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特許7607822動翼、及びこれを備えているガスタービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】動翼、及びこれを備えているガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/18 20060101AFI20241220BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20241220BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
F01D5/18
F01D25/12 E
F02C7/18 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024154077
(22)【出願日】2024-09-06
【審査請求日】2024-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】辻 良史
(72)【発明者】
【氏名】大友 宏之
(72)【発明者】
【氏名】森本 一毅
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-183113(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110566283(CN,A)
【文献】米国特許第8444386(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第112943380(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0321250(US,A1)
【文献】特開2011-43115(JP,A)
【文献】特開2005-90511(JP,A)
【文献】特開2011-220337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向に延びる翼体と、
前記翼高さ方向におけるチップ側とハブ側とうち、前記翼体の前記ハブ側の端に設けられているプラットフォームと、
前記プラットフォームの前記ハブ側に設けられている翼根と、
前記翼根、前記プラットフォーム及び前記翼体にかけて形成され、冷却空気が流通可能な冷却空気通路と、
を備え、
前記翼体は、前記翼高さ方向に対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面と、前記翼高さ方向における前記チップ側を向くチップ面と、を有し、
前記翼面は、前記翼高さ方向に延びる前縁及び後縁と、前記翼高さ方向に延びて前記前縁から前記後縁にまで広がっている正圧面及び負圧面と、を有し、
前記冷却空気通路は、
少なくとも前記翼根内に形成されている導入通路と、
少なくとも前記翼体内に形成されている翼体通路と、
前記チップ面で開口している出口を有し、前記出口から冷却空気を噴出可能な複数のチップ噴出孔と、を有し、
前記導入通路は、第一導入通路部及び第二導入通路部を有し、
前記第一導入通路部及び前記第二導入通路部は、いずれも、前記翼根の表面で開口している入口を有し、前記入口から冷却空気が流入可能であり、
前記翼体通路は、前記翼高さ方向に延び、前記翼体のキャンバーラインに沿って、前記前縁の側から前記後縁の側に並んでいる六つの翼体通路部と、前記六つの翼体通路部中で互いに隣接している二つ翼体通路部を連通させる連通部と、を有し、
前記六つの翼体通路部は、最も前記前縁の側の第一翼体通路部と、前記第一翼体通路部よりも前記後縁の側に位置して前記第一翼体通路部に隣接している第二翼体通路部と、前記第二翼体通路部よりも前記後縁の側に位置して前記第二翼体通路部に隣接している第三翼体通路部と、前記第三翼体通路部よりも前記後縁の側に位置して前記第三翼体通路部に隣接している第四翼体通路部と、前記第四翼体通路部よりも前記後縁の側に位置して前記第四翼体通路部に隣接している第五翼体通路部と、最も前記後縁の側に位置して、前記第五翼体通路部に隣接している第六翼体通路部と、を有し、
前記連通部は、
前記第一翼体通路部の前記ハブ側の部分と、前記第二翼体通路部の前記ハブ側の部分と、を連通させる1-2ハブ側連通部と、
前記第二翼体通路部の前記チップ側の部分と、前記第三翼体通路部の前記チップ側の部分と、を連通させる2-3チップ側連通部と、
前記第四翼体通路部の前記チップ側の部分と、前記第五翼体通路部の前記チップ側の部分と、連通させる4-5チップ側連通部と、
前記第五翼体通路部の前記ハブ側の部分と、前記第六翼体通路部の前記ハブ側の部分と、を連通させる5-6ハブ側連通部と、
を有し、
前記第一導入通路部は、前記第三翼体通路部の前記ハブ側の部分に連通し、前記第二導入通路部は、前記第四翼体通路部の前記ハブ側の部分に連通し、
前記チップ面は、前記チップ面よりも前記ハブ側に、前記第二翼体通路部、前記2-3チップ側連通部、及び前記第三翼体通路部が存在する2-3領域と、前記チップ面よりも前記ハブ側に、前記第四翼体通路部、前記4-5チップ側連通部、及び前記第五翼体通路部が存在する4-5領域と、を有し、
前記複数のチップ噴出孔のうち、一部の複数の2-3領域噴出孔は、前記出口が前記チップ面中の前記2-3領域で開口し、
前記複数のチップ噴出孔のうち、他の一部の複数の4-5領域噴出孔は、前記出口が前記チップ面中の前記4-5領域で開口し、
前記4-5領域における単位面積当たりの前記複数の4-5領域噴出孔における前記出口の数である面積密度は、前記2-3領域における単位面積当たりの前記複数の2-3領域噴出孔における前記出口の数である面積密度よりも高い、
動翼。
【請求項2】
請求項1に記載の動翼において、
前記複数の4-5領域噴出孔における前記出口の前記面積密度は、前記複数の2-3領域噴出孔における前記出口の前記面積密度の2倍以上である、
動翼。
【請求項3】
請求項2に記載の動翼において、
前記複数の4-5領域噴出孔における前記出口の前記面積密度は、前記複数の2-3領域噴出孔における前記出口の前記面積密度の10倍以下である、
動翼。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の動翼において、
前記複数のチップ噴出孔毎の前記出口は、前記キャンバーラインに沿って、前記前縁の側から前記後縁の側に並び、
前記キャンバーラインの単位長さあたりの前記複数のチップ噴出孔における前記出口の数を線密度とすると、前記複数の4-5領域噴出孔における前記出口の前記線密度は、前記複数の2-3領域噴出孔における前記出口の前記線密度よりも高い、
動翼。
【請求項5】
請求項4に記載の動翼において、
前記4-5領域における前記キャンバーラインに沿った方向の長さは、前記2-3領域における前記キャンバーラインに沿った方向の長さよりも長い、
動翼。
【請求項6】
請求項4に記載の動翼において、
前記複数の4-5領域噴出孔における前記出口の前記線密度は、前記複数の2-3領域噴出孔における前記出口の前記線密度の1.5倍以上である、
動翼。
【請求項7】
請求項6に記載の動翼において、
前記複数の4-5領域噴出孔における前記出口の前記線密度は、前記複数の2-3領域噴出孔における前記出口の前記線密度の2.5倍以下である、
動翼。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一項に記載の動翼において、
前記複数のチップ噴出孔のうち、少なくとも前記複数の4-5領域噴出孔は、前記チップ側に向かうに連れて次第に前記後縁の側に近づくよう、前記チップ面に対して傾斜している、
動翼。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一項に記載の動翼において、
前記冷却空気通路は、前記正圧面と前記チップ面との境部である正圧側角部で開口している出口を有し、前記前縁の側から前記後縁の側に並んで、前記翼体通路からの冷却空気を前記正圧側角部の前記出口から噴出可能な複数の正圧側角部噴出孔を有する、
動翼。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか一項に記載の動翼において、
前記冷却空気通路は、前記負圧面と前記チップ面との境部である負圧側角部で開口している出口を有し、前記前縁の側から前記後縁の側に並んで、前記翼体通路からの冷却空気を前記負圧側角部の前記出口から噴出可能な複数の負圧側角部噴出孔を有する、
動翼。
【請求項11】
請求項1から3のいずれか一項に記載の動翼を複数備えると共に、
軸線を中心として回転可能で、複数の前記動翼が前記軸線に対する周方向に並んで取り付けられているロータ軸と、
複数の前記動翼及び前記ロータ軸の外周側を覆うタービンケーシングと、
を備え、
前記動翼は、前記翼高さ方向が前記軸線に対する径方向になり、前記チップ側が前記軸線に対する径方向外側になるよう、前記ロータ軸に取り付けられている、
ガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動翼、及びこれを備えているガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼ガスで駆動するタービンと、を備える。タービンは、軸線を中心として回転するタービンロータと、このロータを覆うタービンケーシングと、複数の静翼列と、を備える。タービンロータは、軸線を中心とするロータ軸と、ロータ軸に取り付けられている複数の動翼列と、を有する。複数の動翼列は、軸線が延びる軸線方向に並んでいる。各動翼列は、いずれも、軸線に対する周方向に並ぶ複数の動翼を有する。複数の静翼列は、軸線方向に並んで、タービンケーシングの内周側に取り付けられている。複数の静翼列のそれぞれは、複数の動翼列のうちのいずれか一の動翼列の軸線上流側に配置されている。各静翼列は、いずれも、軸線に対する周方向に並ぶ複数の静翼を有する。
【0003】
動翼は、一般的に、翼体と、プラットフォームと、翼根と、を有する。翼体は、軸線に対する径方向に垂直な断面が翼形を成し、径方向に延びている。プラットフォームは、翼体の径方向内側に端に設けられている。翼根は、プラットフォームの径方向内側に設けられている。この翼根は、動翼をロータ軸に取り付ける部分である。
【0004】
ガスタービンの動翼は、高温の燃焼ガスに晒される。このため、動翼は、一般的に、空気等で冷却される。
【0005】
例えば、以下の特許文献1に記載の動翼は、静翼の翼体には、冷却空気が流通可能な冷却空気通路が形成されている。翼根の表面で開口して冷却空気が流入可能な導入通路と、翼体内に形成され、導入通路からの冷却空気が流通可能な翼体通路と、を有する。導入通路は、少なくとも翼根内で、翼高さ方向に延び、前縁の側から後縁の側に並んでいる二つの導入通路部を有する。翼体通路は、翼体内で、翼高さ方向に延び、翼体のキャンバーラインに沿って、前縁の側から前記後縁の側に並んでいる複数の翼体通路部と、を有する。
【0006】
複数の翼体通路部は、第一翼体通路部と、第二翼体通路部と、第三翼体通路部と、第四翼体通路部と、第五翼体通路部と、第六翼体通路部と、を有する。第一翼体通路部、第二翼体通路部、第三翼体通路部、第四翼体通路部、第五翼体通路部、及び第六翼体通路部は、以上の順で、前縁の側から後縁の側に並んでいる。
【0007】
六つの翼体通路部のうちで最も前縁の側の第一翼体通路部のハブ側の部分と、この第一翼体通路部に隣接している第二翼体通路部のハブ側の部分とは、互いに連通している。第二翼体通路部のチップ側の部分と、この第二翼体通路部に隣接している第三翼体通路部のチップ側の部分とは、互いに連通している。第三翼体通路部に隣接している第四翼体通路部のチップ側の部分と、この第四翼体通路部に隣接している第五翼体通路部のチップ側の部分とは、互いに連通している。第五翼体通路部のハブ側の部分と、六つの翼体通路部のうちで最も後縁の側に位置して、第五翼体通路に隣接している第六翼体通路部のハブ側の部分とは、互いに連通している。
【0008】
二つの導入通路部のうち、前縁の側の第一導入通路部は、第三翼体通路のハブ側の部分に連通し、後縁の側の第二導入通路部は、第四翼体通路部のハブ側の部分に連通している。
【0009】
第一導入通路部内に流入した冷却空気は、第三翼体通路部、第二翼体通路部、第一翼体通路部を流れて、翼体の前縁から噴出される。第二導入通路部内に流入した冷却空気は、第四翼体通路部、第五翼体通路部、第六翼体通路部を流れて、翼体の後縁から噴出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2014-001633号公報 (図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に記載の動翼では、前述したように、第一導入通路部に流入した冷却空気は、第三翼体通路部、第二翼体通路部、第一翼体通路部を流れてから、翼体の前縁から噴出される。また、この動翼では、前述したように、第二導入通路部に流入した冷却空気は、第四翼体通路部、第五翼体通路部、第六翼体通路部を流れてから、翼体の後縁から噴出される。このため、上記特許文献1に記載の動翼では、冷却空気の量を抑えつつも、動翼を冷却することができる。
【0012】
ところで、高温の燃焼ガスに晒されるガスタービンの動翼には、冷却空気の使用量を抑えつつも、耐久性を高めることが求められる。
【0013】
そこで、本開示は、冷却空気の使用量を抑えつつも、耐久性を高めることができる動翼、及びこの動翼を備えるガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するための発明に係る一態様の動翼は、
断面が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向に延びる翼体と、
前記翼高さ方向におけるチップ側とハブ側とうち、前記翼体の前記ハブ側の端に設けられているプラットフォームと、前記プラットフォームの前記ハブ側に設けられている翼根と、前記翼根、前記プラットフォーム及び前記翼体にかけて形成され、冷却空気が流通可能な冷却空気通路と、を備える。
前記翼体は、前記翼高さ方向に対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面と、前記翼高さ方向における前記チップ側を向くチップ面と、を有する。前記翼面は、前記翼高さ方向に延びる前縁及び後縁と、前記翼高さ方向に延びて前記前縁から前記後縁にまで広がっている正圧面及び負圧面と、を有する。
前記冷却空気通路は、少なくとも前記翼根内に形成されている導入通路と、少なくとも前記翼体内に形成されている翼体通路と、前記チップ面で開口している出口を有し、前記出口から冷却空気を噴出可能な複数のチップ噴出孔と、を有する。
前記導入通路は、第一導入通路部及び第二導入通路部を有する。前記第一導入通路部及び前記第二導入通路部は、いずれも、前記翼根の表面で開口している入口を有し、前記入口から冷却空気が流入可能である。
前記翼体通路は、前記翼高さ方向に延び、前記翼体のキャンバーラインに沿って、前記前縁の側から前記後縁の側に並んでいる六つの翼体通路部と、前記六つの翼体通路部中で互いに隣接している二つ翼体通路部を連通させる連通部と、を有する。
前記六つの翼体通路部は、最も前記前縁の側の第一翼体通路部と、前記第一翼体通路部よりも前記後縁の側に位置して前記第一翼体通路部に隣接している第二翼体通路部と、前記第二翼体通路部よりも前記後縁の側に位置して前記第二翼体通路部に隣接している第三翼体通路部と、前記第三翼体通路部よりも前記後縁の側に位置して前記第三翼体通路部に隣接している第四翼体通路部と、前記第四翼体通路部よりも前記後縁の側に位置して前記第四翼体通路部に隣接している第五翼体通路部と、最も前記後縁の側に位置して、前記第五翼体通路部に隣接している第六翼体通路部と、を有する。
前記連通部は、前記第一翼体通路部の前記ハブ側の部分と、前記第二翼体通路部の前記ハブ側の部分と、を連通させる1-2ハブ側連通部と、前記第二翼体通路部の前記チップ側の部分と、前記第三翼体通路部の前記チップ側の部分と、を連通させる2-3チップ側連通部と、前記第四翼体通路部の前記チップ側の部分と、前記第五翼体通路部の前記チップ側の部分と、連通させる4-5チップ側連通部と、前記第五翼体通路部の前記ハブ側の部分と、前記第六翼体通路部の前記ハブ側の部分と、を連通させる5-6ハブ側連通部と、を有する。
前記第一導入通路部は、前記第三翼体通路部の前記ハブ側の部分に連通し、前記第二導入通路部は、前記第四翼体通路部の前記ハブ側の部分に連通する。前記チップ面は、前記チップ面よりも前記ハブ側に、前記第二翼体通路部、前記2-3チップ側連通部、及び前記第三翼体通路部が存在する2-3領域と、前記チップ面よりも前記ハブ側に、前記第四翼体通路部、前記4-5チップ側連通部、及び前記第五翼体通路部が存在する4-5領域と、を有する。
前記複数のチップ噴出孔のうち、一部の複数の2-3領域噴出孔は、前記出口が前記チップ面中の前記2-3領域で開口する。 前記複数のチップ噴出孔のうち、他の一部の複数の4-5領域噴出孔は、前記出口が前記チップ面中の前記4-5領域で開口する。
前記4-5領域における単位面積当たりの前記複数の4-5領域噴出孔における前記出口の数である面積密度は、前記2-3領域における単位面積当たりの前記複数の2-3領域噴出孔における前記出口の数である面積密度よりも高い。
【0015】
本態様における動翼では、第一導入通路部に流入した冷却空気は、第三翼体通路部、2-3チップ側連通部、第二翼体通路部、1-2ハブ側連通部、第一翼体通路部を流れ、これら通路部及び連通部を流れる過程で、これら通路部周り及び連通部周りを対流冷却する。本態様における動翼では、第二導入通路部に流入した冷却空気は、第四翼体通路部、4-5チップ側連通部、第五翼体通路部、5-6ハブ側連通部、第六翼体通路部を流れ、これら通路部及び連通部を流れる過程で、これら通路部周り及び連通部周りを対流冷却する。このため、本態様における動翼では、冷却空気の量を抑えつつも、動翼を冷却することができる。
【0016】
前縁の側から翼体に向かってきた燃焼ガスの一部は、この翼体の正圧面に沿って後縁の側に流れ、他の一部は、この翼体の負圧面に沿って後縁の側に流れる。翼体を基準にして、正圧面側の燃焼ガスの圧力は、負圧面側の燃焼ガスの圧力より高い。翼体には、この燃焼ガスの圧力差により、周方向の力が作用する。翼体のチップ面とタービンケーシングとの間には、隙間がある。前述したように、翼体を基準にして、正圧面側の燃焼ガスの圧力は、負圧面側の燃焼ガスの圧力より高いため、正圧面側の燃焼ガスの一部は、チップ面とタービンケーシングとの間の隙間に流入した後、負圧面の側に流出する。よって、翼体のチップ面も高温の燃焼ガスに晒される。
【0017】
本態様における動翼は、複数のチップ噴出孔を有する。複数のチップ噴出孔には、翼体通路を流れる冷却空気の一部が流入する。この冷却空気は、チップ噴出孔を流れる過程で、チップ噴出孔周りを対流冷却する。複数のチップ噴出孔を流れた冷却空気は、チップ面で開口しているチップ噴出孔の出口から噴出する。複数のチップ噴出孔から噴出した冷却空気は、チップ面をフィルム冷却する。
【0018】
よって、本態様では、燃焼ガスによるチップ面の熱損傷を抑えることができ、動翼の耐久性を高めることができる。
【0019】
前述したように、翼体を基準にして、正圧面側の燃焼ガスと負圧面側の燃焼ガスとの間には圧力差がある。この圧力差は、翼体の前縁から後縁の側に向かうに連れて、次第に大きくなってから次第に小さくなる。この圧力差が最大になる位置は、翼体中で第四翼体通路部及び4-5チップ側連通部が存在する領域内である。このため、翼体中で、第四翼体通路部、4-5チップ側連通部、第五翼体通路部が存在する領域での圧力差は、翼体中で、第三翼体通路部、2-3チップ側連通部、及び第二翼体通路部が存在する領域の圧力差よりも大きくなる。この場合、チップ面中の4-5領域を通過する燃焼ガスの流速は、チップ面中の2-3領域を通過する燃焼ガスの流速より高くなる。燃焼ガスの流速が高いと、燃焼ガスと翼体との間の熱伝達率が高まるため、チップ面中の4-5領域と燃焼ガスとの間の熱伝達率は、チップ面中の2-3領域と燃焼ガスとの間の熱伝達率よりも高くなる。
【0020】
本態様では、チップ面中で熱伝達率が低い2-3領域で開口している2-3領域噴出孔の出口の面積密度を低くする一方で、チップ面中で熱伝達率が高い4-5領域で開口している4-5領域噴出孔の出口の面積密度を高くしている。この結果、本態様では、チップ面中で相対的に加熱されにくい2-3領域の出口から噴出する冷却空気の量が抑えられ、チップ面中で相対的に加熱され易い4-5領域に対する冷却性能が高まる。よって、本実施形態では、冷却空気の使用量を抑えつつも、動翼の耐久性を高めることができる。
【0021】
前記目的を達成するための発明に係る一態様のガスタービンは、
前記態様における動翼を複数備えると共に、軸線を中心として回転可能で、複数の前記動翼が前記軸線に対する周方向に並んで取り付けられているロータ軸と、複数の前記動翼及び前記ロータ軸の外周側を覆うタービンケーシングと、を備える。前記動翼は、前記翼高さ方向が前記軸線に対する径方向になり、前記チップ側が前記軸線に対する径方向外側になるよう、前記ロータ軸に取り付けられている。
【発明の効果】
【0022】
本開示の一態様によれば、冷却空気の使用量を抑えつつも、動翼の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示に係る一実施形態におけるガスタービンの模式的な断面図である。
図2】本開示に係る一実施形態における動翼の斜視図である。
図3図2におけるIII-III線断面図である。
図4図2におけるIV矢視図である。
図5図4におけるV-V線断面図である。
図6図4におけるVI-VI線断面図である。
図7】本開示に係る一実施形態の第一変形例における動翼の要部断面図である。
図8】本開示に係る一実施形態の第二変形例における動翼を径方向外側から見た図である。
図9】本開示に係る一実施形態の第三変形例における動翼を径方向外側から見たである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の動翼、及びこの動翼を備えるガスタービンの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
「ガスタービンの実施形態」
ガスタービンの実施形態について、図1を参照して説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態のガスタービン10は、空気Aを圧縮する圧縮機20と、圧縮機20で圧縮された空気A中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスGを生成する燃焼器30と、燃焼ガスGにより駆動するタービン40と、を備えている。
【0027】
圧縮機20は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ21と、圧縮機ロータ21を覆う圧縮機ケーシング25と、複数の静翼列26と、を有する。タービン40は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ41と、タービンロータ41を覆うタービンケーシング45と、複数の静翼列46と、を有する。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、軸線方向Daの一方側を軸線上流側Dau、その反対側を軸線下流側Dadとする。また、径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、その反対側を径方向外側Droとする。
【0028】
圧縮機20は、タービン40に対して軸線上流側Dauに配置されている。
【0029】
圧縮機ロータ21とタービンロータ41とは、同一軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ11を成す。このガスタービンロータ11には、例えば、発電機GENのロータが接続されている。ガスタービン10は、さらに、中間ケーシング14を備える。この中間ケーシング14は、軸線方向Daで、圧縮機ケーシング25とタービンケーシング45との間に配置されている。圧縮機ケーシング25と中間ケーシング14とタービンケーシング45とは、互いに接続されてガスタービンケーシング15を成す。
【0030】
圧縮機ロータ21は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸22と、このロータ軸22に取り付けられている複数の動翼列23と、を有する。複数の動翼列23は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列23は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列23の各軸線下流側Dadには、複数の静翼列26のうちのいずれか一の静翼列26が配置されている。各静翼列26は、圧縮機ケーシング25の内側に設けられている。各静翼列26は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0031】
タービンロータ41は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸42と、このロータ軸42に取り付けられている複数の動翼列43と、を有する。複数の動翼列43は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列43は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列の各軸線上流側Dauには、複数の静翼列46のうちのいずれか一の静翼列46が配置されている。各静翼列46は、タービンケーシング45の内側に設けられている。各静翼列46は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0032】
燃焼器30は、中間ケーシング14に取り付けられている。
【0033】
圧縮機20は、空気Aを圧縮して圧縮空気を生成する。この圧縮空気は、燃焼器30内に流入する。燃焼器30には、燃料Fが供給される。燃焼器30内では、圧縮空気中で燃料Fが燃焼して、高温高圧の燃焼ガスGが生成される。この燃焼ガスGは、燃焼器30からタービンケーシング45内の環状の燃焼ガス流路49に送られる。燃焼ガスGは、燃焼ガス流路49内を軸線下流側Dadへ流れる過程で、タービンロータ41を回転させる。このタービンロータ41の回転で、ガスタービンロータ11に接続されている発電機GENのロータが回転する。この結果、発電機GENは発電する。
【0034】
以下、タービン40の動翼列43を構成する動翼に関する実施形態、及びその変形例について説明する。
【0035】
「動翼の一実施形態」
動翼の一実施形態について、図2図6を参照して説明する。
【0036】
図2図4に示すように、本実施形態における動翼50は、翼体51と、プラットフォーム58と、翼根59と、冷却空気通路60と、を備える。
【0037】
翼体51は、断面が翼形を成し、断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向に延びている。この翼体51は、翼高さ方向に対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面52と、翼高さ方向におけるチップ側とハブ側とのうち、チップ側を向くチップ面55と、を有する。翼面52は、翼高さ方向に延びる前縁53f及び後縁53bと、前縁53fから後縁53bにまで広がっている正圧面54p及び負圧面54nと、を有する。正圧面54pと負圧面54nとは、互に背合わせの関係である。正圧面54pは、凹曲面であり、負圧面54nは凸曲面である。
【0038】
この動翼50を前述のロータ軸42に取り付けると、図1を用いて前述した燃焼ガス流路49内に翼体51が存在することになる。このため、本実施形態における動翼50は、翼体51を冷却するため、冷却空気Acが流れる冷却空気通路60を備える。
【0039】
この動翼50を前述のロータ軸42に取り付けると、前述の翼高さ方向が径方向Drになり、チップ側が径方向外側Droになり、ハブ側が径方向内側Driになる。また、後縁53bに対して前縁53fが存在する前側が軸線上流側Dauになり、前縁53fに対して後縁53bが存在する後側が軸線下流側Dadになる。さらに、正圧面54pと負圧面54nとが並んでいる方向が周方向Dcになる。そこで、以下では、翼高さ方向を翼高さ方向Drとして示し、チップ側をチップ側Droとして示し、ハブ側をハブ側Driとして示す。また、後縁53bに対して前縁53fが存在する前側を前側Dauとして示し、前縁53fに対して後縁53bが存在する後側を後側Dadとして示す。
【0040】
プラットフォーム58は、翼体51のハブ側Driに設けられている。このプラットフォーム58は、翼高さ方向Drに垂直な方向の方向成分を含む方向に広がる四角板状の部材(図4参照)である。
【0041】
翼根59は、プラットフォーム58のハブ側Driに設けられている。この翼根59は、動翼50をロータ軸42に取り付けるための部分である。この翼根59は、断面形状がクリスマスツリー形状を成している。
【0042】
冷却空気通路60は、翼根59、プラットフォーム58及び翼体51にかけて形成され、冷却空気Acが流通可能な通路である。この冷却空気通路60は、導入通路61と、翼体通路63と、複数の前噴出孔66と、複数の後噴出孔67と、複数のチップ噴出孔68と、複数の正圧側角部噴出孔69pと、複数の負圧側角部噴出孔69nと、を有する。
【0043】
導入通路61は、図2及び図3に示すように、少なくとも翼根59内で、翼高さ方向Drに延び、翼体51のキャンバーラインCLに沿って並んでいる二つの導入通路部62を有する。二つの導入通路部62のうち、前側Dauの第一導入通路部62a及び後側Dadの第二導入通路部62bは、いずれも、翼根59の底面59bで開口している入口62iを有し、この入口62iから冷却空気Acが流入可能である。なお、翼根59の底面59bとは、翼根59中で、ハブ側Driを向き且つ最もハブ側Driに位置している面である。
【0044】
翼体通路63は、翼体51内で、翼高さ方向Drに延び、キャンバーラインCLに沿って、前側Dauから後側Dadに並んでいる六つの翼体通路部64と、六つの翼体通路部64中で互いに隣接している二つ翼体通路部64を連通させる連通部65と、を有する。ここで、六つの翼体通路部64のうち、最も前側Dauの翼体通路部64を第一翼体通路部64aとし、第一翼体通路部64aよりも後側Dadに位置して第一翼体通路部64aに隣接している翼体通路部64を第二翼体通路部64bとし、第二翼体通路部64bよりも後側Dadに位置して第二翼体通路部64bに隣接している翼体通路部64を第三翼体通路部64cとする。さらに、六つの翼体通路部64のうち、第三翼体通路部64cよりも後側Dadに位置して第三翼体通路部64cに隣接している翼体通路部64を第四翼体通路部64dとし、第四翼体通路部64dよりも後側Dadに位置して第四翼体通路部64dに隣接している翼体通路部64を第五翼体通路部64eとし、最も後側Dadに位置して第五翼体通路部64eに隣接している翼体通路部64を第六翼体通路部64fとする。
【0045】
連通部65は、1-2ハブ側連通部65aと、2-3チップ側連通部65cと、4-5チップ側連通部65dと、5-6ハブ側連通部65eと、を有する。1-2ハブ側連通部65aは、第一翼体通路部64aのハブ側Driの部分と、第二翼体通路部64bのハブ側Driの部分と、を連通させる。2-3チップ側連通部65cは、第二翼体通路部64bのチップ側Droの部分と、第三翼体通路部64cのチップ側Droの部分と、を連通させる。4-5チップ側連通部65dは、第四翼体通路部64dのチップ側Droの部分と、第五翼体通路部64eのチップ側Droの部分と連通させる。5-6ハブ側連通部65eは、第五翼体通路部64eのハブ側Driの部分と、第六翼体通路部64fのハブ側Driの部分と、を連通させる。
【0046】
第一導入通路部62aは、第三翼体通路部64cのハブ側Driの部分に連通し、第二導入通路部62bは、第四翼体通路部64dのハブ側Driの部分に連通している。
【0047】
複数の前噴出孔66は、いずれも、翼面52中で前縁53f及びこの前縁53f近傍の領域で開口している出口を有し、第一翼体通路部64aを流れている冷却空気Acの一部をこの出口から噴出可能である。複数の後噴出孔67は、翼面52中の後縁53bで開口している出口を有し、第六翼体通路部64fを流れている冷却空気Acの一部をこの出口から噴出可能である。
【0048】
複数のチップ噴出孔68は、図2図6に示すように、いずれも、チップ面55で開口している出口68o(図2参照)を有し、翼体通路63からの冷却空気Acをこの出口68oから噴出可能である。複数のチップ噴出孔68毎の出口68oは、キャンバーラインCLに沿って、前側Dauから後側Dadに並んでいる。
【0049】
複数の正圧側角部噴出孔69pは、図2図4図5に示すように、いずれも、正圧面54pとチップ面55との境部である正圧側角部56pで開口している出口を有し、翼体通路63からの冷却空気Acをこの出口から噴出可能である。複数の正圧側角部噴出孔69p毎の出口は、正圧側角部56pで、前側Dauから後側Dadに並んでいる。複数の負圧側角部噴出孔69nは、いずれも、負圧面54nとチップ面55との境部である負圧側角部56nで開口している出口を有し、翼体通路63からの冷却空気Acをこの出口から噴出可能である。複数の負圧側角部噴出孔69n毎の出口は、負圧側角部56nで、前側Dauから後側Dadに並んでいる。
【0050】
ここで、チップ面55のうち、チップ面55よりもハブ側Driに、第一翼体通路部64aが存在する領域を1領域55aとする。また、チップ面55のうち、チップ面55よりもハブ側Driに、第二翼体通路部64b、2-3チップ側連通部65c、及び第三翼体通路部64cが存在する領域を2-3領域55cとする。チップ面55のうち、チップ面55よりもハブ側Driに、第四翼体通路部64d、4-5チップ側連通部65d、及び第五翼体通路部64eが存在する領域を4-5領域55dとする。また、チップ面55のうち、チップ面55よりもハブ側Driに、第六翼体通路部64fが存在する領域を6領域55fとする。また、キャンバーラインCLの単位長さ当たりのチップ噴出孔68における出口68oの数を線密度とする。本実施形態では、4-5領域55dにおけるキャンバーラインCLに沿った方向の長さは、2-3領域55cにおけるキャンバーラインCLに沿った方向の長さよりも長い。
【0051】
複数のチップ噴出孔68のうちの一部の1領域噴出孔68aの出口68oは、チップ面55中の1領域55aで開口している。1領域噴出孔68aは、第一翼体通路部64aを流れてきた冷却空気Acをこの出口68oから噴出可能である。複数のチップ噴出孔68のうちの他の一部の複数の2-3領域噴出孔68cの出口68oは、チップ面55中の2-3領域55cで開口している。複数の2-3領域噴出孔68cは、第三翼体通路部64c、2-3チップ側連通部65c、及び第二翼体通路部64bにかけて流れる冷却空気Acの一部を、この出口68oから噴出可能である。複数のチップ噴出孔68のうちのさらに他の一部の複数の4-5領域噴出孔68dの出口68oは、チップ面55中の4-5領域55dで開口している。複数の4-5領域噴出孔68dは、第四翼体通路部64d、4-5チップ側連通部65d、及び第五翼体通路部64eにかけて流れる冷却空気Acの一部を、この出口68oから噴出可能である。
【0052】
4-5領域噴出孔68dにおける出口68oの線密度は、2-3領域噴出孔68cにおける出口68oの線密度よりも高い。具体的に、4-5領域噴出孔68dにおける出口68oの線密度は、2-3領域噴出孔68cにおける出口68oの線密度の1.5倍以上で、2.5倍以下である。例えば、4-5領域噴出孔68dにおける出口68oの線密度は、2-3領域噴出孔68cにおける出口68oの線密度の2倍である。
【0053】
また、4-5領域55dにおける単位面積当たりの複数の4-5領域噴出孔68dの出口68oの数である面積密度は、2-3領域55cにおける単位面積当たりの複数の2-3領域噴出孔68cの出口68oの数である面積密度よりも高い。具体的に、4-5領域噴出孔68dの出口68oの面積密度は、2-3領域噴出孔68cの出口68oの面積密度2倍以上で、10倍以下である。例えば、4-5領域噴出孔68dの出口68oの面積密度は、2-3領域噴出孔68cの出口68oの面積密度5倍である。
【0054】
第一導入通路部62aに流入した冷却空気Acは、第三翼体通路部64cに流入する。この冷却空気Acは、第三翼体通路部64cをチップ側Droに流れ、この過程で、第三翼体通路部64c周りを対流冷却する。第三翼体通路部64cを流れた冷却空気Acは、2-3チップ側連通部65cに流入する。この冷却空気Acは、2-3チップ側連通部65cを前側Dauに流れ、この過程で、2-3チップ側連通部65c周りを対流冷却する。2-3チップ側連通部65cを流れた冷却空気Acは、第二翼体通路部64bに流入する。この冷却空気Acは、第二翼体通路部64bをハブ側Driに流れ、この過程で、第二翼体通路部64b周りを対流冷却する。第二翼体通路部64bを流れた冷却空気Acは、1-2ハブ側連通部65aに流入する。この冷却空気Acは、1-2ハブ側連通部65aを前側Dauに流れ、この過程で、1-2ハブ側連通部65a周りを対流冷却する。1-2ハブ側連通部65aを流れた冷却空気Acは、第一翼体通路部64aに流入する。この冷却空気Acは、第一翼体通路部64aをチップ側Droに流れ、この過程で、第一翼体通路部64a周りを対流冷却する。第一翼体通路部64aを流れる冷却空気Acの一部は、複数の前噴出孔66に流入する。この冷却空気Acは、複数の前噴出孔66を流れ、この過程で、複数の前噴出孔66周りを対流冷却する。複数の前噴出孔66を流れた冷却空気Acは、複数の前噴出孔66の出口から噴出する。複数の前噴出孔66から噴出した冷却空気Acは、翼面52中の前縁53f周りをフィルム冷却する。
【0055】
第二導入通路部62bに流入した冷却空気Acは、第四翼体通路部64dに流入する。この冷却空気Acは、第四翼体通路部64dをチップ側Droに流れ、この過程で、第四翼体通路部64d周りを対流冷却する。第四翼体通路部64dを流れた冷却空気Acは、4-5チップ側連通部65dに流入する。この冷却空気Acは、4-5チップ側連通部65dを後側Dadに流れ、この過程で、4-5チップ側連通部65d周りを対流冷却する。4-5チップ側連通部65dを流れた冷却空気Acは、第五翼体通路部64eに流入する。この冷却空気Acは、第五翼体通路部64eをハブ側Driに流れ、この過程で、第五翼体通路部64e周りを対流冷却する。第五翼体通路部64eを流れた冷却空気Acは、5-6ハブ側連通部65eに流入する。この冷却空気Acは、5-6ハブ側連通部65eを後側Dadに流れ、この過程で、5-6ハブ側連通部65e周りを対流冷却する。5-6ハブ側連通部65eを流れた冷却空気Acは、第六翼体通路部64fに流入する。この冷却空気Acは、第六翼体通路部64fをチップ側Droに流れ、この過程で、第六翼体通路部64f周りを対流冷却する。第六翼体通路部64fを流れる冷却空気Acの一部は、複数の後噴出孔67に流入する。この冷却空気Acは、複数の後噴出孔67を流れ、この過程で、複数の後噴出孔67周りを対流冷却する。複数の後噴出孔67を流れた冷却空気Acは、複数の後噴出孔67の出口から噴出する。複数の後噴出孔67から噴出した冷却空気Acは、翼面52中の後縁53b周りをフィルム冷却する。
【0056】
以上のように、本実施形態における動翼50では、前述したように、第一導入通路部62aに流入した冷却空気Acは、第三翼体通路部64c、2-3チップ側連通部65c、第二翼体通路部64b、1-2ハブ側連通部65a、第一翼体通路部64aを流れてから、翼体51の前縁53fから噴出される。また、この動翼50では、前述したように、第二導入通路部62bに流入した冷却空気Acは、第四翼体通路部64d、4-5チップ側連通部65d、第五翼体通路部64e、5-6ハブ側連通部65e、第六翼体通路部64fを流れてから、翼体51の後縁53bから噴出される。このため、本実施形態における動翼50では、冷却空気Acの量を抑えつつも、動翼50を冷却することができる。
【0057】
ところで、図4に示すように、前側Dauから翼体51に向かってきた燃焼ガスGの一部は、この翼体51の正圧面54pに沿って後側Dadに流れ、他の一部は、この翼体51の負圧面54nに沿って後側Dadに流れる。翼体51を基準にして、正圧面54p側の燃焼ガスGの圧力は、負圧面54n側の燃焼ガスGの圧力より高い。翼体51には、この燃焼ガスGの圧力差により、周方向Dcの力が作用する。
【0058】
図5及び図6に示すように、翼体51のチップ面55とタービンケーシング45との間には、隙間がある。前述したように、正圧面54p側の燃焼ガスGの圧力は、負圧面54n側の燃焼ガスGの圧力より高いため、正圧面54p側の燃焼ガスGの一部は、チップ面55とタービンケーシング45との間の隙間に流入した後、負圧面54nの側に流出する。このため、翼体51のチップ面55も高温の燃焼ガスGに晒される。
【0059】
本実施形態における動翼50は、複数のチップ噴出孔68を有する。複数のチップ噴出孔68には、翼体通路63を流れる冷却空気Acの一部が流入する。この冷却空気Acは、チップ噴出孔68を流れる過程で、チップ噴出孔68周りを対流冷却する。複数のチップ噴出孔68を流れた冷却空気Acは、チップ面55で開口しているチップ噴出孔68の出口68oから噴出する。複数のチップ噴出孔68から噴出した冷却空気Acは、チップ面55をフィルム冷却する。
【0060】
よって、本実施形態では、燃焼ガスGによるチップ面55の熱損傷を抑えることができ、動翼50の耐久性を高めることができる。
【0061】
前述したように、正圧面54p側の燃焼ガスGの圧力は負圧面54n側の燃焼ガスGの圧力より高く、翼体51を基準にして、正圧面54p側の燃焼ガスGと負圧面54n側の燃焼ガスGとの間には圧力差がある。この圧力差は、翼体51の前縁53fから後縁53bの側に向かうに連れて、次第に大きくなってから次第に小さくなる。この圧力差が最大になる位置は、翼体51中で第四翼体通路部64d及び4-5チップ側連通部65dが存在する領域内である。このため、翼体51中で、第四翼体通路部64d、4-5チップ側連通部65d、第五翼体通路部64eが存在する領域での圧力差は、翼体51中で、第三翼体通路部64c、2-3チップ側連通部65c、及び第二翼体通路部64bが存在する領域の圧力差よりも大きくなる。この場合、チップ面55中の4-5領域55dを通過する燃焼ガスGの流速は、チップ面55中の2-3領域55cを通過する燃焼ガスGの流速より高くなる。燃焼ガスGの流速が高いと、燃焼ガスGと翼体51との間の熱伝達率が高まるため、チップ面55中の4-5領域55dと燃焼ガスGとの間の熱伝達率は、チップ面55中の2-3領域55cと燃焼ガスGとの間の熱伝達率よりも高くなる。
【0062】
本実施形態では、チップ面55中で熱伝達率が低い2-3領域55cで開口している2-3領域噴出孔68cの出口68oの線密度を低くする一方で、チップ面55中で熱伝達率が高い4-5領域55dで開口している4-5領域噴出孔68dの出口68oの線密度を高くしている。この結果、本実施形態では、チップ面55中で相対的に加熱されにくい2-3領域55cの出口68oから噴出する冷却空気Acの量が抑えられ、チップ面55中で相対的に加熱され易い4-5領域55dに対する冷却性能が高まる。よって、本実施形態では、冷却空気Acの使用量を抑えつつも、動翼50の耐久性を高めることができる。
【0063】
正圧側角部56pに沿った位置での燃焼ガスGの流れ、及び負圧側角部56nに沿った位置での燃焼ガスGの流れは、乱れる。これは、正圧側角部56pが、正圧面54p側の燃焼ガスGがチップ面55とタービンケーシング45との間の狭い隙間に流入する位置であり、負圧側角部56nが、チップ面55とタービンケーシング45との間の狭い隙間から広い負圧面54n側の空間に流出する位置であるからである。燃焼ガスGと翼体51との間の熱伝達率は、燃焼ガスGの流れが以上のように乱れる場所でも高くなる。本実施形態における動翼50は、周りの領域よりも相対的に熱伝達率が高くなる正圧側角部56pで開口している正圧側角部噴出孔69p、及び、周りの領域よりも相対的に熱伝達率が高くなる負圧側角部56nで開口している負圧側角部噴出孔69nを有する。このため、周りの領域よりも加熱され易い正圧側角部56p及び負圧側角部56nの冷却性能を高めることができる。
【0064】
正圧面54pと負圧面54nとの間の間隔である翼幅は、翼体51の前縁53fから後縁53bの側に向かうに連れて、次第に大きくなってから次第に小さくなる。この翼幅が最大になる位置は、前縁53fの側に寄った位置で、2-3チップ側連通部65c、及び第二翼体通路部64bが存在する領域内である。この関係で、4-5チップ側連通部65dの翼幅方向における幅は、2-3チップ側連通部65cの翼幅方向における幅よりも狭い。このため、4-5チップ側連通部65dを流れる冷却空気Acの流速は、2-3チップ側連通部65cを流れる冷却空気Acの流速よりも高くなり、4-5チップ側連通部65dを流れる冷却空気Acによる対流冷却効果は、2-3チップ側連通部65cを流れる冷却空気Acによる対流冷却効果よりも高くなる。本実施形態では、前述したように、チップ面55中で4-5領域55dにおけるキャンバーラインCLに沿った方向の長さは、チップ面55中で2-3領域55cにおけるキャンバーラインCLに沿った方向の長さよりも長い。しかしながら、本実施形態では、チップ面55中で相対的に加熱されにくい2-3領域55cに対する対流冷却効果よりも、チップ面55中で相対的に加熱され易い4-5領域55dに対する対流冷却効果が高い。よって、本実施形態では、この観点からも、動翼50の耐久性を高めることができる。
【0065】
「動翼の第一変形例」
図7に示すように、複数の4-5領域噴出孔68dは、チップ側Droに向かうに連れて次第に後縁53bの側に近づくよう、チップ面55に対して傾斜してもよい。この場合、複数の4-5領域噴出孔68dの長さが、複数の4-5領域噴出孔68dがチップ面55に対して垂直な方向に延びている場合の複数の4-5領域噴出孔68dの長さよりも長くなる。また、複数の4-5領域噴出孔68dのチップ面55に対する投影面積が、複数の4-5領域噴出孔68dがチップ面55に対して垂直な方向に延びている場合の複数の4-5領域噴出孔68dの投影面積よりも広くなる。このため、この変形例では、チップ面55中の広い領域にわたって、複数の4-5領域噴出孔68dを流れる冷却空気Acによる対流冷却効果を作用させることができる。
【0066】
なお、複数のチップ噴出孔68の全てを、以上の変形例と同様に、チップ面55に対して傾斜してもよい。
【0067】
「動翼の第二変形例及び第三変形例」
以上の実施形態における複数のチップ噴出孔68の出口68oは、全てキャンバーラインCL上に位置している。しかしながら、複数のチップ噴出孔68は、キャンバーラインCL上に位置していなくてもよい。例えば、図8に示す第二変形例のように、2-3領域55cにおける複数の2-3領域噴出孔68cの出口68oのうち、いずれかの出口68oがキャンバーラインCLより正圧面54pの側に位置し、他の出口68oがキャンバーラインCLより負圧面54nの側に位置してもよい。さらに、4-5領域55dにおける複数の4-5領域噴出孔68dの出口68oのうち、いずれかの出口68oがキャンバーラインCLより正圧面54pの側に位置し、他の出口68oがキャンバーラインCLより負圧面54nの側に位置してもよい。また、例えば、図9に示す第三変形例のように、2-3領域55cにおける複数の2-3領域噴出孔68cの出口68o、及び、4-5領域55dにおける複数の4-5領域噴出孔68dの出口68oのいずれもが、キャンバーラインCLより負圧面54nの側に位置してもよい。
【0068】
なお、以上の第二変形例及び第三変形例においても、以上の実施形態と同様、4-5領域55dにおける単位面積当たりの複数の4-5領域噴出孔68dの出口68oの数である面積密度は、2-3領域55cにおける単位面積当たりの複数の2-3領域噴出孔68cの出口68oの数である面積密度よりも高い。具体的に、4-5領域噴出孔68dの出口68oの面積密度は、2-3領域噴出孔68cの出口68oの面積密度2倍以上で、10倍以下である。
【0069】
「その他の変形例」
以上の実施形態における動翼50は、複数の正圧側角部噴出孔69pと複数の負圧側角部噴出孔69nとの両方を有する。しかしながら、複数の正圧側角部噴出孔69pと複数の負圧側角部噴出孔69nとのうち、少なくとも一方を省略してもよい。複数の正圧側角部噴出孔69pと複数の負圧側角部噴出孔69nとのうち、一方のみを省略する場合には、複数の負圧側角部噴出孔69nを省略し、複数の正圧側角部噴出孔69pを残すことが好ましい。
【0070】
本開示は、以上で説明した実施形態及び変形例に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0071】
「付記」
以上の実施形態及び変形例における動翼50は、例えば、以下のように把握される。
【0072】
(1)第一態様における動翼50は、
断面が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向Drに延びる翼体51と、前記翼高さ方向Drにおけるチップ側Droとハブ側Driとうち、前記翼体51の前記ハブ側Driの端に設けられているプラットフォーム58と、前記プラットフォーム58の前記ハブ側Driに設けられている翼根59と、前記翼根59、前記プラットフォーム58及び前記翼体51にかけて形成され、冷却空気Acが流通可能な冷却空気通路60と、を備える。
前記翼体51は、前記翼高さ方向Drに対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面52と、前記翼高さ方向Drにおける前記チップ側Droを向くチップ面55と、を有する。前記翼面52は、前記翼高さ方向Drに延びる前縁53f及び後縁53bと、前記翼高さ方向Drに延びて前記前縁53fから前記後縁53bにまで広がっている正圧面54p及び負圧面54nと、を有する。
前記冷却空気通路60は、少なくとも前記翼根59内に形成されている導入通路61と、少なくとも前記翼体51内に形成されている翼体通路63と、前記チップ面55で開口している出口68oを有し、前記出口68oから冷却空気Acを噴出可能な複数のチップ噴出孔68と、を有する。
前記導入通路61は、第一導入通路部62a及び第二導入通路部62bを有する。第一導入通路部62a及び第二導入通路部62bは、いずれも、前記翼根59の表面で開口している入口62iを有し、前記入口62iから冷却空気Acが流入可能である。
前記翼体通路63は、前記翼高さ方向Drに延び、前記翼体51のキャンバーラインCLに沿って、前記前縁53fの側から前記後縁53bの側に並んでいる六つの翼体通路部64と、六つの翼体通路部64中で互いに隣接している二つ翼体通路部64を連通させる連通部65と、を有する。
前記六つの翼体通路部64は、最も前記前縁53fの側の第一翼体通路部64aと、前記第一翼体通路部64aよりも前記後縁53bの側に位置して前記第一翼体通路部64aに隣接している第二翼体通路部64bと、前記第二翼体通路部64bよりも前記後縁53bの側に位置して前記第二翼体通路部64bに隣接している第三翼体通路部64cと、前記第三翼体通路部64cよりも前記後縁53bの側に位置して前記第三翼体通路部64cに隣接している第四翼体通路部64dと、前記第四翼体通路部64dよりも前記後縁53bの側に位置して前記第四翼体通路部64dに隣接している第五翼体通路部64eと、最も前記後縁53bの側に位置して、前記第五翼体通路部64eに隣接している第六翼体通路部64fと、を有する。
前記連通部65は、前記第一翼体通路部64aの前記ハブ側Driの部分と、前記第二翼体通路部64bの前記ハブ側Driの部分と、を連通させる1-2ハブ側連通部65aと、前記第二翼体通路部64bの前記チップ側Droの部分と、前記第三翼体通路部64cの前記チップ側Droの部分と、を連通させる2-3チップ側連通部65cと、前記第四翼体通路部64dの前記チップ側Droの部分と、前記第五翼体通路部64eの前記チップ側Droの部分と、連通させる4-5チップ側連通部65dと、前記第五翼体通路部64eの前記ハブ側Driの部分と、前記第六翼体通路部64fの前記ハブ側Driの部分と、を連通させる5-6ハブ側連通部65eと、を有する。
前記第一導入通路部62aは、前記第三翼体通路部64cの前記ハブ側Driの部分に連通し、前記第二導入通路部62bは、前記第四翼体通路部64dの前記ハブ側Driの部分に連通している。
前記チップ面55は、前記チップ面55よりも前記ハブ側Driに、前記第二翼体通路部64b、前記2-3チップ側連通部65c、及び前記第三翼体通路部64cが存在する2-3領域55cと、前記チップ面55のうち、前記チップ面55よりも前記ハブ側Driに、前記第四翼体通路部64d、前記4-5チップ側連通部65d、及び前記第五翼体通路部64eが存在する4-5領域55dと、を有する。
前記複数のチップ噴出孔68のうち、一部の複数の2-3領域噴出孔68cは、前記出口68oが前記チップ面55中の前記2-3領域55cで開口する。前記複数のチップ噴出孔68のうち、他の一部の複数の4-5領域噴出孔68dは、前記出口68oが前記チップ面55中の前記4-5領域55dで開口する。
前記4-5領域55dにおける単位面積当たりの前記複数の4-5領域噴出孔68dの前記出口68oの数である面積密度は、前記2-3領域55cにおける単位面積当たりの前記複数の2-3領域噴出孔68cの前記出口68oの数である面積密度よりも高い。
【0073】
本態様における動翼50では、第一導入通路部62aに流入した冷却空気Acは、第三翼体通路部64c、2-3チップ側連通部65c、第二翼体通路部64b、1-2ハブ側連通部65a、第一翼体通路部64aを流れ、これら通路部及び連通部を流れる過程で、これら通路部周り及び連通部周りを対流冷却する。本態様における動翼50では、第二導入通路部62bに流入した冷却空気Acは、第四翼体通路部64d、4-5チップ側連通部65d、第五翼体通路部64e、5-6ハブ側連通部65e、第六翼体通路部64fを流れ、これら通路部及び連通部を流れる過程で、これら通路部周り及び連通部周りを対流冷却する。このため、本態様における動翼50では、冷却空気Acの量を抑えつつも、動翼50を冷却することができる。
【0074】
前縁53fの側から翼体51に向かってきた燃焼ガスGの一部は、この翼体51の正圧面54pに沿って後縁53bの側に流れ、他の一部は、この翼体51の負圧面54nに沿って後縁53bの側に流れる。翼体51を基準にして、正圧面54p側の燃焼ガスGの圧力は、負圧面54n側の燃焼ガスGの圧力より高い。翼体51には、この燃焼ガスGの圧力差により、周方向Dcの力が作用する。翼体51のチップ面55とタービンケーシング45との間には、隙間がある。前述したように、翼体51を基準にして、正圧面54p側の燃焼ガスGの圧力は、負圧面54n側の燃焼ガスGの圧力より高いため、正圧面54p側の燃焼ガスGの一部は、チップ面55とタービンケーシング45との間の隙間に流入した後、負圧面54nの側に流出する。よって、翼体51のチップ面55も高温の燃焼ガスGに晒される。
【0075】
本態様における動翼50は、複数のチップ噴出孔68を有する。複数のチップ噴出孔68には、翼体通路63を流れる冷却空気Acの一部が流入する。この冷却空気Acは、チップ噴出孔68を流れる過程で、チップ噴出孔68周りを対流冷却する。複数のチップ噴出孔68を流れた冷却空気Acは、チップ面55で開口しているチップ噴出孔68の出口68oから噴出する。複数のチップ噴出孔68から噴出した冷却空気Acは、チップ面55をフィルム冷却する。
【0076】
よって、本態様では、燃焼ガスGによるチップ面55の熱損傷を抑えることができ、動翼50の耐久性を高めることができる。
【0077】
前述したように、翼体51を基準にして、正圧面54p側の燃焼ガスGと負圧面54n側の燃焼ガスGとの間には圧力差がある。この圧力差は、翼体51の前縁53fから後縁53bの側に向かうに連れて、次第に大きくなってから次第に小さくなる。この圧力差が最大になる位置は、翼体51中で第四翼体通路部64d及び4-5チップ側連通部65dが存在する領域内である。このため、翼体51中で、第四翼体通路部64d、4-5チップ側連通部65d、第五翼体通路部64eが存在する領域での圧力差は、翼体51中で、第三翼体通路部64c、2-3チップ側連通部65c、及び第二翼体通路部64bが存在する領域の圧力差よりも大きくなる。この場合、チップ面55中の4-5領域55dを通過する燃焼ガスGの流速は、チップ面55中の2-3領域55cを通過する燃焼ガスGの流速より高くなる。燃焼ガスGの流速が高いと、燃焼ガスGと翼体51との間の熱伝達率が高まるため、チップ面55中の4-5領域55dと燃焼ガスGとの間の熱伝達率は、チップ面55中の2-3領域55cと燃焼ガスGとの間の熱伝達率よりも高くなる。
【0078】
本態様では、チップ面55中で熱伝達率が低い2-3領域55cで開口している2-3領域噴出孔68cの出口68oの面積密度を低くする一方で、チップ面55中で熱伝達率が高い4-5領域55dで開口している4-5領域噴出孔68dの出口68oの面積密度を高くしている。この結果、本態様では、チップ面55中で相対的に加熱されにくい2-3領域55cの出口68oから噴出する冷却空気Acの量が抑えられ、チップ面55中で相対的に加熱され易い4-5領域55dに対する冷却性能が高まる。よって、本実施形態では、冷却空気Acの使用量を抑えつつも、動翼50の耐久性を高めることができる。
【0079】
(2)第二態様における動翼50は、
前記第一態様における動翼において、前記複数の4-5領域噴出孔における前記出口の前記面積密度は、前記複数の2-3領域噴出孔における前記出口の前記面積密度の2倍以上である。
【0080】
(3)第三態様における動翼50は、
前記第二態様における動翼において、前記複数の4-5領域噴出孔における前記出口の前記面積密度は、前記複数の2-3領域噴出孔における前記出口の前記面積密度の10倍以下である。
【0081】
(4)第四態様における動翼50は、
前記第一態様から前記第三態様のうちのいずれか一態様における動翼50において、
前記複数のチップ噴出孔68毎の前記出口68oは、前記キャンバーラインCLに沿って、前記前縁53fの側から前記後縁53bの側に並ぶ。前記キャンバーラインCLの単位長さあたりの前記複数のチップ噴出孔68における前記出口68oの数を線密度とすると、前記複数の4-5領域噴出孔68dにおける前記出口68oの前記線密度は、前記複数の2-3領域噴出孔68cにおける前記出口68oの前記線密度よりも高い。
【0082】
(5)第五態様における動翼50は、
前記第四態様における動翼50において、前記4-5領域55dにおける前記キャンバーラインCLに沿った方向の長さは、前記2-3領域55cにおける前記キャンバーラインCLに沿った方向の長さよりも長い。
【0083】
正圧面54pと負圧面54nとの間の間隔である翼幅は、翼体51の前縁53fから後縁53bの側に向かうに連れて、次第に大きくなってから次第に小さくなる。この翼幅が最大になる位置は、前縁53fの側に寄った位置で、2-3チップ側連通部65c、及び第二翼体通路部64bが存在する領域内である。この関係で、4-5チップ側連通部65dの翼幅方向における幅は、2-3チップ側連通部65cの翼幅方向における幅よりも狭い。このため、4-5チップ側連通部65dを流れる冷却空気Acの流速は、2-3チップ側連通部65cを流れる冷却空気Acの流速よりも高くなり、4-5チップ側連通部65dを流れる冷却空気Acによる対流冷却効果は、2-3チップ側連通部65cを流れる冷却空気Acによる対流冷却効果よりも高くなる。本態様では、チップ面55中で4-5領域55dにおけるキャンバーラインCLに沿った方向の長さは、チップ面55中で2-3領域55cにおけるキャンバーラインCLに沿った方向の長さよりも長い。しかしながら、本態様では、チップ面55中で相対的に加熱されにくい2-3領域55cに対する対流冷却効果よりも、チップ面55中で相対的に加熱され易い4-5領域55dに対する対流冷却効果が高い。よって、本態様では、動翼50の耐久性を高めることができる。
【0084】
(6)第六態様における動翼50は、
前記第四態様又は前記第五態様における動翼50において、前記複数の4-5領域噴出孔68dにおける前記出口68oの前記線密度は、前記複数の2-3領域噴出孔68cにおける前記出口68oの前記線密度の1.5倍以上である。
【0085】
(7)第七態様における動翼50は、
前記第六態様における動翼50において、前記複数の4-5領域噴出孔68dにおける前記出口68oの前記線密度は、前記複数の2-3領域噴出孔68cにおける前記出口68oの前記線密度の2.5倍以下である。
【0086】
(8)第八態様における動翼50は、
前記第一態様から前記第七態様のうちのいずれか一態様における動翼50において、前記複数のチップ噴出孔68のうち、少なくとも前記複数の4-5領域噴出孔68dは、前記チップ側Droに向かうに連れて次第に前記後縁53bの側に近づくよう、前記チップ面55に対して傾斜している。
【0087】
本態様では、複数の4-5領域噴出孔68dの長さが、複数の4-5領域噴出孔68dがチップ面55に対して垂直な方向に延びている場合の複数の4-5領域噴出孔68dの長さよりも長くなる。また、本態様では、複数の4-5領域噴出孔68dのチップ面55に対する投影面積が、複数の4-5領域噴出孔68dがチップ面55に対して垂直な方向に延びている場合の複数の4-5領域噴出孔68dの投影面積よりも広くなる。このため、本態様では、チップ面55中の広い領域にわたって、複数の4-5領域噴出孔68dを流れる冷却空気Acによる対流冷却効果を作用させることができる。
【0088】
(9)第九態様における動翼50は、
前記第一態様から前記第八態様のうちのいずれか一態様における動翼50において、前記冷却空気通路60は、前記正圧面54pと前記チップ面55との境部である正圧側角部56pで開口している出口を有し、前記前縁53fの側から前記後縁53bの側に並んで、前記翼体通路63からの冷却空気Acを前記正圧側角部56pの前記出口から噴出可能な複数の正圧側角部噴出孔69pを有する。
【0089】
正圧側角部56pに沿った位置での燃焼ガスGの流れは、乱れる。これは、正圧側角部56pが、正圧面54p側の燃焼ガスGがチップ面55とタービンケーシング45との間の狭い隙間に流入する位置であるからである。燃焼ガスGと翼体51との間の熱伝達率は、燃焼ガスGの流れが以上のように乱れる場所でも高くなる。本態様における動翼50は、周りの領域よりも相対的に熱伝達率が高くなる正圧側角部56pで開口している正圧側角部噴出孔69pを有する。このため、本態様では、周りの領域よりも加熱され易い正圧側角部56pの冷却性能を高めることができる。
【0090】
(10)第十態様における動翼50は、
前記第一態様から前記第九態様のうちのいずれか一態様における動翼50において、前記冷却空気通路60は、前記負圧面54nと前記チップ面55との境部である負圧側角部56nで開口している出口を有し、前記前縁53fの側から前記後縁53bの側に並んで、前記翼体通路63からの冷却空気Acを前記負圧側角部56nの前記出口から噴出可能な複数の負圧側角部噴出孔69nを有する。
【0091】
負圧側角部56nに沿った位置での燃焼ガスGの流れは、乱れる。これは、負圧側角部56nが、チップ面55とタービンケーシング45との間の狭い隙間から広い負圧面54n側の空間に流出する位置であるからである。燃焼ガスGと翼体51との間の熱伝達率は、燃焼ガスGの流れが以上のように乱れる場所でも高くなる。本態様における動翼50は、周りの領域よりも相対的に熱伝達率が高くなる負圧側角部56nで開口している負圧側角部噴出孔69nを有する。このため、本態様では、周りの領域よりも加熱され易い負圧側角部56nの冷却性能を高めることができる。
【0092】
以上の実施形態及び変形例におけるガスタービン10は、例えば、以下のように把握される。
(11)第十一態様におけるガスタービン10は、
前記第一態様から前記第十態様のうちのいずれか一態様における動翼50を複数備えると共に、軸線Arを中心として回転可能で、複数の前記動翼50が前記軸線Arに対する周方向Dcに並んで取り付けられているロータ軸42と、複数の前記動翼50及び前記ロータ軸42の外周側を覆うタービンケーシング45と、を備える。前記動翼50は、前記翼高さ方向Drが前記軸線Arに対する径方向になり、前記チップ側Droが前記軸線Arに対する径方向外側になるよう、前記ロータ軸42に取り付けられている。
【符号の説明】
【0093】
10:ガスタービン
11:ガスタービンロータ
14:中間ケーシング
15:ガスタービンケーシング
20:圧縮機
21:圧縮機ロータ
22:ロータ軸
23:動翼列
25:圧縮機ケーシング
26:静翼列
30:燃焼器
40:タービン
41:タービンロータ
42:ロータ軸
43:動翼列
45:タービンケーシング
49:燃焼ガス流路
50:動翼
51:翼体
52:翼面
53f:前縁
53b:後縁
54n:負圧面
54p:正圧面
55:チップ面
55a:1領域
55c:2-3領域
55d:4-5領域
55f:6領域
56n:負圧側角部
56p:正圧側角部
58:プラットフォーム
59:翼根
59b:底面
60:冷却空気通路
61:導入通路
62:導入通路部
62a:第一導入通路部
62b:第二導入通路部
62i:入口
63:翼体通路
64:翼体通路部
64a:第一翼体通路部
64b:第二翼体通路部
64c:第三翼体通路部
64d:第四翼体通路部
64e:第五翼体通路部
64f:第六翼体通路部
65:連通部
65a:1-2ハブ側連通部
65c:2-3チップ側連通部
65d:4-5チップ側連通部
65e:5-6ハブ側連通部
66:前噴出孔
67:後噴出孔
68:チップ噴出孔
68o:出口
68a:1領域噴出孔
68c:2-3領域噴出孔
68d:4-5領域噴出孔
69n:負圧側角部噴出孔
69p:正圧側角部噴出孔
A:空気
Ac:冷却空気
F:燃料
G:燃焼ガス
Ar:軸線
CL:キャンバーライン
Da:軸線方向
Dau:前側(又は、軸線上流側)
Dad:後側(又は、軸線下流側)
Dc:周方向
Dr:翼高さ方向(又は、径方向)
Dri:ハブ側(又は、径方向内側)
Dro:チップ側(又は径方向外側)
【要約】
【課題】冷却空気の使用量を抑えつつも、動翼の耐久性を高める。
【解決手段】動翼の冷却空気通路は、翼体通路と、翼体のチップ面で開口し、翼体通路からの冷却空気を噴出可能な複数のチップ噴出孔と、を有する。前記複数のチップ噴出孔のうち、一部の複数の2-3領域噴出孔は、前記チップ面中の2-3領域で開口し、前記複数のチップ噴出孔のうち、他の一部の複数の4-5領域噴出孔は、前記チップ面中の4-5領域で開口する。前記4-5領域における単位面積当たりの前記複数の4-5領域噴出孔における前記出口の数である面積密度は、前記2-3領域における単位面積当たりの前記複数の2-3領域噴出孔における前記出口の数である面積密度よりも高い。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9