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特許7607857ヒトパピローマウイルスに対するDNAワクチン及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】ヒトパピローマウイルスに対するDNAワクチン及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/12 20060101AFI20241223BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241223BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241223BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20241223BHJP
   C12N 15/39 20060101ALI20241223BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20241223BHJP
   C12N 15/37 20060101ALI20241223BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20241223BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241223BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20241223BHJP
   A61K 39/39 20060101ALN20241223BHJP
【FI】
A61K39/12
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N7/01
C12N15/39
C12N15/863 Z
C12N15/37
A61P31/20
A61K48/00
A61P35/00
A61K39/39
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023532545
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 US2021060646
(87)【国際公開番号】W WO2022115490
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】63/117,473
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】524426913
【氏名又は名称】パピヴァックス・バイオテック・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ユン-ニエン・チャン
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-534286(JP,A)
【文献】米国特許第08187606(US,B2)
【文献】特表2017-507918(JP,A)
【文献】国際公開第2018/060288(WO,A1)
【文献】特表2018-531290(JP,A)
【文献】特表2003-511010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0250386(US,A1)
【文献】PLOS ONE,2014年,Vol.9, No.9,e108892
【文献】J. Immunother. Cancer,2020年06月,Vol.8, No.1,e000704
【文献】Lancet,1996年,Vol.347, No.9014,pp.1523-1527
【文献】Expert Rev. Vaccines,2016年,Vol.15, No.3,pp.313-329
【文献】Iranian journal of immunology,2017年,Vol.14, No.3,pp.180-191
【文献】Journal of Biomedical Science,2006年,Vol.13,pp.481-488
【文献】Vaccine,2009年,Vol.27,pp.5906-5912
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合遺伝子を含むDNA構築物を含むDNAワクチンであって、
前記融合遺伝子が、少なくとも1つのHPV抗原をコードする最適化されたヒトパピローマウイルス(HPV)部分配列及び免疫賦活剤をコードする部分配列を含み、
前記免疫賦活剤が、70キロダルトン(kDa)熱ショックタンパク質(HSP70)又はヒトカルレティキュリン(CRT)タンパク質であり、
前記最適化されたHPV部分配列が、
配列番号1に記載のHPV-16 E6発現遺伝子、
配列番号2に記載のHPV-16 E7発現遺伝子、
配列番号3に記載のHPV-18 E6発現遺伝子、及び
配列番号4に記載のHPV-18 E7発現遺伝
含む、DNAワクチン。
【請求項2】
前記最適化されたHPV部分配列が、HPV-16 E6、HPV-16 E7、HPV-18 E6、及びHPV-18 E7発現遺伝子を含み、
前記融合遺伝子が、配列番号5を含む、
請求項1に記載のDNAワクチン。
【請求項3】
前記融合遺伝子が、最適化されたシグナル配列を更に含み、
前記融合遺伝子が、配列番号6を含む、
請求項1に記載のDNAワクチン。
【請求項4】
それを必要とする対象におけるHPV関連疾患の治療のための医薬の製造における、請求項1から3のいずれか一項に記載のDNAワクチンの使用。
【請求項5】
それを必要とする対象におけるHPV関連疾患の治療のための医薬の製造における、(a)請求項1から3のいずれか一項に記載のDNAワクチンと(b)HPV-16及びHPV-18の両方のE6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスとの組合せの使用であって、前記DNAワクチンが、前記対象にプライミングワクチンとして投与するためのものであり、前記HPV-16及びHPV-18の両方のE6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスが、前記対象にブースティングワクチンとして投与するためのものである、使用。
【請求項6】
前記HPV-16及びHPV-18の両方のE6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスが、TA-HPVである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記TA-HPVが、1×104プラーク形成単位(pfu)から2×108pfuまでにわたる用量で投与される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記DNAワクチンが、対象当たり100マイクログラムから対象当たり20ミリグラムまでにわたる用量で投与される、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
それを必要とする対象におけるHPV関連疾患の治療における使用のための、請求項1から3のいずれか一項に記載のDNAワクチン。
【請求項10】
それを必要とする対象におけるHPV関連疾患の治療における使用のための、(a)請求項1から3のいずれか一項に記載のDNAワクチンと(b)HPV-16及びHPV-18の両方のE6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスとの組合せであって、前記DNAワクチンが、前記対象にプライミングワクチンとして投与するためのものであり、前記HPV-16及びHPV-18の両方のE6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスが、前記対象にブースティングワクチンとして投与するためのものである、組合せ
【請求項11】
前記HPV-16及びHPV-18の両方のE6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスが、TA-HPVである、請求項10に記載の使用のための組合せ
【請求項12】
前記TA-HPVが、1×104プラーク形成単位(pfu)から2×108pfuまでにわたる用量で投与される、請求項11に記載の使用のための組合せ
【請求項13】
前記DNAワクチンが、対象当たり100マイクログラムから対象当たり20ミリグラムまでにわたる用量で投与される、請求項11に記載の使用のための組合せ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、これによって参照により本明細書に完全に組み込まれる2020年11月24日に出願された「HUMAN PAPILLOMAVIRUS DNA VACCINE」という表題の米国仮特許出願第63/117,473号の利益及び優先権を主張するものである。
【0002】
配列表の参照
本出願には、2022年1月7日に作成された名称「220107-137111-sequence-listing-v1F」、サイズ19,844バイトの情報交換用米国標準コード(American Standard Code for Information Interchange)(ASCII)テキストファイルとして配列表が付随する。配列表は、これによって参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0003】
本開示は、一般には、DNAワクチン、特にHPV関連疾患に対するDNAワクチンに関し、より詳細には、DNAワクチンをコドン最適化によって改善することに関する。
【背景技術】
【0004】
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸がん、肛門がん、陰茎がん、外陰部がん、膣がん、及び頭頸部がんを含むいくつかのヒトがんにおける病原因子である。HPVに対する現行のワクチン、例えば、Gardasil(登録商標)及びCervarix(登録商標)等は、HPV感染の防止に関する臨床的有効性は示されているが、HPV感染又はHPV関連がんをすでに有している患者の治療に関しては効果がない。したがって、HPVに感染している又は更にはHPV関連疾患に罹患している患者に対する治療用ワクチンの開発が強く求められている。
【0005】
デオキシリボ核酸(DNA)ワクチン接種は、1つ又は複数の抗原をコードするDNA配列を含有する遺伝子操作されたプラスミドを注射することによって感染から保護する又は疾患を治療するための技法である。DNAワクチンには、製造の安全性、スピード、及び予測可能性、温度安定性、設計の柔軟性、並びに、より広範囲の免疫応答型を誘導することができることを含む、従来のワクチンに勝る理論的利点がある。上記の利点にもかかわらず、DNAワクチンには、一般に、動物において強力な抗原特異的免疫応答を誘導することへの障害がある。例えば、HPV E6及びE7遺伝子を用いたDNAワクチン接種は、当該ウイルスが、低レベルのE6/E7発現を含め、宿主による認識を逃れる進化した機構を有することから、免疫原性が低い可能性がある。したがって、ベクター設計の改善、抗原コドン最適化、従来のアジュバント及び分子アジュバントの使用、電気穿孔(EP)、分子アジュバントの同時発現、並びにプライムブースト戦略を含めた、DNAワクチン免疫原性を増強するための多数の異なる戦略の試験が行われている(L. Li及びN. Petrovsky、Expert Rev Vaccines. 2016;15 (3): 313-29)。
【0006】
コドン最適化は、同義変異を使用して、DNAワクチン中の抗原発現遺伝子等の目的の遺伝子のタンパク質発現を増大させる手法を指す。しかし、コドン最適化は必ずしもDNAワクチン有効性と正の相関にあるとは限らない。多くの試験により、稀なコドンが必ずしもスピード制限段階になるとは限らない可能性があり、また、頻繁に使用されるコドンによってタンパク質産生の増大が保証されるものではないことが示されている。更に、コード領域は、アミノ酸配列を指定するだけでなく、多くの場合、重複する遺伝情報も含有し、それには、タンパク質フォールディングに影響を及ぼし得るRNA二次構造が含まれる。同義のコドンではタンパク質のコンフォメーション及び機能が潜在的に変化することが示されている(L. Li及びN. Petrovsky、Expert Rev Vaccines. 2016;15 (3):313-29、V. P. Mauro及びS. A. Chappell、Methods Mol Biol. 2018;1850:275-288)。したがって、DNAワクチン中のコードされる抗原の発現を増強するためにコドン最適化を使用することにより、予想外の有害な結果が引き起こされる恐れがあり、慎重な検討が必要になる。更に、コドン最適化された配列を含むDNAワクチンにより所望の免疫原性が実現されるかどうかを予測することはいっそう難しい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】L. Li及びN. Petrovsky、Expert Rev Vaccines. 2016;15 (3): 313-29
【文献】V. P. Mauro及びS. A. Chappell、Methods Mol Biol. 2018;1850:275-288
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の理由を考慮すると、HPV関連疾患の治療においてより良好な有効性を有するDNAワクチンを提供するというまだ対処されていない必要性が存在する。しかし、HPV関連疾患に対するDNAワクチンの有効性をコドン最適化によって改善することは高度に予測不可能なままであり、したがって、当分野において解決すべき問題が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一部の実施形態では、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連疾患を有する対象に対するDNAワクチンが提供され得る。DNAワクチンは、融合遺伝子を含むDNA構築物を含み得る。融合遺伝子は、少なくとも1つのHPV抗原をコードする最適化されたHPV部分配列(subsequence)を含むDNA構築物のサブセグメントであり得る。最適化されたHPV部分配列は、配列番号1に記載のHPV-16 E6発現遺伝子、配列番号2に記載のHPV-16 E7発現遺伝子、配列番号3に記載のHPV-18 E6発現遺伝子、及び配列番号4に記載のHPV-18 E7発現遺伝子のうちの1つ又は複数を含み得る。
【0010】
一部の実施形態では、融合遺伝子は、免疫賦活剤をコードする部分配列を更に含み得る。
【0011】
一部の実施形態では、免疫賦活剤は、70キロダルトン(kDa)熱ショックタンパク質(HSP70)又はヒトカルレティキュリン(CRT)タンパク質であり得る。
【0012】
一部の実施形態では、最適化されたHPV部分配列は、HPV-16 E6、HPV-16 E7、HPV-18 E6、及びHPV-18 E7発現遺伝子を含み得、融合遺伝子は、配列番号5を含み得る。
【0013】
一部の実施形態では、融合遺伝子は、最適化されたシグナル配列を更に含み得、融合遺伝子は、配列番号6を含み得る。
【0014】
本開示の別の態様は、それを必要とする対象におけるHPV関連疾患を治療するための方法を提供し得る。方法は、上述のDNAワクチンを対象に投与する工程を含み得る。
【0015】
一部の実施形態では、方法は、HPV-16及びHPV-18の両方のE6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスを対象に投与する工程を更に含み得、ここで、DNAワクチンは、プライミングワクチン(priming vaccine)として投与され、HPV-16及びHPV-18の両方のE6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスは、ブースティングワクチン(boosting vaccine)として投与される。
【0016】
一部の実施形態では、HPV-16及びHPV-18の両方のE6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスは、TA-HPVであり得る。
【0017】
一部の実施形態では、TA-HPVは、1×104プラーク形成単位(pfu)から2×108pfuまでにわたる用量で投与され得る。
【0018】
一部の実施形態では、DNAワクチンは、対象当たり100マイクログラムから対象当たり20ミリグラムまでにわたる用量で投与され得る。
【0019】
上記の本開示の特色を詳細に理解することができるように、上に簡潔に要約されている本開示のより詳細な説明を、一部が添付図に例示されている実施形態を参照することによって得ることができる。しかし、添付図は本開示の典型的な実施形態のみを例示するものであり、したがって、その範囲を限定するものとみなされるべきでなく、本開示では他の等しく有効な実施形態が認められ得ることに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の一部の実施形態によるDNA構築物を示す概略図である。
図2】本開示のある実施形態に従った、pBI-1、pBI-10.1、pBI-11、又はpBI-12のいずれかをトランスフェクトしたヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞におけるHPV抗原の発現レベルを示すウエスタンブロット画像である。
図3A】本開示のある実施形態に従った、DNA構築物のそれぞれをトランスフェクトした細胞によるHPV抗原提示の能力を比較するための、マウスH-2Db制限HPV-16 E7ペプチド(アミノ酸49~57)特異的CD8+ T細胞(図3A)を使用したin vitro T細胞活性化アッセイにおける、対照群、pBI-10.1群、pBI-11群及びpBI-12群のIFN-γ+ CD8+ T細胞/総CD 8+細胞のパーセンテージを比較する棒グラフである。
図3B】本開示のある実施形態に従った、DNA構築物のそれぞれをトランスフェクトした細胞によるHPV抗原提示の能力を比較するための、マウスH-2Kb制限HPV-18 E6ペプチド(アミノ酸67~75)特異的CD8+ T細胞(図3B)を使用したin vitro T細胞活性化アッセイにおける、対照群、pBI-10.1群、pBI-11群及びpBI-12群のIFN-γ+ CD8+ T細胞/総CD 8+細胞のパーセンテージを比較する棒グラフである。
図4A】本開示のある実施形態に従った、種々のDNA構築物によって生じるHPV-16 E7特異的CD8+ T細胞応答を比較するための実験設計の概略図である。
図4B】本開示のある実施形態に従った、HPV-16 E7(アミノ酸49~57)ペプチドによって刺激した、pBI-10.1、pBI-11、又はpBI-12のいずれかを用いたワクチン接種を受けたマウスから脾細胞を調製した後の、脾細胞3×105個当たりのHPV-16 E7特異的IFN-γ+ CD8+ T細胞の数を比較する棒グラフである。
図5A】本開示のある実施形態に従った、HPV-16 E6/E7+ TC-1腫瘍モデルを使用したin vivo腫瘍治療実験の実験設計の概略図である。
図5B】本開示のある実施形態に従った、HPV-16 E7(アミノ酸49~57)ペプチド負荷四量体染色を使用し、両側スチューデントのt検定を使用した、無処置のマウス又はpBI-10.1、pBI-11、若しくはpBI-12を用いた処置を受けたマウスから調製された末梢血単核細胞(PBMC)におけるHPV-16 E7特異的CD8+ T細胞/総CD 8+細胞のパーセンテージを示す棒グラフである。
図5C】本開示のある実施形態に従った、HPV-18 E6(アミノ酸67~75)ペプチド負荷四量体染色を使用し、両側スチューデントのt検定を使用した、無処置のマウス又はpBI-10.1、pBI-11、若しくはpBI-12を用いた処置を受けたマウスから調製されたPBMCにおけるHPV-18 E6特異的CD8+ T細胞/総CD 8+細胞のパーセンテージを示す棒グラフである。
図5D】本開示のある実施形態に従った、in vivo腫瘍治療実験における無処置のマウス及びpBI-10.1、pBI-11、又はpBI-12を用いた処置を受けたマウスにおけるTC-1腫瘍体積を示す曲線チャートである。
図5E】本開示のある実施形態に従った、in vivo腫瘍治療実験における、無処置のマウス及びpBI-10.1、pBI-11、又はpBI-12を用いた処置を受けたマウスにおける生存確率を示すカプラン・マイヤー生存曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
慣例に従って、種々の記載の特色は一定の縮尺で描かれたものではなく、本開示に関連する特色が強調されるように描かれている。図面及び本文全体を通して、同様の参照文字は同様の要素を示す。
【0022】
ここで本開示を、本開示の例示的な実施形態が示されている付属図を参照して以下により詳細に説明する。しかし、本開示は、多くの異なる形態で具体化され、本明細書に記載の例示的な実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。そうではなく、これらの例示的な実施形態は、本開示が綿密且つ完全なものになるように、及び本開示の範囲が当業者に十分に伝わるように提示される。全体を通して、同様の参照数字は同様の要素を指す。
【0023】
本明細書において使用される用語法は、単に特定の例示的な実施形態を記載するためだけのものであり、本開示を限定するものではない。本明細書で使用される場合、単数形である「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈によりそうでないことが明白に示されない限り、複数の形態も含むものとする。更に、「含む(comprises)」及び/若しくは「含む(comprising)」又は「含む(includes)」及び/若しくは「含む(including)」又は「有する(has)」及び/若しくは「有する(having)」という用語は、本明細書で使用される場合、明示された特色、領域、整数、工程、操作、要素、及び/又は構成成分の存在を明記するが、1つ又は複数の他の特色、領域、整数、工程、操作、要素、構成成分、及び/又はこれらの群の存在又は追加を排除するものではないことも理解されよう。
【0024】
特に定義されていなければ、本明細書で使用される用語(科学技術用語を含む)は全て、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。更に、一般に使用される辞書において定義されている等の用語は、関連する技術分野及び本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書においてそのように明白に定義されていなければ、理想的な又は過度に形式的な意味で解釈されないことも理解されよう。
【0025】
本開示のDNAワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連疾患を有する対象に対して提供される。HPV関連疾患を有する対象は、これだけに限定されないが、疣贅、乳頭腫、上皮内新形成、陰茎がん、膣がん、外陰部がん、肛門がん、中咽頭がん、非黒色腫皮膚がん、結膜がん、又は子宮頸がんに罹患している哺乳動物(例えば、ヒト、マウス等)であり得る。
【0026】
DNAワクチンは、融合遺伝子を含むDNA構築物を含み得、ここで、融合遺伝子は、コドン最適化されたヒトパピローマウイルス(HPV)部分配列を含む。DNAワクチンは、本明細書に記載される文脈では、最適化されたDNAワクチンとも称され得る。
【0027】
少なくとも1つのHPV抗原をコードするコドン最適化された部分配列(例えば、最適化されたHPV部分配列)を含む合成融合遺伝子が提供され得る。具体的には、最適化されたHPV部分配列は、配列番号1に記載のHPV-16 E6抗原をコードするHPV-16 E6発現遺伝子、配列番号2に記載のHPV-16 E7抗原をコードするHPV-16 E7発現遺伝子、配列番号3に記載のHPV-18 E6抗原をコードするHPV-18 E6発現遺伝子、及び配列番号4に記載のHPV-18 E7抗原をコードするHPV-18 E7発現遺伝子のうちの1つ又は複数を含み得る。
【0028】
一部の実施形態では、融合遺伝子を、ベクターとして機能するpNGVL4aプラスミドにクローニングして、DNA構築物をもたらすことができ、したがって、融合遺伝子をDNA構築物のサブセグメントにすることができる。さらなる実施形態では、代替及び/又は追加的なプラスミドを使用して本明細書に記載のベクターをもたらすことができる。
【0029】
一部の実施形態では、ワクチンを受ける対象においてより強力な免疫応答を創出するために、DNAワクチンにアジュバント等の成分を更に含んでもよい。
【0030】
一部の実施形態では、HPV関連疾患に対する対象の免疫応答を増強するために異種プライムブーストレジメンにおいて使用される併用療法をもたらすために、DNAワクチンがプライミングワクチンとして投与されてもよく、HPV-16及びHPV-18の両方のE6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスが続いてブースティングワクチンとして投与されてもよい。例えば、DNAワクチンは対象当たり100マイクログラムから対象当たり20ミリグラムまでにわたる用量で投与されてもよく、HPV-16及びHPV-18の両方のE6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスは1×104pfuから2×108pfuまでにわたる用量で投与されてもよい。
【0031】
一部の実施形態では、HPV-16及びHPV-18の両方のE6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスは、TA-HPVであり得る。TA-HPVは、HPV 16型及び18型の癌遺伝子であるE6及びE7を発現する組換えワクシニアウイルスワクチンである。ワクシニアウイルスWyeth株ゲノム内の中立部位にp7.5及びH6プロモーターの制御下でHPV-16及びHPV-18癌遺伝子E6及びE7をヘッドトゥヘッドの位置付けで挿入することができる(L. K, Borysiewiczら、Lancet.、1996 Jun 1;347 (9014):1523-7)。HPV-16及びHPV-18遺伝子のどちらに関しても、E6/E7融合オープンリーディングフレームが創出されるようにE6終結コドンを変更し、E7のRb結合性部位が不活化されるように定義された変異を導入することができる。TA-HPVは1×104pfuから2×108pfuまでにわたる用量で投与され得る。好ましくは、TA-HPVは2×104pfuから5×107pfuまでにわたる用量で投与され得る。
【0032】
DNAワクチンのDNA構築物の例を以下の通り記載する。図1に、4つの異なるDNA構築物(pBI-1、pBI-10.1、pBI-11、及びpBI-12)を例示する。各DNA構築物は、シグナルペプチドをコードする部分配列(図1において「S」と示されている)、免疫賦活剤をコードする部分配列(例えば、図1のHSP70)、並びに1つ又は複数のHPV抗原(例えば、HPV-16 E7(若しくは図1のE7(16))、HPV-18 E7(若しくは図1のE7(18))、HPV-16 E6(若しくは図1のE6(16))、及び/又はHPV-18 E6(若しくは図1のE6(18)))をコードする部分配列を含む融合遺伝子を含む。一部の実施形態では、免疫賦活剤は、これだけに限定されないが、70キロダルトン熱ショックタンパク質(HSP70)又はヒトカルレティキュリン(CRT)タンパク質を含み得る。
【0033】
一部の実施形態では、pBI-1は、配列番号8に記載のヌクレオチド配列を有し、シグナルペプチドをコードする部分配列、「解毒(detox)」形態のHPV-16 E7発現遺伝子をコードするHPV部分配列、及びHSP70をコードする部分配列を含む融合遺伝子を含むDNA構築物である。「解毒」という用語は、HPV癌遺伝子(例えば、E6又はE7)DNAが、癌化することができないタンパク質を発現するように変異によって改変されたものであることを意味する。一部の実施形態では、pBI-10.1は、配列番号7に記載のヌクレオチド配列を有し、シグナルペプチドをコードする部分配列、「解毒」形態のHPV-16 E7発現遺伝子、「解毒」形態のHPV-18 E7発現遺伝子、「解毒」形態のHPV-16 E6発現遺伝子、及び「解毒」形態のHPV-18 E6発現遺伝子をコードするHPV部分配列、並びにHSP70をコードする部分配列を含む融合遺伝子を含むDNA構築物である。
【0034】
HPV抗原の発現を増大させ、安全性及び改善された免疫原性を有するHPV関連疾患に対するDNAワクチンを更に実現するために、癌化することができないタンパク質を発現するように変異させることによって、及びコドン最適化によって、それぞれHPV-16 E6、HPV-16 E7、HPV-18 E6、及びHPV-18 E7をコードする最適化されたHPV部分配列を設計することができる。最適化されたHPV-16 E6発現遺伝子は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含み得る。最適化されたHPV-16 E7発現遺伝子は、配列番号2に記載のヌクレオチド配列を含み得る。最適化されたHPV-18 E6発現遺伝子は、配列番号3に記載のヌクレオチド配列を含み得る。最適化されたHPV-18 E7発現遺伝子は、配列番号4に記載のヌクレオチド配列を含み得る。
【0035】
配列番号1に記載のHPV-16 E6発現遺伝子、配列番号2に記載のHPV-16 E7発現遺伝子、配列番号3に記載のHPV-18 E6発現遺伝子、及び配列番号4に記載のHPV-18 E7発現遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つのHPV抗原をコードする最適化されたHPV部分配列を含み得る融合遺伝子を含むように、DNA構築物を設計することができる。一部の実施形態では、pBI-11は、配列番号5に記載のヌクレオチド配列を有し、シグナルペプチドをコードする部分配列、配列番号2に記載のHPV-16 E7発現遺伝子、配列番号4に記載のHPV-18 E7発現遺伝子、配列番号1に記載のHPV-16 E6発現遺伝子、及び配列番号3に記載のHPV-18 E6発現遺伝子をコードする最適化されたHPV部分配列、並びにHSP70をコードする部分配列を含む融合遺伝子を含むDNA構築物である。一部の実施形態では、pBI-12は、配列番号6に記載のヌクレオチド配列を有し、シグナルペプチドをコードする最適化されたシグナル配列、配列番号2に記載のHPV-16 E7発現遺伝子、配列番号4に記載のHPV-18 E7発現遺伝子、配列番号1に記載のHPV-16 E6発現遺伝子、及び配列番号3に記載のHPV-18 E6発現遺伝子をコードする最適化されたHPV部分配列、並びにHSP70をコードする部分配列を含む融合遺伝子を含むDNA構築物である。
【実施例1】
【0036】
HPV DNAワクチン構築物の設計及び合成
pBI-1 DNA構築物は、pNGVL4a-SigE7(解毒)HSP70として以前に記載されている(C. Trimpleら Vaccine 2003、21:4036-4042)。一実施例では、Bio basic社(Markham、ON、Canada)によって合成された、5'側にEcoRI及びKozak部位が隣接し、3'側にTth111I部位が隣接する、シグナルペプチド、HPV-16 E7(解毒)、HPV-18 E7(解毒)、HPV-16 E6(解毒)、及びHPV-18 E6(解毒)、並びにHSP70の5'部分(Tth111I部位まで)の融合タンパク質をコードするDNA断片のギブソンアセンブリにより、pBI-10.1 DNA構築物を引き出した。合成されたDNA断片をpBI-1にクローニングして、EcoRIとTth111Iの間の断片をHSP70とインフレームに置き換えた。
【0037】
pBI-10.1と同様に、pBI-11 DNA構築物にも、シグナルペプチド、HPV-16 E7、HPV-18 E7、HPV-16 E6、及びHPV-18 E6、並びにHSP70の融合タンパク質をコードする合成されたDNA断片を含めたが、pBI-11内のHPV-16 E7、HPV-18 E7、HPV-16 E6、及びHPV-18 E6の発現遺伝子は、更にコドン最適化したものであった。pBI-12 DNA構築物にもまた、シグナルペプチド、HPV-16 E7、HPV-18 E7、HPV-16 E6、及びHPV-18 E6、並びにHSP70の融合タンパク質をコードする合成されたDNA断片を含めたが、pBI-12内のシグナルペプチド、HPV-16 E7、HPV-18 E7、HPV-16 E6、及びHPV-18 E6の発現遺伝子は、更にコドン最適化したものであった。pBI-11又はpBI-12の合成されたDNA断片をpBI-1にクローニングして、EcoRIとTth111Iの間の断片をHSP70とインフレームに置き換えた。
【0038】
遺伝子発現のために最適化させたものであるか(図1、断片101)、解毒のために変異させたものであるか(図1、断片102)、又はネイティブなパピローマウイルス配列に基づくものである(図1、断片103)、各DNA構築物の合成されたDNA断片内の遺伝子が図1に示されている。
【実施例2】
【0039】
コドン最適化によってHPV抗原の発現レベルが増強する
種々のDNA構築物をトランスフェクトした細胞により、コードされる抗原が適切に産生されるかどうかを決定するために、ウエスタンブロット分析を行った。HEK293細胞に、pBI-1、pBI-10.1、pBI-11、又はpBI-12 DNA構築物のうちの1つを10マイクログラム(μg)でトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞溶解物をウエスタンブロット分析のために収集した。ウエスタンブロット分析の結果が図2に例示されている。pBI-1、pBI-10.1、pBI-11又はpBI-12をPrecast Tris-HClタンパク質ゲル(Life Technology社、Rockville、MD、USA)上で分離し、次いで、ニトロセルロースメンブレンに転写した(Bio-Rad(登録商標)Laboratories社、Hercules、CA)。ブロッキング後、メンブレンを、抗HPV-16-E7モノクローナル抗体(図2においてHPV16 E7 abと示されている)(Invitrogen、Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MAの8C9クローン)、抗HPV-18/16-E6(図2においてHPV18/16 E6 abと示されている)(Abcam PLC社、Cambridge、UKのCIP5クローン)又は抗GAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素)(図2においてGAPDHと示されている)(カタログ番号[no.] 60004-1-Ig; Proteintech(登録商標)Group社、Rosemont、IL)とハイブリダイズさせて、HPV-16 E7を含有する融合タンパク質、HPV-16/18 E6を含有する融合タンパク質、又はローディング対照としてGAPDH(Cat:60004-1-Ig、Proteintech(登録商標)Group社、Rosemont、IL)の発現を特徴付けた。ペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヒツジ抗マウス二次抗体(Amersham(商標)社、Piscataway、NJ、USA)及び化学発光(ECL+ detection kit; Amersham(商標)社、Piscataway、NJ、USA)を使用して抗体結合を検出した。
【0040】
図2に示されている結果から示される通り、全てのDNA構築物によりHPV-16 E7抗原を含有する融合タンパク質の発現が示された。pBI-10.1をトランスフェクトした細胞と比較して、pBI-11をトランスフェクトした細胞及びpBI-12をトランスフェクトした細胞では、より高いHPV-16 E7発現レベルがもたらされ、これにより、pBI-11及びpBI-12では、最適化されたHPV部分配列によってHPV-16 E7発現レベルが首尾よく増強されたことが示唆される。
【0041】
更に、pBI-10.1、pBI-11又はpBI-12のいずれをトランスフェクトした細胞においてもHPV-16 E6及び/又はHPV-18 E6が検出された。比較すると、pBI-11をトランスフェクトした細胞及びpBI-12をトランスフェクトした細胞におけるHPV-16 E6及び/又はHPV-18 E6発現レベルがpBI-10.1をトランスフェクトした細胞におけるHPV-16 E6及び/又はHPV-18 E6発現レベルよりも高く、pBI-11及びpBI-12の最適化されたHPV部分配列により、細胞がHPV-16 E6及びHPV-18 E6を増加した量で発現することが可能になったことが示される。
【0042】
総合すると、結果から、pBI-11及びpBI-12における最適化されたHPV部分配列によりHPV抗原の発現レベルの上昇が実現されることが示唆される。
【実施例3】
【0043】
pBI-11又はpBI-12をトランスフェクトした細胞は、MHCクラスI分子によるHPV抗原性ペプチドの提示を増強することが可能である
pBI-10.1、pBI-11、又はpBI-12 DNA構築物のいずれかをトランスフェクトした細胞によるHPV抗原提示の能力を比較するために、in vitro T細胞活性化アッセイを実施した。
【0044】
293-Db細胞又は293 Kb細胞に、pBI-10.1、pBI-11、若しくはpBI-12 DNA構築物のいずれかをトランスフェクトしたか、又はLipofectamine 2000を使用したニセトランスフェクションを行った。24時間後、これらの細胞を回収し、マウスH-2D b制限HPV-16 E7(アミノ酸49~57)ペプチド特異的CD8+ T細胞(図3Aに示されている)又はマウスH-2K b制限HPV-18 E6(アミノ酸67~75)ペプチド特異的CD8+ T細胞(図3Bに示されている)のいずれかと、GolgiPlug(商標)(BD Biosciences社、San Diego、CA)の存在下で共培養した。次いで、細胞を回収し、IFN-γ細胞内染色を実施して、HPV-16 E7抗原特異的CD8+ T細胞又はHPV-18 E6抗原特異的CD8+ T細胞の活性化を決定した。
【0045】
図3A及び図3Bに示されている結果から示される通り、pBI-11又はpBI-12をトランスフェクトした細胞は、pBI-10.1をトランスフェクトした細胞よりも多くのHPV-16 E7ペプチド(アミノ酸49~57)特異的CD8+ T細胞及びHPV-18 E6ペプチド(アミノ酸67~75)特異的CD8+ T細胞を活性化することができた。ニセトランスフェクトされた細胞では、HPV抗原性ペプチド(例えば、E7ペプチド(アミノ酸49~57)特異的CD8+ T細胞及びE6ペプチド(アミノ酸67~75)特異的CD8+ T細胞の両方)の認識できる活性化は少しも生じなかった。したがって、データから、pBI-11又はpBI-12をトランスフェクトした細胞におけるHPV-16/18 E6/E7融合タンパク質の発現の増強により、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)クラスI分子によるHPV抗原の提示が促進されて、HPV抗原特異的CD8+ T細胞が活性化されたことが示された。
【実施例4】
【0046】
pBI-11及びpBI-12によりHPV-16 E7特異的CD8+ T細胞性免疫応答の増強が導かれる
in vivo T細胞活性化アッセイを実施して、pBI-10.1、pBI-11、又はpBI-12のいずれかを用いたワクチン接種を受けたマウスにおける免疫応答を比較した。
【0047】
図4Aは、実験設計の概略図である。Taconic Biosciences社(Germantown、NY)から購入した6~8週齢の雌C57BL/6マウスに、マウス当たり25マイクログラム(μg)のpBI-1、pBI-10.1、pBI-11、又はpBI-12 DNA構築物のいずれかを用い、7日間の間隔で3回、筋肉内にワクチン接種を行った。最後のワクチン接種の1週間後、HPV-16 E6及びE7及びHPV-18 E6内の既知のMHC-Iペプチドを用いた刺激後にインターフェロン-γについての細胞内サイトカイン染色、その後のフローサイトメトリーによって決定されるCD8+ T細胞応答の分析のために脾細胞を収集した。
【0048】
図4Bに示されている結果から示される通り、pBI-11によるワクチン接種を受けたマウス及びpBI-12によるワクチン接種を受けたマウスの両方が、pBI-10.1によるワクチン接種を受けたマウスよりも有意に高いE7特異的CD8+ T細胞性免疫応答を示した。すなわち、最適化されたHPV部分配列を含むpBI-11及びpBI-12により、in vivoにおいて増強された抗原特異的CD8+ T細胞性免疫応答を誘導することができた。
【0049】
融合タンパク質発現レベル及びin vivo T細胞活性化アッセイのデータに基づいて、pBI-10.1をトランスフェクトした細胞におけるHPV抗原の発現と比較した、pBI-11又はpBI-12をトランスフェクトした細胞における、コドン最適化に起因したHPV抗原の発現の増強が、ワクチン接種を受けたマウスにおけるHPV抗原に対するより強力なT細胞性免疫応答に寄与することが示唆される。
【実施例5】
【0050】
pBI-11 DNA構築物により、HPV-16 E6/E7発現腫瘍モデル、TC-1における治療的な抗腫瘍応答が引き出される
本開示のDNA構築物の、HPV関連疾患に対する治療的な抗腫瘍効果を生じさせる能力を、HPV-16 E6/E7+ TC-1腫瘍モデルにおいて調査した。
【0051】
図5Aは、実験設計の概略図である。6~8週齢の雌C57BL/6マウスに、0日目にTC-1腫瘍細胞2×105個を皮下注射した。3日目、6日目、及び10日目に、腫瘍担持マウスに、pBI-10.1、pBI-11若しくはpBI-12(25μg/50マイクロリットル(μl)/マウス)を用い、筋肉内(I.M.)注射によってワクチン接種を行ったか、又は対照として無処置のままにした。一部の実施形態では、本明細書に記載のブースティングワクチンとして、TA-HPV等の代替及び/又は追加的なワクチン接種を使用してマウスにワクチン接種することができる。
【0052】
最終的なワクチン接種の1週間後、四量体染色のためにPBMCを収集した。四量体染色のために、マウスPBMCを、まず、精製された抗マウスCD16/32を用いて染色し、次いで、FITCとコンジュゲートした抗マウスCD8a及びPEとコンジュゲートしたHPV-16 E7(アミノ酸49~57)ペプチド負荷H-2Db四量体又はPEとコンジュゲートしたHPV-18 E6(アミノ酸67~75)ペプチド負荷H-2Kb四量体を用いて4℃で1時間にわたって染色した。洗浄後、細胞を、7-AADを用いて染色した。細胞をFACSCalibur(商標)フローサイトメーターで取得し、CellQuest Proソフトウェア(BD Biosciences社、Mountain View、CA)を用いて解析した。四量体染色の結果が図5B及び図5Cに示されている。
【0053】
腫瘍の成長を週に2回、触診及びデジタルカリパス測定によってモニタリングした。腫瘍体積を、式[最大直径×(直交する直径)2]×3.14/6を使用して算出した。算出された腫瘍体積が図5Dに示されている。図5Eに例示されている通り腫瘍担持マウスの生存率を記録した。自然死、及び死亡に至る2cmを超える腫瘍直径の両方を死亡として計数した。
【0054】
図5B及び5Cから、無処置のマウスと比較して、pBI-10.1を用いた処置を受けた腫瘍担持マウスは、HPV-16 E7特異的及びHPV-18 E6特異的CD8+ T細胞性免疫応答を示したことが実証される。更に、pBI-11又はpBI-12を用いた処置を受けた腫瘍担持マウスは、pBI-10.1を用いたワクチン接種を受けたマウスよりも有意に高いHPV-16 E7特異的及びHPV-18 E6特異的CD8+ T細胞性免疫応答を更に示した。更に、図5Cに示されている通り、pBI-11又はpBI-12を用いたワクチン接種を受けたマウスにおける腫瘍の成長は、pBI-10.1を用いた処置を受けたマウスにおける腫瘍の成長よりも有意に遅かった。更に、pBI-11又はpBI-12を用いたワクチン接種により、pBI-10.1を用いた処置を受けたマウスよりも良好な生存ももたらされた(図5D)。結果として、本開示の、最適化されたHPV部分配列を有する融合遺伝子を含むDNA構築物を含むDNAワクチン、例えば、pBI-11及びpBI-12により、樹立されたTC-1腫瘍に対する抗腫瘍免疫応答を有効に増強すること、及び腫瘍担持マウスの生存を延長することができる。
【0055】
結論として、本開示のHPV-16 E6(配列番号1)、HPV-16 E7(配列番号2)、HPV-18 E6(配列番号3)、及び/又はHPV-18 E7(配列番号4)をコードする最適化されたHPV部分配列を有するDNAワクチンは、最適化されたHPV部分配列を有さないDNAワクチンと比較して、HPV抗原の発現の増強及び免疫応答の改善を有意に誘導するものである。本開示の最適化されたHPV部分配列により、in vivoにおけるより強力な抗原特異的免疫応答が首尾よく実現され、より強力な抗腫瘍有効性に更に変換されることは驚くべきことである。
【0056】
本開示の教示を保持しながらデバイス及び方法の多数の改変及び変更を行うことができることが当業者には容易に認められよう。したがって、上記の開示は、添付の特許請求の範囲の境界によってのみ限定されるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0057】
101 断片
102 断片
103 断片
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
【配列表】
0007607857000001.app