(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】自動調理装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20241223BHJP
【FI】
A47J27/14 D
A47J27/14 C
(21)【出願番号】P 2024066430
(22)【出願日】2024-04-16
【審査請求日】2024-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519020616
【氏名又は名称】TechMagic株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 祥平
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2023/0061171(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第116114839(CN,A)
【文献】中国実用新案第217451357(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第103126513(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109106201(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110710862(CN,A)
【文献】中国実用新案第214595457(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理台の上部に設けて有底円筒状の調理容器を容器深さ方向の容器中心軸の周りで自転自在に保持する容器保持ユニットと、前記調理台の前記容器保持ユニットの起倒軸部よりも前方域に設けて前記調理容器を洗浄する洗浄用シンクとを備え、前記調理容器に収容された具材を撹拌状態で加熱調理した後に前記調理容器を上下反転状態で前記調理容器の内壁面を洗浄する自動調理装置であって、
前記調理容器に付着する調理後の汚れを掻き落とすスクレイパーを備えた掻き落としユニットが、前記洗浄用シンク内で前記調理容器の上下反転した内壁面により被包されて前記調理容器の内壁面と前記スクレイパーとを当接させるように設けられ
、
前記調理容器が、具材を収容する容器本体と該容器本体に装着して前記容器本体とは独立に自転する撹拌部材とを有し、
前記容器保持ユニットが、前記容器本体とは独立に前記撹拌部材を自転させ、
前記掻き落としユニットが、前記撹拌部材の洗浄時の可動範囲の外に配置されていることを特徴とする自動調理装置。
【請求項2】
調理台の上部に設けて有底円筒状の調理容器を容器深さ方向の容器中心軸の周りで自転自在に保持する容器保持ユニットと、前記調理台の前記容器保持ユニットの起倒軸部よりも前方域に設けて前記調理容器を洗浄する洗浄用シンクとを備え、前記調理容器に収容された具材を撹拌状態で加熱調理した後に前記調理容器を上下反転状態で前記調理容器の内壁面を洗浄する自動調理装置であって、
前記調理容器に付着する調理後の汚れを掻き落とすスクレイパーを備えた掻き落としユニットが、前記洗浄用シンク内で前記調理容器の上下反転した内壁面により被包されて前記調理容器の内壁面と前記スクレイパーとを当接させるように設けられ、
前記調理容器で調理された具材を盛り付ける皿を載置する盛付けプレートを備えた載置ユニットが、前記盛付けプレートが前記洗浄用シンクの開口部を開放する開放位置と前記洗浄用シンクの開口部に張り渡す閉鎖位置との間でスライド自在になるとともに、前記洗浄用シンクの開口部に対する前記盛付けプレートの開閉動作により前記スクレイパーを前記開放位置で起立させる一方で前記スクレイパーを前記閉鎖位置で倒伏させるように前記洗浄用シンクの近傍に設けられていることを特徴とする自動調理装置。
【請求項3】
前記掻き落としユニットが、ばね付き交差四節リンク機構を有し、
前記掻き落としユニットの前記スクレイパーが、前記盛付けプレートが開放位置にある際に前記ばね付き交差四節リンク機構の起立ばねの弾性力により起立姿勢となり、前記盛付けプレートが前記閉鎖位置にある際に前記起立ばねの弾性力に抗して倒伏姿勢となることを特徴とする請求項2に記載の自動調理装置。
【請求項4】
前記調理容器が、前記容器中心軸に対して傾斜している被加熱傾斜面部を備え、
前記スクレイパーが、前記調理容器の前記被加熱傾斜面部の内壁面に当接する傾斜辺部を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動調理装置。
【請求項5】
前記掻き落としユニットが、前記洗浄用シンクに対して脱着自在に構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動調理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動的に具材を高温で加熱調理する自動調理装置に関し、特に、加熱調理時に調理容器の内壁面に固着しがちな焦げ付き汚れを調理容器の洗浄時に掻き落とすことができる自動調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄用シンクの上方で調理容器を伏せた姿勢にして、洗浄ノズルの水を下から噴射して調理容器の内部を水洗いする自動調理装置(特許文献1及び特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際特許公開第2021/024124号公報
【文献】登録実用新案公報第3227512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の自動調理装置においては、洗浄ノズルからの水の噴射による洗浄のみでは、中華料理などで高温状態の加熱調理を行った際に調理容器の内壁面に固着しがちな焦げ付き汚れを落とすことが困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、加熱調理によって調理容器の内壁面に固着して調理後に残留する焦げなどの汚れを効率よく掻き落とす自動調理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本請求項1に係る発明は、調理台の上部に設けて有底円筒状の調理容器を容器深さ方向の容器中心軸の周りで自転自在に保持する容器保持ユニットと、前記調理台の前記容器保持ユニットよりも前方域に設けて前記調理容器を洗浄する洗浄用シンクとを備え、前記調理容器に収容された具材を撹拌状態で加熱調理した後に前記調理容器を上下反転状態で前記調理容器の内壁面を洗浄する自動調理装置であって、前記調理容器に付着する調理後の焦げなどの汚れを掻き落とすスクレイパーを備えた掻き落としユニットが、前記洗浄用シンク内で前記調理容器の上下反転した内壁面により被包されて前記調理容器の内壁面と前記スクレイパーとを当接させるように設けられていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0007】
本請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記調理容器で調理された具材を盛り付ける皿を載置する盛付けプレートを備えた載置ユニットが、前記盛付けプレートが前記洗浄用シンクの開口部を開放する開放位置と前記洗浄用シンクの開口部に張り渡す閉鎖位置との間でスライド自在になるとともに、前記洗浄用シンクの開口部に対する前記盛付けプレートの開閉動作により前記スクレイパーを前記開放位置で起立させる一方で前記スクレイパーを前記閉鎖位置で倒伏させるように前記洗浄用シンクの近傍に設けられていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
本請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の構成に加えて、前記掻き落としユニットが、ばね付き交差四節リンク機構を有し、前記掻き落としユニットの前記スクレイパーが、前記盛付けプレートが開放位置にある際に前記ばね付き交差四節リンク機構の起立ばねの弾性力により起立姿勢となり、前記盛付けプレートが前記閉鎖位置にある際に前記起立ばねの弾性力に抗して倒伏姿勢となることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
本請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明の構成に加えて、前記調理容器が、前記容器中心軸に対して傾斜している被加熱傾斜面部を備え、前記スクレイパーが、前記調理容器の前記被加熱傾斜面部の内壁面に当接する傾斜辺部を備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項5に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明の構成に加えて、前記掻き落としユニットが、前記洗浄用シンクに対して脱着自在に構成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明の自動調理装置によれば、調理台の上部に設けて有底円筒状の調理容器を容器深さ方向の容器中心軸の周りで自転自在に保持する容器保持ユニットと、前記調理台の前記容器保持ユニットの起倒軸部よりも前方域に設けて前記調理容器を洗浄する洗浄用シンクとを備え、前記調理容器に収容された具材を撹拌状態で加熱調理した後に前記調理容器を上下反転状態で前記調理容器の内壁面を洗浄する自動調理装置であることにより、自動調理の後に調理容器の内壁面を洗浄することができるばかりでなく、以下の本願発明に係る固有の構成により、本願発明に固有の効果を奏する。
【0012】
まず、調理容器に付着する調理後の焦げなどの汚れを掻き落とすスクレイパーを備えた掻き落としユニットが、前記洗浄用シンク内で前記調理容器の上下反転した内壁面により被包されて前記調理容器の内壁面と前記スクレイパーとを当接させるように設けられていることにより、調理容器を上下反転状態で調理容器の深さ方向の容器中心軸の周りで自転させれば、調理容器の内壁面の全周がスクレイパーに順次当接するため、調理容器の内壁面に固着して調理後に残留する焦げなどの汚れを効率よく掻き落とすことができる。
【0013】
また、掻き落としユニットが、前記洗浄用シンク内で前記調理容器の上下反転した内壁面により被包されていることにより、スクレイパーが掻き落とした調理後の焦げなどの汚れが調理台の上面に散乱することなく調理容器内から洗浄用シンク内に落下するため、掻き落とした焦げなどの汚れを洗浄後に容易に回収することができる。
【0014】
さらに、調理容器が、具材を収容する容器本体とこの容器本体に装着して容器本体とは独立に自転する撹拌部材とを有し、容器保持ユニットが、容器本体とは独立に撹拌部材を自転させ、掻き落としユニットが、撹拌部材の洗浄時の可動範囲の外に配置されていることにより、調理容器を洗浄用シンクに向けて伏せた状態で容器自転機構により自転させて洗浄する洗浄姿勢において、撹拌部材と掻き落としユニットとが常に離隔配置されるため、撹拌部材と掻き落としユニットとの接触による破損を防止することができると共に、撹拌部材と掻き落としユニットとの間のクリアランスにより高いメンテナンス性が高く、仮に調理容器を上下反転した状態の洗浄姿勢にしている洗浄中に何らかの理由による緊急停止によって撹拌部材が任意の位置で停止しても、撹拌部材と掻き落としユニットとの干渉を生じることなく調理容器を洗浄姿勢から調理姿勢に戻して復旧作業を行うことができる。
【0015】
本発明の請求項2に係る発明の自動調理装置によれば、調理台の上部に設けて有底円筒状の調理容器を容器深さ方向の容器中心軸の周りで自転自在に保持する容器保持ユニットと、前記調理台の前記容器保持ユニットの起倒軸部よりも前方域に設けて前記調理容器を洗浄する洗浄用シンクとを備え、前記調理容器に収容された具材を撹拌状態で加熱調理した後に前記調理容器を上下反転状態で前記調理容器の内壁面を洗浄する自動調理装置であることにより、自動調理の後に調理容器の内壁面を洗浄することができるばかりでなく、以下の本願発明に係る固有の構成により、本願発明に固有の効果を奏する。
【0016】
まず、調理容器で調理された具材を盛り付ける皿を載置する盛付けプレートを備えた載置ユニットが、前記盛付けプレートが洗浄用シンクの開口部を開放する開放位置と洗浄用シンクの開口部に張り渡す閉鎖位置との間でスライド自在になるように設けられていることにより、調理台の容器保持ユニットより前方側の領域が、洗浄用シンク内の掻き落としユニットによるスクレイピング機能と洗浄用シンクに張り渡した盛付けプレートによる食器載置機能との両方の機能を兼ね備えるため、装置全体をコンパクト化することができる。
【0017】
また、洗浄用シンクの開口部に対する盛付けプレートの開閉動作によりスクレイパーを開放位置で起立させる一方で前記スクレイパーを閉鎖位置で倒伏させるように洗浄用シンクの近傍に設けられていることにより、盛付けプレートを開放位置にスライドした際にスクレイパーが洗浄用シンクから上方に向けて突出するため、スクレイパーが調理容器の上下反転した内壁面に確実に当接して、調理容器の内壁面に固着した焦げなどの汚れを確実に掻き落とすことができる。
【0018】
さらに、盛付けプレートを閉鎖位置にスライドした際にスクレイパーが盛付けプレートの下に収納されるため、盛付けプレート上に食器を安定的に載置して効率よく盛り付け作業を行うことができる。
【0019】
本発明の請求項3に係る発明の自動調理装置によれば、掻き落としユニットが、ばね付き交差四節リンク機構を有し、掻き落としユニットのスクレイパーが、盛付けプレートが開放位置にある際に前記ばね付き交差四節リンク機構の起立ばねの弾性力により起立姿勢となることにより、盛付けプレートを開放位置にスライドすれば、起立ばねの弾性力により掻き落としユニットが調理容器の内壁面に弾力的に当接して焦げなどの汚れを掻き落とす起立姿勢となるため、盛付けプレートを開放位置にスライドするだけで焦げなどの汚れを掻き落とす準備を円滑に達成することができる。
【0020】
また、起立姿勢においてスクレイパーが起立ばねの弾性力により洗浄姿勢にある調理容器の内壁面に弾力的に圧接するため、調理容器の内壁面に固着した焦げなどの汚れをいっそう確実に掻き落とすとともに調理容器の内壁面に対するスクレイパーの相対的な過度の摺接状態を回避して両者の摩耗損傷を抑制することができる。
【0021】
更に、掻き落としユニットが、ばね付き交差四節リンク機構を有し、掻き落としユニットのスクレイパーが、盛付けプレートが閉鎖位置にある際に起立ばねの弾性力に抗して倒伏姿勢となることにより、盛付けプレートを閉鎖位置にスライドすれば、掻き落としユニットのスクレイパーが起立ばねに抗して倒伏姿勢となるため、盛付けプレートを閉鎖位置にスライドするだけで、掻き落としユニットが盛付けプレートの下に収納されて、盛付けプレート上に食器を安定的に載置していっそう効率よく盛り付け作業を行うことができる。
【0022】
本発明の請求項4に係る発明の自動調理装置によれば、調理容器が、容器中心軸に対して傾斜している被加熱傾斜面部を備え、スクレイパーが、調理容器の被加熱傾斜面部の内壁面に当接する傾斜辺部を備えていることにより、洗浄姿勢において調理容器を深さ方向の容器中心軸の周りで自転させれば、調理容器の加熱される被加熱傾斜面部の内壁面の全周にわたりスクレイパーの傾斜辺部が当接することとなるため、加熱調理により調理容器の内壁面に強固に固着した焦げなどの汚れを、効率よく掻き落とすことができる。
【0023】
本発明の請求項5に係る発明の自動調理装置によれば、掻き落としユニットが、洗浄用シンクに対して脱着自在に構成されていることにより、調理容器の内壁面に固着した焦げなどの汚れを掻き落とした後に掻き出しユニットを取り外せるため、スクレイパーが掻き落として洗浄用シンク内に落下した焦げなどの汚れを容易に回収することができると共に、取り外した掻き出しユニットを容易に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】本発明の自動調理装置が自動調理を行っている状態を示す模式的斜視図。
【
図1B】本発明の自動調理装置が洗浄用シンクを開放した状態を示す模式的斜視図。
【
図2】本発明の容器保持ユニットに調理容器を装着する方法を示す模式的左側面図。
【
図3A】本発明の掻き落としユニットの構成を示す模式的正面図。
【
図3B】本発明の掻き落としユニットの構成を示す模式的平面図。
【
図3C】本発明の掻き落としユニットの構成を示す模式的右側面図。
【
図4A】本発明の盛付けプレートを開放位置から半開位置に向けてスライドしている状態を示す模式図。
【
図4B】本発明の盛付けプレートが半開位置においてスクレイパーに当接してスクレイパーが起立姿勢から倒伏姿勢に変化する状態を示す模式図。
【
図4C】本発明の盛付けプレートが閉鎖位置までスライドしてスクレイパーが倒伏して収納された状態を示す模式図。
【
図4D】本発明の盛付けプレートが閉鎖位置にあってスクレイパーが倒伏して収納されている状態を示す模式図。
【
図4E】本発明の盛付けプレートが閉鎖位置から半開位置までスライドしてスクレイパーが倒伏姿勢から起立姿勢に変化する状態を示す模式図。
【
図4F】本発明の盛付けプレートが半開位置から開放位置に向けてスライドしてスクレイパーが起立した状態を示す模式図。
【
図5】本発明の調理容器を調理位置から洗浄位置に回動した状態を示す模式的斜視図。
【
図6】本発明のスクレイパーが洗浄位置にある調理容器の内壁面に当接している状態を示す模式図。
【
図7】本発明のスクレイパーと洗浄時の撹拌部材の可動範囲との関係を示す模式的平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、調理台の上部に設けて有底円筒状の調理容器を該調理容器の深さ方向の容器中心軸の周りで自転自在に保持する容器保持ユニットと、前記調理台の前記容器保持ユニットよりも前方域に設けて前記調理容器を洗浄する洗浄用シンクとを備え、前記調理容器に収容された具材を撹拌調理した後に前記調理容器を上下反転状態で前記調理容器の内壁面を洗浄する自動調理装置であって、調理容器に付着する調理後の汚れを掻き落とすスクレイパーを備えた掻き落としユニットが、前記洗浄用シンク内で前記調理容器の上下反転した内壁面により被包されて前記調理容器の内壁面と前記スクレイパーとを当接させるように設けられていることにより、調理容器の内壁面に固着して調理後に残留する焦げなどの汚れを効率よく掻き落とすことができるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0026】
例えば、本発明の自動調理装置は、調理者が起伏ハンドルを手動操作することにより、自動調理後に起倒軸部を中心として容器保持ユニットを揺動させて手前側に倒して、調理容器を上下反転した状態の洗浄姿勢にすることができるが、容器保持ユニットを揺動させて手前側に倒して、調理容器を上下反転した状態の洗浄姿勢にするプロセスを自動化してもよい。
【0027】
なお、本発明に用いるスクレイパーが掻き落とす「汚れ」とは、中華料理などで高温状態の加熱調理を行った際に調理容器の内壁面に固着しがちな具材などの焦げ付きを意味している。
【実施例1】
【0028】
以下に、本発明の一実施例である自動調理装置10について、
図1乃至
図7に基づいて説明する。
ここで、
図1Aは、本発明の自動調理装置が自動調理を行っている状態を示す模式的斜視図であり、
図1Bは、本発明の自動調理装置が洗浄用シンクを開放した状態を示す模式的斜視図であり、
図2は、本発明の容器保持ユニットに調理容器を装着する方法を示す模式的左側面図であり、
図3Aは、本発明の掻き落としユニットの構成を示す模式的正面図であり、
図3Bは、本発明の掻き落としユニットの構成を示す模式的平面図であり、
図3Cは、本発明の掻き落としユニットの構成を示す模式的右側面図であり、
図4Aは、本発明の盛付けプレートを開放位置から半開位置に向けてスライドしている状態を示す模式図であり、
図4Bは、本発明の盛付けプレートが半開位置においてスクレイパーに当接してスクレイパーが起立姿勢から倒伏姿勢に変化する状態を示す模式図であり、
図4Cは、本発明の盛付けプレートが閉鎖位置までスライドしてスクレイパーが倒伏して収納された状態を示す模式図であり、
図4Dは、本発明の盛付けプレートが閉鎖位置にあってスクレイパーが倒伏して収納されている状態を示す模式図であり、
図4Eは、本発明の盛付けプレートが閉鎖位置から半開位置までスライドしてスクレイパーが倒伏姿勢から起立姿勢に変化する状態を示す模式図であり、
図4Fは、本発明の盛付けプレートが半開位置から開放位置に向けてスライドしてスクレイパーが起立した状態を示す模式図であり、
図5は、本発明の調理容器を調理位置から洗浄位置に回動した状態を示す模式的斜視図であり、
図6は、本発明のスクレイパーが洗浄位置にある調理容器の内壁面に当接している状態を示す模式図であり、
図7は、本発明のスクレイパーと洗浄時の撹拌部材の可動範囲との関係を示す模式的平面図である。
【0029】
<自動調理装置の構成>
本実施例の自動調理装置10は、具材を撹拌調理して料理を自動調理する装置であり、床面F上に設置される調理台100と、この調理台100の上面に起伏自在に枢設されている容器保持ユニット200と、この容器保持ユニット200に回動自在に保持されている調理容器300と、調理台100の上面に配置されて調理容器300を加熱する容器加熱ユニット400と、調理後の調理容器300の内壁面を洗浄する容器洗浄ユニット500と、調理後の調理容器300の内周面に固着した焦げなどの汚れを掻き落とす掻き落としユニット600と、調理後の具材を盛り付ける皿などの食器などを載置する載置ユニット700と、容器保持ユニット200、容器加熱ユニット400及び容器洗浄ユニット500を制御する制御ユニット800とを備えている。
【0030】
本実施例の調理台100は、
図1A及び
図1Bに示すように、底面四隅にキャスターを備えた直方体状の台であり、上面が平坦になっている。
【0031】
調理台100の上面の手前側の領域すなわち前方域には、
図1Bに示すように、洗浄用シンク110が設けられており、調理台100の上面の奥側すなわち後方域には、容器保持ユニット200が前後方向へ起伏自在に支持されて設置されている。
【0032】
本実施例の容器保持ユニット200は、
図1B及び
図2に示すように、容器本体310及び撹拌部材320を取り付けて、容器深さ方向(すなわち、調理容器300の深さ方向)に延びる容器中心軸ACを回転中心として容器本体310及び撹拌部材320を自転させる駆動モーターを備えた容器自転機構210と、調理者が起倒軸部220を回動軸として容器保持ユニット200を前後に起伏させるための起伏ハンドル230とを備えている。
【0033】
容器自転機構210は、取り付けられた調理容器300に対して、容器本体310と撹拌部材320とを、容器中心軸ACを共通の回転中心として、それぞれ独立に自転するよう、駆動モーターにより駆動する。
【0034】
本実施例の調理容器300は、
図1A、
図1B、
図2及び
図6に示すように、有底円筒状の金属製の容器本体310と撹拌部材320とを備えている。
【0035】
容器本体310は、容器中心軸ACに対して傾斜する被加熱傾斜面部311と、この被加熱傾斜面部311に連続して容器中心軸ACを中心とする円筒状に構成して円形開口を形成している側面部312と、被加熱傾斜面部311に連続して容器中心軸ACに対して垂直な平坦面からなる底面部313とを備えている。
【0036】
撹拌部材320は、容器本体310の内底面部313に回動自在に配置する基部321と、この基部321に連蔵して容器本体の内壁の形状に対応する形状のヘラ部322と、このヘラ部322の先端付近の容器本体310外に配置された検知用マグネット323とを備えている。
【0037】
調理容器300は、容器保持ユニット200に対し容器中心軸ACを回転中心として自転自在に装着されているが、装着する際には、
図2に示すように、まず容器本体310の底部を容器自転機構210の対応個所に設置し、しかる後に撹拌部材320を容器本体310の底面部313に、容器本体310とは独立に回動自在に配置する。
【0038】
撹拌部材320を容器本体310の底面部313に配置する際には、容器自転機構210内に配置された不図示の永久磁石と撹拌部材320の基部321内に配置された不図示の永久磁石とが相互に強力に引力を及ぼし合うことによるマグネットカップリング機構を構成して、容器本体310の底面部313が容器自転機構210と撹拌部材320の基部321とにより強力に挟み込まれるため、容器本体310への装着状態が安定する。
【0039】
なお、後述するように、調理容器300を上下反転した状態の洗浄姿勢で、洗浄用シンク110の開口部よりも低い位置に配置して調理容器300の内面を洗浄できるように、調理容器300の外形寸法は、洗浄用シンク110の開口部の寸法よりも小さく設定されている。
【0040】
本実施例の容器加熱ユニット400は、
図1A、
図1B及び
図2に示すように、調理台100の上面であって調理姿勢にある調理容器300の容器本体310の被加熱傾斜面部311に至近距離で離間対向する位置に配置されている。
【0041】
容器加熱ユニット400の内部には、誘導コイルが設置されており、電磁誘導によって調理姿勢の容器本体310の被加熱傾斜面部311を加熱するように構成されている。
【0042】
本実施例の容器洗浄ユニット500は、
図1B及び
図6に示すように、調理台100の前方域に設けられている洗浄用シンク110内に設置されており、直立する洗浄ユニット本体510と洗浄水を噴出する複数の洗浄ノズル520とを備えている。
【0043】
<掻き落としユニットの構成>
本実施例の掻き落としユニット600は
図1B、
図3A乃至
図3C及び
図6に示すように、掻き落としユニット600全体を支持する固定リンク610と、外力を受ける入力リンク620と、出力リンクとしてのスクレイパー630と、固定リンク610とスクレイパー630とを繋ぐカップリングリンク640と、固定リンク610とカップリングリンク640に弾性力を加える起立ばね650とを備えて、ばね付きの四節交叉リンク機構を構成している。
【0044】
固定リンク610は、アーム部611と支持部612とスクレイパー規制部613と入力リンク規制部614と取付ねじ615とを備えており、支持部612において取付ねじ615によって洗浄用シンク110内に設けられている容器洗浄ユニット500に取り付けられている。
【0045】
入力リンク620は、当接入力部621とばね孔部622とを備えて入力固定節部600aにおいて固定リンク610のアーム部611に揺動自在に結合している。
【0046】
スクレイパー630は、出力リンクの機能を有し、容器本体310の被加熱傾斜面部311の内壁面に当接する傾斜辺部631を備えて出力固定節部600bにおいて固定リンク610のアーム部611に揺動自在に結合している。
【0047】
カップリングリンク640は、入力動節部600cにおいて入力リンク620と揺動自在に結合すると共に、出力動節部600dにおいてスクレイパー630と揺動自在に結合している。
【0048】
起立ばね650は、螺旋状のコイル部651とその両端に位置する二つの取付け部652、652を備えており、一方の取付け部652が入力リンク620のばね孔部622に係合すると共に、他方の取付け部652がカップリングリンク640のばね孔部641に係合している。
【0049】
本実施例の掻き落としユニット600は、以上のようにばね付き四節交叉リンク機構を備えて構成されており、当接入力部621に外力が加わらないときには、起立ばね650の弾性力によって入力リンク620が時計回りに揺動変位し、この揺動変位がカップリングリンク640を介してスクレイパー630に伝達されて、スクレイパー630が反時計回りに揺動変位して、
図3Aに示すように、起立姿勢となる。
【0050】
入力リンク620が時計回りに揺動変位すると、固定リンク610の入力リンク規制部614に当たって停止することにより入力リンク620の過剰な揺動変位が規制され、これに伴ってカップリングリンク640による動力伝達が停止するため、スクレイパー630が起立姿勢を越えて過剰に揺動変位することが抑制されている。
【0051】
また、当接入力部621に左向きの外力が加わると、入力リンク620が、起立ばね650の弾性力に抗して入力固定節部600aを中心として反時計回りに揺動変位し、この揺動変位がカップリングリンク640を介してスクレイパー630に伝達されて、スクレイパー630が時計回りに揺動変位して、倒伏姿勢となる。
【0052】
当接入力部621に加わる外力が大きい場合にはスクレイパー630が勢いよく揺動するが、スクレイパー630が時計回りに揺動変位すると、スクレイパー630が固定リンク610のスクレイパー規制部613に当たって停止することにより過剰な揺動変位が規制され、スクレイパー630が倒伏姿勢を越えて過剰に揺動変位することが抑制されている。
【0053】
<載置ユニットの構成>
本実施例の載置ユニット700は、
図1A、
図1B及び
図4A乃至
図4Fに示すように、調理容器300による具材Iの自動調理中に盛り付けるための食器、すなわち皿Dを載置しておく食器載置台710と、調理後の具材Iを盛り付ける皿Dを載置する盛付けプレート720とを備えて調理台100の上面の手前側すなわち前方域に、洗浄用シンク110と隣接して配置されている。
【0054】
載置ユニット700は、食器載置台710内に収納可能な盛付けプレート720が、洗浄用シンク110の開口部を開放する開放位置と洗浄用シンク110の開口部に張り渡す閉鎖位置とのいずれをも実現するように、スライド自在に構成されている。
【0055】
調理者が盛付けプレート720のプレート操作部721を手で持って、左右にスライド操作することにより、盛付けプレート720を開放位置と閉鎖位置のいずれにも配置することができる。
【0056】
本実施例の制御ユニット800は、
図1A、
図1B及び
図5に示すように、表示パネル810と操作部820とヘラ部検知センサ830とを備えて、調理台100の上面の奥側すなわち後方域に設けられている。
【0057】
制御ユニット800は、自動調理装置10の状態及び調理者による操作内容等を表示パネル810に表示するとともに、操作部820等の操作による調理者の指示に従って、容器保持ユニット200の容器自転機構210、容器加熱ユニット400及び容器洗浄ユニット500の動作を制御する。
【0058】
制御ユニット800は、調理容器300の容器本体310と撹拌部材320とを、容器中心軸ACを共通の回転中心としてそれぞれ独立に自転するよう、容器自転機構210を駆動制御する。
【0059】
また、制御ユニット800は、ヘラ部検知センサ830により、調理容器300の撹拌部材320に設けられている検知用マグネット323を磁気的に検知する構成となっており、自動調理装置10が
図1Aに示す調理姿勢で自動調理をしている際に、容器中心軸ACを回転中心として自転している撹拌部材320の検知用マグネット323がヘラ部検知センサ830に対向する基準位置に来たことを繰り返し検知する構成となっている。
【0060】
制御ユニット800は、自動調理を終了する際には、ヘラ部検知センサ830により検知用マグネット323が検知される位置、すなわち、撹拌部材320の検知用マグネット323がヘラ部検知センサ830に対向する基準位置にあるときに、撹拌部材320の自転が停止するように容器自転機構210を駆動制御する。
【0061】
また、制御ユニット800は、撹拌部材320の基準位置からの自転角度を制御する機能を有しており、基準位置を起点とする所定の角度について撹拌部材320を正転又は反転させるように容器自転機構210を駆動制御する。
【0062】
<自動調理プロセス>
次に、自動調理装置10の調理動作について説明する。
まず、自動調理装置10の調理者は、自動調理装置10が
図1Aのように調理容器300を斜め手前上方に開口させる調理姿勢にあるときに、自動調理の対象となる具材Iを調理容器300内に投入する。
【0063】
その後、自動調理装置10が、調理者による操作部820の操作に基づく調理指示を受け取ると、制御ユニット800が容器加熱ユニット400に通電して交流電流を印加することで、容器加熱ユニット400が当該交流電流と同じ周波数で交番する磁束を調理容器300に向けて放出し、調理容器300に誘導電流が発生して調理容器300が発熱する。
【0064】
また、制御ユニット800が容器保持ユニット200の容器自転機構210を駆動して、調理容器300の容器本体310と撹拌部材320とを、容器中心軸ACを共通の回転中心としてそれぞれ独立に自転させる。
【0065】
この容器本体310の自転と撹拌部材320の自転との相互作用により、調理容器300に投入された具材Iが調理容器300内で加熱されて撹拌調理される。
【0066】
このように、調理姿勢において容器加熱ユニット400が調理容器300の被加熱傾斜面部311を加熱しているため、具材Iに対する加熱はもっぱら被加熱傾斜面部311の内壁面において実現する。
【0067】
自動調理前または自動調理中に盛り付けの準備を行う場合には、盛り付けるための食器、すなわち皿Dを載置ユニット700の食器載置台710に置くことができ、盛付けプレート720をスライドさせて洗浄用シンク110の開口部を閉鎖する位置まで引き出しておけば、盛付けプレート720の上に盛付用の皿Dを載置しておくことができる。
【0068】
自動調理が終了した後に、盛付けプレート720の上に載置してある皿Dに具材を盛り付けることができるが、盛り付けた直後に洗浄用シンク110の開口部を開放したい場合には、具材を盛り付けた皿Dをいったん食器載置台710の上に移動しておけば、盛付けプレート720をスライドさせて洗浄用シンク110の開口部を開放することができる。
【0069】
以上のプロセスで自動調理を行った際には、容器本体310の内壁面に調味料等が付着することとなるため、容器本体310の内壁面を洗浄することが必要となるが、特に、被加熱傾斜面部311の内壁面には、
図1B及び
図6に示すように、加熱による焦げなどの汚れBが強固に付着する場合があり、洗浄だけでなく焦げなどの汚れBを掻き落とすためのスクレイピングを行う必要性が生じる。
【0070】
<スクレイピングの準備>
次に、調理容器300のスクレイピングを行うための掻き落としユニット600の準備について説明する。
なお、前述したとおり、本実施例の掻き落としユニット600は、
図1Bに示すように洗浄用シンク110内に設置されている容器洗浄ユニット500に取り付けられており、また、載置ユニット700は、
図1A及び
図1Bに示すように、食器載置台710と盛付けプレート720とを備えて洗浄用シンク110と隣接して配置されて、盛付けプレート720が洗浄用シンク110の開口部を開放する開放位置と洗浄用シンク110の開口部に張り渡す閉鎖位置との間でスライド自在に構成されている。
【0071】
掻き落としユニット600と盛付けプレート720とのこのような配設関係により、盛付けプレート720を洗浄用シンク110の開放位置からスライドさせて半開位置に至るまでは、
図4Aに示すように、盛付けプレート720と当接入力部621とが離間しているため、掻き落としユニット600に加わる外力がないため、起立ばね650の弾性力により、スクレイパー630がそれぞれ起立姿勢となっている。
【0072】
盛付けプレート720を、半開位置を越えてスライドさせると、
図4Bに示すように、盛付けプレート720のプレート操作部721が当接入力部621に右から当接するため、起立ばね650の弾性力に抗して、入力リンク620とスクレイパー630とがそれぞれ倒伏する方向に揺動変位する。
【0073】
盛付けプレート720を洗浄用シンク110の閉鎖位置までスライドさせれば、
図4Cに示すように、掻き落としユニット600のスクレイパー630が起立ばね650に抗して倒伏姿勢となるため、盛付けプレート720を洗浄用シンク110の閉鎖位置にスライドさせるだけで、スクレイパー630が倒伏姿勢で盛付けプレート720の下に収納される。
【0074】
このため、自動調理の終了時には、洗浄用シンク110の閉鎖位置にある盛付けプレート720の上に、盛り付け用の食器である皿Dを安定的に載置して、盛り付け作業を行うことができる。
【0075】
盛り付け作業中は、盛付けプレート720が閉鎖位置にあり、
図4Dに示すように、掻き落としユニット600の入力リンク620の当接入力部621が盛付けプレート720の下側面に当接して左下向きの外力を受けていることにより、スクレイパー630が倒伏して洗浄用シンク110内で盛付けプレート720の下側に収納された状態となっている。
【0076】
調理容器300のスクレイピングを行うためには、洗浄用シンク110の開放位置まで盛付けプレート720をスライドさせる必要があるため、具材を盛り付けた皿Dをいったん食器載置台710の上などに移動させておく。
【0077】
その後、盛付けプレート720を、食器載置台710内に収容する方向に徐々にスライドさせて、洗浄用シンク110を半開状態にすると、
図4Eに示すように、当接入力部621が盛付けプレート720の下側面から離脱して盛付けプレート720のプレート操作部721に左横から当接する位置関係となるため、起立ばね650の弾性力により、入力リンク620とスクレイパー630とがそれぞれ起立する方向に揺動変位すると共に、入力リンク620が盛付けプレート720に右向きの力を加えて、盛付けプレート720を右向きにスライドさせる作用効果が生じる。
【0078】
盛付けプレート720を、更に食器載置台710内に収容する方向にスライドさせると
図4Fに示すように、盛付けプレート720と当接入力部621とが離間すると共に、起立ばね650の弾性力により、入力リンク620とスクレイパー630とがそれぞれ起立するまで揺動変位して停止する。
【0079】
盛付けプレート720を更にスライドさせて食器載置台710内に収容すれば、すなわち、洗浄用シンク110の開放位置までスライドさせれば、洗浄用シンク110の開口部が完全に開放されて、スクレイピングの準備が整う。
【0080】
このように、調理台100の容器保持ユニット200より前方側の領域が、洗浄用シンク110内の掻き落としユニット600によるスクレイピング機能と、洗浄用シンク110に張り渡した盛付けプレート720による食器載置機能との両方の機能を兼ね備えるため、装置全体のコンパクト化が実現している。
【0081】
<スクレイピングプロセス>
掻き落としユニット600のスクレイパー630が直立してスクレイピングの準備ができた後に、
図5に示すように、調理者が容器保持ユニット200の起伏ハンドル230を手前に引いて、起倒軸部220を中心として容器保持ユニット200を揺動させて手前側に倒すことにより、
図6に示すように、調理容器300が上下反転した状態の洗浄姿勢で、すなわち調理容器300の開口が下方に向けられた状態で、洗浄用シンク110内に配置される。
【0082】
この時、起立ばね650の弾性力により起立姿勢となっているスクレイパー630が、調理容器300の容器本体310の内壁面に当接して外力を受けて倒伏姿勢に近づく揺動変位が生じる。
【0083】
この際、調理容器300の容器本体310の内壁面から加えられる外力に対し、掻き落としユニット600の起立ばね650がその弾性力によって抗するため、スクレイパー630が容器本体310の内壁面に弾力的に当接し、容器本体310の内壁面に対するスクレイパー630の相対的な過度の摺接状態が回避されて、両者の摩耗損傷が抑制される。
【0084】
しかも、スクレイパー630が、調理容器300の容器本体310の被加熱傾斜面部311の内壁面に当接する傾斜辺部631を備えていることにより、洗浄姿勢において制御ユニット800が容器保持ユニット200の容器自転機構210を駆動して、調理容器300の容器本体310を、容器中心軸ACを回転中心として自転させれば、被加熱傾斜面部311の内壁面の全周にわたりスクレイパー630の傾斜辺部631が当接し、加熱調理により強固に固着した焦げなどの汚れBを、被加熱傾斜面部311の内壁面の全周にわたり掻き落とす。
【0085】
更に、掻き落としユニット600が、洗浄用シンク110内に配置された調理容器300の容器本体310の上下反転した内壁面によって囲まれた空間内で掻き落とし機能を発揮することにより、スクレイパー630が掻き落とした焦げなどの汚れBが調理台100の上面に散乱することなく調理容器300の内壁面から洗浄用シンク110内に落下するため、掻き落とした焦げなどの汚れBを洗浄後に容易に回収することができる。
【0086】
本実施例の掻き出しユニット600は、洗浄用シンク110に対して脱着自在に構成されており、より具体的には、固定リンク610の支持部612において取付ねじ615によって洗浄用シンク110内に設けられている容器洗浄ユニット500に取り付けられている。
【0087】
従って、調理容器300の容器本体310の内壁面に固着した焦げなどの汚れBを掻き落とした後に掻き出しユニット600を取り外せるため、取り外した掻き落としユニット600自体を容易に洗浄することができる。
【0088】
<洗浄プロセス>
本実施例の自動調理装置10は、洗浄姿勢となっている調理容器300に対して、掻き落としユニット600によるスクレイピングと同時に、容器洗浄ユニット500による洗浄を行う。
【0089】
本実施例の容器洗浄ユニット500は、
図1B及び
図6に示すように、直立する洗浄ユニット本体510と洗浄水を噴出する複数の洗浄ノズル520とを備えて、調理台100の前方域に設けられている洗浄用シンク110内に設置されている。
【0090】
複数の洗浄ノズル520は、
図6に示すように、上下が反転した洗浄姿勢の容器本体310の底面部313、被加熱傾斜面部311及び側面部312の内壁面にそれぞれ対応して、洗浄水の噴射方向が上方、斜め右上方及び右向きとなるように洗浄ユニット本体510に設けられている。
【0091】
調理者による操作部820の操作に基づく洗浄指示を受け取ると、制御ユニット800が容器洗浄ユニット500に通電して不図示のポンプをON/OFF制御することで、容器洗浄ユニット500の複数の洗浄ノズル520がそれぞれの方向に洗浄水を噴出し、同時に、制御ユニット800が容器保持ユニット200の容器自転機構210を駆動して、調理容器300の容器本体310と撹拌部材320とを、容器中心軸ACを共通の回転中心としてそれぞれ独立に自転させることにより、調理容器300の容器本体310と撹拌部材320とをまとめて洗浄することができる。
【0092】
なお、自動調理プロセスにおいて、撹拌部材320のヘラ部322に調味料等が付着しやすいため、洗浄プロセスにおいては、撹拌部材320のヘラ部322が洗浄ノズル520から噴出される洗浄水により確実に洗浄されることが好ましい。
【0093】
このため、本実施例では、前述した起伏ハンドル230を手動操作することにより、自動調理後に起倒軸部220を中心として容器保持ユニット200を揺動させて手前側に倒して、調理容器300を洗浄姿勢で洗浄用シンク110内に配置する際に、調理終了時に基準位置で停止した撹拌部材320が配置される0度の位置(
図7の破線)から、反時計回りに125度の位置(
図7の二点鎖線)までの範囲で往復回転運動をするように、制御ユニット800が容器自転機構210の駆動を制御する。
【0094】
撹拌部材320が上述の範囲で往復自転運動をすることにより、複数の洗浄ノズル520から噴出される洗浄水のうち、斜め右上方及び右向きに噴出される洗浄水が、常に撹拌部材320のヘラ部322のいずれかの部位に吹き付けられる。
【0095】
また、容器自転機構210による撹拌部材320の自転駆動が、上述のように制御ユニット800に制御される結果として、洗浄時の撹拌部材320の可動範囲が限定されることとなる。
【0096】
掻き落としユニット600は、
図7に示すように、撹拌部材320の可動範囲の外に配置されて容器洗浄ユニット500に取り付けられている。
【0097】
このように、掻き落としユニット600が、撹拌部材320の可動範囲の外に配置されていることにより、調理容器300を洗浄用シンク110に向けて伏せた状態の洗浄姿勢で、調理容器300を容器自転機構210により自転させて洗浄する洗浄プロセスにおいては、撹拌部材320と掻き落としユニット600とが常に離隔配置されるため、撹拌部材320と掻き落としユニット600との接触による破損を防止することができ、撹拌部材320と掻き落としユニット600との間のクリアランスによりメンテナンス性が高い。
【0098】
また、掻き落としユニット600が、特に平面視において、撹拌部材320の可動範囲の外に配置されていることにより、仮に調理容器300を上下反転した状態の洗浄姿勢にしている洗浄中に何らかの理由による緊急停止によって撹拌部材320が任意の位置で停止しても、撹拌部材320と掻き落としユニット600との干渉を生じることなく、調理容器300を洗浄姿勢から調理姿勢に戻して復旧作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0099】
10 自動調理装置
100 調理台
110 洗浄用シンク
200 容器保持ユニット
210 容器自転機構
220 起倒軸部
230 起伏ハンドル
300 調理容器
310 容器本体
311 被加熱傾斜面部
312 側面部
313 底面部
320 撹拌部材
321 基部
322 ヘラ部
323 検知用マグネット
400 容器加熱ユニット
500 容器洗浄ユニット
510 洗浄ユニット本体
520 洗浄ノズル
600 掻き落としユニット(ばね付き交差四節リンク機構)
600a 入力固定節部
600b 出力固定節部
600c 入力動節部
600d 出力動節部
610 固定リンク
611 アーム部
612 支持部
613 規制部
614 入力リンク規制部
615 取付ねじ
620 入力リンク
621 当接入力部
622 ばね孔部
630 スクレイパー
631 傾斜辺部
640 カップリングリンク
641 ばね孔部
650 起立ばね
651 コイル部
652 取付け部
700 載置ユニット
710 食器載置台
720 盛付けプレート
721 プレート操作部
800 制御ユニット
810 表示パネル
820 操作部
830 ヘラ部検知センサ
F 床面
I 具材
D 皿
B 焦げなどの汚れ
AC 容器中心軸
【要約】
【課題】加熱調理によって調理容器の内壁面に固着して調理後に残留する焦げなどの汚れを効率よく掻き落とすことができる自動調理装置を提供すること。
【解決手段】洗浄用シンク110を備えた調理台100と、調理容器300を容器中心軸ACの周りで自転自在に保持する容器保持ユニット200と、調理容器に収容された具材Iを撹拌調理した後に調理容器を上下反転状態で調理容器の内壁面を洗浄し、調理容器に付着する焦げなどの汚れBを掻き落とすスクレイパー630を備えた掻き落としユニット600を備え、洗浄用シンク内で調理容器の上下反転した内壁面により被包されて調理容器の内壁面とスクレイパーとを当接させる自動調理装置10。
【選択図】
図6