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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20241223BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241223BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/48 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021205975
(22)【出願日】2021-12-20
(65)【公開番号】P2023091301
(43)【公開日】2023-06-30
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】神宮 勲
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-010290(JP,A)
【文献】特開2021-016261(JP,A)
【文献】特許第6861917(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の変換器を有し、複数の前記変換器の動作により、電力の変換を行う主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
複数の前記変換器のそれぞれは、
一対の接続端子と、
複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子に対して並列に接続された電荷蓄積素子と、
前記複数のスイッチング素子のオン状態及びオフ状態を切り替える駆動回路と、
を有し、前記一対の接続端子を介して直列に接続されるとともに、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記電荷蓄積素子の電圧を前記一対の接続端子間に出力する出力状態と、前記一対の接続端子間を導通させたバイパス状態と、前記複数のスイッチング素子をオフ状態とした停止状態と、を切り替え可能であり、
前記駆動回路は、前記電荷蓄積素子の直流電圧が上限値以上又は下限値以下になった際に、前記変換器を前記バイパス状態に切り替え、
前記制御装置は、前記バイパス状態となっている前記変換器の数が所定数に達していない場合は、前記主回路部による電力の変換を継続させ、
前記駆動回路は、前記バイパス状態に切り替えた後、前記複数のスイッチング素子の健全性の確認を行い、前記複数のスイッチング素子が健全であると確認した場合に、前記変換器の前記バイパス状態を解除し、
前記複数のスイッチング素子は、一対の主端子と、制御端子と、を有し、
前記駆動回路は、前記制御端子の電圧が正常か否かを確認することにより、前記複数のスイッチング素子の健全性を確認する電力変換装置。
【請求項2】
直列に接続された複数の変換器を有し、複数の前記変換器の動作により、電力の変換を行う主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
を備え、
複数の前記変換器のそれぞれは、
一対の接続端子と、
複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子に対して並列に接続された電荷蓄積素子と、
前記複数のスイッチング素子のオン状態及びオフ状態を切り替える駆動回路と、
を有し、前記一対の接続端子を介して直列に接続されるとともに、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記電荷蓄積素子の電圧を前記一対の接続端子間に出力する出力状態と、前記一対の接続端子間を導通させたバイパス状態と、前記複数のスイッチング素子をオフ状態とした停止状態と、を切り替え可能であり、
前記駆動回路は、前記電荷蓄積素子の直流電圧が上限値以上又は下限値以下になった際に、前記変換器を前記バイパス状態に切り替え、
前記制御装置は、前記バイパス状態となっている前記変換器の数が所定数に達していない場合は、前記主回路部による電力の変換を継続させ、
前記駆動回路は、前記バイパス状態に切り替えた後、前記複数のスイッチング素子の健全性の確認を行い、前記複数のスイッチング素子が健全であると確認した場合に、前記変換器の前記バイパス状態を解除し、
前記駆動回路は、前記電荷蓄積素子の直流電圧が前記下限値以下になり、前記変換器を前記バイパス状態に切り替えた後、前記電荷蓄積素子の直流電圧が所定値以上になった際に、前記複数のスイッチング素子の健全性の確認を行う電力変換装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記電荷蓄積素子の直流電圧が前記上限値以上になり、前記変換器を前記バイパス状態に切り替えた後、前記電荷蓄積素子の直流電圧が所定値以下になった際に、前記複数のスイッチング素子の健全性の確認を行う請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記駆動回路は、前記電荷蓄積素子の直流電圧が前記上限値以上又は前記下限値以下になり、前記変換器を前記バイパス状態に切り替えた後、前記バイパス状態への切り替えのタイミングから所定時間が経過した際に、前記複数のスイッチング素子の健全性の確認を行う請求項1記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記バイパス状態となっている前記変換器の数が所定数に達していない場合は、前記バイパス状態となった前記変換器を制御の対象から外し、残りの前記変換器で前記主回路部による電力の変換を継続させる請求項1~4のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記駆動回路は、前記制御端子の電圧が正常か否かを確認した後、さらに前記複数のスイッチング素子の動作の確認を行うことにより、前記複数のスイッチング素子の健全性を確認する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項7】
第1制御装置及び第2制御装置の2つの前記制御装置を備え、
前記第1制御装置及び前記第2制御装置は、一方を運転系の制御装置とし、他方を待機系の制御装置とし、前記運転系の制御装置となったいずれか一方の前記制御装置で前記主回路部の動作を制御し、
前記運転系の制御装置は、前記バイパス状態となっている前記変換器の数が前記所定数に達した際に、前記待機系の制御装置において運転を継続可能である場合には、前記運転系の制御装置と前記待機系の制御装置との切り替えを行う請求項1~6のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記変換器は、ハーフブリッジ接続された2つの前記スイッチング素子を有し、ハーフブリッジ接続された2つの前記スイッチング素子の下側のスイッチング素子をオン状態とすることにより、前記バイパス状態とする請求項1~7のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記変換器は、ハーフブリッジ接続された2つの前記スイッチング素子と、前記一対の接続端子の間に設けられた別のスイッチング素子と、を有し、前記別のスイッチング素子をオン状態とすることにより、前記バイパス状態とする請求項1~7のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記変換器は、フルブリッジ接続された4つの前記スイッチング素子を有し、フルブリッジ接続された4つの前記スイッチング素子のうちの上側の2つのスイッチング素子又は下側の2つのスイッチング素子をオン状態とすることにより、前記バイパス状態とする請求項1~7のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記変換器は、フルブリッジ接続された4つの前記スイッチング素子と、前記一対の接続端子の間に設けられた別のスイッチング素子と、を有し、前記別のスイッチング素子をオン状態とすることにより、前記バイパス状態とする請求項1~7のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う主回路部と、主回路部の動作を制御する制御装置と、を備えた電力変換装置が知られている。こうした電力変換装置において、複数台の変換器を直列に接続した多段構成の主回路部とすることが行われている。多段構成の主回路部を備えた電力変換装置は、例えば、交流電力を直流電力に変換して送電する直流送電システムなどに用いられている。
【0003】
各変換器は、複数のスイッチング素子と、複数のスイッチング素子に対して並列に接続された電荷蓄積素子と、を有する。また、各変換器は、一対の接続端子を有し、一対の接続端子を介して直列に接続される。
【0004】
多段構成の主回路部においては、各変換器のいずれかに異常が発生した際に、異常の発生した変換器の一対の接続端子間を短絡させることにより、正常な残りの変換器で運転を継続することができる。このように、一対の接続端子間を短絡させることは、バイパスと呼ばれる場合がある。
【0005】
バイパスした変換器は、電力変換装置の運転が停止するまでバイパスの状態が継続される。しかしながら、直列に接続された複数台の変換器の中で、バイパスされた変換器の台数が増えると、主回路部の動作の安定性が低下してしまう。そして、バイパスされた変換器の台数が所定数に達すると、電力変換装置の運転が停止してしまう。このように、異常の発生した変換器のバイパスは、主回路部の動作の安定性の低下や、電力変換装置の運転停止による運用性の低下の要因となってしまう可能性がある。このため、複数台の変換器を直列に接続した電力変換装置においては、安定性及び運用性の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-140738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、安定性及び運用性を向上させることができる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によれば、直列に接続された複数の変換器を有し、複数の前記変換器の動作により、電力の変換を行う主回路部と、前記主回路部の動作を制御する制御装置と、を備え、複数の前記変換器のそれぞれは、一対の接続端子と、複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子に対して並列に接続された電荷蓄積素子と、前記複数のスイッチング素子のオン状態及びオフ状態を切り替える駆動回路と、を有し、前記一対の接続端子を介して直列に接続されるとともに、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記電荷蓄積素子の電圧を前記一対の接続端子間に出力する出力状態と、前記一対の接続端子間を導通させたバイパス状態と、前記複数のスイッチング素子をオフ状態とした停止状態と、を切り替え可能であり、前記駆動回路は、前記電荷蓄積素子の直流電圧が上限値以上又は下限値以下になった際に、前記変換器を前記バイパス状態に切り替え、前記制御装置は、前記バイパス状態となっている前記変換器の数が所定数に達していない場合は、前記主回路部による電力の変換を継続させ、前記駆動回路は、前記バイパス状態に切り替えた後、前記複数のスイッチング素子の健全性の確認を行い、前記複数のスイッチング素子が健全であると確認した場合に、前記変換器の前記バイパス状態を解除し、前記複数のスイッチング素子は、一対の主端子と、制御端子と、を有し、前記駆動回路は、前記制御端子の電圧が正常か否かを確認することにより、前記複数のスイッチング素子の健全性を確認する電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
安定性及び運用性を向上させることができる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図2】変換器を模式的に表すブロック図である。
図3】変換器の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図4】変換器の動作の変形例を模式的に表すフローチャートである。
図5】変換器の動作の変形例を模式的に表すフローチャートである。
図6】第2の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図7】変換器の変形例を模式的に表すブロック図である。
図8】変換器の変形例を模式的に表すブロック図である。
図9】変換器の変形例を模式的に表すブロック図である。
【0011】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、主回路部12と、制御装置14と、を備える。電力変換装置10は、例えば、直流送電システムに用いられる。電力変換装置10は、直流送電システムにおいて、交流電力系統2及び一対の直流送電線3、4に接続される。
【0013】
直流送電システムは、例えば、変圧器6を有する。電力変換装置10の主回路部12は、変圧器6を介して交流電力系統2に接続される。交流電力系統2の交流電力は、三相交流電力である。より詳しくは、対称三相交流電力である。変圧器6は、交流電力系統2の三相交流電力を主回路部12に対応した交流電力に変換する。変圧器6は、主回路部12に合わせて三相交流電力の各相の実効値を変化させる。変圧器6は、三相変圧器である。変圧器6は、必要に応じて設けられ、省略可能である。主回路部12には、交流電力系統2の三相交流電力を直接供給してもよい。
【0014】
電力変換装置10は、交流電力系統2から供給された三相交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を直流送電線3、4に供給する。また、電力変換装置10は、直流送電線3、4から供給された直流電力を三相交流電力に変換し、変換後の三相交流電力を交流電力系統2に供給する。このように、電力変換装置10は、交流から直流への交直変換、及び、直流から交流への交直変換を行う。また、この例では、交流電力系統2を交流回路、各直流送電線3、4を直流回路として示している。交流回路は、例えば、交流負荷や交流電力源などでもよい。直流回路は、例えば、直流負荷や直流電力源などでもよい。
【0015】
例えば、直流送電線3は、直流電力の高圧側の送電線であり、直流送電線4は、直流電力の低圧側の送電線である。電力変換装置10は、直流送電線3側が高圧、直流送電線4側が低圧となるように、変換後の直流電力を直流送電線3、4に出力する。
【0016】
主回路部12は、交流電力系統2と各直流送電線3、4との間に設けられる。主回路部12は、三相交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から三相交流電力への変換を行う。主回路部12は、例えば、直列に接続された複数の変換器を有するマルチレベル電力変換器である。主回路部12は、例えば、MMC(Modular Multilevel Converter)型の電力変換器である。MMC型の主回路部12は、直列に接続された複数の変換器を有する。各変換器は、ハーフブリッジ接続又はフルブリッジ接続された複数のスイッチング素子と、各スイッチング素子に並列に接続された電荷蓄積素子と、を有する。主回路部12は、複数の変換器の動作により、電力の変換を行う。主回路部12は、例えば、複数の変換器の各スイッチング素子のスイッチングにより、交直変換を行う。
【0017】
制御装置14は、主回路部12に接続されている。制御装置14は、各スイッチング素子のオン・オフを制御することにより、主回路部12による三相交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から三相交流電力への変換を制御する。
【0018】
主回路部12は、第1及び第2の一対の直流端子20a、20bと、第1~第3の3つの交流端子21a~21cと、第1~第6の6つのアーム部22a~22fと、を有する。
【0019】
第1直流端子20aは、高圧側の直流送電線3に接続される。第2直流端子20bは、低圧側の直流送電線4に接続される。これにより、主回路部12によって変換された直流電力が直流送電線3、4に供給されるとともに、直流送電線3、4から供給された直流電力が主回路部12に入力される。
【0020】
第1アーム部22aは、第1直流端子20aに接続される。第2アーム部22bは、第1アーム部22aと第2直流端子20bとの間に接続される。第1アーム部22a及び第2アーム部22bは、各直流端子20a、20bの間に直列に接続される。
【0021】
第3アーム部22cは、第1直流端子20aに接続される。第4アーム部22dは、第3アーム部22cと第2直流端子20bとの間に接続される。第3アーム部22c及び第4アーム部22dは、第1アーム部22a及び第2アーム部22bに対して並列に接続される。
【0022】
第5アーム部22eは、第1直流端子20aに接続される。第6アーム部22fは、第5アーム部22eと第2直流端子20bとの間に接続される。すなわち、第5アーム部22e及び第6アーム部22fは、第1アーム部22a及び第2アーム部22bに対して並列に接続されるとともに、第3アーム部22c及び第4アーム部22dに対して並列に接続される。
【0023】
主回路部12では、第1アーム部22a及び第2アーム部22bによって第1レグLG1が構成され、第3アーム部22c及び第4アーム部22dによって第2レグLG2が構成され、第5アーム部22e及び第6アーム部22fによって第3レグLG3が構成される。すなわち、この例において、主回路部12は、3レグ、6アームの三相インバータである。換言すれば、主回路部12は、ブリッジ接続された複数のアーム部22a~22fを有する。この例では、主回路部12は、三相ブリッジ接続された6つのアーム部22a~22fを有する。
【0024】
第1アーム部22a、第3アーム部22c及び第5アーム部22eは、上側アームである。第2アーム部22b、第4アーム部22d及び第6アーム部22fは、下側アームである。このように、主回路部12は、複数のスイッチング素子によって構成される複数のアーム部及び複数のレグを有する。主回路部12は、例えば、2レグ、4アームの単相インバータなどでもよい。アーム部及びレグの数は、上記に限ることなく、任意の数でよい。
【0025】
第1アーム部22aは、直列に接続された複数の変換器UP1、UP2…UPMを有する。第2アーム部22bは、直列に接続された複数の変換器UN1、UN2…UNMを有する。第3アーム部22cは、直列に接続された複数の変換器VP1、VP2…VPMを有する。第4アーム部22dは、直列に接続された複数の変換器VN1、VN2…VNMを有する。第5アーム部22eは、直列に接続された複数の変換器WP1、WP2…WPMを有する。第6アーム部22fは、直列に接続された複数の変換器WN1、WN2…WNMを有する。
【0026】
但し、以下では、各変換器UP1、UP2…UPM、UN1、UN2…UNM、VP1、VP2…VPM、VN1、VN2…VNM、WP1、WP2…WPM、WN1、WN2…WNMをまとめて呼称する場合に、「変換器CEL」と称す。
【0027】
各アーム部22a~22fにおいて、M、M、M、M、M、Mは、直列接続された変換器CELの台数を表す。各アーム部22a~22fにおいて、直列接続される変換器CELの台数は、例えば、100台~120台程度である。但し、直列接続される変換器CELの台数は、これに限ることなく、任意の台数でよい。
【0028】
各アーム部22a~22fに設けられる変換器CELの台数は、実質的に同じである。例えば、多数の各変換器CELが接続される場合には、主回路部12の動作に影響のない範囲において、各アーム部22a~22fに設けられる変換器CELの台数が異なってもよい。例えば、1つのアーム部に100台の変換器CELを直列に接続する場合、別のアーム部に設ける変換器CELの台数は、1~2台異なってもよい。
【0029】
各アーム部22a~22fのそれぞれは、バッファリアクトル23a~23fと、複数の電流検出器24a~24fと、をさらに有する。また、電力変換装置10は、電圧検出部25をさらに有する。
【0030】
各バッファリアクトル23a~23fは、各アーム部22a~22fのそれぞれにおいて、各変換器CELに直列に接続される。第1アーム部22aのバッファリアクトル23aは、交流端子21aと第1アーム部22a及び第2アーム部22bとの接続点と変換器UP1との間に設けられる。第2アーム部22bのバッファリアクトル23bは、交流端子21aと第1アーム部22a及び第2アーム部22bとの接続点と変換器UN1との間に設けられる。第3アーム部22cのバッファリアクトル23cは、交流端子21bと第3アーム部22c及び第4アーム部22dとの接続点と変換器VP1との間に設けられる。第4アーム部22dのバッファリアクトル23dは、交流端子21bと第3アーム部22c及び第4アーム部22dとの接続点と変換器VN1との間に設けられる。第5アーム部22eのバッファリアクトル23eは、交流端子21cと第5アーム部22e及び第6アーム部22fとの接続点と変換器WP1との間に設けられる。第6アーム部22fのバッファリアクトル23fは、交流端子21cと第5アーム部22e及び第6アーム部22fとの接続点と変換器WN1との間に設けられる。
【0031】
電流検出器24aは、第1アーム部22aに設けられ、第1アーム部22aに流れる電流を検出する。すなわち、電流検出器24aは、第1アーム部22aのアーム電流を検出する。電流検出器24aは、図示を省略した配線などを介して制御装置14に接続されている。電流検出器24aは、検出した第1アーム部22aの電流値を制御装置14に入力する。これにより、制御装置14には、第1アーム部22aの電流値が入力される。
【0032】
以下同様に、電流検出器24bは、第2アーム部22bに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24cは、第3アーム部22cに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24dは、第4アーム部22dに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24eは、第5アーム部22eに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。電流検出器24fは、第6アーム部22fに流れる電流を検出し、検出した電流値を制御装置14に入力する。
【0033】
電圧検出部25は、交流電力系統2の各相の交流電圧(相電圧)を検出し、検出値を制御装置14に入力する。電圧検出部25は、変圧器6の一次側に接続してもよいし、二次側に接続してもよい。
【0034】
主回路部12では、第1アーム部22aと第2アーム部22bとの接続点、第3アーム部22cと第4アーム部22dとの接続点、及び、第5アーム部22eと第6アーム部22fとの接続点のそれぞれが、交流出力点となる。
【0035】
第1交流端子21aは、第1アーム部22aと第2アーム部22bとの接続点に接続される。第2交流端子21bは、第3アーム部22cと第4アーム部22dとの接続点に接続される。第3交流端子21cは、第5アーム部22eと第6アーム部22fとの接続点に接続される。各交流端子21a~21cは、例えば、変圧器6に接続される。
【0036】
各変換器CELは、例えば、信号線26を介して制御装置14と接続される。制御装置14は、信号線26を介して変換器CELに制御信号を入力することにより、変換器CELの動作を制御する。また、変換器CELは、例えば、変換器CELの制御及び動作保護に関する制御信号や保護信号を図示されていない別の信号線を介して制御装置14に入力する。
【0037】
なお、制御装置14と各変換器CELとの間の通信方式は、上記に限定されるものではない。例えば、直列に接続された複数の変換器CELをデイジーチェーン接続し、制御装置14は、デイジーチェーン接続された一端の変換器CEL及び他端の変換器CELのみと通信を行ってもよい。制御装置14と各変換器CELとの間の通信方式は、制御装置14と各変換器CELとの間で適切に通信を行うことができる任意の通信方式でよい。
【0038】
図2は、変換器を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、変換器CELは、複数のスイッチング素子41、42と、複数の整流素子51、52と、電荷蓄積素子60と、一対の接続端子61、62と、駆動回路64と、主回路給電回路66と、伝送回路68と、を有する。
【0039】
各スイッチング素子41、42は、一対の主端子と、制御端子と、を有する。制御端子は、一対の主端子間に流れる電流を制御する。各スイッチング素子41、42には、例えば、IGBTなどの自己消弧素子が用いられる。一対の主端子は、例えば、エミッタ及びコレクタであり、制御端子は、例えば、ゲートである。
【0040】
各スイッチング素子41、42は、一対の主端子間に電流を流せるようにするオン状態と、一対の主端子間に流れる電流を遮断するオフ状態と、を切り替える。オフ状態は、一対の主端子間に完全に電流が流れない状態に限ることなく、例えば、変換器CELの動作に影響の無い程度の微弱な電流が一対の主端子間に流れる状態でもよい。オフ状態は、換言すれば、一対の主端子間に流れる電流を十分に小さくした状態である。
【0041】
各スイッチング素子41、42には、例えば、ノーマリオフ型の半導体素子が用いられる。各スイッチング素子41、42は、制御端子の電圧が高い状態においてオン状態となり、制御端子の電圧が低い状態においてオフ状態となる。各スイッチング素子41、42は、制御端子の電圧がオン状態よりも低い状態において、オフ状態となる。各スイッチング素子41、42は、例えば、制御端子に正電圧を印加した際にオン状態となり、制御端子の電圧を0Vに設定した際又は制御端子に負電圧を印加した際にオフ状態となる。
【0042】
スイッチング素子42の一対の主端子は、スイッチング素子41の一対の主端子に対して直列に接続される。この例において、変換器CELは、直列に接続された2つのスイッチング素子41、42を有する。換言すれば、変換器CELは、ハーフブリッジ接続された2つのスイッチング素子41、42を有する。この例において、変換器CELは、ハーフブリッジ構成の変換器である。
【0043】
整流素子51は、スイッチング素子41の一対の主端子に対して逆並列に接続されている。整流素子51の順方向は、スイッチング素子41の一対の主端子間に流れる電流の向きに対して逆向きである。同様に、整流素子52は、スイッチング素子42の一対の主端子に対して逆並列に接続されている。整流素子51、52は、いわゆる還流ダイオードである。
【0044】
接続端子61は、スイッチング素子41とスイッチング素子42との間に接続される。接続端子62は、スイッチング素子41のスイッチング素子42に接続された主端子と反対側の主端子に接続される。
【0045】
同一アーム部内の複数の変換器CELは、一対の接続端子61、62を介して直列に接続される。変換器CELに対する電力の供給は、各接続端子61、62を介して行われる。スイッチング素子41は、いわゆるローサイドスイッチであり、スイッチング素子42は、いわゆるハイサイドスイッチである。
【0046】
伝送回路68は、例えば、信号線26を介して制御装置14と通信を行う。制御装置14は、各スイッチング素子41、42のオン・オフを制御するための制御信号を信号線26を介して伝送回路68に送信する。伝送回路68は、入力された制御信号を駆動回路64に入力する。
【0047】
駆動回路64は、各スイッチング素子41、42の制御端子に接続されている。駆動回路64は、伝送回路68から入力された制御信号に基づいて、各スイッチング素子41、42のオン状態及びオフ状態を切り替える。これにより、制御装置14からの制御信号に応じて、各スイッチング素子41、42のオン・オフが制御される。制御装置14は、各変換器CEL毎に制御信号を生成し、各変換器CELのそれぞれの各スイッチング素子41、42のオン・オフを制御する。これにより、制御装置14は、主回路部12による電力の変換を制御する。
【0048】
なお、駆動回路64及び伝送回路68の構成は、上記に限ることなく、各スイッチング素子41、42のオン・オフを制御可能な任意の構成でよい。
【0049】
電荷蓄積素子60は、スイッチング素子41及びスイッチング素子42に対して並列に接続される。電荷蓄積素子60は、例えば、コンデンサである。
【0050】
スイッチング素子41がオフ状態で、スイッチング素子42がオン状態の時には、電荷蓄積素子60の電圧が各接続端子61、62間に現れる。スイッチング素子41がオン状態で、スイッチング素子42がオフ状態の時には、各接続端子61、62間が導通し、各接続端子61、62間の電圧は、実質的にゼロになる。
【0051】
このように、変換器CELは、制御装置14からの制御信号に基づく各スイッチング素子41、42のスイッチングにより、電荷蓄積素子60の電圧を各接続端子61、62間に出力する出力状態と、各接続端子61、62間を導通させたバイパス状態と、各スイッチング素子41、42をオフ状態とした停止状態と、を切り替える。変換器CELは、ハーフブリッジ接続された2つのスイッチング素子41、42の下側のスイッチング素子41をオン状態とすることにより、バイパス状態とする。
【0052】
各アーム部22a~22fにおいては、出力状態となった変換器CELの合計の電圧が、各アーム部22a~22fの電圧となる。主回路部12及び制御装置14は、出力状態とする変換器CELの台数を制御することにより、マルチレベルの電力変換を行う。
【0053】
各スイッチング素子41、42がともにオフ状態の時(変換器CELが停止状態の時)には、アーム電流の向きによって各接続端子61、62間の電圧が決まる。例えば、接続端子62から接続端子61に向かう向きにアーム電流が流れている時には、整流素子51がオンし、各接続端子61、62間の電圧は、実質的にゼロになる。反対に、接続端子61から接続端子62に向かう向きにアーム電流が流れている時には、整流素子52がオンし、電荷蓄積素子60が充電され、各接続端子61、62間には、電荷蓄積素子60の電圧が現れる。
【0054】
主回路給電回路66は、電荷蓄積素子60に対して並列に接続されている。主回路給電回路66は、電荷蓄積素子60に蓄積された電荷を基に、駆動回路64及び伝送回路68の駆動電源を生成し、生成した駆動電源を駆動回路64及び伝送回路68に供給する。駆動回路64及び伝送回路68は、主回路給電回路66からの駆動電源の供給に応じて動作する。
【0055】
なお、駆動回路64及び伝送回路68への給電方式は、上記に限定されるものではない。例えば、電荷蓄積素子60とは別の電源から駆動回路64及び伝送回路68に対して給電を行ってもよい。駆動回路64及び伝送回路68への給電方式は、駆動回路64及び伝送回路68に対して適切に給電を行うことができる任意の方式でよい。
【0056】
駆動回路64は、電荷蓄積素子60の直流電圧の検出を行い、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上又は下限値以下になった際に、保護動作を行う。駆動回路64は、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上又は下限値以下になった際に、変換器CELをバイパス状態に切り替える。
【0057】
例えば、駆動回路64の異常や制御装置14との通信異常などにより、スイッチング素子41、42のスイッチングが意図したタイミングで行われなかった際などに、電荷蓄積素子60の電圧が上昇又は低下してしまう場合がある。こうした電荷蓄積素子60の電圧の上昇は、スイッチング素子41、42や電荷蓄積素子60などの変換器CELの各部の故障の要因となってしまう。電荷蓄積素子60の電圧の低下は、変換器CELの各部の動作不良などの要因となってしまう。
【0058】
このため、駆動回路64は、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上又は下限値以下になった際に、変換器CELをバイパス状態に切り替える。これにより、電荷蓄積素子60の電圧の上昇による変換器CELの故障や電荷蓄積素子60の電圧の低下による変換器CELの動作不良などを抑制することができる。
【0059】
なお、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上か否か及び下限値以下か否かの判定は、電荷蓄積素子60の直流電圧を駆動回路64に直接的に入力することにより、駆動回路64で行ってもよいし、電荷蓄積素子60の直流電圧を検出する別の電圧検出回路などで行ってもよい。例えば、別の電圧検出回路で電荷蓄積素子60の直流電圧を検出し、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上又は下限値以下となった際に、電圧検出回路から駆動回路64に検出信号を入力することにより、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上又は下限値以下であることを駆動回路64で検出できるようにしてもよい。
【0060】
駆動回路64は、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上又は下限値以下になり、変換器CELをバイパス状態に切り替えた際に、バイパス状態であることを表すバイパス信号を制御装置14に送信する。
【0061】
制御装置14は、バイパス信号を受信した際、及び複数の変換器CELのいずれかとの通信に異常が発生していることを検出した際に、同一アーム部内においてバイパス状態となっている変換器CELの数が所定数に達したか否かの判定を行う。制御装置14は、例えば、正常であれば変換器CELから信号が入力されるタイミングにおいても、変換器CELからの信号の入力が無い場合に、その変換器CELとの間の通信の異常を検出する。
【0062】
制御装置14は、所定数に達していないと判定した場合には、同一アーム部内の残りの変換器CELで主回路部12による電力の変換を継続する。一方、制御装置14は、所定数に達したと判定した場合には、主回路部12による電力の変換を停止させる。
【0063】
このように、電力変換装置10では、直列に接続された複数の変換器CELのいずれかに異常が発生した際にも、同一アーム部内においてバイパス状態となっている変換器CELの数が所定数に達するまでは、異常の発生した変換器CELをバイパス状態にすることで、運転を継続することができる。これにより、運用性を向上させることができる。
【0064】
各接続端子61、62間を導通させたバイパス状態では、電荷蓄積素子60の直流電圧が徐々に低下していく。駆動回路64は、例えば、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上になり、変換器CELをバイパス状態に切り替えた後、電荷蓄積素子60の直流電圧が所定値以下になった際に、複数のスイッチング素子41、42の健全性の確認を行う。所定値は、例えば、上限値(過電圧の閾値)と同じである。所定値は、上限値とは別の専用の閾値でもよい。所定値は、例えば、上限値よりも低い値に設定される。これにより、例えば、電荷蓄積素子60の直流電圧を所定値以下と判定した後、再び上限値以上と判定してしまうことを抑制することができる。但し、所定値は、上限値よりも高い値に設定してもよい。所定値は、電荷蓄積素子60の直流電圧に対して設定される任意の値でよい。
【0065】
また、駆動回路64は、例えば、電荷蓄積素子60の直流電圧が下限値以下になり、変換器CELをバイパス状態に切り替えた後、電荷蓄積素子60の直流電圧が所定値以上になった際に、複数のスイッチング素子41、42の健全性の確認を行う。所定値は、例えば、下限値(低電圧の閾値)と同じである。所定値は、下限値とは別の専用の閾値でもよい。所定値は、例えば、下限値よりも高い値に設定される。これにより、例えば、電荷蓄積素子60の直流電圧を所定値以上と判定した後、再び下限値以下と判定してしまうことを抑制することができる。但し、所定値は、下限値よりも低い値に設定してもよい。所定値は、電荷蓄積素子60の直流電圧に対して設定される任意の値でよい。
【0066】
なお、駆動回路64は、電荷蓄積素子60の直流電圧が下限値以下になり、変換器CELをバイパス状態に切り替えた場合には、例えば、変換器CELを一時的に出力状態に切り替えるなど、電荷蓄積素子60を充電するための動作を行ってもよい。
【0067】
駆動回路64は、複数のスイッチング素子41、42の健全性を確認するための確認回路70を有する。確認回路70は、スイッチング素子41、42の制御端子の電圧を基に、スイッチング素子41、42の健全性を確認する。確認回路70は、より詳しくは、スイッチング素子41、42の制御端子と低電位側の主端子との間の電圧を基に、スイッチング素子41、42の健全性を確認する。例えば、スイッチング素子41、42がIGBTである場合、確認回路70は、ゲート・エミッタ間の電圧を基に、スイッチング素子41、42の健全性を確認する。
【0068】
駆動回路64は、例えば、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上になり、変換器CELをバイパス状態に切り替えた後、電荷蓄積素子60の直流電圧が所定値以下になった際に、変換器CELのバイパス状態から停止状態への切り替えを行う。同様に、駆動回路64は、例えば、電荷蓄積素子60の直流電圧が下限値以上になり、変換器CELをバイパス状態に切り替えた後、電荷蓄積素子60の直流電圧が所定値以上になった際に、変換器CELのバイパス状態から停止状態への切り替えを行う。
【0069】
例えば、制御端子に負バイアス(負電圧)を印加してスイッチング素子41、42をオフ状態にした際に、スイッチング素子41、42が健全である場合には、スイッチング素子41、42の制御端子に負バイアスが現れる。一方、スイッチング素子41、42が短絡故障を起こしている場合には、制御端子に負バイアスを印加したとしても、スイッチング素子41、42の制御端子の電圧は、実質的に0Vである。換言すれば、スイッチング素子41、42が短絡故障を起こしている場合には、制御端子に負バイアスを印加したとしても、スイッチング素子41、42の制御端子の電圧の絶対値は、負バイアスの電圧の絶対値よりも小さくなる。
【0070】
確認回路70は、駆動回路64がスイッチング素子41、42の制御端子に負バイアスを印加し、変換器CELのバイパス状態から停止状態への切り替えを行った後、制御端子の電圧が負バイアスとなった際に、スイッチング素子41、42を健全と判断する。そして、確認回路70は、駆動回路64がスイッチング素子41、42の制御端子に負バイアスを印加し、変換器CELのバイパス状態から停止状態への切り替えを行った後、制御端子の電圧が実質的に0Vである際(制御端子の電圧の絶対値が負バイアスの電圧の絶対値よりも小さい際)に、スイッチング素子41、42を異常と判断する。これにより、駆動回路64において、スイッチング素子41、42の健全性を確認することができる。このように、駆動回路64は、例えば、複数のスイッチング素子41、42の制御端子の電圧が正常か否かを確認することにより、複数のスイッチング素子41、42の健全性を確認する。
【0071】
図3は、変換器の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図3に表したように、変換器CELの駆動回路64は、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上か否か又は下限値以下か否かを判定する(図3のステップS101)。電荷蓄積素子60の直流電圧が下限値よりも大きく上限値よりも小さい範囲内にある場合には、駆動回路64は、制御装置14からの制御信号に応じて、各スイッチング素子41、42のオン・オフを制御し、電力の変換を行う。
【0072】
駆動回路64は、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上又は下限値以下になった際に、変換器CELをバイパス状態に切り替える(図3のステップS102)。これにより、電荷蓄積素子60やスイッチング素子41、42などの故障、あるいは変換器CELの動作不良などを抑制することができる。
【0073】
駆動回路64は、バイパス状態への切り替えを行った場合、バイパス状態であることを表すバイパス信号を、伝送回路68などを介して制御装置14に送信する(図3のステップS103)。
【0074】
制御装置14は、バイパス信号を受信すると、同一アーム部内においてバイパス状態となっている変換器CELの数が所定数に達したか否かの判定を行う。制御装置14は、バイパス状態となっている変換器CELの数が所定数に達した場合は、主回路部12による電力の変換を停止させる。制御装置14は、バイパス状態となっている変換器CELの数が所定数に達していない場合は、バイパス状態となった変換器CELを制御の対象から外し、同一アーム部内の残りの変換器CELで主回路部12による電力の変換を継続する。この場合、制御装置14は、例えば、バイパス状態となった変換器CELへの制御信号の送信を停止する。また、この場合、制御装置14は、例えば、バイパス状態となった変換器CELの影響を抑制できるように、バイパス状態の変換器CELが無い場合と比べて、残りの変換器CELの制御の態様を変化させてもよい。
【0075】
駆動回路64は、変換器CELをバイパス状態に切り替えた後、電荷蓄積素子60の直流電圧が適正か否かを判定する(図3のステップS104)。すなわち、駆動回路64は、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上で変換器CELをバイパス状態に切り替えた場合は、電荷蓄積素子60の直流電圧が所定値以下か否かを判定し、電荷蓄積素子60の直流電圧が下限値以下で変換器CELをバイパス状態に切り替えた場合は、電荷蓄積素子60の直流電圧が所定値以上か否かを判定する。
【0076】
駆動回路64は、電荷蓄積素子60の直流電圧が適正ではない場合には、変換器CELのバイパス状態を継続する。一方、駆動回路64は、電荷蓄積素子60の直流電圧が適正である場合には、変換器CELをバイパス状態から停止状態に切り替える(図3のステップS105)。すなわち、駆動回路64は、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上で変換器CELをバイパス状態に切り替えた後、電荷蓄積素子60の直流電圧が所定値以下となった場合、あるいは、電荷蓄積素子60の直流電圧が下限値以下で変換器CELをバイパス状態に切り替えた後、電荷蓄積素子60の直流電圧が所定値以上となった場合に、変換器CELをバイパス状態から停止状態に切り替える。
【0077】
駆動回路64の確認回路70は、変換器CELが停止状態に切り替えられた後、スイッチング素子41、42の制御端子の電圧が負バイアスであるか、実質的に0Vであるかを確認する(図3のステップS106)。
【0078】
駆動回路64は、スイッチング素子41、42の制御端子の電圧が実質的に0Vである場合には、スイッチング素子41、42が短絡故障などを起こしていると判断し、変換器CELを停止状態から再びバイパス状態に切り替える(図3のステップS107)。
【0079】
駆動回路64は、スイッチング素子41、42の制御端子の電圧が負バイアスである場合には、スイッチング素子41、42が健全であると判断し、バイパス状態を解除する(図3のステップS108)。駆動回路64は、スイッチング素子41、42が健全であると判断した場合に、例えば、バイパス状態の解除を制御装置14に依頼するためのバイパス解除依頼を、伝送回路68などを介して制御装置14に送信する。
【0080】
制御装置14は、バイパス解除依頼を受信すると、該当する変換器CELを制御の対象に復帰させる。制御装置14は、例えば、該当する変換器CELを制御の対象に復帰させた後、該当する変換器CELへの制御信号の送信を再開する。駆動回路64は、例えば、制御装置14からの制御信号の入力に応じて、バイパス状態を解除し、制御信号に基づく各スイッチング素子41、42のオン・オフの制御を再開する。
【0081】
なお、バイパス状態の解除は、制御装置14に限ることなく、変換器CELの駆動回路64や確認回路70などで行ってもよい。例えば、変換器CELがバイパス状態になった後にも、制御装置14から該当する変換器CELへの制御信号の送信を継続する。この場合には、スイッチング素子41、42が健全であると確認された際に、変換器CELの駆動回路64や確認回路70で変換器CELのバイパス状態を解除し、制御装置14から入力される制御信号に基づいてスイッチング素子41、42の制御を再開することができる。また、この場合には、例えば、バイパス状態を解除したことを表すバイパス解除信号などを制御装置14に送信し、バイパス状態の解除を制御装置14に通知する。このように、制御装置14は、バイパス信号を受信した際に、必ずしもバイパス状態となった変換器CELを制御の対象から外さなくてもよい。制御装置14は、例えば、バイパス信号を受信した際にも、バイパス信号を受信していない場合と同様に各変換器CELの制御信号の生成を行い、生成した制御信号を各変換器CELに送信してもよい。この場合には、バイパス状態となった変換器CEL側において、制御信号が入力された際にも、バイパス状態を継続するようにすればよい。
【0082】
このように、本実施形態に係る電力変換装置10では、変換器CELをバイパス状態に切り替えた後、電荷蓄積素子60の直流電圧が適正な値に戻った際に、駆動回路64が、複数のスイッチング素子41、42の健全性の確認を行う。そして、複数のスイッチング素子41、42が健全であると確認された場合に、駆動回路64が、変換器CELのバイパス状態を解除する。
【0083】
これにより、直列に接続された複数台の変換器CELの中で、バイパスされた変換器CELの台数が増え、主回路部12の動作の安定性が低下してしまったり、電力変換装置10の運転停止により、電力変換装置10の運用性が低下してしまったりすることを抑制することができる。従って、安定性及び運用性を向上させた電力変換装置10を提供することができる。
【0084】
図4は、変換器の動作の変形例を模式的に表すフローチャートである。
図4のステップS201~S207は、図3に関して説明したステップS101~S107と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0085】
図4に表したように、この例において、駆動回路64は、スイッチング素子41、42の制御端子の電圧が負バイアスであることを確認した後、複数のスイッチング素子41、42の動作の確認を行う(図4のステップS208)。
【0086】
駆動回路64は、例えば、スイッチング素子41のオン状態及びオフ状態の切り替えを行い、スイッチング素子41の制御端子の電圧を基に、スイッチング素子41が正常に動作するか否かを確認する。駆動回路64は、例えば、スイッチング素子41のオフ状態からオン状態への切り替えに応じて、制御端子の電圧が負バイアスから実質的に0Vに切り替わり、スイッチング素子41のオン状態からオフ状態への切り替えに応じて、制御端子の電圧が実質的に0Vから負バイアスに切り替わった際に、スイッチング素子41が正常に動作していると判断する。駆動回路64は、例えば、スイッチング素子41のオン状態及びオフ状態の切り替えを行った際にも、制御端子の電圧が適切に変化しなかった際に、スイッチング素子41が正常に動作していないと判断する。
【0087】
駆動回路64は、同様に、スイッチング素子42のオン状態及びオフ状態の切り替えを行い、スイッチング素子42の制御端子の電圧を基に、スイッチング素子42が正常に動作するか否かを確認する。なお、上側の素子であるスイッチング素子42をオン状態に切り替えると、電荷蓄積素子60の電圧が上昇する。従って、スイッチング素子42は、電荷蓄積素子60が過電圧にならない程度の短時間のみオン状態に切り替える。
【0088】
駆動回路64は、スイッチング素子41、42のいずれかが正常に動作していないことを確認した場合には、変換器CELを停止状態から再びバイパス状態に切り替える。
【0089】
一方、駆動回路64は、スイッチング素子41、42が正常に動作していることを確認した場合には、スイッチング素子41、42が健全であると判断し、バイパス状態を解除する(図4のステップS209)。駆動回路64は、例えば、バイパス状態の解除を制御装置14に依頼するためのバイパス解除依頼を、伝送回路68などを介して制御装置14に送信し、制御装置14からの制御信号の入力に応じて、バイパス状態を解除する。
【0090】
このように、駆動回路64は、変換器CELを停止状態に切り替えた際の制御端子の電圧が正常か否かを確認した後、さらにスイッチング素子41、42の動作の確認を行うことにより、複数のスイッチング素子41、42の健全性を確認してもよい。これにより、複数のスイッチング素子41、42の健全性をより適切に確認することができる。
【0091】
図5は、変換器の動作の変形例を模式的に表すフローチャートである。
図5のステップS301~S303は、図3に関して説明したステップS101~S103と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0092】
図5に表したように、この例において、駆動回路64は、変換器CELをバイパス状態に切り替えた後、バイパス状態への切り替えのタイミングから所定時間が経過したか否かを判定する(図5のステップS304)。所定時間は、例えば、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上又は下限値以下になった後、適正な範囲内に戻ると考えられる時間に設定される。
【0093】
駆動回路64は、所定時間が経過していない場合には、変換器CELのバイパス状態を継続する。一方、駆動回路64は、所定時間が経過した場合には、変換器CELをバイパス状態から停止状態に切り替える(図5のステップS305)。以下、図5のステップS306~S308は、図3に関して説明したステップS106~S108と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0094】
このように、変換器CELをバイパス状態に切り替えた後の、複数のスイッチング素子41、42の健全性の確認は、電荷蓄積素子60の直流電圧が適正な値に戻った際に限ることなく、バイパス状態への切り替えのタイミングから所定時間が経過した際に行ってもよい。
【0095】
駆動回路64が、複数のスイッチング素子41、42の健全性の確認を行うタイミングは、上記に限ることなく、変換器CELをバイパス状態に切り替えた後の任意のタイミングでよい。但し、上記のように、電荷蓄積素子60の直流電圧が適正な値に戻った際、あるいはバイパス状態への切り替えのタイミングから所定時間が経過した際に、複数のスイッチング素子41、42の健全性の確認を行うことにより、適切なタイミングで変換器CELのバイパス状態の解除などを行うことができる。例えば、変換器CELのバイパス状態を解除した後、すぐにバイパス状態に戻ってしまうことなどを抑制することができる。
【0096】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図6に表したように、電力変換装置10aは、第1制御装置14a及び第2制御装置14bの2台の制御装置14を備えている。なお、上記第1の実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0097】
第1制御装置14a及び第2制御装置14bは、主回路部12と接続されている。第1制御装置14a及び第2制御装置14bは、各スイッチング素子のオン・オフを制御することにより、主回路部12による交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から交流電力への変換を制御する。
【0098】
各変換器CELは、信号線26を介して第1制御装置14aと接続される。また、各変換器CELは、信号線27を介して第2制御装置14bと接続される。第1制御装置14aは、信号線26を介して各変換器CELに制御信号を入力することにより、各変換器CELの動作を制御する。第2制御装置14bは、信号線27を介して各変換器CELに制御信号を入力することにより、各変換器CELの動作を制御する。
【0099】
このように、電力変換装置10aは、第1制御装置14a及び第2制御装置14bのいずれかで主回路部12の動作を制御する。すなわち、電力変換装置10aは、第1制御装置14a及び第2制御装置14bを冗長構成としている。
【0100】
電力変換装置10aは、第1制御装置14a及び第2制御装置14bの一方を運転系の制御装置とし、他方を待機系の制御装置とする。運転系の制御装置とは、主回路部12の動作を実際に制御する制御装置である。待機系の制御装置とは、運転系の制御装置の故障やメンテナンスの際などに、運転系の制御装置に代わって主回路部12の動作を制御する予備の制御装置である。電力変換装置10aは、故障やメンテナンスなどに応じて、第1制御装置14a及び第2制御装置14bの運転系と待機系とを切り替える。すなわち、第1制御装置14aが運転系の場合には、第2制御装置14bが待機系となり、第2制御装置14bが運転系の場合には、第1制御装置14aが待機系となる。これにより、第1制御装置14a及び第2制御装置14bの一方が故障などを起こした場合にも、他方を用いて主回路部12の運転を継続することができ、電力変換装置10aの信頼性や運用性を向上させることができる。
【0101】
また、電力変換装置10aでは、例えば、運転系の制御装置が正常に動作している間も、待機系の制御装置を運転系の制御装置と同期して動作させる。第1制御装置14a及び第2制御装置14bは、それぞれ制御信号を主回路部12に入力する。主回路部12は、第1制御装置14a及び第2制御装置14bのうち、運転系の制御装置の制御信号に基づいて動作する。すなわち、第1制御装置14a及び第2制御装置14bにおいて、待機系の制御装置は、いわゆるホットスタンバイで動作する。これにより、運転系の制御装置に故障などが発生した場合に、即座に待機系の制御装置に切り替えることができる。運転系の制御装置から待機系の制御装置への切り替えの際に、主回路部12の動作が停止してしまうことを抑制し、電力変換装置10aにおいて、より安定した動作を得ることができる。
【0102】
第1制御装置14a及び第2制御装置14bは、例えば、ネットワークなどを介して上位のコントローラと通信を行い、上位のコントローラから入力される指令値などに基づいて主回路部12の動作を制御する。また、第1制御装置14a及び第2制御装置14bは、例えば、互いに通信を行い、運転系の制御装置の動作に待機系の制御装置の動作を同期させるとともに、互いの動作状況の確認を行う。なお、第1制御装置14aと第2制御装置14bとの間の通信は、有線でもよいし、無線でもよい。
【0103】
各変換器CELは、電荷蓄積素子60の直流電圧が上限値以上又は下限値以下になり、変換器CELをバイパス状態に切り替えた際に、バイパス状態であることを表すバイパス信号を第1制御装置14a及び第2制御装置14bのそれぞれに送信する。
【0104】
この際、各変換器CELは、バイパス状態となった要因が、運転系の制御装置との通信異常による通信関連バイパスであるのか、運転系の制御装置との通信異常とは異なる要因による非通信関連バイパスであるのか、を表す要因情報をバイパス信号に含める。
【0105】
第1制御装置14a及び第2制御装置14bは、バイパス信号を受信した際、及び複数の変換器CELのいずれかとの通信に異常が発生していることを検出した際に、同一アーム部内においてバイパス状態となっている変換器CELの数が所定数に達したか否かの判定を行う。
【0106】
運転系の制御装置は、バイパス状態となっている変換器CELの数が所定数に達していない場合は、例えば、バイパス状態となった変換器CELを制御の対象から外し、同一アーム部内の残りの変換器CELで主回路部12による電力の変換を継続する。なお、第1の実施形態に関して説明したように、運転系の制御装置は、必ずしもバイパス状態となった変換器CELを制御の対象から外さなくてもよい。
【0107】
一方、運転系の制御装置は、バイパス状態となっている変換器CELの数が所定数に達した場合は、例えば、待機系の制御装置と通信を行うことにより、待機系の制御装置において非通信関連バイパスによってバイパス状態となった変換器CELの数が所定数に達していないか否かを確認する。換言すれば、運転系の制御装置は、待機系の制御装置において通信関連バイパスによってバイパス状態となった変換器CELが認識されているか否かを確認する。
【0108】
運転系の制御装置は、待機系の制御装置において非通信関連バイパスによってバイパス状態となった変換器CELの数が所定数に達していることを確認した場合には、主回路部12による電力の変換を停止させる。
【0109】
一方、運転系の制御装置は、待機系の制御装置において非通信関連バイパスによってバイパス状態となった変換器CELの数が所定数に達していないことを確認した場合には、運転系の制御装置と待機系の制御装置との系切替を実施する。
【0110】
このように、運転系の制御装置は、バイパス状態となっている変換器CELの数が所定数に達した際に、待機系の制御装置において運転を継続可能である場合には、運転系の制御装置と待機系の制御装置との切り替えを行う。
【0111】
待機系の制御装置は、系切替が行われ、運転系の制御装置に切り替わった後、同一アーム部内の残りの変換器CELで主回路部12による電力の変換を継続するとともに、通信関連バイパスによってバイパス状態となった変換器CELと通信を行うことにより、通信関連バイパスによってバイパス状態となった変換器CELに複数のスイッチング素子41、42の健全性の確認を行わせる。
【0112】
この際、待機系であった制御装置においても該当する通信関連バイパスによってバイパス状態となった変換器CELの全てと通信を行うことができなかった場合には、制御装置は、主回路部12による電力の変換を停止させる。制御装置は、通信関連バイパスによってバイパス状態となった変換器CELの一部と通信を行うことができなかった場合には、通信を行うことができなかった変換器CELのバイパス状態を継続させ、同一アーム部内においてバイパス状態となっている変換器CELの数が所定数に達したか否かの判定を行う。制御装置は、所定数に達していると判定した場合には、主回路部12による電力の変換を停止させる。そして、制御装置は、所定数に達していないと判定した場合には、通信関連バイパスによってバイパス状態となった通信可能な変換器CELに複数のスイッチング素子41、42の健全性の確認を行わせる。
【0113】
通信関連バイパスによってバイパス状態となった変換器CELは、制御装置からの指示に応じて複数のスイッチング素子41、42の健全性の確認を行う。複数のスイッチング素子41、42の健全性の確認の方法は、図3に表した方法でもよいし、図4図5に表した方法でもよい。変換器CELは、複数のスイッチング素子41、42が正常に動作していることを確認した場合には、バイパス状態を解除する。変換器CELは、複数のスイッチング素子41、42が正常に動作していることを確認した場合に、例えば、バイパス解除依頼を、現在の運転系の制御装置に送信する。
【0114】
運転系の制御装置は、バイパス解除依頼を受信すると、例えば、該当する変換器CELを制御の対象に復帰させる。
【0115】
このように、本実施形態に係る電力変換装置10aでは、第1制御装置14a及び第2制御装置14bの2台の制御装置14を備えることにより、通信異常によって変換器CELがバイパス状態になってしまった場合にも、待機系の制御装置への切り替えを行うことで、運転を継続することが可能となる。
【0116】
これにより、直列に接続された複数台の変換器CELの中で、バイパスされた変換器CELの台数が増え、主回路部12の動作の安定性が低下してしまったり、電力変換装置10aの運転停止により、電力変換装置10aの運用性が低下してしまったりすることをより確実に抑制することができる。従って、安定性及び運用性をより向上させた電力変換装置10aを提供することができる。
【0117】
なお、上記の例では、運転系の制御装置が、待機系の制御装置において非通信関連バイパスによってバイパス状態となった変換器CELの数が所定数に達していないことを確認した場合に、運転系の制御装置と待機系の制御装置との系切替を実施している。これに限ることなく、例えば、バイパス状態となっている変換器CELの数が所定数に達した場合は、運転系の制御装置が、待機系の制御装置と通信を行うことにより、待機系の制御装置においてバイパス解除依頼を受信しているか否かを確認し、バイパス解除依頼を受信している場合に、系切替を実施してもよい。
【0118】
例えば、通信関連バイパスによってバイパス状態となった変換器CELがある場合には、運転系の制御装置においてバイパス状態となった変換器CELの数が所定数に達した際に、待機系の制御装置においては該当する変換器CELから既にバイパス解除依頼を受信している可能性がある。このような場合には、上記のように、待機系の制御装置においてバイパス解除依頼を受信しているか否かを確認し、バイパス解除依頼を受信している場合に、系切替を実施してもよい。
【0119】
このように、バイパス状態となっている変換器CELの数が所定数に達した際に、待機系の制御装置において運転を継続可能であるか否かを確認する方法は、上記に限ることなく、待機系の制御装置において運転を継続可能であるか否かを適切に確認可能な任意の方法でよい。
【0120】
図7は、変換器の変形例を模式的に表すブロック図である。
図7に表したように、変換器CELaは、別のスイッチング素子72をさらに有する。なお、変換器CELaは、上記第1の実施形態及び第2の実施形態のいずれにおいても変換器CELに置き換えて用いることができる。
【0121】
スイッチング素子72は、一対の接続端子61、62の間に設けられる。変換器CELaでは、スイッチング素子72をオン状態とすることにより、変換器CELaをバイパス状態とすることができる。スイッチング素子72は、いわゆるバイパススイッチである。
【0122】
スイッチング素子72のオン状態及びオフ状態は、駆動回路64によって切り替えられる。駆動回路64は、スイッチング素子72のオン状態を継続することによって、変換器CELaをバイパス状態にする。スイッチング素子72は、例えば、サイリスタ素子である。スイッチング素子72は、例えば、接続端子61から接続端子62に向かう方向において、一対の接続端子61、62間を導通させる。但し、スイッチング素子72は、サイリスタ素子に限ることなく、一対の接続端子61、62間を導通させることが可能な任意のスイッチング素子でよい。
【0123】
このように、変換器CELaは、出力状態と停止状態とを切り替えるスイッチング素子41、42とは別のスイッチング素子72によってバイパス状態に切り替える構成としてもよい。変換器CELaの構成は、複数のスイッチング素子のスイッチングにより、電荷蓄積素子60の電圧を一対の接続端子61、62間に出力する出力状態と、電荷蓄積素子60の電圧の一対の接続端子61、62間への出力を停止した停止状態と、一対の接続端子61、62間を導通させたバイパス状態と、を切り替え可能な任意の構成でよい。
【0124】
図8は、変換器の変形例を模式的に表すブロック図である。
図8に表したように、変換器CELbは、スイッチング素子43、44と、整流素子53、54と、をさらに有する。スイッチング素子43、44には、スイッチング素子41、42と実質的に同じ素子が用いられる。なお、変換器CELbは、上記第1の実施形態及び第2の実施形態のいずれにおいても変換器CELに置き換えて用いることができる。
【0125】
スイッチング素子44の一対の主端子は、スイッチング素子43の一対の主端子に対して直列に接続される。また、スイッチング素子43及びスイッチング素子44は、スイッチング素子41及びスイッチング素子42に対して並列に接続される。電荷蓄積素子60は、スイッチング素子41及びスイッチング素子42に対して並列に接続されるとともに、スイッチング素子43及びスイッチング素子44に対して並列に接続される。
【0126】
整流素子53は、スイッチング素子43の一対の主端子に対して逆並列に接続されている。整流素子54は、スイッチング素子44の一対の主端子に対して逆並列に接続されている。
【0127】
変換器CELbの接続端子61は、スイッチング素子41とスイッチング素子42との間に接続されている。接続端子62は、スイッチング素子43とスイッチング素子44との間に接続されている。この例において、接続端子62は、スイッチング素子43を介してスイッチング素子41のスイッチング素子42に接続された主端子と反対側の主端子に接続される。すなわち、この例において、各スイッチング素子41~44は、フルブリッジ接続されている。変換器CELbは、フルブリッジ回路である。なお、フルブリッジ回路の変換器CELbは、上記第1の実施形態及び第2の実施形態のいずれにおいても変換器CELに置き換えて用いることができる。
【0128】
駆動回路64は、制御装置14、あるいは第1制御装置14a及び第2制御装置14bから入力される制御信号に基づいて、各スイッチング素子41~44のオン・オフを切り替える。
【0129】
このように、MMC型の主回路部12に用いられる変換器は、ハーフブリッジ回路でもよいし、フルブリッジ回路でもよい。
【0130】
フルブリッジ回路の変換器CELbでは、スイッチング素子42及びスイッチング素子43をオン状態にし、スイッチング素子41及びスイッチング素子44をオフ状態にした場合に、各接続端子61、62間に+Vcが出力される。
【0131】
スイッチング素子41及びスイッチング素子44をオン状態にし、スイッチング素子42及びスイッチング素子43をオフ状態にした場合に、各接続端子61、62間に-Vcが出力される。
【0132】
そして、スイッチング素子41及びスイッチング素子43をオン状態にし、スイッチング素子42及びスイッチング素子44をオフ状態にした場合、または、スイッチング素子42及びスイッチング素子44をオン状態にし、スイッチング素子41及びスイッチング素子43をオフ状態にした場合に、各接続端子61、62間に実質的に0Vが出力される。
【0133】
このように、フルブリッジ回路の変換器CELbでは、オン・オフする各スイッチング素子41~44の組み合わせによって、+Vc、0、-Vcの3レベルの電力を出力することができる。
【0134】
この変換器CELbでは、例えば、+Vcを出力する状態が第1出力状態であり、-Vcを出力する状態が第2出力状態であり、0Vを出力する状態がバイパス状態であり、各スイッチング素子41~44をオフ状態とした状態が停止状態である。変換器CELbは、フルブリッジ接続された4つのスイッチング素子41~44のうちの上側の2つのスイッチング素子42、44又は下側の2つのスイッチング素子41、43をオン状態とすることにより、バイパス状態とする。この変換器CELbの各状態の切り替えは、例えば、制御信号を3レベルに対応する三値の信号とすることで実現可能である。
【0135】
フルブリッジ回路の変換器CELbにおいても、ハーフブリッジ回路の変換器と同様に、変換器CELbをバイパス状態に切り替えた後、電荷蓄積素子60の直流電圧が所定値以下になった際に、複数のスイッチング素子41~44の健全性の確認を行い、複数のスイッチング素子41~44が健全であると確認された場合に、該当する変換器CELbを制御の対象に復帰させることにより、電力変換装置の安定性及び運用性を向上させることができる。
【0136】
図9は、変換器の変形例を模式的に表すブロック図である。
図9に表したように、変換器CELcは、別のスイッチング素子74をさらに有する。なお、変換器CELcは、上記第1の実施形態及び第2の実施形態のいずれにおいても変換器CELに置き換えて用いることができる。
【0137】
スイッチング素子74は、一対の接続端子61、62の間に設けられる。変換器CELcでは、スイッチング素子74をオン状態とすることにより、変換器CELcをバイパス状態とすることができる。スイッチング素子74は、いわゆるバイパススイッチである。
【0138】
スイッチング素子74のオン状態及びオフ状態は、駆動回路64によって切り替えられる。駆動回路64は、スイッチング素子74のオン状態を継続することによって、変換器CELcをバイパス状態にする。
【0139】
このように、フルブリッジ回路の変換器CELcにおいて、スイッチング素子74を設けることにより、スイッチング素子74によってバイパス状態に切り替える構成としてもよい。
【0140】
スイッチング素子74は、例えば、双方向サイリスタ素子である。スイッチング素子74は、例えば、接続端子61から接続端子62に向かう方向、及び接続端子62から接続端子61に向かう方向の双方向において、一対の接続端子61、62間を導通させる。但し、スイッチング素子74は、双方向サイリスタ素子に限ることなく、接続端子61から接続端子62に向かう方向、及び接続端子62から接続端子61に向かう方向の双方向に一対の接続端子61、62間を導通させることが可能な任意のスイッチング素子でよい。
【0141】
上記各実施形態では、主回路部12にMMC型の電力変換器を用いている。主回路部12は、MMC型に限ることなく、例えば、MV(Medium Voltage)型の電力変換器など、複数の変換器CELを直列に接続する他の方式の電力変換器でもよい。
【0142】
電力変換装置は、直流送電システムに限ることなく、交流から直流への変換及び直流から交流への変換が必要な他の任意のシステムなどに適用してもよい。電力変換装置による交直変換は、交流から直流及び直流から交流の双方に限ることなく、交流から直流又は直流から交流の一方のみでもよい。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0144】
2…交流電力系統、 3、4…直流送電線、 6…変圧器、 10、10a…電力変換装置、 12…主回路部、 14…制御装置、 14a…第1制御装置、 14b…第2制御装置、 20a、20b…直流端子、 21a~21c…第1~第3交流端子、 22a~22f…第1~第6アーム部、 23a~23f…バッファリアクトル、 24a~24f…電流検出器、 25…電圧検出器、 26、27…信号線、 41~44…スイッチング素子、 51~54…整流素子、 60…電荷蓄積素子、 61、62…接続端子、 64…駆動回路、 66…主回路給電回路、 68…伝送回路、 70…確認回路、 72、74…スイッチング素子、 CEL、CELa~CELc…変換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9