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特許7607988付属軸流ファンを備えるロータ及び軸流換気装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】付属軸流ファンを備えるロータ及び軸流換気装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/32 20060101AFI20241223BHJP
【FI】
F04D29/32 B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023580962
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 IB2022054662
(87)【国際公開番号】W WO2022254276
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】102021000014219
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523451554
【氏名又は名称】アール・イー・エム・パテンツ・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】R.E.M. PATENTS S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】モシェヴィチュ,ロベルト エドゥアルド
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/245674(WO,A1)
【文献】実公昭43-011173(JP,Y1)
【文献】特開2019-060296(JP,A)
【文献】特開昭58-023296(JP,A)
【文献】実開昭53-081410(JP,U)
【文献】実開昭59-017297(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/32
F04D 19/00
F04D 25/16
F04D 29/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ(24)とn枚のブレード(26)とを備える産業用の軸流換気装置(22)のロータ(20)であって、
前記ロータ(20)の各ブレード(26)は、前記ハブ(24)への構造的接続のための根元部分(28)と、空気力学的部分(30)とを備え、
前記ロータ(20)の回転軸上に、半径方向に延びる前記ブレード(26)よりも小型のn枚の羽根(34)を備える付属軸流ファン(32)が更に設けられ
前記付属軸流ファンは、軸方向から見て実質的に前記ロータ(20)の前記ブレード(26)の前記空気力学的部分(30)の半径方向の内側端部によって画定される領域P内に構成され、
前記付属軸流ファン(32)は、軸方向において前記ハブ(24)の下流側または上流側に配置され、
前記ロータ(20)と前記付属軸流ファン(32)とは、軸方向から見た前記ブレード(26)に対する前記羽根(34)の相対的な角度位置を一定に保持しながら回転可能に設けられている、
ロータ(20)。
【請求項2】
前記軸方向から見て、前記付属軸流ファン(32)は、前記領域P内に内接する、請求項1に記載のロータ(20)。
【請求項3】
前記付属軸流ファン(32)は、前記n枚の羽根(34)が半径方向に延びる中央部分(42)を備える、請求項1又は2に記載のロータ(20)。
【請求項4】
前記付属軸流ファン(32)は、独立したn枚の羽根(34)を前記ロータ(20)に直接取り付けることによって得られる、請求項1又は2に記載のロータ(20)。
【請求項5】
前記付属軸流ファン(32)の前記羽根(34)の半径方向伸長部(B)は、前記付属軸流ファン(32)の半径d/2の60%から75%の間に構成される、請求項1又は2に記載のロータ(20)。
【請求項6】
前記付属軸流ファン(32)の前記羽根(34)の半径方向伸長部(B)は、前記付属軸流ファン(32)の半径d/2の65%から70%の間に構成される、請求項1又は2に記載のロータ(20)。
【請求項7】
前記付属軸流ファン(32)の前記羽根(34)の軸方向伸長部(a)は、前記付属軸流ファン(32)の直径dの20%以内に構成される、請求項1又は2に記載のロータ(20)。
【請求項8】
前記付属軸流ファン(32)の前記羽根(34)の軸方向伸長部(a)は、前記付属軸流ファン(32)の直径dの5%から15%の間に構成される、請求項1又は2に記載のロータ(20)。
【請求項9】
前記付属軸流ファン(32)の前記羽根(34)は、前記ハブ(24)への構造的接続のための根元部分(54)と、空気力学的部分(56)とを備える、請求項1又は2に記載のロータ(20)。
【請求項10】
前記付属軸流ファン(32)は、一体のモノリシック部品で構成される、請求項1又は2に記載のロータ(20)。
【請求項11】
前記付属軸流ファン(32)の各羽根(34)の厚さtは、前記羽根(34)の伸長部の全体にわたって実質的に均一である、請求項1又は2に記載のロータ(20)。
【請求項12】
前記付属軸流ファン(32)の前記羽根(34)の厚さtは、前記付属軸流ファン(32)の前記羽根(34)の軸方向伸長部(a)の10%から20%の間に構成される、請求項1又は2に記載のロータ(20)。
【請求項13】
少なくとも1つの前記ブレード(26)は、半径方向外側端部にウイングレット(36)を備え、前記ウイングレット(36)は、前記軸方向及び周方向に延びるバッフル(44)を備える、請求項1に記載のロータ(20)。
【請求項14】
請求項1に記載のロータ(20)とモータ(46)とを備える産業用の換気装置(22)。
【請求項15】
前記ロータ(20)を取り囲むダクト(48)を更に備える、請求項14に記載の産業用の換気装置(22)。
【請求項16】
前記ダクト(48)は、前記ロータ(20)の周囲を周方向に延び、前記ロータ(20)の前記ブレード(26)の外側端部を部分的に収容する環状座部(50)を備える、請求項15に記載の産業用の換気装置(22)。
【請求項17】
請求項13に記載のロータ(20)と、モータ(46)と、前記ロータ(20)を取り囲むダクト(48)と、を備え、前記ダクト(48)は、前記ロータ(20)の周囲を周方向に延び、前記ロータ(20)の前記ブレード(26)の外側端部を部分的に収容する環状座部(50)を備え、前記環状座部(50)は、少なくとも部分的に軸方向に延び、前記ウイングレット(36)によって画定された前記バッフル(44)を部分的に収容する、産業用の換気装置(22)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流換気装置、特に産業用の大径の軸流換気装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
産業分野では、大量の熱の放散を必要とするプラントにおいて、特殊な放射面の周囲に適切な気流を確保するために軸流換気装置が使用されることが知られている。
【0003】
例えば産業用の軸流換気装置は、複数のブレードが取り付けられた中央ハブを備えている。ハブは、ブレードを回転させる軸を画定する。各ブレードは、通常、根元部分と、空気力学的と呼ばれる部分、すなわち翼形状の部分とを備えている。根元部分は、ブレードをハブに拘束するという純粋に構造的な機能を有し、空気力学的部分は、空気と相互作用するという機能を有する。当業者ならよく理解できるように、接線速度は、ブレード部分によって異なる。実際、各ブレード部分の接線速度は、角速度(全ての部分で同じ)と回転軸に対する半径方向の距離(回転軸から離れるほど大きくなる)との積である。
【0004】
このため、当業者には知られているように、軸流換気装置のブレードは、その半径方向開口部全体にわたって等しく効果的に動作するわけではない。ブレードの半径方向最内部分の接線速度は、気流に対して効果的な相対運動を行うには低すぎると考えられることが多い。従って、換気装置の実際の動作は、軸流換気装置が発生させる空気流のほぼ全体を確保する半径方向外側部分に主に依存することになる。
【0005】
単一のブレードに当たる流線は、理論的には、中心が回転軸に一致する円弧である。しかしながら、このような理論的な流線の傾向は、ブレードの中央部分においてのみ現実に反映される。これに対して、ブレードの半径方向内側端部と半径方向外側端部とでは、以下に簡単に記載するように、いわゆる端部効果によって流線が変化する。
【0006】
ブレードの中間部分に沿って、高圧空気ゾーンと低圧空気ゾーンとは、ブレード自体の存在によって互いに物理的に分離されている。ブレードの端部では、この分離が存在しなくなるため、気流が、自然に発生し、高圧ゾーンから低圧ゾーンに移動する傾向がある。これにより、換気装置の効率を著しく制限する端部の渦が発生する。更に、端部の渦は、周囲の空気を吸い込み、流線に変化をもたらす。このような変化は、外側端部と内側端部との両方からブレードの中央部分に向かって広がり、ブレードの半径方向伸長部の全体のかなりの割合に影響を及ぼす。このため、多くの公知の軸流換気装置では、ブレードの大部分が理論的な流線によって表される最適動作点から離れて動作する。
【0007】
ブレードの半径方向外側端部は、前述のようにブレードの全体的な空気力学的な働きに最も寄与する部分に隣接しているため、端部効果の問題は、半径方向外側端部に対して対処されることが多い。
【0008】
外側端部における渦の影響を打ち消すために提案された初期の解決策は、換気装置を内管化し、換気装置自体の外径よりも僅かに大きな直径を有する管内に閉じ込めることであった。このような管を以下ダクトと呼ぶ。
【0009】
ダクトの追加により、外側端部の渦の大きさが大きく減少し、その渦によって移動する空気の量及び誘導抵抗が減少する。しかしながら、ブレードの外側端部とダクトの内径との間の距離をなくすことは不可能であるだけでなく、そのような距離をある限界以上に縮めることさえもできない。
【0010】
航空学から拝借した別の解決策は、各ブレードの外側端部にウイングレットと呼ばれる付属面を設けることである。ウイングレットの主な機能は、空気の動きに対抗する壁を形成し、端部の渦の形成を打ち消すことである。更に、採用された形状によっては、ウイングレットは、残留する端部の渦にも影響を与え、それを最適化することで、騒音の発生を抑えることができる。
【0011】
更なる解決策が、同じ出願人による国際公開第2020/245674号に記載されている。このような解決策(以下、略して「環状座部」と呼ぶ)を以下に簡単に説明するが、より詳細な説明については、同出願人による国際公開第2020/245674号を参照されたい。このような解決策に従って、ダクトの内壁に環状座部が設けられ、当該環状座部は、換気装置のロータの周囲を周方向に延び、ブレードの外側端部を部分的に収容する。具体的には、環状座部は、軸方向に開口しており、各ブレードの端部に取り付けられたウイングレットによって画定された軸方向バッフルがその中を通る。この特殊な構成は、ブレードの外側端部の周りの空気の動きを効果的に打ち消す一種の迷路を画定する。したがって、環状座部は、換気装置の全体の効率という点でかなりの利点を意味する。
【0012】
ブレードの半径方向内側端部に関しては、空気の再循環を物理的に阻止する障害物を介在させる試みとして、ハブの領域に配置する平坦なディスクの使用が提案されている。
【0013】
国際公開第2014/117288号には、付属遠心ファンを備える軸流換気装置用のロータが記載されている。付属遠心ファンは、ロータの中心に、それと同軸に取り付けられている。このような解決策において、付属遠心ファンは、端部効果による再循環を打ち消す目的で、ロータのブレードの半径方向内側端部に当たる半径方向外向きの気流を発生させる。
【0014】
広く評価されているが、上述した公知の解決策に欠点がないわけではない。実際、ブレードの半径方向外側端部における渦の問題に対処するための上述の様々な解決策と比較して、半径方向内側端部における渦の問題に対処するための提案は、今日まで知られていない。おそらく、ブレードの半径方向内側領域の空気力学的な寄与があまり認識されていないため、設計者は、常に、この領域に介入しても換気装置の全体的な挙動に特筆すべき結果は得られないと考えてきたのであろう。
【0015】
更に、実験では、ハブ部分に平坦なディスクを追加しても、換気装置の効率に実質的なメリットがないことが示されている。
【0016】
従って、渦の観点でロータの半径方向内側領域の挙動が改善された産業用の軸流換気装置の必要性が感じられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の目的は、従来技術との関連において上記で強調した欠点を克服することにある。
【0018】
具体的には、本発明の課題は、効率が改善された軸流換気装置を提供することにある。
【0019】
更に、本発明の課題は、公知のタイプの換気装置に対して、同じ速度でより高い圧力を発生させることができる軸流換気装置を提供することにある。
【0020】
更に、本発明の課題は、公知のタイプの換気装置に対して、端部の渦の形成をより制限する軸流換気装置を提供することにある。
【0021】
また、本発明の課題は、流線を理論的に予測される流線にできる限り近づけることによって規則性を持たせることができる軸流換気装置を提供することである。
【0022】
最後に、本発明の課題は、更なる利点を導入するだけでなく、公知のタイプの換気装置によって既に達成されている利点を維持するダクト付き軸流換気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明のこれら及びその他の目的及び課題は、請求項1に記載のロータ及び請求項10に記載の換気装置によって達成される。更なる特徴は、従属請求項において特定される。全ての添付の特許請求の範囲は、本明細書の不可欠な部分を形成する。
【0024】
第1態様によれば、本発明は、産業用の大径の軸流換気装置用のロータに関する。当該ロータは、ハブとn枚のブレードとを備え、ロータの各ブレードは、ハブへの構造的接続のための根元部分と、空気力学的部分とを備える。ロータは、半径方向に延びるn枚の羽根を備える付属軸流ファンを更に備える。付属軸流ファンは、軸方向から見て実質的にロータのブレードの空気力学的部分のn個の半径方向内側端部によって画定される領域P内に構成される。
【0025】
付属軸流ファンの存在は、ロータの半径方向内側領域における速度及び圧力の範囲を安定させるので、ロータの働きが良くなり、換気装置の全体的効率が向上する。
【0026】
好ましくは、軸方向から見て、付属軸流ファンは、領域P内に内接する。このような特徴により、付属軸流ファンとロータとの間に干渉をもたらすことなく、領域Pの拡張を最大限に利用することができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、付属軸流ファンは、n枚の羽根が半径方向に突出する中央部分を備える。他の実施形態において、付属軸流ファンは、n枚の羽根をロータのハブに直接取り付けることによって得られる。
【0028】
いくつかの実施形態において、付属軸流ファンは、単一のモノリシック部品で構成される。いくつかの実施形態において、付属軸流ファンの羽根は、ハブへの構造的接続のための根元部分と、空気力学的部分とを備える。
【0029】
付属軸流ファン及び各羽根のこれらの異なる実施形態により、付属軸流ファンを異なる要件に最適に適合させることができる。
【0030】
好ましくは、付属軸流ファンの羽根の半径方向伸長部は、付属軸流ファンの半径の60%から75%の間に構成され、更に好ましくは、付属軸流ファンの半径の65%から70%の間に構成される。
【0031】
好ましくは、付属軸流ファンの羽根の軸方向伸長部は、付属軸流ファンの直径の20%以内に構成され、更に好ましくは5%から15%の間に構成される。
【0032】
好ましくは、付属軸流ファンの各羽根の厚さは、羽根の伸長部の全体にわたって実質的に均一である。好ましくは、付属軸流ファンの羽根の厚さは、付属軸流ファンの羽根の軸方向伸長部の10%から20%の間に構成される。
【0033】
実施された実験に基づき、付属軸流ファンのこれらの割合は、ロータの全体的効率を高めるという観点で特に好ましい結果を達成する。
【0034】
ロータのいくつかの実施形態において、少なくとも1つのブレードは、半径方向外側端部にウイングレットを備え、ウイングレットは、軸方向及び周方向に延びるバッフルを備える。
【0035】
第2態様に従って、本発明は、上記ロータとモータとを備える産業用の換気装置に関する。
【0036】
いくつかの実施形態において、換気装置は、ロータを取り囲むダクトを更に備える。好ましくは、ダクトは、ロータの周囲を周方向に延び、ロータのブレードの外側端部を部分的に収容する環状座部を備える。好ましくは、環状座部は、少なくとも部分的に軸方向に延び、ウイングレットによって画定されたバッフルを部分的に収容する。
【0037】
このような換気装置の構成は、付属軸流ファンにより半径方向内側領域の速度及び圧力の範囲を安定させ、バッフルを収容する環状座部により半径方向外側領域の速度及び圧力の範囲を安定させる。これにより、換気装置は、最良の状態で動作し、全体的効率が向上する。
【0038】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付図面の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明は、非限定的な例として提供され、添付の図面に図示された特定の実施例を参照して以下に説明される。これらの図面は、本発明の異なる態様及び実施形態を示し、異なる図面における構造、構成要素、材料、及び/又は同様の要素を示す参照数字は、適切な場合、同様の参照数字によって示される。更に、図示を明瞭にするために、特定の参照は、全ての図面において繰り返されない場合がある。
【0040】
図1】従来技術に係る産業用の軸流換気装置のアイソノメトリック図である。
図2図1の線II-IIに沿ってもたらされた断面の概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る産業用の軸流換気装置のアイソノメトリック図である。
図4図3の線IV-IVに沿ってもたらされた断面の概略図である。
図5】本発明の実施形態に係る3枚ブレード換気装置のロータのアイソノメトリック図である。
図6】本発明の実施形態に係る3枚ブレード換気装置のロータのアイソノメトリック図である。
図7】本発明の実施形態に係る4枚ブレード換気装置のロータのアイソノメトリック図である。
図8】本発明の実施形態に係るロータでの使用を意図した3枚羽根付き属軸流ファンの平面図である。
図9図8の付属軸流ファンのアイソノメトリック図である。
図10】本発明の実施形態に係るロータでの使用を意図した4枚羽根付属軸流ファンの平面図である。
図11図10の付属軸流ファンのアイソノメトリック図である。
図12図5のロータと同様のロータの中央細部の平面図である。
図13図7のロータと同様のハブと付属軸流ファンとを備える組立体の分解アイソノメトリック図である。
図14図13の組立体の平面図である。
図15】本発明の実施形態に係る5枚ブレード換気装置のロータの平面図である。
図16図15のXVIで示された細部の拡大図である。
図17】本発明の別の実施形態に係る5枚ブレード換気装置のロータの平面図である。
図18図17のXVIIIで示された細部の拡大図である。
図19】本発明の実施形態に係るロータでの使用を意図した4枚羽根付属軸流ファンのアイソノメトリック図である。
図20】本発明の実施形態に係るロータでの使用を意図した他の4枚羽根付属軸流ファンのアイソノメトリック図である。
図21図7のロータと同様のロータの中央細部を示す平面図である。
図22a】単独でロータブレードに取り付けられた、本発明の実施形態に係る付属軸流ファンの羽根の一実施形態を示す平面図である。
図22b】単独でロータブレードに取り付けられた、本発明の実施形態に係る付属軸流ファンの羽根の一実施形態を示す平面図である。
図23】本発明の実施形態に係るロータの中央細部の平面図であって、理論的な流線と実際の流線とが概略的に強調されている図である。
図24】従来技術に係る換気装置及び本発明に係る換気装置の特性曲線が概略的に示された流量-圧力の図である。
図25】従来技術に係る2つの換気装置及び本発明に係る2つの換気装置の特性曲線が概略的に示された流量-効率の図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、様々な修正及び代替構造の影響を受け得るが、特定の好適な実施形態が図面に示され、以下に詳細に説明される。いずれも、本発明を図示された特定の実施形態に限定する意図はなく、逆に、本発明は、特許請求の範囲に定義された本発明の範囲内に入る全ての変更、代替、及び同等の構造をカバーすることを意図していることを理解されたい。
【0042】
本明細書は、本発明の特有の技術的側面及び特徴を詳細に取り上げるが、公知の側面及び技術的特徴自体は言及することしかできない。これらの点で、従来技術を参照して上述したことは有効である。
【0043】
「例えば」、「等」、「又は」の使用は、特に断らない限り、限定しない非排他的な選択肢を示す。「備える(comprises)」及び「含む(includes)」の使用は、特に断らない限り、「備える(comprises)又は含む(includes)であるが、これらに限定されない」ことを意味する。
【0044】
本発明の軸流換気装置は、「軸方向」、「半径方向」、「円周方向」、及び「接線方向」という用語が一義的に定義される回転軸を規定する。更に、本発明の軸流換気装置は、「下流」、「後」などの用語とは対照的に、「上流」、「前」などの用語が一義的に定義される気流を生成するように構成される。
【0045】
本発明の一態様は、公知の大型換気装置のロータに取り付けることを意図とした小型付属軸流ファンに関する。曖昧さを避けるため、以下、本発明のファンをファンと呼び、公知の大型換気装置を換気装置と呼ぶ。
【0046】
第1態様によれば、本発明は、産業用の大径の軸流換気装置22のためのロータ20に関する。本発明に係るロータ20は、ハブ24とn枚のブレード26とを備える。ロータ20の各ブレード26は、ハブ24への構造的接続のための根元部分28と、空気力学的部分30とを備える。本発明に係るロータ20は、半径方向に延びるn枚の羽根34を備える同軸付属軸流ファン32を更に備える。この羽根は、軸方向から見て実質的にロータ20のブレード26の空気力学的部分30のn個の半径方向内側端部によって画定される領域P内に構成される。
【0047】
添付の図面の実施形態によれば、軸方向から見て又は平面図において、ブレード26の空気力学的部分30の半径方向内側端部は、直線状であり且つ接線方向に向いている。このため、このような実施形態において、空気力学的部分30のn個の半径方向内側端部によって画定される領域Pは、n個の辺を有する多角形領域であり、各辺は、翼弦C、その一部又はその伸長部によって画定される。したがって、このような実施形態において、領域Pは、n個の辺を有する正多角形の形態を採る。この点に関しては、図12図15図18、及び図21を参照されたい。ブレード26の空気力学的部分30の半径方向内側端部が異なる形状を採る本発明の他の実施形態によれば、領域Pは、順に異なる形状を採る。一般的に、領域Pは、中心対称性を有する規則的な形状を採り、円に内接することができる。
【0048】
以下において、大径の換気装置22とは、直径が80cm以上、好ましくは150cm以上の換気装置22を意味する。後述する特定の技術的特徴に関連して、本発明が関連する大径の換気装置22の文脈における、直径が約5m未満のいわゆる小型の換気装置と、直径が約5mを超えるいわゆる大型の換気装置との区別について言及する。
【0049】
ロータ20のブレード26は、それ自体公知の構造を有し、純粋に構造的な機能を果たす根元部分28と、気流と相互作用する空気力学的な機能を果たす空気力学的部分30とを備える。根元部分28は、ブレード26をハブ24に接続する役割を果たし、ハブ24から空気力学的部分30へ、またその逆も同様に、応力を効果的に伝達できるような寸法になっている。ブレード26の空気力学的機能は、翼形状の空気力学的部分30によってのみ果たされる。空気力学的部分30は、半径方向内側端部と半径方向外側端部とを備え、好ましくは、以下に更に説明するウイングレット36を備える。
【0050】
ブレード26の空気力学的部分30は、特定の要求に応じて、金属材料(典型的にはアルミニウム)又は複合材料(典型的にはエポキシマトリックス中のガラス繊維)で作成することができる。好ましくは、空気力学的部分30は、例えば(空気力学的部分が金属材料で作成されている場合には)押出成形又は(空気力学的部分が複合材料で作られている場合には)引抜成形によって得られる一定の断面を有する1以上の半製品から得られる。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、空気力学的部分30は、半径方向内側端部から半径方向外側端部まで、半径方向開口部の全体に沿って一定の翼弦を有する。しかしながら、他の実施形態によれば、ブレード26は、予め決められた位置から外側に向かって先細りになっている(図1図6参照)。この場合、半径方向内側端部の翼弦は、半径方向外側端部の翼弦よりも大きい。以下では、特に断らない限り、ブレード26を指す「翼弦」という用語は、半径方向内側端部の翼弦Cとして理解される(図12参照)。実施形態によって、Cは、100mmから1000mmの間、好ましくは150mmから800mmの間で変化し得る。
【0052】
ハブ24(特に図13参照)は、通常、中央部分38と、ブレード26の根元部分28を接続できるように構成されたn個の取付部40とを備える。いくつかの実施形態において、取付部40は、ハブ24の中央部分38から半径方向に突出しているが(例えば図13及び図14参照)、他の実施形態において、取付部40は、ハブ24に一体化されている(例えば図19及び図20参照)。
【0053】
好ましくは、各取付部40と対応する根元部分28との協働により、ブレード26のピッチ角θ(又は入射角)を調整することができ、すなわち、ピッチ変化の各半径方向軸の周囲で各ブレード26の向きを変えることができる。しかしながら、ほとんど全ての場合(特に添付の図面に示す場合)において、本発明のロータ20は、換気装置22の動作中に効果的なピッチ変化を許容しないことに留意すべきである。以下において、ピッチ変化とは、技術者が行うメンテナンス作業として、換気装置22の停止中にのみ実施可能なブレード26の再構成を意味する。
【0054】
ロータ20は、回転軸Rを画定する。添付の図1図3、及び図5図7において、回転軸Rは、換気装置22によって生成される軸方向気流の全体方向を示すように方向付けられている。既に述べたように、「前」、「上流」等の表現は、「後」、「下流」等とは対照的に、気流の方向に従って一意に定義される。
【0055】
上述したように、本発明に係るロータ20は、同軸の付属軸流ファン32を備え、すなわち、ロータ20のハブ24の回転軸Rと幾何学軸を共有するように取り付けられている。
【0056】
付属軸流ファン32は、ロータ20のn枚のブレード26に等しいn枚の羽根34を備える。例えば、ロータ20が3枚のブレード26を備える場合、付属軸流ファン32は、3枚の羽根34を備える(例えば、図3図6参照)。ロータ20が4枚のブレード26を備える場合、付属軸流ファン32は、4枚の羽根34を備える(例えば、図7及び図21参照)。ロータ20が5枚のブレード26を備える場合、付属軸流ファン32は、5枚の羽根34を備える(例えば、図15図18参照)。
【0057】
上述したように、本発明に係るロータ20の軸方向から見て又は平面図において、付属軸流ファン32は、ロータ20のブレード26の空気力学的部分30のn個の半径方向内側端部によって画定される領域P内に実質的に構成される。好ましくは、同じ軸方向から見て又は平面図において、付属軸流ファン32は、全体が領域P内に構成されている。特に図12及び図15図18を参照すると、付属軸流ファン32は、領域P内に内接しており、これは、付属軸流ファン32の半径方向外側端部が領域Pの周囲に位置することを意味する。
【0058】
しかしながら、本議論の文脈において、「実質的に構成される」という用語は、より広い意味を有し、これについては、特に図21を参照して以下でより詳細に説明する。「実質的に構成される」という表現は、付属軸流ファン32の半径方向外側端部が測定値fだけ領域Pから突出してもよく、測定値fは付属軸流ファン32自体の直径dの5%未満であることを意味する。
【0059】
換気装置22がいわゆる小型のタイプ(すなわち、約5メートル未満の直径を有する)である本発明のいくつかの実施形態によれば、軸方向から見て、付属軸流ファン32の羽根34は、開角βの扇形状(例えば、図3図14を参照)を有する。付属軸流ファン32の各羽根34の開角βと、2枚の隣接する羽根34の間の角距離γとの合計は、簡単なルールに従って羽根34の数に依存する。
【0060】
β+γ=360°/n
【0061】
いくつかの実施形態によれば、羽根34の開角βは、2枚の隣接する羽根34間の角距離γに等しい。
【0062】
β=γ
【0063】
上記2つの関係から、各ファン羽根34の開角βは、次の簡単なルールに従って羽根34の数に依存する。
【0064】
β=360°/2n
【0065】
例えば、3枚の羽根34を有する場合、開角βは60°となり、次の2枚の羽根34間の等しい角度γが確保される。4枚の羽根34を有する場合、開角βは45°となる。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、付属軸流ファン32は、好ましくは円筒形の中央部分42を備えている。中央部分42からn枚の羽根34が半径方向に突出している。好ましくは、軸方向から見て、付属軸流ファン32の中央部分42の特徴的な寸法は、ロータ20のハブ24の中央部分38の対応する特徴的寸法に等しい。中央部分38及び42の両方が円筒形である添付の図面の実施形態において、軸方向から見た特徴的寸法は、それぞれの半径又は直径とすることができる。具体的には、付属軸流ファン32の中央部分42の直径は、ロータ20のハブ24の中央部分38の直径に等しい(図13及び図14参照)。
【0067】
他の実施形態によれば、付属軸流ファン32は、n枚の羽根34をロータ20に直接取り付けることによって得られる。例えば(図19及び図20参照)、付属軸流ファン32は、n枚の羽根34を直接取り付けることによって得ることができる。また(図22a及び図22b参照)、付属軸流ファン32の各羽根34は、ブレード26の空気力学的部分30の半径方向内側端部に取り付けられてもよい。例えば、各羽根34は、空気力学的部分30の半径方向内側端部を閉じるために通常使用されるキャップ29に取り付けられてもよい。このような実施形態によれば、羽根34は、独立した部品として作成され、その後、付属軸流ファン32がロータ20に直接取り付けられるように組み立てられてもよい。
【0068】
上述したように、付属軸流ファン32の羽根34は、半径方向に延びている。言い換えれば、羽根34は、付属軸流ファン32の中央部分42から又はハブ24の中央部分42から、少なくとも部分的に半径方向外側に延びている。
【0069】
好ましくは、付属軸流ファン32の羽根34の半径方向伸長部B(すなわち、付属軸流ファン32の直径dとハブ24の中央部分38の直径(又は存在する場合には付属軸流ファン32の中央部分42の直径)との差の半分;図12参照)は、付属軸流ファン32の半径d/2の60%と75%との間に構成され、更により好ましくは、伸長部Bは、付属軸流ファン32の半径d/2の65%と70%との間に構成される。
【0070】
図8図11に示すようないくつかの実施形態によれば、付属軸流ファン32は、単一のモノリシック部品で作成することができる。このような実施形態は、一般的に、本発明の範囲に対して比較的に小さいロータ20、例えば直径が5メートルより小さいロータ20にとって好ましい。これらの場合、実際、付属軸流ファン32の直径dは、家庭用の卓上換気装置、自動車分野の熱機関の冷却回路や空気調和機の外部ユニットに使用される換気装置などの、公知のタイプの他の小型換気装置の直径に匹敵する。言い換えれば、これらの場合、付属軸流ファン32の直径dは、当業者が既に習得している知識を用いて単一部品で作成することができるように十分に小さい。モノリシックな付属軸流ファン32は、例えば、板金の成形、射出成形、又は適切なポリマーの3D印刷によって作成することができる。
【0071】
図15図18のようないくつかの実施形態によれば、付属軸流ファン32は、ロータ20に使用されるものと同様の技術を使用して作成することができる。言い換えれば、付属軸流ファン32の羽根34は、ハブ24又は中央部分42への構造的接続のための根元部分54と、空気力学的部分56とを備える。このような実施形態は、一般的に、比較的大型のロータ20を対象とした、例えば、5メートルを超える直径を有するロータ20を対象とした付属軸流ファン32にとって好ましい。これらの場合、付属軸流ファン32の直径dは、ロータ20自体に使用される製造技術を利用できるほど十分に大きい。
【0072】
約5メートル以内の直径を有する換気装置22に関して、付属軸流ファン32における各羽根34の開角βは、隣接する羽根34に対する角距離γに等しいことが好ましい。この特定の構成は、中央部分42を除いた平面図において、固体と空隙との比が約1であることを意味する。言い換えれば、羽根34によって占められる面積は、羽根34の枚数に関わらず、羽根34間の空気によって占められる面積に等しい。このような特徴は、図8及び図10で特に理解できる。
【0073】
産業用換気装置の場合、固体と空隙との比率は、通常、ソリディティ(solidity)θと呼ばれるパラメータによって評価される。伝統的に、換気装置22のソリディティθは、次のように定義される。
【0074】
θ=n*c/D
【0075】
ここで、nは、ブレード26又は羽根34の枚数である。
cは、半径方向外側端部の翼弦である。
Dは、換気装置22(ハブ24を含む)の直径である。
【0076】
直径5メートル以内の換気装置22を対象とした本発明の付属軸流ファン32の場合、上記の伝統的な式を使用すると、ソリディティθは、好ましくは1と2.5との間に含まれることが得られる。すなわち、
1≦θ≦2.5
【0077】
より具体的には、添付の図8及び図10の付属軸流ファン32の場合、次のとおりである。
θ=1.4
【0078】
好ましくは、付属軸流ファン32の羽根34の軸方向伸長部aは、付属軸流ファン32自体の直径dの20%以内に構成され、更により好ましくは、軸方向伸長部aは、直径dの5%~15%の間に構成される(図13及び図20参照)。以下、軸方向伸長部aは、回転軸Rに垂直な2つの平面間の距離として理解され、第1平面は羽根34の最上流点を含み、第2平面は羽根34の最下流点を含む。図13の実施形態において、羽根34の軸方向伸長部aは、付属軸流ファン32の中央部分42の軸方向伸長部と一致する。
【0079】
好ましくは、羽根34の厚さtは、図9図11、及び図13に見られるように、羽根34自体の他の寸法に比べて薄い。好ましくは、付属軸流ファン32の各羽根34の厚さtは、羽根34の伸長部全体にわたって実質的に均一である。厚さtは、羽根34の周囲の近くても、すなわち、羽根34の前縁部及び/又は後縁部及び/又は半径方向外側端部の近くで減少されてもよい。具体的には、付属軸流ファン32の羽根34の厚さtは、好ましくは、付属軸流ファン32の軸方向伸長部aの10%と20%との間に含まれる。厚さtのこれらの特徴により、羽根34の後縁部における渦の形成を回避することが可能になる。これにより、各羽根34は、次の羽根34に対して優先的に空気を搬送し、渦の剥離による干渉が発生しない。
【0080】
出願人によって行われた研究は、ロータ20に対する付属軸流ファン32の正しい位置決めの重要性を示した。図12で強調された量の間のいくつかの優先関係を以下に簡単に説明する。
【0081】
C(θ)は、ブレード26の空気力学的部分30の翼弦、具体的には、半径方向内側端部における回転面への投影であり、空気力学的部分30のために選択された翼形の大きさ及びピッチ角θに依存する。
【0082】
Bは、付属軸流ファン32の羽根34の半径方向伸長部、すなわち、付属軸流ファン32の半径d/2と、ハブ24の中央部分38と付属軸流ファン32の中央部分42(存在する場合)の大きい方の半径との差である。
【0083】
Aは、ブレード26の空気力学的部分30とハブ24の中央部分38との間の最小距離、又は、根元部分28の半径方向伸長部とハブ24の取付部40との合計である。
【0084】
aは、Aが測定される半径と、Aが測定されるブレード26に続く羽根34の前縁部との間の角度である。
【0085】
Zは、ブレード26の前縁部とAが測定される点との間の翼弦Cに沿った距離である。
【0086】
Xは、翼弦Cに沿った、ブレード26の後縁部と羽根34がブレード26の空気力学的部分30に到達する点との間の距離である。
【0087】
好ましくは、ロータ20に対する付属軸流ファン32の位置は、次の式によって定義される。
【0088】
X=C(θ)-Bsin(α(θ))-Z(θ)
【0089】
翼弦Cに関して全てをスケールダウンすると、次のようになる。
【0090】
X/C=1-(B/C)sin(α)-Z/C=1-β(α)-σ
【0091】
ここで、σ=Z/C
【0092】
ピッチ角θが増加するにつれて、付属軸流ファン32の位置は、ブレード26の空気力学的部分30の半径方向内側端部と重ならないように調整されなければならない。これにより、幾何学的関係は、次のように定義することができる。
【0093】
Bcos(α)-(c-x)sin(θ)=0
【0094】
ここで、Bは半径方向の羽根34の長さであり、Cは翼弦であり、Xは後縁部からの距離である。
【0095】
2つの未知数に関する上記の式から、Xをaの関数として求めることが可能である。αをarcos(((C-X)sin(θ))/B)として導出し、それを上記の式に挿入すると、各ピッチ角θについて、付属軸流ファン32の位置を求めることができる。
【0096】
ロータ20に対して付属軸流ファン32を位置決めするための更なる自由度は、軸方向の位置である。実際、付属軸流ファン32は、ハブ24の軸方向の面に隣接して、又はすぐ下流(例えば図5)に、又はすぐ上流(例えば図6)に配置されることができる。或いは、付属軸流ファン32は、回転軸Rに沿って軸方向に距離hだけ移動させることができる。
【0097】
例えば、距離hは、付属軸流ファン32の半径方向外側端部がブレード26の空気力学的部分30の半径方向内側端部の近くに軸方向に到達するように定義することができる。
【0098】
例えば、次のようにすることができる。
h=(C-Z)sin(θ)
【0099】
好ましくは、本発明のロータ20の少なくとも1つのブレード26は、その半径方向外側端部にウイングレット36を備えている。公知のように、ウイングレット36は、ブレード26の端部に取り付けられて空気力学的効率を改善し、端部の渦によって発生する誘導抵抗を減少させるように形成された装置である。それ自体公知のウイングレット36は、軸方向及び周方向に延びるバッフル44を有することが好ましい。
【0100】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明のロータ20は、平面図でV字形の幾何学的形状を有するn枚のブレード26を備える。このような解決策(添付の図面には示されていない)は、本出願人による国際公開第2017/085134号に詳細に記載されている。特に、平面図においてブレード26の前縁部が凹面であるブレード26のそのようなV字形の幾何学的形状により、換気装置22によって生成される騒音の大幅な低減が可能になる。
【0101】
第2態様によれば、本発明は、上述のロータ20とモータ46とを備える産業用の軸流換気装置22に関する。好ましくは、本発明の換気装置22は、電気的なモータ46を備える。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の換気装置22は、ダクト付き換気装置、すなわち、ロータ20を取り囲むそれ自体公知のダクト48を備える換気装置である(図3及び図4参照)。
【0103】
好ましくは、ダクト48は、国際公開第2020/245674号に記載されているように、環状座部50を備える。そのような解決策によれば、ダクト48の内壁は、換気装置22のロータ20の周囲に周方向に延び、ロータ20のブレード26の外側端部を部分的に収容する環状座部50を備える。好ましくは、環状座部50は、少なくとも部分的に軸方向に延在し、ウイングレット36によって画定されるバッフル44を部分的に収容する。
【0104】
いくつかの実施形態によれば、本発明の換気装置22は、あらゆる動作条件下で換気装置22を支持するように構成されたフレームワーク52を備える。フレームワーク52は、制御されていない振動を経験することなく、瞬間的且つ定常的に、あらゆる回転速度において換気装置22をしっかりと支持するように構成されている。
【0105】
いくつかの実施形態によれば、本発明の換気装置22は、回転軸Rが垂直で上方を向くように配向されている。その場合、フレームワーク52及びモータ46は、ロータ20の上流側(すなわち、ロータ20の下側)に配置されることが好ましく、フレームワーク52は、プラントにしっかりと固定され、典型的には地面に固定される。
【0106】
特定の実施形態によれば、本発明の換気装置22は、換気装置22のすぐ下流に配置され、内部で冷却液が循環する冷却モジュールを備える放熱システムの一部である。このような場合、換気装置の下流には、通常、マニホールドがあり、そこから1以上のダクトが分岐して、換気装置22によって生成された気流を分配ネットワークに供給する。
【0107】
本出願人によって実施された試験により、換気装置22のタイプに関係なく、付属軸流ファン32の導入後に効率が大幅に改善されることが明らかになった。
【0108】
各試験において、流量-圧力の測定値(下流側)と、電力インバータの上流側でモータ46によって吸収された電力の測定値(上流側)との比によって与えられる全体的効率が計算された。その結果、このような全体的効率は、本議論で最も関心のあるロータ20の空気力学的効率に加えて、インバータの電気的効率、モータ46の電気機械的効率、カップリング及びトランスミッションの機械的効率の寄与も含む。従って、この方法で測定された全体的効率は、ベルト駆動やインバータの性能が悪いなど、非効率な要素が1つでもあると大きく損なわれることに注意すべきである。
【0109】
本出願人によって行われた試験は、複数の異なる換気装置22の構成で行われた。換気装置22の様々な構成は、ブレード26の数、ブレード26の平面形状、ブレード26のピッチ角θ、ハブ24に対するブレード26の取付部40のタイプ、ダクト48の有無、ウイングレット36の有無、ブレード26の半径方向外側端部を部分的に収容する環状座部50のダクト48内における有無において異なっていた。換気装置22の各特定構成について、上述の全体的効率を、最初に付属軸流ファン32がない場合、次に付属軸流ファン32がある場合の2回計算した。様々な公知の構成における換気装置22の効率は41%から46%の間であり、平均は約44%であった。検討された全ての構成において、付属軸流ファン32の追加により効率が顕著に増加した。付属軸流ファン32の追加後に測定された効率の増加は1.9%から6.5%の間であり、平均は3.46%であった。このような効率の向上は相当なものであるが、当業者であればよく理解できるように、これを空気力学的な成分のみに関連付ける(すなわち、全体的効率の測定から全ての非空気力学的な寄与を取り除く)ことにより、付属軸流ファン32の寄与が更に増大することになる。
【0110】
また、本出願人は、本発明に係る換気装置22、すなわち付属軸流ファン32を備えた換気装置22の流量-圧力面における特性曲線を決定するための試験を行った。このような換気装置22の各々の特性曲線を、付属軸流ファン32を備えていないが全く同一の換気装置22の特性曲線と比較した。図24は、これらの特性曲線に観察された平均的な傾向を定性的に示している。特に、公知のタイプの換気装置22は、共通のダクト48を備え、これに付属軸流ファン32を追加して本発明の対応する換気装置22を得た。図24では、本発明に係る付属軸流ファン32の配置により、重要な2つの利点が得られることがわかる。第1に、本発明の付属軸流ファン32により、公知のタイプの換気装置22においてピッチ角を大きくすることによって、特性曲線を上方にシフトさせることができる。第2に、同一流量でピッチを小さくすることができるという事実により、本発明の付属軸流ファン32は、従来技術の特性曲線の左側部分に見られる失速ゾーンを減少させるか、場合によっては除去することができる。失速を低減又は除去することにより、本発明の付属軸流ファン32を備える換気装置22は、より高い効率で動作することができる。
【0111】
本出願人は、自身の研究及び実施された試験を経て、付属軸流ファン32の寄与が、ハブ24の領域における空気の移動によるものではない、すなわち、ロータ20によって生成される気流に加えて更なる気流を追加することによるものではないと考えている。逆に、本出願人は、付属軸流ファン32の寄与がロータ20の半径方向内側の領域(すなわち、ブレード26の根元部分28の領域)において速度及び圧力を安定させ、ロータ20をより良く動作させ、全体的効率が増加すると考えている。言い換えれば、付属軸流ファン32の存在により、(内側の)端部効果による摂動の半径方向への広がりが大幅に制限され、理論的な流線によって表される最適点に近い働きをするブレード26の部分が半径方向に延びる。ロータ20の半径方向内側の領域における流れに対する付属軸流ファン32の効果は、図23に概略的に描かれており、点線は回転軸Rを中心とする円弧を示し、矢印は流線を示している。図23の概略図に見られるように、付属軸流ファン32は、ロータ20の半径方向内側の領域における空気の再循環を打ち消すことを意図したものではなく、このような再循環の傾向を利用して流れを安定させるように構成されている。
【0112】
本発明のロータ20の付属軸流ファン32によって得られる効果と同様の効果は、国際公開第2020/245674号に記載されている環状座部50によっても得られる。ロータ20のブレード26の端部を少なくとも部分的に収容する環状座部50は、(外側)端部効果による摂動を大幅に制限し、ブレード26の部分を半径方向に延長し、理論上の流線によって表された最適点の近くで機能する。
【0113】
本発明の付属軸流ファン32と国際公開第2020/245674号に記載されている環状座部50との間の相互作用を特に参照して、本出願人は、様々な試験を実施して、流量の関数として効率の傾向を決定した。図25では、実験全体の結果を概略的且つ即座に理解できる方法で要約する定性的な方法で有意な曲線が示されており、これについて以下に簡単に説明する。
【0114】
実験の準備段階において、ブレードの数、直径、外形のタイプ、ピッチ角などの1以上の設計パラメータが互いに異なる、多数の公知のタイプの換気装置22が特定された。実験で検討された換気装置22は、全て従来型のウイングレット36とダクト48とを共通に使用した。その後、換気装置22の各タイプについて、次のものが準備され、整備された:
-本発明に係る付属軸流ファン32。
-国際公開第2020/245674号に記載されている環状座部50、すなわち、軸方向に開口され、ウイングレット36のバッフル44を部分的に収容するように取り付けられている環状座部。
【0115】
実験の動作段階において、流量の関数として効率の変化を示す曲線が、同じ換気装置22の4つの異なる構成における各タイプの換気装置22について実験的にプロットされた。
-従来技術に係る基本構成。当該基本構成において、換気装置22は、ウイングレット36及びダクト48のみを備える。
-従来技術に係る第1改良構成。当該構成は、国際公開第2020/245674号に記載されている環状座部50を追加した基本構成から得られる。
-本発明に係る第2改良構成。当該構成は、本発明の付属軸流ファン32を追加した基本構成から得られる。
-本発明に係る第3改良構成。当該構成は、国際公開第2020/245674号に記載されている環状座部50及び本発明の付属軸流ファン32を追加した基本構成から得られる。
【0116】
図25は、上記で特定した各構成で得られた曲線を概略的に示す4つの異なる曲線を示している。
-基本構成(従来技術の一部)に関連する曲線は、長いストロークを有する破線の曲線である。
-第1改良構成(従来技術の一部)に関連する曲線は、短いストロークを有する破線である。
-第2改良構成(本発明の一部)に関連する曲線は、連続的なシングルストロークの曲線である。
-第3改良構成(本発明の一部)に関連する曲線は、連続的なダブルストロークの曲線である。
【0117】
注目されるように、全ての改良された構成は、基本構成に対して上方に変換された曲線を有する。これは、各改良案の導入により、同じ空気流量の換気装置22の効率が一般的に向上することを意味する。観察され得る別の現象は、最大効率点の移動であるが、当該現象は本議論では関心がない。
【0118】
更に興味深い観察は、異なる曲線の上方へのシフトの大きさに関する。特に、環状座部50のみを追加した場合(第1改良構成)には、付属軸流ファン32のみを追加した場合(第2改良構成)に匹敵する顕著な改良がもたらされることに留意されたい。
【0119】
本当に驚くべきことは、2つの改良の複合効果である。図25に明確に見られるように、両方の改良の適用(第3改良構成)によって得られる効率の増加は、同じ改良、すなわち、最初に環状座部50のみ、次に付属軸流ファン32のみをバラバラに適用した場合に記録される増加の合計よりも明らかに大きい。実施された研究の結果に基づき、本出願人は、第3改良構成において、環状座部50と付属軸流ファン32とが同時に存在することにより、付属軸流ファン32によってロータ20の半径方向内側の領域における速度及び圧力の範囲を安定させ、ウイングレット36のバッフル44を収容する環状座部50によってロータ20の半径方向外側の領域における速度及び圧力の範囲を安定させることが可能になると考えている。これにより、換気装置22の全体が最良の状態で機能し、全体的効率が向上する。
【0120】
以上のことから、当業者であれば、同一の換気装置22内に両方の解決策が存在することにより、理論的な流線によって表される最適点に近いところで働くブレード26の部分の半径方向伸長部が最大化される好適な実施形態につながることをよく理解することができる。上述した全体的な性能の向上により、場合によっては、従来の換気装置22と比較してブレードが1枚少ない本発明に係る換気装置22を使用することが可能になり、例えば、場合によっては、本発明に係る3枚ブレードの換気装置22は、従来技術に係る4枚ブレードの換気装置22の性能を確保できることに留意すべきである。
【0121】
更に、全体的効率の向上により、場合によっては、同じ性能で従来の換気装置22を駆動するのに必要なモータよりも、より強力でないモータを本発明に係る換気装置22に使用することができる。
【0122】
当業者であれば十分に理解できるように、これらの結果により、換気装置22の投資及び管理コストを制限することができる。
【0123】
当業者であれば十分に理解できるように、本発明は、従来技術に関して上記で強調した欠点を克服する。
【0124】
具体的には、本発明は、効率が改善された軸流換気装置22を提供する。
【0125】
更に、本発明は、公知のタイプの換気装置と比較して、同じ速度でより高い圧力を発生させることができる軸流換気装置22を提供する。
【0126】
更に、本発明は、公知のタイプの換気装置と比較して、端部の渦の形成をより制限する軸流換気装置22を提供する。
【0127】
また、本発明は、流線を理論的に予想される流線にできる限り近づけることによって流線を規則化することができる軸流換気装置22を提供する。
【0128】
最後に、本発明は、更なる利点を導入するだけでなく、公知のタイプの人工呼吸器によって既に達成されている利点を維持するダクト付き軸流換気装置22を提供する。
【0129】
結論として、全ての詳細は、他の技術的に同等の要素で置き換えることができ、特定の実施形態に関連して記載された特徴は、他の実施形態でも使用することができ、使用される材料、付帯的な形状及び寸法は、任意のものとすることができる。それによって以下の特許請求の範囲の保護範囲から逸脱することなく、特定の実施要件に準拠することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図20
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図22.a】
図22.b】
図23
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図25