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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】核シェルター換気システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20241223BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20241223BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20241223BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20241223BHJP
   F41H 11/02 20060101ALN20241223BHJP
【FI】
F24F7/007 B
E04H9/14 K
E04H9/14 Z
F24F7/06 B
F24F13/14 K
F41H11/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024093353
(22)【出願日】2024-06-07
【審査請求日】2024-06-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517320680
【氏名又は名称】アンカーハウジング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523487092
【氏名又は名称】株式会社司工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147393
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 一基
(72)【発明者】
【氏名】吉山 和實
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 修
(72)【発明者】
【氏名】大槻 純一
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112665075(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0052761(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0113018(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第04071422(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0184493(US,A1)
【文献】中国実用新案第216048179(CN,U)
【文献】国際公開第2017/061108(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0087943(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第114893046(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第116857740(CN,A)
【文献】米国特許第04733606(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
E04H 9/14
F24F 7/06
F24F 13/14
F41H 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から防護空間内に空気を導入可能な導入流路を形成する配管部と、
前記導入流路を閉鎖および開放可能に前記配管部に設けられるダンパー部と、
前記ダンパー部を電気エネルギーにより動作させるダンパー駆動部と、
前記ダンパー駆動部を制御するダンパー制御部と、
前記導入流路において前記ダンパー部より前記防護空間側に設けられており、前記導入流路内に気流を形成するファンと、
前記導入流路において前記ダンパー部より前記防護空間側に設けられており、前記導入流路内を通過する空気から所定の物質を除去するフィルター部と、
前記導入流路において前記ダンパー部より前記外部側に設けられるオリフィスリングを有し、流速を検出して前記ダンパー制御部へ検出信号を出力する爆風検出部と、
前記防護空間内に設けられており、前記ダンパー制御部に操作信号を送るスイッチと、を有し、
前記ダンパー制御部は、前記爆風検出部からの前記検出信号に基づき、前記ダンパー部が前記導入流路を閉鎖するように、前記ダンパー駆動部を制御する第1の制御と、前記スイッチからの前記操作信号に基づき、前記ダンパー部が前記導入流路を開放するように、前記ダンパー駆動部を制御する第2の制御と、を行い
前記爆風検出部は、前記オリフィスリングの第1取出口と第2取出口とに接続する第1計測口および第2計測口を有する差圧検出器である核シェルター換気システム。
【請求項2】
前記ファンは、前記導入流路において、前記ダンパー部と前記フィルター部との間に設けられている請求項1に記載の核シェルター換気システム。
【請求項3】
前記防護空間内に設けられており、前記防護空間における酸素および二酸化炭素の少なくとも一方の濃度を検出し、検出結果に応じて警告動作を行う気体成分検出部を有する請求項1に記載の核シェルター換気システム。
【請求項4】
前記導入流路に設けられており、前記導入流路における前記フィルター部の前後の差圧を検出するフィルター用差圧計を有する請求項1に記載の核シェルター換気システム。
【請求項5】
前記配管部は、少なくとも一部がL字状に屈曲しており、前記配管部の屈曲部を挟んで一方側に前記ダンパー部が配置されており、他方側に前記ファンおよび前記フィルター部が配置してある請求項1に記載の核シェルター換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核シェルターの防護空間内に外部から安全に空気を導入する核シェルター換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
万が一自然災害や戦争などが生じた場合、原子力発電所の事故、核兵器の使用、宇宙空間からの放射性物質の飛来などにより、環境の放射能レベルが上昇する事態が想定される。このような危機的状況において生物が生存するためには、環境の放射能レベルが一定以下に低下するまでの期間、放射線から防護された防護空間に留まることが有効であり、そのような防護空間を形成する核シェルターが注目されている。
【0003】
核シェルターにおける換気システムでは、シェルター内に安全に空気を導入するためにフィルター等を設けることに加え、爆風などにより外部の圧力が急上昇した際に、換気システムの配管等を介してシェルター内の圧力が急上昇することを防止できるようになっていることが好ましい。従来の核シェルター換気システムでは、耐爆バルブなどと呼ばれるバルブを設けたり、または、緊急時のみに配管を開く等の対策が提案されている(特許文献1、特許文献2等参照)。
【0004】
しかしながら、従来の耐爆バルブは、スプリング等で動作する機械式のものであり、非常時において適切に動作するか否かの動作確認を行うことが容易ではなく、メンテナンス性等の観点で課題がある。また、緊急時のみに配管を開く換気システムの場合、緊急時には安全に配管が閉鎖する非緊急時の換気システムを別途設ける必要があり、換気システムが複雑になる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-167379号公報
【文献】特開2019-219403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、通常時および避難時のいずれの場合においても外部から防護空間内に安全に空気を導入でき、かつ、メンテナンス性の良好な核シェルター用換気システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る核シェルター換気システムは、
外部から防護空間内に空気を導入可能な導入流路を形成する配管部と、
前記導入流路を閉鎖および開放可能に前記配管部に設けられるダンパー部と、
前記ダンパー部を電気エネルギーにより動作させるダンパー駆動部と、
前記ダンパー駆動部を制御するダンパー制御部と、
前記導入流路において前記ダンパー部より前記防護空間側に設けられており、前記導入流路内に気流を形成するファンと、
前記導入流路において前記ダンパー部より前記防護空間側に設けられており、前記導入流路内を通過する空気から所定の物質を除去するフィルター部と、
前記ダンパー部より前記外部側に設けられており、圧力および流速のうち少なくとも一方を検出して前記ダンパー制御部へ検出信号を出力する爆風検出部と、
前記防護空間内に設けられており、前記ダンパー制御部に操作信号を送るスイッチと、を有し、
前記ダンパー制御部は、前記爆風検出部からの前記検出信号に基づき、前記ダンパー部が前記導入流路を閉鎖するように、前記ダンパー駆動部を制御する第1の制御と、前記スイッチからの前記操作信号に基づき、前記ダンパー部が前記導入流路を開放するように、前記ダンパー駆動部を制御する第2の制御と、を行う。
【0008】
このような核シェルター換気システムでは、通常時にも使用できるファンやフィルター部を備え、かつ、爆風検出部が外部での圧力上昇や爆風の発生を検出して緊急時には安全に導入流路を自動的に閉じるため、通常時も緊急避難時も使える換気システムとして好適である。圧力上昇や爆風の発生を検出して自動的に閉じたダンパーは、防護空間内のスイッチを操作することにより、再度開くことができる。また、ダンパー駆動部、制御部、および爆風検出部は電気エネルギーにより動作するため、動作チェックを比較的容易に行うことができ、メンテナンス性が良好であり、動作確実性とシェルターの安全性を高いレベルで確保できる。
【0009】
また、たとえば、前記ファンは、前記導入流路において、前記ダンパー部と前記フィルター部との間に設けられていてもよい。
【0010】
本発明に係る核シェルター換気システムでは、ファンをダンパー部とフィルター部との間に配置することにより、HEPAフィルターのような高い粒子捕集率のフィルターを用いた場合であっても、ファンを小型化し、静粛性を確保することができる。
【0011】
また、たとえば、前記爆風検出部は、差圧検出器であってもよい。
【0012】
差圧検出部によれば、爆風の発生を精度良く検出することが可能である。
【0013】
また、たとえば、核シェルター換気システムは、前記防護空間内に設けられており、前記防護空間における酸素および二酸化炭素の少なくとも一方の濃度を検出し、検出結果に応じて警告動作を行う気体成分検出部を有してもよい。
【0014】
このような核シェルター換気システムは、万が一ダンパー部によって導入流路が閉まったままの状態が続き、防護空間内の酸素濃度が減少したような場合において、スイッチを操作してダンパー部を開くように警告を行うことができる。
【0015】
また、たとえば、核シェルター換気システムは、前記導入流路に設けられており、前記導入流路における前記フィルター部の前後の差圧を検出するフィルター用差圧計を有してもよい。
【0016】
このような核シェルター換気システムは、フィルター用差圧計の検出値を確認することにより、フィルター部の目詰まりおよび交換時期を容易に認識できるため、メンテナンス性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る核シェルター換気システムの上面図である。
図2図2は、図1に示す核シェルター換気システムの第1の側面図である。
図3図3は、図1に示す核シェルター換気システムの第2の側面図である。
図4図4は、図1に示す核シェルター換気システムにおけるダンパー駆動部の外観図である。
図5図5は、図1に示す核シェルター換気システムにおけるダンパー部およびダンパー駆動部を流路方向から見た外観図である。
図6図6は、ダンパー部による導入流路の開閉動作を示す概念図である。
図7図7は、図1に示す核シェルター換気システムにおけるダンパー制御部の制御を示す概念図である。
図8図8は、図1に示す核シェルター換気システムにおけるフィルター部周辺の上面図である。
図9図9は、図8に示すフィルター部周辺の側面図である。
図10図10は、図1に示す核シェルター換気システムを有する核シェルターにおける各部の役割を概念的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る核シェルター換気システム10(以下、単に「換気システム10」とも言う。)の外観形状を上方から見た上面図である。また、図2は、図1に示す核シェルター換気システム10を水平方向から見た第1の側面図であり、図3は、図1に示す核シェルター換気システム10を図2とは直交する水平方向から見た第2の側面図である。図1図3では、核シェルター換気システム10を備える核シェルター80の外形を、破線で示している。
【0019】
図1図3に示すように、換気システム10は配管部14を有する。配管部14の内部には、核シェルター80の外部から、核シェルター80の内部に形成される防護空間86(図10参照)内に空気を導入可能な導入流路16(図10参照)が形成されている。
【0020】
図10は、図1に示す換気システム10を有する核シェルター80における各部の関係を概念的に示すブロック図である。核シェルター80および換気システム10の全体構成については、主として図1図3に示す外観図と、図10に示すブロック図を用いて説明を行う。
【0021】
図1図3に示すように、換気システム10の配管部14は、核シェルター80の外壁部82における天井壁部分の内側に取り付けられている。ただし、配管部14としては天井壁部分に取り付けられるもののみには限定されず、核シェルター80の側壁部分や底壁部分に取り付ける構造も考えられる。
【0022】
図1図3に示すように、配管部14は、円筒状および角筒状の中空筒状の外形場を有しており、内部に導入流路16(図10等参照)を形成する。配管部14の一部は、後述するダンパー部20が内部に配置されるダンパー周壁21、ファン30を内蔵するファンボックス31、およびフィルター部40を内蔵するフィルターボックス41等で構成される。
【0023】
図10に示すように、配管部14により形成される導入流路16は、核シェルター80の外部と、核シェルター80の内部に形成される防護空間86とを接続する。図1図3に示すように、導入流路16を形成する配管部14の外部側の端部は、核シェルター80の天井壁に形成される外部空気の導入口84に接続している。一方、導入流路16を形成する配管部14における外部側の端部とは反対側の端部である吹き出し口17は、防護空間86に開口している。
【0024】
図1図3に示すように、配管部14および導入流路16には、ダンパー部20と、ファンボックス31内に設けられるファン30と、フィルターボックス41内に設けられるフィルター部40とが配置される。図1に示すように、配管部14の少なくとも一部はL字状に屈曲しており、配管部14の屈曲部を挟んで一方側にダンパー部20が配置されており、他方側にファンボックス31およびファン30並びにフィルターボックス41並びにフィルター部40が配置してある。
【0025】
配管部14を屈曲させることにより、核シェルター80の限られたスペースに換気システム10を形成しやすくなる。また、屈曲部を挟んで一方側にダンパー部20を配置することにより、ダンパー部20とファン30およびフィルター部40との間隔を広げ、爆風の内部側への伝搬を防止することができる。また、ファン30とフィルター部40とを直線的に並べることにより、ファン30は、フィルター部40を通過する気流を効率的に形成できる。ただし、配管部14は、必ずしも実施形態に示すように屈曲している必要はなく、ダンパー部20、ファン30およびフィルター部40を直線的に配置する配管部を採用することも可能である。
【0026】
図1図3に示すように、換気システム10は、配管部14に設けられるダンパー部20を有する。後述するように、ダンパー部20は、配管部14に形成される導入流路16を閉鎖および開放可能である。図1図3および図10に示すように、ダンパー部20は、導入流路16において、ファン30およびフィルター部40より外部側に設けられている。
【0027】
図4は、図1等に示す換気システム10におけるダンパー駆動部24の外観図であり、図5は、換気システム10におけるダンパー部20およびダンパー駆動部24を導入流路16の流路方向から見た外観図である。図5に示すように、ダンパー部20は、導入流路16内に回転可能に設けられる略円盤状の形状を有する。円盤状のダンパー部20の回転軸は、導入流路16の外に配置されるダンパー駆動部24により回転させることができる。
【0028】
図4および図5に示すダンパー駆動部24は、電動モータ等を有し、ダンパー部20を電気エネルギーにより動作させる。ダンパー駆動部24は、無線通信部25を有しており、図7に示すダンパー制御部28に対して無線通信することが可能である。ダンパー駆動部24が無線通信部25を有することにより、換気システム10に関する配線工事などを簡略化することができる。ただし、ダンパー駆動部24は、ダンパー制御部28に対して有線接続されているものであってもよく、ダンパー駆動部24とダンパー制御部28との信号のやりとりは、有線通信であってもよく、無線通信であってもよい。
【0029】
図6は、ダンパー部20による導入流路16の開閉動作を示す概念図である。図6において実線で示すように、円盤状のダンパー部20が略水平となる第1位置P1にある状態では、ダンパー部20は導入流路16を開放しており、外部の空気が導入流路16を介して防護空間86(図10参照)内に導入される。
【0030】
一方、図6において点線で示すように、円盤状のダンパー部20が略垂直となる第2位置P2にある状態では、ダンパー部20は導入流路16を閉鎖しており、ダンパー部20より防護空間86側の導入流路16は、外部側に対して遮蔽される。ダンパー部20の外径は、配管部14におけるダンパー部20周辺の一部分である円筒状のダンパー周壁21の内径と略一致し、ダンパー部20とダンパー周壁21との接触部分には、気密性を高めるコーキング処理をすることも好ましい。ダンパー部20が第2位置P2にある状態では、ダンパー部20の外周とダンパー周壁21の内周との接触部分は、高い気密性を奏する。ダンパー部20が導入流路16を閉鎖している状態における接触部分からの漏えい量は、たとえば圧力差0.1kPaにおいて0.1m3/min・mm2以下とすることができるが、特に限定されない。
【0031】
図6において細い矢印で示す第1位置P1から第2位置P2へのダンパー部20の回転移動は、図4および図5に示すダンパー駆動部24により行われる。第2位置P2から第1位置P1へのダンパー部20の回転移動も同様である。なお、ダンパー部20が導入流路16を開放している状態において、ダンパー部20は第1位置P1に位置してもよいが、第2位置P2を除く任意の位置に位置してもよい。たとえば、後述するダンパー制御部28は、ダンパー駆動部24を駆動してダンパー部20の位置(回転角度)を調整し、導入流路16の開放量を調整することができる。
【0032】
図10に示すように、換気システム10は、ダンパー駆動部24を制御するダンパー制御部28を有する。また、換気システム10は、ダンパー制御部28へ検出信号S1を出力する爆風検出部34と、ダンパー制御部28へ操作信号S2を送るスイッチ38とを有する。
【0033】
図10に示すように、爆風検出部34は、導入流路16におけるダンパー部20より外部側に設けられている。爆風検出部34は、爆風検出部34が設けられる位置における圧力および流速のうち少なくとも一方を検出することにより、核シェルター80の外部で発生した核爆発等に伴い生じる爆風を検出する。爆風検出部34は、爆風の発生を圧力および流速の少なくとも一方の検出値から検出し、ダンパー制御部28へ検出信号を出力する。
【0034】
一方、スイッチ38は、核シェルター80の防護空間86内に設けられており、防護空間86に避難している避難者によって操作することができる。スイッチ38は、避難者等による操作を検出し、ダンパー制御部28に操作信号S2を送る。核シェルター80に避難している避難者等は、スイッチ38を操作することにより、防護空間86を出ることなく、爆風の検出に伴いダンパー部20により閉鎖された導入流路16を開放し、換気システム10による防護空間86への空気の導入を再開できる。
【0035】
図7は、換気システム10におけるダンパー制御部28の制御を示す概念図である。図7に示すように、ダンパー制御部28は、爆風検出部34から入力される検出信号S1や、スイッチ38から入力される操作信号S2などを用いてダンパー駆動部24を制御し、配管部14が形成する導入流路16を開放したり、導入流路16を閉鎖したりすることができる。ダンパー制御部28は、集積回路等で構成される。
【0036】
すなわち、ダンパー制御部28は、爆風検出部34からの検出信号S1に基づき、ダンパー部20が導入流路16を閉鎖するように、ダンパー駆動部24を制御する第1の制御を行うことができる。また、ダンパー制御部28は、スイッチ38からの操作信号S2に基づき、ダンパー部20が導入流路16を開放するように、ダンパー駆動部24を制御する第2の制御を行うことができる。
【0037】
第1の制御は、爆風検出部34が爆風を検出した際に実施される。図7に示すように、爆風検出部34は、導入流路16に設置されるオリフィスリング36に接続する差圧検出器により構成され、導入流路16を流れる空気の流速を検出する。爆風検出部34を構成する差圧検出器の第1計測口34aは、オリフィスリング36の第1取出口36aに接続しており、差圧検出器の第2計測口34bは、オリフィスリング36の第2取出口36bに接続している。爆風検出部34は、爆風によって生じるような極めて高速の流速を検出した場合、検出信号S1をダンパー制御部28に送る。
【0038】
爆風検出部34から検出信号S1を受け取ったダンパー制御部28は、図7に示すようにダンパー駆動部24に制御信号を送り、ダンパー部20を図6に示す第2位置P2に移動させることで、導入流路16を閉鎖する。このような第1の制御をダンパー制御部28が行うことにより、爆発等により生じる爆風や衝撃波が、導入流路16を介して防護空間86内に伝搬することを防止し、防護空間86内の避難者を爆風や衝撃波から保護することができる。
【0039】
第2の制御は、防護空間86内のスイッチ38が操作された際に実施される。図7に示すスイッチ38は押しボタン式のスイッチであるが、スイッチ38としては押しボタンスイッチのみには限定されない。スイッチ38としては、たとえば、トグルスイッチや、ディップスイッチや、スライドスイッチや、ロータリースイッチなど、避難者が操作可能な任意のタイプのスイッチを採用できる。スイッチ38は、避難者による操作(図7に示す押しボタン式のスイッチであればボタンの押し下げ)を検知し、ダンパー制御部28に操作信号S2を出力する。
【0040】
スイッチ38から操作信号S2を受け取ったダンパー制御部28は、図7に示すようにダンパー駆動部24に制御信号を送り、ダンパー部20を図6に示す第1位置P1または第2位置P2以外の位置に移動させることで、導入流路16を開放する。このような第2の制御をダンパー制御部28が行うことにより、第1の制御等により閉鎖された導入流路16を再度開き、換気システム10による防護空間86への空気の導入を再開できる。
【0041】
図10に示すように、換気システム10は、防護空間86内に設けられる気体成分検出部48を有する。気体成分検出部48は、防護空間86内における酸素および二酸化炭素の少なくとも一方の濃度を検出し、検出結果に応じて警告動作を行う。
【0042】
先述したように、換気システム10では、第1の制御により導入流路16をダンパー部20が閉鎖し、防護空間86内の避難者を、爆風や衝撃波から保護することができる。しかしながら、導入流路16が閉鎖された状態が一定時間以上続くと、防護空間86内の酸素濃度の低下および二酸化炭素濃度の上昇が生じ、避難者の呼吸を妨げる懸念がある。しかし、換気システム10では、気体成分検出部48が、防護空間86内における酸素濃度の低下や二酸化炭素濃度の上昇を検知し、警告動作を行う。
【0043】
気体成分検出部48が行う警告動作は、警告音を発生したり、警告灯を点灯または点滅させたりするものが挙げられるが、気体成分検出部48が行う警告動作としては、避難者に異常を知らせるものであれば、どのような動作であってもよい。気体成分検出部48の警告動作により、避難者は防護空間86内の酸素濃度の低下等を認識することができるため、たとえばスイッチ38を操作して導入流路16を開放すること等により、防護空間86内における酸素濃度の過度な低下を防止できる。
【0044】
図1に示すファンボックス31の内部には、ファン30が設けられている。図10に示すように、ファン30は、導入流路16においてダンパー部20より防護空間86側に設けられている。ファン30は、導入流路内に気流を形成する。ファン30としては、ブロアファン、軸流ファン、遠心ファンなどが挙げられるが、HEPAフィルターのような高い粒子捕集率のフィルターを通過させる気流を導入流路16に形成できるものであれば特に限定されない。図10において矢印で示すように、ファン30は、外部へつながる導入口84から、防護空間86へ開口する吹き出し口17へ向かう気流を、導入流路16に形成する。なお、図10に示すように、防護空間86内には、ファン30のON・OFFを切り替えるファン用スイッチ32が設けられている。たとえば、ダンパー部20が導入流路16を閉鎖しているような状態においては、防護空間86内の避難者がファン用スイッチ32を操作して、ファン30の動作を停止することができる。
【0045】
図1に示すフィルターボックス41の内部には、フィルター部40が内蔵してある。図8は、換気システム10のフィルターボックス41を上方から見た上面図であり、図9は、フィルターボックス41の側面図である。図8および図9に示すように、フィルター部40は、導入流路16を遮るように、フィルターボックス41内に取り付けてあり、導入流路16内を通過する空気から、空気に混在する微粒子や有害物質等の所定の物質を除去する。フィルター部40としては、たとえばHEPAフィルター等を用いることができ、捕集効率の高いH14クラス(EN-1822-1)と同等以上のHEPAフィルターを用いることが、核爆発が発生した際においても防護空間86の安全性を確保する上で好ましい。
【0046】
図8および図9に示すように、フィルターボックス41内には、フィルター部40に加えて、フィルター部40の上流側にプレフィルター42が設けられている。フィルターボックス41には、開閉部43が形成されており、開閉部43を開くことにより、フィルターボックス41内部のフィルター部40およびプレフィルター42を交換できるようになっている。
【0047】
図9および図10に示すように、換気システム10は、導入流路16の一部であるフィルターボックス41に設けられており、導入流路16におけるフィルター部40の前後の差圧を検出するフィルター用差圧計44を有する。フィルター用差圧計44の検出値を確認することにより、核シェルター80および換気システム10の管理者は、フィルター部40の目詰まり状態および交換時期を認識することができる。
【0048】
図1および図10に示すように、フィルター部50は、導入流路16においてダンパー部20より防護空間86側に設けられている。また、前述したファン30は、導入流路16において、ダンパー部20とフィルター部40との間に設けられている。このような配置とすることにより、換気システム10は、HEPAフィルターのような高い粒子捕集率のフィルター部40を採用した場合であっても、ファン30を小型化し、静粛性を確保することができる。また、ファン30およびフィルター部40をダンパー部20より防護空間86側に配置することにより、爆風発生時においてファン30およびフィルター部40を爆風から保護することができる。
【0049】
図1および図10に示すように、換気システム10では、爆風検出部34による爆風の検出により電動で自動的に導入流路16を閉鎖するダンパー部20を、ファン30およびフィルター部40を配置する導入流路16の上流側(外部側)に配置している。これにより、換気システム10は、平常時においては導入流路16を介して防護空間86に空気を導入する換気システムとして好適に動作するとともに、爆風を検出してダンパー部20が導入流路16を自動的に閉鎖することにより、非常時における防護空間86の安全性を高いレベルで確保することが可能である。
【0050】
また、爆風検出部34と電気的なエネルギーにより動作するダンパー部20を用いることにより、換気システム10は、バネ等の機械動作式の耐爆バルブを採用する従来技術に比べて、ダンパー部20の動作条件を高い精度で設定できる。そのため、換気システム10は、より高い粒子捕集率のフィルター部40およびよりパワーのあるファン30とを、爆風検出部34やダンパー部20のような非常時(避難時)における導入流路16の自動閉鎖システムと組み合わせて使用することが可能である。このような換気システム10は、通常時においても避難時においても、外部から防護空間86内に安全に空気を導入することが可能である。
【0051】
また、換気システム10において、ダンパー駆動部24、ダンパー制御部28、および爆風検出部34は電気エネルギーにより動作するため、動作チェックを比較的容易に行うことができ、メンテナンス性が良好である。また、このような換気システム10は、動作確実性および核シェルター80の安全性を、高いレベルで確保できる。
【0052】
以上、実施形態を挙げて本発明に係る核シェルター換気システム10について説明してきたが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態のみには限定されず、他の多くの実施形態や実施例が、本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。たとえば、爆風検出部34としては、図7に示すような流速を検出する差圧検出器に限られず、外部の圧力を検出する差圧検出器を採用することも可能である。圧力を検出する爆風検出部34を採用する場合、たとえば、差圧検出器の第1計測口34aが外部側(導入口84側)を向き、第2計測口34bが防護空間86(吹き出し口17)側を向くように、導入流路16内に爆風検出部34を配置することができる。また、爆風検出部34は、導入口84より外、すなわちシェルター外壁82の外側に配置することも可能である。
【0053】
また、たとえば、気体成分検出部48は、警告動作を行うだけでなく、酸素濃度等が設定値以下に低下した場合に、自動的にダンパー部20を動作させて導入流路16を開放したり、ファン30を動作させることにより、自動的に防護空間86の換気を行うものであってもよい。また、ファン用スイッチ32は、ダンパー部20が導入流路16を閉鎖したタイミングで、自動的にファン30を停止してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…核シェルター換気システム
14…配管部
16…導入流路
17…吹き出し口
20…ダンパー部
21…ダンパー周壁
24…ダンパー駆動部
25…無線通信部
28…ダンパー制御部
30…ファン
31…ファンボックス
32…ファン用スイッチ
34…爆風検出部
34a…第1計測口
34b…第2計測口
S1…検出信号
36…オリフィスリング
36a…第1取出口
36b…第2取出口
38…スイッチ
S2…操作信号
40…フィルター部
41…フィルターボックス
42…プレフィルター
43…開閉部
44…フィルター用差圧計
48…気体成分検出部
80…核シェルター
82…シェルター外壁
84…導入口
86…防護空間
【要約】      (修正有)
【課題】外部から防護空間内に安全に空気を導入でき、かつ、メンテナンス性の良好な核シェルター用換気システムを提供する。
【解決手段】導入流路を形成する配管部と、前記導入流路を閉鎖および開放可能に前記配管部に設けられるダンパー部と、前記ダンパー部を電気エネルギーにより動作させるダンパー駆動部と、前記ダンパー駆動部を制御するダンパー制御部と、前記導入流路において前記ダンパー部より前記防護空間側に設けられており、前記導入流路内に気流を形成するファンと、前記導入流路内を通過する空気から所定の物質を除去するフィルター部と、前記ダンパー部より前記外部側に設けられており、圧力および流速のうち少なくとも一方を検出して前記ダンパー制御部へ検出信号を出力する爆風検出部と、前記防護空間内に設けられており、前記ダンパー制御部に操作信号を送るスイッチと、を有する核シェルター換気システム。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10