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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0225 20210101AFI20241223BHJP
   H01S 5/02208 20210101ALI20241223BHJP
   H01S 5/02315 20210101ALI20241223BHJP
   H01S 5/02345 20210101ALI20241223BHJP
   H01S 5/024 20060101ALI20241223BHJP
   H01S 5/183 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
H01S5/0225
H01S5/02208
H01S5/02315
H01S5/02345
H01S5/024
H01S5/183
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020106966
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022002270
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島袋 力
(72)【発明者】
【氏名】大熊 弘明
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0023078(KR,A)
【文献】特開2008-270707(JP,A)
【文献】特開2019-181583(JP,A)
【文献】特開2019-124794(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0014482(KR,A)
【文献】特開平04-028279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板と、
前記基板上に、前記基板上の1の領域を囲んで配置され、かつ、前記1の領域を露出する開口部を備える壁部と、
前記基板の前記1の領域に配された発光素子と、
前記発光素子の上方に配置された配光部材と、を有し、
前記壁部は、前記基板の上面に配され、かつ、上面に第1の配線電極を有する第1の部分と、前記第1の部分の上面に配され、かつ、上面に配光部材保持面を有する第2の部分と、を含み、
前記配光部材は、前記配光部材保持面に接して保持されており、
前記基板の上面において前記1の領域から上面視において前記第1の配線電極と重なる領域にまで延在している第2の配線電極を含み、
前記配光部材は、前記発光素子からの出射光に対して透光性を有する透光性部材と、前記透光性部材の下面の前記発光素子上の領域に形成されており、表面が突起を形成している樹脂材からなる光学機能層と、を有し、
前記光学機能層は、前記配光部材の前記壁部の前記配光部材保持面との接触面にまで延在していることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記光学機能層は、前記透光性部材の前記下面全体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記光学機能層の前記下面が形成する前記突起によってレーザ光を回折する微細構造パターンが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記壁部は、前記第2の部分から前記配光部材を囲むように上方に向かって拡張する拡張部を有し、
前記半導体発光装置は、前記配光部材の側面と前記拡張部との間に設けられて前記配光部材と前記拡張部とを接着する接着部材を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記発光素子と前記第1の配線電極とを電気的に接続する2つ以上のボンディングワイヤを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記第1の配線電極は、上面視において環状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記発光素子は、VCSEL素子であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項8】
上面を有する底部、及び前記上面において前記底部の1の領域を囲むように形成されかつ前記1の領域を露出する開口部を備える壁部を有する基板と、
前記基板の前記底部の前記1の領域に配された発光素子と、
前記壁部に接して保持された配光部材と、を有し、
前記壁部は、上方を向いた保持面を有し、前記配光部材は、前記保持面上に載置されて前記発光素子の上方に配されており、
前記配光部材は、前記発光素子からの出射光に対して透光性を有する透光性部材と、前記透光性部材の下面の前記発光素子上の領域に形成されており、表面が突起を形成している樹脂材からなる光学機能層と、を有し、
前記光学機能層は、前記配光部材の前記壁部の前記保持面との接触面にまで延在し、
前記壁部は、前記壁部から前記配光部材を囲むように上方に向かって拡張する拡張部を有し
記配光部材の側面と前記拡張部との間に設けられた、前記配光部材と前記拡張部とを接着する接着部材を有し、
前記基板の外側面に接しかつ前記外側面を覆い、前記外側面から前記拡張部の上方に延在し、かつ前記配光部材を露出するカバー開口部を有するパッケージカバーと、
前記拡張部の内側面及び前記配光部材の外縁に沿って連続して形成された環状の構造体であり、かつ前記パッケージカバーと前記配光部材とによって挟持されて前記基板と前記配光部材との間を密封する封止部材と、を有することを特徴とする半導体発光装置。
【請求項9】
上面を有する底部、及び前記上面において前記底部の1の領域を囲むように形成されかつ前記1の領域を露出する開口部を備える壁部を有する基板と、
前記基板の前記底部の前記1の領域に配された発光素子と、
前記壁部に接して保持された配光部材と、を有し、
前記壁部は、上方を向いた保持面を有し、前記配光部材は、前記保持面上に載置されて前記発光素子の上方に配されており、
前記配光部材は、前記発光素子からの出射光に対して透光性を有する透光性部材と、前記透光性部材の下面の前記発光素子上の領域に形成されており、表面が突起を形成している樹脂材からなる光学機能層と、を有し、
前記光学機能層は、前記配光部材の前記壁部の前記保持面との接触面にまで延在し、
前記壁部は、前記壁部から前記配光部材を囲むように上方に向かって拡張する拡張部を有し
記配光部材の側面と前記拡張部との間に設けられた、前記配光部材と前記拡張部とを接着する接着部材を有し、
前記基板の外側面を覆い、前記基板の外側面から前記拡張部の上方に延在し、かつ前記配光部材を露出するカバー開口部を有するパッケージカバーと、
前記拡張部の内側面及び前記配光部材の外縁に沿って連続して形成された環状の構造体であり、かつ前記パッケージカバーと前記配光部材とによって挟持されて前記基板と前記配光部材との間を密封する封止部材と、を有し、
前記パッケージカバーは、前記基板の外側面から前記底部の裏面へ屈曲して延在し、前記裏面と接する装置固定部を含むことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項10】
前記拡張部の上面は、前記底部の上面に垂直な方向における高さが前記配光部材の上面よりも高いことを特徴とする請求項8又は9に記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記封止部材は、フッ素系のゴム材からなる請求項8乃至10のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(Light Emitting Diode(LED))、半導体レーザ(Laser Diode(LD))等の発光素子を含む半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光装置において、発光素子から出射された光を、回折光学素子(DOE (Diffractive Optical Elements))等の光学素子を通過させ、配光制御する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、発光素子の上方にディフューザを含む光学部品を配置した発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開2017/0353004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような発光装置において、配光制御のための光学素子として、例えばガラス基板上に形成された樹脂からなる微細構造パターンを有する配光板を用いると、発光素子の駆動によって生じる熱が当該配光板に伝わり、樹脂からなる微細構造パターンが熱の影響を受けて劣化し、所望の配光特性が得られなくなるという問題があった。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、配光を制御可能な光学素子を用いた半導体発光装置において、当該光学素子による所望の配光特性を有する光を長期間に亘って安定して出射可能な半導体発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による半導体発光装置は、上面を有する底部、及び前記上面において前記底部の1の領域を囲むように形成されかつ前記1の領域を露出する開口部を備える壁部を有する基板と、前記基板の前記底部の前記1の領域に配された発光素子と、前記壁部に接して保持された配光部材と、を有し、前記壁部は、上方を向いた保持面を有し、前記配光部材は、前記保持面上に載置されて前記発光素子の上方に配されており、前記配光部材は、前記発光素子からの出射光に対して透光性を有する透光性部材と、前記透光性部材の下面の前記発光素子上の領域に形成されており、表面が突起を形成している樹脂材からなる光学機能層と、を有し、前記光学機能層は、前記配光部材の前記壁部の前記保持面との接触面にまで延在していることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る半導体発光装置の上面図である。
図2】実施例1に係る半導体発光装置の断面図である。
図3図2の一部を拡大して示す模式図である。
図4】実施例2に係る半導体発光装置の上面図である。
図5】実施例2に係る半導体発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下においては、本発明の好適な実施例について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1図3を参照しつつ、本発明の実施例1に係る半導体発光装置10の構成について説明する。図1は、本発明の実施例1に係る半導体発光装置10を模式的に示す上面図である。図2は、図1に示した半導体発光装置10を2-2線で切断した面を模式的に示す断面図である。図3は、図2の一点鎖線で囲んだA部の拡大図である。
【0011】
[発光装置]
図1及び図2に示すように、実施例1に係る半導体発光装置10(以降、発光装置10とも称する)は、キャビティ(凹部)を有し高い放熱性が得られる基板11と、キャビティの底面に配置された発光素子13と、発光素子13から出射された線状光を拡散光に変換する配光部材17と、基板11と配光部材17とを接着してキャビティの底面に配置した発光素子13を気密封止する接着部材19と、を含んで構成されている。
【0012】
[基板]
図1及び図2に示すように、基板11は、上面視において矩形状であり、互いに平行な上面(前記キャビティの底面を含む面)と下面を有する板状の底部14と、底部14の上面14Sの中央の発光素子13が載置される載置領域PR(前記キャビティの底面)を囲む枠状(筒状)の壁部15と、を有している。
【0013】
壁部15は、底部14側から下部15A、中部15B、上部15Cが順に配された層状の構造を有している。
【0014】
下部15Aは、底部14の上面14Sの外周部に沿って延在しており、上面14Sの中央領域を露出する開口部OP1を有する枠状の部分である。中部15Bは、下部15Aの上面S1に配され、下部15Aの上面S1の開口部OP1の周縁の枠状の領域を露出する開口部OP2を有する枠状の部分である。上部15Cは、中部15Bの上面S2に配され、上面S2の開口部OP2の周縁の枠状の領域を露出する開口部OP3を有する枠状の部分である。この上面S2の開口部OP3によって露出された領域が配光部材17を支持する支持領域または支持面(保持面)となっている。なお、上部15Cの上面S3は、基板11の上面となっている。
【0015】
言い換えれば、壁部15は、内側面が外に向かって登っていく3段の階段形状の断面を有している。言い換えれば、壁部15は、中部15Bの上面S2から上方に突出する上部15Cからなる拡張部を有している。また、壁部15は、中部15Bの内側面S4から内方に突出する下部15Aからなる棚部を有している。また、壁部15は、開口部OP1、OP2及びOP3によって形成され、底部14の上面14Sの載置領域PRを露出する開口を有している。
【0016】
基板11の基材は、熱伝導性が高く絶縁性及び遮気性を有する窒化アルミニウム(AlN)から成るセラミックスを用いている。基板11の基材は、窒化アルミニウムと同様な性質を有する、酸化アルミニウム(Al)、窒化ケイ素(Si)等のセラミックスを用いることもできる。例えば、AlNの熱伝導率は150(W/m・k)、Alの熱伝導率は32(W/m・k)、Siの熱伝導率は27(W/m・k)であり、このような熱伝導性の高い基材を用いることで、発光素子13から発生する熱を実装基板やヒートシンク等の外部放熱部材へ効率よく放熱することが可能になる。
【0017】
次に、基板11が備える配線及び電極について図2を用いて説明する。基板11の底部14の上面14Sには、カソード配線21が設けられている。カソード配線21は、載置領域PRに形成されている部分が開口部OP1によって下部15Aから露出し、載置領域PRの外側の領域に形成されている部分が下部15Aに覆われている。
【0018】
基板11の壁部15の下部15Aの上面S1には、アノード配線25が設けられている。アノード配線25は、上面S1の内側の領域に形成されている部分が開口部OP2によって中部15Bから露出し、その外側に形成されている部分が中部15Bに覆われている。
【0019】
基板11の裏面、すなわち底部14の下面には、カソード装置電極23及びアノード装置電極27が離間して設けられている。カソード装置電極23は、底部14を貫通する導通ビア23Hを介して底部14の上面14Sに設けられたカソード配線21に電気的に接続されている。アノード装置電極27は、底部14及び下部15Aを貫通する導通ビア27Hを介してアノード配線25に電気的に接続されている。
【0020】
言い換えれば、カソード配線21、導通ビア23H及びカソード装置電極23と、アノード配線25、導通ビア27H及びアノード装置電極27の各々において電気的に導通している。そして、カソード配線21、導通ビア23H及びカソード装置電極23のカソード系と、アノード配線25、導通ビア27H及びアノード装置電極27のアノード系とは、絶縁性の基板11を介して離間していることによって絶縁されている。
【0021】
例えば、カソード配線21、アノード配線25、カソード装置電極23及びアノード装置電極27は、タングステン(W)合金からなり、基板11から露出した表面部には、当該表面側から順にニッケル/金(Ni/Au)の表面金属層(図示せず)が施されている。また、導通ビア23H及び導通ビア27Hはタングステン合金である。尚、配線(21、25)、導通ビア(23H、27H)、装置電極(23、27)には、タングステン(W)の他に銅(Cu)、銀(Ag)などの電気抵抗率が小さく、熱伝導率の大きい金属を用いることができる。例えば、電気抵抗率が小さければ、通電時の配線の発熱を小さくできる。また、熱伝導率が大きければ、ヒートスプレッダとして機能する。
【0022】
前述の各配線及び電極を有する基板11は、例えば、シート状の焼成前のセラミック材料(例えば、グリーンシート)を複数層積層したものを焼成して形成される。具体的には、導通ビア23H及び導通ビア27Hが形成され上面にカソード配線21、下面にカソード装置電極23及びアノード装置電極27が形成された焼成前のセラミック材料からなる底部14を形成する板状のグリーンシート(第1層)と、導通ビア27Hが形成され上面にアノード配線25が形成された壁部15の下部15Aを形成する枠状のグリーンシート(第2層)と、壁部15の中部15Bを形成する枠状のグリーンシート(第3層)と、壁部15の上部15Cを形成する枠状のグリーンシート(第4層)と、を順に積層したものを焼成し、その後、配線及び電極の露出された表面に表面金属層をメッキすることで基板11を形成することができる。
【0023】
このように形成された基板11は一体化し、酸素、水分、腐食性ガスを遮断する遮気性を有する。なお、カソード配線21、カソード装置電極23、アノード配線25、アノード装置電極27、導通ビア23Hと27Hは、発光素子13の極性によっては反対にすることもできる。
【0024】
[発光素子]
本実施例において、発光素子13は、垂直共振器型面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)(以下、VCSELとも称する)素子である場合について説明する。
【0025】
本実施例に用いた発光素子13は、素子基板上にn型半導体層、発光層、p型半導体層からなる光変換層が配置されている。また、発光素子13の上面(光変換層の表面)に第1の素子電極パッド(図示せず)、発光素子13の下面(素子基板の光変換層が設けられた面の反対面)に第2の素子電極パッド(図示せず)が設けられている。
【0026】
発光素子13は、発光素子13の上面(光変換層の表面)に複数のレーザ光の出射領域が格子状に設けられたアレイ型VCSELであり、発光素子13の上面を含む面に対して垂直方向に線状のレーザ光を出射する。また、発光素子13の光変換層は、GaAs系の半導体層を含み、発信波長780nm~1700nmの赤外光を出射する。
【0027】
発光素子13は、発光素子13の下面に設けた第2の素子電極パッドが、基板11の底部14の上面14Sの載置領域PR(キャビティの底面)に露出されたカソード配線21へ、導電性の接合部材20を介して固定されつつ電気的に接合されている。また、発光素子13の上面に設けた第1の素子電極パッドと、壁部15の下部15Aの上面S1上に露出されたアノード配線25と、がボンディングワイヤ28を介して電気的に接続されている。本実施例では、接合部材20として金錫合金(Au-Sn20wt%)、ボンディングワイヤ28として金(Au)を用いている。
【0028】
この構造により、基板11の裏面に設けられたカソード装置電極23とアノード装置電極27に電気を通電することで、発光素子13の上面からレーザ光が出射する。言い換えれば、通電により基板11の底部14の表面(光変換層の表面)を含む面に対して垂直に基板11のキャビティ開口方向へ線状のレーザ光が出射される。
【0029】
なお、下部15Aの上面S1にアノード配線25を設けた構造によりボンディングワイヤ28を短くすることを可能とした。例えば、アノード配線25を底部14の上面14Sに設けた場合、発光素子13の上面の第1の素子電極パッドから上方に引き出したボンディングワイヤ28を、引き出した方向と反対方向に屈曲させて上面14S上のアノード配線25に接続する。
【0030】
これに対して、本実施例では、下部15Aの上面S1にアノード配線25を設けているので、発光素子13とアノード配線25の高さの差が小さい。これによって、高さの差が大きく下方にある上面14Sに接続するよりも、高さの差が小さい上面S1上のアノード配線に接続する方が、ボンディングワイヤ28の経路が短くなり、接続に必要なボンディングワイヤ28の長さを短くすることができる。ボンディングワイヤ28の長さを短くできる範囲は、概ね、下部15Aの上面S1の高さが、底部14の上面14Sより高く、底部14から発光素子13の上面までの高さの2倍以下となる範囲である。
【0031】
また、下部15Aを設けて上面S1にアノード配線25を設けることで、底部14に垂直な方向においてカソード配線21と重なる領域にもアノード配線25を設けることができる。これによって、アノード配線25を発光素子13の周囲に設けることができるので、ボンディングワイヤ28を複数本設けることが可能となる。
【0032】
例えば、金ワイヤの熱伝導率は320(W/m・k)と高く放熱部材として好ましい。そこで、Auボンディングワイヤ28の長さを短くし、またAuボンディングワイヤ28の本数を増やして断面積を大きくすることで、発光素子13で発生した熱の放熱効率を向上することができる。また、Auボンディングワイヤ28が接続されたアノード配線25は、発光素子13を囲むように配置されているのでヒートスプレッダ(緩衝体)として働き、放熱効率を向上する。
【0033】
[配光部材]
配光部材17は、平板状の光学部材であり、発光素子13側の入射面と、入射面に平行な出射面(発光装置10の上面)を有している。配光部材17は、発光素子13から出射されたレーザ光を透光しつつ配光制御する。配光部材17は、例えば、互いに平行な2面を有する透光性部材29と、当該透光性部材29の少なくとも片面に発光素子13から出射されたレーザ光を回折する微細突起からなる光学機能層31と、を備えた光学拡散素子(LSD:Light Shaping Diffuser)である。
【0034】
配光部材17は、図1及び図2に示すように、基板11の壁部15の中部15Bの上面S2と、上面S2の周囲から上方に延在した上部15Cの内側面で画定された枠溝に、光学機能層31が中部15Bの上面S2の支持領域と対向するように配置されている。これにより、光学機能層31が設けられている配光部材17の入射面と、発光素子13の上面とが平行に配置される。また、配光部材17の入射面(光学機能層31配置面)が、発光素子13から出射される線状のレーザ光に対して垂直に配置される。
【0035】
本実施例で用いた配光部材17は、発光素子13であるアレイ型VCSELから出射された複数の線状レーザ光を、所定の角度(上下角、水平角)に広がる矩形状の光に変換して、また面内強度分布を略均一にして、配光部材17の出射面から出射する。このように変換された光は、発光装置10の照射光軸に直交するスクリーン上に、近傍で小さく遠方で大きくなる矩形の配光パターンを形成する。
【0036】
本実施例で用いた配光部材17の透光性部材29にはガラスを用い、光学機能層31にはエポキシ樹脂を用いている。特に、光学機能層31は、水平方向が数十ミクロン、垂直方向の高さ偏差が数十ナノメートルの無数の突起を所定のパターンで配列することにより起こる光学回折によって前述の配光パターンを形成している。すなわち、本実施例の光学機能層31の表面は、所望の光学回折を起こすために垂直方向の高さの差をつけて設計された多数の突起が所定のパターンで配列された微細構造パターンを有している。
【0037】
上述の材料以外に、透光性部材29として石英、サファイア等の無機材料、またシリコーン、アクリル、ポリカーボネイト等の樹脂材料を用いることができる。また、光学機能層31も透光性部材29と同様な無機材料及び樹脂材料を用いることができる。
【0038】
本実施例の配光部材17は、例えば以下のようにして形成する。透光性部材29となるガラス板に、光学機能層31となる未硬化のエポキシ樹脂を塗布し、次いで、光学機能層31の突起部の逆の形状をした凹部を有する型を押圧して未硬化のエポキシ樹脂に転写する。その後、UV光を照射してエポキシ樹脂を硬化すると同時にガラス板に接合する。最後に、凹部を有する型を外して、配光部材17を形成することができる。
【0039】
配光部材17の光学機能層31は、発光素子13から出射される線状のレーザ光が入射する(照射される)領域だけに設ければ良いが、本実施においては、配光部材17の全面に設けている。よって、図2に示すように、配光部材17は、エポキシ樹脂製の光学機能層31を介して壁部15の中部15Bの上面S2の支持領域に配置されている。
【0040】
図3に示すように、光学機能層31は、上述した微細突起を下面に有している。そのため、配光部材17と中部15Bを含む壁部15との接触面積が小さくなっている。また配光部材17の側面は、図2に示すように、後述する樹脂製の接着部材19によって上部15Cの内側面と接着されている。
【0041】
本実施例で用いたAlN製の基板11、ガラス製の透光性部材29、エポキシ樹脂製の光学機能層31、シリコーン樹脂製の接着部材19の熱伝導率は、それぞれ150(W/m・K)、1.0(W/m・K)、0.3(W/m・K)、0.2(W/m・K)である。よって、エポキシ樹脂製の光学機能層31及びシリコーン樹脂製の接着部材19が、AlN製の基板11を伝熱してくる熱に対して遮熱材として働く。これにより、透光性部材29の熱歪み、光学機能層31の突起の熱変形等による、配光パターンの乱れを防止できる。特に、複数の突起状の樹脂からなる光学機能層31は、中部15Bの上面S2に対する接触面積が小さいので、上面S2から光学機能層31に熱が伝わり難く、優れた断熱効果が得られる。尚、上面S2と、配光部材17の光学機能層31と、がエポキシ樹脂又はシリコーン樹脂製の接着部材を介して接着されていても良い。この場合、上面S2と光学機能層31の間に、樹脂製の接着部材層が設けられることになり、光学機能層31に加え当該接着部材層が遮熱材として働くので、優れた断熱効果が得られる。
【0042】
また、本実施例において、光学機能層31は、紫外光によって硬化する性質を有する樹脂からなり、例えばUV硬化エポキシ樹脂からなる。本実施例において、発光素子13の発振波長は赤外領域であり、この場合、樹脂が硬化する波長は発光素子13の発振波長よりも短い。このように、光学機能層31を発光素子13の発振波長よりも短波長の光によって硬化する樹脂で構成することによって、発光素子13から出射された光が光学機能層31に照射されても、光学機能層31が過硬化によって劣化することが防止される。
【0043】
また、本実施例において、壁部15の上部15Cの上面S3が、配光部材17の上面より高くなっている(突き出ている)。これにより、配光部材17の側面から漏れるレーザ光を遮光できる。また、発光装置10の製造又は使用中における配光部材17への意図しない接触による配光部材17の脱落又は接着部材19の破損による気密破壊を防止できる。
【0044】
以上、配光部材17としてLSDについて述べたが、LSDの代わりに、例えば、回折光学素子(DOE: Diffractive Optical Element)、ホログラム光学素子(HOE:Holographic Optical Element)などを用いることができる。これらの光学素子は、表面に凹凸が形成された微細構造を有しており、この微細構造によって線状のレーザ光を格子線パターンや格子ドットパターン、又は、文字状のパターン等の配光パターンに変換できる。
【0045】
[接着部材]
接着部材19は樹脂製の部材であり、図1及び図2に示すように、配光部材17と、壁部15の上部15Cの内側面との間に充填され、配光部材17と上部15Cとを接着している。これにより、基板11のキャビティと配光部材17で画定された発光装置10の内空間を気密封止し、内空間に収められた発光素子13及び配光部材17の光学機能層31が酸素や水分で劣化することを防いでいる。特に、内空間を気密封止することで、光学機能層31の突起部の間隙に水分等が浸潤して配光パターンが乱れることを防止できる。なお、発光素子13以外の内空間は、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、ヘリウム(He)等の不活性ガスが封入されている。
【0046】
接着部材19を形成する樹脂材として、発光素子13の出射するレーザ光の波長より短波長の紫外光(UV)~可視光(例えば、青色光~緑色光)で硬化する光硬化樹脂を用いることができる。例えば、光硬化型シリコーン樹脂、光硬化型エポキシ樹脂、光硬化型アクリル樹脂等がある。このように、発光素子13の出射する光より短波長で硬化する樹脂を用いることで、接着部材19の過硬化等による収縮や割れ等の劣化を防止できる。本実施例においては、接着部材19として紫外光(UV)硬化型のシリコーン樹脂を用いた。
【0047】
[発光装置の放熱]
図2及び図3を参照しつつ、発光装置10の放熱について説明する。発光素子13は通電によって発熱する。また発熱は、発光出力の増大(通電量の増加)に比例して増大する。本実施例において、発光素子13から発生した熱は、発光素子13を載置した基板11、主に底部14を介して、発光装置10を実装した回路基板又はヒートシンク等の外部放熱部材へ放熱される。また、発光素子13の上面に接続したボンディングワイヤ28を介して壁部15の下部15Aへ伝熱した熱は、主に下部15A及び底部14を介して、上述と同様に発光装置10を実装した回路基板又はヒートシンク等の外部放熱部材へ放熱される。
【0048】
基板11の熱伝導率が高い場合、高い放熱性が得られるので基板11の温度は、回路基板又はヒートシンク等の外部放熱部材の放熱能力に比例して低下する。反面、基板11の各部の温度も差異が小さくなり、略均一化する。よって、発光素子13の通電に伴って、中部15B及び上部15Cの温度も通電以前の温度より上昇する。
【0049】
本実施例において配光部材17は、中部15Bの上面に対して樹脂製の光学機能層31を介して接し、上部15Cの内側面に対して樹脂製の接着部材19を介して接している。この構造により、樹脂製の光学機能層31と接着部材19は断熱材として働く。よって、配光部材17の透光性部材29、及び壁部15の開口部OP2より内側の光学機能層31が加熱されることが抑制される。その結果、透光性部材29の熱歪み、光学機能層31の突起の熱変形等による、配光パターンの乱れが防止される。
【0050】
以上、詳細に説明したように、実施例1による半導体発光装置10は、レーザ光を発する発光素子の上方に配された配光部材を有している。発光素子は基板のキャビティの底面に配されており、配光部材は当該基板のキャビティの底面を囲む壁部の保持面に保持されている。配光部材は、透光性部材及び透光性部材の下面に形成された樹脂からなる光学機能層を有している。光学機能層の下面は、レーザ光を回折する樹脂製の微細突起となっている。
【0051】
配光部材の透光性部材の下面に形成された樹脂からなる光学機能層は、配光部材の当該保持面との接触面にまで延在しているので、透光性部材は光学機能層を介して基板に接している。
【0052】
このような構成により、熱伝導率の低い樹脂からなる光学機能層が遮熱材として働いて、発光素子の駆動により生じた熱によって接触面よりも内側の領域の光学機能層が加熱されることが防止されている。これによって、透光性部材の熱歪み、光学機能層の突起の熱変形等によって配光部材の光学機能が損なわれ、所望の配光パターンが得られなくなることを防止することができる。特に、光学機能層が微細突起を有することにより、光学機能層と基板の保持面との接触面積が小さく、光学機能層による高い断熱効果が得られる。
【0053】
従って、本実施例の半導体発光装置10によれば、配光を制御可能な光学素子を用いた半導体発光装置において、当該光学素子による所望の配光特性を有する光を長期間に亘って安定して出射可能な半導体発光装置を提供することができる。
【0054】
さらに、半導体発光装置10は、配光部材の側面と基板の壁部の拡張部の内側面とを接着して、基板のキャビティと配光部材とによって画定される半導体発光装置10の内空間を気密封止する接着部材を有している。接着部材は、気密封止によって、発光素子及び配光部材の光学機能層が酸化や水分等により劣化することを防止する。これに加えて接着部材は樹脂製であり、断熱材となるため、基板から配光部材の側面への伝熱も防止される。
【実施例2】
【0055】
図4及び図5を参照しつつ、本発明の実施例2に係る半導体発光装置40の構成について説明する。図4は、本発明の実施例2に係る半導体発光装置40を模式的に示す上面図である。図5は、半導体発光装置40を図4中の6-6線で切断した面を示す断面図である。
【0056】
[半導体発光装置40]
半導体発光装置40は、配光部材17の脱落を防止するパッケージカバー41及び接着部材19部を封止する封止部材43を有している点を除いて、実施例1の半導体発光装置10と同様に構成されている。よって、以下の説明においては相違点のみ説明する。
【0057】
[パッケージカバー]
図4及び図5に示すように、パッケージカバー41は、半導体発光装置10の基板11の外側面を覆い、さらに壁部15の上部15Cの上面S3の上方に、配光部材17の外縁に重なるように延在している。また、パッケージカバー41は、配光部材17の外縁を覆い、配光部材17で変換された出射光を出射する領域を露出するカバー開口部41OPを有している。すなわち、発光素子13から出射されたレーザ光は配光部材17を通って拡散光に変換され、カバー開口部41OPから出射される。
【0058】
パッケージカバー41は、外部環境から半導体発光装置10を保護している。また、パッケージカバー41のカバー開口部41OPは、発光素子13から出射された光が半導体発光装置40から取り出される領域としての出射領域を画定し、迷光の出射を抑制する。
【0059】
パッケージカバー41は、金属又は樹脂からなる板材によって構成されている。放熱性の観点から、パッケージカバー41は金属製であることが好適である。なお、パッケージカバー41に放熱用のフィンを設けて放熱性を高めることもできる。
【0060】
また、パッケージカバー41は、装置固定部41Cを有している。装置固定部41Cは、パッケージカバー41の下端から、基板11の底部14の上面に平行な方向に沿って内側に延在する部分である。装置固定部41Cは、基板11の底部14と接して半導体発光装置10をパッケージカバー41に固定する。
【0061】
例えば、基板11の底部14は、下面の端部が部分的に切り取られた形状を有している。当該切り取られた部分に装置固定部41Cが側面に垂直な方向に延在している。
【0062】
また、パッケージカバー41には、パッケージカバー41の下端部の一部分から、基板11の底部14に平行な方向に拡張する部分である回路基板固定部41Eを図4に示すように、対象的に1対又は複数対設けることができる。
【0063】
例えば、回路基板固定部41Eを回路基板に対してネジ等によって固定することで、パッケージカバー41が当該回路基板に固定される。また、当該回路基板に回路基板固定部41Eに対応した検出用配線を設け、通電するようにネジ等により固定することで、パッケージカバー41の脱落検知が可能となる。図4においては、点対称な位置に2つの回路基板固定部41Eが設けられている例を示している。
【0064】
[封止部材]
封止部材43は、図5に示すように、壁部15の上部15Cの内側面と、配光部材17の上面の外縁と、に接して連続して形成されたO-リング状(環状)の構造体である。また、封止部材43は、パッケージカバー41と配光部材17の上面によって挟持されるように取り付けられている。これにより、封止部材43は、基板11と配光部材17との間を気密している。
【0065】
封止部材43は、熱伝導性が低い材料から構成されており、基板11及びパッケージカバー41からの熱を遮熱し、配光部材17が加熱されることを防止している。また、接着部材19による気密封止に加え、封止部材43による重封止(2重封止)によって、発光装置40の気密性を向上している。よって、封止部材43は、発光装置40の内部に設けられている発光素子13や基板上の配線、及び配光部材17の光学機能層31を酸素、水分、及び腐食性ガス等から守る機能を有する。さらに、封止部材43は、配光部材17を基板11の壁部15の中部15Bの上面S2の支持領域に固定して、配光部材17が上部15Cの上方へ離脱することを防止する。
【0066】
封止部材43を構成する材料として、例えば、ゴム、樹脂等の熱伝導性の低い材料を用いることができる。基板11の上部15Cと配光部材17との間の気密性を確保する観点から、封止部材43は、ガスを透過し難い材料からなることが好ましく、例えば、テトラフルオロエチレン-パーフルオロビニルエーテル系(FFKM)、フッ化ビニリデン系(FKM)、テトラフルオロエチレン-プロピレン系(FEPM)等のフッ素系のゴム材が好適である。
【0067】
以上、説明したように、本実施例の半導体発光装置40は、半導体発光装置10に、パッケージカバー及び封止部材が取り付けられて構成されている。半導体発光装置10は、配光部材の光学機能層が、配光部材と基板との接触面にまで延在している構成を有し、当該接触面において、樹脂からなる光学機能層によって、発光素子の駆動によって生じる熱が基板から配光部材に伝搬することが防止されている。
【0068】
そして、封止部材は、熱伝導性の低い材料からなり、基板からの熱が配光部材に伝搬することを防止する。さらに、封止部材は、配光部材と基板との間を気密し、半導体発光装置40の高い気密性を確保することができる。さらに、封止部材は配光部材とパッケージカバーとの間に挟持されて、配光部材の脱落を防止することができる。
【0069】
従って、上述の実施例1の半導体発光装置10と同様に、半導体発光装置40は、発光素子の駆動によって生じる熱の影響が光学機能層に及ぶことを防止できるので、光学機能層の劣化を防止し、配光を制御可能な光学素子による所望の配光特性を有する光を安定して出射することができる。
【0070】
それに加えて、発光装置40においては、上述の封止部材による封止構造により、発光装置40の内部に封止された発光素子や光学機能層が、酸素、水分、腐食性ガス等の影響を受け難い。従って、発光素子や光学機能層の寿命が長く、長期間に亘って安定した配光パターンの光を出射可能な半導体発光装置を提供することができる。
【0071】
上述した実施例及び製造方法における構成は例示に過ぎず、用途等に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 半導体発光装置
11 基板
13 発光素子
14 底部
15 壁部
15A 下部
15B 中部
15C 上部
OP1、OP2、OP3 開口部
17 配光部材
19 接着部材
20 接合部材
21 カソード配線
23 カソード装置電極
23H、27H 導通ビア
25 アノード配線
27 アノード装置電極
28 ボンディングワイヤ
29 透光性部材
31 光学機能層
41 パッケージカバー
41OP カバー開口部
43 封止部材


図1
図2
図3
図4
図5