(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】車載装置、異常検知方法および異常検知プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20241223BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
H04L7/00 990
B60R16/023 P
(21)【出願番号】P 2020141305
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】北川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】芦邉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】山根 遼
(72)【発明者】
【氏名】岩田 章人
(72)【発明者】
【氏名】陶山 洋次郎
(72)【発明者】
【氏名】浦山 博史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】雨皿 将志
(72)【発明者】
【氏名】古川 久史
(72)【発明者】
【氏名】石塚 秀
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/171669(WO,A1)
【文献】特開2019-110410(JP,A)
【文献】特開2016-001808(JP,A)
【文献】特開2013-207452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
B60R 16/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載装置であって、
他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を前記他装置へ送信し、前記他装置から送信された前記時刻情報に基づいて前記伝搬遅延時間の更新を行い、更新した前記伝搬遅延時間に基づいて前記他装置との間における時刻同期を行う処理部と、
前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部とを備
え、
前記検知部は、前記時刻同期に関する異常として、前記要求情報および前記時刻情報の少なくともいずれか一方の伝送に関する複数種類の異常、ならびにタイムスタンプ機能に関する異常を検知可能であり、
前記車載装置は、さらに、
前記検知部により検知された異常の種類に対応する識別情報を自己の前記車載装置における記憶部に保存する記録部を備える、車載装置。
【請求項2】
車載装置であって、
他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間に基づいて、前記他装置と前記自己の車載装置との間における時刻同期が行われ、
前記伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求情報を前記他装置から受信し、前記他装置へ前記時刻情報を送信する処理部と、
前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部とを備
え、
前記検知部は、前記時刻同期に関する異常として、前記要求情報および前記時刻情報の少なくともいずれか一方の伝送に関する複数種類の異常、ならびにタイムスタンプ機能に関する異常を検知可能であり、
前記車載装置は、さらに、
前記検知部により検知された異常の種類に対応する識別情報を自己の前記車載装置における記憶部に保存する記録部を備える、車載装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記時刻同期に関する異常として、前記要求情報および前記時刻情報の少なくともいずれか一方の伝送における遅延または途絶を検知する、請求項1
または請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
車載装置における異常検知方法であって、
他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を前記他装置へ送信するステップと、
前記他装置から送信された前記時刻情報を受信するステップと、
受信した前記時刻情報に基づいて前記伝搬遅延時間を更新するステップと、
更新した前記伝搬遅延時間に基づいて、前記他装置との間における時刻同期を行うステップと、
前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得するステップとを含
み、
前記異常を検知するステップにおいては、前記時刻同期に関する異常として、前記要求情報および前記時刻情報の少なくともいずれか一方の伝送に関する複数種類の異常、ならびにタイムスタンプ機能に関する異常を検知可能であり、
前記異常検知方法は、さらに、
検知した異常の種類に対応する識別情報を自己の前記車載装置における記憶部に保存するステップを含む、異常検知方法。
【請求項5】
車載装置における異常検知方法であって、
他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間に基づいて、前記他装置と前記自己の車載装置との間における時刻同期が行われ、
前記伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求情報を、前記他装置から受信するステップと、
前記時刻情報を前記他装置へ送信するステップと、
前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得するステップとを含
み、
前記異常を検知するステップにおいては、前記時刻同期に関する異常として、前記要求情報および前記時刻情報の少なくともいずれか一方の伝送に関する複数種類の異常、ならびにタイムスタンプ機能に関する異常を検知可能であり、
前記異常検知方法は、さらに、
検知した異常の種類に対応する識別情報を自己の前記車載装置における記憶部に保存するステップを含む、異常検知方法。
【請求項6】
車載装置において用いられる異常検知プログラムであって、
コンピュータを、
他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を前記他装置へ送信し、前記他装置から送信された前記時刻情報に基づいて前記伝搬遅延時間の更新を行い、更新した前記伝搬遅延時間に基づいて前記他装置との間における時刻同期を行う処理部と、
前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部、
として機能させるための
プログラムであり、
前記検知部は、前記時刻同期に関する異常として、前記要求情報および前記時刻情報の少なくともいずれか一方の伝送に関する複数種類の異常、ならびにタイムスタンプ機能に関する異常を検知可能であり、
さらに、コンピュータを、
前記検知部により検知された異常の種類に対応する識別情報を自己の前記車載装置における記憶部に保存する記録部、
として機能させるための、異常検知プログラム。
【請求項7】
車載装置において用いられる異常検知プログラムであって、
他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間に基づいて、前記他装置と前記自己の車載装置との間における時刻同期が行われ、
コンピュータを、
前記伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求情報を前記他装置から受信し、前記他装置へ前記時刻情報を送信する処理部と、
前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部、
として機能させるための
プログラムであり、
前記検知部は、前記時刻同期に関する異常として、前記要求情報および前記時刻情報の少なくともいずれか一方の伝送に関する複数種類の異常、ならびにタイムスタンプ機能に関する異常を検知可能であり、
さらに、コンピュータを、
前記検知部により検知された異常の種類に対応する識別情報を自己の前記車載装置における記憶部に保存する記録部、
として機能させるための、異常検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置、異常検知方法および異常検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の車載装置を備える車載ネットワークに関する技術が開発されている。たとえば、特開2013-168865号公報(特許文献1)には、以下のような車載ネットワークシステムが開示されている。すなわち、車載ネットワークシステムは、車載ネットワーク上で用いられる通信規約のうち前記車載ネットワーク上における実装に依拠する部分を定義する定義データを格納するメモリを備えた車載制御装置と、前記車載制御装置に対して前記定義データを発行する通信規約発行装置とを備える。前記通信規約発行装置は、前記車載制御装置を前記車載ネットワークに参加させる登録装置から、前記車載制御装置を前記車載ネットワークに参加させるよう要求する登録要求を受け取ると、前記登録装置に対する認証を実施した上で、前記車載ネットワークに上における実装に準拠した前記定義データを作成して前記登録装置に返信する。前記登録装置は、前記通信規約発行装置が送信した前記定義データを受け取り、受け取った前記定義データを前記メモリ上に格納するよう前記車載制御装置に対して要求する。そして、前記車載制御装置は、前記登録装置から定義データを受け取って前記メモリ上に格納し、前記定義データが定義する前記部分にしたがって、前記通信規約に準拠して前記車載ネットワークを用いて通信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載ネットワークにおける各車載装置は、たとえば、IEEE 802.1などの規格により規定されるプロトコルに従い、車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間を定期的に更新し、更新後の伝搬遅延時間を用いて車載装置間の時刻同期を行う。
【0005】
しかしながら、車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が急に変化するなど、時刻同期に関する異常が生じる可能性があり、このような場合、時刻同期の精度が低下する等の問題が生じるおそれがある。
【0006】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、車載装置間における時刻同期をより安定して行うことのできる車載装置、異常検知方法および異常検知プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車載装置は、他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を前記他装置へ送信し、前記他装置から送信された前記時刻情報に基づいて前記伝搬遅延時間の更新を行い、更新した前記伝搬遅延時間に基づいて前記他装置との間における時刻同期を行う処理部と、前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部とを備える。
【0008】
本開示の車載装置は、他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間に基づいて、前記他装置と前記自己の車載装置との間における時刻同期が行われ、前記伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求情報を前記他装置から受信し、前記他装置へ前記時刻情報を送信する処理部と、前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部とを備える。
【0009】
本開示の異常検知方法は、車載装置における異常検知方法であって、他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を前記他装置へ送信するステップと、前記他装置から送信された前記時刻情報を受信するステップと、受信した前記時刻情報に基づいて前記伝搬遅延時間を更新するステップと、更新した前記伝搬遅延時間に基づいて、前記他装置との間における時刻同期を行うステップと、前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得するステップとを含む。
【0010】
本開示の異常検知方法は、車載装置における異常検知方法であって、他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間に基づいて、前記他装置と前記自己の車載装置との間における時刻同期が行われ、前記伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求情報を、前記他装置から受信するステップと、前記時刻情報を前記他装置へ送信するステップと、前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得するステップとを含む。
【0011】
本開示の異常検知プログラムは、車載装置において用いられる異常検知プログラムであって、コンピュータを、他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を前記他装置へ送信し、前記他装置から送信された前記時刻情報に基づいて前記伝搬遅延時間の更新を行い、更新した前記伝搬遅延時間に基づいて前記他装置との間における時刻同期を行う処理部と、前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部、として機能させるためのプログラムである。
【0012】
本開示の異常検知プログラムは、車載装置において用いられる異常検知プログラムであって、コンピュータを、他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間に基づいて、前記他装置と前記自己の車載装置との間における時刻同期が行われ、前記伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求情報を前記他装置から受信し、前記他装置へ前記時刻情報を送信する処理部と、前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部、として機能させるためのプログラムである。
【0013】
本開示は、このような特徴的な処理部を備える車載装置として実現できるだけでなく、車載装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、車載装置を含む車載ネットワークシステムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、車載装置間における時刻同期をより安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る車載ネットワークシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係るマスター側の機能部の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置による伝搬遅延時間の更新方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係るスレーブ側の機能部の構成を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係るスレーブ側の機能部による伝搬遅延時間の更新方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態に係るマスター側の機能部およびスイッチ装置間におけるデータの伝搬遅延時間に急な変化が生じた場合の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係る機能部およびスイッチ装置間において伝送されるデータの途絶が生じた場合の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置および機能部における記憶部に保存されているエラーコード一覧の例を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態に係る車載ネットワークシステムにおける複数の車載装置による、伝搬遅延時間の更新、および時刻同期に関する異常検知のシーケンスを示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施の形態に係る車載ネットワークシステムにおける複数の車載装置による、時刻の補正のシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の実施の形態に係る車載装置は、他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を前記他装置へ送信し、前記他装置から送信された前記時刻情報に基づいて前記伝搬遅延時間の更新を行い、更新した前記伝搬遅延時間に基づいて前記他装置との間における時刻同期を行う処理部と、前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部とを備える。
【0017】
このように、時刻同期に関する異常を検知する構成により、異常の発生を把握することができ、当該異常の発生原因を解消するための処置を迅速に行うなどの対応をとることができる。したがって、車載装置間における時刻同期をより安定して行うことができる。
【0018】
(2)本開示の実施の形態に係る車載装置は、他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間に基づいて、前記他装置と前記自己の車載装置との間における時刻同期が行われ、前記伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求情報を前記他装置から受信し、前記他装置へ前記時刻情報を送信する処理部と、前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部とを備える。
【0019】
このように、時刻同期に関する異常を検知する構成により、異常の発生を把握することができ、当該異常の発生原因を解消するための処置を迅速に行うなどの対応をとることができる。したがって、車載装置間における時刻同期をより安定して行うことができる。また、時刻情報の送信元である車載装置、すなわち車載ネットワークにおける基準時刻を保持する車載装置において時刻同期に関する異常を検知する構成により、時刻同期に関する異常をより確実に検知することができる。
【0020】
(3)好ましくは、前記車載装置は、さらに、前記検知部により検知された異常に関する情報を記憶部に保存する記録部を備える。
【0021】
このように、車載装置において生じた異常に関する情報を当該車載装置において保存する構成により、たとえば、当該車載装置以外の他の装置を情報伝送に用いることなく異常の発生を把握することができ、たとえば、異常の発生原因を解消するための処置をより迅速に行うことができる。
【0022】
(4)好ましくは、前記検知部は、前記時刻同期に関する異常として、前記要求情報および前記時刻情報の少なくともいずれか一方の伝送に関する異常を検知する。
【0023】
このような構成により、時刻同期に用いられるメッセージの伝搬遅延時間の変化などを検知することができるため、時刻同期に関する異常をより確実に検知することができる。
【0024】
(5)より好ましくは、前記検知部は、前記時刻同期に関する異常として、前記要求情報および前記時刻情報の少なくともいずれか一方の伝送における遅延または途絶を検知する。
【0025】
ここで、通信の輻輳などが原因でメッセージの伝送における遅延または途絶が一時的に生じた場合であっても、当該原因が解消された場合にはメッセージの伝送が正常に行われ、このような異常に関する情報の記録等が行われないため、管理者等において異常の把握ができない可能性がある。このように、異常の把握ができない場合、異常の発生原因に対する処置を行うことができないため、同様の異常が繰り返される可能性がある。これに対して、上記のような構成により、一時的に生じて解消される可能性のある異常であっても、当該異常を検知して、異常に関する情報の記録等を行うことができるため、発生原因を解消するための処置を行うなどの対応をとることができる。
【0026】
(6)本開示の実施の形態に係る異常検知方法は、車載装置における異常検知方法であって、他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を前記他装置へ送信するステップと、前記他装置から送信された前記時刻情報を受信するステップと、受信した前記時刻情報に基づいて前記伝搬遅延時間を更新するステップと、更新した前記伝搬遅延時間に基づいて、前記他装置との間における時刻同期を行うステップと、前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得するステップとを含む。
【0027】
このように、時刻同期に関する異常を検知する方法により、異常の発生を把握することができ、当該異常の発生原因を解消するための処置を迅速に行うなどの対応をとることができる。したがって、車載装置間における時刻同期をより安定して行うことができる。
【0028】
(7)本開示の実施の形態に係る異常検知方法は、車載装置における異常検知方法であって、他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間に基づいて、前記他装置と前記自己の車載装置との間における時刻同期が行われ、前記伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求情報を、前記他装置から受信するステップと、前記時刻情報を前記他装置へ送信するステップと、前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得するステップとを含む。
【0029】
このように、時刻同期に関する異常を検知する方法により、異常の発生を把握することができ、当該異常の発生原因を解消するための処置を迅速に行うなどの対応をとることができる。したがって、車載装置間における時刻同期をより安定して行うことができる。また、時刻情報の送信元である車載装置、すなわち車載ネットワークにおける基準時刻を保持する車載装置において時刻同期に関する異常を検知する方法により、時刻同期に関する異常をより確実に検知することができる。
【0030】
(8)本開示の実施の形態に係る異常検知プログラムは、車載装置において用いられる異常検知プログラムであって、コンピュータを、他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を前記他装置へ送信し、前記他装置から送信された前記時刻情報に基づいて前記伝搬遅延時間の更新を行い、更新した前記伝搬遅延時間に基づいて前記他装置との間における時刻同期を行う処理部と、前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部、として機能させるためのプログラムである。
【0031】
このように、時刻同期に関する異常を検知する構成により、異常の発生を把握することができ、当該異常の発生原因を解消するための処置を迅速に行うなどの対応をとることができる。したがって、車載装置間における時刻同期をより安定して行うことができる。
【0032】
(9)本開示の実施の形態に係る異常検知プログラムは、車載装置において用いられる異常検知プログラムであって、コンピュータを、他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間に基づいて、前記他装置と前記自己の車載装置との間における時刻同期が行われ、前記伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求情報を前記他装置から受信し、前記他装置へ前記時刻情報を送信する処理部と、前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部、として機能させるためのプログラムである。
【0033】
このように、時刻同期に関する異常を検知する構成により、異常の発生を把握することができ、当該異常の発生原因を解消するための処置を迅速に行うなどの対応をとることができる。したがって、車載装置間における時刻同期をより安定して行うことができる。また、時刻情報の送信元である車載装置、すなわち車載ネットワークにおける基準時刻を保持する車載装置において時刻同期に関する異常を検知する構成により、時刻同期に関する異常をより確実に検知することができる。
【0034】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0035】
<構成および基本動作>
[全体構成]
図1は、本開示の実施の形態に係る車載ネットワークシステムの構成を示す図である。
図1を参照して、車載ネットワークシステム301は、車両1に搭載され、スイッチ装置101と、複数の機能部111とを備える。
図1では、一例として、機能部111である2つの機能部111A,111Bを示している。スイッチ装置101および各機能部111は、車載装置であり、たとえばECU(Electronic Control Unit)である。
【0036】
スイッチ装置101は、たとえばイーサネット(登録商標)ケーブル10により複数の機能部111と接続されており、自己に接続された複数の機能部111と通信を行うことが可能である。
【0037】
具体的には、スイッチ装置101は、機能部111からのデータを他の機能部111へ中継する中継処理を行う。スイッチ装置101および機能部111間では、たとえば、IPパケットが格納されたイーサネットフレームを用いて情報のやり取りが行われる。
【0038】
機能部111は、車外通信ECU、センサ、カメラ、ナビゲーション装置、自動運転処理ECU、エンジン制御デバイス、AT(Automatic Transmission)制御デバイス、HEV(Hybrid Electric Vehicle)制御デバイス、ブレーキ制御デバイス、シャーシ制御デバイス、ステアリング制御デバイスおよび計器表示制御デバイス等である。
【0039】
[スイッチ装置およびマスター側の機能部]
(スイッチ装置の構成)
図2は、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置の構成を示す図である。
図2を参照して、スイッチ装置101は、中継部51と、時刻同期部52と、記憶部53と、複数の通信ポート54とを備える。中継部51および時刻同期部52は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサにより実現される。記憶部53は、たとえば不揮発性メモリである。
【0040】
中継部51は、スイッチ部61と、制御部62とを含む。時刻同期部52は、処理部63と、検知部64と、記録部65とを含む。
【0041】
(スイッチ装置による中継処理)
通信ポート54は、たとえばイーサネットケーブル10を接続可能な端子である。なお、通信ポート54は、集積回路の端子であってもよい。複数の通信ポート54の各々は、イーサネットケーブル10を介して複数の機能部111のうちのいずれか1つに接続されている。この例では、通信ポート54Aが機能部111Aに接続され、通信ポート54Bが機能部111Bに接続されている。
【0042】
記憶部53には、通信ポート54のポート番号と接続先装置のMAC(Media Access Control)アドレスとの対応関係を示すアドレステーブルTa1が保存されている。
【0043】
スイッチ部61は、他の車載装置間のデータを中継する。すなわち、スイッチ部61は、機能部111から送信されたイーサネットフレームを、当該機能部111に対応する通信ポート54経由で受信すると、受信したイーサネットフレームに対して中継処理を行う。
【0044】
より詳細には、スイッチ部61は、記憶部53に保存されているアドレステーブルTa1を参照し、受信したイーサネットフレームに含まれる送信先MACアドレスに対応するポート番号を特定する。そして、スイッチ部61は、受信したイーサネットフレームを、特定したポート番号の通信ポート54から送信する。
【0045】
スイッチ装置101は、マスター側の機能部111と、自己のスイッチ装置101との間のデータの伝搬遅延時間Td1を更新する。ここでは、機能部111Aがマスター側の機能部111であり、機能部111Bがスレーブ側の機能部111であるとする。機能部111Aは、車載ネットワークシステム301における基準時刻を保持している。
【0046】
(マスター側の機能部の構成)
図3は、本開示の実施の形態に係るマスター側の機能部の構成を示す図である。
図3を参照して、マスター側の機能部111Aは、通信部81Aと、時刻同期部82Aと、記憶部83Aと、通信ポート84Aとを備える。通信部81Aおよび時刻同期部82Aは、たとえば、CPUおよびDSP等のプロセッサにより実現される。記憶部83Aは、たとえば不揮発性メモリである。
【0047】
時刻同期部82Aは、処理部91Aと、検知部92Aと、記録部93Aとを含む。通信ポート84Aは、たとえばイーサネットケーブル10を接続可能な端子である。なお、通信ポート84Aは、集積回路の端子等であってもよい。通信ポート84Aは、イーサネットケーブル10を介してスイッチ装置101に接続されている。
【0048】
(マスター側の機能部およびスイッチ装置間のデータの伝搬遅延時間の更新)
図4は、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置による伝搬遅延時間の更新方法を説明するための図である。
【0049】
図2~
図4を参照して、スイッチ装置101における処理部63は、定期的または不定期に、機能部111Aおよびスイッチ装置101間のデータの伝搬遅延時間Td1の更新を行う。より詳細には、処理部63は、伝搬遅延時間Td1の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求情報(Pdelay_Req)を、中継部51および通信ポート54A経由で機能部111Aへ送信する。以下、要求情報を、「要求メッセージ」とも称する。
【0050】
機能部111Aにおける通信部81Aは、スイッチ装置101から送信された要求メッセージを通信ポート84A経由で受信し、受信した要求メッセージを時刻同期部82Aへ出力する。
【0051】
時刻同期部82Aにおける処理部91Aは、通信部81Aから要求メッセージを受けて、当該要求メッセージに対する時刻情報(Pdelay_Resp)を通信部81Aへ出力する。通信部81Aは、処理部91Aから受けた時刻情報を、通信ポート84A経由でスイッチ装置101へ送信する。このとき、処理部91Aは、時刻情報に、要求メッセージの受信時刻t2を含めて送信する。以下、時刻情報を、「応答メッセージ」とも称する。
【0052】
また、処理部91Aは、応答メッセージの送信後、当該応答メッセージの送信時刻t3を含めたフォローアップメッセージ(Pdelay_Resp_Follow_Up)を通信部81Aへ出力する。通信部81Aは、処理部91Aから受けたフォローアップメッセージを、通信ポート84A経由でスイッチ装置101へ送信する。
【0053】
スイッチ装置101における制御部62は、機能部111Aから送信された応答メッセージおよびフォローアップメッセージを通信ポート54A経由で受信する。そして、制御部62は、当該応答メッセージに含まれる時刻t2、および当該フォローアップメッセージに含まれる時刻t3を時刻同期部52に通知する。
【0054】
また、制御部62は、要求メッセージの送信時刻t1および応答メッセージの受信時刻t4を時刻同期部52に通知する。より詳細には、スイッチ装置101は、図示しないカウンタを備える。制御部62は、要求メッセージの送信タイミングにおける当該カウンタのカウント値を、送信時刻t1として時刻同期部52に通知する。また、制御部62は、応答メッセージの受信タイミングにおける当該カウンタのカウント値を、受信時刻t4として時刻同期部52に通知する。
【0055】
時刻同期部52における処理部63は、制御部62から通知された時刻t1,t2,t3,t4に基づいて、機能部111Aおよびスイッチ装置101間のデータの伝搬遅延時間Td1を算出する。具体的には、処理部63は、伝搬遅延時間Td1=((t4-t1)-(t3-t2))/2を算出する。そして、処理部63は、記憶部53に保存されている伝搬遅延時間Td1を、新たに算出した伝搬遅延時間Td1に更新する。
【0056】
(スイッチ装置における時刻の補正)
機能部111Aにおける処理部91Aは、定期的または不定期に、Syncメッセージを通信部81Aへ出力する。通信部81Aは、処理部91Aから受けたSyncメッセージを通信ポート84A経由でスイッチ装置101へ送信する。また、処理部91Aは、Syncメッセージの送信後、当該Syncメッセージの送信時刻tmを含めたフォローアップメッセージ(Follow_Up)を通信部81Aへ出力する。通信部81Aは、処理部91Aから受けたフォローアップメッセージを通信ポート84A経由でスイッチ装置101へ送信する。
【0057】
スイッチ装置101における制御部62は、機能部111Aから送信されたSyncメッセージおよびフォローアップメッセージを通信ポート54A経由で受信する。そして、制御部62は、フォローアップメッセージに含まれる時刻tmを時刻同期部52に通知する。また、制御部62は、Syncメッセージの受信タイミングにおけるカウンタのカウント値を、Syncメッセージの受信時刻txとして時刻同期部52に通知する。
【0058】
時刻同期部52における処理部63は、制御部62から通知された時刻tm,tx、および記憶部53に保存されている伝搬遅延時間Td1に基づいて、機能部111Aとの間における時刻同期を行う。より詳細には、処理部63は、時刻tm,txおよび伝搬遅延時間Td1に基づいて、機能部111Aの時刻とスイッチ装置101の時刻との差である時刻差Tx1=tm-Td1-txを算出する。
【0059】
そして、処理部63は、算出した時刻差Tx1を用いて、自己のスイッチ装置101における時刻を補正する。これにより、機能部111Aとスイッチ装置101との時刻同期が確立する。
【0060】
[スレーブ側の機能部]
図5は、本開示の実施の形態に係るスレーブ側の機能部の構成を示す図である。
図5を参照して、スレーブ側の機能部111Bは、通信部81Bと、時刻同期部82Bと、記憶部83Bと、通信ポート84Bとを備える。通信部81Bおよび時刻同期部82Bは、たとえば、CPUおよびDSP等のプロセッサにより実現される。記憶部83Bは、たとえば不揮発性メモリである。
【0061】
時刻同期部82Bは、処理部91Bと、検知部92Bと、記録部93Bとを含む。通信ポート84Bは、たとえばイーサネットケーブル10を接続可能な端子である。なお、通信ポート84Bは、集積回路の端子等であってもよい。通信ポート84Bは、イーサネットケーブル10を介してスイッチ装置101に接続されている。
【0062】
以下、機能部111Aにおける記憶部83A、および機能部111Bにおける記憶部83Bの各々を「記憶部83」とも称する。また、機能部111Aにおける検知部92A、および機能部111Bにおける検知部92Bの各々を「検知部92」とも称する。また、機能部111Aにおける記録部93A、および機能部111Bにおける記録部93Bの各々を「記録部93」とも称する。
【0063】
(スイッチ装置およびスレーブ側の機能部間のデータの伝搬遅延時間の更新)
スレーブ側の機能部111Bは、スイッチ装置101と自己との間のデータの伝搬遅延時間Td2を更新する。
【0064】
図6は、本開示の実施の形態に係るスレーブ側の機能部による伝搬遅延時間の更新方法を説明するための図である。
【0065】
より詳細には、
図5および
図6を参照して、スレーブ側の機能部111Bにおける処理部91Bは、
図2に示すスイッチ装置101における処理部63と同様に、定期的または不定期に、スイッチ装置101および自己の機能部111B間のデータの伝搬遅延時間Td2の更新を行う。より詳細には、処理部91Bは、伝搬遅延時間Td2の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求メッセージを、通信部81Bおよび通信ポート84B経由でスイッチ装置101へ送信する。
【0066】
スイッチ装置101における制御部62は、機能部111Bから送信された要求メッセージを通信ポート54B経由で受信すると、当該要求メッセージを処理部63へ出力する。
【0067】
処理部63は、制御部62から要求メッセージを受けると、当該要求メッセージに対する応答メッセージを、中継部51および通信ポート54B経由で機能部111Bへ送信する。このとき、処理部63は、応答メッセージに、要求メッセージの受信時刻t22を含めて送信する。
【0068】
また、処理部63は、応答メッセージの送信後、当該応答メッセージの送信時刻t13を含めたフォローアップメッセージを、中継部51および通信ポート54B経由で機能部111Bへ送信する。
【0069】
機能部111Bにおける通信部81Bは、スイッチ装置101から送信された応答メッセージおよびフォローアップメッセージを通信ポート84経由で受信する。そして、通信部81Bは、当該応答メッセージに含まれる時刻t12、および当該フォローアップメッセージに含まれる時刻t13を時刻同期部82Bに通知する。
【0070】
また、通信部81Bは、要求メッセージの送信時刻t11および応答メッセージの受信時刻t14を時刻同期部82Bに通知する。より詳細には、機能部111Bは、図示しないカウンタを備える。通信部81Bは、要求メッセージの送信タイミングにおける当該カウンタのカウント値を、送信時刻t11として時刻同期部82Bに通知する。また、通信部81Bは、応答メッセージの受信タイミングにおける当該カウンタのカウント値を、受信時刻t14として時刻同期部82Bに通知する。
【0071】
時刻同期部82Bにおける処理部91Bは、通信部81Bから通知された時刻t11,t12,t13,t14に基づいて、スイッチ装置101および機能部111B間のデータの伝搬遅延時間Td2を算出する。具体的には、処理部91Bは、伝搬遅延時間Td2=((t14-t11)-(t13-t12))/2を算出する。そして、処理部91Bは、記憶部83に保存されている伝搬遅延時間Td2を、新たに算出した伝搬遅延時間Td2に更新する。
【0072】
(スレーブ側の機能部における時刻の補正)
スイッチ装置101における処理部63は、定期的または不定期に、Syncメッセージをスレーブ側の機能部111Bへ送信する。また、処理部63は、Syncメッセージの送信後、当該Syncメッセージの送信時刻tyを含めたフォローアップメッセージを、機能部111Bへ送信する。
【0073】
機能部111Bにおける通信部81Bは、スイッチ装置101から送信されたSyncメッセージおよびフォローアップメッセージを通信ポート84B経由で受信する。そして、通信部81Bは、当該フォローアップメッセージに含まれる時刻tyを時刻同期部82Bに通知する。また、通信部81Bは、Syncメッセージの受信タイミングにおけるカウンタのカウント値を、Syncメッセージの受信時刻tsとして時刻同期部82Bに通知する。
【0074】
時刻同期部82Bにおける処理部91Bは、通信部81Bから通知された時刻ty,ts、および記憶部83Bに保存されている伝搬遅延時間Td2に基づいて、スイッチ装置101との間における時刻同期を行う。より詳細には、処理部91Bは、スイッチ装置101の時刻と機能部111Bの時刻との差である時刻差Tx2=ty-Td2-tsを算出する。そして、処理部91Bは、算出した時刻差Tx2を用いて、自己の機能部111Bにおける時刻を補正する。
【0075】
ここで、マスター側の機能部111Aとスイッチ装置101との時刻同期が確立されている場合、スイッチ装置101から機能部111Bへ送信されるフォローアップメッセージに含まれる時刻tyは、機能部111Aに同期した時刻である。このため、機能部111Bにおける処理部91Bが時刻補正を行うことにより、機能部111Bとスイッチ装置101との時刻同期が確立し、その結果、機能部111Bと機能部111Aとの時刻同期が確立する。
【0076】
[時刻同期に関する異常の検知]
スイッチ装置101における検知部64、および機能部111における検知部92は、時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する。時刻同期に関する異常は、たとえば、要求メッセージおよび応答メッセージの少なくともいずれか一方の伝送における異常、またはタイムスタンプ機能の異常などである。以下、検知部64および検知部92により行われる検知の詳細な内容について説明する。
【0077】
(a)伝搬遅延時間の急な変化の検知
スイッチ装置101における検知部64は、たとえば、時刻同期に関する異常として、マスター側の機能部111Aおよびスイッチ装置101間におけるデータの伝搬遅延時間Td1に急な変化が生じたことを検知する。
【0078】
図7は、本開示の実施の形態に係るマスター側の機能部およびスイッチ装置間におけるデータの伝搬遅延時間に急な変化が生じた場合の一例を示す図である。
【0079】
図2および
図7を参照して、ここでは、時刻t21においてスイッチ装置101が機能部111Aへ要求メッセージを送信し、時刻t22において機能部111Aが当該要求メッセージを受信し、時刻t23において機能部111Aが応答メッセージをスイッチ装置101へ送信したとする。さらに、機能部111Aが、応答メッセージの送信後、フォローアップメッセージをスイッチ装置101へ送信したとする。
【0080】
また、何らかの原因が生じて、時刻t22から時刻t23までの間に伝搬遅延時間Td1が急に延びた、すなわち時刻t23から時刻t24までの時間T2が、時刻t21から時刻t22までの時間T1よりも長くなったとする。
【0081】
図2に示す制御部62は、上述のとおり、通信ポート54A経由で応答メッセージおよびフォローアップメッセージを受信して、当該応答メッセージに含まれる時刻t22、および当該フォローアップメッセージに含まれる時刻t23を時刻同期部52に通知する。また、制御部62は、要求メッセージの送信時刻t21および応答メッセージの受信時刻t24を時刻同期部52に通知する。
【0082】
上述のとおり、時刻同期部52における処理部63は、通知された時刻t21,t22,t23,t24を用いて、伝搬遅延時間Td1=((t24-t21)-(t23-t22))/2を算出する。しかしながら、上記の式は、時間T1と時間T2とが等しいことを前提としているため、時間T1と時間T2との間に差がある場合には誤った伝搬遅延時間Td1が得られることになる。
【0083】
このため、時刻同期部52における検知部64は、制御部62から通知された時刻t21,t22,t23,t24に基づいて、伝搬遅延時間Td1に急な変化が生じているか否かを判断する。
【0084】
具体的には、時刻t23から時刻t24までの時間T2が、時刻t21から時刻t22までの時間T1よりも所定値以上大きいとする。この場合、検知部64は、伝搬遅延時間Td1が急に延びており、スイッチ装置101および機能部111A間における応答メッセージの伝送において遅延が生じていると判断する。
【0085】
そして、検知部64は、応答メッセージの伝送において遅延が生じている旨を、検知結果として記録部65に通知する。このとき、検知部64は、たとえば、応答メッセージの伝送において遅延が生じていると判断した時刻を検知結果に含めて通知する。
【0086】
スレーブ側の機能部111Bにおける検知部92Bは、上述したスイッチ装置101における検知部64と同様に、たとえば、スイッチ装置101および機能部111B間におけるデータの伝搬遅延時間Td2に急な変化が生じているか否かを判断する。
【0087】
そして、検知部92Bは、伝搬遅延時間Td2が急に延びており、スイッチ装置101および機能部111B間における応答メッセージの伝送において遅延が生じていると判断した場合、当該応答メッセージの伝送において遅延が生じている旨を検知結果として記録部93Bに通知する。
【0088】
(b)装置間において伝送されるデータの途絶の検知
スイッチ装置101における検知部64は、たとえば、時刻同期に関する異常として、スイッチ装置101および機能部111B間において伝送されるデータの途絶を検知する。
【0089】
図8は、本開示の実施の形態に係る機能部およびスイッチ装置間において伝送されるデータの途絶が生じた場合の一例を示す図である。
【0090】
図2および
図8を参照して、ここでは、時刻t31において送信された、機能部111Bからスイッチ装置101への要求メッセージが、スイッチ装置101において受信されずに途絶したとする。この場合、スイッチ装置101による応答メッセージおよびフォローアップメッセージの送信は行われない。
【0091】
また、スイッチ装置101における検知部64は、中継部51を監視して、機能部111Bからの要求メッセージのスイッチ装置101における受信状況を監視する。そして、たとえば、車載ネットワークシステム301の起動時においてスイッチ装置101と機能部111Bとの間で通信開始のための所定情報のやりとりが行われた後、機能部111Bからの要求メッセージがスイッチ装置101に届かない状況が所定時間以上継続しているとする。この場合、検知部64は、機能部111Bからの要求メッセージが途絶していると判断する。
【0092】
そして、検知部64は、機能部111Bからの要求メッセージが途絶している旨を、検知結果として記録部65に通知する。このとき、検知部64は、たとえば、機能部111Bからの要求メッセージが途絶していると判断した時刻を検知結果に含めて通知する。
【0093】
マスター側の機能部111Aにおける検知部92Aは、上述したスイッチ装置101における検知部64と同様に、たとえば、機能部111Aおよびスイッチ装置101間において伝送されるデータの途絶が生じているか否かを判断する。そして、検知部92Aは、データの途絶が生じていると判断した場合、当該データの途絶が生じている旨を検知結果として記録部93Aに通知する。
【0094】
(c)メッセージの送信遅延の検知
再び
図2を参照して、スイッチ装置101における検知部64は、たとえば、時刻同期に関する異常として、スイッチ装置101からのメッセージの送信遅延が生じていることを検知する。
【0095】
より詳細には、処理部63は、機能部111Aへの要求メッセージの送信を定期的に行う構成であるとする。この場合、検知部64は、たとえば、中継部51を監視して、処理部63による新たな要求メッセージの送信が行われない状況が所定時間以上継続している場合、要求メッセージの送信遅延が生じていると判断する。
【0096】
この場合、検知部64は、要求メッセージの送信遅延が生じている旨を、検知結果として記録部65に通知する。このとき、検知部64は、たとえば、要求メッセージの送信遅延が生じていると判断した時刻を検知結果に含めて通知する。
【0097】
機能部111Aおよび機能部111Bの各々の検知部92は、上述したスイッチ装置101における検知部64と同様に、自己の機能部111からのメッセージの送信遅延が生じているか否かを判断する。そして、検知部92は、自己の機能部111からのメッセージの送信遅延が生じていると判断した場合、当該メッセージの送信遅延が生じている旨を検知結果として記録部93に通知する。
【0098】
(d)タイムスタンプ機能の不具合の検知
ここで、制御部62は、上述のとおり、スイッチ装置101の備える図示しないカウンタのカウント値を確認して、メッセージの送信時刻またはメッセージの受信時刻を時刻同期部52に通知する。すなわち、制御部62は、タイムスタンプ機能を用いた時刻の通知を行い、タイムスタンプ機能に不具合が生じている場合、時刻同期部52への正確な時刻の通知を行うことができない。
【0099】
このため、スイッチ装置101における検知部64は、たとえば、時刻同期に関する異常として、スイッチ装置101におけるタイムスタンプ機能に不具合が生じていることを検知する。
【0100】
具体的には、検知部64は、たとえば、定期的または不定期に、上記カウンタが正常に動作しているか否かを確認する。そして、検知部64は、カウンタが正常に動作していない場合、タイムスタンプ機能に不具合が生じている旨を検知結果として記録部65に通知する。このとき、検知部64は、たとえば、タイムスタンプ機能に不具合が生じていると判断した時刻を検知結果に含めて通知する。
【0101】
機能部111Aおよび機能部111Bの各々の検知部92は、上述したスイッチ装置101における検知部64と同様に、自己の機能部111のタイムスタンプ機能に不具合が生じているか否かを判断する。そして、検知部92は、自己の機能部111のタイムスタンプ機能に不具合が生じていると判断した場合、当該タイムスタンプ機能に不具合が生じている旨を検知結果として記録部93に通知する。
【0102】
なお、検知部64または検知部92は、上記(a)~(d)に記載の異常の代わりに、またはこれらに加えて、時刻同期に関する他の種類の異常を検知する構成であってもよい。また、検知部64または検知部92は、上記(a)~(d)に記載の異常のうちの一部を検知する構成であってもよい。
【0103】
[検知結果の記録]
スイッチ装置101における記録部65は、検知部64から通知された検知結果に基づいて、検知部64により検知された異常に関する情報を記憶部53に保存する。また、機能部111における記録部93は、検知部92から通知された検知結果に基づいて、検知部92により検知された異常に関する情報を記憶部83に保存する。
【0104】
より詳細には、記録部65および記録部93は、通知された検知結果に基づいて、異常の発生時刻、異常の発生箇所および異常の原因などを特定する。また、記憶部53および記憶部83には、異常の発生箇所と、異常の原因と、エラーコードとの対応関係を示すエラーコード一覧Ta2が保存されている。
【0105】
記録部65は、記憶部53に保存されているエラーコード一覧Ta2を参照して、特定した発生箇所および原因に対応するエラーコードを記憶部53に保存する。また、記録部93は、記憶部83に保存されているエラーコード一覧Ta2を参照して、特定した発生箇所および原因に対応するエラーコードを記憶部83に保存する。
【0106】
図9は、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置および機能部における記憶部に保存されているエラーコード一覧の例を示す図である。
【0107】
具体的には、
図9を参照して、エラーコード一覧Ta2には、異常の発生箇所がスイッチ装置101であり、タイムスタンプ機能の不具合が異常の原因である場合、エラーコードが「1」であることが示されている。また、エラーコード一覧Ta2には、異常の発生箇所がマスター側の機能部111Aであり、タイムスタンプ機能の不具合が異常の原因である場合、エラーコードが「2」であることが示されている。また、エラーコード一覧Ta2には、異常の発生箇所がスレーブ側の機能部111Bであり、タイムスタンプ機能の不具合が異常の原因である場合、エラーコードが「3」であることが示されている。
【0108】
また、エラーコード一覧Ta2には、異常の発生箇所がスイッチ装置101であり、メッセージの送信遅延が異常の原因である場合、エラーコードが「4」であることが示されている。また、エラーコード一覧Ta2には、異常の発生箇所がマスター側の機能部111Aであり、メッセージの送信遅延が異常の原因である場合、エラーコードが「5」であることが示されている。また、エラーコード一覧Ta2には、異常の発生箇所がスレーブ側の機能部111Bであり、メッセージの送信遅延が異常の原因である場合、エラーコードが「6」であることが示されている。
【0109】
また、エラーコード一覧Ta2には、異常の発生箇所がマスター側の機能部111Aとスイッチ装置101との間におけるデータの伝搬経路であり、メッセージの伝搬遅延が異常の原因である場合、エラーコードが「7」であることが示されている。また、エラーコード一覧Ta2には、異常の発生箇所がスレーブ側の機能部111Bとスイッチ装置101との間におけるデータの伝搬経路であり、メッセージの伝搬遅延が異常の原因である場合、エラーコードが「8」であることが示されている。
【0110】
また、エラーコード一覧Ta2には、異常の発生箇所がマスター側の機能部111Aとスイッチ装置101との間におけるデータの伝搬経路であり、メッセージの途絶が異常の原因である場合、エラーコードが「9」であることが示されている。また、エラーコード一覧Ta2には、異常の発生箇所がスレーブ側の機能部111Bとスイッチ装置101との間におけるデータの伝搬経路であり、メッセージの途絶が異常の原因である場合、エラーコードが「10」であることが示されている。
【0111】
(記録される情報の具体例1)
たとえば、スイッチ装置101における記録部65は、スイッチ装置101および機能部111A間における応答メッセージの伝送において遅延が生じている旨の検知結果を受けたとする。この場合、記録部65は、マスター側の機能部111Aとスイッチ装置101との間におけるデータの伝搬経路を、異常の発生箇所として特定する。また、記録部65は、メッセージの伝搬遅延を、異常の原因として特定する。また、記録部65は、当該検知結果に含まれる時刻を、異常の発生時刻として特定する。
【0112】
そして、記録部65は、エラーコード一覧Ta2を参照して、特定した発生箇所および原因に対応するエラーコード「7」、および異常の発生時刻を記憶部53に保存する。なお、異常の発生時刻は、たとえば、ナノ秒まで記録可能なビット数のデータ長で保存される。
【0113】
(記録される情報の具体例2)
たとえば、スイッチ装置101における記録部65は、機能部111Bからの要求メッセージが途絶している旨の検知結果を受けたとする。この場合、記録部65は、スレーブ側の機能部111Bとスイッチ装置101との間におけるデータの伝搬経路を、異常の発生箇所として特定する。また、記録部65は、メッセージの途絶を、異常の原因として特定する。また、記録部65は、当該検知結果に含まれる時刻を、異常の発生時刻として特定する。
【0114】
そして、記録部65は、エラーコード一覧Ta2を参照して、特定した発生箇所および原因に対応するエラーコード「10」、および異常の発生時刻を記憶部53に保存する。
【0115】
(記録される情報の具体例3)
たとえば、スイッチ装置101における記録部65は、自己のスイッチ装置101からの要求メッセージの送信遅延が生じている旨の検知結果を受けたとする。この場合、記録部65は、スイッチ装置101を、異常の発生箇所として特定する。また、記録部65は、メッセージの送信遅延を、異常の原因として特定する。また、記録部65は、当該検知結果に含まれる時刻を、異常の発生時刻として特定する。
【0116】
そして、記録部65は、エラーコード一覧Ta2を参照して、特定した発生箇所および原因に対応するエラーコード「4」、および異常の発生時刻を記憶部53に保存する。
【0117】
(記録される情報の具体例4)
たとえば、スイッチ装置101における記録部65は、自己のスイッチ装置101におけるタイムスタンプ機能に不具合が生じている旨の検知結果を受けたとする。この場合、記録部65は、スイッチ装置101を、異常の発生箇所として特定する。また、記録部65は、メッセージの送信遅延を、異常の原因として特定する。また、記録部65は、当該検知結果に含まれる時刻を、異常の発生時刻として特定する。
【0118】
そして、記録部65は、エラーコード一覧Ta2を参照して、特定した発生箇所および原因に対応するエラーコード「1」、および異常の発生時刻を記憶部53に保存する。
【0119】
機能部111における記録部93は、上述のようなスイッチ装置101における記録部65と同様の動作を行う。
【0120】
なお、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置101では、時刻同期部52に検知部64および記録部65が含まれる。すなわち、検知部64は、時刻同期に関する異常のみを検知する構成であるとしたが、これに限定されない。たとえば、検知部64および記録部65は、時刻同期部52の外部に設けられ、時刻同期に関する異常以外の異常をさらに検知して記憶部53に保存する構成であってもよい。
【0121】
また、本開示の実施の形態に係る機能部111では、時刻同期部82に検知部92および記録部93が含まれる。すなわち、検知部92は、時刻同期に関する異常のみを検知する構成であるとしたが、これに限定されない。たとえば、検知部92および記録部93は、時刻同期部82の外部に設けられ、時刻同期に関する異常以外の異常をさらに検知して記憶部83に保存する構成であってもよい。
【0122】
また、スイッチ装置101は、記録部65を備えなくてもよい。この場合、検知部64は、検知結果を記録部65に通知する代わりに、たとえば、当該検知結果を外部サーバへ通知する。また、機能部111は、記録部93を備えなくてもよい。この場合、検知部92は、検知結果を記録部93に通知する代わりに、たとえば、当該検知結果を車両1の外部におけるサーバ等へ通知する。
【0123】
<動作の流れ>
次に、車載ネットワークシステム301において、マスター側の機能部111A、スイッチ装置101、およびスレーブ側の機能部111Bが、伝搬遅延時間の更新、および時刻同期に関する異常の検知を行う際の動作について図面を用いて説明する。
【0124】
車載ネットワークシステム301における各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0125】
[伝搬遅延時間の更新および時刻同期に関する異常の検知を行う際の動作手順]
図10は、本開示の実施の形態に係る車載ネットワークシステムにおける複数の車載装置による、伝搬遅延時間の更新、および時刻同期に関する異常検知のシーケンスを示す図である。
【0126】
図10を参照して、まず、スイッチ装置101における処理部63は、時刻情報を要求するための要求メッセージを、中継部51および通信ポート54A経由で機能部111Aへ送信する(ステップS101)。
【0127】
次に、機能部111Aにおける処理部91Aは、スイッチ装置101から送信された要求メッセージに対する応答メッセージをスイッチ装置101へ送信する。このとき、機能部111Aは、応答メッセージに、要求メッセージの受信時刻t2を含めて送信する(ステップS102)。
【0128】
次に、機能部111Aにおける処理部91Aは、応答メッセージの送信後、当該応答メッセージの送信時刻t3を含めたフォローアップメッセージをスイッチ装置101へ送信する(ステップS103)。
【0129】
次に、機能部111Aにおける検知部92Aは、時刻同期に関する異常の検知を行う(ステップS104)。
【0130】
次に、検知部92Aは、応答メッセージの伝送遅延等の時刻同期に関する異常を検知した場合(ステップS104において「YES」)、検知結果を記録部93Aに通知する。そして、記録部93Aは、検知部92Aから通知された検知結果の示す異常に関する情報を記憶部83Aに保存する(ステップS105)。
【0131】
一方、検知部92Aは、時刻同期に関する異常が無かった場合(ステップS104において「NO」)、たとえば、記録部93Aへの検知結果の通知を行わない。
【0132】
次に、スイッチ装置101における制御部62は、機能部111Aから送信された応答メッセージおよびフォローアップメッセージを受信し、当該応答メッセージに含まれる時刻t2、および当該フォローアップメッセージに含まれる時刻t3を処理部63に通知する。また、制御部62は、要求メッセージの送信時刻t1および応答メッセージの受信時刻t4を処理部63に通知する(ステップS106)。
【0133】
処理部63は、制御部62から通知された時刻t1,t2,t3,t4に基づいて、機能部111Aおよびスイッチ装置101間のデータの伝搬遅延時間Td1を更新する(ステップS107)。
【0134】
次に、スイッチ装置101における検知部64は、時刻同期に関する異常の検知を行う(ステップS108)。
【0135】
次に、検知部64は、応答メッセージの伝送遅延等の時刻同期に関する異常を検知した場合(ステップS108において「YES」)、検知結果を記録部65に通知する。そして、記録部65は、検知部64から通知された検知結果の示す異常に関する情報を記憶部53に保存する(ステップS109)。
【0136】
一方、検知部64は、時刻同期に関する異常が無かった場合(ステップS108において「NO」)、たとえば、記録部65への検知結果の通知を行わない。
【0137】
次に、機能部111Bにおける処理部91Bは、時刻情報を要求するための要求メッセージを、通信部81Bおよび通信ポート84B経由でスイッチ装置101へ送信する(ステップS110)。
【0138】
次に、スイッチ装置101における処理部63は、機能部111Bから送信された要求メッセージを通信ポート54Bおよび制御部62経由で受信すると、当該要求メッセージに対する応答メッセージを、中継部51および通信ポート54B経由で機能部111Bへ送信する。このとき、処理部63は、応答メッセージに、要求メッセージの受信時刻t12を含めて送信する(ステップS111)。
【0139】
次に、処理部63は、応答メッセージの送信後、応答メッセージの送信時刻t13を含めたフォローアップメッセージを中継部51経由で機能部111Bへ送信する(ステップS112)。
【0140】
次に、機能部111Bにおける通信部81Bは、スイッチ装置101から送信された応答メッセージおよびフォローアップメッセージを通信ポート84B経由で受信し、当該応答メッセージに含まれる時刻t12、および当該フォローアップメッセージに含まれる時刻t13を時刻同期部82Bに通知する。また、通信部81は、要求メッセージの送信時刻t11および応答メッセージの受信時刻t14を時刻同期部82Bに通知する(ステップS113)。
【0141】
時刻同期部82Bにおける処理部91Bは、通信部81Bから通知された時刻t11,t12,t13,t14に基づいて、スイッチ装置101および機能部111B間のデータの伝搬遅延時間Td2を更新する(ステップS114)。
【0142】
次に、機能部111Bにおける検知部92Bは、時刻同期に関する異常の検知を行う(ステップS115)。
【0143】
次に、検知部92Bは、応答メッセージの伝送遅延等の時刻同期に関する異常を検知した場合(ステップS115において「YES」)、検知結果を記録部93Bに通知する。そして、記録部93Bは、検知部92Bから通知された検知結果の示す異常に関する情報を記憶部83Bに保存する(ステップS116)。
【0144】
一方、検知部92Bは、時刻同期に関する異常が無かった場合(ステップS115において「NO」)、たとえば、記録部93Bへの検知結果の通知を行わない。
【0145】
なお、ステップS101~S103の動作は、ステップS104およびステップS105の動作の後に行われてもよい。また、ステップS101~S103の動作と、ステップS104およびステップS105の動作とが並行して行われてもよい。
【0146】
また、ステップS106およびステップS107の動作は、ステップS108およびステップS109の動作の後に行われてもよい。また、ステップS106およびステップS107の動作と、ステップS108およびステップS109の動作とが並行して行われてもよい。
【0147】
また、ステップS110~S114の動作は、ステップS115およびステップS116の動作の後に行われてもよい。また、ステップS110~S114の動作と、ステップS115およびステップS116の動作とが並行して行われてもよい。
【0148】
[時刻の補正を行う際の動作手順]
次に、車載ネットワークシステム301において、スイッチ装置101およびスレーブ側の機能部111Bが、時刻の補正を行う際の動作について図面を用いて説明する。
【0149】
図11は、本開示の実施の形態に係る車載ネットワークシステムにおける複数の車載装置による、時刻の補正のシーケンスを示す図である。
【0150】
図11を参照して、まず、機能部111Aにおける処理部91Aは、スイッチ装置101へSyncメッセージを送信する(ステップS121)。
【0151】
次に、処理部91Aは、Syncメッセージの送信時刻tmを含めたフォローアップメッセージをスイッチ装置101へ送信する(ステップS122)。
【0152】
次に、スイッチ装置101における制御部62は、機能部111Aから送信されたSyncメッセージおよびフォローアップメッセージを通信ポート54A経由で受信し、当該フォローアップメッセージに含まれる時刻tm、およびSyncメッセージの受信時刻txを時刻同期部52に通知する(ステップS123)。
【0153】
次に、時刻同期部52における処理部63は、制御部62から通知された時刻tm,tx、および記憶部53に保存されている伝搬遅延時間Td1に基づいて、機能部111Aの時刻とスイッチ装置101の時刻との時刻差Tx1=tm-Td1-txを算出する。
【0154】
そして、処理部63は、算出した時刻差Tx1を用いて、自己のスイッチ装置101における時刻を補正する。これにより、機能部111Aとスイッチ装置101との時刻同期が確立する(ステップS124)。
【0155】
次に、スイッチ装置101における処理部63は、Syncメッセージを、通信ポート54B経由で機能部111Bへ送信する(ステップS125)。
【0156】
次に、処理部63は、Syncメッセージの送信時刻tyを含めたフォローアップメッセージを、通信ポート54B経由で機能部111Bへ送信する(ステップS126)。
【0157】
次に、機能部111Bにおける通信部81Bは、スイッチ装置101から送信されたSyncメッセージおよびフォローアップメッセージを通信ポート84B経由で受信し、当該フォローアップメッセージに含まれる時刻ty、およびSyncメッセージの受信時刻tsを時刻同期部82Bに通知する(ステップS127)。
【0158】
次に、時刻同期部82Bにおける処理部91Bは、通信部81Bから通知された時刻ty,ts、および記憶部83Bに保存されている伝搬遅延時間Td2に基づいて、スイッチ装置101の時刻と機能部111Bの時刻との時刻差Tx2=ty-Td2-tsを算出する。
【0159】
そして、処理部91Bは、算出した時刻差Tx2を用いて、自己の機能部111Bにおける時刻を補正する。これにより、機能部111Bとスイッチ装置101との時刻同期が確立し、その結果、機能部111Bと機能部111Aとの時刻同期が確立する(ステップS128)。
【0160】
なお、ステップS121~S124の動作は、ステップS125~S128の動作の後に行われてもよい。また、ステップS121~S124の動作と、ステップS125~S128の動作とが並行して行われてもよい。
【0161】
ところで、車載ネットワークにおける各車載装置は、たとえば、IEEE 802.1などの規格により規定されるプロトコルに従い、車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間を定期的に更新し、更新後の伝搬遅延時間を用いて車載装置間の時刻同期を行う。
【0162】
しかしながら、車載装置間におけるデータの伝搬遅延時間が急に変化するなど、時刻同期に関する異常が生じる可能性があり、このような場合、時刻同期の精度が低下する等の問題が生じるおそれがある。
【0163】
これに対して、本開示の実施の形態に係る車載装置であるスイッチ装置101では、処理部63は、他の車載装置である他装置と自己のスイッチ装置101との間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を当該他装置へ送信する。また、処理部63は、当該他装置から送信された時刻情報に基づいて伝搬遅延時間の更新を行い、更新した伝搬遅延時間に基づいて当該他装置との間における時刻同期を行う。検知部64は、時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する。
【0164】
また、本開示の実施の形態に係る車載装置であるスレーブ側の機能部111Bでは、処理部91Bは、他の車載装置である他装置と自己の機能部111Bとの間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を当該他装置へ送信する。また、処理部91Bは、当該他装置から送信された時刻情報に基づいて伝搬遅延時間の更新を行い、更新した伝搬遅延時間に基づいて当該他装置との間における時刻同期を行う。検知部92Bは、時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する。
【0165】
また、本開示の実施の形態に係るスイッチ装置101における時刻同期方法では、まず、処理部63は、他の車載装置である他装置と自己のスイッチ装置101との間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を当該他装置へ送信する。次に、処理部63は、当該他装置から送信された時刻情報を受信する。次に、処理部63は、受信した時刻情報に基づいて伝搬遅延時間を更新する。次に、処理部63は、更新した伝搬遅延時間に基づいて、当該他装置との間における時刻同期を行う。次に、検知部64は、時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する。
【0166】
また、本開示の実施の形態に係るスレーブ側の機能部111Bにおける時刻同期方法では、まず、処理部91Bは、他の車載装置である他装置と自己の機能部111Bとの間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を当該他装置へ送信する。次に、処理部91Bは、当該他装置から送信された時刻情報を受信する。次に、処理部91Bは、受信した時刻情報に基づいて伝搬遅延時間を更新する。次に、処理部91Bは、更新した伝搬遅延時間に基づいて、当該他装置との間における時刻同期を行う。次に、検知部92Bは、時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する。
【0167】
このように、時刻同期に関する異常を検知する構成により、異常の発生を把握することができ、当該異常の発生原因を解消するための処置を迅速に行うなどの対応をとることができる。
【0168】
したがって、本開示の実施の形態に係る車載装置および時刻同期方法では、車載装置間における時刻同期をより安定して行うことができる。
【0169】
また、本開示の実施の形態に係る車載装置であるマスター側の機能部111Aと、他の車載装置である他装置との間のデータの伝搬遅延時間に基づいて、機能部111Aと当該他装置との間における時刻同期が行われる。機能部111Aでは、処理部91Aは、伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求情報を当該他装置から受信し、当該他装置へ時刻情報を送信する。検知部92Aは、時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する。
【0170】
また、本開示の実施の形態に係るマスター側の機能部111Aにおける時刻同期方法では、まず、処理部91Aは、伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求情報を、他の車載装置である他装置から受信する。次に、処理部91Aは、時刻情報を当該他装置へ送信する。次に、検知部92Aは、時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する。
【0171】
このように、時刻同期に関する異常を検知する構成により、異常の発生を把握することができ、当該異常の発生原因を解消するための処置を迅速に行うなどの対応をとることができる。
【0172】
したがって、本開示の実施の形態に係る車載装置および時刻同期方法では、車載装置間における時刻同期をより安定して行うことができる。
【0173】
また、時刻情報の送信元である機能部111A、すなわち車載ネットワークシステム301における基準時刻を保持する車載装置において時刻同期に関する異常を検知する構成により、時刻同期に関する異常をより確実に検知することができる。
【0174】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0175】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
車載装置であって、
他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報、を要求するための要求情報を前記他装置へ送信し、前記他装置から送信された前記時刻情報に基づいて前記伝搬遅延時間の更新を行い、更新した前記伝搬遅延時間に基づいて前記他装置との間における時刻同期を行う処理部と、
前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部とを備え、
前記検知部は、前記時刻同期に関する異常に加えて、さらに、前記時刻同期に関する異常以外の異常を検知可能であり、
前記車載装置は、さらに、
前記検知部により検知された異常に関する情報を記憶部に保存する記録部を備え、
前記記録部は、異常に関する情報として、異常の発生時刻、異常の発生箇所、および異常の原因のうちの少なくともいずれか1つを前記記憶部に保存する、車載装置。
【0176】
[付記2]
車載装置であって、
他の車載装置である他装置と自己の前記車載装置との間のデータの伝搬遅延時間に基づいて、前記他装置と前記自己の車載装置との間における時刻同期が行われ、
前記伝搬遅延時間の更新に用いられる時刻情報を要求するための要求情報を前記他装置から受信し、前記他装置へ前記時刻情報を送信する処理部と、
前記時刻同期に関する異常を検知し、検知した異常に関する情報を取得する検知部とを備え、
前記車載装置は、車載ネットワークにおける基準時刻を保持し、
前記検知部は、前記時刻同期に関する異常に加えて、さらに、前記時刻同期に関する異常以外の異常を検知可能であり、
前記車載装置は、さらに、
前記検知部により検知された異常に関する情報を記憶部に保存する記録部を備え、
前記記録部は、異常に関する情報として、異常の発生時刻、異常の発生箇所、および異常の原因のうちの少なくともいずれか1つを前記記憶部に保存する、車載装置。
【符号の説明】
【0177】
1 車両
10 イーサネットケーブル
51 中継部
52,82A,82B 時刻同期部
53,83,83A,83B 記憶部
54,54A,54B,84A,84B 通信ポート
61 スイッチ部
62 制御部
63,91A,91B 処理部
64,92,92A,92B 検知部
65,93,93A,93B 記録部
81A,81B 通信部
101 スイッチ装置
111,111A,111B 機能部
301 車載ネットワークシステム