(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/72 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
H02M7/72
(21)【出願番号】P 2024564721
(86)(22)【出願日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2024025604
【審査請求日】2024-10-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊戸 靖則
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-29510(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142361(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/010575(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列接続された複数の変換器セルを含む電力変換器と、
前記電力変換器を制御する制御装置と、
前記制御装置と前記複数の変換器セルとの間の通信を中継する複数の中継装置とを備え、
前記複数の中継装置の各々は、前記複数の変換器セルのうちの1以上の変換器セルと接続されており、
前記制御装置は、リング状のネットワークを介して、通信フレームを前記複数の中継装置に送信し、
前記複数の中継装置の各々は、
前記制御装置から前記ネットワークに送信された前記通信フレームが自中継装置に到達するまでに経由した中継装置の数に関する第1情報と、前記第1情報が示す数の最大値を示す第2情報と、前記複数の変換器セルを制御するための制御指令とを含む前記通信フレームを受信し、
前記複数の中継装置から前記制御指令が同時に送信されるように、前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、自中継装置における前記制御指令の送信タイミングを調整し、
調整された前記送信タイミングに従って、自中継装置に接続された1以上の変換器セルに前記制御指令を送信する、電力変換装置。
【請求項2】
前記中継装置が前記通信フレームの受信を終了してから、前記変換器セルに前記制御指令を送信するまでの期間は、前記制御指令の送信タイミングを調整するための調整期間と、規定処理を実行する処理期間とを含み、
前記複数の中継装置のうちの1の中継装置が受信した前記第1情報が示す数がk(ただし、kは0以上の整数)であり、前記複数の中継装置のうちの他の中継装置が受信した前記第1情報が示す数がm(ただし、mはkよりも大きい整数)である場合、前記1の中継装置における前記調整期間は、前記他の中継装置における前記調整期間よりも長い、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記1の中継装置における前記調整期間と、前記他の中継装置における前記調整期間との差分時間は、固定時間の(m-k)倍である、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記固定時間は、前記中継装置が前記通信フレームの受信を開始してから前記通信フレームの送信を開始するまでの時間である、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記複数の中継装置の各々は、受信した前記通信フレームに含まれる前記第1情報が示す数をカウントアップし、カウントアップ後の前記第1情報を含む前記通信フレームを次の中継装置に送信する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記ネットワークは、前記通信フレームが互いに逆方向に周回する第1ネットワークおよび第2ネットワークに二重化されており、
前記制御装置は、前記第1ネットワークおよび前記第2ネットワークに対して、前記通信フレームを同時に送信する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記複数の中継装置の各々は、前記第1ネットワークを介して受信した前記通信フレーム、および前記第2ネットワークを介して受信した前記通信フレームのうち、先に受信した通信フレームに含まれる前記制御指令を、自中継装置に接続された1以上の変換器セルに送信する、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
先に受信した前記通信フレームが、前記第1ネットワークを介して受信した前記通信フレームである場合、
前記複数の中継装置の各々は、
前記第1ネットワークを介して受信した前記通信フレームに含まれる前記第1情報が示す数をカウントアップし、カウントアップ後の前記第1情報を含む前記通信フレームを前記第1ネットワークを介して次の中継装置に送信し、
前記第2ネットワークを介して受信した前記通信フレームに含まれる前記第1情報が示す数をカウントアップせずに、前記第1情報を含む前記通信フレームを前記第2ネットワークを介して次の中継装置に送信する、請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第2ネットワークに異常が発生した場合、
前記制御装置は、前記第1ネットワークに対して前記通信フレームを送信し、
前記複数の中継装置の各々は、前記第1ネットワークを介して受信した前記通信フレームに含まれる前記第1情報が示す数をカウントアップし、カウントアップ後の前記第1情報を含む前記通信フレームを前記第1ネットワークを介して次の中継装置に送信する、請求項
6に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記ネットワークは、第3ネットワークおよび第4ネットワークを含み、
前記複数の中継装置は、前記第3ネットワークを介して前記制御装置と通信する第1の複数の中継装置を含む第1中継装置群と、前記第4ネットワークを介して前記制御装置と通信する第2の複数の中継装置を含む第2中継装置群とを含み、
前記複数の変換器セルは、第1の複数の変換器セルと、第2の複数の変換器セルとを含み、
前記第1の複数の中継装置の各々は、前記第1の複数の変換器セルのうちの1以上の変換器セルと接続され、
前記第2の複数の中継装置の各々は、前記第2の複数の変換器セルのうちの1以上の変換器セルと接続され、
前記制御装置と前記第1中継装置群との間の第1距離は、前記制御装置と前記第2中継装置群との間の第2距離よりも長い、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記第1距離に応じた第1通信遅延時間から、前記第2距離に応じた第2通信遅延時間を減算した減算値を算出し、
前記第4ネットワークを介して、前記減算値を含む前記通信フレームを前記第2の複数の中継装置に送信し、
前記第2の複数の中継装置の各々は、前記第1情報および前記第2情報と、さらに前記減算値とに基づいて、自中継装置における前記制御指令の送信タイミングを調整する、請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記第1情報は、前記制御装置から前記第3ネットワークに送信された前記通信フレームが自中継装置に到達するまでに経由した中継装置の数を示す第1装置数と、前記制御装置から前記第4ネットワークに送信された前記通信フレームが自中継装置に到達するまでに経由した中継装置の数を示す第2装置数とを含み、
前記第2情報は、前記第1装置数および前記第2装置数のうちの最大値を示し、
前記第1の複数の中継装置の各々は、前記第1装置数および前記第2情報に基づいて、自中継装置における前記制御指令の送信タイミングを調整し、
前記第2の複数の中継装置の各々は、前記第2装置数、前記第2情報、および前記減算値に基づいて、自中継装置における前記制御指令の送信タイミングを調整する、請求項11に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記制御装置は、前記第3ネットワークを介して前記制御装置から送信された前記通信フレームが前記第1の複数の中継装置を経由して前記制御装置に到達するまでに要する第1の時間と、前記第1の複数の中継装置の個数とに基づいて、前記第1通信遅延時間を算出する、請求項
11に記載の電力変換装置。
【請求項14】
互いに直列接続された複数の変換器セルを含む電力変換器と、
前記電力変換器を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、リング状のネットワークを介して、通信フレームを前記複数の変換器セルに送信し、
前記複数の変換器セルの各々は、
前記制御装置から前記ネットワークに送信された前記通信フレームが自変換器セルに到達するまでに経由した変換器セルの数に関する第1情報と、前記第1情報が示す数の最大値を示す第2情報と、自変換器セルを制御するための制御指令とを含む前記通信フレームを受信し、
前記制御指令に基づいて、自変換器セルの変換回路に送信するためのゲート信号を生成し、
前記複数の変換器セルの各々において生成されるゲート信号が同時に送信されるように、前記第1情報および前記第2情報に基づいて、自変換器セルにおいて生成されるゲート信号の送信タイミングを調整し、
調整された前記送信タイミングに従って、自変換器セルに前記ゲート信号を送信する、電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力系統などの高圧系統に適用される高電圧、大容量の電力変換装置として、モジュラーマルチレベル変換器(MMC:Modular Multilevel Converter)が知られている。MMCは、変換器セルと呼ばれる複数の単位変換器がカスケード接続されたアームで構成されている。変換器セルは、複数の半導体スイッチとコンデンサとを有する。
【0003】
MMC型の電力変換装置では、制御装置からの制御データが各変換器セルに送信される。制御装置と各変換器セルとの間の通信方式については、高い信頼性および通信遅延の抑制が必要とされる。
【0004】
例えば、特開平5-145569号公報(特許文献1)は、複数の回線収容装置が二重化伝送路により接続されたシステムにおける通信方式を開示している。この通信方式では、回線収容装置は同じ管理番号を付した送信フレームを現用、予備二重化伝送路の両方へ送出する。受信側の回線収容装置は、受信した送信フレームのうち早く到着した方を採用し、広域伝送路でも伝送遅延が最小で済むようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MMC型の電力変換装置では、制御装置と各変換器セルとの間で最新の制御情報を共有する必要があるため、制御装置と各変換器セルとが光ケーブルで接続される。典型的には、光ケーブルの本数削減のためにデイジーチェーン接続方式が用いられるが、当該接続方式によると、各変換器セルへの制御データの到達時間に差が生じてしまい、この時間差によって変換器セルの制御性能が低下してしまう可能性がある。特許文献1に係る通信方式では、信号の伝送遅延および伝送路切替えに伴う遅延を抑えることが検討されているが、上記課題に対する解決策を何ら教示も示唆もしていない。
【0007】
本開示のある局面における目的は、各変換器セルへの制御データの送信タイミングを合わせることにより、変換器セルの制御性能の低下を防止することが可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施の形態に従う電力変換装置は、互いに直列接続された複数の変換器セルを含む電力変換器と、電力変換器を制御する制御装置と、制御装置と複数の変換器セルとの間の通信を中継する複数の中継装置とを備える。複数の中継装置の各々は、複数の変換器セルのうちの1以上の変換器セルと接続されている。制御装置は、リング状のネットワークを介して、通信フレームを複数の中継装置に送信する。複数の中継装置の各々は、制御装置からネットワークに送信された通信フレームが自中継装置に到達するまでに経由した中継装置の数に関する第1情報と、第1情報が示す数の最大値を示す第2情報と、複数の変換器セルを制御するための制御指令とを含む通信フレームを受信し、複数の中継装置から制御指令が同時に送信されるように、第1情報と第2情報とに基づいて、自中継装置における制御指令の送信タイミングを調整し、調整された送信タイミングに従って、自中継装置に接続された1以上の変換器セルに制御指令を送信する。
【0009】
他の実施の形態に従う電力変換装置は、互いに直列接続された複数の変換器セルを含む電力変換器と、電力変換器を制御する制御装置とを備える。制御装置は、リング状のネットワークを介して、通信フレームを複数の変換器セルに送信する。複数の変換器セルの各々は、制御装置からネットワークに送信された通信フレームが自変換器セルに到達するまでに経由した変換器セルの数に関する第1情報と、第1情報が示す数の最大値を示す第2情報と、自変換器セルを制御するための制御指令とを含む通信フレームを受信し、制御指令に基づいて、自変換器セルの変換回路に送信するためのゲート信号を生成し、複数の変換器セルの各々において生成されるゲート信号が同時に送信されるように、第1情報および第2情報に基づいて、自変換器セルにおいて生成されるゲート信号の送信タイミングを調整し、調整された送信タイミングに従って、自変換器セルにゲート信号を送信する。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る電力変換装置によると、各変換器セルへの制御データの送信タイミングを合わせることにより、変換器セルの制御性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】指令生成装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態1に従う通信接続形態を示す図である。
【
図6】実施の形態1に従う通信フレームの構成例を模式的に示す図である。
【
図7】実施の形態1に従う通信方式を説明するための図である。
【
図8】実施の形態2に従う通信接続形態を示す図である。
【
図9】実施の形態2に従う調整パラメータの更新方式を説明するための図である。
【
図10】実施の形態2に従う通信方式の一部分を説明するための図である。
【
図11】実施の形態2に従う通信方式の他の部分を説明するための図である。
【
図12】
図8において一方のネットワークに異常が発生した場合の通信接続形態を示す図である。
【
図13】ネットワーク異常時における通信方式を説明するための図である。
【
図14】実施の形態3に従う通信接続形態を示す図である。
【
図15】実施の形態3に従う通信フレームの構成例を模式的に示す図である。
【
図16】実施の形態3に従う調整パラメータの更新方式を説明するための図である。
【
図17】実施の形態3に従う通信方式を説明するための図である。
【
図18】実施の形態4に従う通信接続形態を示す図である。
【
図19】実施の形態4に従う通信方式を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0013】
[各実施の形態の基礎となる構成]
<全体構成>
図1は、電力変換装置の構成例を示す図である。
図1を参照して、電力変換装置100は、交流回路2と直流回路4との間に接続されている。直流回路4は、例えば、直流送電網等を含む直流電力系統、または他の電力変換装置の直流端子である。後者の場合、2台の電力変換器を連結することによって定格周波数などが異なる交流電力系統間を接続するためのBTB(Back To Back)システムが構成される。直流回路4は、電力変換器6の直流端子に接続された蓄電装置を含む構成であってもよい。蓄電装置は、例えば、電気二重層コンデンサ、あるいはリチウムイオン電池等の蓄電池を含む。
【0014】
電力変換装置100は、直流回路4と交流回路2との間で電力変換を行なう自励式の電力変換器6と、指令生成装置5とを含む。典型的には、電力変換器6は、互いに直列接続された複数の変換器セル(
図1中の「セル」に対応)1を含むモジュラーマルチレベル変換器によって構成される。「変換器セル」は、「サブモジュール(sub module)」あるいは「単位変換器」とも称される。
【0015】
図1の例では、電力変換器6は、交流回路2の相ごとに複数のアームを含む。具体的には、電力変換器6は、正極直流端子(すなわち、高電位側直流端子)Npと、負極直流端子(すなわち、低電位側直流端子)Nnとの間に互いに並列に接続された複数のレグ回路8u,8v,8w(以下、総称する場合または任意のものを示す場合、「レグ回路8」と記載する)を含む。レグ回路8は、交流回路2と直流回路4との間に接続され、両回路間で電力変換を行なう。
【0016】
交流回路2のU相、V相、W相にそれぞれ対応するレグ回路8u,8v,8wにそれぞれ設けられた交流端子Nu,Nv,Nwは、変圧器3を介して交流回路2に接続される。交流回路2は、例えば、交流電源などを含む三相交流電力系統である。
図1では、図解を容易にするために、交流端子Nv,Nwと変圧器3との接続は図示していない。各レグ回路8に共通に設けられた直流端子(すなわち、正極直流端子Np,負極直流端子Nn)は、直流回路4に接続される。
【0017】
図1の変圧器3を用いる代わりに、レグ回路8u,8v,8wは、連系リアクトルを介して交流回路2に接続した構成としてもよい。さらに、交流端子Nu,Nv,Nwに代えてレグ回路8u,8v,8wにそれぞれ一次巻線を設け、この一次巻線と磁気結合する二次巻線を介してレグ回路8u,8v,8wが変圧器3または連系リアクトルに交流的に接続するようにしてもよい。この場合、一次巻線を下記のリアクトル7a,7bとしてもよい。すなわち、レグ回路8は、交流端子Nu,Nv,Nwまたは上記の一次巻線など、各レグ回路8u,8v,8wに設けられた接続部を介して電気的(すなわち、直流的または交流的)に交流回路2に接続される。
【0018】
レグ回路8uは、正極直流端子Npから交流端子Nuまでの正側アーム13puと、負極直流端子Nnから交流端子Nuまでの負側アーム13nuとを含む。正側アーム13puと負側アーム13nuとの接続点が、交流端子Nuとして変圧器3と接続される。正極直流端子Npおよび負極直流端子Nnが直流回路4に接続される。レグ回路8vは正側アーム13pvと負側アーム13nvとを含み、レグ回路8wは正側アーム13pwと負側アーム13nwとを含む。
【0019】
以下では、正側アーム13pu,13pv,13pwについて、総称する場合または任意のものを示す場合、「正側アーム13p」と記載する。負側アーム13nu,13nv,13nwについて、総称する場合または任意のものを示す場合、「負側アーム13n」と記載する。正側アーム13pu,13pv,13pwおよび負側アーム13nu,13nv,13nwについて、総称する場合または任意のものを示す場合、「アーム13」と記載する。
【0020】
レグ回路8v,8wはレグ回路8uと同様の構成を有しているので、以下、レグ回路8uを代表として説明する。レグ回路8uにおいて、正側アーム13puは、互いにカスケード接続された複数の変換器セル1と、リアクトル7aとを含む。複数の変換器セル1とリアクトル7aとは互いに直列接続されている。負側アーム13nuは、互いにカスケード接続された複数の変換器セル1と、リアクトル7bとを含む。複数の変換器セル1とリアクトル7bとは互いに直列接続されている。
【0021】
リアクトル7aが挿入される位置は、正側アーム13puのいずれの位置であってもよく、リアクトル7bが挿入される位置は、負側アーム13nuのいずれの位置であってもよい。リアクトル7a,7bはそれぞれ複数個あってもよい。各リアクトルのインダクタンス値は互いに異なっていてもよい。さらに、正側アーム13puのリアクトル7aのみ、もしくは、負側アーム13nuのリアクトル7bのみを設けてもよい。
【0022】
電力変換装置100は、さらに、交流電圧検出器10と、交流電流検出器15と、直流電圧検出器11a,11bと、各レグ回路8に設けられたアーム電流検出器9a,9bとを含む。これらの検出器は、電力変換装置100の制御に使用される電気量(すなわち、電流、電圧)を計測する。これらの検出器によって検出された信号は、指令生成装置5に入力される。
【0023】
交流電圧検出器10は、交流回路2のU相の交流電圧Vacu、V相の交流電圧Vacv、W相の交流電圧Vacwを検出する。交流電流検出器15は、交流回路2のU相の交流電流実測値Isysu、V相の交流電流実測値Isysv、W相の交流電流実測値Isyswを検出する。直流電圧検出器11aは、直流回路4に接続された正極直流端子Npの直流電圧Vdcpを検出する。直流電圧検出器11bは、直流回路4に接続された負極直流端子Nnの直流電圧Vdcnを検出する。
【0024】
U相用のレグ回路8uに設けられたアーム電流検出器9a,9bは、正側アーム13puに流れる正側アーム電流Ipuおよび負側アーム13nuに流れる負側アーム電流Inuをそれぞれ検出する。V相用のレグ回路8vに設けられたアーム電流検出器9a,9bは、正側アーム電流Ipvおよび負側アーム電流Invをそれぞれ検出する。W相用のレグ回路8wに設けられたアーム電流検出器9a,9bは、正側アーム電流Ipwおよび負側アーム電流Inwをそれぞれ検出する。
【0025】
図1に示すように、レグ回路8uの正側アーム13puと負側アーム13nuとの接続点である交流端子Nuは、変圧器3に接続されている。したがって、交流端子Nuから変圧器3に向かって流れる交流電流Iacuは、正側アーム電流Ipuから負側アーム電流Inuを減算した電流値となる。交流電流Iacv,Iacwについても同様である。したがって、“Iacu=Ipu-Inu”、“Iacv=Ipv-Inv”および“Iacw=Ipw-Inw”が成立する。
【0026】
各相のレグ回路8u,8v,8wの正極の直流端子は正極直流端子Npとして共通に接続され、負極の直流端子は負極直流端子Nnとして共通に接続されている。この構成から、直流回路4の正側端子から流れ込み、負側端子を介して直流回路4に帰還する直流電流Idcは、“Idc=(Ipu+Ipv+Ipw+Inu+Inv+Inw)/2”として定義される。
【0027】
<変換器セルの構成例>
図2は、変換器セルの一例を示す回路図である。
図2に示す変換器セル1は、ハーフブリッジ型の変換回路21と、蓄電素子24と、電圧検出器25と、セル制御部27と、バイパススイッチ28とを含む。
【0028】
ハーフブリッジ型の変換回路21は、互いに直列接続されたスイッチング素子22A,22Bと、ダイオード23A,23Bとを含む。ダイオード23A,23Bは、スイッチング素子22A,22Bとそれぞれ逆並列(すなわち、並列かつ逆バイアス方向)に接続される。ダイオード23A,23Bは、スイッチング素子22A,22Bに逆方向電圧が印加されたときの保護のために設けられている。以下、スイッチング素子22A,22Bおよびダイオード23A,23Bについて、総称する場合または任意の1つを示す場合に、スイッチング素子22およびダイオード23とそれぞれ記載する。
【0029】
蓄電素子24は、スイッチング素子22A,22Bの直列接続回路と並列に接続され、直流電圧を保持する。蓄電素子24として、代表的には直流コンデンサが用いられる。スイッチング素子22A,22Bの接続ノードは高電位側の入出力端子26Pと接続される。スイッチング素子22Bと蓄電素子24との接続ノードは低電位側の入出力端子26Nと接続される。
【0030】
典型的には、入出力端子26Pは、正極側に隣接する変換器セル1の入出力端子26Nと接続される。入出力端子26Nは、負極側に隣接する変換器セル1の入出力端子26Pと接続される。
【0031】
各スイッチング素子22A,22Bには、オン動作とオフ動作の両方を制御可能な自己消弧型のスイッチング素子が用いられる。スイッチング素子22A,22Bは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)またはGCT(Gate Commutated Turn-off thyristor)である。
【0032】
なお、変換器セル1の変換回路は、上記のようなハーフブリッジ型の変換回路21に限られない。例えば、変換器セル1は、フルブリッジ型の変換回路、またはスリークオーターブリッジ型の変換回路を用いて構成されていてもよい。
【0033】
バイパススイッチ28は、入出力端子26Pと26Nとの間に接続される。バイパススイッチ28として、例えば、機械式スイッチが用いられる。バイパススイッチ28が投入されることにより、高電位側の入出力端子26Pと低電位側の入出力端子26Nとの間が短絡される。
【0034】
バイパススイッチ28は、変換器セル1のいずれかの素子が故障した場合に、当該変換器セル1を短絡させるために利用される。これにより、複数の変換器セル1のうちの任意の変換器セル1が故障しても、他の変換器セル1を利用することにより電力変換装置100の運転継続が可能となる。バイパススイッチ28を投入するか否かの判断は、指令生成装置5に含まれる制御装置において行なってよいし、各変換器セル1のセル制御部27において行なってもよい。
【0035】
電圧検出器25は、蓄電素子24の両端の間の電圧(すなわち、キャパシタ電圧Vc)を検出する。電圧検出器25の検出値は、セル制御部27に入力される。
【0036】
セル制御部27は、指令生成装置5から制御指令を受信する。セル制御部27は、受信した制御指令に基づいて変換回路21を構成するスイッチング素子22A,22Bの開閉を制御するためのゲート信号を生成する。また、セル制御部27は、電圧検出器25によって検出されたキャパシタ電圧Vcと、バイパススイッチ28の開閉情報とを指令生成装置5に送信する。
【0037】
具体的には、セル制御部27は、受信した制御指令としての電圧指令値に基づいてスイッチング素子22A,22Bの一方をオン状態とし、他方をオフ状態となるように位相シフトPWM(Pulse Width Modulation)制御を行なう。例えば、スイッチング素子22Aがオン状態であり、スイッチング素子22Bがオフ状態のとき、入出力端子26Pと26Nとの間には蓄電素子24の両端間の電圧が印加される。逆に、スイッチング素子22Aがオフ状態であり、スイッチング素子22Bがオン状態のとき、入出力端子26Pと26Nとの間は0Vとなる。したがって、変換器セル1は、スイッチング素子22A,22Bを交互にオン状態とすることによって、零電圧および蓄電素子24の電圧に依存した正電圧を出力できる。
【0038】
上記のセル制御部27は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用回路によって構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを利用して構成してもよい。もしくは、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを含むコンピュータをベースに構成されていてもよいし、上記の2個以上の組み合わせによって構成されていてもよい。
【0039】
なお、変換器セル1には、蓄電素子24の電圧に基づいてセル制御部27の駆動電圧を生成する電源回路(不図示)が設けられている。したがって、蓄電素子24の電圧が低い場合には、セル制御部27は動作できない。
【0040】
<指令生成装置の構成>
図3は、指令生成装置の概略構成を示すブロック図である。
図3を参照して、指令生成装置5は、電力変換器6を制御する制御装置50と、複数の中継装置から構成される中継装置群300とを含む。制御装置50は、中継装置群300に含まれる各中継装置の上位装置に相当する。各中継装置は、制御装置50と電力変換器6に含まれる複数の変換器セル1との間の通信を中継する。
図3では、
図1の電力変換器6のうちU相用のレグ回路8uのみが代表的に示されているが、他のレグ回路8v,8wについても同様である。
【0041】
制御装置50は、各変換器セル1を制御する装置である。制御装置50は、交流電圧Vacu,Vacv,Vacw(以下、「交流電圧Vac」とも総称する。)、交流電流実測値Isysu,Isysv,Isysw(以下、「交流電流実測値Isys」とも総称する。)、直流電圧Vdcp,Vdcn、正側アーム電流Ipu,Ipv,Ipw(以下、「正側アーム電流Ip」とも総称する。)、負側アーム電流Inu,Inv,Inw(以下、「負側アーム電流In」とも総称する。)およびキャパシタ電圧Vcapの入力を受け付ける。典型的には、キャパシタ電圧Vcapは、各変換器セル1において検出された蓄電素子24の電圧値がアーム回路ごとに平均化されたものである。
【0042】
制御装置50は、当該受け付けた各検出値に基づいて、予め定められた周期ごとに、通常の運転制御期間において各変換器セル1を制御するための制御指令を生成し、当該生成した制御指令を中継装置群300に送信する。
【0043】
制御指令は、電圧指令、電流指令等を含む。電圧指令は、例えば、各レグ回路8u,8v,8wにおける正側アーム13pの出力電圧指令値および負側アーム13nの出力電圧指令値である。電流指令は、例えば、各レグ回路8u,8v,8wにおける正側アーム13pの出力電流指令値および負側アーム13nの出力電流指令値である。
【0044】
中継装置群300は、制御装置50から制御指令を受信する。中継装置群300は、制御指令を含む指令情報を各変換器セル1に送信する。各変換器セル1は、指令情報に従って動作する。本実施の形態の場合、中継装置群300に含まれる各中継装置は、スター型のネットワークを介して変換器セル1に接続される。
【0045】
典型的には、各中継装置は、FPGA(Field Programmable Gate Array)およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の回路を用いて構成される。
【0046】
<制御装置のハードウェア構成例>
図4は、制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4には、コンピュータによって制御装置50を構成する例が示されている。
図4を参照して、制御装置50は、1つ以上の入力変換器70と、1つ以上のS/H(サンプルホールド)回路71と、マルチプレクサ(MUX:multiplexer)72と、A/D変換器73と、1つ以上のCPU(Central Processing Unit)74と、RAM(Random Access Memory)75と、ROM(Read Only Memory)76と、1つ以上の入出力インターフェイス77と、補助記憶装置78と、上記の構成要素間を相互に接続するバス79とを含む。
【0047】
入力変換器70は、入力チャンネルごとに補助変成器を備える。各補助変成器は、
図1の各電気量検出器による検出信号を、後続する信号処理に適した電圧レベルの信号に変換する。
【0048】
サンプルホールド回路71は、入力変換器70ごとに設けられる。サンプルホールド回路71は、対応の入力変換器70から受けた電気量を表す信号を規定のサンプリング周波数でサンプリングして保持する。
【0049】
マルチプレクサ72は、複数のサンプルホールド回路71に保持された信号を順次選択する。A/D変換器73は、マルチプレクサ72によって選択された信号をデジタル値に変換する。なお、複数のA/D変換器73を設けることによって、複数の入力チャンネルの検出信号に対して並列的にA/D変換を実行するようにしてもよい。
【0050】
CPU74は、制御装置50の全体を制御し、プログラムに従って演算処理を実行する。揮発性メモリとしてのRAM75および不揮発性メモリとしてのROM76は、CPU74の主記憶として用いられる。ROM76は、プログラムおよび信号処理用の設定値などを収納する。補助記憶装置78は、ROM76に比べて大容量の不揮発性メモリであり、プログラムおよび電気量検出値のデータなどを格納する。
【0051】
入出力インターフェイス77は、CPU74と外部装置との間で通信する際のインターフェイス回路である。
図3の例の場合、CPU74などは1つ以上の入出力インターフェイス77を介して中継装置群300と接続される。
【0052】
なお、制御装置50の少なくとも一部をFPGAおよびASICなどの回路を用いて構成してもよい。もしくは、制御装置50の少なくとも一部は、アナログ回路によって構成することもできる。
【0053】
実施の形態1.
<通信接続形態および通信方式>
図5は、実施の形態1に従う通信接続形態を示す図である。具体的には、
図5では、中継装置群(図中の「HUB群」に対応。)300が4つの中継装置(図中の「HUB」に対応。)30によって構成される例が示されているが、中継装置30の個数はこの例に限られず、2または3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。以下の説明では、「中継装置」を「HUB」とも称する。実施の形態1では、4つの中継装置30は、それぞれHUB♯1~♯4とも称される。
【0054】
図5の例では、制御装置50と、中継装置群300との間の距離が“R1”として示されている。典型的には、距離R1は、制御装置50と、中継装置群300のうちの最上流のHUB#1との距離である。より詳細には、距離R1は、制御装置50の通信ポート51と、HUB#1の上ポート31とを接続する光ファイバケーブルの長さである。距離R1は、例えば、200mである。
【0055】
図5を参照して、制御装置50は、入出力インターフェイス77に含まれる通信ポート51を含む。4つのHUB#1~#4の各々は、上流側(例えば、制御装置50側)の通信ポート(以下、単に「上ポート」とも称する。)31と、下流側(例えば、変換器セル1側)の複数の通信ポート(以下、単に「下ポート」とも称する。)35とを含む。
【0056】
制御装置50および4つのHUB#1~#4は、リング状のデイジーチェーン型のネットワーク510(図中の実線の通信経路)を介して接続される。具体的には、制御装置50の通信ポート51はHUB#1の上ポート31に接続される。HUB#1の上ポート31はHUB#2の上ポート31にさらに接続される。HUB#2の上ポート31はHUB#3の上ポート31にさらに接続される。HUB#3の上ポート31はHUB#4の上ポート31にさらに接続される。HUB#4の上ポート31は制御装置50の通信ポート51にさらに接続される。制御装置50は、リング状のネットワーク510を介して、通信フレーム61を4つのHUB#1~#4を送信する。したがって、通信フレーム61は、リング状のネットワーク510を介して、制御装置50、HUB#1、HUB#2、HUB#3、HUB#4、制御装置50の順に伝送される。
【0057】
図6は、実施の形態1に従う通信フレームの構成例を模式的に示す図である。
図6を参照して、通信フレーム61は、主なデータとして、フラグと、通信コマンドと、シーケンス番号(図中の「SQE番号」に対応)と、調整パラメータとしての個数Nmaxおよび個数Nownと、変換器セル1を制御するための制御指令と、誤り検出情報であるFCS(Frame Check Sequence)とを含む。なお、シーケンス番号は、通信フレーム61に付与される通し番号である。詳細は後述するが、個数Nmax,Nownは、各中継装置30から送信される変換器セル用の通信フレームの送信タイミングを調整するためのパラメータである。
【0058】
再び、
図5を参照して、HUB#1~#4の各々は、スター型のネットワークを介して、1以上の変換器セル1に接続される。具体的には、HUB#1の各下ポート35は、対応する変換器セル1に接続される。HUB#1は、通信フレーム61に含まれる制御指令を取り出して、当該制御指令を含むセル用の通信フレームを下ポート35を介して変換器セル1に送信する。HUB#2~#4についても同様である。なお、各中継装置30に対応する変換器セル1の個数は、他の中継装置30に対応する変換器セル1の個数と異なっていてもよい。
【0059】
このように、
図5の例では、リング状のネットワークトポロジと、スター型のネットワークトポロジとを組み合わせることにより、制御装置50、各中継装置30、および各変換器セル1との間のネットワークが構築される。
【0060】
図7は、実施の形態1に従う通信方式を説明するための図である。
図7を参照して、まず、制御装置50から、各HUB#1~#4を経由して、制御装置50に戻ってくる通信フレーム61の通信フローについて説明する。
【0061】
時刻tfにおいて、制御装置50は、通信ポート51を介して、ネットワーク510への通信フレーム61の送信を開始する。時刻t1において、HUB#1は、上ポート31を介して、通信フレーム61の受信を開始する。
【0062】
時刻t1と時刻tfとの差分時間は、通信ポート51とHUB#1の上ポート31との間の距離R1によって生じる通信遅延時間であり、「遅延時間Dh1」とも称する。具体的には、遅延時間Dh1は、制御装置50が通信ポート51を用いて通信フレーム61の送信を開始するタイミング(すなわち、時刻tf)から、HUB#1が上ポート31を用いて通信フレーム61の受信を開始するタイミング(すなわち、時刻t1)までの通信遅延時間である。距離R1が長くなるほど遅延時間Dh1も大きくなる。
【0063】
HUB#1は、時刻t1から時間Dp後の時刻t2において、次のHUB#2への通信フレーム61の送信を開始する。ここで、時間Dpは、HUB#1が、上流の装置(この場合、制御装置50)から通信フレーム61の受信を開始してから、下流の装置(この場合、HUB#2)へ通信フレーム61の送信を開始するまでの遅延時間である。
【0064】
HUB#1は、時間Dpで示す期間において、上流から受信した通信フレーム61に含まれる個数Nownを更新して、更新された個数Nownを含む通信フレーム61をHUB#2に送信する。具体的には、個数Nownは、制御装置50からネットワーク510に送信された通信フレーム61が自中継装置に到達するまでに経由した中継装置30の数を示す情報である。HUB#1は最上流の中継装置30であり、HUB#1に到達するまでに経由した中継装置30の数は0である。そのため、HUB#1が受信した通信フレーム61に含まれる個数Nownは“0”である。HUB#1は、個数Nownが示す“0”を“1”にカウントアップ(すなわち、+1)し、“1”を示す個数Nownを含む通信フレーム61を次のHUB#2に送信する。
【0065】
時刻t2において、HUB#2は、上ポート31を介して、HUB#1からの通信フレーム61の受信を開始する。ここで、各HUBは同一もしくは隣接の制御盤内に配置されており、各HUB間の通信距離は短い。そのため、各HUB間の通信遅延時間は実質的に0とみなすことができる。HUB#2は、HUB#1から受信した通信フレーム61に含まれる個数Nownを“1”から“2”にカウントアップする。時刻t2から時間Dp後の時刻t3において、HUB#2は、カウントアップ後の個数Nownを含む通信フレーム61をHUB#3に送信する。
【0066】
時刻t3において、HUB#3は、HUB#2からの通信フレーム61の受信を開始する。HUB#3は、HUB#2から受信した通信フレーム61に含まれる個数Nownを“2”から“3”にカウントアップする。時刻t3から時間Dp後の時刻t4において、HUB#3は、カウントアップ後の個数Nownを含む通信フレーム61をHUB#4に送信する。
【0067】
時刻t4において、HUB#4は、HUB#3からの通信フレーム61の受信を開始する。HUB#4は、HUB#3から受信した通信フレーム61に含まれる個数Nownを“3”から“4”にカウントアップする。時刻t4から時間Dp後の時刻t5に、HUB#4は、カウントアップ後の個数Nownを含む通信フレーム61を制御装置50に送信する。時刻t5から遅延時間Dh1後の時刻t6に、制御装置50は、当該通信フレーム61の受信を開始する。
【0068】
次に、変換器セル1に対して送信されるセル用の通信フレーム(以下、「セル用フレーム」とも称する。)の送信タイミングについて説明する。各HUB#1~#4からのセル用フレームの送信タイミングを合わせるために、制御装置50は、通信フレーム61に含まれる個数Nmaxを設定する必要がある。
【0069】
制御装置50と中継装置群300との初回通信時において、通信フレーム61が上記の流れに沿って送信される。初回通信時においては、各HUB#1~4からセル用フレームは送信されないように構成されている。制御装置50は、HUB#4から受信した通信フレーム61に含まれる個数Nown(すなわち、“4”)を個数Nmaxとして設定する。通信フレーム61に含まれる個数Nownは、制御装置50から送信される時点では最小(すなわち、“0”)であるが、制御装置50が受信する時点では最大(すなわち、“4”)となっている。そのため、個数Nmaxは、個数Nownが示す数の最大値である。
【0070】
制御装置50は、設定した個数Nmax(ここでは、“4”)を含む通信フレーム61をネットワーク510に送信する。HUB#1は、受信した通信フレーム61に含まれる個数Nmaxおよび個数Nownに基づいて、制御指令を含むセル用フレームの送信タイミングを調整する。
【0071】
具体的には、HUB#1は、“Nmax-(Nown+1)”で演算される個数Nadを算出する。ここで、“Nmax=4”、“Nown=0”であるから、“Nad=3”となる。HUB#1は、セル用フレームの送信タイミングの調整期間として、“Dp×Nad(=3)”を設定する。これにより、HUB#1において、セル用フレームを送信するために必要な規定処理が開始されるタイミングは、通信フレーム61の受信終了後から調整期間経過後の時刻txとなる。
【0072】
規定処理は、例えば、通信フレーム61に含まれる制御指令を取り出す処理、取り出した制御指令をセル用フレームに含める処理等を含む。規定処理の処理時間を示す時間Dxは固定値に設定され、各HUBにおいて共通である。なお、セル用フレームの構成は、
図6に示す通信フレーム61から個数Nmax,Nownを削除した構成と同様である。
【0073】
したがって、HUB#1は、時刻txから時間Dx後の時刻tcfにおいて、対応する変換器セル1にセル用フレームを送信(出力)する。以下、HUB#2~#4におけるセル用フレームの送信タイミングについても同様に説明する。
【0074】
HUB#2は、受信した通信フレーム61に含まれる個数Nmax(=4)および個数Nown(=1)に基づいて、個数Nad(=2)を算出する。HUB#2は、セル用フレームの送信タイミングの調整期間として、“Dp×Nad(=2)”を設定する。これにより、HUB#2において規定処理が開始されるタイミングは、通信フレーム61の受信終了後から調整期間経過後の時刻txとなる。したがって、HUB#2においても、セル用フレームの送信タイミングは、時刻txから時間Dx後の時刻tcfとなる。
【0075】
HUB#3は、受信した通信フレーム61に含まれる個数Nmax(=4)および個数Nown(=2)に基づいて、個数Nad(=1)を算出する。HUB#3は、セル用フレームの送信タイミングの調整期間として、“Dp×Nad(=1)”を設定する。これにより、HUB#3においても、規定処理が開始されるタイミングは時刻txとなり、セル用フレームの送信タイミングは時刻tcfとなる。
【0076】
HUB#4は、受信した通信フレーム61に含まれる個数Nmax(=4)および個数Nown(=3)に基づいて、個数Nad(=0)を算出する。そのため、HUB#4における調整期間は“0”となる。これにより、HUB#4においても、規定処理が開始されるタイミングは時刻txとなり、セル用フレームの送信タイミングは時刻tcfとなる。
【0077】
上記のように、各HUBが通信フレーム61の受信を終了してから、変換器セル1に制御指令を送信するまでの期間は、制御指令の送信タイミングを調整するための調整期間(すなわち、“Dp×Nad”に対応する期間)と、規定処理を実行する処理期間(すなわち、時間Dxに対応する期間)とを含む。
【0078】
各HUB#1~#4は、個数Nadを利用して、各HUB#1~#4の間で生じる時間Dpの差分を考慮して調整期間を設定する。例えば、複数のHUBのうちの1のHUBが受信した個数Nownが示す数がk(ただし、kは0以上の整数)であり、他のHUBが受信した個数Nownが示す数がm(ただし、mはkよりも大きい整数)である場合、当該1のHUBにおける調整期間は、他のHUBにおける調整期間よりも長くなる。具体的には、1のHUBにおける調整期間と、他のHUBにおける調整期間との差分時間は、固定時間(例えば、時間Dp)の(m-k)倍となる。
【0079】
上記のように、各HUBは、複数のHUBから制御指令が同時に送信されるように、個数Nmaxと個数Nownとに基づいて、自HUBにおける制御指令の送信タイミングを調整する。各HUBは、当該調整された送信タイミングに従って、自HUBに接続された1以上の変換器セル1に制御指令を送信する。これにより、各HUB#1~#4から各変換器セル1に送信される制御指令の送信タイミングを一致させることができる。したがって、各変換器セル1への制御指令の到達時間が一致するため、変換器セル1の制御のばらつきを防止して高い制御性能を維持することができる。
【0080】
実施の形態2.
<通信接続形態および通信方式>
図8は、実施の形態2に従う通信接続形態を示す図である。
図8では、中継装置群300Aが4つの中継装置30Aによって構成される例が示されている。実施の形態2における4つの中継装置30Aは、それぞれHUB♯1~♯4とも称される。距離R1については、
図5で説明した通りである。
【0081】
図8を参照して、制御装置50Aは、通信ポート51,52を含む。実施の形態1に従う制御装置50との区別のため、便宜上“A”との符号を付している。これは、以下の他の実施の形態でも同様である。4つのHUB#1~#4の各々は、上ポート31,32と、複数の下ポート35とを含む。
【0082】
制御装置50Aおよび4つのHUB#1~#4は、リング状のデイジーチェーン型のネットワーク510(図中の実線の通信経路)と、リング状のデイジーチェーン型のネットワーク520(図中の点線の通信経路)とを介して接続される。
図5で説明したように、通信フレーム61は、制御装置50Aの通信ポート51および各HUB#1~#4の上ポート31を介して、伝送される。すなわち、通信フレーム61は、ネットワーク510を介して、制御装置50A、HUB#1、HUB#2、HUB#3、HUB#4、制御装置50Aの順に伝送される。
【0083】
また、制御装置50Aの通信ポート52はHUB#4の上ポート32に接続される。HUB#4の上ポート32はHUB#3の上ポート32にさらに接続される。HUB#3の上ポート32はHUB#2の上ポート32にさらに接続される。HUB#2の上ポート32はHUB#1の上ポート32にさらに接続される。HUB#1の上ポート32は制御装置50Aの通信ポート52にさらに接続される。これにより、通信フレーム61は、ネットワーク520を介して、制御装置50A、HUB#4、HUB#3、HUB#2、HUB#1、制御装置50Aの順に伝送される。
【0084】
このように、実施の形態2では、制御装置50Aと中継装置群300Aとを通信接続するためのリング状のネットワークは、通信フレーム61が互いに逆方向に周回するネットワーク510およびネットワーク520に二重化されている。制御装置50Aは、ネットワーク510およびネットワーク520に対して、通信フレーム61を同時に送信する。以下、ネットワーク510を介して通信される通信フレーム61を便宜上“通信フレーム61_1”とも称し、ネットワーク520を介して通信される通信フレーム61を便宜上“通信フレーム61_2”とも称する。
【0085】
ここで、ネットワーク510,520の通信方式および通信速度は同一である。そのため、制御装置50Aから通信フレーム61が同時にネットワーク510,520に送信された場合、HUB#1,#2は、通信フレーム61_1を受信した後に、通信フレーム61_2を受信する。すなわち、HUB#1,#2には、通信フレーム61_1が先着し、通信フレーム61_2が後着する。一方、HUB#3,#4は、通信フレーム61_2を受信した後、通信フレーム61_1を受信する。すなわち、HUB#3,#4には、通信フレーム61_2が先着し、通信フレーム61_1が後着する。
【0086】
各HUB#1~#4は、ネットワーク510を介して受信した通信フレーム61_1、およびネットワーク520を介して受信した通信フレーム61_2のうち、先に受信した通信フレーム(すなわち、先着した通信フレーム)に含まれる制御指令を取り出して、当該制御指令を自HUBに接続された変換器セル1に送信する。具体的には、各HUB#1,#2は、通信フレーム61_1に含まれる制御指令を変換器セル1に送信し、各HUB#3,#4は、通信フレーム61_2に含まれる制御指令を変換器セル1に送信する。
【0087】
図9は、実施の形態2に従う調整パラメータの更新方式を説明するための図である。ここでは、補正パラメータである個数Nownの更新方式について説明する。実施の形態1では、各HUB#1~#4は、受信した通信フレーム61に含まれる個数Nownをカウントアップして、カウントアップ後の個数Nownを次の装置(例えば、HUBまたは制御装置50A)に送信する構成について説明した。実施の形態2では、先着した通信フレーム61に含まれる個数Nownのみをカウントアップし、後着した通信フレーム61に含まれる個数Nownはカウントアップされない。
【0088】
図9の例では、通信フレーム61_1に含まれる個数Nownの更新方式について説明する。制御装置50Aは、通信ポート51を介して通信フレーム61_1をHUB#1に送信する。HUB#1は、先着した通信フレーム61_1に含まれる個数Nownが示す“0”を“1”にカウントアップし、カウントアップ後の個数Nownを含む通信フレーム61_1をHUB#2に送信する。
【0089】
各HUBは、通信フレーム61に含まれるシーケンス番号に基づいて、通信フレーム61の先着および後着の判断を行なう。例えば、制御装置50Aから同時に送信された通信フレーム61_1,61_2には、同一のシーケンス番号が含まれている。そのため、各HUBは、シーケンス番号Nsqeを有する通信フレーム61(便宜上、「通信フレーム61x」とも称する。)を受信した際に、シーケンス番号Nsqeと同一のシーケンス番号を有する通信フレーム61を過去に受信していたか否かを判断する。各HUBは、シーケンス番号Nsqeと同一のシーケンス番号を有する通信フレーム61を過去に受信していない場合、通信フレーム61xが先着の通信フレームであると判断する。各HUBは、同一のシーケンス番号を有する通信フレーム61を過去に受信していた場合、通信フレーム61xが後着の通信フレームであると判断する。
【0090】
HUB#2は、先着した通信フレーム61_1に含まれる個数Nownが示す“1”を“2”にカウントアップして、カウントアップ後の個数Nownを含む通信フレーム61_1をHUB#3に送信する。
【0091】
HUB#3は、通信フレーム61_1が通信フレーム61_2よりも後に到着したと判断し、通信フレーム61_1に含まれる個数Nownが示す“2”をカウントアップせずに維持したまま、当該個数Nownを含む通信フレーム61_1を次のHUB#4に送信する。同様に、HUB#4は、通信フレーム61_1が通信フレーム61_2よりも後に到着したと判断し、通信フレーム61_1に含まれる個数Nownが示す“2”を維持したまま、当該個数Nownを含む通信フレーム61_1を制御装置50Aに送信する。通信フレーム61_2に含まれる個数Nownについても上記と同様に更新される。
【0092】
したがって、制御装置50Aと中継装置群300Aとの初回通信終了後において、制御装置50Aは、HUB#4から受信した通信フレーム61_1に含まれる個数Nown(すなわち、“2”)およびHUB#1から受信した通信フレーム61_2に含まれる個数Nown(すなわち、“2”)のうちの最大値を個数Nmaxとして設定する。この場合、通信フレーム61_1,61_2に含まれる各個数Nownがともに“2”であるため、個数Nmaxは“2”に設定される。
【0093】
図10は、実施の形態2に従う通信方式の一部分を説明するための図である。
図10を参照して、制御装置50Aからネットワーク510を介して送信される通信フレーム61_1の通信フローについて説明する。
【0094】
時刻tfにおいて、制御装置50Aは、ネットワーク510への通信フレーム61_1の送信を開始する。時刻t1において、HUB#1は、通信フレーム61_1の受信を開始する。HUB#1は、時刻t1から時間Dp後の時刻t2において、HUB#2への通信フレーム61_1の送信を開始する。なお、HUB#1は、通信フレーム61_1に含まれる個数Nownを“0”から“1”にカウントアップして、“1”を示す個数Nownを含む通信フレーム61_1をHUB#2に送信する。
【0095】
時刻t2において、HUB#2は、HUB#1からの通信フレーム61_1の受信を開始する。HUB#2は、通信フレーム61_1に含まれる個数Nownを“1”から“2”にカウントアップする。時刻t3において、HUB#2は、カウントアップ後の個数Nownを含む通信フレーム61_1をHUB#3に送信する。
【0096】
時刻t3において、HUB#3は、HUB#2からの通信フレーム61_1の受信を開始する。HUB#3は、通信フレーム61_1よりも通信フレーム61_2の方が先着していると判断して、個数Nownを“2”のまま維持する。時刻t4において、HUB#3は、当該個数Nownを含む通信フレーム61_1をHUB#4に送信する。
【0097】
時刻t4において、HUB#4は、HUB#3からの通信フレーム61_1の受信を開始する。HUB#4は、通信フレーム61_1よりも通信フレーム61_2の方が先着していると判断して、個数Nownを“2”のまま維持する。時刻t5において、HUB#4は、当該個数Nownを含む通信フレーム61_1を制御装置50Aに送信する。時刻t6に、制御装置50Aは、当該通信フレーム61_1を受信する。
【0098】
次に、変換器セル1に対して送信されるセル用フレームの送信タイミングについて説明する。HUB#1は、先着した通信フレーム61_1に含まれる個数Nmaxおよび個数Nownに基づいて、個数Nadを算出する。“Nmax=2”、“Nown=0”であるため、“Nad=Nmax-(Nown+1)=1”となる。HUB#1は、調整期間として“Dp×Nad(=1)”を設定する。これにより、HUB#1において、規定処理が開始されるタイミングは、通信フレーム61_1の受信終了後から調整期間経過後の時刻tx1となる。HUB#1は、時刻tx1から時間Dx後の時刻tcf1において、セル用フレームを変換器セル1に送信する。
【0099】
HUB#2は、先着した通信フレーム61_1に含まれる個数Nmax(=2)および個数Nown(=1)に基づいて、個数Nad(=0)を算出する。HUB#2における調整期間は“0”となるため、規定処理が開始されるタイミングは時刻tx1となり、セル用フレームの送信タイミングは時刻tcf1となる。
【0100】
HUB#3およびHUB#4においては、通信フレーム61_1が後着であるため、通信フレーム61_1に含まれる制御指令は送信されない。すなわち、通信フレーム61_1に基づくセル用フレームは送信されない。
【0101】
図11は、実施の形態2に従う通信方式の他の部分を説明するための図である。
図11を参照して、制御装置50Aからネットワーク520を介して送信される通信フレーム61_2の通信フローについて説明する。
【0102】
通信フレーム61_2の通信フローは、基本的に通信フレーム61_1の通信フローと同様である。時刻tfにおいて、制御装置50Aは、ネットワーク520への通信フレーム61_2の送信を開始する。HUB#4は、時刻t1において、通信フレーム61_2の受信を開始し、先着した通信フレーム61_2に含まれる個数Nownを“0”から“1”にカウントアップする。HUB#4は、時刻t2において、“1”を示す個数Nownを含む通信フレーム61_2をHUB#3に送信する。
【0103】
HUB#3は、時刻t2において、HUB#4からの通信フレーム61_2の受信を開始し、先着した通信フレーム61_2に含まれる個数Nownを“1”から“2”にカウントアップする。時刻t3において、HUB#3は、カウントアップ後の個数Nownを含む通信フレーム61_2をHUB#3に送信する。
【0104】
時刻t3において、HUB#2は、HUB#3からの通信フレーム61_2の受信を開始する。HUB#2は、通信フレーム61_2よりも通信フレーム61_1の方が先着していると判断して、個数Nownを“2”のまま維持する。時刻t4において、HUB#2は、当該個数Nownを含む通信フレーム61_2をHUB#4に送信する。
【0105】
時刻t4において、HUB#1は、HUB#2からの通信フレーム61_2の受信を開始する。HUB#1は、通信フレーム61_2よりも通信フレーム61_1の方が先着していると判断して、個数Nownを“2”のまま維持する。時刻t5において、HUB#1は、当該個数Nownを含む通信フレーム61_2を制御装置50Aに送信する。時刻t6に、制御装置50Aは、当該通信フレーム61_2を受信する。
【0106】
次に、変換器セル1に対して送信されるセル用フレームの送信タイミングについて説明する。HUB#4は、先着した通信フレーム61_2に含まれる個数Nmax(=2)および個数Nown(=0)に基づいて、個数Nad(=1)を算出する。HUB#4は、調整期間として“Dp×Nad(=1)”を設定する。これにより、HUB#4において、規定処理が開始されるタイミングは、通信フレーム61_2の受信終了後から調整期間経過後の時刻tx1となる。HUB#4は、時刻tx1から時間Dx後の時刻tcf1において、セル用フレームを変換器セル1に送信する。
【0107】
HUB#3は、先着した通信フレーム61_2に含まれる個数Nmax(=2)および個数Nown(=1)に基づいて、個数Nad(=0)を算出する。HUB#3における調整期間は“0”となるため、規定処理が開始されるタイミングは時刻tx1となり、セル用フレームの送信タイミングは時刻tcf1となる。HUB#2およびHUB#1においては、通信フレーム61_2が後着であるため、通信フレーム61_2に含まれる制御指令は送信されない。
【0108】
図10および
図11と、
図7とを比較して理解されるように、実施の形態2に従うセル用フレームの送信タイミング(すなわち、時刻tcf1)は、実施の形態1に従うセル用フレームの送信タイミング(すなわち、時刻tcf)よりも早い。具体的には、時刻tcf1は、時刻tcfよりも“Dp×2”で示す時間だけ早くなる。
【0109】
実施の形態2においても、各HUB#1~#4は、個数Nadを利用して、各HUB#1~#4の間で生じる時間Dpの差分を考慮して調整期間を設定する。これにより、各HUB#1~#4から各変換器セル1に送信される制御指令の送信タイミングを一致させることができる。
【0110】
<ネットワーク異常時>
図12は、
図8において一方のネットワークに異常が発生した場合の通信接続形態を示す図である。
図12では、ネットワーク520を構成する光ケーブルが断線した場合を想定する。上述のように、制御装置50Aは、ネットワーク510に通信フレーム61_1を送信し、ネットワーク520に通信フレーム61_2を送信する。ここで、ネットワーク510,520が健全である場合、送信された通信フレーム61_1,61_2は制御装置50Aに戻ってくる。
【0111】
制御装置50Aは、通信フレーム61を送信してから一定時間が経過しても当該通信フレーム61を受信しない場合、当該通信フレーム61を送信したネットワークに異常が発生した(例えば、断線した)と判断する。
図12の例では、制御装置50Aは、通信フレーム61_2を受信できないため、ネットワーク520に異常が発生したと判断する。
【0112】
図13は、ネットワーク異常時における通信方式を説明するための図である。
図13を参照して、ネットワーク520は断線状態であるため、制御装置50Aから送信される通信フレーム61_2の通信は不可となる。そのため、各HUB#1~#4は、ネットワーク510を介して、通信フレーム61_1のみを受信する。
【0113】
ここで、ネットワーク510,520が両方とも健全である場合には、各HUB#3,#4には、通信フレーム61_2が先着していた。しかし、ネットワーク520が断線して通信フレーム61_2の通信は不可であるため、各HUB#3,#4には、通信フレーム61_1が先着することになる。
【0114】
このことから、ネットワーク520に異常が発生した場合における通信方式は、
図7に示すようにネットワーク510のみで通信フレーム61を通信する通信方式と実質的に同じである。したがって、
図13に示す各HUB#1~#4の処理は、
図7に示す各HUB#1~#4の処理と同一となる。
【0115】
典型的には、ネットワーク520に異常が発生した場合、制御装置50Aは、ネットワーク510に対して通信フレーム61_1を送信する。各HUB#1~#4は、ネットワーク510を介して受信した通信フレーム61_1に含まれる個数Nownをカウントアップし、カウントアップ後のNownを含む通信フレーム61_1をネットワーク510を介して次のHUBに送信する。そのため、各HUB#1~#4から送信されるセル用フレームの送信タイミングは、
図7と同様に時刻tcfとなる。
【0116】
実施の形態3.
<通信接続形態および通信方式>
図14は、実施の形態3に従う通信接続形態を示す図である。
図14を参照して、中継装置群300_1は、
図8に示す中継装置群300Aと実質的に同一である。
【0117】
制御装置50Bは、通信ポート51~54を含む。制御装置50Bは、通信ポート51~54を介して、通信フレーム62を同時に送信する。
【0118】
図15は、実施の形態3に従う通信フレームの構成例を模式的に示す図である。
図15を参照して、通信フレーム62は、主なデータとして、フラグと、通信コマンドと、シーケンス番号と、調整パラメータとしての時間Dhad、個数Nmaxおよび個数Nownと、変換器セル1を制御するための制御指令と、誤り検出情報であるFCSとを含む。通信フレーム62は、通信フレーム61に時間Dhadのデータを追加したものである。時間Dhadの詳細については後述する。
【0119】
再び、
図14を参照して、
図8の構成と同様に、制御装置50Bと中継装置群300_1とを通信接続するためのリング状のネットワークは、ネットワーク510および520に二重化されている。ネットワーク510,520を介した通信フレーム62の通信方式は、実施の形態2で説明したネットワーク510,520を介した通信フレーム61の通信方式と同様である。距離R1については
図5で説明した通りである。
【0120】
中継装置群300_2は、2つの中継装置30Aを含む。中継装置群300_2に含まれる2つの中継装置30Aは、それぞれHUB♯1*,♯2*とも称される。各HUB♯1*,♯2*は、1以上の変換器セル1と接続される。
【0121】
図14の例では、制御装置50Bと、中継装置群300_2との間の距離が“R2”として示されている。具体的には、距離R2は、制御装置50Bの通信ポート53と、HUB#1*の上ポート31とを接続する光ファイバケーブルの長さである。または、距離R2は、制御装置50Bの通信ポート54と、HUB#2*の上ポート32とを接続する光ファイバケーブルの長さである。距離R2は、例えば、50mであり、距離R1よりも短い。
【0122】
制御装置50Bおよび中継装置群300_2に含まれる2つのHUB#1*,#2*は、リング状のデイジーチェーン型のネットワーク530(図中の実線の通信経路)と、リング状のデイジーチェーン型のネットワーク540(図中の点線の通信経路)とを介して接続される。ある局面では、通信フレーム62は、ネットワーク530を介して、制御装置50B、HUB#1*、HUB#2*、制御装置50Bの順に伝送される。他の局面では、通信フレーム62は、ネットワーク540を介して、制御装置50B、HUB#2*、HUB#1*、制御装置50Bの順に伝送される。
【0123】
このように、制御装置50Bと中継装置群300_2とを通信接続するためのリング状のネットワークは、通信フレーム62が互いに逆方向に周回するネットワーク530およびネットワーク540に二重化されている。
【0124】
制御装置50Bは、ネットワーク510~540に対して、通信フレーム62を同時に送信する。ネットワーク510を介して通信される通信フレーム62を便宜上“通信フレーム62_1”とも称し、ネットワーク520を介して通信される通信フレーム62を便宜上“通信フレーム62_2”とも称する。ネットワーク530を介して通信される通信フレーム62を便宜上“通信フレーム62_3”とも称し、ネットワーク540を介して通信される通信フレーム62を便宜上“通信フレーム62_4”とも称する。
【0125】
ここで、制御装置50Bから通信フレーム62が同時にネットワーク510~540に送信され、ネットワーク510~540の通信方式および通信速度は同一である。そのため、HUB#1,#2には通信フレーム62_1が先着し、HUB#3,#4には通信フレーム62_2が先着する。また、HUB#1*には通信フレーム62_3が先着し、HUB#2*には通信フレーム62_4が先着する。
【0126】
各HUB#1~#4が先着した通信フレームに含まれる制御指令を変換器セル1に送信する点は、実施の形態2で説明した通りである。具体的には、HUB#1,#2は、通信フレーム62_1に含まれる制御指令を変換器セル1に送信する。HUB#3,#4は、通信フレーム62_2に含まれる制御指令を変換器セル1に送信する。同様に、HUB#1*は、通信フレーム62_3に含まれる制御指令を変換器セル1に送信し、HUB#2*は、通信フレーム61_4に含まれる制御指令を変換器セル1に送信する。
【0127】
図16は、実施の形態3に従う調整パラメータの更新方式を説明するための図である。ここでは、調整パラメータである時間Dhadの設定方式、および個数Nownの更新方式について説明する。
図16には、ネットワーク510を介して通信される通信フレーム62_1の通信フローが示されている。
【0128】
通信フレーム62_1,62_2に含まれる個数Nownの更新方式については、
図9で説明した内容と同様である。具体的には、先着した通信フレーム62に含まれる個数Nownのみがカウントアップされ、後着した通信フレーム62に含まれる個数Nownはカウントアップされない。したがって、HUB#1は、先着した通信フレーム62_1に含まれる個数Nownが示す“0”を“1”にカウントアップし、HUB#2は、先着した通信フレーム62_1に含まれる個数Nownが示す“1”を“2”にカウントアップする。HUB#3,4においては、通信フレーム62_1に含まれる個数Nownは“2”のまま維持される。
【0129】
通信フレーム62_2に含まれる個数Nownについても上記と同様に更新される。具体的には、HUB#3は、先着した通信フレーム62_2に含まれる個数Nownが示す“0”を“1”にカウントアップし、HUB#4は、先着した通信フレーム62_2に含まれる個数Nownが示す“1”を“2”にカウントアップする。HUB#1,2においては、通信フレーム62_2に含まれる個数Nownは“2”のまま維持される。
【0130】
通信フレーム62_3,62_4に含まれる個数Nownの更新方式についても上記と同様に考えることができる。具体的には、HUB#1*は、先着した通信フレーム62_3に含まれる個数Nownが示す“0”を“1”にカウントアップする。HUB#2*においては、後着した通信フレーム62_3に含まれる個数Nownは“1”のまま維持される。一方、HUB#2*は、先着した通信フレーム62_4に含まれる個数Nownが示す“0”を“1”にカウントアップする。HUB#1*においては、後着した通信フレーム62_4に含まれる個数Nownは“1”のまま維持される。
【0131】
制御装置50Bは、中継装置群300_1,300_2との初回通信終了後において、通信フレーム62_1~62_4の各々に含まれる個数Nownのうちの最大値を個数Nmaxとして設定する。この場合。個数Nmaxは“2”に設定される。
【0132】
実施の形態3では、
図14に示すように、距離R1と距離R2とが異なるため、距離R1に応じた遅延時間Dh1と、距離R2に応じた遅延時間Dh2とが異なる。そのため、これらの通信遅延時間の差分を示す時間Dhadも考慮して、セル用フレームの送信タイミングが調整される。以下、時間Dhadの算出方式について説明する。なお、距離R1が距離R2よりも大きいため、遅延時間Dh1は遅延時間Dh2よりも大きい。
【0133】
制御装置50Bは、ネットワーク510を介して制御装置50Bから送信された通信フレーム62_1が各HUB#1~#4を経由して制御装置50Bに到達するまでに要する総通信遅延時間Dallと、各HUB#1~#4の個数とに基づいて、遅延時間Dh1を算出する。具体的には、制御装置50Bは、ネットワーク510に対して通信フレーム62_1を送信してから、当該通信フレーム62_1を受信するまでの総通信遅延時間Dallを計測する。
【0134】
図16の例の場合、総通信遅延時間Dallは、時刻tfから時刻t6までの時間に相当する。ネットワーク510の経路には4つのHUBが存在するため、“Dall=Dh1×2+Dp×HUB数(=4)”の関係式が成り立つ。制御装置50Bは、固定値である時間Dpと、計測した総通信遅延時間Dallと、当該関係式とに基づいて、距離R1によって生じる遅延時間Dh1を算出する。遅延時間Dh1の算出は、通信フレーム62_2を用いて行なわれる場合であってもよい。
【0135】
同様に、制御装置50Bは、距離R2によって生じる遅延時間Dh2を算出する。具体的には、ネットワーク530に対して通信フレーム62_3を送信してから、当該通信フレーム62_3を受信するまでの総通信遅延時間Dallxを計測する。ネットワーク530の経路には2つのHUBが存在するため、“Dallx=Dh2×2+Dp×HUB数(=2)”の関係式が成り立つ。制御装置50Bは、時間Dpと、計測した総通信遅延時間Dallxと、当該関係式とに基づいて、距離R2によって生じる遅延時間Dh2を算出する。遅延時間Dh2の算出は、通信フレーム62_4を用いて行なわれる場合であってもよい。
【0136】
制御装置50Bは、中継装置群300_1,300_2との初回通信終了後において、遅延時間Dh1から遅延時間Dh2を減算した減算値である時間Dhadを算出する。制御装置50Bは、各ネットワーク510~540を介して、時間Dhadを含む通信フレーム62を送信する。
【0137】
次に、通信フレーム62_1~62_4の通信フローおよびセル用フレームの送信タイミングについて説明する。ここで、上記時間Dhadは、制御装置50Bから短い距離R2に位置する各HUB#1*,#2*における調整期間の設定にのみ考慮され、制御装置50Bから長い距離R1に位置する各HUB#1~#4における調整期間の設定には考慮されない。なお、制御装置50Bは、各HUB#1~#4に対して、調整期間の設定の際に時間Dhadを無視するように通知してもよい。
【0138】
具体的には、実施の形態3に従う各HUB#1~#4における調整期間の設定方式は、
図10および
図11と同様である。したがって、各HUB#1~#4における、通信フレーム62_1,62_2の通信フローおよびセル用フレームの送信タイミングは、
図10および
図11と同様である。したがって、各HUB#1~#4は、時刻tx1から時間Dx後の時刻tcf1において、セル用フレームを変換器セル1に送信する。
【0139】
図17は、実施の形態3に従う通信方式を説明するための図である。具体的には、
図17には、通信フレーム62_3,62_4の通信フローが示されている。
【0140】
図17を参照して、時刻tfにおいて、制御装置50Bは、ネットワーク530への通信フレーム62_3の送信およびネットワーク540への通信フレーム62_4の送信を開始する。時刻t1aにおいて、HUB#1*は通信フレーム62_3の受信を開始し、HUB#2*は通信フレーム62_4の受信を開始する。遅延時間Dh2は、時刻tfから時刻t1aまでの時間に相当する。
【0141】
HUB#1*は、通信フレーム62_3に含まれる個数Nownを“0”から“1”にカウントアップする。HUB#2*は、通信フレーム62_4に含まれる個数Nownを“0”から“1”にカウントアップする。時刻t1aから時間Dp後の時刻t2aにおいて、HUB#1*はHUB#2*への通信フレーム62_3の送信を開始し、HUB#2*はHUB#1*への通信フレーム62_4の送信を開始する。
【0142】
時刻t2aから時間Dp後の時刻t4aにおいて、HUB#2*は制御装置50Bへの通信フレーム62_3の送信を開始し、HUB#1*は制御装置50Bへの通信フレーム62_4の送信を開始する。なお、HUB#1*は、後着した通信フレーム62_4に含まれる個数Nownを“1”のまま維持する。HUB#2*は、後着した通信フレーム62_3に含まれる個数Nownを“1”のまま維持する。時刻t5aに、制御装置50Bは、当該通信フレーム62_3,62_4を受信する。
【0143】
次に、変換器セル1に対して送信されるセル用フレームの送信タイミングについて説明する。各HUB#1*,#2*は、個数Nown、個数Nmax、および時間Dhadに基づいて、自HUBにおける制御指令を含むセル用フレームの送信タイミングを調整する。具体的には、HUB#1*は、受信した通信フレーム62_3に含まれる個数Nmax(=2)および個数Nown(=0)と、演算式“Nad=Nmax-(Nown+1)”とを用いて、個数Nad(=1)を算出する。HUB#1*は、調整期間として“Dhad+Dp×Nad(=1)”を設定する。このことから、当該調整期間は、中継装置群300_1に含まれる各HUB#1~#4において設定される調整期間よりも時間Dhad(=Dh1-Dh2)だけ長く設定されることが理解される。
【0144】
これにより、HUB#1において、規定処理が開始されるタイミングは、通信フレーム62_3の受信終了後から調整期間経過後の時刻tx1となる。HUB#1*は、時刻tx1から時間Dx後の時刻tcf1において、セル用フレームを変換器セル1に送信する。HUB#2*においては、通信フレーム62_3が後着であるため、通信フレーム62_3に含まれる制御指令は送信されない。
【0145】
HUB#2*は、受信した通信フレーム62_4に含まれる個数Nmax(=2)および個数Nown(=0)に基づいて、個数Nad(=1)を算出する。HUB#2*は、調整期間として“Dhad+Dp×Nad(=1)”を設定する。これにより、HUB#2において、規定処理が開始されるタイミングは、通信フレーム62_4の受信終了後から調整期間経過後の時刻tx1となる。HUB#2*は、時刻tx1から時間Dx後の時刻tcf1において、セル用フレームを変換器セル1に送信する。
【0146】
このように、制御装置50Bが、異なる場所に配置された複数の中継装置群300_1,300_2と通信する場合であっても、各HUBは、個数Nadおよび時間Dhadを用いて、各HUBの間で生じる遅延時間差を考慮して調整期間を設定する。これにより、各HUBから各変換器セル1に送信される制御指令の送信タイミングを一致させることができる。
【0147】
<変形例>
実施の形態3では、
図14に示すように、制御装置50Bと中継装置群300_1との間の通信に用いられるネットワーク、および、制御装置50Bと中継装置群300_2との間の通信に用いられるネットワークが二重化される構成について説明したが、当該構成に限られず、実施の形態1のようにネットワークを二重化しない構成であってもよい。例えば、
図14において、通信ポート52,54およびネットワーク520,540を削除する構成であってもよい。
【0148】
この場合、中継装置群300_1に含まれる各HUB#1~#4は、ネットワーク510を介して制御装置50Bと通信する。中継装置群300_2に含まれる各HUB#1*,#2*は、ネットワーク530を介して制御装置50Bと通信する。各HUB#1~#4においては時間Dhadを用いずに調整期間が設定され、各HUB#1*,#2*においてのみ時間Dhadを用いて調整期間が設定される点は上記と同様である。
【0149】
なお、各HUB#1~#4および各HUB#1*,#2*における個数Nownの更新方式は、
図9で説明した更新方式と同様である。そのため、制御装置50Bは、中継装置群300_1,300_2との初回通信終了後において、通信フレーム62_1に含まれる個数Nown(=4)を受信し、通信フレーム62_3に含まれる個数Nown(=2)を受信する。したがって、当該個数Nown(=4)および当該個数Nown(=2)のうちの最大値である個数Nmaxは“4”に設定される。
【0150】
各HUB#1~#4は、個数Nown(=4)および個数Nmaxに基づいて、自HUBにおける制御指令の送信タイミングを調整する。各HUB#1*,#2*は、個数Nown(=2)、個数Nmax、および時間Dhadに基づいて、自中継装置における制御指令の送信タイミングを調整する。
【0151】
制御装置50Bは、ネットワーク510を介して制御装置50Bから送信された通信フレーム62_1が各HUB#1~#4を経由して制御装置50Bに到達するまでに要する総通信遅延時間Dallと、各HUB#1~#4の個数とに基づいて、遅延時間Dh1を算出する。同様に、制御装置50Bは、ネットワーク530を介して制御装置50Bから送信された通信フレーム62_3が各HUB#1*,#2*を経由して制御装置50Bに到達するまでに要する総通信遅延時間Dallxと、各HUB#1*,#2*の個数とに基づいて、遅延時間Dh2を算出する。
【0152】
なお、上述したように、各HUB#1~#4においては時間Dhadは利用されないため、各HUB#1~#4に送信される通信フレームには時間Dhadを含めず、各HUB#1*,#2*に送信される通信フレームにのみ時間Dhadを含めてもよい。
【0153】
実施の形態4.
上述した実施の形態1~3では、制御装置50と各変換器セル1との間に中継装置群300を設ける構成について説明した。実施の形態4では、中継装置群300を設けずに制御装置50が各変換器セル1と直接通信する構成について説明する。そのため、実施の形態4では、
図3に示す構成は適用されない。
【0154】
図18は、実施の形態4に従う通信接続形態を示す図である。具体的には、
図18では、セル群400が4つの変換器セル1によって構成される例が示されているが、変換器セル1の個数はこの例に限られず、2または3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。4つの変換器セル1は、それぞれセル♯1~♯4とも称される。
【0155】
図18の例では、制御装置50Cと、セル群400との間の距離が“R1”として示されている。典型的には、距離R1は、制御装置50Cと、セル群400のうちの最上流のセル#1との距離である。より詳細には、距離R1は、制御装置50Cの通信ポート56と、セル#1の通信ポート81とを接続する光ファイバケーブルの長さである。4つのセル#1~#4の各々は、通信ポート81と、セル制御部27と、変換回路21とを含む。
【0156】
制御装置50Cおよび4つのセル#1~#4は、リング状のデイジーチェーン型のネットワーク560を介して接続される。具体的には、制御装置50Cの通信ポート56はセル#1の通信ポート81に接続される。セル#1の通信ポート81はセル#2の通信ポート81にさらに接続される。セル#2~#4についても同様である。したがって、通信フレーム61は、ネットワーク560を介して、制御装置50C、セル#1、セル#2、セル#3、セル#4、制御装置50Cの順に伝送される。
【0157】
セル#1のセル制御部27は、通信フレーム61に含まれる制御指令を取り出し、当該制御指令に基づいてゲート信号を生成し、当該ゲート信号を変換回路21に出力(送信)する。セル#2~#4についても同様である。
【0158】
図19は、実施の形態4に従う通信方式を説明するための図である。
図19に示す通信方式は、
図7に示す通信方式と概ね同様であるため、簡単に記載する。以下の各セル#1~#4における処理は、対応するセル制御部27により実行される。また、実施の形態4において、個数Nownは、制御装置50Cからネットワーク560に送信された通信フレーム61が自変換器セルに到達するまでに経由した変換器セルの数を示す。
【0159】
時刻tfにおいて、制御装置50Cは、通信ポート56を介して、ネットワーク560への通信フレーム61の送信を開始する。時刻tfから遅延時間Dh1後の時刻t1において、セル#1は、通信フレーム61の受信を開始する。
【0160】
セル#1は、時刻t1から時間Dp後の時刻t2において、次のセル#2への通信フレーム61の送信を開始する。実施の形態4に従う時間Dpは、セル#1が、上流の装置(この場合、制御装置50C)から通信フレーム61の受信を開始してから、下流の装置(この場合、セル#2)へ通信フレーム61の送信を開始するまでの遅延時間である。
【0161】
セル#1は、通信フレーム61に含まれる個数Nownが示す“0”を“1”にカウントアップして、“1”を示す個数Nownを含む通信フレーム61を次のセル#2に送信する。時刻t2において、セル#2は、セル#1からの通信フレーム61の受信を開始する。各セルは隣接配置されており、各セル間の通信距離が短い。そのため、各セル間の通信遅延時間は実質的に0とみなすことができる。
【0162】
セル#2は、個数Nownを“1”から“2”にカウントアップする。時刻t3において、セル#2は、カウントアップ後の個数Nownを含む通信フレーム61をセル#3に送信する。セル#3は、受信した通信フレーム61に含まれる個数Nownを“2”から“3”にカウントアップする。時刻t4において、セル#3は、カウントアップ後の個数Nownを含む通信フレーム61をセル#4に送信する。
【0163】
セル#4は、受信した通信フレーム61に含まれる個数Nownを“3”から“4”にカウントアップする。時刻t5において、セル#4は、カウントアップ後の個数Nownを含む通信フレーム61を制御装置50Cに送信する。時刻t6において、制御装置50Cは、当該通信フレーム61を受信する。
【0164】
次に、変換回路21に対して送信されるゲート信号の送信タイミングについて説明する。各セル#1~4のセル制御部27からのゲート信号の送信タイミングを合わせるために、制御装置50Cは、通信フレーム61に含まれる個数Nmaxを設定する。
【0165】
制御装置50Cとセル群400との初回通信時において、通信フレーム61が上記の流れに沿って送信される。初回通信時においては、各セル制御部27からゲート信号は送信されない。
【0166】
制御装置50Cは、セル#4から受信した通信フレーム61に含まれる個数Nown(すなわち、“4”)を個数Nmaxとして設定する。制御装置50Cは、設定した個数Nmaxを含む通信フレーム61をネットワーク560に送信する。
【0167】
セル#1は、受信した通信フレーム61に含まれる個数Nmaxおよび個数Nownに基づいて、ゲート信号の送信タイミングを調整する。具体的には、セル#1は、“Nmax-(Nown+1)”で演算される個数Nadを算出する。この場合、“Nad=3”となる。セル#1は、ゲート信号の送信タイミングの調整期間として、“Dp×Nad(=3)”を設定する。これにより、セル#1において、ゲート信号を送信するために必要な規定処理が開始されるタイミングは、通信フレーム61の受信終了後から調整期間経過後の時刻txとなる。セル#1は、時刻txから時間Dy後の時刻tgにおいて、ゲート信号を変換回路21に送信(出力)する。
【0168】
上記の規定処理は、例えば、通信フレーム61に含まれる制御指令を取り出す処理、取り出した制御指令に基づいてゲート信号を生成する処理等を含む。規定処理の処理時間を示す時間Dyは固定値に設定され、各変換器セルにおいて共通である。
【0169】
セル#2は、調整期間として“Dp×Nad(=2)”を設定する。これにより、セル#2において規定処理が開始されるタイミングは時刻txとなるため、セル#2においても、ゲート信号の送信タイミングは時刻tgとなる。同様に、セル#3は、調整期間として“Dp×Nad(=1)”を設定する。セル#4は、調整期間を“0”に設定する。これにより、セル#3,#4においても、ゲート信号の送信タイミングは時刻tgとなる。
【0170】
上記のように、各セルが通信フレーム61の受信を終了してから、変換回路21にゲート信号を送信するまでの期間は、調整期間(すなわち、“Dp×Nad”に対応する期間)と、規定処理を実行する処理期間(すなわち、時間Dyに対応する期間)とを含む。
【0171】
各セル#1~#4は、個数Nadを利用して、各セル#1~#4の間で生じる時間Dpの差分を考慮して調整期間を設定する。例えば、複数のセル#1~#4のうちの1のセルが受信した個数Nownが示す数がk(ただし、kは0以上の整数)であり、他のセルが受信した個数Nownが示す数がm(ただし、mはkよりも大きい整数)である場合、当該1のセルにおける調整期間は、他のセルにおける調整期間よりも長くなる。具体的には、1のセルにおける調整期間と、他のセルにおける調整期間との差分時間は、固定時間(例えば、時間Dp)の(m-k)倍となる。
【0172】
上記のように、変換器セル1は、複数の変換器セル1の各々において生成されるゲート信号が同時に送信されるように、個数Nmaxおよび個数Nownに基づいて、自変換器セルにおいて生成されるゲート信号の送信タイミングを調整する。変換器セル1は、当該調整された送信タイミングに従って、自変換器セルにゲート信号を送信する。これにより、各変換回路21に送信されるゲート信号の送信タイミングを一致させることができる。したがって、各変換回路21へのゲート信号の到達時間が一致するため、変換器セル1の制御のばらつきを防止して高い制御性能を維持することができる。
【0173】
ここでは、実施の形態1の通信接続形態をベースとして上述した実施の形態4を説明したが、実施の形態2,3の通信接続形態をベースとして実施の形態4を適用する構成であってもよい。例えば、実施の形態2と同様に、制御装置50Cとセル群400とを接続するネットワークが、通信フレームが互いに逆方向に周回する2つのネットワークに二重化されていてもよい。実施の形態3と同様に、制御装置50Cが、セル群400および他のセル群と通信する構成であってもよい。これらの場合、実施の形態2および3において各HUBで実行される処理は、典型的には、実施の形態4に従う各変換器セル1のセル制御部27により実行される。これにより、各変換回路21に送信されるゲート信号の送信タイミングを一致させる。
【0174】
その他の実施の形態.
上述の実施の形態として例示した構成は、本開示の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。また、上述した実施の形態において、他の実施の形態で説明した処理および構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
【0175】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0176】
1 変換器セル、2 交流回路、3 変圧器、4 直流回路、5 指令生成装置、6 電力変換器、7a,7b リアクトル、8u,8v,8w レグ回路、9a,9b アーム電流検出器、10 交流電圧検出器、11a,11b 直流電圧検出器、13nu~13nw 負側アーム、13pu~13pw 正側アーム、15 交流電流検出器、21 変換回路、22A,22B スイッチング素子、23A,23B ダイオード、24 蓄電素子、25 電圧検出器、27 セル制御部、28 バイパススイッチ、30,30A 中継装置、31,32 上ポート、35 下ポート、50,50A~50C 制御装置、70 入力変換器、71 サンプルホールド回路、72 マルチプレクサ、73 A/D変換器、75 RAM、76 ROM、77 入出力インターフェイス、78 補助記憶装置、79 バス、100 電力変換装置、300,300A 中継装置群、400 セル群、510~540,560 ネットワーク。
【要約】
電力変換装置(100)は、電力変換器(6)と、制御装置(50)と、複数の中継装置(30)とを備える。制御装置(50)は、リング状のネットワーク(510)を介して、通信フレーム(61)を複数の中継装置(30)に送信する。複数の中継装置(30)の各々は、通信フレーム(61)が自中継装置(30)に到達するまでに経由した中継装置(30)の数に関する第1情報と、第1情報が示す数の最大値を示す第2情報と、複数の変換器セル(1)を制御するための制御指令とを含む通信フレーム(61)を受信し、複数の中継装置(30)から制御指令が同時に送信されるように、第1情報と第2情報とに基づいて、自中継装置(30)における制御指令の送信タイミングを調整し、調整された送信タイミングに従って、自中継装置(30)に接続された1以上の変換器セル(1)に制御指令を送信する。