(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】調味組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20241223BHJP
【FI】
A23L27/00 D
(21)【出願番号】P 2018135336
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-06-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平田 武士
(72)【発明者】
【氏名】南野 新
(72)【発明者】
【氏名】林部 和人
【合議体】
【審判長】植前 充司
【審判官】天野 宏樹
【審判官】加藤 友也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-99308(JP,A)
【文献】特開2017-42076(JP,A)
【文献】特開2014-103928(JP,A)
【文献】賀楽二美栄ほか,「ピュレおよびペーストの食形態の認識調査とその物性」,日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌,2011年15巻3号,p.304-309
【文献】千葉崇ほか,「食感改良用加工デンプン「テクステイドA」の基本物性とその応用例,月刊フードケミカル,2012年4月号,第28巻,p.78-82
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細分化された植物由来原料と、加工デンプンとを含み、
前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、
25℃での粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であ
り、
前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、
前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%である、
調味組成物。
【請求項2】
他の成分との混合前の前記加工デンプンにおいて、
目開き300μmメッシュオンとなる加工デンプンが、全加工デンプンの50重量%以上である、
請求項1に記載の調味組成物。
【請求項3】
前記加工デンプンは、リン酸架橋デンプンである、
請求項1又は2に記載の調味組成物。
【請求項4】
前記加工デンプンとは異なる増粘物質を少なくとも一種含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の調味組成物。
【請求項5】
更に、糖アルコールを含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の調味組成物。
【請求項6】
前記植物由来原料は、山葵、生姜、葫、ホースラディッシュ、ウコン、コショウ、唐辛子、山椒、陳皮、柚子、梅、リンゴ、ニラ、バジル、パクチー、青じそ、赤じそ、キャベツ、ネギ、ほうれん草、大根、人参、山芋、オクラ、モロヘイヤ、ユリ根、茗荷、蕪及び胡瓜からなる群から選択される少なくとも一種である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の調味組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、山葵、生姜、葫などの植物由来原料を含む粘体状の調味組成物が利用されている。この調味組成物は、細断や擂潰などの処理が施されて細分化された植物由来原料を含むことから、上記植物由来原料を別途調理する手間を省ける点や、樹脂製チューブなどの容器に封入され長期保存できる点などから、広く普及している。近年では、含有される植物由来原料のバリエーションが増え、例えば、しそ梅、梅肉(梅実)、大根おろし、柚子、レリッシュを含む調味組成物も販売されている。
【0003】
このような調味組成物において、植物由来原料の含有割合が高いほど、植物本来の風味・食感を提供することが可能である。しかしながらこの場合、植物由来原料以外の成分割合が相対的に低下するため、製造後の時間経過に伴い、調味組成物の品質変化の影響を大きく受ける。具体的には、調味組成物における繊維感や保水性等が変化しやすくなり、本来想定していた風味・食感が変化し得ることに加え、離水などにより樹脂製チューブから調味組成物を押し出す際の滑らかさ等の物性も変化し得る。
【0004】
このような事態を防ぐため、例えば、澱粉や加工デンプンを添加するなどの手段が講じられている。ただし、上記調味組成物は、喫食時に、醤油、ポン酢、麺つゆ、スープ、水などの液体組成物に添加される場合もあり、澱粉や加工デンプンの諸特性によって、液体組成物内での調味組成物の分散性が阻害されるおそれがある。
【0005】
ここで、加工デンプンを添加した場合であっても、これを含有する組成物の液体中での分散性向上を図る技術として、例えば特許文献1に記載の発明が開示されている。特許文献1に記載の発明は、加工デンプン、その他所定の増粘多糖類からなる群から選ばれる1種類以上を含み、水や温湯中での分散性を向上させた糊状組成物に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1には、糊状組成物が上記のような調味組成物として利用されることに関して開示も示唆もされていない。また、特許文献1に記載の発明は、糊状組成物の水や温湯中での分散性向上を図るものであるが、組成物の風味・食感の維持を図ることを全く想定していない。すなわち、仮に植物由来原料が、特許文献1に記載の発明に含有されたとしても、その風味・食感の維持を図るための工夫は施されていない。
【0008】
従って、特許文献1に記載の発明は、液体組成物内での調味組成物の分散性と、植物由来原料の風味・食感の維持(特に、植物由来原料の粒感の維持)に関する双方の問題を同時に解決できない。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、加工デンプンを用いたとしても、例えば、液体組成物に添加された際の分散性の向上を図ると共に、含有される植物由来原料の風味・食感(粒感)を維持可能な調味組成物を提供することを目的とする。それに加え、相応の粘性を有することにより、内部での加工デンプンの均一分散を維持できる調味組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る調味組成物は、以下の特徴を有する。
(1)細分化された植物由来原料と、加工デンプンとを含み、
前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、
25℃での粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、
前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、
前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%である。
(2)他の成分との混合前の前記加工デンプンにおいて、
目開き300μmメッシュオンとなる加工デンプンが、全加工デンプンの50重量%以上である。
(3)前記加工デンプンは、リン酸架橋デンプンである。
(4)前記加工デンプンとは異なる増粘物質を少なくとも一種含む。
(5)更に、糖アルコールを含む。
(6)前記植物由来原料は、山葵、生姜、葫、ホースラディッシュ、ウコン、コショウ、唐辛子、山椒、陳皮、柚子、梅、リンゴ、ニラ、バジル、パクチー、青じそ、赤じそ、キャベツ、ネギ、ほうれん草、大根、人参、山芋、オクラ、モロヘイヤ、ユリ根、茗荷、蕪及び胡瓜からなる群から選択される少なくとも一種である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る調味組成物は、粒状であると共に水不溶性又は難溶性の加工デンプンを含む。そのため、調味組成物が、例えば、液体組成物に添加されたとしても、分散性の向上と、植物由来原料の粒感の維持を同時に図ることができる。また、この調味組成物は、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm,25℃)というとろみや粘性を有するため、調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[調味組成物]
本発明の一実施形態に係る調味組成物を詳細に説明する。本実施形態に係る調味組成物は、植物由来原料、粒状で水不溶性(又は難溶性)の加工デンプンを含む。また、本実施形態に係る調味組成物は、上記成分に加えて、糖アルコール、増粘物質、水分を含むことが好ましい。更に、必要に応じて他の成分を含んでもよい。
【0013】
植物由来原料は、各種野菜、果物、ハーブ、スパイスなど特に限定されるものではない。植物由来原料として、可食可能な植物をそのまま(冷凍、加熱、乾燥などの処理を施さず)用いてもよいし、冷凍、加熱や乾燥など、植物の性状を維持した処理が施された物を用いてもよい。植物由来原料として、例えば、山葵、生姜、葫、ホースラディッシュ、ウコン、コショウ、唐辛子、山椒、陳皮、柚子、梅、リンゴ、ニラ、バジル、パクチー、青じそ、赤じそ、キャベツ、ネギ、ほうれん草、大根、人参、山芋、オクラ、モロヘイヤ、ユリ根、茗荷、蕪又は胡瓜が、挙げられる。これらのうちの一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて、植物の特性を損なわない限りにおいて、塩や油等を加えても良い。
【0014】
植物由来原料の含有量は、特に限定されるものではなく、植物由来原料の種類や物性などに応じて適宜調整可能である。植物由来原料の含有量の一例として、調味組成物全量に対して、25重量%から75重量%とすることなどが考えられる。
【0015】
なお、乾燥処理された植物由来原料は、収穫した植物をそのまま用いる場合や冷凍処理された植物由来原料を用いる場合と異なり、乾燥によって消失された水分だけ軽量化されている。従って、乾燥処理された植物由来原料を用いる場合においては、以下に記される重量として、当該植物が本来含有するとされる水分量を足した重量を示すものとする。ただし、乾燥させた植物由来原料に対して、例えば水戻し処理などを行った結果、本来含有するとされる分を超えて水分が含まれる場合も想定され得る。その場合、超過水分量を植物由来原料の重量としてカウントしない。
【0016】
ここで、含有される植物由来原料は、細分化されている。植物由来原料は、調味組成物内に均一に分散されることが好ましいところ、細分化された植物由来原料を用いることで、粒感を提供可能であることに加え、調味組成物内での均一分散を図ることができる。更に、細分化されることで、香味性・香気性を高めることができる。
【0017】
また、植物由来原料において、細分化された状態でとろみや粘性が比較的弱い植物が、液体組成物内で容易に均一分散する傾向を有するため、そのような性質を有する植物を用いることが好ましい。その例として、山葵、生姜、葫、青じそ、赤じそ、胡瓜等が挙げられる。
【0018】
植物由来原料の細分化処理は、特に限定されるものではない。例えば、粉砕、破砕、細断、擂潰、磨砕処理が挙げられる。また、植物由来原料の細分化の程度は、特に限定されるものではないが、例えば、日本工業規格 JIS Z8801-1に基づく公称目開き500μmメッシュオンの植物由来原料が、全植物由来原料の50重量%以上となるような粒度分布とすることが好ましい(以下、単に「目開き」と言う場合、特記しない限り「公称目開き」を示す。)。このような条件とすることで、喫食者に相応の具材感を提供できる。
【0019】
また、1mmメッシュオンの植物由来原料が全植物由来原料の50重量%以上となるような粒度分布とする場合、植物由来原料を他の原料と混合させた後であっても、植物由来原料の細分片を目視できる(外見における具材感も提供できる)ため、好ましい。
【0020】
更に、2mmメッシュオンの植物由来原料が全植物由来原料の50重量%以上となるような粒度分布とする場合、調味組成物を液体組成物に分散させた後でも、外見上の具材感も提供できるため好ましい。
【0021】
更に、以下に限定されるものではないが、樹脂製チューブ容器からの押出性に影響が出ない点で、目開き9.5mmメッシュパスとなる植物由来原料が好ましい。更に、樹脂製チューブ容器口部での詰まりを抑制できる点で、目開き8mmメッシュパスとなる植物由来原料が、より好ましい。
【0022】
また、例えば、500μmメッシュオンの植物由来原料は、全植物由来原料の60重量%以上であることがより好ましく、全植物由来原料の70重量%以上であることがより好ましい。このような粒度分布とすることで、具材感を提供できることに加え、植物由来原料の食感(例えば、粒感)を維持できる点で好ましい。また、上記した1mmメッシュオン又は2mmメッシュオンの植物由来原料に関しても同様である。なお、以下の記載で単に「食感」や「粒感」という場合、特記しない限り、植物由来原料の「食感」や「粒感」を指す。
【0023】
次に、本実施形態に係る加工デンプンは、粒状である。加工デンプンが粒状であることで、上記細分化された植物由来原料と均一に斑なく混合される。従って、調味組成物の(例えば)液体組成物中での分散性向上に大きく寄与する。
【0024】
粒状の加工デンプンの平均粒径は、特に限定されるものではないが、300μmから5,000μmであることが好ましく、500μmから4,000μmであることがより好ましく、800μmから3,000μmであることが更に好ましい。このような平均粒径を有する加工デンプンを用いることで、食感(粒感)・風味を維持しつつ、例えば、液体組成物に添加された際の調味組成物の分散性を高めることが可能となる。
【0025】
加工デンプンの粒度分布は、特に限定されるものではないが、上記目開き300μmメッシュオンのものが、全加工デンプンの50重量%以上となることが好ましい。
【0026】
それに加え、本実施形態に係る加工デンプンは、水不溶性又は難溶性である。この条件を満たすものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、又はリン酸架橋デンプンが挙げられる。これらのうちの一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
その中でも、糊化が抑制されると共に、耐せん断性や耐酸性に優れ、且つ良好な食感を提供可能であるリン酸架橋デンプンが好ましい。このような架橋デンプンを用いれば、上記粒状の条件と相まって、粒感を維持しつつ、例えば、液体組成物に添加された本実施形態に係る調味組成物の分散性を著しく向上させることができる。
【0028】
前述のように、本実施形態に係る加工デンプンは水不溶性又は難溶性であることから、例えば、調味組成物内の水分に溶解しない(又は水分に溶解するとしても、溶解しないと同視し得る程、溶解度が少ない)。そのため、加工デンプンが、調味組成物内で均一に分散されると共に、植物由来原料との均一混合を維持できる。なお、本実施形態における上記加工デンプンは、調味組成物の粘性を実質的に付与しない。調味組成物の粘性は、後述する増粘物質によって付与される。
【0029】
上記加工デンプンの原料澱粉は、特に限定されるものではないが、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、又はスイートコーン由来、デントコーン由来、ワキシーコーン由来等のコーンスターチなどが挙げられる。
【0030】
上記加工デンプンの含有量は、特に限定されるものではないが、調味組成物全量に対して、0.5重量%から6.0重量%であることが好ましく、0.7重量%から5.6重量%であることがより好ましく、3.0重量%から5.6重量%であることが更に好ましい。後述する実施例で示されるように、加工デンプンの含有量を上記条件とすることで、食感(粒感)を十分に発揮させながら、例えば、液体組成物中での調味組成物の分散性をより向上させることができる。
【0031】
本実施形態に係る糖アルコールは、主に、水分活性(Aw)を低下させ、調味組成物の劣化や微生物の増殖を抑えるために用いられる。このような効果を発揮し得るものであれば、糖アルコールの種類は特に限定されるものではない。本実施形態に係る糖アルコールとして、例えば、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール、エリスリトール、デキストリンの還元物が挙げられる。これらの一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
糖アルコールの含有量は、特に限定されるものではないが、植物由来原料より少なく、食感や風味を損なわない範囲で用いても良い。糖アルコールの含有量の一例として、調味組成物全量に対して、30重量%以下が好ましく、25重量%以下であることがより好ましい。糖アルコールの含有量を上記条件とすることで、食感(粒感)の維持や液体組成物内での分散性向上の効果を損なわず、水分活性を適切に低下させることができる。なお、長期保存可能な程度の水分活性であれば、その値は特に限定されるものではないが、本実施形態に係る糖アルコールによって、0.70から0.98の水分活性となることが好ましい。
【0033】
本実施形態に係る増粘物質は、所定の粘性を調味組成物に付与するために用いられる。増粘物質の種類は、特に限定されるものではない。増粘物質として、例えば、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム等のガム、粘性を付与するデンプンや加工デンプンが挙げられる。
【0034】
増粘物質の含有量は、調味組成物の粘度が10,000mPa・s以上になるように調整される限りにおいては、特に限定されるものではない。調味組成物の粘度が10,000mPa・s以上となるよう、増粘物質の含有量を調整することで、上記粒状の加工デンプンを調味組成物に均一に分散させることができ、容器中で保管される間も均一分散が維持される。更に、離水を防止することもできる。なお、本実施形態に係る調味組成物の粘度は、全て東機産業株式会社製のB形粘度計TVB10、ローターNo.M4、ローター回転数1.5rpm、60秒間、25℃の条件で測定された粘度を示す。
【0035】
[調味組成物の製造方法]
次に、前述の調味組成物の製造方法について説明する。まず、調味組成物に含まれる各成分原料を計量し、これらを混合する(原料混合工程)。混合手段は、特に限定されるものではないが、例えば、ステファンミキサー(ステファン社製)のような高速撹拌機を用いる手段が挙げられる。
【0036】
なお、調味組成物に含有される植物由来原料については、原料混合工程を行う前に、粉砕、破砕、細断、擂潰、磨砕などによって細分化処理(細分化工程)を施すことが好ましい。ただし、後述する容器充填の段階で、最終的に植物由来原料が細分化されていればよいため、上記細分化工程の実行は、必ずしも上記タイミングに限られない。
【0037】
原料混合工程の際、加熱工程を共に施さない態様が好ましいが、これに限られるものではない。また、原料混合工程において、混合物の温度が60℃以下となるよう、これを撹拌することが好ましいが、上記態様に限られない。
【0038】
各原料が均一に混合された段階で原料混合工程を終了する。続いて、得られた混合物(調味組成物)を容器に充填する。充填用の容器は、製品用途に応じて適宜変更可能である。例えば、チューブ状の樹脂容器、扁平の袋状の容器、円筒状の瓶容器などが挙げられる。
【実施例】
【0039】
以上説明した調味組成物において、具体的な実施の例を以下に示す。なお、本発明は、下記の実施例により限定及び制限されるものではない。
【0040】
<実施例1から実施例7>
植物由来原料として、細分化された山葵原料を用いた実施例1から実施例7の試料を作製した。実施例1から実施例7の試料は、いずれも、山葵原料、リン酸架橋デンプン(粒状・水不溶(又は難溶)の加工デンプン)、ソルビトール(糖アルコール)、α化澱粉(増粘物質)、キサンタンガム(増粘物質)、セルロース、コーン油、食塩、砂糖、アミノ酸を含む。なお、目開き1mmメッシュオン且つ目開き4mmメッシュパスに粉砕された山葵原料を用いた。
【0041】
実施例1から実施例7の試料に関する成分配合表を下表1に示す(表中に示される数値の単位は、調味組成物全量に対する各成分の重量%である。)。実施例の番号が増える程、リン酸架橋デンプンの重量%が増加すると共に、山葵原料の重量%が減少する。
【0042】
【0043】
<実施例8から実施例14>
植物由来原料として、細分化された生姜原料を用いた実施例8から実施例14の試料を作製した。実施例8から実施例14の試料は、いずれも、生姜原料、リン酸架橋デンプン(粒状・水不溶(又は難溶)の加工デンプン)、キサンタンガム(増粘物質)、セルロース、食塩、砂糖、アミノ酸、水分を含む。なお、目開き2mmメッシュオン且つ目開き4.75mmメッシュパスに粉砕された生姜原料を用いた。
【0044】
実施例8から実施例14の試料に関する成分配合表を下表2に示す(表中に示される数値の単位は、調味組成物全量に対する各成分の重量%である。)。実施例の番号が増える程、リン酸架橋デンプンの重量%が増加すると共に、生姜原料の重量%が減少する。
【0045】
【0046】
<実施例15から実施例21>
植物由来原料として、細分化された柚子原料、唐辛子原料を含む植物由来原料の混合体を用いた実施例15から実施例21の試料を作製した。実施例15から実施例21の試料は、いずれも、柚子、唐辛子、陳皮、山椒を含む植物由来原料の混合体、リン酸架橋デンプン(粒状・水不溶(又は難溶)の加工デンプン)、キサンタンガム(増粘物質)、食塩、砂糖、アミノ酸、水分を含む。
【0047】
なお、実施例15から実施例21において、目開き2mmメッシュオン且つ目開き4mmメッシュパスとなる程度に粉砕された柚子原料を用いた。また、目開き1mmメッシュオン且つ目開き4.75mmメッシュパスとなる程度に粉砕された唐辛子原料を用いた。陳皮、山椒は細分化されて、目開き500μmメッシュパスした粉状のものを用いた。
【0048】
実施例15から実施例21の試料に関する成分配合表を下表3に示す(表中に示される数値の単位は、調味組成物全量に対する各成分の重量%である。)。実施例の番号が増える程、リン酸架橋デンプンの重量%が増加すると共に、上記植物由来原料の混合体の重量%が減少する。
【0049】
【0050】
<実施例22から実施例28>
植物由来原料として、細分化されたパクチー原料を用いた実施例22から実施例28の試料を作製した。実施例22から実施例28の試料は、いずれも、パクチー原料、リン酸架橋デンプン(粒状・水不溶(又は難溶)の加工デンプン)、ソルビトール(糖アルコール)、デキストリン(増粘物質)、タマリンドガム(増粘物質)、キサンタンガム(増粘物質)、コーン油、食塩、砂糖、アミノ酸、水分を含む。なお、目開き2mmメッシュオン且つ目開き8mmメッシュパスとなる程度に細断されたパクチー原料を用いた。
【0051】
実施例22から実施例28の試料に関する成分配合表を下表4に示す(表中に示される数値の単位は、調味組成物全量に対する各成分の重量%である。)。実施例の番号が増える程、リン酸架橋デンプンの重量%が増加すると共に、パクチー原料の重量%が減少する。
【0052】
【0053】
<実施例29から実施例35>
植物由来原料として、細分化された青じそ原料を用いた実施例29から実施例35の試料を作製した。実施例29から実施例35の試料は、いずれも、青じそ原料、リン酸架橋デンプン(粒状・水不溶(又は難溶)の加工デンプン)、ソルビトール(糖アルコール)、α化澱粉(増粘物質)、キサンタンガム(増粘物質)、食塩、砂糖、アミノ酸、水分を含む。なお、目開き500μmメッシュオン且つ目開き2mmメッシュパスとなる程度に細断された青じそ原料を用いた。
【0054】
実施例29から実施例35の試料に関する成分配合表を下表5に示す(表中に示される数値の単位は、調味組成物全量に対する各成分の重量%である。)。実施例の番号が増える程、リン酸架橋デンプンの重量%が増加すると共に、青じそ原料の重量%が減少する。
【0055】
【0056】
<評価>
水に添加された上記実施例1から実施例35の粒感及び分散性を評価した。評価結果を下表6から表10に示す。なお、下表に示す評価は、パネラー11人による官能評価である。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
ここで、表6から表10の評価指標は、いずれも下記の通りである。
(粒感に関して)
・指標「◎」:食した際に粒感が顕著に現れた。
・指標「○」:食した際に粒感が現れた。
・指標「△」:食した際の粒感が多少現れた。
・指標「×」:食した際に粒感が現れなかった。
【0063】
(分散性に関して)
・指標「◎」:非常に良く分散した。
・指標「○」:良く分散した。
・指標「△」:多少分散した。
・指標「×」:分散しなかった。
【0064】
表6から表10に示されるように、いずれの試料においても、リン酸架橋デンプンの含有量を0.7重量%から5.6重量%とすると、粒感及び分散性の双方に関して良好な評価結果が得られた。その中でも特に、リン酸架橋デンプンの含有量を3.0重量%から5.6重量%とすると、粒感及び分散性の双方に関してより良好な評価結果が得られた。
【0065】
また、リン酸架橋デンプンが増え、相対的に植物由来原料が減っているにも関わらず、植物由来原料の粒感が向上する領域が現れた。例えば、植物由来原料として山葵原料を用いた場合、実施例6の粒感が、それより山葵原料を多く含む実施例1から実施例5に比べて良好であった。他の植物由来原料(生姜、柚子・唐辛子等の混合体、パクチー、青じそ)を含む調味組成物に関しても、これと同様の傾向が見られた。
【0066】
このことから、粒状・水不溶性(又は難溶性)加工デンプン(本実施例の場合、リン酸架橋デンプン)を好適な含有量で含ませることにより、それが、特に粒感の向上に大きく寄与することが示唆された。
【0067】
次に、植物由来原料の種類別の評価傾向は、下記の通りであった。まず、山葵原料を用いた試料(実施例1から実施例7、表6参照)の場合、リン酸架橋デンプンの含有量を0.7重量%から5.6重量%とすると、粒感及び分散性の双方に関し特に良好な評価結果が得られた。
【0068】
次に、生姜原料を用いた試料(実施例8から実施例14、表7参照)及び柚子原料と唐辛子原料との混合体を用いた試料(実施例15から実施例21、表8参照)の場合、リン酸架橋デンプンの含有量を0.7重量%から3.0重量%とすると、粒感及び分散性の双方に関して特に良好な評価結果が得られた。
【0069】
次に、パクチー原料を用いた試料(実施例22から実施例28、表9参照)及び青じそ原料を用いた試料(実施例29から実施例35、表10参照)の場合、リン酸架橋デンプンの含有量を3.0重量%から5.6重量%とすると、粒感及び分散性の双方に関して特に良好な評価結果が得られた。
【0070】
以上、本発明に係る調味組成物の詳細を説明した。ただし、上記説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定する趣旨で記載されたものではない。本発明には、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るものを含み得る。また、本発明にはその等価物が含まれる。