(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】キヌアの目的遺伝子が導入された多芽体誘導法及び該誘導法で得られた多芽体
(51)【国際特許分類】
A01H 1/00 20060101AFI20241223BHJP
A01H 6/02 20180101ALI20241223BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20241223BHJP
【FI】
A01H1/00 A
A01H6/02
A01H5/00 A
(21)【出願番号】P 2020202330
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2019221745
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392019857
【氏名又は名称】株式会社アクトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】安井 康夫
(72)【発明者】
【氏名】梁 修静
(72)【発明者】
【氏名】水越 裕治
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124297(WO,A1)
【文献】特表2016-502856(JP,A)
【文献】特開2006-061059(JP,A)
【文献】特開2007-300915(JP,A)
【文献】特開2019-106980(JP,A)
【文献】特表2016-502853(JP,A)
【文献】特表平07-509138(JP,A)
【文献】国際公開第2006/112034(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/189756(WO,A1)
【文献】Plant Cell Rep.,1990年,vol.9, no.6,p.303-306
【文献】BioTechnologia,2018年,vol.99, no.1,p.49-57
【文献】Plant Inventory Books,2000年,no.209,p.339
【文献】DNA Res.,2016年,vol.23, no.6,p.535-546
【文献】PLoS One,2014年,vol.9, no.2,article.e88611, p.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的遺伝子が導入されたキヌアの定芽、不定芽及び/又は多芽体の製造方法であって、
(1)キヌア幼植物体の子葉節及び胚軸を含む外植体を、目的遺伝子を含むアグロバクテリウム感染液中に浸漬させる工程、及び
(2)該外植体を培養して定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る工程
を含む方法であって、
カルス化工程及び/又は再分化工程を含まない、
方法。
【請求項2】
前記工程(1)は超音波処理及び/又は減圧処理を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(1)は超音波処理に続いて減圧処理を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(2)の培養は選抜工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記キヌアはU.S. National Plant Germplasm Systemアクセッション番号PI 614882又はPI 614883である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
目的遺伝子が導入されたキヌアの成体の製造方法であって、
(1)キヌア幼植物体の子葉節及び胚軸を含む外植体を、目的遺伝子を含むアグロバクテリウム感染液中に浸漬させる工程、
(2)該外植体を培養して定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る工程、及び
(3)該定芽、不定芽及び/又は多芽体を培養又は生育して成体を得る工程
又は、
(1)
請求項1~5のいずれか1に記載の製造方法から得られた定芽、不定芽及び/又は多芽体を培養又は生育して成体を得る工程、
を含む方法であって、
カルス化工程及び/又は再分化工程を含まない、
方法。
【請求項7】
目的遺伝子が導入されたキヌアの種子の製造方法であって、
(1)キヌア幼植物体の子葉節及び胚軸を含む外植体を、目的遺伝子を含むアグロバクテリウム感染液中に浸漬させる工程、
(2)該外植体を培養して定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る工程、
(3)該定芽、不定芽及び/又は多芽体を培養又は生育して成体を得る工程、及び、
(4)該成体を種子が収穫できるまで生育して種子を得る工程、
又は、
(1)
請求項1~5のいずれか1に記載の製造方法から得られた定芽、不定芽及び/又は多芽体を培養又は生育して成体を得る工程、及び、
(2)該
成体を種子が収穫できるまで生育して種子を得る工程
又は、
(1)
請求項6に記載の製造方法から得られた成体を種子が収穫できるまで生育して種子を得る工程、
を含む方法であって、
カルス化工程及び/又は再分化工程を含まない、
方法。
【請求項8】
以下の工程を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
(1)多芽体誘導培地で培養した外植体を感染液に入れ、超音波処理、減圧処理を行った後に、共存培地で培養する工程、
(2)工程(1)の培養後に、除菌培地で培養する工程、
(3)工程(2)の培養後に、多芽体誘導培地で培養する工程、
(4)工程(3)の培養後に、選抜用培地で培養する工程、及び
(5)工程(4)の培養後に、選抜後のシュート伸長用培地で培養して定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る工程、又は、選抜後のシュート伸長用培地で培養し、さらに基本培地又はMS培地で生育させて、定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る工程
【請求項9】
目的遺伝子が導入されたキヌアの定芽、不定芽及び/又は多芽体の製造方法であって、
(1)キヌア幼植物体の子葉節及び胚軸を含む外植体を、目的遺伝子を含むアグロバクテリウム感染液中に浸漬させる工程、
(2)工程(1)の後に、多芽体誘導培地で培養する工程、
(3)工程(2)の培養後に、選抜後のシュート伸長用培地で培養する工程、及び
(4)工程(3)の培養後に、基本培地若しくはMS培地で培養又は生育させて、
目的遺伝子が導入された定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る工程を含む方法であって、
カルス化工程及び/又は再分化工程を含まない、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キヌアの目的遺伝子が導入された多芽体誘導法及び該誘導法で得られた多芽体に関する。
【背景技術】
【0002】
キヌアはアカザ科の穀類(正確には偽穀類)であり、並外れた環境ストレス耐性を有し、また優れた栄養特性から近年世界的に注目されている。例えばキヌアは海水の半分程度の塩水でも育成可能であり、またその栄養価の高さから米国科学アカデミーが、将来有望な低利用資源作物にキヌアを選び(非特許文献1)、またNASAが宇宙飛行士の食料として注目している(非特許文献2)。
【0003】
ゲノム編集は数年以内に有効な育種手段となる技術であり、現在その利用に関するレギュレーションの作成が急ピッチに進められている。ゲノム編集によって作出される作物は日本においても栽培・販売が認可される予定であり、ゲノム上の狙ったDNA配列を変換できることから、これまでに困難であった突然変異遺伝子の集積がたやすく可能となる。ゲノム編集においては、アグロバクテリウムなどを用いた形質転換技術が使われる。このため、形質転換の際には植物のカルス化と再分化が必要である場合が多い。キヌアにおいて現在までにカルス化と再分化の系が報告されているが、既報のカルス化と再分化系は再現性に乏しい。また、カルス化と再分化の2度のステップを踏むために、時間とコストがかかる。
【0004】
これまでにキヌアの形質転換に関する報告はされていない。また、カルス化と再分化の2つのステップを利用するために時間と金銭的なコストが高くなる。
【0005】
非特許文献3は、キヌアのカルス化と再分化系に関する報告をしている。
【0006】
非特許文献4は、キヌアの多芽体誘導に関する報告をしているものの、本報告では形質転換については述べられておらず、また多芽体誘導までに播種後4週間もの時間を費やしている。
しかし、いずれの文献も、本発明の方法の構成を開示又は示唆をしていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】National Academy of Sciences (1975) Quinoa.In:Underexploited tropical plants with economic value. Washington DC, pp 20-23
【文献】Schlick G, Bubenheim, DL (1993) Quinoa: anemerging“new” crop withpotential for celss. NASA Technical Paper 3422:1-7
【文献】M. Hesami and M.H. Daneshvar (2016)Development of a regenerationprotocol through indirect organogenesis inChenopodium quinoa willd. Indo-Am.J. Agric. Vet. Sci. 4:25-32.
【文献】M. Hesami et al. (2018) Optimizingsterilization conditions andgrowth regulator effects on in vitro shootregeneration through directorganogenesis in Chenopodium quinoa. Biotechnologia99:49-57.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
植物の形質転換の際には植物のカルス化と再分化が必要である場合が多いが、キヌアではカルス形成からのシュートの再分化は困難であり、再現性が乏しい。そこで、本発明はカルス化を必須としない新規なキヌアの形質転換法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、カルス化を経由せずに、子葉節を含む子葉部の先端から胚軸までの部分から多芽体を製造することを着想し、カルス化・再分化系を必須しないキヌアの形質転換方法を構築して、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
1.キヌアの目的遺伝子が導入された定芽、不定芽及び/又は多芽体の製造方法であって、
(1)キヌア幼植物体の子葉節及び胚軸を含む外植体を、目的遺伝子を含むアグロバクテリウム感染液中に浸漬させる工程、及び
(2)該外植体を培養して定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る工程
を含む方法。
2.前記工程(1)は超音波処理及び/又は減圧処理を含む、前項1に記載の方法。
3.前記工程(1)は超音波処理に続いて減圧処理を含む、前項1又は2に記載の方法。
4.前記工程(2)の培養は選抜工程を含む、前項1~3のいずれか1項に記載の方法。
5.前記キヌアはU.S. National Plant Germplasm Systemアクセッション番号PI 614882又はPI 614883である、前項1~4のいずれか1項に記載の方法。
6.カルス化工程及び/又は再分化工程を含まない、前項1~5のいずれか1項に記載の方法。
7.前項1~6のいずれか1項に記載の方法により製造された目的遺伝子が導入された定芽、不定芽及び/又は多芽体。
8.キヌアの目的遺伝子が導入された成体の製造方法であって、
(1)キヌア幼植物体の子葉節及び胚軸を含む外植体を、目的遺伝子を含むアグロバクテリウム感染液中に浸漬させる工程、
(2)該外植体を培養して定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る工程、及び
(3)該定芽、不定芽及び/又は多芽体を培養又は生育して成体を得る工程
又は、
(1)前項1~6のいずれか1に記載の製造方法から得られた定芽、不定芽及び/又は多芽体を培養又は生育して成体を得る工程、
又は、
(1)前項7に記載の定芽、不定芽及び/又は多芽体を培養又は生育して成体を得る工程、
を含む方法。
9.前項8に記載の方法により製造された目的遺伝子が導入された成体。
10.キヌアの目的遺伝子が導入された種子の製造方法であって、
(1)キヌア幼植物体の子葉節及び胚軸を含む外植体を、目的遺伝子を含むアグロバクテリウム感染液中に浸漬させる工程、
(2)該外植体を培養して定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る工程、
(3)該定芽、不定芽及び/又は多芽体を培養又は生育して成体を得る工程、及び、
(4)該成体を種子が収穫できるまで生育して種子を得る工程、
又は、
(1)前項1~6のいずれか1に記載の製造方法から得られた定芽、不定芽及び/又は多芽体を培養又は生育して成体を得る工程、及び、
(2)該定芽、不定芽及び/又は多芽体を種子が収穫できるまで生育して種子を得る工程
又は、
(1)前項7に記載の定芽、不定芽及び/又は多芽体を培養又は生育して成体を得る工程、及び、
(2)該成体を種子が収穫できるまで生育して種子を得る工程
又は、
(1)前項8に記載の製造方法から得られた成体又は前項9に記載の成体を種子が収穫できるまで生育して種子を得る工程、
を含む方法。
11.以下の工程を含む前項1~5のいずれか1項に記載の方法。
(1)多芽体誘導培地で培養した外植体を感染液に入れ、超音波処理、減圧処理を行った後に、共存培地で培養する工程、
(2)工程(1)の培養後に、除菌培地で培養する工程、
(3)工程(2)の培養後に、多芽体誘導培地で培養する工程、
(4)工程(3)の培養後に、選抜用培地で培養する工程、及び
(5)工程(4)の培養後に、選抜後のシュート伸長用培地で培養して定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る工程、又は、選抜後のシュート伸長用培地で培養し、さらに基本培地又はMS培地で生育させて、定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る工程
12.キヌアの定芽、不定芽及び/又は多芽体の製造方法であって、
(1)キヌア幼植物体の子葉節及び胚軸を含む外植体を多芽体誘導培地で培養する工程、
(2)工程(1)の培養後に、選抜後のシュート伸長用培地で培養する工程、及び
(3)工程(2)の培養後に、基本培地若しくはMS培地で培養又は生育させて、定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る工程を含む方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のキヌアの多芽体誘導法及び形質転換法は、以下のいずれか1以上の効果を有する。
(1)カルス化を経由せずにキヌアの形質転換体を作製できる。
(2)従来よりも短期間で多芽体を誘導できる。
(3)多芽体誘導と形質転換を同時にできる。
(4)従来のカルス化・再分化系を利用した形質転換法よりも短期間でキヌアに目的遺伝子を導入できる。
(5)従来のカルス化・再分化で問題となる培養変異(体細胞変異)を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】BAを含まない選抜用培地に植え継ぎしたシュート(約1cm程度)を14日培養した。
【
図2】アグロバクテリウム(C58株)感染から2日目の胚軸のGUS染色。円で示した範囲がGUSで染色されている。
【
図3】アグロバクテリウム(C58株)感染から20日目の多芽体のGUS染色。円で示した範囲がGUSで染色されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、キヌアの目的遺伝子が導入された多芽体誘導法及び該誘導法で得られた多芽体に関する。以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
(キヌア)
キヌア(Chenopodium quinoa)は、ヒユ科アカザ亜科アカザ属の植物である。本発明で使用するキヌアは、特に限定されないが、好ましくはU.S. National Plant GermplasmSystemのアクセッション番号PI 614882(下記実施例の#79系統)及びPI 614883(下記実施例の#80系統)である。
【0015】
(アグロバクテリウム)
アグロバクテリウムは、発現ベクターを植物細胞内に組み込む能力を有する。アグロバクテリウムは、発現ベクターを好ましくは核内に、より好ましくは染色体に、組み込む能力を有する。
本発明の形質転換に用いられるアグロバクテリウムは、特に限定されないが、アグロバクテリウム属細菌のアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)あるいはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)である。アグロバクテリウム・ツメファシエンスは、特に限定されず、例えばLBA4404株及びC58株である。アグロバクテリウム・リゾゲネスは、特に限定されず、例えばA13株である。
【0016】
(バイナリーベクター)
アグロバクテリウムを用いる形質転換方法としては、バイナリーベクター法が好ましい。バイナリーベクター法とは、T-DNA領域のボーダー(LB及びRB)を有するプラスミドのT-DNA領域に目的の外来遺伝子を組み込んだプラスミドをアグロバクテリウムに導入して植物に感染させることにより、目的遺伝子を植物ゲノムに挿入する方法である。
バイナリーベクター法を利用した発現カセットは、T-DNA領域に、形質転換の目的とする外来遺伝子(耐乾燥性、耐寒性遺伝子など)、及び当該遺伝子発現のためのプロモーター、ターミネーター、マーカー遺伝子、レポーター遺伝子を含んでもよい。
バイナリーベクターは、所望の組換え用ベクター、例えば植物形質転換用ベクターに所望の組換え遺伝子を常法により連結することによって、調製することができる。
本発明で使用されるベクターは、アグロバクテリウムを介して植物に目的の核酸を導入できるものであれば特に限定されず、例えば、pBI系のベクター等を使用できる。pBI系のベクターとしては、例えば、pBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3、pBI221などが挙げられ、好ましくはpBI101、pIG121Hmである。pBI101としては、例えば、CaMV35Sプロモーター(CaMV35S)、ハイグロマイシン耐性遺伝子(HPT)及びノパリン合成酵素ターミネーター(NosT)カセットが組み込まれたpIG121Hmを使用できるが、特に限定されない。pIG121Hmは、NPTII遺伝子を有し、基本的に植物の遺伝子組換え(形質転換)用のベクターで、大腸菌RK2株及びAgrobacteriumtumefaciens C58株由来である。
バイナリーベクターは、所望の形質転換法、例えばエレクトロポレーション(電気穿孔法)によってアグロバクテリウムに形質転換される。
【0017】
(バイナリーベクターの発現カセット)
バイナリーベクター法を利用した発現カセットは、T-DNA領域に、形質転換の目的とする外来遺伝子、及び当該遺伝子発現のためのプロモーター、ターミネーター、選択マーカー遺伝子、レポーター遺伝子を含むことができる。
形質転換の目的とする外来遺伝子又は発現を向上させる内因性遺伝子(目的遺伝子と称する場合がある)は、植物細胞内で発現可能な遺伝子であれば特に限定されず、新たな形質を発現する遺伝子や、内因性の遺伝子の発現を制御する遺伝子等であってもよく、例えば耐塩性遺伝子、耐乾燥性遺伝子、耐寒性遺伝子、高温耐性遺伝子、耐虫性遺伝子等の環境ストレス耐性遺伝子、脂質合成遺伝子等が挙げられる。目的遺伝子は、ゲノム編集や目的遺伝子の過剰発現及び/又は発現抑制等を行うことにより単離・利用できる。導入された目的遺伝子は、植物中のゲノム、さらには該植物から得られた種子に組み込まれて存在する。
プロモーターは、植物体内で目的遺伝子を発現誘導可能なプロモーターであれば特に限定されず、自体公知のプロモーターを適用することができるが、例えば35Sカリフラワーモザイクウィルス(CaMV35S)プロモーター、アグロバクテリウム由来のノパリンシンターゼ(NOS)プロモーター、薬剤誘導プロモーター(例えばアルコール脱水素酵素(alcA)プロモーター、UASプロモーター等)、植物遺伝子のプロモーター(例えばユビキチンプロモーター等)等が挙げられ、好ましくはCaMV35Sプロモーターである。
ターミネーターとしては、プロモーターにより転写された遺伝子の転写を終結できる配列であればよく、例えばノパリン合成酵素(NOS)遺伝子のターミネーター(NosT)、オクトビン合成酵素(OCS)、CaMV35SRNA遺伝子のターミネーターが挙げられ、好ましくはNosTである。
選択マーカー遺伝子(選抜用薬剤耐性遺伝子)は、形質転換体と非形質転換体とを選別できれば特に限定されず、自体公知の選択マーカー遺伝子を適用することができるが、例えばNPTII遺伝子、ジェネティシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、パロモマイシンB耐性遺伝子、又はグルフォシネート及びグリフォセートのような除草剤に対する抵抗性遺伝子等が挙げられ、好ましくはジェネティシン耐性性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子である。
形質転換体を視覚的に同定できるレポーター遺伝子は、特に限定されず、自体公知のレポーター遺伝子を適用することができるが、例えばルシフェラーゼ、又は緑色蛍光タンパク質(GFP)のような発色又は蛍光タンパク質を発現する遺伝子又は種々の発色体基質が知られているβグルクロニダーゼ又はGUSを発現する遺伝子も利用することができる。
【0018】
(外植体)
本発明は、多芽体誘導培養のための材料として、幼植物体の子葉節(cotyledonary node)及び胚軸を含む外植体を使用する。子葉節及び胚軸を含む外植体は、子葉節及び胚軸を含めば特に限定されないが、子葉節を含む子葉部の先端から胚軸までの部分、又は、子葉節を含み子葉を含まない子葉部から胚軸までの部分が好ましい。
従来の多芽体誘導では4週齢の実生が使用されていたが、幼植物体として播種後1~14日齢、例えば1日齢、2日齢、3日齢、4日齢、5日齢、6日齢、7日齢、8日齢、9日齢、10日齢、11日齢、12日齢、13日齢、14日齢又はこれらから選択する任意の範囲、例えば3~8日齢、好ましくは4~6日齢、より好ましくは5日齢を用いることにより、多芽体誘導の期間を短縮できる。
例えば、4日齢~6日齢の幼植物体の子葉節を含む子葉部の先端から胚軸まで0.1~20 mm又は0.5~15 mm、好ましくは1~10 mm、より好ましくは2~5mmまでを外植体として使用する。
【0019】
(定芽、不定芽及び多芽体)
「頂芽」とは子葉節及びその周辺にみられる頂端分裂組織に由来する最初に出芽する芽をいい、「側芽」とは同頂端分裂組織に由来し、葉腋に形成される芽をいう。また、頂芽及び側芽を合わせて定芽という。「不定芽」とは、通常は芽が形成されない頂端分裂組織以外の部位、葉、根、カルス等に形成された芽をいう。「多芽体」(multiple bud body:MBB)とは複数の定芽及び不定芽が集団的に発生したものをいう。本発明において、定芽及び/又は不定芽の数の合計が2個以上の外植体を多芽体と定義した。
【0020】
(シュート)
シュートとは、茎頂、本葉及び茎を有する植物体(地上部)としての単位のことをいう。本発明は、1 cm以上伸長した定芽・不定芽をシュートとして数えた。
【0021】
(無菌外植体の作製)
本発明の無菌外植体の作製方法を以下に説明する。
無菌播種したキヌアを1~10日間、好ましくは3~7日間、より好ましくは5日間生育して幼植物体を得る。例えば、キヌア種子を次亜塩素酸水溶液で滅菌し、クリーンベンチ内で滅菌した基本培地(MS培地)上に播種し、生育する。
幼植物体の子葉節を含む子葉部の先端から胚軸まで0.1~20 mm、例えば0.5~15 mm、好ましくは1~10 mm、より好ましくは2~5 mmまでを切り出し、外植体を得る。
外植体を、多芽体誘導剤を含む培地(多芽体誘導培地)で1時間~7日間、好ましくは12時間~5日間、より好ましくは1~2日間培養する。
外植体を培養するための基本培地は、植物組織培養に使用できる培地であれば特に限定されないが、好ましくはMS(Murashige and Skoog) 培地又はその改変培地等である。本発明において外植体の培養に使用する種々の培地は、基本培地にゲル化剤等の必要成分を加え、その前に、pHをpH4.0~pH8.0、好ましくはpH5.0~pH7.0、より好ましくはpH5.5~pH6.1、さらに好ましくはpH5.8に調整することにより調製する。
ゲル化剤としては、例えばゲランガム等が挙げられる。ゲランガムの培地中の濃度は、0.1~20 g/L、好ましくは0.5~10g/L、より好ましくは3.0 g/Lである。
多芽体誘導剤としては、例えば6-ベンジルアデニン(BA)、Forchlorfenuron(CPPU)、thidiazuron(TDZ)等が挙げられる。多芽体誘導剤の培地中の濃度は、多芽体を誘導できれば特に限定されないが、BAの場合、0.1~10 mg/L、好ましくは1~5 mg/L、より好ましくは2mg/Lである。
アグロバクテリウム感染前1時間~2日間、好ましくは2時間~1日間、10℃~1℃、好ましくは4℃に保管する。
【0022】
(感染液の調製)
目的遺伝子を含むバイナリーベクターが導入された対数増殖期のアグロバクテリウム菌体を、アグロバクテリウムの感染率を向上させる試薬を含む溶液(感染液調製用溶液)でOD600を0.01~0.5、好ましくは0.05~0.2、より好ましくは0.1に調整して感染液を調製する。
アグロバクテリウムの感染率を向上させる試薬としては、例えばsilwet等が挙げられる。silwetの感染液中の濃度は、0.001~1%、好ましくは0.01~0.1%、より好ましくは0.01%である。
感染液にはアセトシリンゴンを加えてもよく、好ましくはアセトシリンゴンを終濃度10~1000 μMで加え、より好ましくはアセトシリンゴンを終濃度50~150 μMで加え、さらに好ましくはアセトシリンゴンを終濃度80~120 μMで加える。
【0023】
(アグロバクテリウム感染)
外植体を感染液中に浸漬又は接触させる。感染液中で浸漬又は接触させる工程は、好ましくは超音波処理及びそれに続く減圧処理を含む。
超音波処理は、感染液中の外植体を1~50AMP、好ましくは10~40AMP、より好ましくは20~30AMPの超音波で1~30秒、好ましくは5~20秒、より好ましくは10~15秒処理する。
減圧処理は、感染液中の外植体を-1200~-400psi、好ましくは-1000~-600psi、より好ましくは-800psiで30秒間~30分間、好ましくは2分間~10分間、より好ましくは5分間減圧する。
外植体を、窒素源を含む培地(共存培地)で12時間~7日間、好ましくは1~3日間、より好ましくは2日間(15~35℃、好ましくは20~30℃、より好ましくは25℃、暗黒)培養する。
窒素源としては、例えばカザミノ酸(Casamino Acids)等が挙げられる。カザミノ酸の培地中の濃度は、0.1~100 g/L、好ましくは1~50 g/L、より好ましくは10 g/Lである。
外植体を感染液調製用溶液で1~5回、好ましくは3回洗浄する。
【0024】
(多芽体誘導及び形質転換体の選抜)
外植体を除菌培地に移植し、3~14日間、好ましくは5~10日間、より好ましくは7日間培養する。外植体は、アグロバクテリウムを除菌するための薬剤を含む培地(除菌培地)での培養中に多芽体となりうる(定芽及び/又は不定芽の数の合計が2個以上確認できる)。
アグロバクテリウムを除菌するための薬剤としては、例えばセフォタキシム・ナトリウム塩、カルベニシリン等が挙げられる。セフォタキシム・ナトリウム塩の培地中の濃度は、1~2000 mg/L、好ましくは50~500 mg/L、より好ましくは250 mg/Lである。
外植体(多芽体であってもよい)を、多芽体誘導剤、選抜用薬剤及びアグロバクテリウムを除菌するための薬剤を含む培地(選抜用薬剤及びアグロバクテリウムを除菌するための薬剤を更に添加した多芽体誘導培地)に移し、12~16時間日長、好ましくは14時間日長(明期20~28℃、好ましくは24℃、暗期14~22℃、好ましくは18℃)で2週間培養する。多芽体となっていなかった外植体は、選抜用薬剤及びアグロバクテリウムを除菌するための薬剤を更に添加した多芽体誘導培地での培養中に多芽体となりうる。
シュート長が0.1~3cm、好ましくは0.5~1.5cm、より好ましくは1cm程度伸びた多芽体のシュートは切り取り、選抜用薬剤、アグロバクテリウムを除菌するための薬剤及びゲル化剤を含み、多芽体誘導剤を含まない培地(多芽体誘導剤を含まない選抜用培地)に植え継ぎする。また、多芽体がまだ肉眼で確認できない外植体は、多芽体誘導剤、選抜用薬剤、アグロバクテリウムを除菌するための薬剤を含む培地(多芽体誘導剤を含む選抜用培地)に植え継ぎする。多芽体となっていなかった外植体は、多芽体誘導剤を含む選抜用培地での培養中に多芽体となりうる。
1~3週間ごと、好ましくは約2週間ごとに1~20回、好ましくは1~10回、より好ましくは1~6回、さらに好ましくは1~3回植え継ぎ及び培養する。
その後、多芽体誘導剤を含まない選抜用培地に植え継ぎ及び培養したシュートは、アグロバクテリウムを除菌するための薬剤を含む培地(選抜後(好ましくは選抜直後)のシュート伸長用培地)に植え継ぎ、培養し、2週間~2ヶ月、好ましくは3週間~5週間、より好ましくは約1ヶ月成長させる。
多芽体がまだ肉眼で確認できなかった外植体及び多芽体が肉眼で確認できる限界のサイズであった外植体は、引き続き1~3週間ごと、好ましくは約2週間ごとに多芽体誘導剤を含む選抜用培地に植え継ぎ、培養し、2週間~2ヶ月、好ましくは3週間~5週間、より好ましくは約1ヶ月成長させる。
選抜後(好ましくは選抜直後)のシュート伸長用培地で成長させたシュート及び多芽体誘導剤を含む選抜用培地で成長させたシュートのうち、白色化又は褐色化することなく伸長したシュートを多芽体誘導剤を含まない選抜用培地に植え継ぎ、3日~2ヶ月、好ましくは1~4週間、より好ましくは2~3週間培養し、生きて伸びるシュートを形質転換体として選抜し、薬剤フリーの基本培地に移す。
【0025】
(形質転換種子の産生)
選抜したシュートを任意の条件で生育する。「任意の条件で生育」は、植物体を目的遺伝子が発現するまで生育させることができれば特に限定されないが、好ましくは蕾がつくまで生育し、より好ましくは種子が収穫できるまで生育する(成体まで生育する)。本明細書の「成体」とは、種子を形成できるキヌアを意味する。
生育の温度条件は、植物が生存可能な温度であれば特に限定されないが、明条件/暗条件が20℃~28℃/14℃~22℃が好ましく、22℃~26℃/16℃~20℃がより好ましく、24℃/18℃がさらに好ましい。
生育の明暗条件は、植物が生存可能であれば特に限定されない。例えば、10~18時間明条件(Light条件)/14~6時間暗条件(Dark条件)、12~16時間明条件(Light条件)/12~8時間暗条件(Dark条件)であってもよく、14時間明条件/10時間暗条件が好ましい。
例えば、選抜用薬剤を含まない基本培地(薬剤フリーの基本培地)で1~3週間ごと、好ましくは約2週間ごとに植え継ぎして種子を収穫できるまで生育し、目的遺伝子が導入された種子を得る。
【0026】
(目的遺伝子が導入された定芽、不定芽及び/又は多芽体の製造方法)
本発明のキヌアの目的遺伝子が導入された定芽、不定芽及び/又は多芽体の製造方法の好ましい方法は、以下に例示することができるが、特に限定されない。
(1)多芽体誘導培地で培養した外植体を感染液に入れ、好ましくは超音波処理、減圧処理を行った後に、共存培地で培養する。
(2)(1)の培養後に、除菌培地で培養する。
(3)(2)の培養後に、多芽体誘導培地で培養する(選抜用薬剤を含んでも良い)。
(4)(3)の培養後に、シュートもしくは頂芽を外植体と共に切り取り、選抜用培地で培養する。
(5)(4)の培養産物を選抜後のシュート伸長用培地で培養し、さらにMS培地で生育させて、定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る。
【0027】
より詳しくは、以下の通りである。
(1)多芽体誘導培地に数日間培養した外植体を感染液に入れ、SV処理し、共存培地で数日間培養する。
(2)(1)の共存培地で培養が終了した外植体を除菌培地で3~10日間培養する。
(3)(2)の培養後に、選抜用薬剤を含む多芽体誘導培地で1~3週間培養する。
(4)(3)の培養後に、シュートもしくは頂芽は外植体と共に切り取り、選抜用培地で培養する。
(5)(4)の培養産物を選抜後のシュート伸長用培地で1~3週間培養し、さらに基本培地又はMS培地で生育させて、定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る。
【0028】
さらに詳しくは、以下の通りである。
(1)多芽体誘導培地に1~2日間培養した外植体を感染液に入れ、SV処理し、共存培地で2日間(25℃、暗黒)培養する。
(2)存培養が終了した外植体を洗浄し、除菌培地で7日間培養する。
(3)50 mg/LのG418及び250 mg/Lのセフォタキシム・ナトリウム塩を含む多芽体誘導培地(BA 2 mg/L)で2週間培養する。
(4)1 cm程度伸びたシュートもしくは頂芽は外植体と共に切り取り、BAを含まない選抜用培地に(50 mg/LのG418及び250 mg/Lのセフォタキシム・ナトリウム塩を含む基本培地)、多芽体がまだ肉眼で確認できない外植体はBAを含む選抜用培地に植え継ぎし、シュートが出るまで同じ培地に約2週間ごとに植え継ぎする(通常1~2回でシュートが誘導され(5)に移る)。
(5)最終的に1cm以上伸びたシュートもしくは頂芽は、外植体と共に切り取る。もしくは、外植体を含まずにシュートだけを切り取る。切り取られた培養産物を選抜後(好ましくは選抜直後)のシュート伸長用培地(セフォタキシム・ナトリウム塩を含むMS培地)で2週間培養、その後の植え継ぎではセフォタキシム・ナトリウム塩を含まないMS培地で成長させる。
【0029】
(各種の培地)
本発明の製造方法では、自体公知の培地を利用することができるが、以下に例示する。
〇多芽体誘導培地
多芽体誘導剤を含む培地であり、キヌアにおいて定芽、不定芽、多芽体を誘導することができれば特に限定されない。
〇共存培地
窒素源を含む自体公知の培地である。
〇除菌培地
アグロバクテリウムを除菌するための公知の薬剤を含む培地。
〇選抜用培地
キヌアのシュートを誘導、培養又は生育させることができる自体公知の培地。
〇選抜後(好ましくは選抜直後)のシュート伸長用培地
キヌアの多芽体由来のシュートを選抜することができるMS(基本培地)であり、アグロバクテリウムの除去を目的としたセフォタキシム・ナトリウム塩を含む。
〇MS培地(基本培地)
キヌアの多芽体及びキヌアの多芽体由来のシュートを生育することができる自体公知の培地。
【0030】
(定芽、不定芽及び/又は多芽体の製造方法)
本発明では、キヌアの目的遺伝子が導入されていない定芽、不定芽及び/又は多芽体の製造方法も対象とする。以下に例示することができるが、特に限定されない。
(1)キヌア幼植物体の子葉節及び胚軸を含む外植体を多芽体誘導培地で培養する。
(2)(1)の培養後に、選抜後のシュート伸長用培地で培養する。
(3)(2)の培養後に、基本培地若しくはMS培地で培養又は生育させて、定芽、不定芽及び/又は多芽体を得る。
【実施例】
【0031】
以下に具体例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。
【実施例1】
【0032】
[材料と方法]
(材料)
〇植物
キヌア(Chenopodium quinoa)
〇菌株
Agrobacterium tumefaciens LBA4404
Agrobacterium rhizogenes A13
Agrobacterium tumefaciens C58
〇バイナリーベクター
コードする配列内にイントロンを含むβ-グルクロニダーゼ(GUS)レポーター遺伝子を有するバイナリーベクターpIG121-Hmを用いた(参照:OHTA, Shozo, et al.Construction and expression intobacco of a β-glucuronidase(GUS) reporter genecontaining an intron within the coding sequence. Plant andcell physiology,1990, 31.6: 805-813.)。
【0033】
(MS (Murashige and Skoog) 培地:基本培地)
MS Plant Salt mixture(ムラシゲ・スクーグ培地用混合塩類、日本製薬) 1L用
Vitamin for MS(MurashigeandSkoog Vitamin Solution 1000 ×, liquid,plant cellculture tested、SigmaAldrich) 1mL
しょ糖 30.0 g
オートクレーブ(121℃, 15 min)してから滅菌シャーレに適当量を分注した。
【0034】
(AB培地)(アグロバクテリウム培養用培地)
しょ糖 5 g/L
細菌培地用寒天 (Agar) 15 g/L
*121℃、15分間オートクレーブ滅菌後に以下を無菌的に添加した。
20×AB salt 50 ml/L
20×AB Buffer 50 ml/L
+50 mg/L カナマイシン塩酸塩(Km)
*Kmは5 mg/mL濃度で作成し、フィルター滅菌をした後、-20℃に保存した。
(20×AB salt)
20 g/L NH4Cl
6 g/L MgSO4・7H2O
3 g/L KCl
0.268 g/L CaCl2・2H2O
0.05 g/L FeSO4・7H2O
*121℃, 15分間オートクレーブ滅菌後、室温に保存した。
(20×AB Buffer)
60 g/L K2HPO4
26 g/L NaH2PO4・2H2O
*121℃, 15分間オートクレーブ滅菌後、室温に保存した。
【0035】
(YEP培地(液体))
Bacto polypeptone 10 g/L
Bacto Yeast Extract 10 g/L
NaCl 5 g/L
pH7.2
*pH調整後、121℃, 15分間オートクレーブ滅菌し、室温に保存した。
【0036】
(多芽体誘導培地)
MS培地に以下を添加し、pH調整した。
BA 2 mg/L
pH5.8
*pH調整後、ゲランガム3.0 g/Lを加え、オートクレーブ滅菌(121℃、15分間)した。
【0037】
(感染液調製用溶液)
MS培地に以下を添加し、pH調整した。
BA 2 mg/L
0.01% silwet
pH5.8
*pH調整後、121℃、15分間オートクレーブ滅菌した。
【0038】
(共存培地)
MS培地に以下を添加し、pH調整した。
BA 2 mg/L
Casamino Acids, Bacto 10 g/L
pH5.8
*pH調整後、ゲランガム3.0 g/Lを加え、オートクレーブ滅菌(121℃、15分間)してから少し冷まし、アセトシリンゴン終濃度100 μMになるように添加してよく混ぜ、滅菌シャーレに適当量を分注した。
【0039】
(除菌培地)
MS培地に以下を添加し、pH調整した。
BA 2 mg/L
pH5.8
*pH調整後、ゲランガム3.0 g/Lを加え、オートクレーブ滅菌(121℃、15分間)してから少し冷まし、セフォタキシム・ナトリウム塩250 mg/L finalになるように添加し、よく混ぜ、滅菌シャーレに適当量を分注した。
【0040】
(選抜用培地)
MS培地に以下を添加し、pH調整した。
BA 2 mg/L (必要に応じて、BAを入れない)
pH5.8
*pH調整後、ゲランガム3.0 g/Lを加え、オートクレーブ(121℃、15分間)してから少し冷まし、セフォタキシム・ナトリウム塩 250 mg/L及びジェネティシンG418 50 mg/L finalになるように添加して、よく混ぜ、滅菌シャーレに適当量を分注した。
【0041】
(選抜直後のシュート伸長用培地)
MS培地
pH5.8
*pH調整後、ゲランガム3.0 g/Lを加え、オートクレーブ(121℃, 15 min)してから少し冷まし、セフォタキシム・ナトリウム塩250 mg/L(アグロバクテリウムを除去するための薬剤。薬剤入りの培地で多芽体を誘導させ、ある程度伸長したシュートに関しては、セフォタキシム・ナトリウム塩を添加しないMS培地で生育させた。)になるように添加して、よく混ぜ、滅菌シャーレに適当量を分注した。
【0042】
(キヌア種子の無菌播種)
1)キヌア種子50粒程度を1.5 mLエッペンチューブに入れ、水道水で3回ほどすすいだ。
2)次に、70%エタノールで20秒間、すすいだ。
3)5% NaOClで10分間時々混ぜながら置いた。
4)ピペットを使いエッペンチューブの中で4~5回滅菌水を用いて洗浄した。
5)滅菌シャーレに分注したMS培地に、滅菌水と共に吸い上げた種子を1シャーレに30粒ほどまばらに蒔いた。蒔くときのピペット先ははさみで切って使った。
【実施例2】
【0043】
[選抜に用いる薬剤(抗生剤)濃度の検討]
本実施例では、キヌアの薬剤耐性選抜に使用する抗生剤の種類及び濃度を決定した。
【0044】
Km (kanamycin):50、100、200、300 mg/L、G418(geneticin):10、20、30、40、50、60 mg/L、及びHg (hygromycin):10、20、50 mg/Lを使用した。除菌するためのセフォタキシム・ナトリウム塩(Cefotaximsodium salt)(250 mg/L)は、植物体の成育に殆ど影響しなかったため、除菌培地からシュートの選抜までに使用した培地に入れた。
1)培養したキヌア植物体からリーフディスク(直計8 mmほど)を取り、それぞれの抗生剤を含んだカルス誘導培地(2,4-D 1 mg/L, BA 0.1 mg/L入りのMS培地)下で培養した。
【0045】
[結果]
Kmに関し、高濃度(300 mg/L)では、リーフディスクは多少黄変、カルス化は抑制されるものの、完全に枯死することは困難で、非形質転換細胞が再分化するエスケイプ現象に繋がる可能性が高いと判断した。
G418に関し、Kmと同様の効果を持つことを確認した。カルス化が殆ど認められなかった50 mg/Lを選抜濃度とした(表1)。50 mg/Lは、キク植物の選抜で用いられる20~30 mg/Lを超える濃度に当たる。
Hgに関し、低濃度(10 mg/L)下でも早い段階で褐変化が進み、20 mg/Lでは100%枯死(白色化)したため、20 mg/Lを選抜濃度とした(表1)。
なお、実際の選抜では、当初は、G418(50 mg/L)入りの培地下で多芽体シュートを誘導させた後、選抜効果がより高いHg(20 mg/L)入りの培地下で個々のシュートを選抜していた。しかし、形質転換後の選抜において、Hg(20 mg/L)では生き残るシュートの数が必要量確保できなかったため、Hg濃度を10 mg/Lに下げた、又は、G418(50 mg/L)のみによる選抜を行った。
【0046】
【実施例3】
【0047】
[多芽体の誘導が盛んなキヌア系統の選抜]
本実施例では、多芽体の誘導が盛んなキヌア系統を選抜した。なお、本発明者らは、キヌアではカルス形成後の再分化が困難であることを確認している。
そこで、無菌播種から約1週間前後の幼植物体を用い、子葉節を含む子葉部の先端から胚軸まで2~5 mmまで(本葉がほとんど見えない状態、以降CT(cotyledon tip)と称する場合がある)をサイトカイニン入りの培地で培養することで多芽体を誘導するシステムを確立した(表2、表3)。
表2では、外植体を2週間以上培養し、2個以上の不定芽を誘導した外植体をカウントした。
1外植体あたりに誘導された不定芽が2つ以上あった場合をMBB(multiple bud body:多芽体)化と判断した。
カルスは、1 mg/L 2,4-D、0.1 mg/L BAを含むMS培地で誘導され、MBBは2 mg/LBAを含むMS培地で誘導された。
表3では、MBB数/外植体:20個体を植え付けし、枯死個体を除き、1外植体あたりのMBB数の平均値を算出した。表3中、MBB数/外植体=1は、MBB化になってないことを示す。全て1より大きいため、MBB化を確認できた。
各表中のアクセッション番号(Accession No.)は、アメリカ合衆国農務省(USDA)のAgricultural Research Service (ARS)から提供を受けた各キヌア系統の本研究における通し番号である。
キヌアの18系統の中から多芽体の形成が最も盛んだったアクセッション番号#79(U.S. National Plant Germplasm Systemアクセッション番号:PI 614882)と#80(U.S.National Plant Germplasm Systemアクセッション番号:PI 614883)を形質転換に用いた(表2、表3)。
【0048】
【表2】
アクセッション番号#101、109、110は発芽不良。
【0049】
【実施例4】
【0050】
[アグロバクテリウム系統の検討]
本実施例では、キヌアの多芽体の誘導に最適なアグロバクテリウム系統を検討した。
アグロバクテリウム系統LBA4404、A13、C58のうち、多芽体が旺盛に誘導され、その後の生存率も高かったLBA4404及びC58を以後の実施例で使用した。
【実施例5】
【0051】
[SV処理(超音波処理及び減圧浸透処理による傷つけ処理)の条件検討]
本実施例では、SV処理の最適な条件を検討した。
超音波(QSONICA)処理(0、20、30、40 Amplitude)後に、減圧(-800 psiで5 min又はなし)をかけてアグロバクテリウムのキアヌへの感染を促進させた。
SV(Sonicationand vacuum infiltration:超音波及び減圧浸透)処理の条件を確立するため、アグロバクテリウムを含まない感染液調製用溶液に外植体(CT)を入れて超音波処理及び減圧処理をそれぞれ行い、誘導される多芽体の数を測定した。
結果を表4~6に示す。表4及び表5に示す通り、#79及び#80では、SV処理をした場合であっても、SV処理無し(0 AMP)の場合と同程度又は同等以上の多芽体誘導が確認できた。このことから、本発明のSV処理は、多芽体誘導に悪影響を与えることなく、形質転換効率の向上に寄与できることを確認した。処理時間においては、20 AMPの場合10秒で最も高い多芽体の誘導がみられた(表6)。
外植体(CT)へのダメージを少なくしながら菌の感染を促すための傷つけ処理として、アグロバクテリウム感染液に外植体を入れて傷つけ処理(超音波処理(20又は30 AMP、10~15 sec)の条件で)とし、直ちに減圧(-800 psi、5 min)をかけて感染処理とした。
超音波処理後にアグロバクテリウム感染液に感染させるのでは、その後の選抜培養によって誘導されるシュートから生存するものが認められなかった。アグロバクテリウム感染液を入れた状態で超音波処理を行ったところ、生存するシュートが確認できた(表7~9)。
【0052】
【表4】
SV: Sonication and vacuum infiltration
CTは、SV処理前に2日間BA2 mg/L入りのMS培地で培養した。
【0053】
【表5】
Amplitude 0は、減圧処理のみ。
MBBにならなかったものはMBB数=1として勘定した。
不定芽数/外植体:不定芽数の合計/調べた外植体の数。ただし、カウント時にまだ伸びてない芽は勘定してない。
#79は30 AMP/10sec、#80は40 AMP/10secでMBB数がやや多い結果となった。
【0054】
【実施例6】
【0055】
[形質転換体の作製]
本実施例では、上記の実施例1~5で設定した条件を基にして、SV処理により、形質転換体を作成した。
(植物材料)
無菌播種から約5日目の幼植物体を用いた。子葉節を含む子葉部の先端から胚軸まで2~5 mmまで(本葉がほとんど見えない状態)CTを多芽体誘導培地に1~2日間培養したものを形質転換(アグロバクテリウムの感染)に用いた。さらにアグロバクテリウム感染の数時間~1日前に4℃に入れておいた。
【0056】
(アグロバクテリウムの前培養)
1)感染3日前、カナマイシン塩酸塩50 mg/L finalを含むAB培地へ、グリセロールで凍結保存(-80℃)したアグロバクテリウム(エレクトロポレーションによりバイナリーベクターを導入したLBA4404及びC58)を爪楊枝でかきとり、直線を描くように塗布し、インキューベーター(28℃、暗黒)で2~3日間培養した。
2)感染1日前、培養が終了したアグロバクテリウムに爪楊枝で軽くかきとり、ハイグロマイシン10 mg/L、カナマイシン塩酸塩50 mg/Lを含むYEP液体培地(20 mL)に懸濁し、28℃(暗黒、70 rpm)で一晩振とう培養し、対数増殖期の菌体を確保した。
【0057】
(アグロバクテリウムの感染)
1)5日前に無菌播種したキヌアの子葉部の先端を2~5 mm長で切り取り(外植体と称する場合がある)、多芽体誘導培地で1~2日間培養した。
2)感染直前に、感染液調製用溶液でOD600=0.1に調整し、感染液とした(培養したアグロバクテリウム液1 mLに感染液調製用溶液を15 mL加えると約OD600=0.1となる。また形質転換効率を上げると知られている、アセトシリンゴン終濃度100 μMを感染液と共存培養に加えて用いた)。
3)多芽体誘導培地に1~2日間培養した(更に直前数時間は4℃で培養することで細胞膜を強化)外植体を取り出し、感染液(感染液調製用溶液15 mL及びアグロバクテリウム液1mLの計16 mL)に20~27個外植体を入れ、SV処理(超音波20 AMPあるいは30AMPで10秒あるいは15秒後減圧-800 psi, 5分)し、滅菌タオルの上で軽く乾燥させた後、共存培地で2日間(25℃、暗黒)培養した。
4)共存培養が終了した外植体は、感染液調製用溶液で3回洗浄し、滅菌タオルで軽く乾燥させた後、除菌培地に移植して7日間培養し、アグロバクテリウムの除菌を行った。
【0058】
(形質転換体の選抜と多芽体誘導)
1)除菌培地で培養した外植体(一部の外植体で多芽体の誘導が肉眼で確認できる)を、50 mg/LのG418及び250 mg/Lのセフォタキシム・ナトリウム塩を更に添加した多芽体誘導培地(BA 2 mg/L)に移し、2週間培養を行った。工程1)~4)における培養は、14時間日長(24℃/18℃、明/暗)で行った。
2)多芽体(シュート長)が1 cm程度伸びたシュートは切り取り、BAを含まない選抜用培地に、多芽体がまだ肉眼で確認できない外植体はBAを含む選抜用培地に植え継ぎした(参照:
図1)。約2週間ごとに植え継ぎを行った(表7及び表8では最大6回の約3ヶ月、G418を用いた表9では合計約1ヶ月)。外植体がもろくなり黒化したものは植え継ぎの時に取り除いた。
3)工程2)においてBAを含まない選抜用培地に植え継いで2週間培養したシュートは、2週間ごとに選抜直後のシュート伸長用培地(セフォタキシム・ナトリウム塩を含むMS培地)に植え継ぎ、約1ヶ月成長させた。
多芽体がまだ肉眼で確認できなかった外植体及び多芽体が肉眼で確認できる限界のサイズの外植体は、工程2)と同様にそれぞれ2週間ごとにBAを含む選抜用培地に植え継ぎ、約1ヶ月成長させた。
4)工程3)において選抜直後のシュート伸長用培地で成長させたシュート及びBAを含む選抜用培地で成長させたシュートのうち、白色化又は褐色化することなく伸長したシュートをBAを含まない選抜用培地に植え継ぎ、2~3週間培養し、生きて伸びるシュートを選抜し、薬剤フリーのMS培地(基本培地)に移した。結果を表9に示す。
【0059】
(選抜工程)
(1)多芽体誘導培地に1~2日間培養した外植体を感染液に入れ、SV処理し、共存培地で2日間(25℃、暗黒)培養した。
(2)共存培養が終了した外植体を洗浄し、除菌培地で7日間培養した。
(3)50 mg/LのG418及び250 mg/Lのセフォタキシム・ナトリウム塩を含む多芽体誘導培地(BA 2 mg/L)で2週間培養した。
(4)1 cm程度伸びたシュートもしくは頂芽は外植体と共に切り取り、BAを含まない選抜用培地に(50 mg/LのG418及び250 mg/Lのセフォタキシム・ナトリウム塩を含む基本培地)、多芽体がまだ肉眼で確認できない外植体はBAを含む選抜用培地に植え継ぎし、シュートが出るまで同じ培地に約2週間ごとに植え継ぎした{通常1~2回でシュートが誘導され(5)に移った}。
(5)最終的に1cm以上伸びたシュート若しくは頂芽は、外植体と共に切り取り、又は、外植体を含まずにシュートだけを切り取った。切り取られた培養産物を選抜直後のシュート伸長用培地(セフォタキシム・ナトリウム塩を含むMS培地)で2週間培養、その後の植え継ぎではセフォタキシム・ナトリウム塩を含まないMS培地で成長させた。
【0060】
【0061】
表7の実験では、#80を供試した。薬剤耐性を持った20個体のうち12個体からPCRにより目的遺伝子の確認ができた(表8)。
表9の実験では、薬剤耐性(G418のみによる選抜、なお、セフォタキシム・ナトリウム塩は含有)を持って発生したMBBに関して一度のみ同じ選抜を行い、それ以降は薬剤フリーで生育させた。そのため多数の薬剤耐性を持ったMBBが得られたものと考えられる。
【0062】
【0063】
【表9】
表9の実験では、#79を供試した。
*薬剤耐性を持つ個体(CT)から誘導されたMBBの内、薬剤耐性を持って生育しているMBB個体の割合を示す。これらのうち、確認した全個体(84個体)について、PCRによる形質転換の確認ができた。
これにより、本発明の方法は、カルス化・再分化系を利用しなくても、目的の遺伝子を導入することができるキヌアの形質転換方法であることを確認した。
【0064】
(形質転換体の増殖)
トランスジェニック(薬剤耐性)が確認されたシュートは、残ったシュート先端からさらに多芽体を誘導し、数を確保し、伸びた多芽体のシュートはMS培地(選抜直後のシュート伸長用培地)で約2週ごとに植え継ぎを行い成長させた。
これにより、本発明の方法は、目的の遺伝子を導入した形質転換体(多芽体)を増殖することができることを確認した。
【0065】
(植物体の生育)
上記の工程4)において選抜したシュートを薬剤フリーのMS培地(基本培地)で2週間ごとに植え継ぎして生育した。分離されたシュートは自然に根をはり、花芽がつき、形質転換種子を採種した。
インビトロでは多少のストレス条件となるため、シュートによってばらつくが、とても早い段階(1cm~10cmほど)で花芽が付き、そのまま開花して種子をつけると考えられる。
上記の工程3)から早いものは1ヶ月以内、遅くても2ヶ月ほどで花が付き種子が採れた。
これにより、本発明の方法は、目的の遺伝子を導入した種子を得られることを確認した。
【実施例7】
【0066】
(目的遺伝子の導入確認)
本実施例では、目的遺伝子であるGUSが多芽体に導入されていることを確認した。
上記実施例の方法を用いて、アグロバクテリウム(C58株)感染から2日目の胚軸をGUS染色した。GUS染色液は1 mg/mlX-Glucシクロヘキシルアンモニウム塩、50 mMNaPi、0.3%TritonX-100、pH7.0を使用した。
図2の結果から明らかなように、胚軸で目的遺伝子であるGUSが発現していることを確認した。
上記の方法を用いて、アグロバクテリウム(C58株)感染から20日目の多芽体をGUS染色した。
図3の結果から明らかなように、子葉で目的遺伝子であるGUSが発現していることを確認した。
以上により、本発明の多芽体誘導法では、目的遺伝子を植物に導入して、発現させることができる。
【0067】
(総論)
以上の結果から以下を確認できた。
1.MBB化が最も優位な系統は、アクセッション番号#79(U.S. National Plant Germplasm Systemアクセッション番号:PI 614882)と#80(U.S.National PlantGermplasm Systemアクセッション番号:PI 614883)であった。
2.細分化が不可能なキヌアにおいて、CT(子葉節を含む子葉部の先端から胚軸まで2~5mmまで)を外植体として用いることにより、短期間で多芽体を誘導できた。これにより、材料のばらつきが少なく、多くの形質転換シュート(MBB)が得られ、短期間で実行可能な形質転換系が確立できた。
3.G418による薬剤選抜は、BA(多芽体のシュートを誘導するための植物ホルモン)を含有する培地によりMBBを誘導し(第1段階)、そのMBBのシュートをBAを含有しない培地により再度選抜する(第2段階)2段階選抜、及びその後の薬剤フリーの基本培地での生育によって多数の形質転換個体を確保できた。
4.本発明の多芽体誘導法では、目的遺伝子を植物(特に、子葉、胚軸)に導入して、発現させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明により、カルス化を必須としない新規なキヌアの形質転換法を提供することができる。