(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】製氷装置及び製氷方法
(51)【国際特許分類】
F25C 1/142 20180101AFI20241223BHJP
【FI】
F25C1/142 B
(21)【出願番号】P 2021126961
(22)【出願日】2021-08-02
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】518403539
【氏名又は名称】FrostiX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】廣兼 美雄
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102410683(CN,A)
【文献】特表2005-539195(JP,A)
【文献】米国特許第4538428(US,A)
【文献】特開2020-106237(JP,A)
【文献】特開2018-105522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラインに接する製氷部と、
前記製氷部を通過するよう形成され、第1冷媒を流動させることが可能な第1冷媒通路と、
前記製氷部を通過するよう形成され、前記第1冷媒よりも蒸発温度が低い第2冷媒を流動させることが可能な第2冷媒通路と、を備え、
前記第1冷媒により冷却された前記製氷部を前記第2冷媒により冷却することを特徴とする製氷装置。
【請求項2】
前記製氷部は、前記ブラインに漬けられることを特徴とする請求項1に記載の製氷装置。
【請求項3】
気化した前記第2冷媒の圧力により前記第2冷媒に流動性を与えることを特徴とする請求項1又は2に記載の製氷装置。
【請求項4】
ブラインに接した製氷部に対し、第1冷媒を通過させて前記製氷部を冷却した後、前記第1冷媒よりも蒸発温度が低い第2冷媒に切り替え、前記第1冷媒により冷却された前記製氷部を前記第2冷媒により冷却することを特徴とする製氷方法。
【請求項5】
ブラインに接する製氷部と、
前記製氷部を通過するよう形成され、第1冷媒を流動させることが可能な第1冷媒通路と、
前記製氷部を通過するよう形成され、前記第1冷媒よりも蒸発温度が低い第2冷媒を流動させることが可能な第2冷媒通路と、を備えた製氷装置を用いて実行され、
前記製氷部を前記第1冷媒により冷却した後に、前記第2冷媒により冷却することを特徴とする製氷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、氷スラリーに用いられるフレークアイスなどを製造する製氷装置及び製氷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、魚介類や精肉等といった生鮮食品を被冷凍品として冷凍し、これらの被冷凍品を保管したり輸送したりすることが一般に行われている。そして、被冷凍品の冷凍には氷スラリーが用いられ、被冷凍品を氷スラリーに浸け、瞬間的に凍らせて食材の鮮度が保たれる。
【0003】
後掲の特許文献1には、ドラム式の氷スラリー原料製造装置(200)でフレークアイス(氷の剥片)を製造し、フレークアイスを貯氷タンク(500)に落下させて氷スラリーを製造することが開示されている。さらに、特許文献1には、貯氷タンク(500)の氷スラリーを、氷スラリー供給管(45)を介して冷凍装置(6)に供給することが開示されている。
【0004】
後掲の特許文献2や特許文献3に開示されているようなフレークアイス製造装置も知られている。これらのフレークアイス製造装置には、金属製の製氷板(「金属製氷板」、「金属プレート」、「製氷体」などともいう)が備えられている。金属製の製氷板は、食塩、塩化カルシウム、或いは、エタノール等の溶質の水溶液を凍結させて、フレークアイスや氷スラリーなどを製造するために使用される。
【0005】
また、特許文献2における製氷板には、特許文献1に開示された氷スラリー原料製造装置(200)と同様なドラム式の構成が採用されている。さらに、特許文献3における製氷板には、平板状の形状を有するプレート式の構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-207046号公報
【文献】特開2019-143905号公報
【文献】特開2019-143906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示されたような氷スラリー製造装置1や、特許文献2及び特許文献3に開示されたようなフレークアイス製造装置においては、冷凍能力のさらなる向上が望まれている。そして、冷凍能力を向上させるには、冷媒の流動性を高めることなどが考えられる。しかし、冷媒の流動性を高めることにより冷凍能力を飛躍的に向上させるのは、決して容易なことではない。
【0008】
本発明は、冷凍能力の高い製氷装置及び製氷方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、ブラインに接する製氷部と、
前記製氷部を通過するよう形成され、第1冷媒を流動させることが可能な第1冷媒通路と、
前記製氷部を通過するよう形成され、前記第1冷媒よりも蒸発温度が低い第2冷媒を流動させることが可能な第2冷媒通路と、を備え、
前記第1冷媒により冷却された前記製氷部を前記第2冷媒により冷却することを特徴とする製氷装置である。
また、上記課題を解決するために本発明は、ブラインに接した製氷部に対し、第1冷媒を通過させて前記製氷部を冷却した後、前記第1冷媒よりも蒸発温度が低い第2冷媒に切り替え、前記第1冷媒により冷却された前記製氷部を前記第2冷媒により冷却することを特徴とする製氷方法である。
また、上記課題を解決するために本発明は、ブラインに接する製氷部と、
前記製氷部を通過するよう形成され、第1冷媒を流動させることが可能な第1冷媒通路と、
前記製氷部を通過するよう形成され、前記第1冷媒よりも蒸発温度が低い第2冷媒を流動させることが可能な第2冷媒通路と、を備えた製氷装置を用いて実行され、
前記製氷部を前記第1冷媒により冷却した後に、前記第2冷媒により冷却することを特徴とする製氷方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷凍能力の高い製氷装置及び製氷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る氷スラリー製造装置を概略的に示す斜視図である。
【
図2】第1冷媒の供給と第2冷媒の供給を説明するための図である。
【
図3】(a)はディスク部の冷媒配管に係る第1実施形態を模式的に示す平面図、(b)はディスク部の冷媒配管に係る第2実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図4】ディスク部における第1冷媒通路と第2冷媒通路を記号により区別して示す説明図である。
【
図5】ディスク部の周囲における水溶液の流れを模式的に示す側面図である。
【
図6】(a)は掃き取り部に係る第1実施形態のバフがディスク部から氷を分離する原理を模式的に示す側面図、(b)は掃き取り部に係る第2実施形態の金属板がディスク部から氷を分離する原理を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係る製氷装置について、図面に基づき説明する。なお、ここでは製氷装置としての氷スラリー製造装置について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る冷凍システム10と、この冷凍システム10に用いられた氷スラリー製造装置11を示している。
図1に示す冷凍システム10は、氷スラリー製造装置11、冷凍槽12、及び、水溶液ポンプ13等を組み合わせて構成されている。
【0013】
これらのうち、氷スラリー製造装置11は、例えば、冷凍槽12内の原水(例えば、50重量%(wt%)のエタノール水溶液)から氷を析出させて、フレーク状(薄片状、剥片状、小塊状、或いは、粒状などともいう)の氷(フレークアイス)を作成することが可能なものとなっている。エタノール水溶液の凝固点は、例えば-37℃や-50℃程度である。
【0014】
この氷スラリー製造装置11は、冷凍機14、氷製作部としてのフレークアイス作成部15、及び、冷媒案内部16等を有している。さらに、氷スラリー製造装置11においては、これらの冷凍機14、フレークアイス作成部15、及び、冷媒案内部16が、保持部としてのフレーム部17に搭載され、互いに一体化されている。
【0015】
氷スラリー製造装置11の冷凍機14、フレークアイス作成部15、及び、冷媒案内部16は、冷凍サイクルを構成し、所定の冷媒液(液冷媒)を循環させて、冷媒の圧縮、凝縮、膨張、及び、蒸発を行えるようになっている。ここで、冷凍サイクルの形態としては、一般的な種々のものを採用することが可能である。
【0016】
冷凍機14からは、冷媒案内部16を介して、フレークアイス作成部15に冷媒(後述する第1冷媒)が送出されるようになっている。冷媒案内部16は、冷凍機14から冷媒をフレークアイス作成部15に導入する冷媒導入管18aや、フレークアイス作成部15から導出された冷媒を冷凍機14に戻す冷媒導出管18bを備えている。
【0017】
冷媒導入管18aや冷媒導出管18bとしては、例えば、銅管を断熱材で覆ったような一般的な冷媒管を採用することができる。また、冷媒導入管18aや冷媒導出管18bは、このような冷媒管を、一般的な配管継手を介して接続したものとすることも可能である。
【0018】
本実施形態において、冷媒導入管18a及び冷媒導出管18bの各端部は、詳細な図示は省略するが、配管継手を介して冷凍機14とフレークアイス作成部15に接続されている。また、冷媒導入管18a及び冷媒導出管18bは、上方に突な逆U字状に湾曲するよう曲がった形状を有している。さらに、冷媒導入管18a及び冷媒導出管18bは、互いに同様な長さや大きさを有している。
【0019】
また、冷媒導入管18a及び冷媒導出管18bは、逆U字状に曲がった内側の部分を冷凍槽跨ぎ部19としている。そして、氷スラリー製造装置11を、冷凍機14が冷凍槽12(後述する)の外側に位置し、フレークアイス作成部15が冷凍槽12の内側に位置するよう設置した場合に、冷凍槽12の一部の壁部12aが、冷媒導入管18a及び冷媒導出管18bの冷凍槽跨ぎ部19に入り込むようになっている。
【0020】
ここで、冷媒導入管18a及び冷媒導出管18bとしては、例えば、氷スラリー製造装置11の組み立てを行う作業者が、工具を用いずに手で直接曲げることができるようなフレキシブル管を採用することも可能である。そして、この場合にも、フレキシブル管の周囲を断熱材で覆うことが望ましい。
【0021】
また、
図1では、図示が煩雑になるのを避けるために省略されているが、氷スラリー製造装置11には、冷凍機14により冷媒(第1冷媒)を流動させる系統(後述する第1冷媒通路29A)の他に、
図2に示すように、異なる種類の冷媒(第2冷媒)を流動させる系統(後述する第2冷媒通路29B)が設けられている(
図2、
図3(a))。
【0022】
続いて、
図1に示すように、フレークアイス作成部15は、冷却部21、駆動部としての回転駆動部22、氷分離部としての掃き取り部23等を備えている。これらのうち、冷却部21は、製氷プレートとしてのディスク部26や多数の冷媒配管(U字管28等)を備えている。
【0023】
ディスク部26は、矩形(ここでは正方形)板面(製氷面)と所定の厚みを有する金属板により形成され、フレーム部17(後述する)に固定されている。ディスク部26のサイズ(寸法)は、例えば、外形を30cm角程度、板厚を例えば30mm程度とすることが可能である。ここで、ディスク部26は矩形に限らず円形であってもよい。
【0024】
本実施形態において、ディスク部26の上面(板面26a)及び下面(板面26b、
図4)は、ほぼ平坦に、且つ、互いに平行になるよう加工されている。ディスク部26の素材としては、熱伝導率が高い銅や銅合金が採用されている。本実施形態においては、ディスク部26は鋳造により形成されている。ディスク部26の表面は、耐摩耗性を有する金属(例えばクロムなど)によってメッキされている。ここで、ディスク部26の素材としては、銅や銅合金のほかにも、アルミニウム、鉄、或いは、ステンレス鋼などを採用することも可能である。
【0025】
ディスク部26の内部には、
図3(a)に破線で示すように、多数の冷媒穴27が形成されている。冷媒穴27は、互いに平行に、且つ、直線状に延びており、ディスク部26を貫通している。冷媒穴27の断面形状は真円状である。これらの冷媒穴27は、ディスク部26の素材に対してドリリング(穿孔)を行うことにより形成されている。
【0026】
また、ディスク部26には、多数のU字管28等の冷媒管が接合されており、ディスク部26における内部の冷媒穴27や、U字管28等により、2系統の冷媒通路が構成されている。以下では、一方の冷媒通路を「第1冷媒通路」と称し、この「第1冷媒通路」に符号29Aを付す。また、他方の冷媒通路を「第2冷媒通路」と称し、この「第2冷媒通路」に符号29Bを付す。
【0027】
第1冷媒通路29A及び第2冷媒通路29Bには、第1冷媒や第2冷媒がそれぞれ蛇行して流れるようになっている。第1冷媒(冷媒ガス)としては、R404Aや、R447、或いは、R448Aなど(蒸発温度が-60℃~-45℃程度)を使用することが可能である。第1冷媒通路29Aにおいては、
図2に示すように、冷凍機14により、第1冷媒に流動性が与えられる。この場合は、冷凍機14が、第1冷媒に対する流動性付与手段として機能する。
【0028】
第2冷媒としては、第1冷媒とは異なり、第1冷媒よりも蒸発温度が低い液化天然ガス(蒸発温度が-162℃程度)や、液体窒素(蒸発温度が-196℃程度)を用いることが可能である。第2冷媒通路29Bにおいては、第2冷媒が、気密的に形成された第2冷媒タンク20に溜められている。そして、第2冷媒通路29Bに設けられた第2冷媒バルブ20aが開放されると、第2冷媒タンク20の中や流路中で気化した第2冷媒の圧力により、第2冷媒に流動性が与えられる。この場合は、第2冷媒バルブ20aが、第2冷媒に対する流動性付与手段として機能する。
【0029】
ここで、第2冷媒バルブ20aの開放は、例えば、氷スラリーを製造する作業者が、手動により行うことが可能である。また、これに限らず、例えば、氷スラリーを製造する作業者が、所定のボタン操作を行うことで、第2冷媒バルブ20aが開放されるようにしてもよい。さらに、例えば、冷凍槽12に温度センサ(図示略)を設置し、第1冷媒により冷却された水溶液Wsが所定の設定温度に達したことが、温度センサにより検出された場合に、第2冷媒バルブ20aを開放すること(自動制御による開放を行うこと)も可能である。
【0030】
第2冷媒タンク20としては、例えば、真空断熱構造を有する容器(二重構造の容器)などを採用することが可能である。また、第2冷媒バルブ20aとしては、液化天然ガスや液体窒素などの流路で使用することが可能な一般的な種々のバルブ装置を採用することが可能である。なお、本実施形態においては、第1冷媒と第2冷媒とを切り替えて、ディスク部26に対する冷媒の供給が行われるが、冷媒の供給方法については後述する。
【0031】
また、
図3(a)に符号18a、18bで示すのは、第1冷媒通路29Aにおける冷媒導入管18aと冷媒導出管18bであり、符号19a、19bで示すのは、第2冷媒通路29Bにおける冷媒導入管19aと冷媒導出管19bである。前述したように
図1では、第2冷媒通路29Bについては、図示を省略しており、第2冷媒通路29Bは、
図2、
図3(a)、及び、
図4に示されている。
【0032】
図3(a)に示すように、ディスク部26を平面視した場合に、冷媒穴27が延びる方向(図中では上下方向)と、冷媒導入管18a(及び19a)や冷媒導出管18b(及び19b)が延びる方向(図中では左右方向)は、互いに直交している。前述したようにU字管28等の冷媒管は、ディスク部26に接合されているが、接合の手段としては、ろう付け等を採用することが可能である。
【0033】
ディスク部26において、第1冷媒通路29Aと第2冷媒通路29Bは、
図4に模式的に示すように、ディスク部26の厚み方向に2重に重なるよう形成されている。ここで、
図4は、ディスク部26の中の第1冷媒通路29Aと、第2冷媒通路29Bを、記号により区別して示している。
図4では、第1冷媒通路29Aが真円の記号で表され、第2冷媒通路29Bが、真円に×印を付した記号で表されている。
【0034】
なお、ディスク部26における冷媒穴27と、ディスク部26に接続された冷媒導入管18aや冷媒導出管18bとの関係については、
図3(a)に示した例に限定されない。例えば、
図3(b)に示すようにディスク部26を平面視した場合に、第1冷媒通路29A、第2冷媒通路29Bが延びる方向(図中では上下方向)と、冷媒導入管18aや冷媒導出管18bが延びる方向(図中では上下方向)とが、同じ方向であってもよい。
【0035】
ディスク部26に第1冷媒又は第2冷媒が流通すると、ディスク部26の熱が奪われ、ディスク部26が冷却される。前述のように、第1冷媒の蒸発温度は-60℃~-45℃程度であり、第1冷媒の蒸発温度は-162℃程度以下である。そして、詳細は後述するが、ブラインとしての水溶液の凝固点は-38℃程度である。このため、ディスク部26に水溶液が接すると、水溶液がディスク部26で急速冷凍され、氷(ハイブリッドアイス)になる。
【0036】
続いて、前述した掃き取り部23は、
図5に示すように、バフ支持体31を備えており、各バフ支持体31には、複数のバフ33が装着されている。バフ33は、冷却部21におけるディスク部26の各板面26a、26bに対向するよう配置されている。さらに、本実施形態において、バフ33は、ディスク部26の各板面26a、26bに適度に弱い圧力(低面圧)で接するよう配置されている。そして、バフ33は、後述するように、ディスク部26の各板面26a、26bに表出した氷を掃いて、ディスク部26から分離させる機能(掃き取り機能)を有している。
【0037】
バフ33の素材や材質としては、研磨等に一般的に用いられるような各種のものを採用可能である。例えば、バフ33の素材として、ウレタンやその他の合成樹脂、金属、或いは、ウールなどを採用することが可能である。また、バフ33の材質として、上述した各種の素材を用いたスポンジ、フォーム、ブラシ、たわし(束子)、樹脂網、不織布などといったものを例示できる。また、バフ33はディスク部26の板面26a、26bから所定量(例えば0.2mm程度)のクリアランス(隙間)を設けた金属刃などであってよい。
【0038】
また、各バフ33は、バフ支持体31に備えられた棒状のスポーク34に装着されている。バフ支持体31のスポーク34は、ディスク部26の各板面26a、26bに面するよう、4つずつ90度間隔で配置されている。また、バフ支持体31は、丸棒状の回転伝達軸35に一体に結合されている。
【0039】
回転伝達軸35は、冷媒穴27を避けて、ディスク部26を厚み方向に貫通しており、軸心を中心として、正逆方向に回転できるようになっている。そして、回転伝達軸35は、静止しているディスク部26に対し、バフ33とともに回転変位できるようになっている。
【0040】
本実施形態では、
図1に示すように、各バフ33の形状は羽根状(楕円状)となっており、バフ33は、4枚羽根のプロペラ状に並んで、ディスク部26の各板面26a、26bに臨んでいる。
【0041】
このような掃き取り部23は、回転伝達軸35を介して、回転駆動部22(
図1)に連結されている。掃き取り部23は、例えば、10~100rpm(回転/分)の回転速度で回転させることが好ましい。この回転駆動部22には、モータ(バフ駆動モーター)が組み込まれており、回転駆動部22は、冷凍槽12に貯えられた水溶液Ws(液面を
図1中に二点鎖線で仮想的に示す)の中で掃き取り部23を継続的(或いは断続的に)に回転させることが可能なものとなっている。
【0042】
ここで、回転駆動部22は、モータと減速部(ギヤ部)とを一体に備えたもの(ギヤードモータ)とすることが可能である。また、回転駆動部22は、水溶液Wsの液面よりも上の部位に位置し、水溶液Wsの外に出るよう配置されている。また、回転駆動部22は、掃き取り部23を一方向へ回転させるものに限らず、回転往復動させるもの(正逆方向の往復回転動作を行わせるもの)であってもよい。
【0043】
なお、前述したバフ33の配置については、
図1や
図5に示すものに限らず、種々の態様を採用することが可能である。例えば、バフ33の数を、ディスク部26の各板面26a、26bにつき、4つ未満、或いは5個以上としてもよい。
【0044】
続いて、
図1に示すように、前述したフレーム部17は、例えば、棒状の部品を繋ぎ合わせて骨組みを形成することにより構成されている。フレーム部17の材料としては、一般的なアングル材や、丸パイプ、角パイプ、或いは、押出材などといったものを採用することができる。
図1では、図面が煩雑になるのを避けるため、フレーム部17の部品は帯板状に描かれているが、必要となる強度や構造を考慮して材料を選択することが望ましい。
【0045】
フレーム部17の部品の結合には、溶接やビス締め(ボルト締めを含む)等を採用することが可能である。また、フレーム部17の素材としては、金属や合成樹脂を採用することが可能であり、このうち金属としては、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミなどのように一般的な種々のもの採用することが可能である。さらに、鉄鋼等の金属を採用する場合は、防錆を考慮し、一般的な種々の表面処理を行うことが考えられる。
【0046】
フレーム部17には、冷凍機14とフレークアイス作成部15が固定されており、フレーム部17は、冷凍機14とフレークアイス作成部15を支持している。冷凍機14とフレークアイス作成部15のフレーム部17への固定は、例えばボルト止めやビス止めなどの一般的な手段により行うことができる。また、フレーム部17は、フレークアイス作成部15の回転駆動部22が水溶液Wsの外に出るよう、フレークアイス作成部15を支持している。
【0047】
氷スラリー製造装置11を床面等に置いた場合、冷凍機14は、下方に位置するフレーム部17の一部分を挟んで床上に設置されることとなる。これに対してフレークアイス作成部15は、冷凍機14に対して水平方向に所定量ずれた位置で、且つ、冷凍機14よりも幾分高い位置に支持される。
【0048】
そして、冷凍機14とフレークアイス作成部15との間には、冷媒導入管18aや冷媒導出管18bの冷凍槽跨ぎ部19が、下向きに開いた状態で位置するようになっている。ここで、
図1においては、フレーム部17や冷凍槽12の一部が、二点鎖線で示すように仮想的に切り欠いて描かれている。
【0049】
氷スラリー製造装置11の下端から上端までの高さを80~90cm程度とすることが可能である。さらに、氷スラリー製造装置11の下端を、フレーム部17の、床面に接する部分とし、氷スラリー製造装置11の上端を、回転駆動部22の上端とすることが可能である。氷スラリー製造装置11の高さ寸法を80cm程度とすることで、後述する冷凍槽12の高さが、冷凍作業を行う作業者が作業し易い高さとなる。
【0050】
次に、冷凍槽12や、冷凍槽12に貯えられる水溶液Wsについて説明する。本実施形態において、冷凍槽12は、矩形容器状に形成され、上部を開放している。また、
図1では省略されているが、冷凍槽12の周囲は、断熱材により囲われている。ここで、断熱材としては、一般的な種々のものを採用することが可能である。
【0051】
また、冷凍槽12の各壁(底部壁を含む)を、例えば断熱材を内蔵したものや、中空なものなどとすることが可能である。そして、冷凍槽12の各壁のみで十分な断熱性を得ることができる場合には、冷凍槽12の周囲の断熱材は適宜省略することができる。
【0052】
図1に二点鎖線で示す水溶液Wsは、氷スラリーの原液となるもの(ブラインとも称する)である。そして、本実施形態では、水溶液Wsとして、所定の濃度(ここでは50wt%)のエタノール水溶液が用いられている。水溶液Wsの量は、例えば、200L(リットル)程度とすることが可能である。
【0053】
冷凍槽12の内側には、氷スラリー製造装置11のフレークアイス作成部15における多くの部分が入り込んでいる。つまり、氷スラリー製造装置11の冷凍機14は、冷凍槽12の外側に位置し、冷凍槽12の長手方向における一端部の壁部12aに外側から面している。
【0054】
これに対して、フレークアイス作成部15は、壁部12aの内側に在り、最下部から中間程度の高さまでの部分が、冷凍槽12に所定量貯えられた水溶液Wsに浸漬されるようになっている。そして、フレークアイス作成部15の最下部には、ディスク部26が配置されており、フレークアイス作成部15が水溶液Wsに浸けられると、ディスク部26の全体も水溶液Wsに浸ることとなる。
【0055】
続いて、前述した水溶液ポンプ13の機能について説明する。水溶液ポンプ13は、
図1に二点鎖線の矢印A1で示すように、水溶液Wsを汲み上げ、矢印A2で示すように、冷凍槽12に導かれる。そして、水溶液ポンプ13は、水溶液Wsを、フレークアイス作成部15のディスク部26に向けて噴出させる。ここで、
図1では、矢印A1、A2により水溶液の経路を示し、配管の図示は省略している。
【0056】
また、水溶液ポンプ13としては一般的な種々のポンプを採用することが可能であるが、水溶液Wsに固体(ここではフレークアイス)が混合することを考慮して水溶液ポンプ13を選定することが考えられる。また、フレークアイスが混合した水溶液Wsを配管中や水溶液ポンプ13に通すことで、流路の目詰まりを防止する効果が得られることもある。しかし、水溶液ポンプ13にフレークアイスを通さないようにする場合には、配管の入口や水溶液ポンプ13の前段に、水溶液Wsからフレークアイスや異物を除去するためのフィルタを配置することなども考えられる。
【0057】
水溶液ポンプ13により送出された水溶液Wsは、
図5に示すように、ノズル部41から噴出される。ノズル部41は、冷凍槽12に貯められた水溶液Wsに浸漬されており、ノズル部41から噴出された水溶液Ws(ここでは矢印A3で示す)は、冷凍槽12内の水溶液Wsを巻き込んで水流を形成する。そして、ノズル部41から噴出された水溶液Ws(矢印A3)は、冷凍槽12に貯められている水溶液Wsに流速を生じさせ、運動量を与える。つまり、水溶液ポンプ13やノズル部41等は、水溶液Wsの流れを形成する流れ形成部としての水流発生機構(推進機構)を構成している。
【0058】
ノズル部41としては、一般的な種々のものを採用することが可能である。そして、ノズル部41としては、水溶液Wsを矢印A3で示すように円錐状に噴出させるものや、図示は省略するが、直線状に噴出させるものなどを例示できる。
【0059】
ノズル部41は、フレークアイス作成部15におけるディスク部26の周囲に水流を発生させることができるよう、水溶液Wsに浸漬されている。ノズル部41から吐出される水溶液により発生した水流は、冷凍槽12の長さ方向(長手方向、
図1の左右方向)の端部に位置する壁部12a、12bの間で循環する。
【0060】
前述したように、ディスク部26は、冷凍機14からの冷媒の冷熱により冷却されることから、ディスク部26の周辺を流れる水溶液Wsが、ディスク部26により冷却されることとなる。そして、ディスク部26を十分に冷却することにより条件が整えられ、ディスク部26の各板面26a、26b等に氷が析出し、ディスク部26の周囲に微小な氷が付着する。
【0061】
このようにして表出して付着した氷は、
図5に矢印A4で示すように、掃き取り部23のバフ33が連続して回転し、付着した氷に衝突することにより、ディスク部26から掃き取られて分離する(掃き取り機能)。掃き取り部23が回転していることから、バフ33が一定の場所を断続的に通過することとなり、氷は大きく成長する前にディスク部26から分離されることとなる。
【0062】
ディスク部26の各板面26a、26bから分離した氷はフレークアイスとなり、これらのフレークアイスは、水溶液Wsの流れ(矢印A5で示す)に巻き込まれて飛ばされ、水溶液Wsを水溶液Wsの凝固点まで冷却する。
【0063】
上述したような氷の付着、氷の掃き取りを、水溶液Wsに流動性を与えながら継続することにより、水溶液Ws中のフレークアイスの量が徐々に増え、氷スラリーが製造される。被冷凍品の冷凍は、例えば、
図1に符号45で示す金属製のかごに被冷凍品を収容し、作業者がかご45を持って氷スラリーの中に浸漬することにより行うことが可能である。
【0064】
なお、水溶液ポンプ13やノズル部41等の水流発生機構を、フレーム部17に一体に組み付けて固定することも可能である。この場合は、水流発生機構を、氷スラリー製造装置11に一体に設けられたものとすることができる。また、例えば、水溶液ポンプ13はフレーム部17から離れた位置に設置し、ノズル部41や、ノズル部41に繋がる配管のみフレーム部17に固定してもよい。水溶液ポンプ13をフレーム部17から離れた位置に設置した場合には、支持する各機器を含めたフレーム部17の重量を軽くすることができる。
【0065】
また、水溶液ポンプ13やノズル部41等の水流発生機構を、フレーム部17に一体に組み付けて固定することも可能である。この場合は、水流発生機構を、氷スラリー製造装置11に一体に設けられたものとすることができる。さらに、例えば、水溶液ポンプ13はフレーム部17から離れた位置に設置し、ノズル部41や、ノズル部41に繋がる配管のみフレーム部17に固定してもよい。水溶液ポンプ13をフレーム部17から離れた位置に設置した場合には、支持する各機器を含めたフレーム部17の重量を軽くすることができる。
【0066】
次に、
図6(a)は、バフ33がディスク部26から氷を分離する状態を模式的に示している。スポーク34に装着されたバフ33は、二点鎖線の矢印Cで示すように図中の左から右へ水平に移動(回転移動)する。
図6(a)の例では、バフ33は、ディスク部26の上方の板面26aに適度に弱い圧力(低面圧)で接している。バフ33は、或る程度の柔軟性を有する材質で形成されており、矩形(ここではほぼ正方形)の断面形状を有している。
【0067】
また、
図6(a)の例において、バフ33は、ディスク部26の板面26aに接しながら移動することで、摩擦を生じ、断面形状が平行四辺形状になるよう変形している。そして、バフ33は、ディスク部26の板面26aに発生した氷(図示略)を叩いて氷に外力を与え、ディスク部26の板面26aから掃き取る。さらに、ディスク部26の反対側の面(下方の板面26b)においても、同様の原理により、バフ33が氷を掃き取るようになっている。
【0068】
図6(a)の例では、バフ33による掃き取りの原理説明にあたり、バフ33の断面形状、及び、スポーク34の断面形状を、いずれも矩形としている。しかし、これに限らず、例えば、スポーク34としては、角棒のほかに丸棒やその他の形状のものを採用することが可能である。また、バフ33の断面形状も、矩形以外の形状とすることが可能であり、矩形以外の形状としては、例えば、三角形状、多角形状、真円状、或いは、楕円状などを例示できる。
【0069】
さらに、各バフの断面形状だけではなく、平面形状についても、羽根状以外の種々の形状を採用することが可能である。また、図示は省略するが、バフ33の平面形状を、例えば直径30cm程度の真円の板状などとし、更にバフ33の数をディスク部26の片面につき1つとし、このバフ33を中心周りに水平に自転させる、といったことも可能である。さらに、バフ33の外径を30cm程度よりも小さくし、1つ又は複数のバフ33を自転させながら旋回させるといったことも可能である。
【0070】
また、更なる変形例として、ディスク部26に回転伝達軸35を通す穴を開けずに、バフ(図示略)に対し、ディスク部26の側部(端部横)から動力の伝達を行うことが可能である。この場合、例えば、平行クランク機構を介し、ディスク部26を挟んだ状態で平行クランク機構のリンク(アーム)を相互に往復動作させることが考えられる。このような機構を採用することで、掃き取り部23を、ディスク部26を挟み、あたかも車のワイパーの様に作動して氷を掃き取るものとすることができる。
【0071】
また、バフ33と、ディスク部26の各板面26a、26bとの間に所定量(例えば1mm以下~数mm程度)の隙間を空け、隙間以上の大きさに成長した氷を掃き取るようにしてもよい。
【0072】
ここで、バフ33のスポーク34への固定は、一般的な種々の方法で行うことができる。そして、固定の方法としては、例えば、接着、ビス止め(ボルト止め)、リベット止め、挟持などを例示できる。
【0073】
なお、バフ33に代えて、
図6(b)に示すように、金属板(金属刃、削り歯)38を用いることも可能である。さらに、金属板38以外に、例えば合成樹脂板なども採用することも可能である。そして、これらの剛体を用いた場合には、
図6(b)に示すように、ディスク部26との間に隙間Hを介在させることが考えられる。このようにすることにより、金属板38等やディスク部26の摩耗を防止することができる。隙間Hについては、例えば1mm以下(0.2mmなど)程度とすることが可能である。
【0074】
また、隙間Hを空けて金属板38等を移動させることにより、
図6(b)に複数の矢印Dで示すように、金属板38等の例えば前後に乱流を発生させることができる。また、図示は省略するが、金属板38等とディスク部26との間の隙間Hにも乱流を発生させることができると考えられる。そして、金属板38等とディスク部26とが接触していなくても、この乱流を利用して氷をディスク部26から分離させることができる。この乱流は、金属板38等をある程度素早く移動させることで発生し易くなる。
【0075】
ここで、金属板38等のスポーク34への固定は、一般的な種々の態様で行うことができる。そして、固定の態様としては、例えば、ビス止め(ボルト止め)、リベット止め、挟持のほか、溶接なども例示できる。
【0076】
なお、バフ33や金属板等は、例えば定期的に取り換えて、メンテナンスすることが可能である。
【0077】
続いて、ディスク部26への冷媒供給方法等について説明する。前述したように、第1冷媒としてR404A等が用いられる。このR404Aの蒸発温度の設定(蒸発温度設定)は-60℃が下限である。また、冷媒ガスとしてR447やR448Aを使用した場合には、蒸発温度を-60℃に設定すると冷却効率が下がるため、実質的な蒸発温度設定としては、-45℃が下限である。
【0078】
凝固点が-37℃や-50℃のエタノール水溶液によるスラリー(エタノール水溶液氷スラリー)を効率よく製造したり、-80℃以下のエタノール水溶液氷スラリーを製造したりするためには、蒸発温度がより低い冷媒を使用すればよい。そして、蒸発温度がより低い冷媒としては、液化天然ガス(蒸発温度が-162℃程度)や、液体窒素(蒸発温度が-196℃程度)を挙げることができる。しかしながら、液化天然ガスや液体窒素は、相対的に高額であるため、コスト削減のためには使用量を可能な限り少なくすることが望ましい。
【0079】
そこで、本実施形態においては、第1冷媒通路29Aで第1冷媒(例えば-45℃)を流動させる。第1冷媒によりディスク部26が冷却され、水溶液Ws(凝固点-38℃)の温度が徐々に下げられる。水溶液Wsが所定の設定温度(例えば-30℃)に達すると、冷凍機14による第1冷媒の供給が停止される。
【0080】
さらに、第2冷媒バルブ20a(
図2)が開放され、第2冷媒通路29Bで、第2冷媒(ここでは液体窒素)が流動する。第2冷媒の流動性は、第2冷媒タンク20の中で気化した窒素ガスの圧力により与えられる。そして、ディスク部26が、第1冷媒よりも蒸発温度が大幅に低い第2冷媒により冷却され、ディスク部26に付着した氷が水溶液Ws中に混合されて、-38℃よりも低温の氷スラリーが製造される。
【0081】
つまり、常温から-30℃までの顕熱部分に係る熱吸収(顕熱吸収)には、第1冷媒が使用され、第1冷却が行われる。さらに、冷媒の切り替えが行われ、それ以上の冷却(潜熱吸収が付加される冷却)に対して、第2冷媒の冷熱が利用されて、第2冷却が行われる。この第2冷却により、低温の氷スラリーが製造される。このため、複数段階(ここでは2段階)に分けた冷却を行うことができ、後段では冷却を加速することが可能となる。このような冷却方式は、例えば「2段階冷却方式」や「2段ロケット方式」などと称することが可能なものである。
【0082】
また、相対的に高価な液体窒素(液化天然ガスなどでもよい)は、第2冷却でのみ使用されるため、顕熱部分の冷却に対しても液体窒素等を使用した場合に比べて、コストを削減できる。
【0083】
なお、本発明は、ディスク部26のような板状の製氷部に限らず、円筒状の製氷部(ドラムタイプ)やその他の種々の形状の製氷部を採用することが可能である。例えば、ドラムタイプとしては、前掲の特許文献2に記載されているような、円筒状の製氷部(特許文献2のドラム21)を、本実施形態の冷却部(
図1の冷却部21に相当)に備え、この製氷部を水溶液(
図1の水溶液Wsに相当)の中に漬けることが可能である。この場合、円筒状の製氷部は、外周面と内周面の両方で、水溶液に接する。
【0084】
円筒状の製氷部には、図示は省略するが、第1冷媒通路と第2冷媒通路が、別系統で形成されている。水溶液の冷却の初期の段階では、第1冷媒通路に、冷凍機(
図1の冷凍機14に相当)により第1冷媒(例えば、蒸発温度が-60℃~-45℃程度のもの)が流される。
【0085】
水溶液の温度が、所定の設定温度(例えば-30℃)に達すると、第1冷媒の供給が停止される。続いて、第2冷媒バルブ(
図2の第2冷媒バルブ20aに相当)が開放され、第2冷媒通路に、第2冷媒(液体窒素など)が流される。そして、円筒状の製氷部が、第1冷媒よりも蒸発温度が大幅に低い第2冷媒により冷却される。このようにすることで、円筒状の製氷部によっても、2段式で高い冷凍能力を発揮することができる。
【0086】
さらに、この他の実施形態として、上述のような円筒状の製氷部に、底部を形成して下端を閉じ、円筒状の製氷部の内側に水溶液を満たして(或いは溜めて)、円筒状の製氷部を水溶液のタンクとして使用するものも考えることができる。
【0087】
また、他の実施形態として、
図1の冷凍槽12に相当するような冷凍槽を、金属を用いて形成し、この冷凍槽の壁内に、第1冷媒通路と第2冷媒通路を形成することも考えられる。この場合も、第1冷媒通路に第1冷媒を流して冷凍槽内の水溶液を冷却し、水溶液の温度が所定の設定温度に達した後に、第1冷媒を停止して第2冷媒に切り替え、さらなる冷却を行うようにすることが可能である。
【0088】
また、本発明は、これまでに説明したような、製氷部を水溶液に浸漬したり、製氷部に水溶液を溜めたりして氷スラリーを製造するものに限らず、例えば、前掲の特許文献1~特許文献3に開示されている各種の製氷部(製氷装置)のように、フレークアイスを製造する製氷装置にも適用することが可能である。
【0089】
この場合も、製氷部に、第1冷媒通路と第2冷媒通路を形成する。製氷部には、例えば霧状にした水溶液(ブライン)を噴き付けて、製氷部に水溶液を接触させる。製氷部の第1冷媒通路に第1冷媒を流して冷凍槽内の水溶液を冷却し、続いて、第1冷媒を停止して第2冷媒に切り替え、更なる冷却を行うようにする。
【0090】
その他、各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0091】
11 氷スラリー製造装置(製氷装置)
14 冷凍機
20 第2冷媒タンク
20a 第2冷媒バルブ
26 ディスク部(製氷部)
29A 第1冷媒通路
29B 第2冷媒通路