(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】自動調理装置および自動調理方法
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20241223BHJP
A47J 36/34 20060101ALI20241223BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
A47J27/14 D
A47J27/14 E
A47J36/34
A47J27/00 109L
(21)【出願番号】P 2024066432
(22)【出願日】2024-04-16
【審査請求日】2024-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519020616
【氏名又は名称】TechMagic株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 雄一
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105078209(CN,A)
【文献】特開平04-269923(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0061171(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14
A47J 36/34
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材を収容する有底円筒状の容器本体と該容器本体に着脱自在に装着され
て前記容器本体と独立して自転する撹拌部材とを有する調理容器と、該調理容器を保持した状態で前記調理容器の撹拌部材を自転させる容器保持ユニットと、該容器保持ユニットを駆動制御する制御ユニットとを備え、前記撹拌部材で前記容器本体に収容された具材を撹拌調理する自動調理装置であって、
前記撹拌部材に設けた被検出子と前記調理容器の外部に配置されて前記被検出子を検出する検出子とからなる前記撹拌部材の回動位置検出機構を備えていることを特徴とする自動調理装置。
【請求項2】
前記被検出子が、磁石を有し、
前記検出子が、磁気センサーであることを特徴とする請求項1に記載の自動調理装置。
【請求項3】
前記容器保持ユニットが、該容器保持ユニットを配置する調理台の前後方向に前記調理容器を起伏自在であり、
前記検出子が、前記調理容器を前記調理台の前後方向に起伏させる際の前記調理容器の通過範囲の外に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の自動調理装置。
【請求項4】
前記撹拌部材が、前記容器本体と対向する内面と該内面と反対側の外面とを有し、
前記被検出子が、前記撹拌部材の外面に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の自動調理装置。
【請求項5】
前記容器保持ユニットが、該容器保持ユニットを配置する調理台の前後方向に前記調理容器を起伏自在であり、
前記被検出子が、前記撹拌部材の先端近傍に設けられ、
前記調理容器を前傾させた盛付補助姿勢において前記撹拌部材の先端が前記調理台に載置された皿から最も離れる退避位置に位置するように、前記制御ユニットが前記容器保持ユニットを駆動制御することを特徴とする請求項1に記載の自動調理装置。
【請求項6】
具材を収容する有底円筒状の容器本体と該容器本体に着脱自在に装着され
て前記容器本体と独立して自転する撹拌部材とを有する調理容器と、該調理容器を保持した状態で調理台の前後方向に起伏自在とすると共に前記撹拌部材を自転させる容器保持ユニットと、該容器保持ユニットを駆動制御する制御ユニットと、前記撹拌部材の先端近傍に設けた被検出子と前記調理容器の外部に配置されて前記被検出子を検出する検出子とからなる前記撹拌部材の回動位置検出機構を備えた自動調理装置による自動調理方法であって、
前記制御ユニットが前記撹拌部材の回動位置を把握する回動位置把握ステップと、
前記調理容器を後傾させた調理姿勢で前記調理容器の撹拌部材を自転させて前記容器本体に収容された具材を撹拌調理する撹拌調理ステップと、
該撹拌調理ステップの終了後に前記調理容器を盛付補助姿勢まで前傾させる盛付補助ステップとを備え、
前記撹拌部材は、前記盛付補助姿勢において前記撹拌部材の先端が前記調理台に載置された皿から最も離れた退避位置となっていることを特徴とする自動調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動調理装置および自動調理方法に関するものであって、特に、具材を収容する容器本体と容器本体に着脱自在に装着されて容器本体と独立して自転する撹拌部材とを有した調理容器に収容された具材を撹拌調理する自動調理装置および自動調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食業界では調理人の確保、調理スキルの維持、調理環境の整備等の諸事情から、調理業務の自動化が進展している。
そこで、従来、有底円筒状の調理容器を保持する容器保持ユニットと、この容器保持ユニットに保持された調理容器を調理台の前方域と後方域との間で起伏自在に回動させる回動ユニットと、これらの容器保持ユニットおよび回動ユニットを駆動制御する制御ユニットとを備え、調理容器に収容された具材を少なくとも撹拌調理する自動調理装置において、調理容器が、容器本体の内底面または内側面に設けて容器本体の内部空間に向けて突出する撹拌部材を有している自動調理装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した自動調理装置では、撹拌部材が調理容器の容器本体と一体になって回転することから、撹拌調理が終わった際の撹拌部材の回動停止位置によっては撹拌部材が容器本体内の料理を堰き止めてしまい、料理の盛り付けを行う者が容器本体内の料理が取り出しにくくなってしまう。
他方、料理人の鍛錬された撹拌動作の技能をよりリアルかつ高度に再現するために、撹拌部材が容器本体に対して着脱自在とした場合、前述の容器本体と撹拌部材とが一体となって回転する調理容器を備えた自動調理装置に比べると、自動調理装置が容器本体の回動停止位置から撹拌部材の回動停止位置を検出することができず、自動調理装置による撹拌部材の回動位置をより一層把握しにくくなる。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、容器本体に着脱自在で容器本体と独立して自転する撹拌部材が容器本体に対して自転した際の回動位置を把握する自動調理装置および自動調理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、具材を収容する有底円筒状の容器本体と該容器本体に着脱自在に装着されて前記容器本体と独立して自転する撹拌部材とを有する調理容器と、該調理容器を保持した状態で前記調理容器の撹拌部材を自転させる容器保持ユニットと、該容器保持ユニットを駆動制御する制御ユニットとを備え、前記撹拌部材で前記容器本体に収容された具材を撹拌調理する自動調理装置であって、前記撹拌部材に設けた被検出子と前記調理容器の外部に配置されて前記被検出子を検出する検出子とからなる前記撹拌部材の回動位置検出機構を備えていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載された自動調理装置の構成に加えて、前記被検出子が、磁石を有し、前記検出子が、磁気センサーであることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載された自動調理装置の構成に加えて、前記容器保持ユニットが、該容器保持ユニットを配置する調理台の前後方向に前記調理容器を起伏自在であり、前記検出子が、前記調理容器を前記調理台の前後方向に起伏させる際の前記調理容器の通過範囲の外に配置されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載された自動調理装置の構成に加えて、前記撹拌部材が、前記容器本体と対向する内面と該内面と反対側の外面とを有し、前記被検出子が、前記撹拌部材の外面に配設されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載された自動調理装置の構成に加えて、前記容器保持ユニットが、該容器保持ユニットを配置する調理台の前後方向に前記調理容器を起伏自在であり、前記被検出子が、前記撹拌部材の先端近傍に設けられ、前記調理容器を前傾させた盛付補助姿勢において前記撹拌部材の先端が前記調理台に載置された皿から最も離れる退避位置に位置するように、前記制御ユニットが前記容器保持ユニットを駆動制御することにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、具材を収容する有底円筒状の容器本体と該容器本体に着脱自在に装着されて前記容器本体と独立して自転する撹拌部材とを有する調理容器と、該調理容器を保持した状態で調理台の前後方向に起伏自在とすると共に前記撹拌部材を自転させる容器保持ユニットと、該容器保持ユニットを駆動制御する制御ユニットと、前記撹拌部材の先端近傍に設けた被検出子と前記調理容器の外部に配置されて前記被検出子を検出する検出子とからなる前記撹拌部材の回動位置検出機構を備えた自動調理装置による自動調理方法であって、前記制御ユニットが前記撹拌部材の回動位置を把握する回動位置把握ステップと、前記調理容器を後傾させた調理姿勢で前記調理容器の撹拌部材を自転させて前記容器本体に収容された具材を撹拌調理する撹拌調理ステップと、該撹拌調理ステップの終了後に前記調理容器を盛付補助姿勢まで前傾させる盛付補助ステップとを備え、前記撹拌部材は、前記盛付補助姿勢において前記撹拌部材の先端が前記調理台に載置された皿から最も離れた退避位置となっているより、前述した課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明の自動調理装置によれば、撹拌部材に設けた被検出子と、調理容器の外部に配置されて被検出子を検出する検出子とからなる撹拌部材の回動位置検出機構を備えていることにより、検出子がこの検出子を通過する被検出子を検出することで制御ユニットが撹拌部材の回動位置を把握するため、撹拌部材と容器保持ユニットとの係合形態がいかなるものであって、容器本体に着脱自在で容器本体と独立して自転する撹拌部材が容器本体に対して自転した際の回動位置を把握することができ、その結果として、調理終了後に料理の盛り付けを行う者が調理容器内の料理を皿に盛り付ける際や調理容器を自動洗浄する際に、撹拌部材を盛り付けや洗浄に支障のない最適な退避位置に自動的に退避することも可能となる。
【0013】
請求項2に係る発明の自動調理装置によれば、請求項1に係る発明の自動調理装置が奏する効果に加えて、被検出子が、磁石を有し、検出子が、磁気センサーであることにより、検出子の周辺の磁場変化で制御ユニットが撹拌部材の回動位置を把握するため、検出子が光学的に被検出子を検出する場合に比べて、検出子または被検出子に油汚れのような調理由来の汚れが生じたとしても確実に制御ユニットが撹拌部材の回動位置を把握することができるだけでなく、自動調理装置の周辺で調理補助作業等を行う者への影響がないことに加え、検出子が渦電流で被検出子を検出するような近接センサーである場合に比べて、検出子と撹拌部材との相対距離が離間していても検出性能が確保できるため、自動調理装置の装置設計の自由度を向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明の自動調理装置によれば、請求項1に係る発明の自動調理装置が奏する効果に加えて、検出子が、調理容器を調理台の前後方向に起伏させた際の調理容器の通過範囲の外に配置されていることにより、容器保持ユニットが調理容器を前後方向に起伏させたとしても調理容器が検出子と干渉しなくなるため、容器保持ユニットが調理容器を前後方向に起伏させて様々な姿勢に容易にとることができる。
【0015】
請求項4に係る発明の自動調理装置によれば、請求項1に係る発明の自動調理装置が奏する効果に加えて、被検出子が、撹拌部材の外面に配設されていることにより、自動調理装置が具材を撹拌調理する際に具材や調味料等が被検出子に付着しにくくなるため、被検出子が具材等によって汚れることを抑制することができる。
【0016】
請求項5に係る発明の自動調理装置によれば、請求項1に係る発明の自動調理装置が奏する効果に加えて、被検出子が、撹拌部材の先端近傍に設けられ、調理容器を前傾させた盛付補助姿勢において撹拌部材の先端が調理台に載置された皿から最も離れる退避位置に位置するように、制御ユニットが容器保持ユニットを駆動制御することにより、盛付補助姿勢において撹拌部材の先端が上方側に位置するため、料理の盛り付けを行う者が調理容器内の料理を皿に盛り付ける際に、料理の盛り付けを行う者が調理容器内の料理を確実に取り出しやすくすることができる。
【0017】
請求項6に係る発明の自動調理方法によれば、撹拌部材に設けた被検出子と、調理容器の外部に配置されて被検出子を検出する検出子とからなる撹拌部材の回動位置検出機構を備えていることにより、検出子がこの検出子を通過する被検出子を検出することで制御ユニットが撹拌部材の回動位置を把握するため、撹拌部材と容器保持ユニットとの係合形態がいかなるものであって、容器本体に着脱自在で容器本体と独立して自転する撹拌部材が容器本体に対して自転した際の回動位置を把握することができる。
さらに、制御ユニットが撹拌部材の回動位置を把握する回動位置把握ステップと、撹拌調理ステップの終了後に調理容器を盛付補助姿勢まで前傾させる盛付補助ステップとを備え、撹拌部材は、盛付補助姿勢において撹拌部材の先端が調理台に載置された皿から最も離れた退避位置となっていることにより、盛付補助姿勢において撹拌部材の先端が上方側に位置決めされるため、料理の盛り付けを行う者が調理容器内の料理を皿に盛り付ける際に、料理の盛り付けを行う者が調理容器内の料理を確実に取り出しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施例である自動調理装置10の斜視図。
【
図2】
図1に示す自動調理装置10のシステム構成図。
【
図3】
図1に示す制御ユニット800のハードウェア構成図。
【
図5】
図1に示す調理容器300に具材が投入された際の調理容器300の正面図。
【
図6】
図5に示す自動調理装置10の左側面部分断面図。
【
図8】
図1に示す自動調理装置10の盛付補助姿勢における左側面図。
【
図9】洗浄姿勢における撹拌部材320の回動範囲を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の自動調理装置は、具材を収容する有底円筒状の容器本体とこの容器本体に着脱自在に装着されて容器本体と独立して自転する撹拌部材とを有する調理容器と、この調理容器を保持した状態で調理容器の撹拌部材を自転させる容器保持ユニットと、この容器保持ユニットを駆動制御する制御ユニットとを備え、撹拌部材で容器本体に収容された具材を撹拌調理する自動調理装置であって、撹拌部材に設けた被検出子と調理容器の外部に配置されて被検出子を検出する検出子とからなる撹拌部材の回動位置検出機構を備え、容器本体に着脱自在な撹拌部材が自転した際の回動位置を把握するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0020】
例えば、本発明の自動調理装置は、主に飲食店の店舗内に設置されるが、本発明の自動調理装置の設置場所については、これに限られるものではなく、コンビニエンスストア、フードコート、事業所、家庭等に設置されてもよい。
【0021】
例えば、本発明の自動調理装置が調理する具材については、米や麺、野菜、魚、穀物、各種調味料等いかなる食材であってもよい。
【0022】
例えば、本実施例の自動調理装置では、調理容器を誘導加熱する容器加熱ユニットを有して調理容器に収容された具材を加熱調理してもよいが、調理容器に収容された具材を加熱せずに撹拌調理するだけであってもよい。
【0023】
例えば、本実施例の自動調理装置において、容器保持ユニットと撹拌部材とをマグネットカップリングによって結合することで撹拌部材を容器本体に対して着脱自在にして、容器保持ユニットが撹拌部材を自転させることがメンテナンスや構造の簡便化の観点から好ましいが、容器本体が容器保持ユニットによって自転する場合に容器本体の自転の影響を受けずに撹拌部材が容器保持ユニットによって自転できれば、撹拌部材を容器本体に対して着脱自在とするための具体的な構造はいかなるものであってもよい。
【0024】
例えば、検出子による被検出子の検出は、磁気による検出が好ましいが、レーザー等を用いた光学的な検出や渦電流による検出等であってもよい。
【実施例1】
【0025】
以下、
図1乃至
図9に基づいて、本発明の一実施例である自動調理装置10を説明する。
【0026】
<1.自動調理装置の基本構成>
まず、
図1乃至
図4に基づいて、自動調理装置10の基本構成について説明する。
図1は本発明の一実施例である自動調理装置10の斜視図であり、
図2は
図1に示す自動調理装置10のシステム構成図であり、
図3は
図1に示す制御ユニット800のハードウェア構成図であり、
図4は
図1に示す自動調理装置10の左側面図である。
なお、
図4においては具材を省略している。
【0027】
まず、自動調理装置10は、
図1に示すように、床面Fに移動自在に配置されている。
そして、この自動調理装置10は、基台となる調理台100と、この調理台100に載置される容器保持ユニット200と、この容器保持ユニット200により自転自在に保持される調理容器300と、調理台100に載置されて調理容器300を誘導加熱する容器加熱ユニット400と、調理台100に配設される容器洗浄ユニット500および掻き落としユニット600と、調理容器300の開口面を開閉自在にするカバー700と、調理台100に載置されて自動調理装置10全体を統合制御する制御ユニット800とを備え、調理容器300に収容された具材を撹拌調理して料理を自動調理するものである。
【0028】
調理台100は、底面に設けられた複数のキャスター110と、天面100Aの前方域に形成されたシンク120と、このシンク120を開閉自在にすると共に皿などを載置する皿載せ台130とを有している。
皿載せ台130は、左右方向にスライド自在でシンク120の開口面を閉鎖すると共に撹拌調理後の食材を盛り付ける皿が載置される盛付用プレート131と、この盛付用プレート131を収容すると共に皿等を仮置きするプレート収納部材132とを有している。
【0029】
容器保持ユニット200は、自動調理装置10の使用者が把持するハンドル210を有しており、
図4に示すように、自動調理装置10の使用者の操作により調理容器300を調理台100の前後方向に起伏自在となっている。
なお、以下、P1に示すような調理容器300と容器加熱ユニット400とが最接近する調理容器300の姿勢を「調理姿勢」と呼び、P2に示すような調理容器300の側面311が前傾となる調理容器300の姿勢を「盛付補助姿勢」と呼び、P3に示すような調理容器300の開口面が下向きになった状態でシンク120内に配置される調理容器300の姿勢を「洗浄姿勢」と呼ぶ。
また、容器保持ユニット200の内部には、容器保持ユニット200の起伏姿勢を保つ姿勢保持部材が内蔵されていると共に、調理姿勢P1および洗浄姿勢P3を検知する姿勢検知センサーが内蔵されている。
【0030】
容器加熱ユニット400は、シンク120の後方側に載置されており、誘導加熱によって調理容器300の側面311を加熱する。
【0031】
容器洗浄ユニット500は、シンク120の内部に設けられて、濯ぎ水等を調理容器300に噴出する。
【0032】
掻き落としユニット600は、シンク内120に設けられて、調理容器300に付着した焦げなどの汚れを除去する。
【0033】
カバー700は、
図1に示すように、制御ユニット800に取り付けられるアーム710と、このアーム710に設けられて左右方向に延びるカバー中心軸711を中心に回動自在なカバー本体720とを有している。
カバー本体720の大半は、調理容器300の開口面を塞いだ際に調理容器300の内部が見えるように、網状になっている。
【0034】
制御ユニット800は、操作用の操作パネル810と、自動調理装置10による調理動作を緊急停止させる非常停止ボタン820とを有し、操作パネル810への入力に基づき、各ユニットの駆動制御を行う。
さらに、制御ユニット800は、
図2に示すように、容器保持ユニット200、容器加熱ユニット400、容器洗浄ユニット500およびカバー700と接続されており、これらのユニット等の駆動を制御する。
【0035】
この制御ユニット800は、さらに、
図3に示すように、プロセッサ830、主記憶装置840、補助記憶装置850、ネットワークインタフェース860を少なくとも有している。
制御ユニット800を構成する各構成要素は、各構成要素間のデータ伝送路であるバス870を介して接続されている。
なお、プロセッサ830は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現され、主記憶装置や補助記憶装置に記憶されているプログラムに従って各種処理を実行する。
主記憶装置840は、SRAМ(スタティックRAМ(Random Access Memory))、DRAМ(ダイナミックRAМ)、又はフラッシュメモリ等で構成され、制御ユニット800で演算処理をするために必要なデータを一時的に記憶する。
補助記憶装置850は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカードなどのリムーバブルメディア、又はROM(Read Only Memory)などで実現され、記録媒体を有している。
ネットワークインタフェース860は、インターネットを含む通信ネットワークを介して他の端末・システム等との間で通信を行う。
【0036】
<2.調理容器の詳細>
次に、
図1、
図4乃至
図7に基づき、調理容器300の詳細について説明する。
図5は
図1に示す調理容器300に具材が投入された際の調理容器300の正面図であり、
図6は
図5に示す自動調理装置10の左側面部分断面図であり、
図7は
図6のVII部拡大図である。
なお、
図5においては皿置き台130の盛付用プレート131に皿Dを載置し、
図6においては具材Iを省略している。
【0037】
調理容器300は、容器保持ユニット200に対して着脱自在であり、
図5および
図6等に示すように、具材Iを収容する有底円筒状の容器本体310と、この容器本体310の底部に着脱自在に装着されて容器本体310に収容された具材Iを撹拌する撹拌部材320とを有している。
【0038】
容器本体310は、容器保持ユニット200の容器本体用駆動モーター220(
図2参照)から伝達される動力によって
図6に示すように容器本体310の深さ方向に延びる容器本体回転軸ACを中心に自転自在となっている。
【0039】
撹拌部材320には磁化された強磁性体が底面側に設けられており、容器保持ユニット200の撹拌部材回転軸(不図示)の先端に設けられた磁化された強磁性体との間でマグネットカップリング機構が形成されている。
撹拌部材320は、容器保持ユニット200の撹拌部材用駆動モーター230(
図2参照)からマグネットカップリング機構を介して伝達される動力によって容器本体回転軸ACを中心に自転自在となっており、容器本体310と相互に独立して自転する。
したがって、本実施例の自動調理装置10は、撹拌部材320を容器本体310よりも高速に自転させたり、容器本体310よりも低速に自転させたりすることができる。
【0040】
撹拌部材320は、
図6に示すように、容器本体310に装着される円柱状の基部321と、この基部321の側面に組み付けられるヘラ322とから形成されている。
【0041】
ヘラ322は、平板を複雑に曲げた形状であり、
図5および
図7に示すように、容器本体310の底面312と対向する内面322aと、この内面322aと反対側の外面322bとを有している。
【0042】
<3.撹拌部材320の回動位置検出機構>
以上説明した調理容器300によれば、撹拌部材320が容器本体回転軸ACに対して軸対称に形成されていないことから、料理人の鍛錬された撹拌動作の技能をよりリアルかつ高度に再現するためには、制御ユニット800が撹拌部材320の回動位置を検出および把握して撹拌部材320の自転(回動)を制御する必要がある。
そして、撹拌部材320が容器本体310と独立して自転するため、制御ユニット800が容器本体310の回動位置から撹拌部材320の回動位置を推定することができず、撹拌部材320の回動位置を直接に検出する必要がある。
そこで、
図7等に基づいて、撹拌部材320の回動位置検出機構を説明する。
【0043】
本実施例の自動調理装置10において、
図7に示すように、撹拌部材320のヘラ322の先端近傍の外面322bには、被検出子323が配設されている。
この被検出子323は、ヘラ322に取り付けられる直方体状のケース323aと、このケース323aに収納される磁石323bと、この磁石323bを保護する保護蓋323cとから構成されている。
【0044】
この被検出子323(磁石323b)から生じる磁力を検出する検出子が、
図7等に示すように、カバー700のアーム710に内蔵される磁気センサー730として設けられている。
この磁気センサー730は、
図4に示すように、自動調理装置10の使用者が調理容器300を調理台100の前後方向に起伏させた際(すなわち、調理容器300の姿勢を調理姿勢P1から洗浄姿勢P3まで変化させた際)の調理容器300の通過範囲Sの外、すなわち、調理容器300の外部に配置されている。
【0045】
そして、この磁気センサー730は、
図2に示すように、制御ユニット800に接続されており、制御ユニット800に各種信号を送信する。
したがって、制御ユニット800は、磁気センサー730からの信号に基づいて容器保持ユニット200の各モーターや、容器加熱ユニット400等を制御する。
【0046】
<4.自動調理装置10による自動調理方法>
次に、
図4および
図5、
図8および
図9に基づいて、以上説明した本実施例である自動調理装置10による自動調理方法説明する。
そこで、
図4および
図5、
図8および
図9に基づいて、各ステップについて説明する。
図8は
図1に示す自動調理装置10の盛付補助姿勢における左側面図であり、
図9は洗浄姿勢における撹拌部材320の回動範囲を示す模式図である。
【0047】
<回動位置把握ステップ>
自動調理装置10の容器保持ユニット200に保持された状態の容器本体310に撹拌部材320を装着した際、まず、初期設定として回動位置把握ステップを行う。
【0048】
回転位置検出ステップでは、調理容器300が調理姿勢P1になっていることを容器保持ユニット200の姿勢検知センサーが検知した状態で、制御ユニット800は容器保持ユニット200からの動力で撹拌部材320を回転させる。
そして、制御ユニット800は、被検出子323(すなわち、撹拌部材320の先端)が検出子730と最接近した際の容器保持ユニット200の撹拌部材用駆動モーター230の回転位相が撹拌部材320の退避位置(撹拌部材320の先端が最も上部に位置する撹拌部材320の位置)であると記憶する。
すなわち、この回動位置把握ステップは、制御ユニット800が容器保持ユニット200の撹拌部材用駆動モーター230の回転位相を介して撹拌部材320の回動位置を把握するステップである。
【0049】
本実施例である自動調理装置10による自動調理方法は、回動位置把握ステップを実行した後に行われる。
そして、この自動調理方法は、(1)撹拌調理ステップ、(2)盛付補助ステップ、(3)容器洗浄ステップの順番で実行される。
【0050】
<4.1.撹拌調理ステップ>
撹拌調理ステップでは、制御ユニット800は、調理容器300が
図4および
図5に示す調理姿勢P1であるか否かを検知する。
調理容器300が調理姿勢P1になっている場合、制御ユニット800は、容器加熱ユニット400を制御して調理容器300を誘導加熱しつつ、容器保持ユニット200を駆動制御して調理容器300の容器本体310を自転させると共に撹拌部材320を容器本体310と独立して自転させて、具材Iを撹拌調理しつつ加熱調理する。
容器保持ユニット200による調理容器300(容器本体310、撹拌部材320)の回動制御および容器加熱ユニット400による調理容器300の加熱制御は、自動調理装置10で調理する料理に基づいて制御ユニット800に記憶された調理プログラムに基づいて実行される。
【0051】
<4.2.盛付補助ステップ>
具材Iの撹拌調理が終了した後、制御ユニット800は、容器保持ユニット200の撹拌部材用駆動モーターを回動させて、撹拌部材320を時計回りおよび反時計回りに数回揺動させた後、撹拌部材320を退避位置まで回動させる。
撹拌部材320が退避位置まで回動した状態、自動調理装置10の使用者はハンドル210により容器保持ユニット200を前方に回転させて調理容器300を
図4および
図8に示す盛付補助姿勢P2まで前傾させる。
料理の盛り付けを行う者(自動調理装置10の使用者と同一であってもよい)は、盛付補助姿勢P2を取った調理容器300内の料理を取り出す。
なお、盛付補助姿勢P2では、
図8に示すように、撹拌部材320が退避位置となっていることから、撹拌部材320の先端が皿置き台130の盛付用プレート131に載置された皿Dから最も離れている。
【0052】
すなわち、制御ユニット800が撹拌部材320の回動位置を把握する回動位置把握ステップと、撹拌調理ステップの終了後に調理容器300を調理姿勢P1から盛付補助姿勢P2まで前傾させる盛付補助ステップとを備え、撹拌部材320は、盛付補助姿勢P2において撹拌部材320の先端が調理台100に載置された皿Dから最も離れた退避位置となっていることにより、盛付補助姿勢P2において撹拌部材320の先端が上方側に位置決めされるため、料理の盛り付けを行う者が調理容器300内の料理を皿に盛り付ける際に、料理の盛り付けを行う者が調理容器300内の料理を確実に取り出しやすくすることができる。
【0053】
<4.3.容器洗浄ステップ>
料理の盛り付けを行う者が盛付補助姿勢P2を取った調理容器300内の料理を取り出した後、自動調理装置10の使用者はハンドル210により容器保持ユニット200を更に前方に回転させて、調理容器300を
図4に示す洗浄姿勢P3まで前傾させる。
このとき、容器本体310の内面は、掻き落としユニット600と当接する。
そして、調理容器300が洗浄姿勢P3になっていることを容器保持ユニット200の姿勢検知センサーが検知すると、容器保持ユニット200は容器本体310を自転させると共に、容器洗浄ユニット500から濯ぎ水等を容器本体310に向けて噴出する。
これにより、容器本体310に付着した汚れを除去することができる。
【0054】
このとき、撹拌部材320を確実に洗浄するために、撹拌部材320を、調理容器300を洗浄姿勢P3から起こした際に撹拌部材320が容器洗浄ユニット500および掻き落としユニット600と干渉しない
図9に示すような安全回動範囲P内で揺動させる。
なお、盛付補助姿勢P2において撹拌部材320の先端が皿置き台130の盛付用プレート131に載置された皿Dから最も離れた位置となるように撹拌部材320の回動位置が制御されていることから、盛付補助姿勢P2に続く洗浄姿勢P3では制御ユニット800は撹拌部材320の回動位置を把握している。
したがって、本実施例の自動調理装置10は、制御ユニット800による駆動制御で撹拌部材320を安全回動範囲P内で揺動させることが可能になっている。
【0055】
<5.自動調理装置10が奏する効果>
以上説明した本発明の一実施例である自動調理装置10によれば、撹拌部材320に設けた被検出子323と、調理容器300の外部に配置されて被検出子323を検出する検出子730とからなる撹拌部材320の回動位置検出機構を備えていることにより、検出子730がこの検出子730を通過する被検出子323を検出することで制御ユニット800が撹拌部材320の回動位置を把握するため、撹拌部材320と容器保持ユニット200との係合形態がいかなるものであって、容器本体310に着脱自在な撹拌部材320が自転した際の回動位置を把握することができる。
【0056】
また、被検出子323が、磁石323bを有し、検出子が、磁気センサー730であることにより、磁気センサーの周辺の磁場変化で制御ユニット800が撹拌部材320の回動位置を把握するため、検出子が光学的に被検出子323を検出する場合に比べて、検出子または被検出子323に油汚れのような調理由来の汚れが生じたとしても確実に撹拌部材320の回動位置を把握することができるだけでなく、自動調理装置10の周辺で調理補助作業等を行う者への影響がないことに加え、検出子が渦電流で被検出子323を検出するような近接センサーである場合に比べて、検出子と撹拌部材との相対距離が離間していても検出性能が確保できるため、自動調理装置10の装置設計の自由度を向上させることができる。
【0057】
また、磁気センサー730が、調理容器300を調理台100の前後方向に起伏させた際の調理容器300の通過範囲Sの外に配置されていることにより、容器保持ユニット200が調理容器300を前後方向に起伏させたとしても調理容器30が磁気センサー730と干渉しなくなるため、容器保持ユニット200が調理容器300を前後方向に起伏させて様々な姿勢に容易にとることができる。
【0058】
また、被検出子323が、撹拌部材320の外面322bに配設されていることにより、自動調理装置10が具材Iを撹拌調理する際に具材Iや調味料等が被検出子323に付着しにくくなるため、被検出子323が具材I等によって汚れることを抑制することができる。
【0059】
<変形例>
以上、本発明の一実施例である自動調理装置について説明したが、本発明の自動調理装置は、上述した実施例の自動調理装置10に限定されるものではない。
【0060】
例えば、調理容器が盛付補助姿勢まで前傾させた際に、撹拌部材の先端が調理台に載置された皿から最も離れた退避位置になっていれば、撹拌部材の先端を調理台に載置された皿から最も離れた退避位置まで回動させる制御を行うタイミングは、いかなるタイミングであってもよい。
【0061】
例えば、本実施例において、調理容器300の洗浄は、調理容器300が洗浄姿勢P3になっていることを容器保持ユニット200の姿勢検知センサーが検知することで開始されていたが、制御ユニット800の操作パネル810への入力に基づいて開始してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 ・・・ 自動調理装置
100 ・・・ 調理台
100A ・・・ 天面
110 ・・・ キャスター
120 ・・・ シンク
130 ・・・ 皿載せ台
131 ・・・ 盛付用プレート
132 ・・・ プレート収容部材
200 ・・・ 容器保持ユニット
210 ・・・ ハンドル
220 ・・・ 容器本体用駆動モーター
230 ・・・ 撹拌部材用駆動モーター
300 ・・・ 調理容器
310 ・・・ 容器本体
311 ・・・ 側面
312 ・・・ 底面
320 ・・・ 撹拌部材
321 ・・・ 基部
322 ・・・ ヘラ
322a ・・・ 内面
322b ・・・ 外面
323 ・・・ 被検出子
323a ・・・ ケース
323b ・・・ 磁石
323c ・・・ 保護蓋
400 ・・・ 容器加熱ユニット
500 ・・・ 容器洗浄ユニット
600 ・・・ 掻き落としユニット
700 ・・・ カバー
710 ・・・ アーム
711 ・・・ カバー中心軸
720 ・・・ カバー本体
730 ・・・ 磁気センサー(検出子)
800 ・・・ 制御ユニット
810 ・・・ 操作パネル
820 ・・・ 非常停止ボタン
830 ・・・ プロセッサ
840 ・・・ 主記憶装置
850 ・・・ 補助記憶装置
860 ・・・ ネットワークインターフェース
870 ・・・ バス
F ・・・ 床面
I ・・・ 具材
D ・・・ 皿
AC ・・・ 容器本体中心軸
P1 ・・・ 調理姿勢
P2 ・・・ 盛付補助姿勢
P3 ・・・ 洗浄姿勢
S ・・・ 調理容器の通過範囲
P ・・・ 安全回動範囲
【要約】
【課題】容器本体に着脱自在な撹拌部材が自転した際の回動位置を検知する自動調理装置を提供すること。
【解決手段】具材Iを収容する有底円筒状の容器本体310とこの容器本体310に着脱自在に装着される撹拌部材320とを有する調理容器300と、この調理容器300を保持した状態で調理容器300の撹拌部材320を自転させる容器保持ユニット200と、この容器保持ユニット200を駆動制御する制御ユニット800とを備え、撹拌部材320で容器本体310に収容された具材Iを撹拌調理する自動調理装置10であって、撹拌部材320に設けた被検出子323と調理容器300の外部に配置されて被検出子323を検出する検出子730とからなる撹拌部材320の回動位置検出機構を備えている。
【選択図】
図4