(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】遮断弁、および加圧タンクからの水素流を制御するための制御方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/124 20060101AFI20241220BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20241220BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20241220BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
F16K31/124
F02M21/02 G
F02D19/02 B
F16K31/06 385F
F02M21/02 301C
(21)【出願番号】P 2023580526
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 EP2022067232
(87)【国際公開番号】W WO2023285104
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】102021207320.4
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】シャイヒ,ウド
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ゾバリ,ヨアヒム
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-230808(JP,A)
【文献】特開2007-032751(JP,A)
【文献】特開2012-189103(JP,A)
【文献】米国特許第5469828(US,A)
【文献】特開2014-105755(JP,A)
【文献】特開2016-156485(JP,A)
【文献】特開2017-150627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 19/02
F02M 21/02
F16K 31/06
F16K 31/124
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ガス容器(109)からシステム側の室(111)への加圧ガス流をコントロールするための遮断弁(100)において、
前記遮断弁(100)は、
主弁(101)と、
サーボ弁(103)と、
コイル(105)と、
引張ばね(107)とを含み、
前記コイル(105)は、前記コイル(105)に電流が通電されたときに、前記サーボ弁(103)を第1のサーボ弁位置から第2のサーボ弁位置へと動かすためにコンフィグレーションされ、
前記サーボ弁(103)は、前記第1のサーボ弁位置にあるとき、前記遮断弁(100)の制御室(117)と前記システム側の室(109)との間で前記主弁(101)の制御通路(115)を気密に閉止し、
前記サーボ弁(103)は、前記第2のサーボ弁位置にあるとき、前記主弁(101)の前記制御通路(115)を解放して、前記サーボ弁(103)の上の前記制御室(117)の中に入り、
前記引張ばね(107)は前記サーボ弁(103)を前記主弁(101)と機械的に連結し、前記主弁(101)で引張力を提供して、前記サーボ弁(103)が前記第2のサーボ弁位置へと動いたときに、前記主弁(101)を第1の主弁位置から第2の主弁位置へと動かし、
前記主弁(101)は、前記第1の主弁位置にあるとき、前記加圧ガス容器(109)を前記システム側の室(111)と接続する主通路(123)を気密に閉止し、前記主弁(101)は前記第2の主弁位置にあるとき前記主通路(123)を解放する、遮断弁。
【請求項2】
前記制御室(117)は前記サーボ弁(103)の上に配置され、前記サーボ弁(103)は、前記制御室(117)を前記主弁(101)の前記制御通路(115)と接続する追加制御通路(119)を含み、それにより前記サーボ弁(103)は前記第2のサーボ弁位置へ動くときに前記制御室(117)の中へと動くことを特徴とする、請求項1に記載の遮断弁(100)。
【請求項3】
前記遮断弁(100)は前記第2の主弁位置にある前記主弁(101)を収容するための収容室(121)を含み、
前記収容室(121)は前記サーボ弁(103)と前記主弁(101)との間に配置され、前記追加制御通路(119)を前記制御通路(115)と流体導通接続することを特徴とする、請求項2に記載の遮断弁(100)。
【請求項4】
前記追加制御通路(119)の中に絞り個所が存在することを特徴とする、請求項
2または3に記載の遮断弁(100)。
【請求項5】
前記第2のサーボ弁位置への前記サーボ弁(103)の運動は、前記第2の主弁位置にある前記主弁(101)を収容するための前記収容室(121)の解放を惹起することを特徴とする、請求項3に記載の遮断弁(100)。
【請求項6】
前記主弁(101)はハウジング側のストローク制限部を有し、このストローク制限部は、主弁ストロークがサーボ弁ストロークよりも短くなり、前記サーボ弁(103)が完全に開いていて前記主弁(101)が完全に開いているときにサーボ弁座が空いたままに保たれ、前記制御通路(115)と、前記収容室(121)と、前記追加制御通路(119)と、前記制御室(117)との間の圧力補償を行えることを惹起することを特徴とする、請求項
3に記載の遮断弁(100)。
【請求項7】
前記サーボ弁または前記主弁の案内部を通じて前記加圧ガス容器からの前記制御室の空気圧式の分離が行われることを特徴とする、請求項1から
3までのいずれか1項に記載の遮断弁(100)。
【請求項8】
前記サーボ弁または前記主弁の案内領域での前記加圧ガス容器からの前記制御室の空気圧式の分離はたとえばOリング、シールリップ、またはダイヤフラムなどのシール部材によって行われることを特徴とする、請求項7に記載の遮断弁(100)。
【請求項9】
前記制御室と前記加圧ガス容器との間で空気圧式の絞りが行われる接続が存在することを特徴とする、請求項8に記載の遮断弁(100)。
【請求項10】
前記遮断弁(100)は、前記コイル(105)が無通電のときに前記サーボ弁(103)を前記第1のサーボ弁位置へ押圧するとともに前記主弁(101)を前記第1の主弁位置へ押圧するためにコンフィグレーションされた圧縮ばね(13)を含むことを特徴とする、請求項1から
3までのいずれか1項に記載の遮断弁(100)。
【請求項11】
前記サーボ弁(103)は前記引張ばね(107)の第1の対応連結部材と機械的に連結するための第1の連結部材を含み、
前記主弁(101)は前記引張ばね(107)の第2の対応連結部材と機械的に連結するための第2の連結部材を含むことを特徴とする、請求項1から
3までのいずれか1項に記載の遮断弁(100)。
【請求項12】
加圧タンク(300)からの加圧ガス流を遮断弁(100)によって制御するための制御方法において、
前記遮断弁(100)は、
主弁(101)と、
サーボ弁(103)と、
コイル(105)と、
引張ばね(107)とを含み、
前記制御方法は、
前記コイル(105)に電流が通電されて前記サーボ弁(103)を第1のサーボ弁位置から第2のサーボ弁位置へと動かし、それにより前記サーボ弁(103)が前記遮断弁(100)の制御室(117)とシステム側の室(111)との間で前記主弁(101)の制御通路(115)を解放し、前記制御室(117)の中にある加圧ガスが前記システム側の室(111)に流れ込む、前記遮断弁(100)を開くための開放ステップ(201)を含み、
前記引張ばね(107)が前記サーボ弁(103)を前記主弁(101)と機械的に連結し、引張力が前記主弁(101)で提供され、この引張力が前記主弁(101)を第1の主弁位置から第2の主弁位置へと動かして、加圧ガス容器(109)を前記システム側の室(111)と接続する主通路(123)が解放され、
前記コイル(105)が無通電に切り換えられ、それにより圧縮ばね(113)が前記サーボ弁(103)を前記第2のサーボ弁位置から前記第1のサーボ弁位置へと動かし、前記主弁(101)の前記制御通路(115)を前記サーボ弁(103)が気密に閉止し、前記主弁(101)が前記主通路(123)を気密に閉止する、前記遮断弁(100)の遮断をするための遮断ステップ(203)を含む、方法。
【請求項13】
請求項1から
3までのいずれか1項に記載の遮断弁(100)を有する加圧タンクシステム(300)。
【請求項14】
請求項13に記載の加圧タンクシステム(300)を有する車両(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断弁、および加圧タンクからの水素流を制御するための制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は燃料電池を、あるいはさらに内燃機関を、作動させるための動力源としてしばしば利用される。水素はきわめて爆発性が高いため、加圧タンクの中で安全に貯蔵しなければならない。加圧タンクからの水素流をコントロールするために、遮断弁が利用される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の枠内では、それぞれ独立請求項の構成要件を有する遮断弁、制御方法、加圧タンク、および車両が提案される。本発明のその他の構成要件や詳細は、それぞれの従属請求項、明細書、および図面から明らかとなる。その際に、本発明による遮断弁との関連で説明されている構成要件や詳細は、当然ながら、本発明による制御方法ないし本発明による加圧タンクおよび本発明による車両との関連でも有効であり、それぞれ逆も成り立つので、個々の発明態様についての開示に関しては常に相互に参照がなされ、ないしは参照をすることができる。
【0004】
提案される発明は、特に、加圧タンクからの水素流のロバストで信頼度の高いコントロールを可能にするための役目を果たす。
【0005】
すなわち提案される発明の第1の態様では、加圧ガス容器からシステム側の室への水素流をコントロールするための遮断弁が提案される。この遮断弁は、たとえばノズルニードルなどの主弁と、サーボ弁と、コイルと、引張ばねとを含む。
【0006】
コイルは、コイルに電流が通電されたときに、サーボ弁を第1のサーボ弁位置から第2のサーボ弁位置へと動かすためにコンフィグレーションされる。
【0007】
サーボ弁は、第1のサーボ弁位置にあるとき、遮断弁の制御室とシステム側の室との間で主弁の制御通路を気密に閉止する。
【0008】
サーボ弁は、第2のサーボ弁位置にあるときに主弁の制御通路を解放し、サーボ弁の上の制御室の中に入る。
【0009】
引張ばねはサーボ弁を主弁と機械的に連結し、主弁で引張力を提供して、サーボ弁が第2のサーボ弁位置へと動いたときに、主弁を第1の主弁位置から第2の主弁位置へと動かす。
【0010】
主弁は第1の主弁位置にあるとき、加圧ガス容器をシステム側の室と接続する主通路を気密に閉止し、第2の主弁位置にあるとき主通路を解放する。
【0011】
遮断弁とは、提案される発明のコンテキストにおいては、流体を通す経路を閉止および解放するための閉止弁であると理解される。
【0012】
引張ばねとは、提案される発明のコンテキストにおいては、撓んだときに引張力を提供し、撓んでいない位置ないし休止位置へ動こうとするばね部材、たとえば機械式のばねや弾性部材であると理解される。
【0013】
加圧ガス容器とは、提案される発明のコンテキストにおいては、水素が高圧で、特に最大1100バールの圧力で、貯蔵される室であると理解される。
システム側の室とは、提案される発明のコンテキストにおいては、遮断弁の下流側に配置され、通常、大気圧と加圧ガス容器内の貯蔵圧力との間の圧力を有することができる室であると理解される。
【0014】
提案される発明は2つの可動の弁を基礎としており、すなわち、水素流ないしガス流を、およびそれによって惹起される遮断弁における圧力推移を、調整するサーボ弁と、遮断弁からの、ないしは遮断弁を通る、水素流を調整する主弁とを基礎としている。
【0015】
本発明によると、たとえば遮断位置である第1の主弁位置と、たとえば解放位置である第2の主弁位置との間で主弁のロバストで高い信頼度の運動を可能にするために、サーボ弁と主弁が協同作用する。
【0016】
提案される遮断弁は、通常はたとえば燃料電池システムや内燃機関へ特にたとえば水素などの燃料を流体案内接続を介して供給することができるシステム側の室と、通常は加圧タンクである加圧ガス容器とを主通路を介して接続する。たとえば燃料電池システムまたは内燃機関での圧力レベルを適合化するために、これらは通常、減圧器を介してシステム側の室と接続される。主通路には遮断弁の主弁が可動に配置され、それにより、主弁が第1の主弁位置にあり、たとえば主通路の中へ突入し、ないしは主通路を気密に閉止したときに、加圧ガス容器からシステム側の室への水素ないしガスの流れを主弁が妨げ、ないしは遮断する。第2の主弁位置にあるとき、主弁は加圧ガス容器からシステム側の室への水素の流れを解放し、このことは、たとえば主通路に対して間隔をおく位置を通じて行われる。
【0017】
第1の主弁位置から第2の主弁位置への主弁の動きを可能にするために、提案される遮断弁は、遮断弁内部の圧力差によって生起される空気圧式の押圧力を、本発明に基づいて意図される引張ばねによって提供される機械的な力と組み合わせる。
【0018】
空気圧式の押圧力は、提案される遮断弁では制御室原理によって提供される。それが意味するのは、加圧ガス容器から主弁に対して作用する高圧に対抗する対抗圧力を調節するために制御室が利用されることである。それに応じて、加圧ガス容器から主弁に対して作用するのと同じ高圧が制御室で印加されていれば、これを動かそうとするいかなる力も主弁に作用しない。それが意味するのは、加圧ガス容器から主弁に対して作用する高圧よりも低い圧力が制御室で印加されると、これを動かそうとする力が主弁に作用するということであり、それにより、加圧ガス容器と制御室の間の圧力差に基づいて高圧が主弁を動かし、ないしは押圧力が主弁に対して作用する。
【0019】
加圧ガス容器と制御室の間の圧力差を制御するために、提案される遮断弁はサーボ弁を含んでいる。サーボ弁は、主弁の制御通路をサーボ弁が気密に閉止する第1のサーボ弁位置と、サーボ弁が制御通路を解放する第2のサーボ弁位置との間で可動である。
【0020】
加圧ガス容器からの水素の流出を遮断弁が妨げる基本位置にあるとき、加圧ガス容器で印加される高圧がサーボ弁に対して作用して制御通路の中へ、ないしはこれに向かって、サーボ弁を押圧し、それにより制御通路が気密に閉止される。
【0021】
加圧ガス容器からの水素の流出を解放するために、遮断弁のコイルが通電され、すなわち電気が供給され、それにより、サーボ弁を第2のサーボ弁位置に引き寄せる磁力が生成される。このときサーボ弁は、印加される高圧に基づき、当初は少しだけ持ち上げられ、ないしは、制御通路を水素によって貫流可能であるサーボ弁補助位置へと動き、それにより水素が制御室からシステム側の室へと流れ、制御室の圧力が低下する。低減された圧力に基づき、磁力がサーボ弁を第2のサーボ弁位置に引き寄せることができる。
【0022】
サーボ弁が第2のサーボ弁位置に動くと、サーボ弁の下にある、ないしはサーボ弁と主弁との間にある、収容室が解放されて、制御室を介してシステム側の室へと流れ出る水素によって収容室の圧力が最小になったとき、収容室の中へと主弁が動くことができる。
【0023】
第1の主弁位置から第2の主弁位置への、ないしは収容室の中への、主弁の運動をサポートするために、ないしは、すでに圧力差が小さいときに、かつ相応に迅速に可能にするために、サーボ弁が第2のサーボ弁位置へと動いたとき、本発明に基づいて意図される引張ばねが引張力を主弁で提供する。それに応じて引張力は、加圧ガス容器によって主弁に対して作用する空気圧式の押圧力とともに、ないしはこれに加算されて、作用する。
【0024】
遮断弁の閉止ないし遮断をするためにコイルへの通電が中断され、それにより、圧縮ばねから提供される押圧力がサーボ弁を第1のサーボ弁位置へと押圧し、サーボ弁が制御通路を気密に閉止し、制御室で高圧が生成され、この高圧がサーボ弁を主弁に向かって押圧して、主弁を主通路の中へ、ないし第1の主弁位置へと押圧する。
【0025】
制御室がサーボ弁の上に配置され、サーボ弁は、制御室を主弁の制御通路と接続する追加制御通路を含むことが意図されていてよく、それによりサーボ弁は、第2のサーボ弁位置へと動くときに制御室の中へと動く。
【0026】
サーボ弁の上に配置される制御室により、サーボ弁に対して作用する圧力を調整し、それに応じてサーボ弁の動きをコントロールすることができる。加圧ガス容器に比べて低減された圧力が中で生じ得る制御室により、加算的に作用する力によって、すなわちコイルにより提供される磁力と、圧力差により提供される空気圧式の押圧力とによって、サーボ弁を高い信頼度で迅速に動かすことが可能である。そのために追加制御通路は、制御室からサーボ弁と制御通路を通してシステム側の室への水素の流出を可能にする。
【0027】
さらに、遮断弁は第2の主弁位置にある主弁を収容するための収容室を含むことが意図されていてよく、収容室はサーボ弁と主弁との間に配置され、追加制御通路を制御通路と流体導通接続する。
【0028】
1つの好ましい実施形態では、サーボ弁の開放運動を抑制ないし低速化し、そのようにして、ストロークストッパに当たってはね返るのを防止するためにコンフィグレーションされる絞り個所が追加制御通路に設けられる。
【0029】
さらに、第2のサーボ弁位置へのサーボ弁の運動は、第2の主弁位置にある主弁を収容するための収容室の解放を惹起することが意図されていてよい。
【0030】
第1のサーボ弁位置ではサーボ弁によってブロックされる、第2の主弁位置にある主弁を収容するための収容室により、最初にサーボ弁が第1のサーボ弁位置から第2のサーボ弁位置へ、それに続いて主弁が第1の主弁位置から第2の主弁位置へ、連続して運動することが保証される。
【0031】
主弁はハウジング側のストローク制限部を有し、主弁ストロークがサーボ弁ストロークよりも短くなり、サーボ弁(103)が完全に開いていて主弁が完全に開いているときにサーボ弁座が空いたままに保たれ、制御通路と、収容室と、追加制御通路と、制御室との間の圧力補償を行えるようになっていることが意図されていてよい。
【0032】
サーボ弁とハウジングとの間の、ないしは主弁とサーボ弁との間の案内部を通じて、加圧ガス容器からの制御室の空気圧式の分離が行われることが意図されていてよい。
【0033】
その代替として空気圧式の分離は、別の好ましい実施形態では、案内部の内部または表面にある、たとえばOリング、シールリップ、ダイヤフラムなど通常のシール部材によって行うこともでき、このことは制御室での大幅な圧力低下、およびそれによるサーボ弁と主弁での特別に大きな開放力の作用を可能にする。このケースにおいて閉止プロセスで磁気的な力作用が停止した後、それにもかかわらず確実な閉止を保証するためには、制御室と加圧ガス容器との間で空気圧式の絞りが行われる代替的な接続が存在していなければならないが、そのような接続は、案内部とは対照的に製造工学的に特別に簡易に、たとえば追加制御穴と高圧領域との間で引張ばねの高さにある径方向の絞り穴を通じて行うことができ、または、たとえば収容室と高圧領域との間で径方向に主弁で行うことができ、あるいは、高圧領域と制御室との間でハウジングに絞り穴が設けられていてもよい。
【0034】
さらに遮断弁は、コイルが無通電のときにサーボ弁を第1のサーボ弁位置へ押圧するとともに主弁を第1の主弁位置へ押圧するためにコンフィグレーションされた圧縮ばねを含むことが意図されていてよい。
【0035】
圧縮ばねは、遮断弁への電気供給に不具合が生じたケースでも、遮断弁の確実で信頼度の高い遮断を可能にする。
【0036】
さらに、サーボ弁は引張ばねの第1の対応連結部材と機械的に連結するための第1の連結部材を含み、主弁は引張ばねの第2の対応連結部材と機械的に連結するための第2の連結部材を含むことが意図されていてよい。
たとえばフックとアイレットなどの連結部材と対応連結部材により、サーボ弁、引張ばね、および主弁の確実な結合を実現することができ、それにより、サーボ弁が第1のサーボ弁位置から第2のサーボ弁位置へ動くときに、サーボ弁から主弁への力の流れが保証される。
【0037】
第2の態様において本発明は、加圧タンクからの水素流を遮断弁によって制御するための制御方法に関し、遮断弁は主弁と、サーボ弁と、コイルと、引張ばねとを含む。この制御方法は、コイルに電流が通電されてサーボ弁を第1のサーボ弁位置から第2のサーボ弁位置へと動かし、それによりサーボ弁が遮断弁の制御室とシステム側の室との間で主弁の制御通路を解放し、制御室の中にある水素がシステム側の室に流れ込む、遮断弁を開くための開放ステップを含み、引張ばねがサーボ弁を主弁と機械的に連結し、引張力が主弁で提供され、この引張力が主弁を第1の主弁位置から第2の主弁位置へと動かして、加圧ガス容器をシステム側の室と接続する主通路が解放される。さらにこの制御方法は、コイルが無通電に切り換えられ、それにより圧縮ばねがサーボ弁を第2のサーボ弁位置から第1のサーボ弁位置へと動かし、主弁の制御通路をサーボ弁が気密に閉止し、主弁が主通路を気密に閉止する、遮断弁の遮断をするための遮断ステップを含む。
【0038】
提案される制御方法は、特に、提案される遮断弁を作動させるための役目を果たす。
【0039】
第3の態様において提案される発明は、提案される遮断弁の考えられる実施形態を有する加圧タンクシステムに関する。
【0040】
第4の態様において提案される発明は、提案される加圧タンクシステムの考えられる実施形態を有する車両に関する。
【0041】
本発明のその他の利点、構成要件、および具体的事項は、図面を参照しながら本発明の実施例が具体的に説明される以下の説明から明らかとなる。その際に、特許請求の範囲と明細書で言及されている各構成要件は、それぞれ単独で、または任意の組み合せとして、発明の要部となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1a】提案される遮断弁の考えられる実施形態を有する、提案される制御方法の考えられる実施形態の進行手順である。
【
図1b】提案される遮断弁の考えられる実施形態を有する、提案される制御方法の考えられる実施形態の進行手順である。
【
図1c】提案される遮断弁の考えられる実施形態を有する、提案される制御方法の考えられる実施形態の進行手順である。
【
図1d】提案される遮断弁の考えられる実施形態を有する、提案される制御方法の考えられる実施形態の進行手順である。
【
図1e】提案される遮断弁の考えられる実施形態を有する、提案される制御方法の考えられる実施形態の進行手順である。
【
図1f】提案される遮断弁の考えられる実施形態を有する、提案される制御方法の考えられる実施形態の進行手順である。
【
図2】提案される加圧タンクシステムの考えられる実施形態を有する、提案される車両の考えられる実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1aには遮断弁100が示されている。遮断弁100は、主弁101と、サーボ弁103と、コイル105と、引張ばね107とを含んでいる。
【0044】
図1aでは遮断弁100は、加圧ガス容器109からシステム側の室111への水素の流出が主弁101によって妨げられ、ないしは遮断される遮断状態で示されている。
【0045】
遮断弁100を開くための開放ステップ201で、コイル105が通電され、それにより磁力が提供され、この磁力が
図1bに示すようにサーボ弁103を圧縮ばね113のばね力に抗して、主弁101の制御通路115が解放される偏向した位置ないしサーボ弁補助位置へと動かす。
【0046】
制御通路115が解放されることで、
図1cに示唆するように、水素ないしガスが制御室117から追加制御通路119および制御通路115を介してシステム側の室111へと流れる。このとき制御通路115と追加制御通路119はそれぞれ絞りとして作用する。それに応じて制御室117の圧力が低下していき、それにより、コイル105によって提供される磁力がサーボ弁103を
図1dに示す第2のサーボ弁位置へと動かす。
【0047】
さらに、たとえば高圧領域109とシステム側の領域111の圧力レベルが同一または類似している場合、すなわち、制御室原理によって主弁に補助的な空気圧式の開放力が存在していない、もしくはわずかしか存在していない動作状態のとき、その際にサーボ弁からばねを介して主弁へと伝達される純粋な電磁力によっても、主弁101を開くことができることが意図されていてよい。
【0048】
サーボ弁103は引張ばね107を介して主弁101と機械的に連結されており、それにより、サーボ弁103が第1のサーボ弁位置から第2のサーボ弁へと動くときに引張ばね107が撓み、引張ばね107によって提供される引張力が主弁101へと徐々に伝達されて、
図1cに示す第1の主弁位置から
図1dに示す第2の主弁位置へと主弁101を動かす。
【0049】
図1dでは、サーボ弁103が完全に偏向して制御室117の中に入る第2のサーボ弁位置で、サーボ弁103が示されている。それに応じて、引張ばね107によって主弁101に対する最大の引張力が、収容室121と加圧ガス容器109との間の圧力差に基づいて主弁101に印加される押圧力と加算的に協同作用して、
図1eに示すように、主弁101を第2の主弁位置へと動かす。
【0050】
主弁101が第2の主弁位置にくるとただちに、システム側の室111と加圧ガス容器109を接続するための主通路123が解放され、それにより、水素ないしガスが加圧ガス容器109からシステム側の室111へと流れることができる。
【0051】
遮断ステップ203で主通路123を遮断するために、
図1fに示すようにコイル105が無通電に切り換えられ、それにより、圧縮ばね113がサーボ弁103を第2のサーボ弁位置から主弁の方向に閉止運動させる。サーボ弁が主弁に接触するとただちに制御通路115が閉止され、サーボ弁座を介して機械的な力が主弁に及ぼされる。さらに、絞り間隙を介しての充填に基づいて制御室の圧力が再び上昇する。サーボ弁座を介して主弁に対する閉止力を機械的に及ぼす圧縮ばね113と、制御室の同時の充填との組み合せが、サーボ弁と主弁とからなる複合体の共通の閉止運動につながる。
【0052】
図2には車両200が示されている。車両200は、
図1の遮断弁100を有する加圧タンクシステムを含んでいる。
【符号の説明】
【0053】
100 遮断弁
101 主弁
103 サーボ弁
105 コイル
107 引張ばね
109 加圧ガス容器
111 システム側の室
113 圧縮ばね
115 制御通路
117 制御室
119 追加制御通路
121 収容室
123 主通路
200 車両
300 加圧タンク、加圧タンクシステム