(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】ゴルフクラブセット
(51)【国際特許分類】
A63B 53/00 20150101AFI20241223BHJP
A63B 53/04 20150101ALI20241223BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20241223BHJP
【FI】
A63B53/00 A
A63B53/04 A
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2024044345
(22)【出願日】2024-03-21
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】393000847
【氏名又は名称】キャスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】山本 豊
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013459(JP,A)
【文献】特許第7060489(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2003/0092499(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00 - 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ヘッドを備える第1ユーティリティクラブと、前記第1ヘッドよりも番手が大きな第2ヘッドを備える第2ユーティリティクラブと、前記第2ヘッドよりも番手が大きな第3ヘッドを備える第3ユーティリティクラブとを含むゴルフクラブセットであって、
前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドの各々は、ソール面、トゥ面、ヒール面、フェース面、バック面及びクラウン面を有する中空状の本体部と、前記バック面から膨出する中実のウェイト部とを有し、
前記クラウン面から前記ソール面を見る方向を下、前記ソール面から前記クラウン面を見る方向を上、前記バック面から前記フェース面を見る方向を前、前記フェース面から前記バック面を見る方向を後とするとき、前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドの各々を平面視した際、前記ウェイト部は、前記バック面から三日月形状に後方に膨出し、
前記ウェイト部は、前記ソール面に連なる下面と、前記バック面に連なる上面とを有し、
前記ソール面と、前記ウェイト部の前記下面とは、前記下面が、前記ソール面に対し、後方に向かうに従って上方に向かうように相対的に傾斜し、
前記ソール面の接地点を通る水平線と、前記下面との交差角度が、番手が大きくなるにつれて大きくなり、且つ重心の位置が、番手が大きくなるにつれて高くなる、ゴルフクラブセット。
【請求項2】
請求項1に記載のゴルフクラブセットにおいて、前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドの各々における前記交差角度が26.0°以下である、ゴルフクラブセット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴルフクラブセットにおいて、前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドの各々における前記交差角度が3.0°以上である、ゴルフクラブセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、番手が互いに異なるユーティリティクラブを少なくとも3個含むゴルフクラブセットに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーティリティクラブ用のヘッドとして、特許文献1に記載されたヘッドが知られている。このヘッドは、本体部と、本体部のバック面から三日月形状に膨出したウェイト部とを備える。このようなヘッドを備えるユーティリティクラブによれば、ゴルフボールの飛距離を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴルフクラブセットに複数のユーティリティクラブを含めることが想定される。この場合、複数のユーティリティクラブにおける番手が互いに異なる。複数のユーティリティクラブの各々がウェイト部を備える場合、複数のユーティリティクラブの各々でゴルフボールを打球すると、ゴルフボールの弾道において、高さ(最高到達点)が互いに大きく異なる傾向がある。このため、打球されたゴルフボールの弾道及び飛距離をプレイヤが予想することは容易ではない。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、第1ヘッドを備える第1ユーティリティクラブと、前記第1ヘッドよりも番手が大きな第2ヘッドを備える第2ユーティリティクラブと、前記第2ヘッドよりも番手が大きな第3ヘッドを備える第3ユーティリティクラブとを含むゴルフクラブセットである。
【0007】
前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドの各々は、ソール面、トゥ面、ヒール面、フェース面、バック面及びクラウン面を有する中空状の本体部と、前記バック面から膨出する中実のウェイト部とを有する。前記クラウン面から前記ソール面を見る方向を下、前記ソール面から前記クラウン面を見る方向を上、前記バック面から前記フェース面を見る方向を前、前記フェース面から前記バック面を見る方向を後とするとき、前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドの各々を平面視した際、前記ウェイト部は、前記バック面から三日月形状に後方に膨出する。前記ウェイト部は、前記ソール面に連なる下面と、前記バック面に連なる上面とを有する。前記ソール面と、前記ウェイト部の前記下面とは、前記下面が、前記ソール面に対し、後方に向かうに従って上方に向かうように相対的に傾斜する。
【0008】
以上の構成において、前記ソール面の接地点を通る水平線と、前記下面との交差角度は、番手が大きくなるにつれて大きくなる。且つ重心の位置は、番手が大きくなるにつれて高くなる。
【発明の効果】
【0009】
第1ユーティリティクラブ~第3ユーティリティクラブの各々でゴルフボールを打球した場合、番手が異なるにも拘わらず、弾道の高さ(ボールの最高到達点)に大きな差が生じない。このため、プレイヤは、第1ユーティリティクラブ~第3ユーティリティクラブの各々でゴルフボールを打球したときに弾道を予測することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るゴルフクラブセットを構成する第1ユーティリティクラブ用の第1ヘッドの一部断面平面図である。
【
図2】
図2は、第1ヘッドをトゥ面側から見た概略側面図である。
【
図3】
図3は、第1ヘッドを前後方向に沿って切断して現れる切断面をヒール面から見たときの側面断面図である。
【
図4】
図4は、第1ユーティリティクラブ~第3ユーティリティクラブの各々でゴルフボールを打球した場合の弾道及び飛距離を示す模式説明図である。
【
図5】
図5は、実施例のゴルフクラブセット及び比較例のゴルフクラブセットにおける番手、ロフト角及び交差角度を示す図表である。
【
図6】
図6は、実施例におけるゴルフクラブセット及び比較例のゴルフクラブセットでのゴルフボールの打球結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、第1ヘッドの構成要素に「第1」を付す。同様に、第2ヘッドの構成要素に「第2」を付し、第3ヘッドの構成要素に「第3」を付す。
【0012】
本実施形態に係るゴルフクラブセットは、
図1及び
図2に示す第1ユーティリティクラブ1aを含む。第1ユーティリティクラブ1aは、
図1及び
図2に示す第1ヘッド10aを備える。第1ヘッド10aは、第1本体部20aと、第1ウェイト部40aとを備える。
【0013】
第1本体部20aは、主に金属材料から形成される中空体である。第1本体部20aは、第1ソール面22a、第1トゥ面24a、第1ヒール面26a、第1フェース面28a、第1バック面30a、第1クラウン面32a及び第1ネック部50aを有する。第1ネック部50aには、シャフト60が取り付けられる。
【0014】
以下、第1クラウン面32aから第1ソール面22aを見る方向を下、第1ソール面22aから第1クラウン面32aを見る方向を上、第1バック面30aから第1フェース面28aを見る方向を前、第1フェース面28aから第1バック面30aを見る方向を後とする。従って、例えば、第1ソール面22aは第1本体部20aの下部を形成し、第1クラウン面32aは第1本体部20aの上部を形成する。第1フェース面28aから第1バック面30aに向かう方向は後方であり、第1バック面30aから第1フェース面28aに向かう方向は前方である。
【0015】
図2に示す水平線Hは、第1ソール面22aの接地点Pを通って水平方向に沿って延在する線を表す。このとき、第1ネック部50aは水平線Hに対して傾斜する方向に延在する。水平線Hに対する第1ネック部50aの交差角度は、第1ヘッド10aにおける基準ライ角である。
【0016】
図2に示すように、第1ネック部50aが鉛直線Vに沿った姿勢であるとき、第1フェース面28aは鉛直線Vに対して傾斜する。鉛直線Vに対する第1フェース面28aの交差角度β1は、第1ヘッド10aにおける第1ロフト角である。
【0017】
第1ウェイト部40aは、第1バック面30aから後方に向かって膨出する。
図2から理解されるように、第1ヘッド10aを平面視した際、第1ウェイト部40aは中実であり、三日月形状である。本体部及び第1ウェイト部40aは、例えば、精密鋳造等により一体成形される。本体部及び第1ウェイト部40aの素材の好適例としては、SUS630等のステンレス鋼が挙げられる。
【0018】
図2に示すように、第1ウェイト部40aは、下面42d及び上面42uを有する。下面42dは第1ソール面22aに連なる。上面42uは、第1バック面30aに連なる。
【0019】
図3は、第1ソール面22aにおける接地点Pが基準ライ角で接地した状態で、第1ヘッド10aを切断した側面断面図である。なお、
図3では、第1ヘッド10aを、前後方向に沿って接地点Pを通るように切断し、且つ第1ヒール面26aから第1トゥ面24aに向かって見た切断面が表されている。
図2及び
図3から理解されるように、第1ウェイト部40aの下面42dは、第1ソール面22aに対し、後方に向かうに従って上方に向かうように相対的に傾斜する。すなわち、この切断面には、水平線Hに対する下面42dの傾斜角度(第1交差角度)θ1が現れる。換言すると、第1ウェイト部40aの下面42dと水平線Hとは、第1交差角度θ1を形成するようにして傾斜している。
【0020】
図3には、第1ヘッド10aにおける第1重心G1の高さ位置を示している。本実施形態において、第1重心G1の高さGH1は、接地点P(水平線H)から第1重心G1までの最短距離として定義される。なお、実際の第1重心G1は、主に、第1フェース面28aと第1バック面30aとの間(本体部の中空内部)に位置する。すなわち、
図3に示される第1重心G1の位置は、実際には重心相当位置であるが、図面を簡素化して理解を容易にするため、第1重心G1を第1フェース面28aに示すこととする。後述する第2重心G2及び第3重心G3も同様である。
【0021】
図2に示すように、第2ヘッド10bは、第1ヘッド10aの第1ロフト角β1よりも大きな第2ロフト角β2を有する。すなわち、第2ヘッド10bの第2フェース面28bは、第1フェース面28aよりも傾斜する。また、
図3に示すように、第2ヘッド10bにおける第2交差角度θ2は、第1ヘッド10aにおける第1交差角度θ1よりも大きい。さらに、
図3に示すように、第2ヘッド10bにおける第2重心G2は、第1ヘッド10aにおける第1重心G1よりも高位置である。すなわち、第2重心G2の高さGH2は、第1重心G1の高さGH1よりも大きい。
【0022】
図2に示すように、第3ヘッド10cは、第2ヘッド10bの第2ロフト角β2よりも大きな第3ロフト角β3を有する。すなわち、第3ヘッド10cの第3フェース面28cは、第2フェース面28bよりも傾斜する。ロフト角が大きいほど番手が大きくなるので、第1ヘッド10a~第3ヘッド10cのうちで番手が最大であるヘッドは、第3ヘッド10cである。第1ヘッド10a~第3ヘッド10cのうちで番手が最小であるヘッドは、第1ヘッド10aである。第2ヘッド10bの番手は、第1ヘッド10aの番手と第3ヘッド10cの番手との間である。
【0023】
また、
図3に示すように、第3ヘッド10cにおける第3交差角度θ3は、第2ヘッド10bにおける第2交差角度θ2よりも大きい。さらに、
図3に示すように、第3ヘッド10cにおける第3重心G3は、第2ヘッド10bにおける第2重心G2よりも高位置である。すなわち、第3重心G3の高さGH3は、第2重心G2の高さGH2よりも大きい。
【0024】
以上のように、第1ヘッド10a~第3ヘッド10cの間では、θ1<θ2<θ3の関係が成り立ち、且つGH1<GH2<GH3の関係が成り立つ。換言すれば、第1ヘッド10a~第3ヘッド10cにおいて、番手が大きくなるに従い、第1ソール面22a~第3ソール面22cの各々の接地点Pを通る水平線Hと、第1ウェイト部40a~第3ウェイト部40cの各々との交差角度が大きくなり、且つ重心が高くなる。なお、第1ヘッド10a、第2ヘッド10b及び第3ヘッド10cの番手の組み合わせの一例は、3番手、5番手及び7番手である。
【0025】
第1交差角度θ1~第3交差角度θ3は、3.0°~26.0°の範囲内であることが好ましい。すなわち、第1交差角度θ1は3.0°以上であることが好ましい。これにより、第1ヘッド10a~第3ヘッド10cのうちで最小番手である第1ヘッド10aにおいて、打球時に第1ウェイト部40aが地面に接触すること等が回避される。また、第3交差角度θ3は26.0°以下であることが好ましい。これにより、第1ヘッド10a~第3ヘッド10cのうちで最大番手である第3ヘッド10cにおいて、第3重心G3が過度に高くなることが回避される。ただし、第1交差角度θ1~第3交差角度θ3は、θ1<θ2<θ3の関係を満たせばよく、3.0°~26.0°に限定されない。
【0026】
第1ヘッド10aの第1ネック部50aにシャフト60が取り付けられることにより、第1ユーティリティクラブ1aが構成される。同様に、第2ヘッド10bの第2ネック部50bにシャフト60が取り付けられることにより第2ユーティリティクラブ1bが構成され、第3ヘッド10cの第3ネック部50cにシャフト60が取り付けられることにより第3ユーティリティクラブ1cが構成される。
【0027】
上記のように、第1ヘッド10a~第3ヘッド10cの間では、θ1<θ2<θ3の関係が成り立ち、且つGH1<GH2<GH3の関係が成り立っている。このため、第1ユーティリティクラブ1a、第2ユーティリティクラブ1b及び第3ユーティリティクラブ1cの各々を用いてプレイヤがゴルフボールを打球したとき、
図4に示すように、弾道の高さ(ゴルフボールの最高到達点)が互いに近くなる。すなわち、番手が異なるユーティリティクラブを用いても、弾道の高さに大きな違いはない。これに対し、番手が異なるユーティリティクラブを用いると、ゴルフボールの飛距離が互いに異なる。このため、プレイヤは、第1ユーティリティクラブ1a~第3ユーティリティクラブ1cの各々でゴルフボールを打球したときに弾道及び到達点を予測することが容易である。従って、プレイヤは、例えば、打球地点からグリーンまでの距離に基づいて、何番手のユーティリティクラブを選択すればよいのかを決定し易い。
【0028】
また、打球されたゴルフボールの実際の弾道が、予測された弾道から大きく外れることはさほどない。従って、プレイヤは、ゴルフの技量に拘わらず、予測に沿った弾道を容易に得ることができる。従って、本実施形態に係るヘッドセットによれば、様々なプレイヤが扱い易いゴルフクラブセットが得られる。
【0029】
なお、ゴルフクラブセットには、第1ユーティリティクラブ1a~第3ユーティリティクラブ1c以外のユーティリティクラブが含まれてもよい。例えば、第1ユーティリティクラブ1aよりも番手が小さいユーティリティクラブが含まれてもよいし、第3ユーティリティクラブ1cよりも番手が大きいユーティリティクラブが含まれてもよい。また、第1ユーティリティクラブ1aと第2ユーティリティクラブ1bとの間に、第1ユーティリティクラブ1aよりも番手が大きく且つ第2ユーティリティクラブ1bよりも番手が小さいユーティリティクラブが含まれてもよいし、第2ユーティリティクラブ1bと第3ユーティリティクラブ1cとの間に、第2ユーティリティクラブ1bよりも番手が大きく且つ第3ユーティリティクラブ1cよりも番手が小さいユーティリティクラブが含まれてもよい。
【0030】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0031】
第1ヘッド10a、第2ヘッド10b及び第3ヘッド10cは、第1本体部20a、第2本体部20b及び第3本体部20cと、第1ウェイト部40a、第2ウェイト部40b及び第3ウェイト部40cとをそれぞれ備える。第1本体部20a、第2本体部20b及び第3本体部20cは、第1ソール面22a、第2ソール面22b及び第3ソール面22cと、第1トゥ面24a、第2トゥ面24b及び第3トゥ面24cと、第1ヒール面26a、第2ヒール面26b及び第3ヒール面26cと、第1フェース面28a、第2フェース面28b及び第3フェース面28cと、第1バック面30a、第2バック面30b及び第3バック面30cと、第1クラウン面32a、第2クラウン面32b及び第3クラウン面32cとをそれぞれ有する。
【0032】
第1ウェイト部40a~第3ウェイト部40cの各々は、第1ソール面22a~第3ソール面22cの各々に連なる下面42dと、第1バック面30a~第3バック面30cの各々に連なる上面42uとを有する。第1ウェイト部40a~第3ウェイト部40cの各々の下面42dは、第1ソール面22a~第3ソール面22cの各々に対し、後方に向かうに従って上方に向かうように相対的に傾斜する。このため、第1ソール面22a~第3ソール面22cの各々の接地点Pを通る水平線Hと、第1ウェイト部40a~第3ウェイト部40cの各下面42dとは、第1交差角度θ1~第3交差角度θ3でそれぞれ交差する。
【0033】
第1交差角度θ1、第2交差角度θ2及び第3交差角度θ3の間では、θ1<θ2<θ3の関係が成り立つ。すなわち、番手が大きくなるにつれて、交差角度が大きくなる。また、第1ヘッド10aの第1重心G1の高さGH1、第2ヘッド10bの第2重心G2の高さGH2及び第3ヘッド10cの第3重心G3の高さGH3の間では、GH1<GH2<GH3の関係が成り立つ。すなわち、番手が大きくなるにつれて、重心の高さGHが大きくなる。
【0034】
なお、第1交差角度θ1~第3交差角度θ3は、第1ヘッド10a~第3ヘッド10cの断面からそれぞれ求めることができる。この場合、第1ヘッド10aの第1ソール面22aを基準ライ角で接地する。この状態で、第1ヘッド10aを、前後方向に沿って接地点Pを通るように切断する。このときに現れる断面において、第1ソール面22aの接地点Pを通る水平線Hに対する第1ウェイト部40aの下面42dの傾斜角度を、第1交差角度θ1とすることができる。第2ヘッド10b及び第3ヘッド10cについても同様にして、第2交差角度θ2及び第3交差角度θ3を求めることができる。
【0035】
第1ヘッド10a~第3ヘッド10cを用いて第1ユーティリティクラブ1a~第3ユーティリティクラブ1cをそれぞれ作製し、これら第1ユーティリティクラブ1a~第3ユーティリティクラブ1cの各々でゴルフボールを打球した場合、番手が異なるにも拘わらず、弾道の高さ(打球されたゴルフボールの最高到達点)に大きな差が生じない。換言すれば、互いの最高到達点が近くなる。このため、プレイヤは、第1ユーティリティクラブ1a~第3ユーティリティクラブ1cの各々でゴルフボールを打球したときに弾道を予測することが容易である。
【0036】
また、プレイヤは、ゴルフの技量に拘わらず、予測に沿った弾道を容易に得ることができる。
【0037】
一態様において、第1交差角度θ1~第3交差角度θ3は26.0°以下である。
【0038】
これにより、第1ヘッド10a~第3ヘッド10cのうちで番手が最大である第3ヘッド10cにおいて、第3重心G3の位置(高さGH3)が過度に高くなることが回避される。
【0039】
一態様において、第1交差角度θ1~第3交差角度θ3は3.0°以上である。
【0040】
これにより、第1ヘッド10a~第3ヘッド10cのうちで番手が最小である第1ヘッド10aにおいて、打球時に第1ウェイト部40aが地面に接触すること等が回避される。
【実施例】
【0041】
第1ヘッド10aの第1ネック部50a、第2ヘッド10bの第2ネック部50b及び第3ヘッド10cの第3ネック部50cの各々にシャフト60を取り付けた。これにより、3番手の第1ユーティリティクラブ1a、5番手の第2ユーティリティクラブ1b及び7番手の第3ユーティリティクラブ1cをそれぞれ得た。これを実施例とする。第1ヘッド10a~第3ヘッド10cの各々のロフト角βを
図5に示す。ロフト角βは、
図2に示す第1ロフト角β1、第2ロフト角β2及び第3ロフト角β3に対応する。第2ロフト角β2は第1ロフト角β1よりも大きく、第3ロフト角β3は第2ロフト角β2よりも大きい。なお、
図5及び
図6では、「ゴルフクラブセット」を「クラブセット」と略記している。
【0042】
図5には、第1ヘッド10a~第3ヘッド10cの各々における接地点Pを通る水平線Hと、第1ウェイト部40a~第3ウェイト部40cの下面42dとの交差角度を併せて示している。交差角度は、
図3における第1交差角度θ1、第2交差角度θ2及び第3交差角度θ3に対応する。第2交差角度θ2は第1交差角度θ1よりも大きく、第3交差角度θ3は第2交差角度θ2よりも大きい。
【0043】
図5には、さらに、第1ヘッド10a~第3ヘッド10cの各々における重心の高さGHを併せて示している。重心の高さGHは、
図3における第1高さGH1、第2高さGH2及び第3高さGH3に対応する。第2高さGH2は第1高さGH1よりも大きく、第3高さGH3は第2高さGH2よりも大きい。
【0044】
比較例として、3番手の第1ユーティリティクラブ、5番手の第2ユーティリティクラブ及び7番手の第3ユーティリティクラブを用意した。これらのユーティリティクラブの各ヘッドにおけるロフト角β、交差角度θ及び重心の高さGHを、
図5に併せて示す。
図5から理解されるように、実施例及び比較例において、第1ロフト角β1、第2ロフト角β2及び第3ロフト角β3は、それぞれ、互いに同一である。ただし、比較例では、交差角度は、第2ユーティリティクラブにおいて最小である。
【0045】
実施例のゴルフクラブセット及び比較例のゴルフクラブセットを用い、同一のプレイヤがゴルフボールを試打した。試打における各ユーティリティクラブのスイング速度、ゴルフボールの初速度、スマッシュファクタ、打ち出し角度、スピン速度、最高到達点、キャリー及び飛距離(キャリーとランの合計)を測定又は算出した。結果を、
図6に併せて示す。
【0046】
3番手では、実施例は、比較例よりもゴルフボールを高く打ち出すことができたために弾道が高くなった。また、スピン速度が小さいため、比較例よりも飛距離が大きかった。5番手では、実施例と比較例とで略同様の結果であった。7番手では、実施例は、比較例よりもゴルフボールを低く打ち出すことができたために弾道が低くなった。また、スピン速度が大きいので、グリーン上では落下後に速やかに停止すると期待される。
【0047】
さらに、実施例のゴルフクラブセットでは、番手が異なっていても最高到達点が略同等である。このため、プレイヤが弾道を予測し易い。
【0048】
上記実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0049】
(付記1)
本開示のゴルフクラブセットは、第1ヘッド(10a)を備える第1ユーティリティクラブ(1a)と、前記第1ヘッドよりも番手が大きな第2ヘッド(10b)を備える第2ユーティリティクラブ(1b)と、前記第2ヘッドよりも番手が大きな第3ヘッド(10c)を備える第3ユーティリティクラブ(1c)とを含む。前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドの各々は、ソール面(22a~22c)、トゥ面(24a~24c)、ヒール面(26a~26c)、フェース面(28a~28c)、バック面(30a~30c)及びクラウン面(32a~32c)を有する中空状の本体部(20a~20c)と、前記バック面から膨出する中実のウェイト部(40a~40c)とを有する。
【0050】
前記クラウン面から前記ソール面を見る方向を下、前記ソール面から前記クラウン面を見る方向を上、前記バック面から前記フェース面を見る方向を前、前記フェース面から前記バック面を見る方向を後とするとき、前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドの各々を平面視した際、前記ウェイト部は、前記バック面から三日月形状に後方に膨出する。前記ウェイト部は、前記ソール面に連なる下面(42d)と、前記バック面に連なる上面(42u)とを有する。前記ソール面と、前記ウェイト部の前記下面とは、前記下面が、前記ソール面に対し、後方に向かうに従って上方に向かうように相対的に傾斜する。
【0051】
以上の構成において、前記ソール面の接地点(P)を通る水平線(H)と、前記下面との交差角度(θ1~θ3)は、番手が大きくなるにつれて大きくなる。且つ重心(G1~G3)の位置(GH1~GH3)は、番手が大きくなるにつれて高くなる。
【0052】
なお、交差角度は、前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドの各々の前記ソール面を基準ライ角で接地した状態で、前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドの各々を前後方向に沿って接地点を通るように切断したときに現れる前記接地点を通る水平線に対する前記下面の傾斜角度として求められる。
【0053】
第1ユーティリティクラブ~第3ユーティリティクラブの各々でゴルフボールを打球した場合、番手が異なるにも拘わらず、弾道の高さ(ゴルフボールの最高到達点)に大きな差が生じない。このため、プレイヤは、第1ユーティリティクラブ~第3ユーティリティクラブの各々でゴルフボールを打球したときに弾道を予測することが容易である。
【0054】
(付記2)
付記1に記載のゴルフクラブセットにおいて、前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドの各々における前記交差角度が26.0°以下であってもよい。
【0055】
第1ヘッド~第3ヘッドのうちで番手が最大である第3ヘッドにおいて、重心の位置が過度に高くなることが回避される。
【0056】
(付記3)
付記1又は2に記載のゴルフクラブセットにおいて、前記第1ヘッド、前記第2ヘッド及び前記第3ヘッドの各々における前記交差角度が3.0°以上であってもよい。
【0057】
第1ヘッド~第3ヘッドのうちで番手が最小である第1ヘッドにおいて、打球時に第1ウェイト部が地面に接触すること等が回避される。
【0058】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0059】
1a~1c…第1ユーティリティクラブ~第3ユーティリティクラブ
10a~10c…第1ヘッド~第3ヘッド
20a~20c…第1本体部~第3本体部
22a~22c…第1ソール面~第3ソール面
40a~40c…第1ウェイト部~第3ウェイト部
【要約】
【解決手段】第1ユーティリティクラブ1a~第3ユーティリティクラブ1cにおいて、第1ヘッド10a~第3ヘッド10cは、第1ウェイト部40a~第3ウェイト部40cをそれぞれ備える。第1ソール面22a~第3ソール面22cの各々の接地点Pを通る水平線Hに対する第1ウェイト部40a~第3ウェイト部40cの各下面42dとの交差角度は、番手が大きくなるにつれて大きくなる。また、第1ヘッド10a~第3ヘッド10cの各々の重心の位置は、番手が大きくなるにつれて高くなる。
【選択図】
図3