼器17で生成される燃焼ガスの流量が多くなり、ガスタービン出力が増加する。
【0079】
以上のように、本実施形態では、IGV開度θが第一開度θ1(最小開度min)である際には、中間ケーシング4内の圧縮空気CAを抽気して、ガスタービン出力を低下させ、IGV開度θが第二開度θ2(最大開度max)である際には、中間ケーシング4内の高温の気化空気VAを流入させて、ガスタービン出力を増加させている。このため、本実施形態では、ガスタービン出力調整を柔軟に実施でき、電力系統の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【0080】
本実施形態では、液化工程S3において、気化工程S4や加熱工程S6で得られる低温熱エネルギーを利用して、圧縮空気CAを冷却している。また、本実施形態では、気化工程S4や加熱工程S6において、液化工程S3で得られる高温熱エネルギーを利用して、液体空気LAや気化空気VAを加熱している。このため、本実施形態では、液化設備50外から供給される熱エネルギーを少なくすることができる。
【0081】
以上の実施形態における開度監視工程S1では、液化制御器103が、IGV開度θを監視する。このIGV開度θの変化は、以上で説明したように、負荷指令LCの変化と相関性を有する。このため、この開度監視工程S1では、IGV開度θの替りに、外部からの負荷指令LCを監視してもよい。前述したように、ガスタービン出力が定格出力のとき、IGV開度θは最大開度max(第二開度θ2)になり、ガスタービン出力が最低出力のとき、IGV開度θは最小開度min(第一開度θ1)になる。そこで、開度監視工程S1で負荷指令LCを監視する場合には、負荷指令LCが示す出力値がガスタービン出力を定格出力にすべき出力値(第二出力値)であるか、負荷指令LCが示す出力値がガスタービン出力を最低出力にすべき出力値(第一出力値)であるかを監視すればよい。なお、第一出力値は第一開度θ1に相当し、第二出力は第二開度θ2に相当する。
【0082】
「第二実施形態」
次に、本開示に係るガスタービンプラントの第二実施形態について、
図4及び
図5を用いて説明する。
【0083】
本実施形態のガスタービンプラントは、
図4に示すように、第一実施形態のガスタービンプラントと同様、ガスタービン1と、GT発電機38と、GT電力供給設備39と、タービン冷却装置30と、排熱利用設備40と、液化設備50aと、制御装置100と、を備える。但し、本実施形態の液化設備50aは、第一実施形態の液化設備50と異なる。
【0084】
本実施形態の液化設備50aは、第一実施形態の液化設備50と同様、抽気ライン51と、抽気量調節弁52と、液化系60aと、液体空気タンク53と、加熱系80aと、戻し空気ライン54aと、液体空気ポンプ56と、戻し量調節弁57と、を備える。但し、本実施形態では、戻し空気ライン54aによる戻し空気RAの戻し先が第一実施形態と異なる。このため、本実施形態の加熱系80aは、第一実施形態の加熱系80と異なる。さらに、本実施形態の液化系60aは、第一実施形態の液化系60と異なる。
【0085】
本実施形態の戻し空気ライン54aは、第一実施形態の戻し空気ライン54と同様、液体空気ライン55と、気化空気ライン58aとを有する。気化空気ライン58aの接続先は、第一実施形態の気化空気ライン58の接続先と異なり、圧縮機ケーシング14である。すなわち、本実施形態では、圧縮機10中で空気が流れる空気流路中に、戻し空気RAを戻す。具体的に、本実施形態の気化空気ライン58aの接続先は、圧縮機ケーシング14中で、IGV15の複数のガイドベーン15vが配置されている位置よりも軸線上流側Dauの位置である。すなわち、本実施形態では、圧縮機10の空気流路中で、IGV15により吸気量が調節される前の空気が流れる流路部分に、戻し空気RAを戻す。圧縮機10の空気流路を流れる空気の温度は、燃焼器17に流入する圧縮空気CAの温度よりも低い。よって、本実施形態における戻し空気RAの温度は、第一実施形態における戻し空気RAの温度よりも低くてよい。このため、本実施形態の加熱系80aは、前述したように、第一実施形態の加熱系80と異なる。
【0086】
本実施形態の加熱系80aは、液体空気タンク53からの液体空気LAを加熱して、気化空気VAを生成可能な第一加熱装置81を備える。但し、本実施形態の加熱系80aは、第一実施形態の加熱系80における第二加熱装置88及び第三加熱装置95を備えていない。このため、本実施形態の気化空気ライン58aには、第一実施形態における二次加熱器91及び三次加熱器96が設けられていない。
【0087】
本実施形態の加熱系80aは、第一実施形態における第二加熱装置88及び第三加熱装置95を備えていない関係で、本実施形態の液化系60aは、第一実施形態の液化系60と異なる。本実施形態の液化系60aは、第一実施形態の二次冷却器62と同様の一次冷却器62aと、冷却装置63と、気液分離タンク77と、液体空気供給ライン78と、液体空気供給調節弁79と、を有する。冷却装置63は、第一実施形態の冷却装置63と同様、ブースト圧縮機64と、膨張タービン65と、三次冷却器66と、四次冷却器(第一冷却熱交換器)67と、高圧縮空気主ライン68mと、高圧空気分岐ラインと、低温低圧空気主ライン69mと、低温低圧空気分岐ライン69bと、気液混合ライン74と、高圧縮空気調節弁68vと、膨張弁75と、を有する。本実施形態の第一加熱装置81の一次加熱器(第一加熱熱交換器)67、加熱用液体空気ライン83、気化空気戻しライン86、加熱用液体空気ポンプ84、及び加熱用液体空気調節弁85は、第一実施形態と同様、冷却装置63の一部も構成する。
【0088】
制御装置100の液化制御器103は、第一実施形態と同様、IGV開度θが第一開度θ1であるか第二開度θ2であるかを監視する。
【0089】
液化制御器103は、IGV開度θが第一開度θ1であると判断すると、第一実施形態と同様、抽気量調節弁52に対して開指示を出力する。この結果、抽気量調節弁52が開き、抽気工程S2が実行される。この抽気工程S2では、中間ケーシング4内の圧縮空気CAが抽気ライン51を介して液化系60aに流入する。
【0090】
液化制御器103は、さらに、IGV開度θが第一開度θ1であると判断すると、液化系60aを駆動させる。この結果、第一実施形態と同様に、液化工程S3が実行される。
この液化工程S3では、まず、一次冷却器62aで、海水等の冷却媒体と熱交換され、圧縮空気CAが冷却される。
【0091】
一次冷却器62aで冷却された圧縮空気CAは、ブースト圧縮機64により圧縮された高圧縮空気HCAになる。この高圧縮空気HCAは、三次冷却器66で、海水等の冷却媒体と熱交換され、冷却される。三次冷却器66で冷却された高圧縮空気HCAの一部は、高圧縮空気分岐ライン68bを介して、膨張タービン65に流入する。この高圧縮空気HCAは、膨張タービン65で断熱膨張され、低温低圧空気LLAになる。低温低圧空気LLAは、低温低圧空気主ライン69mを介して、四次冷却器67に流入する。また、この液化工程S3では、第一加熱装置81の加熱用液体空気ポンプ84が駆動すると共に、第一加熱装置81の加熱用液体空気調節弁85が開く。この結果、四次冷却器67には、第一加熱装置81の気液タンク82内の液体空気LAを流入する。このため、四次冷却器(第一冷却熱交換器)67では、気液タンク82からの液体空気LA及び低温低圧空気主ライン69mからの低温低圧空気LLAと、高圧縮空気HCAの他の一部とが熱交換され、高圧縮空気HCAの他の一部は冷却されて、少なくとも一部が液体空気LAになる。この液体空気LAは、四次冷却器67で液化されなかった高圧縮空気HCAと共に、気液混合ライン74に流入する。気液混合ライン74に流入した流体は、この気液混合ライン74に設けられている膨張弁75により断熱膨張され、液化が促進される。気液タンク82からの液体空気LAは、四次冷却器(一次加熱器、第一加熱熱交換器)67での高圧縮空気HCAと熱交換で、加熱されて気化し、気液タンク82に戻る。このため、この液化工程S3において、気液タンク82内の液体空気LAが次第に減少し、気液タンク82内の気化空気VAが次第に増加する。すなわち、この液化工程S3では、液体空気LAを気化して、気化空気VAを生成する気化工程S4も実行させる。また、膨張タービン65からの低温低圧空気LLAは、四次冷却器67での高圧縮空気HCAと熱交換で、加熱された後、大気に放出される。
【0092】
膨張弁75で液化が促進された流体は、気液分離タンク77に流入し、気体の空気と液体空気LAとに分離する。気液分離タンク77中の液体空気LAは、液体空気供給ライン78を介して、液体空気タンク53に流入する。
【0093】
IGV開度θが第一開度θ1である際には、以上の抽気工程S2、液化工程S3、及び気化工程S4が継続的に実行される。
【0094】
以上のように、IGV開度θが第一開度θ1である際には、第一実施形態と同様、中間ケーシング4内の圧縮空気CAが抽気されるので、この中間ケーシング4内から燃焼器17に流入する圧縮空気CAの流量が少なくなる。この結果、中間ケーシング4内の圧縮空気CAを抽気していない場合よりも、燃焼器17で生成される燃焼ガスの流量が少なくなり、ガスタービン出力が低下する。
【0095】
液化制御器103は、IGV開度θが第一開度θ1ではないと判断すると、抽気量調節弁52を閉じさせて、抽気工程S2が中止すると共に、液化系60aを停止させて、液化工程S3を中止する。
【0096】
液化制御器103は、IGV開度θが第二開度θ2であると判断すると、戻し量調節弁57に対して開指示を出力すると共に、液体空気ポンプ56に駆動指示を出力する。この結果、戻し量調節弁57が開き、液体空気ポンプ56が駆動し、戻し工程S5が実行される。
【0097】
戻し量調節弁57が開き、液体空気ポンプ56が駆動すると、液体空気タンク53内の液体空気LAが戻し空気ライン54a中の液体空気ライン55を介して、気液タンク82内に液体空気LAが流入する。この結果、気液タンク82内の液体空気LAの量が増加し、この液体空気LAにより気液タンク82内の気化空気VAが押し出される。この気化空気VAの温度は、圧縮機10が吸い込む空気の温度よりも低い。この気化空気VAは、戻し空気ライン54a中の気化空気ライン58aを経て、圧縮機10の空気流路内に流入する。このため、圧縮機10の空気流路中を流れる空気の平均温度が低下する。空気流路を流れる空気の体積流量が変わらなくても、空気流路を流れる空気の平均温度が低下すると、この空気流路を流れる空気の質量流量が増加する。
【0098】
なお、本実施形態では、第一実施形態における、気化空気VAを加熱する加熱工程S6は実行されない。但し、液体空気タンク53内の液体空気LAの温度を5~15℃程度にまで加熱する加熱器を設け、この加熱器で加熱工程を実行してもよい。
【0099】
以上のように、IGV開度θが第二開度θ2である際には、圧縮機10の空気流路中に冷たい気化空気VAが流入して、空気流路を流れる空気の質量流量が増加する。この結果、本実施形態では、圧縮機10の空気流路中に冷たい気化空気VAが流入しない場合よりも、燃焼器17で生成される燃焼ガスの質量流量が多くなり、ガスタービン出力が増加する。
【0100】
以上のように、本実施形態では、IGV開度θが第一開度θ1である際には、中間ケーシング4内の圧縮空気CAを抽気して、ガスタービン出力を低下させ、IGV開度θが第二開度θ2である際には、圧縮機10の空気流路中に冷たい気化空気VAが流入させて、ガスタービン出力を増加させている。このため、本実施形態では、ガスタービン出力調整を柔軟に実施でき、電力系統の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【0101】
また、本実施形態でも、液化工程S3において、気化工程S4で得られる低温熱エネルギーを利用して、圧縮空気CAを冷却している。また、本実施形態でも、気化工程S4において、液化工程S3で得られる高温熱エネルギーを利用して、液体空気LAを気化させている。このため、本実施形態でも、液化設備50a外から供給される熱エネルギーを少なくすることができる。
【0102】
以上で説明した例では、圧縮機ケーシング14内の空気流路中で、IGV15により吸気量が調節される前の空気が流れる流路部分に、戻し空気RAを導く。つまり、以上で説明した例では、圧縮機ケーシング14内の空気流路中で、IGV15の複数のガイドベーン15vよりも軸線上流側Dauの流路部分に、戻し空気RAを導く。しかしながら、圧縮機ケーシング14内の空気流路中で、IGV15により吸気量が調節された後の空気が流れる流路部分に、戻し空気RAを導いてもよい。つまり、圧縮機ケーシング14内の空気流路中で、IGV15の複数のガイドベーン15vよりも軸線下流側Dadの流路部分に、戻し空気RAを導いてもよい。この場合、
図4で、二点破線で示すように、圧縮機10の複数の静翼列12tのうち、いずれか一の静翼列12tを構成する複数の静翼12vに、気化空気ライン58aaを接続する。さらに、
図5に示すように、気化空気ライン58aaが接続されている複数の静翼12vのそれぞれに、静翼12v内を通り、気化空気ライン58aaに連通していると共に、静翼12vの表面で開口している複数の空気通路13を形成する。複数の空気通路13のうち、いずれか一の空気通路13は、静翼12vの表面中で静翼12vの前端12fの近傍で開口し、他の空気通路13は、静翼12vの表面中で静翼12vの後端12rで開口する。
【0103】
以上のように、戻し空気RAを圧縮機10の静翼12vに導く場合、この戻し空気RAは、液体空気LAであってもよい。この場合、
図4で、二点破線で示すように、戻し空気ライン54aaの液体空気ライン55aが圧縮機10の静翼12vに接続される。なお、この場合、戻し空気ライン54aaは、気化空気ラインが不要になる。
【0104】
ここでは、静翼12vの前端12fの近傍及び後端12rから、戻し空気RAを圧縮機の空気流路中に流出させている。しかしながら、静翼12vの後端12rのみから戻し空気RAを圧縮機の空気流路中に流出させてもよい。このように、静翼12vの後端12rのみから戻し空気RAを流出させると、静翼12vの周りの空気流れの乱れを抑えることができる。特に、静翼12vに液体空気LAを戻し空気RAとして送る場合、静翼12vの後端12rのみから戻し空気RAを流出させることが好ましい。
【0105】
「第三実施形態」
次に、本開示に係るガスタービンプラントの第三実施形態について、
図6を用いて説明する。
【0106】
本実施形態のガスタービンプラントは、
図6に示すように、第一実施形態のガスタービンプラントと同様、ガスタービン1と、GT発電機38と、GT電力供給設備39と、タービン冷却装置30と、排熱利用設備40と、液化設備50bと、制御装置100と、を備える。但し、本実施形態の液化設備50bは、第一実施形態の液化設備50と異なる。
【0107】
本実施形態の液化設備50bは、第一実施形態の液化設備50と同様、抽気ライン51と、抽気量調節弁52と、液化系60と、液体空気タンク53と、加熱系80bと、戻し空気ライン54bと、液体空気ポンプ56と、戻し量調節弁57と、を備える。但し、本実施形態では、戻し空気ライン54bによる戻し空気RAの戻し先が第一実施形態と異なる。このため、本実施形態の加熱系80bは、第一実施形態の加熱系80と異なる。
【0108】
本実施形態の戻し空気ライン54bは、第一実施形態の戻し空気ライン54と同様、液体空気ライン55と、気化空気ライン58bとを有する。気化空気ライン58bの接続先は、第一実施形態の気化空気ライン58の接続先と異なり、タービン冷却装置30の主冷却空気ライン33mである。この場合、タービン冷却装置30の主冷却空気ライン33m、燃焼器冷却空気ライン33c、動翼冷却空気ライン33b、及び静翼冷却空気ライン33vは、いずれも、戻し空気ライン54bの一部を構成することになる。よって、本実施形態では、ガスタービン1の高温部品に戻し空気RAを導く。なお、ガスタービン1の高温部品に戻し空気RAを送るために、必要に応じて、気化空気ライン58b中に圧縮機を設け、この気化空気ライン58b中の戻し空気RAを昇圧してもよい。第一実施形態では、燃焼器17に流入する圧縮空気CA中に戻し空気RAを導くが、本実施形態では、高温部品を冷却するために、高温部品に戻し空気RAを導く。よって、本実施形態における戻し空気RAの温度は、第一実施形態における戻し空気RAの温度よりも低くてよい。このため、本実施形態の加熱系80bは、前述したように、第一実施形態の加熱系80と異なる。
【0109】
本実施形態の加熱系80bは、液体空気タンク53からの液体空気LAを加熱して、気化空気VAを生成可能な第一加熱装置81と、気化空気VAを加熱可能な第二加熱装置88と、を備える。但し、本実施形態の加熱系80bは、第一実施形態の加熱系80における第三加熱装置95を備えていない。このため、本実施形態の気化空気ライン58bには、第一実施形態における三次加熱器96が設けられていない。
【0110】
本実施形態の液化系60は、第一実施形態の液化系60と同じである。よって、本実施形態の液化系60は、一次冷却器(第二冷却熱交換器)61と、二次冷却器62と、冷却装置63と、気液分離タンク77と、液体空気供給ライン78と、液体空気供給調節弁79と、を有する。
【0111】
制御装置100の液化制御器103は、第一実施形態と同様、IGV開度θが第一開度θ1であるか第二開度θ2であるかを監視する。
【0112】
液化制御器103は、IGV開度θが第一開度θ1であると判断すると、第一実施形態と同様、抽気量調節弁52に対して開指示を出力する。この結果、抽気量調節弁52が開き、抽気工程S2が実行される。この抽気工程S2では、中間ケーシング4内の圧縮空気CAが抽気ライン51を介して液化系60に流入する。液化制御器103は、さらに、IGV開度θが第一開度θ1であると判断すると、液化系60を駆動させる。この結果、第一実施形態と同様に、液化工程S3、及び気化工程S4が実行される。
【0113】
IGV開度θが第一開度θ1である際には、以上の抽気工程S2、液化工程S3、及び気化工程S4が継続的に実行される。
【0114】
以上のように、IGV開度θが第一開度θ1である際には、第一実施形態と同様、中間ケーシング4内の圧縮空気CAが抽気されるので、この中間ケーシング4内から燃焼器17に流入する圧縮空気CAの流量が少なくなる。この結果、中間ケーシング4内の圧縮空気CAを抽気していない場合よりも、燃焼器17で生成される燃焼ガスの流量が少なくなり、ガスタービン出力が低下する。
【0115】
液化制御器103は、IGV開度θが第一開度θ1ではないと判断すると、抽気量調節弁52を閉じさせて、抽気工程S2が中止すると共に、液化系60を停止させて、液化工程S3を中止する。
【0116】
液化制御器103は、IGV開度θが第二開度θ2であると判断すると、戻し量調節弁57に対して開指示を出力すると共に、液体空気ポンプ56及び加熱系80bに駆動指示を出力する。この結果、戻し量調節弁57が開き、液体空気ポンプ56及び加熱系80bが駆動して、戻し工程S5及び加熱工程S6が実行される。
【0117】
戻し工程S5では、液体空気タンク53内の液体空気LAが戻し空気ライン54b中の液体空気ライン55を介して、気液タンク82内に液体空気LAが流入する。この結果、気液タンク82内の液体空気LAの量が増加し、この液体空気LAにより気液タンク82内の気化空気VAが押し出される。この気化空気VAは、戻し空気ライン54b中の気化空気ライン58bを経て、二次加熱器91に流入する。二次加熱器91には、さらに、液化工程S3で加熱された蓄熱材HGが蓄熱タンク89から流入する。この結果、二次加熱器(第二加熱熱交換器)91では、加熱された蓄熱材HGと気化空気VAとが熱交換され、蓄熱材HGが冷却される一方で、気化空気VAが加熱される(加熱工程S6)。冷却された蓄熱材HGは、一次冷却器(第二冷却熱交換器)61を経てから、蓄熱タンク89に戻る。一方、蓄熱材HGとの熱交換で加熱された気化空気VAは、戻し空気ライン54bの気化空気ライン58bを介して、ガスタービン1の高温部品内に流入する。
【0118】
IGV開度θが第二開度θ2である際には、以上の戻し工程S5及び加熱工程S6が継続的に実行される。
【0119】
以上のように、本実施形態では、IGV開度θが第二開度θ2である際には、液化設備50bからの気化空気VAがガスタービン1の高温部品に流入するので、この際、タービン冷却装置30がガスタービン1から抽気する圧縮空気CAの量を無くす、又は少なくすることができる。この結果、タービン20が圧縮機10を駆動するための出力が抑えられ、ガスタービン出力が増加する。
【0120】
以上のように、本実施形態では、IGV開度θが第一開度θ1である際には、中間ケーシング4内の圧縮空気CAを抽気して、ガスタービン出力を低下させ、IGV開度θが第二開度θ2である際には、高温部品内に気化空気VAを流入させて、ガスタービン出力を増加させている。このため、本実施形態ではガスタービン出力調整を柔軟に実施でき、電力系統の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【0121】
本実施形態では、第一実施形態と同様、液化工程S3において、気化工程S4や加熱工程S6で得られる低温熱エネルギーを利用して、圧縮空気CAを冷却している。また、本実施形態では、第一実施形態と同様、気化工程S4や加熱工程S6において、液化工程S3で得られる高温熱エネルギーを利用して、液体空気LAや気化空気VAを加熱している。このため、本実施形態でも、液化設備50b外から供給される熱エネルギーを少なくすることができる。
【0122】
「第四実施形態」
次に、本開示に係るガスタービンプラントの第四実施形態について、
図7を用いて説明する。
【0123】
本実施形態のガスタービンプラントは、
図7に示すように、第一実施形態のガスタービンプラントと同様、ガスタービン1と、GT発電機38と、GT電力供給設備39と、タービン冷却装置30と、排熱利用設備40と、液化設備50cと、制御装置100と、を備える。但し、本実施形態の液化設備50cは、第一実施形態の液化設備50と異なる。
【0124】
本実施形態の液化設備50cは、第一実施形態の液化設備50と同様、抽気ライン51と、抽気量調節弁52と、液化系60cと、液体空気タンク53と、加熱系80cと、戻し空気ライン54と、液体空気ポンプ56と、戻し量調節弁57と、を備える。
【0125】
液化系60cは、一次冷却器61と、二次冷却器62cと、冷却装置63cと、気液分離タンク77と、液体空気供給ライン78と、液体空気供給調節弁79と、を有する。一次冷却器61及び二次冷却器62cは、抽気ライン51に設けられている。一次冷却器61は、第一実施形態の一次冷却器61と同様、圧縮空気CAと蓄熱材HGとを熱交換させて、圧縮空気CAを冷却可能である。二次冷却器62cは、第一実施形態の四次冷却器67に対応し、一次冷却器61で冷却された圧縮空気CAと液体空気LAとを熱交換可能である。本実施形態の冷却装置63cは、以上の実施形態と異なり、膨張タービン65等を有していない。本実施形態の冷却装置63cは、液化ガスを貯蔵可能な液化ガスタンク70と、二次冷却器62cで冷却された圧縮空気CAと液化ガスとを熱交換可能な第一冷却熱交換器71と、第一冷却熱交換器71の液化ガス入口と液化ガスタンク70とを接続する液化ガスライン72と、液化ガスライン72中に設けられている液化ガスポンプ72p及び液化ガス調節弁72vと、を有する。
【0126】
第一冷却熱交換器71により冷却された圧縮空気CAは、液体空気LAになり、液体空気タンク53に送られる。なお、第一冷却熱交換器71と液体空気タンク53との間に、第一実施形態における膨張弁75及び気液分離タンク77を設けてもよい。
【0127】
本実施形態の加熱系80cは、液体空気タンク53からの液体空気LAを加熱して、気化空気VAを生成可能な第一加熱装置81と、第一加熱装置81からの気化空気VAを加熱可能な第二加熱装置88と、第二加熱装置88からの気化空気VAを加熱可能な第三加熱装置95と、を備える。
【0128】
第一加熱装置81は、液体空気LAと液体空気LAが気化した気化空気VAとを貯蔵可能な気液タンク82と、一次加熱器(第一加熱熱交換器)62cと、加熱用液体空気ライン83と、気化空気戻しライン86と、加熱用液体空気ポンプ84と、加熱用液体空気調節弁85と、を有する。
【0129】
加熱用液体空気ライン83は、気液タンク82の液体空気出口と一次加熱器62cの液体空気入口と、を接続する。この加熱用液体空気ライン83には、加熱用液体空気ポンプ84及び加熱用液体空気調節弁85が設けられている。気化空気戻しライン86は、一次加熱器62cの気化空気出口と気液タンク82の気化空気入口とを接続する。第一実施形態と同様、この第一加熱装置81により、液体空気LAを気化させる気化工程S4が実行される。
【0130】
一次加熱器(第一加熱熱交換器)62cは、圧縮空気CAと液体空気LAとを熱交換させる熱交換器で、前述の二次冷却器62cでもある。
【0131】
第二加熱装置88は、第一実施形態の第二加熱装置88と同じである。また、第三加熱装置95は、第一実施形態の第三加熱装置95と同じである。
【0132】
制御装置100の液化制御器103は、以上の各実施形態と同様、IGV開度θが第一開度θ1であるか第二開度θ2であるかを監視する。
【0133】
液化制御器103により、IGV開度θが第一開度θ1であると判断されると、第一実施形態と同様、抽気工程S2、液化工程S3、及び気化工程S4が実行される。但し、本実施形態の液化工程S3では、液化ガスタンク70内の液化ガスと抽気ライン51を流れてきた圧縮空気CAとを熱交換させて、圧縮空気CAを冷却する工程が含まれる。また、液化制御器103により、IGV開度θが第二開度θ2であると判断されると、第一実施形態と同様、気化工程S4で気化した空気の加熱工程S6が実行される。
【0134】
以上のように、本実施形態でも、IGV開度θが第一開度θ1である際には、中間ケーシング4内の圧縮空気CAを抽気して、ガスタービン出力を低下させ、IGV開度θが第二開度θ2である際には、圧縮機10の空気流路中に冷たい気化空気VAが流入させて、ガスタービン出力を増加させている。このため、本実施形態でも、ガスタービン出力調整を柔軟に実施でき、電力系統の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【0135】
本実施形態でも、液化工程S3において、気化工程S4で得られる低温熱エネルギーを利用して、圧縮空気CAを冷却している。また、本実施形態でも、気化工程S4において、液化工程S3で得られる高温熱エネルギーを利用して、液体空気LAを気化させている。このため、本実施形態でも、液化設備50c外から供給される熱エネルギーを少なくすることができる。
【0136】
なお、本実施形態において、圧縮空気CAを液化されるにあたり、この圧縮空気CAをさらに圧縮する必要がある場合には、第一実施形態のブースト圧縮機64を設けてもよい。
【0137】
また、本実施形態は、第一実施形態の変形例であるが、第二実施形態の冷却装置63や第三実施形態の冷却装置63を、本実施形態の冷却装置63cと同様に構成してもよい。
【0138】
「変形例」
第一実施形態において、液化設備50から中間ケーシング4内に戻し空気RAが供給されているときや、第二実施形態において、液化設備50aから圧縮機ケーシング14の空気流路中に戻し空気RAが供給されているとき、燃料制御器101は、以下の状態a,b,cを満たすことを条件にして、この戻し空気RAの流量に応じて、燃料流量を多くしてもよい。
a.燃焼器17内で燃料が安定燃焼する。
b.燃焼器17からの流出した燃焼ガス(排気ガス)がこの燃焼ガスに対する各種規制値を超えない。
c.高温部品の保護の観点から定められた燃焼ガスの許容最大温度を超えない。
【0139】
以上の実施形態では、液化工程S3中に、圧縮空気CAの冷却により得られた熱により液体空気LAを気化させる気化工程S4も実行する。しかしながら、圧縮空気CAと液体空気LAとを熱交換させない場合には、加熱工程S6と並行して気化工程S4を実行してもよい。
【0140】
以上の各実施形態の液化系は、複数の冷却器を備えているが、冷却器の数は、以上の各実施形態で例示した数に限定されない。また、以上の各実施形態の加熱系は、一以上の加熱器を備えているが、加熱器の数は、以上の実施形態で例示した数に限定されない。
【0141】
また、以上の各実施形態の液化系に、圧縮空気中のアルゴンを分離するアルゴン分離器を設けてもよい。例えば、
図8に示す液化系60dのように、気液分離タンク77よりも圧縮空気流れの上流側に、アルゴン分離器110を設けてもよい。
【0142】
このアルゴン分離器110は、深冷分離法で圧縮空気中からアルゴンを分離する。この深冷分離法は、圧縮空気を構成する複数の種のガス毎の沸点の違いを利用して、特定の種のガスを分離する方法である。例えば、酸素の沸点は-183℃で、アルゴンの沸点は-185.8℃で、窒素の沸点は-195.8℃である。
図8に示す例では、アルゴン分離器110が圧縮空気中から深冷分離によりアルゴンを分離する。すなわち、
図9に示すように、液化工程S3aは、アルゴン分離工程S3aaを含み、このアルゴン分離工程S3aaで、排気ガス中のアルゴンを深冷分離する。アルゴン分離器110で分離されたアルゴンは、例えば、アルゴン回収タンク111に送られる。また、アルゴンが除かれた圧縮空気は、さらに冷却されてから、膨張弁75を介して気液分離タンク77に送られる、又は、直接、膨張弁75を介して気液分離タンク77に送られる。ここでのアルゴンが除かれた圧縮空気の主成分は、窒素と酸素である。
【0143】
以上の各実施形態のガスタービンプラントは、ガスタービン1の駆動で発電するGT発電機38と蒸気タービン43の駆動で発電するST発電機48との二つの発電機を備える。しかしながら、ガスタービンプラントは、一つの発電機のみを備えてもよい。この場合、一つの発電機は、ガスタービン1の駆動でも蒸気タービン43の駆動でも発電可能である。
【0144】
以上の各実施形態のガスタービンプラントは、排熱利用設備40を備える。しかしながら、ガスタービンプラントは、排熱利用設備40を備えていなくてもよい。
【0145】
以上の各実施形態のガスタービンプラントは、完成プラントとしてのガスタービンプラントである。ところで、ガスタービンプラントが、以上の各実施形態における液化設備及び液化制御器を備えていない場合、以上の各実施形態における液化設備、及び液化制御器を追加する工程を実行して、このガスタービンプラントを改造してもよい。なお、以上の各実施形態のガスタービンプラントにおける制御装置100は、コンピュータであるため、ガスタービンプラントの改造で、液化制御器103を追加する場合には、コンピュータを液化制御器103として機能させるプログラムを、このコンピュータにインストールすればよい。
【0146】
「付記」
以上の実施形態及び変形例におけるガスタービンプラントは、例えば、以下のように把握される。
【0147】
(1)第一態様におけるガスタービンプラントは、
空気を圧縮可能な圧縮機10と、前記圧縮機10で圧縮された空気である圧縮空気CA中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成可能な燃焼器17と、前記燃焼ガスで駆動可能なタービン20と、を有するガスタービン1と、気体の空気を液化可能な液化設備50,50a,50b,50cと、前記液化設備50,50a,50b,50cを制御する液化制御器103と、を備える。前記圧縮機10は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータ11と、前記圧縮機ロータ11の外周を覆う圧縮機ケーシング14と、前記圧縮機ケーシング14の内周側に設けられている複数の静翼12vと、開閉動作することで、前記圧縮機ケーシング14内に流入する空気の流量である吸気量を調節可能な吸気量調節器15と、を有する。前記液化設備50,50a,50b,50cは、前記圧縮機10からの前記圧縮空気CAの一部を抽気可能な抽気ライン51と、前記抽気ライン51を流れる前記圧縮空気CAを液化可能な液化系60,60a,60cと、前記抽気ライン51を流れる前記圧縮空気CAの流量を調節可能な抽気量調節弁52と、前記液化系60,60a,60cで液化した前記圧縮空気CAである液体空気LAを貯蔵可能な液体空気タンク53と、前記液体空気タンク53内の前記液体空気LA又は前記液体空気LAが気化した気化空気VAである戻し空気RAを、前記ガスタービン1中で空気又は圧縮空気CAが流れる流路、又は前記ガスタービン1を構成する部品中で前記燃焼ガスに接触する高温部品に導くことが可能な戻し空気ライン54,54a,54aa,54bと、前記戻し空気ライン54,54a,54aa,54bを流れる前記戻し空気RAの流量を調節可能な戻し量調節弁57と、を有する。前記液化制御器103は、前記吸気量調節器15の開度が第一開度θ1のとき又は前記開度と相関性を有するパラメータが前記第一開度θ1に相当する値のときに、前記抽気量調節弁52を開けて、前記圧縮空気CAを前記液化系60,60a,60cに導かせ、前記吸気量調節器15の開度が前記第一開度θ1よりも大きな開度である第二開度θ2のとき又は前記パラメータが前記第二開度θ2に相当する値のときに、前記戻し量調節弁57を開けて、前記戻し空気RAを前記ガスタービン1に導かせる。前記第一開度θ1は、前記圧縮機ケーシング14内に流入する吸気量を、前記ガスタービン1の出力が定格出力のときの吸気量よりも少なくしているときの開度である。
【0148】
本態様では、吸気量をガスタービン1の出力が定格出力のときの吸気量より少なくしているときの第一開度θ1のとき、圧縮機10からの圧縮空気CAの一部が液化設備50,50a,50b,50cに抽気される。このため、この中間ケーシング4内から燃焼器17に流入する圧縮空気CAの流量が少なくなる。よって、本態様では、第一開度θ1のとき、圧縮機10からの圧縮空気CAが抽気していない場合よりも、燃焼器17で生成される燃焼ガスの流量が少なくなり、ガスタービン出力が低下する。
【0149】
また、本態様では、第一開度θ1よりも大きな開度である第二開度θ2のとき、液体空気タンク53内の液体空気LA又は液体空気LAが気化した空気である戻し空気RAが、ガスタービン1中で空気又は圧縮空気CAが流れる流路、又はガスタービン1を構成する部品中で燃焼ガスに接触する高温部品に導かれる。例えば、第二開度θ2のとき、戻し空気RAがガスタービン1中で空気又は圧縮空気CAが流れる流路に導かれる場合、戻し空気RAがこの流路に導かれない場合によりも、燃焼器17で生成される燃焼ガスの流量が多くなり、ガスタービン出力が増加する。また、第二開度θ2のとき、戻し空気RAがガスタービン1の高温部品に導かれる場合、戻し空気RAが高温部品に導かれない場合によりも、高温部品を冷却するための圧縮空気CAの流量が少なくなって、燃焼器17に流入する空気の流量が多くなり、ガスタービン出力が増加する。
【0150】
よって、本態様では、ガスタービン出力調整を柔軟に実施でき、電力系統の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【0151】
(2)第二態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記第一開度θ1は、前記圧縮機ケーシング14内に流入する吸気量を最も少なくすることができる最小開度minである。
【0152】
(3)第三態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様又は前記第二態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記第二開度θ2は、前記圧縮機ケーシング14内に流入する吸気量を最も多くすることができる最大開度maxである。
【0153】
(4)第四態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様から前記第三態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記液化系60,60aは、前記抽気ライン51からの前記圧縮空気CAを冷却可能な冷却装置63を備える。前記冷却装置63は、前記抽気ライン51からの前記圧縮空気CAをさらに圧縮して、高圧縮空気HCAを生成可能なブースト圧縮機64と、前記高圧縮空気HCAの一部を断熱膨張させて、低温低圧空気LLAを生成可能な膨張タービン65と、前記高圧縮空気HCAの他の一部と前記低温低圧空気LLAとを熱交換させて、前記高圧縮空気HCAを冷却可能な第一冷却熱交換器67と、を有する。
【0154】
(5)第五態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様から前記第三態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記液化系60cは、前記抽気ライン51からの前記圧縮空気CAを冷却可能な冷却装置63cを備える。前記冷却装置63cは、液化ガスを貯蔵可能な液化ガスタンク70と、前記抽気ライン51を流れる前記圧縮空気CAと前記液化ガスとを熱交換させて、前記圧縮空気CAを冷却可能な第一冷却熱交換器71と、を有する。
【0155】
(6)第六態様におけるガスタービンプラントは、
前記第四態様又は前記第五態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記液化設備50,50a,50b,50cは、前記液体空気タンク53からの前記液体空気LAを加熱する加熱系80,80a,80b,80cを備える。
【0156】
(7)第七態様におけるガスタービンプラントは、
前記第六態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記加熱系80,80a,80b,80cは、前記液体空気タンク53からの前記液体空気LAを加熱して、前記液体空気LAが気化した気化空気VAを生成可能な第一加熱装置81,81cを備える。
【0157】
(8)第八態様におけるガスタービンプラントは、
前記第七態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記第一加熱装置81,81cは、前記液体空気LA及び前記気化空気VAを貯蔵可能な気液タンク82と、前記気液タンク82内の前記液体空気LAと前記圧縮空気CAとを熱交換させて、前記液体空気LAを加熱して前記液体空気LAを前記気化空気VAとして前記気液タンク82内に戻す一方で、前記圧縮空気CAを冷却可能な第一加熱熱交換器67,62cと、を有する。前記液化系60,60a,60cは、前記圧縮空気CAを冷却可能な冷却熱交換器として前記第一加熱熱交換器67,62cを有する。
【0158】
本態様では、液化系60,60a,60cで圧縮空気CAを冷却する過程で、加熱系80,80a,80b,80cで液体空気LA又は気化空気VAを加熱する過程で得られる低温熱エネルギーを利用して、圧縮空気CAを冷却することができる。また、本態様では、加熱系80,80a,80b,80cで液体空気LA又は気化空気VAを加熱する過程で、液化系60,60a,60cで圧縮空気CAを冷却する過程で得られる高温熱エネルギーを利用して、液体空気LAや気化空気VAを加熱することができる。このため、本態様では、液化設備50,50a,50b,50c外から供給される熱エネルギーを少なくすることができる。
【0159】
(9)第九態様におけるガスタービンプラントは、
前記第四態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記液化設備50,50bは、前記液体空気タンク53からの前記液体空気LAを加熱する加熱系80,80bを備える。前記加熱系80,80bは、前記液体空気タンク53からの前記液体空気LAを加熱して、前記液体空気LAが気化した気化空気VAを生成可能な第一加熱装置81を備える。
前記第一加熱装置81は、前記液体空気LA及び前記気化空気VAを貯蔵可能な気液タンク82と、前記気液タンク82からの前記液体空気LAと、前記ブースト圧縮機64からの前記高圧縮空気HCAの前記他の一部とを熱交換させて、前記液体空気LAを加熱して前記液体空気LAを前記気化空気VAとして前記気液タンク82内に戻す一方で、前記高圧縮空気HCAの前記他の一部を冷却可能な第一加熱熱交換器67と、を有する。前記液化系60は、前記第一冷却熱交換器67として前記第一加熱熱交換器67を有する。前記第一冷却熱交換器67としての前記第一加熱熱交換器67は、前記気液タンク82からの前記液体空気LA及び前記膨張タービン65からの前記低温低圧空気LLAと、前記ブースト圧縮機64からの前記高圧縮空気HCAの前記他の一部と、を熱交換可能である。
【0160】
本態様では、液化系60で圧縮空気CAを冷却する過程で、加熱系80,80bで液体空気LA又は気化空気VAを加熱する過程で得られる低温熱エネルギーを利用して、圧縮空気CAを冷却することができる。また、本態様では、加熱系80,80bで液体空気LA又は気化空気VAを加熱する過程で、液化系60で圧縮空気CAを冷却する過程で得られる高温熱エネルギーを利用して、液体空気LAや気化空気VAを加熱することができる。このため、本態様では、液化設備50,50b外から供給される熱エネルギーを少なくすることができる。
【0161】
(10)第十態様におけるガスタービンプラントは、
前記第七態様から前記第九態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記加熱系80,80b,80cは、前記第一加熱装置81からの前記気化空気VAを加熱可能な第二加熱装置88を備える。
【0162】
(11)第十一態様におけるガスタービンプラントは、
前記第十態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記液化系60,60cは、前記冷却装置63,63cに至る前の前記圧縮空気CAと蓄熱材HGとを熱交換させて、前記蓄熱材HGを加熱可能である一方で、前記圧縮空気CAを冷却可能な第二冷却熱交換器61を有する。前記第二加熱装置88は、前記第二冷却熱交換器61で加熱された前記蓄熱材HGを貯蔵可能な蓄熱タンク89と、前記蓄熱タンク89からの前記蓄熱材HGと前記第一加熱装置81からの前記気化空気VAとを熱交換させて、前記気化空気VAを加熱可能である一方で、前記蓄熱材HGを冷却可能な第二加熱熱交換器91と、を有する。前記第二冷却熱交換器61は、前記冷却装置63に至る前の前記圧縮空気CAと前記第二加熱熱交換器91で冷却された前記蓄熱材HGとを熱交換可能である。
【0163】
本態様では、液化系60,60cで圧縮空気CAを冷却する過程で、加熱系80,80b,80cで気化空気VAを加熱する過程で得られる低温熱エネルギーを利用して、圧縮空気CAを冷却することができる。また、本態様では、加熱系80,80b,80cで気化空気VAを加熱する過程で、液化系60,60cで圧縮空気CAを冷却する過程で得られる高温熱エネルギーを利用して、液体空気LAや気化空気VAを加熱することができる。このため、本態様では、液化設備50,50b,50c外から供給される熱エネルギーを少なくすることができる。
【0164】
(12)第十二態様におけるガスタービンプラントは、
前記第十一態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記加熱系80,80cは、前記第二加熱装置88からの前記気化空気VAを加熱可能な第三加熱装置95を備える。
前記戻し空気ライン54は、前記第三加熱装置95で加熱された前記気化空気VAを前記戻し空気RAとして、前記ガスタービン1中で前記圧縮空気CAが流れる流路に導くことが可能である。
【0165】
本態様では、第一開度θ1よりも大きな開度である第二開度θ2のとき、ガスタービン1中で圧縮空気CAが流れる流路に導かれる戻し空気RAの温度を高めることができる。
このため、本態様では、戻し空気RAを第三加熱装置95で加熱しない場合によりも、燃焼器17に流入する空気の温度が高まり、ガスタービン出力が増加する。
【0166】
(13)第十三態様におけるガスタービンプラントは、
前記第十二態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記ガスタービン1から排気された燃焼ガスである排気ガスの熱を利用して蒸気を発生可能な排熱回収ボイラー41を備える。前記第三加熱装置95は、前記第二加熱装置88からの前記気化空気VAと前記排熱回収ボイラー41からの前記蒸気とを熱交換させて、前記気化空気VAを加熱可能な第三加熱熱交換器96を有する。
【0167】
本態様では、ガスタービンプラント内で得られた高温熱エネルギーを利用して、気化空気VAを加熱することができる。このため、本態様では、ガスタービンプラント外から供給される熱エネルギーを少なくすることができる。
【0168】
(14)第十四態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様から前記第十三態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記液化系60dは、前記液化系60dでの前記圧縮空気CAの液化過程で、前記圧縮空気CA中のアルゴンを深冷分離可能なアルゴン分離器110を有する。
【0169】
本態様では、圧縮空気CAの液化過程で、圧縮空気CAからアルゴンを分離することができる。
【0170】
(15)第十五四態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様から前記第十四態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記戻し空気ライン54は、前記戻し空気RAを前記ガスタービン1中で前記圧縮空気CAが流れる流路に導くことが可能である。
【0171】
本態様では、第一開度θ1よりも大きな開度である第二開度θ2のとき、戻し空気RAをガスタービン1中で圧縮空気CAが流れる流路に導くことができる。このため、本態様では、戻し空気RAがこの流路に導かれない場合によりも、燃焼器17で生成される燃焼ガスの流量が多くなり、ガスタービン出力が増加する。
【0172】
(16)第十六態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様から前記第十一態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記戻し空気ライン54a,54aaは、前記戻し空気RAを前記圧縮機ケーシング14内の空気が流れる空気流路中に導くことが可能である。
【0173】
本態様では、第一開度θ1よりも大きな開度である第二開度θ2のとき、戻し空気RAを圧縮機ケーシング14内の空気流路に導くことができる。このため、第二開度θ2のとき、空気流路中を流れる空気の平均温度が低下する。空気流路を流れる空気の体積流量が変わらなくても、空気流路を流れる空気の平均温度が低下すると、空気流路を流れる空気の質量流量が増加する。よって、本態様では、第二開度θ2のとき、圧縮機10の空気流路中に冷たい気化空気VAが流入しない場合よりも、燃焼器17で生成される燃焼ガスの質量流量が多くなり、ガスタービン出力が増加する。
【0174】
(17)第十七態様におけるガスタービンプラントは、
前記第十六態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記戻し空気ライン54は、前記戻し空気RAを、前記圧縮機ケーシング14内の前記空気流路中で前記吸気量調節器15により吸気量が調節される前の空気が流れる流路部分に導くことが可能である。
【0175】
(18)第十八態様におけるガスタービンプラントは、
前記第十六態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記圧縮機10の前記複数の静翼12vのうち、少なくとも一の静翼12vには、前記静翼12v内を通り、前記静翼12vの表面で開口している空気通路13が形成され、前記戻し空気ライン54aaは、前記戻し空気RAを前記静翼12v内の前記空気通路13中に導くことが可能である。
【0176】
(19)第十九態様におけるガスタービンプラントは、
前記第十八態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記戻し空気ライン54aaは、前記液体空気LAを前記戻し空気RAとして前記静翼12vの前記空気通路13中に導くことが可能である。
【0177】
(20)第二十態様におけるガスタービンプラントは、
前記第一態様から前記第九態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービンプラントにおいて、前記高温部品には、前記高温部品内を通り、前記高温部品で前記燃焼ガスに接する表面で開口している冷却空気通路23が形成されている。前記戻し空気ライン54bは、前記高温部品の前記冷却空気通路23に、前記戻し空気RAを導くことが可能である。
【0178】
本態様では、第一開度θ1よりも大きな開度である第二開度θ2のとき、戻し空気RAをガスタービン1の高温部品に導くことができる。このため、第二開度θ2のとき、戻し空気RAが高温部品に導かれない場合によりも、高温部品を冷却するための圧縮空気CAの流量が少なくなって、燃焼器17に流入する空気の流量が多くなり、ガスタービン出力が増加する。
【0179】
以上の実施形態及び変形例におけるガスタービンプラントの運転方法は、例えば、以下のように把握される。
【0180】
(21)第二十一態様におけるガスタービンプラントの運転方法は、以下のガスタービンプラントに適用される。
このガスタービンプラントは、ガスタービン1を備える。前記ガスタービン1は、空気を圧縮可能な圧縮機10と、前記圧縮機10で圧縮された空気である圧縮空気CA中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成可能な燃焼器17と、前記燃焼ガスで駆動可能なタービン20と、を有する。前記圧縮機10は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータ11と、前記圧縮機ロータ11の外周を覆う圧縮機ケーシング14と、前記圧縮機ケーシング14の内周側に設けられている複数の静翼12vと、開閉動作することで、前記圧縮機ケーシング14内に流入する空気の流量である吸気量を調節可能な吸気量調節器15と、を有する。
上記運転方法は、前記圧縮機10からの前記圧縮空気CAの一部を抽気する抽気工程S2と、前記抽気工程S2で抽気された前記圧縮空気CAを液化して液体空気LAを生成する液化工程S3と、前記液体空気LA又は前記液体空気LAが気化した気化空気VAである戻し空気RAを、前記ガスタービン1中で空気又は圧縮空気CAが流れる流路、又は前記ガスタービン1を構成する部品中で前記燃焼ガスに接触する高温部品に導く戻し工程S5と、を含む。前記吸気量調節器15の開度が第一開度θ1のとき又は前記開度と相関性を有するパラメータが前記第一開度θ1に相当する値のときに、前記抽気工程S2及び前記液化工程S3を実行する。前記吸気量調節器15の開度が前記第一開度θ1より大きな第二開度θ2のとき又は前記パラメータが前記第二開度θ2に相当する値のときに、前記戻し工程S5を実行する。前記第一開度θ1は、前記圧縮機ケーシング14内に流入する吸気量を、前記ガスタービン1の出力が定格出力のときの吸気量よりも少なくしているときの開度である。
【0181】
本態様の運転方法を実行することで、第一態様におけるガスタービンプラントと同様、ガスタービン出力調整を柔軟に実施でき、電力系統の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【0182】
(22)第二十二態様におけるガスタービンプラントの運転方法は、
前記第二十一態様おけるガスタービンプラントの運転方法において、前記第一開度θ1は、前記圧縮機ケーシング14内に流入する吸気量を最も少なくすることができる最小開度minである。
【0183】
(23)第二十三態様におけるガスタービンプラントの運転方法は、
前記第二十一態様又は前記第二十二態様におけるガスタービンプラントの運転方法において、前記第二開度θ2は、前記圧縮機ケーシング14内に流入する吸気量を最も多くすることができる最大開度maxである。
【0184】
(24)第二十四態様におけるガスタービンプラントの運転方法は、
前記第二十一態様から前記第二十三態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービンプラントの運転方法において、前記液化工程S3aは、前記圧縮空気CAの液化過程で、前記圧縮空気CA中のアルゴンを深冷分離するアルゴン分離工程S3aaを含む。
【0185】
本態様では、圧縮空気CAの液化過程で、圧縮空気CAからアルゴンを分離することができる。
【0186】
以上の実施形態及び変形例におけるガスタービンプラントの改造方法は、例えば、以下のように把握される。
【0187】
(25)第二十五三態様におけるガスタービンプラントの改造方法は、以下のガスタービンプラントに適用される。
このガスタービンプラントは、ガスタービン1を備える。前記ガスタービン1は、空気を圧縮可能な圧縮機10と、前記圧縮機10で圧縮された空気である圧縮空気CA中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成可能な燃焼器17と、前記燃焼ガスで駆動可能なタービン20と、を有する。前記圧縮機10は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータ11と、前記圧縮機ロータ11の外周を覆う圧縮機ケーシング14と、前記圧縮機ケーシング14の内周側に設けられている複数の静翼12vと、開閉動作することで、前記圧縮機ケーシング14内に流入する空気の流量である吸気量を調節可能な吸気量調節器15と、を有する。
上記改造方法は、気体の空気を液化可能な液化設備50,50a,50b,50cと、前記液化設備50を制御する液化制御器103と、を追加する工程を含む。前記工程で追加される前記液化設備50,50a,50b,50cは、前記圧縮機10からの前記圧縮空気CAの一部を抽気可能な抽気ライン51と、前記抽気ライン51を流れる前記圧縮空気CAを液化可能な液化系60,60a,60cと、前記液化系60,60a,60cで液化した前記圧縮空気CAである液体空気LAを貯蔵可能な液体空気タンク53と、前記抽気ライン51を流れる前記圧縮空気CAの流量を調節可能な抽気量調節弁52と、前記液体空気タンク53内の前記液体空気LA又は前記液体空気LAが気化した気化空気VAである戻し空気RAを、前記ガスタービン1中で空気又は圧縮空気CAが流れる流路、又は前記ガスタービン1を構成する部品中で前記燃焼ガスに接触する高温部品に導くことが可能な戻し空気ライン54,54a,54aa,54bと、前記戻し空気ライン54,54a,54aa,54bを流れる前記戻し空気RAの流量を調節可能な戻し量調節弁57と、を有する。前記工程で追加される前記液化制御器103は、前記吸気量調節器15の開度が第一開度θ1のとき又は前記開度と相関性を有するパラメータが前記第一開度θ1に相当する値のときに、前記抽気量調節弁52を開けて、前記圧縮空気CAを前記液化系60,60a,60cに導かせ、前記吸気量調節器15の開度が前記第一開度θ1よりも大きな開度である第二開度θ2のとき又は前記パラメータが前記第二開度θ2に相当する値のときに、前記戻し量調節弁57を開けて、前記戻し空気RAを前記ガスタービン1に導かせる。前記第一開度θ1は、前記圧縮機ケーシング14内に流入する吸気量を、前記ガスタービン1の出力が定格出力のときの吸気量よりも少なくしているときの開度である。
【0188】
本態様の改造方法により改造されたガスタービンプラントでは、第一態様におけるガスタービンプラントと同様、ガスタービン出力調整を柔軟に実施でき、電力系統の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【0189】
(26)第二十六態様におけるガスタービンプラントの改造方法は、
前記第二十五態様におけるガスタービンプラントの改造方法において、前記液化系60dは、前記液化系60dでの前記圧縮空気CAの液化過程で、前記圧縮空気CA中のアルゴンを深冷分離可能なアルゴン分離器110を有する。
【0190】
本態様では、圧縮空気CAの液化過程で、圧縮空気CAからアルゴンを分離することができる。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本開示の一態様では、ガスタービン出力調整を柔軟に実施でき、電力系統の負荷変動に柔軟に対応することができる。
【符号の説明】
【0192】
1:ガスタービン
2:ガスタービンロータ
3:ガスタービンケーシング
4:中間ケーシング
5:燃料ライン
6:燃料調節弁
10:圧縮機
11:圧縮機ロータ
11a:圧縮機ロータ軸
11t:動翼列
11b:動翼
12t:静翼列
12v:静翼
12f:前端
12r:後端
13:空気通路
14:圧縮機ケーシング
15:吸気量調節器(IGV)
15v:ガイドベーン
15d:駆動器
17:燃焼器
17c:燃焼筒(又は尾筒)
17n:燃料ノズル
20:タービン
21:タービンロータ
21a:タービンロータ軸
21ap:冷却空気通路
21t:動翼列
21b:動翼
22t:静翼列
22v:静翼
23:冷却空気通路
24:タービンケーシング
30:タービン冷却装置
31:冷却用抽気ライン
31v:冷却用抽気量調節弁
32:冷却器
33:冷却空気ライン
33m:主冷却空気ライン
33c:燃焼器冷却空気ライン
33b:動翼冷却空気ライン
33v:静翼冷却空気ライン
34:冷却空気調節弁
38:GT発電機
39:GT電力供給設備
39a:GT電力線
39b:GT遮断器
39t:GT変圧器
39m:GT電力計
40:排熱利用設備
41:排熱回収ボイラー
41d:ダクト
41t:伝熱管
42:煙突
43:蒸気タービン
44:主蒸気ライン
45:復水器
46:給水ライン
47:給水ポンプ
48:ST発電機
49:ST電力供給設備
49a:ST電力線
49b:ST遮断器
49t:ST変圧器
49m:ST電力計
50,50a,50b,50c:液化設備
51:抽気ライン
52:抽気量調節弁
53:液体空気タンク
54,54a,54b:戻し空気ライン
55,55a:液体空気ライン
56:液体空気ポンプ
57:戻し量調節弁
58,58a,58aa,58b:気化空気ライン
60,60a,60c,60d:液化系
61:一次冷却器(第二冷却熱交換器)
62:二次冷却器
62a:一次冷却器
62c:二次冷却器(第一加熱熱交換器)
63,63c:冷却装置
64:ブースト圧縮機
65:膨張タービン
66:三次冷却器
67:四次冷却器(第一冷却熱交換器)
68m:高圧縮空気主ライン
68b:高圧縮空気分岐ライン
68v:高圧縮空気調節弁
69m:低温低圧空気主ライン
69b:低温低圧空気分岐ライン
70:液化ガスタンク
71:第一冷却熱交換器
72:液化ガスライン
72p:液化ガスポンプ
72v:液化ガス調節弁
74:気液混合ライン
75:膨張弁
77:気液分離タンク
78:液体空気供給ライン
79:液体空気供給調節弁
80,80a,80b,80c:加熱系
81:第一加熱装置
82:気液タンク
62c:一次加熱器(第一加熱熱交換器)
67:一次加熱器(第一加熱熱交換器)
83:加熱用液体空気ライン
84:加熱用液体空気ポンプ
85:加熱用液体空気調節弁
86:気化空気戻しライン
88:第二加熱装置
89:蓄熱タンク
91:二次加熱器(第二加熱熱交換器)
92:蓄熱材供給ライン
92p:蓄熱材供給機
93:高温蓄熱材ライン
93v:蓄熱材調節弁
94:低温蓄熱材ライン
95:第三加熱装置
96:三次加熱器(第三加熱熱交換器)
97:分岐蒸気ライン
97v:分岐蒸気調節弁
100:制御装置
101:燃料制御器
102:IGV制御器
103:液化制御器
110:アルゴン分離器
111:アルゴン回収タンク
PS:電力系統
CA:圧縮空気
HCA:高圧縮空気
LLA:低温低圧空気
A:空気
RA:戻し空気
LA:液体空気
VA:気化空気
HG:蓄熱材
Ar:ロータ軸線
Da:軸線方向
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側