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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】マイクロRNA発現構築物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20241223BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241223BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241223BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241223BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241223BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241223BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20241223BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241223BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241223BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241223BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241223BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
C12N1/15 ZNA
C12N1/21
C12N1/19
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/09 110
A61K31/7105
A61K35/12
A61K35/76
【請求項の数】 45
(21)【出願番号】P 2020552746
(86)(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 IB2019000328
(87)【国際公開番号】W WO2019186274
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】62/650,403
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/650,387
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503469382
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ジュネーブ
(73)【特許権者】
【識別番号】515206056
【氏名又は名称】レ・オピト・ウニベルジテレ・ドゥ・ジュネーブ
【氏名又は名称原語表記】LES HOPITAUX UNIVERSITAIRES DE GENEVE
【住所又は居所原語表記】Rue Gabrielle-Perret-Gentil 4,CH-1205 Geneva, Switzerland
(73)【特許権者】
【識別番号】504022504
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クラウゼ, カルルーハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ルーセ, フランシス
(72)【発明者】
【氏名】サルモン, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドリーニ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】シュペック, ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ブレドル, シモーン
(72)【発明者】
【氏名】ムランボ, タファズワ
(72)【発明者】
【氏名】ミバラ, レニエ
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/057855(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101993992(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0051267(US,A1)
【文献】特表2015-524264(JP,A)
【文献】国際公開第2018/009246(WO,A1)
【文献】MOLECULAR THERAPY-NUCLEIC ACIDS, 2014, vol. 3, article no. e207 (pp. 1-13, suppl. pp. 1-11)
【文献】PNAS, 2005, vol. 102, no. 37, pp. 13212-13217
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq/UniProt
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’から3’へ、プロモーター要素と、ペーサーと、少なくとも1つのmiRNAヘアピンと、を含む、miRNA発現構築物であって、前記スペーサーが、配列番号48または配列番号49と少なくとも90%同一である配列からなり、前記miRNA発現構築物が核酸分子である、miRNA発現構築物。
【請求項2】
前記スペーサーが、1つ以上のmiRNAのノックダウン効率を高める、請求項1に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項3】
前記プロモーターが、真核生物プロモーターである、請求項1に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項4】
前記真核生物プロモーターが、Pol IIまたはPol IIIプロモーターである、請求項3に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項5】
前記真核生物プロモーターが、Pol IIプロモーターである、請求項4に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項6】
前記プロモーターが、誘導性、組織特異的、または細胞系統特異的プロモーターである、請求項1に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項7】
前記プロモーター要素が、EF1αプロモーターと少なくとも90%同一であり、前記ロモーター要素が前記miRNAの特異的転写を開始する、請求項6に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項8】
前記EF1αプロモーターが、前記EF1αプロモーターのスプライスバリアントである、請求項7に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項9】
前記EF1αプロモーターの前記スプライスバリアントが、EF1sである、請求項8に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項10】
前記EF1sプロモーターが、配列番号45と少なくとも90%、または95%同一である配列を有し、前記EF1sプロモーターが前記miRNAの特異的転写を開始する、請求項9に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項11】
前記miRNAヘアピンが、5’から3’へ、かつ(a)~(g)の順序で:
(a)配列番号25の配列を含むmir-16フランキング配列、
(b)配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、または配列番号30のmir-16配列を含む第1の下側ステム配列、
(c)22ヌクレオチドの長さのアンチセンス標的配列、
(d)配列番号31の配列を含むmir-30ループ配列、
(e)前記(c)の配列に対して1つまたは2つのミスマッチを含むことを除き、前記(c)の配列と相補的であるセンス配列であって、前記1つまたは2つのミスマッチが、
i)前記センス配列の8~14位に位置するミスマッチ、または
ii)前記センス配列の終端の3’位(22位)におけるミスマッチを含む、前記センス配列、
(f)前記(b)の配列と相補的である、第2の下側ステム配列、及び
(g)第2のフランキング配列、を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項12】
前記miRNAヘアピンの前記センス配列(e)が、前記センス配列(e)のヌクレオチド11位に位置する配列(c)に対して1つのミスマッチを含む、請求項11に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項13】
前記miRNAヘアピンの前記センス配列(e)が、(i)前記センス配列(e)の11位、及び(ii)前記センス配列(e)の末端の3’ヌクレオチド(22位)に位置する配列(c)に対して2つのミスマッチを含む、請求項12に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項14】
フランキング配列(g)が、前記mir-16フランキング配列(a)と相補的ではない、請求項11~13のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項15】
前記核酸分子が、RNAである、請求項1~14のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項16】
前記核酸分子が、DNAである、請求項1~14のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項17】
前記核酸分子が、前記miRNAヘアピンの少なくとも2つの反復を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項18】
前記少なくとも2つの反復が、介在配列によって分離されている、請求項17に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項19】
少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10のmiRNAヘアピンを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項20】
前記miRNAヘアピンの少なくとも2つが、同じ配列を標的とする、請求項19に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項21】
前記miRNAヘアピンの少なくとも2つが、異なる配列を標的とする、請求項19に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項22】
前記miRNAヘアピンの少なくとも2つが、同じ遺伝子の転写産物の異なる配列を標的とする、請求項21に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項23】
前記miRNAヘアピンが、異なる転写産物を標的とする、請求項21に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項24】
前記miRNAヘアピンが、異なる遺伝子の転写産物を標的とする、請求項23に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項25】
前記miRNA発現構築物が、異種タンパク質のコード配列をさらに含む、請求項1~24のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
【請求項26】
前記異種タンパク質が、キメラ抗原受容体またはT細胞受容体である、請求項25に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項27】
前記miRNA発現構築物が、選択遺伝子をさらに含む、請求項1~26のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
【請求項28】
前記選択遺伝子が、LNGFRである、請求項27に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項29】
前記miRNA発現構築物が、自殺遺伝子をさらに含む、請求項1~28のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
【請求項30】
前記自殺遺伝子が、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)、誘導性カスパーゼ9(iCasp9)、切断型内皮増殖因子受容体(tEGFR)、RQR8、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、及びチミジル酸生成酵素(TYMS)からなる群から選択される、請求項29に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項31】
前記miRNA発現構築物が、ペプチド切断部位をさらに含む、請求項1~30のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
【請求項32】
前記ペプチド切断部位が、2Aペプチドである、請求項31に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項33】
前記2Aペプチドが、2A、P2A、T2A、E2A、F2A、BmCPV 2A、及びBmIFV 2Aを含む群から選択される、請求項32に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項34】
前記2Aペプチドが、T2Aである、請求項33に記載のmiRNA発現構築物。
【請求項35】
請求項1~34のいずれかに記載のmiRNA発現構築物を含む、発現ベクター。
【請求項36】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項35に記載の発現ベクター。
【請求項37】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである、請求項36に記載の発現ベクター。
【請求項38】
請求項1~34のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物または請求項35~37のいずれか1項に記載の発現ベクターを含む、哺乳動物細胞。
【請求項39】
前記哺乳動物細胞が、免疫エフェクター細胞である、請求項38に記載の哺乳動物細胞。
【請求項40】
前記免疫エフェクター細胞が、T細胞、TILS、TCR操作されたT細胞、CAR T細胞、NK細胞、NK/T細胞、T制御性細胞、単球、及びマクロファージを含む群から選択される、請求項39に記載の哺乳動物細胞。
【請求項41】
操作された免疫エフェクター細胞を調製するためのインビトロの方法であって、請求項1~34のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物を用いて、前記免疫エフェクター細胞をトランスフェクトもしくは形質導入すること、または請求項35~37のいずれか1項に記載の発現ベクターを用いて、前記免疫エフェクター細胞を形質導入することを含む、前記方法。
【請求項42】
操作された免疫エフェクター細胞を調製するためのインビトロの方法であって、免疫エフェクター細胞にキメラ抗原受容体配列またはT細胞受容体配列をトランスフェクトまたは形質導入し、次いで、前記細胞に、請求項1~34のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物または請求項35~37のいずれか1項に記載のベクターをトランスフェクトまたは形質導入することを含む、前記方法。
【請求項43】
前記キメラ抗原受容体またはT細胞受容体が、前記miRNA発現構築物またはベクターによってコードされる、請求項42に記載のインビトロの方法。
【請求項44】
操作された免疫エフェクター細胞を調製するためのインビトロの方法であって、TALEヌクレアーゼ、megaTAL、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、トランスポザーゼ、またはCRISPR/Cas9によって、請求項1~34のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物を前記細胞のゲノムに組み込むことを含む、前記方法。
【請求項45】
治療を必要とする患者を治療するための、請求項38~40のいずれかに記載の細胞を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年3月30日に出願された米国仮特許出願第62/650,403号、及び2018年3月30日に出願された米国仮特許出願第62/650,387号の利益を主張し、当該仮出願の全体は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の取り込み
20KBであり(Microsoft Windows(登録商標)において測定)、2019年4月1日に作成されたファイル名「UGEN.P0020WO_ST25.txt」中に含まれている配列表は、電子申請によって本明細書とともに提出され、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
1.発明の分野
本発明は、一般に、分子生物学の分野に関する。より具体的には、それは、miRNAの発現のためのベクター及びその使用に関する。
【0004】
2.先行技術の記載
miRNA(miRNA)遺伝子及びその調節機序の発見及び特徴付けは、遺伝子発現の生理学的調節の新たな理解をもたらしただけでなく、miRNAベースの治療法の新たな可能性も開いた。miRNA遺伝子の最重要項目はヘアピンであり、最終的にはリボ核タンパク質複合体を生じさせ、その転写産物の同定及び破壊を通じて標的遺伝子の発現をノックダウンする。ヘアピンの構造要素は、DROSHA及びDICERによるプロセシングのためのシグナルを提供し、約20~23bpの成熟miRNA二重鎖の形成をもたらす(Winter et al.,2009)。成熟miRNA二重鎖の機能的な鎖は、RISC複合体に組み込まれ、標的mRNAの認識を促進し、最終的には遺伝子ノックダウンを促進する。短ヘアピンRNA(shRNA)及び低分子干渉RNA(siRNA)などの合成miRNA及びmiRNA経路の副産物は、現在、分子生物学で一般的に使用されているツールである。しかしながら、その経路は、その治療可能性に応えていない(Sullenger and Nair,2016)。siRNAは、クリニックで最も進んでいるが、寿命が短く、長期的な遺伝子修正には適していない。DROSHAプロセシングをバイパスするshRNAは、細胞質を二本鎖RNAで過負荷にし、天然のmiRNA経路を妨害することによって毒性を引き起こし得る(Boudreau et al.,2009、Grimm,2011)。合成miRNAは、天然経路を模倣しているため、上記の制限を克服しなければならない(Maczuga et al.,2013)が、shRNAと比較して、miRNAのノックダウン活性が比較的弱いため、それらの使用が制限され得る(Boudreau et al.,2008)。
【0005】
レンチウイルスベクターを使用して、合成miRNA遺伝子を発現させることができ、そのため、導入遺伝子のゲノムの組み込み及びレシピエント細胞での長期発現が、これまで患者で安全であることが示されている(Aiuti,et al.,2013、Biffi et al.,2013)。しかしながら、さらなる研究は、病理学的遺伝子発現の効率的な治療的補正を可能にする程度まで、合成miRNA遺伝子によるノックダウンを最適化するために必要とされる。
【0006】
ヘアピンの三次元構造を含む合成miRNA遺伝子のアーキテクチャは、ノックダウン効率にとって非常に重要である(Myburgh et al.,2014、Fowler et al.,2016)。下側ステムの長さは、DROSHAによる効率的なプロセシングと、利用可能な成熟miRNA鎖の相対的な豊富さにとって重要であり、その結果、標的遺伝子のノックダウンが増大する。しかしながら、miRNA遺伝子のアーキテクチャは、ヘアピン構造に限定されない。他の重要な要素には、「スペーサー」と称される、ヘアピンに直接連結されていないプロモーター及びヌクレオチド配列が含まれる。ほとんどの場合、miRNA遺伝子は、組織特異的なまたは/及び誘導性発現を可能にするpolII依存性プロモーターによって駆動される(Lee et al.,2004、Giry-Laterriere et al.,2011、Giry-Laterriere et al.,2011、Liu et al.,2013)。スペーサーの存在は、ノックダウン効率を増大するように思われる(Stegmeier et al.,2005)が、スペーサーの配列の長さまたは他の生物物理学的パラメーターが重要であるかどうかは不明である。
【0007】
天然のmiRNA遺伝子は、連結された形態で発生し、それらのアーキテクチャは、単一のプロモーターの制御下で、いくつかのヘアピンの配置からなる(Bourhill et al.,2016)。このような連結は、バイオテクノロジーにとって強力なツールとなり得る(Sun et al.,2006)。miRNAヘアピンの間に空間的にそれらを分離する介在配列があり得、所望の任意の配列であり得る。
【0008】
養子細胞療法(ACT)、特にT細胞受容体(TCR)で操作されたキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の使用は、様々ながん及びウイルス感染症の治療にかなり有望である。ある特定のがん、特に血液学的悪性腫瘍では、非常に高い治癒率が報告されている(Jackson et al.,2016)が、他の悪性腫瘍、特に固形腫瘍では限られた成功しか見られていない(O’Hara,2016、Han et al.,2017、Irving et al.,2017)。これらの失敗の多くは、操作された免疫細胞が克服するための物理的、分子的、及び免疫抑制の障壁を提供する敵対的な腫瘍微小環境に起因する。同様に、今日まで、免疫細胞の活性を刺激するため、または免疫チェックポイントを阻害するために使用することができる構築物は、開発されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの実施形態において、本開示は、プロモーター要素と、少なくとも50ヌクレオチドの長さのスペーサーと、miRNAヘアピンと、を含む、miRNA発現構築物を提供する。いくつかの態様において、スペーサーは、50~1,000ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様において、スペーサーは、50~900、50~800、100~800、150~800、150~750、200~750、200~700、250~700、250~650、300~600、300~550、または300~500ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様において、スペーサーは、少なくとも60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、365、370、または375ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様において、スペーサーは、プロモーター要素に対して異種である。いくつかの態様において、スペーサーは、コードされたオープンリーディングフレームを含む。
【0010】
実施形態によるプロモーター要素は、真核生物プロモーターであり得る。いくつかの態様において、真核生物プロモーターは、Pol IIまたはPol IIIプロモーターである。ある特定の態様において、真核生物プロモーターは、Pol IIプロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、誘導性、組織特異的、または細胞系統特異的プロモーターである。ある特定の態様において、プロモーター要素は、表1のプロモーター要素から選択される。いくつかの態様において、プロモーター要素は、EF1αプロモーターと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。いくつかの態様において、EF1αプロモーターは、EF1αプロモーターのスプライスバリアントである。いくつかの態様において、EF1αプロモーターのスプライスバリアントは、EF1sである。いくつかの態様において、EF1sプロモーターは、配列番号45と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を有する。いくつかの態様において、EF1sプロモーターは、配列番号45と100%同一である配列を有する。
【0011】
実施形態によるスペーサーは、表9のスペーサーから選択することができる。いくつかの態様において、スペーサーは、配列番号46と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。ある特定の態様において、スペーサーは、配列番号46と100%同一である。いくつかの態様において、スペーサーは、配列番号47と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。特定の態様において、スペーサーは、配列番号47と同一である。いくつかの態様において、スペーサーは、配列番号48と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。特定の態様において、スペーサーは、配列番号48と同一である。いくつかの態様において、スペーサーは、配列番号49と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。特定の態様において、スペーサーは、配列番号49と同一である。
【0012】
実施形態によるmiRNAヘアピンは、5’から3’へ、かつ(a)~(g)の順序で、(a)配列番号25の配列を含むmir-16フランキング配列、(b)配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、または配列番号30のmir-16配列を含む第1の下側ステム配列、(c)22ヌクレオチドの長さのアンチセンス標的配列、(d)配列番号31の配列を含むmir-30ループ配列、(e)(c)の配列に対して1つまたは2つのミスマッチを含むことを除き、(c)の配列と相補的であるセンス配列であって、1つまたは2つのミスマッチが、i)センス配列の8~14位に位置するミスマッチ、またはii)センス配列の終端の3’位(22位)におけるミスマッチを含む、センス配列、(f)(b)の配列と相補的である第2の下側ステム配列、及び(g)第2のフランキング配列、を含み得る。いくつかの態様において、miRNAヘアピンのセンス配列(e)は、センス配列(e)のヌクレオチド11位に位置する配列(c)に対して1つのミスマッチを含む。いくつかの態様において、miRNAヘアピンのセンス配列(e)は、(i)センス配列(e)の11位及び(ii)センス配列(e)の終端の3’ヌクレオチド(22位)に位置する配列(c)に対して2つのミスマッチを含む。いくつかの態様において、フランキング配列(g)は、mir-16フランキング配列(a)と相補的ではない。ある特定の態様において、miRNAヘアピン配列は、表6に記載されている配列から選択される。いくつかの態様において、アンチセンス標的配列は、CCR5 mRNA配列と相補的である。いくつかの態様において、miRNA発現構築物は、miRNAヘアピンのうちの少なくとも2つの反復を含む。いくつかの態様において、少なくとも2つの反復は、介在配列によって分離されている。いくつかの態様において、miRNA発現構築物は、DNAである。いくつかの態様において、miRNA発現構築物は、RNAである。
【0013】
いくつかの実施形態において、本開示は、プロモーター要素と、少なくとも50ヌクレオチドの長さのスペーサーと、miRNAヘアピンと、を含む、miRNA発現構築物を含む発現ベクターを提供する。いくつかの態様において、発現ベクターは、miRNA発現構築物の2つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、miRNA発現構築物の2つ以上のコピーは、ポリシストロニック転写産物をコードする配列を形成する。いくつかの態様において、発現ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである。さらなる態様において、発現ベクターは、少なくとも1つの薬剤耐性マーカーを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、本開示は、プロモーター要素と、少なくとも50ヌクレオチドの長さのスペーサーと、miRNAヘアピンと、を含む、miRNA発現構築物、またはmiRNA発現構築物を含む発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、本開示は、細胞内の遺伝子の発現を低減させるための方法であって、プロモーター要素と、少なくとも50ヌクレオチドの長さのスペーサーと、miRNAヘアピンと、を含む、miRNA発現構築物を発現させることを含み、miRNAヘアピンは、(a)配列番号25の配列を含むmir-16フランキング配列、(b)配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、または配列番号30のmir-16配列を含む第1の下側ステム配列、(c)22ヌクレオチドの長さのアンチセンス標的配列、(d)配列番号31の配列を含むmir-30ループ配列、(e)(c)の配列に対して1つまたは2つのミスマッチを含むことを除き、(c)の配列と相補的である、センス配列であって、1つまたは2つのミスマッチが、i)センス配列の8~14位に位置するミスマッチ、またはii)センス配列の終端の3’位(22位)におけるミスマッチを含む、センス配列、(f)(b)の配列と相補的である、第2の下側ステム配列、及び(g)第2のフランキング配列、を含み、アンチセンス標的配列(c)は、遺伝子のセンス鎖と相補的である、方法を提供する。いくつかの態様において、細胞内のmiRNA発現構築物の発現は、miRNA発現構築物を含む核酸を用いて、細胞をトランスフェクトすることを含む。いくつかの態様において、miRNA発現構築物の発現は、miRNA発現構築物を発現ベクターから発現させることを含む。いくつかの態様において、発現ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである。いくつかの態様において、サイレンシングされる遺伝子は、CCR5である。いくつかの態様において、細胞は、ヒト細胞である。いくつかの態様において、本方法は、インビボ法である。他の態様において、本方法は、インビトロまたはエクスビボ法である。いくつかの態様において、本方法は、miRNA発現構築物を発現する細胞を、生物に移植することをさらに含む。いくつかの態様において、細胞は、生物内に含まれる。
【0016】
いくつかの実施形態において、本開示は、プロモーター要素と、少なくとも50ヌクレオチドの長さのスペーサーと、少なくとも1つのmiRNAヘアピンと、を含む、組換え核酸分子であって、miRNAヘアピンは、5’から3’へ、かつ(a)~(g)の順序で、(a)mir-16フランキング配列、(b)mir-16配列を含む第1の下側ステム配列、(c)22ヌクレオチドの長さのアンチセンス標的配列、(d)mir-30ループ配列、(e)(c)の配列に対して1つまたは2つのミスマッチを含むことを除き、(c)の配列と相補的である、センス配列であって、1つまたは2つのミスマッチが、i)センス配列の8~14位に位置するミスマッチ、またはii)センス配列の終端の3’位(22位)におけるミスマッチを含む、センス配列、(f)(b)の配列と相補的である、第2の下側ステム配列であって、下側ステムが、少なくとも11ヌクレオチドの長さである、第2の下側ステム配列、及び(g)第2のフランキング配列、を含む、組換え核酸分子を提供する。いくつかの態様において、下側ステムは、11、12、13、14、15、16、または17ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様において、第1の下側ステム(b)は、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29または配列番号30のmir-16配列を含む。いくつかの態様において、mir-16フランキング配列(a)は、配列番号25の配列を含む。いくつかの態様において、mir-30ループ配列は、配列番号31の配列を含む。いくつかの態様において、センス配列(e)は、センス配列(e)のヌクレオチド11位に位置する配列(c)に対して1つのミスマッチを含む。いくつかの態様において、センス配列(e)は、(i)センス配列(e)の11位、及び(ii)センス配列(e)の終端の3’ヌクレオチド(22位)に位置する配列(c)に対して2つのミスマッチを含む。いくつかの態様において、第2のフランキング配列(g)は、mir-16フランキング配列(a)と相補的ではない。いくつかの態様において、miRNAヘアピン配列は、表6に記載されている配列から選択される。いくつかの態様において、組換え核酸分子は、配列(a)~(g)のうちの少なくとも2つの反復を含む。いくつかの態様において、少なくとも2つの反復は、介在配列によって分離されている。いくつかの態様において、アンチセンス標的配列は、CCR5 mRNA配列と相補的である。いくつかの態様において、組換え核酸分子は、RNAである。いくつかの態様において、組換え核酸分子は、DNAである。
【0017】
いくつかの実施形態において、本開示は、プロモーター要素と、少なくとも50ヌクレオチドの長さのスペーサーと、少なくとも1つのmiRNAヘアピンと、を含む組換え核酸分子であって、miRNAヘアピンは、5’から3’へ、かつ(a)~(g)の順序で、(a)mir-16フランキング配列、(b)mir-16配列を含む第1の下側ステム配列、(c)22ヌクレオチドの長さのアンチセンス標的配列、(d)mir-30ループ配列、(e)(c)の配列に対して1つまたは2つのミスマッチを含むことを除き、(c)の配列と相補的である、センス配列であって、1つまたは2つのミスマッチが、i)センス配列の8~14位に位置するミスマッチ、またはii)センス配列の終端の3’位(22位)におけるミスマッチを含む、センス配列、(f)(b)の配列と相補的である、第2の下側ステム配列であって、下側ステムが、少なくとも11ヌクレオチドの長さである、第2の下側ステム配列、及び(g)第2のフランキング配列、を含む、組換え核酸分子を含む発現ベクターを提供する。いくつかの態様において、プロモーターは、真核生物プロモーターである。ある特定の態様において、真核生物プロモーターは、Pol IIまたはPol IIIプロモーターである。特定の態様において、真核生物プロモーターは、Pol IIプロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、誘導性、組織特異的または細胞系統特異的プロモーターである。いくつかの態様において、発現ベクターは、組換え核酸分子の2つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、組換え核酸分子の2つ以上のコピーは、ポリシストロニック転写産物をコードする配列を形成する。いくつかの態様において、発現ベクターは、ウイルスベクターである。ある特定の態様において、発現ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである。いくつかの態様において、発現ベクターは、少なくとも1つの薬剤耐性マーカーをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、本開示は、プロモーター要素と、少なくとも50ヌクレオチドの長さのスペーサーと、少なくとも1つのmiRNAヘアピンと、を含む組換え核酸分子であって、miRNAヘアピンは、5’から3’へ、かつ(a)~(g)の順序で、(a)mir-16フランキング配列、(b)mir-16配列を含む第1の下側ステム配列、(c)22ヌクレオチドの長さのアンチセンス標的配列、(d)mir-30ループ配列、(e)(c)の配列に対して1つまたは2つのミスマッチを含むことを除き、(c)の配列と相補的である、センス配列であって、1つまたは2つのミスマッチが、i)センス配列の8~14位に位置するミスマッチ、またはii)センス配列の終端の3’位(22位)におけるミスマッチを含む、センス配列、(f)(b)の配列と相補的である、第2の下側ステム配列であって、下側ステムが、少なくとも11ヌクレオチドの長さである、第2の下側ステム配列、及び(g)第2のフランキング配列、を含む、組換え核酸分子、または組換え核酸分子を含む発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態において、本開示は、細胞内の遺伝子の発現を低減させるための方法であって、プロモーター要素と、少なくとも50ヌクレオチドの長さのスペーサーと、少なくとも1つのmiRNAヘアピンと、を含む、組換え核酸分子であって、miRNAヘアピンは、5’から3’へ、かつ(a)~(g)の順序で、(a)mir-16フランキング配列、(b)mir-16配列を含む第1の下側ステム配列、(c)22ヌクレオチドの長さのアンチセンス標的配列、(d)mir-30ループ配列、(e)(c)の配列に対して1つまたは2つのミスマッチを含むことを除き、(c)の配列と相補的である、センス配列であって、1つまたは2つのミスマッチが、i)センス配列の8~14位に位置するミスマッチ、またはii)センス配列の終端の3’位(22位)におけるミスマッチを含む、センス配列、(f)(b)の配列と相補的である、第2の下側ステム配列であって、下側ステムが、少なくとも11ヌクレオチドの長さである、第2の下側ステム配列、及び(g)細胞内の第2のフランキング配列、を含み、アンチセンス標的配列(c)は、遺伝子のセンス鎖と相補的である、組換え核酸分子を発現することを含む、方法を提供する。いくつかの態様において、細胞内の核酸分子の発現は、組換え核酸を用いて、細胞をトランスフェクトすることを含む。いくつかの態様において、細胞内の組換え核酸分子の発現は、核酸分子を発現ベクターから発現することを含む。いくつかの態様において、発現ベクターは、ウイルスベクターである。特定の態様において、発現ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである。いくつかの態様において、遺伝子は、CCR5である。いくつかの態様において、細胞は、ヒト細胞である。いくつかの態様において、本方法は、インビボ法としてさらに規定される。他の態様において、本方法は、インビトロまたはエクスビボ法として規定される。いくつかの態様において、本方法は、組換え核酸分子を発現する細胞を、生物に移植することをさらに含む。いくつかの態様において、細胞は、生物内に含まれる。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示は、プロモーター配列及び少なくとも2つのmiRNAヘアピンを含むmiRNA発現構築物であって、当該少なくとも2つのmiRNAヘアピンは、免疫チェックポイント遺伝子の転写産物を標的とする、miRNA発現構築物を提供する。いくつかの態様において、少なくとも2つのmiRNAヘアピンは、異なる配列を標的とする。いくつかの態様において、少なくとも2つのmiRNAヘアピンは、同じ遺伝子の転写産物の異なる配列を標的とする。別の態様において、miRNAヘアピンは、異なる転写産物を標的とする。いくつかの態様において、miRNAヘアピンは、異なる遺伝子の転写産物を標的とする。いくつかの態様において、少なくとも2つのmiRNAヘアピンは、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、TIGIT、CD96、BTLA、KIR、アデノシンA2a受容体、Vista、IDO、FAS、SIRPアルファ、CISH、SHP-1、FOXP3、LAIR1、PVRIG、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、CD160、CRTAM、SIGLEC7、SIGLEC9、CD244、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT1、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、及びGUCY1B3からなる群から選択される少なくとも1つの免疫チェックポイント遺伝子の転写産物を標的とする。
【0021】
実施形態によるmiRNA発現構築物は、少なくとも3つのmiRNAヘアピンを含み得る。いくつかの態様において、少なくとも3つのmiRNAヘアピンは、それぞれ、異なる。いくつかの態様において、少なくとも3つの異なるmiRNAヘアピンは、少なくとも1つの免疫チェックポイント遺伝子の転写産物を標的とする。いくつかの態様において、少なくとも3つの異なるmiRNAヘアピンは、3つの異なる免疫チェックポイント遺伝子を標的とする。いくつかの態様において、miRNA発現構築物は、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10のmiRNAヘアピンを含む。いくつかの態様において、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10のmiRNAヘアピンは、それぞれ、異なる。いくつかの態様において、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10のmiRNAヘアピンは、2つ、3つ、4つ、または5つの異なる免疫チェックポイント遺伝子の転写産物を標的とする。
【0022】
いくつかの実施形態において、miRNA発現構築物は、プロモーターと少なくとも2つのmiRNAヘアピンとの間に位置するスペーサー配列を含み得る。いくつかの態様において、スペーサーは、50~1,000ヌクレオチドの長さである。
【0023】
いくつかの態様において、miRNA発現構築物のプロモーター配列は、EF1sプロモーター配列と少なくとも80%同一である。いくつかの態様において、プロモーター配列は、EF1sプロモーター配列と少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。いくつかの態様において、プロモーター配列は、EF1sプロモーター配列と同一である。
【0024】
いくつかの態様において、miRNA発現構築物のプロモーター配列は、UBIプロモーター配列と少なくとも80%同一である。いくつかの態様において、プロモーター配列は、UBIプロモーター配列と少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。いくつかの態様において、プロモーター配列は、UBIプロモーター配列と同一である。
【0025】
実施形態によるmiRNA発現構築物は、受容体配列をさらに含み得る。いくつかの態様において、受容体配列は、キメラ抗原受容体である。いくつかの態様において、受容体配列は、T細胞受容体配列である。
【0026】
実施形態によるmiRNA発現構築物は、選択的マーカーをさらに含み得る。いくつかの態様において、選択的マーカーは、選択遺伝子である。いくつかの態様において、選択遺伝子は、LNGFRまたはその誘導体である。いくつかの態様において、miRNA発現構築物は、自殺遺伝子をさらに含む。例えば、自殺遺伝子は、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)、誘導性カスパーゼ9(iCasp9)、切断型内皮増殖因子受容体(tEGFR)、RQR8、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、またはチミジル酸生成酵素(TYMS)であり得る。
【0027】
実施形態によるmiRNA発現構築物は、ペプチド切断部位を含み得る。いくつかの態様において、ペプチド切断部位は、2Aペプチドである。いくつかの態様において、2Aペプチドは、2A、P2A、T2A、E2A、F2A、BmCPV 2A、及びBmIFV 2Aを含む群から選択される。特定の態様において、2Aペプチドは、T2Aである。
【0028】
いくつかの実施形態において、本開示は、プロモーター配列及び少なくとも2つのmiRNAヘアピンを含むmiRNA発現構築物であって、当該少なくとも2つのmiRNAヘアピンは、免疫チェックポイント遺伝子の転写産物を標的とする、miRNA発現構築物を含む、ベクターを提供する。いくつかの態様において、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである。
【0029】
いくつかの実施形態において、本開示は、プロモーター配列及び少なくとも2つのmiRNAヘアピンを含むmiRNA発現構築物であって、当該少なくとも2つのmiRNAヘアピンは、免疫チェックポイント遺伝子の転写産物を標的とする、miRNA発現構築物、または当該miRNA発現構築物を含むベクターを含む、哺乳動物細胞を提供する。いくつかの態様において、哺乳動物細胞は、免疫エフェクター細胞である。いくつかの態様において、免疫エフェクター細胞は、T細胞、TILS、TCR操作されたT細胞、CAR T細胞、NK細胞、NK/T細胞、及びT制御性細胞を含む群から選択される。
【0030】
いくつかの実施形態において、操作された免疫エフェクター細胞を調製するための方法であって、実施形態によるmiRNA発現構築物を用いて、免疫エフェクター細胞をトランスフェクトもしくは形質導入すること、または実施形態によるmiRNA発現構築物を含むベクターを用いて、免疫エフェクター細胞を形質導入することを含む、方法が提供される。いくつかの態様において、操作された免疫エフェクター細胞を調製するための方法は、免疫エフェクター細胞に、キメラ抗原受容体配列またはT細胞受容体配列をトランスフェクトまたは形質導入し、次いで、当該細胞に、実施形態のmiRNA発現構築物または実施形態のmiRNA発現構築物を含むベクターをトランスフェクトまたは形質導入することを含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、患者からの操作された免疫エフェクター細胞を調製するための方法が提供される。いくつかの態様において、患者からの操作された免疫エフェクター細胞を調製するための方法は、(a)患者からの免疫エフェクター細胞を収集することと、(b)操作された免疫エフェクター細胞を生成するために、実施形態のmiRNA発現構築物を用いて、免疫エフェクター細胞をトランスフェクトすること、またはmiRNA発現構築物を含むベクターを用いて、免疫エフェクター細胞を形質導入することと、を含む。いくつかの態様において、患者からの操作された免疫細胞を調製するための方法は、(a)患者からの免疫エフェクター細胞を収集することと、(b)改変された免疫エフェクター細胞を生成するために、キメラ抗原受容体またはT細胞受容体を用いて、免疫エフェクター細胞を形質導入またはトランスフェクトすることと、(c)操作された免疫エフェクター細胞を生成するために、実施形態によるmiRNA発現構築物、または実施形態によるmiRNA発現構築物を含むベクターを用いて、改変された免疫エフェクター細胞を形質導入またはトランスフェクトすることと、を含む。さらに別の態様において、実施形態の免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、またはNK/T細胞である。いくつかの態様において、免疫エフェクター細胞は、組換えT細胞受容体またはキメラ抗原受容体(CAR)をさらに発現する。
【0032】
いくつかの実施形態において、治療を必要とする患者を治療するための方法であって、患者に、実施形態による操作された免疫エフェクター細胞を導入することを含む、方法が提供される。例えば、いくつかの態様において、患者は、がんを有する患者である。
【0033】
さらなる実施形態において、CCR5及び免疫チェックポイント阻害遺伝子を標的とする1つ以上のmiRNA発現構築物を含む、免疫エフェクター細胞が提供される。例えば、チェックポイント阻害遺伝子は、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、TIGIT、CD96、BTLA、KIR、アデノシンA2a受容体、ARG2(アルギナーゼ2)、Vista、IDO、FAS、SIRPアルファ、CISH、SHP-1、FOXP3、LAIR1、PVRIG、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、CD160、CRTAM、SIGLEC7、SIGLEC9、CD244、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT1、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、またはGUCY1B3であり得る。いくつかの態様において、チェックポイント阻害遺伝子は、PD1である。いくつかの態様において、PD1標的配列は、配列番号59、60、または61、好ましくは配列番号59である。いくつかの態様において、免疫エフェクター細胞は、T細胞、TILS、TCR操作されたT細胞、CAR T細胞、NK細胞、NK/T細胞、T制御性細胞、単球、及びマクロファージからなる群から選択される。例えば、細胞は、CAR T細胞などのT細胞であり得る。いくつかの態様において、細胞は、HIV感染細胞を標的としたCARを含む。さらなる態様において、細胞は、CCR5及び少なくとも2つの免疫チェックポイント阻害遺伝子を標的とする1つ以上のmiRNA発現構築物を含む。したがって、細胞は、実施形態のmiRNA発現構築物のうちのいずれかを含むことができる。
【0034】
なおさらなる実施形態において、CCR5及び免疫チェックポイント阻害遺伝子を標的とするmiRNA配列を含む、発現構築物が提供される。例えば、miRNA配列は、本明細書に記載の実施形態のうちのいずれかによる配列であり得る。いくつかの態様において、構築物は、HIV感染細胞を標的とするCAR配列などのCAR発現配列をさらに含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、特定の成分に関して「本質的に含まない」は、特定の成分が意図的に組成物に配合されておらず、及び/または汚染物質としてもしくは微量でのみ存在することを意味するために本明細書で使用される。組成物のいかなる意図しない汚染物質から生じる特定の成分の総量は、好ましくは0.01%を下回る。特定の成分のいかなる量も標準の分析方法では検出することができない組成物が、最も好ましい。
【0036】
本明細書で使用される場合、本明細書及び特許請求の範囲における、「a」または「an」は、1つ以上を意味してもよい。本明細書で使用される場合、本明細書及び特許請求の範囲における、「含む(comprising)」という単語と併せて使用される場合、「a」または「an」という単語は、1つ以上を意味してもよい。本明細書で使用される場合、本明細書及び特許請求の範囲における、「別の」または「さらなる」は、少なくとも第2の、またはそれ以上を意味してもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、本明細書及び特許請求の範囲における、「約」という用語は、値を決定するために用いられるデバイス、方法についての誤差の固有の変動、または試験対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0038】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲内の様々な変更及び修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明のある特定の実施形態を示すが、例示説明のみの目的でのみ与えられることが理解されるべきである。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
プロモーター要素と、少なくとも50ヌクレオチドの長さのスペーサーと、miRNAヘアピンと、を含む、miRNA発現構築物。
(項目2)
前記スペーサーが、50~1,000ヌクレオチドの長さである、項目1に記載のmiRNA発現構築物。
(項目3)
前記スペーサーが、50~900、50~800、100~800、または50~800ヌクレオチドの長さである、項目1に記載のmiRNA発現構築物。
(項目4)
前記スペーサーが、少なくとも60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、または200ヌクレオチドの長さである、項目1に記載のmiRNA発現構築物。
(項目5)
前記スペーサーが、前記プロモーター要素に対して異種である、項目1に記載のmiRNA発現構築物。
(項目6)
前記スペーサーが、コードされたオープンリーディングフレームを含む、項目1に記載のmiRNA発現構築物。
(項目7)
前記スペーサーが、少なくとも375ヌクレオチドの長さである、項目1に記載のmiRNA発現構築物。
(項目8)
前記プロモーターが、真核生物プロモーターである、項目1に記載のmiRNA発現構築物。
(項目9)
前記真核生物プロモーターが、Pol IIまたはPol IIIプロモーターである、項目8に記載のmiRNA発現構築物。
(項目10)
前記真核生物プロモーターが、Pol IIプロモーターである、項目9に記載のmiRNA発現構築物。
(項目11)
前記プロモーターが、誘導性、組織特異的、または細胞系統特異的プロモーターである、項目1に記載のmiRNA発現構築物。
(項目12)
前記プロモーター要素が、表1のプロモーター要素から選択される、項目1~11のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
(項目13)
前記プロモーター要素が、前記EF1αプロモーターと少なくとも80%同一である、項目12に記載のmiRNA発現構築物。
(項目14)
前記EF1αプロモーターが、前記EF1αプロモーターのスプライスバリアントである、項目13に記載のmiRNA発現構築物。
(項目15)
前記EF1αプロモーターの前記スプライスバリアントが、EF1sである、項目14に記載のmiRNA発現構築物。
(項目16)
前記EF1sプロモーターが、配列番号45と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である配列を有する、項目15に記載のmiRNA発現構築物。
(項目17)
前記スペーサーが、表9のスペーサーから選択される、項目1~16のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
(項目18)
前記スペーサーが、配列番号46と少なくとも80%同一である、項目17に記載のmiRNA発現構築物。
(項目19)
前記スペーサーの配列が、配列番号46である、項目18に記載のmiRNA発現構築物。
(項目20)
前記スペーサーが、配列番号47と少なくとも80%同一である、項目17に記載のmiRNA発現構築物。
(項目21)
前記スペーサーの配列が、配列番号47である、項目20に記載のmiRNA発現構築物。
(項目22)
前記スペーサーが、配列番号48と少なくとも80%同一である、項目17に記載のmiRNA発現構築物。
(項目23)
前記スペーサーの配列が、配列番号48である、項目22に記載のmiRNA発現構築物。
(項目24)
前記スペーサーが、配列番号49と少なくとも80%同一である、項目17に記載のmiRNA発現構築物。
(項目25)
前記スペーサーの配列が、配列番号49である、項目24に記載のmiRNA発現構築物。
(項目26)
前記miRNAヘアピンが、5’から3’へ、かつ(a)~(g)の順序で:
(a)配列番号25の配列を含むmir-16フランキング配列、
(b)配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、または配列番号30のmir-16配列を含む第1の下側ステム配列、
(c)22ヌクレオチドの長さのアンチセンス標的配列、
(d)配列番号31の配列を含むmir-30ループ配列、
(e)前記(c)の配列に対して1つまたは2つのミスマッチを含むことを除き、前記(c)の配列と相補的であるセンス配列であって、前記1つまたは2つのミスマッチが、
i)前記センス配列の8~14位に位置するミスマッチ、または
ii)前記センス配列の終端の3’位(22位)におけるミスマッチを含む、前記センス配列、
(f)前記(b)の配列と相補的である、第2の下側ステム配列、及び
(g)第2のフランキング配列、を含む、項目1~25のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
(項目27)
前記miRNAヘアピンの前記センス配列(e)が、前記センス配列(e)のヌクレオチド11位に位置する配列(c)に対して1つのミスマッチを含む、項目26に記載のmiRNA発現構築物。
(項目28)
前記miRNAヘアピンの前記センス配列(e)が、(i)前記センス配列(e)の11位、及び(ii)前記センス配列(e)の末端の3’ヌクレオチド(22位)に位置する配列(c)に対して2つのミスマッチを含む、項目26に記載のmiRNA発現構築物。
(項目29)
フランキング配列(g)が、前記mir-16フランキング配列(a)と相補的ではない、項目26~28のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
(項目30)
前記miRNAヘアピン配列が、表6に記載されている配列から選択される、項目1~29のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
(項目31)
前記核酸分子が、RNAである、項目1~30のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物。
(項目32)
前記核酸分子が、DNAである、項目1~30のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物。
(項目33)
前記核酸分子が、前記miRNAヘアピンのうちの少なくとも2つの反復を含む、項目1~32のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物。
(項目34)
前記少なくとも2つの反復が、介在配列によって分離されている、項目33に記載のmiRNA発現構築物。
(項目35)
前記アンチセンス標的配列が、CCR5 mRNA配列と相補的である、項目26~34のいずれか1項に記載のmiRNA発現構築物。
(項目36)
項目1~35のいずれかに記載のmiRNA発現構築物を含む、発現ベクター。
(項目37)
項目1に記載の核酸配列の2つ以上のコピーを含む、項目36に記載の発現ベクター。
(項目38)
項目1に記載の核酸配列の2つ以上のコピーが、ポリシストロニック転写産物をコードする配列を形成する、項目37に記載の発現ベクター。
(項目39)
前記発現ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである、項目36に記載の発現ベクター。
(項目40)
少なくとも1つの薬剤耐性マーカーをさらに含む、項目36に記載の発現ベクター。
(項目41)
項目1~35のいずれか1項に記載の核酸分子または項目36~40のいずれか1項に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
(項目42)
前記宿主細胞が、免疫エフェクター細胞である、項目41に記載の宿主細胞。
(項目43)
前記宿主細胞が、T細胞またはCAR T細胞である、項目41に記載の宿主細胞。
(項目44)
細胞内の遺伝子の発現を低減するための方法であって、前記細胞において項目26~35のいずれか1項に記載の核酸分子を発現させることを含み、前記アンチセンス標的配列(c)が、前記遺伝子のセンス鎖と相補的である、前記方法。
(項目45)
前記細胞における前記核酸分子の発現が、核酸を用いて、前記細胞をトランスフェクトすることを含む、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記細胞における前記核酸分子の発現が、TALEヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、またはCRISPR/Cas9によって前記細胞のゲノムに前記核酸分子を挿入することを含む、項目44に記載の方法。
(項目47)
前記細胞における前記核酸分子の発現が、前記核酸分子を発現ベクターから発現することを含む、項目44に記載の方法。
(項目48)
前記発現ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記遺伝子が、CCR5である、項目44に記載の方法。
(項目50)
前記細胞が、ヒト細胞である、項目44に記載の方法。
(項目51)
インビボ法としてさらに規定される、項目44に記載の方法。
(項目52)
インビトロまたはエクスビボ法としてさらに規定される、項目44に記載の方法。
(項目53)
前記核酸分子を発現する細胞を、生物に移植することをさらに含む、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記細胞が、生物に含まれる、項目44に記載の方法。
(項目55)
組換え核酸分子であって、プロモーター要素と、少なくとも50ヌクレオチドの長さのスペーサーと、少なくとも1つのmiRNAヘアピンと、を含み、前記miRNAヘアピンが、5’から3’へ、かつ(a)~(g)の順序で:
(a)mir-16フランキング配列、
(b)mir-16配列を含む第1の下側ステム配列、
(c)22ヌクレオチドの長さのアンチセンス標的配列、
(d)mir-30ループ配列、
(e)前記(c)の配列に対して1つまたは2つのミスマッチを含むことを除き、前記(c)の配列と相補的である、センス配列であって、前記1つまたは2つのミスマッチが、
i)前記センス配列の8~14位に位置するミスマッチ、または
ii)前記センス配列の終端の3’位(22位)におけるミスマッチを含む、前記センス配列、
(f)前記(b)の配列と相補的である、第2の下側ステム配列であって、前記下側ステムが、少なくとも11ヌクレオチドの長さである、前記第2の下側ステム配列、及び
(g)第2のフランキング配列、を含む、前記組換え核酸分子。
(項目56)
前記下側ステムが、11、12、13、14、15、16、または17ヌクレオチドの長さである、項目55に記載の核酸分子。
(項目57)
前記第1の下側ステム(b)が、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、または配列番号30のmir-16配列を含む、項目55に記載の核酸分子。
(項目58)
前記mir-16フランキング配列(a)が、配列番号25の配列を含む、項目55に記載の核酸分子。
(項目59)
前記mir-30ループ配列が、配列番号31の配列を含む、項目55に記載の核酸分子。
(項目60)
前記センス配列(e)が、前記センス配列(e)のヌクレオチド11位に位置する配列(c)に対して1つのミスマッチを含む、項目55に記載の核酸分子。
(項目61)
前記センス配列(e)が、(i)前記センス配列(e)の11位、及び(ii)前記センス配列(e)の末端の3’ヌクレオチド(22位)に位置する配列(c)に対して2つのミスマッチを含む、項目55に記載の核酸分子。
(項目62)
フランキング配列(g)を含み、前記フランキング配列が、前記mir-16フランキング配列(a)と相補的でない、項目55~61のいずれか1項に記載の核酸分子。
(項目63)
前記miRNAヘアピン配列が、表6または表10に記載されている配列から選択される、項目55~62のいずれか1項に記載の核酸分子。
(項目64)
前記核酸分子が、RNAである、項目55~63のいずれか1項に記載の核酸分子。
(項目65)
前記核酸分子が、DNAである、項目55~63のいずれか1項に記載の核酸分子。
(項目66)
前記核酸分子が、前記配列(a)~(g)のうちの少なくとも2つの反復を含む、項目55~65のいずれか1項に記載の核酸分子。
(項目67)
前記少なくとも2つの反復が、介在配列によって分離されている、項目66に記載の核酸分子。
(項目68)
前記アンチセンス標的配列が、CCR5 mRNA配列と相補的である、項目55~67のいずれか1項に記載の核酸分子。
(項目69)
項目55~68のいずれか1項に記載の核酸を含む、発現ベクター。
(項目70)
前記プロモーターが、真核生物プロモーターである、項目69に記載の発現ベクター。
(項目71)
前記真核生物プロモーターが、Pol IIまたはPol IIIプロモーターである、項目70に記載の発現ベクター。
(項目72)
前記真核生物プロモーターが、Pol IIプロモーターである、項目71に記載の発現ベクター。
(項目73)
前記プロモーターが、誘導性、組織特異的または細胞系統特異的プロモーターである、項目69に記載の発現ベクター。
(項目74)
項目55に記載の核酸配列の2以上のコピーを含む、項目69に記載の発現ベクター。
(項目75)
項目55に記載の核酸配列の2つ以上のコピーが、ポリシストロニック転写産物をコードする配列を形成する、項目74に記載の発現ベクター。
(項目76)
前記発現ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである、項目69に記載の発現ベクター。
(項目77)
少なくとも1つの薬剤耐性マーカーをさらに含む、項目69に記載の発現ベクター。
(項目78)
項目55~68のいずれか1項に記載の核酸分子または項目69~77のいずれか1項に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
(項目79)
細胞内の遺伝子の発現を低減するための方法であって、前記細胞において項目55~68のいずれか1項に記載の核酸分子を発現させることを含み、前記アンチセンス標的配列(c)が、前記遺伝子のセンス鎖と相補的である、前記方法。
(項目80)
前記細胞における前記核酸分子の発現が、TALEヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、またはCRISPR/Cas9を使用して、前記細胞のゲノムに前記核酸分子を組み込むことを含む、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記細胞における前記核酸分子の発現が、核酸を用いて、前記細胞をトランスフェクトすることを含む、項目79に記載の方法。
(項目82)
前記細胞における前記核酸分子の発現が、前記核酸分子を発現ベクターから発現することを含む、項目79に記載の方法。
(項目83)
前記発現ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである、項目82に記載の方法。
(項目84)
前記遺伝子が、CCR5である、項目79に記載の方法。
(項目85)
前記細胞が、ヒト細胞である、項目79に記載の方法。
(項目86)
インビボ法としてさらに規定される、項目79に記載の方法。
(項目87)
インビトロまたはエクスビボ法としてさらに規定される、項目79に記載の方法。
(項目88)
前記核酸分子を発現する細胞を、生物に移植することをさらに含む、項目87に記載の方法。
(項目89)
前記細胞が、生物に含まれる、項目79に記載の方法。
(項目90)
プロモーター配列及び少なくとも2つのmiRNAヘアピンを含むmiRNA発現構築物であって、前記少なくとも2つのmiRNAヘアピンが、免疫チェックポイント遺伝子の転写産物を標的とする、前記miRNA発現構築物。
(項目91)
前記少なくとも2つのmiRNAヘアピンが、同一である、項目90に記載のmiRNA発現構築物。
(項目92)
前記少なくとも2つのmiRNAヘアピンが、異なる配列を標的とする、項目90に記載のmiRNA発現構築物。
(項目93)
前記少なくとも2つのmiRNAヘアピンが、同じ遺伝子の転写産物の異なる配列を標的とする、項目92に記載のmiRNA発現構築物。
(項目94)
前記miRNAヘアピンが、異なる転写産物を標的とする、項目92に記載のmiRNA発現構築物。
(項目95)
前記miRNAヘアピンが、異なる遺伝子の転写産物を標的とする、項目94に記載のmiRNA発現構築物。
(項目96)
少なくとも3つのmiRNAヘアピンを含む、項目90に記載のmiRNA発現構築物。
(項目97)
前記少なくとも3つのmiRNAヘアピンが、それぞれ、異なる、項目96に記載のmiRNA発現構築物。
(項目98)
前記少なくとも3つのmiRNAヘアピンのうちの少なくとも2つが、異なる、項目96に記載のmiRNA発現構築物。
(項目99)
前記少なくとも3つの異なるmiRNAヘアピンが、2つまたは3つの異なる免疫チェックポイント遺伝子の転写産物を標的とする、項目97に記載のmiRNA発現構築物。
(項目100)
少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10のmiRNAヘアピンを含む、項目90のmiRNA発現構築物。
(項目101)
前記少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10のmiRNAヘアピンのうちの少なくとも2つが、異なる、項目100に記載のmiRNA発現構築物。
(項目102)
前記少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10のmiRNAヘアピンが、それぞれ、異なる、項目100に記載のmiRNA発現構築物。
(項目103)
前記少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10の異なるmiRNAヘアピンが、2つ、3つ、4つ、または5つの異なる免疫チェックポイント遺伝子の転写産物を標的とする、項目102に記載のmiRNA発現構築物。
(項目104)
前記プロモーターと前記少なくとも2つのmiRNAヘアピンとの間にスペーサー配列位置をさらに含む、項目90に記載のmiRNA発現構築物。
(項目105)
前記スペーサーが、50~1,000ヌクレオチドの長さである、項目90に記載のmiRNA発現構築物。
(項目106)
前記少なくとも2つのmiRNAヘアピンが、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、TIGIT、CD96、BTLA、KIR、アデノシンA2a受容体、ARG2(アルギナーゼ2)、Vista、IDO、FAS、SIRPアルファ、CISH、SHP-1、FOXP3、LAIR1、PVRIG、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、CD160、CRTAM、SIGLEC7、SIGLEC9、CD244、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT1、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、及びGUCY1B3からなる群から選択される少なくとも1つの免疫チェックポイント遺伝子の転写産物を標的とする、項目90に記載のmiRNA発現構築物。
(項目107)
前記プロモーター配列が、前記EF1sプロモーター配列と少なくとも80%同一である、項目90~106のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
(項目108)
前記プロモーター配列が、前記UBIプロモーター配列と少なくとも80%同一である、項目90~106のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
(項目109)
前記miRNA発現構築物が、キメラ抗原受容体配列をさらに含む、項目90~108のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
(項目110)
前記miRNA発現構築物が、T細胞受容体配列をさらに含む、項目90~108のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
(項目111)
前記miRNA発現構築物が、選択遺伝子をさらに含む、項目90~110のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
(項目112)
前記選択遺伝子が、LNGFRまたはその誘導体である、項目111に記載のmiRNA発現構築物。
(項目113)
前記miRNA発現構築物が、自殺遺伝子をさらに含む、項目90~110のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
(項目114)
前記自殺遺伝子が、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)、誘導性カスパーゼ9(iCasp9)、切断型内皮増殖因子受容体(tEGFR)、RQR8、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、及びチミジル酸生成酵素(TYMS)からなる群から選択される、項目113に記載のmiRNA発現構築物。
(項目115)
前記miRNA発現構築物が、ペプチド切断部位をさらに含む、項目90~113のいずれかに記載のmiRNA発現構築物。
(項目116)
前記ペプチド切断部位が、2Aペプチドである、項目115に記載のmiRNA発現構築物。
(項目117)
前記2Aペプチドが、2A、P2A、T2A、E2A、F2A、BmCPV 2A、及びBmIFV 2Aを含む群から選択される、項目116に記載のmiRNA発現構築物。
(項目118)
前記2Aペプチドが、T2Aである、項目117に記載のmiRNA発現構築物。
(項目119)
項目90~118のいずれかに記載のmiRNA発現構築物を含む、ベクター。
(項目120)
前記ベクターが、ウイルスベクターである、項目119に記載のベクター。
(項目121)
前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである、項目120に記載のベクター。
(項目122)
項目90~118のいずれかに記載のmiRNA発現構築物または項目119~121のいずれかに記載のベクターを含む、哺乳動物細胞。
(項目123)
前記哺乳動物細胞が、免疫エフェクター細胞である、項目122に記載の哺乳動物細胞。
(項目124)
前記細胞が、CCR5の発現の低減のために操作される、項目122に記載の哺乳動物細胞。
(項目125)
前記免疫エフェクター細胞が、T細胞、TILS、TCR操作されたT細胞、CAR T細胞、NK細胞、NK/T細胞、T制御性細胞、単球、及びマクロファージを含む群から選択される、項目123に記載の免疫エフェクター細胞。
(項目126)
操作された免疫エフェクター細胞を調製するための方法であって、項目90~118のいずれかに記載のmiRNA発現構築物を用いて、前記免疫エフェクター細胞をトランスフェクトもしくは形質導入すること、または項目118~121のいずれかに記載のベクターを用いて、前記免疫エフェクター細胞を形質導入することを含む、前記方法。
(項目127)
操作された免疫エフェクター細胞を調製するための方法であって、免疫エフェクター細胞にキメラ抗原受容体配列またはT細胞受容体配列をトランスフェクトまたは形質導入し、次いで、前記細胞に、項目90~118のいずれかに記載のmiRNA発現構築物または項目119~121のいずれかに記載のベクターをトランスフェクトまたは形質導入することを含む、前記方法。
(項目128)
操作された免疫エフェクター細胞を調製するための方法であって、TALEヌクレアーゼ、megaTAL、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、またはCRISPR/Cas9によって、項目90~118のいずれかに記載のmiRNA発現構築物を前記細胞のゲノムに組み込むことを含む、前記方法。
(項目129)
患者からの操作された免疫エフェクター細胞を調製するための方法であって、
(a)前記患者からの免疫エフェクター細胞を収集することと、
(b)操作された免疫エフェクター細胞を生成するために、項目90~118のいずれかに記載のmiRNA発現構築物を用いて、前記免疫エフェクター細胞をトランスフェクトすること、または項目119~121のいずれかに記載のベクターを用いて、前記免疫エフェクター細胞を形質導入することと、を含む、前記方法。
(項目130)
患者からの操作された免疫エフェクター細胞を調製するための方法であって、
(a)前記患者から免疫エフェクター細胞を収集することと、
(b)改変された免疫エフェクター細胞を生成するために、キメラ抗原受容体またはT細胞受容体を用いて、前記免疫エフェクター細胞を形質導入またはトランスフェクトすることと、
(c)操作された免疫エフェクター細胞を生成するために、項目90~118のいずれかに記載のmiRNA発現構築物または項目119~121のいずれかに記載のベクターを用いて、前記改変された免疫エフェクター細胞を形質導入またはトランスフェクトすることと、を含む、前記方法。
(項目131)
前記キメラ抗原受容体またはT細胞受容体が、前記miRNA発現構築物またはベクターによってコードされる、項目130に記載の方法。
(項目132)
前記miRNA発現構築物を用いた前記免疫エフェクター細胞の形質導入またはトランスフェクトが、TALEヌクレアーゼ、megaTAL、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、またはCRISPR/Cas9によって、前記ゲノムに、前記miRNA発現構築物を組み込むことを含む、項目129~131のいずれかに記載の方法。
(項目133)
治療を必要とする患者を治療する方法であって、前記患者に、項目122~132のいずれかに記載の細胞を導入することを含む、前記方法。
(項目134)
CCR5及び免疫チェックポイント阻害遺伝子を標的とする1つ以上のmiRNA発現構築物を含む、免疫エフェクター細胞。
(項目135)
前記チェックポイント阻害遺伝子が、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、TIGIT、CD96、BTLA、KIR、アデノシンA2a受容体、ARG2(アルギナーゼ2)、Vista、IDO、FAS、SIRPアルファ、CISH、SHP-1、FOXP3、LAIR1、PVRIG、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、CD160、CRTAM、SIGLEC7、SIGLEC9、CD244、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT1、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、またはGUCY1B3である、項目134に記載の細胞。
(項目136)
前記チェックポイント阻害遺伝子が、PD1である、項目134に記載の細胞。
(項目137)
前記PD1標的配列が、配列番号59である、項目134に記載の細胞。
(項目138)
前記免疫エフェクター細胞が、T細胞、TILS、TCR操作されたT細胞、CAR T細胞、NK細胞、NK/T細胞、T制御性細胞、単球、及びマクロファージからなる群から選択される、項目134に記載の細胞。
(項目139)
前記免疫エフェクター細胞が、T細胞である、項目134に記載の細胞。
(項目140)
前記免疫エフェクター細胞が、CAR T細胞である、項目138に記載の細胞。
(項目141)
前記CARが、HIV感染細胞を標的とする、項目140に記載の細胞。
(項目142)
CCR5及び少なくとも2つの免疫チェックポイント阻害遺伝子を標的とする1つ以上のmiRNA発現構築物を含む、項目134に記載の細胞。
(項目143)
前記細胞に、項目90~118のいずれかに記載のmiRNA発現構築物または項目119~121のいずれかに記載のベクターを含む、項目134に記載の細胞。
(項目144)
前記miRNA発現構築物が、項目1~40のいずれか1項に従う、項目134に記載の細胞。
(項目145)
CCR5及び免疫チェックポイント阻害遺伝子を標的とするmiRNA配列を含む、発現構築物。
(項目146)
前記miRNA配列が、項目1~40のいずれか1項に従う、項目145に記載の構築物。
(項目147)
CAR発現配列をさらに含む、項目145に記載の構築物。
(項目148)
前記CARが、HIV感染細胞を標的とする、項目147に記載の構築物。
【0039】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の態様をさらに裏付けるために含まれる。本発明は、これらの図面のうちの1つ以上を参照することにより、本明細書で提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】スペーサー配列は、ポリメラーゼIIプロモーター駆動miRNAノックダウンに必要とされる。(a)この実験で使用されたmiRGEベースの概略図。すべてのヘアピンは、CCR5を標的とするように設計された。2つの異なるpol II依存性プロモーター(ユビキチンC及び短伸長因子1)は、スペーサーとしてGFP配列の有無にかかわらず、miRGE発現(シングルまたはトリプルヘアピン)を駆動する。プロモーターの5’または3’におけるスペーサーの位置も調べた。(b)ユビキチンCプロモーターまたは短伸長因子1プロモーターで発現した構築物を、CCR5を発現するHeLa細胞内に0.2の感染多重度(MOI)で形質導入した。形質導入集団(mCherry+)対非形質導入集団(mCherry-)のCCR5発現のフローサイトメトリーによる決定:WT HeLa細胞(二重陰性)、HeLa R5細胞(CCR5陽性)。R5+対照mCherryベクター;R5+GFPスペーサー付きシングルmirGEヘアピン)。(b’)形質導入(赤)集団及び非形質導入(青)集団における平均APC蛍光値を使用して、miRNA媒介性CCR5ノックダウンを計算した。(c)UBIプロモーター構築物によるCCR5の相対的発現を示す棒グラフ。(d)EF1短プロモーター構築物によるCCR5の相対的発現を示すヒストグラム。(e)棒グラフで計算された異なる構築物の連結効率(E)。E=1である場合、連結されたヘアピンで相加効果が観察されない(効率は0%である)。E=3である場合、ヘアピンの完全な相加効果が連結で観察される(効率は100%である)。データは、3つの独立した実験の平均+/-SEMを表す。
図2】miRNAベースのノックダウンの効率は、スペーサーに依存する。(a)CCR5を標的とするシングルmiRGEヘアピンベースの構築物は、GFP(緑色蛍光タンパク質)、MGST-2(ミクロソームグルタチオンS-トランスフェラーゼ-2)、dNGFR(切断型神経成長因子受容体)、HO-1(ヘムオキシゲナーゼ-1)、HO-1、及びH2B(ヒストン2B)のコード配列からまたは非コード配列(CD4遺伝子の最初のイントロン=iCD41)から誘導され、HeLa R5細胞内で0.2のMOIで形質導入した異なるスペーサーで設計された。FACS免疫染色によって評価された、非形質導入集団と比較した形質導入集団におけるCCR5の発現を示すヒストグラム。miRGE構築物は、(b)切断型GFP(GFP1及びGFP2)、または(c)第1のイントロンのCD4(iCD42及びiCD43)を用いて設計され、HeLa R5細胞内で0.2のMOIで形質導入された。ヒストグラムは、非形質導入集団と比較して、形質導入集団のCCR5発現のレベルを示す。データは、3つの独立した実験の平均+/-SEMを表す。
図3】スペーサー配列は、miRNAヘアピン連結の相加効果を決定する。(a)スペーサーとしてMGST2、H2B、及びGFPの効率を、HeLa発現CCR5細胞内のmiRGEヘアピン連結(3つのヘアピン連結)で評価した。(b)ヒストグラムは、GFPスペーサー(黒色の棒)、GFPの第2の部分(GFP2)(斜線)、MGST2スペーサー(濃い灰色の棒)、及びH2Bスペーサー(透明な灰色の棒)の残りの非形質導入集団と比較した形質導入集団のCCR5発現のレベルを示す。(c)棒グラフは、図9の式で計算された、トリプルヘアピン構築物の連結効率を示す。連結効率の計算では、シングルmiRGEヘアピンによるCCR5ノックダウン(ノックダウン効率(KP))、及びトリプルmiRGE連結効率((CP))が考慮された。(d~e)スペーサーとしてMGST2及びGFPの効率も、NADPHオキシダーゼサブユニットp22phoxを標的とするトリプルヘアピン連結で比較された。QPCR(d)による前骨髄球性白血病細胞株PLB985で評価されたp22phoxのmRNAレベル及びAmplex redアッセイによるNADPHオキシダーゼ活性(e)。データは、3つの独立した実験の平均+/-SEMを表す。
図4】細胞株及び組織外植片におけるGFPスペーサーの翻訳非依存性活性。(a)開始コドン(ATG)の3’にあるGFP cDNAのすべての可能なリーディングフレームに停止コドンがある、停止GFPスペーサーの設計。(b)HeLa R5細胞は、GFPのコード形態及び非コード形態の両方を用いて、1超のMOIで形質導入した。FACSヒストグラムは、形質導入細胞中のGFPの蛍光を示す。停止GFP構築物で形質導入された細胞のGFP蛍光は、対照(非形質導入HeLa細胞)に相当した。(c)停止GFP配列のスペーサー活性は、HeLaR5細胞中での0.2のMOI形質導入後のCCR5発現に対するFACSによっても評価した。ヒストグラムは、FACS免疫染色によって評価されたように、非形質導入集団と比較して、形質導入集団のCCR5の発現を示す。データは、3つの独立した実験の平均+/-SEMを表す。(d)p22phox(10~10のベクター粒子)を標的とする増加した量の停止GFPトリプルmiRGEヘアピン連結で形質導入した新生児ラット蝸牛外植片の器官型培養。有毛細胞は、ミオシン7a(緑色)で染色され、効率的に形質導入された細胞は、マーカー遺伝子mCherry(赤色)を発現する。5日後、ウイルス遺伝子GAG(e)及びp22phox(f)のインビトロでの発現を、qPCRによって評価した。TU=変換単位。
図5】スペーサー配列は、定常状態レベルを調節するが、miRGEの半減期は調節しない。CCR5を発現するHeLaを、スペーサーとしてGFP、LNGFR、MGST2、またはiCD41を含む単一のヘアピンベクターを形質導入した。(a)未処理(pri-miRGE)または(e)成熟miRGEレベルは、pri-miRGEのフランキング領域(F1-R1)または成熟miRGEの標的鎖(F2-R2)に一致するプライマーを使用したqPCRによって評価した。(b)スペーサーとしてGFP、NGFR、及びMGST2を使用した未処理のmiRGEレベルの代表的なqPCR増幅プロット。スペーサーなしまたはスペーサーとしてiCD41を使用した場合、miRGEレベルは、検出閾値を下回っていたことに留意すべきである。GAPDHは、ハウスキーピング遺伝子として使用した。0.2のΔRnを閾値(赤い線)として定義した。(c)棒グラフは、3つの独立した実験からの平均として、未処理のmiRGEの相対レベルを示す。1.0に正規化されたmiRGE発現の最大値は、28.1±0.3のCt値に対応する。BT=検出閾値を下回る。(d)転写は、異なる時点(0~240分)で、アクチノマイシンDでブロックされ、スペーサーの効果は、未処理のmiRGE半減期で評価された。グラフは、経時的に相対的なmiRGEの減衰を示し、各スペーサーの半減期を表に表す。(f及びg)シングルヘアピン(f)または異なるスペーサーによるトリプルヘアピン連結(g)で形質導入したHeLa細胞からのqPCRによって評価された成熟miRGEの定常状態レベルの比較。データは、3つの独立した実験の平均+/-SEMを表す。
図6】連結の最大化、及びマルチ標的ノックダウンの達成。(a)CCR5を標的とする停止GFPトリプル連結(mirGE 7-7-7)の効率を、CCR5または第2の標的であるGFPを標的とする第4または5のヘアピンを含む構築物と比較した。棒グラフは、qPCRによって評価されたように、CCR5(7)(b)またはGFP(G)(d)を標的とする成熟miRGEの定常状態レベルと、HeLa細胞中のCCR5発現(c)またはGFP発現(e)をノックダウンするこれらの構築物の能力を示す。CCR5またはGFPを標的とするシングルmiRGEヘアピンを発現するベクターを、対照として使用した。(f)スペーサーとして、停止GFPをMGST2に置き換えた場合、第4及び第5のヘアピンの活性は、シングルmiRGEヘアピン対照(miRGFP)または停止GFP構築物の第5のヘアピンと比較して減少した。データは、3つの独立した実験の平均+/-SEMを表す。
図7】ノックダウン効率におけるスペーサーの長さ及び生物物理学的特徴の影響。CCR5ノックダウンと(a)最小自由エネルギー/長さ、または(b)この図に記載されているスペーサーのGC含量との間の相関関係を示すプロット。
図8】NOX3活性を標的とする効率的なmiRGE連結の設計のための全体的な戦略。(a)候補siRNA配列は、コンピュータによる設計であり、標的mRNA(NOX3、p22phox、またはNOXO1)をノックダウンする能力で選択される。次いで、最も活性なsiRNA配列を、miRGE骨格にクローニングして、SMIGを構築する。SMIG効率の検証は、同じ標的発現細胞株で検証される。(b)NOX3複合体(NOX3、p22phox、及びNoxO1)をコードするmRNAを標的とする8つのsiRNA候補の効力を、アンプレックスレッド法によってNOX3活性に関して評価した。(c)NOX活性における最も効率的な配列(p22phoxを標的にする)の効果は、ウエスタンブロットによって検証された。(d~e)最も活性なsiRNA配列を使用して設計されたトリプルヘアピン連結SMIGの効率は、QPCR(d)またはROSの生成の測定(e)のいずれかによって、NOX3発現細胞株で確認された。
図9】miRGEヘアピンの連結効率の計算。(a)GFP、MGST2、及びH2Bスペーサーの連結効率(E)の計算を可能にする式を示す表。連結効率の計算では、シングルmiRGEヘアピン(ノックダウン効力(KP))及びトリプルmiRGE連結(連結効力(CP))を使用したCCR5ノックダウンを検討した。(b)ノックダウン効力(KP)、連結効率(E)、及びそれらの積、一般的なベクター効率をまとめた表。(c)前者もヒストグラムに表す。
図10】内因性免疫チェックポイントノックダウンによる再指向性の免疫療法細胞を生成するための予言的な合成ミニ遺伝子の概略図。プロモーターは、組織特異的な発現を可能にするために選択され、スペーサー配列及び長さは、すべてのmiRNAヘアピンの発現を可能にするために最適化されている。miRNAヘアピンは、目的の特異的遺伝子(複数可)を標的し得るが、CARまたはTCR配列は、特異的抗原に免疫療法細胞を標的化することができる。T2Aは、切断ペプチド部位であり、LNGFRは、操作された細胞の選択を可能にするが、自殺遺伝子は、毒性の場合に細胞の迅速な除去を可能にし得る。
図11】最適化されたミニ遺伝子アーキテクチャは、循環細胞中のCCR5の持続的なインビボでノックダウンが可能になる。(A)6匹のNGS新生児マウスに、CCR5を標的とするトリプルヘアピン連結による形質導入後、260,000個のヒトCD34+造血幹細胞(HSC)を生着させた。28週齢で、CCR5発現の分析のために血液を採取した。(B)非形質導入HSCを移植したマウス(左)または停止GFP-777形質導入HSCを移植したマウス(中央)からのCD4+T細胞を示すFACSプロット。右のプロットは、無関連抗体(非形質導入HSC)で染色されたCD4+T細胞を示す。mCherry+細胞は、効果的に形質導入された細胞を示す。(C)無関連抗体(アイソタイプ)と比較した、単一の移植マウスにおける形質導入(mCherry+)のCCR5の発現レベル、及び残りの非形質導入(mCherry_)のCD4 T細胞集団を示すヒストグラム。点線の右側の細胞は、高いCCR5発現CD4 T細胞を表す。(D)5匹の生着マウスにおける高CCR5 CD4+T細胞集団におけるCCR5発現レベルの比較。非形質導入ヒトCD34+細胞を生着させたマウス(n=3)における非形質導入対照鎖。
図12】移植から23週間後のNOD/SCIDマウスにおけるヒト造血幹細胞の生着率。(a)非形質導入HSCを移植したマウス、または(b)CCR5を標的とするトリプルヘアピン連結で形質導入したHSCを移植した6匹のマウスにおけるヒトCD45マーカーを発現するヒト循環白血球を示すFACSプロット。生着率は、12.4%~44%である。
図13】移植されたマウスの血液からのヒトCD4+T細胞の同定。全リンパ球を、それらのFSC/SSC座標に従って選択した(a)。ダブレット除去(b)後に、ヒト白血球をヒトCD45染色で選択し(c)、次いでヒトリンパ球をヒトCD3抗体で選択した(d)。最後に、CD4+T細胞は、ヒトCD4及びヒトCD8抗体でCD8+T細胞から区別した(e)。
図14】CCR5に対して1~3つのヘアピンmirGE構築物を使用したCCR5下方制御の効率。(A)それぞれが同一でCCR5を標的とする、1~3つのヘアピンを示す治療用ミニ遺伝子のアーキテクチャ。(B)形質導入HeLaR5細胞(mCherry陽性集団)内の蛍光強度の減少を示す整列フローサイトメトリーヒストグラム。(C)対照ベクター(n=3)のみのmCherryで形質導入されたHeLaR5細胞と比較した場合、相対的なCCR5発現レベル。
図15】PD1下方制御に対して最適な標的配列の同定。コンピュータ内での設計に基づいて同定された3つのPD1標的配列は、シングルヘアピンmirGE治療用ミニ遺伝子の構築に使用され、(A)に示される実験計画に従って初代T細胞の形質導入のためにレンチウイルスベクターにパッケージ化された。(B~C)PD1-1A構築物が形質導入T細胞集団(mCherry+)のPD1発現の低下に最も効果的であることを示すフローサイトメトリーのドットプロット及びヒストグラム;(D~E)PD1発現細胞及び発現レベルの相対的な減少を示す棒グラフ(n=4)。
図16】1つ~3つのヘアピンmirGE治療用ミニ遺伝子によるPD1下方制御。PD1のmirGE下方制御にアクセス可能な標的配列を特定した後、2つ及び3つのヘアピンミニ遺伝子(同じヘアピン配列)が構築された。次いで、構築物を、健康なドナーからの初代T細胞の形質導入のためにレンチウイルスベクターにパッケージングした(A)。(B~C)1つのヘアピン構築物と比較した場合の2及び3つのヘアピン構築物によるPD1のノックダウンの増加を示すフローサイトメトリードットプロット及びヒストグラム。(D~E)PD1発現細胞及びPD1発現レベルの相対的な減少を示し、2つ及び3つのヘアピン構築物を使用したPD1の同等のノックダウンを示す棒グラフ(n=3)。
図17】末端位置に2つのCCR5標的ヘアピンを有するmirGE構築物を使用したCCR5下方制御の効率。(A)PD1及びGFPを標的とするヘアピンと比較したCCR5を標的とするヘアピンの位置を示す治療用ミニ遺伝子のアーキテクチャ。(B)形質導入HeLaR5細胞(mCherry陽性集団)内の蛍光強度の減少を示す整列フローサイトメトリーヒストグラム。(C)mCherryのみのコントロールベクターで形質導入されたHeLaR5細胞と比較した場合、相対的なCCR5発現レベル。
図18】HL-60標的細胞との4日間の共培養後の抗cKit CAR T細胞におけるPD1ノックダウンの効果。(A)mCherry陽性に基づく、mirGE(3つのヘアピン)を標的とするPD1を有する抗cKit CART細胞の形質導入率、(B)mCherry発現に基づく、4日目のmirGE発現CART細胞の増加、(C)HL-60標的細胞との4日間の共培養後の抗cKit CART細胞の絶対細胞数、(D)4日間の共培養期間におけるCAR T細胞の倍数増加(1日目の100,000個のCAR T細胞から開始)、(E~F)4日間の共培養期間後のフローサイトメトリードットプロット、オーバーレイ及びCAR T細胞のヒストグラム、(G)PD1発現CAR T細胞の割合。
図19】初代T細胞中のCCR5及びPD1のノックダウン。(A~B)4つのヘアピンmirGE構築物(PD1に対して2つのヘアピン、続いてCCR5に対して2つのヘアピン)及び対照ベクター(mCherryのみ)で形質導入された初代T細胞中のCCR5とPD1の両方のノックダウンを独立して示す、フローサイトメトリードットプロット、オーバーレイ、及びヒストグラム、(C)非形質導入(mCherry陰性)T細胞集団及び4つのヘアピンで形質導入(mCherry陽性)T細胞集団をゲートとした、CCR5対PD1集団のオーバーレイドットプロット。
【発明を実施するための形態】
【0041】
I.本発明の実施形態
本発明は、一般に、miRNA発現構築物に関する。本発明は、複数のmiRNAの発現のための構築物に関する。本発明はさらに、プロモーターとmiRNA配列との間のスペーサー配列の使用に関する。いくつかの態様において、スペーサー配列は、GFPからのものであり得る。
【0042】
II.RNA阻害
阻害性核酸は、細胞内での遺伝子の転写を阻害し得るか、または遺伝子転写産物の翻訳を防ぎ得る。阻害性核酸は、16~1000ヌクレオチドの長さであり得、ある特定の実施形態において、18~100ヌクレオチドの長さであり得る。ある特定の実施形態において、阻害性核酸は、目的の遺伝子に結合またはハイブリダイズする単離された核酸である。
【0043】
阻害性核酸は、当該技術分野で公知である。例えば、siRNA、shRNA、及び二本鎖RNAは、米国特許第6,506,559号及び同第6,573,099号、ならびに米国特許公開第2003/0051263号、同第2003/0055020号、同第2004/0265839号、同第2002/0168707号、同第2003/0159161号、及び同第2004/0064842号に記載されており、これらはすべて、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
1998年のFire及び仲間によるRNAiの発見以来、生化学的機序は、急速に特徴付けられた。二本鎖RNA(dsRNA)は、RNAase IIIファミリーリボヌクレアーゼであるDicerによって切断される。このプロセスにより、約21ヌクレオチドの長さのmiRNAを得る。これらのmiRNAは、標的mRNAに誘導される多タンパク質RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれている。RISCは、相補領域の中央で標的mRNAを切断する。哺乳動物細胞では、短いRNA断片(約22ヌクレオチド)である関連miRNAが見出される。不完全なヘアピンRNA構造を有するより長い(約70ヌクレオチド)前駆体のダイサー媒介性切断後、miRNAが生成される。miRNAは、miRNA-タンパク質複合体(miRNP)に組み込まれ、標的mRNAの翻訳抑制を引き起こす。
【0045】
RNAiの設計には、siRNAの性質、サイレンシング効果の持続性、送達システムの選択などの考慮する必要のあるいくつかの要因がある。RNAi効果を生み出すために、生物に導入されるmiRNAは、通常、エキソン配列を含む。さらに、RNAiプロセスは、相同性に依存するため、遺伝子特異性配列ではなく相同配列間の相互干渉の可能性を最小限に抑えながら、遺伝子特異性を最大化するように配列を慎重に選択しなければならない。特に、miRNAは、miRNAの配列と標的遺伝子のヌクレオチド配列の一部との間で80、85、90、95、98%、さらには100%超の同一性を示す。標的遺伝子と約80%未満同一である配列は、実質的に効果が低い。したがって、miRNAと阻害する標的遺伝子との同一性が高ければ高いほど、関連のない遺伝子の発現が影響を受ける可能性は低くなる。
【0046】
加えて、miRNAのサイズは、考慮すべき重要なことである。いくつかの実施形態において、本発明は、少なくとも約19~25ヌクレオチドを含み、標的遺伝子発現を調節することができるmiRNA分子に関する。本発明の文脈において、miRNAは、特に、500、200、100、50、25、24、23、または22ヌクレオチド未満の長さである。いくつかの実施形態において、miRNAは、約25ヌクレオチド~約35ヌクレオチドの長さ、または約19ヌクレオチド~約25ヌクレオチドの長さである。
【0047】
miRNA媒介性遺伝子サイレンシングの有効性を改善するために、mRNAの標的部位を選択するためのガイドラインがmiRNAの最適設計のために開発された(Soutschek et al.,2004、Wadhwa et al.,2004)。これらの戦略は、最大の遺伝子ノックダウンを達成するためにsiRNA配列を選択するための合理的なアプローチを可能にし得る。細胞及び組織へのmiRNAの侵入を促進するために、プラスミド及びウイルスベクター、例えば、アデノウイルス、レンチウイルス、及びレトロウイルスを含む様々なベクターが使用されている(Wadhwa et al.,2004)。
【0048】
阻害性核酸内で、核酸の成分は、全体を通して同じ型または同種である必要はない(例えば、阻害性核酸は、ヌクレオチド及び核酸またはヌクレオチド類似体を含んでもよい)。一般には、阻害性核酸は、二本鎖構造を形成し、二本鎖構造は、部分的にまたは完全に相補的である2つの別々の核酸から生じ得る。本発明のある特定の実施形態において、阻害性核酸は、単一の核酸(ポリヌクレオチド)または核酸類似体のみを含み、それ自体と相補することによって二本鎖構造を形成(例えば、ヘアピンループを形成)し得る。阻害性核酸の二本鎖構造は、その中のすべての範囲を含め、16~500またはそれ以上の連続した核酸塩基を含み得る。阻害性核酸は、相補的な核酸(同じ核酸の別の部分であっても、別個の相補的核酸であってもよい)とハイブリダイズして二本鎖構造を形成する、17~35個の連続した核酸塩基、より具体的には18~30個の連続した核酸塩基、より具体的には19~25個の核酸塩基、より具体的には20~23個の連続した核酸塩基、または20~22個の連続した核酸塩基、または21個の連続した核酸塩基を含み得る。
【0049】
miRNAは、商業的供給源、天然の供給源から入手することができるか、または当業者に周知の多くの技法のいずれかを使用して合成することができる。例えば、予め設計されたmiRNAの商業的供給源には、InvitrogenのStealthTM Select技術(Carlsbad,CA)、Ambion(登録商標)(Austin,TX)、及びQiagen(登録商標)(Valencia,CA)が含まれる。本発明の組成物及び方法において適用され得る阻害性核酸は、任意の供給源によって、標的遺伝子の検証された下方制御因子であることが見出された任意の核酸配列であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、miRNA分子は、完全長タンパク質をコードする核酸配列のうちのいずれかの少なくとも10個の連続したヌクレオチドに対して、少なくとも75、80、85、もしくは90%相同であり、特に少なくとも95%、99%、もしくは100%類似もしくは同一、または前述の間の任意のパーセンテージ(例えば、本発明は、75%以上、80%以上、85%以上などを企図し、当該範囲は、その間のすべての整数を含むことを意図している)である。
【0051】
miRNAはまた、1つ以上のヌクレオチドの変更も含んでもよい。そのような変更は、例えば、19~25ヌクレオチドのRNAの末端(複数可)または内部(RNAの1つ以上のヌクレオチド)に対して、非ヌクレオチド材料の付加を含むことができる。ある特定の態様において、RNA分子は、3’-ヒドロキシル基を含有する。本発明のRNA分子内のヌクレオチドはまた、天然に存在しないヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含む、非標準ヌクレオチドも含むことができる。二本鎖オリゴヌクレオチドは、修飾された骨格、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、または当該技術分野で公知の他の修飾された骨格を含有してもよいか、または非天然のヌクレオシド間結合を含有してもよい。siRNAの追加的な修飾(例えば、2’-O-メチルリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、5-C-メチルヌクレオチド、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合、及び反転デオキシ脱塩基残基組み込み)は、米国特許出願公開第2004/0019001号及び米国特許第6,673,611号(そのそれぞれは、その全体が参照により組み込まれる)において見出すことができる。集合的に、上記のそのような変更された核酸またはRNAはすべて、修飾miRNAと称される。
【0052】
II.クローニング、遺伝子導入、及び発現のためのベクター
ある特定の態様において、発現ベクターは、特定の遺伝子の発現を阻害する核酸などの目的の核酸を発現するために使用される。発現は、適切なシグナルがベクター内に提供され、宿主細胞における目的の遺伝子の発現を駆動する、ウイルス及び哺乳動物の両方の源からのエンハンサー/プロモーターなどの様々な調節要素を含むことを必要とする。宿主細胞におけるRNAの安定性を最適化するために設計された要素も定義される。生成物を発現する永続安定細胞クローンを確立するための多数のドミナント薬物選択マーカーの使用のための条件も提供され、薬物選択マーカーの発現をポリペプチドの発現と関連付ける要素も提供される。
【0053】
A.調節要素
本出願の全体を通して、「発現構築物」または「発現ベクター」という用語は、配列をコードする核酸の一部またはすべてが転写され得る遺伝子産物をコードする核酸を含有する任意の型の遺伝子構築物を含むことを意味する。転写産物は、タンパク質に翻訳され得るが、翻訳される必要はない。ある特定の実施形態において、発現は、遺伝子の転写及び遺伝子産物へのmRNAの翻訳の両方を含む。他の実施形態において、発現は、目的の遺伝子をコードする核酸の転写のみを含み、すなわち、実施形態のRNA分子の場合と同様である。
【0054】
ある特定の実施形態において、遺伝子産物をコードする核酸は、プロモーターの転写制御下にある。「プロモーター」は、遺伝子の特異的転写を開始するために必要とされる、細胞の合成機械または導入された合成機械によって認識されるDNA配列を指す。「転写制御下」という語句は、プロモーターが、RNAポリメラーゼの開始及び遺伝子の発現を制御するために、核酸に対して正しい位置及び方向にあることを意味する。
【0055】
プロモーターという用語は、真核生物のRNAポリメラーゼ(Pol)I、II、またはIIIのための開始部位の周囲に密集した転写制御モジュールの群を指すために本明細書において使用される。プロモーターの組織化に関する思考の大部分は、HSVチミジンキナーゼ(tk)及びSV40初期転写単位のためのものを含む、いくつかのウイルスPol IIプロモーターの分析に由来する。より最近の研究によって強化されたこれらの研究は、各々、約7~20bpのDNAからなり、転写活性化タンパク質または抑制タンパク質のための1つ以上の認識部位を含有している不連続の機能性モジュールから、プロモーターが構成されることを示している。
【0056】
各プロモーター内の少なくとも1つのモジュールは、RNA合成のための開始部位を位置決めするために機能する。これの最も周知の例は、TATAボックスであるが、哺乳動物末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のためのプロモーター及びSV40後期遺伝子のためのプロモーターのような、TATAボックスを欠くいくつかのプロモーターにおいては、開始部位自体に重なる不連続の要素が、開始の場所を固定するのを助ける。
【0057】
付加的なプロモーター要素は、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは開始部位の30~110bp上流の領域に位置するが、最近、多くのプロモーターが開始部位の下流にも機能性の要素を含有していることが示された。要素が反転されるかまたは互いに関して移動される場合に、プロモーター機能が保存されるように、プロモーター要素間の間隔は柔軟であることが多い。tkプロモーターにおいて、プロモーター要素間の間隔は、50bp間隔にまで増加し得、その後、活性が減退し始める。プロモーターに応じて、個々の要素は、転写を活性化するため、協同的にまたは独立に機能することができると考えられる。
【0058】
いくつかの実施形態において、プロモーターは、短伸長因子1(EF1s)プロモーターを含む。他の実施形態において、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス長末端反復、ラットインスリンプロモーター、及びグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼを使用して、目的のコード配列の高レベルの発現を得ることができる。発現のレベルが所定の目的のために十分であるならば、目的のコード配列の発現を達成するための、当該技術分野において周知である他のウイルスまたは哺乳動物細胞または細菌ファージのプロモーターの使用も、同様に企図される。
【0059】
周知の特性を有するプロモーターを用いることにより、トランスフェクションまたは形質転換の後の目的のタンパク質の発現のレベル及びパターンを最適化することができる。さらに、特定の生理学的シグナルに応答して調節されるプロモーターの選択は、遺伝子産物の誘導可能な発現を可能にすることができる。表1及び2は、本発明の文脈において、目的の遺伝子の発現を調節するために使用され得るいくつかの調節要素を列挙する。この表は、遺伝子発現の促進に関与するすべての可能な要素を網羅することを意図したものではなく、単にその例示である。いくつかの態様において、本実施形態に従って使用するためのプロモーターは、構成的プロモーターなどの非組織特異的プロモーターである。
【0060】
エンハンサーは、同じDNA分子上の遠隔の位置に位置するプロモーターからの転写を増大させる遺伝的要素である。エンハンサーは、プロモーターと非常に類似して構成される。すなわち、それらは、それらの各々が1つ以上の転写タンパク質に結合する多くの個別の要素から構成される。
【0061】
エンハンサーとプロモーターとの間の基本的な区別は、作動的なものである。エンハンサー領域は全体として、遠位における転写を刺激することが可能でなければならない。これは、プロモーター領域またはその構成要素である要素に当てはまる必要はない。他方では、プロモーターは、RNA合成の開始を、特定の部位において特定の配向性で方向付ける1つ以上の要素を有さなければならないのに対し、エンハンサーは、これらの特異性を欠く。プロモーター及びエンハンサーは、重複し、連続的であることが多く、極めて類似のモジュラー構成を有すると考えられることが多い。
【0062】
以下は、発現構築物内の目的の遺伝子またはmiRNAをコードする核酸と組み合わせて使用され得る、ウイルスプロモーター、細胞プロモーター/エンハンサー、及び誘導性プロモーター/エンハンサーの一覧である(表1及び表2)。加えて、プロモーター/エンハンサーの組み合わせ(真核生物プロモーターデータベースEPDBによる)も、目的の遺伝子またはmiRNAの発現を駆動するために使用され得る。切断型プロモーターはまた、発現を駆動するために使用され得る。真核細胞は、適切な細菌ポリメラーゼが、送達複合体の一部として、またはさらなる遺伝子発現構築物として供給される場合、ある特定の細菌プロモーターからの細胞質内転写を支持し得る。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0063】
任意のcDNA挿入物が使用される場合、典型的には、遺伝子転写産物の適切なポリアデニル化を達成するために、ポリアデニル化シグナルを含む。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の実施の成功にとって重大ではないと考えられ、ヒト成長ホルモン及びSV40ポリアデニル化シグナルなどの任意のそのような配列が使用され得る。しかしながら、いくつかの態様において、ポリアデニル化シグナル配列は、実施形態のベクターに含まれない。例えば、レンチウイルスベクター(3’LTRの前)にそのようなシグナル配列を組み込むと、結果として生じるレンチウイルス力価を低下させ得る。
【0064】
スペーサー配列は、核酸構築物に含まれ得る。スペーサーの存在は、miRNAのノックダウン効率を高めるように思われる(Stegmeier et al.,2005)。スペーサーは、任意のヌクレオチド配列であり得る。いくつかの態様において、スペーサーは、GFPである。
【0065】
また、ターミネーターも、発現カセットの要素として企図される。これらの要素は、メッセージレベルを増強し、カセットから他の配列へのリードスルーを最小化するのに役立ち得る。
【0066】
B.選択可能なマーカー
本発明のある特定の実施形態において、細胞は、本発明の核酸構築物を含み、細胞は、マーカーを発現構築物内に含めることによって、インビトロ、エキソビボ、またはインビボにおいて同定することができる。そのようなマーカーは、同定可能な変化を細胞へと付与し、発現構築物を含有する細胞の容易な同定を可能にし得る。通常、薬物選択マーカーの組入れは、クローニング及び形質転換細胞の選択の一助となり、例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン、及びヒスチジノールに対する耐性を付与する遺伝子は、有用な選択可能なマーカーである。あるいは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などの酵素も使用することができる。また、免疫学的マーカーも使用することができる。使用される選択可能なマーカーは、遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現することができる限りにおいて重要ではないと考えられる。選択可能なマーカーのさらなる例は、当業者に周知である。
【0067】
III.核酸分子及び発現ベクターの送達
ある特定の態様において、実施形態の核酸を送達するためのベクターを構築して、これらの因子を細胞内で発現させ得る。特定の態様において、以下の系及び方法は、所望の細胞型への核酸の送達において使用され得る。
【0068】
A.相同組換え
実施形態のある特定の態様において、実施形態の核酸分子をコードするベクターを、細胞へと、特定の様式で、例えば、相同組換えを介して導入することができる。幹細胞内で遺伝子を発現させるための現行の手法は、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)またはゲノム内にランダムに組み込まれるトランス遺伝子の使用を伴っている。これらのアプローチは、部分的には、ランダムに組み込まれたベクターが、内因性の遺伝子発現及び/またはトランス遺伝子発現のサイレンシングを活性化させるかまたは抑制し得るために、成功していない。ランダムな組込みと関連する問題は、標的ゲノム内の特異的な遺伝子座への相同組換えにより部分的に克服し得る。
【0069】
一般組換えとしても知られている相同組換え(HR)は、ヌクレオチド配列が、DNAの類似であるかまたは同一な2つの鎖の間で交換される、生命のすべての形態において使用される一種の遺伝子組換えである。この技法は、1980年代半ば以降、哺乳動物細胞内のゲノム操作のための標準的な方法となっている。このプロセスは、DNAの物理的な切断及び最終的な再接合によるいくつかのステップを伴う。このプロセスは、天然において、潜在的に致命性のDNAにおける二本鎖切断を修復するのに極めて広く使用されている。加えて、相同組換えは、真核生物が、精子及び卵子などの生殖細胞を作り出すプロセスである減数分裂中に、DNA配列の新しい組み合わせをもたらす。これらのDNAの新しい組み合わせは、子孫における遺伝子変異であって、時間経過において、集団が環境条件の変化へと進化的に適合することを可能とする遺伝子変異を表す。相同組換えはまた、細菌及びウイルスの異なる株及び種の間で遺伝物質を交換する、遺伝子の水平移動においても使用される。相同組換えはまた、遺伝子変化を標的生物へと導入するための、分子生物学における技法としても使用されている。
【0070】
相同組換えは、標的ゲノムの修飾として使用することができる。哺乳動物細胞内の標準的なHRの効率は、処理される細胞のうちの10-6~10-9であるに過ぎない(Capecchi,1990)。メガヌクレアーゼ、またはI-SceIなどのホーミングエンドヌクレアーゼの使用は、HRの効率を増大させるために使用されている。天然のメガヌクレアーゼならびに標的特異性を改変した操作されたメガヌクレアーゼのいずれも、HRの効率を増大させるために利用されている(Pingoud and Silva,2007、Chevalier et al.,2002)。HRの効率を増大させるための別の経路は、キメラエンドヌクレアーゼを、プログラム可能なDNA特異性ドメインで操作することである(Silva et al.,2011)。亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、亜鉛フィンガーDNA結合性ドメインを、FokI(Durai et al.,2005、PCT/US2004/030606において総説されている)などのIIS型制限エンドヌクレアーゼの触媒性ドメインと融合させた、このようなキメラ分子の一例である。このような特異性分子の別のクラスは、FokIなどのIIS型制限エンドヌクレアーゼの触媒性ドメインと融合させた、転写活性化因子様エフェクター(TALE)DNA結合性ドメインを含む(Miller et al.,2011:PCT/IB2010/000154)。
【0071】
B.核酸送達系
当業者は、標準的な組換え法によりベクターを構築するのに十分に装備され得る(例えば、Sambrook et al.,2001及びAusubel et al.,1996を参照されたく、それらのいずれも、参照により本明細書に組み込まれる)。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、及び植物ウイルス)、及び人工染色体(例えば、YAC)、例えば、レトロウイルスベクター(例えば、モロニーマウス白血病ウイルスベクター(MoMLV)、MSCV、SFFV、MPSV、SNVなどに由来する)、レンチウイルスベクター(例えば、HIV-1、HIV-2、SIV、BIV、FIVなどに由来する)、それらの複製コンピテント形態、複製欠損形態、及びガットレス(gutless)形態を含むアデノウイルス(Ad)ベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、サルウイルス40(SV-40)ベクター、ウシパピローマウイルスベクター、エプスタイン-バーウイルス、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ハーベイマウス肉腫ウイルスベクター、マウス乳房腫瘍ウイルスベクター、ラウス肉腫ウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
1.エピソームベクター
本発明のある特定の態様において、例えば、体細胞の再プログラミングするために、プラスミドまたはリポソームベースの染色体外(すなわち、エピソーム)ベクターの使用もまた、提供され得る。そのようなエピソームベクターは、例えば、oriPベースのベクター及び/またはEBVタンパク質であるEBNA-1の誘導体をコードするベクターを含み得る。これらのベクターは、DNAの大型断片を細胞へと導入し、染色体外で維持し、細胞周期1周期当たり1回ずつ複製し、娘細胞へと効率的に分割し、免疫応答を実質的に誘発しないことを可能とし得る。
【0073】
特に、oriPベースの発現ベクターを複製するのに必要とされる唯一のウイルスタンパク質であるEBNA-1は、その抗原をMHCクラスI分子上に提示するために必要とされるプロセシングをバイパスする効率的な機序を発生させているため、細胞性免疫応答を誘発しない(Levitskaya et al.,1997)。さらに、EBNA-1は、いくつかの細胞株において、トランスにおいて、クローニングされた遺伝子の発現を増強するように作用して、クローニングされた遺伝子の発現を100倍まで誘導し得る(Langle-Rouault et al.,1998、Evans et al.,1997)。最後に、そのようなoriPベースの発現ベクターの作製は、安価である。
【0074】
他の染色体外ベクターは、他のリンパ向性ヘルペスウイルスベースのベクターを含む。リンパ向性ヘルペスウイルスは、リンパ芽球(例えば、ヒトBリンパ芽球)内で複製され、その天然の生活環の一部にわたりプラスミドとなる。単純ヘルペスウイルス(HSV)は、「リンパ向性」ヘルペスウイルスではない。例示的なリンパ向性ヘルペスウイルスには、EBV、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV);ヘルペスウイルスサイミリ(HS)、及びマレック病ウイルス(MDV)が含まれるが、これらに限定されない。また、酵母ARS、アデノウイルス、SV40、またはBPVなど、エピソームベースのベクターの他の供給源も企図される。
【0075】
当業者は、標準的な組換え法によりベクターを構築するのに十分に装備され得る(例えば、Maniatis et al.,1988及びAusubel et al.,1994を参照されたく、それらのいずれも、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0076】
ベクターはまた、遺伝子送達及び/または遺伝子発現をさらにモジュレートするか、または他の形で有益な特性を標的細胞へともたらす、他の構成要素または機能性も含み得る。そのような他の構成要素は、例えば、細胞への結合または標的に影響を及ぼす構成要素(細胞型または組織特異的結合を媒介する構成要素を含む);ベクター核酸の細胞による取込みに影響を及ぼす構成要素;ポリヌクレオチドの、取込みの後における細胞内の局在化に影響を及ぼす構成要素(核局在化を媒介する作用物質など);及びポリヌクレオチドの発現に影響を及ぼす構成要素を含む。
【0077】
そのような構成要素はまた、ベクターによって送達される核酸を取り込み、発現させている細胞を検出または選択するために使用することができる検出可能な及び/または選択マーカーなどのマーカーも含み得る。そのような構成要素は、ベクターの天然の特色としてもたらされ得る(結合及び取り込みを媒介する構成要素または機能性を有するある種のウイルスベクターの使用など)か、またはベクターは、そのような機能性をもたらすように改変され得る。当該技術分野では、多種多様なそのようなベクターが公知であり、一般に利用可能である。ベクターを宿主細胞内で維持する場合、ベクターは、有糸分裂中に細胞によって自律的構造として安定的に複製させることができるか、または宿主細胞のゲノム内に組み込むこともできるか、または宿主細胞の核内もしくは細胞質内で維持させることができる。
【0078】
2.トランスポゾンベースの系
特定の実施形態によれば、核酸の導入は、トランスポゾン-トランスポザーゼ系を使用し得る。使用されるトランスポゾン-トランスポザーゼ系は、周知のSleeping Beauty、Frog Princeのトランスポゾン-トランスポザーゼ系(後者の記載については、例えば、EP1507865を参照)、またはTTAA特異的トランスポゾン系piggyback系であり得る。
【0079】
トランスポゾンとは、単一の細胞のゲノム内の異なる位置へと転々と移動し得る、転位と呼ばれるプロセスのDNAの配列である。そのプロセスにおいて、トランスポゾンは、変異を引き起こし、ゲノム内のDNAの量を変化させ得る。トランスポゾンはまた、かつては、ジャンピング遺伝子とも呼ばれ、可動遺伝要素の例である。
【0080】
様々な可動遺伝要素が存在し、これらは、それらの転位機序に基づいて群分けすることができる。クラスIの可動遺伝要素またはレトロトランスポゾンは、まず、RNAへと転写され、次いで、逆転写酵素により再度DNAへと逆転写され、次いで、ゲノム内の別の位置に挿入されることによってそれ自体がコピーされる。クラスIIの可動遺伝要素は、トランスポザーゼを使用して、1つの位置から別の位置へと直接移動して、ゲノム内で「カットアンドペースト」される。
【0081】
3.ウイルスベクター
組換えウイルスベクターの作製では、非必須遺伝子は、典型的には、異種(または非天然の)タンパク質または核酸の遺伝子またはコード配列で置き換える。ウイルスベクターとは、核酸、及び、可能なら、タンパク質を細胞に導入するためにウイルス配列を活用する一種の発現構築物である。pH依存的機序またはpH非依存的機序を介して細胞に感染するかまたは細胞に侵入し、それらの遺伝子カーゴを宿主細胞ゲノムに組み込み、ウイルス遺伝子を安定的かつ効率的に発現させるある種のウイルスの能力により、ウイルスは、外来核酸を細胞(例えば、哺乳動物細胞)に転移させるための魅力的な候補物質となっている。本発明のある特定の態様の核酸を送達するために使用され得るウイルスベクターの非限定的な例を、以下に記載している。
【0082】
レトロウイルスは、それらの遺伝子を宿主ゲノムに組み込み、大量の外来遺伝材料を移動させ、広範なスペクトルの種及び細胞型に感染し、特別な細胞株にパッケージングされるそれらの能力のために、遺伝子送達ベクターとして有望である(Miller,1992)。
【0083】
レトロウイルスベクターを構築するためには、核酸を、ある種のウイルス配列の代わりに、ウイルスゲノムに挿入して、複製欠損ウイルスを生成させる。ビリオンを生成させるために、パッケージング細胞株は、gag遺伝子、pol遺伝子、及びenv遺伝子を含有するが、LTRを伴わず、パッケージング構成要素が構築される(Mann et al.,1983)。組換えプラスミドが、レトロウイルスのLTRと一緒にcDNAを含有し、パッケージング配列を特別な細胞株導入する(例えば、例えば、リン酸カルシウム沈殿によって)場合、パッケージング配列は、組換えプラスミド(すなわち、ベクターゲノム)のRNA転写物を、ウイルス粒子にパッケージングすることを可能とし、次いで、これを、培養培地中に分泌させる(Nicolas and Rubenstein,1988、Temin,1986、Mann et al.,1983)。次いで、組換えレトロウイルスを含有する培地を回収し、任意に濃縮し、遺伝子導入のために使用する。ベクター粒子表面を覆うために使用されるエンベロープタンパク質の向性に応じて、レトロウイルスベクターは、多種多様な細胞型に感染することが可能である。しかしながら、組み込み及び安定的な発現は、宿主細胞の分裂が必要である(Paskind et al.,1975)。
【0084】
レンチウイルスは、共通のレトロウイルス遺伝子であるgag、pol、及びenvに加えて、調節的または構造的機能を伴う他の遺伝子も含有する。当該技術分野では、レンチウイルスベクターが周知である(例えば、Naldini et al.,1996、Zufferey et al.,1997、Blomer et al.,1997、Giry-Laterriere et al.,2011、米国特許第6,013,516号及び同第5,994,136号を参照)。
【0085】
組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することができ、インビボ及びエクスビボでの両方の遺伝子移入及び核酸配列の発現に使用することができる。例えば、非分裂細胞に感染することができる組換えレンチウイルスであって、適切な宿主細胞にパッケージング機能を保有する2つの以上のベクター、すなわち、gag、pol、及びenv、ならびにrev及びtatもトランスフェクトする組換えレンチウイルスは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,994,136号に記載されている。
【0086】
C.核酸の送達
本発明によりプログラムされる細胞へのDNAまたはRNAなどの核酸の細胞の導入は、本明細書で記載される通り、または当業者に公知の通り、導入は、細胞を形質転換するために核酸を送達するための任意の適切な方法を使用し得る。このような方法には、例えば、エクスビボにおけるトランスフェクション(Wilson et al.,1989、Nabel et al,1989)、マイクロインジェクション(Harland and Weintraub,1985、米国特許第5,789,215号、参照により本明細書に組み込まれる)を含む注入(米国特許第5,994,624号、同第5,981,274号、同第5,945,100号、同第5,780,448号、同第5,736,524号、同第5,702,932号、同第5,656,610号、同第5,589,466号、及び同第5,580,859号、それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる);電気穿孔(米国特許第5,384,253号、参照により本明細書に組み込まれる;Tur-Kaspa et al.,1986、Potter et al.,1984);リン酸カルシウム沈殿(Graham and Van Der Eb,1973、Chen and Okayama,1987、Rippe et al.,1990);DEAE-デキストランに続く、ポリエチレングリコールの使用(Gopal,1985);直接的な超音波によるローディング(Fechheimer et al.,1987);リポソームを媒介するトランスフェクション(Nicolau and Sene,1982、Fraley et al.,1979、Nicolau et al.,1987、Wong et al.,1980、Kaneda et al.,1989、Kato et al.,1991)及び受容体を媒介するトランスフェクション(Wu and Wu,1987、Wu and Wu,1988);微粒子衝撃法(microprojectile bombardment)(PCT公開第WO 94/09699及び95/06128、米国特許第5,610,042号、同第5,322,783号、同第5,563,055号、同第5,550,318号、同第5,538,877号、及び同第5,538,880号、それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる);炭化ケイ素繊維による撹拌(Kaeppler et al.,1990、米国特許第5,302,523号及び同第5,464,765号、それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる);Agrobacteriumを媒介する形質転換(米国特許第5,591,616号及び同第5,563,055号、それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる);乾燥/阻害を媒介するDNAの取り込み(Potrykus et al.,1985)、ならびにこのような方法の任意の組み合わせによる、DNAの直接的な送達が含まれるが、これらに限定されない。これらの技法などの技法の適用を介して、細胞小器官(複数可)、細胞(複数可)、組織(複数可)、または生物(複数可)を、安定的または一過性に形質転換することができる。
【0087】
1.リポソームを媒介するトランスフェクション
本発明のある特定の実施形態において、核酸は、例えば、リポソームなどの脂質複合体内に封じ込めることができる。リポソームとは、リン脂質二重層膜及び内部の水性媒体を特徴とする小胞構造である。多層状リポソームは、水性媒体によって隔てられた複数の脂質層を有する。リポソームは、リン脂質を過剰な水溶液中に懸濁させる場合に自発的に形成される。脂質の構成要素は、閉止構造を形成する前に自己再配列し、水及び溶存させた溶質を脂質二重層の間に封じ込める(Ghosh and Bachhawat,1991)。また、Lipofectamine(Gibco BRL)またはSuperfect(Qiagen)と複合させた核酸も企図される。使用されるリポソームの量は、リポソームの性質、ならびに使用される細胞の性質により変化させ得、例えば、細胞100万~1000万個当たり約5~約20μgのベクターDNAが、企図され得る。
【0088】
インビトロにおけるリポソームを媒介する核酸送達及び外来DNAの発現は、大きな成功を収めている(Nicolau and Sene,1982、Fraley et al.,1979、Nicolau et al.,1987)。また、培養されたニワトリ胚細胞内、HeLa細胞内、及び肝癌細胞内におけるリポソームを媒介する送達及び外来DNAの発現の実現可能性も裏付けられている(Wong et al.,1980)。
【0089】
本発明のある特定の実施形態において、リポソームを、血球凝集性ウイルス(HVJ)と複合させることができる。これは、細胞膜との融合を容易とし、リポソームに封入されたDNAの細胞への侵入を促進することが示されている(Kaneda et al.,1989)。他の実施形態において、リポソームは、核内非ヒストン染色体タンパク質(HMG-1)と複合させるか、またはこれらと併せて用いることができる(Kato et al.,1991)。さらにさらなる実施形態において、リポソームは、HVJ及びHMG-1の両方と複合させるか、またはこれらと併せて用いることができる。他の実施形態において、送達ビヒクルは、リガンド及びリポソームを含み得る。
【0090】
2.電気穿孔
本発明のある特定の実施形態において、核酸を、電気穿孔を介して、細胞小器官、細胞、組織、または生物に導入する。電気穿孔は、細胞及びDNAの懸濁液の、高電圧の放電への曝露を伴う。レシピエント細胞は、機械的損傷によって形質転換をさらに受けやすくすることもできる。また、使用されるベクターの量は、使用される細胞の性質により変化させ得、例えば、細胞100万~1000万個当たり約5~約20μgのベクターDNAが、企図され得る。
【0091】
電気穿孔を使用する真核細胞のトランスフェクションは、大きな成功を収めている。この様式で、マウスプレBリンパ球に、ヒトカッパ免疫グロブリン遺伝子がトランスフェクトされており(Potter et al.,1984)、ラット肝細胞に、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子がトランスフェクトされている(Tur-Kaspa et al.,1986)。
【0092】
3.リン酸カルシウム
本発明の他の実施形態において、核酸は、リン酸カルシウム沈殿を使用して細胞に導入される。この技法を使用して、ヒトKB細胞に、アデノウイルス5DNAがトランスフェクトされている(Graham and Van Der Eb,1973)。この様式ではまた、マウスL(A9)細胞、マウスC127細胞、CHO細胞、CV-1細胞、BHK細胞、NIH3T3細胞、及びHeLa細胞に、ネオマイシンマーカー遺伝子がトランスフェクトされ(Chen and Okayama,1987)、ラット肝細胞に、様々なマーカー遺伝子がトランスフェクトされた(Rippe et al.,1990)。
【0093】
4.DEAE-デキストラン
別の実施形態において、DEAE-デキストラン、続いてポリエチレングリコールを使用して、核酸は、細胞に送達される。この様式で、レポータープラスミドが、マウス骨髄腫細胞及び赤白血病細胞へと導入された(Gopal,1985)。
【0094】
D.細胞の培養
一般に、本発明の細胞は、細胞の成長を持続させることが可能な、栄養物質に富む緩衝液である培養培地中で培養する。
【0095】
本明細書に記載の方法に従って幹細胞を単離し、増殖させ、分化させるのに適する培養培地には、高ブドウ糖のダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、DMEM/F-12、Liebovitz L-15、RPMI 1640、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、及びOpti-MEM SFM(Invitrogen Inc.)が含まれるが、これらに限定されない。既知組成培地は、ヒト血清アルブミン、ヒトEx Cyteリポタンパク質、トランスフェリン、インスリン、ビタミン、必須アミノ酸、及び非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、グルタミン、及びマイトジェンを補充した、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(Gibco)などの最小必須培地を含み、これもまた適する。本明細書で使用される場合、マイトジェンは、細胞の細胞分裂を刺激する薬剤を指す。薬剤は、細胞が細胞分裂を始めることを促し、有糸分裂を誘発する化学物質、通常はタンパク質の何らかの形態であり得る。一実施形態において、米国出願第08/464,599号及びWO96/39487において記載されている無血清培地などの無血清培地、ならびに米国特許第5,486,359号において記載されている「完全培地」が、本明細書に記載される方法による使用のために企図されている。いくつかの実施形態において、培養培地には、10%ウシ胎児血清(FBS)、ヒト自家血清、ヒトAB型血清、またはヘパリンを補充した血小板に富む血漿(2U/ml)を補充する。細胞培養物は、例えば、培養液のpHを維持するように、5%~12%のCO雰囲気中で維持し、加湿雰囲気中37℃でインキュベートし、85%未満のコンフルエンシーを維持するように継代培養することができる。
【実施例
【0096】
IV.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を裏付けるために含まれる。以下に続く実施例において開示された技術は、本発明の実行において良好に機能するように本発明者によって発見された技術を表し、したがって、その好適な実行のモードを構成すると考えられ得ることを、当業者に理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの変更が開示される特定の実施形態においてなされるが、それでも同様なまたは類似する結果を得ることができることを理解するべきである。
【0097】
実施例1-材料及び方法
miRNAを含むプラスミド及びレンチウイルスベクターの構築。プラスミドを、以前に記載されたようにゲートウェイ系を使用して構築した(Myburgh et al.,2014)。MGST2を除いて、スペーサー配列は、Herculase IIポリメラーゼ(Agilent,Santa Clara,CA)を使用したPCRによって増幅され、順方向及び逆方向プライマーは、それぞれ、EcoRI及びXhoI制限部位を持ち、消化/ライゲーションステップによってpENTRベクター(Invitrogen)にクローニングされた(表3)。スペーサーのクローニングのために使用されるプライマーのほとんどは、5’末端にAttB1(順方向プライマー)及びAttB2(逆方向プライマー)の組換え部位を用いて設計された(表4)。
【0098】
MGST2スペーサーを、EcoRI/XhoI制限消化、続いてpENTRベクターへのライゲーションによって、pOTB7-MGST2プラスミド(transomic)から得た。mirGEヘアピンは、同じ戦略を用いて増幅し、順方向プライマー及び逆方向プライマーは、それぞれ、SpeI及びBamHI制限部位を有した。miRGEヘアピンの要素を、表5に示し得る。miRGEヘアピン連結体は、miRGEプライマー上の制限酵素の異なる連結を使用して、またはSun et al,2006のように平滑ライゲーションによって作製された。新しいmiRGEの追加ごとに、pENTRベクターを配列決定することによって検証した。スペーサー及びmiRGEヘアピンを含む各クローンのアンプリコン部分は、配列決定によって系統的に検証された。miRGE PCRテンプレート及びプライマーのオリゴは、Microsynth(Balgach,Switzerland)から得た。CCR5、GFP、及びP22のphoxを標的とするmiRGEヘアピンテンプレート配列は、表6に入手可能である。
【0099】
最終的なレンチベクタープラスミドは、ヒトUBIプロモーター(pENTR-L4-UBI-L1R)または短伸長因子1プロモーター(pENTR-L4-EFs-L1R)を含むpENTRプラスミドと、ヒトホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK)プロモーター上のmCherryマーカー遺伝子をコードするさらなる転写ユニットを含むレンチベクター目的カセット(pCWX-R4dEST-R2-PC)とのLR Clonase II(Invitrogen,Carlsbad,CA)を媒介する組換えによって生成された。GFP標的配列-AAGAACGGCATCAAGGTGAACT(配列番号57)-は、以前の刊行物から取り入れられた(Mottet-Osman et al.,2007)。ヒトCCR5(Genbank NM_000579.3)標的配列(T7)5’aAGTGTCAAGTCCAATCTATGA(配列番号58)は、以前に使用された(Myburgh et al.,2014)。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表5-1】
【表5-2】
【表6-1】
【表6-2】
【0100】
レンチウイルスベクターの生成及び滴定。レンチウイルスベクターストックは、以前に記載されているように、特定のレンチベクタートランスファープラスミド、psPAX2プラスミドをコードするgag/pol、及びpCAG-VSVGエンベローププラスミドを用いたHEK 293T細胞の一時的なトランスフェクションを使用して生成された(Giry-Laterriere et al.,2011a、Giry-Laterriere et al.,2011a)。レンチベクター滴定は、HT-1080細胞の形質導入、続いて形質導入から5日後のmcherry-陽性細胞のフローサイトメトリーによる定量化を使用して実施した(Giry-Laterriere et al.,2011a、Giry-Laterriere et al.,2011a)。
【0101】
細胞培養及びノックダウン分析。すべての細胞株は、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン、1%ストレプトマイシン、及び1% L-グルタミンを補充した高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(Sigma)で培養した。ノックダウンアッセイごとに、形質導入から少なくとも5日後に、細胞を分析した。CCR5ノックダウン研究では、本明細書ではHeLaR5と名付けられた、高レベルのヒトCCR5を発現する、HeLa由来のTZMbl細胞のサブクローン(AIDS Repository,Germantown,MD)を使用した。GFPノックダウンでは、1コピーのベクターでのGFP形質導入及びGFP陽性細胞の選別後に、同じ細胞を使用した。CCR5の発現は、抗ヒトCCR5-APC抗体(BD Pharmingen Cat.550856)と、FACS Cyan(Beckman Coulter)を使用したフローサイトメトリー分析を使用して検出した。GFP発現は、GFP蛍光中央値を使用して同じフローサイトメーターで評価された。簡潔に言えば、HeLa細胞を、0.2のMOIでmiRGEベースのノックダウンベクターを用いて形質導入して、細胞当たりの高コピー数のベクターの存在を回避し、同等の条件を得た。GFPまたはCCR5の発現は、形質導入した細胞集団と残りの形質導入されていない細胞集団との間で比較し、形質導入されていない集団に対するCCR5発現のパーセンテージとして表した。
【0102】
リアルタイム定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応。コルチ器官の細胞または器官型外植片を採取し、製造元の指示に従ってQiagen RNeasyミニキットを使用してmRNAを抽出した。RNA濃度は、Nanodropを使用して決定した。製造元の指示に従って、Takara PrimeScript RT試薬キットを使用し、cDNA合成には500ngを使用した。リアルタイムPCRは、ABIからの7900HTSDSシステムでSYBRグリーンアッセイを使用して実行した。各プライマーの効率は、cDNAの段階希釈液を用いて検証した。相対発現レベルは、2つのハウスキーピング遺伝子GAPDH及びEF1a、ならびにGAGレンチベクター遺伝子の幾何平均に対する正規化によって計算した。最高の正規化された相対量は、1.0の値として任意に指定した。倍率変化は、これらの正規化された量の平均の商から計算され、±SEMとして報告した。使用されたqPCRプライマーの配列を、表7に示す。
【表7-1】
【表7-2】
【0103】
成熟miRNA検出のための定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応。HeLa R5細胞は、異なるSMIGを担持するレンチベクターを用いて0.2のMOIで形質導入した。形質導入集団(mCherryを発現)は、FACSによって分類され、ベクター/細胞の単一コピーを持つ均一な細胞集団を得た。製造元の指示に従って、Trizol試薬(Ambion)を使用して全RNAを抽出した。RNA濃度は、Nanodropを使用して決定した。逆転写には100ngのRNAを使用した(miRCURY LNA(商標)miRNA PCR、ポリアデニル化、及びcDNA合成キット(exiqon))。逆転写の後、LNA(商標)で強化されたプライマーを用いたリアルタイムPCR増幅(ExiLENTSYBR(登録商標)Greenマスターミックスキット(exiqon))を行った。成熟miRGEの相対発現レベルは、2つのハウスキーピングmiRNA(U6及びRNU5G)の幾何平均に対する正規化することによって計算した。倍率変化は、これらの正規化された量の平均の商から計算され、±SEMとして報告した。LNA(商標)で強化されたプライマーの配列は、製造元から提供されなかった。
【0104】
Amplex Redアッセイによる活性酸素種の測定。PLB-985細胞を、RPMI培地(Gibco)で培養し、上記のように形質導入し、1.25%DMSOの存在下で5日間、好中球様細胞に分化した。次いで、100nMのホルボールミリステートアセテート(PMA)でNOX2を刺激した後、無傷のPLB-985細胞によって生成されたH2O2のレベルを、前述のようにAmplex Red蛍光を使用して測定した(Jaquet et al.,2011)。蛍光は、37°CでFluoSTAR OPTIMA、BMG labtech装置を使用して測定した。
【0105】
ラットのコルチ器官の器官型培養及び形質導入。生後3日目のWistarラットの首を切り、頭を矢状断面に切断し、脳を取り出した。2つの耳包を分離し、単対物双眼顕微鏡(Nikon SMZ800,Japan)下での滅菌解剖のために、鉗子(World Precision Instruments,USA)を使用して、氷冷ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Invitrogen,USA)に移した。骨を取り除いた後、透過性ポリエステルメンブレン(孔径0.4μm)を含むTranswell-Clearインサート(6ウェルフォーマット、Corning,USA)に蝸牛を移した。製造元のプロトコルに従って、メンブレンをCelltak(Corning,USA)でプレコーティングした。次いで、コルチ器官(OC)を、血管条及び蝸牛軸から分離し、有毛細胞を上に向けてインサートに播種した。解剖培地を慎重に除去し、1.5mlの耳の培養培地:(DMEM/F12(Invitrogen,USA)、0.01%アンピシリン(Sigma,USA)、及び10%ウシ胎児血清(Invitrogen,USA)を、インサートメンブレン下の下部コンパートメントに添加した。翌日、インサートの培地を取り除き、それらを空のウェルに移した。形質導入のために、200μlの耳の培養培地を、p22phoxを標的とする停止GFPトリプルmiRGEヘアピンレンチベクターの106、5×106、または107個の粒子を含む、70μlのDMEM/F12(Invitrogen/USA)と一緒に外植片に添加した。37℃及び5% CO2での30分のインキュベーション後、1.5mlの耳の培養培地を下部コンパートメントに添加した。培地を、翌2日に新鮮な耳の培養培地と交換した。最初の形質導入から5日後、蝸牛外植片を、mRNA分離のためにトリプシンで剥離するか、または4%の免疫染色用パラホルムアルデヒドを用いて10分間固定した。
【0106】
コルチ器官のラット器官型培養の免疫染色及び共焦点顕微鏡。細胞を、4%のパラホルムアルデヒドで10分間室温で固定した。外植片を、(インサートメンブレンを切断することによって)24ウェルプレートに移し、PBSで3回洗浄し、3%のTriton-X 100で30分間透過した。蝸牛外植片を、2%のウシ血清アルブミン(BSA)及び0.01%のTriton-X 100を含むブロッキングバッファーに室温で1時間浸した。外植片を、ブロッキング緩衝液中の抗MyoVIIa(1:500、ウサギ;Proteus,USA)抗体で4℃で一晩インキュベートした。翌日、組織を、PBSで3回すすぎ、ブロッキング緩衝液中の二次抗体抗ウサギAlexa Fluor488(1:500;Invitrogen,USA)で室温で2時間インキュベートした。外植片を、再度PBSで3回洗浄し、DAPI(Sigma Aldrich,USA)を含むFluoroshieldを使用してスライドガラスに装着した。標識された細胞は、CCDカメラ(Leica Microsystems)及びPlanapochromat 10x/0.3 NA対物レンズを備えた共焦点レーザー走査顕微鏡(Zeiss LSM710)で可視化した。
【0107】
ヒト化マウス白血球におけるCCR5のノックダウン。磁気ビーズ(Miltenyi)を使用して臍帯血から単離されたヒトCD34を、活性化培地(20ng/mLの組換えヒト[rh]幹細胞因子(SCF)、20ng/mLのrh Flt3-L、20ng/mLのrhインターロイキン-3[IL-3]、20ng/mLのrh TPO1、1v/v%のペニシリン-ストレプトマイシン[Penstrep]を含むCell Gro培地)中で培養した。細胞を、プレ刺激のための活性化培地中の1.0_106細胞/mLで37_Cで_24時間、24ウェルプレートに播種した。形質導入の翌日、Lentiblast Bを、1:1,000の希釈液中の培地に添加した。形質導入のために使用したMOIは、50であった。0.1_106個の細胞を含む1つのウェルは、形質導入されず、陰性対照としての役割を果たした。CD34細胞を、48時間培養した後、形質導入対照を除いて採取した。移植用に指定された細胞を凍結し、液体N2中で新生児NGSマウスを移植するまで保存した。次いで、新生児NGSマウスに1Gyを照射し、次いで260,000個のCD34+細胞を移植した。生後23週目に、マウスからの末梢血を分析することによって生着を確認した。次いで、CCR5発現を、28週齢で、抗体:BioLegendからの、huCD45 FITC(304006)、CD3 AF700(300424)、CD4 PE-CY7(300512)、CD8 BV421(301036)、及びCCR5 APC(359122)(またはイソコントロール#400611)を使用して調査した。
【0108】
スペーサー配列の最小自由エネルギーの予測。スペーサーの最小自由エネルギー(MFE)は、RNAフォールドウェブサーバー(Institute for Theoretical Chemistry,University of Vienna、rna.tbi.univie.ac.at/cgi-bin/RNAWebSuite/RNAfold.cgiのワールドワイドウェブで利用可能)を使用して計算した。スペーサー間のMFEを比較できるように、得られた値をスペーサーの長さで除した。
【0109】
トリプルヘアピン連結効率の計算。トリプルヘアピン構築物(E)の連結効率は、式E=ln(CP)/ln(KP)(式中、KP及びCPは、それぞれ、シングルヘアピン構築物及びトリプルヘアピン構築物で得られたCCR5のノックダウンである)に従って計算した。E=3である場合、ヘアピンの完全な相加効果が連結で観察される。E=1である場合、トリプルヘアピン構築物は、シングルヘアピン構築物と同じくらい効率的であり、ヘアピン連結の相加効果は、観察されない。
【0110】
統計分析。GraphPad Prism 5.04(GraphPad Software,La Jolla,CA)を使用して、統計分析を行った。一元配置分散分析と、それに続くボンフェローニの多重比較検定、及びt検定(ノンパラメトリック、マン・ホイットニーU検定)。
【0111】
実施例2-結果
スペーサー配列は、ポリメラーゼIIプロモーター駆動型miRNAを媒介とする標的遺伝子ノックダウンに必要である。miRGEベースのノックダウンを最適化し、スペーサーの役割をよりよく理解するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)配列を、レンチウイルスベクターのmiRGEヘアピン配列の5’または3’末端に配置した(図1a)。CCR5(R5細胞)を発現するHeLa細胞は、0.2のMOIで形質導入され、トランス遺伝子/細胞の1つを超えるコピーを有する統計的確率が低下した(図1b)。CCR5を標的とするシングルヘアピン及びトリプルヘアピンの両方を使用した。2つの異なるpolII依存性プロモーター:ユビキチンプロモーター(UBI)及び伸長因子1プロモーターのスプライシングされたバージョン、EF25(cgatggctccggtgcccgtcagtgggcagagcgcacatcgcccacagtccccgagaagttggggggaggggtcggcaattgaaccggtgcctagagaaggtggcgcggggtaaactgggaaagtgatgtcgtgtactggctccgcctttttcccgagggtgggggagaaccgtatataagtgcagtagtcgccgtgaacgttctttttcgcaacgggtttgccgccagaacacaggtgtcgtgacgcg;配列番号45)を使用した。UBIプロモーターを使用した場合、スペーサーが存在しないため、3つのヘアピンを使用した場合でも、CCR5ノックダウンは完全に排除した(図1c)。
【0112】
スペーサーの効果は、その位置によって異なる。プロモーターとmiRNAの間にスペーサーがあると、シングルヘアピンで効率的なCCR5ノックダウンが観察され、連結されたトリプルヘアピン構築物で著しく強化された。スペーサーを、miRNA遺伝子の3’位置に配置すると、シングルヘアピンは、CCR5ノックダウン効率の低下を示したが、連結体のノックダウン効果の増加は完全に失われた(図1c及び1e)。状況は、EFプロモーターではわずかに異なった(図1d)。シングルヘアピンの有効性は、スペーサーの存在に依存しなかったが、スペーサーがない場合、トリプル連結の相加効果は観察されなかった(図1e)。対照的に、プロモーターとヘアピンの間のスペーサーでは、トリプル連結の最大効果が達成されたが、3’のスペーサーではそれほど顕著な効果は観察されなかった。
【0113】
まとめると、2つのタイプのpolII依存性プロモーターを介して効率的にノックダウンを推進するには、スペーサー配列(miRNAの5’に優先的に位置している)が必要であることをデータが示す。スペーサーはまた、ヘアピン連結の相加効果にも必要である(図1e)。
【0114】
miRNAベースのノックダウンの効率は、スペーサー配列に依存する。いくつかのコード及び非コードスペーサー配列の効力を評価した(図2a;表8)。コード配列を持つ5つのmiRGEミニ遺伝子が、スペーサー:緑色蛍光タンパク質(GFP)、ミクロソームグルタチオンS-トランスフェラーゼ-2(MGST2)、短縮型神経成長因子受容体(dNGFR)、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)、及びヒストン2B(H2B)cDNAとして生成された(表9)。CD4遺伝子の第1のイントロンであるiCD4は、非コードスペーサー配列として使用された。それぞれのミニ遺伝子を担持するレンチベクターを使用して、HeLaR5細胞を形質導入した。CCR5タンパク質の有意なノックダウンが、すべてのコード配列(MGST、LNGFR、HO-1、及びH2Bスペーサー)を持つ形質導入細胞集団で観察された。GFP配列スペーサーは、CCR5の最高のノックダウンをもたらした。最もパフォーマンスの悪いスペーサーは、iCD4及びH2B(10%未満のノックダウン)であったが、他のコード配列は中程度の効率をもたらした(図2a)。
【0115】
【表8-1】
【表8-2】
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【表9-5】
【表9-6】
【表9-7】
【表9-8】
【表9-9】
【表9-10】
【0116】
スペーサー配列は、miRNAヘアピン連結の相加効果を決定する。ベクターの連結効力におけるスペーサー配列の役割を確認するために、マルチヘアピン構築物を異なるスペーサー(GFP、GFP2、MGST2、またはH2B)で設計した(図3a)。GFPまたはGFP2配列がスペーサーとして使用された場合、3つのヘアピンの連結により、シグナルヘアピン構築物と比較して、CCR5ノックダウンが劇的に向上した(60%から85%のCCR5ノックダウン)(図3b及び3c)。MGST2をスペーサーとして使用した場合、実質的に異なる結果を得た。シングルヘアピンでは、GFP配列ほど強力ではないが、MGST2配列は良好なスペーサー活性を示した(図2)。しかしながら、スペーサーとしてMGST2を使用した場合(連結効率はほぼ1である)、3つのヘアピン連結の相加効果は観察されなかった(図3c)。したがって、連結活性と比較して、スペーサー効力とシグナルヘアピンとの間には解離がある。前者は、GFP及びMGST2に匹敵する範囲にあるが、後者は、スペーサーとしてのMGST2には実質的にない(図3c)。スペーサーとしてH2Bを使用した場合は、逆のことが観察され、シングルヘアピン(約10%)を使用した場合、かなり不十分なノックダウンが観察され、一方、トリプルヘアピン構築物を使用したCCR5ノックダウン(40%のノックダウン)によって判断されるように、改善された連結効果があった(図3b及び3c)。この観察がCCR5以外の遺伝子を標的とするヘアピンにも適用するかどうかを調査するために、スペーサー配列としてMGST2またはGFPのいずれかを使用してNOXサブユニットp22phox(CYBA)を標的とするトリプルヘアピンSMIGを構築した(図3d及び3e;図7も参照)。これらの構築物を使用して、前骨髄球性白血病細胞株PLB-985を形質導入し、好中球様表現型に分化すると、すべての食細胞NADPHオキシダーゼサブユニット(NOX2及びp22phox/CYBAを含む)を発現し、このNADPHオキシダーゼを介して活性酸素種(ROS)を生成する。MGST2スペーサー/トリプルヘアピン構築物を使用して、CYBAのmRNAレベルは50%減少したが、GFPスペーサーCYBA mRNAノックダウンでは、80%超であった(図3d)。食細胞NADPHオキシダーゼの機能的活性、すなわちROSの生成が評価された(図3e)。ROSの生成は、p22phoxを標的とするGFPトリプルヘアピン連結では、60%抑制された。対照的に、スペーサーとしてGFPをMGST2に置き換えることによって、ROSの生成は、20%以下抑制された。これらのデータは、シングルヘアピンを用いて効率的なノックダウンが見られるが、MGST2スペーサーの連結活性が低いことを確認する(図3c及び図8)。これらの実験は、スペーサー配列がシングルヘアピンを用いたノックダウン効率に必要であるだけでなく、相加的な連結効果、つまり連結効力にも必要であることを実証する。
【0117】
細胞株及び組織外植片におけるGFPスペーサーの翻訳に依存しない活性。試験された候補の中で、GFP配列は、シングルヘアピンによるノックダウン効力及び連結効力の両方に関して、スペーサーとして最も効率的であった。CD4イントロンは不活性であったが、他のコード配列もいくつかの有意なノックダウン活性をもたらした。SMIGの最適な機能のためにGFPのタンパク質翻訳が必要かどうかを試験するために、考えられる各リーディングフレームにおいて停止コドンを含む構築物を生成した(図4a)。停止GFPで形質導入された細胞では、蛍光は検出されなかった(図4b)。停止GFPスペーサーによって達成されたCCR5ノックダウンは、標準GFPスペーサーによるノックダウンに相当した(シングルヘアピン構築物を用いて約50%)。これらの結果は、スペーサーのタンパク質翻訳がSMIGの機能にとって重要ではないことを示しており、異種遺伝子GFPの翻訳につながらず、したがって将来的な臨床使用に対応する非常に効率的なスペーサーを提供する。
【0118】
停止GFPスペーサーを含む最適化されたSMIGの治療可能性を実証するために、治療に応用できる可能性がある、内耳NADPHオキシダーゼNOX3のノックダウンが検討された。この活性酸素種(ROS)を生成するNADPHオキシダーゼは、内耳の損傷につながるROSの関連源であることが示されているため、内耳保護の魅力的なノックダウン標的である26。UBIプロモーターの制御下で、NOX3サブユニットp22phoxを標的とし、スペーサーとして停止GFPを用いた、トリプルmiRGE連結が、設計された。形質導入細胞を同定するために、PGKプロモーターの制御下で、mCherryコード配列も構築物に含まれた。新生児ラット蝸牛外植片に、この構築物を形質導入した(図4d)。レンチウイルスGAG遺伝子を検出及び定量するために、RT PCRを使用したベクター形質導入の用量反応(図4e)。形質導入細胞は、mCherry赤色蛍光によっても同定され得る(図4d;緑色蛍光は有毛細胞のマーカーである)。少数の有毛細胞が、実験条件下でベクターで形質導入されたが、結果はp22phox mRNAの用量依存的な減少を示し、第2の臨床的に関連する標的遺伝子を持つmiRGEベクターの効率を確認した(図4f)。
【0119】
ヒト造血幹細胞に由来する循環白血球におけるCCR5の持続したmiRNA媒介性ノックダウン:インビボでの効力及び停止GFPスペーサーを含む最適化されたSMIGの治療可能性をさらに実証するために、別の有望な臨床応用、すなわち、インビボでのHIV補助受容体CCR5のノックダウンを検討した(図11)。この目的のために、ヒトCD34+造血幹細胞(HSC)に、伸長因子プロモーターの制御下で、CCR5を標的とし、スペーサーとして停止GFPを用いた、トリプルmiRGE連結を形質導入した。形質導入細胞を同定するために、PGKプロモーターの制御下で、mCherryコード配列も構築物に含まれた。形質導入後、HSCは、照射後にNGS(NOD scidガンマ)マウスに生着し(図11A)、23週間後、12.4%~44%の間で変動する生着率を達成した(図12)。生着から28週間後、循環血液中のCCR5発現を検討した(図11、13)。結果は、形質導入されていない対照及びmCherry陰性細胞におけるCCR5の発現に関して2種類のCD4+T細胞を明らかにした(図11B及び11C)。高いCCR5を発現するCD4 T細胞の割合は、6匹の生着された動物のうち5匹で平均してほぼ25%となる10%未満から50%以上まで変動した(図11D、mCherry及び非形質導入対照を参照)。6匹の生着した動物のうちの1匹では、高いCCR5 CD4 T細胞集団は、実質的には存在せず、したがって図11Dでは考慮されなかったことに留意すべきである。重要なことには、CCR5発現レベルの劇的な減少が、mCherry+形質導入集団で観察された(図5D、mCherry+)。
【0120】
スペーサー配列は、定常状態レベルを調節するが、miRGEの半減期は調節しない。PCRプライマーは、未処理のmiRGEヘアピン(pri-miRGE)(図5a)または成熟miRGE(図5e)を定量化するために設計された。図5b及びcに見られるように、miRGE pri-miRNAの相対的発現は、MGST-2またはNGFRベースのベクターで形質導入された細胞よりも停止GFPスペーサーで形質導入された細胞で有意に強力であった。スペーサーがない場合にも見られるように、miRGEの発現は、スペーサーとしてCD4の第1のイントロンを用いた検出閾値を下回っていたことに留意すべきである。miRGEの定常状態レベルのこの増加が転写産物の半減期の延長によるものかどうかを検討するために、HeLa R5細胞を、アクチノマイシンDで異なる期間中に処理して、転写をブロックした(図5d)。mRNAを採取し、miRGE発現レベルを、異なる時点でのpri-miRGEのqPCRによって評価した。結果は、NGFR及びMGSTスペーサーを用いて見られたのと同様に、停止GFPスペーサーを用いて推定された約30分間のmirGE半減期を示した(図5d)。成熟miRGEの定常状態レベルは、停止GFPスペーサーが成熟miRGEの最良の発現を可能にすることを実証した(図5f)。また、この観察は、停止GFPスペーサー及びMGST2スペーサーをトリプルヘアピン連結と比較した場合にも有効であった(図5g)。興味深いことに、前駆体及び成熟miRGEの両方のレベルは、同様に、スペーサー配列によって影響を受けた。これらの結果は、スペーサー活性がmiRNA転写産物の安定性にもプロセシングにも関連していないことを強く示唆している。むしろ、これらの結果は、スペーサーがSMIGの転写に関連している機序を示唆している。
【0121】
連結の最大化、及びマルチ標的遺伝子ノックダウンの達成。シングルプロモーター駆動型miRNAクラスターを備えたマルチ標的遺伝子ノックダウンベクターの可能性をさらに検討するために、CCR5または第2の標的遺伝子(この場合はGFP)を標的とする、第4及び第5のmirGEヘアピンを、トリプルCCR5構築物に添加した(図6a)。ヘアピンの連結により、連結に存在するヘアピンの数の関数として成熟miRGEの定常状態レベルが大幅に増加した(図6b)。興味深いことに、最高の成熟miRGEレベルをもたらしたが、CCR5を標的とする第4のヘアピンの添加は、miRGEによるCCR5標的部位の飽和の可能性を主張するトリプルヘアピン構築物と比較して、CCR5の発現はさらに減少しなかった(図6c)。一方、第4のヘアピンを、GFPを標的とするヘアピンと置き換えた場合、CCR5ノックダウンが最大レベル(約90%)にとどまっただけでなく、GFP蛍光も大幅に減少した(図6c)。したがって、4番目の位置にあるヘアピンはCCR5ノックダウンをさらに向上させなかったが、GFPノックダウン(図6d)及び成熟miRGE-GFPの定常状態レベル(図6e)を見ても分かるように、明らかに効率的に処理された。興味深いことに、GFPを標的とする第5のヘアピンは、依然としてCCR5のノックダウンに影響を与えることなく、第4のヘアピンと同様のノックダウン効率及び成熟miRGEのレベルを示した。さらに重要なことには、miRGE_GFPの定常状態レベル、ならびに第4または第5のmiRGEヘアピンによって媒介されるGFPノックダウンは、GFPを標的とするシングルmiRGEヘアピンで達成されたノックダウンに相当した。したがって、プロモーターとしてUBI、及びスペーサーとして停止GFPを使用した場合、最大5つの連結ヘアピンを使用しても活性の損失はなかった。しかしながら、5つのヘアピン連結の効率は、スペーサーに強く依存した。実際、スペーサーとしてMGST2を使用すると、第4及び第5のヘアピンGFPノックダウン効力が劇的に低下した(図6f)。これらのデータは、最適化されたSMIGアーキテクチャが、シングルプロモーター駆動型のマルチヘアピン構築物に対する効率的なマルチ標的遺伝子ノックダウンを可能にすることを実証する。
【0122】
実施例3-免疫チェックポイントノックダウンのための仮想的な合成ミニ遺伝子
内因性免疫チェックポイントノックダウンによる免疫療法細胞の再方向付け。免疫チェックポイントをノックダウンするために使用され得る仮想的な合成ミニ遺伝子の概略図を、図10に示す。合成ミニ遺伝子は、プロモーター配列、スペーサー配列、少なくとも2つのmiRNAヘアピン、及びキメラ抗原受容体配列、またはT細胞受容体配列からなる。合成ミニ遺伝子は、任意に、低親和性神経成長因子受容体(LNGFR)または自殺遺伝子配列などの選択配列を含み得る。さらに、miRNAヘアピン、CARまたはTCR配列、及び選択配列を等しく発現させるために、CARまたはTCR配列は、2A配列またはT2A配列などの「切断可能なペプチド」によって選択配列から分離され得る。これらの合成ミニ遺伝子は、任意の免疫チェックポイントに向けられたmiRNAヘアピン配列を含み得る。具体的には、miRNAヘアピン配列は、PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、TIGIT、CD96、BTLA、KIR、アデノシンA2a受容体、Vista、IDO、FAS、SIRPアルファ、CISH、SHP-1、FOXP3、LAIR1、PVRIG、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、CD160、CRTAM、SIGLEC7、SIGLEC9、CD244、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT1、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、及びGUCY1B3 mRNAを標的とし得る。使用されるプロモーターは、EF1もしくはUBIなどの任意の哺乳動物プロモーター、または表1に記載されている任意のプロモーターであり得る。スペーサー配列は、任意の長さまたは配列、特に表9に記載されているスペーサーのうちの1つであり得る。任意の免疫エフェクター細胞は、これらのmiRNA発現構築物で標的とされ得る。具体的には、T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、TCR操作されたT細胞、CAR T細胞、NK細胞、またはT制御性細胞は、合成miRNA構築物で操作され得る。
【0123】
本明細書で提供される合成ミニ遺伝子を使用して、内因性免疫チェックポイントノックダウンを伴う腫瘍浸潤リンパ球を生成することができる。免疫チェックポイントノックダウンでこれらのTILを生成するために、TILは、患者の腫瘍組織から単離して、精製され得る。これらの精製されたTILは、1つ以上の免疫チェックポイントの遺伝子発現をノックダウンするために、免疫チェックポイントmRNAに向けられたmiRNAヘアピンを含む治療用ミニ遺伝子を含むレンチウイルスベクターで形質導入され得る。次いで、改変されたTILは、エクスビボで拡張され、最終的に患者に再導入され得る。
【0124】
内因性免疫チェックポイントノックダウンを伴うCAR T細胞またはTCR操作されたT細胞は、TILと同様に生成され得る。T細胞は、白血球除去によって患者から採取することができる。次いで、採取された細胞は、免疫チェックポイントmRNAならびにCARまたは操作されたTCR配列を標的とするmiRNAヘアピンを含むシングルベクターで形質導入され得る。図10に示すように、シングルベクター中にこれらを有すると、T細胞の収集から患者の治療までのより効率的なターンアラウンドタイムを可能にする。あるいは、採取されたT細胞は、2つの別々のベクターで処理され得る。第1のベクターは、CARまたは操作されたTCR配列を含み得、細胞に形質導入またはトランスフェクトされ得る。次いで、第2のベクターは、免疫チェックポイントmRNAを標的とするmiRNAヘアピンを備えたmiRNA発現構築物を含むレンチベクターを含む。第2のベクターの形質導入後、これらの改変されたT細胞は、エクスビボで拡張され、その後、患者に再導入され得る。
【0125】
実施例4-合成ミニ遺伝子は遺伝子ノックダウンを標的とする
シングル及びダブルヘアピンmirGE構築物は、HeLaR5細胞において高効率でCCR5をノックダウンする
最適化された治療用ミニ遺伝子アーキテクチャ(EF1sプロモーター、GFP2スペーサーを使用して、シングル及びダブルCCR5を標的とするmirGEヘアピンを構築して、確立した3つのヘアピン構築物と比較して、どれだけ効率的にCCR5を下方制御することができるかを評価した(図14)。HeLaR5細胞は、1.0のMOIで構築物を担持するレンチウイルスベクターで形質導入され、CCR5の下方制御は、形質導入から5~7日後に測定された。すべての構築物はまた、形質導入細胞を同定するためのmCherryで報告された遺伝子も担持した。CCR5のノックダウンは、同じサンプル内の形質導入細胞(mCherry陽性)対非形質導入細胞のMFIを測定することによって、フローサイトメトリーを介して測定され、この比は、mCherryを発現するように、対照レンチウイルスベクターで形質導入したHeLaR5細胞に対して比較した。
【0126】
結果は、対照ベクターで形質導入された細胞と比較した場合、MFIの有意な減少及び蛍光強度の全体的なシフトによって示されるように、3つすべての構築物によるCCR5の高効率の下方制御を示した(図14B)。シングル、ダブル、及びトリプルヘアピン構築物に対する相対CCR5発現レベルは、それぞれ、16.5%、15%、及び15.7%(平均n=6)であった。特に、HeLaR5細胞での最大のCCR5ノックダウンは、最適化された治療用ミニ遺伝子アーキテクチャ(EF1sプロモーター、GFP2スペーサー)を使用する場合に、シグナルmirGEヘアピンで達成することができる。
【0127】
初代T細胞におけるPD1の高効率のノックダウン
PD1がTの枯渇、及びより広くは操作されたT細胞療法の分野で果たす中心的な役割を考慮して、PD1を最大限に下方制御し得る治療用ミニ遺伝子が開発された。PD1をサイレンシングするための3つのmirGE構築物は、前述のアプローチに従って設計された(Myburgh et al.,2014、参照により本明細書に組み込まれる)。標的配列は、i-Score Designer、BLOCK-iT(ThermoFisher)、GeneScript siRNA Target Finder、及びsiDESIGN Center(Dharmacon)を含むオンラインソフトウェアツールを使用して特定した。これらのツールのスコアリングに基づいて、上位10個の標的配列の一覧を生成した。次いで、BLASTを使用してヒトゲノム全体にわたる相同性について、標的配列をそれぞれスクリーニングし、任意の他の遺伝子との70%超の相同性を、除外した。最後に、mirGE及び最適化された治療用ミニ遺伝子アーキテクチャ(EF1sプロモーター、GFP2スペーサー)にクローニングするために、3つの標的配列を選択した(表10)。一旦構築したら、3つのミニ遺伝子を、レンチウイルスベクターにパッケージし、1.0及び2.5のMOIで2人の健康なドナーからの初代T細胞を形質導入するために使用した。すべての構築物はまた、形質導入細胞を同定するためのmCherryで報告された遺伝子も担持した。PD1発現レベルは、フローサイトメトリーを使用して形質導入から5~7日後に測定された。PD1が初代T細胞に均一に発現せず、構成的にも発現しないため、初めに、PD1発現T細胞の割合を決定し、次いで対照形質導入(mCherryのみ)T細胞に対して、PD1発現細胞のMFIを比較した。
【表10】
【0128】
mirGEノックダウンでアクセス可能であり得る標的配列の最初のスクリーニングにより、有意な効果を示す3つの候補のうちの1つをもたらした(PD1-1A)。フローサイトメトリーのドットプロット及びヒストグラムの例(図15B~C)に見られるように、PD1-1A mirGEで形質導入された細胞の蛍光強度に明らかなシフトがあったが、PD1-2A及び3Aで形質導入されたT細胞ではそうではなかった。PD1-1Aで形質導入されたT細胞は、27%のPD1を発現する細胞の平均減少率を有した(図15D)が、PD1-2A及びPD1-3A構築物で形質導入されたT細胞は、12%及び9%の減少を有した(p=0.047、Kruskal-Wallis ANOVA)。さらに、PD1を発現するT細胞集団内では、PD1-1A構築物で形質導入された細胞内でPD1発現が48%減少した(図15E)が、PD1-2A及び3A構築物で形質導入されたT細胞は、3%及び14%の減少を有した(p<0.001、Kruskal-Wallis ANOVA)。
【0129】
したがって、PD1-1A mirGEは、PD1の最大ノックダウンを達成するために、2つ及び3つのヘアピン構築物のさらなる開発に適用された(図16)。これまでに使用したのと同じドナーから採取したT細胞を使用して、図16Aに示す実験計画に従って、形質導入し、PD1ノックダウンを評価した。フローサイトメトリーのデータ(図16B~C)は、さらなるPD1下方制御が、2つ及び3つのヘアピンmirGE構築物で達成することができることを示したが、最大ノックダウンが2つのヘアピンで達成された(3つのヘアピン構築物を使用する場合に無視し得る差があったため)ことを示した。2つ及び3つのヘアピン構築物の両方が、対照ベクターと比較して、PD1発現細胞の比率を45%減少させ、PD1発現細胞上のPD1発現をほぼ40%減少させた(図16D~E)。
【0130】
CAR T細胞のPD1ノックダウンは、T細胞の枯渇から保護する
PD1標的構築物がT細胞の枯渇から保護されるかどうかを評価するために、抗cKit CAR T細胞を形質導入し、4日間にわたって1:15及び1:30のエフェクター:標的(E:T)の比で、HL-60腫瘍細胞でこれらの細胞を共培養した。抗cKit CAR T細胞(これまでに選択された)の純粋な集団を解凍し、1.0のMOIでPD1に対する3つのヘアピンmirGE治療用ミニ遺伝子を担持するレンチベクターで24時間後に形質導入した。共培養は、100,000個のCAR T細胞(PD1ノックダウンの有無にかかわらず抗cKit)で開始され、150万及び300万個のHL-60腫瘍細胞を添加し、それぞれ、1:15及び1:30のE:Tの比を達成した。(標的細胞と共培養されていない)CAR T細胞のみの陰性制御群も含まれた。すべての条件は、IL-2を含まない培地で培養し、Advanced RPMI、10%のFBS、1%のペンストレップ及び1xグルタマックスを用いて作製された。共培養から4日後、CD3陽性T細胞でのPD1発現の計数及びフローサイトメトリー分析のために、細胞を回収した。
【0131】
約20%の形質導入率は、PD1を標的とする治療用ミニ遺伝子(mCherry陽性に基づいて)で形質導入された抗cKit CART細胞で達成された。4日目に、陰性対照群で形質導入率を再度評価したが、これは18.6%であると報告された(図18A)。mCherry陽性細胞の割合は、E:Tの比が1:15及び1:30の群で評価された場合、1.5倍の増加があり(陰性対照と比較して、図18B)、PD1ノックダウンCAR T細胞が、PD1ノックダウンを用いないCAR T細胞よりも高い速度で増殖していたことを示す。陰性対照CAR T細胞は、4日間にわたって100,000個から470万個に拡張した(図18C)。PD1ノックダウンを用いない群では、抗cKit CAR T細胞は、それぞれ、E:Tの比が1:15及び1:30の条件下で、230万個及び170万個に拡張した。発生時に約20%のPD1ノックダウンCART細胞を有した群では、320万個及び230万個の細胞計数は、それぞれ、E:Tの比が1:15及び1:30の条件で記録した。したがって、mCherry陽性細胞の割合が1.5倍に増加したという事実とともに、PD1ノックダウンを用いないCAR T細胞がより急速に枯渇し、増殖及び/または細胞死の減少につながることが明らかになった。これらのデータは、両方のE:Tの条件、具体的には、(4日目の1.5倍の比率に基づいて)mCherry陽性のCAR T細胞集団における倍数増加を評価した場合に、確認された。(約20%のPD1ノックダウンのサブ集団を用いない)抗cKit CAR T細胞群と比較する場合、PD1ノックダウンを有するCAR T細胞は、E:Tが1:15の比(23対48倍)で2倍を超え、1:30の比(17対33倍)で約2倍の増殖速度を有した。
【0132】
mCherryで形質導入されたCAR T細胞のPD1ノックダウンは、フローサイトメトリー分析を介して確認された(図18E)。ドットプロットで見られるように、同じサンプル(mCherry陰性)内の非形質導入CAR T細胞集団と比較し、mirGE治療用ミニ遺伝子で形質導入されなかったCAR T細胞群と比較した場合、CAR T細胞のPD1発現集団は、大幅に減少する。この効果は、1:15及び1:30の両方の実験群で観察され、これは、本明細書でこれまでに報告されたPD1ノックダウンデータと一致する。比較する場合に、1:15及び1:30のE:Tの条件を、重ね合わせたフローサイトメトリーのドットプロットと整列したヒストグラムを条件と比較した場合(図18F)、1:30の条件のCAR T細胞が、これらのCAR T細胞がPD1ノックダウンのものよりもかなり枯渇していることを示す場合には、蛍光強度及びPD1発現細胞に基づいてPD1の全体的により高い頻度を表すことが明らかになった。最後に、PD1発現CAR T細胞の割合を、2つのE:T条件から評価した(図18G)。E:Tの1:15の比で、CAR T細胞の両群は、中央値20%のPD1発現細胞を有した。PD1ノックダウンCAR T細胞が(4日間にわたって1.5倍に増加を有する)この集団の約28%構成されていたことを踏まえれば、これらの細胞がこれらのサンプル内の全体的なCAR T細胞集団を救助するのに役立ったことは明らかである。この救助効果は、1:30の条件でさらに明らかであり、PD1ノックダウンを用いないCAR T細胞のほぼ70%がPD1陽性であったが、PD1ノックダウンを用いて約20%のCAR T細胞で開始した群では40%未満まで減少した。
【0133】
マルチ標的mirGEヘアピンは、CCR5ノックダウンの効率を維持する
最大6つのmirGEヘアピンが最適化された治療用ミニ遺伝子アーキテクチャ(EF1sプロモーター、GFP2スペーサー)で発現され得るかどうかを評価するために、PD1、GFP、及びCCR5に対するマルチ標的ヘアピン構築物を構築した(図17A)。CCR5を標的とするmirGEが治療用ミニ遺伝子の末端に位置している場合のCCR5ノックダウンの潜在的な影響が評価された。CCR5を標的とするヘアピンが4つのヘアピン構築物内で3位及び4位にある場合に、CCR5ノックダウンが減少するかどうかを判定するための研究が行われた。同様に、5位及び6位でのこれらのヘアピンの配置がCCR5ノックダウンに影響を与えるかどうかを評価した。これを試験するために、HeLaR5細胞にこれらの構築物で形質導入し、2つのヘアピンCCR5を標的とするベクター及び対照ベクター(mCherryのみ)と比較してCCR5の下方制御を評価した。CCR5ノックダウンは、フローサイトメトリーを使用して評価した。結果は、CCR5の下方制御の無視できる差(p=0.135、Kruskal-Wallis ANOVA)が、2つのヘアピン、4つのヘアピン、及び6つのヘアピン構築物では、それぞれ、85%、81%、及び82%であったことを示した(図17B~C)。これらのデータは、CCR5及びPD1に対するシングルヘアピンmirGEの高効率を示すデータとともに、下方制御のために少なくとも2つの臨床的に関連する遺伝子を標的とするための治療用ミニ遺伝子技術の使用を実証する。
【0134】
初代T細胞における4つのヘアピン治療用ミニ遺伝子は、PD1及びCCR5を効果的に下方制御する
4つのヘアピンmirGE構築物(PD1に対して2つのヘアピン、CCR5に対して2つのヘアピン)を使用して、初代T細胞を前述のように形質導入し、これら2つの臨床的に関連する標的遺伝子のノックダウンについて評価した。形質導入から5日後、PD1及びCCR5の発現を、フローサイトメトリーにより評価した(図19)。実際、PD1とCCR5の両方を発現する細胞の有意な減少が観察された。重ね合わせたドットプロット及びヒストグラムでは、CCR5及びPD1の実質的な減少が観察された(図19A及び19B)。CCR5対PD1をプロットし、mCherry陽性及びmCherry陰性集団を重ね合わせることによって(図19C)、CCR5+PD1+集団の顕著な減少は、4つのヘアピンmirGE構築物で形質導入されたT細胞で観察された(特に、非形質導入T細胞のCCR5+PD1+集団を著しく曝露、すなわちドットプロットの右上数十年のドット)。これらのデータは、mirGE治療用ミニ遺伝子が、2つの臨床的に関連する標的遺伝子の発現を効率的にノックダウンすることができることを示す。
***
【0135】
本明細書に開示され主張される方法のすべては、本開示に照らして、過度の実験なしに実行かつ達成され得る。本発明の組成物及び方法が、好ましい実施形態に関して記述されてきたが、変形が、本発明の概念、趣旨、または範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される方法に及びステップにおいてまたは方法のステップの順序において適用されてもよいことが、当業者には明らかであろう。より具体的には、同一または類似の結果が達成され得る限り、化学的及び生理学的の両方に関連するある特定の作用物質が、本明細書に記載される作用物質に置き換えられてもよいことが明らかであろう。当業者に明確なすべてのこうした類似の置換及び修正は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨、範囲、及び概念の範囲内にあるとみなされる。
【0136】
参考文献
以下の参考文献は、これらが例示的な手法または他の細部の補足を本明細書に記載されるものに提供する限りにおいて、特に参考により本明細書に組み込まれる。
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