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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】車載機器の通気構造
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/30 20180101AFI20241220BHJP
   F21V 31/03 20060101ALN20241220BHJP
【FI】
F21S45/30
F21V31/03 100
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024029240
(22)【出願日】2024-02-29
【審査請求日】2024-06-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301037866
【氏名又は名称】川村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】川村 誠一郎
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04833572(US,A)
【文献】特開2023-177597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 45/30
F21V 31/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングによって覆われた筐体内と筐体外側との通気構造であって、内通気口が筐体内壁面からハウジングの壁内部に向かって筐体外壁面に貫通することなく、且つ前記筐体外壁面から筐体外側に突設することなく設けられ、前記内通気口の位置から前記筐体内壁面沿いに離間した適宜の位置の前記筐体外壁面側から前記ハウジングの壁内部に向かって外通気口が前記筐体内壁面に貫通せずに設けられ、前記内通気口と前記外通気口とを連通するように前記ハウジングの壁内部に壁内通気路が設けられ、前記壁内通気路に対して前記内通気口は屈設され、前記壁内通気路に対して前記外通気口は屈設され、筐体内と筐体外側とを連通することを特徴とする車載機器の通気構造。
【請求項2】
壁内通気路内には、ラビリンス構造が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車載機器の通気構造。
【請求項3】
壁内通気路内には、外壁防壁と内壁防壁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車載機器の通気構造。
【請求項4】
壁内通気路内には、フィルターが装着されていることを特徴とする請求項1に記載の車載機器の通気構造。
【請求項5】
外壁部材が可撓体であることを特徴とする請求項1に記載の車載機器の通気構造。
【請求項6】
外壁防壁と篏合溝部との間には、外通気口へと連通する排水路が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車載機器の通気構造。
【請求項7】
通気機構の外通気口の内側壁に水膜凝集突部を有することを特徴とする請求項1に記載の車載機器の通気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載機器の通気構造、通気部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドランプ、リアランプ、リッドランプ等の車両用灯具、電子制御装置、バッテリーパック、レーダー、及びカメラ等の車載機器、並びに家庭用、医療用、オフィス用等の各種の電子機器の筐体は、温度変化により筺体内部と外部とに発生する差圧を解消するための筐体内と外気との通気性が求められている。車両用灯具では、さらに灯体内の結露によりレンズ等の曇りが問題となっており、より早く曇りを解消するための通気性をも要求されている。また、これらの機器は、通気性を確保するため通気口が設けられているが、その通気口から筺体内部への異物の浸入を阻止する防塵性、水の浸入を阻止する防水性も重ねて要求されている。そのため、これら通気性、防塵性、防水性を有する通気部材、あるいは通気構造が機器に施設されている。
【0003】
ここでは、車載機器の中でも前記の筐体内外の差圧解消、およびレンズ等の結露による曇りの解消時間の短縮をもとめられている車両用の灯具について説明する。車両用灯具全体をランプボディとし、前記ランプボディを車体に取り付けた際にランプボディからの光を透過するレンズ部をレンズカバー2とし、前記ランプボディを車体に取り付けた際の車体に隠れる部分をランプボディ背面とし、ランプボディ背面全体を覆う樹脂成型品部をハウジング1とし、前記レンズカバー2と前記ハウジング1は合体され筐体内4を形成し、筐体内4には少なくとも1つの光源3が設けられている。前記ハウジング1の筐体内壁面5とハウジング1の筐体外壁面6との間をハウジングの壁内部7とする。車両用灯具以外の車載機器は、筐体全体をハウジング1とし、前記ハウジング1の筐体内壁面5とハウジングの筐体外壁面6との間をハウジングの壁内部7とする。このような筐体構造には、筐体内と筐体外を連通させて、空気を循環させる通気口が前記ハウジング1に備えられている。車両用灯具以外の車載機器については、筐体全体をハウジング1とする。
【0004】
例として、図10(b)及び図13(a)のように前記ランプボディの背面の筐体内4から内側通気口を設け、内側通気口から筒状の突起部10を設け、その筒内を通気路と筐体内4とを連通するようにし、前記突起部の先端は、後付けのキャップ部材11によって覆い、前記突起部の外面に設けた溝と前記キャップ部材の内面との間隙を更に折り返しの通気路とし、前記キャップ部材の開口部を外気との外側通気口とし、前記外側通気口から前記通気路を通り内側通気口に連通し、折り返しの迷路構造とし筐体内4への埃、水の侵入を防止する構造としている。また、図13(c)のように前記突起部にL字状又はC字状に屈曲した合成樹脂製又はゴム製のチューブによって通気路を形成したもの等も例として挙げることができる。
【0005】
前記通気路内には、防塵性をより高めるため、あるいは筐体内への虫入りを防止するためフィルターが挿設されている例もある。また、防水性をより高めるため通気路内にPTFE製の通気膜が貼設されている例もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-143524号公報
【文献】特開2015ー207529号公報
【文献】特開2006-324260号公報
【文献】特開2010-52613号公報
【文献】特開2022-22939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、以下の解決すべき技術的課題があった。
【0008】
まず、車両用灯具のランプボディ背面は、車体パネル等、ランプボディ以外の車体部品が近接しているので狭い。その上、背面スペースには光源に接続される給電コードが配設されたり、ランプボディ背面からは光源挿着用のソケットが突出したり、配光機構が設けられたりするので通気構造を設けるスペースが限られる。また従来の技術では、通気構造がハウジングの壁部から筒状、あるいは、立壁状に筐体外側13に通気路が突出して設けられ、さらにその先端に筒形状の有底円筒形状の通気部材やゴムチューブが装着されているため、車体側の部品との干渉を避けるために通気構造を施設する箇所がさらに限られる。また、ハウジングに向けた噴水が、前記有底円筒形状の開口部と筒状の通気路の外壁面との間から浸水するため、突出した通気構造全体を防水壁12でさらに囲むことを要するため、さらに筐体外側13方向に突出した構造となっている。突出した構造により、曇りの解消時間の短縮に効果的な箇所に通気構造を施すことができず、筐体内4に乾燥材を入れる場合もあり、原価を高くしている。
【0009】
また、図11(b)のようにボディ8とハウジング1が近接したエリア9は、通気路を車体側に突出して通気構造を施設するスペースがないエリアがある。さらにこのエリアは、ランプボディのハウジング1とレンズ2の間隔が狭いためランプ内側にも通気機構を設けることができないため、ハウジング1に設けられた通気口14に通気性、防水、防塵性を備えたPTFE製の通気膜15が接着面16に貼り付けられている。しかしながら前記通気膜15は高価で完成品の原価を高くさせている。また、通気膜の場合は、剛性が著しく弱く、筐体の取り付け、メンテナンスの際等に破損させてしまう懸念があるため、破損防止のため保護カバーを付設、または、筐体内側方向に通気路を設け、その内側の端に通気膜を装着するとした内側に突設した複雑な構造としている。また、超高分子ポリエチレン等の通気膜を貼り付ける案も提案されているが、気孔径が大きく防水性、防塵性に懸念があり、PEFE通気膜と同様に剛性が著しく弱い。
【0010】
また、前記PTFE製の通気膜は、原料としてPFASが使用されており、その人体、生態系への毒性が懸念されており、世界各国で使用の規制が強化されており、今後の生産・供給の持続性に懸念がある。PFASフリーの通気膜も開発されているが、高価である。また、PTFE通気膜の原料であるフッ素化合物は、半導体製造向け等に需要が拡大している。その主原料であるフッ化カルシウムを含む蛍石は、天然鉱物であるが、その産出国、調達先が一定の国に偏っており、地政学リスクを含む調達の安定化について懸念がある。
【0011】
車両用灯具をはじめとする車載機器の通気構造には、筐体外側13、筐体内4への突出を抑え、より効果的な箇所に通気構造を施せることができ、通気性、防塵性、防水性、結露による曇りの解消時間の短縮ができ、さらに剛性を有し、原材料の人体・生態系への悪影響がなく生産・供給の持続性、および安定した調達に懸念がなく、その製造原価がより安価な通気構造を施せることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下は、車載機器の中で、差圧解消のための通気性と合わせて、筐体内の結露によるレンズの曇りの解消時間の短縮を要求される車両用灯具で本発明の通気構造を説明する。
【0013】
本発明の通気構造は、内通気口20が筐体内壁面5からハウジングの壁内部7に向かって筐体外壁面6に貫通することなく、且つ前記筐体外壁面から筐体外側に突設することなく設けられ、前記内通気口20の位置から前記筐体内壁面5沿いに離間した適宜の位置の前記筐体外壁面6側からからハウジングの壁内部7に向かって外通気口21が前記筐体内壁面5に貫通せずに設けられ、前記内通気口20と外通気口21とを連通するように前記ハウジングの壁内部7に壁内通気路18が設けられ、前記壁内通気路18に対して前記内通気口20は屈設され、前記壁内通気路18に対して前記外通気口21は屈設され、筐体内4と筐体外側13とを連通することを特徴とする車載機器の通気構造を提供する。
【0014】
前記壁内通気路18内には、前記壁内通気路18の一部を遮り、且つ一部の通気は、確保するように遮壁24が1か所以上設けられ第一ラビリンス構造23が形成され、前記第一ラビリンス構造23による通気路の屈折と、前記遮壁24によって形成された膨張室25により筐体内に侵入する外気の圧力損失を確実なものとし、筐体内への水、埃、塵の侵入を防止する。
【0015】
前記壁内通気路18内の内壁は、灯室側を内側壁27、筐体外側を外側壁28とし、外壁部材19および外壁部材35の外側壁28の外通気口21側には、前記内側壁27に向かって前記壁内通気路18の一部を塞ぎ、一部を通気するように少なくとも1か所以上の外壁防壁33が設けられ、前記内側壁27から前記外側壁28に向かって前記壁内通気路18の一部を塞ぎ、一部を通気するように少なくとも1か所以上の内壁防壁34が設けられ、前記外壁防壁33と前記内壁防壁34が壁内通気路18内に第二のラビリンス構造を備えている。
【0016】
前記通気路18には、車両が使用される場所の環境が埃塵濃度の高い環境の場合や、ランプを車体に取付ける場所によって筐体内への虫の侵入が懸念される場合には、筐体内4への防塵、防虫のためにフィルター22が施設されている。
【0017】
前記外壁部材19、前記外壁部材35を外壁部材と総称する。前記外壁部材を可撓体とし、外通気口21への噴水の圧力により、内側壁27方向に前記外壁部材が撓み、外通気口21から壁内通気路18への開口部を塞ぎ、壁内通気路18への水の侵入を防ぐことができる。
【0018】
前記外壁防壁33と篏合溝部36との篏合部の間には、排水路54が設けられ、通気口21へと連通し浸水した水を外通気口21から筐体外側13へ流しだす構造としている。
【0019】
外通気口21に水がかかった際、前記内側壁27と前記外壁防壁33間に水の表面張力により、水の膜が張る場合がある。車両が寒冷状況におかれた場合、前記水の膜が凍結し、筐体の通気性を妨げる可能性がある。本発明においては、水の膜と先端が接するように水膜凝集突部42を設け、前記水の膜を下方に導き流し、前記内側壁27と前記外側壁28の間に前記水の膜が張ることを防止する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車載機器の通気構造により、従来のキャップ式通気手段、チューブ式通気手段のように通気路を筐体外側に突出しないため、通気構造の設計の際に、他の車載部品、ボディとの干渉を考慮しなくてもよくなり、通気構造の施設可能な範囲が大きく拡がった。また、内通気口と外通気口とを離間して設けることができるため、内通気口の設置個所を結露による曇りの解消時間の短縮がより有効な個所を選択することができ、外通気口を他の部品等との干渉、障害にならない個所を選択することができ、ハウジングの壁内部の壁内通気路で内通気口と外通気口を連通させることができる。また従来のPTFE通気膜の通気手段の課題であった、車載機器の原価低減、通気構造の剛性の向上、材料調達・生産・供給の持続性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1(a)は、本発明の実施例1の通気構造を図12のB部に施設し、筐体外側13から視た斜視図である。図1(b)は、本発明の実施例1の通気構造を図12のB部に施設し、筐体内4から視た斜視図である。図1(c)は、図1(a)の通気構造部で筐体外側壁6となっている外壁部材19を外して、内部の構造を説明できるようにした斜視図である。
図2図2 (a)が実施例1の通気構造の筐体外側13からの正面視の図、図2(b)が実施例1の筐体内4からの正面視の図、図2(c)は、C-C断面図、図2(d)が図2(c)のD部の拡大図、図2(e)は外壁部材19を可撓体で製作し、外通気口21に向けて水を噴水した際に前記外壁部材19の端部が水圧により撓み、前期外壁防壁33が外通気口21を塞ぎ、止水している状態を表した図である。図2(f)図は、MM断面の拡大図で水膜凝集突部42の断面図である。
図3図3(a)は、本発明の通気構造の実施例2を図12のB部に施設し筐体外側13から視た斜視図である。図3(b)は、図3(a)の通気構造部で筐体側壁部6をなしている外壁部材35を外して、内部の構造を説明できるようにした斜視図である。図3(c)は、実施例2の内通気口20を3か所とした図である。
図4図4(a)は、図3の実施例2の通気構造の筐体外側13からの正面視の図、図4(b)は、通気構造の筐体内4からの正面視の図、図4(c)はE-E断面図、図4(d)は、図4(c)図のG部の拡大図、図4(e)はF-F断面図である
図5図5(a)は、本発明の通気構造の実施例3を図12のB部に施設した斜視図である。図5(b)は、図5(a)の通気構造部で筐体外側壁6をなしている外壁部材35を外して、内部の構造を説明できるようにした斜視図である。図5(c)は、実施例3の通気路Zを正面視した図である。
図6図6(a)は、図5の実施例3の通気構造の筐体外側13からの正面視の図、図6(b)は、通気構造の筐体内4からの正面視の図、図6(c)はH-H断面図、図6(c)は、図6(c)図のJ部の拡大図、図6(e)はK―K断面図である
図7図7(a)は、図12のP部に実施例4の通気構造を設けた筐体外側13からの正面視の図、図7(b)は、実施例4の通気構造の筐体内4からの正面視の図、図7(c)は、N―N断面図、図7(d)は、図7(a)の外壁部材19を外して、内部構造を確認できる斜視図である。図7(e)は、図7(b)の内壁部材51を外して、内部構造を確認できる斜視図である。
図8図8は、実施例5の図であって、実施例1の通気構造をハウジング1の開口部に着脱可能な通気部材とした図である。図8(a)は、内通気口20と壁内通気路18に外壁部材19を装着する前の斜視図である。図8(b)は、通気部材43の斜視図である。図8(c)は、通気部材43の裏面の斜視図である。図8(d)は、図12のB部に通気部材43が篏合される前の開口部の斜視図である。図8(e)は、図8(d)の開口部に通気部材43を装着し、筐体外側13から見た斜視図である。図8(f)は、図8(e)を筐体内4から見た斜視図である。
図9図9(a)は、車載機器のハウジング1斜視図である。図9(b)は、車載機器のハウジング1の上蓋をあけた斜視図である。図9(c)は、車載機器のハウジング1の正面図である。図9(d)は、L―L断面図である。
図10図10(a)は、一般的な車両の正面視である。図10(b)は、A―A断面図である。
図11図11(a)は、図10(a)のB―B断面図である。図11(b)は、車両のボディの一部も含めたA―A断面図である。
図12図12(a)は、図11のランプボディのA矢視図である。図12(b)は、ハウジングに実施例1の通気構造と実施例2の通気構造と実施例4の通気構造を施設した図11のA矢視図である。図12(c)は、H―H断面図である。
図13図12(a)は、従来技術のキャップによる通気部材で、図12(b)は、屈曲経路通気装置で、図12(c)は、ゴムチューブの通気部材である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
上方、下法および上側、下側については車載機器が車両に取り付けられた状態を基準とする。右側、左側は、車両用灯具の照射方向を前方として基準とする。
【実施例1】
【0023】
図1(a)は、実施例1の図でハウジング1に本発明の通気構造を設けた筐体外側13から見た斜視図である。
図1(b)は、本発明の通気構造の実施例1の通気構造の外壁部材19を外し内部の構造を説明する斜視図であって、筐体内4からの内通気口20は、ハウジングの壁内部7で壁内通気路18と連通し、さらに前記壁内通気路18は、外通気口21と連通している。近接したエリア8のPEFE製の通気膜を貼っていた図12(b)のB部の個所に本発明の通気機構を施設することができた。実施例1の通気構造の形成方法は、内通気口20と筐体外壁面6が無い壁内通気路18をハウジング1成型時の金型で成形し、筐体外壁面6として外壁部材19を筐体外壁面6の一部が開口するように後貼りし、前記開口を外通気口21をとし、本発明の通気構造を形成した。外壁部材19を従来のPTFE通気膜の場合と同等の作業時間で組み付けることができた。実施例1の通気構造は、3Dプリンタ等でも形成できるが、プリント加工時間、サポート材の除去作業時間を考慮し、前記の形成方法とした。
【0024】
前記通気路18内には、遮壁24と膨張室25が設けられ第一ラビリンス構造23を形成している。遮壁24と膨張室25により、筐体内4側からの気流よりも筐体外側13からの気流への圧力損失を大きくし、通気性を有し、且つ高い防水・防塵性を備えている。通気路Zが構成され、この通気路Zによってランプハウジング1の内部が外部に連通されることになる。前記内通気口20、壁内通気路18の部分の金型は、入れ子構造として車載機器の使用される環境から求められる性能要求に対して、壁内通気路18内の構造は、入れ子交換で対応が変更可能とした。
【0025】
前記通気路18内には、フィルター22を備えることができる。フィルター22の素材は、実施例1では、発泡ウレタンを使用したが、外壁部材19で保護されているため、不織布、マイクロファイバー、超高分子ポリエチレン焼結体等、通気性があり防塵性があるものであればよい。車体が使用される環境、車体に取り付ける箇所によって変わる防水性、防塵性の要求に対し、前記第一ラビリンス構造と合わせて応えることができる。
【0026】
本実施例の製作方法は、ハウジング1に内通気口20と壁内通気路18を成形し、前記壁内通気路18内にフィルターを装着し、熱可塑性エラストマーで成形した外壁部材19で覆い外壁とし、両面テープで接着し、本発明の通気構造を製作した。外壁部材のハウジング1への接着方法は、超音波溶着、高周波溶着、レーザーによる溶着、接着剤、粘着剤での接着も可能である。前記フィルター22を外壁部材19に組み立て前に付けておくと、組み立て効率は向上する。
【0027】
図2(d)のように外壁部材19の外通気口21側の外側壁28には外壁防壁33が2か所設けられ、内側壁27には、内壁防壁34が設けられ、第二ラビリング構造26を形成し、前記外壁部材19を弾性可撓体で成形し、図2(e)のようにあらゆる方向からの噴水に撓み外通気口21を塞ぎ、水の侵入を防いだ。水圧が強いほど、耐水性が向上する構造となっている。また、外通気口周壁53は、外通気口への噴水を防水する壁となり従来の筒状の通気路と有底円筒形状の通気構造の防水壁12が不要となった。
【0028】
外通気口21に水がかかった際、前記内側壁27と前記外側壁28との間に水の表面張力により、水の膜が張る現象がみられた。車両が寒冷状況におかれた場合、前記水の膜が凍結し、通気性を妨げる可能性がある。本発明においては、前記内側壁27と前記外側壁28との間に張った水の膜に接するように水膜凝集突部42を設け、前記水の膜の水分子を下方に導き、水の膜を下方に流し、前記内側壁27と前記外壁防壁33間に前記水の膜が張ることを防止する。
【0029】
実施例1の通気構造の曇りの解消時間について標準的に使用されているPTFE通気膜と比較試験を実施した。PTFEの通気膜の通気口の面積280平方ミリメートルに対して、実施例1の内通気口20および外通気口21と壁内通気路18の最も狭い個所の断面積を13平方ミリメートルと概ね20分の1で、曇り解消時間を計測した。曇りの解消時間をPTFEの通気膜に対して、実施例1の通気構造の方が、約20%短縮した。
【実施例2】
【0030】
図3図4の実施例は、本発明の通気構造の実施例2の図であって、図3(b)は、外壁部材35を外して、通気構造の内部の斜視図である。前記筐体内4からの前記内通気口20は、前記ハウジングの壁内部7で屈折し前記壁内通気路18と連通し、前記壁内通気路18は、延伸し前記外通気口21と連通し、通気構造が筐体内4と筐体外側13と連通している。
【0031】
外壁部材35は、EPDMゴムにて成型した。ゴム以外の材料も使用可能である。実施例1の接着、溶着とは異なり、外壁部材35に設けられた外壁防壁33を篏合溝部36に押圧し緊合し固定する構造としている。外壁部材35を丸形にし、同心円状に同形状とすることで、上下方向および左右方向において対称形状であるので、外壁部材35をハウジング1への篏合の際の組付け方向が限定されず、組付け作業性が向上しロボットでの組付けも容易となった。
【0032】
外壁部材35の前記外壁防壁33は、ハウジング1の篏合溝部36への篏合部であるが、壁内通気路18を覆う個所には、篏合溝部36がなく壁内通気路18への防水のための外壁防壁33として機能し、さらに内側壁27に設けられた内壁防壁34とで実施例1と同様に第二ラビリンス構造26を形成している。外壁部材35を可撓体とすることで外通気口21に向けられた噴水の水の圧力で撓み、外通気口21を閉塞し水の侵入を防止している。また、ハウジング1と外壁部材35の間からの毛細管現象による通気構造内への浸水を防止すため前記外壁防壁33と篏合溝部36との篏合部に排水路54を設け、浸水した水を外通気口21へ流しだす構造とした。
【0033】
図3(c)は、実施例2の通気構造で、前記内通気口20を3か所設け、各内通気口20は、前記ハウジングの壁内部7の中で前記壁内通気路18へと連通し、前記壁内通気路18は、通気構造中央部への延伸し、合流し、外通気口21へ連通している。中央の合流部には、フィルターが設けられ、防塵性、防虫が確保されている。前記内通気口20を3か所にすることで、より広範囲の結露によるレンズの曇りの解消時間を短縮することができる。また丸形通気構造の中央で3つの内通気口20からの壁内通気路18を一か所に結合することで、外壁部材35を丸形にし、同心円状に同形状とすることで、上下方向および左右方向において対称形状であるので、外壁部材35をハウジング1への篏合の際の組付け方向が限定されず、組付け作業性が向上する。
【0034】
図3(c)では、前記外壁部材35の中央部にフィルターの係止部39が設けられフィルターの脱落を防止し、前記フィルターの係止部39の先端には、キャップ係止部40が設けられ、壁内通気路18の内側壁27に設けられたキャップ係止穴41に前記キャップ係止部40を嵌設することで、外壁部材35の脱落を防止している。
【実施例3】
【0035】
図5図6は、本発明の通気構造の実施例3の図であって、筐体内4からの内通気口20は、ハウジングの壁内部7で丸形通気構造の内側に周設された壁内通気路18と連通し、前記壁内通気路18は、外通気口21と連通し筐体内側4と筐体外側13と連通している。前記壁内通気路18には、第一ラビリンス構造と、第二ラビリンス26が設けられ、通気が筐体外側13より壁内通気路18に入ると、大きな膨張室25により圧力が損失され、さらに周設された前記壁内通気路18が2方向に分岐され、さらに遮壁24による屈折と、さらに膨張室25により、圧力損失を確実なものとしている。フィルターを廃止し、さらなる原価低減ができた。
【0036】
実施例2のフィルターを設けていた個所に、キャップ係止穴41を中央に設け外壁部材35は、ゴムで成型され、中央部にキャップ係止部40を設け、ハウジングに設けられた前記キャップ係止穴41に嵌設されている。
【実施例4】
【0037】
図7の実施例は、本発明の通気構造の実施例4の図であって、本発明の通気機構を結露の解消時間の短縮に適した個所に施設したい場合で、図12(a)のP部のように、ハウジング1の筐体外側に他の部品収納部52等があり、従来の通気機構、通気部材が施設できない場合の実施例である。
【0038】
前記外通気口21をハウジング1の筐体外側に他の部品収納部52等が無い個所に設け、前記内通気口20を本発明の通気機構を結露の解消時間の短縮に適した個所に設け、前記外通気口21と前記内通気口20を前記壁内通気路18で連通させた。
予め、外通気口21となる溝と壁内通気路18となる溝をハウジング1に成型時に形成し、筐体外側13の壁内通気路18に外壁部材を貼設し、外通気路21を形成し、内通気口20を備えた内壁部材51を筐体内4側から貼設した。本発明の通気機構をの内通気口20を結露の解消時間の短縮に適宜な個所に施設することが可能となった。
【実施例5】
【0039】
図8は、実施例5の図であって、ハウジング1に装着されると本発明の通気構造をなす通気部材であって、通気部材43は、ハウジング1に装着されると内通気口20、外通気口21と前記内通気口20と前記外通気口21とを連通する壁内通気路18を有し、ハウジング1に設けられた開口部の内周に設けられたスライド部47に前記通気部材のスライド溝44を篏合し、前記通気部材43の係止部45をハウジング1に設けられた落下防止壁46にはめ合わせ固定する構造とした。筐体の構造からハウジング1に金型の構造上、複雑な壁内通気路18が成形できない場合や、ハウジングが金属等で壁内通気路の形成が困難な素材の場合や設計試作段階の際に使用される。
【実施例6】
【0040】
図9は実施例6の図であって、車載機器のハウジング1の成型時に金型にて内通気口20と壁内通気路18と筐体内壁面5と筐体外壁面6を成形し、壁内通気路18内にフィルター22を挿入し、外壁部材19を超音波溶着で固定し、外通気口21を形成した。
【0041】
さらにフィルター22に変えて、前記内通気口20を覆うように通気膜を貼り防塵性を確実なものとした。通気膜は、筐体外壁面6で保護されているため筐体の取り付け、メンテナンスの際に破損させてしまうことがなくなり、筐体内4側に突設した通気路を設け、その筐体内4側に通気膜を付設する複雑な構造とする必要もなくなり、通気構造を施設可能な個所が拡がった。また、水が直接かかることがないため、疎水性のあるPTFE通気膜を使用することは無く、ポリエステル製の不織布を貼りつけた。よって大きな原価低減となるとともに、車載機器の通気構造の持続性のある生産・供給、材料の調達を確保できた。
【0042】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、機器の通気構造に利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 ハウジング
2 レンズカバー
3 光源
4 筐体内
5 筐体内壁面
6 筐体外壁面
7 ハウジングの壁内部
8 ボディ
9 近接したエリア
10 突起部
11 キャップ部材
12 防水壁
13 筐体外側
14 通気口
15 PTFE通気膜
16 接着面
17 従来キャップ通気部材
18 壁内通気路
19 外壁部材
20 内通気口
21 外通気口
22 フィルター
23 第一ラビリンス構造
24 遮壁
25 膨張室
26 第二ラビリンス構造
27 内側壁
28 外側壁
29 右側壁
30 左側壁
31 上側壁
32 下側壁
33 外壁防壁
34 内壁防壁
35 外壁部材
36 篏合溝部
37 略矩形通気構造
38 丸形通気構造
39 フィルター係止部
40 キャップ係止部
41 キャップ係止穴
42 水膜凝集突部
43 通気部材
44 スライド溝
45 係止部
46 落下防止壁
47 スライド部
48 開口部
49 通気膜
50 噴水逆流防止斜壁
51 内壁部材
52 他の部品収納部
53 外通気口周壁
54 排水路
【要約】
【課題】通気部材、通気機構をハウジングの筐体外方向に突設することなく、通気性と合わせて十分な防水性、防塵性を備え、製造原価がより安価な通気構造を提供する。
【解決手段】ハウジング1の筐体内壁面5に設けられた内通気口20と筐体外壁面6に設けられたに外通気口21がハウジングの壁内部7に設けられた壁内通気路18で連通された通気構造とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13