(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】ノッター装置
(51)【国際特許分類】
B65H 69/04 20060101AFI20241220BHJP
D01H 15/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
B65H69/04
D01H15/00 A
(21)【出願番号】P 2024511460
(86)(22)【出願日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2023006520
(87)【国際公開番号】W WO2023189041
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2022052496
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】小松原 大雅
(72)【発明者】
【氏名】山口 元
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 政裕
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 基晴
(72)【発明者】
【氏名】田端 芳樹
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-106548(JP,A)
【文献】特開2002-35460(JP,A)
【文献】実開平5-42264(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 69/04
D01H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸選択部及び糸継ぎ部を具備するノッター装置であって、
前記糸選択部は、
糸源から供給される新糸を前記糸継ぎ部へ案内する案内レバーを有し、
前記糸継ぎ部は、
旧糸を延伸方向とは異なる方向へ案内可能な案内部と、
前記旧糸を引っ掛けると共に捻って捻り目を形成し、前記案内部により案内された前記旧糸の他の部分を引っ掛けて前記捻り目を一側に通して編目を形成し、前記案内レバーにより案内された前記新糸を前記編目に通す編針と、
前記編針が前記編目を形成する際に前記旧糸が巻きつけられると共に、巻きつけを解消するように動作可能なフック部と、
前記新糸を通した前記編目が前記捻り目を他側に通るように前記旧糸の張力を増加させる張力付与部と、を有する、
ノッター装置。
【請求項2】
前記フック部の前記旧糸への巻きつけの解消、及び、前記張力付与部による前記旧糸への張力の増加の相対的なタイミングを任意に設定可能である、
請求項1に記載のノッター装置。
【請求項3】
前記フック部は、前記旧糸との巻きつけを解消するタイミングを任意に変更可能に構成される、
請求項1又は請求項2に記載のノッター装置。
【請求項4】
前記フック部は、前記旧糸が配置可能な一対のフック状部材を有し、
前記編針は、前記一対のフック状部材の間に進退可能かつ軸線回りに回転可能に構成される、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のノッター装置。
【請求項5】
前記案内部は、前記旧糸の前記フック部よりも下流側の部分を、前記フック部を介して前記編針と対向する位置に案内する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のノッター装置。
【請求項6】
前記新糸が前記編目に通された後、前記編目よりも上流側において前記旧糸を保持可能な保持部と、
前記保持部により前記旧糸が保持された状態で、前記新糸及び前記旧糸の不要部分を切断する切断部と、
を具備し、
前記張力付与部は、
前記切断部による切断後に前記旧糸の張力を増加させる、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のノッター装置。
【請求項7】
前記張力付与部は、前記案内部を含む、
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のノッター装置。
【請求項8】
前記編針は、前記捻り目を多重に形成する、
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のノッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸選択部及び糸継ぎ部を具備するノッター装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糸選択部及び糸継ぎ部を具備するノッター装置の技術は公知となっている。ノッター装置を用いることで、使用中の糸を色などが異なる他の糸に切り替えることができる。
【0003】
特許文献1には、作業終了後の第1糸を切断した終端部と、次の作業の第2糸の始端部と、を糸結びする糸結び装置が開示されている。上記糸結び装置においては、捻り目に対して編目を形成する過程で糸ガイドを用いずに、編針の回転とべらの作用により編目を形成するため、編目を形成する際の安定性の点で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、はた結びを安定して行うことができるノッター装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、本発明に係るノッター装置は、糸選択部及び糸継ぎ部を具備するノッター装置であって、前記糸選択部は、糸源から供給される新糸を前記糸継ぎ部へ案内する案内レバーを有し、前記糸継ぎ部は、旧糸を延伸方向とは異なる方向へ案内可能な案内部と、前記旧糸を引っ掛けると共に捻って捻り目を形成し、前記案内部により案内された前記旧糸の他の部分を引っ掛けて前記捻り目を一側に通して編目を形成し、前記案内レバーにより案内された前記新糸を前記編目に通す編針と、前記編針が前記編目を形成する際に前記旧糸が巻きつけられると共に、巻きつけを解消するように動作可能なフック部と、前記新糸を通した前記編目が前記捻り目を他側に通るように前記旧糸の張力を増加させる張力付与部と、を有するものである。
このように構成することにより、はた結びを安定して行うことができる。
【0008】
また、前記フック部の前記旧糸への巻きつけの解消、及び、前記張力付与部による前記旧糸への張力の増加の相対的なタイミングを任意に設定可能であるものである。
このように構成することにより、糸切れや糸結びの不良の発生を抑制することができる。
【0009】
また、前記フック部は、前記旧糸との巻きつけを解消するタイミングを任意に変更可能に構成されるものである。
このように構成することにより、糸に応じたより最適な糸結びを実現することができる。
【0010】
また、前記フック部は、前記旧糸が配置可能な一対のフック状部材を有し、
前記編針は、前記一対のフック状部材の間に進退可能かつ軸線回りに回転可能に構成されるものである。
このように構成することにより、捻り目の形成と、続く編目の形成を安定して行うことができる。
【0011】
また、前記案内部は、前記旧糸の前記フック部よりも下流側の部分を、前記フック部を介して前記編針と対向する位置に案内するものである。
このように構成することにより、捻り目に続けて編目を形成する工程をより安定して行うことができる。
【0012】
また、前記新糸が前記編目に通された後、前記編目よりも上流側において前記旧糸を保持可能な保持部と、前記保持部により前記旧糸が保持された状態で、前記新糸及び前記旧糸の不要部分を切断する切断部と、を具備し、前記張力付与部は、前記切断部による切断後に前記旧糸の張力を増加させるものである。
このように構成することにより、旧糸と新糸との糸結びを効率的に行うことできる。
【0013】
また、前記張力付与部は、前記案内部を含むものである。
このように構成することにより、案内部が複数の役割を兼用することにより、簡易な構成とすることができる。
【0014】
また、前記編針は、前記捻り目を多重に形成するものである。
このように構成することにより、糸の結び目をより外れ難くすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、はた結びを安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るノッター装置を示した左上方斜視図。
【
図2】(a)ノッター装置を示した概略正面図。(b)糸継ぎを行うための糸を選択している状態のノッター装置を示した概略左側面図。
【
図3】(a)選択した糸を糸案内レバーで引っ掛けて後方へ案内している状態を示した概略正面図。(b)使用中の糸を糸案内レバーで引っ掛けてセパレータの手前へ案内している状態を示した概略正面図。
【
図5】(a)糸継ぎ部の編針、フック及び糸ガイドを示した概略平面断面図。(b)糸継ぎ部の編針、フック及び糸ガイドを示した概略左側面図。
【
図8】(a)フックに旧糸を引っ掛けた状態を示した概略平面断面図。(b)フックへの旧糸の巻きつけを解消した状態を示した概略平面断面図。
【
図9】(a)フックに旧糸を引っ掛けた状態を示した概略左側面断面図。(b)糸ガイドによって旧糸のバッファが形成された状態を示した概略左側面断面図。(c)編針が上側フックと下側フックとの間に進入した状態を示した概略左側面断面図。
【
図10】(a)編針が上側フックと下側フックとの間から退出して旧糸を後方へ連行した状態を示した概略左側面断面図。(b)旧糸の捻り目が形成された状態を示した概略左側面断面図。(c)編針が旧糸のバッファの部分を引っ掛けた状態を示した概略左側面断面図。
【
図11】(a)旧糸の編目が形成された状態を示した概略左側面断面図。(b)旧糸が下側フックの引掛部に巻きついた状態を示した概略左側面断面図。
【
図12】(a)新糸がフックの前方に連行された状態を示した概略左側面断面図。(b)新糸が編目に引き込まれた状態を示した概略左側面断面図。
【
図13】(a)カッターが新糸及び旧糸を切断した状態を示した概略左側面断面図。(b)新糸が編針から外れた状態を示した概略左側面断面図。
【
図14】(a)新糸が捻り目の前側まで引き出された状態を示した概略左側面断面図。(b)旧糸と新糸とが糸継ぎされた状態を示した概略左側面断面図。
【
図15】(a)旧糸の捻り目が形成された状態を示した概略左側面断面図。(b)編針が上側フックと下側フックとの間に進入した状態を示した概略左側面断面図。(c)編針が上側フックと下側フックとの間に進入した状態で半回転した状態を示した概略左側面断面図。
【
図16】(a)編針が前方へ移動した状態を示した概略左側面断面図。(b)編針が回転途中で旧糸を引っ掛けた状態を示した概略左側面断面図。(c)捻り目が二重に形成された状態を示した概略左側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。また、図中においては、図示の簡略化のため、各構成部分の図示を適宜省略している。
【0018】
ノッター装置1は、編機において使用中の糸2と、糸源である糸コーンに巻かれた新しい糸2と、をはた結びによって糸継ぎするものである。ノッター装置1は、糸源と編機との間に配置される。より詳細には、ノッター装置1の上方には糸源が配置され、ノッター装置1の下方には編機が配置される。ノッター装置1においては、糸2が上方から下方に向けて給糸される。以下、給糸方向の上流側を「上流側」、給糸方向の下流側を「下流側」と称する。ノッター装置1は、糸選択部10、糸継ぎ部20及び制御部30を具備する。
【0019】
図1、
図2(a)及び
図6等に示す糸選択部10は、糸源から供給される複数の糸2から選択された糸2を糸継ぎ部20へ案内するものである。糸選択部10は、主として、糸選択板11、糸保持12、セパレータ13、糸案内レバー14、第一糸押え15及びサクション16を具備する。
【0020】
糸選択板11は、糸源から供給される複数の糸2から一の糸2を選択可能に形成される。なお、糸選択板11は、糸源から供給される複数の糸2から二以上の糸2を同時に選択することもできる。以下、糸選択板11によって選択された糸2を、「新糸2a」、編機で使用中の糸2を「旧糸2b」、旧糸2b及び新糸2a以外の糸2を「待機中の糸2c」と称する。糸選択板11は、板面を左右方向に向けて複数配置される。複数の糸選択板11は、左右方向に並ぶように配置される。糸選択板11は、個別に設けられるソレノイドによって、前後に揺動可能に設けられる。糸選択板11の先端に設けられたリング11aには、糸2が挿通される。
【0021】
糸保持12は、糸選択板11よりも下流側に設けられる。糸保持12は、糸2を保持する保持位置と、糸2を保持しない退避位置と、に変位可能に形成される。糸保持12は、例えば空気圧で変位可能に形成される。糸保持12は、保持位置において、複数の糸2の先端付近を同時に保持することができる。より詳細には、糸保持12は、旧糸2b以外の複数の糸2を同時に保持することができる。
【0022】
セパレータ13は、給糸方向において、糸選択板11と糸保持12との間に配置される。セパレータ13は、板面を前後方向に向けた板状に形成される。セパレータ13は、旧糸2bと待機中の糸2cとを隔てることができる。具体的には、旧糸2bは、セパレータ13の後側を通って下方に導かれる。待機中の糸2は、糸選択板11の先端のリング11aを通って、セパレータ13の前側を通り、糸保持12で保持される。
【0023】
糸案内レバー14は、糸選択板11により選択された新糸2aを糸継ぎ部20へ案内可能に形成される。糸案内レバー14は、前後方向に延びる軸線回りに回動可能に設けられる。糸案内レバー14は、例えばモータによって駆動される。
図3(a)に示すように、糸案内レバー14は、回動の途中で先端14aにおいて新糸2aを引っ掛けることができる。糸案内レバー14の中間部には、側面突起14bが設けられる。
図3(a)に示すように、糸案内レバー14は、回動の途中で側面突起14bにおいて旧糸2bを引っ掛けることができる。
【0024】
第一糸押え15は、セパレータ13の前側において、糸保持12の上流側に設けられる。第一糸押え15は、糸2を動かないように押える押え位置と、糸2を押えない退避位置と、に変位可能に形成される。第一糸押え15は、例えば空気圧で変位可能に形成される。第一糸押え15は、押え位置において、新糸2a以外の糸、すなわち旧糸2b及び待機中の糸2cの先端付近を押えることができる。
【0025】
サクション16は、糸保持12よりも下流側に設けられる。サクション16は、糸2の先端を吸引保持可能に形成される。また、サクション16は、糸継ぎ過程で生じた糸屑を吸引除去可能に形成される。
【0026】
このように構成された糸選択部10において1つの糸選択板11が選択されると、
図2(b)に示すように、選択された糸選択板11が回動して、当該糸選択板11のリング11aに挿通された糸2である新糸2aが後方に引き込まれる。この状態で糸案内レバー14を正面視反時計回りに回動させると、
図3(a)に示すように、後方に引き込まれた新糸2aが糸案内レバー14の先端に引っ掛けられるとともに、旧糸2bが側面突起14bに引っ掛けられる。さらに糸案内レバー14を正面視反時計回りに回動させると、
図3(b)に示すように、新糸2aがセパレータ13の後側へ案内されるとともに、旧糸2bがセパレータ13の前側へ案内される。このようにして、糸選択部10は、糸源から供給される複数の糸2から一の新糸2aを選択し、選択された新糸2aを糸継ぎ部20へ案内することができる。
【0027】
図1及び
図4から
図6等に示す糸継ぎ部20は、糸選択部10によって選択された新糸2aと旧糸2bとを、はた結びによって糸継ぎするものである。糸継ぎ部20は、糸選択部10の下流側に設けられる。糸継ぎ部20は、主として、編針21、フック22、糸ガイド23、カッター24、第二糸押え25、第三糸押え26及びテンショナー27を具備する。
【0028】
図1、
図4及び
図5に示す編針21は、糸継ぎをする際に編目を形成するためのものである。編針21としては、例えばべら針が用いられる。編針21は、長手方向を前後方向に向けて設けられる。編針21は、前後方向に移動可能に設けられる。編針21は、前後方向に延びる軸線回りに回転可能に設けられる。
図5(a)に示すように、編針21の前端には、旧糸2b及び新糸2aを引っ掛け可能な引掛部21aが形成される。引掛部21aは、フック状に形成される。
【0029】
図1、
図4及び
図5に示すフック22は、旧糸2bを直線状に支えるものである。フック22には、編針21が編目を形成する際に旧糸2bが巻きつけられる。フック22は、編針21の前方に設けられる。フック22は、左右方向に移動可能に設けられる。フック22は、旧糸2bが配置可能な一対のフック状部材を有する。以下、上側のフック状部材を上側フック22a、下側のフック状部材を下側フック22bと称する。上側フック22aと下側フック22bとは、上下方向に間隔をあけて配置される。上側フック22aは、編針21よりも上方に配置される。下側フック22bは、編針21よりも下方に配置される。上側フック22a及び下側フック22bはそれぞれ、本体部28及び引掛部29を有する。
【0030】
本体部28は、長手方向を左右方向に向けて設けられる。引掛部29は、本体部28の左端部に形成される。引掛部29は、本体部28の左端部から後方及び右方に屈曲するフック状に形成される。上側フック22a及び下側フック22bは、引掛部29において、旧糸2bを引っ掛け可能に形成される。
【0031】
このようにフック22が形成されることにより、編針21は、前後に移動することによって、上側フック22aと下側フック22bとの間に進退可能に設けられる。
【0032】
図1、
図4及び
図5に示す糸ガイド23は、旧糸2bを延伸方向とは異なる方向へ案内可能なものである。糸ガイド23は、略L字状に形成される。より詳細には、糸ガイド23は、長手方向を略上下方向に向けた第一部分23a、及び第一部分23aの下端から右方に延びる第二部分23bを有する。第一部分23aの上端部は、左右方向に延びる軸線回りに回転可能な歯車23Aに固定される。第一部分23aは、編針21及びフック22よりも左方に設けられる。第二部分23bは、旧糸2bよりも右方まで延びるように形成される。また、糸ガイド23は、回動することによって旧糸2bに張力を付与することができる。
【0033】
図1及び
図4に示すカッター24は、後述する第二糸押え25により旧糸2bが保持された状態で、新糸2a及び旧糸2bの不要部分を切断するものである。カッター24は、フック22よりも上流側に配置され、新糸2a及び旧糸2bの結び目よりも上流側の部分を切断可能に形成される。カッター24は、新糸2a及び旧糸2bを切断する切断位置と、旧糸2b及び新糸2aを切断しない退避位置と、に変位可能に形成される。
【0034】
図1及び
図4に示す第二糸押え25は、旧糸2bを押えるものである。第二糸押え25は、カッター24よりも下流側に配置される。第二糸押え25は、編針21及びフック22よりも上流側に配置される。第二糸押え25は、糸2を動かないように押える押え位置と、糸2を押えない退避位置と、に変位可能に形成される。第二糸押え25は、例えば空気圧で変位可能に形成される。第二糸押え25は、押え位置において、旧糸2bの結び目よりも上流側の部分を押えることができる。なお、
図1及び
図4においては、カッター24が切断位置に位置し、第二糸押え25が退避位置に位置している状態が示されているが、実際には、第二糸押え25が押え位置に位置しているときに、カッター24は切断位置に位置する。
【0035】
図1及び
図4に示す第三糸押え26は、旧糸2bを押えるものである。第三糸押え26は、第二糸押え25よりも下流側に配置される。第三糸押え26は、編針21及びフック22よりも下流側に配置される。第三糸押え26は、糸2を動かないように押える押え位置と、糸2を押えない退避位置と、に変位可能に形成される。第三糸押え26は、例えば空気圧で変位可能に形成される。第三糸押え26は、押え位置において、旧糸2bの結び目よりも下流側の部分を押えることができる。
【0036】
テンショナー27は、旧糸2bに張力を付与するものである。テンショナー27は、ばねによる付勢によって旧糸2bに張力を付与する付勢位置と、旧糸2bに張力を付与しない退避位置と、に変位可能に形成される。
【0037】
図6に示す制御部30は、糸選択部10及び糸継ぎ部20の動作を制御するものである。制御部30は、RAM、ROM、HDD等の記憶部や、CPU等の演算処理部等を具備する。制御部30は、糸選択部10及び糸継ぎ部20の各構成部材の動作のタイミングを適宜制御することができる。制御部30は、編機と連携させて各構成部材を動作させることができ、例えば編機の編成データに基づいて糸継ぎを行うことができる。
【0038】
以下、
図7から
図14を用いて、糸継ぎする際のノッター装置1の各部材の動作について説明する。
【0039】
まず、
図7に示すステップS1において、フック22に旧糸2bを引っ掛ける。具体的には、
図8(a)に示すように、フック22は、右方へ移動する。これにより、
図9(a)に示すように、フック22は、引掛部29において旧糸2bを引っ掛ける。
【0040】
次に、ステップS2において、旧糸2bの捻り目4を形成する。具体的には、
図9(b)に示すように、糸ガイド23が旋回することによって、旧糸2bのフック22よりも下流側の部分を前方へ連行する。これにより、編針21の前方に、旧糸2bの屈曲された部分が形成される。以下、旧糸2bの屈曲された部分を、バッファ3と称する。バッファ3は、下側フック22bの下方から編針21の前方に延びた後、再び下方の第三糸押え26側に延びるように屈曲する。
【0041】
次に、フック22が右方に移動して旧糸2bをさらに右方に引き込む。次に、
図9(c)に示すように、編針21が、前方に移動して上側フック22aと下側フック22bとの間に進入する。フック22が左方に移動した後、
図10(a)に示すように、編針21が、後方へ移動して上側フック22aと下側フック22bとの間から退出することにより、旧糸2bを引っ掛け、後方へ連行する。次に、
図10(b)に示すように、編針21が半回転することによって、旧糸2bが捻られてループ状の捻り目4が形成される。
【0042】
次に、ステップS3において、旧糸2bの編目5を形成する。具体的には、
図10(c)に示すように、編針21が、前方に移動して、引掛部21aが旧糸2bのバッファ3の部分を引っ掛ける。次に、
図11(a)に示すように、編針21が、後方へ移動して上側フック22aと下側フック22bとの間から退出し、旧糸2bを捻り目4に通すことにより、編目5を形成する。このとき、旧糸2bは、最初は下側フック22bの本体部28に巻きついているが、フック22が少し右方に移動すること、及び編針21が旧糸2bを後方へ引き込むことにより、
図11(b)に示すように、旧糸2bは、下側フック22bの引掛部29に巻きついた状態となる。
【0043】
その後、糸ガイド23が、
図5(b)に示す矢印と反対方向へ旋回して元の位置に戻る。さらに、第二糸押え25が、押え位置に変位することにより、旧糸2bのフック22よりも上流側の部分を押える。
【0044】
次に、ステップS4において、編目5に新糸2aを引き込む。具体的には、
図12(a)に示すように、編針21が前方へ移動した後、
図3(a)及び
図3(b)に示すように糸選択部10の糸案内レバー14が回動することにより、新糸2aがフック22の前方に連行される。次に、
図12(b)に示すように、編針21が、引掛部21aにおいて新糸2aを引っ掛けた状態で後方へ移動することにより、新糸2aを編目5に通す。そして、糸案内レバー14は、
図2(a)に示す元の位置に戻る。
【0045】
次に、ステップS5において、フック22への旧糸2bの巻きつけを解消する。具体的には、
図8(b)に示すように、フック22が左方へ移動することにより、旧糸2bの巻きつけられた部分が下側フック22bから外れる。
【0046】
次に、ステップS6において、旧糸2b及び新糸2aに張力を付与する。具体的には、カッター24が、切断位置に変位することにより、
図13(a)に示すように新糸2a及び旧糸2bのフック22よりも上方の部分を切断し、切断後に退避位置に変位する。次に、編針21が、後方へ移動して、引掛部21aに引っ掛けた新糸2aを後方へ引っ張り込むことにより、新糸2aの切断後の端部を編目5側へ引っ張る。編針21が、さらに後方へ移動することにより、
図13(b)に示すように、新糸2aの切断後の端部が編目5を後側に通ると共に、新糸2aが編針21の引掛部21aから外れる。
【0047】
次に、旧糸2bのフック22よりも上流側の部分が第二糸押え25によって押えられた状態で、テンショナー27による張力によって旧糸2bが下流側へ引っ張られる。これにより、
図14(a)に示すように、編目5及び編目5に通された新糸2aが捻り目4を通って捻り目4の前側まで引き出される。次に、第三糸押え26が、押え位置に変位することにより、旧糸2bのフック22よりも下流側の部分を押える。そして、
図5(b)に示すように糸ガイド23が回転して旧糸2bを引っ掛けることによって、
図14(b)に示すように、結び目が締まる方向に旧糸2b及び新糸2aに張力が付与される。さらに、第三糸押え26が退避位置に変位して、旧糸2bにテンショナー27等による張力が付与されることにより、はた結びが完成し、旧糸2bと新糸2aとが糸継ぎされる。
【0048】
以上のように、本実施形態に係るノッター装置1においては、旧糸2bと新糸2aとをはた結びすることによって、固結びする場合と比べて結び目を小さくできるため、編機における編成時の抵抗を低減することができる。また、糸端部の繊維を解撚しながら交絡させることで接続するスプライサーとは異なり、旧糸2bの色と新糸2aの色とが互いに異なる場合であっても、糸の継ぎ目が滲むのを抑制することができる。
【0049】
なお、新糸2aが弾性糸等の伸縮性を備える糸である場合は、
図12(b)から
図14(a)に二点鎖線の円で示す新糸2aの位置(例えば、編目5と糸案内レバー14の先端14aとの間、且つ編目5の近傍の位置)を、図示しない他の押え部材で押えながら、カッター24による切断及び編針21による新糸2aの引っ張りを行う。これにより、カッター24で新糸2aを切断したときに、結び目から、張力の高まりが解放された新糸2aが抜けてしまうのを抑制することができる。また、押え部材による押えは、糸ガイド23による結び目の締め付けを経てから解放される。
【0050】
本実施形態に係るノッター装置1において、糸選択部10及び糸継ぎ部20の各構成部材は、機械的に連動して動作するわけではなく、個別に動作する。このため、糸選択部10及び糸継ぎ部20の各構成部材の動作のタイミングは、制御部30によって個別に制御可能である。
【0051】
このため、旧糸2b及び新糸2aの切れ易さや表面の摩擦度合いに応じて、フック22の旧糸2bへの巻きつけの解消、及び、テンショナー27及び糸案内レバー14による旧糸2bへの張力の増加の相対的なタイミングを任意に設定することができる。
【0052】
例えば、旧糸2b及び新糸2aの表面が比較的滑りの悪いものである場合、新糸2aを通した編目5が捻り目4を後側に上手く通り抜けることができずに、結び目が上手く形成できない場合がある。これを防止するために、下側フック22bへの旧糸2bの巻きつきを解消するタイミングを遅らせてもよい。例えば、旧糸2b及び新糸2aに張力を付与している間も、しばらく下側フック22bに旧糸2bを巻きつけた状態としてもよい。これにより、新糸2aを通した編目5を捻り目4の前側に引き出している間も、捻り目4のサイズを大きい状態で維持することができるので、新糸2aを通した編目5を捻り目4を通り易くすることができる。
【0053】
一方、旧糸2b及び新糸2aの表面が比較的滑りの良いものである場合、新糸2aを通した編目5が捻り目4の前側に引っ張られすぎて、捻り目4が裏返り新糸2aが旧糸2bに絡まる場合がある。これを防止するために、下側フック22bへの旧糸2bの巻きつきを解消するタイミングを早めてもよい。例えば、
図12(a)と
図12(b)との間、すなわち編目5に新糸2aを引き込む前に、下側フック22bへの旧糸2bの巻きつきを解消してもよい。これにより、捻り目4のサイズが小さくなるので、新糸2aを通した編目5が捻り目4の後側に引っ張られすぎるのを抑制できる。
【0054】
このように、テンショナー27及び糸ガイド23による旧糸2bへの張力の増加に対する、フック22の旧糸2bへの巻きつけの解消のタイミングを任意に設定することができる。したがって、糸切れや糸結びの不良の発生を抑制することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0056】
例えば、本実施形態においては、編針21は、捻り目4を一重に形成するものとしたが、多重に形成するものとしてもよい。以下、捻り目4を多重に形成する方法について説明する。
【0057】
図15(a)に示すように、編針21が半回転することによって、旧糸2bが捻られてループ状の捻り目4が形成される。次に、
図15(b)に示すように、編針21が、べらが捻り目4を抜けない範囲で前方に移動して、上側フック22aと下側フック22bとの間に進入する。
【0058】
次に、
図15(c)に示すように、編針21が、上側フック22aと下側フック22bとの間に進入した状態で半回転する。次に、
図16(a)に示すように、編針21が、後方へ移動する。
【0059】
次に、
図16(b)に示すように、編針21が、これまでと同じ方向に回転する。編針21が、回転途中で、引掛部21aにおいて旧糸2bを引っ掛ける。編針21が、
図16(a)に示す状態から半回転することにより、
図16(c)に示すように、編針21に対して旧糸2bが2回巻きついた状態となる。これにより、捻り目4を二重に形成することができる。
【0060】
これにより、旧糸2bと新糸2aとの結び目をより外れ難くすることができる。なお、
図15及び
図16に示す工程を繰り返すことにより、捻り目4を三重以上に形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、糸選択部及び糸継ぎ部を具備するノッター装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 ノッター装置
10 糸選択部
14 糸案内レバー
20 糸継ぎ部
21 編針
22 フック
23 糸ガイド
24 カッター
25 第二糸押え
26 第三糸押え
27 テンショナー