(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】情報処理システム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20241220BHJP
G06N 20/10 20190101ALI20241220BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241220BHJP
G06V 10/70 20220101ALI20241220BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06N20/10
G06T7/00 350B
G06V10/70
(21)【出願番号】P 2024529515
(86)(22)【出願日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2023041429
(87)【国際公開番号】W WO2024106533
(87)【国際公開日】2024-05-23
【審査請求日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2022184437
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】522215850
【氏名又は名称】株式会社ポーラスター・スペース
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 康宏
(72)【発明者】
【氏名】リハンディアット イスラジ
(72)【発明者】
【氏名】イルナンダ ナディファ イスティグファリン
(72)【発明者】
【氏名】サラジー シルビア ラトナサリ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 誠
(72)【発明者】
【氏名】笠 直人
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆洋
(72)【発明者】
【氏名】野田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】川口 真史
【審査官】小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0383535(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0270252(US,A1)
【文献】特開2016-168046(JP,A)
【文献】国際公開第2021/130817(WO,A1)
【文献】特開2014-035700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
G06N 20/10
G06T 7/00
G06V 10/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物をモニタリングする情報処理システムであって、
前記植物の病気の複数の進行段階に応じて講ずべき処置に関する処置情報と、前記病気の複数の進行段階における前記植物をリモートセンシングした各センシングデータの特徴を学習させた学習モデルとを記憶する記憶部と、
リモートセンシング装置が有する第1のセンシング手段であるカメラで前記植物を撮像した第1のセンシング情報に基づく画像データを取得し、当該取得した画像データと、前記学習モデルとを基に、当該画像データ中の植物の病気の進行段階を判定し、
前記判定された進行段階と、前記記憶された処置情報とを基に、前記判定された進行段階に応じて講ずべき処置を決定し、当該処置を提案する処置提案情報を生成
し、
前記生成された処置提案情報を、前記植物を所有又は管理するユーザのユーザ端末へ送信する
制御部と
を具備
し、
前記制御部は、
前記処置提案情報として、前記画像データ上の各植物の領域を異なる前記進行段階に応じて異なる表示態様で示した進行段階マップ画像を生成して前記ユーザ端末に表示させ、
前記進行段階マップ画像の各領域に対するユーザの選択操作に応じて前記処置を示す情報を表示させ、
前記進行段階マップ画像上で、未罹病段階と判定された植物のうち、罹病段階と判定された植物に隣接する植物の領域が選択された場合、当該罹病段階と判定された植物への処置に準じた所定の処置を示す情報を表示させ、前記未罹病段階と判定された植物のうち、前記罹病段階と判定された植物に隣接しない植物の領域が選択された場合、前記処置を示す情報を表示させない
情報処理システム。
【請求項2】
植物をモニタリングする情報処理システムであって、
前記植物の病気の複数の進行段階に応じて講ずべき処置に関する処置情報と、前記病気の複数の進行段階における前記植物をリモートセンシングした各センシングデータの特徴を学習させた学習モデルとを記憶する記憶部と、
リモートセンシング装置が有する第1のセンシング手段であるカメラで前記植物を撮像した第1のセンシング情報に基づく画像データを取得し、当該取得した画像データと、前記学習モデルとを基に、当該画像データ中の植物の病気の進行段階を判定し、
前記判定された進行段階と、前記記憶された処置情報とを基に、前記判定された進行段階に応じて講ずべき処置を決定し、当該処置を提案する処置提案情報を生成し、
前記生成された処置提案情報を、前記植物を所有又は管理するユーザのユーザ端末へ送信する
制御部と
を具備し、
前記制御部は、
前記処置提案情報として、前記画像上の各植物の領域を異なる前記進行段階に応じて異なる表示態様で示した進行段階マップ画像を生成して前記ユーザ端末に表示させ、
前記進行段階マップ画像の各領域に対するユーザの選択操作に応じて前記処置を示す情報を表示させ、
前記進行段階は、第1罹病段階、当該第1罹病段階よりも進行した第2罹病段階、及び当該第2罹病段階よりも進行した第3罹病段階を含み、
前記制御部は、前記進行段階マップ画像上で、第1罹病段階と判定された植物のうち、前記第2罹病段階と判定された植物に隣接する植物の第1隣接領域が選択された場合と、前記第3罹病段階と判定された植物に隣接する植物の第2隣接領域が選択された場合とで、異なる前記処置を示す情報を表示させる
情報処理システム。
【請求項3】
前記リモートセンシング装置は、第2のセンシング手段により、前記第1のセンシング情報以外の前記植物の第2のセンシング情報を取得し、
前記制御部は、前記第1のセンシング情報と第2のセンシング情報と、前記学習モデルとを基に、前記画像データ中の植物の病気の進行段階を判定する、
請求項1
または2記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記ユーザ端末から、前記植物の苗品種、樹齢、世代、樹木高さ、前記植物が育つ土壌タイプ、地形タイプのうち少なくとも1つに関する情報を受信し、当該受信した情報と、前記画像データ及びリモートセンシングデータと前記学習モデルとを基に、前記植物の病気の進行段階を判定する、
請求項1
または2に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記ユーザ端末から受信した情報のうち、前記植物の苗品種、樹齢、世代、樹木高さの情報に欠損がある場合に、当該欠損している情報を、前記センシング情報を基に算出して補完する、
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記進行段階に関する情報を、前記処置を提案する提案者端末へ送信し、当該提案者端末から送信された、前記進行段階に応じた処置情報を受信して前記記憶部へ記憶する、
請求項1
または2に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記ユーザ端末から、前記ユーザの農園のうち、複数の前記植物が生育するエリアの位置情報を受信し、当該位置情報を前記リモートセンシング装置へ送信し、当該リモートセンシング装置から前記位置情報に基づいて前記エリアを撮像した前記画像データを受信する、
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記進行段階マップ画像が表す領域全体を複数の区画に区分し、各区画に含まれる各植物のうち当該区画で最も進行段階が進行している植物の進行段階に応じた処置に応じて、前記進行段階マップ画像の各区画を異なる表示態様で表示させる
請求項
1または2に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記処置提案情報の生成後、所定期間経過後に新たに前記リモートセンシング装置により前記植物を撮像した画像データを取得し、当該画像データを基に前記処置提案情報を生成して前記ユーザ端末へ送信する、
請求項
1または2に記載の情報処理システム。
【請求項10】
植物をモニタリングする情報処理装置であって、
前記植物の病気の複数の進行段階に応じて講ずべき処置に関する処置情報と、前記病気の複数の進行段階における前記植物をリモートセンシングした各センシングデータの特徴を学習させた学習モデルとを記憶する記憶部と、
リモートセンシング装置が有する第1のセンシング手段であるカメラで前記植物を撮像した第1のセンシング情報に基づく画像データを受信し、当該受信した画像データと、前記学習モデルとを基に、当該画像データ中の植物の病気の進行段階を判定し、
前記判定された進行段階と、前記記憶された処置情報とを基に、前記判定された進行段階に応じて講ずべき処置を決定し、当該処置を提案する処置提案情報を生成
し、
前記生成された処置提案情報を、前記植物を所有又は管理するユーザのユーザ端末へ送信する
制御部と
を具備
し、
前記制御部は、
前記処置提案情報として、前記画像上の各植物の領域を異なる前記進行段階に応じて異なる表示態様で示した進行段階マップ画像を生成して前記ユーザ端末に表示させ、
前記進行段階マップ画像の各領域に対するユーザの選択操作に応じて前記処置を示す情報を表示させ、
前記進行段階マップ画像上で、未罹病段階と判定された植物のうち、罹病段階と判定された植物に隣接する植物の領域が選択された場合、当該罹病段階と判定された植物への処置に準じた所定の処置を示す情報を表示させ、前記未罹病段階と判定された植物のうち、前記罹病段階と判定された植物に隣接しない植物の領域が選択された場合、前記処置を示す情報を表示させない
情報処理装置。
【請求項11】
植物をモニタリングする情報処理装置であって、
前記植物の病気の複数の進行段階に応じて講ずべき処置に関する処置情報と、前記病気の複数の進行段階における前記植物をリモートセンシングした各センシングデータの特徴を学習させた学習モデルとを記憶する記憶部と、
リモートセンシング装置が有する第1のセンシング手段であるカメラで前記植物を撮像した第1のセンシング情報に基づく画像データを受信し、当該受信した画像データと、前記学習モデルとを基に、当該画像データ中の植物の病気の進行段階を判定し、
前記判定された進行段階と、前記記憶された処置情報とを基に、前記判定された進行段階に応じて講ずべき処置を決定し、当該処置を提案する処置提案情報を生成し、
前記生成された処置提案情報を、前記植物を所有又は管理するユーザのユーザ端末へ送信する
制御部と
を具備し、
前記制御部は、
前記処置提案情報として、前記画像上の各植物の領域を異なる前記進行段階に応じて異なる表示態様で示した進行段階マップ画像を生成して前記ユーザ端末に表示させ、
前記進行段階マップ画像の各領域に対するユーザの選択操作に応じて前記処置を示す情報を表示させ、
前記進行段階は、第1罹病段階、当該第1罹病段階よりも進行した第2罹病段階、及び当該第2罹病段階よりも進行した第3罹病段階を含み、
前記制御部は、前記進行段階マップ画像上で、第1罹病段階と判定された植物のうち、前記第2罹病段階と判定された植物に隣接する植物の第1隣接領域が選択された場合と、前記第3罹病段階と判定された植物に隣接する植物の第2隣接領域が選択された場合とで、異なる前記処置を示す情報を表示させる
情報処理装置。
【請求項12】
前記リモートセンシング装置は、第2のセンシング手段により、前記第1のセンシング情報以外の前記植物の第2のセンシング情報を取得し、
前記制御部は、前記リモートセンシング装置から受信した第1のセンシング情報と第2のセンシング情報と、前記学習モデルとを基に、前記画像データ中の植物の病気の進行段階を判定する、
請求項
10または11記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記ユーザ端末から、前記植物の苗品種、樹齢、世代、樹木高さ、前記植物が育つ土壌タイプ、地形タイプのうち少なくとも1つに関する情報を受信し、当該受信した情報と、前記画像データ及びリモートセンシングデータと前記学習モデルとを基に、前記植物の病気の進行段階を判定する、
請求項
10または11に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記進行段階マップ画像が表す領域全体を複数の区画に区分し、各区画に含まれる各植物のうち当該区画で最も進行段階が進行している植物の進行段階に応じた処置に応じて、前記進行段階マップ画像の各区画を異なる表示態様で表示させる
請求項
10または11に記載の情報処理装置。
【請求項15】
植物をモニタリングする情報処理方法であって、
前記植物の病気の複数の進行段階に応じて講ずべき処置に関する処置情報と、前記病気の複数の進行段階における前記植物をリモートセンシングした各センシングデータの特徴を学習させた学習モデルとを記憶し、
リモートセンシング装置が有する第1のセンシング手段であるカメラで前記植物を撮像した第1のセンシング情報に基づく画像データを取得し、
前記取得した画像データと、前記学習モデルとを基に、当該画像中の植物の病気の進行段階を判定し、
前記判定された進行段階と、前記記憶された処置情報とを基に、前記判定された進行段階に応じて講ずべき処置を決定し、当該処置を提案する処置提案情報を生成
し、
前記生成された処置提案情報を、前記植物を所有又は管理するユーザのユーザ端末へ送信する、情報処理方法であって、
前記処置提案情報として、前記画像上の各植物の領域を異なる前記進行段階に応じて異なる表示態様で示した進行段階マップ画像を生成して前記ユーザ端末に表示させ、
前記進行段階マップ画像の各領域に対するユーザの選択操作に応じて前記処置を示す情報を表示させ、
前記進行段階マップ画像上で、未罹病段階と判定された植物のうち、罹病段階と判定された植物に隣接する植物の領域が選択された場合、当該罹病段階と判定された植物への処置に準じた所定の処置を示す情報を表示させ、前記未罹病段階と判定された植物のうち、前記罹病段階と判定された植物に隣接しない植物の領域が選択された場合、前記処置を示す情報を表示させない
情報処理方法。
【請求項16】
植物をモニタリングする情報処理方法であって、
前記植物の病気の複数の進行段階に応じて講ずべき処置に関する処置情報と、前記病気の複数の進行段階における前記植物をリモートセンシングした各センシングデータの特徴を学習させた学習モデルとを記憶し、
リモートセンシング装置が有する第1のセンシング手段であるカメラで前記植物を撮像した第1のセンシング情報に基づく画像データを取得し、
前記取得した画像データと、前記学習モデルとを基に、当該画像中の植物の病気の進行段階を判定し、
前記判定された進行段階と、前記記憶された処置情報とを基に、前記判定された進行段階に応じて講ずべき処置を決定し、当該処置を提案する処置提案情報を生成し、
前記生成された処置提案情報を、前記植物を所有又は管理するユーザのユーザ端末へ送信する情報処理補法であって、
前記処置提案情報として、前記画像上の各植物の領域を異なる前記進行段階に応じて異なる表示態様で示した進行段階マップ画像を生成して前記ユーザ端末に表示させ、
前記進行段階マップ画像の各領域に対するユーザの選択操作に応じて前記処置を示す情報を表示させ、
前記進行段階は、第1罹病段階、当該第1罹病段階よりも進行した第2罹病段階、及び当該第2罹病段階よりも進行した第3罹病段階を含み、
前記進行段階マップ画像上で、第1罹病段階と判定された植物のうち、前記第2罹病段階と判定された植物に隣接する植物の第1隣接領域が選択された場合と、前記第3罹病段階と判定された植物に隣接する植物の第2隣接領域が選択された場合とで、異なる前記処置を示す情報を表示させる
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の病気の進行状況をモニタリングする情報処理システム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹木を撮影した画像を基に当該樹木の罹病(病原菌への感染)を診断する技術が存在する。例えば下記特許文献1には、診断対象とする樹木(パラゴムノキ)の画像を取得し、樹木の画像、当該画像内で葉群が写っている範囲を示す情報、及び前記範囲内に罹病(根白腐病への感染)の特徴を有するか否かを示す情報を教師データとして、樹木の画像から罹病している葉群を含む樹木を罹病木として診断するための機械学習を行った診断モデルに、前記診断対象とする樹木の画像を入力することにより、罹病している葉群を含む樹木を罹病木として診断し、前記診断の結果を出力することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、樹木の罹病の有無を診断するのみで、病原菌への感染がどの程度進んでいるのかについては診断することができないため、その感染度合に応じた処置も講じることができない。
【0005】
本発明の課題は、植物の病気の進行段階に応じた処置を決定することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る情報処理システムは、植物をモニタリングする情報処理システムであって、記憶部と制御部を有する。当該情報処理システムは、単一の装置によって実現されてもよいし、複数の装置によって実現されてもよい。
前記記憶部は、前記植物の病気の複数の進行段階に応じて講ずべき処置に関する処置情報と、前記病気の複数の進行段階における前記植物をリモートセンシングした各センシングデータの特徴を学習させた学習モデルとを記憶する。
前記制御部は、リモートセンシング装置が有する第1のセンシング手段であるスペクトルカメラまたはRGBカメラで前記植物を撮像した第1のセンシング情報に基づく画像データを取得し、当該取得した画像データと、前記学習モデルとを基に、当該画像データ中の植物の病気の進行段階を判定する。
また前記制御部は、前記判定された進行段階と、前記記憶された処置情報とを基に、前記判定された進行段階に応じて講ずべき処置を決定し、当該処置を提案する処置提案情報を生成する。
【0007】
本発明の一形態に係る情報処理方法は、植物をモニタリングする情報処理方法であって、
前記植物の病気の複数の進行段階に応じて講ずべき処置に関する処置情報と、前記病気の複数の進行段階における前記植物をリモートセンシングした各センシングデータの特徴を学習させた学習モデルとを記憶し、
リモートセンシング装置が有する第1のセンシング手段であるスペクトルカメラまたはRGBカメラで前記植物を撮像した第1のセンシング情報に基づく画像データを取得し、当該取得した画像データと、前記学習モデルとを基に、当該画像データ中の植物の病気の進行段階を判定し、
前記判定された進行段階と、前記記憶された処置情報とを基に、前記判定された進行段階に応じて講ずべき処置を決定し、当該処置を提案する処置提案情報を生成することを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、植物の病気の進行段階に応じた処置を決定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹木感染モニタリングシステムの構成を示した図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るモニタリングサーバのハードウェア構成を示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るモニタリングサーバが有するデータベースの構成を示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るモニタリングサーバによる、学習モデル生成処理の流れを示したフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係るモニタリングサーバによる、樹木処置方法決定処理の流れを示したフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態において判定された感染進行段階に応じた樹木処置方法の例を示した表である。
【
図7】本発明の一実施形態において生成される進行段階マップの例を示した図である。
【
図8】本発明の一実施形態において生成された進行段階マップの1つの領域がユーザに選択された場合に処置提案情報が表示される例を示した図である。
【
図9】本発明の一実施形態において生成される治療処置マップの例を示した図である。
【
図10】本発明の他の実施形態において判定された感染進行段階に応じた樹木処置方法の例を示した表である。
【
図11】本発明の他の実施形態において生成される進行段階マップの例を示した図である。
【
図12】本発明の他の実施形態において生成される治療処置マップの例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
[システムの構成]
図1に示すように、この樹木感染モニタリングシステムは、インターネット50上のモニタリングサーバ100と、ユーザ端末200と、提案者端末300とを含む。
【0012】
本システムは、農園の樹木(パームヤシ)の病原菌(ガノデルマ)への感染状況をモニタリングし、感染したパームヤシについてはその感染がどの程度の進行段階(感染段階)にあるかを判定し、当該感染段階に応じたガノデルマの処置(治療または予防)方法の提案を行うためのシステムである。ここで、パームヤシは、油ヤシ、ココヤシ等が挙げられる。
【0013】
モニタリングサーバ100は、上記モニタリングサービスの事業者によって運営されるサーバ(情報処理装置)である。モニタリングサーバ100は、ユーザ端末200及び提案者端末300とインターネット50を介して接続されている。
【0014】
ユーザ端末200は、上記農園の所有者または管理者(ユーザ)により使用される端末であり、例えばスマートフォン、携帯電話、タブレットPC(Personal Computer)、ノートブックPC、デスクトップPC等である。
【0015】
農園の所有者または管理者(ユーザ)は、モニタリングサービス事業者に、自身の農園のモニタリングサービスを依頼し、ユーザ端末200は、モニタリングサーバ100からモニタリング結果、すなわち、自身の農園の各パームヤシのガノデルマの感染段階の情報及びそれに応じた処置(治療または予防)に関する情報を受信する。
【0016】
モニタリングサーバ100は、ユーザ端末200からのモニタリング依頼に応じて、例えば定期的に(例えば2回/年)、ユーザの農園の対象エリア(全部または一部)を上空または地上からリモートセンシング装置により撮像させる。
【0017】
リモートセンシング装置としては、同図に示すように、地上移動装置、低空飛翔体、低軌道超小型衛星の3つのうち少なくとも1つが用いられ、センシング手段を備える。好ましくは、低空飛翔体が用いられる。
【0018】
リモートセンシング装置は、後述の光学RGBカメラ、スペクトルカメラ、レーダー、スペクトルセンサー、温度センサ等のセンシング手段以外に、通信機能、GPS(Global Positioning System)、加速度センサ等の移動装置基本手段を有する小型機器であり、特定の波長で植物など対象物を撮影できる端末である。
【0019】
低空飛翔体は、マルチコプター、固定翼を含む無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle(主にドローン))であるが、ヘリコプターやグライダーなど有人航空機も含み、前述のセンシング手段/装置と移動装置基本手段/装置を備える。
【0020】
低軌道超小型衛星は、地上400-600km程度の低軌道を高速周回する、前述のセンシング手段/装置と移動装置基本手段/装置を備える100kg以下の人工衛星である。
【0021】
地上移動装置は、移動ロボット、無人自動車等の地上又は地上近辺で移動可能な装置であり、前述のセンシング手段/装置と移動装置基本手段/装置を備える。
【0022】
リモートセンシング装置は、センシング手段/装置として光学RGBカメラ又はスペクトルカメラを含み、第1のセンシングデータを取得する。第1のセンシングデータとしては、反射波長が挙げられ、これに基づき画像又は画像情報を合成することができる。
【0023】
リモートセンシング装置は、さらに、レーダー系(LiDAR、SAR等)、温度センサ(赤外線温度センサ)等の各種センサのうち少なくともいずれかの第2のセンシング手段又は装置を有することが好ましく、当該第2のセンシング手段又は装置により第2のセンシングデータを得ることが好ましい。前述の第1のセンシングデータの取得手段/装置と第2のセンシングデータの取得手段/装置とが混成により用いられ得ることが、病気の初期感染段階の検出精度向上の点から好ましい。ここで、各センシング手段が一体の装置であってもよく、別体であっても良い。本実施形態では、このうち、スペクトルカメラ及びRGBカメラのうち一方(好ましくはスペクトルカメラ)、及び、その他の少なくとも1種類のセンサ(例えば温度センサやレーダー系のセンサ)を用いて計測が行われる。
【0024】
温度センサやレーダー等の第2センシングデータを用いることにより、温度又は草木の形態の高精度な情報を取得・受信し、第1のセンシングで取得・受信する画像情報と併用して感染段階の判定精度を向上することができる。例えば、パームヤシのガノデルマ感染によるパームヤシの温度の変化、感染によるパームヤシの形態のわずかな変化、例えば葉の角度、しなり度の変化等のわずかな形態の変化を検知することで、感染の有無及び感染段階を判定することができる。
【0025】
モニタリングサーバ100は、リモートセンシング装置からセンシングデータ(スペクトル画像及び/又はRGB画像、その他のセンシングデータ)を取得し、当該取得した画像データ及び他のセンシングデータと、ガノデルマの複数の感染段階におけるパームヤシをリモートセンシングした各センシングデータの特徴を学習させた学習モデルとを基に、当該データ中の各パームヤシのガノデルマの感染段階を判定する。
【0026】
そしてモニタリングサーバ100は、提案者端末300から受信した、各感染段階に応じて講ずべき処置に関する処置情報を基に、上記判定した感染段階に応じた処置を決定し、感染状況情報を報知すると共に当該処置をユーザに提案する処置提案情報(感染段階マップ)を生成して、ユーザ端末200へ送信する。
【0027】
提案者端末300は、上記ガノデルマ感染への対処方法を提案する事業者により使用される端末であり、例えばスマートフォン、携帯電話、タブレットPC、ノートブックPC、デスクトップPC等である。提案者端末300は、上記ガノデルマの感染段階に応じて講ずべき処置に関する情報、典型的にはスプレー、樹木への注入、灌水、肥料添加、微生物添加等の処置動作の情報、これら処置に用いる農薬、アジュバント、肥料、殺菌剤、微生物等の添加剤に関する情報、より具体的には、添加剤の種類、添加量(樹木/回)、添加濃度等、そして、処置頻度の情報を発案・算出し、モニタリングサーバ100へ送信する。
【0028】
[モニタリングサーバのハードウェア構成]
図2に示すように、モニタリングサーバ100は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、入出力インタフェース15、及び、これらを互いに接続するバス14を備える。
【0029】
CPU11は、必要に応じてRAM13等に適宜アクセスし、各種演算処理を行いながらモニタリングサーバ100の各ブロック全体を統括的に制御する。ROM12は、CPU11に実行させるOS、プログラムや各種パラメータ等のファームウェアが固定的に記憶されている不揮発性のメモリである。RAM13は、CPU11の作業用領域等として用いられ、OS、実行中の各種アプリケーション、処理中の各種データを一時的に保持する。
【0030】
入出力インタフェース15には、表示部16、操作受付部17、記憶部18、通信部19等が接続される。
【0031】
表示部16は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、OELD(Organic ElectroLuminescence Display)、CRT(Cathode Ray Tube)等を用いた表示デバイスである。
【0032】
操作受付部17は、例えばマウス等のポインティングデバイス、キーボード、タッチパネル、その他の入力装置である。操作受付部17がタッチパネルである場合、そのタッチパネルは表示部16と一体となり得る。
【0033】
記憶部18は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や、フラッシュメモリ(SSD;Solid State Drive)、その他の固体メモリ等の不揮発性メモリである。当該記憶部18には、上記OSや各種アプリケーション、各種データが記憶される。
【0034】
後述するが、特に本実施形態において、記憶部18は、後述する樹木処置方法決定処理の各ステップを実行するアプリケーション等のプログラムの他、農園情報データベース、モニタリング情報データベース、処置情報データベースを有している。当該プログラムは、プログラム製品として実現され得る。
【0035】
通信部19は、例えばEthernet用のNIC(Network Interface Card)や無線LAN等の無線通信用の各種モジュールであり、上記ユーザ端末200及び提案者端末300との間の通信処理を担う。
【0036】
なお、図示しないが、ユーザ端末200及び提案者端末300の基本的なハードウェア構成も上記モニタリングサーバ100のハードウェア構成と略同様であり、それぞれCPU、記憶部、通信部等、コンピュータとして機能するための基本的な構成を有している。
【0037】
[モニタリングサーバのデータベース構成]
図3に示すように、モニタリングサーバ100は、記憶部18に、農園情報データベース31、モニタリング情報データベース32、及び処置情報データベース33を有している。なお当該各データベースは記憶部18ではなくモニタリングサーバ100に外部接続された記憶装置やサーバに記憶されていてもよい。
【0038】
農園情報データベース31は、上記ユーザの農園に関する情報、すなわち、農園の名称、位置等の基本情報と、パームヤシの種類(苗品種)・樹齢・世代、高さ等の生育中または過去のパームヤシに関する情報、パームヤシが育つ土壌タイプや地形タイプ(傾斜)等のパームヤシ生育環境に関する情報等を、例えばユーザ端末200から受信することで農園ごとに記憶している。
【0039】
農園情報データベース31が、農園のパームヤシに関する情報のうち、一部の情報が欠損している場合は、モニタリングサーバ100は、必要に応じてセンシング情報に基づき当該欠損している情報を算出し、補完することができる。例えば、画像情報から高さを算出することができ、高さと種類から樹齢を算出することができる。またレーダー系のセンサにより土地の傾斜を算出することもできる。情報が欠損している場合とは、ユーザにより入力されなかった場合等が挙げられる。これらの情報は、前述の画像データ及び他のセンシングデータと、ガノデルマの複数の感染段階におけるパームヤシをリモートセンシングした各センシングデータの特徴を学習させた学習モデルの教師データに含め、当該学習モデルを基に、各パームヤシのガノデルマの感染段階の判定に用いることができる。
【0040】
モニタリング情報データベース32は、各農園のモニタリング(センシング及びその解析)に関する情報、すなわち、モニタリングの実行スケジュール(観測日)、実行方法(リモートセンシング装置に関する情報等)、対象エリア(位置情報)、モニタリング結果(撮像した画像データその他のセンシングデータ、センシングデータから判定された各パームヤシのガノデルマの感染段階に関する情報、各パームヤシの近隣のパームヤシのガノデルマの感染段階に関する情報)に関する情報を記憶している。
【0041】
処置情報データベース33は、上記モニタリング結果に基づいて決定・提案された処置(治療・予防)に関する情報、すなわち、処置に使用された剤(農薬、アジュバント、肥料)の種類と効能、剤の使用方法(樹幹表面へのスプレー、樹幹内部への注入、土壌潅水等の量や回数等)に関する情報、過去の処置の履歴情報、初回・前回モニタリング時の処置からの改善度に関する情報、上記感染段階に応じてユーザ端末200へ送信された感染段階マップのデータ等を記憶している。
【0042】
このうち、処置に関する情報は、モニタリングサーバ100が、上記モニタリング結果から判定されたパームヤシの感染段階に関する情報を提案者端末200へ送信し、当該提案者端末200から、感染段階に応じた処置情報を受信することで上記処置情報データベース33に記憶されるものであってもよい。
【0043】
これら各データベースは、後述する樹木感染モニタリングシステムによる樹木処置方法決定処理において、必要に応じて相互に参照されて用いられる。
【0044】
これらのデータベースの他、モニタリングサーバ100は、センシングデータからパームヤシの感染段階を判定するための学習モデルを記憶している(後述)。
【0045】
[樹木感染モニタリングシステムの動作]
次に、以上のように構成された樹木感染モニタリングシステムの動作について説明する。当該動作は、モニタリングサーバ100のCPU11及び通信部19等のハードウェアと、記憶部18に記憶されたソフトウェアとの協働により実行される。以下の説明では、便宜上、モニタリングサーバ100のCPU11を動作主体とする。
【0046】
まず、モニタリングサーバ100による学習モデル生成処理について説明する。
図4は当該学習モデル生成処理の流れを示したフローチャートである。
【0047】
同図に示すように、モニタリングサーバ100のCPU11は、超小型衛星、飛翔体、地上端末から、複数の異なるパームヤシ農園のパームヤシをリモートセンシングしたセンシングデータを取得すると、これらのデータについて、学習モデル生成のための前処理を実行する(ステップ41)。
【0048】
具体的には、取得した画像データ(スペクトル画像またはRGB画像)の歪みを補正したり、複数のスペクトル画像が同じ波長ごとに重なるように、画像間の波長のずれを補正したりする。
【0049】
続いてCPU11は、上記前処理後のデータを基に、機械学習の説明変数と目的変数を設定する(ステップ42)。具体的には、上記前処理後のセンシングデータ及びユーザ端末200から受信したパームヤシの位置、樹齢、種類、世代、土壌タイプ等のデータを機械学習の説明変数として設定し、パームヤシが罹病した病気の感染段階(例えば、感染段階0~4)を機械学習(分類問題)の目的変数として設定する。
【0050】
続いてCPU11は、上記前処理後のデータセットを、訓練データ及び検証データを生成する(ステップ43)。すなわち、病気の感染段階に応じた重みやバイアスの異なる各種教師データを生成するとともに、機械学習アルゴリズムの挙動を設定するハイパーパラメータの性能を評価するために用いる検証データを生成する。
【0051】
例えば、病気の木はその感染段階が進むにしたがって、上からみた葉の広がりから把握できる面積、葉の先端を結び描ける円相当の最大直径、又は葉面積は小さく、温度が変化する傾向にあり、葉の色等が変化する傾向にあり、感染段階ごとにスペクトルも異なることから、CPU11は上記センシングデータからこれらの項目について異なる値のデータを抽出して各感染段階に応じたパラメータを有する訓練データを生成する。
【0052】
また検証データは、モデルの構造・構成に関わるハイパーパラメータ(例えば、ニューラルネットであれば何層にするか、学習率はいくつにするか等の数値)を決めて性能が高くなると期待されるモデルを選択するために用いられる。
【0053】
なお前処理後のデータセットのうち訓練データ及び検証データ以外のデータセットは学習済モデルの汎用性をテストするためのテストデータとして残される。
【0054】
続いてCPU11は、上記説明変数及び目的変数を基に学習モデルを構築し、上記訓練データ及び検証データを基に、当該学習モデルを学習させる(ステップ44)。
【0055】
そしてCPU11は、上記テストデータを用いて学習済モデルの汎用性を評価する(ステップ45)。異なる学習済モデルの評価結果を比較することで、説明変数と目的変数間の関係を記述する最適な機械学習モデルを選択・生成する。
【0056】
ここで、機械学習アルゴリズムとしては、例えば、画像処理に適したロジスティック回帰、ランダムフォレスト、ブースティング、SVM(サポートベクターマシン)といったアルゴリズムが用いられてもよい。上記では教師あり学習の例を示したが、教師無し学習でも構わない。また、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)、VAE(変分オートエンコーダ)、GAN(敵対的生成ネットワーク)ディープラーニング(深層学習)アルゴリズムが用いられてもよい。
【0057】
続いて、上記で生成された学習モデルを用いた樹木処置方法決定処理について説明する。
図5は、モニタリングサーバ100による、樹木処置方法決定処理の流れを示したフローチャートである。
【0058】
同図に示すように、まず、モニタリングサーバ100のCPU11は、ユーザ端末200からパームヤシのガノデルマへの感染状況確認要求を受信したか否かを判断する(ステップ51)。当該感染状況確認要求は、ユーザの農園のうち、ユーザが感染状況確認を希望するパームヤシの生育エリアの位置情報を含んでいる。また感染状況確認要求には、ユーザの感染状況確認を希望するパームヤシの成育情報、環境情報から少なくも1の情報を含んでも良い。成育情報としては、苗品種、樹齢、世代、樹木高さ等が挙げられ、環境情報としては、前記植物が育つ土壌タイプ、地形タイプ等が挙げられる。
【0059】
続いてCPU11は、上記受信した位置情報を基にリモートセンシング装置にセンシングを指示する指示情報を送信する(ステップ52)。指示情報には、当該位置情報の他、センシング日時、センシング方法(使用するセンサの種類)等の情報が含まれる。リモートセンシング装置が複数用いられる場合にはそれぞれに当該指示情報が送信される。
【0060】
続いてCPU11は、リモートセンシング装置からセンシングデータを受信したか否かを判断する(ステップ53)。
【0061】
センシングデータを受信したと判断した場合(ステップ53のYes)、CPU11は、センシングデータ及び感染状況確認対象のパームヤシ(または農場)に関する情報を基に、上記学習モデルを用いて、各パームヤシのガノデルマへの感染段階を判定する(ステップ54)。
【0062】
続いてCPU11は、上記処置情報データベース33を参照して、上記判定した感染段階に応じて各パームヤシに講ずべき処置(治療方法、予防方法)を決定する(ステップ55)。
【0063】
図6は、本実施形態における進行段階に応じた樹木処置方法の例を示した表である。同図に示すように、本実施形態では、ガノデルマの感染段階として、感染段階0(健康)、感染段階1(感染初期)、感染段階2(感染中期)。感染段階3(深刻な感染)及び感染段階4(非常に深刻な感染)の5つの段階が上記学習モデルによって設定され判定される。なお、植物の病気の感染段階は、当該植物によって異なり、また植物が生育する国の政府機関や学術研究機関などにより標準化されているものが用いられてもよい。
【0064】
本実施形態における処置の典型例は、農薬及び農薬の効果を高めるためのアジュバント(農薬用効力増強剤)の添加である。本実施形態では、感染段階が高くなるほど、処置回数を増やし、また添加剤として農薬と共にアジュバントの使用を設定し、かつ、それらの濃度が高くなるように設定している。
【0065】
感染段階0のパームヤシは、感染段階1以上の感染木の周りにある健康木である。同図に示すように、当該感染段階0のパームヤシに対しては、予防処置として、農薬とアジュバントの水溶液(健康木であるため農薬のみでもよい)の樹幹表面へのスプレーが行われる。なお、前記水溶液は、水を溶媒とする分散液を意味し、処置液と表現してもよい。以後、農薬やアジュバントを添加するとは、これらの処置液を添加すると言かえることができる。
【0066】
農薬としては、例えばヘキサコナゾールが用いられ、その添加濃度は0.1%とされる。アジュバントとしては、Kao Adjuvant A-134が用いられ、その添加濃度は0.1%とされる。両者を合わせた添加量は2Lとされ、処置回数は最低1回/年とされる。
【0067】
感染段階1のパームヤシは、その基部にホワイトボタンが見られ、葉には症状が肉眼では判別しにくいものである。同図に示すように、当該感染段階1のパームヤシに対しては、治療処置段階1として、農薬とアジュバントの水溶液の樹幹表面へのスプレーに加えて、当該水溶液の樹幹内部への注入及び土壌潅水が提案され、さらに、微生物の添加も提案される。
【0068】
樹幹表面へのスプレー、樹幹内部への注入及び土壌潅水のいずれの処置でも、農薬としてはヘキサコナゾール、アジュバントとしてはKao Adjuvant A-134が用いられる。農薬の添加濃度は、いずれの処置においても、0.1~0.3%とされ、アジュバントの添加濃度は、樹幹表面へのスプレー及び樹幹内部への注入においては1.0%、土壌潅水においては0.1~1.0%とされる。両者を合わせた添加量は、樹幹表面へのスプレー及び樹幹内部への注入においては2Lとされ、土壌潅水においては、木の根元に対して20L、処置回数はいずれの処置についても最低2回/年とされる。
【0069】
微生物の添加には、微生物含有の肥料(微生物種類:Trichoderma、Hendersonia、Actinomycetesなど)が用いられる。肥料として例えば商品名Bio-fertilizer (Gano EF)が用いられる場合、その添加濃度及び処置回数は、幼木については50g/木を3回/年、木の植え替えの時には500g/ホールを1回/ホール、樹齢4年以下の木には2kg/木を1回/年、樹齢4年以上の木には4kg/木を1回/年とされる。
【0070】
感染段階2のパームヤシは、木の基部にホワイトボタンとキノコが見られ、30%以下の腐敗が確認でき、葉の色が黄変して見える、これらから総合的に判断する。同図に示すように、当該感染段階2のパームヤシに対しては、治療処置段階2として、農薬とアジュバントの水溶液の樹幹表面へのスプレーに加えて、当該水溶液の樹幹内部への注入及び土壌潅水が提案され、さらに、微生物の添加も提案される。
【0071】
治療処置段階2においては、樹幹表面へのスプレー、樹幹内部への注入及び土壌潅水のいずれの処置でも、使用される農薬及びアジュバントは上記感染段階1のパームのそれと同一であるが、添加量は増量が提案され、処置回数が、いずれの処置でも最低4回/年と増加される。また微生物の添加については、上記治療処置段階1のパームヤシのそれと同一の薬剤、濃度、回数の実行とされる。
【0072】
感染段階3のパームヤシは、木の基部にホワイトボタンとキノコが見られ、50%以下の腐敗が確認でき、葉が折れる現象から総合的に確認できるものである。同図に示すように、当該感染段階2のパームヤシに対しては、治療処置段階3として、農薬とアジュバントの水溶液の樹幹表面へのスプレーに加えて、当該水溶液の樹幹内部への注入及び土壌潅水が提案され、さらに、微生物の添加も提案される。
【0073】
治療処置段階3においては、樹幹表面へのスプレー、樹幹内部への注入及び土壌潅水のいずれの処置でも、使用される農薬及びアジュバントは上記感染段階1及び感染段階2のパームヤシのそれと同一であるが、添加量の増量が提案され、処置回数が、いずれの処置でも最低6回/年と増加される。また微生物の添加については、上記治療処置階1及び治療処置段階2のパームのそれと同一の薬剤、濃度、回数で実行される。
【0074】
感染段階4のパームヤシは、倒壊または枯死したパームであり、同図に示すように、処置段階4としては、伐採、パームヤシの木の植え替え、並びに土壌入れ替え及び微生物の添加が行われる。
【0075】
使用される微生物は上記治療処置段階1乃至3と同様であり、その添加量及び処置回数は、500g/ホールを1回/ホールとされる。
【0076】
なお、本実施形態において使用され得る農薬に用いられる農薬原体としては、例えば、農薬ハンドブック2011年度版(社団法人 日本植物防疫協会)に記載のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の農薬用効力増強剤組成物は種々の作物に対して薬害はなく安全に使用できるものである。本実施形態では、上述の通り、殺菌剤であるヘキサコナゾール((RS)-2-(2,4-ジクロロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-2-オール)が用いられるが、これに限られず、以下に示すものも用いられ得る。
【0077】
その他、殺菌剤としては、硫黄系のジネブ(亜鉛エチレンビスジチオカーバメート)、マンネブ(マンガンエチレンビスジチオカーバメート)、マンゼブ(亜鉛イオン配位マンガニーズエチレンビスジチオカーバメート) 、ポリカーバメート(ビスジメチルジチオカルバモイル亜鉛エチレンビスジチオカーバメート)、ベンズイミダゾール系としてはベノミル(メチル-1-(ブチルカルバモイル)-2-ベンズイミダゾールカーバメート) 、チオファネートメチル(1,2-ビス(3-メトキシカルボニル・2-チオウレイド)ベンゼン)、ジカルボキシイミド系のビンクロゾリン(3-(3,5-ジクロロフェニル)-5-メチル-5-ビニル-1,3-オキサゾリジン-2,4-ジオン)、イプロジオン(3-(3,5-ジクロロフェニル)-N-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-カルボキサミド)、プロシミドン(N-(3,5-ジクロロフェニル)-1,2-ジメチルシクロプロパン-1,2-ジカルボキシイミド)、他にトリアジン(2,4-ジクロロ-6-(2-クロロアニリノ)-1,3,5-トリアジン)、トリフミゾール((E)-4-クロロ-α,α,α-トリフルオロ-N-(1-イミダゾール-1-イル-2-プロポキシエチリダン)-o-トルイジン)、イミノクタジン酢酸塩(1,1-イミニオディ(オクタメチレン)ジグアニジウムトリアセテート)、有機銅(Oxine-copper)、水酸化第二銅(コサイドボルドー等)、抗生物質系殺菌剤(ストレプトマイシン系、テトラサイクリン系、ポリオキシ系、ブラストサイジンS、カスガマイシン系、バリダマイシン系)、トリアジメホン(1-(4-クロロフェノキシ)-3,3-ジメチル-1-(1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2-ブタノン)、イソプロチオラン(ジイソプロピル-1,3-ジチオラン-2-イリデンマロネート)、TPN(テトラクロルイソフタロニトリル)等があり、好適なものとしては、有機銅(Oxine-copper)、水酸化第二銅、トリフミゾール((E)-4-クロロ-α,α,α-トリフルオロ-N-(1-イミダゾール-1-イル-2-プロポキシエチリダン)-o-トルイジン),イプロジオン(3-(3,5-ジクロロフェニル)-N-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-カルボキサミド)、ヘキサコナゾール((RS)-2-(2,4-ジクロロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ヘキサン-2-オール)が挙げられ、これらを2種以上組み合わせても良い。
【0078】
殺虫剤の場合、ピレスロイド系殺虫剤としては、ペルメトリン((3-フェノキシベンジル=(1RS,3RS)-(1RS,3RS)-3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシラート)、シベルメトリン((RS)-α-シアノ-3-フェノキシベンジル=(1RS,3RS)-(1RS,3RS)-3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシラート)、フェンバレレエート(α-シアノ-3-フェノキシベンジル-2-(4-クロロフェニル)-3-メチルブタノエート)、有機リン系殺虫剤としては、DDVP(ジメチル2,2-ジクロルビニルホスフェート)、スミチオン(MEP) (O,O-ジメチル-O-(3-メチル-4-ニトロフェニル)チオフォスフェート)、マラソン(S-〔1,2,-ビス(エトキシカルボニル)エチル〕ジメチルホスホロチオールチオネート)、ジメトエート(ジメチルS-(N-メチルカルバモイルメチル)ジチオホスフェート)、エルサン(S-〔α-(エトキシカルボニル)ベンジル〕ジメチルホスホロチオールチオネート)、バイジット(O,O-ジメチル-O-(3-メチル-4-メチルチオフェニルチオホスフェート))、カーバメート系殺虫剤としては、バッサ(O-sec-ブチルフェニルメチルカーバメート)、MTMC(m-トリルメチルカーバメート)、メオパール(3,4-ジメチルフェニル-N -メチルカーバメート)、メソミル(S メチル-N 〔(メチルカルバモイル)オキシ〕チオアセトイミド)等があり、好適なものとしては、ペルメトリン,DDVP(ジメチル2,2-ジクロルビニルホスフェート)、メソミル(Sメチル-N〔(メチルカルバモイル)オキシ〕チオアセトイミド)が挙げられる。
【0079】
さらに、天然系殺虫剤としては、除虫菊由来のピレトリン剤、ピペロニルブトキシド剤、マメ科のかん木デリス由来のロテノン剤、ニコチン剤(3-(1-メチル-2-ピルロリジニル)ピリジンサルフェート)等が挙げられる。昆虫成長制御剤(IGR剤)としては、ジフルベンズロン(1-(4クロロフェニル)-3-(2,6-ジフルオロベンゾイル)尿素)、テフルベンズロン(1-(3,5-ジクロロ-2,4-ジフルオロフェニル)-3-(2,6-ジフルオロベンゾイル)尿素)、クロルフルアズロン(1-〔3,5-ジクロロ-4-(3-クロロ-5-トリフルオロメチル-2-ピリジルオキシ)フェニル〕-3-(2,6-ジフルオロベンゾイル)尿素等が挙げられる。
【0080】
また殺ダニ剤としては、CPCBS(パラクロロフェニルパラクロロベンゼンスルホネート)、フェニソブロモレート(4,4'-ジブロムベンジル酸イソプロピル)、テトラジホン(2,4,5,4'-テトラクロロジフェニルスルホン) 、フェノチオカルブ(S-4-フェノキシブチル=ジメチルチオカーバメート)、フェンピロキシメート(tert-ブチル=(E)-α-(1,3-ジメチル-5-フェノキシピラゾール-4-イルメチレンアミノオキシ)-p-トルアート)、フルアシナム(3-クロロ-N-(3-クロロ-5-トリフルオロメチル-2-ピリジル)-α,α,α-トリフルオロ-2,6-ジニトロ-p-トルイジン)、酸化フェンブタスズ(ヘキサキス(β,β-ジメチルフェニルエチル)ジスタンノキサン)、ヘキシチアゾクス(トランス-5-(4-クロロフェニル)-N -シクロヘキシル-4-メチル-2-オキソチアゾリジン-3-カルボキサミド)、アミトラスズ(3-メチル-1,5-ビス(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアザペンタ-1,4-ジエン)等があり、好適なものとしては、フェニソブロモレート(4,4'-ジブロムベンジル酸イソプロピル),アミトラスズ(3-メチル-1,5-ビス(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアザペンタ-1,4-ジエン),フェンピロキシメート(tert-ブチル=(E)-α-(1,3-ジメチル-5-フェノキシピラゾール-4-イルメチレンアミノオキシ)-p-トルアート)が挙げられる。
【0081】
除草剤としては、酸アミド系除草剤として、例えばスタム(3,4-ジクロルプロピオンアニリド、DCPA)等が挙げられる。尿素系除草剤として、例えば、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)等が挙げられる。ビピリジリウム系除草剤としては、例えばパラコート(1,1'-ジメチル-4,4'-ビピリジウムジクロライド)、ジクワット(6,7-ジヒドロジピリド[1,2-a:2',1'c]ピラジンディウムジブロマイド)等が挙げられる。ダイアジン系除草剤としては、例えばブロマシル(5-ブロモ-3-sec-ブチル-6-メチルウラシル)等が挙げられる。トリアジン系除草剤としては、例えばシマジン(2-クロロ-4,6-ビス(エチルアミノ)-1,3,5-トリアジン)等が挙げられる。ニトリル系除草剤としては、例えばDBN(2,6-ジクロロベンゾニトリル)等が挙げられる。ジニトロアニリン系除草剤としては、例えばトリフルラリン(α,α,α-トリフルオロ-2,6-ジニトロ-N,N-ジプロピル-p-トルイジン)等が挙げられる。カーバメート系除草剤としては、例えばベンチオカーブ(サターン)(S-p-クロロベンジル-N,N-ジエチルチオカーバメート)等が挙げられる。ジフェニルエーテル系除草剤としては、例えばNIP(2,4-ジクロロフェニル-p-ニトロフェニルエーテル)等が挙げられる。フェノール系除草剤としては、例えばPCP(ソディウムペンタクロロフェノキシド)等が挙げられる。安息香酸系除草剤としては、例えばMDBA(ジメチルアミン-3,6-ジクロロ-o-アニセート)等が挙げられる。フェノキシ系除草剤としては、例えば2,4-Dナトリウム塩(ソディウム2,4-ジクロロフェノキシアセテート)等が挙げられる。アミノ酸除草剤としては、例えばグリホセート(N-(ホスホノメチル)グリシン又はその塩)グリホシネート(アンモニウム-DL-ホモアラニン-4-イル(メチル)ホスフィネート)等が挙げられる。また脂肪族系除草剤としては、例えばTCAナトリウム塩(ソディウム・トリクロロアセテート)あり、好適なものとしては、DBN(2,6-ジクロロベンゾニトリル),DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア),パラコート(1,1'-ジメチル-4,4'-ビピリジウムジクロライド)、ジクワット(6,7-ジヒドロジピリド[1,2-a:2',1'c]ピラジンディウムジブロマイド)が挙げられる。
【0082】
さらにアジュバントとしては、例えば、農薬ハンドブック2011年度版(社団法人 日本植物防疫協会、平成23年2月25日発行)に記載の展着剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本実施形態では、上述の通り、アジュバントとして商品名「Kao Adjuvant A-134」が用いられるが、これに限られず、以下に示すものも用いられ得る。
【0083】
その他の市販の展着剤としては、例えば、まくぴか(ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン93.0質量%、石原バイオサイエンス株式会社製)、スカッシュ(ソルビタン脂肪酸エステル70質量%、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル5.5質量%、花王株式会社製)、アビオン-E(パラフィン24質量%、アビオン株式会社製)、ペタンV(パラフィン42.0質量%、アグロカネショウ株式会社製)、サブマージ(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム50質量%、シンジェンタ社製)、ブレイクスルー(ポリオキシアルキレンオキシプロピルヘプタメチルトリシロキサン80質量%、ポリオキシアルキレンプロペニルエーテル20質量%、サンケイ化学株式会社製)、アグリデックス(パラフィンオイル71.5質量%,ビーエーエスエフ社製)、アグリスティック(アルキルアリルポリグリコールエーテル40質量%、ビーエーエスエフ社製)、ディーフラバ(オレイン酸82質量%、チタアグンジャヤ社製)、ミラクル240(トリシロキサン75質量%、エヴォニック社製)などが挙げられる。
【0084】
アジュバントには界面活性剤が配合されるが、そのような界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤、或いはそれらの混合物が挙げられる。
【0085】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルソルビトールエステル、ポリオキシアルキレンアルキルグリセロールエステル、ポリオキシアルキレンブロック共重合体、ポリオキシアルキレンブロック共重合体アルキルグリセロールエステル、ポリオキシアルキレンアルキルスルホンアミド、ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシアルキレンアルキルポリグリコシドなど、及びこれらのうちの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0086】
陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、アルキルアミンプロピレンオキサイド付加物、例えばタローアミンエチレンオキサイド付加物、オレイルアミンエチレンオキサイド付加物、ソイアミンエチレンオキサイド付加物、ココアミンエチレンオキサイド付加物、合成アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、オクチルアミンエチレンオキサイド付加物、ジアルキルアミン誘導体など及びそれらの混合物が挙げられる。前記ジアルキルアミン誘導体としては、ジアルキルモノメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、ジアルキルモノメチルベンザルコニウムクロライド、ジアルキルモノメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、などがある。
【0087】
陰イオン性界面活性剤のうち、典型的なものは、水溶液或いは固体状態で入手され得るが、その例としては、モノ-及びジ-アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルファ-オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル硫酸塩、モノ-及びジ-アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホネートのホルムアルデヒド縮合物、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、オレフィニックスルホン酸塩、モノ及びジアルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノ及びジアルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノ及びジフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノ及びジアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ポリカルボン酸塩、脂肪酸塩、直鎖及び分岐アルキルポリオキシアルキレンエーテル酢酸又はその塩、アルケニルポリオキシアルキレンエーテル酢酸又はその塩、直鎖及び分岐アルキルアミドポリオキシアルキレンエーテル酢酸又はその塩、ステアリン酸及びその塩、オレイン酸及びその塩、N-メチル脂肪酸タウリド(taurides)、これらのうちの2種以上の混合物など(ナトリウム、カリウム、アンモニウム及びアミン塩を含む)が挙げられる。
【0088】
また、両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0089】
図5に戻り、続いてCPU11は、上記判定した感染段階及び決定した処置を基に、処置提案情報として、地図画像上で各パームヤシのガノデルマ感染の進行段階を可視化した感染段階マップを生成し(ステップ56)、当該生成した進行段階マップをユーザ端末200へ送信する(ステップ57)。
【0090】
なおCPU11は、処置提案情報(感染段階マップ)をいったん生成してユーザ端末200へ送信した後、所定期間(例えば数か月、半年等)経過すると、新たにリモートセンシング装置にパームヤシをセンシングさせてセンシングデータを取得し、当該センシングデータを基に再度処置提案情報(感染段階マップ)を生成してユーザ端末200へ送信してもよい。
【0091】
図7は、本実施形態において生成されユーザ端末200のアプリ上で表示される感染段階マップの例を示した図である。
【0092】
同図に示すように、当該感染段階マップは、上記リモートセンシング装置(主にドローン)で撮像したパームヤシ農園の対象エリアのRGB画像(航空写真)上の各パームヤシの領域Rを、上記判定されたガノデルマの感染段階ごとに異なる色彩で示したものである。
【0093】
CPU11は、上記RGB画像上の各パームヤシの領域Rを、判定された感染段階に応じた色(例えば、感染段階0は無色、感染段階1は緑色、感染段階2は黄色、感染段階3はオレンジ色、感染段階4は赤色)に着色するとともに、上記処置情報データベース33を参照して、各パームヤシ領域Rに対して、上記決定された処置を示す情報へアクセス可能なリンクを設定する。
【0094】
当該各領域Rがユーザ端末200のユーザに例えばタップ等で選択されると、当該領域に対応する感染段階について上記決定された処置又は治療処置を示す情報が例えばポップアップ等により表示される。
【0095】
図8は、上記感染段階マップの1つの領域Rがユーザに選択された場合に処置情報(又は治療処置情報)が表示される例を示した図である。
【0096】
同図に示すように、ユーザが選択した領域Rを起点として、処置情報を示すポップアップ80が表示される。ポップアップ80には、当該領域Rのパームヤシのシーケンス番号及び座標情報(緯度経度情報)の他、当該パームヤシのガノデルマの感染段階情報及びそれに応じた処置を示す処置情報81が表示される。同図の例では、例えば樹幹表面への農薬及びアジュバントのスプレーを提案する情報が表示されている。上述したその他の処置(樹幹内部への注入、土壌潅水、微生物添加)についてもユーザがポップアップ上で画面を切り替えることで表示可能されている。
【0097】
またポップアップ80の例えば下部には、地図アプリを起動して各パームヤシの位置へユーザ端末200をナビゲーションするためのナビボタン82が表示されている。ユーザは当該感染段階マップ上で各パームヤシの処置を確認した上で農薬やアジュバント等の処置(治療または予防)に必要な剤を用意し、ナビボタン82によりナビゲーションを開始することで処置に取り掛かることができる。
【0098】
また、感染段階マップ上でユーザにより各領域Rが選択された場合にポップアップ80が表示されるのみならず、感染段階マップ上でユーザにより各感染段階が選択されると、当該感染段階に応じた処置を行うべきパームヤシの範囲がマップ上で強調表示されるとともに、その面積等を示す情報が出力されてもよい。各感染段階の選択は、例えば凡例G内の各感染段階のボックスを選択することで可能であってもよい。
【0099】
またCPU11は、各パームヤシの処置を決定する際に、当該パームヤシのガノデルマの感染段階のみならず、当該パームヤシに隣接するパームヤシのガノデルマの感染段階を考慮に入れてもよい。これにより、より精度の高い処置提案が可能となる。
【0100】
すなわちCPU11は、感染段階マップ上で、未罹病段階(感染段階0)と判定されたパームヤシのうち、罹病段階(例えば感染段階1~4)と判定されたパームヤシに隣接するパームヤシの領域Rには、当該罹病段階と判定されたパームヤシへの処置に準じた所定の処置を示す情報へのリンクを設定し、罹病段階と判定されたパームヤシに隣接しないパームヤシの領域には当該リンクを設定しないようにしてもよい。上記所定の処置は、感染段階1と判定されたパームヤシに対する処置と同様の処置であってもよい。
【0101】
さらにCPU11は、感染段階0のパームヤシが、感染段階1以上のパームヤシに複数方向において隣接しているか、単一方向のみで隣接しているかによって、当該感染段階0のパームヤシに対する処置を変更してもよい。すなわち、健康パームヤシであっても、感染パームヤシに複数方向で隣接する場合には、今後の感染の可能性が高いと考えられるため、感染パームヤシに単一方向のみで隣接する健康パームヤシよりもその予防の重要度(農薬やアジュバントの濃度)を上げてもよい。
【0102】
またCPU11は、感染段階マップ上で、感染段階1(または感染段階2)と判定されたパームヤシのうち、感染段階2(または感染段階3)と判定されたパームヤシに隣接するパームヤシの領域Rと、感染段階3(または感染段階4)と判定されたパームヤシに隣接するパームヤシの領域Rとに、それぞれ異なる処置を示す情報へのリンクを設定してもよい。すなわち、感染段階1と判定されたパームヤシでも、それが感染段階2のパームヤシに隣接する場合と、感染段階3のパームヤシに隣接する場合とでは、後者の方がより感染段階が悪化することが想定されるため、後者の方に対してより処置の重要度(農薬やアジュバントの濃度)を上げてもよい。
【0103】
またCPU11は、感染段階1又は感染段階2と判定されたパームヤシについて、前述のように隣接するパームヤシの領域を考慮し、治療処置段階を判定することで、求めに応じて
図9のような治療処置マップを表示するものであっても良い。
図9の例では、上記感染段階マップに重畳させる形で、異なる治療段階ごとに領域Rを異なる種別の線で囲んだ例を示しているが、感染段階マップとは別に、異なる治療段階ごとに領域Rを異なる色彩で示してもよい。感染段階マップによりパームヤシの罹病状態を把握し、治療処置マップに基づき、農園の治療処理の感染をサポートできる。当該治療処置マップには、農園で用意する農薬や、アジュバントの量等の添加剤の発注量を表示することもできる。さらに、例えば、農薬の添加領域、農薬とアジュバントの添加領域等、各治療処理の手段ごとのマップを表示することもできる。
【0104】
周囲の植物の感染段階に応じた治療処置段階の判定において、植物の隣接範囲は、植物の種類に応じて適宜設定され得る。隣接範囲は、植物の本数単位で設定されてもよいし、区画(面積)単位で設定されてもよい。当該隣接範囲に関する設定情報は、ユーザ端末200またはモニタリングサーバ100の操作受付部17を介して都度入力されてもよいし、草木の種類に応じて予め定められた隣接範囲の情報が記憶部18に記憶されていてもよい。
【0105】
図9に示すように、本実施形態では、隣接範囲は、隣接するパームヤシ1本単位で設定される。しかし、隣接範囲は1本に限られない。また、例えば胞子が飛散する病害においては、病害が複数本の植物に亘る区画に及ぶことから、隣接範囲は、後述するダイズの例のように、区画(面積)単位で設定され得る。
【0106】
[まとめ]
以上説明したように、本実施形態によれば、樹木感染モニタリングシステムは、植物(パームヤシ)の病気(ガノデルマ)の感染段階に応じた処置を決定してそれをユーザに提案することができる。
【0107】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0108】
上述の実施形態では、樹木感染モニタリングシステムは、農園の樹木の病原菌への感染状況をモニタリングし感染段階を判定し、当該感染段階に応じた処置(治療または予防)方法を提案していた。これに加えて、樹木感染モニタリングシステムは、処置後に、当該処置の効果があったか否かの確認のための処理を行ってもよい。
【0109】
具体的には、モニタリングサーバ100は、上記
図5の処理を行い、ユーザが感染段階マップに応じて必要な処置(パームヤシに対する農薬の散布等)を行った後、一定期間(例えば数か月等)経過後に、再度、
図5のステップ52~ステップ54のモニタリング処理を行う。
【0110】
当該2回目のモニタリング処理によってパームヤシの感染段階を判定すると(ステップ54)、その判定結果を、上記モニタリング情報データベース32に記憶された1回目のモニタリング処理における感染段階の判定結果と比較することで、1回目のモニタリング処理後に行われた処置による防除効果を確認する。
【0111】
具体的には、CPU11は、上記比較の結果、特定のパームヤシについて、2回目のモニタリング処理時の感染段階が、1回目のモニタリング時の感染段階よりも下である場合には、防除効果があったと判断し、両感染段階が同一である、または、2回目のモニタリング処理時の感染段階の方が1回目のモニタリング処理時の感染段階よりも進んでいる場合には、防除効果が無かったと判断する。
【0112】
当該確認された防除効果に関する情報は、上記処置情報データベース33に、初回・前回モニタリング時の処置からの改善度に関する情報として記憶され、ユーザからの要求に応じて、または自動的に、モニタリングサーバ100からユーザ端末200へ送信される。
【0113】
このように、樹木感染モニタリングシステムは、モニタリング処理を複数回実行して感染段階の差分を特定することで、ユーザに提案して実行された処置の防除効果も診断することできる。
【0114】
上述の実施形態では、モニタリングサーバ100は、処置情報データベース33に予め感染段階に応じた処置情報を記憶しておき、感染段階を判定したときに当該記憶した情報を参照して処置を決定していた。これに代えてモニタリングサーバ100は、予め処置情報を記憶せずに、感染段階を判定したときに、その感染段階に応じた処置情報を要求する要求情報を提案者端末300へ送信し、それに応じて提案者端末300から送信された処置情報を基に処置を決定して上記進行段階マップを生成してもよい。
【0115】
上述の実施形態では、上記モニタリングサーバ100は1台のみ示したが、上記モニタリングサーバ100が実行する処理は、複数のサーバで分散して実行されても構わない。例えば、リモートセンシングデータや処置情報を記憶するサーバと、上記学習モデルを生成しそれに基づいてガノデルマの感染段階を判定するサーバとが別個に存在しても構わない。
【0116】
上述の実施形態で、モニタリングサーバ100は、罹病の進行段階(感染段階)の判定に基づき、又は罹病の進行段階の判定の時系列の情報に基づき、次のモニタリングの時期を判定し、モニタリング時期の提案情報をユーザに提供するものであっても良い。例えば、ある時期に罹病の進行段階が深刻な植物の割合が高いほど、または、時系列において罹病の進行速度が速いほど、モニタリング頻度を多くするよう設定してもよい。
【0117】
上述の
図6で挙げた感染段階に応じた処置(使用する農薬、アジュバント、微生物、及びそれらの使用量や使用回数)に関する情報は一例にすぎず、処置対象の植物等によって適宜変更される。また
図7及び
図8に示した感染段階マップの表示態様も単なる一例であり適宜変更され得る。
【0118】
上述の実施形態では、植物としてパームヤシを例に挙げ、病原菌としてガノデルマを挙げたが、植物と病原菌の組み合わせはこれに限られず、草本の罹病を判断するものであっても良い。例えばバナナのパナマ病または新パナマ病の感染、ダイズのさび病の感染、ゴムの根腐れ病の感染、稲のいもち病の感染、ブドウのさび病の感染を判断するものであってもよい。さらに、例えばトウモロコシ、ジャガイモ、イネ等の草本の罹病を判断するものであってもよい。肉眼では初期感染が判別しにくい病気に好適に用いられる。また本発明において植物の罹病はキノコやカビ等の菌、細菌、ウィルス等による感染症への感染に限られず、例えば病害虫や寄生虫等の感染症以外の病気の罹病も含む。「進行段階」とは、植物が罹病した感染症の感染段階のみならず、植物が罹病した感染症以外の病気の進行段階を含む。ただし本発明は感染症に感染した植物に関する処理に好適に用いられる。
【0119】
以下、植物がダイズであり、病原菌がダイズさび病菌(以下、単にさび病ともいう)である場合の実施形態を説明する。さび病としては、アジア系(Phakopsora pachyrhizi)と中南米系(P. meibomiae)の2種が知られているが、アジア系が特に問題になっている。
【0120】
図10は、本実施形態において判定された感染進行段階に応じた樹木処置方法の例を示した表である。
【0121】
同図に示すように、本実施形態では、さび病の感染段階として、感染段階0(健康)、感染段階1(感染初期)、感染段階2(感染中期)。感染段階3(深刻な感染)及び感染段階4(非常に深刻な感染)の5つの段階が上記学習モデルによって設定され判定される。
【0122】
感染段階1のダイズの予防処置としては、農薬とアジュバントの水溶液(健康であるため農薬のみでもよい)のスプレー、又は微生物の添加も提案される。
【0123】
農薬としては、例えばヘキサコナゾールが用いられ、その添加濃度は0.01%~0.001%とされる。アジュバントとしては、Kao Adjuvant A-134が用いられ、その添加濃度は0.1%~1%とされる。両者を合わせた添加量は100L~200L/1000m2とされ、処置回数は最低1回/年とされる。
【0124】
微生物の添加には、微生物含有の肥料(微生物種類:Bacillusなど)が用いられる。肥料として例えば商品名CEASE (BioWorks)が用いられる場合、その添加濃度及び処置回数は、0.05%~0.3%であり、添加量は100L~200L/1000m2とされ、処置回数は最低1回/年とされる。
【0125】
ケイ素の添加には、ケイ素含有の肥料が用いられる。肥料として例えば、商品名AgroSilicio(Harsco Minerais Ltda社製)が用いられる場合、その添加濃度及び処理回数は100~800kg/1000m2とされ、処置回数は最低1回/年とされる。
【0126】
感染段階1のダイズは、下位葉で側枝より主茎の比較的成熟した葉において淡褐色~黄褐色の小斑点が見られる、もしくはそれらが盛り上がるものである。同図に示すように、当該感染段階1のダイズに対しては、治療処置段階1として、農薬とアジュバントの水溶液の植物表面へのスプレーに加えて、微生物の添加が提案される。
【0127】
植物表面へのスプレー、及び土壌潅水のいずれの処置でも、農薬としてはヘキサコナゾール、アジュバントとしてはKao Adjuvant A-134が用いられる。その添加濃度は0.1%~1%とされる。両者を合わせた添加量は100L~200L/1000m2とされ、処置回数は最低1回/年とされる。
【0128】
微生物の添加には、微生物含有の肥料(微生物種類:Bacillusなど)が用いられる。肥料として例えば商品名CEASE (BioWorks)が用いられる場合、その添加濃度及び処置回数は、0.05%~0.3%であり、添加量は100L~200L/1000m2とされ、処置回数は最低1回/年とされる。
【0129】
感染段階2のダイズは、葉がさらに黄変し褐色~暗褐色となる、もしくは夏胞子(淡褐色の粉)を噴き出すことが確認される。同図に示すように、当該感染段階2のダイズに対しては、治療処置段階2として、農薬とアジュバントの水溶液の植物表面へのスプレーが提案される。
【0130】
治療処置段階2においては、使用される農薬及びアジュバントは上記感染段階1のそれと同一であるが、処置回数が、いずれの処置でも最低2回/年と増加される。
【0131】
感染段階3のダイズは、夏胞子層周辺の表皮下に多角形のやや膨れた黒褐色の斑点(冬胞子層)が確認できるものである。同図に示すように、当該感染段階3のダイズに対しては、治療処置段階3として、農薬とアジュバントの水溶液のスプレーが提案される。
【0132】
治療処置段階3においては、使用される農薬及びアジュバントは上記感染段階1に加えて、農薬としてアゾキシストロビン0.04~0.15%を加用する。処置回数が、いずれの処置でも最低2回/年と増加される。
【0133】
感染段階4のダイズは、被害葉が黄化、脱落したダイズであり、同図に示すように、処置段階4としては、感染した大豆植物体の除去が行われる。
【0134】
図11は、本実施形態において生成される進行段階マップの例を示した図である。
【0135】
図7に示したパームヤシの感染段階マップは、各パームヤシの領域Rを、上記判定されたガノデルマの感染段階ごとに異なる色彩で示したものであった。同図に示すように、本実施形態における感染段階マップも、各ダイズの領域Rsを、上記判定されたさび病の感染段階ごとに異なる色彩で示しているが、これに加えて本実施形態では、CPU11は、進行段階マップの領域全体を複数の区画Rfに分割し、当該区画Rfごとに感染段階を例えば数字で表示する。数字に代えて色彩又はその他の表示態様の変化で感染段階が示されてもよい。当該区画Rfは、農場を予め設定した面積(例えば1ha)の単位で区画したものに対応する。
【0136】
すなわち、各区画Rfに含まれる各ダイズのうち当該区画Rfで最も感染段階が進行しているダイズの感染段階を当該区画Rfの感染段階として例えばそれに対応した数字(0.5、1、2、3)で示している。なお感染段階0.5は、感染しているが、感染段階1まで達していない段階をいう。
【0137】
これは、ダイズの場合、上記パームヤシの場合と比較して、ダイズ同士の距離が短く、またさび病においては、発芽して病斑が成熟して胞子が飛散することで、罹病段階のダイズからその周囲の健康なダイズへ感染がより広範囲に広がる可能性があり、罹病段階のダイズに隣接するダイズのみならず、より広い区画Rfで罹病段階を捉えるのが適切と考えられるためである。
【0138】
そして、本実施形態における進行段階マップにおいても、ユーザが選択した領域Rsまたは区画Rfを起点として、上記
図8のポップアップ80と同様に、
図10で示した処置情報を示すポップアップが表示される。
【0139】
またCPU11は、上記感染段階マップに代えて、上記
図9と同様の治療処置マップを表示してもよい。
図12は、本実施形態において生成される治療処置マップの例を示した図である。
【0140】
図9に示したパームヤシの治療処置マップは、感染段階マップに重畳させる形で、異なる治療段階ごとに領域Rを異なる種別の線で囲んだものであった。一方、同図に示すように、本実施形態では、上記各区画Rfに含まれる各ダイズのうち当該区画Rfで最も感染段階が進行しているダイズの感染段階を当該区画Rfの感染段階として、当該Rfの感染段階に応じた処置(治療または予防)に応じて、各区画Rfを異なる表示態様で表示させる。
【0141】
同図の例では、治療処置マップは、上記感染段階マップに重畳させる形で、異なる治療段階ごとに区画Rfを異なる種別の線で囲んだ例を示しているが、感染段階マップとは別に、異なる治療段階ごとに区画Rfを異なる色彩で示してもよい。
【0142】
このように、ダイズの例では、周囲のダイズの感染段階に応じた治療処置段階の判定において、隣接範囲を上記区画Rf(面積)で設定し、当該区画Rfにおける最も感染段階の高いダイズを基準に感染段階を判定し、当該区画Rfの感染段階と隣接する区画Rfに基づいて治療処置段階を判定することができる。
【0143】
また上述したように、上記感染段階マップ及び治療段階マップにおいて、上記パームヤシ、ダイズといった植物の種類(感染の広がり方の特徴)に応じて、上記パームヤシの例のように植物の感染段階及びその隣接範囲を1本単位で表示するか、上記ダイズの例のように区画単位で表示するか(すなわち1本単位で処置するか、区画単位で処置するか)を、モニタリングサーバ100が事前の設定に応じて、または、ユーザ端末200からの入力に応じて、決定して実行してもよい。
【0144】
本願の特許請求の範囲に記載された発明のうち、「情報処理方法」と記載された発明は、その各ステップを、ソフトウェアによる情報処理によりコンピュータ等の少なくとも1つの装置が自動的に行うものであり、人間がコンピュータ等の装置を用いて行うものではない。すなわち、当該「情報処理方法」は、コンピュータ・ソフトウェアによる情報処理方法であって、コンピュータという計算道具を人間が操作する方法ではない。
【0145】
本明細書中に記載されている構成要素により実現される機能は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、汎用プロセッサ、特定用途プロセッサ、集積回路、ASICs(Application Specific Integrated Circuits)、CPU(a Central Processing Unit)、従来型の回路、および/又はそれらの組合せを含む、circuitry又はprocessing circuitryにおいて実装されてもよい。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含み、circuitry又はprocessing circuitryとみなされる。プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する、programmed processorであってもよい。
【0146】
本明細書において、circuitry、ユニット、手段は、記載された機能を実現するようにプログラムされたハードウェア、又は実行するハードウェアである。当該ハードウェアは、本明細書に開示されているあらゆるハードウェア、又は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、又は、実行するものとして知られているあらゆるハードウェアであってもよい。
【0147】
当該ハードウェアがcircuitryのタイプであるとみなされるプロセッサである場合、当該circuitry、手段、又はユニットは、ハードウェアと、当該ハードウェア及び又はプロセッサを構成する為に用いられるソフトウェアの組合せである。また本明細書においてユニット、手段として記載された構成は、circuitryとして実装できる。
【符号の説明】
【0148】
11…CPU
18…記憶部
19…通信部
31…農園情報データベース
32…モニタリング情報データベース
33…処置情報データベース
80…ポップアップ
81…処置情報
82…ナビボタン
100…モニタリングサーバ
200…ユーザ端末
300…提案者端末
R…パームヤシ領域
Rs…ダイズ領域
Rf…マップ分割区画