(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】スライドファスナー、及びスライドファスナー用ストリンガーの製造方法
(51)【国際特許分類】
A44B 19/06 20060101AFI20241220BHJP
A44B 19/30 20060101ALI20241220BHJP
A44B 19/46 20060101ALI20241220BHJP
A44B 19/38 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
A44B19/06
A44B19/30
A44B19/46
A44B19/38
(21)【出願番号】P 2024520205
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2022020184
(87)【国際公開番号】W WO2023218631
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2024-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志鷹 潤
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 孝幸
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-202761(JP,A)
【文献】国際公開第2015/122018(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B19/00-19/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のストリンガー(2)と、一対の前記ストリンガー(2)を開閉すると共に一対の前記ストリンガー(2)に対する位置を停止可能なスライダー(3)とを備え、
一対の前記ストリンガー(2)は、前後方向に延びると共に左右方向に対向する一対のテープ(4)と、一対の前記テープ(4)の対向する側縁部に沿って固定された複数のエレメント(5,5b)から構成される一対のエレメント列(5L)と、一対の前記テープ(4)の前後方向の一端部に別々に固定される一対の開き具片(61,61a,62,62a)を含む開き具(6,6a)であって一方の前記開き具片(61,61a)を一方の前記エレメント列(5L)と一緒に前記スライダー(3)に対し抜き差し可能な前記開き具(6,6a)とを備え、
前記スライダー(3)は、一対の前記エレメント列(5L)を噛合及び分離するスライダー胴体(11)と、一対の前記エレメント列(5L)に対する位置を停止させる停止爪(12)であってその一端部である爪先(21)が前記スライダー胴体(11)の内部で下降して前記エレメント(5,5b)に接触する前記停止爪(12)とを備え、
前記爪先(21)が接触する前記エレメント列(5L)のうち少なくとも一つの前記エレメント列(5L)は、複数種類の前記エレメント(5,5b)によって構成され、且つ前記開き具(6,6a)の近隣であって前記開き具(6,6a)から数えてn番目迄の前記エレメント(5,5b)の集合である近隣クラス(C1)と、前記開き具(6,6a)からn+1番目以降の前記エレメント(5,5b)の集合である遠隔クラス(C2)とに分類され、
一方の前記エレメント列(5L)に対し前記スライダー(3)から引き抜く力を加えた場合に前記スライダー(3)内で衝突する前記エレメント(5,5b)と前記停止爪(12)とに加わる衝撃に関して、前記遠隔クラス(C2)を構成する前記エレメント(5,5b)には、前記近隣クラス(C1)を構成する前記エレメント(5,5b)よりも、衝撃を強める種類の強エレメント(8,8b)を備え、
前記近隣クラス(C1)を構成する全ての前記エレメント(5,5b)は、前記強エレメント(8,8b)よりも、衝撃を弱める種類の弱エレメント(9,9a,9b,9c)であることを特徴とするスライドファスナー。
但しnは1以上の整数である。
【請求項2】
nは、前記エレメント列(5L)を構成する前記エレメント(5,5b)の全数に対する半分の値の整数以下、または半分の値に最も近い整数以下であることを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー。
【請求項3】
nは10以下であることを特徴とする請求項
2に記載のスライドファスナー。
【請求項4】
前後方向のうち前記開き具(6,6a)から前記スライダー(3)を遠ざける方向を前方向とし、
前記停止爪(12)の前記爪先(21)が一対の前記エレメント列(5L)の上方を通過する軌跡を爪軌跡(t)とし、
前記エレメント(5,5b)における上面と前面との角部であって且つ前記爪軌跡(t)の真下に関して、前記弱エレメント(9,9a,9b,9c)の前記角部の表面は前記強エレメント(8,8b)の前記角部の表面よりも低下する低下角面(92,92a,92b,92c)としてあることを特徴とする請求項
1に記載のスライドファスナー。
【請求項5】
前記低下角面(92,92a,92b,92c)は、前方に向かうにつれて低下することを特徴とする請求項4に記載のスライドファスナー。
【請求項6】
前記低下角面(92,92a,92b,92c)は円弧状に膨らむ状態で湾曲する湾曲面であることを特徴とする請求項5に記載のスライドファスナー。
【請求項7】
前後方向のうち前記開き具(6,6a)から前記スライダー(3)を遠ざける方向を前方向とし、
前記停止爪(12)の前記爪先(21)が一対の前記エレメント列(5L)の上方を通過する軌跡を爪軌跡(t)とし、
前記エレメント(5)における上面の前部であって且つ前記爪軌跡(t)の真下に関して、前記弱エレメント(9,9a,9b,9c)は前方に向かうにつれて低下する前向き斜面(93,97)であることを特徴とする請求項
1に記載のスライドファスナー。
【請求項8】
前後方向のうち前記開き具(6,6a)から前記スライダー(3)を遠ざける方向を前方向とし、
前記停止爪(12)の前記爪先(21)が一対の前記エレメント列(5L)の上方を通過する軌跡を爪軌跡(t)とし、
前記エレメント(5,5b)における上面のうち前記爪軌跡(t)の真下の全域に関して、前記弱エレメント(9,9a,9b,9c)の上面(90)は前記強エレメント(8,8b)の上面(80)よりも低下させてあることを特徴とする請求項
1に記載のスライドファスナー。
【請求項9】
前記弱エレメント(9,9a,9b,9c)の上面(90)は前記爪軌跡(t)の真下から前記テープ(4)とは反対方向の全域を、前記テープ(4)とは反対側に向かうにつれて低下する先向き斜面(91)にしてあることを特徴とする請求項8に記載のスライドファスナー。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載のスライドファスナーに用いられるストリンガーの製造方法において、
前記テープ(4)に前記強エレメント(8,8b)を射出成形する第1の射出成形工程と、
前記テープ(4)の一部から前記強エレメント(8)を除去することで前記テープ(4)に除去部分(4b)を形成する強エレメント除去工程と、
前記テープ(4)に対し前記除去部分(4b)を含む領域に前記開き具片(61,62)と前記弱エレメント(9)を射出形成する第2の射出成形工程とを備えることを特徴とするスライドファスナー用ストリンガーの製造方法。
【請求項11】
前記第2の射出成形工程は、前記弱エレメント(9)を射出成形した後に、前記開き具片(61,62)を射出成形することを特徴とする請求項10に記載のスライドファスナー用ストリンガーの製造方法。
【請求項12】
前記第2の射出成形工程は、前記弱エレメント(9)と前記開き具片(61,62)を同時に射出成形することを特徴とする請求項10に記載のスライドファスナー用ストリンガーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のストリンガーと、一対のストリンガーを開閉すると共に一対のストリンガーに対する位置を停止可能なスライダーとを備えるスライドファスナー、及びそのストリンガーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前後方向に延びると共に左右方向に対向する一対のテープと、一対のテープの対向する側縁部に沿って固定された複数のエレメントから構成される一対のエレメント列と、一対のエレメント列を噛合及び分離するスライダーとを備えるスライドファスナーが開示されている。そしてスライダーは、一対のエレメント列に対する位置を停止させるためにエレメントに接触する停止爪を備えている。
【0003】
また特許文献2には、一対のテープと一対のエレメント列とスライダーの他に、開離嵌挿具と称される開き具を備えるスライドファスナーが開示されている。エレメント列と開き具とテープとが組み合わさった物をストリンガーと称する。ちなみにスライダーを開き具の方に移動させて一対のエレメント列を開く(分離する)ことを、スライダーを引き下げると称し、スライダーを開き具とは反対の方に移動させて一対のエレメント列を閉じる(噛合する)ことを、スライダーを引き上げると称する。
【0004】
また特許文献2に開示された開き具としての開離嵌挿具は、蝶棒と称される左側の開き具片と、箱棒および箱体と称されるものが一体となった右側の開き具片とから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-202761号公報
【文献】国際公開第2013/051149号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでスライドファスナーは一対のエレメント列が噛合した状態から、スライダーを完全に引き下げた状況、言い換えるとスライダーを開き具に接触させた状況にした上で、一方のエレメント列に対しスライダーから引き抜く力(以下、「引抜き力」と称することがある。)を加えると、一方の開き具片が一方のエレメント列と一緒にスライダーから外れ、一対のエレメント列が完全に分離することになる。
その一方で、スライドファスナーは一対のエレメント列が噛合した状態から、スライダーを途中まで引き下げた状況、言い換えるとスライダーと開き具とが離れた状況にすると、停止爪がエレメントに接触することで、スライダーが一対のエレメント列に対する位置を停止させるようになっている。
【0007】
しかしながらスライダーと開き具とが離れた状況で、引抜き力が加わることがある。引抜き力が加わる典型的な例を、スライドファスナーを上着に取り付けた場合で説明する。上着の使用者がスライダーを完全に引き下げたと思いながら、実際にはスライダーと開き具とが離れた状況にも拘わらず、上着を脱ごうとして、スライダーから二又に分岐する形で延びる一対のエレメント列に対し、一対のエレメント列の間隔を広げるように操作するのが、引抜き力が加わる典型的な例である。
【0008】
ところで前記した特許文献1,2に開示されたスライドファスナーでは、一対のエレメント列を構成する全てのエレメントは1種類で、どのエレメントも形状が同じである。したがってスライダーを途中まで引き下げてスライダーと開き具とが離れた状況では、スライダーの位置に関係なく、停止爪はどのエレメントとも同じような状態で接触することになる。
【0009】
そうすると、特許文献1,2に開示されたスライドファスナーでは、前記した典型的な例のように引抜き力が加わると、スライダーには開き具の方へ移動する力が加わり、スライダー内ではエレメントと停止爪とが衝突する。そして引抜き力が大きいと、スライダー内ではエレメントと停止爪との衝撃が強くなり(大きくなり)、停止爪がエレメントの上を乗り越えようとして、エレメントや停止爪が破損したり、エレメントや停止爪が破損するだけでなくエレメントがテープから外れたりすることがある。
【0010】
また引抜き力が加わる可能性がある状況とは、典型的な例に限らず、一対のエレメント列が途中まで噛合した状況、言い換えれば、完全に噛合した状態の一対のエレメント列に対しスライダーをある程度引き下げた状況であると、想定される。引抜き力が加わる可能性がある状況では、スライダー内で衝突するエレメントと停止爪との衝撃をできる限り弱める(低下させる)ことが望ましい。この衝撃のことを、以下では「スライダーロック強度」と称することもある。というのも、スライダーは停止爪によって一対のエレメント列に対する位置を停止(ロック)させられるからである。
【0011】
一方、一対のエレメント列が完全に噛合している状況では、引抜き力が加わる可能性が通常無いと言え、この状況では、引抜き力が加わる可能性がある状況よりもスライダーロック強度を強く(大きく)することが望ましい。
【0012】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的は、一対のエレメント列が噛合した状態でスライダーが途中まで引き下げられた状況(スライダーと開き具とが離れた状況)で引抜き力が加わった場合に、スライダーロック強度をできるだけ弱める(低下させる)ことである。また本発明の目的は、スライダーロック強度を低下させることによって、エレメント等をできるだけ破損等し難くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のスライドファスナーは、一対のストリンガーと、一対のストリンガーを開閉すると共に一対のストリンガーに対する位置を停止可能なスライダーとを備える。一対のストリンガーは、前後方向に延びると共に左右方向に対向する一対のテープと、一対のテープの対向する側縁部に沿って固定された複数のエレメントから構成される一対のエレメント列と、一対のテープの前後方向の一端部に別々に固定される一対の開き具片を含む開き具であって一方の開き具片を一方のエレメント列と一緒にスライダーに対し抜き差し可能な開き具とを備える。スライダーは、一対のエレメント列を噛合及び分離するスライダー胴体と、一対のエレメント列に対する位置を停止させる停止爪であってその一端部である爪先がスライダー胴体の内部で下降してエレメントに接触する停止爪とを備える。爪先が接触するエレメント列のうち少なくとも一つのエレメント列は、複数種類のエレメントによって構成される。また当該エレメント列は、開き具の近隣であって開き具から数えてn番目迄のエレメントの集合である近隣クラスと、開き具からn+1番目以降のエレメントの集合である遠隔クラスとに分類される。但しnは1以上の整数である。一方のエレメント列に対しスライダーから引き抜く力を加えた場合にスライダー内で衝突するエレメントと停止爪とに加わる衝撃に関して、遠隔クラスを構成するエレメントは、近隣クラスを構成するエレメントよりも、衝撃を強める種類の強エレメントを備える。近隣クラスを構成する全てのエレメントは、強エレメントよりも、衝撃を弱める種類の弱エレメントである。
【0014】
遠隔クラスを構成するエレメントは、強エレメントだけで構成される場合もあるし、強エレメントと弱エレメントとで構成される場合もある。このような理由から、遠隔クラスを構成するエレメントは、強エレメントを備えるとしてある。一方、近隣クラスを構成する全てのエレメントは弱エレメントである。したがって例えばエレメント列を構成する全てのエレメントが、開き具から数えてn番目迄を弱エレメントとし、n+1番目を強エレメントとし、n+2番目から数番目迄を弱エレメントとし、当該数番目以降を強エレメントとした構成の場合には、開き具から数えてn番目迄のエレメントの集合が近隣クラスであり、n+1番目以降のエレメントの集合が遠隔クラスである。
【0015】
「爪先が接触するエレメント列のうち少なくとも一つのエレメント列」とは、1)爪先が接触するエレメント列が一対のエレメント列であって、且つ全部の(一対の)エレメント列の場合と、2)爪先が接触するエレメント列が一対のエレメント列であって、且つ一対のうち一つのエレメント列のみの場合と、3)爪先が接触するエレメント列が一対のうち一つのエレメント列のみであって且つその一つのエレメント列の場合とを含む。
そして上記した2)と3)の場合には、当該一つのエレメント列が近隣クラスと遠隔クラスとに分類されていれば良く、もう一つのエレメント列が近隣クラスと遠隔クラスとに分類されているか否かを問わない。したがって上記した2)と3)の場合には、もう一つのエレメント列が複数種類のエレメントで構成されていても良いし、全て同じ種類のエレメントで構成されていても、より具体的には例えば全て強エレメントで構成されていても良い。
また開き具から数えてn番目のnは、近隣クラスの弱エレメント列の個数に一致する。そして上記した1)の場合には、一つのエレメント列のn(近隣クラスの弱エレメント列の個数)と、もう一つのエレメント列のn(近隣クラスの弱エレメント列の個数)とは同じであるか否かを問わない。
【0016】
nは望ましくは次のようにする。
すなわちnは、エレメント列を構成するエレメントの全数に対する半分の値の整数以下、または半分の値に最も近い整数以下である。
【0017】
nは望ましくは次のようにする。
すなわちnは10以下である。
【0018】
弱エレメントと強エレメントの具体的な一例としては次のものがある。
すなわち前後方向のうち開き具からスライダーを遠ざける方向は前方向とし、停止爪の爪先が一対のエレメント列の上方を通過する軌跡は爪軌跡とする。その上で、エレメントにおける上面と前面との角部であって且つ爪軌跡の真下に関して、弱エレメントの前記角部の表面は強エレメントの前記角部の表面よりも低下する低下角面としたものである。
なお低下角面の左右の幅は、爪先が弱エレメントと接触する部分の長さ以上、つまり爪先の左右の幅以上であることが望ましい。
【0019】
低下角面の具体的な一例としては次のものが望ましい。
すなわち低下角面は前方に向かうにつれて低下したものである。
【0020】
低下角面のより具体的な一例としては次のものがある。
すなわち低下角面は前方に向かうにつれて低下することに加え、円弧状に膨らむ状態で湾曲する湾曲面としたものである。
【0021】
また弱エレメントと強エレメントの具体的な一例としては次のものがある。
すなわち前後方向のうち開き具からスライダーを遠ざける方向は前方向とし、停止爪の爪先が一対のエレメント列の上方を通過する軌跡は爪軌跡とする。その上で、エレメントにおける上面の前部であって且つ爪軌跡の真下に関して、弱エレメントは前方に向かうにつれて低下する前向き斜面としたものである。
なお前向き斜面の左右の幅は、爪先が弱エレメントと接触する部分の長さ以上、つまり爪先の左右の幅以上であることが望ましい。
【0022】
弱エレメントと強エレメントの具体的な他の例としては次のものがある。
すなわち前後方向のうち開き具からスライダーを遠ざける方向は前方向とし、停止爪の爪先が一対のエレメント列の上方を通過する軌跡は爪軌跡とする。その上で、エレメントにおける上面のうち爪軌跡の真下の全域に関して、弱エレメントの上面は強エレメントの上面よりも低下させたものである。
【0023】
また弱エレメントの上面のより具体的な一例としては次のものがある。
すなわちエレメントにおける上面のうち爪軌跡の真下の全域に関して、弱エレメントの上面は強エレメントの上面よりも低下させてあることに加え、爪軌跡の真下からテープとは反対方向の全域を、テープとは反対側に向かうにつれて低下する先向き斜面にしたものである。
【0024】
また本発明のストリンガーの製造方法は、上記したスライドファスナーに用いられるもので、テープに強エレメントを射出成形する第1の射出成形工程と、テープの一部から強エレメントを除去することでテープに除去部分を形成する強エレメント除去工程と、テープに対し除去部分を含む領域に開き具片と弱エレメントを射出形成する第2の射出成形工程とを備えるものである。
【0025】
第2の射出成形工程の一例として以下の2通りが挙げられる。
すなわち第2の射出成形工程の一例は、弱エレメントを射出成形した後に、開き具片を射出成形する。
また第2の射出成形工程の他の例は、弱エレメントと開き具片を同時に射出成形する。
【発明の効果】
【0026】
本発明のスライドファスナーは、一方のエレメント列に対しスライダーから引き抜く力を加えた場合にスライダー内で衝突するエレメントと停止爪とに加わる衝撃(スライダーロック強度)に関して、近隣クラスを構成する全てのエレメントが、強エレメントよりも、衝撃(スライダーロック強度)を弱める種類の弱エレメントであるので、近隣クラスにスライダーが配置された状況で弱エレメントと停止爪とに加わる衝撃が、遠隔クラスにスライダーが配置された状況で強エレメントと停止爪とに加わる衝撃よりも弱くなる。その結果、エレメント等ができるだけ破損等し難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第一実施形態のスライドファスナーの全体を示す平面図である。
【
図2】第一実施形態のスライドファスナーのスライダー内における爪先とエレメントとの関係を示す平面方向から見た断面図である。
【
図3】(A)(B)図は、第一実施形態のスライドファスナーにおける爪先とエレメントとの関係を示す正面図であり、(A)図は爪先と弱エレメントとの関係を示し、(B)図は爪先と強エレメントとの関係を示す。
【
図4】第一実施形態のスライドファスナーにおけるスライダーを上下方向に切断した断面図である。
【
図5】(A)~(E)図は第一実施形態の弱エレメントの正面図・平面図・底面図・左側面図・右側面図、(S)~(W)図は第一実施形態の強エレメントの正面図・平面図・底面図・左側面図・右側面図である。
【
図6】(A)~(E)図は第二実施形態の弱エレメントの正面図・平面図・底面図・左側面図・右側面図、(S)~(W)図は第二実施形態の強エレメントの正面図・平面図・底面図・左側面図・右側面図である。
【
図7】(A)~(D)図は第三実施形態の弱エレメントの正面図・平面図・左側面図・右側面図、(S)~(V)図は第三実施形態の強エレメントの正面図・平面図・左側面図・右側面図である。
【
図8】(A)~(D)図は第四実施形態の弱エレメントの正面図・平面図・底面図・左側面図・右側面図、(S)~(V)図は第四実施形態の強エレメントの正面図・平面図・左側面図・右側面図である。
【
図9】本発明の第五実施形態のスライドファスナーの全体を示す平面図である。
【
図10】本発明の第一実施形態におけるスライドファスナーの製造方法を工程順に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第一実施形態のスライドファスナー1は、
図1に示すように、前後に延びると共に左右に対向する一対のストリンガー2と、一対のストリンガー2の対向する側縁部において前後に移動可能であると共に一対のストリンガー2を開閉するスライダー3とを備える。なお「対向する側縁部」とは、左側のストリンガー2の場合には右側の縁部のことであり、右側のストリンガー2の場合には左側の縁部のことである。
【0029】
そしてスライドファスナー1は、スライダー3を前後方向に移動させることによって、一対のストリンガー2を開閉することができる。方向は、スライドファスナー1を平面に置いた状態で以下のように定められる。
「前方向」とは、一対のストリンガー2を閉じる方向であり、
図1では上方向である。
「後方向」とは、一対のストリンガー2を開く方向であり、
図1では下方向である。また左右方向とは、一対のストリンガー2を並べる方向のことであり、
図1では前後方向と直交する。
「左方向」とは、
図1では左方向である。「右方向」とは、
図1では右方向である。
「上下方向」とは、前後方向及び左右方向に直交する方向であり、厚み方向もと言う。 「上方向」とは、
図1では紙面に対して直交する方向(前後方向及び左右方向に直交する方向)のうち手前側を向く方向である。
「下方向」とは、
図1では紙面に対して直交する方向のうち奥側を向く方向である。
【0030】
一対のストリンガー2は、前後方向に延びると共に左右方向に対向する一対のテープ4と、一対のテープ4の対向する側縁部に沿って固定された複数のエレメント5から別々に構成される一対のエレメント列5Lと、一対のテープ4の前後方向の後端部に固定された開き具6と、開き具6とは反対側において一対のテープ4の前端部に別々に固定された一対の止具7とを備える。なお前後方向のうち開き具6からスライダー3を遠ざける方向は前方向である。
【0031】
テープ4は前後に長い帯状であって、その厚み方向は上下方向である。
止具7と開き具6とは、移動中のスライダー3が衝突することによって、一対のエレメント列5Lに対するスライダー3の前後方向への移動範囲を定める。止具7は、テープ4の前後方向の前端部においてエレメント列5Lに対し前側に隣り合う状態で固定される。
【0032】
開き具6は、一対のテープ4の前後方向の後端部においてエレメント列5Lに対し後側に隣り合う状態で別々に固定される一対の開き具片61,62から構成される。本実施形態では、一方の開き具片61は、一方のテープ4の対向する側縁部に固定された蝶棒61であり、他方の開き具片62は他方のテープ4の対向する側縁部に固定された箱62である。
【0033】
蝶棒61は、テープ4に固定されると共にテープ4自身の上面と下面と対向するテープ4側の側面との3面を覆っている。蝶棒61は、スライダー3を箱62に接触するまで引き下げた状態、つまりスライダー3と箱62とを接触させた状態(前後に隣接させた状態)で、一方のエレメント列5Lと一緒にスライダー3と箱62に抜き差し可能である。
【0034】
箱62は、他方のエレメント列5Lからスライダー3が外れないように他方のエレメント列5Lに対するスライダー3の後退限界位置を定める。箱62は、蝶棒61と連結した状態では蝶棒61の前部と平行に隣り合う箱棒63と、蝶棒61の後部が抜き差し可能な蝶棒穴(図示略)が形成された箱体64とを備える。
箱棒63は、蝶棒61と同様に、テープ4に固定されると共にテープ4自身の上面と下面と対向するテープ4側の側面との3面を覆っている。
箱体64は、テープ4に固定される部分と、対向するテープ4側に突出する部分とを備える。テープ4に固定される部分の前面から箱棒63が前方に延びている。対向するテープ4側に突出する部分の前面には蝶棒穴(図示略)が形成される。
【0035】
スライダー3はいわゆる自動停止機能付きであり、
図4に示すように一対のエレメント列5Lを噛合及び分離するスライダー胴体11と、一対のエレメント列5Lに対する位置を停止させる停止爪12であってその一端部である爪先21がスライダー胴体11の内部で下降してエレメント5に接触する停止爪12と、停止爪12とスライダー胴体11に連結されると共にスライダー胴体11を移動させるときに操作するための引手13とを備える。また本実施形態ではスライダー3はその他に、停止爪12を下方に押し込む弾性部材としての板バネ14であって停止爪12とは別部品としての板バネ14と、板バネ14と停止爪12を覆うと共に引手13と停止爪12をスライダー胴体11に連結する連結部材としてのカバー15であってスライダー胴体11とは別部品としてのカバー15とを備える。スライダー3は、引手13を引き上げると、爪先21がエレメント列5Lよりも上方に移動して、一対のエレメント列5Lに対しスライダー胴体11を移動可能な状態とし、引手13を離すと、爪先21が下降してエレメント5に接触して、一対のエレメント列5Lに対しスライダー胴体11を停止させる。
【0036】
引手13は前後に回動可能である。回動とは、スライダー3によって一対のストリンガー2を開閉するときに引手13を操作して前後に回すときの動きである。引手13は操作するときに摘まむ摘まみ部13aと、摘まみ部13aから延びると共にスライダー胴体11に連結する引手連結部13bとを備える。引手連結部13bは環状であり、環状の一部が引手13を回動するときの中心となる軸部となる。
【0037】
スライダー胴体11は、上下方向に間隔をおいて対向する上翼板31及び下翼板32と、上翼板31と下翼板32の前部同士の対向する間を連結する連結柱33であって一対のエレメント列5Lの間に挟まれる連結柱33と、上翼板31と下翼板32の少なくとも一方(図示の例では両方)の左右端部から両者の対向する間隔を狭める方向に突出するフランジ34とを備えている。
【0038】
またスライダー胴体11は
図2,4に示すように、その内部空間として、前後方向に貫通するエレメント通路36と、エレメント通路36に連通すると共に左右に開口するテープ溝37とを備える。エレメント通路36には一対のエレメント列5Lが通され、各テープ溝37には対応する側のテープ4が通される。またエレメント通路36の前部は、連結柱33に対して左右に二又に分岐し、エレメント通路36の後部は連結柱33に対して後方に一直線に延びる。
【0039】
上翼板31は、エレメント通路36の上側を仕切る上翼板本体部31aと、上翼板本体部31aの上面から前後に間隔を開けて突出する前柱部31bと後柱部31cとを備える。上翼板本体部31aの上面には引手13の軸部と停止爪12と板バネ14とカバー15とが順に設置される。前柱部31bの上面には停止爪12の一端部を支持する爪支持凹部31dが凹んで形成される。また上翼板本体部31aには連結柱33よりも後ろ側に停止爪12の先部である爪先21をエレメント通路36に挿入する爪穴31hが形成される。爪穴31hは上翼板31を上下方向に貫通する貫通穴である。
【0040】
カバー15の下面には前柱部31bと後柱部31cに嵌合する嵌合凹部15aが上向きに凹んで形成される。嵌合凹部15aの下部は前柱部31bと後柱部31cとを嵌合する。嵌合凹部15aの内面の上部には板バネ14の前後端部を支持するバネ支持部15bを備える。バネ支持部15bは例えば凹みである。バネ支持部15bに支持された板バネ14は嵌合凹部15aの内面の底面(上面)に向かって撓むことが可能となる。またカバー15の左右の側面には、引手13の軸部を通す軸通し凹部15cが、左右に貫通すると共に下方に開口する状態で形成される。
【0041】
停止爪12は引手13の軸部の上において前後に延びる爪本体部22と、爪本体部22の前後方向の一端部(前端部)から下方に延びると共に爪支持凹部31dに挿入される爪挿入部23と、爪本体部22の前後方向の他端部(後端部)から下方に延びる爪先21とを備える。
爪本体部22は上から板バネ14で押さえられる。また引手13を引き上げると、爪本体部22が上昇し、それに伴って爪先21が上昇し、爪先21がエレメント5よりも上方に引き上げられ、スライダー3が一対のエレメント列5Lに沿って移動可能となる。
停止爪12の爪先21は本実施形態では、スライダー胴体11の内部において左右のエレメント列5Lが噛合および分離する部分に入ることで、スライダー胴体11を停止させる。また停止爪12は、スライダー胴体11の内部において爪先21の下端の位置が一定となるように、爪先21よりも上側で支持されている。本実施形態では爪本体部22の他端部の下面22aに対し後部から爪先21が下方に延びている。したがって爪本体部22の他端部の前部は、爪先21よりも前方に張り出す形となっており、爪穴31hに対して前方で上翼板31の上面に支持される。
【0042】
一対のエレメント列5Lは左右対称的な構成としてある。エレメント列5Lは、一対のテープ4の対向する側縁部に沿って固定された複数のエレメント5から構成される。エレメント5は
図5(S)~(W)に示すように左右方向に関して、テープ4を厚み方向の両側から挟む状態でテープ4に固定される固定部51と、固定部51からテープ4とは反対側(以後、「反テープ側」と称する。)に突出すると共に他のエレメント5に噛合う噛合部52とを備える。ちなみに
図5ではテープ4を省略してある。なお左右方向のうち反テープ側とは反対側のことを「テープ側」と称する。またエレメント5は上下方向に関して、テープ4の上面側に固定されると共に反テープ側に延びる上半部53と、テープ4の下面側に固定されると共に反テープ側に延びる下半部54とを備える。上半部53と下半部54とは噛合部52側で一体となっている。
【0043】
第一実施形態のエレメント5は、上半部53と下半部54とを上下非対称形状としてある。
上半部53は、テープ4の上面に固定される上固定部53aと、上固定部53aから反テープ側に延びる上噛合部53bとを備える。
下半部54は、テープ4の下面に固定される下固定部54aと、下固定部54aから反テープ側に延びる下噛合部54bとを備える。上噛合部53bと下噛合部54bとは反テープ側で接合して一体になると共に、上下非対称形状となっている。
【0044】
下噛合部54bは、下固定部54aから反テープ側に延びると共に下固定部54aに対して前後に括れた下首部54cと、下首部54cから反テープ側に延びると共に下首部54cに対して前後に膨らむ下頭部54dとを備える。
【0045】
上噛合部53bは、上固定部53aから反テープ側に延びると共に下首部54cに対して前後に張り出した上肩部53cと、上肩部53cから反テープ側に延びると共に下頭部54dに対して前後に凹む上頭部53dとを備える。
上肩部53cは、反テープ側に向かうにつれて前後方向の両方向から前後幅を狭める先細り形状となっている。上肩部53cのうち反テープ側を向く面は、テープ4の前後方向とほぼ平行に形成されている。
上頭部53dは、上肩部53cのうち反テープ側を向く面の前後中間部から反テープ側に突出している。また上頭部53dも反テープ側に向かうにつれて前後方向の両方向から前後幅を狭める先細り形状となっている。
【0046】
固定部51は上固定部53aと下固定部54aとで構成される。噛合部52は上噛合部53bと下噛合部54bとで構成される。一対のエレメント列5Lが噛合した状態では、前後に隣り合う2つのエレメント5は、一方のエレメント5の上肩部53cと他方のエレメント5の下頭部54dとが上下に重なり合い、一方のエレメント5の下首部54cと他方のエレメント5の下頭部54dとが前後に隣り合い、一方のエレメント5の下頭部54dと他方のエレメント5の下頭部54dとが左右に隣り合う状態で、噛合された状態になる。
【0047】
停止爪12の爪先21が接触するエレメント列5Lは、本実施形態では
図1,2に示すように一対のエレメント列5Lである。またスライダー3が前後に移動するとき、停止爪12の爪先21は一対のエレメント列5Lの上方を通過する。
図2では平面視して爪先21は矩形で示してある。この爪先21が一対のエレメント列5Lの上方を通過する軌跡を爪軌跡tとする。爪軌跡tは、テープ4の延びる方向である前後方向と平行である。爪軌跡tは
図1では便宜上、線で示してある。また爪軌跡tは
図2では、左右に一定の幅のある帯で示してある。そして本実施形態での爪軌跡tは、噛合部52の上方、より詳しく言えば、右側のエレメント列5Lに関しては上肩部53c(下首部54c)の上方、左側のエレメント列5Lに関しては上頭部53dの上方を爪先21が通過する軌跡であるものとする。
【0048】
エレメント列5Lは、複数種類のエレメント5、本実施形態では2種類のエレメント5によって形成される。またエレメント列5Lは、エレメント5の集合であるクラスによって複数に分類される。そしてエレメント列5Lは、開き具6の近隣であって開き具6から数えてn番目迄のエレメント5の集合である近隣クラスC1と、開き具6からn+1番目以降のエレメント5の集合である遠隔クラスC2に分類される。つまりnは近隣クラスC1の全数に一致する。また本実施形態では、近隣クラスC1を構成するエレメント5と、遠隔クラスC2を構成するエレメント5とは、別種類である。そして区別する場合は、図では近隣クラスC1を構成するエレメントには符号5の他に8を併記し、遠隔クラスC2を構成するエレメントには符号5の他に9を併記し、文章では単に8,9と表記する。
【0049】
1つのエレメント列5Lを構成するエレメント5の全数Zは、n+1以上である。nは1以上の整数である。つまりnの最小値は1である。
【0050】
nの最大値はエレメント5の全数Zに対する半分の値の整数以下、または半分の値に最も近い整数以下であることが望ましい。
例えばエレメント5の全数Zが偶数であれば、全数に対する半分の値、又は当該半分の値の±1の値は、全部で3つある。具体的に言えば、エレメント5の全数Zが40の場合、半分の値は20であり、半分の値に最も近い整数は19と21である。そしてエレメント5の全数Zが40の場合、nは19,20,21の何れか以下であれば良く、半分の値に最も近い整数のうち大きい数が21なので、nは21以下である。
エレメント5の全数Zか奇数であれば、全数に対する半分の値は、整数+0.5の値である。そして半分の値に最も近い整数は、全部で2つある。具体的に言えば、エレメント5の全数Zが41の場合、半分の値は20.5であり、半分の値に最も近い整数は20と21である。そしてエレメント5の全数Zが41の場合、nは20,21の何れか以下であれば良く、半分の値に最も近い整数のうち大きい数が21なので、nは21以下である。言い換えると、nの最大値はエレメント5の全数に対する半分の値より大きい最小の整数である。
より望ましいnの最大値は10以下である。
図1の例では、一対のエレメント列5Lを構成するエレメント5の全数は同じであり、近隣クラスC1のエレメント5の全数n=5である。
【0051】
一方のエレメント列5Lに対しスライダー3から引き抜く力を加えた場合にスライダー3内で衝突するエレメント5と停止爪12とに加わる衝撃(スライダーロック強度)に関して、遠隔クラスC2を構成するエレメント5は、近隣クラスC1を構成するエレメント5よりも、衝撃を強める種類の強エレメント8を備える。本実施形態では遠隔クラスC2を構成する全てのエレメント5は、強エレメント8である。一方、近隣クラスC1を構成する全てのエレメント5は、強エレメント8よりも、衝撃を弱める種類の弱エレメント9である。なお衝撃を強める、衝撃を弱めるとは、相対的な表現である。そして衝撃を強めるとは、言い換えれば、対比対象に対して衝撃荷重が大きいことである。一方、衝撃を弱めるとは、言い換えれば、対比対象に対して衝撃荷重が小さいことである。
【0052】
弱エレメント9と強エレメント8とは、停止爪12の爪先21に対する衝撃(スライダーロック強度)に差が出るものである。当該衝撃に差が出る要素は、材質の硬度の相違や形状の相違がある。硬度に相違があれば、硬度が相対的に硬い材質は衝撃が強くなり、硬度が相対的に柔らかい材質は衝撃が弱くなる。本実施形態では、当該衝撃に差が出る要素は形状の相違である。
【0053】
弱エレメント9と強エレメント8とは下半部54に関して同じ形状である。一方、弱エレメント9と強エレメント8とは上半部53に関して異なる形状である。なお弱エレメント9も強エレメント8も前後方向に対称的な形状である。
【0054】
図5(A)、(B)、(S)、(T)に示すようにエレメント5における上面のうち爪軌跡tの真下の全域に関して、弱エレメント9の上面90は強エレメント8の上面80よりも低下させてある。なお右側のエレメント列5Lのエレメント5について爪軌跡tとの関係を説明する。より詳しく言えば、弱エレメント9の上面90は、テープ側部分には最も高い頂面90aを備え、反テープ側部分には反テープ側に向かうにつれて低下する先向き斜面91を備える。一方、強エレメント8の上面80は、弱エレメント9の頂面90aと同じ高さとし、爪軌跡tの真下に対して左右両側に亘る範囲に関して、上下方向に直交する平面としてある。
【0055】
また
図3に示すようにエレメント5における上面のうち爪軌跡tの真下の全域に関して、弱エレメント9の上面(先向き斜面91)を強エレメント8の上面80よりも低下させてあるので、
図5に示すようにエレメント5における上面と前面との角部であって且つ爪軌跡tの真下に関して、弱エレメント9の当該角部の表面は強エレメント8の当該角部の表面よりも低下する低下角面92である。
弱エレメント9の当該角部の表面(低下角面92)と強エレメント8の当該角部の表面とは、いずれも俗に言う丸く面取りしたかのような形状、円弧状に膨らむ状態で湾曲する湾曲面である。本実施形態では弱エレメント9の当該角部の表面(低下角面92(湾曲面))と、強エレメント8の当該角部の表面(湾曲面)とは、半径を同じ長さとする円弧状である。ちなみに円弧状に膨らむ状態で湾曲するので、当該円弧の中心の位置は、エレメント5の上面よりも下側で且つエレメント5の前面よりも後ろ側である。また円弧状に膨らむ状態で湾曲するので、強エレメント8と弱エレメント9との当該角部の表面である湾曲面は前方に向かうにつれて下がっている。なお弱エレメント9も強エレメント8も前後方向に対称的な形状であるので、エレメント5における上面と後面との角部であって爪軌跡tの真下に関して、弱エレメント9の当該角部の表面も、強エレメント8の当該角部の上面よりも低下する低下角面92である。
【0056】
第一実施形態のスライドファスナー1は、近隣クラスC1を構成する全てのエレメント5が、強エレメント8よりも、衝撃を弱める種類の弱エレメント9であるので、一対のエレメント列5Lが噛合した状態でスライダー3が途中まで引き下げられた状況(スライダー3と開き具6とが離れた状況)で、一方のエレメント列5Lに対しスライダー3から引き抜く力を加えた場合に、近隣クラスC1にスライダー3が配置された状況で弱エレメント9と停止爪12とに加わる衝撃(スライダーロック強度)が、遠隔クラスC2にスライダー3が配置された状況で強エレメント8と停止爪12とに加わる衝撃よりも弱くなる。そして第一実施形態のスライドファスナー1は、このように衝撃が弱くなるので、例えば全てのエレメント5が強エレメント8で構成されているスライドファスナーに比べると、停止爪12がエレメント5の上を乗り越えやすくなるし、エレメント5や停止爪12が破損し難くなる。
【0057】
より詳しく言えば、一対のエレメント列5Lが噛合した状態で且つスライダー3が一対のエレメント列5Lに対する位置を停止させている状況で、前後に隣り合うエレメント5の間に爪先22aが非接触状態で配置された場合(爪本体部22が爪穴31hに対して前方で上翼板31の上面に支持された場合)を基準状態として想定する。基準状態の場合、両方のエレメント列5Lに対し引抜き力が加わっていない。また基準状態の場合には、爪先21の最下端の高さは、一対のエレメント列5Lのどの位置においても同じ高さとなっている。そして一方のエレメント列5Lに対し引抜き力が加わると、スライダー3が開き具6の方へ僅かに移動し、爪先21がエレメント5の前面に衝突する。
図3(A)に示すように爪先21がエレメント5の前面に衝突したときに近隣クラスC1にスライダー3が配置された状況では、爪軌跡tの真下の全域に関して爪先21の下端の位置に対する弱エレメント9の上面(先向き斜面91)の位置を、
図3(B)に示すように強エレメント8の上面80の位置よりも低下させてあるので、爪先21が強エレメント8よりも弱エレメント9の上面を乗り越えやすくなる。そして弱エレメント9と停止爪12とに加わる衝撃が、強エレメント8と停止爪12とに加わる衝撃よりも弱くなる。
【0058】
また第一実施形態のスライドファスナー1は、近隣クラスC1の弱エレメント9を一対のエレメント列5Lに備えるので、爪先21が両方のエレメント列5Lの弱エレメント9の上面を乗り越えた場合に弱エレメント9と停止爪12とに加わる衝撃が強エレメント8と停止爪12とに加わる衝撃よりも弱くなる。特に爪先21は連結柱33に対して左右の片側に偏って配置されているので、爪先21の下端に対する高さに関して、偏っている側の弱エレメント9の先向き斜面91よりも反対側の弱エレメント9の先向き斜面91が低下することになり、爪先21が偏っている側の弱エレメント9よりも反対側の弱エレメント9の上を乗り越えやすくなる。
【0059】
また第一実施形態のスライドファスナー1は、近隣クラスC1のエレメント5の全数n=5としてある、言い換えると、エレメント列5Lを構成するエレメント5の全数Zの半分以下であり、n=10以下である。そうすると、使用者はスライダー3を近隣クラスC1に位置するように移動させたうえで開き具6からスライダー3が離れた状況の場合には、うっかり一方のエレメント列5Lに対し引抜き力を加えることが起こりうるもので、このような場合に爪先21が強エレメント8よりも弱エレメント9の上面を乗り越えやすくなる。
【0060】
本発明の第二実施形態のスライドファスナーに適用するエレメント5は
図6(S)~(W)に示すように、強エレメント8の形状を第一実施形態の強エレメント8と同じ形状とし、
図6(A)~(E)に示すように弱エレメント9aを第一実施形態での弱エレメント9と若干異なる形状としてある。
【0061】
弱エレメント9aの上面90は、エレメント5における上面のうち爪軌跡tの真下の全域のうち中間部を除く前部と後部とに関しては、強エレメント8の上面80よりも低下させ、当該全域のうち前後方向の中間部に関しては、強エレメント8の上面80と同じ高さに形成してある。したがって第二実施形態の弱エレメント9aも、エレメント5における上面と前面との角部であって且つ爪軌跡tの真下に関して、弱エレメント9aの当該角部の上面は強エレメント8の当該角部の上面よりも低下する低下角面92aである。なお弱エレメント9aも強エレメント8も前後方向に対称的な形状であるので、エレメント5における上面と後面との角部であって爪軌跡tの真下に関して、弱エレメント9aの当該角部の表面も、強エレメント8の当該角部の上面よりも低下する低下角面92aである。
【0062】
より詳しく言えば、弱エレメント9aの上面90は、前後方向の中間部を頂面90bとし、当該中間部に対して前部を前方に向かうにつれて低下する前向き斜面93とし、当該中間部に対して後部を後方に向かうにつれて低下する後向き斜面94としてある。一方、強エレメント8の上面80は、前後方向の全域について上下方向に直交する平面としてある。また弱エレメント9aの上面90と前面との角部の上面(低下角面92a)は、強エレメント8の当該角部の上面(湾曲面)よりも半径の大きな円弧状である。
【0063】
第二実施形態のスライドファスナーは、一方のエレメント列5Lに対し引抜き力を加えた場合に、弱エレメント9aの上面90の前部を前向き斜面93としてあるので、強エレメント8に比べると、爪先21が強エレメント8よりも弱エレメント9aの上面を乗り越えやすくなり、弱エレメント9aと停止爪12とに加わる衝撃(スライダーロック強度)が、強エレメント8と停止爪12とに加わる衝撃よりも弱くなる。
【0064】
本発明の第三実施形態のスライドファスナーに適用するエレメント5bは
図7に示すように第一実施形態のエレメント5と形状が異なっているものである。
【0065】
エレメント5bは、左右方向に関して、固定部51と噛合部52とを備えることは第一実施形態のエレメント5と同じである。しかしエレメント5bは、上下方向に関して、上半部55と下半部56とを対称的な形状にしてあることについて、第一実施形態のエレメント5と明確に相違する。
【0066】
噛合部52は、固定部51から反テープ側に延びると共に固定部51に対して前後に括れた首部52aと、首部52aから反テープ側に延びると共に首部52aに対して前後に膨らむ頭部52bと、首部52aのうち固定部51側から前後に張り出した一対の肩部52cであって他のエレメント5bの頭部52bに形成された凹溝部52dに噛合う一対の肩部52cとを備える。凹溝部52dは、頭部52bの上下方向の高さ中間部において反テープ側に開口すると共に前後方向に貫通する。
【0067】
本実施形態での爪軌跡tは、一方側(
図7では右側)のエレメント列5Lに関しては一対の肩部52cの上方、他方側(
図7では左側)のエレメント列5Lに関しては頭部52bの上方を爪先21が通過する軌跡であるものとする。以下では
図7に示すように右側のエレメント列5Lのエレメント5bについて爪軌跡tとの関係を説明する。
【0068】
弱エレメント9bの上面90は、固定部51と噛合部52との境界部に反テープ側に向かうにつれて低下する境界斜面96を備える。また弱エレメント9bの上面は、境界斜面に対してテープ側の部分を固定部51の上面である頂面90cとし、境界斜面96に対して反テープ側の部分を、固定部の頂面90cに対して段差状に低く、上下方向に直交する平面状の下段面95としてある。つまり弱エレメント9bの上面90は、固定部51の上面である頂面90cと、段差状に低い下段面95と、境界斜面96とを備える。境界斜面96と下段面95の一部(テープ側部分)とはエレメント5bにおける上面のうち爪軌跡tの真下の全域に配置される。
一方、強エレメント8の上面80は固定部51と噛合部52とを、弱エレメント9bの固定部51の上面(頂面90c)と同じ高さに形成してある。したがってエレメント5bにおける上面のうち爪軌跡tの真下の全域に関して、弱エレメント9の上面90は強エレメント8の上面80よりも低下させてある。
【0069】
エレメント5bにおける上面のうち爪軌跡tの真下の全域に関して、弱エレメント9bの上面90(境界斜面96と下段面95の一部と)を強エレメント8bの上面80よりも低下させてあるので、エレメント5bにおける上面と前面との角部であって且つ爪軌跡tの真下に関して、弱エレメント9bの前記角部の表面は強エレメント8bの前記角部の表面よりも低下する低下角面92bである。
弱エレメント9bの当該角部の表面(低下角面92b)と強エレメント8bの当該角部の表面とは、いずれも円弧状に膨らむ状態で湾曲する湾曲面である。本実施形態では弱エレメント9bの当該角部の表面(低下角面92b)と、強エレメント8bの当該角部の表面(湾曲面)とは、半径を同じ長さとする円弧状である。また円弧状に膨らむ状態で湾曲するので、弱エレメント9bと強エレメント8bとの当該角部の表面である湾曲面は前方に向かうにつれて低下している。
なお弱エレメント9bも強エレメント8bも前後方向に対称的な形状であるので、エレメント5における上面と後面との角部であって爪軌跡tの真下に関して、弱エレメント9bの当該角部の表面は強エレメント8bの当該角部の上面よりも低下する低下角面92bである。
【0070】
第三実施形態のスライドファスナーは、一方のエレメント列5Lに対し引抜き力を加えた場合に、爪軌跡tの真下の全域に関して弱エレメント9bの上面90(境界斜面96)の位置を、強エレメント8bの上面80の位置よりも低下させてあるので、爪先21が強エレメント8bよりも弱エレメント9bの上面を乗り越えやすくなる。
【0071】
本発明の第四実施形態のスライドファスナーに適用するエレメント5bは
図8(S)~(V)に示すように、強エレメント8bの形状を第三実施形態の強エレメント8bと同じ形状とし、
図8(A)~(D)に示すように弱エレメント9cを第三実施形態での弱エレメント9bと若干異なる形状としてある。なお右側のエレメント列5Lのエレメント5bについて爪軌跡tとの関係を説明する。
【0072】
弱エレメント9cの上面90は、エレメント5bにおける上面のうち爪軌跡tの真下の全域のうち中間部を除く前部と後部とに関しては、強エレメント8bの上面80よりも低下させてあり、当該全域のうち前後中間部に関しては、同じ高さに形成してある。したがって第四実施形態の弱エレメント9cも、エレメント5bにおける上面と前面との角部であって且つ爪軌跡tの真下に関して、弱エレメント9cの当該角部の表面は強エレメント8bの前記角部の上面よりも低下する低下角面92cである。またエレメント5bにおける上面と後面との角部であって且つ爪軌跡tの真下に関して、弱エレメント9cの当該角部の表面も強エレメント8bの前記角部の表面よりも低下する低下角面92cである。
また弱エレメント9cの当該角部の表面(低下角面92c)と強エレメント8bの当該角部の表面とは、いずれも円弧状に膨らむ状態で湾曲する湾曲面である。弱エレメント9cの当該角部の上面(低下角面92c)は、強エレメント8bの当該角部の上面(湾曲面)よりも半径の大きな円弧状である。
【0073】
より詳しく言えば、弱エレメント9cの上面90は、前後方向の中間部に頂面90dを備え、当該中間部に対して前部を前方に向かうにつれて低下する前向き斜面97とし、当該中間部に対して後部を後方に向かうにつれて低下する後向き斜面98としてある。一方、強エレメント8bの上面80は、前後方向の全域(ただし前面との角部及び後面との角部を除く)について上下方向に直交する平面であり、弱エレメント9cの頂面90dと同じ高さとしてある。
【0074】
第四実施形態のスライドファスナー1は、一方のエレメント列5Lに対し引抜き力を加えた場合に、弱エレメント9cの上面90の前部を前向き斜面97としてあるので、爪先21が強エレメント8bよりも弱エレメント9cの上面を乗り越えやすくなり、弱エレメント9cと停止爪12とに加わる衝撃(スライダーロック強度)が、強エレメント8bと停止爪12とに加わる衝撃よりも弱くなる。
【0075】
本発明の第五実施形態のスライドファスナー1aは
図9に示すように、2つのスライダー3,3aを備えることと、開き具6aの構成について、第一実施形態のスライドファスナー1と相違する。但し近隣クラスC1、遠隔クラスC2の構成については第一実施形態のスライドファスナーと同じである。
【0076】
2つのスライダー3,3aのうち一方は、前方向に移動することで一対のエレメント列5Lを閉じる第1のスライダー3であり、他方は、後方向に移動することで一対のエレメント列5Lを閉じる第2のスライダー3aである。第1のスライダー3は、第一実施形態のスライダー3と同じ構成である。第2のスライダー3aは、停止爪12が無いこと以外、第1のスライダー3と前後方向に対称的な構成である。
【0077】
開き具6aは、一対のテープ4の前後方向の後端部においてエレメント列5Lに対し後側に隣り合う状態で別々に固定される一対の開き具片61a,62aから構成される。本実施形態では、一方の開き具片61aは、一方のテープ4の対向する側縁部に固定された蝶棒61aであり、他方の開き具片62aは他方のテープ4の対向する側縁部に固定された箱棒62aである。第2のスライダー3aは箱棒62aの後端部に位置する場合に、第一実施形態の箱と同じ機能を発揮する。そして第2のスライダー3aと第1のスライダー3を前後に隣り合う状態で一方のエレメント列5Lの後端部に配置した場合には、他方のエレメント列5Lの後端部が第1のスライダー3と第2のスライダー3aのエレメント通路36の左右の片側に抜き差し可能となる。
【0078】
第五実施形態のスライドファスナー1aは、第一実施形態のスライドファスナー1と同じ効果を有する。
【0079】
上記した第一実施形態のスライドファスナー1の製造方法は
図10に示すように、以下1)~9)の工程の順に行われる。
1)テープ準備工程。テープ準備工程は、一対のテープ4を準備する工程である。複数のスライドファスナー1を大量生産するために、テープ4には長尺なものが用いられる。
2)第1の射出成形工程。第1の射出成形工程は、左右に対向する一対のテープ4に強エレメント8を射出成形する。また第1の射出成形工程は、ゲート部Gを一対のテープ4の間に対して平行に形成し、強エレメント8をゲート部Gに対して左右において前後に間隔を開けて且つゲート部Gとテープ4とを繋げる状態で形成する工程である。
3)ゲート部除去工程。ゲート部除去工程は、ゲート部Gを除去することで一対のテープ4に強エレメント8を別々に固定された状態とする工程である。
4)噛合工程。噛合工程は、一対のテープ4を強エレメント8同士で噛合させる工程である。
5)強エレメント除去工程とテープ補強工程。強エレメント除去工程は、噛合された複数の強エレメント8のうち一部の強エレメント8をテープ4の一部から除去することで一対のテープ4に除去部分4bを形成する工程である。テープ補強工程は、テープ4に対して除去部分4bの前後方向の中間部およびその左右の周辺を含む領域に補強テープ4aを貼り、その後に補強テープ4aごとテープ4を部分的に打抜く工程である。
6)第2の射出成形工程。第2の射出成形工程は、一対のテープ4に対しその除去部分を含む領域に一対の開き具片61,62と弱エレメント9を射出成形する工程である。より具体的には第2の射出成形工程は、弱エレメント9を射出成形した後に、開き具片61,62を射出成形しても良いし、弱エレメントと開き具片61,62を同時に射出成形しても良い。第2の射出成形工程により、エレメント列5Lが完成する。なお図面では、弱エレメント9は噛合い、開き具6も蝶棒61が箱62に挿入された状態になっているが、実際には第2の射出成形工程の後に、蝶棒61を箱62の穴に挿入し、再度、一対のエレメント列5Lを噛合させる噛合工程が行われる。
7)切断工程。切断工程は、一対のテープ4を1つのスライドファスナー1として必要とされる所定の長さに切断する工程である。
8)スライダー挿入工程。スライダー挿入工程は、スライダー3を開き具6とは反対側から一対のエレメント列5Lに挿入する工程である。スライダー3が挿入されると、一対のエレメント列5Lのうちスライダー3が通過した部分は左右に分離する。
9)第3の射出成形工程。第3の射出成形工程は、エレメント列5Lに対し開き具6とは反対側においてテープ4に止具7を別々に射出成形する工程である。以上で、第一実施形態のスライドファスナー1が完成する。なお射出成形するということは、本実施形態ではエレメント5・開き具6・止具7はプラスチック製である。
【0080】
第一実施形態のスライドファスナー1の製造方法は、複数のスライドファスナー1を効率良く製造する方法である。そしてスライドファスナー1が製造されることより、一対のストリンガー2が製造されるので、スライドファスナー1の製造方法を説明することにより、ストリンガー2の製造方法も説明したことになる。そしてスライドファスナー1の製造方法は、第一実施形態のスライドファスナー1の製造方法に限らず、例えば一対のストリンガー2を別々に製造して、その後にスライダー3を一対のエレメント列5Lに挿入するものであっても良い。
【0081】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば停止爪12の爪先21はスライダー胴体11を停止させるために、本実施形態ではスライダー胴体11の内部において左右のエレメント列5Lの前後に隣り合う噛合部52の間に入るものであったが、本発明ではこれに限らず、一方のエレメント列5Lの前後に隣り合う固定部51の間に入るものであっても良い。
またエレメント列5Lは前記実施形態では2種類のエレメントによって構成されていたが、本発明ではこれに限らず、3種類以上であっても良い。
【符号の説明】
【0082】
1,1a スライドファスナー
2 ストリンガー
3,3a スライダー
11 スライダー胴体
12 停止爪
13 引手
13a 摘まみ部
13b 引手連結部
14 板バネ
15 カバー
15a 嵌合凹部
15b バネ支持部
15c 軸通し凹部
21 爪先
22 爪本体部
22a 下面
23 爪挿入部
t 爪軌跡
31 上翼板
31a 上翼板本体部
31b 前柱部
31c 後柱部
31d 爪支持凹部
31h 爪穴
32 下翼板
33 連結柱
34 フランジ
36 エレメント通路
37 テープ溝
4 テープ
4a 補強テープ
4b 除去部分
5,5b エレメント
51 固定部
52 噛合部
52a 首部
52b 頭部
52c 肩部
52d 凹溝部
53 上半部
53a 上固定部
53b 上噛合部
53c 上肩部
53d 上頭部
54 下半部
54a 下固定部
54b 下噛合部
54c 下首部
54d 下頭部
55 上半部
56 下半部
5L エレメント列
6,6a 開き具
61,61a 開き具片(蝶棒)
62,62a 開き具片(箱,箱棒)
63 箱棒
64 箱体
7 止具
8,8b 強エレメント
80 上面
9,9a,9b,9c 弱エレメント
90 上面
90a,90b,90c,90d 頂面
91 先向き斜面
93,97 前向き斜面
94,98 後向き斜面
95 下段面
96 境界斜面
92,92a,92b,92c 低下角面
C1 近隣クラス
C2 遠隔クラス
G ゲート部
n 近隣クラスのエレメントの全数
Z エレメントの全数