(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】レーザ装置、ミラーおよびレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/08 20230101AFI20241220BHJP
【FI】
H01S3/08
(21)【出願番号】P 2024559950
(86)(22)【出願日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2024027929
【審査請求日】2024-10-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】山本 達也
(72)【発明者】
【氏名】田所 譲
(72)【発明者】
【氏名】川島 拓也
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-243647(JP,A)
【文献】特開2004-39767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/227
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振器の一端を構成する部分反射鏡として用いられるミラーを備え、
前記ミラーは、
特定の波長に対する部分反射コーティングが施されているか、または、部分反射コーティングが施されていない内面と、
前記内面とは反対を向く面であって、特定の波長に対する全透過コーティングが施されている外面と、
を有し、
前記内面は、前記共振器の光軸上に位置する曲率中心を有する曲面であり、
前記外面は、前記共振器の前記光軸上からずれた曲率中心を有する曲面であることを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
1次元の再帰反射鏡であり、前記共振器の他端を構成する全反射鏡を備え、
前記ミラーの前記内面と前記全反射鏡との間で前記共振器の前記光軸に沿ったレーザビームが発生させられることを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記ミラーと前記全反射鏡との間において前記共振器の前記光軸上に配置される折り返しミラーを備えることを特徴とする請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記折り返しミラーは、トロイダル面であることを特徴とする請求項3に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記ミラーの前記外面は、トロイダル面であることを特徴とする請求項
1に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記ミラーの前記外面は、シリンドリカル面であることを特徴とする請求項
1に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記ミラーの材料は、ダイヤモンドを含むことを特徴とする請求項
1に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記外面の前記曲率中心は、前記外面に対して前記内面とは反対側にあることを特徴とする請求項
1に記載のレーザ装置。
【請求項9】
共振器の一端を構成する部分反射鏡として用いられるミラーであって、
特定の波長に対する部分反射コーティングが施されている面か、または、部分反射コーティングが施されていない内面と、
前記内面とは反対を向く面であって、特定の波長に対する全透過コーティングが施されている外面と、
を有し、
前記内面は、前記共振器の光軸上に位置する曲率中心を有する曲面であり、
前記外面は、前記共振器の前記光軸上からずれた曲率中心を有する曲面であることを特徴とするミラー。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1つに記載のレーザ装置と、
前記レーザ装置から出射されたレーザビームを集光して加工対象物上に照射するレーザ加工機と、
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザビームを出射するレーザ装置、レーザ装置に用いられるミラーおよびレーザ装置を備えるレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を部分反射鏡と全反射鏡との間で往復させることにより増幅させて、増幅させた光(レーザビーム)の一部を出射するレーザ装置が知られている。部分反射鏡は、共振器の一端を構成し、全反射鏡は、共振器の他端を構成している。
【0003】
部分反射鏡は、全反射鏡の方を向く内面と、内面とは反対を向く外面とを有している。全反射鏡は、部分反射鏡に向かって光を反射させる反射面を有している。共振器の光軸は、部分反射鏡の内面の曲率中心と全反射鏡の反射面の曲率中心とを通る線上に位置する。部分反射鏡の内面の曲率中心は、共振器の光軸上に位置している。
【0004】
特許文献1には、従来例として、曲面状の凹面である内面と曲面状の凸面である外面とを有する部分反射鏡が開示されている。特許文献1に開示された部分反射鏡では、外面の曲率中心が内面の曲率中心を通る共振器の光軸上に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザ装置では、部分反射鏡の内面を通過した光の一部が部分反射鏡の外面で反射され、共振器内に戻る場合がある。このとき、特許文献1に開示されているように外面の曲率中心が共振器の光軸上に位置していると、部分反射鏡の外面で反射した光が全反射鏡との間で往復して増幅することにより、寄生発振光が発生し、寄生発振光がレーザビームの光軸と概ね同じ方向に射出されるという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に開示されているように外面の曲率中心が共振器の光軸上に位置していると、部分反射鏡の外面と内面とが概ね同じ向きになり、レーザ装置から出射されるレーザビームが部分反射鏡の外面および内面で反射され発生した迷光は、レーザビームの光軸と概ね同じ方向に射出されるという問題がある。
【0008】
このため、加工対象物の加工に用いられるレーザビームと、加工対象物の加工に不要な寄生発振光、迷光などとを分離することが困難となり、寄生発振光、迷光などが加工対象物に照射されることによる加工不具合を発生させる可能性がある。
【0009】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、加工不具合の発生を抑制することができるレーザ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかるレーザ装置は、共振器の一端を構成する部分反射鏡として用いられるミラーを備えている。ミラーは、特定の波長に対する部分反射コーティングが施されているか、または、部分反射コーティングが施されていない内面と、内面とは反対を向く面であって、特定の波長に対する全透過コーティングが施されている外面と、を有している。内面は、共振器の光軸上に位置する曲率中心を有する曲面である。外面は、共振器の光軸上からずれた曲率中心を有する曲面である。
【発明の効果】
【0011】
本開示にかかるレーザ装置は、加工不具合の発生を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1にかかるレーザ装置を備えるレーザ加工装置を示した構成図
【
図2】実施の形態1にかかるレーザ装置を示した斜視図
【
図3】
図1の部分拡大図であって、実施の形態1にかかるレーザ装置の共振器を示した構成図
【
図4】
図3の部分拡大図であって、実施の形態1にかかるレーザ装置の部分反射鏡を示した構成図
【
図5】実施の形態1にかかるレーザ装置の共振器の作用を説明するための図
【
図6】実施の形態1にかかるレーザ装置における部分反射鏡の内面の曲率半径と、部分反射鏡の外面の曲率半径と、部分反射鏡の外面で反射することによりレーザ発振する光の光軸と共振器の光軸との距離と、部分反射鏡の外面の光軸からの偏芯量との関係を示した図
【
図7】外面の曲率中心が共振器の光軸上に位置する場合のレーザ装置の一例を示した構成図
【
図8】実施の形態2にかかるレーザ装置を示した斜視図
【
図9】実施の形態2にかかるレーザ装置の共振器を示した構成図
【
図10】実施の形態3にかかるレーザ装置を示した斜視図
【
図11】実施の形態3にかかるレーザ装置の共振器を示した構成図
【
図12】実施の形態4にかかるレーザ装置を備えるレーザ加工装置を示した構成図
【
図13】実施の形態4にかかるレーザ装置を示した斜視図
【
図14】
図12の部分拡大図であって、実施の形態4にかかるレーザ装置の共振器を示した構成図
【
図15】実施の形態4にかかるレーザ装置の作用を説明するための図
【
図16】実施の形態5にかかるレーザ装置を示した斜視図
【
図17】実施の形態5にかかるレーザ装置の共振器を示した構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、実施の形態にかかるレーザ装置、ミラーおよびレーザ加工装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかるレーザ装置200を備えるレーザ加工装置100を示した構成図である。以下、方向を説明するときには、
図1に示される右手系のXYZ座標に従う。X軸方向とY軸方向とZ軸方向とは、互いに直交する方向である。レーザ加工装置100は、レーザビームr1を加工対象物400上に照射することにより加工対象物400を加工する装置である。加工とは、例えば、切断、溶接、穴開けである。加工対象物400は、例えば、金属板、基板である。レーザ加工装置100は、レーザビームr1を出射するレーザ装置200と、レーザ装置200から出射されたレーザビームr1を集光して加工対象物400上に照射するレーザ加工機300とを備えている。レーザ装置200の詳細については後記する。レーザ加工機300は、レーザビームr1を加工対象物400に導くための図示しないミラー、レンズなどの光学部品と、光学部品を収容する筐体300aとを含んで構成されている。図示は省略するが、レーザ加工装置100は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向において加工対象物400の位置を移動させる駆動機構などを備えている。なお、仮に、
図1のY軸方向を上下方向としたとき、
図1のレーザ装置200は上下方向に沿って見たときの状態であるが、
図1のレーザ加工機300は上下方向と直交する方向に沿って見たときの状態であり、実際にはドットハッチングで表したレーザビームr1および加工対象物400がY軸方向のマイナス向きに位置するようにレーザ加工機300が配置される。
図1では、説明の便宜上、レーザ加工機300を実際の状態から90度回転させて図示している。
図1に示された各方向は、レーザ装置200とレーザ加工機300とを説明する上で便宜上設定したものであり、レーザ装置200とレーザ加工機300とが使用される姿勢を特定するものではない。
【0015】
次に、
図2および
図3を参照して、レーザ装置200の詳細について説明する。
図2は、実施の形態1にかかるレーザ装置200を示した斜視図である。
図3は、
図1の部分拡大図であって、実施の形態1にかかるレーザ装置200の共振器10を示した構成図である。
図3は、実施の形態1にかかるレーザ装置200の共振器10をY軸方向のプラス向きからマイナス向きに見た図である。
図3では、
図2で省略したアパーチャ8,9が図示されている。
図2および
図3に示すように、レーザ装置200は、筐体1と、2つの電極2,3と、送風機4と、熱交換器5と、部分反射鏡6と、全反射鏡7と、2つのアパーチャ8,9とを備えている。
【0016】
図2に示される筐体1は、レーザ媒質であるレーザガスを封入する箱状の部材である。
図3に示すように、筐体1には、1つの開口1aが形成されている。開口1aは、本実施の形態では筐体1のうちZ軸方向における一方の側壁に形成されている。開口1aは、筐体1の内部と外部とを連通している。開口1aは、レーザビームr1をレーザ装置200の外部へ出射させるための部分である。
【0017】
図2に示すように、2つの電極2,3は、筐体1の内部に設置されている。2つの電極2,3は、Y軸方向に互いに間隔を空けて配置されている。2つの電極2,3の間の空間は、レーザガスを励起させる放電領域12になる。部分反射鏡6と全反射鏡7との間で光を往復させて増幅させる際(光をレーザ発振する際)には、2つの電極2,3の間に高周波電圧をY軸方向に印加することにより、無声放電を発生させ、レーザガスを励起させる。放電方向は、Y軸方向と一致する。
【0018】
送風機4は、筐体1の内部に設置されている。送風機4は、Y軸方向において電極3に対して放電領域12とは反対側に設置されている。送風機4は、
図2の矢印A,Bに示すように、レーザガスを循環させる役割を果たす。図示の例では、送風機4は、Z軸周りの回転方向にレーザガスを循環させている。具体的に、レーザガスは、送風機4から放電領域12に向かって矢印Aに示す方向に流れた後、放電領域12をX軸方向のマイナス向きに流れる。放電領域12を通過したレーザガスは、熱交換器5に向かって矢印Bに示す方向に流れた後、熱交換器5を通過して冷却される。熱交換器5で冷却されたレーザガスは、送風機4に流入して、再度送風機4から放電領域12に向かって矢印Aに示す方向に流れる。放電領域12におけるガス流方向は、X軸方向と一致する。ガス流方向は、矢印A,Bに示す方向とは逆向きであってもよい。このようなガス流方向の場合、レーザガスは、放電領域12をX軸方向のプラス向きに流れる。送風機4の数は、本実施の形態では2つであるが、1つまたは3つ以上の複数でもよい。2つの送風機4は、Z軸方向に互いに間隔を空けて配置されている。
【0019】
熱交換器5は、筐体1の内部に設置されている。熱交換器5は、Y軸方向において電極3に対して放電領域12とは反対側に設置されている。熱交換器5は、送風機4に隣接して配置されている。熱交換器5は、放電領域12を通過したレーザガスを冷却して、筐体1の内部の温度上昇を抑制する役割を果たす。
【0020】
図3に示すように、共振器10は、部分反射鏡6と全反射鏡7とで構成されている。ミラーである部分反射鏡6は、共振器10の一端を構成する。部分反射鏡6は、電極2,3のZ軸方向の一端から離れて配置されている。部分反射鏡6は、内面6aと、外面6bとを有している。部分反射鏡6は、開口1a内に配置されている。部分反射鏡6の内面6a側は、レーザガス雰囲気中となり、部分反射鏡6の外面6b側は、大気中となっている。つまり、開口1aにおいては、部分反射鏡6によって筐体1の内部と外部とが隔てられている。なお、
図3の外面6bから飛び出ている破線は、外面6bの延長線を示している。部分反射鏡6の詳細については後記する。
【0021】
全反射鏡7は、共振器10の他端を構成する。部分反射鏡6と全反射鏡7とは、Z軸方向に互いに離れて配置されている。部分反射鏡6と全反射鏡7とは、Z軸方向において電極2,3を間において配置されている。全反射鏡7は、電極2,3のZ軸方向の他端から離れて配置されている。全反射鏡7は、部分反射鏡6に向かって光を全反射させる反射面7aを有している。反射面7aは、本実施の形態では平面である。
【0022】
共振器10の光軸10aは、部分反射鏡6の内面6aの曲率中心O1と全反射鏡7の反射面7aの曲率中心とを通る線上に位置する。ただし、全反射鏡7の反射面7aが平面の場合は、共振器10の光軸10aは、部分反射鏡6の内面6aの曲率中心O1を通り全反射鏡7に垂直に入射する線上、つまり全反射鏡7の垂線上に位置する。なお、線上とは、折り返しミラーを介して光学的に光を折り曲げたときの光軸上を含む。部分反射鏡6の内面6aの曲率中心O1は、共振器10の光軸10a上に位置する。部分反射鏡6の内面6aと全反射鏡7の反射面7aとの間で共振器10の光軸10aに沿ったレーザビームr1が発生させられる。具体的には、光が放電領域12の励起されたレーザガス中を通って部分反射鏡6の内面6aと全反射鏡7の反射面7aとの間で往復することにより増幅され、増幅された光(レーザビームr1)の一部が部分反射鏡6を透過してレーザ装置200の外部へ出射される。共振器10の光軸10aに沿った光は、放電領域12をZ軸方向に伝搬する。本実施の形態のレーザ装置200は、光の伝搬方向(Z軸方向)と放電領域12におけるガス流方向(X軸方向)と放電方向(Y軸方向)とが互いに直交する三軸直交型のガスレーザ装置である。なお、
図3には、部分反射鏡6の外面6bと全反射鏡7の反射面7aとの間で往復することにより増幅された光の光軸11も図示している。
【0023】
2つのアパーチャ8,9は、筐体1の内部に設置されている。アパーチャ8,9には、Z軸方向に貫通する開口部8a,9aが形成されている。一方のアパーチャ8は、Z軸方向において部分反射鏡6と電極2,3との間に設置されている。アパーチャ8の開口部8aの中心が共振器10の光軸10a上に位置するようにアパーチャ8が設置されている。他方のアパーチャ9は、Z軸方向において全反射鏡7と電極2,3との間に設置されている。アパーチャ9の開口部9aの中心が共振器10の光軸10a上に位置するようにアパーチャ9が設置されている。
【0024】
次に、
図3および
図4を参照して、部分反射鏡6について詳しく説明する。
図4は、
図3の部分拡大図であって、実施の形態1にかかるレーザ装置200の部分反射鏡6を示した構成図である。
【0025】
図3に示すように、内面6aは、本実施の形態ではZ軸方向において電極2,3から遠ざかる方に向かって凹状となる凹面である。内面6aは、特定の波長に対する部分反射コーティングが施されているか、または、部分反射コーティングが施されていない面である。
図4に示すように、内面6aは、共振器10の光軸10a上に位置する曲率中心O1を有する曲面である。内面6aは、曲率中心O1を中心とする曲率半径R
1の曲面である。内面6aの形状は、例えば、球冠状であるが、適宜変更してもよい。内面6aの形状は、同一の形状かつ同一の大きさの円弧がY軸方向の全長に亘って連続する形状であってもよい。
【0026】
図3に示すように、外面6bは、内面6aとは反対を向く面であって、特定の波長に対する全透過コーティングが施されている面である。外面6bは、本実施の形態ではZ軸方向において電極2,3から遠ざかる方に向かって凸状となる凸面である。
図4に示すように、外面6bは、共振器10の光軸10a上からX軸方向にずれた曲率中心O2を有する曲面である。外面6bは、曲率中心O2を中心とする曲率半径R
2の曲面である。外面6bの曲率中心O2は、共振器10の光軸10aおよび内面6aの曲率中心O1に対してX軸方向に偏芯している。外面6bの形状は、例えば、球冠状であるが、適宜変更してもよい。外面6bの形状は、シリンドリカル面などの一次元に曲率が付いた形状でもよい。外面6bの形状は、同一の形状かつ同一の大きさの円弧がY軸方向の全長に亘って連続する形状であってもよい。
【0027】
外面6bの曲率中心O2は、本実施の形態では共振器10の光軸10a上からX軸方向にずれた位置にあるが、共振器10の光軸10aと交差する方向にずれた位置にあればよい。例えば、外面6bの曲率中心O2は、共振器10の光軸10a上からY軸方向にずれた位置にあってもよい。外面6bの曲率中心O2は、内面6aでの光の屈折を考慮した位置、すなわち内面6aで屈折した光が通過する位置にある。共振器10の光軸10aに対して外面6bを偏芯させることにより、共振器10の光軸10a上からずれた位置に外面6bの曲率中心O2を設けることができる。なお、光軸10aに沿う方向の部分反射鏡6の厚み(図示の例ではZ軸方向の寸法)を部分的に変化させることにより、共振器10の光軸10a上からずれた位置に外面6bの曲率中心O2を設けてもよい。
図3に示すように、内面6aの曲率中心O1および外面6bの曲率中心O2は、共振器10の外に位置してもよい。
【0028】
部分反射鏡6の外面6bの曲率中心O2は、以下のように計算できる。ここでは、
図4に示される部分反射鏡6の内面6aの曲率半径をR
1、部分反射鏡6の外面6bの曲率半径をR
2とする。部分反射鏡6の光軸10a上の厚みをd、部分反射鏡6の外面6bの光軸10aからの偏芯量をΔ
2とする。偏芯量Δ
2は、共振器10の光軸10aと平行な光r5が部分反射鏡6の外面6bと垂直に交わる位置と共振器10の光軸10aとのX軸方向に沿った距離である。部分反射鏡6の屈折率は、n
2である。レーザガスの屈折率n
1は、概ね1である。光が、ある位置(例えば
図4の符号O2の位置)から紙面右方向に距離Lだけ伝搬し、部分反射鏡6の内面6aで屈折および透過し、その後外面6bに到達し、外面6bで反射した光が再度内面6aで屈折および透過し、距離Lだけ紙面左方向に伝搬して同じ位置(
図4の符号O2の位置)に戻ってくるときの条件は、以下の数式(1)を用いて計算することができる。Xは、光の位置であり、X′は、光の傾きである。数式(1)のe,fは、以下の数式(2)を用いて計算することができる。
【0029】
【0030】
【0031】
X′によらずXが一定になる条件は、これら2つの数式(1),(2)を連立して解を求めると、以下の数式(3),(4)となる。これら2つの数式(3),(4)より部分反射鏡6の外面6bの曲率半径R2の曲率中心O2が求められる。ただし、ここでは部分反射鏡6の内面6aへの光の入射角が小さい場合の近軸近似としている。外面6bの曲率中心O2は、内面6aから距離Lだけ離れた位置、かつ、光軸10aから距離Xだけ離れた位置になる。
【0032】
【0033】
【0034】
例えば、
図3に示すように全反射鏡7の反射面7aが平面である場合、光が部分反射鏡6の外面6bで反射することによりレーザ発振する際の光の光軸11は、部分反射鏡6の内面6aで反射することによりレーザ発振する際の光の光軸である共振器10の光軸10aと平行になり、共振器10の光軸10aから距離Xだけ離れたところに存在する。したがって、例えば、共振器10内にあるアパーチャ8またはアパーチャ9で部分反射鏡6の外面6bで反射する光を遮れば、部分反射鏡6の外面6bで反射する光はレーザ発振しない。これが成立する条件は、アパーチャ8,9の開口部8a,9aの半径をR
aとすると、以下の数式(5)となる。
【0035】
【0036】
また、距離X≠0の場合は、光が部分反射鏡6の外面6bで反射することによりレーザ発振しても、部分反射鏡6の内面6aで反射することによりレーザ発振した光とは異なる方向に伝搬する。この状態を
図5に示す。
図5は、実施の形態1にかかるレーザ装置200の共振器10の作用を説明するための図である。
図5には、光が部分反射鏡6の内面6aで反射することによりレーザ発振して部分反射鏡6を透過したレーザビームr1と、光が部分反射鏡6の外面6bで反射することによりレーザ発振して部分反射鏡6を透過したレーザビームr2とを図示している。
【0037】
レーザ装置200の後にアパーチャなどの空間フィルタ13を設置することにより、レーザビームr2のみを遮断することができる。つまり、距離X≠0にすれば、レーザ装置200の後に設置したレーザ加工機300内(
図1参照)でレーザビームr2のみをフィルタリングすることにより、レーザビームr2が加工対象物400(
図1参照)に到達することがなく、レーザビームr2を起因とする加工不具合を抑制することができる。図示の例では、空間フィルタ13のみが設置されているが、空間フィルタ13の前に図示しないレンズ、球面ミラーなどを設置してレーザビームr1またはレーザビームr2を集光させて、2つのレーザビームr1,r2の分離を促進するようにしてもよい。距離X≠0となる条件は、以下の数式(6)かつ数式(7)となる。
【0038】
【0039】
【0040】
また、距離Xの絶対値が極大となり、最も効果が大きくなる条件は、以下の数式(8)となる。
【0041】
【0042】
ここで、曲率半径R
1と、曲率半径R
2と、距離Xと、偏芯量Δ
2との関係を
図6に示す。
図6は、実施の形態1にかかるレーザ装置200における部分反射鏡6の内面6aの曲率半径R
1と、部分反射鏡6の外面6bの曲率半径R
2と、部分反射鏡6の外面6bで反射することによりレーザ発振する光の光軸11と共振器10の光軸10aとの距離Xと、部分反射鏡6の外面6bの光軸10aからの偏芯量Δ
2との関係を示した図である。例えば、R
1/R
2が約0.4から1.2のとき、X/Δ
2>2となる。つまり、上記した数式(5)に示すように偏芯量Δ
2をアパーチャ8,9の開口部8a,9aの半径Raの半分以上にすれば、部分反射鏡6の外面6bで反射した光がアパーチャ8,9で遮られてレーザ発振しないことになる。したがって、部分反射鏡6の外面6bで反射した光のレーザ発振を抑制する上で、R
1/R
2が約0.4から1.2までの範囲が最も効果が大きい。
【0043】
次に、本実施の形態にかかるレーザ装置200の効果について説明する。
【0044】
はじめに、
図7を参照して、従来のレーザ装置500について説明する。
図7は、外面520bの曲率中心O5が共振器560の光軸560a上に位置する場合のレーザ装置500の一例を示した構成図である。レーザ装置500は、放電領域510と、部分反射鏡520と、全反射鏡530と、ベンドミラー540と、リターダ550とを備えている。部分反射鏡520と全反射鏡530とは、放電領域510を間に置いて配置されている。ベンドミラー540は、放電領域510と全反射鏡530との間に設置されている。ベンドミラー540は、光路(光軸560a)を90°に折り曲げるための金属製のミラーである。リターダ550は、部分反射鏡520に対して放電領域510とは反対側に設置されている。従来のレーザ装置500のように、外面520bの曲率中心O5が、部分反射鏡520の内面520aの曲率中心O4を通る共振器560の光軸560a上にあると、部分反射鏡520の外面520bで反射した光がレーザ発振することによって寄生発振光が発生し、寄生発振光は、レーザビームの光軸(共振器560の光軸560a)と概ね同じ方向に射出されるという問題がある。また、従来のレーザ装置500のように、外面520bの曲率中心O5が、共振器560の光軸560a上にあると、部分反射鏡520の外面520bと内面520aとが概ね同じ向きになり、レーザ装置500から出射されるレーザビームが部分反射鏡520の外面520bおよび内面520aで反射され発生した迷光は、レーザビームの光軸(共振器560の光軸560a)と概ね同じ方向に射出されるという問題がある。このため、加工対象物の加工に用いられるレーザビームと、加工対象物の加工に不要な寄生発振光、迷光などとを分離することが困難となり、寄生発振光、迷光などがレーザ加工機へ入射して加工対象物に照射されることによる加工不具合を発生させる可能性がある。
【0045】
この点、本実施の形態では、
図3に示すように、部分反射鏡6の外面6bは、共振器10の光軸10a上からずれた曲率中心O2を有する曲面であることにより、部分反射鏡6の外面6bで反射した光は、全反射鏡7との間で往復せずにレーザ発振しないか、または、全反射鏡7との間で往復してレーザ発振したとしても共振器10の光軸10aとは異なる方向に伝搬する。つまり、寄生発振光が発生しないか、または、寄生発振光が発生したとしても共振器10の光軸10aとは異なる方向に伝搬する。したがって、本実施の形態のレーザ装置200をレーザ加工装置100に搭載しても、寄生発振光が加工対象物400に照射されないため、寄生発振光が加工対象物400に照射されることによる加工不具合の発生を抑制することができる。
【0046】
また、本実施の形態では、部分反射鏡6の内面6aは、共振器10の光軸10a上に位置する曲率中心O1を有する曲面であり、外面6bは、共振器10の光軸10a上からずれた曲率中心O2を有する曲面であることにより、部分反射鏡6の内面6aと外面6bとで角度がつくため、レーザ装置200から出射されるレーザビームr1が部分反射鏡6の外面6bおよび内面6aで反射され発生した迷光は、レーザビームr1の光軸(共振器10の光軸10a)に対して角度を持って異なる方向に射出される。このため、加工対象物400の加工に用いられるレーザビームr1と、加工対象物400の加工に不要な迷光とを分離することが可能となる。したがって、レーザ装置200の後の光路中にアパーチャなどを設置して迷光のみを遮ることにより、迷光が加工対象物400に到達することがなく、迷光が加工対象物400に照射されることによる加工不具合の発生を抑制することができる。
【0047】
図1に示すように、レーザ装置200から出射されたレーザビームr1がレーザ加工機300の図示しない光学部品に入射する際に、レーザビームr1の一部が反射され、反射光r3としてレーザ装置200に戻ってくる場合がある。このとき、
図7に示すように、部分反射鏡520の外面520bの曲率中心O5と内面520aの曲率中心O4とが同じ光軸560a上にあると、
図1に示されるレーザ加工機300から戻ってきた反射光r3が
図7に示される部分反射鏡520の外面520bに照射され、その照射された反射光r3の一部が再度反射してレーザ加工機300に入射する。そして、この反射光r3が加工対象物400に照射されると、加工不具合が発生することがある。この点、本実施の形態では、
図3に示すように、部分反射鏡6の外面6bは、共振器10の光軸10a上からずれた曲率中心O2を有する曲面であることにより、
図1に示されるレーザ加工機300からの反射光r3が部分反射鏡6の外面6bに照射され、その照射された反射光r3の一部が再度反射した反射光r4はレーザビームr1の光軸(共振器10の光軸10a)上から外れた方向に伝搬する。つまり、反射光r4が加工対象物400に照射されることはない。これにより、反射光r4が加工対象物400に照射されることによる加工不具合の発生を抑制することができる。
【0048】
また、本実施の形態では、
図1に示すように、部分反射鏡6の外面6bが曲面であることにより、レーザ装置200から出射されるレーザビームr1の発散角を所定の値に設定できるため、レーザ装置200の後に設置されるレーザ加工機300に入射するレーザビームr1の径を適切な大きさにすることができる。例えば、レーザ装置200からコリメートされた(つまり発散角が0の)レーザビームr1を出射させるようにすると、レーザ加工機300の光学部品の設計が簡単になる。
【0049】
部分反射鏡6の外面6bが平面である場合に、レーザ加工機300からの反射光r3が部分反射鏡6の外面6bに垂直に入射すると、加工対象物400に向かってそのまま反射することがある。この点、本実施の形態のように、部分反射鏡6の外面6bが曲面であると、部分反射鏡6の外面6bで反射した反射光r4は、発散しながら加工対象物400に向かって伝搬するため、加工対象物400に到達したときには減衰される。これにより、反射光r4が加工対象物400に照射されることによる加工不具合の発生を抑制することができる。
【0050】
次に、実施の形態1にかかるレーザ装置200の変形例について説明する。
【0051】
図3に示される全反射鏡7の反射面7aは、本実施の形態では平面であったが、曲面であってもよい。例えば、全反射鏡7の反射面7aは、Z軸方向において電極2,3から遠ざかる方に向かって凹状となる凹面であってもよい。
【0052】
実施の形態2.
次に、
図8および
図9を参照して、実施の形態2にかかるレーザ装置200Aについて説明する。
図8は、実施の形態2にかかるレーザ装置200Aを示した斜視図である。
図9は、実施の形態2にかかるレーザ装置200Aの共振器10Aを示した構成図である。
図9は、実施の形態2にかかるレーザ装置200Aの共振器10AをY軸方向のプラス向きからマイナス向きに見た図である。
図9では、
図8で省略したアパーチャ8,9が図示されている。本実施の形態では、レーザ装置200Aが折り返しミラー14をさらに備える点が上記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態2では、上記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
図8および
図9に示すように、共振器10Aは、部分反射鏡6と全反射鏡7と折り返しミラー14とで構成されている。折り返しミラー14は、部分反射鏡6と全反射鏡7との間において共振器10Aの光軸10a上に配置されている。
図9に示すように、折り返しミラー14と部分反射鏡6とは、Z軸方向に互いに間隔を空けて配置されている。折り返しミラー14と全反射鏡7とは、X軸方向に互いに間隔を空けて配置されている。部分反射鏡6と全反射鏡7とは、X軸方向かつZ軸方向に互いに間隔を空けて配置されている。折り返しミラー14は、光路(光軸10a)を90°に折り曲げるための金属製のミラーである。折り返しミラー14の枚数は、本実施の形態では1枚であるが、2枚以上でもよい。折り返しミラー14は、部分反射鏡6および全反射鏡7に向かって光を全反射させる反射面14aを有している。反射面14aは、本実施の形態では平面である。他方のアパーチャ9は、Z軸方向において折り返しミラー14と電極2,3との間に設置されている。
【0054】
次に、本実施の形態にかかるレーザ装置200Aの効果について説明する。
【0055】
本実施の形態では、レーザ装置200Aは、部分反射鏡6と全反射鏡7との間において共振器10Aの光軸10a上に配置される折り返しミラー14を備えている。このようにしても、部分反射鏡6の外面6bは、共振器10Aの光軸10a上からずれた曲率中心O2を有する曲面であることにより、上記した実施の形態1と同じ効果を奏することができる。
【0056】
次に、実施の形態2にかかるレーザ装置200Aの変形例について説明する。
【0057】
図9に示される外面6bの曲率中心O2は、本実施の形態では共振器10Aの光軸10a上からX軸方向にずれた位置にあるが、共振器10Aの光軸10aと交差する方向にずれた位置にあればよい。例えば、部分反射鏡6の外面6bの曲率中心O2は、共振器10Aの光軸10a上からY軸方向にずれた位置にあってもよい。なお、光軸10aに沿う方向の部分反射鏡6の厚み(図示の例ではZ軸方向の寸法)を部分的に変化させることにより、共振器10の光軸10a上からずれた位置に外面6bの曲率中心O2を設けてもよい。
【0058】
図9に示される全反射鏡7の反射面7aは、本実施の形態では平面であったが、曲面であってもよい。例えば、全反射鏡7の反射面7aは、X軸方向において折り返しミラー14から遠ざかる方に向かって凹状となる凹面であってもよい。
【0059】
図9に示される折り返しミラー14の反射面14aは、本実施の形態では平面であったが、曲面であってもよい。例えば、折り返しミラー14の反射面14aは、電極2,3から遠ざかる方に向かって凹状となる凹面であってもよい。
【0060】
実施の形態3.
次に、
図10および
図11を参照して、実施の形態3にかかるレーザ装置200Bについて説明する。
図10は、実施の形態3にかかるレーザ装置200Bを示した斜視図である。
図11は、実施の形態3にかかるレーザ装置200Bの共振器10Bを示した構成図である。
図11は、実施の形態3にかかるレーザ装置200Bの共振器10BをY軸方向のプラス向きからマイナス向きに見た図である。
図11では、
図10で省略したアパーチャ8,9が図示されている。本実施の形態では、全反射鏡7が1次元の再帰反射鏡である点が上記した実施の形態2と相違する。なお、実施の形態3では、上記した実施の形態1,2と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
図10および
図11に示すように、全反射鏡7は、相互に直交する2枚の反射面7aを有する1次元の再帰反射鏡である。2枚の反射面7aは、Y軸方向に平行である。2枚の反射面7aの境界線7bの延伸方向は、Y軸方向に平行である。
図11に示すように、外面6bの曲率中心O2は、共振器10Bの光軸10a上からずれた位置にある。なお、全反射鏡7として1次元の再帰反射鏡を用いているため、部分反射鏡6の外面6bで反射することによりレーザ発振する光の光軸11は、全反射鏡7の境界線7bを通る。
【0062】
ここで、本実施の形態にかかるレーザ装置200Bの共振器長をLrとし、部分反射鏡6の外面6bで反射することによりレーザ発振する光の光軸11と共振器10Bの光軸10aとのX軸方向に沿った距離をdsとすると、距離dsは、以下の数式(9)および数式(10)を用いて計算することができる。なお、共振器長Lrは、部分反射鏡6の内面6aから全反射鏡7の反射面7aまでの長さである。
【0063】
【0064】
【0065】
これら2つの数式(9),(10)より部分反射鏡6の近くのアパーチャ8の開口部8aの半径Raを、以下の数式(11)を満たすように設定すれば、部分反射鏡6の外面6bで反射した光のレーザ発振は抑制される。
【0066】
【0067】
次に、本実施の形態にかかるレーザ装置200Bの効果について説明する。
【0068】
本実施の形態では、レーザ装置200Bは、1次元の再帰反射鏡であり、共振器10Bの他端を構成する全反射鏡7を備え、部分反射鏡6の内面6aと全反射鏡7との間で共振器10Bの光軸10aに沿ったレーザビームr1が発生させられる。このようにしても、部分反射鏡6の外面6bは、共振器10Bの光軸10a上からずれた曲率中心O2を有する曲面であることにより、上記した実施の形態1と同じ効果を奏することができる。すなわち、光が部分反射鏡6の外面6bで反射することによりレーザ発振しても、部分反射鏡6の内面6aで反射することによりレーザ発振した光とは異なる方向に伝搬する。したがって、レーザ装置200Bの後に設置したレーザ加工機300内(
図1参照)でレーザビームr2(
図5参照)のみをフィルタリングすることにより、レーザビームr2が加工対象物400(
図1参照)に到達することがなく、レーザビームr2を起因とする加工不具合を抑制することができる。
【0069】
次に、実施の形態3にかかるレーザ装置200Bの変形例について説明する。
【0070】
図11に示される外面6bの曲率中心O2は、本実施の形態では共振器10Bの光軸10a上からX軸方向にずれた位置にあるが、共振器10Bの光軸10aと交差する方向にずれた位置にあればよい。例えば、部分反射鏡6の外面6bの曲率中心O2は、共振器10Bの光軸10a上からY軸方向にずれた位置にあってもよい。当該構成の場合は、実施の形態1と同様に上記した数式(5)を満たす条件で、部分反射鏡6の外面6bで反射した光のレーザ発振は抑制される。一方で、本実施の形態では、全反射鏡7が1次元(X軸方向)の再帰反射鏡であるため、部分反射鏡6の外面6bの曲率中心O2が共振器10Bの光軸10a上からX軸方向にずれた位置にある場合には、上記した数式(11)を満たす条件で、部分反射鏡6の外面6bで反射した光のレーザ発振は抑制される。つまり、数式(5)の条件と数式(11)の条件とを比較して、共振器10Bの光軸10a上から値の大きくなる方向(X軸方向またはY軸方向)へ外面6bの曲率中心O2をずらした方が、部分反射鏡6の外面6bで反射した光のレーザ発振を抑制する効果が大きくなる。また、数式(5)の条件と数式(11)の条件とのいずれかを満たすように、部分反射鏡6の曲率半径R
1,R
2をX軸方向とY軸方向とで変えてもよい。例えば、部分反射鏡6の外面6bは、トロイダル面またはシリンドリカル面であってもよい。なお、光軸10aに沿う方向の部分反射鏡6の厚み(図示の例ではZ軸方向の寸法)を部分的に変化させることにより、共振器10の光軸10a上からずれた位置に外面6bの曲率中心O2を設けてもよい。
【0071】
実施の形態4.
次に、
図12から
図15を参照して、実施の形態4にかかるレーザ装置200Cについて説明する。
図12は、実施の形態4にかかるレーザ装置200Cを備えるレーザ加工装置100Cを示した構成図である。
図13は、実施の形態4にかかるレーザ装置200Cを示した斜視図である。
図14は、
図12の部分拡大図であって、実施の形態4にかかるレーザ装置200Cの共振器10Cを示した構成図である。
図15は、実施の形態4にかかるレーザ装置200Cの作用を説明するための図である。
図14は、実施の形態4にかかるレーザ装置200Cの共振器10CをY軸方向のプラス向きからマイナス向きに見た図である。
図12,14,15では、
図13で省略したアパーチャ8,9が図示されている。本実施の形態では、部分反射鏡6の材料がダイヤモンドである点と全反射鏡7が凹面鏡である点とが上記した実施の形態2と相違する。なお、実施の形態4では、上記した実施の形態1から3と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。仮に、
図12のY軸方向を上下方向としたとき、
図12のレーザ装置200Cは上下方向に沿って見たときの状態であるが、
図12のレーザ加工機300は上下方向と直交する方向に沿って見たときの状態であり、実際にはドットハッチングで表したレーザビームr1および加工対象物400がY軸方向のマイナス向きに位置するようにレーザ加工機300が配置される。
図12では、説明の便宜上、レーザ加工機300を実際の状態から90度回転させて図示している。
図12に示された各方向は、レーザ装置200Cとレーザ加工機300とを説明する上で便宜上設定したものであり、レーザ装置200Cとレーザ加工機300とが使用される姿勢を特定するものではない。
【0072】
図12から
図15に示される部分反射鏡6の材料は、ダイヤモンドである。部分反射鏡6は、例えば、厚さが1mm程度の薄いダイヤモンドで形成されている。部分反射鏡6の材料は、本実施の形態ではダイヤモンドのみを含んでいるが、ダイヤモンドに加えて別の物質も含んでいてもよい。別の物質としては、例えば、セレン化亜鉛、ゲルマニウム、ケイ素、硫化亜鉛、カルコゲナイドガラスが挙げられる。
図14に示される部分反射鏡6の内面6a側は、レーザガス雰囲気中となり、部分反射鏡6の外面6b側は、大気中となっている。つまり、開口1aにおいては、部分反射鏡6によって筐体1の内部と外部とが隔てられている。
【0073】
レーザガス圧は、大気圧より低い圧力に設定されている。部分反射鏡6が薄いダイヤモンドで形成されているため、レーザ発振時には、レーザガス圧と大気圧との圧力差により部分反射鏡6に圧力ひずみが生じる。これにより、部分反射鏡6の形状は、レーザ発振が開始される前とレーザ発振時とで変化する。レーザ発振が開始される前とは、例えば、筐体1への部分反射鏡6の取り付け時、筐体1へ部分反射鏡6を取り付ける前である。レーザ発振が開始される前における部分反射鏡6の内面6aおよび外面6bは、平面である。
【0074】
レーザ発振時における部分反射鏡6の内面6aは、共振器10Cの光軸10a上に位置する曲率中心O1を有する曲面となる。内面6aは、Z軸方向において電極2,3に近付く方に向かって凸状となる凸面となる。レーザ発振時における部分反射鏡6の外面6bは、共振器10Cの光軸10a上からずれた曲率中心O2を有する曲面となる。外面6bは、Z軸方向において電極2,3に近付く方に向かって凹状となる凹面となる。内面6aの曲率中心O1および外面6bの曲率中心O2は、外面6bに対して内面6aとは反対側に位置している。例えば、レーザガス圧が200Torr、ダイヤモンドの直径が25.4mmの場合、圧力ひずみによる内面6aおよび外面6bの曲率半径は55m程度になる。なお、光軸10aに沿う方向の部分反射鏡6の厚み(図示の例ではZ軸方向の寸法)を部分的に変化させることにより、共振器10Cの光軸10a上からずれた位置に外面6bの曲率中心O2を設けてもよい。
【0075】
全反射鏡7は、凹面となる反射面7aを有する凹面鏡である。反射面7aは、X軸方向において折り返しミラー14から遠ざかる方に向かって凹状となる凹面である。折り返しミラー14の反射面14aは、本実施の形態では平面であるが、電極2,3から遠ざかる方に向かって凹状となる凹面であってもよい。すなわち、折り返しミラー14は、凹面鏡であってもよい。例えば、折り返しミラー14の反射面14aをトロイダル面またはシリンドリカル面にすれば、レーザビームr1(
図12参照)の真円度を適切な値に設定することができる。また、折り返しミラー14の反射面14aを凹面にした場合には、全反射鏡7の反射面7aを平面にしてもよい。すなわち、全反射鏡7の反射面7aまたは折り返しミラー14の反射面14aを凹面にすればよい。本実施の形態では、部分反射鏡6の内面6aが凸面となるため、全反射鏡7の反射面7aまたは折り返しミラー14の反射面14aに曲率を持たせることにより、部分反射鏡6と全反射鏡7と折り返しミラー14とで安定型の共振器10Cが構成される。
【0076】
次に、本実施の形態にかかるレーザ装置200Cの効果について説明する。
【0077】
本実施の形態では、
図14に示すように、部分反射鏡6の外面6bは、共振器10Cの光軸10a上からずれた曲率中心O2を有する曲面であることにより、上記した実施の形態1と同じ効果を奏することができる。すなわち、光が部分反射鏡6の外面6bで反射することによりレーザ発振してレーザビームr2が発生したとしても、部分反射鏡6の内面6aで反射することによりレーザ発振して発生したレーザビームr1とは異なる方向に伝搬する。したがって、レーザ装置200Cの後に設置したレーザ加工機300内(
図12参照)でレーザビームr2のみをフィルタリングすることにより、レーザビームr2が加工対象物400に到達することがなく、レーザビームr2を起因とする加工不具合を抑制することができる。
【0078】
図12に示すように、レーザ装置200Cから出射されたレーザビームr1がレーザ加工機300の図示しない光学部品に入射する際に、レーザビームr1の一部が反射され、反射光r3としてレーザ装置200に戻ってくる場合がある。このとき、本実施の形態では、
図14に示すように、部分反射鏡6の外面6bは、共振器10Cの光軸10a上からずれた曲率中心O2を有する曲面であることにより、
図12に示されるレーザ加工機300からの反射光r3が部分反射鏡6の外面6bに照射され、その照射された反射光r3の一部が再度反射した反射光r4はレーザビームr1の光軸(共振器10Cの光軸10a)から外れた方向に伝搬する。つまり、反射光r4が加工対象物400に照射されることはない。これにより、反射光r4が加工対象物400に照射されることによる加工不具合の発生を抑制することができる。特に、本実施の形態では、
図15に示すように、部分反射鏡6の外面6bが凹面であることにより、外面6bで反射した後の反射光r4は集光されるため、実施の形態1よりも限定した領域に反射光r4が照射される。したがって、反射光r4の進行方向の先にダンパー15などを設置することにより、反射光r4を確実に遮断できる。
【0079】
以上説明したとおり、本開示の範囲は、レーザ発振が開始される前から部分反射鏡6の外面6bが共振器10Cの光軸10a上からずれた曲率中心O2を有する曲面となる場合に限定されるものではない。本開示の範囲には、本実施の形態のように、レーザ発振時に部分反射鏡6の変形、曲率の変化などを引き起こすことにより、部分反射鏡6の外面6bが共振器10Cの光軸10a上からずれた曲率中心O2を有する曲面となる場合も含まれる。また、レーザ発振時に部分反射鏡6の変形、曲率の変化などを引き起こす要因としては、上記したレーザガス圧と大気圧との圧力差の他に、部分反射鏡6の内面6a、外面6bなどに加わる物理的な力、部分反射鏡6の内面6a側と外面6bとの温度差などが挙げられる。
【0080】
実施の形態5.
次に、
図16および
図17を参照して、実施の形態5にかかるレーザ装置200Dについて説明する。
図16は、実施の形態5にかかるレーザ装置200Dを示した斜視図である。
図17は、実施の形態5にかかるレーザ装置200Dの共振器10Dを示した構成図である。
図17は、実施の形態5にかかるレーザ装置200Dの共振器10DをY軸方向のプラス向きからマイナス向きに見た図である。
図17では、
図16で省略したアパーチャ8,9が図示されている。本実施の形態では、部分反射鏡6の材料がダイヤモンドである点と全反射鏡7が1次元の再帰反射鏡である点と折り返しミラー14が凹面鏡である点とが上記した実施の形態2と相違する。なお、実施の形態5では、上記した実施の形態1から4と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0081】
図16および
図17に示すように、部分反射鏡6の構成は、上記した実施の形態4と同一である。全反射鏡7の構成は、上記した実施の形態3と同一である。
図17に示すように、折り返しミラー14は、凹面となる反射面14aを有する凹面鏡である。折り返しミラー14の反射面14aは、電極2,3から遠ざかる方に向かって凹状となる凹面である。部分反射鏡6の内面6aが凸面となるため、折り返しミラー14の反射面14aに曲率を持たせることにより、部分反射鏡6と全反射鏡7と折り返しミラー14とで安定型の共振器10Dが構成される。なお、光軸10aに沿う方向の部分反射鏡6の厚み(図示の例ではZ軸方向の寸法)を部分的に変化させることにより、共振器10Dの光軸10a上からずれた位置に外面6bの曲率中心O2を設けてもよい。
【0082】
次に、本実施の形態にかかるレーザ装置200Dの効果について説明する。
【0083】
本実施の形態では、
図17に示すように、部分反射鏡6の外面6bは、共振器10Dの光軸10a上からずれた曲率中心O2を有する曲面であることにより、上記した実施の形態1と同じ効果を奏することができる。すなわち、光が部分反射鏡6の外面6bで反射することによりレーザ発振してレーザビームr2が発生したとしても、部分反射鏡6の内面6aで反射することによりレーザ発振して発生したレーザビームr1とは異なる方向に伝搬する。したがって、上記した実施の形態4と同じように、レーザ装置200Dの後に設置したレーザ加工機300内(
図12参照)でレーザビームr2のみをフィルタリングすることにより、レーザビームr2が加工対象物400(
図12参照)に到達することがなく、レーザビームr2を起因とする加工不具合を抑制することができる。また、本実施の形態では、上記した実施の形態4と同じように、反射光r4(
図12参照)が加工対象物400に照射されることによる加工不具合の発生を抑制することができる。また、本実施の形態では、部分反射鏡6の外面6bが凹面であることにより、上記した実施の形態4と同じように、外面6bで反射した後の反射光r4は集光されるため、実施の形態1よりも限定した領域に反射光r4が照射される。したがって、反射光r4の進行方向の先にダンパー15(
図15参照)などを設置することにより、反射光r4を確実に遮断できる。
【0084】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0085】
1,300a 筐体、1a 開口、2,3 電極、4 送風機、5 熱交換器、6,520 部分反射鏡、6a,520a 内面、6b,520b 外面、7,530 全反射鏡、7a,14a 反射面、7b 境界線、8,9 アパーチャ、8a,9a 開口部、10,10A,10B,10C,10D,560 共振器、10a,11,560a 光軸、12,510 放電領域、13 空間フィルタ、14 折り返しミラー、15 ダンパー、100,100C レーザ加工装置、200,200A,200B,200C,200D,500 レーザ装置、300 レーザ加工機、400 加工対象物、540 ベンドミラー、550 リターダ、O1,O2,O4,O5 曲率中心。
【要約】
レーザ装置(200)は、共振器(10)の一端を構成する部分反射鏡(6)として用いられるミラーを備えている。ミラーは、特定の波長に対する部分反射コーティングが施されているか、または、部分反射コーティングが施されていない内面(6a)と、内面(6a)とは反対を向く面であって、特定の波長に対する全透過コーティングが施されている外面(6b)と、を有している。内面(6a)は、共振器(10)の光軸(10a)上に位置する曲率中心(O1)を有する曲面である。外面(6b)は、共振器(10)の光軸(10a)上からずれた曲率中心(O2)を有する曲面である。