(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】地盤改良工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
E02D3/12 102
(21)【出願番号】P 2024117171
(22)【出願日】2024-07-22
【審査請求日】2024-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000185972
【氏名又は名称】小野田ケミコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英治
(72)【発明者】
【氏名】山根 行弘
(72)【発明者】
【氏名】高野 令男
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-160691(JP,A)
【文献】特開2010-138691(JP,A)
【文献】特開2006-063786(JP,A)
【文献】特開2003-239275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単管式注入ロッド先端の掘削刃によって地盤を予定深度まで削孔し、該注入ロッドを通じて地盤中に、高圧噴射される固化材スラリーのエネルギーで攪拌翼の外側を切削・混合しつつ、注入ロッドの固化材スラリー噴射部の上部に近接して設けた土壌押上円板により固化材スラリー噴射口の近傍の攪乱土を上方に押し上げて、土壌押上円板の下方に空隙を形成し、固化材スラリーと混合された混合土を該空隙に吸収し、改良予定地盤中に円柱状の改良体を造成する地盤改良工法において、
注入ロッド先端の掘削刃の上部に設けた攪拌翼の上方に隣接する土壌押上円板を備えた攪拌装置で改良予定深度までの削孔を、複数回のステップ方式での削孔方式とし、該削孔時に1回の削孔・引抜き可能な排土量に相当する深度方向のステップ長を土質に応じて適宜設定し、設定した第1ステップ深度まで削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、次ぎの第2ステップ深度下端まで、また削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、これをステップ毎に繰り返して改良予定深度まで削孔・排土し、次ぎに一旦ロッドを地上まで引き抜き、さらに改良予定深度まで再削孔した後、予定深度地盤に達したロッド先端部付近に設けた攪拌翼のノズルから、スラリー状の固化材を側方に高圧噴射しながら引抜き、円柱状の改良体を造成する地盤改良工法であって、
削孔時の削孔水量を加味した該地盤の土の含水比
と排土率との関係性から求めた排土率が
80%以上となる含水比の範囲
内となる様な該削孔水量で該削孔水を噴射することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
単管式注入ロッド先端の掘削刃によって地盤を予定深度まで削孔し、該注入ロッドを通じて地盤中に、高圧噴射される固化材スラリーのエネルギーで攪拌翼の外側を切削・混合しつつ、注入ロッドの固化材スラリー噴射部の上部に近接して設けた土壌押上円板により固化材スラリー噴射口の近傍の攪乱土を上方に押し上げて、土壌押上円板の下方に空隙を形成し、固化材スラリーと混合された混合土を該空隙に吸収し、改良予定地盤中に円柱状の改良体を造成する地盤改良工法において、
注入ロッド先端の掘削刃の上部に設けた攪拌翼の上方に隣接する土壌押上円板を備えた攪拌装置で改良予定深度までの削孔を、複数回のステップ方式での削孔方式とし、該削孔時に1回の削孔・引抜き可能な排土量に相当する深度方向のステップ長を土質に応じて適宜設定し、設定した第1ステップ深度まで削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、次ぎの第2ステップ深度下端まで、また削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、これをステップ毎に繰り返して改良予定深度まで削孔・排土し、次ぎに一旦ロッドを地上まで引き抜き、さらに改良予定深度まで再削孔した後、予定深度地盤に達したロッド先端部付近に設けた攪拌翼のノズルから、スラリー状の固化材を側方に高圧噴射しながら引抜き、円柱状の改良体を造成する地盤改良工法であって、
削孔時の削孔水量を加味した該地盤の土の含水比と排土率との関係性から求めた排土率が90%以上となる含水比の範囲
内となる様な該削孔水量で該削孔水を噴射することを特徴とす
る地盤改良工法。
【請求項3】
削孔水量を加味した前記地盤の含水比は、前記地盤の土の液性限界により正規化されることを特徴とする請求項
1又は2に記載の地盤改良工法。
【請求項4】
単管式注入ロッド先端の掘削刃によって地盤を予定深度まで削孔し、該注入ロッドを通じて地盤中に、高圧噴射される固化材スラリーのエネルギーで攪拌翼の外側を切削・混合しつつ、注入ロッドの固化材スラリー噴射部の上部に近接して設けた土壌押上円板により固化材スラリー噴射口の近傍の攪乱土を上方に押し上げて、土壌押上円板の下方に空隙を形成し、固化材スラリーと混合された混合土を該空隙に吸収し、改良予定地盤中に円柱状の改良体を造成する地盤改良工法において、
注入ロッド先端の掘削刃の上部に設けた攪拌翼の上方に隣接する土壌押上円板を備えた攪拌装置で改良予定深度までの削孔を、複数回のステップ方式での削孔方式とし、該削孔時に1回の削孔・引抜き可能な排土量に相当する深度方向のステップ長を土質に応じて適宜設定し、設定した第1ステップ深度まで削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、次ぎの第2ステップ深度下端まで、また削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、これをステップ毎に繰り返して改良予定深度まで削孔・排土し、次ぎに一旦ロッドを地上まで引き抜き、さらに改良予定深度まで再削孔した後、予定深度地盤に達したロッド先端部付近に設けた攪拌翼のノズルから、スラリー状の固化材を側方に高圧噴射しながら引抜き、円柱状の改良体を造成する地盤改良工法であって、
削孔時の削孔水量を加味した該地盤の土の含水比から排土率が適正となる含水比の範囲を基準化し、削孔水量を設定可能となっており、
削孔水量を加味した該地盤の含水比は、該地盤の土の液性限界により正規化され、
正規化含水比(W/W
L)が0.7乃至1.3となる様な
該削孔水量で
該削孔水
を噴射することを特徴とす
る地盤改良工法。
【請求項5】
単管式注入ロッド先端の掘削刃によって地盤を予定深度まで削孔し、該注入ロッドを通じて地盤中に、高圧噴射される固化材スラリーのエネルギーで攪拌翼の外側を切削・混合しつつ、注入ロッドの固化材スラリー噴射部の上部に近接して設けた土壌押上円板により固化材スラリー噴射口の近傍の攪乱土を上方に押し上げて、土壌押上円板の下方に空隙を形成し、固化材スラリーと混合された混合土を該空隙に吸収し、改良予定地盤中に円柱状の改良体を造成する地盤改良工法において、
注入ロッド先端の掘削刃の上部に設けた攪拌翼の上方に隣接する土壌押上円板を備えた攪拌装置で改良予定深度までの削孔を、複数回のステップ方式での削孔方式とし、該削孔時に1回の削孔・引抜き可能な排土量に相当する深度方向のステップ長を土質に応じて適宜設定し、設定した第1ステップ深度まで削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、次ぎの第2ステップ深度下端まで、また削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、これをステップ毎に繰り返して改良予定深度まで削孔・排土し、次ぎに一旦ロッドを地上まで引き抜き、さらに改良予定深度まで再削孔した後、予定深度地盤に達したロッド先端部付近に設けた攪拌翼のノズルから、スラリー状の固化材を側方に高圧噴射しながら引抜き、円柱状の改良体を造成する地盤改良工法であって、
削孔時の削孔水量を加味した該地盤の土の含水比から排土率が適正となる含水比の範囲を基準化し、削孔水量を設定可能となっており、
削孔水量を加味した該地盤の含水比は、該地盤の土の液性限界により正規化され、
正規化含水比(W/W
L)が0.8乃至1.2となる様な
該削孔水量で
該削孔水
を噴射することを特徴とす
る地盤改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良工法に関し、より詳細には、改良予定地盤中に円柱状の改良体を造成する地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単管式注入ロッド先端の掘削刃によって地盤を予定深度まで削孔し、該注入ロッドを通じて地盤中に、高圧噴射される固化材スラリーのエネルギーで攪拌翼の外側を切削・混合しつつ、注入ロッドの固化材スラリー噴射部の上部に近接して設けた土壌押上円板により固化材スラリー噴射口の近傍の攪乱土を上方に押し上げて、土壌押上円板の下方に空隙を形成し、固化材スラリーと混合された混合土を該空隙に吸収し、改良予定地盤中に円柱状の改良体を造成し、周辺地盤への変位移動を防止する地盤改良工法(例えば、特許文献1を参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地盤改良工法においては、地盤を削孔する際に、削孔水で加水をしながら施工するが、削孔時に、加水し過ぎると、液性限界を超えて、削孔孔内の地盤が泥水化してしまい、改良体を造成時に土壌押上円板による攪乱土の押し上げの効果が減少してしまう。逆に、削孔時に加水が少なすぎると、削孔孔内の地盤の攪乱が減少し、引抜き抵抗が増加してしまうため、改良体の造成時に、固化材スラリーが注入されることによる地盤の体積増加に伴う地盤内の内圧上昇による押し上げの効果と、土壌押上円板による攪乱土の押し上げの効果の両方が減少してしまう。そのため、削孔時の加水が適切でないと排土率が下がり、地盤変位の低減効果が小さくなってしまう。
【0005】
従来の地盤改良工法においては、改良予定地盤が、特に、高粘着力粘性土で構成されている場合、改良予定地盤の削孔・貫入時に攪拌翼の抵抗が大きくなり、それによって、攪拌翼が回転不足となることで、地盤の攪乱が減少することや、貫入時の抵抗低減のために必要以上に加水をしてしまい地盤が泥水化することで、排土板の押上効果が低減し、排土率が下がり、地盤変位の低減効果が小さくなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明では、改良予定地盤が、特に高粘着力粘性土で構成されている場合であっても地盤変位の低減効果を維持可能な地盤改良工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、単管式注入ロッド先端の掘削刃によって地盤を予定深度まで削孔し、該注入ロッドを通じて地盤中に、高圧噴射される固化材スラリーのエネルギーで攪拌翼の外側を切削・混合しつつ、注入ロッドの固化材スラリー噴射部の上部に近接して設けた土壌押上円板により固化材スラリー噴射口の近傍の攪乱土を上方に押し上げて、土壌押上円板の下方に空隙を形成し、固化材スラリーと混合された混合土を該空隙に吸収し、改良予定地盤中に円柱状の改良体を造成する地盤改良工法において、注入ロッド先端の掘削刃の上部に設けた攪拌翼の上方に隣接する土壌押上円板を備えた攪拌装置で改良予定深度までの削孔を、複数回のステップ方式での削孔方式とし、該削孔時に1回の削孔・引抜き可能な排土量に相当する深度方向のステップ長を土質に応じて適宜設定し、設定した第1ステップ深度まで削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、次ぎの第2ステップ深度下端まで、また削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、これをステップ毎に繰り返して改良予定深度まで削孔・排土し、次ぎに一旦ロッドを地上まで引き抜き、さらに改良予定深度まで再削孔した後、予定深度地盤に達したロッド先端部付近に設けた攪拌翼のノズルから、スラリー状の固化材を側方に高圧噴射しながら引抜き、円柱状の改良体を造成する地盤改良工法であって、削孔時の削孔水量を加味した該地盤の土の含水比と排土率との関係性から求めた排土率が80%以上となる含水比の範囲内となる様な該削孔水量で該削孔水を噴射することを特徴とする地盤改良工法である。
又、本発明は、単管式注入ロッド先端の掘削刃によって地盤を予定深度まで削孔し、該注入ロッドを通じて地盤中に、高圧噴射される固化材スラリーのエネルギーで攪拌翼の外側を切削・混合しつつ、注入ロッドの固化材スラリー噴射部の上部に近接して設けた土壌押上円板により固化材スラリー噴射口の近傍の攪乱土を上方に押し上げて、土壌押上円板の下方に空隙を形成し、固化材スラリーと混合された混合土を該空隙に吸収し、改良予定地盤中に円柱状の改良体を造成する地盤改良工法において、注入ロッド先端の掘削刃の上部に設けた攪拌翼の上方に隣接する土壌押上円板を備えた攪拌装置で改良予定深度までの削孔を、複数回のステップ方式での削孔方式とし、該削孔時に1回の削孔・引抜き可能な排土量に相当する深度方向のステップ長を土質に応じて適宜設定し、設定した第1ステップ深度まで削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、次ぎの第2ステップ深度下端まで、また削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、これをステップ毎に繰り返して改良予定深度まで削孔・排土し、次ぎに一旦ロッドを地上まで引き抜き、さらに改良予定深度まで再削孔した後、予定深度地盤に達したロッド先端部付近に設けた攪拌翼のノズルから、スラリー状の固化材を側方に高圧噴射しながら引抜き、円柱状の改良体を造成する地盤改良工法であって、削孔時の削孔水量を加味した該地盤の土の含水比と排土率との関係性から求めた排土率が90%以上となる含水比の範囲内となる様な該削孔水量で該削孔水を噴射することを特徴とする地盤改良工法である。
又、本発明は、単管式注入ロッド先端の掘削刃によって地盤を予定深度まで削孔し、該注入ロッドを通じて地盤中に、高圧噴射される固化材スラリーのエネルギーで攪拌翼の外側を切削・混合しつつ、注入ロッドの固化材スラリー噴射部の上部に近接して設けた土壌押上円板により固化材スラリー噴射口の近傍の攪乱土を上方に押し上げて、土壌押上円板の下方に空隙を形成し、固化材スラリーと混合された混合土を該空隙に吸収し、改良予定地盤中に円柱状の改良体を造成する地盤改良工法において、注入ロッド先端の掘削刃の上部に設けた攪拌翼の上方に隣接する土壌押上円板を備えた攪拌装置で改良予定深度までの削孔を、複数回のステップ方式での削孔方式とし、該削孔時に1回の削孔・引抜き可能な排土量に相当する深度方向のステップ長を土質に応じて適宜設定し、設定した第1ステップ深度まで削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、次ぎの第2ステップ深度下端まで、また削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、これをステップ毎に繰り返して改良予定深度まで削孔・排土し、次ぎに一旦ロッドを地上まで引き抜き、さらに改良予定深度まで再削孔した後、予定深度地盤に達したロッド先端部付近に設けた攪拌翼のノズルから、スラリー状の固化材を側方に高圧噴射しながら引抜き、円柱状の改良体を造成する地盤改良工法であって、削孔時の削孔水量を加味した該地盤の土の含水比から排土率が適正となる含水比の範囲を基準化し、削孔水量を設定可能となっており、削孔水量を加味した該地盤の含水比は、該地盤の土の液性限界により正規化され、正規化含水比(W/W
L
)が0.7乃至1.3となる様な該削孔水量で該削孔水を噴射することを特徴とする地盤改良工法である。
又、本発明は、単管式注入ロッド先端の掘削刃によって地盤を予定深度まで削孔し、該注入ロッドを通じて地盤中に、高圧噴射される固化材スラリーのエネルギーで攪拌翼の外側を切削・混合しつつ、注入ロッドの固化材スラリー噴射部の上部に近接して設けた土壌押上円板により固化材スラリー噴射口の近傍の攪乱土を上方に押し上げて、土壌押上円板の下方に空隙を形成し、固化材スラリーと混合された混合土を該空隙に吸収し、改良予定地盤中に円柱状の改良体を造成する地盤改良工法において、注入ロッド先端の掘削刃の上部に設けた攪拌翼の上方に隣接する土壌押上円板を備えた攪拌装置で改良予定深度までの削孔を、複数回のステップ方式での削孔方式とし、該削孔時に1回の削孔・引抜き可能な排土量に相当する深度方向のステップ長を土質に応じて適宜設定し、設定した第1ステップ深度まで削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、次ぎの第2ステップ深度下端まで、また削孔水を低圧で噴射しながら削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分だけ引き抜き排土し、これをステップ毎に繰り返して改良予定深度まで削孔・排土し、次ぎに一旦ロッドを地上まで引き抜き、さらに改良予定深度まで再削孔した後、予定深度地盤に達したロッド先端部付近に設けた攪拌翼のノズルから、スラリー状の固化材を側方に高圧噴射しながら引抜き、円柱状の改良体を造成する地盤改良工法であって、削孔時の削孔水量を加味した該地盤の土の含水比から排土率が適正となる含水比の範囲を基準化し、削孔水量を設定可能となっており、削孔水量を加味した該地盤の含水比は、該地盤の土の液性限界により正規化され、正規化含水比(W/W
L
)が0.8乃至1.2となる様な該削孔水量で該削孔水を噴射することを特徴とする地盤改良工法である。
【0008】
尚、本発明は、削孔水量を加味した前記地盤の含水比を、前記地盤の土の液性限界により正規化することが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、削孔時の削孔水量を加味した該地盤の土の含水比から排土率が適正となる含水比の範囲を基準化し、削孔水量を設定可能としたことにより、改良予定地盤が、主に高粘着力粘性土で構成されている場合であっても地盤変位の低減効果を維持可能な地盤改良工法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態を示す図であり、排土率が適正となる含水比の範囲を基準化する際に用いるグラフを模式的に示した図である。
【
図2】本発明の実施形態を示す図であり、改良装置を用いての地盤削孔工法におけるロッド先端部の削孔深度位置の軌跡を模式的に示した図である。
【
図3】本発明の実施形態を示す図であり、本実施形態の工法に用いる装置および排土状況を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態を示す図であり、本実施形態の工法に用いる装置および改良状況を示す断面図である。
【
図6】
図5のVI-VI断面図に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の発明者は、上記目的を達成すべく、永年に亘って蓄積された地盤改良工事の各現場の施工データを鋭意分析したところ、排土率が適正となる削孔時の削孔水量を加味した地盤の土の含水比の範囲を基準化できることを見出した。本発明は、当該知見に基づくものである。
【0012】
本発明の実施形態を
図1乃至
図6に基づき説明する。先ず、本実施形態の地盤改良工法に用いる地盤改良装置を説明する。地盤改良装置1(以下、装置1と略記する)は、回転上下機構2と、単管注入ロッド3(以下、注入ロッド3という)と、備えている。回転上下機構2は、注入ロッド3を回転上下可能に支柱4で支持している。
【0013】
注入ロッド3は、その上端部が、スイベル5を介して固化材スラリー圧送ホース6に連結されている。注入ロッド3の下端部には、攪乱装置を構成する掘削刃の一種である掘削牙(アースオーガともいわれる)7及び攪拌翼8が設けられると共にその軸部及び攪拌翼8に固化材スラリー噴射部の一種である固化材スラリーSの噴射ノズル9が設けられている。固化材スラリーSは、例えば、固化材と水の混合物となっている。
【0014】
攪拌翼8の上部近傍には、注入ロッド3をステップ方式で引き上げる時、攪拌翼8により攪乱した土を上方に押し上げるための土壌押上円板10が噴射ノズル9の上部に近接する形で設けられている。土壌押上円板10は、噴射ノズル9の噴射口(図示せず)の近傍の攪乱土を上方に押し上げて、土壌押上円板10の下方に空隙を形成し、固化材スラリーSと混合された混合土を該空隙に吸収し、改良予定地盤である軟弱地盤G(以下、地盤Gと略記する)中に円柱状の改良体を造成するために設けられている。
【0015】
土壌押上円板10は、地中に貫入した注入ロッド3を引き上げる際に、排土効率を最大にするために。土壌押上円板10の半径を攪拌翼8の半径と同一寸法又は攪拌翼8の半径よりも10cm以下、好ましくは5cm小さくすると共に、投影平面形状で土壌押上円板10の傾きが10乃至20°、好ましくは、15°に形成することが望ましい。
【0016】
注入ロッド3は、地盤G中に削孔水を低圧で噴射しながら回転貫入することで、攪拌翼8によって攪乱部G1が形成される様になっている。この攪乱部G1には、攪乱土と削孔水とで略円筒状の泥水膜G2が形成される様になっている。
【0017】
次に、本実施形態の地盤改良工法について説明する。
(0)先ず始めに、該地盤改良工法を実施するに当たり、適正な排土率となる含水比の範囲を基準化する。適切な排土率となる含水比の範囲を基準化するためのグラフを
図1に示す。該グラフは、土の削孔水量を加味した含水比と排土率との関係性を示すものである。本実施形態においては、各現場の土質の影響を可能な限り小さくするために、該含水比として、実際の含水比Wを液性限界W
Lで除した正規化含水比(W/W
L)を用いている。
【0018】
尚、排土率は、以下の式にから求められる値である。
【0019】
【数1】
ここで、該式中、ΣQ(単位:m
3)は、固化材スラリー注入量の合計であり、ΣV(単位:m
3)は地上に排出された排土量の合計である。
【0020】
少なくとも地盤Gの土が高粘着力粘性土等の粘土質である場合、該土の削孔水量を加味した含水比と排土率との関係は、各現場の土質によって、多少のずれがあるものの、前記グラフに記載された推定線に近似できることが経験則的に見出された。そのため、削孔時の削孔水量を加味した地盤Gの土の含水比から排土率が適正となる含水比の範囲を基準化可能である。
【0021】
例えば、排土率が80%以上、即ち、正規化含水比(W/WL)=0.7乃至1.3、好ましくは、排土率が90%以上、即ち、正規化含水比(W/WL)=0.8乃至1.2となる含水比の範囲を基準化することが可能である。
【0022】
(1)次に、地盤Gの土質調査を実施する。この土質調査では、少なくとも、地盤Gを構成する土の自然含水比(Wn:単位%)、液性限界(WL:単位%)を調査する。尚、液性限界WLは、例えば、Casagrande法によって評価される。
【0023】
そして、基準化した含水比(W/WL)と該土の液性限界WLを用いて適切な排土率となる削孔水量を加味した土の含水比Wを求め、該含水比Wと該土の自然含水比Wnを用いて、基準化した含水比W/WLとなる様な削孔時の加水量、即ち、削孔水量及び削孔速度を求める。
【0024】
(2)その後、本施工を行う。本施工は、先ず、例えば、
図2に示す様に複数回のステップ方式で掘削牙7によって地盤Gを予定深度まで削孔する。具体的には、1回の削孔・引抜可能な排土量に相当する深度方向のステップ長を地盤Gの土質に応じて適宜設定し、装置1で、地盤Gを第1ステップ深度まで、基準化した含水比(W/W
L)となる様に工程(1)で求めた削孔水量で削孔水を低圧噴射しながら、同削孔速度で、削孔した後、その1ステップ深度に相当する長さ分引抜き排土する(以下、排土された土を排土G3と表記する)。
【0025】
次に、第2ステップ深度下端まで、再度、工程(1)で求めた削孔水量で削孔水を低圧噴射しながら、同削孔速度で削孔した後、その1ステップ深度(第2ステップ深度)に相当する長さ分たけ引抜き排土する。これを、各ステップ繰り返して改良予定深度まで削孔する。
【0026】
この際、本実施形態においては、注入ロッド3を地盤G中に回転しながら貫入すると、注入ロッド3の貫入に伴って、攪拌翼8がもより地盤Gに攪乱部G1が形成される。この際、攪乱部G1の外周面には、間隙が形成され該間隙に削孔水が進入し、攪乱土と削孔水とが混合される。そして、特に、該間隙部分の攪乱土が泥状化されることによって、薄い略円筒形の泥水膜G2の領域が形成される。それによって、土壌押上円板10の直径内に位置する攪乱土と直径外の領域とが縁切りされると共に土壌押上円板10の回転により該直径内の攪乱土が上方に押し上げられ排土される様になっている。
【0027】
次に、一旦、注入ロッド3を地上まで引抜き、更に改良予定深度まで再削孔してから、固化材スラリーSを注入ロッド3の噴射ノズル9から側方に高圧噴射しながら引き抜いていき改良部G4を形成する。この際、注入ロッド3を通じて地盤G中に高圧噴射される固化材スラリーSのエネルギーで、攪拌翼8の外側を切削・混合しつつ、土壌押上円板10により固化材スラリー噴射口の近傍の攪乱土を上方に押し上げて、土壌押上円板10の下方に空隙を形成し、固化材スラリーSと混合された混合土を該空隙に吸収することによって、地盤Gには改良柱体が造成され、地盤Gの改良が完了する。
【0028】
従って、本実施形態の地盤改良工法においては、削孔時の削孔水量を加味した地盤Gの含水比Wから排土率が適正となる含水比Wの範囲を基準化し、削孔水量を設定可能としたことにより、適切な削孔水量及び削孔速度で地盤Gを削孔することが可能であり、地盤Gが、特に高粘着力粘性土で構成されている場合であっても地盤変位の低減効果を維持可能な地盤改良工法を提供することが可能である。
【0029】
以上、本発明を上記実施形態に基づき説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態においては、前記グラフより含水比を基準化し、その含水比をそのまま基準として用いたが、各現場の土質によって、多少のずれが生じる可能性があるため、本施工の前に試験施工を行い、基準化した該含水率を補正する様にしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 地盤改良装置 2 回転上下機構 3 単管注入ロッド
4 支柱 5 スイベル 6 固化材スラリー圧送ホース
7 掘削牙 8 攪拌翼 9 噴射ノズル
10 土壌押上円板 G 地盤 G1 攪乱部
G2 泥水膜 G3 排土 G4 改良部
S 固化材スラリー
【要約】
【課題】改良予定地盤が、特に高粘着力粘性土で構成されている場合であっても地盤変位の低減効果を維持可能な地盤改良工法を提供する。
【解決手段】改良予定地盤中に円柱状の改良体を造成する地盤改良工法において、削孔時の削孔水量を加味した地盤の土の含水比から排土率が適正となる含水比の範囲を基準化し、削孔水量を設定可能とする。尚、削孔時の削孔水量を加味した地盤の含水比は、該地盤の土の液性限界により正規化することも可能であり、正規化含水比(W/W
L)=0.7乃至1.3の範囲、好ましくは、正規化含水比(W/W
L)=0.8乃至1.2の範囲を基準された前記含水比の範囲とすることが可能である。
【選択図】
図1