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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】配線カバー
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20241223BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
H02G3/04 087
F16L57/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023009158
(22)【出願日】2023-01-25
(65)【公開番号】P2024104797
(43)【公開日】2024-08-06
【審査請求日】2024-06-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596024426
【氏名又は名称】槌屋ティスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162341
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬崎 幸典
(72)【発明者】
【氏名】坂之上 純司
(72)【発明者】
【氏名】磯村 貴之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】大岩 みなも
(72)【発明者】
【氏名】加納 秀紀
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-127694(JP,U)
【文献】特開2001-095127(JP,A)
【文献】意匠登録第1085421(JP,S)
【文献】意匠登録第0378091(JP,S)
【文献】実開昭50-007514(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工現場で手作業で切断可能で、2つの面が交わって入隅部を構成するコーナー部に設置され、前記2つの面の一方の面に沿う底面と前記2つの面の他方の面に沿う側面からなる本体部と、前記本体部を覆い前記本体部よりも柔らかく弾性変形可能な材料で形成された覆い部と、からなり、一端側から他端側に亘って内部に配線を収容する配線収容部と、前記面側にスリット状に形成され前記覆い部に前記配線を押し当てることで前記配線収容部向かって開口し前記配線を挿入可能な配線挿入部と、を備えた、
ことを特徴とする配線カバー。
【請求項2】
前記本体部と前記覆い部のタイプAデュロメータ硬さの差が10以上であり、いずれも前記タイプAデュロメータ硬さがD50以下であり、前記覆い部を押圧して変形させることで前記配線挿入部が開口して前記配線が挿入可能となり、変形した前記覆い部が元の形状に復元して前記配線が前記本体部から外部に露出しない
ことを特徴とする請求項に配線カバー。
【請求項3】
前記配線挿入部は、互いに向かい合う凸部と凹部からなり、前記覆い部が変形していない状態では前記凸部と前記凹部が近接して向かい合っている、
ことを特徴とする請求項2に記載の配線カバー。
【請求項4】
前記本体部は、端部に前記2つの面の少なくとも一方の面と接触するリップ形状を有する、
ことを特徴とする請求項に記載の配線カバー。
【請求項5】
前記本体部と前記覆い部は、硬度の異なる熱可塑性エラストマー樹脂又は軟質樹脂を押し出し成形することにより一体として形成されている、
ことを特徴とする請求項ないしのいずれか1項に記載の配線カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
直角に配置された2枚の帯板状取付基板を側端部において互に連成し、一方の取付基板の側端部に蓋板を開閉自在に連成し、その蓋板の幅寸法が2枚の取付基板の側端部間にわたる長さとされ、その蓋板の側端部と他方の取付基板における側端部の一方に係合溝を設け、他方に上記係合溝に係合可能な突条を形成し、全体を合成樹脂の成形品としたコーナ用配線カバーが知られている(特許文献1)。
【0003】
配線面に設置される底板から一対のケーブル規制板を対向して立ち上げた細長ベース部材と、該細長ベース部材の両ケーブル規制板の外側面間に外嵌めされて同ケーブル規制板の内側面間にケーブル配線腔を形成するようにした細長カバー部材とから成る配線カバーにおいて、上記両ケーブル規制板の内側面間に内嵌めされて同ケーブル規制板の内側面間からのケーブルの逸脱を阻止するケーブル規制バンドを備え、該ケーブル規制バンドの内嵌め後上記細長カバー部材を外嵌めする構成とした配線カバーも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-247820号公報
【文献】特開2002-290070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、現場加工を含めて施工が容易で配線の挿入を容易化するとともに埃の侵入を抑制する配線カバーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1記載の配線カバーは、
施工現場で手作業で切断可能で、2つの面が交わって入隅部を構成するコーナー部に設置され、前記2つの面の一方の面に沿う底面と前記2つの面の他方の面に沿う側面からなる本体部と、前記本体部を覆い前記本体部よりも柔らかく弾性変形可能な材料で形成された覆い部と、からなり、一端側から他端側に亘って内部に配線を収容する配線収容部と、前記面側にスリット状に形成され前記覆い部に前記配線を押し当てることで前記配線収容部向かって開口し前記配線を挿入可能な配線挿入部と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の配線カバーにおいて、
前記本体部と前記覆い部のタイプAデュロメータ硬さの差が10以上であり、いずれも前記タイプAデュロメータ硬さがD50以下であり、前記覆い部を押圧して変形させることで前記配線挿入部が開口して前記配線が挿入可能となり、変形した前記覆い部が元の形状に復元して前記配線が前記本体部から外部に露出しない
ことを特徴とする。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項2に記載の配線カバーにおいて、
前記配線挿入部は、互いに向かい合う凸部と凹部からなり、前記覆い部が変形していない状態では前記凸部と前記凹部が近接して向かい合っている、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の配線カバーにおいて、
前記本体部は、端部に前記2つの面の少なくとも一方の面と接触するリップ形状を有する、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項ないしのいずれか1項に記載の配線カバにおいて、
前記本体部と前記覆い部は、硬度の異なる熱可塑性エラストマー樹脂又は軟質樹脂を押し出し成形することにより一体として形成されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、現場加工を含めて施工が容易で配線の挿入を容易化するとともに埃の侵入を抑制することができる。
【0014】
請求項に記載の発明によれば、配線挿入部を開口しやすくすることができる。
【0015】
請求項に記載の発明によれば、配線挿入部がずれにくく、上方から押圧した際に本体部の底面に押圧力が伝達されやすく底面の圧着力が増加する。
【0016】
請求項に記載の発明によれば、本体部と設置面の間への埃の侵入を抑制することができる。
【0017】
請求項に記載の発明によれば、一体成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る配線カバーの施工例を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る配線カバーの構造を示す断面模式図である。
図3】配線カバーのコーナー部への設置を説明する図である。
図4】配線収容部への配線の収容を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に図面を参照しながら、以下に実施形態及び具体例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0020】
(1)配線カバーの構成
図1は本実施形態に係る配線カバー1の施工例を示す斜視図、図2は本実施形態に係る配線カバーの構造を示す断面模式図である。
以下本実施形態に係る配線カバー1の構成と機能について図面を参照しながら説明する。
【0021】
(配線カバーの全体構成)
図1に示すように、配線カバー1は、一端側から他端側に亘って内部に配線Wを収容する配線収容部10と、配線収容部10に配線Wを挿入可能な配線挿入部20と、を備えて構成されている。
このように構成される配線カバー1は、2つの面(図1において、X、Y)が交わって入隅部を構成するコーナー部Cに設置され、例えば、建物のコーナー部Cに沿って配線される配線Wを内部に収容して配線Wが外部に露出しないように保持する。
【0022】
(配線収容部)
図2に示すように、配線収容部10は、設置されるコーナー部Cの2つの面の一方の面Xに沿う底面11と、2つの面の他方の面Yに沿う側面12からなる本体部10Aと、本体部10Aを覆い本体部10Aよりも柔らかく弾性変形可能な材料で形成された覆い部10Bと、からなる。本体部10Aと覆い部10Bは、硬度の異なる熱可塑性エラストマー樹脂又は軟質樹脂を押し出し成形することにより本体部10Aの底面11及び側面12の一端部11a、12aで繋がって一体として形成されている。
【0023】
本体部10Aは、図2に示すように、底面11と側面12が互いに交差して断面L字型に形成され、側面12には、スリット13が形成されている。スリット13は配線収容部10に配線Wを挿入可能な配線挿入部20となる。
【0024】
底面11の一端部11aには、リップ形状11bが形成されている。リップ形状11bは、断面視で先端部11cが先細りで、例えば本体部10Aの底面11をコーナー部Cの2つの面の一方の面Xに両面テープ等で固定する場合、面Xに弾性的に押し付けられ、底面11側への埃等の侵入を抑制するいわゆるシールの役割を有する。尚、リップ形状は、側面12の一端部12aにも形成してもよい。側面12の一端部12aにもリップ形状12bを形成することで、リップ形状12bが面Yに弾性的に接触して、側面12側への埃等の侵入を抑制するとともに、上方から側面12の内部を不可視にすることができる。
【0025】
覆い部10Bは、図2に示すように、本体部10Aの底面11及び側面12を繋いで覆うように半アーチ状に形成されている。覆い部10Bの一端10Baは本体部10Aの底面11の一端部11aと繋がり、多端10Bbは本体部10Aの側面12の一端部12aと繋がり、本体部10Aに収容される配線Wが本体部10Aから外部に露出しないようになっている。
【0026】
覆い部10Bは、押出成形によって本体部10Aと一体に形成されている。本実施形態においては、本体部10A及び覆い部10Bは硬度の異なる2種類の熱可塑性エラストマー(TPE)を用いて一体として押出し成形され、いずれもJIS K7215に準じた測定によるタイプDデュロメータ硬さがD50以下で、覆い部10Bは、本体部10Aに比べてタイプDデュロメータ硬さが10以上低い熱可塑性エラストマー(TPE)又は軟質樹脂で成形されている。
【0027】
このような樹脂材料としては、ポリスチレンエラストマー、ポリスチレン、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンエラストマー、ポリウレタン、ポリエステルエラストマー、ポリエステル、ポリアミドエラストマー、ポリアミド等の材料からなり、タイプDデュロメータ硬度計による測定値Dスケール硬さが40以下の樹脂材料が使用可能である。本実施形態では、Dスケール硬さが40以下のポリウレタンエラストマー又は軟質ポリ塩化ビニル樹脂が使用されている。Dスケール硬さが40を超えると、覆い部10Bが変形しにくくなり、配線Wを配線挿入部20から配線収容部10へ挿入しにくくなる虞がある。
【0028】
(配線挿入部)
配線挿入部20は、本体部10Aの側面12にスリット13として形成されている。配線挿入部20は、本体部10Aに比べてタイプDデュロメータ硬さが10以上低い熱可塑性エラストマー(TPE)又は軟質樹脂で成形された覆い部10Bを変形させることでスリット13が開口して配線Wが挿入可能となる。
【0029】
スリット13は、図2に示すように、互いに向かい合う凸部13Aと凹部13Bからなり、覆い部10Bが変形していない状態では、凸部13Aと凹部13Bは近接して向かい合っている。これにより、配線挿入部20ずれにくく、本体部10Aを上方から押圧した際に、凸部13Aと凹部13Bが噛み合うように接触することで本体部10Aの底面11に押圧力が伝達されやすく、本体部10Aの底面11を面Xに例えば両面テープ等で貼り付ける場合の圧着力が増加する。
【0030】
(2)配線カバー1の製造方法
本実施形態に係る配線カバー1は、本体部10Aを形成する熱可塑性エラストマー樹脂及び覆い部10Bを形成する本体部10Aに比べてタイプDデュロメータ硬さが10以上低い熱可塑性エラストマー樹脂による2色押出成形により成形される。
【0031】
押出し加工による成形方法としては特に限定されないが、一例としては、以下のように押出し成形して作成することができる。
まず、本体部10Aを形成する熱可塑性エラストマー樹脂及び覆い部10Bを形成する熱可塑性エラストマー樹脂を180°Cないし230°Cで加熱混練して溶融し、ろ過フィルタを通した後、180°Cないし230°Cに加熱された金型ダイス吐出口より同時に溶融押出しし、冷却固化させる。これにより、本体部10Aの底面11の一端部11a及び側面12の一端部12aと覆い部10Bが繋がって一体となった配線カバー1を得る。
【0032】
(3)配線カバーの設置
図3は配線カバー1のコーナー部Cへの設置を説明する図、図4は配線収容部10への配線Wの収容を説明する図である。
配線カバー1は、必要な長さに切断され、2つの面X、Yが交わって入隅部を構成するコーナー部Cの一方の面Xに両面テープ等で接着して設置される。本実施形態に係る配線カバー1は、JIS K7215に準じた測定によるタイプDデュロメータ硬さがD50以下の熱可塑性エラストマー樹脂を材料として押出し成形されているために、硬質の合成樹脂製に比べて、施工現場でハサミやカッター等で切断しやすく施工が容易となっている。
【0033】
必要な長さに切断された配線カバー1は、底面11を両面テープ等の接着剤ADでコーナー部Cの一方の面Xに固定される。図3に示すように、本体部10Aの側面12には配線挿入部20が互いに向かい合う凸部13Aと凹部13Bからなるスリット13として形成され、凸部13Aと凹部13Bは、覆い部10Bが変形していない状態では、近接して向かい合っている。これにより、本体部10Aを上方から押圧する(図中 矢印F参照)ことで、凸部13Aと凹部13Bが噛み合うように接触して底面11に押圧力が伝達され(図中 矢印R参照)、本体部10Aをコーナー部Cに強固に固定することができる。
【0034】
図4(a)に示すように、コーナー部Cに固定された配線カバー1の覆い部10Bの上面10Bcに配線Wを押し当てると、覆い部10Bは、本体部10Aに比べてタイプDデュロメータ硬さが10以上低い熱可塑性エラストマーで形成されているために容易に変形して、図4(b)に示すように、配線挿入部20が大きく開口し、本体部10A内に配線Wが収容される。本体部10A内に配線Wを収容した配線カバー1は、図4(c)に示すように、変形した覆い部10Bが元の形状に復元して配線Wが本体部10Aから外部に露出しないようになる。
【0035】
(4)配線カバー1の作用効果
・配線カバー1の本体部10A及び覆い部10Bは、硬度の異なる2種類の熱可塑性エラストマー(TPE)を用いて押出し成形され、いずれもJIS K7215に準じた測定によるタイプDデュロメータ硬さがD50以下で、覆い部10Bは、本体部10Aに比べてタイプDデュロメータ硬さが10以上低い熱可塑性エラストマー(TPE)又は軟質樹脂で一体成形されている。これにより、現場加工を含めて施工が容易で配線Wの挿入を容易化している。
・配線挿入部20は、本体部10Aの側面12にスリット13として形成され、本体部10Aに比べてタイプDデュロメータ硬さが10以上低い熱可塑性エラストマー(TPE)又は軟質樹脂で成形された覆い部10Bを変形させることでスリット13が開口して配線Wが挿入可能となる。配線Wの挿入後は、覆い部10は容易に元の形状に復元し、配線Wが本体部10Aから外部に露出しないようになる。
・配線挿入部20となるスリット13は、互いに向かい合う凸部13Aと凹部13Bからなり、覆い部10Bが変形していない状態では、凸部13Aと凹部13Bは近接して向かい合っている。これにより、配線挿入部20がずれにくく、上方から押圧した際に、凸部13Aと凹部13Bが噛み合うように接触することで本体部10Aの底面11に押圧力が伝達されやすく底面11の圧着力が増加する。
・本体部10Aの底面11の一端部11aにはリップ形状11bが形成され、底面11側への埃等の侵入を抑制する。側面12の一端部12aにもリップ形状12bを形成することで、側面12側への埃等の侵入を抑制するとともに、上方から側面12の内部を不可視にすることができる。
【0036】
以上、本発明に係る実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で種々の変更を行うことが可能である。例えば、覆い部10Bをコーナー部Cと同一色の材料で押出し成形してもよい。覆い部10Bをコーナー部Cと同色とすることで配線Wの施設を目立たなくすることができる。また、覆い部10Bを透明材とすることで、内部に収容した配線Wを目視可能とすることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1・・・配線カバー
10・・・配線収容部
10A・・・本体部、11・・・底面、12・・・側面
10B・・・覆い部
20・・・配線挿入部
13・・・スリット
W・・・配線、C・・・コーナー部
図1
図2
図3
図4