(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】磁気式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
G01D5/245 110L
(21)【出願番号】P 2024505672
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2022009763
(87)【国際公開番号】W WO2023170753
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】堀田 明良
(72)【発明者】
【氏名】武舎 武史
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-143991(JP,A)
【文献】特開2015-28450(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に移動する磁気スケールユニットと位置検出ユニットとを備え、
前記磁気スケールユニットは、
同じ第1磁化方向を持つ3個以上の磁石が第1方向に配列される第1磁石群と、前記第1磁石群に前記第1方向に隣り合い、前記第1磁化方向と反対の磁化方向である第2磁化方向を持つ3個以上の磁石が前記第1方向に配列される第2磁石群と、を備え、
前記位置検出ユニットは、前記磁気スケールユニットから生じる磁界を検出する磁気センサを備え、
前記第1磁石群において、磁石幅は、端部から中央部に行くに従って大きくなり、前記磁石幅の各々は、磁石ピッチより小さく、
前記第2磁石群において、前記磁石幅は、端部から中央部に行くに従って大きくなり、前記磁石幅の各々は、前記磁石ピッチより小さい
ことを特徴とする磁気式エンコーダ。
【請求項2】
前記磁気スケールユニットの前記第1磁石群および前記第2磁石群の各々は、前記磁石ピッチが同じであり、前記磁石幅が正弦波関数に従って変化する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気式エンコーダ。
【請求項3】
相対的に移動する磁気スケールユニットと位置検出ユニットとを備え、
前記磁気スケールユニットは、
同じ第1磁化方向を持つ3個以上の磁石が第1方向に配列される第1磁石群と、前記第1磁石群に前記第1方向に隣り合い、前記第1磁化方向と反対の磁化方向である第2磁化方向を持つ3個以上の磁石が前記第1方向に配列される第2磁石群と、を備え、
前記位置検出ユニットは、前記磁気スケールユニットから生じる磁界を検出する磁気センサを備え、
前記第1磁石群において、磁石ピッチは、端部から中央部に行くに従って小さくなり、磁石ピッチの各々は、磁石幅より大きく、
前記第2磁石群において、前記磁石ピッチは、端部から中央部に行くに従って小さくなり、前記磁石ピッチの各々は、前記磁石幅より大きい
ことを特徴とする磁気式エンコーダ。
【請求項4】
前記磁気スケールユニットの前記第1磁石群および前記第2磁石群の各々は、前記磁石幅が同じであり、前記磁石ピッチが正弦波関数に従って変化する
ことを特徴とする請求項3に記載の磁気式エンコーダ。
【請求項5】
相対的に移動する磁気スケールユニットと位置検出ユニットとを備え、
前記磁気スケールユニットは、
同じ第1磁化方向を持つ3個以上の磁石が第1方向に配列される第1磁石群と、前記第1磁石群に前記第1方向に隣り合い、前記第1磁化方向と反対の磁化方向である第2磁化方向を持つ3個以上の磁石が前記第1方向に配列される第2磁石群と、を備え、
前記位置検出ユニットは、前記磁気スケールユニットから生じる磁界を検出する磁気センサを備え、
前記第1磁石群において、磁石幅は、端部から中央部に行くに従って大きくなり、磁石ピッチは、端部から中央部に行くに従って大きくなり、前記磁石幅は、対応する磁石ピッチより小さく、
前記第2磁石群において、前記磁石幅は、端部から中央部に行くに従って大きくなり、前記磁石ピッチは、端部から中央部に行くに従って大きくなり、前記磁石幅は、対応する磁石ピッチより小さい
ことを特徴とする磁気式エンコーダ。
【請求項6】
前記磁気スケールユニットの前記第1磁石群および前記第2磁石群の各々は、前記磁石幅および前記磁石ピッチが正弦波関数に従って変化する
ことを特徴とする請求項5に記載の磁気式エンコーダ。
【請求項7】
第1磁石群の前記第1方向の長さおよび前記第2磁石群の前記第1方向の長さは、正弦波波形の1/2波長に対応する
ことを特徴とする請求項1から6の何れか一つに記載の磁気式エンコーダ。
【請求項8】
前記磁気スケールユニットが固定子に配置され、前記位置検出ユニットが可動子に配置され、
前記第1磁石群および前記第2磁石群が、前記第1方向に複数個設置される
ことを特徴とする請求項1から7の何れか一つに記載の磁気式エンコーダ。
【請求項9】
前記位置検出ユニットが固定子に配置され、前記磁気スケールユニットが可動子に配置され、
前記磁気センサが、前記第1方向に複数個設置される
ことを特徴とする請求項1から7の何れか一つに記載の磁気式エンコーダ。
【請求項10】
前記磁気式エンコーダは、リニアエンコーダである
ことを特徴とする請求項1から9の何れか一つに記載の磁気式エンコーダ。
【請求項11】
前記磁気式エンコーダは、ロータリーエンコーダである
ことを特徴とする請求項1から9の何れか一つに記載の磁気式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、相対移動する磁気検出ユニットおよび位置検出ユニットを有する磁気式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気式エンコーダは、相対移動する磁気検出ユニットおよび位置検出ユニットを有する。このような磁気式エンコーダは、回転型サーボモータを制御するための回転検出器であるロータリーエンコーダ、リニアモータを制御するための位置検出器であるリニアエンコーダなどに用いられている。
【0003】
特許文献1には、複数の磁極を有する磁気スケールユニットが示されている。磁気スケールユニットは、同一極性の複数の磁極を間隔を開けて等ピッチで配列した磁極列を有する。磁極間の間隔は、磁極の配列方向の幅より大きく、かつ磁極の配列方向の幅の2倍より小さい。磁気センサは磁気スケールユニットの磁場変化を電気信号として出力し、電圧のピークから位置情報が取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、複数の同一極性の磁石の幅が全て同じであるので、磁場のピーク位置と、ピーク位置に対応する離散的な位置情報しか得られないという問題がある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、滑らかな長周期の正弦波信号を得ることができ、広い範囲で連続的かつ高精度な位置情報が取得できる磁気式エンコーダを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示における磁気式エンコーダは、相対的に移動する磁気スケールユニットと位置検出ユニットとを備える。磁気スケールユニットは、同じ第1磁化方向を持つ3個以上の磁石が第1方向に配列される第1磁石群と、第1磁石群に第1方向に隣り合い、第1磁化方向と反対の磁化方向である第2磁化方向を持つ3個以上の磁石が第1方向に配列される第2磁石群と、を備える。位置検出ユニットは、磁気スケールユニットから生じる磁界を検出する磁気センサを備える。第1磁石群において、磁石幅は、端部から中央部に行くに従って大きくなり、磁石幅の各々は、磁石ピッチより小さく、第2磁石群において、磁石幅は、端部から中央部に行くに従って大きくなり、磁石幅の各々は、磁石ピッチより小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示における磁気式エンコーダによれば、滑らかな長周期の正弦波信号を得ることができ、広い範囲で連続的かつ高精度な位置情報が取得できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る磁気式エンコーダを示す斜視図
【
図2】実施の形態1に係る磁気式エンコーダを基体の上部を省略して示す斜視図
【
図3】実施の形態1に係る磁気式エンコーダを示す正面図
【
図4】実施の形態1に係る磁気式エンコーダの磁石群および磁石群の磁石の配列を示す拡大正面図
【
図6】比較例の磁気スケールユニットによって磁気検出素子に印加される磁束密度の波形を示す図
【
図7】実施の形態1に係る磁気式エンコーダの磁気スケールユニットによって磁気センサに印加される磁束密度の波形を示す図
【
図8】実施の形態2に係る磁気式エンコーダの構成を示す正面図
【
図9】実施の形態2に係る磁気式エンコーダの磁気スケールユニットによって磁気センサに印加される磁束密度の波形を示す図
【
図10】実施の形態3に係る磁気式エンコーダの磁気スケールユニットの構成を示す拡大正面図
【
図11】実施の形態4に係る磁気式エンコーダの磁気スケールユニットの構成を示す拡大正面図
【
図12】実施の形態5に係る磁気式エンコーダの構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態に係る磁気式エンコーダを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る磁気式エンコーダを示す斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る磁気式エンコーダを基体の上部を省略して示す斜視図である。
図3は、実施の形態1に係る磁気式エンコーダを示す正面図である。
図2では、磁石の配置を判りやすくするために、磁石群102,103の上側に存在する基体104の一部の図示を省略している。
【0012】
実施の形態1の磁気式エンコーダ100は、磁気スケールユニット101と、磁気スケールユニット101から生じる磁界を検出する位置検出ユニット105とを備える。実施の形態1の磁気式エンコーダ100は、リニアエンコーダである。磁気スケールユニット101は、第1磁石群である磁石群102および第2磁石群である磁石群103と、磁石群102,103を固定する非磁性体の基体104を有する。位置検出ユニット105は、磁気スケールユニット101から生じる磁界を検出する複数の磁気センサ106と、磁気センサ106が取り付けられる基板107とを有する。
図1~
図3には、x、y、zの3次元方向が示されている。x方向は、磁気スケールユニット101の移動方向に対応し、z方向は、磁気スケールユニット101と位置検出ユニット105とが対向する方向に対応し、y方向は、x方向およびz方向に垂直な方向である。本開示において、リニアエンコーダの場合、x方向が第1方向に対応する。
【0013】
磁気スケールユニット101と位置検出ユニット105とは、相対的に移動する。実施の形態1では、磁気スケールユニット101は、x方向に移動する可動子である。位置検出ユニット105は、磁気スケールユニット101からz方向に一定距離を離間されて固定されている固定子である。位置検出ユニット105は、磁気スケールユニット101が通過するときの磁界変化から磁気スケールユニット101の位置を検出する。
【0014】
図4は、実施の形態1に係る磁気式エンコーダ100の磁石群102および磁石群103の磁石の配列を示す拡大正面図である。
図1~
図4に示す実施の形態1の磁気式エンコーダ100では、磁石幅Lmを変化させる磁石幅変調方式が用いられている。
図3および
図4に示す磁石内の矢印は、着磁後の内部磁化の方向を示す。各矢印の先端がN極を示し、基端がS極を示す。したがって、磁石群102を構成する磁石10はすべて位置検出ユニット105と対向する側にS極を持つ。磁石群103を構成する磁石10はすべて位置検出ユニット105と対向する側にN極を持つ。これ以降、各磁石の内部磁化の方向を単に磁化方向という。このように、磁石群102を構成する磁石10は、全て第1磁化方向に着磁され、磁石群103を構成する磁石10は、全て第1磁化方向と反対の磁化方向である第2磁化方向に着磁されている。
【0015】
磁石群102を構成する磁石10の個数および磁石群103を構成する磁石10の個数は、同じ個数であり、3個以上である。磁石ピッチPmは一定である。磁石ピッチPmは、磁石10を配置するピッチであり、x方向に隣り合う2つの磁石10の中心線間の長さである。磁石幅Lmは正弦波関数であるsin関数にしたがって増減する。すなわち、磁石群102,103の各々において、磁石幅Lmは、x方向に関して、端部から中央部に行くほど大きくなる。別言すれば、磁石群102,103の各々において、磁石幅Lmは徐々に増加した後、徐々に減少する。ただし、磁石幅Lmの各々は磁石ピッチPmより小さい。すなわち、最も大きい磁石幅Lmでも、一定である磁石ピッチPmより小さい。
【0016】
図4に示すように、磁石群102を構成する磁石10の個数は8個である。磁石群103を構成する磁石10の個数も8個である。合計16個の磁石10が同じ磁石ピッチPmで配置されている。磁石群102を構成する磁石10のうち磁石群103から最も離れた位置に設置された磁石10からx方向に更に-Pm/2だけ離れた位置、すなわち
図4に示す磁気スケールユニット101の左側の端部がsin関数の0度に対応する。また、磁石群103を構成する磁石10のうち磁石群102から最も離れた位置に設置された磁石10からx方向に更にPm/2だけ離れた位置、すなわち
図4に示す磁気スケールユニット101の右側の端部がsin関数の360度に対応する。
【0017】
図4において、磁石群102を構成する8個の磁石10は磁石ピッチPmで配置されるが、これはsin関数の11.25度を起点として22.5度ピッチで磁石10が配置されることに対応する。磁石群102を構成する8個の磁石は、sin関数の0度~180度に対応し、それぞれの磁石幅Lmはsin関数を22.5度ずつ分割(8等分)した時の各分割領域の積分値に定数を掛けた値で定められる。同様に、磁石群103を構成する8個の磁石10も磁石ピッチPmで配置されるが、これはsin関数の191.25度を起点として22.5度ピッチで配置されることに対応する。磁石群103を構成する8個の磁石10は、sin関数の180度~360度に対応し、それぞれの磁石幅Lmはsin関数を22.5度ずつ分割(8等分)した時の各分割領域の積分値に定数を掛けた値で定められる。このように、磁石群102,103のx方向の各長さは、所望する正弦波波形の1/2波長に対応する。
【0018】
位置検出ユニット105の複数の磁気センサ106は、
図3に示すように、x方向に等ピッチで基板107上に配置されている。磁気センサ106を配置するピッチは、位置検出できない領域が発生しないようにするために、磁気スケールユニット101が形成する正弦波波長以下のピッチに設定する。
【0019】
図5は、比較例の磁気スケールユニットを示す正面図である。
図6は、比較例の磁気スケールユニットによって磁気検出素子に印加される磁束密度の波形を示す図である。比較例の磁気スケールユニット108は、磁石幅の変調が行われておらず、x方向に長さの長い磁石108a,108bをもっている。磁石108aの磁化方向は+z方向であり、磁石108bの磁化方向は-z方向である。
図6では、縦軸に磁束密度Bzを示し、横軸に磁気スケールユニット108の位置を示している。a.u.は、任意単位を表している。
図6において、実線が比較例の磁気スケールユニットによって得られた磁束密度を表しており、破線が理想的な正弦波の波形を示している。
図6に示すように、比較例の磁気スケールユニット108からは、理想的な正弦波の波形は得られない。なお、特許文献1のように磁石幅Lmおよび磁石ピッチPmが固定である場合も同様であり、同じ強度の磁極を配列することで長い周期信号を作っても理想的な正弦波状の信号が得られない。
【0020】
図7は、実施の形態1に係る磁気式エンコーダ100の磁気スケールユニット101によって磁気センサ106に印加される磁束密度の波形を示す図である。
図7では、縦軸に磁束密度Bzを示し、横軸に磁気スケールユニット101の位置を示している。
図7において、実線が磁気スケールユニット101によって得られた磁束密度を表しており、破線が理想的な正弦波の波形を示している。
図7に示すように、実施の形態1の磁気スケールユニット101からは、理想的な正弦波を再現する波形が得られている。
【0021】
磁気スケールユニット101の絶対位置を検出するためには、磁気スケールユニット101のストロークに対して1周期の長い周期の信号を生成することが必要である。実施の形態1の磁気スケールユニット101からは磁石群102,103によって長い一周期を有する正弦波信号を生成することができ、絶対位置検出が可能な磁気式エンコーダ100を実現することができる。
【0022】
このように実施の形態1によれば、磁石群102,103の磁石幅を一周期の正弦波波形が得られるように変調しているので、滑らかな長周期の正弦波信号を得ることができ、広い範囲で連続的かつ高精度な位置情報が取得できる。また、一周期の正弦波波形を形成するよう磁石群102,103を配置しているので、磁石の総体積が増加し、磁場が増し、高い信号強度が得られる。
【0023】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2に係る磁気式エンコーダ200の構成を示す正面図である。実施の形態2の磁気式エンコーダ200は、磁気スケールユニット201と、磁気スケールユニット201から生じる磁界を検出する位置検出ユニット205とを備える。実施の形態2の磁気式エンコーダ200は、リニアエンコーダである。実施の形態2では、磁気スケールユニット201が固定子であり、位置検出ユニット205が可動子である。
【0024】
磁気スケールユニット201は、複数の第1磁石群である磁石群202および複数の第2磁石群である磁石群203と、磁石群202,203を固定する非磁性体の基体204を有する。
図8では、磁石20の配置を判りやすくするために、磁石群202,203の下側に存在する基体204の一部の図示を省略している。位置検出ユニット205は、磁気スケールユニット201から生じる磁界を検出する磁気センサ206と、磁気センサ206が取り付けられる基板207とを有する。
【0025】
磁気スケールユニット201では、複数の磁石群202と複数の磁石群203とがx方向に交互に配置されている。磁石群202を構成する磁石20はすべて+z方向に磁化方向を持ち、磁石群203を構成する磁石20はすべて-z方向に磁化方向を持つ。磁石群202を構成する磁石20の個数および磁石群203を構成する磁石20の個数は、同じ個数であり、3個以上である。隣り合う磁石20の磁石ピッチは一定である。磁石幅はsin関数にしたがって増減する。磁石幅の各々は磁石ピッチより小さい。
【0026】
図8においては、磁石群202を構成する磁石20の個数は4個であり、sin関数の0度~180度に対応する。磁石群202の磁石幅はsin関数を45度ずつ分割(4等分)した時の各分割領域の積分値に定数を掛けた値で定められる。磁石群203を構成する磁石20の個数は4個であり、sin関数の180度~360度に対応する。磁石群203の磁石幅はsin関数を45度ずつ分割(4等分)した時の各分割領域の積分値に定数を掛けた値で定められる。磁石群202,203の各々において、磁石幅は、x方向に関して、端部から中央部に行くほど大きくなる。
【0027】
図9は、実施の形態2に係る磁気式エンコーダ200の磁気スケールユニット201によって磁気センサ206に印加される磁束密度の波形を示す図である。
図9では、縦軸に磁束密度Bzを示し、横軸に磁気スケールユニット201の位置を示している。
図9においては、磁気スケールユニット201によって得られた磁束密度を表している。
図9に示す磁束密度の波形は、磁石群202,203の4周期分に対応している。
図9に示すように、実施の形態2の磁気スケールユニット201からは、理想的な正弦波を再現する波形が得られている。
【0028】
このように実施の形態2によれば、一周期の正弦波波形を形成する磁石群202,磁石群203を複数個配列しているので、長周期の正弦波信号を得ることでき、広い範囲で高精度な絶対位置情報が取得できる。また、実施の形態2では、磁気スケールユニット201のx方向の長さが実施の形態1の磁気スケールユニット101と同じと想定した場合、同じスケール長に複数周期分の正弦波波形を含んでいるので、実施の形態1に比べて、得られる正弦波信号の波長が短い。波長が短いと、位置検出精度が向上し、出力変動に対する安定性が向上する。さらに、正弦波信号の1度に相当する出力変動があった場合、波長が短いほうが位置検出変動は小さいため、安定する。
【0029】
実施の形態3.
図10は、実施の形態3に係る磁気式エンコーダの磁気スケールユニット301の構成を示す拡大正面図である。実施の形態3の磁気式エンコーダの位置検出ユニットは、
図1~
図3に示す実施の形態1の位置検出ユニット105と同様であり、図示および重複する説明を省略する。実施の形態3の磁気スケールユニット301では、磁石ピッチを変化させる磁石ピッチ変調方式が用いられる。実施の形態3の磁気式エンコーダは、リニアエンコーダである。実施の形態3では、磁気スケールユニット301が可動子であり、不図示の位置検出ユニットが固定子である。
【0030】
磁気スケールユニット301は、複数の磁石30を有する第1磁石群である磁石群302および複数の磁石30を有する第2磁石群である磁石群303と、磁石群302,303を固定する非磁性体の基体304を有する。
図10では、磁石30の配置を判りやすくするために、磁石群302,303の上側に存在する基体304の一部の図示を省略している。磁石群302を構成する磁石はすべて+z方向に磁化方向をもち、磁石群303を構成する磁石はすべて-z方向に磁化方向をもつ。
【0031】
磁石群302を構成する磁石30の個数および磁石群303を構成する磁石30の個数は、同じ個数であり、3個以上である。磁石群302を構成する各磁石30の磁石幅Lmおよび磁石群303を構成する各磁石30の磁石幅Lmは、一定である。
【0032】
実施の形態3では、磁石群302を構成する各磁石の磁石ピッチPmは、sin関数にしたがって増減する。磁石群302内の磁石30の磁石ピッチPmは、各磁石ピッチPmにおけるsin関数の積分値が同じとなるように定められている。すなわち、磁石30の磁石ピッチPmは、x方向に関して、端部からsin関数の極大値に対応する中央部に行くほど小さくなるように設定されている。別言すれば、磁石群302において、磁石30の磁石ピッチPmは、徐々に減少した後、徐々に増加する。磁石群303内の磁石30の磁石ピッチPmも同様であり、各磁石ピッチPmにおけるsin関数の積分値が同じとなるように定められている。すなわち、磁石群303の磁石30の磁石ピッチPmは、端部から中央部に行くほど小さくなるように設定されている。磁石幅Lmは、各磁石の磁石ピッチPmより小さい。すなわち、磁石ピッチPmの各々は、一定である磁石幅Lmより大きい。
【0033】
このように実施の形態3によれば、磁石群302,303の磁石ピッチを一周期の正弦波波形が得られるように変調しているので、滑らかな長周期の正弦波信号を得ることができ、広い範囲で連続的かつ高精度な位置情報が取得できる。また、一周期の正弦波波形を形成するよう磁石群302,303を配置しているので、磁石の総体積が増加し、磁場が増し、高い信号強度が得られる。また、絶対位置検出が可能な磁気式エンコーダを実現できる。
【0034】
実施の形態4.
図11は、実施の形態4に係る磁気式エンコーダの磁気スケールユニット401の構成を示す拡大正面図である。実施の形態4の磁気式エンコーダの位置検出ユニットは、
図1~
図3に示す実施の形態1の位置検出ユニット105と同様であり、図示および重複する説明を省略する。実施の形態4の磁気スケールユニット401では、磁石幅および磁石ピッチを変化させる磁石幅および磁石ピッチ変調方式が用いられる。実施の形態4の磁気式エンコーダは、リニアエンコーダである。実施の形態4では、磁気スケールユニット401が可動子であり、不図示の位置検出ユニットが固定子である。
【0035】
磁気スケールユニット401は、複数(12個)の磁石40を有する第1磁石群である磁石群402および複数(12個)の磁石40を有する第2磁石群である磁石群403と、磁石群402,403を固定する非磁性体の基体404を有する。
図11では、磁石40の配置を判りやすくするために、磁石群402,403の上側に存在する基体404の一部の図示を省略している。磁石群402を構成する磁石はすべて+z方向に磁化方向をもち、磁石群403を構成する磁石はすべて-z方向に磁化方向をもつ。磁石群402を構成する磁石40の個数および磁石群403を構成する磁石40の個数は、同じ個数であり、3個以上である。
【0036】
実施の形態4では、磁石群402,403を構成する各磁石40の磁石幅Lmnおよび磁石ピッチPmnは、sin関数にしたがって増減する。nは0から11の整数である。第n番目の磁石幅Lmnは、第n番目の磁石ピッチPmnより小さい。すなわち、磁石幅Lmnは、対応する磁石ピッチPmnより小さい。
【0037】
磁石40の磁石ピッチPmnを設定する際は、まず、第0番目の磁石ピッチPm0を設定し、つぎに、第1番目の磁石ピッチPm1、第2番目の磁石ピッチPm2、・・・、Pm11をsin関数にしたがって順次設定する。Pm1~Pm11の図示は、便宜上省略する。磁石幅Lmnは、各磁石ピ ッチPmnにおけるsin関数の積分値に定数を掛けた値で定められる。各磁石群402,403において、磁石40の磁石ピッチPmnは、x方向に関して、端部から中央部に行くほど大きくなるように設定され、磁石幅Lmnは、端部から中央部に行くほど大きくなるように設定される。別言すれば、磁石群402,403において、磁石40の磁石ピッチPmnは、徐々に増加した後、徐々に減少し、磁石幅Lmnも、徐々に増加した後、徐々に減少する。
【0038】
このように実施の形態4によれば、磁石群402,403の磁石ピッチを一周期の正弦波波形が得られるように変調しているので、滑らかな長周期の正弦波信号を得ることができ、広い範囲で連続的かつ高精度な位置情報が取得できる。また、一周期の正弦波波形を形成するよう磁石群402,403を配置しているので、磁石の総体積が増加し、磁場が増し、高い信号強度が得られる。また、絶対位置検出が可能な磁気式エンコーダを実現できる。
【0039】
実施の形態5.
図12は、実施の形態5に係る磁気式エンコーダの構成を示す斜視図である。実施の形態5の磁気式エンコーダは、ロータリーエンコーダであり、実施の形態1と同様、磁石幅変調方式が採用されている。実施の形態5の磁気式エンコーダ500は、リング状の磁気スケールユニット501と、磁気スケールユニット501から生じる磁界を検出する磁気センサ505とを備える。実施の形態5では、磁気スケールユニット501が可動子であり、磁気センサ505が固定子である。
【0040】
磁気スケールユニット501は、第1磁石群である磁石群502および第2磁石群である磁石群503と、磁石群502,503を固定する非磁性体の基体504を有する。磁気スケールユニット501は、不図示の回転シャフトに設置されており、回転する。本開示において、ロータリーエンコーダの場合、磁気スケールユニット501の回転方向である円周方向が第1方向に対応する。磁気センサ505は、磁気スケールユニット501からz方向に一定距離を離間して不図示の基板上に固定されている。磁気センサ505は、磁気スケールユニット501が回転するときの磁界変化に基づいて磁気スケールユニット501の位置を検出する。
【0041】
磁気スケールユニット501は、円周方向に並ぶ複数(16個)の磁石50を有する磁石群502および円周方向に並ぶ複数(16個)の磁石50を有する磁石群503と、磁石群502,503を固定する非磁性体の基体504を有する。磁石群502を構成する磁石はすべて内径側から外径側に向かう磁化方向をもち、磁石群503を構成する磁石はすべて外径側から内周側に向かう磁化方向をもつ。磁石群502を構成する磁石50の個数および磁石群503を構成する磁石50の個数は、同じ個数であり、3個以上である。
【0042】
各磁石群502,503において、隣り合う磁石50の磁石ピッチは一定である。各磁石群502,503において、磁石幅は、実施の形態1と同様、sin関数にしたがって増減する。すなわち、磁石群502,503の各々において、磁石幅は、円周方向に関して、端部から中央部に行くほど大きくなる。別言すれば、各磁石群502,503において、磁石幅は徐々に増加した後、徐々に減少する。ただし、各磁石幅は、磁石ピッチより小さい。すなわち、最も大きい磁石幅でも、一定である磁石50の磁石ピッチより小さい。
【0043】
なお、実施の形態5の磁気式ロータリーエンコーダに、実施の形態3に示した磁石ピッチ変調方式、または実施の形態4に示した磁石幅および磁石ピッチ変調方式を適用してもよい。
【0044】
実施の形態5によれば、磁石群502,503の磁石幅を一周期の正弦波波形が得られるように変調しているので、滑らかな長周期の正弦波信号を得ることができ、広い範囲で連続的な高精度な位置情報が取得できる磁気式ロータリーエンコーダを実現できる。また、一周期の正弦波波形を形成するよう磁石群502,503を配置しているので、磁石の総体積が増加し、磁場が増し、高い信号強度が得られる。また、絶対位置検出が可能な磁気式ロータリーエンコーダを実現できる。
【0045】
なお、実施の形態1から実施の形態5では、磁石幅または磁石ピッチを変化させて正弦波状の磁場変化を発生させているが、磁石幅および磁石ピッチをそれぞれ同一として、各磁石の磁力を変化させて正弦波状の磁場変化を発生させてもよい。磁力を変化させる方法としては、磁石の厚さを段階的に変化させる、磁気センサとの距離を段階的に変化させる、磁石の着磁率を段階的に変化させる、あるいは磁石の磁石材料を段階的に変化させる、といった方法がある。
【0046】
また、本明細書において、移動とは、直線移動および回転移動を含むものとする。
【0047】
以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
10,20,30,40,50,108a,108b 磁石、100,200,500 磁気式エンコーダ、101,108,201,301,401,501 磁気スケールユニット、102,103,202,203,302,303,402,403,502,503 磁石群、104,204,304,404,504 基体、105,205 位置検出ユニット、106,206,505 磁気センサ、107,207 基板、Lm,Lmn 磁石幅、Pm,Pm0,Pm1,Pm2,Pmn 磁石ピッチ。