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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】屋根の排水構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/064 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
E04D13/064 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024004638
(22)【出願日】2024-01-16
【審査請求日】2024-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】田室 稔
(72)【発明者】
【氏名】鳥巣 真佐己
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-209627(JP,A)
【文献】実用新案登録第2530034(JP,Y2)
【文献】特開平09-310455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04 - 13/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形の水上側金属板屋根と該水上側金属板屋根と同一形状で且つ屋根傾斜方向に所定間隔の隙間部を設けた水下側金属板屋根とからなる金属板屋根とで既設屋根上に被覆され、軒樋又は谷樋を備えた屋根において、
前記水上側金属板屋根の水下側端部と屋根傾斜方向で対向する前記水下側金属板屋根の水上側端部とは前記金属板屋根の幅方向に水平状に横切る方向に配置され、
前記水上側金属板屋根と同一断面形状の雨水ガイドにて前述の水平状に横切る方向の前記隙間部箇所の上面を覆うようにして構成され、前記雨水ガイドの傾斜度は前記水上側金属板屋根の傾斜角度より緩傾斜となるように形成されてなると共に、前記雨水ガイドの水下側端は、該雨水ガイドの幅方向に斜めに横切るように形成されてなり、
中間樋は、雨水受け立上り部と底部と水上側取付部とで断面変形U字状であって、この長手方向に対して同等幅になるように形成され、前記中間樋の前記雨水ガイドの先端箇所下側で且つ該雨水ガイドの先端の傾斜に沿って前記水下側金属板屋根上に載置され、前記中間樋の傾斜方向下位の端末が前記金属板屋根の側端まで設けられ、
前記水下側金属板屋根の屋根傾斜方向を向く山形状補強材が前記水下側金属板屋根の幅方向に所定間隔をおいて前記水下側金属板屋根に固定され、前記中間樋の前記水上側取付部上に前記雨水ガイドの下端寄りが載置されつつ前記水下側金属板屋根に固定された該水下側金属板屋根の幅方向に設けられた樋下地部材に固着され、該樋下地部材は前記山形状補強材にも固着されてなり、前記中間樋の前記雨水受け立上り部を外面から支持する樋固定材の下端は前記水下側金属板屋根上で且つ前記山形状補強材に固着され、
前記雨水ガイドから前記中間樋に流入した雨水は、該中間樋の端末から排水されるように構成されてなることを特徴とする屋根の排水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイドの幅方向に斜めに横切るように形成された前記雨水ガイドの水下側端は、前述した斜め方向に合致するように水平辺と垂直辺とで階段状端部とされてなることを特徴とする屋根の排水構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイドは雨水ガイド体からなり、前記雨水ガイドの上端箇所は前記水上側金属板屋根の下端箇所の下方側に重合状態で取り付けられてなることを特徴とする屋根の排水構造。
【請求項4】
請求項3に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイド体の緩傾斜部を凹凸によるジグザグ部を介して形成されてなることを特徴とする屋根の排水構造。
【請求項5】
請求項3に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイド体の緩傾斜部を前記雨水ガイド体の水下側を上方に向かうように反らせて形成されてなることを特徴とする屋根の排水構造。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の屋根の排水構造において、前記水上側金属板屋根はその下端と前記雨水ガイドである雨水ガイド部とが一体化した構造とされてなることを特徴とする屋根の排水構造。
【請求項7】
請求項6に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイド部の緩傾斜部を凹凸によるジグザグ部を介して形成されてなることを特徴とする屋根の排水構造。
【請求項8】
請求項6に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイド部の緩傾斜部を前記雨水ガイド部の水下側を上方に向かうように反らせて形成されてなることを特徴とする屋根の排水構造。
【請求項9】
波形の水上側金属板屋根と該水上側金属板屋根と同一形状で且つ屋根傾斜方向に所定間隔の隙間部を設けた水下側金属板屋根とからなる金属板屋根とで既設屋根上に被覆され、軒樋又は谷樋を備えた屋根において、
前記水上側金属板屋根の水下側端部と屋根傾斜方向で対向する前記水下側金属板屋根の水上側端部とは前記金属板屋根の幅方向に水平状に横切る方向に載置され、
前記水上側金属板屋根と同一断面形状の雨水ガイドにて前述の水平状に横切る方向の前記隙間部箇所の上面を覆うようにして構成され、前記雨水ガイドの傾斜度は前記水上側金属板屋根の傾斜角度より緩傾斜となるように形成されてなり、
中間樋は、雨水受け立上り部と底部と水上側取付部とで断面変形U字状であって、この長手方向に対して平面的にみて前記水上側取付部は水平状をなし、且つ前記雨水受け立上り部は傾斜状になして構成され、前記中間樋の前記雨水受け立上り部が屋根水下側とされつつ且つ前記水上側取付部が水下側金属板屋根の幅方向に水平状に載置され、前記中間樋の前記雨水受け立上り部の傾斜方向下位の端末が前記金属板屋根の側端まで設けられ、
前記水下側金属板屋根の屋根傾斜方向を向く山形状補強材が前記水下側金属板屋根の幅方向に所定間隔をおいて前記水下側金属板屋根に固定され、前記中間樋の前記水上側取付部上に前記雨水ガイドの下端寄りが載置されつつ前記水下側金属板屋根に固定された該水下側金属板屋根の幅方向に設けられた樋下地部材に固着され、該樋下地部材は前記山形状補強材にも固着されてなり、
前記中間樋の前記雨水受け立上り部を外面から支持する樋固定材の下端は前記水下側金属板屋根上で且つ前記山形状補強材に固着され、
前記雨水ガイドから前記中間樋に流入した雨水は、該中間樋の端末から排水されるように構成されてなることを特徴とする屋根の排水構造。
【請求項10】
請求項9に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイドの幅方向に斜めに横切るように形成された前記雨水ガイドの水下側端は、前述した斜め方向に合致するように水平辺と垂直辺とで階段状端部とされてなることを特徴とする屋根の排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水の排水性に優れ且つ施工が簡単である屋根の排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
大型建築物(倉庫又は工場等)には屋根として波形状のスレートが多く使用されている。このスレート屋根のスレート板屋根材の老朽化に伴い、屋根の改修を行わなくてはならない。その改修工事において、近年では、既設の屋根はそのままとし、この既設屋根の上に新設屋根を施工することが多くなっている。
【0003】
つまり、既設屋根がそのまま残るので、改修工事中においても建築物の室内を使用し続けることができる。例えば、建築物が工場であれば、改修作業がおこなわれている間でも、室内では作業員が作業を続けることができる。同様に建築物が倉庫であれば、改修作業中であっても、品物を収容しておくことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-209627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改修屋根において、その屋根面積が大きい場合では、雨水が当たる面積が大きくなり、そのため大雨が集中的にかかると、屋根の勾配により水上側から水下側に流れる雨による水量も大量となり、軒樋では、雨量の許容量を超えてしまい軒樋から雨水があふれ出だし、これによって建築物の壁面等に大量の水分がかかり、このようなことが長期に渡ることで、建築物を劣化させる原因となる。
【0006】
このような事態を防止するために、特許文献1(特開2010-209627号公報)が存在する。この特許文献1によって、屋根に補助樋が設けられ雨水の排水が軒先樋と共に、良好に排水することができるようになっている。しかしながら、特許文献1に開示された発明に対してさらに改善すべき点が見出された。そこで、本発明が解決しようとする目的は、さらに良好なる改修屋根における屋根の排水構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで発明者は、前記課題を解決すべく鋭意、研究を重ねた結果、請求項1の発明を、波形の水上側金属板屋根と該水上側金属板屋根と同一形状で且つ屋根傾斜方向に所定間隔の隙間部を設けた水下側金属板屋根とからなる金属板屋根とで既設屋根上に被覆され、軒樋又は谷樋を備えた屋根において、前記水上側金属板屋根の水下側端部と屋根傾斜方向で対向する前記水下側金属板屋根の水上側端部とは前記金属板屋根の幅方向に水平状に横切る方向に配置され、前記水上側金属板屋根と同一断面形状の雨水ガイドにて前述の水平状に横切る方向の前記隙間部箇所の上面を覆うようにして構成され、前記雨水ガイドの傾斜度は前記水上側金属板屋根の傾斜角度より緩傾斜となるように形成されてなると共に、前記雨水ガイドの水下側端は、該雨水ガイドの幅方向に斜めに横切るように形成されてなり、中間樋は、雨水受け立上り部と底部と水上側取付部とで断面変形U字状であって、この長手方向に対して同等幅になるように形成され、前記中間樋の前記雨水ガイドの先端箇所下側で且つ該雨水ガイドの先端の傾斜に沿って前記水下側金属板屋根上に載置され、前記中間樋の傾斜方向下位の端末が前記金属板屋根の側端まで設けられ、前記水下側金属板屋根の屋根傾斜方向を向く山形状補強材が前記水下側金属板屋根の幅方向に所定間隔をおいて前記水下側金属板屋根に固定され、前記中間樋の前記水上側取付部上に前記雨水ガイドの下端寄りが載置されつつ前記水下側金属板屋根に固定された該水下側金属板屋根の幅方向に設けられた樋下地部材に固着され、該樋下地部材は前記山形状補強材にも固着されてなり、前記中間樋の前記雨水受け立上り部を外面から支持する樋固定材の下端は前記水下側金属板屋根上で且つ前記山形状補強材に固着され、前記雨水ガイドから前記中間樋に流入した雨水は、該中間樋の端末から排水されるように構成されてなることを特徴とする屋根の排水構造としたことにより、上記課題を解決した。
【0008】
請求項2の発明を、請求項1に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイドの幅方向に斜めに横切るように形成された前記雨水ガイドの水下側端は、前述した斜め方向に合致するように水平辺と垂直辺とで階段状端部とされてなることを特徴とする屋根の排水構造としたことにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項3の発明を、請求項1又は2に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイドは雨水ガイド体からなり、前記雨水ガイドの上端箇所は前記水上側金属板屋根の下端箇所の下方側に重合状態で取り付けられてなることを特徴とする屋根の排水構造としたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項4の発明を、請求項3に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイド体の緩傾斜部を凹凸によるジグザグ部を介して形成されてなることを特徴とする屋根の排水構造としたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項3に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイド体の緩傾斜部を前記雨水ガイド体の水下側を上方に向かうように反らせて形成されてなることを特徴とする屋根の排水構造としたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項6の発明を、請求項1又は2に記載の屋根の排水構造において、前記水上側金属板屋根はその下端と前記雨水ガイドである雨水ガイド部とが一体化した構造とされてなることを特徴とする屋根の排水構造としたことにより、上記課題を解決した。請求項7の発明を、請求項6に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイド部の緩傾斜部を凹凸によるジグザグ部を介して形成されてなることを特徴とする屋根の排水構造としたことにより、上記課題を解決した。請求項8の発明を、請求項6に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイド部の緩傾斜部を前記雨水ガイド部の水下側を上方に向かうように反らせて形成されてなることを特徴とする屋根の排水構造としたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項9の発明を、波形の水上側金属板屋根と該水上側金属板屋根と同一形状で且つ屋根傾斜方向に所定間隔の隙間部を設けた水下側金属板屋根とからなる金属板屋根とで既設屋根上に被覆され、軒樋又は谷樋を備えた屋根において、前記水上側金属板屋根の水下側端部と屋根傾斜方向で対向する前記水下側金属板屋根の水上側端部とは前記金属板屋根の幅方向に水平状に横切る方向に載置され、前記水上側金属板屋根と同一断面形状の雨水ガイドにて前述の水平状に横切る方向の前記隙間部箇所の上面を覆うようにして構成され、前記雨水ガイドの傾斜度は前記水上側金属板屋根の傾斜角度より緩傾斜となるように形成されてなり、中間樋は、雨水受け立上り部と底部と水上側取付部とで断面変形U字状であって、この長手方向に対して平面的にみて前記水上側取付部は水平状をなし、且つ前記雨水受け立上り部は傾斜状になして構成され、前記中間樋の前記雨水受け立上り部が屋根水下側とされつつ且つ前記水上側取付部が水下側金属板屋根の幅方向に水平状に載置され、前記中間樋の前記雨水受け立上り部の傾斜方向下位の端末が前記金属板屋根の側端まで設けられ、前記水下側金属板屋根の屋根傾斜方向を向く山形状補強材が前記水下側金属板屋根の幅方向に所定間隔をおいて前記水下側金属板屋根に固定され、前記中間樋の前記水上側取付部上に前記雨水ガイドの下端寄りが載置されつつ前記水下側金属板屋根に固定された該水下側金属板屋根の幅方向に設けられた樋下地部材に固着され、該樋下地部材は前記山形状補強材にも固着されてなり、前記中間樋の前記雨水受け立上り部を外面から支持する樋固定材の下端は前記水下側金属板屋根上で且つ前記山形状補強材に固着され、前記雨水ガイドから前記中間樋に流入した雨水は、該中間樋の端末から排水されるように構成されてなることを特徴とする屋根の排水構造としたことにより、上記課題を解決した。
【0013】
請求項10の発明を、請求項9に記載の屋根の排水構造において、前記雨水ガイドの幅方向に斜めに横切るように形成された前記雨水ガイドの水下側端は、前述した斜め方向に合致するように水平辺と垂直辺とで階段状端部とされてなることを特徴とする屋根の排水構造としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、中間樋の水上側箇所を覆う雨水ガイドの水上側箇所を水上側金属板屋根が覆うように配置された構成により、水上側金属板屋根を流れる雨水が、そのまま水上側金属板屋根の裏面に漏れることなく、雨水ガイドに移り、雨水ガイドが確実に流下する雨水を受け取り、そのまま中間樋に雨水を流出させることができる。さらに、雨水ガイドの水上側端部の上方に水上側金属板屋根の水下側端部が位置するものであり、雨水と共流下するゴミや枯れ葉等が円滑に雨水ガイドに移り、水上側金属板屋根及び雨水ガイドの裏面側を汚すことも防止することができる。
【0015】
さらに、水上側金属板屋根の水下側端部と、水下側金属板屋根の水上側端部との間に隙間部が設けられることで、金属板屋根の重量を減減らすことで、雨水ガイドとの重量と相殺することができ、雨水ガイドによる重量の増加を抑えることができる。さらに、水上側金属板屋根と水下側金属板屋根との間に隙間部が存在することで、水上側金属板屋根と水下側金属板屋根との間に連続性はなく、水上側金属板屋根又は水下側金属板屋根の何れからでも施工することができる。
【0016】
水上側金属板屋根の水下側端部と、屋根傾斜方向で対向する前記水下側金属板屋根の水上側端部とは、前記金属板屋根の幅方向に水平状に横切る方向に配置されることにより、水上側金属板屋根及び水下側金属板屋根の施工が行い易いものにできる。また、雨水ガイドの水下側端は、該雨水ガイドの幅方向に斜めに横切るように形成されてなり、中間樋は、雨水受け立上り部と底部と水上側取付部とで断面変形U字状であって、この長手方向に対して同等幅になるように形成されたものであり、中間樋の形状及び構造を簡単なものにすることができる。
【0017】
そして、中間樋は、雨水ガイドの先端箇所下側(水下側端)で且つ該雨水ガイドの先端(水下側端)の傾斜に沿って前記水下側金属板屋根上に載置される構成によって、雨水ガイドから流下する雨水が中間樋に確実に流入することができ、傾斜状態に配置された中間樋は、傾斜上方から傾斜下方にわたって雨水が流れ、屋根の幅方向(Y方向)端部から排水することができる。そして、中間樋は、その長手方向(X方向)に直交する断面形状が何れの位置においても同一形状で且つ幅が一定であり、水下側金属板屋根上に極めて設置し易いものである。
【0018】
請求項2の発明では、雨水ガイドの幅方向に斜めに横切るように形成された前記雨水ガイドの水下側端は、前述した斜め方向に合致するように水平辺と垂直辺とで階段状端部とされる構成により、雨水ガイドの水下側端の形状を階段状により、略傾斜辺状にすることが極めて容易にできる。
【0019】
請求項3の発明では、水上側金属板屋根と、雨水ガイドを構成する雨水ガイド体とは、異なる別部材同士である。そして、雨水ガイドを構成する雨水ガイド体の上端箇所は、水上側金属板屋根の下端箇所の下方側(裏面側)に重合状態で取り付けられなることにより、水上側金属板屋根を流下する雨水は、水上側金属板屋根の下方に位置する既設屋根側に漏れることなく、そのまま雨水ガイド体に流れ込むことができる。そして、雨水の水上側金属板屋根から雨水ガイド体へ良好に雨水が流れそのまま、中間樋に雨水を送り込むことができ、極めて良好な雨水の排出ができる。
【0020】
請求項4の発明では、雨水ガイドを構成する雨水ガイド体における傾斜の変化箇所には凹凸によるジグザグ部が形成されることにより、雨水ガイド体に傾斜角度の異なる緩傾斜部領域と屋根傾斜部領域を極めて容易に形成することができる。請求項5の発明では、雨水ガイドの水下側を上方に向かうように反らせてなることにより、極めて簡単に雨水ガイド体に緩傾斜部領域を形成することができる。請求項6の発明では、水上側金属板屋根はその下端に雨水ガイドである雨水ガイド部とが一体化する構造としているので、部品点数が減少され、施工を簡単且つ短時間で行うことができる。
【0021】
請求項7の発明では、雨水ガイドの傾斜の変化する部位には凹み及び膨出が設けられたジグザグ部が形成されたことにより雨水ガイド部に傾斜角度の異なる緩傾斜部領域と屋根傾斜部領域を極めて容易に形成することができる。請求項8の発明では、極めて簡単に雨水ガイド部に緩傾斜部領域を形成することができる。
【0022】
請求項9の発明では、水上側金属板屋根,水下側金属板屋根,雨水ガイドの水下側端及び水上側端を全て屋根幅方向(X方向)に沿って水平状にすることができる。また、中間樋も雨水受け立上り部のみを傾斜状とする構成により、中間樋全体は、略水平状に設置することができ、外観が整然となり、施工も簡単にできる。請求項10の発明では、前述したように、雨水ガイドの幅方向に斜めに横切るように形成された前記雨水ガイドの水下側端は、前述した斜め方向に合致するように水平辺と垂直辺とで階段状端部とされる構成により、雨水ガイドの水下側端の形状を階段状により、略傾斜辺状にすることが極めて容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(A)は本発明の第1実施形態の縦断側面図、(B)は(A)の詳細斜視図である。
図2】(A)は本発明の第1実施形態の斜視図、(B)は(A)のY1-Y1矢視断面略示図、(C)は水上側金属板屋根,水下側金属板屋根及び雨水ガイドに使用される屋根板材の斜視図、(D)は水下側金属板屋根に使用する屋根板材の水上端部の構造を示す要部斜視図である。
図3】(A)は図1の(α)部拡大図、(B)は(A)の(γ)部拡大図、(C)は(A)の(δ)部拡大図、(D)は(B)のY2-Y2矢視断面図である。
図4】(A)は図1の(β)部拡大図、(B)は(A)の(ε)部拡大図、(C)は(B)の要部斜視図である。
図5】(A)は雨水ガイドを構成するガイド板材のジグザグ部付近の斜視図、(B)は(A)の(μ)部拡大図、(C)は屋根幅方向に隣接するガイド板材の接続箇所を示す斜視図である。
図6】(A)は中間樋の実施形態を示す斜視図、(B)は中間樋の平面図、(C)は(A)のY3-Y3矢視端面図である。
図7】(1)乃至(6)は本発明の第1実施形態の施工工程を示す側面略示図である。
図8】(A)及び(Aの1)は第1工程の既設屋根に山形状補強材を配置する工程及び要部斜視図、(B)及び(Bの1)は既設屋根に水下側金属板屋根を配置する工程の及び要部斜視図、(C)及び(Cの1)は水下側金属板屋根に樋下地部材を設置する工程の及び要部斜視図である。
図9】(D)及び(Dの1)は水下側金属板屋根に雨水ガイド体を載置固定する工程の及び要部斜視図、(E)及び(Eの1)は雨水ガイドに水上側金属板屋根を設置する工程の及び要部斜視図、(F)及び(Fの1)は施工が完了した状態の平面図及び要部斜視図である。
図10】(A)は本発明の第1実施形態の雨水ガイドを反りタイプとした要部側面図、(B)は(A)の(η)部拡大図、(C)は(B)の要部斜視図である。
図11】(A)の(1)乃至(5)は本発明の第2実施形態の施工工程を示す側面略示図、(B)は第2実施形態において雨水ガイドを反りタイプとした実施形態の施工完了状態の側面略示図である。
図12】(A)は本発明の第2実施形態の要部側面図、(B)は(A)の(ζ)部拡大図、(C)は(B)の要部斜視図である。
図13】(A)は本発明の第2実施形態の雨水ガイドを反りタイプとした要部側面図、(B)は(A)の(λ)部拡大図、(C)は(B)の要部斜視図である。
図14】(A)及び(Aの1)は雨水ガイドを除いて隙間部を示した平面図及び要部斜視図、(B)及び(Bの1)は中間樋を備えつつ雨水ガイドを除いて隙間部を示した平面図及び要部斜視図である。
図15】(A)及び(B)は本発明の第1実施形態の変形例を示した平面図及び要部斜視図である。
図16】(A)及び(B)は本発明の第1実施形態の別の変形例を示した平面図及び要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明における屋根の排水構造の実施形態を図面に基づいて説明する。また、本発明は、主に、水上側金属板屋根A1と、水下側金属板屋根A2と、雨水ガイドBと、中間樋1と、樋下地部材2、山形状補強材3と、樋固定材4とを備えている〔図1(A)参照〕。さらに、本発明は、改修屋根が前提であり、そのため、前記構成要素に加えて既設屋根Cが構成要素として加わる。そして、水上側金属板屋根A1と、水下側金属板屋根A2とによって建築物の全体としての金属板屋根Aとなる。本発明では、説明の便宜上、方向を示す文言としてX方向及びY方向を使用する。
【0025】
X方向は屋根の幅方向であり、換言すると水上側から水下側(或いは水下側から水上側)における水の流れ方向に対して直交且つ水平状の方向であり、総じて桁行方向呼ばれることもある。また、Y方向とは屋根の傾斜方向であり、換言すると屋根の水上側と水下側とを結ぶ方向であり、屋根の幅方向(桁行方向)と直交する方向である。本発明の説明において、主要部材のそれぞれに記載したX方向及びY方向は、全て図面に記載されたX方向及びY方向に従うものである。
【0026】
前述した水上側金属板屋根A1,水下側金属板屋根A2,雨水ガイドBと,中間樋1,樋下地部材2,山形状補強材3,樋固定材4は、全て金属板屋根Aが構成された状態〔図1(A),図2(A),図3(A),図4(A)等参照〕を基準とし、この基準状態においてX方向及びY方向が適用されるものとする。Y方向及びX方向については、主要な図中に記載した。また、本発明において金属板屋根Aには、軒樋又は谷樋を備えている。軒樋及び谷樋については公知の一般的なものが使用されるので、その説明は省略する。
【0027】
本発明には、複数の実施形態が存在する。まず、本発明の第1実施形態と第2実施形態を概説し、そのあとで、第1実施形態及び第2実施形態を詳細に説明する。第1実施形態は、雨水ガイドBは雨水ガイド体B1からなり、前記雨水ガイドBの上端箇所は前記水上側金属板屋根A1の下端箇所の下方側に重合状態で取り付けられたものである。また、第2実施形態は、水上側金属板屋根A1はその下端と雨水ガイドBである雨水ガイド部B2とが一体化した構造としたものである。
【0028】
次に、本発明の第1実施形態を説明する。最初に水上側金属板屋根A1,水下側金属板屋根A2及び雨水ガイドBの説明を行い、中間樋1と、樋下地部材2、山形状補強材3と、樋固定材4の説明を行う。水上側金属板屋根A1,水下側金属板屋根A2及び雨水ガイドBはその幅方向(X方向)において略波形状である。水上側金属板屋根A1は、複数の水上側屋根板材5,5,…から構成されており〔図1(B),図2参照〕、該水上側屋根板材5は、薄板金属材から形成されたものである〔図2(C)参照〕。
【0029】
水上側金属板屋根A1を構成する複数の水上側屋根板材5,5,…の中で、適宜の個数で幅方向に接続され、且つ屋根傾斜方向における水下側端及び水上側端を揃えたものを、水上側金属板屋根A1を構成する一組の水上側屋根板材5,5,…とし、これが複数組備わって水上側金属板屋根A1が構成されている。
【0030】
本発明は説明の便宜上、理解し易くするために複数の水上側屋根板材5,5,…の中で、2個の水上側屋根板材5,5が幅方向に接続されたものを一組とする。しかし、この一組に含まれる水上側屋根板材5の個数は2個に限定されるものではなく、3個,4個,5個乃至10個又はそれ以上の水上側屋根板材5から構成されるものとしても構わない。また、小規模な改修屋根の施工では、1個の水上側屋根板材5にて1組とすることもある。
【0031】
水上側金属板屋根A1が施工された状態で、各水上側屋根板材5において、長手方向であって、設置した屋根傾斜方向をY方向とする。また、屋根傾斜方向に直交する幅方向をX方向とする〔図2(C)参照〕。つまり、水上側金属板屋根A1の傾斜方向である長手方向(Y方向)は、屋根の流れ方向(水上側から水下側に向かう方向)に沿うものであり、この状態で既設屋根C上に配置される。
【0032】
水上側屋根板材5は、屋根幅方向(X方向)に沿って断面略波形状であり、具体的には山形部51と底面部52とからなり、山形部51と、底面部52とが幅方向(X方向)に沿って交互に連続して略波形を構成している〔図2(B),(C)参照〕。そして、幅方向(X方向)に隣接する水上側屋根板材5,5のそれぞれの幅方向(X方向)両端の山形部51,51同士が重合されて隣接する水上側屋根板材5,5同士が幅方向(X方向)に連結する〔図2(B)参照〕。
【0033】
その山形部51の断面形状は、略台形状に形成されたものであり、頂片の幅方向両側より傾斜片が形成されている。具体的には、一つの水上側屋根板材5には、4個の山形部51,51,…が形成されている〔図2(C)参照〕。また、底面部52は平坦状面であり、該底面部52にはY方向に沿って扁平凸状部が形成されることもある。以上述べたように、複数の水上側屋根板材5,5,…から水上側金属板屋根A1が施工される。水上側金属板屋根A1の水下側端部は、金属板屋根Aの幅方向(X方向)に水平状に横切る方向に載置される。
【0034】
したがって、水上側金属板屋根A1を構成する水上側屋根板材5,5,…の水下側端部は、金属板屋根Aの幅方向(X方向)に水平状且つ直線状となるように揃えられている。具体的には、一組とした水上側屋根板材5,5を屋根幅方向(X方向)に複数組配置したときに、各組の水上側屋根板材5の水下側端部が幅方向(X方向)に沿って水平状の一直線状となるように構成されている〔図9(E),(F),図14(A),(Aの1),(B),(Bの1)参照〕。
【0035】
次に、水下側金属板屋根A2は、複数の水下側屋根板材6,6,…から構成されており、該水下側屋根板材6は、前記水上側屋根板材5と同等の形状で幅方向の断面は同一断面形状である〔図2(C)参照〕。水下側屋根板材6は、薄板金属材から形成されたものであり、屋根幅方向(X方向)に沿って略波形状であり、山形部61と底面部62とからなり、山形部61と底面部62とが幅方向(X方向)に交互に連続している〔図2(C)参照〕。
【0036】
そして、幅方向(X方向)に隣接する水下側屋根板材6,6のそれぞれの幅方向(X方向)両端の山形部61,61同士が重合されて隣接する水下側屋根板材6,6同士が幅方向(X方向)に連結する。その山形部61は、水上側屋根板材5の山形部51と同等であり、断面形状は略台形状に形成されたものであり、頂片の幅方向両側より傾斜片が形成されている。具体的には、水下側屋根板材6は、前記水上側屋根板材5と同様に、4個の山形部61,61,…が形成されている。
【0037】
水下側金属板屋根A2を構成する複数の水下側屋根板材6は、適宜の個数で幅方向に接続されたものを、一組をなすように構成されている。そして、水上側金属板屋根A1に合わせて、水下側金属板屋根A2において複数の水下側屋根板材6,6,…の中で、2個の水下側屋根板材6,6が幅方向に接続されたものを一組とする。しかし、この一組に含まれる水下側屋根板材6の個数は2個に限定されるものではなく、3個,4個,5個乃至10個又はそれ以上の水下側屋根板材6から構成されるものとしても構わない。また、小規模な改修屋根の施工では、1個の水下側屋根板材6にて1組とすることもある。
【0038】
以上述べたように、複数の水下側屋根板材6,6,…から水下側金属板屋根A2が施工される。水下側金属板屋根A2の水上側端部は、金属板屋根Aの幅方向(X方向)に水平状に横切る方向に載置される。したがって、水下側金属板屋根A2を構成する水下側屋根板材6,6,…の水上側端部は、金属板屋根Aの幅方向(X方向)に水平状且つ直線状となるように揃えられている。具体的には、一組とした水下側屋根板材6,6,…を屋根幅方向(X方向)に複数組配置したときに、各組の水下側屋根板材6,6,…の水上側端部が幅方向(X方向)に沿って水平状の一直線状となるように構成されている〔図9(E),(F),図14(A),(Aの1),(B),(Bの1)参照〕。
【0039】
つまり、水上側金属板屋根A1の水下側端部と、屋根傾斜方向(Y方向)で対向する水下側金属板屋根A2の水上側端部とは、共に一直線状であり、金属板屋根Aの幅方向(X方向)に水平状に横切るものであり、水上側金属板屋根A1の水下側端部と、水下側金属板屋根A2の水上側端部とは、平行となり隙間部Sが構成される〔図1(B),図4(A),図14参照〕。
【0040】
さらに、水下側屋根板材6における傾斜方向である長手方向(Y方向)の水上側端部では、この端部箇所の底面部62が上方に立ち上げられ、山形部61に傾斜面に対して折り曲げ加工によって堰き止めの役目をなす立上り壁部63が形成されることもある〔図2(D)参照〕。これは、水下側屋根板材6の底面部62に流れ込んだ雨水が水上側端部から溢れ出すことを防止するためである。
【0041】
水上側金属板屋根A1を構成する複数の水上側屋根板材5,5,…及び水下側金属板屋根A2を構成する複数の水下側屋根板材6,6,…は、既設屋根Cであるスレート屋根の屋根傾斜方向(Y方向)における屋根勾配と同一勾配又は略同一勾配となるように設置される。従って、水上側金属板屋根A1と水下側金属板屋根A2の屋根勾配の傾斜角度は同等又は略同等である(図1参照)。
【0042】
次に、雨水ガイドBについて説明する。該雨水ガイドBは、基本的に、水上端は屋根幅方向(X方向)に対して水平状であり、雨水ガイドBの水下側端は、該雨水ガイドBの幅方向(X方向)に斜めに横切るように形成されている。そして、中間樋1の水上側取付部13上に雨水ガイドBの下端寄りが載置される。前述した「斜めに横切るように」とした構成は、雨水ガイドBの水下端が、屋根幅方向(X方向)に沿って、一端側から他端側に向かって、上方から下方に下がる状態のことである〔図1(B),図2(A),図9(D),(E),(F),図15参照〕。
【0043】
そして、雨水ガイドBの水下端が斜めに横切る場合には、複数の段差部が集合してなる階段状とした場合と、雨水ガイドBの水下端を傾斜状に形成して連続状の傾斜辺とする場合が存在する。階段状とした場合では、雨水ガイドBの幅方向に斜めに横切るように形成された該雨水ガイドBの水下側端は、前述した斜め方向に合致するように水平辺7mと垂直辺7nとで階段状端部7tとされる。水平辺7mと垂直辺7nと階段状端部7tについては、後述する。
【0044】
雨水ガイドBは、複数のガイド板材7,7,…から構成されている〔図1(B),図2(A),図9(D),(E),(F)等参照〕。ガイド板材7は、前記水上側屋根板材5及び前記水下側屋根板材6と同等の形状で屋根幅方向(X方向)における断面は同一断面形状である。つまり、ガイド板材7についても、薄板金属材から形成されたものであり、屋根幅方向(X方向)に沿って略波形状であり、山形部71と底面部72とからなり、山形部71と底面部72とが屋根幅方向(X方向)に交互に連続している〔図5(A)参照〕。
【0045】
そして、幅方向(X方向)に隣接するガイド板材7,7のそれぞれの幅方向(X方向)両端の山形部71,71同士が重合されて隣接するガイド板材7,7同士が連結する。その山形部71は、水上側屋根板材5及び水下側屋根板材6の山形部51及び山形部61と同等であり、断面形状は略台形状に形成されたものであり、頂片の幅方向両側より傾斜片が形成されている。具体的には、ガイド板材7は、前記水上側屋根板材5と前記水下側屋根板材6と同様に、4個の山形部71,71,…が形成されている。
【0046】
雨水ガイドBは、2つの種類が存在し、その一つを雨水ガイド体B1とする。該雨水ガイド体B1は、水上側金属板屋根A1及び水下側金属板屋根A2とは、独立した単独の構成としたものである。なお、雨水ガイドBには、雨水ガイド体B1以外に雨水ガイド部B2も存在する。該雨水ガイド部B2については後述する。
【0047】
前述したように、雨水ガイドBは、複数のガイド板材7,7,…で幅方向に接続されて構成されており、したがって、雨水ガイド体B1も同様にガイド板材7に構成されている。そして、水上側金属板屋根A1,水下側金属板屋根A2に合わせて、雨水ガイド体B1を構成する複数のガイド板材7,7,…において、その中で2個のガイド板材7,7が幅方向に接続されたものを一組とする。しかし、この一組に含まれるガイド板材7の個数は2個に限定されるものではなく、3個,4個,5個乃至10個又はそれ以上のガイド板材7から構成されるものとしても構わない。また、小規模な改修屋根の施工では、1個のガイド板材7にて1組とすることもある。
【0048】
このように、水上側金属板屋根A1を構成する水上側屋根板材5と、雨水ガイド体B1を構成するガイド板材7とが別材であるため、既設屋根C上に設置された雨水ガイド体B1の屋根傾斜方向である長手方向(Y方向)の上端箇所(水上側端部箇所)に対して、水上側金属板屋根A1の長手方向(Y方向)の下端箇所(水下側端部箇所)が上方に位置するように重合させ、この重合状態で既設屋根Cに取り付けられる構成にすることができる〔図4図9(E)及び(Eの1)参照〕。
【0049】
つまり、水上側金属板屋根A1を構成する屋根板材5の山形部51と底面部52と、雨水ガイド体B1を構成するガイド板材7の山形部71と底面部72とが略密着状に重合されるものである。そして、前述した水上側金属板屋根A1の下端箇所(水下側端部箇所)と、雨水ガイド体B1(水上側端部箇所)との重合箇所は、金属板屋根Aの幅方向(X方向)に水平状且つ直線状となるように揃えられている。具体的には、一組としたガイド板材7,7,…を屋根幅方向(X方向)に複数組配置したときに、各組のガイド板材7,7,…の水上側端部が幅方向(X方向)に沿って水平状の一直線状となるように構成されている。
【0050】
そして、雨水ガイド体B1の屋根傾斜方向(Y方向)である長手方向の上端箇所(水上側端部箇所)に対して、水上側金属板屋根A1の長手方向(Y方向)の下端箇所(水下側端部箇所)が上方に位置するように重合させることで、水上側金属板屋根A1を流れる雨水が、そのまま水上側金属板屋根A1の裏面に漏れ出ることなく、雨水ガイド体B1に移り、該雨水ガイド体B1が水上側金属板屋根A1から確実且つ円滑に流下することが雨水を受け取り、そのまま中間樋1に雨水を流出させることができる。そして、雨水ガイド体B1の水上側端部の上方に水上側金属板屋根A1の水下側端部が位置するものであり、雨水と共流下するゴミや枯れ葉等が円滑に雨水ガイド体B1に移り、水上側金属板屋根A1及び雨水ガイド体B1の裏面側が汚れることも防止することができる。
【0051】
雨水ガイド体B1の複数のガイド板材7,7,…は、屋根傾斜方向である長手方向(Y方向)に沿って中央から下方の水下側の部分の傾斜度が前記水上側金属板屋根A1の傾斜度より少し緩やかになるように形成されている。雨水ガイドBのガイド板材7の緩やかな傾斜部分を緩傾斜部7kと称する。雨水ガイドBの緩傾斜部7kの傾斜角度は、水上側金属板屋根A1及び水下側金属板屋根A2の屋根勾配の傾斜角度よりも小さく緩い傾斜角度である〔図1(A),図3(A),(B),図4等参照〕。
【0052】
雨水ガイド体B1は、金属板屋根Aの水上側金属板屋根A1より流下する雨水を、雨水ガイド体B1を構成するガイド板材7が受けて、後述する中間樋1に流し込む役目をなすものである。したがって、ガイド板材7の緩傾斜部7kは、水上側から水下側に向かって下方に下がるように傾斜している。該緩傾斜部7kは、山形部71箇所に凹み及び膨出が設けられた略蛇腹状のジグザグ部73が形成されることによって形成される(図4参照)。
【0053】
凸凹によるジグザグ部73は、山形部71の屋根傾斜方向である長手方向(Y方向)の略中間箇所に形成され、具体的には山形部71の頂部に幅方向(X方向)に沿って断面扁平V字状の凹み部73aが形成され、頂部の幅方向両側の傾斜面に幅方向(X方向)に沿って断面三角凸状の膨出部73bが形成されている。これら凹み部73aと膨出部73bが長手方向(Y方向)に隣接連続し、蛇腹状のジグザグ部73を構成するものである。
【0054】
そして、雨水ガイド体B1の緩傾斜部7kは、ジグザグ部73を介して形成される。具体的には、ジグザグ部73によってガイド板材7の山形部71は、屈曲してジグザグ部73を境として傾斜角度が変化し、緩傾斜部7kの部分と、屋根傾斜部7hの部分とを形成することができるようになっている〔図4(C)参照〕。ガイド板材7の屋根傾斜部7hは、水上側金属板屋根A1及び水下側金属板屋根A2と同等の屋根傾斜角度を有する部位である。
【0055】
雨水ガイド体B1の複数のジグザグ部73,73,…は、金属板屋根Aの幅方向(X方向)に水平状且つ直線状となるように揃えられている。具体的には、雨水ガイド体B1を構成する一組としたガイド板材7,7,…のジグザグ部73,73,…を屋根幅方向(X方向)に複数組配置したときに、ジグザグ部73,73,…は屋根幅方向(X方向)に沿って水平状の一直線状となるように構成される。
【0056】
したがって、雨水ガイド体B1において、緩傾斜部7kの水上側における形成起点は、屋根幅方向(X方向)に沿って水平状の一直線状である。緩傾斜部7kの水上側における形成起点は、屋根幅方向(X方向)に沿って水平状の一直線状であることを示すため、図5において水平基準線Lを記載し、前記ジグザグ部73,73,…が水平基準線L上に並ぶことが示されている。水平基準線Lは、屋根幅方向であるX方向に沿う水平線である。
【0057】
さらに、雨水ガイド体B1を構成するにガイド板材7の緩傾斜部7kを形成する手段として、雨水ガイド体B1の緩傾斜部7kを雨水ガイド体B1の水下側を上方に向かうように反らせて形成されるものである。具体的には、雨水ガイド体B1を構成するガイド板材7の長手方向(Y方向)の水下側を反らせ、この反りの部分が緩傾斜部7kを構成するものである。
【0058】
これは、雨水ガイド体B1を構成するガイド板材7を、水下側を下方に凸弧状となるように、つまり長手方向(Y方向)に沿って弧状の反りが形成されるようにしたものである(図10参照)。このガイド板材7の反りを有する部分を緩傾斜部7kとする。なお、反りを介して緩傾斜部7kが形成される場合には、屋根傾斜部7hと緩傾斜部7kとの明確な境界は存在せず、屋根傾斜部7hから緩傾斜部7kへは所定の変化領域を介して屋根傾斜部7hから緩傾斜部7kに連続するものである。
【0059】
そして、反りの部分とした緩傾斜部7kは、ガイド板材7の屋根傾斜方向である長手方向(Y方向)の略中間箇所から下方側の領域とすることが好適である。弧状の反りの部分とした緩傾斜部7kは、後述する樋下地部材2によって、ガイド板材7の水下側端部付近が上方に持ち上げられることによって緩傾斜部7kが形成される〔図11(B),図13(A),(B)参照〕。
【0060】
或いは、ガイド板材7の長手方向(Y方向)中間箇所よりも水下側の領域に下方に突出する凸円弧状のくせを付けることによって形成することもある。緩傾斜部7kを反りの部分とした実施形態では、緩傾斜部7kの水上側における形成起点は、屋根幅方向(X方向)に沿って水平状の一直線状(水平基準線L)に揃うように設定される〔図13(C)参照〕。
【0061】
雨水ガイド体B1において、その水上端は金属板屋根Aの屋根幅方向(X方向)に対して水平状且つ一直線状である。つまり、雨水ガイド体B1を構成する各組のガイド板材7,7,…の水上端は水平状且つ一直線状に揃えられている。雨水ガイド体B1の水下端は、階段状〔図2(A),図9(D),(E),(F)参照〕又は傾斜辺状(図15参照)に傾斜する端部となっている。この雨水ガイド体B1の水下側端の傾斜角度θは、後述する中間樋1の水下側金属板屋根A2上に載置された状態における傾斜角度θに等しくなるように構成されている。雨水ガイド体B1と、中間樋1の構成については後述する。
【0062】
次に、中間樋1について説明する。まず、中間樋1と水上側金属板屋根A1,水下側金属板屋根A2及び雨水ガイドBとの構成関係について概説し、そのあとで詳細に説明する。まず、水上側金属板屋根A1の水下側端部と、屋根傾斜方向で対向する水下側金属板屋根A2の水上側端部とは、金属板屋根Aの幅方向に水平状に横切る方向に載置される。水上側金属板屋根A1と同一断面形状の雨水ガイドBにて前述の水平状に横切る方向の隙間部S箇所の上面を覆うようにして構成される(図1図4(A)参照)。雨水ガイドBの傾斜度は、水上側金属板屋根A1の傾斜角度より緩傾斜となるように形成されてなると共に、雨水ガイドBの水下側端は、該雨水ガイドBの幅方向(X方向)に斜めに横切るように形成される〔図1(B),図2(A),図9(D),(E),(F)参照〕。
【0063】
中間樋1は、雨水受け立上り部11と底部12と水上側取付部13とで断面変形U字状であって〔図6(A),(C)参照〕、この長手方向に対して同等幅になるように形成される〔図6(B)参照〕。そして、中間樋1の雨水ガイドBの先端箇所下側で且つ該雨水ガイドBの先端の傾斜に沿って水下側金属板屋根A2上に載置され、前記中間樋1の傾斜方向下位の端末が金属板屋根Aの側端まで設けられる〔図2(A)参照〕。水下側金属板屋根A2の屋根傾斜方向を向く山形状補強材3が水下側金属板屋根A2の幅方向に所定間隔をおいて前記水下側金属板屋根A2に固定される(図3参照)。
【0064】
中間樋1の水上側取付部13上に雨水ガイドBの下端寄りが載置されつつ水下側金属板屋根A2に固定された水下側金属板屋根A2の幅方向(X方向)に設けられた樋下地部材2に固着され、樋下地部材2は山形状補強材3にも固着される(図3参照)。中間樋1の雨水受け立上り部11を外面から支持する樋固定材4の下端は水下側金属板屋根A2上で且つ山形状補強材3に固着され、雨水ガイドBから中間樋1に流入した雨水は、該中間樋1の端末から排水されるように構成される。
【0065】
中間樋1は、前述したように、雨水受け立上り部11と底部12と水上側取付部13とによって断面変形U字状に形成され、長手方向(X方向)に対して幅一定とした同等幅になるように形成されている〔図6(A),(B),(C)参照〕。したがって、雨水受け立上り部11と水上側取付部13とは、直線状且つ平行(略平行も含む)である。雨水ガイドBにおける長手方向は、略X方向に沿うものである。雨水受け立上り部11は、長手方向に直交する方向において水下側に位置する立上り部位である。底部12は水下側金属板屋根A2の傾斜角度に等しく、中間樋1を水下側金属板屋根A2上に載置した状態で、雨水受け立上り部11が略垂直状となるように設定されている〔図6(B)参照〕。
【0066】
水上側取付部13は、中間樋1の長手方向に直交する方向において水上側に位置するように構成されている。水上側取付部13は前記底部12よりも急傾斜となる急傾斜面13aが形成され、該急傾斜面13aの上端より上方に略垂直状の垂直壁面13bが形成され、該垂直壁面13bの上端より略水平状の取付頂面13cが形成されている。該取付頂面13cは後述する樋下地部材2に固定される部位である〔図3(B)参照〕。
【0067】
中間樋1は、一体品として形成され、改修屋根の屋根幅方向(X方向)に合わせて長さが決定される。或いは、中間樋1は、長手方向(X方向)に沿って、複数個に分離され、この分離されたものを接続して所望の長さとして使用することもできる。水下側金属板屋根A2上に載置された中間樋1は、雨水受け立上り部11を屋根水下側として水下側金属板屋根A2の幅方向に斜めに横切る方向に載置される〔図1(B),図2(A),図9(E),(F),図14(B),(Bの1)参照〕。
【0068】
つまり、水下側金属板屋根A2に載置された中間樋1の長手方向(X方向)は、水下側金属板屋根A2の幅方向(X方向)に対して傾斜角度θを有している。この中間樋1における傾斜角度θは、前述した雨水ガイドBつまり雨水ガイド体B1の水下側の幅方向(X方向)に斜めに横切る傾斜角度に等しい。雨水ガイド板B1の水下側端の傾斜及び中間樋1のそれぞれの傾斜角度θは、前記水平基準線Lを基準としている。したがって傾斜角度θが記載されている図面には、水平基準線Lも図示されている。
【0069】
具体的には、中間樋1は、水下側金属板屋根A2の屋根幅方向(X方向)に沿って屋根傾斜方向(Y方向)に上方(水上側)から下方(水下側)に向かって下がるように緩傾斜状態にして水下側金属板屋根A2上に載置される。水下側金属板屋根A2に載置された中間樋1の水下側金属板屋根A2の幅方向(X方向)に対する傾斜角度θは、雨水が流下することができれば極めて微小な角度でよい。
【0070】
傾斜角度θは、具体的には、約0.5度程度及びその前後の数値の傾斜角度θで構わない。したがって、傾斜角度θは水平状に近く、水下側金属板屋根A2に載置された中間樋1を外観すると、屋根幅方向(X方向)に対して、略水平状に見えることもある。但し、図面では、水下側金属板屋根A2上に載置された中間樋1の傾斜角度は、分り易くするために、傾斜角度θの数値は約2乃至3倍程度に増加して図示されている。
【0071】
樋下地部材2は、長手方向(X方向)に長尺であり、その長手方向(X方向)が水下側金属板屋根A2の幅方向(X方向)に沿って設置される〔図1(A),図3(A),(B),図8(C),(Cの1)参照〕。また、樋下地部材2の長手方向(X方向)の長さは、水下側金属板屋根A2を構成する一組の水下側屋根板材6,6の幅方向(X方向)の長さに略等しい〔図8(C),(Cの1)参照〕。ここでは、2個の水下側屋根板材6,6を一組としているので、樋下地部材2の長手方向(X方向)の長さは、幅方向に接続された水下側屋根板材6,6の幅方向に略等しい。
【0072】
樋下地部材2は、長手方向(X方向)に直交する断面つまりY方向断面において中央に断面略台形状の台部21が形成され、該台部21の長手方向に直交する幅方向両側に取付片22,22が形成されている。そして、樋下地部材2は、水下側金属板屋根A2を構成する水下側屋根板材6の山形部61上に取付片22,22が設置され、ビス等の固着具にて樋下地部材2が水下側金属板屋根A2に固着される。また、樋下地部材2の長手方向(X方向)は水下側屋根板材6の山形部61の長手方向(Y方向)に直交するように設置される〔図8(C),(Cの1)参照〕。
【0073】
ここで、樋下地部材2が設置される水下側屋根板材6の山形部61の内面(内側)には山形状補強材3が収容され、樋下地部材2の取付片22,22は、山形部61を介して山形状補強材3にビス等の固着具にて固着される〔図3(D)参照〕。つまり、樋下地部材2は、水下側屋根板材6の山形部61と共に山形状補強材3によっても強固に支持されるものである(図3参照)。また、特に図示しないが、前記山形状補強材3は、水下側屋根板材6の山形部61の外面(上側)に載置固定されることもある。
【0074】
樋下地部材2は、前述したように、その長手方向(X方向)の長さが、水下側金属板屋根A2の一組の幅方向に接続された水下側屋根板材6,6の幅方向(X方向)の長さに略等しく形成されている。そして、複数本の樋下地部材2が、水下側金属板屋根A2の上端箇所(水下側端部箇所)に固着されている〔図8(C),(Cの1)参照〕。樋下地部材2の台部21の頂面21aに雨水ガイド体B1のガイド板材7の下端箇所(水下側端部箇所)及び中間樋1の水上側取付部13の取付頂面13cが載置され、ビス等の固着具にて固着される〔図3(B)参照〕。
【0075】
山形状補強材3は、屋根傾斜方向である長手方向(Y方向)に長尺であり、後述する通し下地材91上に固着される。山形状補強材3は、長手方向(Y方向)の長さが前記樋下地部材2の設置位置と、後述する樋固定材4の流れ方向(Y方向)における設置個所に亘る範囲の長さである〔図3(A)参照〕。山形状補強材3の長手方向(Y方向)に直交する断面形状は、略ハット形状であり、補強凸部31と該補強凸部31の幅方向(X方向)両側に取付片32,32が形成され、該取付片32,32がビス等の固着具にて通し下地材91に固着される〔図3(D)参照〕。
【0076】
そして、山形状補強材3の補強凸部31上に水下側金属板屋根A2を構成する水下側屋根板材6の山形部61が被さるようにして、水下側金属板屋根A2を通し下地材91を介して既設屋根C上に設置する。つまり、中間樋1,樋下地部材2,樋固定材4が配置される水下側金属板屋根A2の位置に、水下側金属板屋根A2の山形部61の下面側から山形状補強材3によって補強すると共に、樋下地部材2,樋固定材4の支持部材41を山形部61上に強固に固定し、且つ中間樋1を水下側金属板屋根A2上に安定状態に設置する役目をなすものである(図3参照)。
【0077】
樋固定材4は、水下側金属板屋根A2上に載置された中間樋1を、下側金属板屋根A2に固定する役目をなすものである〔図1(A),図3(A)乃至(C)参照〕。樋固定材4は、支持部材41と緊張部材42によって構成される。支持部材41は、帯状金属板が折曲加工されることによって形成される。支持部材41は、取付基部41a,立上り部41b及び係止部41cからなり、取付基部41aと立上り部41bとによって略L字(又は逆L字)形状をなしている。
【0078】
取付基部41aは、水下側金属板屋根A2を構成する水下側屋根板材6の山形部61上に配置され、ビス等の固着具にて水下側金属板屋根A2に固着されることによって、支持部材41が水下側金属板屋根A2上に固着される〔図3(A),(C)参照〕。立上り部41bは、水下側金属板屋根A2上に載置された中間樋1の雨水受け立上り部11を水下側から抑えるように支持する役目をなす。係止部41cは中間樋1の雨水受け立上り部11の上端に係止し、中間樋1を強固に支持する役目をなす〔図3(A),(C)参照〕。
【0079】
緊張部材42は、金属材で且つ帯板状をなしている。緊張部材42は支持部材41の係止部41cと、雨水ガイド体B1の水下側端部との間に配置される〔図3(A),(B),(C)参照〕。そして、緊張部材42の長手方向(Y方向)の一端(水下側端)が支持部材41の係止部41cにビス等の固着具にて固着され、他端(水上側端)が雨水ガイド体B1の水下側端部にビス等の固着にて固着される。
【0080】
このようにして、支持部材41は、中間樋1の雨水受け立上り部11にかかる雨水の圧力による倒れを防止し、中間樋1を水下側金属板屋根A2に強固に固定するものである。支持部材41は、複数備えられ、水下側金属板屋根A2に載置された中間樋1の長手方向(X方向)に沿って、略等間隔に取り付けられる〔図2(A),図9(F)参照〕。
【0081】
次に、本発明の第1実施形態を施工する工程について説明する。図7は、第1実施形態における施工工程を水上側と水下側とを結ぶY方向のみの側面より見て(1)乃至(6)の段階に分けて図示されたものである。図8及び図9は、施工工程を平面的に見て(A)乃至(F)の8段階の工程を図示したものである。
【0082】
まず、サインカーブの波形状のスレート等の既設屋根Cにおいて、幅方向(X方向)に沿って通し下地材91を所定間隔に平行となるように設置する〔図8(A)参照〕。次に、隣接する通し下地材91,91に山形状補強材3をその長手方向(Y方向)が既設屋根Cの流れ方向(Y方向)に沿うようにビス等の固着具にて固着する〔図7(1),図8(A),(Aの1)参照〕。
【0083】
次に、水下側金属板屋根A2を構成する水下側屋根板材6を通し下地材91に設置固着する〔図7(2),図8(B),(Bの1)参照〕。このとき、水下側屋根板材6の山形部61は、山形状補強材3に被さるように設置する。このようにして、複数の水下側屋根板材6,6,…から水下側金属板屋根A2が施工される。水下側金属板屋根A2の水上側は、前述したように、金属板屋根Aの幅方向(X方向)に水平状且つ一直線状に揃うように水下側屋根板材6,6,…が設置されてゆく。
【0084】
次に、水下側金属板屋根A2の上端箇所(水上側端部箇所)に樋下地部材2を設置固着する〔図7(3),図8(C),(Cの1)参照〕。次いで、雨水ガイド体B1を樋下地部材2上に設置する〔図7(3),図9(D),(Dの1)参照〕。具体的には、雨水ガイド体B1を構成するガイド板材7の緩傾斜部7kの水下側端部寄りの位置が樋下地部材2上に設置固着され、ガイド板材7の屋根傾斜部7hが通し下地材91上に設置固着される。
【0085】
雨水ガイド体B1(雨水ガイドB)の水下側は、前述したように、雨水ガイドBの幅方向に斜めに横切るように形成されてなり、その傾斜角度θは、中間樋1の傾斜角度θと同等である。そこで、雨水ガイド板B1を構成する幅方向(X方向)に並設されたガイド板材7,7,…の水上側端は、屋根幅方向(X方向)に沿って水平状且つ一直線とし、ガイド板材7,7,…の水下側端は階段状となるように配置される。
【0086】
複数のガイド板材7,7,…は、それぞれが複数(2以上)のガイド板材7,7,…の組として構成されているので、屋根幅方向(X方向)に隣接する組同士で、ガイド板材7,7,…の水下側端の位置が上下にずれて、一つの組で水平辺7mと垂直辺7nとで階段状端部7tが構成されることになる〔図5(C),図9(E)参照〕。
【0087】
該階段状端部7tを構成する水平辺7mは、一組の屋根幅方向(X方向)に沿う水平且つ直線状の端縁であり、垂直辺7nは屋根傾斜方向(Y方向)に沿う垂直且つ直線状の端縁である〔図5(C)参照〕。そして、雨水ガイド体B1を構成するガイド板材7,7,…の各組の集合により構成される階段状端部7tは、組の同一箇所を直線で繋ぐことにより、この直線の傾斜角度はθとなる〔図9(A)参照〕。
【0088】
雨水ガイド板B1(又は雨水ガイドB)を構成するガイド板材7による複数の組にて、その水下側端部を階段状の階段状端部7tとして傾斜状に構成させた場合、その傾斜部分が中間樋1の水上側取付部13の長手方向(X方向)に沿いつつ、且つ水上側取付部13上を覆うように載置される構造となる。つまり、中間樋1の水上側取付部13の屋根幅方向(X方向)に対する傾斜角度θは、雨水ガイド板B1の水下側端の傾斜角度θと同等である。
【0089】
次いで、雨水ガイド体B1の上端箇所(水上側端部箇所)の上方に水上側金属板屋根A1の下端(水下側端部箇所)が重合するように設置する〔図7(4),図9(D),(Dの1)参照〕。具体的には、水上側金属板屋根A1を構成する水上側屋根板材5と、雨水ガイド体B1を構成するガイド板材7との山形部51と山形部71とが重合するようにしてガイド板材7と水上側屋根板材5とが接続される。このとき、接続箇所では水上側屋根板材5がガイド板材7よりも上方となるように重合される。水上側屋根板材5とガイド板材7との重合接続箇所は、通し下地材91上に設置される〔図7(5)参照〕。
【0090】
前記水上側金属板屋根A1の水下側端部と、屋根傾斜方向(Y方向)で対向する前記水下側金属板屋根A2の水上側端部とは、前記金属板屋根Aの幅方向に水平状に横切る方向に配置される。そして、前記水上側金属板屋根A1と同一断面形状の雨水ガイドBにて前述の水平状に横切る方向の隙間部S箇所の上面を覆うようにして構成される。つまり、水上側金属板屋根A1の下端(水下側端部箇所)と、既に設置完了した水下側金属板屋根A2の上端(水上側端部箇所)との間には幅方向(X方向)に水平状に沿う隙間部Sが構成される〔図1図7(4),図13(A),(Aの1)参照〕。
【0091】
該隙間部Sとは、水上側金属板屋根A1の水下側端部と、水下側金属板屋根A2の水上側端部との間に形成された空間領域であり、隙間部Sは、雨水ガイド体B1にて覆われることになる。次いで、水下側金属板屋根A2の上方で且つ雨水ガイドBの下端箇所(水下側端部箇所)となる位置に中間樋1が載置され樋固定材4によって固定され、施工を完了する〔図7(5),(6),図9(E),(Eの1)参照〕。
【0092】
以上述べた水上側金属板屋根A1と水下側金属板屋根A2と隙間部Sとの構成をまとめると、水上側金属板屋根A1の水下側端部と、屋根傾斜方向(Y方向)で対向する水下側金属板屋根A2の水上側端部とは、金属板屋根Aの幅方向(X方向)に水平状に横切る方向に載置され、水上側金属板屋根A1と同一断面形状の雨水ガイドBにて前記隙間部S箇所の上面を覆うよう構成され、雨水ガイドBの傾斜度は水上側金属板屋根A1の傾斜角度より緩傾斜となるように形成されたものである。
【0093】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は、水上側金属板屋根A1と雨水ガイドBとが一体化に構成されたものである(図11乃至図13参照)。この第2実施形態における雨水ガイドBは、水上側金属板屋根A1の下方側(水下側)の部分を雨水ガイド部B2としたものである。
【0094】
つまり、1つの金属板屋根板の水上側領域が水上側金属板屋根A1の水上側屋根板材5として使用され、水下側領域が雨水ガイド部B2のガイド板材7として使用されることになる。これによって水上側金属板屋根A1と雨水ガイド部B2とが一体化した1つの屋根構造とした。第2実施形態において、水上側金属板屋根A1と雨水ガイド部B2とを一体化した構造により、水上側金属板屋根A1の部分の水下側端部と、水下側金属板屋根A2の水上側端部との間には、隙間部Sが存在するものとしている。
【0095】
そして、第2実施形態における隙間部Sは、雨水ガイド部B2が配置されることになる。第2実施形態における雨水ガイド部B2の水下側箇所は、第1実施形態と同様に樋下地部材2によって、緩傾斜部7kが形成されることになる。前記水上側金属板屋根A1に一体化した構造の雨水ガイド部B2の部分が前記隙間部S箇所の上方を覆うよう構成されたものである(図12図13参照)。
【0096】
第2実施形態においても、雨水ガイド部B2にジグザグ部73が設けられて緩傾斜部7kが形成される実施形態(図12参照)と、雨水ガイド部B2を反らせることにより緩傾斜部7kが形成される実施形態(図13参照)が存在する。ジグザグ部73の構造は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態におけるジグザグ部73の説明を参照されたい。また、雨水ガイド部B2の反りによる緩傾斜部7kの形成についても第1実施形態と同様であり、第1実施形態における反りの説明を参照されたい。
【0097】
第2実施形態では、雨水ガイドBを雨水ガイド部B2とし、水上側金属板屋根A1と雨水ガイド部B2とを一体化した構成とした以外は、第1実施形態と同様であり、樋下地部材2,山形状補強材3等も同様に使用され、構造については第1実施形態における説明を参照されたい。以下に述べる第2実施形態の施工工程についても、第1実施形態における施工工程と略同様である。
【0098】
図11(1)~(5)は、本発明の第2実施形態の施工工程を示す工程図である。この第2実施形態における施工工程についても、工程の(1),(2)は第1実施形態の施工工程の(1),(2)と同様であり、ここまでの工程は、第1実施形態の施工工程を参照されたい。図11(B)は、第2実施形態において雨水ガイド部B2を反らせることにより緩傾斜部7kが形成される実施形態における施工工程の完了したところを示している。
【0099】
次に、水下側金属板屋根A2の上端箇所(水上側端部箇所)に樋下地部材2を載置固着し〔図11(3)参照〕、次いで一体化された水上側金属板屋根A1と雨水ガイド部B2を設置する〔図11(3)参照〕。次いで、水下側金属板屋根A2の上方で且つ雨水ガイド部B2の下端箇所(水下側端部箇所)となる位置に中間樋1が載置され樋固定材4によって固定され、施工を完了する〔図11(4),(5)参照〕。
【0100】
通し下地材91は、金属薄板材から形成され、その長手方向(X方向)に沿って長尺となる部材であり、主に屋根板受部91a,被係止部91b,平坦状部91cとから構成されている。屋根板受部91aは、上方に断面略台形門形に膨出形成され、水上側屋根板材5,水下側屋根板材6を支持する母屋的な役目をなす部位である。
【0101】
屋根板受部91aの一方側下端より水平方向に平坦状部91cが連続形成され、他方側下端から水平方向に被係止部91bが形成されている。被係止部91bは、固定具92によって係止されると共に既設屋根Cの頂部に固定される。固定具92は、既設屋根Cのスレート屋根を支持するC形鋼等の鋼材にフックボルト等を介して既設屋根C上に取り付けられる。
【0102】
次に、図15は本発明の第1実施形態の変形例であり、雨水ガイド体B1を構成するガイド板材7の組において、ガイド板材7の水下側端縁が傾斜辺となるように形成され、雨水ガイド体B1の水下側端縁が全体として傾斜角度θを有する傾斜辺として形成される実施形態も存在する。この実施形態では、雨水ガイド板B1の水下側端縁全体が屋根幅方向(X方向)に沿って傾斜角度θを有する傾斜辺となる。そして、この雨水ガイド板B1の水下側端が中間樋1の水上側取付部13上に載置される構成となる。この実施形態において、使用される中間樋1は、前述したように水下側金属板屋根A2に傾斜角度θにて配置されている。なお、この変形例は、特に図示しないが、第2実施形態における雨水ガイド部B2の水下側端縁にも適用することができ、これによって、雨水ガイド部B2の水下側端縁全体が屋根幅方向(X方向)に沿って傾斜角度θを有する傾斜辺とすることができる。
【0103】
中間樋1の金属板屋根Aの側端まで設けられ、中間樋1には、長手方向(X方向)に沿って、傾斜方向下位の端末が金属板屋根Aの水下側金属板屋根A2の幅方向(X方向)の端部から突出している。そして、この中間樋1の端末で水下側金属板屋根A2から突出した部分の底部12には雨水排出管14が設けられ、底部12には雨水排出管14の排出口14aが設けられている〔図9(F),(Fの1)参照〕。ここで、通し下地材91は、固定具92によって、既設屋根Cの母屋等の構造材に直接固着されることになる。
【0104】
上記説明において、中間樋1はその長手方向において、屋根幅方向(X方向)全体にわたって傾斜角度θを有して傾斜状且つ一直線となるように水下側金属板屋根A2上に配置する構成とした。そこで、水下側金属板屋根A2の屋根幅方向(X方向)の長さが特に大きい場合においては、特に図示しないが、中間樋1は水下側金属板屋根A2の屋根幅方向(X方向)の略中央の位置で最高位となり、中間樋1の長手方向の中央から長手方向両側の端末が下位となる略扁平山形状又は傘形状なる構成とすることも多い。このようにすることで、特に、水下側金属板屋根A2の屋根幅方向(X方向)の長さが大きい場合であっても、中間樋1の長手方向の中央を高くし、長手方向の両側に向かって下方に下がるように緩傾斜させて配置することで雨水が流れる傾斜角度θを有することができ、中間樋1から雨水を水下側金属板屋根A2の屋根幅方向(X方向)両側から排出する構成にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明における屋根の排水構造は、既設屋根を改修した改修屋根に設けることを前提としているが、新設屋根に本発明における屋根の排水構造を適用することも十分に可能である。
【符号の説明】
【0106】
A…金属板屋根、A1…水上側金属板屋根、A2…水下側金属板屋根、B…雨水ガイド、
C…既設屋根、S…隙間部、1…中間樋1、11…雨水受け立上り部、
11b…立上り側部、12…底部、13…水上側取付部、2…樋下地部材、
3…山形状補強材、4…樋固定材、5…水上側屋根板材、6…水下側屋根板材、
7…ガイド板材、7m…水平辺、7n…垂直辺、7t…階段状端部、7k…緩傾斜部、
73…ジグザグ部。
【要約】
【目的】雨水の排水性に優れ且つ施工が簡単である屋根の排水構造とすること。
【構成】水上側金属板屋根A1の水下側端部と、水下側金属板屋根A2の水上側端部は水平状に横切る方向に配置され、雨水ガイドBにて隙間部Sを覆うように構成されること。中間樋1は、断面変形U字状であって、長手方向に対して同等幅になるように形成され、中間樋1の雨水ガイドBの先端箇所下側で且つ先端の傾斜に沿って水下側金属板屋根A2上に載置され、中間樋1の傾斜方向下位の端末が金属板屋根Aの側端まで設けられ、中間樋1は水下側金属板屋根A2の幅方向に設けられた樋下地部材2と山形状補強材3に固着され、雨水ガイドBから中間樋1に流入した雨水は、中間樋1の端末から排水されるように構成されること。
【選択図】 図1
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