(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
B64D 9/00 20060101AFI20241223BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20241223BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20241223BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20241223BHJP
B64U 10/14 20230101ALI20241223BHJP
B64U 10/60 20230101ALI20241223BHJP
B64U 20/30 20230101ALI20241223BHJP
B64U 20/87 20230101ALI20241223BHJP
B64U 50/19 20230101ALI20241223BHJP
B64U 50/23 20230101ALI20241223BHJP
【FI】
B64D9/00
B64C27/08
B64C39/02
B64D47/08
B64U10/14
B64U10/60
B64U20/30
B64U20/87
B64U50/19
B64U50/23
(21)【出願番号】P 2020040933
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】516304883
【氏名又は名称】エアロセンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢幡 潤
(72)【発明者】
【氏名】佐部 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康輔
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171997(JP,A)
【文献】特開2019-189194(JP,A)
【文献】実開平04-016569(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 9/00
B64C 27/04
B64C 39/02
B64U 10/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に配置され、前記機体に接続されたケーブル及び所定の搭載物を支持する支持部材が取付けられる取付部を備え、
機体上下方向において、前記取付部は、機体重心と同じ位置又は前記機体重心よりも
上方の位置に位置し、
前記支持部材は、
前記所定の搭載物の外側に位置するように
配置され、かつ、前記ケーブルを
前記所定の搭載物から離れた位置で支持する、
飛行体。
【請求項2】
前記取付部は、前記支持部材が取付けられた場合に、当該支持部材が前記機体に対して回動できるように構成されている、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記支持部材は、前記取付部に回動係合する接続部を含む、
請求項2に記載の飛行体。
【請求項4】
前記取付部及び前記接続部の少なくとも一方は、フック形状を有する、
請求項3に記載の飛行体。
【請求項5】
前記取付部及び前記接続部の一方はフック形状を有し、他方はリング形状を有する、
請求項4に記載の飛行体。
【請求項6】
機体上方への推力を発生させる複数のロータをさらに備える、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項7】
前記支持部材は、各々が前記ケーブルの異なる部分に接触する複数の接触部を含む、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項8】
前記支持部材は、金属製ワイヤを含む、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項9】
前記取付部は、機体上下方向からみたときに前記機体重心と同じ位置に位置している単一の取付部である、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項10】
前記取付部は、機体上下方向からみたときに前記機体重心を挟んで互いに反対側に位置する一対の取付部である、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項11】
前記取付部は、機体上下方向からみたときに前記機体重心を中心とする多角形の頂点に位置する複数の取付部である、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項12】
前記所定の搭載物は、前記機体に接続されたカメラであり、
前記支持部材は、前記カメラを支持する、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項13】
前記支持部材は、前記カメラを内側に含むU字形状を有する、
請求項12に記載の飛行体。
【請求項14】
前記所定の搭載物は、カメラであり、
前記支持部材は、前記ケーブル及び前記支持部材が前記カメラの画角外に位置するように、前記ケーブルを支持する、
請求項1に記載の飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、給電ケーブルが接続された飛行体を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給電ケーブル等のペイロードが飛行体に接続されていると、飛行が不安定になる可能性がある。
【0005】
本開示の一側面は、飛行を安定化することが可能な飛行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る飛行体は、機体に配置され、機体に接続されたケーブル及び所定の搭載物を支持する支持部材が取付けられる取付部を備え、機体上下方向において、取付部は、機体重心と同じ位置又は機体重心よりも上方の位置に位置し、支持部材は、ケーブル及び支持部材が所定の搭載物の外側に位置するように配置され、かつ、前記ケーブルを前記所定の搭載物から離れた位置で支持する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る飛行体の概略構成の例を示す図である。
【
図2】取付部及び支持部材の概略構成の例を示す図である。
【
図3】取付部及び支持部材の概略構成の例を示す図である。
【
図4】取付部及び支持部材の概略構成の例を示す図である。
【
図19】変形例に係る飛行体の概略構成を示す平面図である。
【
図20】変形例に係る飛行体の概略構成を示す正面図である。
【
図21】変形例に係る飛行体の概略構成を示す側面図である。
【
図22】変形例に係る飛行体の概略構成を示す側面図である。
【
図23】変形例に係る飛行体の概略構成を示す図である。
【
図24】変形例に係る飛行体の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、同一の部分には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0009】
以下に示す項目順序に従って本開示を説明する。
1. 実施形態
1.1 飛行体の概略構成の例
1.2 取付部の配置の例
1.3 飛行の例
2. 変形例
3. 効果
【0010】
1. 実施形態
1.1 飛行体の概略構成の例
図1は、実施形態に係る飛行体の概略構成の例を示す図である。
図1に示される飛行体1は、例えばUAV(無人航空機:Unmanned Aerial Vehicle)である。飛行体1には、ペイロードが接続される。ペイロードとして、
図1にはケーブルCが例示される。ケーブルCは、例えば給電ケーブルである。給電ケーブルは、給電線及び通信線等を含む複合ケーブルであってよい。
【0011】
図1に例示される飛行体1は、本体2と、アーム3と、ロータ4と、ランディングギア5と、支持部材6と、取付部7とを備える。飛行体1の機体を、機体10と称し図示する。機体10は、本体2、アーム3、ロータ4及びランディングギア5等を指し示す。支持部材6及び取付部7は、機体10の一部であってもよし、機体10とは別の部分であってもよい。
【0012】
本体2は、機体10の中央部分を構成する。本体2は、例えば、飛行制御及び外部通信等を行う制御装置(不図示)を内部に備える。制御装置は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用可能に構成されてよい。GNSSの例は、GPS(Global Positioning System)である。本体2の下方には、カメラ21が搭載される。カメラ21は、少なくとも一部が機体10から露出するように搭載され、飛行体1の前方を含む周囲画像を撮像する。撮像画像は、飛行体1の飛行制御に用いられたり、外部装置に送信されたりする。なお、カメラ21の位置は
図1に示される例に限定されない。カメラ21が搭載されていなくてもよい。
【0013】
アーム3は、ロータ4を所望の位置に配置する。この例では、アーム3は、本体2側を基端部とし、本体2から外側に向かって延在する。各アーム3は同じ形状を有してよい。なお、アーム3の数及び延在方向は、
図1の例に限定されない。
【0014】
ロータ4は、推力を発生する。この例では、ロータ4は、アーム3の先端部において、アーム3の上側に設けられる。ただし、ロータ4は、アーム3の下側に設けられてもよいし、上側及び下側の両側にそれぞれ設けられてもよい。「ロータ」は、広義には、回転運動を生じる機関(内燃、外燃、モーター等の電動機)とプロペラとから構成される推進器を指し、狭義には、プロペラを指すものであるが、とくに説明がある場合を除き、ここでは、ロータとして、モータ及びプロペラを含む態様を説明する。すなわち、ロータ4は、モータ4a及びプロペラ4bを含む。ロータ4は、プロペラ4bの回転軸が機体上下方向となるように設けられる。モータ4aによってプロペラ4bが回転し、機体上方に向かう推力(揚力)が発生する。隣り合うロータ4は互いに逆回転制御されてよく、また、各ロータ4の回転速度は個別に制御されてよい。各ロータ4の回転速度に差異を持たせることによって、回転速度の大きいロータ4から回転速度の小さいロータ4に向かう方向に飛行体1が飛行する。
【0015】
ランディングギア5は、着陸時に飛行体1を支持する。この例では、ランディングギア5は、アーム3の先端部において、アーム3の下側に設けられる。ランディングギア5は下方に延在する棒状部材である。着陸時にランディングギア5の先端が地面等に当接し、飛行体1が支持される。
【0016】
飛行体1の飛行時には、機体10の姿勢制御が行われる。姿勢制御は、例えば上述した本体2内の制御装置によって行われる。姿勢制御の例は、機体10を水平姿勢に維持する制御である。例えば、カメラ21の画像及び図示しないセンサ(ジャイロセンサ、加速度センサ等)によって検出される機体10の水平方向に対する傾きが小さくなるように、各ロータ4の推力が個別に制御される。推力は、ロータ4の回転速度の指示値(指示回転速度)を調節することによって制御される。このような姿勢制御により、機体10が傾いた場合でも、機体10が水平姿勢に戻され(復元し)、水平姿勢が維持される。
【0017】
先に説明したように、機体10にはケーブルCが接続される。ケーブルCが上述の複合ケーブルの場合、ケーブルCの一端は機体10に接続され、ケーブルCの他端は図示しない地上設備等に接続される。地上設備は、例えば給電装置及び通信装置を備える。ケーブルCの長さは、例えば100m程度である。ケーブルCを除く飛行体1の重量が例えば5kg程度であるのに対し、ケーブルCの重量は例えば2kg程度でありうる。ケーブルCの重量が飛行体1の重量に対して無視できないほど大きいので、飛行体1は、ケーブルCの張力の影響を受ける。これによって、機体10の姿勢が不安定になる可能性がある。
【0018】
上述のケーブルCの影響は、支持部材6及び取付部7によって低減される。支持部材6及び取付部7について、
図2~
図4も参照して説明する。
図2~
図4は、いくつかの視点からみた支持部材6及び取付部7の概略構成の例を示す図である。この例では、ケーブルCは、インレット2a(
図2)を介して本体2の下部に接続される。
【0019】
支持部材6は、ケーブルCを支持する。この例では、支持部材6は、機体10とケーブルCとの接続箇所であるインレット2aとは異なる位置でケーブルCを支持する。支持部材6は、本体6a、接続部6b及び接触部6cを含む。
【0020】
本体6aは、ケーブルCの支持に必要な長さ及び強度(剛性)等を与える。例えば、本体6aは、取付部7からインレット2aまでの距離よりも大きい長さを有してよい。本体6aは、ケーブルCの張力によって大きくは変形しない剛性を有してよい。そのような本体6aの例は、金属製のワイヤ、棒等である。また、素材は金属製に限らず、ゴム、プラスチック、FRPであってもよい。
【0021】
接続部6bは、支持部材6を取付部7に接続する。接続部6bは、支持部材6が機体10に対して回動できるように、支持部材6を取付部7に接続してよい。そのような接続の例は、回動係合である。回動係合を可能にする接続部6bとして、フック形状を有する接続部6bが例示される。2つの接続部6bが本体6aの両端部に位置しており、各接続部6bが対応する取付部7に本体6aの両端部をそれぞれ接続する。支持部材6は、取付部7を中心に回動(円運動)する。
【0022】
接触部6cは、支持部材6をケーブルCに接触させる。接触部6cは、ケーブルCが本体6aに固定されるように、本体6aをケーブルCに接続してよい。そのような接触部6cとして、バンドル形状を有する接触部6cが例示される。バンドル形状の開口部内側に本体6a及びケーブルCを束ねることで、ケーブルCが本体6aに固定される。
図2~
図4に示される例では、2つの接触部6cの各々が、ケーブルCの異なる部分において、ケーブルC及び本体6aを束ねて固定する。これ以外にも、さまざまな態様で支持部材6とケーブルCとが固定されてよい。
【0023】
支持部材6は、ケーブルCにおけるインレット2aと接触部6cとの間の長さが、機体上下方向におけるインレット2aと接触部6cとの間の長さよりも長くなるように、ケーブルCを支持してよい。例えば、取付部7と支持部材6との間においてケーブルCが湾曲部を有するように、ケーブルCが支持される。これにより、取付部7と支持部材6との間にはケーブルCの張力は存在せず、したがって、ケーブルCの張力は、インレット2aではなく支持部材6に作用する。
【0024】
支持部材6は、ケーブルC及び支持部材6がカメラ21に対して非接触状態となるように、ケーブルCを支持してよい。支持部材6は、ケーブルC及び支持部材6がカメラ21の画角外に位置するように、ケーブルCを支持してもよい。このようなケーブルCの支持は、支持部材6の本体6aの長さ、接触部6cとケーブルCとの接続位置等を調節することによって実現される。
【0025】
取付部7は、支持部材6が取付けられるように、機体10に配置される。取付部7は、支持部材6が取付けられた場合に、支持部材6が機体10に対して回動できるように構成されている。そのような取付部7として、リング形状を有する取付部7が例示される。フック形状を有する支持部材6の接続部6bがリング形状を有する支持部材6に回動係合することによって、支持部材6が機体10に対して回動できるようになる。この例では、2つの支持部材6の各々に、対応する支持部材6の本体6aが接続されることによって、支持部材6が機体10に取付けられる。支持部材6は、機体水平方向を回動軸として(機体上下方向を含む平面を回動面として)、機体10に対して回動する。
【0026】
1.2 取付部の配置の例
飛行体1においては、支持部材6の配置を工夫することで、機体10の姿勢及び飛行体1の飛行を安定化することができる。
【0027】
図5は、飛行体の概略構成を示す側面図である。図において、XYZ座標系が示される。X軸方向及びY軸方向は、水平方向に対応する。Z軸方向は、鉛直方向に対応する。機体10が水平姿勢の場合、X軸方向は機体左右方向に、Y軸方向は機体前後方向に、Z軸方向は機体上下方向にそれぞれ対応する。以下では、主に機体前後方向における機体10の姿勢及び飛行体1の安定化について説明する。機体10の左右方向の傾きも同様であるので、説明は省略する。図において、ケーブルCが無い場合の機体10の重心を、機体重心Gと称し図示する。
【0028】
図5には、機体10の前後方向の傾きを考察するための以下の変数が示される。
W:機体10の重量(kg)
Wc:ケーブルCの重量(kg)
T1:機体前方のロータ4の推力の総和(kg)
T2:機体後方のロータ4の推力の総和(kg)
L:機体重心Gからロータ4までの距離(mm)
a:機体重心Gに対するケーブルC及び本体2の接続位置のずれ量(mm)
力の釣り合い及びモーメントの釣り合いから、上記変数を用いた以下の式が成立する。
T1+T2=W+Wc
T2×L-T1×L=a×Wc
上記の2つの式を解くと、
T1=((W+Wc)L+aWc)/2L
T2=((W+Wc)L-aWc)/2L
となる。すなわち、ケーブルCの重量Wcが大きくなるにつれて、また、機体重心Gに対するケーブルC及び本体2の接続位置のずれ量aが大きくなるにつれて、機体前後のロータ4の推力の不釣り合いが大きくなり、飛行体1の飛行が不安定になりやすくなる。
【0029】
なお、機体重心Gは、例えば以下の手順で計算することができる。CAD上で機体10のすべての構成要素に密度を入力することで、全重量及び重心位置(飛行体1の重量及び機体重心Gに相当)が求められる。飛行体1の各構成要素の重量をW1、W2、…Wnとし、ある点から各構成要素までの距離をX1、X2、…Xnとし、重心位置をXとすると、X軸方向における重心は、以下の式で求まる。
X=(X1×W1+X2×X2+…+Xn×Wn)/(W1+W2+…+Wn)
Y軸方向及びX軸方向についても同様である。
【0030】
以上を踏まえ、支持部材6の位置と機体重心Gの位置との関係について説明する。はじめに、
図6~
図10を参照して、機体上下方向における支持部材6の位置と機体重心Gの位置との関係を説明する。
図6~
図10は、飛行体の概略構成を示す側面図である。
【0031】
図6に示される例では、取付部7は、機体重心Gと同じ高さに位置している。
図6には、以下の変数が示される。
W:機体10の重量(kg)
T1:機体前方のロータ4の推力の総和(kg)
T2:機体後方のロータ4の推力の総和(kg)
T:支持部材6に作用する張力(kg)
θ:支持部材6の傾き(rad)
F:風による抗力(kg)
力の釣り合いから、上記変数を用いた以下の式が成立する。
T1+T2=W
T=Fsinθ
すなわち、風による抗力の影響で機体10を機体重心Gまわりに回転させようとするモーメントは働かない。このように支持部材6が機体重心Gと同じ高さに位置する場合、機体10の姿勢及び飛行体1の飛行が安定化する。
【0032】
図7に示される例では、取付部7は、機体重心Gよりも下方に位置している。
図7には、以下の変数が示される。
W:機体10の重量(kg)
T1:機体前方のロータ4の推力の総和(kg)
T2:機体後方のロータ4の推力の総和(kg)
T:取付部7に作用する張力(kg)
θ:支持部材6の傾き(rad)
L:機体重心Gからロータ4までの距離(mm)
b:機体重心Gから取付部7までの距離(mm)
F:風による抗力(kg)
力の釣り合いおよびモーメントの釣り合いから、上記変数を用いた以下の式が成立する。
T1+T2=W
T=Fsinθ
T2×L-T2×L=Fb
第3式において左辺のモーメントが右辺のモーメントが上回ると、
図8に示されるように機体10が後方(Y軸負方向)に傾く。この場合、風に流される方向に働く力は(T1+T2)sinθ+Fとなり、機体10の姿勢を復元しようとするモーメント力は(T2cosθ-T1cosθ)×L-b×Fcosθとなる。すなわち、傾きが大きくなるほど復元力が働きづらくなるとともに風に流される方向にロータ4の推力が働くことになる。このように、支持部材6が機体重心Gよりも下方に位置する場合、水平姿勢への復元が困難になるので、機体10の姿勢及び飛行体1の飛行が不安定になりやすくなる。
【0033】
図9される例では、取付部7は、機体重心Gよりも上方に位置している。
図9には、以下の変数が示される。
W:飛行体1の重量(kg)
T1:機体前方のロータ4の推力の総和(kg)
T2:機体後方のロータ4の推力の総和(kg)
T:取付部7に作用する張力(kg)
θ:支持部材6の傾き(rad)
L:機体重心Gからロータ4までの距離(mm)
b:機体重心Gから取付部7までの距離(mm)
F:風による抗力(kg)
力の釣り合いおよびモーメントの釣り合いから、上記変数を用いた以下の式が成立する。
T1+T2=W
T=Fsinθ
T2×L+Fb=T1×L
基本的には風による力Fが働いた際にはT2の方がT1より大きくなるよう制御が行われ、
図10に示されるように機体10が前方(Y軸正方向)に傾く。この場合、風に流される方向に働く力はT-(T1+T2)sinθとなり、機体10の姿勢を復元しようとするモーメント力は(T2cosθ-T1cosθ)×L+b×Fcosθとなる。風に抵抗する方向にロータ4の推力が働くとともに、機体10にかかるモーメントも風に抵抗する方向に傾く。このように、支持部材6が機体重心Gよりも上方に位置する場合、水平姿勢への復元が容易であり、機体10の姿勢及び飛行体1の飛行が安定化する。
【0034】
以上より、機体10の上下方方向において支持部材6が機体重心Gと同じ高さか又は機体重心Gよりも上方に位置することで、機体10の姿勢及び飛行体1の飛行が安定化する。
【0035】
次に、
図11を参照して、機体10の前後左右方向における支持部材6の位置と機体重心Gの位置との関係を説明する。
【0036】
図11は、飛行体1の概略構成を示す平面図であり、飛行体1を機体上下方向からみた図(飛行体1を平面視した図)である。2つの取付部7は、機体重心Gの外側に位置する。より具体的に、2つの支持部材6は、機体重心Gを挟んで互いに反対側(この例では本体2の両側)に位置する一対の取付部である。
図5において、2つの取付部7どうしを結ぶ直線が一点鎖線で示される。機体重心Gは、その直線上(より具体的には直線の中央)に位置している。これにより、ケーブルCの張力は、2つの支持部材6及び取付部7を介して、機体重心Gに作用する。
【0037】
ケーブルCの張力が機体重心Gに作用することによって、先に
図5を参照して説明したような、機体重心Gに対するケーブルC及び本体2の接続位置のずれ量aに起因して前後のロータ4の推力の不釣り合いが大きくなり機体10が不安定になりやすくなるという問題が解消される。例えば上述のように2つの支持部材6が機体重心Gを挟んで互いに反対側に位置することで、機体10の姿勢、ひいては飛行体1の飛行が安定化する。
【0038】
なお、取付部7の数は2つに限られず、これについては後に
図19を参照して改めて説明する。
【0039】
図12は、飛行体1の概略構成を示す正面図である。上述の原理により機体10が安定化するように、支持部材6が設けられる。すなわち、機体上下方向において、支持部材6は、機体重心Gと同じ位置又は機体重心Gよりも上方(この例では機体重心Gと同じ位置)に位置している。また、2つの支持部材6が、機体重心Gを挟んで互いに反対側(この例では本体2の両側)に位置している。また、支持部材6は、機体10の下方に向かって突出するU字形状を有する。U字形状は、カメラ21と離間した状態で(非接触状態で)、カメラ21を内側に含んでいる。
【0040】
1.3 飛行の例
図13~
図18は飛行体の飛行の例を示す側面図である。
【0041】
図13に示されるように、水平姿勢にある飛行体1が、Y軸負方向に向かう風による抗力Fを受ける。
図14に示されるように、飛行体1がY軸負方向に移動し、支持部材6に対して張力Tが発生する。支持部材6の向きが張力Tの向きに揃うように、支持部材6が回動する。
図15に示されるように、機体前方のロータ4の推力の総和T1及び機体後方のロータ4の推力の総和T2は、Y軸正方向の推力を与える。この推力は、
図13に示される風による抗力Fに抵抗する方向に働くので、飛行体1は、水平方向の一定範囲内にとどまることができる。
【0042】
また、
図16に示されるように、水平姿勢にある飛行体1が、Y軸正方向に向かう風による抗力Fを受ける。
図17に示されるように、飛行体1がY軸正方向に移動し、支持部材6に対して張力Tが発生する。支持部材6の向きが張力Tの向きに揃うように、支持部材6が回動する。
図18に示されるように、前方のロータ4の推力の総和T1及び後方のロータ4の推力の総和T2は、Y軸負方向の推力を与える。この推力は、
図16に示される風による抗力Fに抵抗する方向に働くので、飛行体1は、水平方向の一定範囲内にとどまることができる。
【0043】
このようにして、例えば機体10が風に流された時、GPS信号が受信できずに機体10がふらついた場合等でも、機体10がある方向に流れようとすると元の位置に戻す復元力が働く事で一定の範囲内に飛行体1がとどまることができる。したがって、飛行体1の飛行が安定化する。
【0044】
2. 変形例
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。いくつかの変形例について説明する。
【0045】
例えば、上記実施形態では、飛行体1が2つの取付部7を備える例について説明した。ただし、飛行体1は、3つ以上の取付部7を備えていてもよい。
図19は、そのような変形例に係る飛行体1の概略構成の例を示す平面図である。
図19に示される飛行体1Aは、飛行体1(
図5)と比較して、3つの取付部7を備える点において相違する。3つの取付部7は、機体重心Gを囲むように配置される。機体重心Gは、各取付部7を頂点とする三角形の内側に位置している。機体重心Gは、三角形の中心に位置していてよい。飛行体1Aにおいては、支持部材6は、各取付部7に接続される3つの接続部6b(
図2等を参照)を有してよい。飛行体1Aがn個(nは3以上の整数)の取付部7を備える場合、機体重心Gは、各取付部7を頂点とするn角形の内側に位置している。機体重心Gは、n角形の中心に位置していてよい。
【0046】
上記実施形態では、飛行体1が1つの支持部材6を備える例について説明した。ただし、飛行体1は複数の支持部材6を備えていてよい。この場合、いくつかの支持部材6は、同じ取付部7を共有してよい。
【0047】
上記実施形態では、取付部7が機体10の本体2に設けられる例について説明した。ただし、支持部材6は、機体10における本体2以外の部分に設けられてもよい。
【0048】
上記実施形態では、支持部材6の接続部6bがフック形状を有し、取付部7がリング形状を有する例について説明した。ただし、接続部6b及び取付部7の形状はこれらに限定されない。例えば、接続部6b及び取付部7の少なくとも一方がフック形状を有していてよく、さらには、一方がフック形状を有し他方がリング形状を有していてもよい。リング形状及びフック形状以外にも、支持部材6が機体10に対して回動できるようさまざまな形状が採用されてよい。
【0049】
例えば、上記実施形態では、接触部6cがケーブルCを本体6aの2箇所で固定する例について説明した。ただし、ケーブルCの固定箇所は1つであってよい。
図20は、そのような変形例に係る飛行体の概略構成の例を示す正面図である。飛行体1Bは、飛行体1(
図12等)と比較して、支持部材6に代えて支持部材6Bを備える点において相違する。支持部材6Bは、U字形状の底部の1箇所でのみケーブルCを支持する。このようなケーブルCの保持が可能な剛性を有するように、支持部材6Bは構成されている。
【0050】
なお、ケーブルCは、支持部材によって3箇所以上で支持されてもよい。
【0051】
上記実施形態では、支持部材6の支持対象がケーブルCである例について説明した。ただし、支持部材6の支持対象はケーブルCに限定されない。
図21は、そのような変形例に係る飛行体の概略構成を示す側面図である。
図21に示される飛行体1Cは、飛行体1(
図1等)と比較して、支持部材6に代えて支持部材6Cを備える点において相違する。支持部材6Cは、ペイロードPを支持する。ペイロードPの例は、ジンバル、カメラ等である。ペイロードPとしてのカメラは、機体10に搭載(接続された)カメラ21であってもよいし、カメラ21とは別のカメラであってもよい。この例では、ペイロードPに取付けられたケーブルが、支持部材6Cによって支持される。
【0052】
上記実施形態では、飛行体にカメラ21が搭載される例について説明した。ただし、カメラ21が搭載されていなくてもよい。
図22は、そのような変形例に係る飛行体の概略構成を示す側面図である。
図22に示される飛行体1Dは、飛行体1C(
図21)と比較して、カメラ21が搭載されていない点において相違する。
【0053】
上記実施形態では、飛行体1が複数の取付部7を備える例について説明した。ただし、飛行体1は、単一の取付部のみを備えていてもよい。
図23及び
図24は、そのような変形例に係る飛行体の概略構成を示す図である。
図23に示される飛行体1Eは、飛行体1(
図3等)と比較して、支持部材6及び取付部7に代えて、支持部材6E及び取付部7Eを備える点において相違する。飛行体1Eの機体を、機体10Eと称し図示する。この例では、取付部7Eは、機体重心G(
図11及び
図12等を参照)よりも上方に位置する機体10Eの上部に設けられる。機体上下方向からみたとき(機体10Eを平面視したとき)、取付部7Eは、機体重心Gと同じ位置に設けられる。支持部材6Eは、第1の部分6E1及び第2の部分6E2を有する。第1の部分6E1の一端部は、ケーブルCに接触するとともにケーブルCが接続される部分である。第1の部分6E1の他端部は、第2の部分6E2の一端部に接続される。第1の部分6E1及び第2の部分6E2は、回転孔H(この例ではX軸方向を深さ方向とする孔)の中心を回転軸として回動するように互いに接続される。第2の部分6E2の他端部は、取付部7Eに接続される。第2の部分6E2及び/又は取付部7Eは、Z軸方向を中心に回動可能に設けられる。
【0054】
飛行体1Eにおいても、機体上下方向において取付部7Eが機体重心Gと同じ位置又は機体重心Gよりも上方に位置しているので、飛行体1Eの飛行を安定化することができる。なお、
図23及び
図24には、機体水平方向における機体重心Gと同じ位置において、ケーブルCが機体10Eに接続されるとともに支持部材6Eによって支持される態様が例示される。ただし、ケーブルCは、機体10の別の場所に接続されていてもよい。その場合には、支持部材6Eの第1の部分6E1は、ワイヤ部品などで構成され、ケーブルCと固定されてよい。
【0055】
3. 効果
以上説明した飛行体は、例えば次のように特定される。
図1等に例示されるように、飛行体1は、機体10に配置され、ペイロード(例えば
図1のケーブルC及び
図22のペイロードP等)を支持する支持部材6が取付けられる取付部7と、を備える。
図12等に例示されるように、機体上下方向において、取付部7は、機体重心Gと同じ位置又は機体重心Gよりも上方に位置している。
【0056】
上記の飛行体1によれば、ペイロードを支持する支持部材6が、機体重心Gと同じ位置又は機体重心Gよりも上方に位置している取付部7に取付けられる。これにより、ペイロードの張力等による飛行体1の飛行への影響を低減し、機体10の姿勢、ひいては飛行体1の飛行を安定化することができる。
【0057】
図1等に例示されるように、取付部7は、支持部材6が取付けられた場合に、支持部材6が機体10に対して回動できるように構成されていてよい。例えば、支持部材6は、取付部7に回動係合する接続部6bを含んでよい。接続部6b及び取付部7の少なくとも一方は、フック形状を有してよい。接続部6b及び取付部7の一方はフック形状を有し、他方はリング形状を有してよい。例えばこのようにして支持部材6が機体10に対して回動可能に取付けられることで、飛行体1は、機体上方への推力を発生させる複数のロータ4をさらに備えてよい。これにより、先に
図13~
図18を参照して説明したように、飛行体1の飛行を安定化することができる。
【0058】
図1等に例示されるように、ペイロードは、機体10に接続されたケーブルCであってよい。
図2等に例示されるように、支持部材6は、各々がケーブルCの異なる部分に接触する複数の接触部6cを含んでよい。このように複数の箇所でケーブルCを支持することで、例えば自重で支持部材6が撓んだり三角形状等に変形したりすることを防止して、ケーブルCと支持部材6が接触する事を回避することができる。
【0059】
支持部材6は、金属製ワイヤを含んでよい。金属性ワイヤのような一定の剛性(強度)を有する部材を用いることで、支持部材6によるペイロードの支持を安定化することができる。
【0060】
図23及び
図24等に例示されるように、取付部7Eは、機体上下方向からみたときに機体重心と同じ位置に位置している単一の取付部であってよい。あるいは、
図11等に例示されるように、取付部7は、機体上下方向からみたときに(機体10を平面視したときに)機体重心Gを挟んで互いに反対側に位置する一対の取付部であってよい。
図19等に例示されるように、取付部7は、機体上下方向からみたときに機体重心Gを中心とする多角形の頂点に位置する複数の取付部であってもよい。これにより、ケーブルCの張力を機体重心Gに作用させ、それによって機体10の姿勢及び飛行体1の飛行を安定化することができる。
【0061】
図21及び
図22等を参照して説明したように、ペイロードは、機体10に接続されたカメラ(カメラ21でもよいし別のカメラでもよい)であり、支持部材6Cは、カメラを支持してよい。
図12等に例示されるように、支持部材6は、カメラ21を内側に含むU字形状を有してよい。ペイロードは、カメラ、及び、機体10に接続されたケーブルCの少なくとも一方であってよい。ペイロードにケーブルCが含まれる場合、支持部材6は、ケーブルC及び支持部材6がカメラ21の画角外に位置するように、ケーブルCを支持してよい。これにより、ケーブルCのペイロードへの接触を回避することができる。ペイロードがカメラ21の場合には、ケーブルCのカメラ21への写り込みを回避することができる。
【0062】
なお、本開示に記載された効果は、あくまで例示であって、開示された内容に限定されない。他の効果があってもよい。
【0063】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の技術的範囲は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、異なる実施形態及び変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0064】
また、本明細書に記載された各実施形態における効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0065】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
機体に配置され、ペイロードを支持する支持部材が取付けられる取付部を備え、
機体上下方向において、前記取付部は、機体重心と同じ位置又は前記機体重心よりも上方に位置に位置している、
飛行体。
(2)
前記取付部は、前記支持部材が取付けられた場合に、当該支持部材が前記機体に対して回動できるように構成されている、
(1)に記載の飛行体。
(3)
前記支持部材をさらに備え、
前記支持部材は、前記取付部に回動係合する接続部を含む、
(2)に記載の飛行体。
(4)
前記取付部及び前記接続部の少なくとも一方は、フック形状を有する、
(3)に記載の飛行体。
(5)
前記取付部及び前記接続部の一方はフック形状を有し、他方はリング形状を有する、
(4)に記載の飛行体。
(6)
機体上方への推力を発生させる複数のロータをさらに備える、
(1)~(5)のいずれかに記載の飛行体。
(7)
前記ペイロードは、前記機体に接続されたケーブルであり、
前記支持部材は、各々が前記ケーブルの異なる部分に接触する複数の接触部を含む、
(1)~(6)のいずれかに記載の飛行体。
(8)
前記支持部材は、金属製ワイヤを含む、
(1)~(7)のいずれかに記載の飛行体。
(9)
前記取付部は、機体上下方向からみたときに前記機体重心と同じ位置に位置している単一の取付部である、
(1)~(8)のいずれかに記載の飛行体。
(10)
前記取付部は、機体上下方向からみたときに前記機体重心を挟んで互いに反対側に位置する一対の取付部である、
(1)~(8)のいずれかに記載の飛行体。
(11)
前記取付部は、機体上下方向からみたときに前記機体重心を中心とする多角形の頂点に位置する複数の取付部である、
(1)~(8)のいずれかに記載の飛行体。
(12)
前記ペイロードは、前記機体に接続されたカメラであり、
前記支持部材は、前記カメラを支持する、
(1)~(11)のいずれかに記載の飛行体。
(13)
前記支持部材は、前記カメラを内側に含むU字形状を有する、
(12)に記載の飛行体。
(14)
前記ペイロードは、前記機体に接続されたケーブル及び/又はカメラであり、
前記支持部材は、前記ケーブル及び前記支持部材が前記カメラの画角外に位置するように、前記ケーブルを支持する、
(1)~(13)のいずれかに記載の飛行体。
【符号の説明】
【0066】
1 飛行体
2 本体
3 アーム
4 ロータ
4a モータ
4b プロペラ
5 ランディングギア
6 支持部材
6a 本体
6b 接続部
6c 接触部
7 取付部
10 機体
21 カメラ
C ケーブル
P ペイロード