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  • 特許-車止め装置のローラ進退動機構 図1
  • 特許-車止め装置のローラ進退動機構 図2
  • 特許-車止め装置のローラ進退動機構 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】車止め装置のローラ進退動機構
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/42 20060101AFI20241223BHJP
【FI】
E04H6/42 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024185451
(22)【出願日】2024-10-21
【審査請求日】2024-10-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523186977
【氏名又は名称】有限会社ミズノ金型製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 嘉之
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-266616(JP,A)
【文献】特開平09-123882(JP,A)
【文献】特開2005-188175(JP,A)
【文献】特開2008-008095(JP,A)
【文献】特開2020-168894(JP,A)
【文献】特開2008-088665(JP,A)
【文献】特開2013-217096(JP,A)
【文献】特開平05-231026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/42
B60T 3/00
B60R 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場において車両の退出を防止可能な車止め装置において、
アームの先端部から側方に向けてローラが地上から所定距離を介して持出固定され、かつ、当該アームの基端部が基台にヒンジ連結されている一方、
前記基台には伸縮装置が配設されており、この伸縮装置の先端側には、前記アームの側面に摺接可能な摺接部が設けられており、
前記伸縮装置が伸長するとき、摺接部が前記アームの基端部側面から先端部側面に沿って摺動することによって、前記ローラが円弧軌道上に側方に移動して、当該ローラが車両退出方向のタイヤの外周面近傍に配置可能である一方、
前記伸縮装置が収縮するとき、摺接部が前記アームの先端部側面から基端部側面に沿って摺動することによって、前記アームが初期位置に回帰することによって、前記ローラを車両退出方向のタイヤの外周面近傍から退避可能に構成したことを特徴とする車止め装置のローラ進退動機構。
【請求項2】
前記アームを初期位置に付勢可能な回帰手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の車止め装置のローラ進退動機構。
【請求項3】
前記伸縮装置がガイドレールに沿って伸縮可能であることを特徴とする請求項1記載の車止め装置のローラ進退動機構。
【請求項4】
前記伸縮装置の摺接部にローラフォロアが配設されていることを特徴とする請求項1記載の車止め装置のローラ進退動機構。
【請求項5】
前記ローラの下方において、地上に平行に支持するための支持体が配設されていることを特徴とする請求項1記載の車止め装置のローラ進退動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場設備における車止め装置の改良、更に詳しくは、車両が車止め装置を踏みつけることがなく車両の退出を防止することができ、かつ、簡素な機構でローラを確実に進退動させることができる車止め装置のローラ進退動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
時間貸等の有料駐車場には、車両が駐車した所定の時間経過後にフラップ式のロック板が起立して車輪が乗り越えられないようにして、駐車料金の精算前の無断退出を防止するものが知られているが、このロック板は一枚の鉄板に過ぎないため、車高の高い車両などがロック板を強引に乗り越えてしまうという問題があった。また、時間貸でなくても、車庫や駐車場において、高級車の盗難事件が発生しているという実情がある。
【0003】
そこで、従来、空転するローラを地上から出没させて、タイヤに当接させることによって、車両の乗り越えを防止して退出できないように構成した車止め装置が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
しかしながら、これらの従来のローラ式の車止め装置は、ローラを地上から昇降して出没させる構造であるため、退出の規制時以外である車両の入退出の度に、装置が不可避的に踏みつけられるため、ローラの駆動機構における歯車やアクチュエータに不測の負荷がかかったり、また、支持基台が車両の載荷重によって変形するおそれなどもあり、装置の故障リスクが高いという問題がある。
【0005】
更に、このような装置の構造の場合、車両が不正に退出しようとした場合には、ローラを踏みつける車両の大きな自重が、ローラの押し下げ方向(退避方向)にも作用するため、簡単に突破されてしまうおそれがある。
【0006】
かと言って、装置の強度を上げようとすると、装置の構造が複雑化して製造コストがかかったり、装置が重量化して設置コストがかかるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平7-301020号公報
【文献】特開2000-154666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の車止め装置に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、車両が車止め装置を踏みつけることがなく車両の退出を防止することができ、かつ、簡素な機構でローラを確実に進退動させることができる車止め装置のローラ進退動機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0010】
即ち、本発明は、駐車場において車両の退出を防止可能な車止め装置において、
アーム1の先端部から側方に向けてローラ2を地上から所定距離を介して持出固定して、かつ、当該アーム1の基端部を基台3にヒンジ連結する一方、
前記基台3には伸縮装置4を配設して、この伸縮装置4の先端側には、前記アーム1の側面に摺接可能な摺接部41を設け、
前記伸縮装置4を伸長させるとき、摺接部41を前記アーム1の基端部側面から先端部側面に沿って摺動させることによって、前記ローラ2を円弧軌道上に側方に移動して、当該ローラ2を車両退出方向のタイヤTの外周面近傍に配置可能にする一方、
前記伸縮装置4を収縮させるとき、摺接部41を前記アーム1の先端部側面から基端部側面に沿って摺動させることによって、前記アーム1を初期位置に回帰させることによって、前記ローラ2を車両退出方向のタイヤTの外周面近傍から退避可能に構成するという技術的手段を採用したことによって、車止め装置のローラ進退動機構を完成させた。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記アーム1を初期位置に付勢可能な回帰手段5を設けるという技術的手段を採用することもできる。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記伸縮装置4をガイドレール42に沿って伸縮可能にするという技術的手段を採用することもできる。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記伸縮装置4の摺接部41にローラフォロアを配設するという技術的手段を採用することもできる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記ローラ2の下方において、地上に平行に支持するための支持体6を配設するという技術的手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、アーム1の先端部から側方に向けてローラ2を地上から所定距離を介して持出固定して、かつ、当該アーム1の基端部を基台3にヒンジ連結する一方、前記基台3には伸縮装置4を配設して、この伸縮装置4の先端側には、前記アーム1の側面に摺接可能な摺接部41を設けたことによって、
前記伸縮装置4を伸長させるとき、摺接部41を前記アーム1の基端部側面から先端部側面に沿って摺動させることによって、前記ローラ2を円弧軌道上に側方に移動して、当該ローラ2を車両退出方向のタイヤTの外周面近傍に配置可能にする一方、前記伸縮装置4を収縮させるとき、摺接部41を前記アーム1の先端部側面から基端部側面に沿って摺動させることによって、前記アーム1を初期位置に回帰させることによって、前記ローラ2を車両退出方向のタイヤTの外周面近傍から退避させることができる。
【0016】
したがって、本発明の車止め装置のローラ進退動機構によれば、車両退出防止用のローラが側方に進退動する構造であるため、車両が車止め装置を踏みつけることがなく車両の退出を防止することができる。
【0017】
また、直線的な伸縮運動による簡素な機構でローラを確実に進退動させることができ、製造コストを削減することができる。更にまた、伸縮運動が車止め装置の長手方向であるため、伸縮装置の動力を、側方の駐車スペース等にはみ出すことなく配置することができて、車止め装置の横幅が大きくならず、省スペースで収めることができる。
【0018】
そしてまた、不正退出時のような不測の負荷に対しても、アームの軸方向に車両の推進力を受けるのみであるため、ローラが強制的に退避されることがなく、かつ、装置が故障し難く優れた耐久性を有することから、産業上の利用価値は高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態のローラ進退動機構を表わす説明斜視図である。
図2】本発明の実施形態のローラ進退動機構を表わす説明上面図である。
図3】本発明の実施形態のローラ進退動機構を表わす説明上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図1から図3に基づいて説明する。図1中、符号1で指示するものはアームであり、符号2で指示するものはローラ、符号3で指示するものは基台、符号4で指示するものは伸縮装置、符号5で指示するものは回帰手段、符号6で指示するものは支持体である。なお、図面は模式的なものであり、厚みや長さ、間隔の比率等は現実のものとは異なる。
【0021】
本発明は、駐車場において車両の退出を防止可能な車止め装置であって、構成するにあっては、まず、アーム1の先端部から側方に向けてローラ2を地上から所定距離(少なくとも2cm以上)を介して持出固定する。本実施形態では、アーム1として直棒状の金属製角パイプ材を採用し、また、ローラ2を直交方向に持ち出してL字型に形成する。ローラ2には、回転が円滑なボールベアリング軸受のものを採用することができ、全長は20cm以上が好ましい。
【0022】
本実施形態では、前記アーム1の下方および前記ローラ2の下方において、地上に平行に支持するための支持体6を配設することができ、地上からの所定距離を一定に保持することができるとともに、ローラ2が踏みつけられた場合の荷重に耐えることができる。なお、支持体6の摩耗を防止するため、支持体6の下端は地表に接触させる必要はなく、僅かに離した位置で良い。
【0023】
そして、当該アーム1の基端部を基台3にヒンジ連結する。本実施形態では、基台3は固定具を打ち込んで地上に固定するものであっても良いし、鉄板等の自重によって移動しないようなものであっても良い。また、基台3のヒンジ連結部31には、例えば、ベアリング軸受のピロー型ユニットを採用することができる。
【0024】
また、前記基台3には伸縮装置4を配設する。この伸縮装置4には、電気式、磁気式、油圧式、空気圧式等のアクチュエータを採用することができる。本実施形態では、ボールねじ式の電動アクチュエータを採用することによって、モータを駆動して伸縮の制御操作を容易に行うことができる。
【0025】
更に、前記伸縮装置4の先端側には、前記アーム1の側面に摺接可能な摺接部41を設ける。本実施形態では、摺接部41の構成部品として、ローラフォロア(カムフォロア)を配設することができ、動作を円滑にするとともに、摩耗等を軽減して耐久性を向上させることもできる。
【0026】
本実施形態では、前記伸縮装置4をガイドレール42に沿って伸縮させることができる。ガイドレール42の形態は、凹溝に沿うものや、係合関係や嵌合関係にある機械要素などを採用することができる。
【0027】
そして、前記伸縮装置4が伸長するとき、摺接部41が前記アーム1の基端部側面から先端部側面に沿って摺動することによって、前記ローラ2が(略水平面上の)円弧軌道上に側方に移動して、当該ローラ2を車両退出方向のタイヤTの外周面近傍に配置することができる(図1および2参照)。この状態においては、車両が退出しようとしても、空転するローラ2によってタイヤTが乗り越えることができない。
【0028】
一方、前記伸縮装置4が収縮するとき、摺接部41が前記アーム1の先端部側面から基端部側面に沿って摺動することによって、前記アーム1が初期位置に回帰することによって、前記ローラ2を車両退出方向のタイヤTの外周面近傍から退避させることができる。この状態においては、車両が入退出することができる(図3参照)。
【0029】
本実施形態では、前記アーム1を初期位置に付勢可能な回帰手段5を設けることができる。この回帰手段5には、種々の駆動機構や反発部材などを採用することができるが、本実施形態では、スプリングばね等の弾性部材や、ダンパー、磁石などを採用することができ、電源などの動力エネルギーを使用しなくて磁石などを採用することができ、電源などの動力エネルギーを使用しなくても、伸縮装置4の伸縮操作のみで前記アーム1を移動させることができる。
【0030】
なお、車止め装置の一部において、車両の入退出を検知するためのセンサを設けることができ、伸縮装置4の操作を自動化することもできる。また、本実施形態では、車止め装置の内部構造のみを図示しているが、通常は、装置の外側には保護カバーを被覆して、車両の退出の規制時にローラ2のみが保護カバーの側方から出現するように構成するのが好ましい。
【0031】
また、本発明の車止め装置は、車両のタイヤTが停止する位置の一箇所に設置するだけでも車両退出防止機能を十分に発揮することができるが、複数箇所に設置することも可能である。
【0032】
本発明は概ね上記のように構成されるが、本発明は図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、アーム1は金属製角パイプ材に限らず、十分な強度を有する他の部材であっても良い。
【0033】
また、伸縮装置4の摺接部41は、アーム1に長孔や突起などのガイド部分を設け、これに係合しながら摺動するものであっても良く、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0034】
1 アーム
2 ローラ
3 基台
31 ヒンジ連結部
4 伸縮装置
41 摺接部
42 ガイドレール
5 回帰手段
6 支持体
T タイヤ
B ブロック
【要約】
【課題】 車両が車止め装置を踏みつけることがなく車両の退出を防止することができ、かつ、簡素な機構でローラを確実に進退動させることができる車止め装置のローラ進退動機構を提供すること。
【解決手段】 アーム1の先端部から側方に向けてローラ2を地上から所定距離を介して持出固定して、かつ、当該アーム1の基端部を基台3にヒンジ連結する一方、
前記基台3には伸縮装置4を配設して、この伸縮装置4の先端側には、前記アーム1の側面に摺接可能な摺接部41を設ける。
【選択図】 図1
図1
図2
図3