(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】モータ及びバルブ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20241220BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K7/06 A
(21)【出願番号】P 2024526767
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2022026786
(87)【国際公開番号】W WO2024009416
(87)【国際公開日】2024-01-11
【審査請求日】2024-05-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】324003048
【氏名又は名称】三菱電機モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 克典
(72)【発明者】
【氏名】高井 優
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-263783(JP,A)
【文献】特開2012-110176(JP,A)
【文献】国際公開第2022/064543(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K5/00-7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータの内側において回転可能に支持されるロータシャフトと、
前記ロータシャフトの内部に支持され、前記ロータシャフトの回転に伴って、軸方向に往復移動するモータシャフトと、
上端が前記ステータ
の下部に取り付けられ、
下端が前記モータシャフト
の下端を貫通させて当該モータシャフトの回転を規制する
円筒状のボスと、
前記ボスの
内面に嵌め込まれ、内周端が前記ロータシャフトの外周面に当接する環状のシール部材と、
前記シール部材を径方向に貫通する呼吸孔と、
前記シール部材の外周面に対して、前記呼吸孔を覆うように設けられる防水透湿性部材と、
前記シール部材の径方向外側に設けられ、前記防水透湿性部材を前記シール部材の外周面に押さえ付ける押さえリングとを備える
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記シール部材の外周面に設けられ、前記呼吸孔の外端が開口する窪みを備え、
前記防水透湿性部材は、前記窪みに設けられ、
前記押さえリングの内周端は、前記防水透湿性部材を介して、前記窪みに嵌合する
ことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記押さえリングの外周端は、前記ボスの内面に当接する
ことを特徴とする請求項2記載のモータ。
【請求項4】
前記押さえリングは、上面及び下面において、当該押さえリングの径方向に延びる凹部を有し、
前記凹部は、前記呼吸孔に対応して配置される
ことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項5】
前記シール部材は、
前記ボスに嵌め込まれる大円筒部と、
内周端が前記ロータシャフトの外周面に当接する小円筒部と、
前記大円筒部と前記小円筒部との間に設けられ、前記呼吸孔が形成される中間円筒部とを有する
ことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項6】
前記呼吸孔は、前記シール部材の周方向において、複数設けられる
ことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項7】
前記防水透湿性部材は、シート状に形成される
ことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載のモータと、
前記ステータに固定されるバルブハウジングと、
前記バルブハウジングに形成される流路と、
前記流路に設けられる弁座と、
前記弁座に対して着脱可能に設けられるバルブと、
前記バルブを一端に有し、前記モータシャフトの軸方向移動に連動するバルブ軸とを備える
ことを特徴とするバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ及びバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータには、直動式のモータがある。この直動式のモータは、ロータを回転させることで、出力軸となるモータシャフトを軸方向において往復移動可能とする。このような、従来のモータは、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたモータは、シール部材を備えている。このシール部材は、異物のモータ内部への侵入を防止するものである。シール部材の外周端は、ハウジングの内面に取り付けられている。一方、シール部材の内周端は、モータシャフトの外周面に取り付けられている。このため、シール部材は、モータシャフトが軸方向に往復移動しても、当該モータシャフトとハウジングとの間の気密性を保持することができる。
【0005】
ここで、特許文献1に開示されたモータにおいては、モータ内部がシール部材によって気密になっているため、モータ周囲の温度変化及びモータシャフトの直動等に応じて、モータ内部の気圧が変動する場合がある。このような、気圧の変動は、モータの動作に影響を与えてしまう。
【0006】
そこで、モータ内部の気圧変動を抑制するため、当該モータ内部とモータ外部との間を連通する呼吸孔を設けることが考えられる。しかしながら、呼吸孔をモータの外面に開口するように設けてしまうと、その呼吸孔からモータ内部に異物が侵入するおそれがある。また、上記呼吸孔を設ける場合、モータの外装部品の形状変更が必要になってしまう。
【0007】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、外装部品の形状変更を行うことなく、異物のモータ内部への侵入を防ぎつつ、モータ内部の気圧変動を抑制することができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るモータは、ステータの内側において回転可能に支持されるロータシャフトと、ロータシャフトの内部に支持され、ロータシャフトの回転に伴って、軸方向に往復移動するモータシャフトと、上端がステータの下部に取り付けられ、下端がモータシャフトの下端を貫通させて当該モータシャフトの回転を規制する円筒状のボスと、ボスの内面に嵌め込まれ、内周端がロータシャフトの外周面に当接する環状のシール部材と、シール部材を径方向に貫通する呼吸孔と、シール部材の外周面に対して、呼吸孔を覆うように設けられる防水透湿性部材と、シール部材の径方向外側に設けられ、防水透湿性部材をシール部材の外周面に押さえ付ける押さえリングとを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、外装部品の形状変更を行うことなく、異物のモータ内部への侵入を防ぎつつ、モータ内部の気圧変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係るモータを備えるEGRバルブ装置の縦断面図である。
【
図3】押さえリングをシール部材に組み付けた状態を示す図である。
【
図5】シール部材の構成を示す図である。
図5Aは、シール部材の平面図である。
図5Bは、
図5AのV‐V矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示をより詳細に説明するために、本開示を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0012】
実施の形態1.
実施の形態1に係るモータ10について、
図1から
図6を用いて説明する。
図1は、実施の形態1に係るモータ10を備えるEGRバルブ装置の縦断面図である。
図2は、
図1の要部拡大図である。
図3は、押さえリング18をシール部材16に組み付けた状態を示す図である。
図4は、シール部材16の斜視図である。
図5は、シール部材16の構成を示す図である。
図6は、押さえリング18の斜視図である。なお、
図3においては、防水透湿性部材17を省略している。また、
図5Aにおいては、複数の呼吸孔16eのうち、代表して、1つの呼吸孔16eのみを図示している。
【0013】
ここで、
図1は、実施の形態1に係るモータ10をバルブ装置に適用した例である。バルブ装置は、例えば、車両に搭載された排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation:以下、EGRと称す)システムのEGRバルブ装置を想定するものである。なお、
図1は、EGRバルブ装置の全閉状態を示している。また、
図1の2点鎖線は、EGRバルブ装置の全開状態を示している。
【0014】
EGRシステムは、車両のエンジンにおいて、その燃焼室から排出される排気ガス中に含まれる有害物質の低減を図ることを目的として、排気ガスの一部(以下、EGRガスと称す)を、排気通路から吸気通路へ再循環(還流)させるための排気ガス再循環通路(以下、EGR通路と称す)を備えている。このEGRシステムは、EGRガスの流量を制御するため、EGR通路の途中に、EGRバルブ装置を備えている。EGRバルブ装置は、バルブ開度を調整することで、EGRガスの流量を制御する。
【0015】
図1に示すように、EGRバルブ装置は、モータ10及びバルブハウジング20を備えている。モータ10の下部とバルブハウジング20の上部とは、例えば、ボルト等を用いて、互いに固定されている。
【0016】
モータ10は、ステータ11、ロータ12、軸受13、ボス14、モータシャフト15、シール部材16、防水透湿性部材17、及び、押さえリング18を備えている。このモータ10は、ロータ12の回転を、モータシャフト15の軸方向移動に変換する、所謂、直動式のモータである。即ち、モータ10は、ステータ11に対してロータ12を回転させることで、モータシャフト15をその軸方向において往復移動させることが可能となっている。
【0017】
ステータ11は、モータ10の外周部を構成している。このステータ11は、略円筒状に形成されている。ステータ11は、例えば、コイルが巻き付けられたボビン等を有している。
【0018】
ロータ12は、ステータ11の径方向内側に配置されている。このロータ12は、軸受13を介して、ステータ11の内周面に回転可能に支持されている。ロータ12は、例えば、マグネット及びロータシャフト12a等を有している。
【0019】
マグネットは、モータ10の径方向において、ステータ11のコイルと対向するように設けられている。ロータシャフト12aは、ロータ12の中心部に配置されている。このロータシャフト12aは、略円筒状に形成されている。ロータシャフト12aは、ロータ12が回転すると、当該ロータ12と共に回転する。また、ロータシャフト12aの内周面には、雌ねじ(図示省略)が形成されている。このような、ロータシャフト12aは、例えば、樹脂材又は金属材で形成されている。
【0020】
これに対して、モータシャフト15は、ロータシャフト12aに挿入されている。モータシャフト15の外周面には、雄ねじ(図示省略)が形成されている。このモータシャフト15の雄ねじと、上記ロータシャフト12aの雌ねじとは、互いに噛み合っている。このような、モータシャフト15は、金属材で形成されている。なお、ロータシャフト12aの雌ねじと、モータシャフト15の雄ねじとは、ねじ変換機構を構成するものである。
【0021】
図1及び
図2に示すように、ボス14は、ステータ11の下部に取り付けられている。このボス14は、内径が、上端から下端に向かうに従って、徐々に大きくなるような、円筒状に形成されている。このような、ボス14は、例えば、樹脂材で形成されている。また、ボス14は、支持孔14a及び嵌合凹部14bを有している。
【0022】
支持孔14aは、ロータシャフト12aと同軸上に配置されている。支持孔14aは、ボス14の下端に形成される孔であって、モータシャフト15をその軸方向において往復移動可能に支持している。支持孔14aは、例えば、矩形状に形成されている。
【0023】
嵌合凹部14bは、支持孔14aの径方向外側において、環状に形成されている。この嵌合凹部14bは、下方に向けて凹むように形成されている。即ち、嵌合凹部14bは、上方に向けて開口している。なお、詳細については後述するが、嵌合凹部14bには、シール部材16が嵌め込まれている。
【0024】
これに対して、モータシャフト15は、矩形断面を有する回転規制部15aを備えている。この回転規制部15aは、ボス14の支持孔14aに対して、常に、貫通した状態となっている。そして、モータシャフト15は、回転規制部15aがボス14の支持孔14aに差し込まれることで、中心軸周りの回転が規制されると共に、軸方向への往復移動が可能となっている。
【0025】
また、ステータ11に取り付けられたボス14の内部には、ロータシャフト12aの下端が配置されている。このロータシャフト12aは、ボス14の内面には接触していない。更に、そのボス14の内部には、シール部材16、防水透湿性部材17、及び、押さえリング18が設けられている。なお、シール部材16、防水透湿性部材17、及び、押さえリング18の詳細については、後述する。
【0026】
図1に示すように、バルブハウジング20は、ステータ11の下部に取り付けられたボス14を、下方から覆うように設けられている。このバルブハウジング20には、内部空間20a、大気開放孔20b、流路20c、及び、貫通孔20dが形成されている。
【0027】
内部空間20aは、バルブハウジング20の上部に形成されている。この内部空間20aには、ステータ11の下部に取り付けられたボス14が収納されている。このため、ボス14に支持されるモータシャフト15の下端は、内部空間20aに対して、押し出し可能となっている。
【0028】
大気開放孔20bは、内部空間20aを区画形成する側壁に形成されている。この大気開放孔20bは、内部空間20aとバルブハウジング20の外部との間を連通している。このため、内部空間20aは、大気で充満されている。
【0029】
流路20cは、上記EGR通路の一部分を形成するものである。流体であるEGRガスは、流路20cを流れる。
図1の矢印Gは、EGRガスの流れを示している。
【0030】
貫通孔20dは、バルブハウジング20を上下方向に貫通して形成されている。貫通孔20dの上端は、内部空間20aに開放されている。貫通孔20dの下端は、流路20cに開放されている。この貫通孔20dには、後述するバルブ軸23が摺動可能に支持されている。
【0031】
バルブハウジング20は、バルブシート21、バルブ22、バルブ軸23、軸受24、ホルダ25、及び、スプリング26を備えている。
【0032】
バルブシート21は、流路20cに設けられている。このバルブシート21は、環状に形成されている。
【0033】
バルブ22は、円形状に形成されている。このバルブ22は、流路20cにおいて、バルブシート21に対して、着脱可能となっている。EGRバルブ装置は、バルブシート21に対するバルブ22の開度を調整することにより、当該流路20cを流れるEGRガスの流量を制御する。
【0034】
バルブ軸23は、軸受24に支持されている。このため、バルブ軸23は、当該バルブ軸23の軸方向において、往復移動可能となっている。また、バルブ軸23の上端は、モータシャフト15の下端と当接可能となっている。バルブ軸23に下端には、上記バルブ22が取り付けられている。この結果、バルブ22は、バルブ軸23が上方に向けて軸方向移動することにより、バルブシート21に着座する。また、バルブ22は、バルブ軸23が下方に向けて軸方向移動することにより、バルブシート21から離脱する。
【0035】
ホルダ25は、円形状に形成されている。このホルダ25は、内部空間20aに配置されている。また、ホルダ25は、バルブ軸23の上端側外周面に固定されている。スプリング26は、内部空間20aに配置されている。このスプリング26は、バルブ軸23に取り付けられたホルダ25と、内部空間20aの底面との間において、圧縮状態で設けられている。このため、スプリング26は、ホルダ25を介して、バルブ軸23を上方に向けて付勢した状態となっている。即ち、バルブ22は、閉弁方向に向けて常に付勢された状態となっている。
【0036】
従って、モータ10に駆動電力が供給されると、モータシャフト15は、ロータ12の正転又は逆転に伴って、ロータシャフト12aの軸方向内側から軸方向外側に押し出されるように、下方に向けて移動する。そして、下方に向けて移動したモータシャフト15の下端は、バルブ軸23の上端を押圧する。このため、モータシャフト15は、スプリング26の付勢力に抗して、下方に向けて移動する。これに伴って、バルブ22は、バルブシート21から離脱して、流路20cを開放する。この結果、EGRガスは、排気通路から吸気通路に還流する。このとき、EGRガスの流量は、バルブ22のバルブシート21に対するバルブ開度に応じて制御される。
【0037】
また、モータ10に駆動電力が供給されると、モータシャフト15は、ロータ12の逆転又は正転に伴って、ロータシャフト12aの軸方向外側から軸方向内側に引き込まれるように、上方に向けて移動する。そして、上方に向けて移動したモータシャフト15の下端は、バルブ軸23の上端から離間する。このため、バルブ軸23は、スプリング26の付勢力によって、上方に向けて移動する。これに伴って、バルブ22は、バルブシート21に着座して、流路20cを閉鎖する。この結果、排気通路と吸気通路との間は、バルブ22によって遮断されるため、EGRガスは、排気通路から吸気通路に還流しなくなる。
【0038】
図1及び
図2に示すように、シール部材16は、異物のロータシャフト12a及びボス14との間からの侵入を抑制して、異物C1,C2のモータ10の内部への侵入を防止するものである。シール部材16は、ボス14の内部に設けられている。また、シール部材16は、環状に形成されており、ロータシャフト12aの径方向外側に設けられている。このような、シール部材16は、例えば、フッ素樹脂等の樹脂材で形成されている。
【0039】
図1から
図5に示すように、シール部材16は、大円筒部16a、小円筒部16b、中間円筒部16c、窪み16d、及び、呼吸孔16eを有している。
【0040】
大円筒部16aは、シール部材16の下部を構成している。大円筒部16aの外径は、シール部材16の部位の中で、最も大きな外径となっている。大円筒部16aは、嵌合凹部14bに嵌め込まれている。具体的には、大円筒部16aの内周端は、嵌合凹部14bの内周内面に当接している。大円筒部16aの外周端は、嵌合凹部14bの外周内面に当接している。このため、大円筒部16aは、異物のボス14の内面との間からの侵入を抑制することができる。
【0041】
小円筒部16bは、シール部材16の上部を構成している。小円筒部16bの外径は、大円筒部16aの外径よりも小径となっている。また、小円筒部16bの内径は、シール部材16の部位の中で、最も小さな内径となっている。この小円筒部16bの内周端は、回転するロータシャフト12aの外周面に当接可能となっている。このため、小円筒部16bは、異物のロータシャフト12aとの間からの侵入を抑制することができる。
【0042】
中間円筒部16cは、シール部材16の軸方向において、大円筒部16aと小円筒部16bとの間に配置されている。中間円筒部16cの外径は、小円筒部16bの外径と略同じ外径となっている。また、中間円筒部16cの内径は、大円筒部16aの内径と略同じ内径となっている。このような、中間円筒部16cには、窪み16d及び複数の呼吸孔16eが設けられている。
【0043】
窪み16dは、中間円筒部16cの外周面に環状に形成されている。即ち、窪み16dは、中間円筒部16cの周方向において、その外周面全域に形成されている。なお、詳細については後述するが、窪み16dには、防水透湿性部材17が装着されると共に、押さえリング18が嵌合可能となっている。
【0044】
呼吸孔16eは、中間円筒部16cをその径方向に貫通する孔である。また、呼吸孔16eは、シール部材16の周方向において、等間隔で配置されている。このとき、呼吸孔16eの外端は、窪み16dの表面に開口している。このため、呼吸孔16eは、モータ10の内部と外部との間を連通することができる。この結果、シール部材16は、異物のロータシャフト12a及びボス14との間からの侵入を抑制する一方で、モータシャフト15の直動に応じた、モータ10の内部の気圧変動を、抑制することができる。
【0045】
図2に示すように、防水透湿性部材17は、全ての呼吸孔16eを覆うように、窪み16dに設けられている。この防水透湿性部材17は、例えば、シート状に形成されている。この場合、防水透湿性部材17は、全ての呼吸孔16eを覆うように、窪み16dの全周に亘って設けられても良い。また、防水透湿性部材17は、全ての呼吸孔16eのうち、2つ以上の呼吸孔16eに対応するように、窪み16dの全周に亘って分割して設けられても良い。更に、防水透湿性部材17は、1つの呼吸孔16eごとに対応して、窪み16dの全周に亘って分割して設けられても良い。そして、防水透湿性部材17は、接着剤又は熱溶着を用いて、窪み16dに貼り付けても良い。このため、シール部材16と防水透湿性部材17との間の密着性が向上される。
【0046】
このような、防水透湿性部材17は、防水性及び透湿性を有する防水透湿性素材から形成されている。防水透湿性素材は、水は通さないが、湿気(水蒸気)は通す性質を有する素材であって、水蒸気は通り抜けられるが、水は通れない、小さな孔を明けた構造を備えている。この防水透湿性素材は、例えば、ポリウレタン等である。このため、呼吸孔16eが防水透湿性部材17によって覆われても、水、埃、塵等は、呼吸孔16eを通過できないが、空気(気圧)は、その呼吸孔16eを通過することができる。
【0047】
図2、
図3、
図6に示すように、押さえリング18は、シール部材16の径方向外側に設けられている。この押さえリング18は、環状に形成されている。このような、押さえリング18は、例えば、シリコンゴム及びフッ素ゴム等の樹脂で形成されている。押さえリング18は、弾性体のOリング又はCリングである。
【0048】
押さえリング18の内周端は、シール部材16の窪み16dに対して嵌合可能となっている。このため、押さえリング18の内周端は、防水透湿性部材17を窪み16dに押さえ付けることができる。このため、押さえリング18は、防水透湿性部材17のシール部材16からの脱落、及び、防水透湿性部材17の呼吸孔16eに対する位置ずれを防止することができる。
【0049】
一方、押さえリング18の外周端は、ボス14の内側面に当接している。このため、押さえリング18は、シール部材16をロータシャフト12aの外周面に押し付けることができる。この結果、押さえリング18は、ロータシャフト12aの外周面とシール部材16の内周端との間における異物の侵入の抑制を向上させることができる。
【0050】
押さえリング18は、凹部18a及び凸部18bを有している。凹部18a及び凸部18bは、押さえリング18の上面及び下面において、その径方向に延びるように形成されている。また、凹部18a及び凸部18bは、押さえリング18の上面及び下面において、その周方向において交互に配置されている。このとき、凹部18aは、シール部材16の呼吸孔16eと対向するように配置されている。このため、呼吸孔16eの一部分は、凹部18aと対向するため、押さえリング18に塞がれなくなる。
【0051】
即ち、防水透湿性部材17を押さえリング18によって窪み16dに押さえ付ける場合、呼吸孔16eの外端全域が押さえリング18によって塞がれてしまうと、呼吸孔16eを通過しようとする空気が滞ってしまうおそれがある。そこで、押さえリング18は、凹部18aを呼吸孔16eに対応させて配置することで、呼吸孔16eの外端の一部分を開放する。このため、押さえリング18は、空気の呼吸孔16eの通過を良好にすることができる。
【0052】
ここで、モータ10における縦寸法、横寸法、高さ寸法が、略60mm、略60mm、略80mmであって、その体積が略288,000mm3となる場合、例えば、押さえリング18によって塞がれない呼吸孔16eの開口面積の合計は、1.5mm2以上となっている。
【0053】
ここで、
図1に示すように、EGRバルブ装置においては、流路20cからの異物C1が、貫通孔20dとバルブ軸23の外周面との間から、バルブハウジング20の内部空間20aを介して、モータ10の内部に侵入する場合がある。また、
図1に示すように、大気開放孔20bからの異物C2が、バルブハウジング20の内部空間20aを介して、モータ10の内部に侵入する場合がある。なお、異物C1は、例えば、凝縮水、排気ガス、及び、デポジット等である。異物C2は、被水、埃、及び、塵等である。この場合、異物C1,C2は、例えば、ボス14の内部を通り、モータ10の内部に侵入しようとする。
【0054】
これに対して、
図2に示すように、EGRバルブ装置は、ロータシャフト12aの外周面とボス14の内面との間にシール部材16を備えているため、異物C1,C2のモータ10の内部への侵入を防止することができる。
【0055】
また、EGRバルブ装置は、バルブ22の開度を調整して、EGRガスの流量を制御する。このとき、モータ10は、モータシャフト15を軸方向に往復移動させることになるが、これに伴って、モータ10の内部の気圧は、変動する。
【0056】
これに対して、EGRバルブ装置は、シール部材16に呼吸孔16eを設けているため、モータ10の内部の気圧を、呼吸孔16eを介して、出し入れすることができる。このため、EGRバルブ装置は、モータ10の内部の気圧変動による当該モータ10への影響を抑えることができる。このとき、
図2に示すように、防水透湿性部材17が呼吸孔16eを覆っているため、EGRバルブ装置は、異物C1,C2が呼吸孔16eを介してモータ10の内部に侵入することを、防止することができる。
【0057】
以上、実施の形態1に係るモータ10は、ステータ11の内側において回転可能に支持されるロータシャフト12aと、ロータシャフト12aの内部に支持され、当該ロータシャフト12aの回転に伴って、軸方向に往復移動するモータシャフト15と、ステータ11に設けられ、モータシャフト15を貫通させて当該モータシャフト15の回転を規制するボス14と、ボス14の内部に設けられ、内周端がロータシャフト12aの外周面に当接する環状のシール部材16と、シール部材16を径方向に貫通する呼吸孔16eと、シール部材16の外周面に対して、呼吸孔16eを覆うように設けられる防水透湿性部材17と、シール部材16の径方向外側に設けられ、防水透湿性部材17をシール部材16の外周面に押さえ付ける押さえリング18とを備える。このため、モータ10は、外装部品の形状変更を行うことなく、異物C1,C2のモータ内部への侵入を防ぎつつ、モータ内部の気圧変動を抑制することができる。
【0058】
モータ10は、シール部材16の外周面に設けられ、呼吸孔16eの外端が開口する窪み16dを備える。防水透湿性部材17は、窪み16dに設けられる。押さえリング18の内周端は、防水透湿性部材17を介して、窪み16dに嵌合する。このため、モータ10は、防水透湿性部材17のシール部材16からの脱落、及び、防水透湿性部材17の呼吸孔16eに対する位置ずれを防止することができる。
【0059】
モータ10においては、押さえリング18の外周端は、ボス14の内面に当接する。このため、モータ10は、シール部材16を、押さえリング18によって、ロータシャフト12aの外周面に押し付けることができる。この結果、モータ10は、ロータシャフト12aの外周面とシール部材16の内周端との間における異物の侵入の抑制を向上させることができる。
【0060】
モータ10においては、押さえリング18は、上面及び下面において、当該押さえリングの径方向に延びる凹部18aを有する。凹部18aは、呼吸孔16eに対応して配置される。このため、モータ10は、空気の呼吸孔16eの通過を良好にすることができるため、モータ内部の気圧変動を容易に抑制することができる。
【0061】
モータ10においては、シール部材16は、ボス14に嵌め込まれる大円筒部16aと、内周端がロータシャフト12aの外周面に当接する小円筒部16bと、大円筒部16aと小円筒部16bとの間に設けられ、呼吸孔16eが形成される中間円筒部16cとを有する。このため、シール部材16は、簡素な構成で、異物の侵入の抑制を図ると共に、空気通過性を備えることができる。
【0062】
モータ10においては、呼吸孔16eは、シール部材16の周方向において、複数設けられる。このため、モータ10においては、シール部材16を任意の回転角度で組み付けることができる。この結果、モータ10は、シール部材16の組み付け性を向上させることができる。
【0063】
モータ10においては、防水透湿性部材17は、シート状に形成される。このため、モータ10は、シール部材16の外周面に対して、防水透湿性部材17を容易に組み付けることができる。この結果、モータ10は、防水透湿性部材17の組み付け性を向上させることができる。
【0064】
バルブ装置は、モータ10と、ステータ11に固定されるバルブハウジング20と、バルブハウジング20に形成される流路20cと、流路20cに設けられるバルブシート21と、バルブシート21に対して着脱可能に設けられるバルブ22と、バルブ22を一端に有し、モータシャフト15の軸方向移動に連動するバルブ軸23とを備える。このため、バルブ装置は、モータ10の外装部品の形状変更を行うことなく、異物C1,C2のモータ内部への侵入を防ぎつつ、モータ内部の気圧変動を抑制することができる。
【0065】
なお、本開示はその開示の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示に係るモータは、シール部材の呼吸孔を覆う防水透湿性部材を、押さえリング18で押さえることにより、異物のモータ内部への侵入を防ぎつつ、モータ内部の気圧変動を抑制することができ、モータ等に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0067】
10 モータ、11 ステータ、12 ロータ、12a ロータシャフト、13 軸受、14 ボス、14a 支持孔、14b 嵌合凹部、15 モータシャフト、15a 回転規制部、16 シール部材、16a 大円筒部、16b 小円筒部、16c 中間円筒部、16d 窪み、16e 呼吸孔、17 防水透湿性部材、18 押さえリング、18a 凹部、18b 凸部、20 バルブハウジング、20a 内部空間、20b 大気開放孔、20c 流路、20d 貫通孔、21 バルブシート、22 バルブ、23 バルブ軸、24 軸受、25 ホルダ、26 スプリング。