IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-鉄道車両用の電力変換装置 図1
  • 特許-鉄道車両用の電力変換装置 図2
  • 特許-鉄道車両用の電力変換装置 図3
  • 特許-鉄道車両用の電力変換装置 図4
  • 特許-鉄道車両用の電力変換装置 図5
  • 特許-鉄道車両用の電力変換装置 図6
  • 特許-鉄道車両用の電力変換装置 図7
  • 特許-鉄道車両用の電力変換装置 図8
  • 特許-鉄道車両用の電力変換装置 図9
  • 特許-鉄道車両用の電力変換装置 図10
  • 特許-鉄道車両用の電力変換装置 図11
  • 特許-鉄道車両用の電力変換装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】鉄道車両用の電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241220BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024558567
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2022042574
(87)【国際公開番号】W WO2024105813
(87)【国際公開日】2024-05-23
【審査請求日】2024-10-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】中川 良介
(72)【発明者】
【氏名】白木 康博
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-348818(JP,A)
【文献】特開2016-009769(JP,A)
【文献】特開2019-115223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に搭載される推進モータを駆動するための鉄道車両用の電力変換装置であって、
直流電力を前記推進モータへの交流電力に変換する三相インバータと、
前記三相インバータと前記推進モータとを接続する電気配線である三相交流電力線と、前記電力変換装置の接地電位と前記推進モータの接地電位との間を接続する電気配線であるコモンモード電流還流線とを貫通させた磁性体コアと、
を備え、
前記磁性体コアは、
前記三相インバータの側に配置され、前記三相交流電力線及び前記コモンモード電流還流線の双方を貫通させた第1のコアと、
前記推進モータの側に配置され、前記三相交流電力線及び前記コモンモード電流還流線の双方を貫通させた第2のコアと、
前記第1のコアと前記第2のコアとの間に配置され、前記三相交流電力線のみを貫通させた第3のコアと、
を備え、
前記第1、第2及び第3のコアの各コアにおいて、前記三相インバータの側に面する面を第1の面とし、前記推進モータの側に面する面を第2の面とするときに、
前記三相交流電力線を構成する3つの電気配線のうちの少なくとも1つの電気配線は、前記第2のコアから前記第2の面側に引き出されるときに、他の1つ又は2つの電気配線に対して互いに平行とはならないように引き出されている
ことを特徴とする鉄道車両用の電力変換装置。
【請求項2】
前記第1、第2及び第3のコアは、方形環状又は円形環状に形成され、
前記第2のコアの前記第2の面には非磁性金属板が設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1のコアの前記第1の面には非磁性金属板が設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用の電力変換装置。
【請求項4】
前記三相交流電力線を構成する3つの電気配線のうちの少なくとも1つの電気配線は、前記第1のコアから前記第1の面側に引き出されるときに、他の1つ又は2つの電気配線に対して互いに平行とはならないように引き出されている
ことを特徴とする請求項3に記載の鉄道車両用の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1のコアと前記第3のコアとの間に配置され、前記三相交流電力線のみを貫通させた第4のコアと、
前記第2のコアと前記第3のコアとの間に配置され、前記三相交流電力線のみを貫通させた第5のコアと、
を備え、
前記第4及び第5のコアは、方形環状又は円形環状に形成され、
前記第4及び第5のコアの各コアにおいて、前記三相インバータの側に面する面を第3の面とし、前記推進モータの側に面する面を第4の面とするときに、
前記第1のコアの前記第4の面、前記第4のコアの前記第3の面、前記第5のコアの前記第4の面及び前記第2のコアの前記第3の面の各々には、非磁性金属板が設置される
ことを特徴とする請求項2に記載の鉄道車両用の電力変換装置。
【請求項6】
前記非磁性金属板は、表皮深さ以上の厚みを有するように形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の鉄道車両用の電力変換装置。
【請求項7】
前記コモンモード電流還流線は、2つに分けられて前記第1及び第2のコアを貫通する
ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の鉄道車両用の電力変換装置。
【請求項8】
2つに分けられた前記コモンモード電流還流線のうちの1つは、前記三相交流電力線を構成する3つの電気配線のうちの1つである第1の電気配線に対して互いに平行となるように配置され、
2つに分けられた前記コモンモード電流還流線のうちの他の1つは、前記三相交流電力線を構成する3つの電気配線のうちの前記第1の電気配線とは異なる第2の電気配線に対して互いに平行となるように配置される
ことを特徴とする請求項7に記載の鉄道車両用の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両に搭載される推進モータを駆動するための鉄道車両用の電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)などのスイッチング素子を備えている。近年の電力変換装置では、スイッチング素子の高耐圧化、高周波化に伴い、スイッチング電圧の増加、スイッチング動作の高速化が進んでいる。
【0003】
一般に、電力変換装置におけるスイッチング動作は、零相電流であるコモンモード電流の原因となることが知られている。また、電力変換装置におけるスイッチング動作は、電力変換装置と負荷とを接続する交流電力線と、大地との間の寄生容量を介して、大地へ流れる漏れ電流の原因となることも知られている。また、電力変換装置におけるスイッチング動作は、交流電力線と、電力変換装置を収容する筐体との間の寄生容量を介して、負荷以外の周辺機器へ流れる漏れ電流の原因となることも知られている。これらの漏れ電流は、接地系に流れるコモンモード電流として、零相電流とは区別されている。
【0004】
上記のように、スイッチング電圧の増加及びスイッチング動作の高速化は、零相電流及び漏れ電流を増加させ、放射ノイズ及び伝導ノイズを増加させるので、周辺の通信機器などに悪影響を及ぼすという問題がある。
【0005】
零相電流を低減するため、従来から、交流電力線を同一の磁性体コアに巻回又は貫通させることが行われている。また、下記特許文献1には、漏れ電流の低減を図るため、電力変換装置の接地端子と、負荷の接地端子とをコモンモード電流還流線と呼ばれる電気配線で接続し、交流電力線とコモンモード電流還流線とを同一の磁性体コアに巻回又は貫通させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-086734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術を用いた場合、コモンモード電流還流線の還流ループのインピーダンスに比べて、接地回路の還流ループのインピーダンスが大きくなるので、接地回路の還流ループに流れる漏れ電流を小さくすることができる。しかしながら、特許文献1の技術を用いた場合、交流電力線のみを同一の磁性体コアに巻回又は貫通させた場合に比べて零相電流のピーク値が大きくなると説明されている。上述したように、零相電流は、放射ノイズ及び伝導ノイズの原因になる。鉄道車両用の電力変換装置の場合、負荷である推進モータには、極めて大きな電流が流れるため、零相電流の増加は許容することができない。
【0008】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、零相電流の増加を防止しながら、漏れ電流を低減できる鉄道車両用の電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本開示に係る鉄道車両用の電力変換装置は、鉄道車両に搭載される推進モータを駆動するための鉄道車両用の電力変換装置であって、直流電力を推進モータへの交流電力に変換する三相インバータと、三相交流電力線とコモンモード電流還流線とを貫通させた磁性体コアとを備える。三相交流電力線は、三相インバータと推進モータとを接続する電気配線であり、コモンモード電流還流線は、電力変換装置の接地電位と推進モータの接地電位との間を接続する電気配線である。磁性体コアは、三相交流電力線及びコモンモード電流還流線の双方を貫通させた第1及び第2のコアと、三相交流電力線のみを貫通させた第3のコアとを有する。第1のコアは三相インバータの側に配置され、第2のコアは推進モータの側に配置される。また、第3のコアは、第1のコアと第2のコアとの間に配置される。第1、第2及び第3のコアの各コアにおいて、三相インバータの側に面する面を第1の面とし、推進モータの側に面する面を第2の面とするときに、三相交流電力線を構成する3つの電気配線のうちの少なくとも1つの電気配線は、第2のコアから前記第2の面側に引き出されるときに、他の1つ又は2つの電気配線に対して互いに平行とはならないように引き出されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る鉄道車両用の電力変換装置によれば、零相電流の増加を防止しながら、漏れ電流を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る電力変換装置を含む鉄道車両システムの電気系の構成例を示す図
図2図1に示す入力回路部のバリエーションの例を示す図
図3】実施の形態1に係る電力変換装置に備えられる磁性体コアの構成並びに三相交流電力線及びコモンモード電流還流線との位置関係の説明に供する図
図4】実施の形態1に係る電力変換装置に備えられる磁性体コアを用いたときの効果の説明に供する図
図5】電磁界解析で用いる実施の形態1による磁性体コアの構成例を示す図
図6図5の比較例として示す磁性体コアの構成例を示す図
図7図5及び図6の構成の磁性体コアに対して行った電磁界解析の説明に供する図
図8図7に示す解析結果が得られる理由の説明に供する図
図9】実施の形態1で説明したローカルな磁束が発生する状況を図4の磁性体コアの構成図上に示した図
図10】実施の形態2に係る電力変換装置に備えられる磁性体コアの構成の説明に供する図
図11】実施の形態4に係る電力変換装置に備えられる磁性体コアの構成の説明に供する図
図12】実施の形態5に係る電力変換装置に備えられる磁性体コアの構成の説明に供する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照し、本開示の実施の形態に係る鉄道車両用の電力変換装置(以下、適宜「電力変換装置」と略す)について詳細に説明する。なお、添付図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。また、以下では、物理的な接続と電気的な接続とを区別せずに、単に「接続」と称して説明する。即ち、「接続」という文言は、構成要素同士が直接的に接続される場合と、構成要素同士が他の構成要素を介して間接的に接続される場合との双方を含んでいる。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置50を含む鉄道車両システムの電気系の構成例を示す図である。実施の形態1に係る電力変換装置50は、フィルタコンデンサ3と、三相インバータ4と、磁性体コア8とを備える。図1において、三相インバータ4の入力端には入力回路部2が接続され、三相インバータ4の出力端には少なくとも1つの推進モータ15が接続されている。推進モータ15は、鉄道車両に推進力を付与する三相モータである。
【0014】
入力回路部2は、少なくともスイッチ、フィルタリアクトルを含んで構成される。入力回路部2の一端は集電装置11を介して架線10に接続され、他端は車輪13を介して大地電位であるレール12に接続されている。架線10から供給される直流電力又は交流電力は、集電装置11を介して入力回路部2の一端に入力される。入力回路部2の出力端に生じた直流電力による直流電圧は、三相インバータ4に印加される。フィルタコンデンサ3は、三相インバータ4に印加される直流電圧のリプルが小さくなるように当該直流電圧を平滑する。三相インバータ4は、入力回路部2を介して供給される直流電力を推進モータ15への交流電力に変換する。
【0015】
三相インバータ4は、磁性体コア8を介し、三相交流電力線5によって推進モータ15と接続される。三相交流電力線5は、三相インバータ4と推進モータ15とを接続する電気配線である。推進モータ15の図示しない筐体は、接地線7によって接地される。また、推進モータ15は、コモンモード電流還流線6によって、電力変換装置50の接地電位となる部位に接続される。コモンモード電流還流線6は、電力変換装置50の接地電位と推進モータ15の接地電位との間を電気的に接続する電気配線である。
【0016】
三相インバータ4は、三相ブリッジ接続される複数のスイッチング素子4aを備える。スイッチング素子4aは、逆並列に接続される還流ダイオードを有する。スイッチング素子4aは、図示しない制御部から出力されるゲート信号に従ってスイッチング動作する。スイッチング素子4aのスイッチング動作によって、スイッチング素子4aに流れる電流が断続的に制御される。これにより、入力回路部2から供給される直流電力が推進モータ15への交流電力に変換される。推進モータ15は、三相インバータ4から供給される交流電力によって駆動され、図示しない1以上の鉄道車両によって編成される列車に推進力を付与する。三相インバータ4は、入力回路部2を介して供給される直流電力を推進モータ15への交流電力に変換することで推進モータ15を駆動する。なお、図1では、入力回路部2と、三相インバータ4とを個別の構成要素として図示しているが、これらを同一の筐体に収容して構成してもよい。
【0017】
図2は、図1に示す入力回路部2のバリエーションの例を示す図である。図2には、架線10が交流架線である場合の例として、入力回路部2Aが示されている。入力回路部2Aは、主変圧器21と、コンバータ22とを備えている。主変圧器21は、集電装置11を介して受電した交流電圧を降圧して、コンバータ22に印加する。コンバータ22は、降圧された交流電圧を直流電圧に変換して三相インバータ4に印加する。
【0018】
次に、図1及び図3を参照して、磁性体コア8の構成及び接続形態について説明する。図3は、実施の形態1に係る電力変換装置50に備えられる磁性体コア8の構成並びに三相交流電力線5及びコモンモード電流還流線6との位置関係の説明に供する図である。
【0019】
磁性体コア8は、三相インバータ4の側に配置される第1のコア8aと、推進モータ15の側に配置される第2のコア8bと、第1のコア8aと第2のコア8bとの間に配置される第3のコア8cとから構成される。第1のコア8a、第2のコア8b及び第3のコア8cは、図3に示されるように、円形環状に形成されている。なお、ここで言う「円形」は、真円形状のみを意味するものではなく、楕円形状も含まれることは言うまでも無い。
【0020】
また、第1のコア8a、第2のコア8b及び第3のコア8cからなる各コアは、三相インバータ4の側に面する面を第1の面とし、推進モータ15の側に面する面を第2の面とするときに、これらの第1及び第2の面がyz面内に位置するように配置されている。また、第1のコア8a及び第2のコア8bには、三相交流電力線5及びコモンモード電流還流線6の双方が貫通している。一方、第3のコア8cには、三相交流電力線5及びコモンモード電流還流線6のうちで三相交流電力線5のみが貫通している。このように構成する理由については、後述する。
【0021】
三相交流電力線5は、電気配線5a,5b,5cの電気配線から成る。例えば、電気配線5aはU相の電気配線であり、電気配線5bはV相の電気配線であり、電気配線5cはW相の電気配線である。
【0022】
なお、図1及び図3では、各々が1つの第1のコア8a、第2のコア8b及び第3のコア8cからなる構成を例示しているが、第1のコア8a、第2のコア8b及び第3のコア8cの数は、2以上であってもよい。また、図3では、各コアが円形環状に形成される場合を例示しているが、この形状に限定されない。各コアは、方形環状に形成されていてもよい。また、各コアが方形環状に形成される場合、各コアの4つの角は、面取りされていてもよい。
【0023】
磁性体コア8の素材としては、例えばフェライト、アモルファスを用いることができる。また、磁性体コア8を構成する各コアにおける外周の長さ、内周の長さ、厚さ、縦横比等のパラメータは、三相インバータ4の容量、三相交流電力線5の長さ、太さ、配置等に応じた好適なものを用いることができる。更に、磁性体コア8の透磁率は、スイッチング周波数、電力変換装置50及び推進モータ15との大地との間の浮遊容量等に応じた好適なものを選択すればよい。
【0024】
次に、実施の形態1に係る電力変換装置50に備えられる磁性体コア8を用いたときの効果について、図4を参照して説明する。図4は、実施の形態1に係る電力変換装置50に備えられる磁性体コア8を用いたときの効果の説明に供する図である。
【0025】
図4において、三相交流電力線5には、紙面の左側から右側に向かう方向の零相電流が流れ、コモンモード電流還流線6には、紙面の右側から左側に向かう方向の零相電流が流れるとする。このとき、三相交流電力線5が貫通する第1のコア8a、第2のコア8b及び第3のコア8cには、右ネジの法則に従って、二点鎖線で示す磁束100が生じる。また、コモンモード電流還流線6が貫通する第1のコア8a及び第2のコア8bには、一点鎖線で示す磁束110が生じる。第1のコア8a及び第2のコア8bにおいて、磁束100と磁束110とは互いに逆向きなので打ち消し合い、第1のコア8a及び第2のコア8bの内部の磁束密度は小さくなる。これにより、三相交流電力線5のみを第1のコア8a及び第2のコア8bに貫通させた場合に比べて、第1のコア8a及び第2のコア8bが磁気飽和を起こす零相電流のレベルを大きく引き上げることが可能となる。
【0026】
次に、第3のコア8cにコモンモード電流還流線6を貫通させない理由について説明する。上記では、三相交流電力線5には、紙面の左側から右側に向かう方向の零相電流が流れ、コモンモード電流還流線6には、紙面の右側から左側に向かう方向の零相電流が流れると説明した。一方、コモンモード電流還流線6にも三相交流電力線5に流れる電流と同一方向の電流が流れ、接地線7を通じて還流する動作モードも存在する。この動作モードによる電流は零相電流に比べて小さいものの、磁束が加わる方向の電流となるので、磁性体コア8の内部の磁束密度に影響を及ぼすことになる。この影響を小さくするため、第3のコア8cには、コモンモード電流還流線6を貫通させない構成としている。この構成により、コモンモード電流還流線6の還流ループのインピーダンスが接地線7を含む接地回路の還流ループのインピーダンスに比べて極端に小さくなるのを防止できる。これにより、零相電流の増加を防止しながら、漏れ電流の低減を図ることができるという効果が得られる。
【0027】
次に、実施の形態1の磁性体コア8が具備する別の効果について、実施の形態1の磁性体コア8を有する構成に対して行った電磁界解析の構成例、結果等を示す図5から図7の図面を参照して説明する。図5は、電磁界解析で用いる実施の形態1による磁性体コアの構成例を示す図である。図6は、図5の比較例として示す磁性体コアの構成例を示す図である。図7は、図5及び図6の構成の磁性体コアに対して行った電磁界解析の説明に供する図である。
【0028】
図5には、三相交流電力線5及びコモンモード電流還流線6の双方を貫通させた第1のコア8a及び第2のコア8bの数を2とし、三相交流電力線5のみを貫通させた第3のコア8cの数を4とする構成例が示されている。第1のコア8a、第2のコア8b及び第3のコア8cには同一構造のコア部材を使用している。各コア部材には、図7の上段部に示すような方形環状のものを使用し、z方向の幅は150mmとしている。なお、図7では、z軸の方向を、図3及び図4とは逆向きに示している。
【0029】
また、図6に示す比較例では、コア部材の全体数を同一の8とし、三相交流電力線5のみを貫通させたコア部材の数と、三相交流電力線5及びコモンモード電流還流線6の双方を貫通させたコア部材の数とを均等に4とする構成例が示されている。
【0030】
図7の中段部及び下段部には、電磁界解析の解析結果が示されている。横軸はz方向の位置を表し、縦軸は磁界の大きさを表している。解析対象のコア部材は、図5の構成の場合、第1のコア8aのうちの最外端に位置するコア部材90である。また、図6の構成の場合、解析対象のコア部材は、三相交流電力線5のみが貫通している4つの磁性体コアのうちの最外端に位置するコア部材92とする。図7の中段部には、磁性体コアにおけるA-A’線上の磁界分布が示され、下段部には磁性体コアにおけるB-B’線上の磁界分布が示されている。何れの図においても、太実線は比較例の構成による磁界分布を表し、細実線は実施の形態1の構成による磁界分布を表している。図7の上段部にも示しているように、三相交流電力線5における3つの電気配線には、振幅値が70/3[A]で周波数が100kHzの交流電流を印加し、コモンモード電流還流線6には、振幅値が70[A]で周波数が100kHzの交流電流を印加している。また、コア部材の比透磁率は、4000としている。
【0031】
図7の中段部の解析結果に示されるように、実施の形態1の構成では、比較例の構成に比べて、A-A’線上における磁界のピーク値が100(A/m)程度低下していることが見てとれる。また、図7の下段部の解析結果に示されるように、実施の形態1の構成では、比較例の構成に比べて、B-B’線上における磁界のピーク値が130~140(A/m)程度低下していることが見てとれる。また、図7の中段部及び下段部の解析結果に示されるように、実施の形態1の場合、z軸方向の殆どの領域において、磁界の大きさが、比較例に比べて下回っていることが見てとれる。
【0032】
次に、図7に示す解析結果が得られる理由について説明する。図8は、図7に示す解析結果が得られる理由の説明に供する図である。
【0033】
電力変換装置50から三相交流電力線5を引き出す場合、三相交流電力線5は、図8に示されるように、外部との配線の中継点として、固定又は絶縁の目的で、端子台に接続されることがある。また、電力変換装置50が鉄道車両用として構成される場合、三相交流電力線5は、平板形状であることが多く、端子台においては、各相の電気配線が距離を隔てて配置されることが多い。この場合、各相の電気配線のうちの一部は、端子台へ引き込むときに、磁性体コア8から曲げられて引き出されることになる。曲げられて引き出された電気配線による磁束は、打ち消されずに残り、磁性体コア8の周辺にローカルな磁束を発生させるケースがある。図8には、最外端に配置される磁性体コアから引き出される各相の電気配線がばらけることによって、ローカルな磁束が発生する状況が示されている。
【0034】
図5及び図6において、最外端に位置する解析対象のコア部材90,92では、平板状の三相交流電力線5が折り曲げられて引き出されている。このため、コア部材90,92では、ローカルな磁束が発生する。ここで、コモンモード電流還流線6が貫通している図5のコア部材90では、ローカルな磁束の一部がコモンモード電流還流線6に流れる電流による磁束によって打ち消されることになる。これに対し、コモンモード電流還流線6が貫通していない図6のコア部材92では、ローカルな磁束が打ち消されずに残ることになる。このため、実施の形態1の構成におけるコア部材90は、比較例の構成におけるコア部材92に比べて、磁界の大きさが小さくなったものと考えられる。
【0035】
従って、実施の形態1の磁性体コア8を使用すれば、磁性体コア8の内部の磁界の増加を抑制できるので、磁気飽和の発生の確率を小さくすることが可能となる。また、実施の形態1の磁性体コア8を使用すれば、磁気飽和の発生の確率を小さくできるので、磁気飽和に起因する磁性体コア8の透磁率の低下を抑制することが可能となる。
【0036】
以上説明したように、実施の形態1に係る鉄道車両用の電力変換装置は、直流電力を鉄道車両に搭載される推進モータへの交流電力に変換する三相インバータと、三相交流電力線とコモンモード電流還流線とを貫通させた磁性体コアとを備える。三相交流電力線は、三相インバータと推進モータとを接続する電気配線であり、コモンモード電流還流線は、電力変換装置の接地電位と推進モータの接地電位との間を接続する電気配線である。磁性体コアは、三相交流電力線及びコモンモード電流還流線の双方を貫通させた第1及び第2のコアと、三相交流電力線のみを貫通させた第3のコアとを有する。第1のコアは三相インバータの側に配置され、第2のコアは推進モータの側に配置され、第3のコアは、第1のコアと第2のコアとの間に配置される。
【0037】
上記のように、実施の形態1に係る鉄道車両用の電力変換装置は、三相交流電力線及びコモンモード電流還流線の双方を貫通させた第1及び第2のコアを有すると共に、第1のコアと第2のコアとの間に、三相交流電力線及びコモンモード電流還流線のうちで三相交流電力線のみを貫通させた第3のコアを有している。この構成により、コモンモード電流還流線の還流ループのインピーダンスが接地線を含む接地回路の還流ループのインピーダンスに比べて極端に小さくなるのを防止できる。これにより、実施の形態1に係る電力変換装置は、零相電流の増加を防止しながら、漏れ電流の低減を図ることが可能となる。
【0038】
また、上記のように、実施の形態1に係る鉄道車両用の電力変換装置は、三相交流電力線のみを貫通させた第3のコアの両端に、三相交流電力線及びコモンモード電流還流線の双方を貫通させた第1及び第2のコアを配置する構成としている。この構成により、第1及び第2のコアの最外端に位置するコア部材の磁界の増加を抑制できるので、磁性体コアにおける磁気飽和の発生の確率を小さくすることができ、磁気飽和に起因する磁性体コアの透磁率の低下を抑制することが可能となる。
【0039】
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1で説明したローカルな磁束を更に低減させる構成について説明する。
【0040】
図9は、実施の形態1で説明したローカルな磁束が発生する状況を図4の磁性体コア8の構成図上に示した図である。
【0041】
図9には、三相交流電力線5を構成する3つの電気配線5a,5b,5cのうちの電気配線5a,5cが、第1のコア8aから第1の面側に引き出されるときに、電気配線5bに対して互いに平行とはならないように引き出される状況が示されている。また、図9には、三相交流電力線5を構成する3つの電気配線5a,5b,5cのうちの電気配線5a,5cが、第2のコア8bから第2の面側に引き出されるときに、電気配線5bに対して互いに平行とはならないように引き出される状況が示されている。なお、図9において、図4と同一の要素については、同一の符号を付して示している。
【0042】
また、図9には、三相交流電力線5に流れる電流によって生じる磁束100と、コモンモード電流還流線6に流れる電流によって生じる磁束110とが示されると共に、電気配線5bに対して互いに平行ではない電気配線5a,5cの部位によって生じ得るローカル磁束120が破線で示されている。前述したように、磁束100と磁束110とは、互いに逆向きなので、打ち消し合うことになる。これに対し、ローカル磁束120は、打ち消し合う磁束が存在しないので、その成分が第1のコア8a及び第2のコア8bの周辺に残り、或いは第1のコア8a及び第2のコア8bの内部に進入することになる。
【0043】
そこで、実施の形態2では、図10に示す磁性体コア81の構成を提案する。図10は、実施の形態2に係る電力変換装置50に備えられる磁性体コア81の構成の説明に供する図である。図10において、図9と同一の要素には、同一の符号を付して示している。
【0044】
実施の形態2の磁性体コア81では、図10に示すように、第1のコア8aの第1の面には非磁性金属板200が設置され、第2のコア8bの第2の面にも非磁性金属板200が設置されている。非磁性金属板200の一例は、アルミ板である。
【0045】
図10において、非磁性金属板200は、第1のコア8a及び第2のコア8bにおけるyz面に配置されるので、ローカル磁束120と鎖交する。ローカル磁束120が非磁性金属板200に鎖交すると、非磁性金属板200に渦電流が流れる。この渦電流は、ローカル磁束120を打ち消す方向の磁束を発生させるので、ローカル磁束120が第1のコア8a及び第2のコア8bの内部に進入するのを抑止するように作用する。これにより、ローカル磁束120によって磁性体コア81が磁気飽和するのを抑止することが可能となる。
【0046】
電力変換装置50が鉄道車両用である場合、三相インバータ4の側よりも推進モータ15の側の方が、寸法の制約が大きく、空きスペースに余裕がないことが多い。このため、第2のコア8bの第2の面に非磁性金属板200を設置するのが好ましい実施例となる。また、平板形状の三相交流電力線5を用いる場合、三相交流電力線5を構成する3つの電気配線5a,5b,5cの全てを互いに平行に引き出して端子台に固定するのは困難である。このため、三相インバータ4の側においても、第1のコア8aの第1の面に非磁性金属板200を設置するのが、より好ましい実施例となることは言うまでも無い。
【0047】
なお、図10では、3つの電気配線5a,5b,5cのうちの、2つの電気配線5a,5cがもう1つの電気配線5bに対して互いに平行ではない例を示しているが、この例に限定されない。3つの電気配線5a,5b,5cのうちの、例えば1つの電気配線5aが他の2つの電気配線5b,5cに対して互いに平行ではない場合でも、非磁性金属板200を設置することで、ローカル磁束120を低減する効果が得られる。即ち、三相交流電力線5を構成する3つの電気配線5a,5b,5cのうちの少なくとも1つの電気配線が第1のコア8aから第1の面側、又は第2のコア8bから第2の面側に引き出されるときに、他の1つ又は2つの電気配線に対して互いに平行とはならないように引き出されている構成であれば、非磁性金属板200によるローカル磁束120を低減する効果が得られる。
【0048】
実施の形態3.
実施の形態3では、図10のように構成された磁性体コア81において、非磁性金属板200における好ましい厚みについて説明する。具体的に、実施の形態3に係る電力変換装置50では、磁性体コア8における非磁性金属板200の厚みを表皮深さ以上にすることを提案する。
【0049】
金属板における表皮深さとは、ある材質の金属に入射した電磁界が、1/e(≒1/2.718≒-8.7dB)に減衰する距離である。ここで、非磁性金属板200における透磁率をμ、導電率をσ、周波数をfで表すと、表皮深さδは、δ=1/√(πfμσ)によって与えられる。
【0050】
磁性体コア81における非磁性金属板200において、その厚みを非磁性金属板200の材質の表皮深さ以上にすれば、第1のコア8a及び第2のコア8b内に進入する磁束量を非磁性金属板200がない場合に比べて1/e以下とすることができる。これにより、磁性体コア81をより磁気飽和が起こりにくい構成とすることが可能となる。
【0051】
実施の形態4.
図11は、実施の形態4に係る電力変換装置50に備えられる磁性体コア82の構成の説明に供する図である。図11に示す磁性体コア82では、図10に示す磁性体コア81の構成において、第1のコア8aと第3のコア8cとの間に、三相交流電力線5のみを貫通させた第4のコア8dが追加されている。また、図11に示す磁性体コア82では、第2のコア8bと第3のコア8cとの間に、三相交流電力線5のみを貫通させた第5のコア8eが追加されている。また、図11に示す磁性体コア82では、第1のコア8aの第2の面、第4のコア8dの第1の面、第5のコア8eの第2の面及び第2のコア8bの第1の面の各々には、非磁性金属板300が設置されている。非磁性金属板300の一例は、アルミ板である。なお、図11の構成では、第1のコア8aの第1の面及び第2のコア8bの第2の面には、図10に示す非磁性金属板200が設置されていないが、図10と同様に非磁性金属板200が設置されていてもよい。非磁性金属板200を有する場合の効果は、実施の形態2と同じである。
【0052】
次に、非磁性金属板300を用いたときの効果について説明する。まず、コモンモード電流還流線6は、第4のコア8d、第3のコア8c及び第5のコア8eを貫通しないため、破線で示す第1のコア8aと第4のコア8dとの間及び第5のコア8eと第2のコア8bとの間で折り曲げられて磁性体コア82内に配線される。この配線形態により、折り曲げられた箇所では、実施の形態2で説明したようなローカル磁束が発生する。実施の形態4では、このようなローカル磁束が第1のコア8a及び第4のコア8d、並びに第5のコア8e及び第2のコア8bの内部に進入するのを抑止するために非磁性金属板300を設置している。非磁性金属板300を設置することにより、コモンモード電流還流線6の折り曲げ部によって発生し得るローカル磁束によって、磁性体コア82が磁気飽和するのを抑止することが可能となる。
【0053】
なお、非磁性金属板300の厚みを非磁性金属板200の材質の表皮深さ以上にすれば、実施の形態3と同様の効果が得られる。また、図11では、非磁性金属板300を第1のコア8aの第2の面、第4のコア8dの第1の面、第5のコア8eの第2の面及び第2のコア8bの第1の面の各々に設置しているが、この構成に限定されない。第1のコア8aと第4のコア8dとの間隔が非磁性金属板300の厚みに比べて広い場合には、コモンモード電流還流線6の折り曲げ部に近い箇所の面のみに非磁性金属板300を設置することでもよい。例えば、コモンモード電流還流線6の折り曲げ部が第1のコア8aの第2の面よりも第4のコア8dの第1の面の方に近い場合には、第4のコア8dの第1の面のみに非磁性金属板300を設置することでもよい。同様に、例えば、コモンモード電流還流線6の折り曲げ部が第2のコア8bの第1の面よりも第5のコア8eの第2の面の方に近い場合には、第5のコア8eの第2の面のみに非磁性金属板300を設置することでもよい。
【0054】
実施の形態5.
図12は、実施の形態5に係る電力変換装置50に備えられる磁性体コア83の構成の説明に供する図である。図12に示す磁性体コア83では、図10に示すコモンモード電流還流線6が、コモンモード電流還流線6a,6bの2つに分けられて、第1のコア8a及び第2のコア8bを貫通している。2つに分けられたうちの1つであるコモンモード電流還流線6aは、電気配線5aに対して互いに平行となるように配置されている。また、2つに分けられたうちの他の1つであるコモンモード電流還流線6bは、電気配線5cに対して互いに平行となるように配置されている。なお、ここで言う「平行」とは、厳密な意味の平行のみを意味するものではなく、実質的に平行であればよいことを意味する。
【0055】
次に、実施の形態5の磁性体コア83による効果について説明する。図12において、電気配線5a,5b,5cには、二点鎖線の矢印線で示す同相の零相電流が流れる。一方、コモンモード電流還流線6a,6bには、同相で、且つ電気配線5a,5b,5cに流れる零相電流とは逆相の一点鎖線の矢印線で示す電流が流れる。従って、電気配線5aに流れる電流によって生じる実線で示す磁束と、コモンモード電流還流線6aに流れる電流によって生じる破線で示す磁束とは、互いに逆向きとなり打ち消し合う。同様に、電気配線5cに流れる電流によって生じる実線で示す磁束と、コモンモード電流還流線6bに流れる電流によって生じる破線で示す磁束とは、互いに逆向きとなり打ち消し合う。これにより、電気配線5aが第1のコア8a及び第2のコア8bから曲げられて引き出される場合であっても、電気配線5aに対して互いに平行となるように配されたコモンモード電流還流線6aによってローカル磁束の発生が抑制され、磁性体コア83の内部に磁束が進入するのを抑止することが可能となる。また、電気配線5cが第1のコア8a及び第2のコア8bから曲げられて引き出される場合であっても、電気配線5cに対して互いに平行となるように配されたコモンモード電流還流線6bによってローカル磁束の発生が抑制され、磁性体コア83の内部に磁束が進入するのを抑止することが可能となる。
【0056】
なお、図12の構成では、非磁性金属板200を有していないが、図10に示されるように非磁性金属板200を第1のコア8aの第1の面及び第2のコア8bの第2の面に設置するようにしてもよい。また、実施の形態5では、2つに分けられたうちの1つであるコモンモード電流還流線6aを、3つの電気配線5a,5b,5cのうちの第1の電気配線である電気配線5aに対して互いに平行となるように配置し、他の1つであるコモンモード電流還流線6bを3つの電気配線5a,5b,5cのうちの第2の電気配線である電気配線5cに対して互いに平行となるように配置するのを図10の構成に適用したが、実施の形態4に係る図11の構成に適用してもよい。図11の構成に適用すれば、実施の形態4で説明した効果も得ることができる。
【0057】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
以下に、本開示の諸態様を付記として纏めて記載する。
[付記1]
鉄道車両に搭載される推進モータを駆動するための鉄道車両用の電力変換装置であって、
直流電力を前記推進モータへの交流電力に変換する三相インバータと、
前記三相インバータと前記推進モータとを接続する電気配線である三相交流電力線と、前記電力変換装置の接地電位と前記推進モータの接地電位との間を接続する電気配線であるコモンモード電流還流線とを貫通させた磁性体コアと、
を備え、
前記磁性体コアは、
前記三相インバータの側に配置され、前記三相交流電力線及び前記コモンモード電流還流線の双方を貫通させた第1のコアと、
前記推進モータの側に配置され、前記三相交流電力線及び前記コモンモード電流還流線の双方を貫通させた第2のコアと、
前記第1のコアと前記第2のコアとの間に配置され、前記三相交流電力線のみを貫通させた第3のコアと、
を備え、
前記第1、第2及び第3のコアの各コアにおいて、前記三相インバータの側に面する面を第1の面とし、前記推進モータの側に面する面を第2の面とするときに、
前記三相交流電力線を構成する3つの電気配線のうちの少なくとも1つの電気配線は、前記第2のコアから前記第2の面側に引き出されるときに、他の1つ又は2つの電気配線に対して互いに平行とはならないように引き出されている
ことを特徴とする鉄道車両用の電力変換装置。
[付記2]
前記第1、第2及び第3のコアは、方形環状又は円形環状に形成され、
前記第2のコアの前記第2の面には非磁性金属板が設置される
ことを特徴とする付記1に記載の鉄道車両用の電力変換装置。
[付記3]
前記第1のコアの前記第1の面には非磁性金属板が設置される
ことを特徴とする付記1又は2に記載の鉄道車両用の電力変換装置。
[付記4]
前記三相交流電力線を構成する3つの電気配線のうちの少なくとも1つの電気配線は、前記第1のコアから前記第1の面側に引き出されるときに、他の1つ又は2つの電気配線に対して互いに平行とはならないように引き出されている
ことを特徴とする付記3に記載の鉄道車両用の電力変換装置。
[付記5]
前記第1のコアと前記第3のコアとの間に配置され、前記三相交流電力線のみを貫通させた第4のコアと、
前記第2のコアと前記第3のコアとの間に配置され、前記三相交流電力線のみを貫通させた第5のコアと、
を備え、
前記第4及び第5のコアは、方形環状又は円形環状に形成され、
前記第4及び第5のコアの各コアにおいて、前記三相インバータの側に面する面を第3の面とし、前記推進モータの側に面する面を第4の面とするときに、
前記第1のコアの前記第4の面、前記第4のコアの前記第3の面、前記第5のコアの前記第4の面及び前記第2のコアの前記第3の面の各々には、非磁性金属板が設置される
ことを特徴とする付記2から4の何れか1つに記載の鉄道車両用の電力変換装置。
[付記6]
前記非磁性金属板は、表皮深さ以上の厚みを有するように形成されている
ことを特徴とする付記2から5の何れか1つに記載の鉄道車両用の電力変換装置。
[付記7]
前記コモンモード電流還流線は、2つに分けられて前記第1及び第2のコアを貫通する
ことを特徴とする付記1から6の何れか1つに記載の鉄道車両用の電力変換装置。
[付記8]
2つに分けられた前記コモンモード電流還流線のうちの1つは、前記三相交流電力線を構成する3つの電気配線のうちの1つである第1の電気配線に対して互いに平行となるように配置され、
2つに分けられた前記コモンモード電流還流線のうちの他の1つは、前記三相交流電力線を構成する3つの電気配線のうちの前記第1の電気配線とは異なる第2の電気配線に対して互いに平行となるように配置される
ことを特徴とする付記7に記載の鉄道車両用の電力変換装置。
【符号の説明】
【0058】
2,2A 入力回路部、3 フィルタコンデンサ、4 三相インバータ、4a スイッチング素子、5 三相交流電力線、5a,5b,5c 電気配線、6,6a,6b コモンモード電流還流線、7 接地線、8,81,82,83 磁性体コア、8a 第1のコア、8b 第2のコア、8c 第3のコア、8d 第4のコア、8e 第5のコア、10 架線、11 集電装置、12 レール、13 車輪、15 推進モータ、21 主変圧器、22 コンバータ、50 電力変換装置、90,92 コア部材、100,110 磁束、120 ローカル磁束、200,300 非磁性金属板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12