(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】CO2回収システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20241223BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20241223BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20241223BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20241223BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20241223BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20241223BHJP
【FI】
B01D53/62
F23J15/00 Z ZAB
B01D53/82
B01D53/96
B01D53/04 110
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2020180535
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】國枝 雅文
(72)【発明者】
【氏名】川口 章秀
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196286(JP,A)
【文献】特開2019-089030(JP,A)
【文献】特開2015-229603(JP,A)
【文献】特開2019-128786(JP,A)
【文献】国際公開第2020/092272(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96
B01D 53/02-53/12
F23J 13/00-99/00
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事業所に設置された小型発電装置によりCO
2を発生させるCO
2発生手段、及び、発生したCO
2を回収するCO
2回収手段を有しており、前記CO
2回収手段がCO
2回収運転を行うことによりCO
2を回収する、CO
2回収機構と、
CO
2需要者によりCO
2の需要情報が入力される入力部、及び、前記入力部から入力された前記需要情報を送信する送信部を有するCO
2需要者端末と、
前記CO
2需要者端末の前記送信部から送信された前記需要情報を受信する受信部、前記受信部で受信した前記需要情報に基づいて前記CO
2回収機構で回収するCO
2回収量を演算する演算部、及び、前記演算部において演算されたCO
2回収量情報を前記CO
2回収機構に送信する送信部を有する需要情報処理端末と、
前記CO
2
回収機構で回収されたCO
2
を貯蔵するCO
2
貯蔵機構と、を備えており、
前記CO
2回収機構は前記需要情報処理端末の前記送信部から送信された前記CO
2回収量情報を受信する受信部を有し、前記受信部で受信した前記CO
2回収量情報に基づきCO
2回収運転を行
い、
前記CO
2
貯蔵機構は、前記CO
2
貯蔵機構に貯蔵されているCO
2
貯蔵量を記憶するCO
2
貯蔵量記憶部、及び、前記CO
2
貯蔵量記憶部に記憶されているCO
2
貯蔵量情報を前記需要情報処理端末に送信する送信部を有し、
前記需要情報処理端末は、前記受信部において前記CO
2
貯蔵機構の前記送信部から送信された前記CO
2
貯蔵量情報を受信し、前記演算部では、受信した前記CO
2
貯蔵量情報をさらに使用して、前記CO
2
回収機構で回収するCO
2
回収量を演算する、ことを特徴とする、CO
2回収システム。
【請求項2】
前記演算部では、さらに、前記CO
2回収機構により回収されたCO
2をCO
2需要者に配送するためのCO
2配送経路を演算し、
前記需要情報処理端末の前記送信部から、前記演算部において演算されたCO
2配送経路情報を配送者が所有する配送者端末に送信する、請求項1に記載のCO
2回収システム。
【請求項3】
前記需要情報は、CO
2の納入形態、CO
2の必要量、配送場所、希望配送時間、及び、希望購入価格からなる群から選択された少なくとも1つの情報である請求項1又は2に記載のCO
2回収システム。
【請求項4】
前記CO
2発生手段が事業所に設置されたコジェネレーションシステムである請求項1~
3のいずれかに記載のCO
2回収システム。
【請求項5】
前記演算部では、CO
2の需要量が少ない場合又はCO
2の価格が安い場合には、前記需要情報に基づいた演算の結果、CO
2回収運転を行わないというCO
2回収量情報を得て、前記需要情報処理端末の前記送信部から前記CO
2回収量情報を前記CO
2回収機構に送信し、
前記CO
2回収機構ではCO
2回収運転を行わない、請求項1~
4のいずれかに記載のCO
2回収システム。
【請求項6】
前記CO
2回収手段は、CO
2の吸脱着を行う反応層と前記反応層を加熱するための加熱層が交互に積層されたCO
2回収用の構造体を備えており、前記反応層は、基体と、担持体と、担持体に担持されたCO
2を吸脱着する吸着剤とからなる請求項1~
5のいずれかに記載のCO
2回収システム。
【請求項7】
CO
2回収システムが運用される範囲が、1つの前記CO
2回収機構から50km以内のCO
2需要者が含まれる範囲である請求項1~
6のいずれかに記載のCO
2回収システム。
【請求項8】
前記入力部は、前記CO
2需要者端末に提供されるアプリケーションである請求項1~
7のいずれかに記載のCO
2回収システム。
【請求項9】
前記演算部は、CO
2回収システムが運用される範囲の気象条件を入力、CO
2の需要情報を出力とする教師データに基づき、前記気象条件と前記需要情報の関係を学習した学習済みの人工知能モデルを備え、
前記演算部では、CO
2回収システムが運用される範囲の気象条件を前記学習済みの人工知能モデルへ入力して、CO
2の需要情報を推定し、前記受信部で受信した前記需要情報と、前記人工知能モデルにより推定した需要情報の両方に基づいて、前記CO
2回収機構で回収するCO
2回収量を演算する請求項1~
8のいずれかに記載のCO
2回収システム。
【請求項10】
前記演算部は、CO
2回収システムが運用される範囲の特定のCO
2需要者からの過去の需要情報の履歴を入力、当該CO
2需要者から受信する需要情報を出力とする教師データに基づき、前記CO
2需要者からの過去の需要情報とCO
2需要者から受信する需要情報の関係を学習した学習済みの人工知能モデルを備え、
前記演算部では、当該CO
2需要者からの過去の需要情報の履歴を前記学習済みの人工知能モデルへ入力して、当該CO
2需要者からのCO
2の需要情報を推定し、前記受信部で受信した前記需要情報と、前記人工知能モデルにより推定した需要情報の両方に基づいて、前記CO
2回収機構で回収するCO
2回収量を演算する請求項1~
9のいずれかに記載のCO
2回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO2)の濃度が、大気温の上昇や、台風、洪水などの自然災害の機会が上昇する地球温暖化との強い相関性を示すことが広く知られている。発電所、石油精製所、セメント工場及び鉄鋼生産プロセスなどの産業では、各プラントから多量のCO2を放出しており、このようなCO2の放出量を如何にして低減させるかは、大きな問題となっている。
【0003】
CO2の放出量を低減させる方法として、排ガス中のCO2の回収を行う技術がいくつか提案されている。
特許文献1には、排ガス中のCO2を回収する費用とCO2の排出権市場でのCO2の排出権取引金額とに基づいてCO2の回収量を算出する計算システムが開示されている。
また、特許文献2には、CO2回収装置を含む発電設備の運転に応じて生じる収入価格から、CO2回収装置を含む発電設備の運転に応じて生じる支出価格を差し引いた評価指数が最大となるようにする発電設備用CO2回収装置の運転制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-169282号公報
【文献】特開2012-245430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CO2は、放出量を低減する対象である一方で、炭酸飲料や入浴剤等を製造するための炭酸ガスとしての用途、ドライアイスとしての用途、アーク溶接のシールドガス用途、炭酸ガスレーザーとしての用途等、多数の用途がある。そして、これらの用途に使用するためにCO2を必要とする需要者が全国に数多く存在する。
【0006】
工業製品としてのCO2は、製鉄所や石油精製所から排出される副生炭酸ガスを原料として、精製されることにより得られる。現在、日本国内においてCO2を生産するプラントは数カ所しかないが、その一方で、CO2を必要とする需要者は全国に数多く存在するためCO2の長距離輸送が必要となっていた。
また、CO2を外国から輸入する場合もあるが、この場合もCO2の長距離輸送が必要となっていた。
【0007】
CO2の放出量を低減させることが求められている中で、CO2の長距離輸送が必要となるという状態は好ましくない。そのため、CO2を供給する場所とCO2を必要とする需要者の距離を近づけて、CO2の長距離輸送を行わなくてもよいようにすることが求められている。
【0008】
上述の特許文献1及び2には、CO2を回収することが記載されているが、回収したCO2をどのように扱うかについては記載されていない。
【0009】
CO2を生産するプラントという大規模な施設の形ではなく、小規模なCO2排出源をCO2供給源として利用し、当該排出源から排出されたCO2を回収して、回収したCO2をCO2の需要者に供給することができれば、CO2の長距離輸送を行う必要が無くなる。
【0010】
本発明は、上記のような背景に基づきなされたものであり、CO2の長距離輸送を行わずに、需要者の近くでCO2を回収して、回収したCO2を需要者が使用することができるCO2回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明のCO2回収システムは、事業所に設置された小型発電装置によりCO2を発生させるCO2発生手段、及び、発生したCO2を回収するCO2回収手段を有しており、上記CO2回収手段がCO2回収運転を行うことによりCO2を回収する、CO2回収機構と、
CO2需要者によりCO2の需要情報が入力される入力部、及び、上記入力部から入力された上記需要情報を送信する送信部を有するCO2需要者端末と、
上記CO2需要者端末の上記送信部から送信された上記需要情報を受信する受信部、上記受信部で受信した上記需要情報に基づいて上記CO2回収機構で回収するCO2回収量を演算する演算部、及び、上記演算部において演算されたCO2回収量情報を上記CO2回収機構に送信する送信部を有する需要情報処理端末と、を備えており、
上記CO2回収機構は上記需要情報処理端末の上記送信部から送信された上記CO2回収量情報を受信する受信部を有し、上記受信部で受信した上記CO2回収量情報に基づきCO2回収運転を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明のCO2回収システムでは、事業所に設置された小型発電装置をCO2発生手段として利用する。小型発電装置はCO2回収システムが設けられる地域に存在する事業所に設置される装置であるので、小型発電装置をCO2発生手段とすることは、地域ごとにCO2発生手段を設置したこと同義となる。
そして、事業所に設置された小型発電装置ごとにCO2回収手段を有している。そのため、小型発電装置で発生させたCO2はCO2回収手段により回収される。回収されたCO2は、ボンベ等の形で運搬可能な形態とすることができ、このボンベを同じ地域に存在するCO2需要者に渡すことによって、CO2の長距離輸送を行うことなく、CO2の供給源とCO2需要者を繋ぐ(マッチングさせる)ことができる。
【0013】
CO2発生とCO2回収は、CO2が需要者に必要とされているときに行なうことが好ましい。裏を返せば、CO2が需要者に必要とされていないときにはCO2発生とCO2回収を行わないようにすることが好ましい。
このような背景を踏まえて、CO2の需要とCO2発生及びCO2回収を繋ぐ処理が需要情報処理端末により行われる。
【0014】
CO2需要者によりCO2の需要情報がCO2需要者端末の入力部に入力されて、当該需要情報が需要情報処理端末に送信される。
需要情報処理端末は演算部を有しており、演算部では当該需要情報に基づいてCO2回収機構で回収するCO2回収量を演算する。そして、演算されたCO2回収量情報をCO2回収機構に送信する。
CO2回収機構は、受信したCO2回収量情報に基づきCO2回収運転を行う。
このようにすることにより、CO2の需要情報に応じて最適なCO2回収を行うことができる。
すなわち、本発明のCO2回収システムによると、需要者の近くでCO2を回収して、回収したCO2を需要者が使用することができる。
【0015】
本発明のCO2回収システムにおいて、上記演算部では、さらに、上記CO2回収機構により回収されたCO2をCO2需要者に配送するためのCO2配送経路を演算し、
上記需要情報処理端末の上記送信部から、上記演算部において演算されたCO2配送経路情報を配送者が所有する配送者端末に送信することが好ましい。
演算部において、CO2の回収量の演算に加えてCO2配送経路の演算も行うことで、より効率的にCO2の供給源とCO2需要者を繋ぐことができる。
例えば、CO2需要者が複数存在する場合などには、CO2配送経路を効率化することによって配送に係るCO2の排出量を減らすことができる。
【0016】
本発明のCO2回収システムにおいて、上記需要情報は、CO2の納入形態、CO2の必要量、配送場所、希望配送時間、及び、希望購入価格からなる群から選択された少なくとも1つの情報であることが好ましい。
これらの需要情報に応じて、いつ頃、どのような形態で、どの程度の量のCO2回収を行うかを演算部において定めることができる。
また、CO2の希望購入価格が安く、CO2回収した場合に採算が合わない場合には、CO2回収を行わないようにするという判断をすることもできる。
【0017】
本発明のCO2回収システムは、上記CO2回収機構で回収されたCO2を貯蔵するCO2貯蔵機構をさらに備えていることが好ましい。
回収したCO2をボンベ等の形でCO2貯蔵機構に貯蔵することで、CO2の需要が急激に増加した場合に、CO2回収を無駄に行わせることなく、CO2の需要増に対応することができる。
また、CO2配送経路を演算する際に、CO2貯蔵機構を配送経路におけるCO2の補充地点として加えるようにしてもよい。
【0018】
本発明のCO2回収システムにおいて、上記CO2貯蔵機構は、上記CO2貯蔵機構に貯蔵されているCO2貯蔵量を記憶するCO2貯蔵量記憶部、及び、上記CO2貯蔵量記憶部に記憶されているCO2貯蔵量情報を上記需要情報処理端末に送信する送信部を有し、
上記需要情報処理端末は、上記受信部において上記CO2貯蔵機構の上記送信部から送信された上記CO2貯蔵量情報を受信し、上記演算部では、受信した上記CO2貯蔵量情報をさらに使用して、上記CO2回収機構で回収するCO2回収量を演算することが好ましい。
【0019】
CO2回収量を演算する際に、CO2の需要情報に加えて、CO2貯蔵量の情報を使用することにより、CO2回収機構で回収するCO2回収量をより最適な値として演算することができる。同じ量のCO2の需要がある場合を想定したときに、CO2貯蔵量が多い場合にはCO2回収を行わないほうがよく、CO2貯蔵量が少ない場合にはCO2回収を行うほうがよいといったケースが考えられるので、CO2貯蔵量の情報を使用することは有用である。
【0020】
本発明のCO2回収システムにおいては、上記CO2発生手段が事業所に設置されたコジェネレーションシステムであることが好ましい。
近年、環境意識の高まりから事業所にコジェネレーションシステムが設置される例が増えている。コジェネレーションシステムをCO2発生手段として使い、コジェネレーションシステムにCO2回収手段を併設させることにより、CO2回収機構の設置数を多くすることができる。
【0021】
本発明のCO2回収システムにおいて、上記演算部では、CO2の需要量が少ない場合又はCO2の価格が安い場合には、上記需要情報に基づいた演算の結果、CO2回収運転を行わないというCO2回収量情報を得て、上記需要情報処理端末の上記送信部から上記CO2回収量情報を上記CO2回収機構に送信し、
上記CO2回収機構ではCO2回収運転を行わないことが好ましい。
【0022】
CO2回収運転を行ってCO2を回収したとしても、回収したCO2の需要が無いか、CO2回収した場合に採算が合わない場合には、CO2回収運転を行わないようにする。そのようにすることで、CO2回収システムの運用が赤字になることを避けて、採算がとれる形で継続的にCO2回収システムの運用をすることができる。
【0023】
本発明のCO2回収システムにおいて、上記CO2回収手段は、CO2の吸脱着を行う反応層と上記反応層を加熱するための加熱層が交互に積層されたCO2回収用の構造体を備えており、上記反応層は、基体と、担持体と、担持体に担持されたCO2を吸脱着する吸着剤とからなることが好ましい。
上記CO2回収手段では、CO2の吸脱着を行う反応層と上記反応層を加熱するための加熱層が交互に積層されており、上記反応層は、上記加熱層と接触面積が大きいので、加熱層により効率よく反応層を加熱することができる。また、CO2の脱吸着を行う反応層とは別に加熱層を設けているので、熱源と反応層の吸着剤は直接接触せず、加熱層の熱源として安価な水蒸気を用いることができ、反応層に吸着した水を蒸発させる必要がなく、CO2を効率よく、低コストで吸脱着することができる。
なお、本明細書において、吸脱着は、吸着、脱着のほか、吸収、放出も含んだ意味として用いることとする。また、吸着剤は、CO2を吸着、吸収し、所定の温度で脱着、放出する物質を意味する。
【0024】
本発明のCO2回収システムにおいて、CO2回収システムが運用される範囲が、1つの上記CO2回収機構から50km以内のCO2需要者が含まれる範囲であることが好ましい。
本発明のCO2回収システムでは、上記範囲のような狭い地域の中でCO2回収とCO2使用のサイクルを回すことができる。
【0025】
本発明のCO2回収システムにおいては、上記入力部は、上記CO2需要者端末に提供されるアプリケーションであることが好ましい。
CO2需要者が所有するCO2需要者端末において需要者が自らCO2の需要情報を入力できるようにしておくと、ネットワーク上でCO2の供給源とCO2の需要者を繋ぐ(マッチングさせる)ことができる。
【0026】
本発明のCO2回収システムにおいて、上記演算部は、CO2回収システムが運用される範囲の気象条件を入力、CO2の需要情報を出力とする教師データに基づき、上記気象条件と上記需要情報の関係を学習した学習済みの人工知能モデルを備え、
上記演算部では、CO2回収システムが運用される範囲の気象条件を上記学習済みの人工知能モデルへ入力して、CO2の需要情報を推定し、上記入力手段に入力されて上記受信部により受信した上記需要情報と、上記人工知能モデルにより推定した需要情報の両方に基づいて、上記CO2回収機構で回収するCO2回収量を演算することが好ましい。
【0027】
CO2の需要に影響を与える要因として気象条件が挙げられる。例えば気温が高い場合には炭酸飲料用の炭酸ガスや冷蔵用のドライアイスの需要が高まるため、CO2の需要が高まることが考えられる。気象条件等のCO2の需要に影響を与える要因とCO2の需要情報の関係を学習させた人工知能モデルを用いてCO2の需要情報を推定した結果を、CO2回収機構で回収するCO2回収量の演算に用いると、CO2の需要の増加を事前予測して事前にCO2回収量を多くしておく等の措置を取ることができる。そのため、CO2の需要量の増減にも対応可能なCO2回収システムとすることができる。
【0028】
本発明のCO2回収システムにおいて、上記演算部は、CO2回収システムが運用される範囲の特定のCO2需要者からの過去の需要情報の履歴を入力、当該CO2需要者から受信する需要情報を出力とする教師データに基づき、上記CO2需要者からの過去の需要情報とCO2需要者から受信する需要情報の関係を学習した学習済みの人工知能モデルを備え、
上記演算部では、当該CO2需要者からの過去の需要情報の履歴を上記学習済みの人工知能モデルへ入力して、当該CO2需要者からのCO2の需要情報を推定し、上記入力手段に入力されて上記受信部により受信した上記需要情報と、上記人工知能モデルにより推定した需要情報の両方に基づいて、上記CO2回収機構で回収するCO2回収量を演算することが好ましい。
【0029】
CO2需要者からの過去の需要情報の履歴と、CO2の需要情報の関係を学習させた人工知能モデルを用いてCO2の需要情報を推定した結果を、CO2回収機構で回収するCO2回収量の演算に用いると、当該需要者に対するCO2の需要の増加を事前予測して事前にCO2回収量を多くしておく等の措置を取ることができる。そのため、CO2の需要量の増減にも対応可能なCO2回収システムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明のCO
2回収システムの構成とCO
2回収システムにおける情報の流れの一例を模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、CO
2回収用の構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明のCO
2回収システムにおいてCO
2が授受される流れの一例を模式的に示すブロック図である。
【0031】
(発明の詳細な説明)
[CO2回収システム]
本発明のCO2回収システムは、事業所に設置された小型発電装置によりCO2を発生させるCO2発生手段、及び、発生したCO2を回収するCO2回収手段を有しており、上記CO2回収手段がCO2回収運転を行うことによりCO2を回収する、CO2回収機構と、
CO2需要者によりCO2の需要情報が入力される入力部、及び、上記入力部から入力された上記需要情報を送信する送信部を有するCO2需要者端末と、
上記CO2需要者端末の上記送信部から送信された上記需要情報を受信する受信部、上記受信部で受信した上記需要情報に基づいて上記CO2回収機構で回収するCO2回収量を演算する演算部、及び、上記演算部において演算されたCO2回収量情報を上記CO2回収機構に送信する送信部を有する需要情報処理端末と、を備えており、
上記CO2回収機構は上記需要情報処理端末の上記送信部から送信された上記CO2回収量情報を受信する受信部を有し、上記受信部で受信した上記CO2回収量情報に基づきCO2回収運転を行うことを特徴とする。
【0032】
図1は、本発明のCO
2回収システムの構成とCO
2回収システムにおける情報の流れの一例を模式的に示すブロック図である。
図1における矢印は各要素間で伝達される情報の流れる向きを示している。
図1には、CO
2回収システム1の構成要素として、CO
2回収機構10、CO
2需要者端末20、需要情報処理端末30、CO
2貯蔵機構40及び配送者端末50を示している。
以下、これらの各構成要素について説明するとともに、各構成要素間の情報の流れを併せて説明する。
【0033】
[CO2回収機構]
CO2回収機構10は、CO2発生手段11、CO2回収手段12及び受信部13(CO2回収機構の受信部)を有する。
【0034】
CO2発生手段11は、事業所に設置された小型発電装置である。発電の際にCO2発生を伴う発電装置であるので、火力発電装置を用いることができる。また、CO2発生手段が事業所に設置されたコジェネレーションシステムであることが好ましい。
事業所にコジェネレーションシステムが設置される例が多いので、コジェネレーションシステムをCO2発生手段として使い、コジェネレーションシステムにCO2回収手段を併設させることにより、CO2回収機構の設置数を多くすることができる。
CO2発生手段11からCO2が排出される排出口とCO2回収手段12はパイプライン等で接続されており、CO2発生手段11において発生したCO2は、CO2回収手段12に送られる。
【0035】
CO2発生手段から発生したCO2含有ガスは、CO2回収手段12に導入される。CO2回収手段12においてCO2が吸着・回収される。CO2回収手段12を通過したCO2含有ガスは、煙突等を通過して排気ガスとして排出される。
【0036】
CO2回収手段12は、CO2の吸脱着を行う反応層と反応層を加熱するための加熱層が交互に積層されたCO2回収用の構造体を備えていることが好ましい。反応層は、基体と、担持体と、担持体に担持されたCO2を吸脱着する吸着剤とからなることが好ましい。
【0037】
基体は、反応層を構成する基礎となる部材であり、基体がCO2を含む気体と接触する部分に担持体が被覆され、この担持体に吸着剤が担持される。また、基体が担持体も兼ね、この担持体も兼ねた基体に吸着剤が担持されたものであってもよい。
上記基体を構成する材料は、特に限定されるものではないが、炭素、金属及び高熱伝導性セラミックからなる群から選択される少なくとも1種からなるものが挙げられる。
【0038】
担持体としては、Al2O3、TiO2、SiO2、ZrO2、ゼオライト、炭素等が挙げられる。これらは実際には、無機ゾルや有機バインダやこれらの混合物等の分散媒中に上記酸化物が分散された懸濁液を用いて、基体表面に懸濁液を付着させた後、乾燥、焼成することにより上記材料からなる担持体とすることができる。
【0039】
吸着剤としては、アミン化合物が挙げられ、具体的なアミン化合物としては、例えば、ポリエチレンイミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエチレンアミンペンタミン、メチルジエタノールアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサエチレンジアミン、ベンジルアミン、メタキシレンジアミン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
【0040】
上記アミン化合物を担持体に担持させる方法としては、例えば、アミン化合物の水溶液をハニカム構造体の貫通孔を通過させたり、アミン化合物の水溶液にハニカム構造体を浸漬させてもよい。
また、これらアミン化合物の水溶液やアルコール溶液を、担持体を構成する粒子等と混合し、充分に含浸させた後、アミン化合物を含む担持体で反応層内部の隔壁を被覆し、水やアルコールを除去してもよい。
上記の隔壁にアミン化合物を含浸させる担持工程により、上記隔壁の表面にアミン化合物由来の残基を有するCO2の吸着剤となる。
【0041】
加熱層は、板状の伝熱体もしくは発熱体からなるか、又は、加熱用の流体の流通路となる一又は複数の貫通孔を有する伝熱体からなり、反応層と接着されている。
加熱層は、炭素、金属及びセラミックからなる群から選択される少なくとも1種からなることが望ましい。
【0042】
図2は、CO
2回収用の構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2に示すように、構造体200は、CO
2を含む気体の流通路となる多数の貫通孔221が隔壁222を隔てて長手方向に並設されたセラミック製の反応層であるハニカム構造体220と、水蒸気等の熱源の流通路となる複数の貫通孔211が隔壁212を隔てて貫通孔211の延びる方向に並設された加熱層である伝熱体210とが、ハニカム構造体220の流通路(貫通孔221)と伝熱体210の流通路(貫通孔211)とが交差するように積層されている。
【0043】
また、ハニカム構造体220と伝熱体210との間には接着層230が形成され、この接着層230により、ハニカム構造体220と伝熱体210とが接着されている。
【0044】
図2に示す構造体200において、ハニカム構造体220では、左手前側及び右手奥側に貫通孔221が露出しており、伝熱体210では、右手前側及び左手奥側に貫通孔211が露出している。
従って、ハニカム構造体220では、CO
2を含む気体は、左手前側から右手奥側又は逆の方向に流れ、伝熱体210では、水蒸気等を含む気体は、右手前側から左手奥側又は逆の方向に流れ、2つの流路は、直角に交差しているので、2種類の流体(気体)を流通させ易く、伝熱体210からの熱をハニカム構造体220に効率よく伝えることができる。
【0045】
構造体200では、構造体200を構成するハニカム構造体220は、1個のハニカム構造体220より構成されているが、複数の小型のハニカム構造体を組み合わせて接着し、ハニカム構造体としてもよく、伝熱体210も複数の小型の伝熱体を組み合わせて接着し、伝熱体としてもよい。
【0046】
CO2回収手段としての構造体200を稼働させる際には、まず、CO2含有ガスがハニカム構造体220(反応層)に導入され、CO2が吸着・吸収された後、煙突を通過して排出される。
CO2を充分に吸着・吸収した構造体200の伝熱体210(加熱層)には、水蒸気ガスが導入され、伝熱体210により加熱された構造体200のハニカム構造体220からは、CO2が脱着・放出される。脱着・放出されたCO2は、CO2回収用ガスとともに、ポンプに導入され、ポンプを出た後、CO2として貯蔵され、CO2発生手段で発生したCO2が回収されることとなる。
【0047】
CO2回収機構の受信部13は、後述する需要情報処理端末30から送信されたCO2回収量情報を受信する。受信部13で受信したCO2回収量情報に基づき、CO2発生手段11及びCO2回収手段12が作動することによってCO2回収運転が行われる。
【0048】
[CO2需要者端末]
CO2需要者端末20は、入力部21及び送信部22(CO2需要者端末の送信部)を有する。
CO2需要者端末20は、CO2需要者が所有する端末であり、パソコン、タブレット、スマートフォン、その他の情報端末を使用することができる。
【0049】
入力部21は、CO2需要者端末20が備える入力装置であり、キーボード、マウス、タッチパネル、音声入力装置(スマートスピーカー等を含む)等の入力装置を使用することができる。
入力部21では、CO2需要者によりCO2の需要情報が入力される。
CO2の需要情報としては、CO2の納入形態、CO2の必要量、配送場所、希望配送時間、及び、希望購入価格からなる群から選択された少なくとも1つの情報であることが好ましい。
CO2の納入形態とは、ボンベ、ドライアイス、ガス等の形態を意味する。
CO2の必要量とは、ボンベの本数、ドライアイスの重量、ガスの重量等の必要量を意味する。
配送場所、希望配送時間はCO2需要者が配送を希望する場所と時間に関する情報である。
希望購入価格は、CO2の購入単位当たりの価格(ボンベ1本あたり、ドライアイス1kgあたり、ガス1kg等の単位当たりの価格)を意味する。
これらの情報のうち、必要な情報がCO2需要者により入力部21に入力される。
【0050】
また、入力部は、CO2需要者端末に提供されるアプリケーションであることが好ましい。
CO2需要者がCO2の需要情報を簡単に入力することのできるアプリケーションを予めCO2需要者端末にインストールしておくことにより、CO2需要者が自らCO2の需要情報を入力することができる。そして、ネットワーク上でCO2の供給源とCO2需要者を繋ぐ(マッチングさせる)ことができる。
なお、本明細書における「ネットワーク」とは電気通信回線又はインターネットを通じたネットワークを意味する。
【0051】
当該アプリケーションは、CO2需要者がCO2供給源に関する情報をネットワーク上で確認することのできる機能を備えていてもよい。CO2供給源に関する情報とは、CO2の価格に関する情報、CO2を注文した場合の納期に関する情報、CO2回収機構の稼働状況に関する情報、CO2貯蔵機構に貯蔵されたCO2の貯蔵量に関する情報等が挙げられる。
このような機能を使用する場合は、CO2需要者端末に、ネットワークからの情報を受信できる受信部を設けておけばよい。
【0052】
送信部22では、入力部21に入力された需要情報を、ネットワークを通じて後述する需要情報処理端末30に送信する。
【0053】
[需要情報処理端末]
需要情報処理端末30は、受信部31、演算部32及び送信部33を有する。
【0054】
需要情報処理端末30は、CO2回収システム1の全体を運用する運用事業者が管理することができる端末である。需要情報処理端末30としては、上記運用事業者が保有するパソコン、タブレット、スマートフォン、その他の情報処理端末を使用することができる。
【0055】
受信部31では、CO2需要者端末20の送信部22から送信された需要情報を受信する。演算部32では、受信部31で受信した需要情報に基づいてCO2回収機構10で回収するCO2回収量を演算する。
演算部32には、制御部34が設けられている。制御部34は、例えば、CPU(中央演算処理装置)、ROM(読み出し専用メモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)等を備える。制御部34が備えるROMには、演算部32において需要情報に基づいてCO2回収量を演算するためのコンピュータプログラム等が記憶される。制御部34内のCPUは、ROM又は後述する記憶部35に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、需要情報に基づいてCO2回収量を演算する処理を実現する。
制御部34が備えるRAMには、演算の実行中に利用されるデータが一時的に記憶される。
制御部34の構成は、上記構成に限定されるものではなく、その他の揮発性又は不揮発性のメモリ等を備える1又は複数の演算回路であってもよい。
【0056】
記憶部35には、制御部で使用されるコンピュータプログラムが記憶される。
記憶部35には、学習済みの人工知能モデル36を記憶させておき、演算部32において人工知能モデルを使用してCO2回収量を演算することができる。
人工知能モデルを使用したCO2回収量の演算については後述する。
また、演算部32で行うことのできる演算の具体例の説明についても後述する。
【0057】
送信部33では、演算部32において演算されたCO2回収量情報をCO2回収機構10に送信する。CO2回収機構10の受信部13は、需要情報処理端末30から送信されたCO2回収量情報を受信する。受信部13で受信したCO2回収量情報に基づき、CO2発生手段11及びCO2回収手段12が作動することによってCO2回収運転が行われる。
【0058】
本発明のCO2回収システムは、少なくともCO2回収機構、CO2需要者端末及び需要情報処理端末を備えている。
CO2需要者によりCO2の需要情報がCO2需要者端末の入力部に入力されて、当該需要情報が需要情報処理端末に送信される。
需要情報処理端末は演算部を有しており、演算部では当該需要情報に基づいてCO2回収機構で回収するCO2回収量を演算する。そして、演算されたCO2回収量情報をCO2回収機構に送信する。
CO2回収機構は、受信したCO2回収量情報に基づきCO2回収運転を行う。
このようにすることにより、CO2の需要情報に応じて最適なCO2回収を行うことができる。
すなわち、本発明のCO2回収システムによると、需要者の近くでCO2を回収して、回収したCO2を需要者が使用することができる。
【0059】
[CO
2貯蔵機構を使用するCO
2回収システム]
本発明のCO
2回収システムは、CO
2回収機構で回収されたCO
2を貯蔵するCO
2貯蔵機構をさらに備えていてもよい。
図1に示すCO
2回収システム1は、CO
2貯蔵機構40を備えている。
CO
2貯蔵機構40は、CO
2回収機構10で回収したCO
2を貯蔵する。CO
2貯蔵機構40の例としては、CO
2ボンベ41を貯蔵する倉庫等が挙げられる。
CO
2貯蔵機構40に貯蔵されるCO
2の形態はCO
2ボンベの形態に限定されるものではなく、ドライアイス等の別の形態で貯蔵されてもよい。
CO
2貯蔵機構は、CO
2回収機構と同じ敷地内にあってもよく、異なる敷地内にあってもよい。ただし、CO
2回収システムを構成するCO
2回収機構及びCO
2回収システムを使用する需要者から離れすぎていない場所にあることが好ましい。
【0060】
CO2貯蔵機構40は、CO2貯蔵機構40に貯蔵されているCO2貯蔵量を記憶するCO2貯蔵量記憶部42、及び、CO2貯蔵量記憶部42に記憶されているCO2貯蔵量情報を需要情報処理端末30に送信する送信部43を有している。
【0061】
需要情報処理端末30は、需要情報処理端末の受信部31においてCO2貯蔵機構の送信部43から送信されたCO2貯蔵量情報を受信する。演算部32では、CO2の需要情報に加えて、受信したCO2貯蔵量情報をさらに使用して、CO2回収機構10で回収するCO2回収量を演算することができる。
CO2貯蔵量情報を使用してCO2回収量を演算するように設計されたCO2回収システムでは、演算部32に設けられた制御部34又は記憶部35に、CO2の需要情報とCO2貯蔵量情報を用いてCO2回収量を演算するためのコンピュータプログラムが記憶されている。
【0062】
CO2回収量を演算する際に、CO2の需要情報に加えて、CO2貯蔵量の情報を使用することにより、CO2回収機構で回収するCO2回収量をより最適な値として演算することができる。同じ量のCO2の需要がある場合を想定したときに、CO2貯蔵量が多い場合にはCO2回収を行わないほうがよく、CO2貯蔵量が少ない場合にはCO2回収を行うほうがよいといったケースが考えられるので、CO2貯蔵量の情報を使用することは有用である。
【0063】
[配送者端末を使用するCO2回収システム]
本発明のCO2回収システムは、さらに配送者端末をその構成要素として備えていてもよい。
CO2回収システムが配送者端末を含む場合、需要情報処理端末の演算部では、さらに、CO2回収機構により回収されたCO2をCO2需要者に配送するためのCO2配送経路を演算し、需要情報処理端末の送信部から、演算部において演算されたCO2配送経路情報を配送者が所有する配送者端末に送信するようにすることが好ましい。
【0064】
図1に示すCO
2回収システム1は、配送者端末50を備えている。
配送者端末50は、CO
2回収機構により回収されたCO
2をCO
2需要者に配送する配送者が需要情報処理端末30の送信部33からCO
2配送経路情報を受信するための端末である。
本明細書における配送者とは、配送用の輸送機器(トラック等)を所有する自然人又は法人としての配送業者であることが典型的であるが、配送者が自然人又は法人ではなく、自動運転車やドローン等の輸送機器そのものであってもよい。
配送者が配送業者である場合は、配送者端末として当該配送業者が所有するパソコン、タブレット、スマートフォン、その他の情報処理端末を使用することができる。
配送者が輸送機器そのものである場合は、配送者端末は輸送機器と一体化しており、輸送機器の内部に設けられた情報処理装置が配送者端末として機能する。配送者である輸送機器と一体化した配送者端末についても、本明細書では配送者が「所有する」配送者端末とみなす。
【0065】
配送者端末を備えるCO2回収システムでは、CO2需要者端末において入力された需要情報のうち、CO2を需要者に配送するために必要な情報である配送用情報を使用する。配送用情報には、CO2の需要者毎の配送場所、希望配送時間、CO2の納入形態、CO2の必要量等の情報が含まれる。その他、配送者と需要者の間で交わした個別の取り決め事項などが含まれていてもよい。
【0066】
需要情報処理端末30の演算部32では、配送用情報を使用した演算を行い、CO2回収機構により回収されたCO2をCO2需要者に配送するためのCO2配送経路を演算する。
配送用情報を使用してCO2配送経路を演算するように設計されたCO2回収システムでは、演算部32に設けられた制御部34又は記憶部35には、配送用情報を用いてCO2配送経路を演算するためのコンピュータプログラムが記憶されている。
また、演算部32に設けられた制御部34又は記憶部35に、配送者の位置、CO2回収機構の位置、CO2貯蔵機構の位置及び各需要者の位置並びに各地点間の道路情報等の情報が予め記憶されていてもよい。
【0067】
配送者は、同じCO2回収システムを使用する複数のCO2需要者に対してCO2の配送を行う。そのため、CO2配送経路を演算する際には、複数の需要者に関する配送場所や希望配送時間の配送用情報から配送経路が最適になる(配送時間が最も短くなる、配送経路が最も短くなる、等の観点での最適化)ようにCO2配送経路を演算する。
【0068】
演算部32で演算されたCO2配送経路情報は、需要情報処理端末の送信部33から、配送者端末50に送信される。
配送者が配送業者である場合は、配送者端末50に送信されたCO2配送経路情報を配送業者が参照して、当該CO2配送経路情報に従って各CO2需要者に対してCO2の配送を行う。
配送者が輸送機器そのものである場合は、輸送機器に送信されたCO2配送経路情報が輸送機器を動かす命令信号となる。輸送機器は受信したCO2配送経路情報に従ってCO2需要者に対してCO2の配送を行う。
【0069】
[CO
2回収システムにおけるCO
2の流れ]
図3は、本発明のCO
2回収システムにおいてCO
2が授受される流れの一例を模式的に示すブロック図である。
図3における矢印は各要素間でCO
2が授受される向きを示している。
図3には、CO
2回収機構10、CO
2貯蔵機構40、配送者60、CO
2需要者70の間でCO
2が授受される例を示している。
CO
2回収システムにおいて授受されるCO
2はCO
2回収機構10のCO
2発生手段11で発生させて、CO
2回収手段12で回収されたものである。
CO
2回収機構10で回収されたCO
2は、配送者60に渡されるか、CO
2貯蔵機構40においてCO
2ボンベ41の形態で一旦貯蔵される。CO
2回収機構10で回収されたCO
2が配送者60に渡されるか、CO
2貯蔵機構40において貯蔵されるかは、CO
2回収機構10が需要情報処理端末から受信したCO
2回収量情報、及び、配送者60が需要情報処理端末から受信したCO
2配送経路情報に基づいて決定される。
【0070】
配送者60は、需要情報処理端末から受信したCO
2配送経路情報に基づき、CO
2回収機構10又はCO
2貯蔵機構40からCO
2を受け取る。
なお、配送者60がCO
2回収機構10からCO
2を受け取る場合には、配送者60はCO
2をCO
2ボンベ等の運搬可能な形態で受け取るが、
図3においてCO
2回収機構10と配送者60の間のCO
2ボンベの図示は省略している。
【0071】
そして、配送者60は同じCO2回収システムを使用する複数のCO2需要者70に対してCO2の配送を行う。配送者60は、需要情報処理端末から受信したCO2配送経路情報に従って各CO2需要者70に対してCO2の配送を行う。
【0072】
[CO2の需要量又はCO2の価格を考慮した演算]
本発明のCO2回収システムでは、CO2の需要量が少ない場合又はCO2の価格が安い場合には、需要情報に基づいた演算の結果、CO2回収運転を行わないというCO2回収量情報を得て、上記需要情報処理端末の送信部から上記CO2回収量情報を上記CO2回収機構に送信し、CO2回収機構ではCO2回収運転を行わないようにしてもよい。
CO2の需要を考慮した演算を行うCO2回収システムを、以下の説明では需要考慮型CO2回収システムと呼称する。また、CO2の価格を考慮した演算を行うCO2回収システムを、以下の説明では価格考慮型CO2回収システムと呼称する。
【0073】
需要考慮型CO2回収システムでは、CO2需要者端末において入力された需要情報に含まれるCO2の需要量を演算に使用する。
この場合、CO2の需要量を含む需要情報と、CO2貯蔵機構から送信されたCO2貯蔵量情報とを合わせて演算に使用することが好ましい。
CO2の需要量とCO2貯蔵量を比較してCO2貯蔵量の方が多く、CO2貯蔵機構に貯蔵されたCO2貯蔵量で需要を賄うことができるという演算結果が得られた場合、CO2回収量がゼロというCO2回収量情報をCO2回収機構に送信し、CO2回収機構ではCO2回収運転を行わないようにする。
なお、CO2の需要量とCO2貯蔵量の大小関係を比較して、CO2貯蔵量の方が多い場合であっても、CO2貯蔵量からCO2の需要量を引いて残るCO2の貯蔵量が少ない場合には、CO2回収運転を行うようにしてもよい。
【0074】
また、CO2の需要量が少ない場合、少量のCO2を回収するためにCO2回収運転を行うと、CO2を回収する費用が高くなるのでCO2を回収することによって損失が発生することがある。そのような場合にはCO2回収運転を行わないようにすることが好ましい。
【0075】
価格考慮型CO2回収システムでは、CO2需要者端末において入力された需要情報に含まれるCO2の価格を演算に使用する。
需要者が支払うCO2の価格(CO2の供給によりCO2回収システムの運用者が得られる収入)と、当該CO2をCO2回収機構で回収するために必要な費用を比較して演算を行う。その結果、CO2の回収を行わないほうがよいという演算結果が得られた場合、CO2回収量がゼロというCO2回収量情報をCO2回収機構に送信し、CO2回収機構ではCO2回収運転を行わないようにする。
【0076】
CO2回収機構は、事業所に設置された小型発電装置であるCO2発生手段を有する。小型発電装置による発電は、CO2の需要量及びCO2の価格とは関係なく、電力が必要であれば実施することがある。小型発電装置による発電を行うとCO2が発生するが、上記演算の結果CO2の回収を行わないほうがよいという演算結果が得られた場合にはCO2回収運転を行わないことにすることもあり得る。この場合、発電により発生したCO2を回収することなく大気放出することになる。
【0077】
[人工知能モデルを使用するCO2回収システム]
本発明のCO2回収システムは、需要情報処理端末の演算部において、学習済みの人工知能モデルにより需要情報を推定して、需要情報処理端末の受信部で受信した需要情報と、人工知能モデルにより推定した需要情報の両方に基づいて、CO2回収機構で回収するCO2回収量を演算するようにしたものであってもよい。
人工知能モデルは、深層学習を含む機械学習の学習モデルであり、例えばニューラルネットワークにより構成されている。
【0078】
学習済みの人工知能モデルは、コンピュータプログラムとして、
図1に示すCO
2回収システム1において、需要情報処理端末30の演算部32が備える記憶部35に記憶させることができる。また、当該コンピュータプログラムはCD-ROM、DVD-ROM、HDD等の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0079】
人工知能モデルとして、気象条件と需要情報の関係を学習した学習済みの人工知能モデルを使用することができる。以下の説明ではこれを気象条件学習済み人工知能モデルという。
また、人工知能モデルとして、CO2需要者からの過去の需要情報とCO2需要者から受信する需要情報の関係を学習した学習済みの人工知能モデルを使用することができる。以下の説明ではこれを過去需要学習済み人工知能モデルという。
【0080】
(気象条件学習済み人工知能モデルを使用するCO2回収システム)
本発明のCO2回収システムにおいて、演算部は、CO2回収システムが運用される範囲の気象条件を入力、CO2の需要情報を出力とする教師データに基づき、気象条件と上記需要情報の関係を学習した学習済みの人工知能モデルを備え、演算部では、CO2回収システムが運用される範囲の気象条件を学習済みの人工知能モデルへ入力して、CO2の需要情報を推定し、受信部で受信した需要情報と、人工知能モデルにより推定した需要情報の両方に基づいて、CO2回収機構で回収するCO2回収量を演算するものであってもよい。
【0081】
気象条件学習済み人工知能モデルの作成にあたっては、CO2回収システムが運用される範囲の気象条件を入力、CO2の需要情報を出力とする教師データを準備する。
CO2の需要に影響を与える要因としての気象条件としては、CO2回収システムが運用される範囲の天気、温度(最高温度及び/又は最低温度)、湿度、不快指数等が挙げられる。
準備した教師データを人工知能モデルに入力することで、気象条件学習済み人工知能モデルが得られる。
【0082】
本発明のCO2回収システムを運用する際には、CO2回収システムが運用される範囲の気象条件を気象条件学習済み人工知能モデルへ入力する。
気象条件学習済み人工知能モデルへ入力する「CO2回収システムが運用される範囲の気象条件」は教師データとして使用した気象条件ではなく、CO2回収システムを運用する時点での気象条件を意味する。
「CO2回収システムを運用する時点での気象条件」は厳密にその時点(瞬間)の気象条件という意味ではない。例えば気象条件として最高温度を使用する場合、その日の最高温度を使用してもよく、また、その日を含む直近の数日間の最高温度の平均値を使用してもよい。
【0083】
人工知能モデルへの気象条件の入力は、CO2回収システムの運用者が需要情報処理端末において別途設けた入力部(図示していない)から行ってもよく、CO2需要者端末から需要者が行ってもよい。
また、ネットワークを通じて必要な気象条件を受信し、受信した気象条件が気象条件学習済み人工知能モデルへ自動的に入力されるようなプログラムを設定しておくことにより、定期的に気象条件が気象条件学習済み人工知能モデルへ入力されるようにしてもよい。
【0084】
需要情報処理端末の演算部では、CO2回収システムが運用される範囲の気象条件を学習済みの人工知能モデルへ入力して、CO2の需要情報を推定する。需要情報処理端末にはCO2需要者端末から受信した需要情報が合わせて入力されるので、CO2需要者端末から受信した需要情報と人工知能モデルにより推定した需要情報の両方に基づいて、CO2回収機構で回収するCO2回収量を演算する。
演算部において演算されたCO2回収量情報がCO2回収機構に送信される。
CO2回収機構では、当該CO2回収量情報に基づきCO2発生手段及びCO2回収手段が作動することによってCO2回収運転が行われる。
【0085】
気象条件等のCO2の需要に影響を与える要因とCO2の需要情報の関係を学習させた人工知能モデルを用いてCO2の需要情報を推定した結果を、CO2回収機構で回収するCO2回収量の演算に用いると、CO2の需要の増加を事前予測して事前にCO2回収量を多くしておく等の措置を取ることができる。そのため、CO2の需要量の増減にも対応可能なCO2回収システムとすることができる。
【0086】
(過去需要学習済み人工知能モデルを使用するCO2回収システム)
本発明のCO2回収システムにおいて、演算部は、CO2回収システムが運用される範囲の特定のCO2需要者からの過去の需要情報の履歴を入力、当該CO2需要者から受信する需要情報を出力とする教師データに基づき、CO2需要者からの過去の需要情報とCO2需要者から受信する需要情報の関係を学習した学習済みの人工知能モデルを備え、演算部では、当該CO2需要者からの過去の需要情報の履歴を学習済みの人工知能モデルへ入力して、当該CO2需要者からのCO2の需要情報を推定し、受信部で受信した需要情報と、人工知能モデルにより推定した需要情報の両方に基づいて、CO2回収機構で回収するCO2回収量を演算するものであってもよい。
【0087】
過去需要学習済み人工知能モデルの作成にあたってはCO2回収システムが運用される範囲の特定のCO2需要者からの過去の需要情報の履歴を入力、当該CO2需要者から受信する需要情報を出力とする教師データを準備する。
過去の需要情報の履歴とは、特定のCO2需要者が過去にCO2需要者端末に入力した需要情報を入力した履歴に含まれる、CO2の納入形態、CO2の必要量、配送場所、希望配送時間、及び、希望購入価格等の情報である。
過去の需要情報の履歴から、当該CO2需要者がCO2を必要とする頻度(注文間隔)を求めておき、さらに、CO2を必要とする場合のCO2の必要量を求めておく。これらの情報から、当該CO2需要者が特定期間内(例えば1ヶ月間)に必要とするCO2需要量を求めておき、教師データとすることが好ましい。
特定のCO2需要者からの過去の需要情報の履歴を教師データとすることによって、当該需要者に対するCO2の需要の増加を事前予測することができると考えられる。
準備した教師データを人工知能モデルに入力することで、過去需要学習済み人工知能モデルが得られる。
【0088】
本発明のCO2回収システムを運用する際には、特定のCO2需要者からの過去の需要情報の履歴を過去需要学習済み人工知能モデルに入力する。
過去需要学習済み人工知能モデルに入力する「特定のCO2需要者からの過去の需要情報の履歴」は、教師データとして使用した過去の需要情報の履歴ではなく、CO2回収システムを運用する時点から特定期間遡った期間での需要情報の履歴を意味する。
例えば、当該CO2需要者がCO2を必要とする頻度(注文間隔)を過去の需要情報とする場合に、上記注文間隔の平均値を概算した期間よりも長い期間遡った期間での需要情報の履歴を使用することが好ましい。
【0089】
当該特定期間遡った期間での需要情報の履歴の入力は、CO2回収システムの運用者が需要情報処理端末において別途設けた入力部(図示していない)から行ってもよいが、需要情報処理端末において特定のCO2需要者から受信した過去の需要情報を記憶部に蓄積しておき、記憶部から必要な期間の需要情報の履歴を参照して需要情報の履歴の入力とすることが好ましい。
【0090】
当該長い期間遡った期間での需要情報の履歴を過去需要学習済み人工知能モデルに入力して、CO2の需要情報を推定する。需要情報処理端末にはCO2需要者端末から受信した需要情報が合わせて入力されるので、CO2需要者端末から受信した需要情報と人工知能モデルにより推定した需要情報の両方に基づいて、CO2回収機構で回収するCO2回収量を演算する。
演算部において演算されたCO2回収量情報がCO2回収機構に送信される。
CO2回収機構では、当該CO2回収量情報に基づきCO2発生手段及びCO2回収手段が作動することによってCO2回収運転が行われる。
【0091】
CO2需要者からの過去の需要情報の履歴と、CO2の需要情報の関係を学習させた人工知能モデルを用いてCO2の需要情報を推定した結果を、CO2回収機構で回収するCO2回収量の演算に用いると、当該需要者に対するCO2の需要の増加を事前予測して事前にCO2回収量を多くしておく等の措置を取ることができる。そのため、CO2の需要量の増減にも対応可能なCO2回収システムとすることができる。
【0092】
[CO2回収システムが運用される範囲]
本発明のCO2回収システムにおいて、CO2回収システムが運用される範囲は、特に限定されるものではないが、1つのCO2回収機構から50km以内のCO2需要者が含まれる範囲であることが好ましい。
本発明のCO2回収システムは、CO2の長距離輸送を行わずに、需要者の近くでCO2を回収して、回収したCO2を需要者が使用することができるものであるので、CO2回収機構から50km以内という狭い地域の中でCO2回収とCO2使用のサイクルを回すことができる。
【符号の説明】
【0093】
1 CO2回収システム
10 CO2回収機構
11 CO2発生手段
12 CO2回収手段
13 CO2回収機構の受信部
20 CO2需要者端末
21 入力部
22 CO2需要者端末の送信部
30 需要情報処理端末
31 需要情報処理端末の受信部
32 演算部
33 需要情報処理端末の送信部
34 制御部
35 記憶部
36 人工知能モデル
40 CO2貯蔵機構
41 CO2ボンベ
42 CO2貯蔵量記憶部
43 CO2貯蔵機構の送信部
50 配送者端末
60 配送者
70 CO2需要者
200 構造体
210 伝熱体(加熱層)
211 貫通孔
212 隔壁
220 ハニカム構造体(反応層)
221 貫通孔
222 隔壁
230 接着層