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特許7607895I型およびIII型インターフェロン融合分子ならびにこれらの使用のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】I型およびIII型インターフェロン融合分子ならびにこれらの使用のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241223BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20241223BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241223BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241223BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20241223BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241223BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241223BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20241223BHJP
   A61K 47/65 20170101ALN20241223BHJP
   C07K 14/555 20060101ALN20241223BHJP
   C07K 14/56 20060101ALN20241223BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20241223BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
A61K38/21
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P35/00
A61P37/00
A61K47/65
C07K14/555
C07K14/56
C12N15/62 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019559715
(86)(22)【出願日】2018-05-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 US2018030370
(87)【国際公開番号】W WO2018204312
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】62/492,373
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510144959
【氏名又は名称】ラトガース,ザ ステート ユニバーシティ オブ ニュー ジャージー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】コテンコ,セルゲィ,ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ダービン,ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】ダブラ,バイラルクマール,ラメシュクマール
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】深草 亜子
【審判官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-508310(JP,A)
【文献】特開2011-045375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K,C12N,A61K
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
I型インターフェロンタンパク質またはこのフラグメントと、III型インターフェロンタンパク質またはこのフラグメントとを含む、融合分子であって、
前記融合分子は、I型およびIII型の結合インターフェロン(IFN)受容体複合体を通して、前記I型およびIII型のIFN受容体複合体を構成する4種すべての受容体サブユニットが存在するとき、増強されたシグナリングの誘導能を有し、
前記融合分子は、I型インターフェロンタンパク質またはこのフラグメントと、III型インターフェロンタンパク質またはこのフラグメントとの間にリンカーをさらに含み、
I型インターフェロンタンパク質が、インターフェロン アルファまたはインターフェロン ベータから選択される、ヒトI型インターフェロンタンパク質であり、
III型インターフェロンタンパク質が、インターフェロン ラムダ1、インターフェロン ラムダ2、または、インターフェロン ラムダ3から選択される、ヒトIII型インターフェロンタンパク質であり、
前記I型インターフェロンタンパク質のフラグメントおよびIII型インターフェロンタンパク質のフラグメントは、完全長タンパク質に対して機能活性を維持している、完全長インターフェロンタンパク質より短い長さのフラグメントである、前記融合分子。
【請求項2】
I型インターフェロンタンパク質またはこのフラグメントが、インターフェロン アルファまたはこのフラグメントである、請求項1に記載の融合分子。
【請求項3】
インターフェロン アルファまたはこのフラグメントが、インターフェロン アルファ2またはこのフラグメントである、請求項2に記載の融合分子。
【請求項4】
I型インターフェロンタンパク質またはこのフラグメントが、インターフェロン ベータまたはこのフラグメントである、請求項1に記載の融合分子。
【請求項5】
III型インターフェロンタンパク質またはこのフラグメントが、インターフェロン ラムダ1またはこのフラグメントである;または
III型インターフェロンタンパク質またはこのフラグメントが、インターフェロン ラムダ2またはこのフラグメントである;または
III型インターフェロンタンパク質またはこのフラグメントが、インターフェロン ラムダ3またはこのフラグメントである、請求項1に記載の融合分子。
【請求項6】
そのN末端にシグナルペプチドをさらに含む、請求項1に記載の融合分子。
【請求項7】
I型インターフェロンタンパク質またはIII型インターフェロンタンパク質の成熟したフラグメントを含む;または
I型インターフェロンタンパク質またはIII型インターフェロンタンパク質のシグナルペプチドを包含する配列全体を含む、請求項1に記載の融合分子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の融合分子および薬学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。
【請求項9】
インターフェロン処置に反応する疾患または疾病を処置するための方法における使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の融合分子または請求項8に記載の医薬組成物であって、該方法が、有効量の請求項1~7のいずれか一項に記載の融合分子または請求項8に記載の医薬組成物を、処置を必要とする対象へ投与し、これによって対象の疾患または疾病を処置することを含む、前記使用のための融合分子または医薬組成物。
【請求項10】
対象における疾患または疾病を処置するための方法における使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の融合分子または請求項8に記載の医薬組成物であって、該方法が、有効量の請求項1~7のいずれか一項に記載の融合分子または請求項8に記載の医薬組成物を対象へ投与し、これによって対象の疾患または疾病を処置することを含み、ここで疾患または疾病が、ウイルス感染症、真菌感染症、細菌感染症、がん、炎症性疾患、または自己免疫疾患である、前記使用のための融合分子または医薬組成物。
【請求項11】
対象における感染症を抑制するための方法における使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の融合分子または請求項8に記載の医薬組成物であって、該方法が、有効量の請求項1~7のいずれか一項に記載の融合分子または請求項8に記載の医薬組成物を対象へ投与することを含む、前記使用のための融合分子または医薬組成物。
【請求項12】
融合分子が、対象における2以上の細胞型を標的にする、請求項11に記載の使用のための融合分子または医薬組成物。
【請求項13】
2以上の細胞型が、対象の肺または呼吸器にある;または
2以上の細胞型が、対象の腸にある;または
2以上の細胞型が、対象の複数の器官にある、請求項12に記載の使用のための融合分子または医薬組成物。
【請求項14】
対象におけるがんを抑制または処置するための方法における使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の融合分子または請求項8に記載の医薬組成物であって、該方法が、有効量の請求項1~7のいずれか一項に記載の融合分子または請求項8に記載の医薬組成物を対象へ投与することを含む、前記使用のための融合分子または医薬組成物。
【請求項15】
IFN-αR1鎖を分解または下方調節する感染症を患う対象において、IFN-αR2鎖を通してIFN誘導遺伝子の転写のシグナリングを誘導するための方法における使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の融合分子または請求項8に記載の医薬組成物であって、該方法が、有効量の請求項1~7のいずれか一項に記載の融合分子または請求項8に記載の医薬組成物を対象へ投与することを含む、前記使用のための融合分子または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2017年5月1日に出願された米国仮出願第62/492,373号からの優先権の利益を主張するものであり、この内容は、その全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたR01 AI057468およびR01 AI104669の下、政府の支援でなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
インターフェロン(IFN)は、多面的な抗ウイルス応答の確立における基本的なサイトカインである。IFNの3つの別個の型は現在、それらの構造的な特色、受容体利用、および生物活性に基づき、(I、II、およびIII型)認識される。すべてのIFNが抗ウイルス防御(protection)の重要なメディエーターであるが、抗ウイルス防護(defense)においてそれらの役割は変動する。I型IFN(ヒトにおいてIFN-α/β/ω/ε/κ)は、強い固有の抗ウイルス活性を保有し、多種多様の細胞において強力な抗ウイルス状態を誘導することができる(Levy & Garcia-Sastre (2001) Cytokine Growth Factor Rev. 12(2-3):143-56;Samuel (2001) Clin. Microbiol. Rev. 14(4):778-809)。I型IFN受容体ノックアウトマウスは高度に、多くのウイルス感染症を起こしやすいところ、抗ウイルス抵抗性の誘導におけるI型IFNの不可欠な役割は、かかる動物を使用して明確に実証されている(Mueller, et al. (1994) Science 264(5167):1918-21;Hwang, et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92(24):11284-8;Steinhoff, et al. (1995) J. Virol. 69(4):2153-8)。対照的に、IFN-γおよびIFN-γ受容体のノックアウトマウスを用いた研究(Dalton, et al. (1993) Science 259(5102):1739-42;Huang, et al. (1993) Science 259(5102):1742-5; Lu, et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(14):8233-8)ならびにIFN-γ受容体の遺伝性の遺伝子突然変異を保有するヒトの分析(Dorman, et al. (2004) Lancet 364(9451):2113-21;Novelli & Casanova (2004) Cytokine Growth Factor Rev. 15(5):367-77)によって、抗ウイルス活性がIFN-γの主要な生物学的機能ではないことが明らかにされた。
【0004】
IFN-γは、Mycobacterium tuberculosisなどの病原性細胞内微生物に対する宿主防御の発達にとって重大な細胞性(cell-mediated)免疫応答を刺激するTh1型サイトカインとして分類される(Bach, et al. (1997) Annu. Rev. Immunol. 15:563-91;Boehm, et al. (1997) Annu. Rev. Immunol. 15:749-95;Pestka, et al. (1997) Cytokine Growth Factor Rev. 8(3):189-206)。IFN-γはまた、抗腫瘍免疫応答の発達においても、中心的な役割を果たしており、IFN-αもしくは-β、または-λによる抗ウイルス活性の誘導を増幅し得る。したがって、I型およびII型のIFNはしばしば、有効な抗腫瘍免疫の誘導およびウイルス感染症の消失(elimination)をもたらす様々な自然免疫応答および適応免疫応答を活性化するように一緒にはたらく(Biron (2001) Immunity 14(6):661-4;Le Bon & Tough (2002) Curr. Opin. Immunol. 14(4):432-6;Pestka, et al. (2004) Immunol. Rev. 202:8-32)。
【0005】
IFNは、6種のIL-10関連サイトカイン:IL-10、IL-19、IL-20、IL-22、IL-24、およびIL-26(Kotenko (2002) Cytokine Growth Factor Rev. 13(3):223-40;Renauld (2003) Nat. Rev. Immunol. 3(8):667-76;Pestka, et al. (2004) Annu. Rev. Immunol. 22:929-979)ならびに数種のウイルスIL-10関連サイトカイン(Kotenko & Langer (2004) Int. Immunopharmacol. 4(5):593-608)もまた包含するクラスIIサイトカインの、より大きなファミリーの一員である。IFNおよびIL-10関連サイトカインは、それらがすべてそれらの細胞外ドメインに一般的なモチーフを共有する受容体を介してシグナルを送る(signal)ことから、同じファミリーにグループ化され得る。これらの受容体は、クラスIIサイトカイン受容体ファミリー(CRF2)を包含する。その結果として、IFNおよびIL-10関連サイトカインは、「CRF2サイトカイン」と称されることもある。ヒトのI型IFNファミリーは、13のIFN-α種、ならびに単一種のIFN-β、IFN-κ、IFN-ω、およびIFN-εから構成される(LaFleur, et al. (2001) J. Biol. Chem. 276(43):39765-71;Hardy, et al. (2004) Genomics 84(2):331-45;Langer, et al. (2004) Cytokine Growth Factor Rev. 15(1):33-48;Pestka, et al. (2004) Immunol. Rev. 202:8-32)。ヒトのII型IFNには、IFN-γとして知られている1つの種しかない。IFN-γの3次構造はIL-10のものと似ているが、その1次構造は、すべてのCRF2リガンドと最も相違している。つい最近(the most recent)CRF2ファミリーへ加えられたIII型IFNまたはIFN-λは、IL-10関連サイトカインの構造的特色を示す(demonstrate)が、様々な標的細胞において抗ウイルス活性もまた誘導し、このことが新型のIFNとして、それらの機能的分類を裏付ける(Kotenko, et al. (2003) Nat. Immunol. 4(1):69-77;Sheppard, et al. (2003) Nat. Immunol. 4(1):63-8)。ヒトにおいて、別個のものではあるが密接な関係がある3つのIFN-λタンパク質、IFN-λ1、-λ2、および-λ3(また夫々IL-29、IL-28A、およびIL-28Bとしても知られている)が最初に同定された。2013年に、III型IFNファミリーは、追加のメンバーIFN-λ4タンパク質で拡張されたが、これはIFN-λ1、-λ2、および-λ3とわずかな相同性しか共有しない(Prokunina-Olson, et al. (2013) Nat. Genet. 45(2):164-71)。系統発生的に、IFN-λ遺伝子は、I型IFNファミリーとIL-10遺伝子ファミリーとの間のどこかに存在する(Donnelly & Kotenko (2010) J. Interferon Cytokine Res. 30:555-64)。アミノ酸配列比較は、III型IFNが、I型IFNまたはIL-10関連サイトカインのいずれかと約~5%~18%の同一性を表す(exhibit)ことを示す(show)。
【0006】
IFN-λタンパク質は、ユニークなIFN-λR1鎖(またIL-28RAとしても知られている)と、共通のIL-10R2鎖(これはまた、IL-10、IL-22、およびIL-26のための受容体複合体の一部分でもある)とから構成される受容体複合体に結合し、これを通してシグナルを送る(図1、およびKotenko, et al. (1997) EMBO J. 16(19):5894-903;Kotenko, et al. (2001) J. Biol. Chem. 276(4):2725-32;Xie, et al. (2000) J. Biol. Chem. 275(40):31335-9;Donnelly, et al. (2004) J. Leukoc. Biol. 76(2):314-21;Hor, et al. (2004) J. Biol. Chem. 279(32):33343-51;Sheikh, et al. (2004) J. Immunol. 172(4):2006-10を参照)。対照的に、すべてのI型IFNは、これらの生物活性を、IFN-αR1(IFNAR1)鎖とIFN-αR2(IFNAR2)鎖とから構成されるヘテロダイマーの受容体複合体を通して発揮し(図1を参照)、II型IFN(IFN-γ)は、その機能的な受容体複合体を構築する(assemble)ためにIFN-γR1(IFNGR1)鎖およびIFN-γR2(IFNGR2)鎖を関与させる(engages)。IFN-λは、シグナリングのためにIFN-α受容体複合体を使用しないが、IFN-λ受容体複合体またはIFN-α受容体複合体のいずれかを通したシグナリングは、同じJak-STATシグナル伝達カスケードの活性をもたらす(図1を参照)。
【0007】
IFN-λは最初にIFN-λR1鎖へ結合し、IFN-λがIFN-λR1鎖と結び付くこと(association)によって形成される2元複合体は、第2受容体鎖IL-10R2の複合体への動員を容易にする立体配座の迅速な(rapid)変化を引き起こす。ひとたび3元複合体の構築(assembly)が完了すると、受容体関連(-associated)JanusチロシンキナーゼであるJak1およびTyk2は、IFN-λR1鎖の細胞内ドメイン(ICD)上のホスホチロシン含有ペプチドモチーフ(これは、潜在的に予め形成された細胞質STATタンパク質(STAT1およびSTAT2を包含する)のための一過性のドッキング部位を提供する)の形成をもたらす受容体鎖のトランスリン酸化を媒介する。I型(IFN-α/β)またはIII型(IFN-λ)のIFN受容体複合体を通したシグナリングは、IFN誘導遺伝子(IFN-stimulated gene)因子3(ISGF3)として知られている転写因子複合体の形成をもたらす。この複合体は、3つのタンパク質STAT1、STAT2、およびIFN調節因子9(IRF-9)(またISGF3γまたはp48としても知られている)から構成される。ひとたび構築されると、ISGF3は次いで核へ移行して、そこでそれは、様々なIFN誘導遺伝子(ISG)のプロモーター中のIFN誘導応答要素へ結合する。その結果として、I型IFNまたはIII型IFNのいずれかによって誘導される生物活性は、抗ウイルス活性の誘導、多くの細胞型上での主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI抗原発現の上方調節、および抗腫瘍活性を包含しており、極めて似ている。その上、IFN-αとIFN-λとの共投与(coadministration)は、肝細胞癌のマウスモデルにおいて相乗的な抗腫瘍効果を提供することが示されている(Lasfar, et al. (2008) Hepatology 48(4S):394A-395A;Lasfar, et al. (2016) Oncotarget 7(31):49259-49257)。
【発明の概要】
【0008】
本発明の概要
本発明の側面は、I型IFNタンパク質またはこの一部と、III型IFNタンパク質またはこの一部とから構成される融合分子に関する。非限定的な一態様において、融合分子のI型インターフェロンタンパク質分子は、インターフェロン アルファ、インターフェロン アルファ2、もしくはインターフェロン ベータ、またはこの一部である。非限定的な一態様において、融合分子のIII型インターフェロンタンパク質は、インターフェロン ラムダ1、インターフェロン ラムダ2、もしくはインターフェロン ラムダ3、またはこの一部である。いくつかの非限定態様において、融合分子はさらに、I型インターフェロンタンパク質もしくはこの一部と、III型インターフェロンタンパク質もしくはこの一部との間にリンカーを、および/または融合分子のN末端にシグナルペプチドを含む。
【0009】
本発明の別の側面は、融合分子および薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0010】
本発明の別の側面は、対象における感染を抑制するための方法に関する。方法は、有効量の融合分子を対象へ投与することを含む。非限定的な一態様において、融合分子は、対象の2以上の細胞型における感染を標的にし、これを抑制する。
【0011】
本発明の別の側面は、対象におけるがんを抑制または処置するための方法に関する。方法は、有効量の融合分子を対象へ投与することを含む。
【0012】
本発明の別の側面は、IFN-αR1鎖を分解または下方調節する感染症を患う対象において、IFN-αR2鎖を通してIFN誘導遺伝子の転写に至るシグナリングを誘導するための方法に関する。方法は、有効量の融合分子を対象へ投与することを含む。
【0013】
本発明の、更にもう1つの側面は、疾患または疾病を処置するための方法に関する。方法は、有効量の融合分子を、処置を必要とする対象へ投与し、これによって対象の疾患または疾病を処置することを含む。非限定的な一態様において、疾患または疾病は、インターフェロン処置に反応する。非限定的な一態様において、疾患または疾病は、ウイルス感染症、真菌感染症、細菌感染症、がん、炎症性疾患、または自己免疫疾患である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面の簡単な記載
図1図1は、III型IFN(IFN-λ)受容体系およびI型IFN(IFN-α/β)受容体系のモデルを描いたものである。IFN-λおよびI型IFNは、別個のヘテロダイマーの受容体複合体を使用する。IFN-λは、そのユニークなIFN-λR1およびIL-10R2を関与させるが、IFN-αR1およびIFN-αR2は、活性I型IFN受容体複合体を形成する。IFN-α受容体またはIFN-λ受容体の関与は、受容体関連JAKキナーゼJAK1およびTyk2のリン酸化をもたらし、DNA結合タンパク質IRF9と相互作用するSTAT1およびSTAT2のリン酸化がこれに続き、IFN誘導遺伝子因子3(ISGF3)と名付けられた転写複合体の形成に至り、これはIFN誘導応答要素(ISRE)へ結合してIFN誘導遺伝子(ISG)の転写を調節する。
【0015】
図2図2A、2B、2Cおよび2Dは、ヒトIFN-αA/D(IFN-α;1μg(図2Aおよび2B))またはマウスIFN-λ2(IFN-λ;1μg(図2Cおよび2D))が皮下(SQ)注射された野生型(WT)8日齢仔マウスまたは8週齢成体マウスの小腸におけるpSTAT1(pTyr701)のIHC染色を示す。黒色矢印はIFN処置上皮細胞におけるpSTAT1の核染色を、白色矢印は粘膜固有層内の炎症性細胞を、夫々示す。
【0016】
図3図3A、3Bおよび3Cは、IAV感染マウスの気道におけるウイルス抗原についてのIHC染色(図3A)、およびIFN-α(1μg;図3B)またはIFN-λ2(1μg;図3C)がSQ注射されたWT成体マウスの気道におけるpSTAT1のIHC染色を示す。
【0017】
図4図4Aおよび4Bは、IFN-α(1μg;図4A)またはIFN-λ2(1μg;図4B)が鼻腔内に(IN)注射されたWT成体マウスの気道におけるpSTAT1のIHC染色を示す。
【0018】
図5図5は、in vivo腫瘍成長に対するIFN-αおよびIFN-λの相乗効果を示す。マウスには、元の腫瘍細胞(対照)、またはIFN-α、IFN-λ、もしくはIFN-α+IFN-λのいずれかを発現する腫瘍細胞が注射された。腫瘍生存はモニタリングされた。結果は、腫瘍のない(tumor-free)マウスのパーセントを示す。
【0019】
図6図6は、in vivo腫瘍成長に対するIFN-αおよびIFN-λの相乗効果を示す。マウスには10個の元のBNL細胞が注射され(肝細胞癌モデル)、腫瘍は4~6週間形成させられた。腫瘍のおよそ90%は外科的に除去され、マウスは続いて、IFN-α、IFN-λ、またはIFN-α+IFN-λのいずれかで、2日おきに2週間処置された。腫瘍サイズは、4~6週間モニタリングされた。腫瘍退縮または腫瘍サイズの変化が示されている。
【0020】
図7図7は、モック(mock)の投与と比較された、IFN-α+IFN-λの局部投与および全身投与の腫瘍サイズに対する効果を示す。結果は、IFN-α+IFN-λの局部投与が腫瘍サイズを劇的に低減させることを示す。
【0021】
図8図8は、IFN-αおよびIFN-λが、ARPE-19細胞(ヒト網膜色素上皮細胞株)におけるヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に対する防御を、細胞がHCMV感染に先立つ0.1、6、24および72時間にIFNで前処置されたときに誘導することを示す。
【0022】
図9図9は、IFN-αおよびIFN-λが、ARPE-19細胞における水疱性口内炎ウイルス(VSV)に対する防御を、細胞がVSV感染に先立つ0.1、6、24、72および96時間にIFNで前処置されたときに誘導することを示す。
【0023】
図10図10は、I型IFNおよびIII型IFNによって誘導される抗ウイルス応答の示差動態(differential kinetics)を説明したものである。I型IFNとIII型IFNとの併用(the combined use)自体が、速く(fast)長く続く効率的かつ広範囲の抗ウイルス応答を提供する。
【0024】
図11図11は、I型IFN由来のシグナルペプチド(SP)をもつ、ヒトI型IFN(IFN-I)とIII型IFN(IFN-III)との融合分子の構造の概略図を示す。リンカー配列は、2種のIFNタンパク質間に描かれる。
【0025】
図12図12は、ヒト(h)IFN-α-hIFN-λ1融合分子のアミノ酸配列(配列番号51)を示す。グリシン/セリンリッチの(-rich)リンカーであるN末端のシグナルペプチド配列が枠で囲まれている。
【0026】
図13図13は、hIFN-α-hIFN-λ3融合分子のアミノ酸配列(配列番号52)を示す。グリシン/セリンリッチのリンカーであるN末端のシグナルペプチド配列が枠で囲まれている。
【0027】
図14図14は、hIFN-β-hIFN-λ3融合分子のアミノ酸配列(配列番号53)を示す。グリシン/セリンリッチのリンカーであるN末端のシグナルペプチド配列が枠で囲まれている。
【0028】
図15図15は、ヒトI型IFNまたはIII型IFNのいずれかについて、キメラの受容体複合体を発現するレポーターCHO細胞株の概略図を提供する。
【0029】
図16図16は、本発明の融合IFNタンパク質(10ng/ml)を用いたレポーターCHO細胞株の処置が、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)によって決定されたとおり、STAT1活性化をもたらすことを示す。
【0030】
図17図17は、負の調節因子USP18の存在下でI型とIII型との結合(combined)IFN受容体複合体を通した融合IFN分子のシグナル伝達能(the abilityの the fusion IFN molecules to signal)を実証するモデルを描いたものである。IFNに誘導されるUSP18タンパク質は、IFN-αR2との結び付きについて、JAK1と競合してI型IFNシグナリングを抑制する。IFN-λR1と結び付いたJAK1分子は、IFN融合分子によってオリゴマー化される結合IFN受容体複合体内で、I型およびIII型両方のIFN受容体を通したシグナリングを後押しする。
【0031】
図18図18は、IFN-αR1鎖の不在下でI型とIII型との結合IFN受容体複合体を通した融合IFN分子のシグナル伝達能を実証するモデルを描いたものである。感染は、下方調節および分解のためにIFN-αR1鎖を標的にしてI型IFNシグナリングを抑制する。IFN融合分子は、残存する受容体サブユニットのクラスター化を誘導することで、受容体関連JAKキナーゼの交差(cross-)活性化およびIFNシグナリングカスケードの誘導を可能にさせる。
【0032】
図19図19は、4種すべての受容体サブユニットが存在するとき、本発明の融合IFN分子が、I型およびIII型の結合IFN受容体複合体を通して、増強されたシグナリングの誘導能を有することを実証する。また本明細書に実証されたものには、受容体サブユニットが2種(または3種)しか存在しないときの、I型およびIII型の結合IFN受容体複合体を通した本発明の融合IFN分子のシグナル伝達能もある。IFN融合分子は、残存する受容体サブユニットのクラスター化を誘導することで、受容体関連JAKキナーゼの交差活性化およびIFNシグナリングカスケードの誘導を可能にさせる。
【0033】
図20図20A、20Bおよび20Cは、融合IFN分子IFN-β-IFNλ2によってin vivo腫瘍成長が抑えられたことを示す。マウスの乳がん(breast cancer)E0771細胞は、マウスのIFN-λ2、IFN-βまたはIFN-β-IFNλ2(IFN-β-λ2)融合分子のいずれかを分泌するよう操作された(engineered)。改変(modified)E0771細胞の腫瘍原性は、同一遺伝子のC57BL/6マウスにおいて査定された。マウスには、表示された5万個のE0771細胞が乳房(mammary)脂肪体中へ注射されて、腫瘍の発達がモニタリングされた。2つの実験の結果は、図20Aおよび20Bに示される。融合IFN-β-λ2分子を発現するE0771細胞が移植された(implanted)、5匹のマウスのうち3匹が(図20A)、および6匹のマウスのうち4匹が(図20B)、腫瘍を発達させなかったのに対し(TF-腫瘍のない)、IFN分子しか発現しないE0771細胞が移植されたすべてのマウスが、腫瘍を発達させていた。図20Bにおいて、マウスにはまた、50:50パーセント比のIFN分子しか発現しないE0771細胞も注射された。図20Cは、腫瘍細胞移植後の第26日にて個々のマウスの各々における腫瘍体積を描く。図20Dは、単一のIFN分子の組み合わせを発現する腫瘍をもつマウスにおける腹部皮膚の肥厚および増大した腹部体積(腹水貯留)、ならびに融合IFN-β-λ2分子を発現する腫瘍をもつマウスにおけるこれらの兆し(signs)の欠如を示す。図20Eは、単一のIFN分子の組み合わせを発現する腫瘍をもつマウスの腫瘍および他の組織(肝臓)における貧血症の兆し、ならびに融合IFN-β-λ2分子を発現する腫瘍をもつマウスにおけるこれらの兆しの欠如を示す。
【0034】
図21図21は、マウス(m)IFN-α-mIFN-λ2融合分子のアミノ酸配列(配列番号54)を示す。グリシン/セリンリッチのリンカーであるN末端のシグナルペプチド配列が枠で囲まれている。
【0035】
図22図22は、mIFN-β-mIFN-λ2融合分子のアミノ酸配列(配列番号55)を示す。グリシン/セリンリッチのリンカーであるN末端のシグナルペプチド配列が枠で囲まれている。
【0036】
図23図23は、検出および精製のためC末6×Hisタグを含有する単一または融合のmIFN分子を発現するHEK293細胞の上清について、抗His抗体使用での免疫ブロットの結果を示す。
【0037】
図24図24は、マウス腸上皮細胞(mIEC)に対して試験されたHEK293細胞において産生されたHisタグ付きの単一または融合のmIFN分子の抗ウイルス活性を示す。
【0038】
図25図25は、HEK293細胞において産生されたHisタグ付きの単一または融合のmIFN分子に応答する、mIECにおけるMHCクラスI抗原の上方調節を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の詳細な記載
本明細書に開示されるのは、インターフェロンタンパク質またはこれらの一部を含む融合分子、融合分子を含有する医薬組成物、ならびに、IFN-αR1鎖を分解または下方調節する感染症を患う対象において、感染を抑制すること、がんを抑制または処置すること、IFN-αR2鎖を通したIFN誘導遺伝子の転写のシグナリングを誘導すること、および様々な疾患または疾病を処置すること、におけるそれらの使用のための方法である。
【0040】
本発明の目的上、用語「融合タンパク質」および「融合分子」は、互換的に使用され、異なる供給源からの部分で作られたポリペプチド、タンパク質、および/または分子を網羅することが意味される。かかる融合分子は、別々のタンパク質もしくはこれらの一部を本来はコードする2以上の遺伝子またはこれらのフラグメントを結び合わせること(joining)を通して創出される。これらの融合遺伝子またはこれらの一部の翻訳は、本来のタンパク質の各々に由来する機能特性をもつ単一のまたは複数のポリペプチドをもたらす。非限定的な一態様において、融合分子またはタンパク質は、生物学的な調査または治療法における使用のための組み換えDNA技術によって人工的に創出される。
【0041】
本発明の目的上、「この一部」とは、完全長インターフェロンタンパク質より短い長さのフラグメントを意味するものであり、前記フラグメントは、完全長タンパク質に対して機能活性の少なくとも一部を、および/または受容体サブユニットの少なくとも1個への結合を維持している。
【0042】
I型IFN、IFN-α/βは、ウイルス感染症、がん、および多発性硬化症(IFN-ベータ)を包含する様々な病的な状態(pathological conditions)を処置するために診療所において使用されている。しかしながら、IFN-α/βの使用には依然として、低い有効性および数多の著しい副作用に起因する問題が残っている。III型IFNまたはIFN-λは、ウイルス感染症およびがんのマウスモデルにおいて、I型IFNに匹敵する抗ウイルス活性および抗腫瘍活性を保有していることが示された。I型およびIII型のIFNは同様の生物活性を有するが、これらは、シグナリングのためのユニークなIFN型特異的受容体複合体を利用する(図1)。I型およびIII型のIFNのための受容体は、細胞型および組織分布に別個のパターンをもつことを実証しているところ、これらのIFNは、重複のおよび別個のIFN型特異的細胞集団の両方を標的にする。
【0043】
I型IFN受容体は、ほとんどの細胞型において発現されるが、IFN-λR1は、発現に、より制限されたパターンがあること、主に呼吸器(respiratory tract)、胃腸管および生殖管の上皮細胞に対してIII型IFNへの応答が限定的であることを実証している(Sommereyns, et al. (2008) PLoS Pathog. 4:e1000017;Lasfar, et al. (2006) Cancer Res. 66:4468-4477)。IFN-λ応答のユニークな機能性組織の特異性は、IFN-λR1発現の、細胞型に制限されたパターンに起因する;すべての細胞は、I型IFNのための受容体を発現するが、IFN-λR1は主に、上皮細胞と免疫細胞の個別のサブセット(specific subsets)とにおいて発現される(Kotenko and Durbin (2017) J. Biol. Chem. 292(18):7295-7303)。実に、I型とIII型との両方のIFN系は、IFN両型のための受容体が発現される上皮組織を標的にする感染に対して、効率的な、同等の、および独立したin vivoでの抗ウイルス防御を提供することが可能であることが実証された(Sheppard, et al. (2003) Nat. Immunol. 4:63-68;Kotenko, et al. (2003) Nat. Immunol. 4:69-77;Doyle, et al. (2006) Hepatology 44:896-906;Ank, et al. (2006) J. Virol. 80:4501-4509)。しかしながら、胃腸(GI)ウイルスに対する腸上皮細胞の抗ウイルス防御は主として、III型IFN抗ウイルス系の作用に依存することが実証されている(Pott, et al. (2011) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 108:7944-49;Lin, et al. (2016) PLOS Path. 12:e1005600)。肺におけるインフルエンザAウイルス感染とは違って、機能的IFN-λ受容体複合体を欠くマウスは、経口ロタウイルス(RV)感染の制御を損なっていたこと;I型IFN系は単独で、腸上皮細胞に感染するロタウイルスに対して弱い防御しか提供することができなかったことが、これらの研究によって明らかにされた。重要なことに、I型とIII型との両方のIFN受容体が欠損しているマウスは、各IFN受容体が欠損しているマウスよりRV感染を起こしやすかった(Lin, et al. (2016) PLOS Path. 12:e1005600)。結果的に、IFN-λまたはI型IFNの全身投与は、ロタウイルス複製の抑制をもたらす腸上皮細胞における抗ウイルス状態を誘導することができた。しかしながら、I型IFNしか、肝臓指向性のウイルスに対して防御しない。よって、I型およびIII型のIFN系は、抗ウイルス防護全体においてユニークな機能を有する。I型IFNは、III型IFNが最小限の活性を有するかまたは何ら活性を有さない肝臓、内皮細胞、線維芽細胞、および免疫細胞の抗ウイルス防御に必須とされるようである。対照的に、III型IFN系は、I型IFN抗ウイルス系とは無関係かつ重複しない腸上皮の有効な抗ウイルス防御に必須とされるが、両型のIFNは、肺において効率的かつ独立した抗ウイルス防御を提供し得る(Mordstein, et al (2010) J. Virol. 84:5670-7)。
【0044】
I型およびIII型のIFNが別個の器官および組織を標的にすることを実証することが、I型およびIII型のIFNによって特異的かつユニークに誘導されるMx2プロモーターによって制御されるルシフェラーゼレポーター遺伝子を有するトランスジェニックレポーターマウスの使用で、ウイルスの研究によって確認された(Pulverer, et al. (2010) J. Virol. 84:8626)。かかるレポーターマウスを使用して、胃、小腸および大腸、肺、および唾液腺などの粘膜表面をもつ器官において、ルシフェラーゼの最も強い発現を誘導したことが示された。対照的に、I型IFN応答は、肝臓、脾臓、および腎臓において強かった。静脈内に投与されたI型IFNに対しGI管および唾液腺においては最小限の応答が検出されたかまたは何らの応答も検出されなかったが、肺はI型IFNに応答した。興味深いことに、種々の器官を標的にすることに加えて、I型およびIII型のIFNは、応答に示差動態があることを実証した。全身ライブイメージングは、ルシフェラーゼ発現が、IFN-βに応答して3時間で、IFN-αに応答して6時間で、およびIFN-λ注射に応答して9時間でピークに達したことを示した。実際に、IFN-λへの応答は早く、肺およびGI管において3時間で明確に検出されて24時間存続し得た。したがって、I型およびIII型のIFNの支配的な標的器官ならびにこれらの作用の動態は、明確に別個のものである。
【0045】
腸上皮細胞は成体動物において、IFN-λにしか応答しないが、ロタウイルスに誘導される下痢症を起こしやすいコホートである新生仔(neonates)においては当てはまらない。新生仔感染の間にロタウイルスから最適に防御するには、IFNLRとIFNARとの両方を必須とし、両IFN経路は新生仔の腸において活発である(Lin, et al. (2016) PLOS Path. 12:e1005600)。図2A~2Dにおいて、IFNシグナリングは、IFN-αまたはIFN-λの皮下(SQ)注射の30分後に検出された。ホルマリン固定化パラフィン包埋(FFPE)組織は、チロシンリン酸化STAT1(pSTAT1)に対するモノクローナル抗体で染色された。pSTAT1の核局在化は、IFNARまたはIFNLRのいずれかを通したシグナリングの証拠である。IFNで処置された成体マウスの腸からのそれらの切片において、粘膜固有層内の造血細胞の核染色(白色矢印)は、IFN-αでの処置後であって、かつIFN-λ処置後の腸上皮細胞(黒色矢印)のみに存在する。しかしながら、新生仔において、腸上皮細胞は、核局在化pSTAT1によって判断されるとおり(as measured by)、IFN-αまたはIFN-λのいずれかに十分に応答した。試験された腸に由来するすべての細胞株は、両型のIFNに対して完全に感受性がある。よって、I型およびIII型のIFN経路は、培養された細胞においては冗長であるように見えるが、in vivoでの効果は、特定の解剖学的区画(anatomic compartments)に特異的である。したがって、I型およびIII型のIFNは、GI管内の種々の細胞群(sets of cells)を標的にして、GI管内の効率的な抗ウイルス防御を、具体的に種々の細胞型において複製し得るウイルスに対して獲得するため、本発明などの融合分子を介するI型およびIII型のIFNの共投与(co-administration)は、具体的に有効であろう。
【0046】
同様に、IFN-αの皮下(SQ)投与によって、気道(気管、気管支)上皮ではなく肺胞上皮において、STAT1活性化に至った一方で、IFN-λは優先的に、円柱状の気道内壁細胞(airway-lining cells)に作用する(図3A~3Cを参照)。示されるとおり、インフルエンザウイルスは、両細胞型において複製する(図3A~3C)。鼻腔内注射によるIFN-αまたはIFN-λのいずれかの投与は、肺胞細胞(alveoli cells)のサブセットにおいて、STAT1リン酸化および核移行を誘導した(図4)。しかしながら、SQ注射と同様、気道内壁の(lining airways)呼吸上皮細胞は、III型IFNにしか応答しなかった(図4)。これらの結果は、I型およびIII型のIFNの作用が、GI管においてのみならず呼吸器においてもまた厳密に区分されていることを実証する。したがって、I型およびIII型のIFNが、種々のレベルの呼吸樹(respiratory tree)を優先的にin vivoで標的にする場合、最も有効な治療的アプローチは、本発明などの融合分子を介する両IFN型での共処置(co-treatment)を伴うことで、肺胞上皮および気管支上皮の両方におけるウイルス複製を抑制するであろうことが期待される。その上、組み合わせで作用する各IFNと比較して増大した融合IFN分子の親和性に起因し、IFN融合分子は、4種すべてのIFN受容体サブユニットを発現する細胞において、増強されたIFNシグナリングを誘導するであろうことが期待される。加えて、多くのウイルスは、感染した細胞において、選択されたIFN受容体サブユニットを下方調節するか、またはこれらを分解のため標的にすることで(図18)IFN媒介抗ウイルス応答を抑えるところ(Sen, et al. (2017) J. Virol. JVI.01394-17)、I型とIII型との結合IFN受容体複合体内の残存するI型およびIII型のIFN受容体サブユニットを通したIFN融合分子のシグナル伝達能は(図18および19)、感染した細胞におけるIFNシグナリングを依然として誘導できるようにするであろう。同様に、I型IFNシグナリングは、IFNに誘導される負の調節因子USP18によって急速に(quickly)下方調節されるが、前記因子は、IFN-αR2との結び付きからのJAK1と置き換えて、I型IFNシグナリングの終了に至らせる。IFN融合分子は依然として、IFN-λR1関連JAK1をテトラマーのIFN受容体複合体に持ち込むこと(bringing)によって、IFN-αR2を関与させて活性化させることができ、IFN-αR2リン酸化と、したがってUSP18を発現する細胞におけるI型IFNシグナリングの誘導とに至るであろうことが期待される(図17)。
【0047】
加えて、様々な細胞型は、種々のレベルの特異的なIFN受容体サブユニットを発現する。例えば、腸上皮細胞は、低レベルのIFN-αR2を発現するが、IFN-αR1は、より高いレベルにて発現される(Mahlakoiv, et al. (2015) PLoS Pathog. 11(4):e1004782)。1種または2種の低レベルのIFN受容体サブユニットを発現する細胞において、IFN融合分子は依然として、残存するIFN受容体サブユニットに結合して関与させ、IFNシグナリングを誘導することができるであろう(図19)。
【0048】
さらに、各IFN型は、ユニークな生物学的な特色を有する。実例として(For instance)、IFN-λ受容体の発現は、組織に制限されたパターンをもつことを実証する。上皮細胞は、III型IFNのための主な標的である。よって、上皮が一次(primary)ウイルス感染にとっての主な障壁であるように、III型IFNは、宿主防衛(host defense)において重大な役割を果たすことが期待され得る。多くのウイルスは、上部消化管、呼吸器、もしくは尿生殖路(genitourinary tracts)、または損傷した皮膚を介して宿主に入る。現在のデータは、III型IFNが、気道および腸上皮細胞において、および角化細胞において極めて活性があることを実証し、これらの抗ウイルス力(antiviral potency)は、上皮様組織において最も強いであろうことが示唆される。その上、呼吸器の極性上皮細胞は、これらの頂端表面ではなくこれらの側底表面でしかI型IFNに応答しないが、前記細胞は依然として、これらの頂端(ルミナル)側にてIII型IFNに対し感受性があることを示唆する証拠がある。このユニークな特色は、IFN-λベースの治療法を、呼吸器系ウイルスの感染を予防、抑制、または処置するための鼻腔内送達の後に有効であるようにさせる。さらに、多くのウイルスが、粘膜下層組織中へ急速に広がって、線維芽細胞様細胞に感染することができることから、I型IFNは、粘膜下層組織を防御するためにユニークな場所に投入される(uniquely positioned)。本発明の融合分子を介するI型/III型IFNの組み合わせの鼻腔内送達は、無傷細胞の頂端表面上、IFN-λの作用を通して、非感染の気道上皮へ抗ウイルス防御を提供し得る。ウイルス感染が既に生じている気道部位にて、上皮障壁の完全性(integrity)は損なわれ得、I型IFN(例として、共送達される(co-delivered)IFN-αまたはIFN-β)は、上皮細胞の側底表面へ、ならびにIII型IFNが有効ではない血管内の下層の結合組織、免疫細胞、および内皮細胞へアクセスし得る(図2~4を参照)。
【0049】
マイクロアレイ実験は、I型およびIII型のIFNが、ほぼ(nearly)同一の遺伝子群(sets of genes)を誘導することを実証していた。しかしながら、Mx2-ルシフェラーゼレポーターマウスを用いたin vivo実験と同様、IFN誘導遺伝子発現の動態は異なっており、III型IFNに応答してより長く続く抗ウイルス状態をもたらすが、I型IFNによって誘導される抗ウイルス状態は、処置から24時間後に迅速に低下する(図10を参照)。したがって、IFN融合分子の投与は、同じ分子内でIII型IFNの長く続く抗ウイルス効果をもつI型IFNの速い抗ウイルス作用を送達するであろう。上記に述べたとおり、I型IFNの一過的な作用は、IFN誘導性の(-inducible)負の調節因子USP18によって媒介される。しかしながら、融合IFN分子は、この負の調節機序を克服すること、およびI型IFN受容体を通した一連のシグナリングを提供することが期待される(図17)。
【0050】
IFNに誘導される調節機序は、I型およびIII型のIFNシグナリングに個別に(differentially)影響を及ぼす。例えば、ユビキチンプロテアーゼ43(UBP43、またUSP18としても知られている)を脱共役するIFN誘導性ISG15は、IFN-αR2の細胞内ドメインへの結合に対してJak1と競合して、IFN-αシグナリングを効率的に抑えることが示されているが(図17;Malakhova, et al. (2006) EMBO J. 25:2358-67)、USP18は、III型IFN受容体に関しては最小限の活性しか有さない。USP18の作用のせいで、IFNで処置された細胞は、IFN処置の6時間以内は、I型IFNに対して感受性がなくなり、最大72時間まで不応期が続く。対照的に、細胞は、III型IFNに絶えず応答する。よって、抗ウイルス抵抗性は、III型IFNの存在下の細胞においては維持され得るが、I型IFNは、細胞中の抗ウイルスメディエーターの初期の発現を引き起こすのがより速い。
【0051】
感染はまた、分解または下方調節のためIFN-αR1または他のIFN受容体をも標的にし、これによってこれらのI型IFN媒介生物活性を抑制する(Sen, et al. (2017) J. Virol. JVI.01394-17)。IFN融合分子の結合によって引き起こされる、I型とIII型との両方のIFN受容体サブユニットの、一方の受容体複合体内でのオリゴマー化は、IFN-λ受容体サブユニットと結び付いたキナーゼによるIFN-αR2関連JAK1キナーゼの交差活性化をもたらし、IFN-αR2サブユニットを通したシグナリングを、IFN-αR1サブユニットの不在下で続行できるようにすることが期待される(図18)。結果的に、本発明の融合分子は、IFN-αR1鎖を分解または下方調節する感染症を患う対象におけるIFN-αR2鎖を通したIFN誘導遺伝子の転写を誘導するための方法において有用であることが期待される。
【0052】
同様に、ウイルスに誘導されるIFN受容体サブユニットの下方調節または分解に起因する、IFN-λR1もしくはIFN-αR2などの別のIFN受容体サブユニットまたは2つの受容体サブユニットのいずれかの組み合わせの欠如は依然として、ウイルスに感染した細胞を、IFN融合分子に応答できるようにするであろう(図19)。結果的に、本発明の融合分子は、1個または2個のIFN受容体鎖を分解または下方調節する感染症を患う対象における、いずれか2つのIFN受容体サブユニットを通したIFN誘導遺伝子の転写を誘導するための方法において、有用であることが期待される。
【0053】
最終的に、ウイルスは、それら自身のIFN特異的な対抗策を発達させることで、IFN媒介抗ウイルス防御を回避する。例えば、いくつかのウイルスは、III型IFNに対してより脆弱であり得る。天然痘の原因病原体(causative agent)である天然痘ウイルスを包含する数種のポックスウイルスは、III型IFNを抑制することができない分泌型(secreted)IFNアンタゴニストをコードする(Huang, et al. (2007) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:9822-27)。したがって、III型IFNは、ポックスウイルス感染の処置により有効であり得る。
【0054】
具体的には、病原体(bioagent)の正体(identity)が、ある期間(for a period of time)未知のままであるとの虞があるときの、生物兵器防衛(biodefense)の目的上、速くかつ長く作用する多様な抗ウイルス薬の開発に対して満たされていない明確なニーズがある。加えて、多くのウイルスは、複数の器官および細胞型に感染する。したがって、体全体というレベルで抗ウイルス応答を導くことが可能な抗ウイルス治療法は、かかるウイルスに対する有効な防御にとって具体的に有用である。IFNの各型が、ユニークな機能的特色を有すること、抗ウイルス状態の誘導のために、重複はするが別個の群の器官および組織を標的にすること、ならびにそれらの作用の動態が異なることを実証すること、を実証する証拠が相次いでいる(A growing body of evidence demonstrates that)。よって、I型およびIII型のIFN抗ウイルス系は、個別のウイルス病原体(viral pathogens)に対して抗ウイルス防護を協調的に誘導するよう進化させてきており、両系は、有効な抗ウイルス防御にとって必須とされる。したがって、I型とIII型とのIFNの組み合わせは、複数の器官において最高レベルの抗ウイルス応答を獲得することが必須とされる。その上、速く作用するIFN-βの、より遅いがより長く作用するIFN-λ3、IFN-λ1、またはIFN-λ2との適用は、生体全体に広範囲に及び(that is wide-spread and covers the entire organism)速くかつ長く続く最高レベルの抗ウイルス防御を提供するであろう。本発明のIFN併用治療(IFN combination therapy)は、複数の器官または複数の細胞型において複製することができるウイルスに対して具体的に有効である。
【0055】
加えて、I型およびIII型のIFNは、がんのマウスモデルにおいて相乗的な抗腫瘍効果を有することが今や見出されている(図5および6を参照)。非限定的な一態様において、局部投与は、相乗的な効果を示した(図7を参照)。結果的に、本発明は、I型とIII型とのIFNの共投与を包含する併用治療を提供する。ある態様において、I型IFNは、IFN-α(例として、IFN-α2)またはIFN-βである。他の態様において、III型IFNは、IFN-λ、とりわけIFN-λ1、IFN-λ2、またはIFN-λ3である。
【0056】
重要なことに、図20に提示される研究によって、融合IFN-β-FN-λ2分子は、乳房腫瘍細胞の成長を抑制する点で、単一のIFN分子よりはるかに強力であったこと、ならびにIFN-βおよびIFN-λ2の組み合わせより強力であったことが明らかにされた。融合IFN-β-FN-λ2タンパク質を発現する乳房腫瘍細胞が移植された6匹のマウスのうち4匹が、腫瘍がないままであるのに対し、IFN-βまたはFN-λ2のいずれかを発現する腫瘍細胞の混合物が注射されたすべてのマウスは、腫瘍を発生した。2匹のマウスにおいて発生したIFN-β-FN-λ2発現腫瘍は、IFN-βまたはFN-λ2のいずれかを発現する腫瘍細胞の混合物が移植されたマウスにおける腫瘍よりサイズが小さかった。したがって、IFN融合分子は、I型とIII型とのIFN併用治療と比較して、増強された相乗的な抗腫瘍活性を表した。その上、腫瘍および他の組織(肝臓)における増大した腹部の体積(腹水貯留)ならびに重症貧血の兆し(signs)は、単一のIFN分子の組み合わせを発現する腫瘍をもつマウスにおいて観察された。同様の兆候(symptoms)および兆しは、融合IFN-β-λ2分子を発現する腫瘍をもつマウスにおいては観察されなかった(図20Dおよび20E)。貧血症は、造血および抗血管新生効果を抑えることを誘導したI型IFNに起因する、I型IFN治療の知られている副作用である。本発明のIFN融合分子を発現する腫瘍をもつマウスにおけるこれらの副作用の欠如(lack)は、融合分子にとって、より安全なプロファイルに繋がる(indicative of)が、融合分子は、副作用がほとんどないか(lack)、またはI型IFN治療と比較して、もしくはIFN I型とIII型との併用治療と比較しても、より軽い副作用しか課さない場合があるからである。加えて、これらのデータは、IFN融合分子がユニークな生物活性およびプロファイルを有し、これらはI型およびIII型のIFNの混合物のものとは別個であることを実証する。
【0057】
IFN-α単独またはIFN-λ単独のいずれかでのマウスの処置によって、抗ウイルス応答の活性化に至る(図8および9を参照)ということを考えると、とりわけ重複するが別個である器官、組織、および細胞型において、I型とIII型とのIFNの同時投与(simultaneous administration)は、長く続く効率的かつ広範囲の抗ウイルス応答を提供することが期待される(図10)。したがって、I型とIII型とのIFNの組み合わせはまた、ウイルス感染症の予防および/または処置にも役立つ(of use)。I型とIII型とのIFNの共送達(co-delivery)を容易にするため、本発明の非限定的な一態様は、IFN-αまたはIFN-βとIFN-λとの融合分子を提供する(例として、図11~14および21~22を参照)。IFN-α2とIFN-λ1との融合分子の、I型またはIII型のIFNのいずれかに応答するレポーター細胞株においてSTAT1の活性化を引き起こす能力によって実証されるとおり(図15および16)、この融合分子は、I型とIII型との両方のIFNの機能活性を保持する。このアッセイにおいて、STAT1活性化は、細胞内シグナリングがIFN-γ受容体の細胞内ドメイン(単数または複数)によって媒介されるレポーター細胞株において査定され、IFN融合分子によるI型およびIII型のIFN受容体サブユニットのテトラマー化は伴わなかったが、このことは正常なヒト細胞においては起こるものと期待される(図19)。STAT1活性化は、IFNで誘導されるSTAT1のダイマー化および放射性標識されたDNAプローブへのSTAT1ダイマーの結合を評価するEMSAにおいて測定された。STAT1ダイマーの形成は、STAT1のTyr701上のリン酸化を必須とする。ISGF3転写複合体の形成に至らせるSTAT1およびSTAT2のTyrリン酸化は、I型とIII型との両方のIFNに誘導されるJAK-STATシグナリングカスケードの特質であってユニークな特色でもあるが、メチル化、アセチル化、Serリン酸化等々を包含する数種の追加の翻訳後修飾は報告されており、ISG発現の動態および大きさ、ならびにISGの特異的サブセットのための優先的選択性に影響を及ぼし得る。ISGF3複合体は、IFN融合分子によって明確に活性化されるが、これは融合分子が、ISGF3活性化に左右される抗ウイルス防御を誘導するからである(図24)。しかしながら、ISGF3内の二次翻訳後修飾のいくつかが、I型とIII型とのIFNシグナリング間で異なる可能性があることから、融合分子に応答して活性化されるISGF3は、単一のIFN分子に応答して誘導されるISGF3とは同一ではない場合があること、したがってISG発現の代替プロファイルを、動態、大きさ、またはISGサブセット選択性の観点から引き起こす場合があることが期待される。
【0058】
別々のIFNタンパク質の組み合わせよりIFN融合分子を使用する特定の利点がある。
【0059】
例えば、融合分子は、簡易的な(simplified)治療剤の産生および単一治療剤の送達を提供する。
【0060】
さらに、上に述べるとおり、Mx2ルシフェラーゼレポーターマウスの使用による研究は、I型IFNが肝臓を優先的に標的にするのに対し、III型IFNは、GI管および気道上皮においてユニークな活性をもつことを実証した。それにもかかわらず、様々なヒト肝細胞様細胞株ならびにGI管および呼吸器に由来する細胞株は、I型とIII型との両方のIFNに応答する。その上、新鮮単離されたマウス肝細胞ならびに腸上皮細胞は、両型のIFNに応答する。したがって、個別のIFNに対する、選択された器官および組織の、ほとんどないかまたは弱いin vivoでの応答性は、I型およびIII型のIFNの差次的な送達性(differential deliverability)の結果であり得る。よって、融合分子は、すべての組織および器官へ、IFN-αとIFN-λとの両方を送達するであろう。
【0061】
加えて、I型およびIII型のIFNが、部分的にしか重複していない別個の細胞型を標的にするため、I型およびIII型のIFNの融合分子としての投与は、多種多様の細胞への作用を提供する。さらに、両型のIFNに応答する細胞において、I型IFNとIII型IFNとの間にはシグナリングの交差調節がある;例えば、両型のIFNの作用は、侵襲性真菌成長を制御することにおいて、好中球を完全に機能的にさせることが必須とされる(Espinosa, et al., (2017) Sci. Immunol. (16) pii: eaan5357)。結果的に、I型とIII型とのIFNの融合分子としての投与は、本出願においても有用であろう。
【0062】
上記に述べたとおり、IFN融合分子は、IFN誘導性USP18タンパク質の負の調節効果を克服することで、I型IFN経路を通した持続的なシグナリングを可能にさせることが期待される。IFN-λR1の発現は個別の細胞型に限定されているが、IL-10R2は遍在的に発現される。したがって、融合分子は、I型IFN応答性細胞において3つの受容体サブユニットを関与させるであろう。この受容体は、それらトリマーのIFN受容体複合体を通したシグナリングを、ヘテロダイマーのI型IFN受容体複合体を通したシグナリングより強くさせることができる、より高い親和性を有するはずである。同様に、主にIII型IFNにのみ応答する様々な上皮細胞は依然として、より低レベルの、一方または両方のI型IFN受容体サブユニットを発現している。3つまたは4つのIFN受容体サブユニットから構成されるいくつかの複合体をもたらす、I型IFN受容体サブユニット(単数または複数)の、より低レベルでの発現に関与するであろう。これらの複合体は、高親和性の受容体複合体であり、上皮細胞においてより強いIFNシグナリングに至らせるであろう。
【0063】
さらにまた、融合分子は、鼻腔内送達に役立つ。上記に述べたとおり、気道上皮細胞の頂端表面は、主にIII型IFNに応答する。したがって、I型とIII型とのIFN融合分子の鼻腔内送達は、無傷細胞の頂端表面に対するIFN-λの作用を通して、非感染気道上皮細胞へ、抗ウイルス防御を提供する。頂端IFN-λ受容体複合体が、IFN融合分子への結合後に内在化され、次いで上皮細胞の側底表面へ融合分子と一緒にリサイクルされるとき、IFN融合分子のI型IFN部分は、気道内壁上皮細胞の最上層の側底表面へならびに下層の結合組織へアクセスし得る。
【0064】
その上、融合分子は、受容体へのより高い結合親和性(affinity binding)に起因して、より高度な有効性を有するであろう。融合分子は、I型とIII型とのIFN受容体複合体のオリゴマー化を誘導することで、この組み合わされた細胞表面受容体複合体に対する融合分子の増大した親和性がもたらされ、より強い抗ウイルス活性に繋がる(translate into)であろうことが期待される(図19)。言い換えれば、融合IFN分子は、テトラマーの受容体複合体へ結合するのに対し、単一IFN分子は、ホモダイマーの受容体複合体へ結合する(図19)。したがって、融合分子は、受容体に対して、単一IFN分子より高い親和性を有するはずであることが期待される。加えて、USP18が、I型受容体複合体からしかJak1を追い出さないから、IFN融合分子によって一緒にされるI型とIII型との結合IFN受容体複合体(図17)は依然として、IFN-λ受容体と結び付いたJak1を有するであろう。このJak1は、IFN-λR1鎖とIFN-αR2鎖との両方の細胞内ドメインをリン酸化(活性化)し得、これによって、I型とIII型との両方のIFN受容体を通したシグナリングを、負の調節因子USP18の存在下でさえも通常どおりに続行させることができるようにする。IFN-αR1鎖が、感染によって下方調節されたときのケースにおいて、IFN融合分子は同様に、IFN-αR2鎖を通してシグナリングを誘導することができるはずである(図18)。SOCS1およびSOCS3等の他の負の調節因子もまた、I型・対・III型のIFNシグナリング経路の優先的抑制を示す。融合分子が、4つの受容体サブユニットに同時に結合してクラスター化させる(clusters)ことから、受容体サブユニット1つの欠如またはそれら2つの欠如でさえ、プロテアソームの分解に起因して、または抑制性分子の作用に起因して、残存する2つまたは3つの受容体サブユニットを通した融合IFN分子のシグナル伝達能を遮断するはずはない。言い換えれば、4つの受容体サブユニットのうちいずれか2つの存在は、融合分子にとって、下流のシグナリングカスケードおよび生物活性を誘導するのに充分なはずであるのに対し、I型またはIII型いずれかのIFN受容体複合体におけるたった1つの受容体サブユニットの除去またはブロッキングは、単一IFN分子によるシグナリングの競合抑制に至らせる。テトラマーの受容体複合体に対する融合分子の増大した親和性ならびに抑制性シグナルに対するより低い感度は、IFN融合分子を、IFNの組み合わせより生物学的に強力にさせるはずである。テトラマーの複合体内のIFN受容体サブユニットは、JAKキナーゼおよびSTATなどの共通する下流のシグナリングに携わる分子(participants)に対して、異なる親和性を有し、限定された量のこれらシグナリング分子を得るために争う(compete for)であろうこともまた起こり得ることである。したがって、テトラマーのIFN受容体複合体内のシグナリングは、IFNの1つの型に特異的なシグナリング経路に向けて分岐され得る。加えて、IFN-λシグナリングは、シグナル伝達事象の間に、JAK2チロシンキナーゼを関与させるように見える(Lee, et al. (2012) Int. J. Mol. Med. 30:945-952)。融合分子はしたがって、結合IFN受容体複合体中へJAK2キナーゼを持ち込むであろうし、I型IFNシグナリングをモジュレートし得る。STAT1活性化とは無関係に、III型IFNが、血液-脳障壁の透過性を低減させるという報告もある(Lazear, et al. (2015) Sci. Transl. Med. 7:284ra259)。したがって、融合IFN分子は、標準的な(canonical)JAK-STATシグナリングに対して優遇されるか(complimentary)または付加される経路を関与させることが期待される。上記に述べたとおり、標準的なSTAT1およびSTAT2のTyrリン酸化に加えて、ISGF3転写複合体の翻訳後修飾はまた、IFN融合分子・対・単一IFNへの応答においても異なることがあり、ISG発現の動態、大きさ、およびサブセット選択性、ならびにこれに続く生物活性に影響を及ぼし得る。異常調節の(Dys-regulated)または過剰に悪化した(over-exacerbated)I型IFN活性は、ループスなどの自己免疫疾病ならびに慢性ウイルス感染症に関連している。I型とIII型との両方のIFNによって誘導される抗ウイルスISGのサブセットに加えて、III型IFNではなく、I型IFNもまた、炎症促進性メディエーターをコードするISG群を誘導する(Galani, et al. (2017) Immunity 46(5):875-890.e6)。上記に述べたとおり、IFN融合分子に応答するISGF3の翻訳後修飾におけるわずかな変化は、融合分子に応答するこの炎症促進性ISG群の発現を消失または低減させ得る。その上、III型IFNは、樹状細胞に対するこれらの作用を通して免疫抑制(immunosuppressive)T調節性細胞の発生および増殖を刺激することが報告された(Mennechet, et al. (2006) Blood 107(11):4417-23)。樹状細胞は両型のIFNに応答し、I型IFNは、これらの細胞に対し免疫刺激活性を発揮させる。したがって、IFN融合分子は、樹状細胞のIFNへの応答性を変えることが期待され、よりバランスが取れかつより良好に調整された(better-tuned)活性化を細胞に導くことで、I型IFNによるこれらの過剰な活性化が避けられ得る。
【0065】
示されるとおり、本発明は、I型IFNタンパク質またはこの一部と、III型IFNタンパク質またはこの一部とから構成される融合分子を包含する。融合分子は、I型またはIII型のいずれかをN末端に有し得る(すなわち、I型-III型融合またはIII型-I型融合)。非限定的な例示の融合分子は、図12~14および図21~22に描かれている。融合分子は、シグナルペプチドをそのN末端に包含していても、または包含していなくてもよい。当該技術分野において知られているように、「シグナルペプチド」は、新しく合成された分泌タンパク質または膜タンパク質のN末端に大抵存在しているペプチドであって、細胞の細胞膜(原核生物における原形質膜、および真核生物における小胞体膜)を越えてまたは前記膜中へタンパク質を向かわせる。続いてこれは大抵除去される。シグナルペプチドが包含されているとき、シグナルペプチドは、I型もしくはIII型のいずれかのIFNタンパク質を起源とし得るか、または分泌されることが知られている、いずれの知られているタンパク質からも得られ得る。非限定的な例示のシグナルペプチド配列は、表1に列挙される。いくつかの態様において、本発明の融合分子は、N末端シグナルペプチドを有する。特定の態様において、シグナルペプチドは、配列番号1で表される(set forth in)。
【表1-1】
【表1-2】
【0066】
本発明の融合分子における使用のためのI型IFNタンパク質は、これらに限定されないが、IFN-α(アルファ)、IFN-β(ベータ)、IFN-κ(カッパ)、IFN-ε(イプシロン)、およびIFN-ω(オメガ)またはこれらの一部を包含する。これらタンパク質の遺伝学および構造は当該技術分野において周知であり、例として、Samarajiwa, et al. (2006) The Interferons: Characterization and Application, Wiley-VCH, pages 3-34に記載されている。いくつかの態様において、I型IFNは、哺乳動物のI型IFNである。ある態様において、I型IFNは、ヒトI型IFNである。特定の態様において、I型IFNは、IFN-αタンパク質(例として、IFN-α2)もしくはIFN-βタンパク質(例として、IFN-β1)またはこの一部である。IFN-βタンパク質は、線維芽細胞によって大量に産生され、抗ウイルス活性を発揮することが知られている。IFN-βの2つの型、IFN-β1(IFNB1)およびIFN-β3(IFNB3)は記載されている。IFN-αタンパク質は、白血球によって産生される。これらは、主としてウイルス感染症に対する自然免疫応答に関わり、13の亜型:IFNA1(GENBANKアクセッション番号BAM72353)、IFNA2(GENBANKアクセッション番号NP_000596)、IFNA4(GENBANKアクセッション番号NP_066546)、IFNA5(GENBANKアクセッション番号NP_002160)、IFNA6(GENBANKアクセッション番号NP_066282)、IFNA7(GENBANKアクセッション番号NP_066401)、IFNA8(GENBANKアクセッション番号NP_002161)、IFNA10(GENBANKアクセッション番号NP_002162)、IFNA13(GENBANKアクセッション番号AAH69427)、IFNA14(GENBANKアクセッション番号AAI04160)、IFNA16(GENBANKアクセッション番号NP_002164)、IFNA17(GENBANKアクセッション番号NP_067091)、およびIFNA21(GENBANKアクセッション番号NP_002166)を包含する。ヒトI型IFNタンパク質はまた、IFN-ω(GENBANKアクセッション番号NP_002168)、IFN-κ(GENBANKアクセッション番号NP_064509)、IFN-ε(GENBANKアクセッション番号NP_795372)も包含する。I型IFNタンパク質をコードする遺伝子は、第9染色体上のクラスターから一緒に見出された。市販IFN産物の個別の例は、IFN-γ1b(ACTIMMUNE(登録商標))、IFN-β1a(AVONEX(登録商標)、およびREBIF(登録商標))、IFN-β1b(BETASERON(登録商標))、IFN alfacon-1(INFERGEN(登録商標))、IFN-α2(INTRON A(登録商標))、IFN-α2a(ROFERON-A(登録商標))、ペグインターフェロン アルファ-2a(PEGASYS(登録商標))、およびペグインターフェロン アルファ-2b(PEG-イントロン(登録商標))を包含するが、これらの各々は本発明における用途がある(find use)。非限定的な例示の成熟I型IFNタンパク質は、表2に列挙される
【表2】
【0067】
III型IFNタンパク質もまた、当該技術分野において知られており、US 7,820,793(この全体を参照することによって本明細書に組み込まれる)に記載されている。III型IFNは、IFN-λ1、IFN-λ2、およびIFN-λ3(夫々またIL29、IL28A、およびIL28Bとも呼ばれる)、ならびにこれらの一部を包含する。これらのIFNは、IL10R2(またCRF2-4とも呼ばれる)とIFNLR1(またCRF2-12とも呼ばれる)とから構成される受容体複合体を通してシグナルを伝達する。一態様において、III型IFNは、哺乳動物のIII型IFNである。別の態様において、III型IFNは、ヒトIII型IFNである。いくつかの態様において、III型IFNは、IFN-λ1(GENBANKアクセッション番号NP_742152および3OG6_A)、IFN-λ2(GENBANKアクセッション番号NP_742150およびAAN86126)、またはIFN-λ3(GENBANKアクセッション番号NP_742151およびAAN86127)である。例示の成熟IFN-λタンパク質は、表3に列挙される。特定の態様において、III型IFNは、IFN-λ1である。IFN-β、IFN-ε、IFN-κなどのI型IFNタンパク質、ならびにIFN-λ1、IFN-λ-2、およびIFN-λ3などのIII型IFNタンパク質のいくつかは、融合分子の折り畳みおよび精製を改善するために置換され得る不対Cys残基を有する。I型およびIII型のIFNのバリアント(これらの対応する受容体に対する親和性がより低い)はまた、(これらの個々のヘテロダイマーのIFN受容体複合体を通したそれらのシグナリング能力を低減させるが、テトラマーの結合IFN受容体複合体を通したそれらの相乗的な活性を保護する)融合IFNタンパク質の生成のためにも使用され得る。非限定的な例示のIII型IFN配列は、表3に表される。
【表3-1】
【表3-2】
【0068】
I型IFNおよびIII型IFNタンパク質、またはこれらの一部が、互いに直接結び付けられていてもよい一方で、いくつかの態様において、I型IFNおよびIII型IFNタンパク質、またはこれらの一部は、リンカーによって相互に結び合っている。この点において、本発明の融合分子は、I型IFN-リンカー-III型IFNまたはIII型IFN-リンカー-I型IFNの構造(N→C末端配向)を有し得る。本発明の融合分子における使用のリンカーは、好ましくは曲がりやすく(flexible)、5~50アミノ酸、またはより好ましくは10~30アミノ酸の範囲にある長さを有する。ある態様において、リンカー要素は、グリシン/セリンリンカー、すなわちアミノ酸のグリシンおよびセリンから実質的に構成されるペプチドリンカーである。アミノ酸のトレオニンまたはアラニンもまた、リンカー内に使用され得る。融合分子のN末端にあるIFNが、例としてGlyですでに終了しているケースにおいて、かかるGlyが、リンカー配列におけるリンカーの最初のGlyを形成してもよいことは、当業者にとっては明確なことであろう。同じく、IFNのC末が、例としてProから始まるケースにおいて、かかるPro残基は、リンカー配列におけるリンカーの最後のProを形成してもよい。個別のリンカー配列の非限定的な例は、表4に列挙される。特定の態様において、本発明の融合分子のリンカーは、配列番号36で表される。
【表4】
【0069】
I型インターフェロンとIII型インターフェロンとの融合分子が、抗腫瘍活性を発揮し、抗ウイルス応答を活性化させるのに役立つことが実証される一方で、I型インターフェロンおよび/またはIII型インターフェロンはまた、II型インターフェロンとも融合されることで、免疫反応および炎症反応をモジュレートし得、ならびに真菌感染症および細菌感染症を抑制または処置し得ることが企図される。II型インターフェロンは、IFN-γとしてもまた知られており、IFN-γ受容体(IFNGR)複合体へ結合する逆平行のホモダイマーである。IFN-γは、いくつかの抗ウイルス効果および抗腫瘍効果を有し、I型およびIII型のIFNの効果を強化する。IFN-γは、感染の部位へ白血球を動員して、増大した炎症をもたらす。これはまた、マクロファージをも刺激することで、飲み込まれた細菌を殺傷する。IFN-γはまた、Th2応答も調節する。一態様において、II型IFNは、哺乳動物のII型IFNである。別の態様において、II型IFNは、ヒトII型IFNである。ヒトII型IFNは、GENBANKアクセッション番号NP_000610の下、当該技術分野において知られており、以下:
DPYVKEAENLKKYFNAGHSDVADNGTLFLGILKNWKEESDRKIMQSQIVSFYFKLFKNFKDDQSIQKSVETIKEDMNVKFFNSNKKKRDDFEKLTNYSVTDLNVQRKAIHELIQVMAELSPAAKTGKRKRSQMLFRGRRASQ(配列番号49)の成熟したアミノ酸配列を有する。
【0070】
I型およびIII型のIFNのように、IFN-γはシグナルペプチドを有し、その配列は:MKYTSYILAFQLCIVLGSLGCYCQ(配列番号50)である。II型IFNを包含する融合分子は、II型IFN-リンカー-I型IFN;I型IFN-リンカー-II型IFN;II型IFN-リンカー-III型IFN;III型IFN-リンカー-II型IFN;I型IFN-リンカー-II型IFN-リンカー-III型IFN;II型IFN-リンカー-I型IFN-リンカー-III型IFN;III型IFN-リンカー-II型IFN-リンカー-I型IFN;またはI型IFN-リンカー-III型IFN-リンカー-II型IFNの構造(N→C末端配向)を有し得る。
【0071】
本発明の融合分子は、これらに限定されないが、E. coli、酵母、バキュロウイルス、昆虫、植物、または哺乳動物のタンパク質発現系を包含する、知られている発現系を使用する従来の組み換え発現手法によって産生され得る。融合分子は、いずれの有効なやり方で、組み換え細胞培養から回収および精製され得る。例えば、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィー。例として、Lin, et al. (1986) Meth. Enzymol. 119: 183-192を参照。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が、精製のために採用される。さらに、本発明の融合分子の産生および単離のために使用されてもよい方法は、US 6,433,145に開示される。
【0072】
加えて、本発明のポリペプチドは、いずれの有効な技法を使用して化学的に合成され得る(例として、Creighton (1983) Proteins: Structures and Molecular Principles, W.H. Freeman & Co., NY;Hunkapiller, et al. (1984) Nature 310:105-111を参照)。例えば、融合分子または融合分子のフラグメントは、ペプチドシンセサイザーを用いて合成され得る。
【0073】
本発明はまた、例としてグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、知られている保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク分解的切断、抗体分子または他の細胞リガンド(cellular ligand)への連結等々によって翻訳中または翻訳後に修飾された融合分子も網羅する。無数にある化学的修飾のいずれも、これらに限定されないが、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBHによる特異的な化学的切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカマイシンの存在下での代謝的合成等々を包含する、知られている技法によって実行されてもよい。
【0074】
本発明によって網羅される追加の翻訳後修飾は例えば、例として、Nに連結されるかまたはOに連結される炭水化物鎖、N末端またはC末端のプロセシング、アミノ酸主鎖への化学的成分(chemical moieties)の付着、Nに連結されるかまたはOに連結される炭水化物鎖の化学的修飾、および原核生物宿主細胞発現の結果としてのN末メチオニン残基の付加または欠失を包含する。融合分子はまた、タンパク質の検出および単離を可能にさせる酵素標識、蛍光標識、同位体標識、または親和性標識などの検出可能な標識を用いて修飾されてもよい。
【0075】
また本発明によって提供されるものには、増大した可溶性、安定性、およびポリペプチドの循環時間、または減少した免疫原性などの追加の利点を提供し得る、本発明の融合分子の化学的に修飾された誘導体もある(US 4,179,337を参照)。誘導体化のための化学的成分は、水可溶性ポリマー、たとえば、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール等から選択されてもよい。ポリペプチドは、分子内のランダムな位置にて、または分子内の予め決められた位置にて修飾されてもよく、1、2、3、またはそれ以上の付着された(attached)化学的成分を包含していてもよい。
【0076】
ポリマーは、いずれの分子量であってもよく、分枝であっても非分枝であってもよい。ポリエチレングリコールについて、好ましい分子量は、処理(handling)および製造しやすいように、約1kDaと約100kDaとの間にある(用語「約」は、ポリエチレングリコールの調製において、いくつかの分子が、規定された(stated)分子量より重く、またいくつかが軽いことを示す)。所望される治療的プロファイル(例として、所望される持続放出の継続時間(duration)、効果、もしあるなら生物学的な活性に対する効果、処理のしやすさ、抗原性の程度または欠如、および治療用タンパク質または類似体へのポリエチレングリコールの他の知られている効果)に左右して、他のサイズも使用され得る。例えば、ポリエチレングリコールは、約200、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、10,500、11,000、11,500、12,000、12,500、13,000、13,500、14,000、14,500、15,000、15,500、16,000、16,500、17,000、17,500、18,000、18,500、19,000、19,500、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、75,000、80,000、85,000、90,000、95,000、または100,000 kDaの平均分子量を有していてもよい。
【0077】
上述のとおり、ポリエチレングリコールは、分枝構造を有していてもよい。分枝のポリエチレングリコールは、例えば、US 5,643,575;Morpurgo, et al. (1996) Appl. Biochem. Biotechnol. 56:59-72;Vorobjev, et al. (1999) Nucleosides Nucleotides 18:2745-2750;およびCaliceti, et al. (1999) Bioconjug. Chem. 10:638-646において記載されている。
【0078】
ポリエチレングリコール分子(または他の化学的成分)は、タンパク質の機能ドメインまたは抗原ドメインに対する効果を考慮した上で、融合分子へ付着されるべきである。当業者に入手可能な付着方法には数多あり、例として、PEGのG-CSFへのカップリングを教示するEP 0 401 384、およびトレシルクロリドを使用するGM-CSFのペグ化を記載するMalik, et al. (1992) Exp. Hematol. 20:1028-1035を参照。例えば、ポリエチレングリコールは、遊離のアミノ基またはカルボキシル基などの反応基を介するアミノ酸残基を通して共有結合されていてもよい。反応基は、活性化されたポリエチレングリコール分子が結合されていてもよい基である。遊離のアミノ基を有するアミノ酸残基は、リシン残基およびN末のアミノ酸残基を包含していてもよい;遊離のカルボキシル基を有するものは、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、およびC末端のアミノ酸残基を包含していてもよい。スルフヒドリル基はまた、ポリエチレングリコール分子を付着させるための反応基としても使用されてもよい。治療目的にとって好ましいのは、N末端またはリシン基での付着などの、アミノ基での付着である。
【0079】
上に示唆されるとおり、ポリエチレングリコールは、数多のアミノ酸残基のいずれかへの連結を介してタンパク質へ付着されていてもよい。例えば、ポリエチレングリコールは、リシン残基、ヒスチジン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、またはシステイン残基への共有結合を介してタンパク質へ連結され得る。1以上の反応化学が、タンパク質の個別のアミノ酸残基(例として、リシン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、もしくはシステイン)へ、またはタンパク質の1より多くのタイプのアミノ酸残基(例として、リシン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、およびこれらの組み合わせ)へ、ポリエチレングリコールを付着させるのに採用されてもよい。
【0080】
一方で、N末端にて化学的に修飾されたタンパク質も具体的に切望されることがある。実例として(as an illustration)ポリエチレングリコールを使用すると、様々なポリエチレングリコール分子(分子量、分枝等々による)、反応ミックス中のポリエチレングリコール分子対タンパク質(ポリペプチド)分子の割合、実施されるべきペグ化反応のタイプ、およびN末端にペグ化された選択タンパク質を得る方法から選択されてもよい。N末端にペグ化された調製物を得る(すなわち、必要なら、この部分を他のモノペグ化された部分から分離する)方法は、ペグ化されたタンパク質分子の集団からの、N末端にペグ化された材料の精製によるものであってもよい。N末端修飾にて化学的に修飾された選択タンパク質は、特定のタンパク質の誘導体化に利用可能な種々のタイプの一級アミノ基の示差的反応性(リシン・対・N末)を利用する還元的アルキル化によって遂行され得る。適切な反応条件下で、カルボニル基含有ポリマーを用いるタンパク質のN末端での実質的に選択的な誘導体化が達成される。
【0081】
上に示されるとおり、本発明の融合分子のペグ化は、いくつもの手段によって遂行され得る。例えば、ポリエチレングリコールは、直接的または介在リンカーのいずれかによって、タンパク質へ付着され得る。タンパク質へポリエチレングリコールを付着させるための無リンカー(Linkerless)系は、Delgado et al. (1992) Crit. Rev. Thera. Drug Carrier Sys. 9:249-304;Francis, et al. (1998) Intern. J. Hematol. 68:1-18;US 4,002,531;US 5,349,052;WO 95/06058;およびWO 98/32466に記載されている。
【0082】
本発明の融合分子へ付着されているポリエチレングリコール部分の数(すなわち、置換度)もまた変動し得る。例えば、本発明のペグ化されたタンパク質は、平均すると、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20個、またはそれ以上のポリエチレングリコール分子へ連結されていてもよい。同様に、内部での平均置換度は、タンパク質1分子につき1~3、2~4、3~5、4~6、5~7、6~8、7~9、8~10、9~11、10~12、11~13、12~14、13~15、14~16、15~17、16~18、17~19、または18~20個などのポリエチレングリコール部分に及ぶ。置換度を決定するための方法は、例えば、Delgado, et al. (1992) Crit. Rev. Thera. Drug Carrier Sys. 9:249-304において述べられている。
【0083】
示されるとおり、本発明の融合分子は、様々ながん、ウイルス疾患、および他の適応症の処置のために使用され得る。非限定的な一態様において、融合分子は、これらに限定されないが、真菌感染症、細菌感染症、自己免疫条件、および炎症などの、IFN-αまたはIFN-λが使用される適応症において使用される。結果的に、本発明はまた、有効量のI型とIII型とのIFN融合分子を、処置を必要とする対象へ投与することによって疾患または疾病を予防または処置するための方法をも提供する。特定の態様において、疾患または疾病は、IFN-αまたはIFN-λに応答する疾患または疾病である。
【0084】
「応答(して/する)」とは、本明細書に使用されるとき、インターフェロンの投与に対するいずれの細胞応答または対象によるいずれの応答をも網羅することを意味するが、前記インターフェロンは、疾病に関連する1以上の兆しまたは兆候を予防、寛解、低減、または消失するのに有用であるインターフェロンを示す(indicative of)。
【0085】
本発明の目的上、「対象」は、哺乳動物、例として、ヒト、非ヒト霊長目の動物(例として、ヒヒ、オランウータン、サル)、マウス、ブタ、ウシ、ヤギ、ネコ、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター、ウマ、サル、ヒツジ、もしくは他の非ヒト哺乳動物;あるいは、例として、鳥類(例として、ニワトリもしくはアヒル)または魚類などの非哺乳類の脊椎動物、および非哺乳類の無脊椎動物を包含する、非哺乳動物を包含することが意図される。
【0086】
本発明の方法に従うと、「有効量」は、融合分子の、または所望される結果を産生するのに充分な融合分子を含む医薬組成物の投薬量または量を意味する。所望される結果は、その投薬量または量を受けた対象における客観的なまたは主観的な改善を包含し得る。とりわけ、有効量は、疾患もしくは疾病に関連する1以上の兆しまたは兆候を予防、寛解、低減、あるいは消失する量である。処置は、これらに限定されないが、インフルエンザなどの一般的な再発性感染症、および生物兵器攻撃などの緊急予防法を必須とする状況を包含する、持病(an existing condition)の治療、または今後予測される感染の予防法を包含し得る。
【0087】
いくつかの非限定態様において、本発明の方法は、これらに限定されないが、慢性C型肝炎感染症、慢性B型肝炎感染症、およびAIDSなどの、ウイルス感染症;有毛細胞白血病、悪性黒色腫、肝細胞癌、濾胞性リンパ腫、AIDS関連カポジ肉腫、非ホジキンリンパ腫、慢性骨髄性白血病、基底細胞癌、多発性骨髄腫、カルチノイド腫瘍、膀胱がん、皮膚T細胞性リンパ腫、および腎細胞癌などの、がん;これらに限定されないが、クローン病、多発性硬化症、および尖圭コンジローマなどの、自己免疫疾病;炎症;細菌感染症、および真菌感染症の処置に役立つ。特定の非限定的な態様において、本発明の融合分子および方法は、ウイルス感染症またはがんの処置に役立つ。別の非限定態様において、本発明の融合分子および方法は、対象における2以上の細胞型において感染を標的にして抑制することに役立つ。
【0088】
いずれか有効な量の本発明の融合分子は、これを必要とする対象、例として、疾患もしくは疾病をもつ対象、または疾患もしくは疾病に罹るリスクのある対象へ投与されてもよい。一般命題として、1用量につき非経口的に投与される薬学的に有効な総量は、患者体重から起算して(of)約1μg/kg/日~10mg/kg/日の範囲にあるであろうが、上述のとおり、これは治療的な裁量に委ねられるであろう。より好ましくは、この用量は、少なくとも0.01mg/kg/日、および最も好ましくは、ヒトにとって、約0.01と1mg/kg/日との間である。持続的に投与される場合、組成物は、典型的には、1日につき1~4回の注射または例えばミニポンプを使用する持続皮下注入のいずれかによって、約1μg/kg/時間~約50μg/kg/時間の投薬速度(a dose rate)にて投与される。静脈内溶液バッグ(intravenous bag solution)もまた使用され得る。変化を観察するのに必要な処置の長さ、および生じる応答のための処置後の間隔は、所望される効果に左右して変動し得る。
【0089】
治療の目的上、本発明の融合分子は、好ましくは、薬学的に許容し得る担体と混和された融合分子を含有する医薬組成物として提供される。用語「医薬組成物」は、動物またはヒトを包含する対象における医薬的使用(pharmaceutical use)に好適な組成物を意味する。医薬組成物は一般に、有効量の活性剤、および、例として、非毒性固体の、半固体の、または液体の充填剤、希釈剤、いずれのタイプのカプセル化材料または製剤化補助剤(formulation auxiliary)などの薬学的に許容し得る担体を包含する担体を含む。
【0090】
本発明の融合分子を含有する医薬組成物は、例えば、経口的に、経直腸的に、非経口的に、大槽内に、膣内に、腹腔内に、局所的に(粉末、軟膏、点滴薬、もしくは経皮パッチのように)、頬側に、または口腔スプレーもしくは鼻腔スプレーとして、いずれの有効なルートによっても、投与されてもよい。
【0091】
用語「非経口の」は、本明細書に使用されるとき、静脈内の、筋肉内の、腹腔内の、胸骨下の、皮下の、および関節内の注射ならびに注入などの投与の様式を包含する、いずれの有効な投与の非経口様式を指す。
【0092】
組成物はまた、持続放出系によって好適に投与されてもよい。持続放出組成物の好適な例は、成形された物品、例としてフィルムまたはマイクロカプセルの形態の、半透過性ポリマーマトリックスを包含する。持続放出マトリックスは、ポリラクチド(US 3,773,919、EP 58,481)、L-グルタミン酸およびガンマ-エチル-L-グルタマートのコポリマー(Sidman, et al. (1983) Biopolymers 22:547-556)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)(Langer, et al. (1981) J. Biomed. Mater. Res. 15:167-277;Langer (1982) Chem. Tech. 12:98-105)、エチレン酢酸ビニルまたはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)を包含する。
【0093】
好ましい態様において、本発明の組成物は、例えばUS 4,938,763;US 5,278,201;US 5,278,202;US 5,324,519;US 5,340,849;US 5,487,897;WO01/35929;WO00/24374;およびWO00/06117に記載のとおりの生分解性ポリマー薬物送達系において製剤化される。特定の好ましい態様において、本発明の組成物は、Atrix Laboratories, Inc.(Fort Collins, CO)のATRIGEL Biodegradable Systemを使用して製剤化される。
【0094】
本発明の組成物の製剤化において使用され得る生分解性ポリマーの例は、これらに限定されないが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物(polyanhidrides)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシブチラート、ポリヒドロキシバレラート、ポリアルキレンオキサラート、ポリアルキレンスクシナート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、およびコポリマー、ターポリマー、または上の材料の組み合わせもしくは混合物を包含する。好ましいポリマーは、より低い結晶化度を有し、およびより疎水性であるものである。これらのポリマーおよびコポリマーは、生体適合性溶媒中、水素結合度も高いポリグリコリドおよびキチンなどの高結晶質ポリマーより可溶性である。所望される溶解パラメータをもつ好ましい材料は、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、および可溶性を増強するより多くのアモルファス領域があるグリコリドとのこれらのコポリマーである。特定の好ましい態様において、組成物の製剤化において使用され得る生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)である。
【0095】
分子量、疎水性、およびラクチド/グリコリド比などのポリマー特性は、
所望される薬物放出プロファイルを得るために修飾されてもよい(例として、Ravivarapu, et al. (2000) J. Pharmaceut. Sci. 89:732-741を参照)。
【0096】
生分解性ポリマーのための溶媒は、非毒性、水混和性、および、そうでなければ生体適合性であることもまた好ましい。かかる溶媒の例は、これらに限定されないが、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、エタノール、グリセリンプロピレングリコール、ブタノールなどのC2~C6アルカノール、C1~C15アルコール、ジオール、トリオール、およびテトラオール;アセトン、ジエチルケトン、およびメチルエチルケトンなどのC3~C15アルキルケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチルなどのC3~C15エステル;メチルエチルケトンなどのアルキルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびカプロラクタムなどのC1~C15アミド;テトラヒドロフラン、またはソルケタールなどのC3~C20エーテル;ツイーン、トリアセチン、プロピレンカーボネート、デシルメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、オレイン酸、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンを包含し、他の好ましい溶媒は、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジプロピレングリコール、トリブチリン、オレイン酸エチル、グリセリン、グリコフロール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸、ポリエチレングリコール、プロピレンカーボネート、およびクエン酸トリエチルである。最も好ましい溶媒は、溶媒和能およびそれらの相溶性のため、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、トリアセチン、およびプロピレンカーボネートである。
【0097】
加えて、本発明の組成物および生分解性ポリマーを含有する製剤はまた、放出速度変更剤(release-rate modification agents)および/または細孔形成剤も包含していてもよい。放出速度変更剤の例は、これらに限定されないが、脂肪酸、トリグリセリド、他の同種の疎水性化合物、有機溶媒、可塑化化合物、および親水性化合物を包含する。好適な放出速度変更剤は、例えば、モノ-、ジ-、およびトリカルボン酸のエステル、たとえば、2-エトキシ酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、シュウ酸ジメチル、クエン酸ジメチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、グリセロールトリアセタート、セバシン酸ジ(n-ブチル)等;ポリヒドロキシアルコール、たとえば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等;脂肪酸;トリグリセリドなどのグリセロールのトリエステル、エポキシ化大豆油、および他のエポキシ化植物油;コレステロールなどのステロール;C6~C12アルカノール、2-エトキシエタノールなどのアルコールを包含する。放出速度変更剤は、単一で、または他のかかる剤との組み合わせで使用されてもよい。放出速度変更剤の好適な組み合わせは、これらに限定されないが、グリセリン/プロピレングリコール、ソルビトール/グリセリン、エチレンオキシド/プロピレンオキシド、ブチレングリコール/アジピン酸等を包含する。好ましい放出速度変更剤は、これらに限定されないが、クエン酸ジメチル、クエン酸トリエチル、ヘプタン酸エチル、グリセリン、およびヘキサンジオールを包含する。ポリマー組成物において使用されてもよい好適な細孔形成剤は、これらに限定されないが、スクロースおよびデキストロースなどの糖、塩化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムなどの塩、ヒドロキシルプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、およびポリビニルピロリドンなどのポリマーを包含する。塩または糖などの、一定の細孔サイズを提供するであろう固体結晶が、好ましい。
【0098】
持続放出組成物はまた、リポソームに封入されたポリペプチドをも包含する。本発明のポリペプチドを含有するリポソームは、当該技術分野において知られている方法(DE 3,218,121;Epstein, et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688-3692;Hwang、et al. (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030-4034;EP 52,322;EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949;EP 142,641;JP 83-118008;US 4,485,045;US 4,544,545;およびEP 102,324)によって調製される。通常なら、リポソームは、小さい(約200~800オングストローム)、単層型であるが、その脂質含量は、約30mol.パーセントコレステロールより大きく、その選択される割合は、有効なポリペプチド治療のために調整される。
【0099】
本発明の融合分子は、他の知られている抗ウイルス治療、免疫調節(modulatory)治療、および抗増殖治療、たとえば、IL-2、KDI、リバビリン、およびテモゾロミドとの組み合わせで、投与されてもよい。
【0100】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分の1以上で満たされた1以上の容器を包含する医薬パック(pharmaceutical pack)またはキットをも提供する。医薬品(pharmaceuticals)もしくはバイオ製品(biological products)の製造、使用、または販売を規制する(regulating)政府機関によって定められた形式の通知書が、かかる容器(単数または複数)に結び付けられ得、その通知書は、ヒト投与のための製造、使用、または販売の前記機関による承認を反映している。加えて、本発明の融合分子は、他の治療的化合物と併せて採用されてもよい。
【0101】
以下の非限定例はさらに、本発明を説明する。
【0102】
例1:
数個のIFN融合分子を生成し、様々なアッセイで試験した。これらの分子は、以下:i)hIFN-α-hIFN-λ1(図12;配列番号51);ii)hIFN-α-hIFN-λ3(図13;配列番号52);iii)hIFN-β-hIFN-λ3(図14;配列番号53);iv)mIFN-α-mIFN-λ2(図21;配列番号54);およびv)mIFN-β-mIFN-λ2(図22;配列番号55)を包含する。これらの融合分子をコードする哺乳動物の発現プラスミドを、標準のPCR技法およびDNAクローニング技法の使用により生成した。構築物のいくつか、具体的に言うと、融合mIFN-β-mIFN-λ2、ならびに単一のmIFN-βおよびmIFN-λ2をコードする構築物を、タンパク質の検出および精製のため、6×Hisタグなし・ありで生成した。発現プラスミドをHEK293細胞中へ一過的にトランスフェクトし、これらの発現レベルを、His抗体を用いた免疫ブロッティング(図23)および/または生物学的アッセイ(図16、24および25)のいずれかによって評価した。
【0103】
例2:
IFN融合分子を、i)MHCクラスI抗原発現の上方調節(図25);ii)抗ウイルス防御の誘導(図24);およびSTAT1活性化(図16)を包含する、IFNに特異的な生物活性のそれらの誘導能について試験した。ヒトIFN融合分子を、ヒトI型またはII型のキメラIFN受容体複合体を発現するヒト網膜色素上皮細胞またはCHOレポーター細胞株に対して試験した(図15)。これらの2つの別々のレポーター細胞株は、排他的かつ特異的に、ヒトI型IFNまたはヒトIII型IFNのいずれかに応答するが、親CHO細胞は、いずれの型のヒトIFNにも応答しない。したがって、これらの細胞株を、IFN融合分子がI型とIII型との両方のIFNの生物活性を保持することを実証するために使用した(図16)。これらの実験において、レポーター細胞を、組み換えヒトIFN-αもしくはヒトIFN-λ1で、またはヒトIFN-α-IFN-λ1融合分子を発現するプラスミドが一過的にトランスフェクトされたHEK293細胞からの馴化培地で;陰性対照としての機能を果たす、空のプラスミドがトランスフェクトされた(モックがトランスフェクトされた)HEK293細胞からの馴化培地で、処置した。レポーター細胞をIFNで15min処置し、収集して溶解させた;および、STAT1活性化を、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)によって査定した。このアッセイにおいて、STAT1 Tyr701リン酸化の際にしか形成しないSTAT1ダイマーは、放射性標識された特異的なDNAプローブへ結合する。DNA:タンパク質複合体の存在は、STAT1のリン酸化および活性化を示す(indicative of)。STAT1活性化はまた、特異的Tyr701 STAT1抗体を用いる免疫ブロッティングによっても検出され得る。このアッセイについては、レポーターもしくは非修飾のヒトまたはマウスの細胞株あるいは初代細胞を、IFN試料で15min処置し、溶解させて、免疫ブロッティングを実施する。マウスIII型IFNが、ヒトIII型IFN受容体を通してシグナル伝達し得ることから、CHOレポーター細胞を、マウスIFN融合分子によるIII型IFNシグナリングの誘導を実証するために使用した。マウス線維芽細胞はI型IFNにしか応答せず、これを、マウスIFN融合分子によるI型IFNシグナリングの誘導を実証するために使用した。ヒトI型およびIII型のIFNに応答するヒト網膜色素上皮ARPE-19細胞と、マウスI型およびIII型のIFNに応答するマウス肺上皮MLE細胞ならびにマウス腸上皮細胞(mIEC)もまた、これらのアッセイにおいて使用した。すべてのIFN融合分子を、EMSAおよび/または免疫ブロッティングのいずれかにおいて、適切な細胞株に対してSTAT1活性化を刺激するそれら分子の能力について試験し、I型とIII型との両方のIFNの活性を保持することを示した。融合IFN分子を均一になるまで(homogeneity)精製し、タンパク質濃度を決定して、STAT1活性化アッセイにおけるそれらの効力を、単一の組み換えIFN分子の効力と比較するつもりである。
【0104】
例3:
抗ウイルスアッセイについて、ARPE-19細胞またはmIECのいずれかを使用した。その種に適切な細胞(The species appropriate cells)を、IFN融合分子もしくは各IFNを単独で含有するかまたは組み換えIFNを含有するHEK293馴化培地の段階(1:3)希釈を用いて24とおりに(for 24)予め処置した。次いで細胞を水疱性口内炎ウイルス(VSV)に曝露させ(challenged with)、細胞生存率(cell viability)をクリスタルバイオレット染色によって測定した(図24)。IFN融合分子の精製の際、IFN融合分子の抗ウイルス力を単一の組み換えIFN分子の前記効力と比較するために、追加の抗ウイルスアッセイを実施するつもりである。
【0105】
例4:
IFN融合分子を、細胞表面MHCクラスI抗原発現のそれらの上方調節能についてもまた試験した。これらのアッセイについて、適切な細胞を、組み換えIFNで、またはIFN融合分子もしくは各IFNを単独で含有するHEK293馴化培地で、処置した。72時間後、細胞を収集して、MHCクラスI抗原発現のレベルをフローサイトメトリーによって決定した。IFN非処置細胞、またはモックがトランスフェクトされたHEK293細胞からの馴化培地で処置された細胞を、対照として使用した。IFN融合分子の精製の際、MHCクラスI抗原発現の上方調節についてIFN融合分子の効力を、単一の組み換えIFN分子の効力と比較するために、追加のアッセイを実施するつもりである。
【0106】
例5:
動物腫瘍成長実験について、単一のmIFN-βもしくはmIFN-λ2のいずれか、または融合mIFN-β-mIFN-λ2分子を構成的に発現するマウス乳がんE0771細胞を生成した。細胞に、対応する発現ベクターを安定にトランスフェクトし、同等レベルのIFN分子を発現するG418耐性細胞集団を選択した。改変細胞のin vitroでの成長動態において何の変化も観察されなかった。次に、8週齢の同一遺伝子の野生型C57BL/6(E0771)雌の未経産マウスの、右#4鼠径の乳房脂肪体の中央に、10個の親のまたは改変されたE0771乳がん細胞(50%マトリゲルに再懸濁された)を注射した。IFN組み合わせの有効性を、IFN融合分子の有効性に対して比較するために、1コホートのマウスに、mIFN-βまたはmIFN-λ2のいずれかを発現する腫瘍細胞の50:50混合物を注射した。原発腫瘍の体積を1日おきに評価、記録した。第29日にて(図20A)または第26日にて(図20Bおよび20C)、動物を、最終の腫瘍評価と組織学的分析および免疫学的分析とのためにサクリファイスした。
【0107】
例6:
別の乳房腫瘍マウスモデル(つまり、BALB/cマウスの乳房脂肪体中に移植したときに乳房腫瘍を形成する4T1乳がんであって、4T1がん細胞と同一遺伝子のマウス株)、およびB16黒色腫細胞をC57BL/6同一遺伝子マウス中にSQ移植した黒色腫のマウスモデルにおいて、追加の研究を行うつもりである。実験は、E0771乳がんモデルと同じ上に記載のプロトコルに従うものである。がん細胞を、単一のmIFN-βもしくはmIFN-λ2、または融合mIFN-β-mIFN-λ2分子を構成的に発現するよう操作するであろう。8週齢の同一遺伝子のマウスに、親のおよび改変された腫瘍を移植して、原発腫瘍の体積を1日おきに評価、記録するであろう。IFN組み合わせの有効性を、IFN融合分子の有効性に対して比較するために、1マウス群に、mIFN-βまたはmIFN-λ2のいずれかを発現する腫瘍細胞の50:50混合物を移植するであろう。マウス群のいずれかにおいて原発腫瘍が1cm体積に達したとき、すべての動物コホートを、最終の腫瘍評価と組織学的分析および免疫学的分析とのためにサクリファイスするであろう。もしあるなら、肺転移も定量化するであろう。原発腫瘍、ならびに肺、骨、脳、および他の主要器官の重さを量り、その半分を急速凍結させ(snap-froze)、もう半分を、増殖(Ki67)、アポトーシス(トンネル(Tunnel))、微小血管(CD31)、およびPASR染色を研究するためのさらなる生化学的分析および組織学的分析のために固定化した。腫瘍中のおよび腫瘍境界でのPMN、DC、MPh、NK細胞、およびT細胞の細胞頻度(the cellular frequency)を探るために、原発腫瘍を、Nanostring、FACS、およびIHCベースの方法の組み合わせによってもまた査定するつもりである。それによって原発腫瘍を除去したとき、それらの一部もまた、IFによってその境界を調べるために使用し、次いで、F4/F80+MPh、GR1+好中球、CD11+DC、ならびにT細胞、筋線維芽細胞および内皮細胞(PECAM+細胞)をプロファイルするために酵素的に消化させることで、腫瘍および腫瘍浸潤細胞を単離するつもりである。腫瘍部位での白血球(DC、MPh、NK細胞およびT細胞)浸潤およびDC成熟状態(maturation status)を、DCの場合CD86(Alexa 350標識)、MPhの場合F4/F80(Alexa 405標識)、ならびにT細胞の場合CD4+(PE-Cy7標識)およびCD8+(Alexa 649標識)などの特異的なマーカーを用いて免疫細胞を染色し、これに続きFACS分析することによって定量化するつもりである。その上、腫瘍関連サイトカインおよびケモカインをRT-PCRによって定量化し、タンパク質発現の測定を、特注のMSD-サイトカインアレイまたはELISAによって分析するであろう。血液を収集することで、種々の腫瘍関連サイトカイン、ケモカイン、および炎症反応に関連するアディポカイン、ならびに間質刺激(stromal stimulation)について試験するであろう。動物のサブセットが原発腫瘍を発生させなかった場合、腫瘍のないこれらのマウスに元の腫瘍を注射することで、これらのマウスにおいて抗腫瘍免疫が発生したか試験するであろう。抗腫瘍応答の発生もまた、担腫瘍マウスにおける脾細胞の殺腫瘍活性を試験するために評価するであろう。腫瘍形成後、またはそれがなかった(the lack of it)後、マウスのコホートをサクリファイスして脾細胞を単離し、in vitroで腫瘍細胞と共培養された脾臓細胞によるIFN-γ産生を測定することによって腫瘍に誘導されたCTLの活性化および増殖を評価するために使用するであろう。加えて、脾細胞の腫瘍細胞殺傷能を、細胞傷害性アッセイの実施によって評価するであろう。前記アッセイにおいて、脾細胞を51Cr標識された腫瘍細胞と共培養して51Cr放出を測定する。無関係な腫瘍細胞(E0771の場合のB16、逆の場合も同じ)を対照として使用するであろう。
【0108】
例7:
>95%純度で内毒素のない組み換えIFN融合分子を、がん治療法として試験するつもりである。上記に記載の乳がんおよび黒色腫の成長のマウスモデルを利用するつもりである。マウスに親のがん細胞を注射し、腫瘍を~0.5cmまで形成できるようにするであろう。腫瘍担持マウスに、様々な用量のIFN融合分子、単一のIFN、または単一のIFNの組み合わせをIV注射するであろう。腫瘍進行および転移形成に対するIFN治療の効果を上記に記載のとおりにモニタリングするであろう。上に記載の様々な組織学的および免疫学的アッセイもまた実施するつもりである。
【0109】
例8:
IFN融合分子の抗ウイルス力を、インフルエンザA感染のマウスモデルを使用して試験し、単一のIFNまたはそれらの50:50の組み合わせの効力と比較するつもりである。予防法として、マウスに、マウスの感染の8時間前または24時間前に、1 LD50のインフルエンザAウイルス株PR8、WSN、Udornまたは他の株を、様々な用量(0.1、0.3、1、3、10μg/1成体~20mg 8週齢マウス;PBSを対照モック処置として使用するであろう)でSQまたは鼻腔内(IN)注射するであろう。生存率および重量減少を毎日モニタリングするつもりである。加えて、別々の実験において、ウイルスの力価および肺の組織病理を、感染から3、6、および9日後に決定するであろう。組織病理の検査によって、病的状態を査定するであろう。ウイルス抗原についてのIHC染色によって、処置によりウイルス伝播のパターンに変更があったかについて決定するであろう。感染後の生存率を増強するのに最適なIFN処置を決定するであろう。この実験において、インフルエンザAウイルス(1 LD50株PR8、WSN、Udornまたは他の株)による感染後の処置の効果を、多重(multiple)投薬レジメンを用いて査定するであろう。上記に記載のとおり、マウスを、様々な用量(0.1、0.3、1、3、10μg/1成体~20mg 8週齢マウス;PBSを対照モック処置として使用するであろう)でSQまたは鼻腔内(IN)に注射したIFN融合分子、単一のIFN、またはこれらの組み合わせで処置するであろう。感染したマウスを、以下のスケジュール:第1、3、5日;第1~4日;第2、4、6日;第2~5日に従って処置するであろう。マウスを、上記に記載のとおりに分析することで、抗ウイルス防御ならびに疾患を判断するつもりである。
【0110】
例9:
Mx2-ルシフェラーゼレポーターマウス株を、ISGのin vivoでの誘導を評価するために使用するつもりである。Mx2-ルシフェラーゼトランスジェニックレポーターマウスは、IFNに誘導されるMx2プロモーターによって制御されるルシフェラーゼレポーター遺伝子を有する。この系は、測径器(Caliper)IVIS 200ライブ動物イメージング系の使用による全身のライブイメージングの使用による高精度な(sensitive)in vivoモニタリングを可能にする。成体8週齢のMx2-ルシフェラーゼレポーターマウスを、様々な用量(0.1、0.3、1、3、10μg/1成体~20mg 8週齢マウス;PBSを対照モック処置として使用するであろう)でSQまたはIN注射されたIFN融合分子、単一のIFNまたはこれらの組み合わせで処置するであろう。IFN刺激の継続時間および強度をライブイメージングすることによって決定するために、ルシフェラーゼ発現を、IFN処置から30min後に、8時間は1時間後毎に、ならびに16、24、および48時間後にモニタリングするつもりである。
【0111】
例10:
IFNで処置されたマウスから得られた様々な組織のIHCを、pSTAT1のレベルおよび局在化を測定すために実施するつもりである。STAT1は、I型およびIII型のIFNによって特異的に活性化されて(Tyrリン酸化、pSTAT1)(図1)、活性化後に細胞核へ局在化する転写因子である。これらの実験について、野生型マウスを、様々な用量(0.1、0.3、1、3、10μg/1成体~20mg 8週齢マウス;PBSを対照モック処置として使用するであろう)でSQまたはIN注射されたIFN融合分子、単一のIFNまたはこれらの組み合わせで処置するであろう。動物のコホートを、IFN処置から5min、10min、15min、30min後に、8時間は1時間後毎に、ならびに16、24、および48時間後にサクリファイスするであろう。肺、大腸および小腸、腎臓、脾臓、ならびに肝臓を包含する様々な組織を切開し、ホルマリン固定化、およびパラフィン包埋するであろう。脱パラフィン化された(deparaffinized)5ミクロン切片に対して実施された、抗原回復および内在性ペルオキシダーゼ活性の遮断後、切片を次いでpSTAT1抗体(Tyr701)で染色するであろう。免疫染色後、組織切片をマイヤーヘマトキシリンおよびスコット青み緩衝剤(Scott’s bluing buffer)で対比染色するであろう。単一のIFN、これらの組み合わせ、またはIFN融合分子を用いる個別のIFN処置レジメンに応答して引き起こされる(triggered)IFNシグナリングの組織分布、細胞標的、強度および継続時間を査定するために、pSTAT1の核局在化を様々な組織および細胞型において調べるであろう。
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