(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】光ファイバー物品、その製造および使用
(51)【国際特許分類】
C03C 25/40 20060101AFI20241223BHJP
C03C 25/106 20180101ALI20241223BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
C03C25/40
C03C25/106
G02B6/44 301A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020163321
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】10 2019 126 259.3
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー マンゴルト
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴァインゲアトナー
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー フラッツァー
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-7875(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087600(WO,A1)
【文献】特開2010-224174(JP,A)
【文献】米国特許第6577802(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C25/00-25/70
G02B6/00-6/54
C03B37/00-37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の光ファイバーと、前記光ファイバーの表面上に配置された機能層とを含む光ファイバー物品であって、
ここで、前記機能層が、以下の構造式:
【化1】
[式中、Zは、1~18個の炭素原子を有する分岐または非分岐のアルキル基またはアリール基であり、
R1、R2およびR3は、水素、酸素、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシアルキルおよびヒドロキシルから互いに独立して選択され、基R1、R2またはR3のうちの1個、2個または3個は、共有結合を介して直接的または間接的に前記光ファイバーの表面と結合しており、
かつR4は、-NH
2、-NHR‘、-NR‘R‘‘、グリシジルオキシおよび-SHから選択され、ここでR‘およびR‘‘は、アルキル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキルおよび-(CH
2)
mNH
2から互いに独立して選択され、mは1~6である]
を有する少なくとも1種の官能性シランを含み、前記機能層が、1013hPaで100℃超の沸点を有する液体成分の割合が35重量%未満である乾燥した機能層であ
り、前記機能層が、前記ファイバーの表面に共有結合されたアルキルシランおよび/またはポリエチレングリコールシランを含む、光ファイバー物品。
【請求項2】
前記機能層中の光重合したポリマーである、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルポリマー、ポリスチレンおよび/またはそれらの誘導体の含有量が、前記機能層の質量を基準として1重量%未満である、請求項1記載の光ファイバー物品。
【請求項3】
500ppm(m/m)未満のハロゲン化物を含む、請求項1または2記載の光ファイバー物品。
【請求項4】
前記機能層が少なくとも1種の脂肪酸をさらに含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の光ファイバー物品。
【請求項5】
前記少なくとも1本の光ファイバーが、DIN 58141-6:2011による破断ループ試験で、10mm未満の曲げ半径を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の光ファイバー物品。
【請求項6】
少なくとも250Nの押出力を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の光ファイバー物品。
【請求項7】
ISO 10993-1:2018、USPクラスVIおよび/またはISO 10993-5:2009に従って生体適合性である、請求項1から6までのいずれか1項記載の光ファイバー物品。
【請求項8】
R4が-NHR‘であり、ここで、R‘が-(CH
2)
mNH
2であり、m=2であり、かつZが、1~10個の炭素原子を有する非分岐アルキル基である、請求項1から
7までのいずれか1項記載の光ファイバー物品。
【請求項9】
前記機能層が、ポリアルキレンオキシドを含む、請求項1から
8までのいずれか1項記載の光ファイバー物品。
【請求項10】
前記光ファイバーがファイバーコアおよびクラッドを有し、前記機能層が前記クラッド表面上に配置されている、請求項1から
9までのいずれか1項記載の光ファイバー物品。
【請求項11】
多成分ガラスからのファイバーコアおよび/またはクラッドを有する、請求項1から
10までのいずれか1項記載の光ファイバー物品。
【請求項12】
前記官能性シランが、少なくとも部分的に1種以上の接着剤と反応生成物を形成している、請求項1から
11までのいずれか1項記載の光ファイバー物品。
【請求項13】
以下のステップ:
a. 少なくとも1本の光ファイバーを用意するステップ、
b. 前記光ファイバーの少なくとも一部を集束剤でコーティングするステップ、
c. 前記集束剤を乾燥させるステップであって、それにより機能層が形成されるステップ
を含み、
前記機能層が、1013hPaで100℃超の沸点を有する液体成分の割合が35重量%未満である乾燥した機能層であ
り、前記機能層が、前記ファイバーの表面に共有結合されたアルキルシランおよび/またはポリエチレングリコールシランを含む、請求項1から
12までのいずれか1項記載の光ファイバー物品の製造方法。
【請求項14】
前記乾燥した集束剤を液体成分で処理して湿潤集束剤を得るステップを含み、前記液体成分が1013hPaで100℃超の沸点を有する、請求項
13記載の方法。
【請求項15】
前記液体成分が、シリコーン油、ポリエチレングリコール、アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アセタートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
14記載の方法。
【請求項16】
光ファイバー物品の製造方法であって、前記光ファイバー物品が、光ファイバーと、前記光ファイバーの表面上に配置された機能層とを含み、
ここで、前記機能層が、以下の構造式:
【化2】
[式中、Zは、1~18個の炭素原子を有する分岐または非分岐のアルキル基またはアリール基であり、
R1、R2およびR3は、水素、酸素、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシアルキルおよびヒドロキシルから互いに独立して選択され、基R1、R2またはR3のうちの1個、2個または3個は、共有結合を介して直接的または間接的に前記光ファイバーの表面と結合しており、
かつR4は、-NH
2、-NHR‘、-NR‘R‘‘、グリシジルオキシおよび-SHから選択され、ここでR‘およびR‘‘は、アルキル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキルおよび-(CH
2)
mNH
2から互いに独立して選択され、mは1~6である]
を有する少なくとも1種の官能性シランを含み、
ここで、前記方法が、以下のステップ:
a. 少なくとも1本の光ファイバーを用意するステップ、
b. 前記光ファイバーの少なくとも一部を集束剤でコーティングするステップ、
c. 前記集束剤を乾燥させるステップおよび
d. 前記乾燥した集束剤を液体成分で処理して湿潤集束剤を得るステップ
を含み、前記液体成分が1013hPaで100℃超の沸点を有する、方法。
【請求項17】
前記液体成分が、シリコーン油、ポリエチレングリコール、アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アセタートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバー物品、および光ファイバー物品の製造方法に関する。本発明はまた、ライトガイドおよび/またはイメージガイドとしてのファイバー束における、例えば内視鏡における光ファイバー物品の使用に関する。
【0002】
光ファイバー物品、例えばガラスファイバー物品などは、ライトガイドおよび/またはイメージガイドとして、データを伝送することおよび/または光を伝達することができる。光ファイバー物品は、医療分野において、例えば治療法および/または診断法に頻繁に使用される。ライトガイドおよび/またはイメージガイドは、例えば、測定機器、顕微鏡、分光器、検査カメラおよび内視鏡内で光を柔軟に伝達するために使用される。内視鏡などの医療機器は、非常に頻繁にオートクレーブ処理および/または滅菌される。蒸気滅菌において、これらの機材は、高圧、高温、および同時に高湿度に曝される。したがって、例えば内視鏡などの医療機器で使用するためのライトガイドおよび/またはイメージガイドは、これを長期間使用可能なままとするためには、良好なオートクレーブ性または滅菌性と高い耐食性とを有する必要がある。したがって、医療機器の長寿命性を向上させ、かつ腐食の発生を低減させる光ファイバー物品が必要とされる。さらに、高い温度耐性および耐湿性を有する光ファイバー物品が望ましいであろう。同時に、光ファイバー物品は、特に内視鏡での使用のために、高い曲げ性および良好な機械的安定性を有するべきである。
【0003】
多くの場合、光ファイバーは、保護層としての集束剤で覆われている。通常、光ファイバーは、UV照射で硬化する重合性コーティング組成物を備えている。そのようなコーティング組成物は、アクリレート、メタクリレートおよび他の重合性成分を含有していることが多い。しかしながら、そのような重合性コーティング組成物は健康面で懸念がある。さらに、そのようなコーティングは光開始剤を含有しており、ヒトの健康に対するその影響がますます問題視されている。特にヒトの臓器と接触する医療機器におけるそのような光重合性物質の使用が問題である。したがって、健康面で危険な成分なしで製造可能な光ファイバー物品が望ましいであろう。特に、これらの機材は、毒性が特に可能な限り少ないか、まったくあってはならず、患者にとって危険要因となるべきではない。したがって、生体適合性が改善され、かつ毒性が低減された光ファイバーを提供することが望ましいであろう。
【0004】
米国特許出願公開第2003/0045600号明細書には、例えばポリアルコキシシランおよびポリハロシランなどのシランを含み得る集束剤が記載されている。米国特許出願公開第2003/0045600号明細書の集束剤は、塩素またはフッ素などのハロゲン化物も含有し得る。さらに、米国特許出願公開第2003/0045600号明細書には、主成分としてポリエーテルウレタンアクリレートを含有し得る集束剤が記載されている。
【0005】
国際公開第01/49625号には、例えばカプロラクトン(メタ)アクリレートまたは4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの光重合性化合物を含有し得るUV硬化性集束剤を有する光ファイバーが記載されている。さらに、国際公開第01/49625号の集束剤は、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンまたは2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンなどの光開始剤を含有し得る。
【0006】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することである。特に、例えば内視鏡などの医療機器および診断機器で使用するための改良された光ファイバー物品を提供することが課題である。光ファイバー物品は、特に、蒸気滅菌においても耐食性が高い点、耐用期間が長い点、曲げ強度が良好である点、ならびに生体適合性が特に高い点、および毒性が低減されている点で優れているべきである。
【0007】
これらの課題は、特許請求の範囲の対象により解決される。これらの課題は、特に、少なくとも1本の光ファイバーと、その表面上に配置された機能層とを含む光ファイバー物品により解決される。光ファイバーは、ファイバーコアと、ファイバーコア上に配置されたクラッドとを有し得る。
【0008】
【0009】
[式中、Zは、1~18個の炭素原子を有する分岐または非分岐のアルキル基またはアリール基であり、
R1、R2およびR3は、水素、酸素、アルキル、ヒドロキシアルキルおよびヒドロキシルから互いに独立して選択され、基R1、R2またはR3のうちの1個、2個または3個は、共有結合を介して直接的または間接的に表面と結合しており、
かつR4は、-NH2、-NHR‘、-NR‘R‘‘、グリシジルオキシおよび-SHから選択され、ここでR‘およびR‘‘は、アルキル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキルおよび-(CH2)mNH2から互いに独立して選択され、mは1~6である]
を有する少なくとも1種の官能性シランを含み得る。
【0010】
一態様において、本発明は、少なくとも1本の光ファイバーと、光ファイバーの表面上に配置された機能層とを含む光ファイバー物品であって、機能層がIRスペクトルにおいて以下の吸収:
a. 1500cm-1~1900cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する800cm-1~1200cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が少なくとも2.0であること、
b. 1500cm-1~1900cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する2700cm-1~3000cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が少なくとも2.0であること、および
c. 2700cm-1~3000cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する800cm-1~1200cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が少なくとも1.1かつ最大2.0であること
を特徴とする光ファイバー物品に関する。
【0011】
そのようなIRスペクトルを有する光ファイバー物品は、本明細書に記載の手段が実施されると得られる。特に好ましい実施形態において、機能層は、実質的に
図2または
図3に従ったIRスペクトルを有する。
【0012】
「光ファイバー」とは、光を短距離または長距離にわたり伝達することが可能なファイバーを指す。そのような光ファイバーは、例えばガラスファイバーであり得る。光ファイバーは、コア層(「ファイバーコア」とも)と、クラッド層(略して「クラッド」とも)と、クラッド層の表面上に配置された機能層とを含む。
【0013】
「光ファイバー束」とは、複数本の光ファイバーを指す。例えば、光ファイバー束は、10本以上の光ファイバーからなり得る。
【0014】
「光ファイバー物品」とは、少なくとも1本の光ファイバーを含む物品を指す。光ファイバー物品はまた、多数の光ファイバーを含んでいてもよい。光ファイバーおよび光ファイバー物品は、例えば、ライトガイドおよび/またはイメージガイドにおいて使用され得る。そのようなライトガイドおよび/またはイメージガイドでの使用のために、例えば、複数の光ファイバー物品が互いに接着され、まとめてスリーブ内に埋め込まれてもよい。
【0015】
「機能層」とは、少なくとも部分的に、特に実質的に完全に光ファイバーを覆う、クラッド層の表面上に配置された層を指す。機能層は、特に、光ファイバーを例えば破断から保護する役割を果たす。機能層は、例えば集束剤から形成され得る。
【0016】
「集束剤」とは、機能層を光ファイバー上に施与する役割を果たす組成物を指す。この集束剤は、ファイバーの製造後に、例えば、浸漬、噴霧またはロール・ツー・ロール法により施与され得る。
【0017】
「官能性シラン」とは、化学反応を起こすことが可能な少なくとも1個の官能基を含むシラン化合物を指す。そのような官能基は、例えばアミノ基であり得る。官能性シランは、例えば付着促進剤としての役割を果たし、クラッド層の表面と接着剤との間の架橋として機能することができる。
【0018】
「クラッド層」とは、機能層の下に配置され、かつコア層を囲む層を指す。クラッド層は、例えばガラスまたはポリマー、例えばポリイミドなどを含有し得る。クラッド層は、特に光ファイバーの光伝達機能に寄与する。
【0019】
「コア層」とは、光ファイバーの内層を指し、クラッド層により囲まれている。コア層は、例えばガラスまたはポリマー、例えばポリカーボナートを含有し得る。コア層は、クラッド層とともに、特に光ファイバーの光伝達機能に寄与する。
【0020】
以下の詳細な説明には、本発明の成功に寄与し得る手段および特徴が挙げられている。ここでは、すべての手段を1つの光ファイバー物品において実施する必要はない。むしろ、意図される改善は、以下の手段のうちのいくつかだけが適用されれば、すでに達成可能である。
【0021】
一実施形態において、機能層は官能性シランを有する。官能性シランは、アクリレートまたは他の反応性化合物との反応で反応していない遊離官能基、例えばアミノ基などを有する。官能性シランは、クラッド層の表面への機能層の良好な付着を促進する。光ファイバーへの機能層の良好な付着は、特にファイバー物品の曲げ荷重が繰り返されかつ上昇する場合に、機能層の保護作用、例えばマイクロクラックおよび破断に対する保護に役立つ。さらに、官能性シランは、光ファイバーとは反対の側に良好な付着促進機能を機能層に対してもたらす。それにより、機能層は、例えば接着剤などのさらなる材料と良好に付着することが可能である。官能性シランにより、光ファイバー物品の良好な接着性が達成される。例えば、複数の光ファイバー物品がスリーブ内に埋め込まれて接着される場合、光ファイバー物品は、互いにも、またスリーブにおいても、より良好な付着が達成される。そのようなスリーブは、例えばステンレス鋼またはプラスチックを含み得る。
【0022】
好ましくは、Zのアルキル基は、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子または少なくとも4個の炭素原子を有する。好ましくは、Zのアルキル基は、最大25個の炭素原子、さらに好ましくは最大20個の炭素原子、さらに好ましくは最大15個の炭素原子、さらに好ましくは少なくとも最大12個の炭素原子、さらに好ましくは最大10個の炭素原子、さらに好ましくは最大9個の炭素原子、さらに好ましくは最大8個の炭素原子、さらに好ましくは最大7個の炭素原子を有する。実施形態において、Zのアルキル基は、1~25個の炭素原子、さらに好ましくは1~20個の炭素原子、さらに好ましくは2~15個の炭素原子または3~12個の炭素原子を有する。特に好ましい実施形態において、Zのアルキル基は、3~8個の炭素原子を有する。炭素原子の数は、光ファイバーの滑り特性に影響を与える。それにより、光ファイバーまたは光ファイバー物品を、破断なく、より頻繁かつより強く曲げることが可能になる。同様に、滑り特性が改善されることにより、光ファイバーが互いに良好に滑り、かつ同時に互いに接着しないようになる。好ましくは、Zのアルキル基は非分岐アルキル基である。
【0023】
基R1、R2およびR3は、水素、酸素、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシアルキルおよびヒドロキシルから互いに独立して選択され得て、基R1、R2またはR3のうちの1個、2個または3個は、共有結合を介して直接的または間接的に光ファイバーの表面と結合している。すなわち、例えば基R1、R2またはR3のうちの1個は、アルキル基(例えばメチル基)またはアルキルオキシ基(例えばメトキシまたはエトキシ基)であり得て、さらなる2個の基は、酸素であり、かつシロキサン基を介してファイバーの表面と結合している(
図1を参照)。R1、R2および/またはR3のアルキル成分は、炭素原子1~6個、特に1~3個の鎖長を有し得る。特に、官能性シランの基R1、R2またはR3のうちの1個、2個または3個は、共有結合を介して直接的または間接的にファイバーの表面と結合している。好ましくは、基R1、R2およびR3のうちの1個、2個または3個は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは、酸素、セレンおよび硫黄から選択され、R‘‘‘は、アルキル基、水素およびファイバーの表面から選択される。さらに好ましくは、基R1、R2およびR3のうちの1個、2個または3個は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘は、アルキル基、水素およびファイバーの表面から選択される。さらに好ましくは、基R1、R2およびR3のうちの1個、2個または3個は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘はファイバーの表面である。さらに好ましくは、基R1、R2およびR3のうちの2個または3個は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘はファイバーの表面である。アルキル基は、炭素原子1~6個、特に1~3個の範囲の炭素鎖長を有し得る。例えば、官能性シランは、クラッド層の表面とともに、1つまたは2つまたは3つのシロキサン結合を形成する。それにより、本明細書に記載の官能性シランは、光ファイバーへの機能層の付着に大きく寄与する。
【0024】
R4は、-NH2、-NHR‘、-NR‘R‘‘、グリシジルオキシおよび-SHから選択され得て、ここでR‘およびR‘‘は、アルキル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキルおよび-(CH2)mNH2から互いに独立して選択され、mは1~6、特に1~3である。好ましい実施形態において、R4は、-NH2、-NHR‘、-NR‘R‘‘から選択され、ここでR‘およびR‘‘は、アルキル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキルおよび-(CH2)mNH2から互いに独立して選択され、mは1~6であり、さらに好ましくは、mは1~5、さらに好ましくは1~4、さらに好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2である。特に好ましくは、R4は、-NH2および-NHR‘から選択され、ここでR‘は、アルキル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキルおよび-(CH2)mNH2から選択され、mは1~6であり、さらに好ましくは、mは1~5、さらに好ましくは1~4、さらに好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2である。特に好ましくは、R4は、-NH2および-NHR‘から選択され、ここで、R‘はアルキルである。特に好ましい実施形態において、R4は-NH2である。特に好ましい実施形態において、R4は-(CH2)2NH2である。そのような基R4を有する官能性シランは、例えば、光ファイバー物品が接着剤を用いてスリーブ内に埋め込まれる場合、良好な付着促進および接着を可能にする。
【0025】
特に好ましい実施形態において、官能性シランは、以下の構造式:
【化2】
【0026】
[式中、R1、R2およびR3は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘はファイバーの表面であり、式中、Zは、3個の炭素原子を有する非分岐アルキル基であり、かつ式中、R4は、-NH2および-NHR‘から選択され、ここでR‘‘は-(CH2)mNH2であり、m=2である]
を有する。
【0027】
特に好ましい実施形態において、官能性シランは、以下の構造式:
【化3】
【0028】
[式中、R1、R2およびR3は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘はファイバーの表面であり、式中、R4は-NH2であり、かつ式中、Zは、1~10個の炭素原子、さらに好ましくは2~9個の炭素原子、さらに好ましくは3~8個の炭素原子を有する非分岐アルキル基である]
を有する。
【0029】
別の特に好ましい実施形態において、官能性シランは、以下の構造式:
【化4】
【0030】
[式中、R1、R2およびR3は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘はファイバーの表面であり、式中、R1、R2およびR3は、共有結合を介して直接的にファイバーの表面と結合されており、式中、R4は-NHR‘であり、ここでR‘は-(CH2)mNH2であり、m=2であり、かつ式中、Zは、1~10個の炭素原子、さらに好ましくは2~9個の炭素原子、さらに好ましくは3~8個の炭素原子を有する非分岐アルキル基である]
を有する。
【0031】
好ましい実施形態において、Z=3であり、R4は、NH2またはNHR‘であり、R‘=-(CH2)mNH2であり、m=2である。本発明により好ましく使用される官能性シランの例は、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、3-アミノプロピル-ジエトキシ-メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピル-トリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-グリシドキシプロピルジエトキシメチルシランおよびそれらの組み合わせ、またはファイバーの表面とのそれらの反応生成物、特に、1つ、2つまたは3つの共有結合を介してファイバーの表面と結合したそれらの誘導体である。
【0032】
特定の実施形態において、機能層は複数種の官能性シランを含む。特定の実施形態において、機能層は、少なくとも2種の官能性シラン、少なくとも3種の官能性シランまたは少なくとも4種の官能性シランを含む。
【0033】
好ましくは、機能層は、官能性シランを、少なくとも0.1重量%、さらに好ましくは少なくとも0.5重量%、さらに好ましくは少なくとも0.9重量%、さらに好ましくは少なくとも1.2重量%、さらに好ましくは少なくとも1.5重量%、さらに好ましくは少なくとも1.8重量%、さらに好ましくは少なくとも2重量%の割合で含む。好ましくは、機能性層は、官能性シランを、最大70重量%、さらに好ましくは最大60重量%、さらに好ましくは最大50重量%、さらに好ましくは最大40重量%、さらに好ましくは最大30重量%、さらに好ましくは最大25重量%、さらに好ましくは最大15重量%の割合で含む。好ましい実施形態において、機能層は、官能性シランを、0.1~70重量%、さらに好ましくは0.5~50重量%、さらに好ましくは0.9~40重量%、さらに好ましくは1.2~30重量%、さらに好ましくは1.5~15重量%の割合で含む。特に好ましい実施形態において、機能層は、官能性シランを、1~40重量%または2~15重量%の割合で含む。官能性シランの割合が低過ぎると、機能層はクラッド層の表面に付着しにくくなり、それにより、光ファイバーはマイクロクラックを形成し易くなり、破断し易くなる。官能性シランの割合が高過ぎると、光ファイバーは互いに滑りにくくなり、互いに付着する傾向を示す。それにより、曲げ荷重が繰り返されかつ上昇すると、マイクロクラックおよび破断の形成が増加する。機能層を製造するために使用される集束剤は、アクリレートまたはメタクリレートなどの重合性溶媒を実質的に含有しないことが好ましいため、機能層中の官能性シランの含有量は、従来技術の機能層と比較して比較的高いことに留意されたい。集束剤に使用される溶媒は、乾燥後に機能層中に残留しない。
【0034】
実施形態において、機能層は、官能性シランの代わりにまたはそれに加えて、少なくとも1種のアルキルシランを含む。好ましくは、機能層は、ファイバーの表面に共有結合されたアルキルシランを含む。好ましくは、アルキルシランは、以下の構造式:
【化5】
【0035】
[式中、R5、R6およびR7は、水素、酸素、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシアルキルおよびヒドロキシルから互いに独立して選択され、基R5、R6またはR7のうちの1個、2個または3個は、共有結合を介して直接的または間接的にファイバーの表面と結合しており、
R8は、1~25個の炭素原子を有する分岐および非分岐アルキル基から選択される]
を有する。アルキルシランは、光ファイバーの耐加水分解性を改善し、表面エネルギーを低下させる。
【0036】
好ましくは、アルキルシランのR8のアルキル基は、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも5個または少なくとも8個の炭素原子を有する。好ましくは、R8のアルキル基は、最大25個の炭素原子、さらに好ましくは最大20個の炭素原子、さらに好ましくは最大15個の炭素原子、さらに好ましくは少なくとも最大12個の炭素原子、さらに好ましくは最大10個の炭素原子を有する。実施形態において、R8のアルキル基は、1~25個の炭素原子、さらに好ましくは1~20個の炭素原子、さらに好ましくは1~15個の炭素原子、さらに好ましくは3~12個の炭素原子を有する。特に好ましい実施形態において、R8のアルキル基は、5~10個の炭素原子または8~15個の炭素原子を有する。本発明によるアルキルシランの鎖長は、例えば光ファイバー束内部の光ファイバー同士の滑りを改善し、光ファイバーが互いに接着することを防止する。それにより、光ファイバー束中の光ファイバーの取扱性および再分離性が改善される。好ましくは、アルキルシランのR8のアルキル基は非分岐アルキル基である。好ましくは、基R5、R6およびR7のうちの1個、2個または3個は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは、酸素、セレンおよび硫黄から選択され、R‘‘‘は、アルキル基、水素およびファイバーの表面から選択される。さらに好ましくは、基R5、R6およびR7のうちの1個、2個または3個は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘は、アルキル基、水素およびファイバーの表面から選択される。さらに好ましくは、基R5、R6およびR7のうちの1個、2個または3個は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘はファイバーの表面である。さらに好ましくは、基R5、R6およびR7のうちの2個または3個は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘はファイバーの表面である。例えば、アルキルシランは、ファイバーの表面のSi-OH基とともに、1つまたは2つまたは3つのシロキサン結合を形成する。本明細書に記載のアルキルシランは、ファイバーの表面への機能層の付着性を改善する。さらに、本明細書に記載のアルキルシランは、例えば光ファイバー束中の光ファイバーの平滑性を改善し、光ファイバーの相互摩擦を低減する。
【0037】
好ましくは、アルキルシランは、以下の構造式:
【化6】
【0038】
[式中、R5、R6およびR7は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘はファイバーの表面であり、式中、R5、R6およびR7は、共有結合を介して直接的にファイバーの表面と結合しており、かつ式中、R8は、1~15個の炭素原子、さらに好ましくは1~12個の炭素原子、さらに好ましくは1~10個の炭素原子、さらに好ましくは1~9個の炭素原子、さらに好ましくは3~8個または正確に8個の炭素原子を有する非分岐アルキル基である]
を有する。
【0039】
本発明により使用されるアルキルシランの例は、トリメトキシプロピルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリエトキシデシルシラン、トリメトキシドデシルシラン、トリエトキシドデシルシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、トリエトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、またはファイバーの表面とのそれらの反応生成物、特に、1つ、2つまたは3つの共有結合を介してファイバーの表面と結合したそれらの誘導体である。
【0040】
特定の実施形態において、機能層は複数種のアルキルシランを含む。特定の実施形態において、機能層は、少なくとも2種のアルキルシラン、少なくとも3種のアルキルシランまたは少なくとも4種のアルキルシランを含む。
【0041】
好ましくは、機能層は、アルキルシランを、少なくとも0.8重量%、さらに好ましくは少なくとも1重量%、さらに好ましくは少なくとも2重量%、さらに好ましくは少なくとも3重量%、さらに好ましくは少なくとも4重量%、さらに好ましくは少なくとも5重量%、さらに好ましくは少なくとも6重量%の割合で含む。好ましくは、機能層は、少なくとも1種のアルキルシランを、最大65重量%、さらに好ましくは最大60重量%、さらに好ましくは最大55重量%、さらに好ましくは最大50重量%、さらに好ましくは最大45重量%、さらに好ましくは最大40重量%、さらに好ましくは最大35重量%の割合で含む。好ましい実施形態において、機能層は、アルキルシランを、0.8~65重量%、さらに好ましくは1~60重量%、さらに好ましくは29~55重量%、さらに好ましくは3~50重量%、さらに好ましくは4~45重量%の割合で含む。特に好ましい実施形態において、機能層は、アルキルシランを6~35重量%の割合で含む。アルキルシランの割合が低過ぎると、光ファイバーは、平滑性の低下および耐薬品性の低下を示し、例えば光ファイバー束中の光ファイバー間の摩擦が増加する。それにより、マイクロクラックおよび破断がより速く形成される。さらに、アルキルシランの割合が低過ぎると、例えば酸に対する光ファイバーの化学的安定性が低下する。アルキルシランの割合が高過ぎると、例えば光ファイバー束中において、光ファイバー同士のまとまりが低減する。
【0042】
実施形態において、機能層は、官能性シランおよび/またはアルキルシランの代わりにまたはそれに加えて、ポリエチレングリコール(PEG)シランを含む。好ましくは、機能層は、ファイバーの表面に共有結合されたPEGシランを含む。好ましくは、PEGシランは、以下の構造式:
【化7】
【0043】
[式中、R9、R10およびR11は、水素、酸素、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシアルキルおよびヒドロキシルから互いに独立して選択され、基R9、R10およびR11のうちの1個、2個または3個は、共有結合を介して直接的または間接的にファイバーの表面と結合しており、かつ
R12は、エチレンオキシド単位が5~900個の鎖長を有するポリエチレングリコール基を有するか、またはそれからなるか、またはその誘導体である]
を有する。PEGシランは、光ファイバーの加水分解安定性を改善する。
【0044】
好ましくは、R12のポリエチレングリコール基またはその誘導体は、エチレンオキシド単位が、少なくとも3個、さらに好ましくは少なくとも4個、さらに好ましくは少なくとも5個、さらに好ましくは少なくとも6個、さらに好ましくは少なくとも7個、さらに好ましくは少なくとも8個の鎖長を有する。好ましくは、ポリエチレングリコール基またはその誘導体は、エチレンオキシド単位が、最大30個、さらに好ましくは最大25個、さらに好ましくは最大20個、さらに好ましくは最大15個、さらに好ましくは最大12個の鎖長を有する。実施形態において、ポリエチレングリコール基は、エチレンオキシド単位が、3~30個、さらに好ましくは4~25個、さらに好ましくは5~20個の鎖長を有する。特に好ましい実施形態において、ポリエチレングリコール基は、エチレンオキシド単位が8~12個の鎖長を有する。本発明によるポリエチレングリコール基またはその誘導体の鎖長は、例えば光ファイバー束中の光ファイバーのまとまりを、これらが互いに接着されることなく改善する。それにより、例えば光ファイバー束中の光ファイバーの平滑性が改善される。R12のポリエチレングリコール基は、その自由端に末端基を有し得る。末端基は、ヒドロキシル基またはアルキルオキシ基、特にメトキシ基であり得る。
【0045】
好ましくは、基R9、R10およびR11のうちの1個、2個または3個は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは、酸素、セレンおよび硫黄から選択され、R‘‘‘は、アルキル基、水素およびファイバーの表面から選択される。さらに好ましくは、基R9、R10およびR11のうちの1個、2個または3個は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘は、アルキル基、水素およびファイバーの表面から選択される。さらに好ましくは、基R9、R10およびR11のうちの1個、2個または3個は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘はファイバーの表面である。さらに好ましくは、基R9、R10およびR11のうちの2個または3個は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘はファイバーの表面である。例えば、PEGシランは、ファイバーの表面のケイ素基とともに、1つまたは2つまたは3つのシロキサン結合を形成する。本明細書に記載のPEGシランは、ファイバーの表面への機能層の付着性を改善する。さらに、本明細書に記載のPEGシランは、例えば光ファイバー束中の光ファイバーの平滑性を改善し、光ファイバーの相互摩擦を低減する。
【0046】
特に好ましい実施形態において、PEGシランは、以下の構造式:
【化8】
【0047】
[式中、R9、R10およびR11は(-X-R‘‘‘)基であり、ここで、Xは酸素であり、R‘‘‘はファイバーの表面であり、式中、R9、R10およびR11は、共有結合を介して直接的にファイバーの表面と結合しており、かつ式中、R12は、エチレンオキシド単位が、3~30個、さらに好ましくは4~25個、さらに好ましくは5~20個、さらに好ましくは8~12個の鎖長を有するポリエチレングリコール基を有するか、それからなるか、またはその誘導体である]
を有する。
【0048】
本発明により使用されるPEGシランの例は、2-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)9-12プロピル]トリメトキシシラン、2-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)9-12プロピル]トリエトキシシラン、2-[エトキシ(ポリエチレンオキシ)9-12プロピル]トリエトキシシラン、[ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシラン、およびファイバーの表面とのそれらの反応生成物、特に、1つ、2つまたは3つの共有結合を介してファイバーの表面と結合したそれらの誘導体である。
【0049】
特定の実施形態において、機能層は複数種のPEGシランを含む。特定の実施形態において、機能層は、少なくとも2種のPEGシラン、少なくとも3種のPEGシランまたは少なくとも4種のPEGシランを含む。
【0050】
好ましくは、機能層は、少なくとも1種のPEGシランを、少なくとも1重量%、さらに好ましくは少なくとも5重量%、さらに好ましくは少なくとも8重量%、さらに好ましくは少なくとも11重量%、さらに好ましくは少なくとも13重量%、さらに好ましくは少なくとも15重量%、さらに好ましくは少なくとも21重量%の割合で含む。好ましくは、機能層は、少なくとも1種のPEGシランを、最大90重量%、さらに好ましくは最大85重量%、さらに好ましくは最大80重量%、さらに好ましくは最大75重量%、さらに好ましくは最大70重量%、さらに好ましくは最大65重量%、さらに好ましくは最大62重量%の割合で含む。好ましい実施形態において、機能層は、PEGシランを、1~90重量%、さらに好ましくは5~85重量%、さらに好ましくは8~80重量%、さらに好ましくは11~75重量%、さらに好ましくは13~70重量%の割合で含む。特に好ましい実施形態において、機能層は、PEGシランを21~65重量%の割合で含む。PEGシランの割合が低過ぎると、例えば光ファイバー束中において、光ファイバーのまとまりが低減する。PEGシランの割合が高過ぎると、例えば光ファイバー束中において、光ファイバー同士のまとまりが低減する。さらに、PEGシランの割合が低過ぎると、光ファイバーの化学的安定性が低下する。PEGシランの割合が高過ぎると、光ファイバーは互いに付着し過ぎる傾向を示し、平滑性が低下する。それにより、マイクロクラックおよび破断がより速く形成される。
【0051】
特定の実施形態において、アルキルシランおよび/またはPEGシランの質量分率は、官能性シランの質量分率を上回る。特定の実施形態において、アルキルシランおよび/またはPEGシランの質量分率は、官能性シランの質量分率を、少なくとも1.05倍、さらに好ましくは1.1倍、さらに好ましくは1.2倍、さらに好ましくは1.3倍、さらに好ましくは1.4倍、さらに好ましくは1.5倍、さらに好ましくは1.6倍上回る。好ましくは、アルキルシランおよび/またはPEGシランの質量分率は、官能性シランの質量分率を、最大100倍、さらには最大80倍、さらには最大60倍、さらに好ましくは最大40倍、さらに好ましくは最大30倍、さらに好ましくは最大20倍、さらに好ましくは最大10倍上回る。
【0052】
別の実施形態において、官能性シランの質量分率は、アルキルシランおよび/またはPEGシランの質量分率を上回る。一実施形態において、官能性シランの質量分率は、アルキルシランおよび/またはPEGシランの質量分率を、少なくとも1.05倍、さらに好ましくは1.1倍、さらに好ましくは1.2倍、さらに好ましくは1.3倍、さらに好ましくは1.4倍、さらに好ましくは1.5倍、さらに好ましくは1.6倍上回る。好ましくは、官能性シランの質量分率は、アルキルシランおよび/またはPEGシランの質量分率を、最大100倍、さらには最大80倍、さらには最大60倍、さらに好ましくは最大40倍、さらに好ましくは最大30倍、さらに好ましくは最大20倍、さらに好ましくは最大10倍上回る。
【0053】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表1】
【0054】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表2】
【0055】
さらなる実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表3】
【0056】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表4】
【0057】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表5】
【0058】
さらなる実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表6】
【0059】
好ましくは、機能層は、シラン類のうちの少なくとも1種の代わりにまたはそれに加えて、少なくとも1種の脂肪酸を含む。脂肪酸は、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸であり得る。特に好ましい実施形態において、脂肪酸は飽和脂肪酸である。脂肪酸は、光ファイバーの機械的安定性を向上させ、光ファイバー間の摩擦を低減する。さらに、脂肪酸は、ファイバーの周りに疎水性保護層を形成することができる。
【0060】
好ましくは、脂肪酸は、炭素原子が、少なくとも10個、さらに好ましくは少なくとも11個、さらに好ましくは少なくとも12個、さらに好ましくは少なくとも13個、さらに好ましくは少なくとも14個、さらに好ましくは少なくとも15個、さらに好ましくは少なくとも16個の鎖長を有する。好ましくは、脂肪酸は、炭素原子が、最大40個、さらに好ましくは最大35個、さらに好ましくは最大30個、さらに好ましくは最大28個、さらに好ましくは最大26個、さらに好ましくは最大24個、さらに好ましくは最大22個の鎖長を有する。好ましい実施形態において、脂肪酸は、炭素原子が、10~40個、さらに好ましくは11~35個、さらに好ましくは12~30個、さらに好ましくは13~28個の鎖長を有する。特に好ましい実施形態において、脂肪酸は、炭素原子が14~22個の鎖長を有する。鎖長が短過ぎると、クラッド層の表面への機能層の付着性が低下する。鎖長が長過ぎると、光ファイバーは互いに付着し過ぎる傾向を示す。
【0061】
好ましくは、脂肪酸は、融点が、少なくとも35℃、さらに好ましくは少なくとも39℃、さらに好ましくは少なくとも42℃、さらに好ましくは少なくとも48℃、さらに好ましくは少なくとも52℃、さらに好ましくは少なくとも54℃、さらに好ましくは少なくとも56℃、さらに好ましくは少なくとも58℃、さらに好ましくは少なくとも60℃、さらに好ましくは少なくとも65℃、さらに好ましくは少なくとも70℃である。好ましくは、脂肪酸は、融点が、最大180℃、さらに好ましくは最大160℃、さらに好ましくは最大140℃、さらに好ましくは最大120℃、さらに好ましくは最大100℃、さらに好ましくは最大95℃、さらに好ましくは最大90℃である。好ましくは、脂肪酸は、融点が、35℃~180℃、39℃~160℃または42℃~100℃である。特に好ましい実施形態において、脂肪酸は、融点が53℃~90℃である。脂肪酸の融点が低過ぎると、それにより光ファイバーへの機能層の付着性が低下する。それにより、例えばマイクロクラックおよび破断に対する光ファイバーの保護性が低下する。脂肪酸の融点が高過ぎると、光ファイバーは互いに接着し過ぎる。それにより平滑性が低下し、また曲げ荷重が上昇しかつ増えると、マイクロクラックおよび破断が生じる。好ましくは、脂肪酸は、沸点が、少なくとも200℃、さらに好ましくは少なくとも220℃、さらに好ましくは少なくとも240℃、さらに好ましくは少なくとも260℃、さらに好ましくは少なくとも280℃、さらに好ましくは少なくとも300℃である。好ましくは、脂肪酸は、沸点が、最大500℃、さらに好ましくは最大400℃、さらに好ましくは最大380℃、さらに好ましくは最大330℃である。好ましくは、脂肪酸は、沸点が、200℃~500℃、220℃~400℃または240℃~380℃である。本発明により使用可能な脂肪酸の例は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸およびアラキジン酸である。
【0062】
特定の実施形態において、機能層は複数種の脂肪酸を含む。特定の実施形態において、機能層は、少なくとも2種の脂肪酸、少なくとも3種の脂肪酸または少なくとも4種の脂肪酸を含む。
【0063】
好ましくは、大部分の脂肪酸は、それらの混合物の融点が、少なくとも35℃、さらに好ましくは少なくとも39℃、さらに好ましくは少なくとも42℃、さらに好ましくは少なくとも48℃、さらに好ましくは少なくとも52℃、さらに好ましくは少なくとも54℃、さらに好ましくは少なくとも56℃、さらに好ましくは少なくとも58℃、さらに好ましくは少なくとも60℃、さらに好ましくは少なくとも65℃、さらに好ましくは少なくとも70℃である。好ましくは、大部分の脂肪酸は、それらの混合物の形態において、融点が、最大180℃、さらに好ましくは最大160℃、さらに好ましくは最大140℃、さらに好ましくは最大120℃、さらに好ましくは最大100℃、さらに好ましくは最大95℃、さらに好ましくは最大90℃である。好ましくは、大部分の脂肪酸は、混合物として、融点が、35℃~180℃、39℃~160℃または42℃~140℃である。混合物としての融点とは、大部分の脂肪酸を形成する個々の脂肪酸の混合物が使用される比において有する融点を指す。大部分の脂肪酸の融点が低過ぎると、それにより光ファイバーへの機能層の付着性が低下する。それにより、例えばマイクロクラックおよび破断に対する光ファイバーの保護性が低下する。大部分の脂肪酸の融点が高過ぎると、光ファイバーは互いに接着し過ぎる。それにより平滑性が低下し、また曲げ荷重が上昇しかつ増えると、マイクロクラックおよび破断が生じる。
【0064】
好ましくは、機能層は、1種以上の脂肪酸を、少なくとも1重量%、さらに好ましくは少なくとも2重量%、さらに好ましくは少なくとも3重量%、さらに好ましくは少なくとも4重量%、さらに好ましくは少なくとも5重量%、さらに好ましくは少なくとも6重量%、さらに好ましくは少なくとも7重量%の割合で含む。好ましくは、機能層は、少なくとも1種の脂肪酸を、最大85重量%、さらに好ましくは最大80重量%、さらに好ましくは最大75重量%、さらに好ましくは最大70重量%、さらに好ましくは最大65重量%、さらに好ましくは最大60重量%、さらに好ましくは最大56重量%の割合で含む。好ましい実施形態において、機能層は、少なくとも1種の脂肪酸を、1~85重量%、さらに好ましくは2~80重量%、さらに好ましくは3~75重量%、さらに好ましくは4~70重量%の割合で含む。特に好ましい実施形態において、機能層は、1種以上の脂肪酸を合計7~56重量%の割合で含む。少なくとも1種の脂肪酸の割合が低過ぎると、光ファイバーは互いに滑りにくくなる。少なくとも1種の脂肪酸の割合が高過ぎると、光ファイバーは互いに接着する。
【0065】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表7】
【0066】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表8】
【0067】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表9】
【0068】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表10】
【0069】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表11】
【0070】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表12】
【0071】
実施形態において、機能層は、シラン類のうちの少なくとも1種の代わりにまたはそれに加えて、少なくとも1種の多価アルコールを含む。本発明による多価アルコールは、グリセロール、ジエチレングリコールまたは1,5-ペンタンジオール、ならびにアルカンジオールおよびアルカントリオールなどのアルカンポリオール、特に炭素原子2~10個、好ましくは炭素原子3~8個の鎖長を有するアルカンポリオールである。好ましくは、機能層は、少なくとも1種の多価アルコールを、少なくとも3重量%、さらに好ましくは少なくとも5重量%、さらに好ましくは少なくとも10重量%、さらに好ましくは少なくとも15重量%、さらに好ましくは少なくとも20重量%、さらに好ましくは少なくとも25重量%、さらに好ましくは少なくとも30重量%の割合で含む。好ましくは、機能層は、少なくとも1種の多価アルコールを、最大90重量%、さらに好ましくは最大87重量%、さらに好ましくは最大84重量%、さらに好ましくは最大81重量%、さらに好ましくは最大79重量%、さらに好ましくは最大77重量%、さらに好ましくは最大75重量%の割合で含む。好ましい実施形態において、機能層は、多価アルコールを、3~90重量%、さらに好ましくは5~87重量%、さらに好ましくは10~84重量%、さらに好ましくは15~81重量%の割合で含む。特に好ましい実施形態において、機能層は、多価アルコールを30~75重量%の割合で含む。多価アルコールは、光ファイバー同士の滑りを改善し、それによりマイクロクラックおよび破断の発生を低減する。多価アルコールは、例えば光ファイバー束中の光ファイバーの取扱性、充填密度および再分離性を改善し、特に、多価アルコールは、所望の「湿潤挙動」、すなわち、湿潤したファイバー物品のように挙動するファイバー物品の特性をもたらす。
【0072】
機能層は、シラン類のうちの少なくとも1種の代わりにまたはそれに加えて、少なくとも1種のポリアルキレンオキシドを含み得る。本発明によるポリアルキレンオキシドは、特に、例えばポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどのポリグリコール、ならびに2~6個の炭素原子を有するモノマーからの他のポリアルキレンオキシドである。好ましくは、機能層は、少なくとも1種のポリアルキレンオキシドを、少なくとも2重量%、さらに好ましくは少なくとも3重量%、さらに好ましくは少なくとも4重量%、さらに好ましくは少なくとも5重量%、さらに好ましくは少なくとも6重量%、さらに好ましくは少なくとも7重量%、さらに好ましくは少なくとも8重量%の割合で含む。好ましくは、機能層は、少なくとも1種のポリアルキレンオキシドを、最大90重量%、さらに好ましくは最大85重量%、さらに好ましくは最大80重量%、さらに好ましくは最大75重量%、さらに好ましくは最大70重量%、さらに好ましくは最大68重量%、さらに好ましくは最大65重量%の割合で含む。好ましい実施形態において、機能層は、少なくとも1種のポリアルキレンオキシドを、1~90重量%、さらに好ましくは2~85重量%、さらに好ましくは3~80重量%、さらに好ましくは4~75重量%の割合で含む。特に好ましい実施形態において、機能層は、ポリアルキレンオキシドを8~65重量%の割合で含む。ポリアルキレンオキシドは、光ファイバー間の摩擦を低減し、光ファイバーの機械的安定性を改善する。ポリアルキレンオキシドは、例えば光ファイバー束中の光ファイバーのまとまりをさらに改善する。
【0073】
好ましい実施形態において、ポリアルキレンオキシドは、アルキレンオキシド単位が、少なくとも3個、さらに好ましくは少なくとも4個、さらに好ましくは少なくとも5個、さらに好ましくは少なくとも6個、さらに好ましくは少なくとも7個、さらに好ましくは少なくとも8個の鎖長を有する。好ましくは、ポリアルキレンオキシドは、アルキレンオキシド単位が、最大100個、さらに好ましくは最大75個、さらに好ましくは最大50個、さらに好ましくは最大20個、さらに好ましくは最大14個の鎖長を有する。実施形態において、ポリアルキレンオキシドは、アルキレンオキシド単位が、3~100個、さらに好ましくは4~50個、さらに好ましくは6~20個の鎖長を有する。特に好ましい実施形態において、ポリアルキレンオキシドは、アルキレンオキシド単位が7~14個の鎖長を有する。室温(20℃、1013hPa)で液体であるポリアルキレンオキシドを使用することが有利である。
【0074】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表13】
【0075】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表14】
【0076】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表15】
【0077】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表16】
【0078】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表17】
【0079】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表18】
【0080】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表19】
【0081】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表20】
【0082】
一実施形態において、機能層は、以下の化合物を含む:
【表21】
【0083】
機能層のIRスペクトルは、ATR結晶を機能層に押し付けることにより記録することができる。スペクトルはATRモードで記録されるため、ファイバーのスペクトルは機能層のスペクトルに相応する。機能層は、フーリエ変換赤外線減衰全反射(FTIR-ATR:Fourier-transform-Infrared-Attenuated-Total-Reflection)スペクトルの赤外線範囲で特徴的な吸収を示す。本発明のファイバー物品のファイバー上の機能層のIRスペクトルは、独自の組成を理由として特徴的である。特に、これらは従来技術における機能層のIRスペクトルとは異なる。例えば、本発明の機能層は、たとえあったとしても、1750cm-1(±25cm-1)前後の波数範囲で非常に弱いバンドしか有さず、これは、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートが好ましいことに存在していないことに起因する。同じことが1590cm-1(±25cm-1)の範囲のバンドに当てはまり、これは、芳香族成分が好ましいことに存在していないことに起因する。多くの芳香族化合物は発癌性であるため、望ましくない。
【0084】
好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、3800cm-1~4000cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する3200cm-1~3600cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、少なくとも1.3、さらに好ましくは少なくとも1.4、さらに好ましくは少なくとも1.5、さらに好ましくは少なくとも1.6、さらに好ましくは少なくとも1.7、さらに好ましくは少なくとも1.8、さらに好ましくは少なくとも1.9、さらに好ましくは少なくとも2.0、さらに好ましくは少なくとも2.1、さらに好ましくは少なくとも2.2である。好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、3800cm-1~4000cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する3200cm-1~3600cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、最大35、さらに好ましくは最大30、さらに好ましくは最大25、さらに好ましくは最大20、さらに好ましくは最大15、さらに好ましくは最大10、さらに好ましくは最大9、さらに好ましくは最大8、さらに好ましくは最大7、さらに好ましくは最大6である。好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、3800cm-1~4000cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する3200cm-1~3600cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、1.3~35、さらに好ましくは1.4~30、さらに好ましくは1.5~25、さらに好ましくは1.6~6である。本明細書に記載の吸収は、例えば、機能層のさらなる成分に対する官能性シランおよび/または任意の多価アルコールの比が有利であることによりもたらされる。本明細書に記載の3200cm-1~3600cm-1の相対吸収が低過ぎる場合、機能層の他の成分に対する官能性シランの比が低過ぎる。それにより、機能層はクラッド層の表面に付着しにくくなる。さらに、例えば光ファイバー束の複合体において、接着層などのさらなる層との機能層の接着性が低下する。それに対して、本明細書に記載の3200cm-1~3600cm-1の相対吸収が高過ぎる場合、機能層の他の成分に対する官能性シランの比が高過ぎる。それにより、光ファイバー間の摩擦が増加し、滑り性が低下する。
【0085】
好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、1500cm-1~1900cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する800cm-1~1200cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、少なくとも1.1、さらに好ましくは少なくとも1.2、さらに好ましくは少なくとも1.3、さらに好ましくは少なくとも1.4、さらに好ましくは少なくとも1.5、さらに好ましくは少なくとも1.6、さらに好ましくは少なくとも1.7、さらに好ましくは少なくとも1.8、さらに好ましくは少なくとも1.9、さらに好ましくは少なくとも2.0である。好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、1500cm-1~1900cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する800cm-1~1200cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、最大300、さらに好ましくは最大200、さらに好ましくは最大100、さらに好ましくは最大50、さらに好ましくは最大30、さらに好ましくは最大20、さらに好ましくは最大10、さらに好ましくは最大7、さらに好ましくは最大6、さらに好ましくは最大5である。好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、1500cm-1~1900cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する800nm~1200nmの範囲の最大吸収バンド高さの比が、1.3~300、さらに好ましくは1.4~250、さらに好ましくは1.5~200、さらに好ましくは2.0~10である。本明細書に記載の吸収は、例えば、特に、不所望な光重合性化合物または光重合した化合物に対する、官能性シラン、任意のアルキルシランおよび/または任意のPEGシランの比が有利であることによりもたらされる。本明細書に記載の800cm-1~1200cm-1の相対吸収が低過ぎる場合、光重合性化合物または光重合した化合物の比が高過ぎる。そのような機能層は、健康面で深刻である。
【0086】
好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、1500cm-1~1900cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する2700cm-1~3000cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、少なくとも1.1、さらに好ましくは少なくとも1.2、さらに好ましくは少なくとも1.3、さらに好ましくは少なくとも1.4、さらに好ましくは少なくとも1.5、さらに好ましくは少なくとも1.6、さらに好ましくは少なくとも1.7、さらに好ましくは少なくとも1.8、さらに好ましくは少なくとも1.9、さらに好ましくは少なくとも2.0である。好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、1500cm-1~1900cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する2700cm-1~3000cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、最大300、さらに好ましくは最大200、さらに好ましくは最大100、さらに好ましくは最大50、さらに好ましくは最大30、さらに好ましくは最大20、さらに好ましくは最大10、さらに好ましくは最大7、さらに好ましくは最大6、さらに好ましくは最大5である。好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、1500nm~1900nmの範囲の最大吸収バンド高さに対する2700cm-1~3000cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、1.3~300、さらに好ましくは1.4~250、さらに好ましくは1.5~200、さらに好ましくは2.0~5である。本明細書に記載の吸収は、例えば、特に、不所望な光重合性化合物または光重合した化合物に対する、官能性シラン、任意のアルキルシラン、任意のPEGシランおよび/または任意の脂肪酸の比が有利であることによりもたらされる。本明細書に記載の2700cm-1~3000cm-1の相対吸収が低過ぎる場合、光重合性化合物または光重合した化合物の比が高過ぎる。そのような機能層は、健康面で深刻であり、患者に健康面での被害を及ぼす可能性がある。
【0087】
好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、1500cm-1~1900cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する3200cm-1~3600cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、少なくとも1.1、さらに好ましくは少なくとも1.2、さらに好ましくは少なくとも1.3、さらに好ましくは少なくとも1.4、さらに好ましくは少なくとも1.5である。好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、1500nm~1900nmの範囲の最大吸収バンド高さに対する3200cm-1~3600cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、最大3.0、さらに好ましくは最大2.5、さらに好ましくは最大2.2、さらに好ましくは最大2.0である。好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、1500cm-1~1900cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する3200cm-1~3600cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、1.1~3、さらに好ましくは1.1~2.5、さらに好ましくは1.1~2.0または1.2~2.5である。本明細書に記載の吸収は、例えば、特に、不所望な光重合性化合物または光重合した化合物に対する、官能性シランおよび/または任意の多価アルコールの比が有利であることによりもたらされる。本明細書に記載の3200cm-1~3600cm-1の相対吸収が低過ぎる場合、光重合性化合物または光重合した化合物の比が高過ぎる。そのような機能層は、健康面で深刻である。
【0088】
好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、2700cm-1~3000cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する800cm-1~1200cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、少なくとも1.1、さらに好ましくは少なくとも1.2、さらに好ましくは少なくとも1.3、さらに好ましくは少なくとも1.4である。好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、3200cm-1~3600cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する800cm-1~1200cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、最大35、さらに好ましくは最大30、さらに好ましくは最大25、さらに好ましくは最大20、さらに好ましくは最大15、さらに好ましくは最大10、さらに好ましくは最大9.0、さらに好ましくは最大5、さらに好ましくは最大3.0、さらに好ましくは最大2.0である。好ましくは、機能層は、FTIR-ATRスペクトルにおいて、3200cm-1~3600cm-1の範囲の最大吸収バンド高さに対する800cm-1~1200cm-1の範囲の最大吸収バンド高さの比が、1.1~35、さらに好ましくは1.2~15、さらに好ましくは1.3~2.0である。本明細書に記載の吸収は、例えば、特に、官能性シラン、任意のアルキルシランおよび/または任意のPEGシランに対する、官能性シランおよび/または任意の多価アルコールの比が有利であることによりもたらされる。本明細書に記載の800nm~1200nmの相対吸収が低過ぎる場合、官能性シランの比が低過ぎる。本明細書に記載の800cm-1~1200cm-1の相対吸収が高過ぎる場合、官能性シランの比が高過ぎる。
【0089】
光ファイバーが互いに接着することなくこれらの間で良好な滑り効果を得るためには、機能層が適切な摩擦係数を有するべきである。摩擦係数は、当業者に既知の方法により機能層の表面で測定することが可能である。この測定は、例えば、ファイバー物品(試験物品)と同じ材料からの光ファイバー物品または相応するガラス棒を、同様に光ファイバー物品または相応するガラス棒から形成された摩擦相手(Reibpartner)に対して90°の角度で、0.5Nの垂直力Fnで、10mm/分の速度でずらすことにより行うことが可能である。試験物品に対して縦方向にずらす。摩擦相手も同様に、光ファイバー物品または相応するガラス棒から形成されている。ここで、摩擦値(Reibwert)に応じて摩擦力が生じ、この摩擦力は、摩擦値の尺度として求められる(摩擦値=摩擦力および垂直力からの商)。好ましくは、機能層は、摩擦係数が、最大0.5、さらに好ましくは最大0.45、さらに好ましくは最大0.35、さらに好ましくは最大0.3、さらに好ましくは最大0.2、さらに好ましくは最大0.15である。好ましくは、機能層は、摩擦係数が、少なくとも0.001、さらに好ましくは少なくとも0.01、さらに好ましくは少なくとも0.03、さらに好ましくは少なくとも0.05である。好ましい実施形態において、機能層は、摩擦係数が、0.001~0.5、さらに好ましくは0.01~0.35、さらに好ましくは0.03~0.2である。特に好ましい実施形態において、機能層は、摩擦係数が0.2未満である。摩擦係数が高過ぎると、光ファイバーは互いに滑りにくくなり、マイクロクラックおよび破断が生じる。摩擦係数が低過ぎると、光ファイバーは、例えば光ファイバー束中において、まとまりにくい。
【0090】
機能層の表面は、例えば、光ファイバー束の複合体において例えば接着剤による光ファイバーの良好な濡れ性を達成するために、適切な接触角を有するべきである。接触角は、当業者に既知の方法により(例えば、ISO DIN 55660-2:2011により)機能層の表面で測定することが可能である。好ましくは、機能層は、接触角が、少なくとも10°、さらに好ましくは少なくとも20°、さらに好ましくは少なくとも40°、さらに好ましくは少なくとも60°、さらに好ましくは少なくとも80°である。好ましくは、機能層は、接触角が、最大125°、さらに好ましくは最大100°であり、好ましい実施形態において、機能層は、接触角が、20°~120°、さらに好ましくは40°~100°、さらに好ましくは60°~100°である。特に好ましい実施形態において、機能層は、接触角が50°~85°である。接触角が小さ過ぎると、機能層の表面が親水性になり過ぎ、化学的保護作用が低下する。接触角が大き過ぎると、複合体において例えば接着層による機能層の表面の濡れ性が低下する。
【0091】
機能層は、ファイバーの表面に良好に付着するべきであり、ファイバーの良好であるが限定された付着を可能にするべきであり、かつ他の材料、例えばスリーブへのファイバー物品、特にファイバー束の良好な接着を可能にするべきである。以下に記載の押出試験(Ausdruecktest)において得られる結果は、ファイバー同士の付着性の尺度である。押出試験では、1つのファイバー束、または比較のために直径5mmの場合によって異なる複数のファイバー束を、同じ接着剤を用いて、例えば、好ましくは溶媒なしかつ室温架橋性の二成分エポキシ樹脂接着剤(例:Araldit AY103-1硬化剤;REN HY 956、Huntsman社;60℃で2時間にわたり硬化)を用いて、ステンレス鋼スリーブ内にそれぞれ接着する。ファイバー束の端面は研削および研磨されている。続いて、断面が丸く、直径2.5mmであり、かつ端面が平らな試験用マンドレル(Pruefdorn)を用いて、スリーブ内で接着されたファイバーに対して試験用マンドレルをファイバー方向で押し付けることにより、押出力を少なくとも定性的または互いに相対的に決定する。押出速度は6mm/分である。破壊パターンは2つある。一つ目のケースでは、ステンレス鋼スリーブに対するファイバー束の接着が破壊される(ファイバー束全体がスリーブから押し出される)。二つ目のケースでは、ファイバー同士の接着が破壊される。一つ目のケースでは、ファイバー同士の付着が、ステンレス鋼スリーブへのファイバー束の付着よりも優れている。二つ目のケースについて、これは、ガラスファイバー上の接着剤の接着性が不足していることを示唆しており、これは、機能層の付着促進が不十分であることを示している。試験用マンドレルの下に存在する接着されたファイバー束をステンレス鋼スリーブまたは周囲のファイバーからずらすために必要な検出される最大の力が、押出力である。
【0092】
好ましくは、光ファイバー物品は、押出力が、少なくとも250N、さらに好ましくは少なくとも300N、さらに好ましくは少なくとも350N、さらに好ましくは少なくとも400N、さらに好ましくは少なくとも500N、少なくとも700Nまたは少なくとも900Nである。実施形態において、光ファイバー物品は、押出力が、最大5,000N、さらに好ましくは最大4,500N、さらに好ましくは最大4,000N、さらに好ましくは最大3,500N、さらに好ましくは最大3,000Nである。好ましい実施形態において、光ファイバー物品は、押出力が、100~5,000N、さらに好ましくは150~4,500N、さらに好ましくは200~4,000Nである。押出力が低過ぎる場合、機能層がクラッド層の表面にうまく付着していないか、または機能層の付着促進が弱過ぎる。
【0093】
好ましくは、光ファイバー物品は、特に少なくとも20mの高い破断長さを有するファイバーを有する。さらに好ましくは、ファイバーは、破断長さが、少なくとも30m、さらに好ましくは少なくとも40m、さらに好ましくは少なくとも50m、さらに好ましくは少なくとも60m、さらに好ましくは少なくとも70m、さらに好ましくは少なくとも80m、さらに好ましくは少なくとも90メートルである。この長さが短過ぎると、光ファイバーが非常に頻繁に破断し、ライトガイドおよび/またはイメージガイドとしての使用には不適切である。さらに、破断した光ファイバーから健康面についての危険が生じる。破断長さは、以下のように測定することが可能である。試験用ファイバーは、スプール(例えば、円周0.49mの標準的な発泡スチロールスプール)上で長さが少なくとも2kmの連続ファイバーとして用意される。引っ張り曲げ装置(Zug-Biege-Vorrichtung)により、試験用ファイバーに規定された曲げ荷重がかけられ、その際、ファイバーは半径6mmの4つのローラにより巻き替えられる。ここで一定の応力下にある試験用ファイバーは、制動されたスプールから巻き出され、第二のモーター駆動スプールへと巻き取られる。ファイバーの破断が発生したら、巻き出しプロセスは、破断センサにより停止される。測定を続行するためにファイバーが再配置される。破断長さは、破断確率が63%になるファイバー長さである(ワイブル分布)。計算のために、好ましくは少なくとも10回の測定、好ましくは25回の測定が実施される。この試験は、25+/-1cNの張力および25+/-1rpm(12.5m/分に相当)の巻き替え速度で実施される。
【0094】
光ファイバー物品は、機械的安定性が高く、かつ可能であれば破断しないファイバーを含むべきである。ファイバーの破断傾向は、DIN 58141-6:2011に準拠した破断ループ試験で測定することが可能である。この試験は、ファイバー物品の基本的な強度を求めるのに用いられる。この方法では、ライトガイドファイバーの機械的曲げ半径は、ファイバー破断が起こるまで360°のループを狭くしていくことによりこれらのライトガイドファイバーに負荷をかけることで決定される(破壊試験)。破断ループ試験の結果は、曲げ半径であり、すなわち破断せずにファイバーをどれだけ曲げることができるかの尺度である。光ファイバー物品のファイバーは、曲げ半径が、10mm未満、特に5mm未満、3mm未満またはさらには2mm未満であることが好ましい。これらのファイバーは、特に加水分解による負荷の後でも、非常に小さな曲げ半径を有する。したがって、ファイバーの曲げ半径は、好ましくは、ファイバーを50℃の水中で5日間にわたり保管した後でも、12mm未満、8mm未満または6mm未満のままである。これらのファイバーが加水分解の負荷においてもその良好な曲げ特性を大きく保持するということは、光ファイバー物品の洗浄および滅菌に関して大きな利点である。
【0095】
アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物およびスチレン化合物、ならびにUV照射で硬化する他の不飽和化合物は、環境に有害である可能性があり、ヒトに健康面での被害をもたらし得る。したがって、機能層は、可能な限り低い光重合性物質および/または光重合した物質の割合を有するべきである。
【0096】
好ましくは、光ファイバー物品は、機能層中の光重合したポリマーの含有量が、機能層の質量を基準として、1重量%未満、さらに好ましくは4重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.8重量%未満、さらに好ましくは0.6重量%未満、さらに好ましくは0.4重量%未満、さらに好ましくは0.2重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満、さらに好ましくは0.01重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満、さらに好ましくは0.001重量%未満である。特に好ましい実施形態において、機能層は光重合したポリマーを含まない。「光重合したポリマー」とは、UV硬化性のモノマーまたはオリゴマーを重合することにより製造可能なポリマーを指す。本発明にて回避されることが好ましい光重合したポリマーは、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルポリマー、ポリスチレンおよび/またはそれらの誘導体である。機能層中の光重合したポリマーの割合が高過ぎると、光ファイバー物品から健康面でのリスクの可能性が生じる。特に、頻繁にオートクレーブ処理される医療機器では、光重合したポリマーが残留モノマーまたは光開始剤を放出することがある。したがって、特に、例えば内視鏡などの、ヒトの臓器と接触する医療機器において、光重合したポリマーの割合は、ここに記載されるよりも高くなるべきではない。特に、機能層中の光重合性モノマーおよび/またはオリゴマーの含有量も少ない。特に、機能層中のアクリレート、メタクリレート、スチレン化合物およびビニル化合物の含有量は、1重量%未満、0.1重量%未満または0.01重量%未満に制限されることが好ましい。
【0097】
光開始剤は、ヒトの健康に有害であり得る。好ましい実施形態において、光ファイバー物品は、機能層中の光開始剤および/またはその誘導体の含有量が、機能層の質量を基準として、5重量%未満、さらに好ましくは4重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.8重量%未満、さらに好ましくは0.6重量%未満、さらに好ましくは0.4重量%未満、それよりもさらに好ましくは0.2重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満、さらに好ましくは0.01重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満、さらに好ましくは0.001重量%未満である。特に好ましい実施形態において、機能層は光開始剤および/またはその誘導体を含まない。「光開始剤および/またはその誘導体」とは、例えば重合などの反応を開始することが可能な反応種を、例えばUV光などの光子の吸収後に形成する化学化合物を指す。光開始剤および/またはその誘導体は、すでに反応したそれらの化合物も指し得る。本発明による光開始剤は、例えば、ラジカル光開始剤、カチオン光開始剤および/または熱潜在性光開始剤である。そのような光開始剤は、例えば、アシルホスフィンオキシド、アルファ-アルコキシ-アリールケトンまたはアリールジアゾニウムまたはそれらの組み合わせである。機能層中の光開始剤および/またはその誘導体の割合が高過ぎると、光ファイバー物品から健康面でのリスクの可能性が生じる。これは、特に医療機器において不所望である。
【0098】
機能層は、十分に乾燥しており、少ない含水量を有するべきである。好ましくは、光ファイバー物品は、機能層中の水の残留量が、機能層の質量を基準として、5重量%未満、さらに好ましくは4重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.8重量%未満、さらに好ましくは0.6重量%未満、さらに好ましくは0.4重量%未満、それよりもさらに好ましくは0.2重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満、さらに好ましくは0.01重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満、さらに好ましくは0.001重量%未満である。特に好ましい実施形態において、機能層は水を含まない。水の割合が高過ぎると、機能層の絶縁保護作用が低下し、光ファイバー物品の機械的安定性および化学的安定性が低下する。
【0099】
機能層は、十分に乾燥しており、少ない水混和性溶媒の残留量を有するべきである。そのような溶媒は、特に、10個までの炭素原子を有する脂肪族エーテルもしくはアルコールおよび/または6個までの炭素原子を有するカルボン酸である。本発明による水混和性溶媒の例は、酢酸、エタノール、イソプロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルまたはトリプロピレングリコールモノメチルエーテルである。好ましくは、光ファイバー物品は、機能層中の水混和性溶媒の残留量が、機能層の質量を基準として、5重量%未満、さらに好ましくは4重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.8重量%未満、さらに好ましくは0.6重量%未満、さらに好ましくは0.4重量%未満、それよりもさらに好ましくは0.2重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満、さらに好ましくは0.01重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満、さらに好ましくは0.001重量%未満である。特に好ましい実施形態において、機能層は水混和性溶媒を含まない。水混和性溶媒の割合が高過ぎると、機能層の絶縁保護作用が低下し、光ファイバー物品の機械的安定性および化学的安定性が低下する。
【0100】
特に好ましい実施形態において、光ファイバー物品は、機能層中の10個までの炭素原子を有する短鎖カルボン酸の残留量が、機能層の質量を基準として、5重量%未満、さらに好ましくは4重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.8重量%未満、さらに好ましくは0.6重量%未満、さらに好ましくは0.4重量%未満、それよりもさらに好ましくは0.2重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満、さらに好ましくは0.01重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満、さらに好ましくは0.001重量%未満である。そのような短鎖カルボン酸は、例えば、酢酸またはクエン酸である。特に好ましい実施形態において、機能層は、10個までの炭素原子を有する短鎖カルボン酸を含まない。
【0101】
特に好ましい実施形態において、光ファイバー物品は、機能層中の4個までの炭素原子を有する脂肪酸アルコールの残留量が、機能層の質量を基準として、5重量%未満、さらに好ましくは4重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.8重量%未満、さらに好ましくは0.6重量%未満、さらに好ましくは0.4重量%未満、それよりもさらに好ましくは0.2重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満、さらに好ましくは0.01重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満、さらに好ましくは0.001重量%未満である。そのような短鎖カルボン酸は、例えば、エタノールまたはイソプロパノールである。特に好ましい実施形態において、機能層は、4個までの炭素原子を有する脂肪族アルコールを含まない。
【0102】
光ファイバー物品は、例えば内視鏡などの医療機器での用途に良好に適しているべきである。医療用途の場合、光ファイバー物品は、頻繁にオートクレーブ処理されても、可能な限り耐久性を示すべきである。そのためには、光ファイバー物品が可能な限り少ないハロゲンを有することが重要である。好ましくは、光ファイバー物品は、機能層中のハロゲンの含有量が、機能層を基準として、500ppm(m/m)未満、さらに好ましくは400ppm(m/m)未満、さらに好ましくは300ppm(m/m)未満、さらに好ましくは250ppm(m/m)未満、さらに好ましくは200ppm(m/m)未満、さらに好ましくは150ppm(m/m)未満、さらに好ましくは100ppm(m/m)未満、さらに好ましくは80ppm(m/m)未満、さらに好ましくは60ppm(m/m)未満、さらに好ましくは40ppm(m/m)未満、さらに好ましくは20ppm(m/m)未満、それよりもさらに好ましくは10ppm(m/m)未満である。特に好ましい実施形態において、機能層はハロゲンを含まない。ハロゲンは、例えば、塩素、フッ素、臭素および/もしくはヨウ素またはそれらのアニオンである。「ハロゲン」という用語は、特にハロゲン化物、好ましくは他のハロゲン化合物も含む。機能層中のハロゲンの濃度が高過ぎると、特に例えば蒸気滅菌の場合に、相応するハロゲン酸が形成される。相応するハロゲン酸は、光ファイバー物品の耐久性を低減し、光ファイバー物品から漏れる可能性がある。特に、ハロゲン酸は、例えばオートクレーブおよび内視鏡のステンレス鋼などの材料を攻撃し、不所望な錆を形成する。
【0103】
特に、機能層中の塩化物の残留量により、塩酸が形成される可能性がある。したがって、光ファイバー物品は、可能な限り少ない塩化物を有するべきである。好ましくは、光ファイバー物品は、機能層中の塩化物の含有量が、機能層を基準として、500ppm(m/m)未満、さらに好ましくは400ppm(m/m)未満、さらに好ましくは300ppm(m/m)未満、さらに好ましくは250ppm(m/m)未満、さらに好ましくは200ppm(m/m)未満、さらに好ましくは150ppm(m/m)未満、さらに好ましくは100ppm(m/m)未満、さらに好ましくは80ppm(m/m)未満、さらに好ましくは60ppm(m/m)未満、さらに好ましくは40ppm(m/m)未満、さらに好ましくは20ppm(m/m)未満、それよりもさらに好ましくは10ppm(m/m)未満である。特に好ましい実施形態において、機能層は塩化物を含まない。塩化物の含有量が多過ぎると、光ファイバー物品の耐食性が低下する。
【0104】
医療用途または診断用途において光ガラスファイバー物品が適切であるために、光ガラスファイバー物品は生体適合性であるべきである。ファイバー物品は、ISO 10993-1:2018に従って生体適合性であることが好ましい。光ファイバー物品は、ISO 10993-5:2009に従った細胞毒性試験において生体適合性であることが好ましい。
【0105】
光ファイバー物品は、ISO 10993-1:2018および/またはISO 10993-5:2009に従って生体適合性であることが好ましい。光ファイバー物品は、USPクラスVIに従って生体適合性であることが好ましい。
【0106】
光ファイバー物品は、可能な限りヒトの健康に危険を及ぼさない化合物のみを含むべきである。例えば、ヒトは、光ファイバー物品の製造および加工においてもこれと接触する。好ましくは、光ファイバー物品は、機能層中の最大許容労働環境濃度(maximale Arbeitsplatz-Konzentration)(MAK値)240mg*m-3未満の化合物の割合が、機能層の質量を基準として、5重量%未満、さらに好ましくは4重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.8重量%未満、さらに好ましくは0.6重量%未満、さらに好ましくは0.4重量%未満、それよりもさらに好ましくは0.2重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満、さらに好ましくは0.01重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満、さらに好ましくは0.001重量%未満である。
【0107】
好ましくは、光ファイバーは、ファイバーコアとクラッドまたはクラッド層とを含み、機能層はクラッド層上に配置されている。好ましい実施形態において、コア層はコアガラスからなる。他の実施形態において、ファイバーコアはコアポリマーからなる。適切なコアポリマーは、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの混合物である。コアガラスは多成分ガラスであってもよく、特にコアガラスは、複数種の酸化物の組み合わせを有していてもよく、すなわち酸化物ガラスであってもよい。石英ガラスは、基本的にコアガラスとしても適しているが、多成分ガラスとは異なり、非常に高い融点を有するため、それにより、加工がより難しくなり、とりわけエネルギー消費が多くなる。
【0108】
光ファイバーは、ファイバーコアを被覆するクラッド層を含むことが好ましい。好ましい実施形態において、クラッド層はクラッドガラスを含む。クラッドガラスは多成分ガラスであってもよく、特にクラッドガラスは、複数種の酸化物の組み合わせを有していてもよく、すなわち酸化物ガラスであってもよい。他の実施形態において、クラッド層はクラッドポリマーを含む。本発明によるクラッドポリマーは、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの混合物である。
【0109】
特定の実施形態において、光ファイバーは石英ファイバーである。特定の実施形態において、クラッド層および/またはファイバーコアは、石英の割合が、少なくとも76重量%、さらに好ましくは少なくとも81重量%、さらに好ましくは少なくとも84重量%、さらに好ましくは少なくとも88重量%、さらに好ましくは少なくとも92重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも97重量%、さらに好ましくは少なくとも98重量%である。石英の割合が高いほど、耐薬品性が向上し、温度耐性が向上する。
【0110】
特定の実施形態において、コアガラスは以下の特徴を有する。好ましくは、コアガラスは、SiO2を、少なくとも8重量%、さらに好ましくは少なくとも23重量%、より好ましくは少なくとも24重量%、特に好ましくは少なくとも25重量%またはさらには少なくとも26重量%有する。特定の実施形態において、コアガラスは、SiO2を少なくとも28.3重量%、極めて特に好ましくはSiO2を少なくとも34重量%さえ含有し得る。いくつかの好ましい実施形態において、コアガラスは、SiO2を、少なくとも35重量%、さらに好ましくは少なくとも42重量%さえ含む。
【0111】
本発明の好ましいコアガラスは、以下の組成を重量パーセントで有する:
【表22】
【0112】
R2Oは、すべてのアルカリ金属酸化物の含有量の合計である。
【0113】
以下の成分のうちの1種以上が含有されていてもよい:Cs2O、Rb2O、MgO、CaO、SrO、Gd2O3、Lu2O3、Sc2O3、Y2O3、In2O3、Ga2O3およびWO3。
【0114】
以下の成分は、コアガラスに好ましくは含有されていないか、または原料の不可避の不純物に起因する濃度でのみ含有されているべきである:本文に別段の記載がない限り、TiO2、CeO2、Nb2O5、MoO3、Bi2O3、PbO、CdO、Tl2O、As2O3、Sb2O3、SO3、SeO2、TeO2、BeO、放射性元素および着色成分。特に、TiO2は避けるべきである。なぜなら、この成分は、UV範囲での顕著な吸収をもたらす可能性があるからである。好ましい実施形態において、成分WO3も避けられる。
【0115】
TiO2、CeO2、Nb2O5および/またはBi2O3の成分は、最大0.5重量%まで、好ましくは0.3重量%まで、特に好ましくは0.2重量%まで、コアガラス中に含有されていてもよい。好ましい実施形態において、コアガラスはこれらの成分を含まない。
【0116】
好ましくは、コアガラスは、光学活性成分、特に、Sm2O3、Nd2O3、Dy2O3、Pr2O3、Eu2O3、Yb2O3、Tb2O3、Er2O3、Tm2O3および/またはHo2O3を含まない。CeO2はUV範囲で吸収するため、好ましいコアガラスはCeO2を含有していてない。
【0117】
アルカリ土類金属酸化物、La2O3、Ta2O5、ZrO2およびHfO2の成分の含有量は、好ましくはかつ特に、屈折値が1.65超のコアガラスの場合、合計で、少なくとも40重量%、さらに好ましくは少なくとも42重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも55重量%である。これらの成分の含有量が少な過ぎると、通常、好ましい屈折率を達成することはできない。配合によっては、この合計は、72重量%の値を上回るべきではない。
【0118】
特定の実施形態において、クラッドガラスは以下の特徴を有する。
【0119】
好ましくは、クラッドガラスは、SiO2の含有量を、60重量%超、さらに好ましくは65重量%超、特に好ましくは少なくとも69重量%有する。SiO2含有量は、好ましくは最大75重量%、特に好ましくは73重量%までである。クラッドガラスは、コアガラスよりも強い環境の影響を受ける傾向にある。SiO2含有量が多いほど、より良好な耐薬品性が与えられる。したがって、クラッドガラス中のこの成分の含有量は、コアガラス中よりも多いことが好ましい。
【0120】
20~300℃の温度範囲での熱膨張係数(CTE)は、ファイバーコアとクラッドとで同じであっても、または異なっていてもよい。特に、CTEは異なる。好ましくは、クラッドのCTEは、ファイバーコアのCTEよりも小さく、好ましくは、クラッドのCTEは、少なくとも1.0*10-6/K小さいか、または特に好ましくは少なくとも2.5*10-6/K小さい。ファイバーコアは、好ましくは、CTEが6.5*10-6~10*10-6/Kであり、クラッドは、CTEが4.5*10-6~6*10-6/Kである。
【0121】
以下の表は、コアガラスとともに使用可能なクラッドガラスのいくつかの好ましい組成を示す。クラッドガラスは、以下のものを(酸化物を基準として重量%で)含有する:
【表23】
【0122】
コアガラスおよび/またはクラッドガラスとしては、カルコゲナイドガラス、特に、独国特許発明第4011553号明細書および欧州特許出願公開第0217195号明細書に開示されているガラスも考えられる。
【0123】
光ファイバー物品は、1本以上の光ファイバーを含んでいてもよい。この場合、光ファイバーは、複合材中に不規則的に存在していても、または光ファイバー束に配列されていてもよい。光ファイバー物品は、1つ以上の光ファイバー束を含んでいてもよい。この場合、光ファイバー束は、複合材中に不規則的に存在していても、またはファイバー束群に配列されていてもよい。光ファイバー物品は、1つ以上の光ファイバー束群を含んでいてもよい。
【0124】
実施形態において、光ファイバー物品は、少なくとも1本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも2本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも3本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも5本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも7本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも9本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも10本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも11本の光ファイバーを含む。特に好ましい実施形態において、光ファイバー物品は、少なくとも15本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも50本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも100本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも300本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも700本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも1,600本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも2,800本の光ファイバー、さらに好ましくは少なくとも4,700本の光ファイバーを含む。
【0125】
光ファイバー束を、接着剤でまとめて接着して例えばより大きな複合材にしても、かつ/またはスリーブ内に埋め込んでもよい。好ましい実施形態において、光ファイバー物品は接着剤層を有しない。一実施形態において、光ファイバー物品は、機能層に加えて、機能層の上または中に配置され得る1種以上の接着剤を含む。そして、光ファイバー物品は、少なくとも部分的に、官能性シランと反応性接着剤成分との反応生成物を有し得る。好ましくは、光ファイバー物品全体が接着剤で接着されるのではなく、物品の部分領域のみが、官能性シランと少なくとも1種の接着剤との反応生成物を有する。一実施形態において、光ファイバー物品は、機能層の上または中に、1種以上の接着剤を、最大25mm、特に最大15mmまたは最大10mmの長さにわたってのみ有する。光ファイバー物品のあまりに大きな区分が接着されると、ファイバー破断の危険が上昇する。一実施形態において、光ファイバー物品は、機能層の上または中に、1種以上の接着剤を、少なくとも1mm、特に少なくとも3mmの長さにわたって有する。
【0126】
光ファイバーを互いにまたは他の材料と接着することが可能な、本発明により使用可能な接着剤は、例えば、エポキシ樹脂接着剤、アクリレート接着剤、シアン接着剤、ポリウレタン接着剤、シリコーン接着剤、フェノール樹脂接着剤、ポリスルフィド接着剤および/またはビスマレイミド接着剤である。実施形態において、ファイバー物品は、接着剤を、10重量%未満、さらに好ましくは8重量%未満、さらに好ましくは6重量%未満、さらに好ましくは4重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.8重量%未満、さらに好ましくは0.6重量%未満、さらに好ましくは0.4重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満有する。
【0127】
好ましくは、光ファイバー物品は、光ファイバー上の機能層の割合が、最大10重量%、さらに好ましくは最大8重量%、さらに好ましくは最大6重量%、さらに好ましくは最大4重量%、さらに好ましくは最大2重量%、さらに好ましくは最大1重量%、さらに好ましくは最大0.5重量%、さらに好ましくは最大0.2重量%、さらに好ましくは最大0.1重量%である。好ましくは、光ファイバー物品は、光ファイバー上の保護層の割合が、少なくとも0.001重量%、さらに好ましくは少なくとも0.005重量%、さらに好ましくは少なくとも0.009重量%、さらに好ましくは少なくとも0.012重量%、さらに好ましくは少なくとも0.02重量%、さらに好ましくは少なくとも1重量%、さらに好ましくは少なくとも0.04重量%、さらに好ましくは少なくとも0.06重量%、さらに好ましくは少なくとも0.08重量%である。好ましい実施形態において、光ファイバー物品は、光ファイバー上の保護層の割合が、0.001~10重量%、さらに好ましくは0.005~8重量%、さらに好ましくは0.009~6重量%である。保護層の割合が低過ぎると、光ファイバーは、機械的安定性、化学的安定性および熱的安定性が損なわれる。保護層の割合が高過ぎると、例えば光ファイバー束において、光ファイバーのまとまりが低減する。
【0128】
好ましくは、機能層は、厚さが、少なくとも0.1nm、さらに好ましくは少なくとも0.9nm、さらに好ましくは少なくとも1.2nm、さらに好ましくは少なくとも1.5nm、さらに好ましくは少なくとも1.8nm、さらに好ましくは少なくとも2.1nm、さらに好ましくは少なくとも3nmである。好ましくは、機能層は、厚さが、最大500nm、さらに好ましくは最大200nm、さらに好ましくは最大100nm、さらに好ましくは最大50nm、さらに好ましくは最大20nmである。機能層の厚さが小さ過ぎると、光ファイバーは、機械的安定性、化学的安定性および熱的安定性が損なわれる。機能層の厚さが大き過ぎると、例えば光ファイバー束において、光ファイバーのまとまりが低減する。
【0129】
光ファイバーは、好ましくは少なくとも1つの機能層を含む。実施形態において、光ファイバーは、少なくとも2つの機能層、少なくとも3つの機能層または少なくとも4つの機能層を含む。複数の機能層は、光ファイバーの曲げ強度を向上させ、マイクロクラックに対する保護性を向上させる。
【0130】
好ましくは、光ファイバー物品の製造方法は、以下のステップ:
a. 少なくとも1本の光ファイバーを用意するステップ、
b. 光ファイバーの少なくとも一部を集束剤でコーティングするステップ、
c. 集束剤を乾燥させるステップ
を含む。
【0131】
例えば、光ファイバーは、例えばプリフォームから当業者に既知の引抜法により、またはノズル法により用意することが可能である。
【0132】
光ファイバーのコーティングは、当業者に既知の方法に従って行うことが可能であり、例えば、浸漬浴中で行うことが可能であるか、ファイバーを噴霧することにより行うことが可能であるか、またはロール・ツー・ロール法で行うことが可能である。
【0133】
乾燥した集束剤により機能層が形成される。集束剤の乾燥は、機能層の特性に影響を与える。機能層は、好ましくはガス混合物により乾燥させられる。好ましい実施形態において、ガス混合物は空気である。
【0134】
ガス混合物の空中湿度は、機能層の乾燥および材料特性に影響を与える。空中湿度という用語は、相対空中湿度を指す。好ましくは、ガス混合物は、空中湿度が、少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも25%、さらに好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも35%である。好ましくは、ガス混合物は、空中湿度が、最大95%、さらに好ましくは最大85%、さらに好ましくは最大75%、さらに好ましくは最大60%、それよりもさらに好ましくは最大55%である。好ましい実施形態において、ガス混合物は、空中湿度が、10%~95%、15%~85%または20%~60%である。ガス混合物の空中湿度が低過ぎると、特に、官能性シランおよび/または任意のアルキルシランおよび/または任意のPEGシランは、ファイバーの表面と反応しにくくなる。それにより、機能層はファイバーに付着しにくくなる。ガス混合物の空中湿度が高過ぎると、集束剤の乾燥が遅過ぎて、光ファイバーの機械的耐久性および耐薬品性が損なわれる。さらに、空中湿度が高過ぎると、機能層中の水および/または水混和性溶媒の残留量が多くなり過ぎる。
【0135】
温度は、機能層の乾燥および材料特性に影響を与える。温度とは、乾燥中にファイバーを囲むガス混合物の温度、ならびに/またはファイバーが乾燥時に接触し得る場合によって存在する接触表面、例えば、加熱されたまたは加熱されていないスプールおよび/もしくは他のファイバーの温度を指す。好ましくは、ファイバーは、乾燥中に、最大120℃、さらに好ましくは最大100℃、さらに好ましくは最大80℃、さらに好ましくは最大50℃、さらに好ましくは最大40℃、それよりもさらに好ましくは最大30℃の温度に曝される。好ましくは、ファイバーは、乾燥中に、少なくとも8℃、さらに好ましくは少なくとも15℃、さらに好ましくは少なくとも18℃、さらに好ましくは少なくとも20℃、さらに好ましくは少なくとも21℃、それよりもさらに好ましくは少なくとも22℃の温度に曝される。好ましい実施形態において、ファイバーは、乾燥中に、8~120℃、さらに好ましくは15~100℃、さらに好ましくは18~30℃の温度に曝される。乾燥中のガス混合物の温度が高過ぎると、不所望な化学副反応および不所望な副生成物が生じる。さらに、乾燥中のガス混合物の温度が高過ぎると、ファイバーの表面への機能層の付着性が悪化する。乾燥中のガス混合物の温度が低過ぎると、集束剤の乾燥が遅過ぎて、光ファイバーの機械的化学的な耐久性が損なわれ、機能層の水および/または水性溶媒の残留量が多くなり過ぎる。
【0136】
多くの場合、集束剤は、硬化のためにUV線が照射される。しかしながら、光ファイバー物品は、いかなる硬化プロセスにもかけられず、UV線により乾燥させられないことが好ましい。
【0137】
一実施形態において、本方法は、乾燥した集束剤(乾燥集束剤)を液体成分で処理して湿潤集束剤を機能層として得るステップを含み、液体成分は1013hPaで100℃超または200℃超の沸点を有する。液体成分は、シリコーン油、ポリエチレングリコール、アルコール(例えば、長鎖または多価)、エステル、エーテル、ケトン、アセタートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。乾燥集束剤は、一般的に、液体成分を、50重量%未満、特に35重量%未満含む。湿潤集束剤は、液体成分を、少なくとも35重量%、特に最大85重量%含むことが好ましい。一実施形態において、湿潤集束剤における液体成分の割合は、35~65重量%である。
【0138】
本発明によると、そのような湿潤集束剤を機能層として有する光ファイバー物品も、特に本明細書に記載の方法により製造可能である。湿潤集束剤を有する光ファイバー物品は、本明細書において有利であると記載された特徴を有することができるが、ただし機能層は、湿潤集束剤について記載された液体成分の割合を少なくとも35重量%有する。
【0139】
ガラスファイバー束の加工において、機能層としてのいわゆる乾燥集束剤と湿潤集束剤とを区別する。湿潤集束剤の場合、個々のファイバーが束でまとめて接着される。よって、個々のファイバーがそれほど扇型に広がらないこと、および静電気の帯電も少なくなることを達成できる。よって、例えば、ファイバー束をスリーブに通すことが大幅に容易化され得ることを達成でき、これは、組立作業を減らすのに役立つ。よって、特に、ファイバー充填密度の増加も達成でき、それにより、光束の伝送が改善される。さらに、特にライトガイドが比較的長い場合に、組立処理が同様に単純化される。
【0140】
それに対して、乾燥集束剤を使用する場合、個々のファイバーはまとめて接着しにくくなる。これは、例えば、より均一な照明を達成するために個々のファイバーを個別にかつ/または束でさらに混合する必要がある場合(いわゆる「ランダム化プロセス」とも称される)に、またはマルチアーム(mehrarmigen)の束において、個々のアームのファイバーを可能な限り均一に、すなわち統計的に良好に分散させて共通の最終スリーブに取り付ける必要がある場合に、有利である。したがって、この場合、湿潤集束剤は、どちらかというと妨げになるだろう。
【0141】
本発明のアプローチによると、最初に乾燥集束剤をファイバー物品上に機能層として設けることが可能な点が有利である。高沸点、好ましくは100℃超、より好ましくは200℃超の沸点を有する液体である液体成分を添加することによって初めて、乾燥集束剤から顧客独自または用途固有の湿潤集束剤を提供することができ、これは、製造プロセスにおいて明らかな利点である。基本的には、最初にファイバー物品に乾燥集束剤を施与し、必要に応じて、後続のコーティングプロセスで液体成分を追加することが考えられる。よって、顧客の要望または用途に応じて、集束剤の特性を狙い通りに設定することが可能である。ここで、液体成分は、以下の構成要素のうちの少なくとも1つから構成され得る。液体成分の構成要素としては、シリコーン油、ポリエチレングリコール、アルコール(例えば、長鎖または多価)、エステル、エーテル、ケトン、アセタートおよびそれらの組み合わせが適している。ファイバー物品上の機能層中の液体成分の濃度は、乾燥集束剤の場合、一般的に50重量%未満、好ましくは35重量%未満である。湿潤集束剤の場合、この割合は、少なくとも35重量%、一般的に35~65重量%の範囲にある。
【0142】
ファイバー束中の光ファイバー物品は、ライトガイドおよび/またはイメージガイドとして使用されることが好ましい。例えば、光ファイバー物品は、内視鏡、検査カメラ、顕微鏡および/または分光器において使用することが可能である。
【0143】
光ファイバー物品は、診断法または治療法において使用されることが好ましい。例えば、光ファイバー物品は、内視鏡検査および/またはフレキシブル検査カメラを用いた手術において使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【
図1】ファイバーコア(1)とクラッド(2)とを有する光ガラスファイバーの概略図である。機能層(3)は、共有結合のシロキサン結合(4)と非共有結合の水素架橋結合(5)とを介してクラッド層の表面と結合している。機能層は、例えば、アルキルシラン(6)、アミノシラン(7)、ポリエチレングリコール(8)および脂肪酸(9)を含む。
【
図2】例E14のFTIR-ATRスペクトルを示す。
【
図3】例E18のFTIR-ATRスペクトルを示す。
【
図4】市販のファイバー物品のFTIR-ATRスペクトルを示す。
【
図5】市販のファイバー物品のFTIR-ATRスペクトルを示す。
【
図6】市販のファイバー物品のFTIR-ATRスペクトルを示す。
【
図7】集束剤溶液の使用期間の関数としての破断ループ試験で達成された曲げ半径を、従来技術からの集束剤溶液(個別の値)と比較して示す。
【
図8】頻繁な温度変化後の破断ループ試験における本発明によるファイバーの曲げ半径の変化を示す。
【
図9】数百回の洗浄および滅菌サイクル後の、本発明によるファイバー束の光透過率の変化を示す。
【
図10】本発明によるコーティングを備えるファイバーを用いて繰り返し曲げた後に達成される照射強度の変化を、官能性シランなしの従来技術と比較して示す。
【0145】
実施例
例E1
集束剤溶液を製造するために、1Lの実験室用ガラス瓶内で、エタノールと、脱イオン水と、酢酸とからの溶液に、以下の成分(それぞれSigma Aldrich製)を量り入れ、実験室標準の磁気撹拌プレート上で少なくとも1時間にわたり撹拌した。
【0146】
【0147】
例E2~E22
集束剤溶液を製造するために、1Lの実験室用ガラス瓶内で、エタノールと、脱イオン水と、任意で酢酸と、任意で例えばジプロピレングリコールモノメチルエーテルまたはトリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのさらなる溶媒との溶液に、表1、表2および表3に記載の成分(それぞれSigma Aldrich製)を量り入れ、実験室標準の磁気撹拌プレート上で少なくとも1時間にわたり撹拌した。表1は、例E2~E18の成分を、エタノール、脱イオン水または酢酸などの溶媒なしで、相対重量%で示す。PEG-Si=2-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)9-12プロピル]トリメトキシシラン、Ami-Si=N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、Alk-Si=トリメトキシ(オクチル)シラン。続いて、この集束剤溶液をロール・ツー・ロール法で光ファイバーに施与し、室温で乾燥させた。表1は、押出力、および押出試験でファイバー-スリーブ(F-H)の結合またはファイバー-ファイバー(F-F)の結合が破壊されたかどうかに関する情報も示す。さらに、破断長さも記載されている。
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
集束剤溶液でコーティングされた光ファイバーのガラスファイバー束から、IRスペクトルを測定した。この測定は1つのガラスファイバー束について実施した。この目的のために、ガラスファイバー束を測定装置のATR結晶に複数回押し付けた。ここでは、少量の集束剤を結晶に移して測定した。試料E14のFTIR-ATRスペクトルは
図2に示されており、試料E18のFTIR-ATRスペクトルは
図3に示されている。
【0152】
例E23およびE24
例E2~E22に記載のように、集束剤溶液を、水およびエタノールを使用して、ただし酢酸なしで製造した。
【0153】
【0154】
押出力は、どちらの集束剤溶液においても非常に良好であり、E24は、高温でのみ優れた値を達成した。
【0155】
集束剤E23でコーティングされたファイバーの曲げ半径が、当該集束剤溶液の使用期間に応じて、どのように変化するかを調査した。結果は
図7に示されている。曲げ半径は、最初は1mmをわずかに上回っており、集束剤溶液の使用期間に応じて1.6mm前後の範囲までいくらか大きくなることが分かる。288時間後に初めて、官能性シランなしの従来技術(個別の測定点)と同等の曲げ半径に達する。
【0156】
図8は、ファイバーを頻繁な温度変化に曝した後に破断ループ試験の結果がどのように変化するかを示す。ここでは、束を、空中湿度0%にて、2K/分の速度で、-40℃から+80℃まで、50回冷却または加熱した。E23およびE24で処理されたファイバーは、破断ループ試験において、試験後に、試験前と同じ非常に良好な結果を示すことが分かった。従来技術による集束剤でコーティングされた比較用ファイバー(官能性シランなし)は、著しい劣化を示した。85℃および空中湿度85%での400時間にわたる保管でも、90℃の熱水中での10日間にわたる保管でも、同程度に良好な結果が得られた。
【0157】
集束剤溶液で被覆されたファイバー束を用いて、それらの透過率が大きな洗浄負荷においてどの程度悪化したかを調べた。この目的のために、ファイバー束を500サイクルの洗浄および続く熱消毒に供し、その際、20回の洗浄ステップの後に、それぞれ50回の滅菌ステップを行った。
図9は、本発明による集束剤(正方形=E23;三角形=E24)で処理されたファイバーの透過率はわずかに悪化して約97%になり、比較用の束(円;官能性シランなし)は部分的に90%まで低下したことを示す。これらのデータは、優れた耐薬品性および加水分解安定性を示す。
【0158】
図10は、IEC 60794-1-6/E6に従って、曲げ角度-90°~+90°、サイクル時間2秒、および軸方向荷重5Nで、曲げ半径2mmまで繰り返し曲げた後に得られる照射強度の変化を示す。集束剤溶液E23(正方形)が最良の結果をもたらすことが分かる。E24(三角形)は、官能性シランなしの従来技術(菱形)よりも良好である。
【符号の説明】
【0159】
1 ファイバーコア
2 クラッド
3 機能層
4 機能層のアルキルシランとクラッド層の表面とのシロキサン結合
5 クラッド層の表面の官能基と機能層のポリエチレングリコールとの水素架橋結合
6 アルキルシラン
7 アミノシラン
8 ポリエチレングリコール
9 脂肪酸