(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】医療器具の保管管理装置および保管管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 40/20 20180101AFI20241223BHJP
A61B 50/30 20160101ALI20241223BHJP
【FI】
G16H40/20
A61B50/30
(21)【出願番号】P 2020214045
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 暁典
(72)【発明者】
【氏名】花島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 全
(72)【発明者】
【氏名】小久保 貴章
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-204207(JP,A)
【文献】特開2019-088550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリーと、
少なくとも1つのプロセッサと、
を備え、
1つまたは複数の医療器具をまとめた器具セットが保管されたときに器具セットに付される保管IDと、器具セットに対して滅菌処理されたことを示す滅菌IDとが少なくとも関連付けられた保管履歴情報を記憶し、
入庫対象の器具セットに付された対象滅菌IDを取得する滅菌取得処理と、
前記対象滅菌IDと一致する前記滅菌IDが前記保管履歴情報に存在するか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理において、前記対象滅菌IDと一致する前記滅菌IDが前記保管履歴情報に存在すると判定されたとき、前記対象滅菌IDが付された器具セットが再入庫であることを通知する通知処理と、
を実行可能に構成された、医療器具の保管管理装置。
【請求項2】
前記通知処理では、前記対象滅菌IDが付された器具セットが再入庫であることを示す再入庫メッセージを含む再入庫警告画面を表示装置に表示する、請求項1に記載された医療器具の保管管理装置。
【請求項3】
前記保管履歴情報が記憶された保管履歴テーブルを記憶している、請求項1または2に記載された医療器具の保管管理装置。
【請求項4】
前記保管履歴情報には、前記滅菌IDと、器具セットを保管する棚の棚番を示す棚IDと、器具セットが再入庫であるか否かを示す再入庫情報とが更に関連付けられ、
器具セットを保管する所定の棚の棚番に付された対象棚IDを取得する棚取得処理と、
自動で付された固有のIDを前記保管IDとし、前記滅菌取得処理で取得された前記対象滅菌IDを前記滅菌IDとし、前記棚取得処理で取得された前記対象棚IDを前記棚IDとし、前記判定処理において前記対象滅菌IDと一致する前記滅菌IDが前記保管履歴情報に存在すると判定されたときに、再入庫ありを前記再入庫情報とした前記保管履歴情報を作成し、前記保管履歴テーブルに追加する履歴追加処理と、
を実行可能に構成された、請求項3に記載された医療器具の保管管理装置。
【請求項5】
前記履歴追加処理では、前記判定処理において前記対象滅菌IDと一致する前記滅菌IDが前記保管履歴情報に存在しないと判定されたときに、再入庫なしを前記再入庫情報とする、請求項4に記載された医療器具の保管管理装置。
【請求項6】
前記保管履歴情報には、前記滅菌IDと、器具セットを判別するためのセットIDとが更に関連付けられ、
前記セットIDごとに、前記再入庫情報が前記再入庫ありである前記保管履歴情報をカウントすることで、再入庫回数を算出するカウント処理と、
前記セットIDごとに、前記カウント処理で算出された前記セットIDが付された器具セットに対する再入庫回数が示された再入庫集計画面を表示装置に表示する集計表示処理と、
を実行可能に構成された、請求項
4または5に記載された医療器具の保管管理装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか1つに記載された医療器具の保管管理装置と、
表示装置と、
操作装置と、
を備えた、保管管理システム。
【請求項8】
器具セットには、前記対象滅菌IDが記録された滅菌識別標識が付され、
作業者によって操作され、前記滅菌識別標識を読み取る読取装置を備え、
前記滅菌取得処理では、前記滅菌識別標識を前記読取装置で読み取ることで、前記対象滅菌IDを取得する、請求項7に記載された保管管理システム。
【請求項9】
器具セットを保管する所定の棚の棚番には、対象棚IDが記録された棚識別標識が付され、
前記読取装置は、前記棚識別標識を読み取り可能に構成され、
前記保管管理装置は、
前記棚識別標識を前記読取装置で読み取ることで、前記対象棚IDを取得する棚取得処理と、
前記棚取得処理で取得された前記対象棚IDに入庫される器具セットのリストである入庫リストが配置された入庫登録画面を前記表示装置に表示する表示処理と、
前記滅菌取得処理において、前記対象滅菌IDが取得されたときに、前記対象滅菌IDが付された器具セットを前記入庫リストに追加すると共に、前記判定処理において前記対象滅菌IDと一致する前記滅菌IDが前記保管履歴情報に存在すると判定されたとき、前記対象滅菌IDが付された器具セットが再入庫であることを前記入庫リストに付加するリスト追加処理と、
が実行可能に構成された、請求項8に記載された保管管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具の保管管理装置および保管管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、手術や診察などの医療行為で繰り返し使用される医療器具が開示されている。医療器具は、所定の医療作業工程を順に行うことで、繰り返し使用されることが可能になる。この医療作業工程は、手術が行われる手術工程と、回収工程と、洗浄工程と、組立工程と、滅菌工程と、保管工程とを有している。
【0003】
回収工程では、手術後の医療器具が回収される。洗浄工程は、回収された医療器具を複数の部品に分解して、洗浄を行う工程である。組立工程は、洗浄後の医療器具の各部品を組み立てる工程である。滅菌工程は、組立後の医療器具に対して滅菌処理を行う工程である。保管工程は、滅菌処理された医療器具を所定の保管場所に保管する工程である。手術工程では、保管場所に保管された医療器具を払い出し、払い出された医療器具を使用して手術が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、手術工程において手術が行われる際には、手術で使用予定の所定の医療器具が払い出される。しかしながら、払い出された医療器具の中には、手術で実際に使用されなかった医療器具が存在することがあり得る。このように手術で実際に使用されないかった医療器具は、洗浄工程、組立工程、および滅菌工程などの工程を経ずに、滅菌処理されることなく再度、保管工程にて保管される。以下、手術で使用されず、かつ、滅菌処理されることなく、再度保管されることを、再入庫という。
【0006】
この医療器具の再入庫について、厳密に管理できていなかった。医療現場によっては、医療器具の再入庫について、例えば記録紙で管理していた。再入庫されている医療器具は、本来であれば、保管されている保管場所から払い出される必要がないものである。再入庫されている医療器具が多いほど、保管されている保管場所から払い出す作業が多くなり、非効率である。よって、再入庫される医療器具は少ない方が好ましい。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、再入庫された医療器具が分かり易い医療器具の保管管理装置および保管管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る医療器具の保管管理装置は、メモリーと、少なくとも1つのプロセッサと、を備えている。前記保管管理装置は、1つまたは複数の医療器具をまとめた器具セットが保管されたときに器具セットに付される保管IDと、器具セットに対して滅菌処理されたことを示す滅菌IDとが少なくとも関連付けられた保管履歴情報を記憶している。前記保管管理装置は、滅菌取得処理と、判定処理と、通知処理とを実行可能に構成されている。前記滅菌取得処理では、入庫対象の器具セットに付された対象滅菌IDを取得する。前記判定処理では、前記対象滅菌IDと一致する前記滅菌IDが前記保管履歴情報に存在するか否かを判定する。前記通知処理では、前記判定処理において、前記対象滅菌IDと一致する前記滅菌IDが前記保管履歴情報に存在すると判定されたとき、前記対象滅菌IDが付された器具セットが再入庫であることを通知する。
【0009】
本発明に係る医療器具の滅菌管理装置によれば、対象滅菌IDは、器具セットが滅菌処理されたときに付されるIDである。滅菌処理は、手術や診察などで使用された器具セットに対して行われるものであり、同じ器具セットであっても、滅菌処理が行われるごとに新たな対象滅菌IDが付される。ここで、滅菌取得処理で取得した対象滅菌IDと一致する滅菌IDが保管履歴情報に存在している場合、一度払い出された器具セットが手術や診察で使用されず、かつ、滅菌処理されずに、再度入庫されることを意味する。よって、対象滅菌IDと一致する滅菌IDが保管履歴情報に存在すると判定されたとき、対象滅菌IDが付された器具セットが再入庫であると判断することができる。器具セットが再入庫の場合、通知処理において、再入庫であることを通知することで、再入庫である器具セットを作業者が分かり易くなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、再入庫された器具セットを構成する医療器具が分かり易い医療器具の保管管理装置および保管管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る保管管理システムを示す概要図である。
【
図4】器具セットマスタテーブルの構成例を示す図である。
【
図8】器具セットが入庫されるときの保管管理装置の処理手順を示したフローチャートである。
【
図13】入庫リストに器具セットが追加された状態の入庫登録画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る医療器具の保管管理装置(以下、単に保管管理装置という。)を備えた保管管理システムについて説明する。なお、ここで説明される実施の形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る保管管理システム100を示す概略図である。保管管理システム100は、医療器具5を所定の棚2の棚番3に保管する際に使用されるシステムである。
【0014】
医療器具5は、病院などの医療現場において行われる医療行為で使用される器具である。医療行為とは、医師が患者に対して行う医療に関する行為のことをいう。医療行為には、例えば手術および診察が含まれる。
【0015】
医療器具5は、例えばトラカール、鉗子、切開装置、洗浄吸引装置、剪刀、メス(例えばレーザーメスや電気メス)、超音波カッター、メスホルダー、カニューレ、鑷子、開創器、スケール、ゾンデ、エレバ、ラスパ、吸引管、開胸器、閉胸器、持針器、注射器、金属ボール、膿盆、コップ、ピン、ミラー、やすり、開口器、クレンメ、ハンドピース、エレバトリューム、ノミ、鋭匙、剥離子、鏡、縫合針、スタンツェ、受水器、針、圧子、ブジー、通気管、骨片打ち込み棒、リウエル、ラジオペンチ、ハンマー、角度計、温度計、穿孔器、スポイト、金属綿棒、浣腸器、シリンジおよび内視鏡などである。ただし、上記例は、医療器具5の一部を列挙したに過ぎない。医療器具5は上記例に限定されない。
【0016】
医療器具5は、1つの部品で構成されていてもよいし、複数の部品で構成されていてもよい。複数の部品で構成された医療器具5として、例えば腹腔鏡外科手術で用いられるトラカール、鉗子、切開装置、洗浄吸引装置などが挙げられる。このような医療器具5は、複数の構成部品を含み、例えば手術後に回収され、複数の構成部品に分解される。ここでは、医療器具5を構成する部品のことを構成部品という。また、構成部品がさらに複数の構成部品からなる場合には、全てを構成部品と称する。
【0017】
図2は、循環サイクル10の説明図である。
図2に示すように、医療器具5は、所定の循環サイクル10において繰り返し使用可能なものである。なお、1つの医療器具5に対する循環サイクル10における繰り返し回数は特に限定されず、医療器具5の種類、および、医療器具5を構成する構成部品の種類によって適宜決定されるものである。本実施形態では、循環サイクル10は、手術・診察工程11と、回収工程12と、洗浄工程13と、組立工程14と、滅菌工程15と、保管工程16とを有している。
【0018】
手術・診察工程11は、医療器具5を用いて医療行為の一例である手術または診察を行う工程である。手術・診察工程11では、所定の保管場所に配置された所定の棚2の棚番3(
図1参照)に保管された医療器具5を払い出し(言い換えると、取り出し)、払い出した医療器具5を使用して手術または診察が行われる。
【0019】
回収工程12は、手術・診察工程11の後に行われる工程である。回収工程12は、手術または診察で使用された医療器具5を回収する工程である。なお、医療器具5が複数の構成部品によって構成されている場合、回収工程12では、医療器具5を個々の構成部品に分解する作業が含まれていてもよい。
【0020】
洗浄工程13は、回収工程12の後に行われる工程である。洗浄工程13は、回収工程12で回収された医療器具5、または、医療器具5の個々の構成部品を洗浄する工程である。洗浄工程13では、例えば図示が省略された洗浄器を使用して、医療器具5に対する洗浄が行われる。
【0021】
組立工程14は、洗浄工程13の後に行われる工程である。組立工程14は、洗浄工程13で洗浄された医療器具5の構成部品を組み立てて、1つの医療器具5を完成させる工程である。組立工程14は、複数の構成部品によって構成された医療器具5を組み立てる工程である。例えば1つの構成部品によって構成された医療器具5や、回収工程12で分解されなかった医療器具5の場合、組立工程14は省略されることがあり得る。
【0022】
滅菌工程15は、組立工程14の後に行われる工程である。滅菌工程15は、組立工程14で組み立てられた医療器具5を滅菌処理する工程である。滅菌工程15では、例えば図示が省略された滅菌器を使用して、医療器具5に対する滅菌処理が行われる。以下、滅菌処理のことを、単に滅菌ともいう。
【0023】
保管工程16は、滅菌工程15の後に行われる工程である。保管工程16では、滅菌処理が行われた医療器具5を所定の保管場所に配置された所定の棚2の棚番3(
図1参照)に保管する工程である。ここでは、棚2の棚番3に医療器具5を保管するとは、棚番3が指定された棚2の領域に医療器具5を置くことである。以下、所定の棚2の棚番3に医療器具5を保管しようとすることを、入庫するという。なお、保管工程16の後には、手術・診察工程11が行われる。
【0024】
本実施形態に係る循環サイクル10では、
図1に示す器具セット8の単位で各工程が行われる。ここで、器具セット8は、1つまたは複数の医療器具5をまとめたものである。複数の医療器具5を、1つまたは複数の器具セット8に分ける方法は特に限定されない。器具セット8に含まれる医療器具5の数および種類は、病院などの医療現場ごとに決定されるものであり、医療現場の医師、看護師、循環サイクル10の各工程の作業者などのスタッフの経験則に基づいて決定されることがあり得る。
【0025】
例えば器具セット8は、1回の医療行為(例えば手術または診察)で使用される1つまたは複数の医療器具5をまとめたものである。1回の手術または診察で使用される器具セット8の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。1つの器具セット8に含まれる医療器具5は、所定の包装材料の中に入れられて封止された状態で、例えば図示しないトレイに収容されて、保管工程16(
図2参照)にて保管される。
【0026】
本実施形態では、
図2に示す滅菌工程15において器具セット8を構成する1つまたは複数の医療器具5に対して滅菌処理されたときに、
図1に示すような滅菌ラベル20が発行される。滅菌処理されるときには、器具セット8を構成する1つまたは複数の医療器具5は、所定の包装材料の中に入れられた状態で滅菌処理される。滅菌ラベル20は、滅菌処理後、例えば上記の所定の包装材料に付されるものである。
図1に示すように、滅菌ラベル20には、滅菌識別標識21が付されている。滅菌識別標識21は、後述の読取装置30によって読み取られるものである。滅菌識別標識21の種類は、特に限定されない。例えば滅菌識別標識21は、一次元コードであってもよいし、二次元コードであってもよいし、ICタグであってもよい。
【0027】
滅菌識別標識21には、例えば対象滅菌ID22が記録されている。対象滅菌ID22は、器具セット8が滅菌処理されたときに、滅菌処理された器具セット8に対して付されるIDである。よって、対象滅菌ID22が付されることで、器具セット8が滅菌処理されたことが分かる。この対象滅菌ID22は、滅菌処理されるごとに器具セット8に対して付される固有のIDである。そのため、対象滅菌ID22から器具セット8を識別することができる。本実施形態では、1つの器具セット8において、滅菌処理されるごとに新たな対象滅菌ID22が付される。器具セット8に付される対象滅菌ID22は、手術や診察で使用されて、滅菌処理される度に変更される。
【0028】
本実施形態では、
図2の保管工程16では、器具セット8の単位で保管される。例えば器具セット8を保管する保管場所には、
図1に示すように、複数の棚2が配置されている。各棚2は、複数の棚番3を有する。例えば各棚2は、複数の領域に分割され、各領域に対して異なる棚番3が付されている。本実施形態では、各棚2の棚番3において、どの種類の器具セット8が保管されるか予め設定されている。どの棚2の棚番3に、どの種類の器具セット8が保管されるかは、特に限定されず、例えば病院などの医療現場ごとに決定されるものであり、医療現場の医師、看護師、保管工程16の作業者などのスタッフの経験則に基づいて決定されることがあり得る。
【0029】
本実施形態では、各棚2の棚番3ごとに、棚識別標識25が付されている。棚識別標識25は、読取装置30によって読み取られるものである。棚識別標識25の種類は特に限定されない。例えば棚識別標識25は、読取装置30によって読み取られるものである。棚識別標識25の種類は、特に限定されないが、例えば滅菌識別標識21と同じ種類である。棚識別標識25は、一次元コードであってもよいし、二次元コードであってもよいし、ICタグであってもよい。
【0030】
棚識別標識25には、対象棚ID26が記録されている。対象棚ID26は、棚2の棚番3ごとに付された固有のIDである。棚2の棚番3に付される対象棚ID26は、不変である。この対象棚ID26を読み込むことで、対象棚ID26から棚2の棚番3を特定することができる。
【0031】
ところで、手術・診察工程11において、例えば手術が行われるとき、手術計画が作成される。この手術計画には、手術で使用される予定の器具セット8のリストである器具リストが含まれる。作業者は、器具リストに含まれる器具セット8を、保管工程16で保管された棚2の棚番3から取り出し、払い出しを行う。しかしながら、器具リスト内の器具セット8、すなわち払い出された器具セット8の中には、手術で実際に使用されない器具セット8が存在することがあり得る。このように、手術で使用されなかった器具セット8は、
図2に示す循環サイクル10の洗浄工程13、組立工程14および滅菌工程15を経ずに、保管工程16にて再度保管される。すなわち、保管されていた器具セット8を払い出したにも関わらず、手術・診察工程11で使用されなかった器具セット8は、滅菌処理などが行われることなく、保管工程16にて再度保管される。このように、手術・診察工程11で使用されなかった器具セット8が、滅菌処理されることなく、保管工程16で入庫されることを、「再入庫」という。
【0032】
従来では、器具セット8の再入庫について、厳密に管理できていなかった。医療現場によっては、器具セット8の再入庫について、例えば記録紙で管理していた。再入庫されている器具セット8は、手術や診察で使用されないものであり、本来であれば、保管されている棚2の棚番3から払い出される必要がないものである。再入庫されている器具セット8が多いほど、保管されている棚2の棚番3から払い出す作業が多くなり、非効率である。そのため、再入庫される器具セット8は、手術計画の器具リストに記載されていないことが好ましい。
【0033】
そこで、本実施形態では、
図1に示す保管管理システム100は、保管工程16(
図2参照)における器具セット8の入庫の管理を行うと共に、器具セット8の再入庫の管理についても行う。そして、保管管理システム100を使用することで、例えば再入庫される頻度が高い器具セット8を特定し、手術計画の器具リストの見直しを行い、保管された器具セット8の払い出し作業を効率よくする。
【0034】
本実施形態では、保管管理システム100は、読取装置30と、表示装置50と、操作装置55と、保管管理装置60とを備えている。
【0035】
読取装置30は、作業者によって操作されるものであり、器具セット8に付された滅菌ラベル20の滅菌識別標識21を読み取ることで、対象滅菌ID22を読み取るものである。更に、読取装置30は、棚2の棚番3に付された棚識別標識25を読み取ることで、対象棚ID26を読み取ることも可能である。図示は省略するが、読取装置30には、作業者の手が掴まれる持ち手が設けられている。
【0036】
なお、読取装置30の種類は特に限定されず、滅菌識別標識21の対象滅菌ID22、および、棚識別標識25の対象棚ID26を読み取ることが可能なものであればよい。例えば滅菌識別標識21および棚識別標識25が二次元コードの場合、読取装置30は、二次元コードを読み取ることが可能な二次元コードリーダであるとよい。例えば滅菌識別標識21および棚識別標識25がICタグの場合、読取装置30は、ICタグリーダであるとよい。本実施形態では、読取装置30は、非接触式の装置である。しかしながら、読取装置30は、接触式の装置であってもよい。なお、保管工程16で使用される読取装置30の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。読取装置30の設置場所は、例えば保管工程16において器具セット8が保管される棚2の棚番3が配置される保管場所である。
【0037】
表示装置50には、保管工程16にて器具セット8を入庫する際に使用される画面が表示される。なお、表示装置50の種類は特に限定されない。例えば表示装置50は、携帯型端末のディスプレイであってもよい。表示装置50は、デスクトップ型またはノート型(言い換えるとラップトップ型)のパーソナルコンピュータのディスプレイであってもよい。
【0038】
操作装置55は、表示装置50に表示された画面などを作業者が操作するときに使用するものである。例えば作業者が操作装置55を操作することで、表示装置50に表示される画面を切り替えることができる。また、作業者が操作装置55を操作することで、どの棚2の棚番3に器具セット8を入庫するかを保管管理装置60に登録することができる。なお、操作装置55の種類は特に限定されない。例えば操作装置55は、パーソナルコンピュータのキーボードおよびマウスなどである。ただし、操作装置55は、表示装置50に設けられたタッチパネルであってもよい。なお、ここでは、表示装置50および操作装置55の数は、それぞれ1つであるが、それぞれ複数であってもよい。
【0039】
次に、本実施形態に係る保管管理装置60について説明する。保管管理装置60は、保管工程16(
図2参照)における器具セット8の保管、すなわち入庫の履歴を管理する。このことで、器具セット8が、所定の棚2の棚番3にいつ入庫されたかを管理することができる。また、保管管理装置60は、器具セット8の再入庫について管理する。保管管理装置60は、コンピュータの制御装置である。
図3は、保管管理装置60のブロック図である。保管管理装置60は、
図3に示すように、メモリー60aと、少なくとも1つのプロセッサ60bとを備えている。プロセッサ60bは、1つであってもよいし、複数であってもよい。例えば、メモリー60aに記憶されたプログラムをプロセッサ60bが使用することで、処理を実行することができる。保管管理装置60は、専用のコンピュータによって実現されるものであってもよいし、汎用のコンピュータによって実現されるものであってもよい。
【0040】
本実施形態では、保管管理装置60は、
図1に示すように、読取装置30と通信可能に接続されている。保管管理装置60は、読取装置30と有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。保管管理装置60は、表示装置50および操作装置55と通信可能に接続されている。なお、保管管理装置60、表示装置50および操作装置55は、1つのパーソナルコンピュータで実現されるものであってもよい。
【0041】
ここでは、保管管理システム100は、いわゆるクライアントサーバシステムで実現されるものであってもよいし、クラウドコンピューティングで実現されるものであってもよい。また、保管管理システム100は、いわゆるスタンドアローンシステムで実現されるものであってもよい。
【0042】
本実施形態では、保管管理装置60は、
図3に示すように、記憶部61と、表示部63と、滅菌取得部65と、棚取得部67と、判定部69と、通知部71と、リスト追加部73と、履歴追加部75とを備えている。保管管理装置60は、更に、棚抽出部81と、棚判定部82と、棚間違い通知部83と、期限抽出部86と、日付取得部87と、期限判定部88と、期限切れ通知部89とを備えている。保管管理装置60は、更に、カウント部91と、集計表示部93とを備えている。
【0043】
記憶部61は、メモリー60aに記憶されているものである。表示部63、滅菌取得部65、棚取得部67、判定部69、通知部71、リスト追加部73、履歴追加部75、棚抽出部81、棚判定部82、棚間違い通知部83、期限抽出部86、日付取得部87、期限判定部88、期限切れ通知部89、カウント部91、および、集計表示部93は、プロセッサ60bによって実行可能なものである。
【0044】
本実施形態では、メモリー60aによって実現される記憶部61には、器具セットマスタテーブルTB10(
図4参照)と、棚マスタテーブルTB20(
図5参照)と、滅菌テーブルTB30(
図6参照)と、保管履歴テーブルTB40(
図7参照)とが予め記憶されている。
【0045】
図4に示すように、器具セットマスタテーブルTB10は、器具セット情報110が記憶されたテーブルである。器具セット情報110は、例えばセットID111と、セット名112とが少なくとも関連付けられた情報である。言い換えると、器具セット情報110には、セットID111およびセット名112などの項目が少なくとも存在する。
【0046】
ここで、「関連付けられた」とは、テーブルの同じ行に記載された項目同士のことをいう。「関連付けられた」とは、「対応した」と言い換えることが可能である。
【0047】
図4に示すように、セットID111は、器具セット8ごとに付された固有のIDである。セットID111は、数字やアルファベットなどによって構成された文字列であり、器具セット8ごとに異なるものである。セット名112は、器具セット8の名称のことである。セット名112は、例えば作業者などによって器具セット8に任意に付けられるものであってもよい。本実施形態では、セットID111からセット名112が一意的に決定される。
【0048】
図5に示すように、棚マスタテーブルTB20は、棚情報120が記憶されたテーブルである。棚情報120は、例えば棚ID121と、棚名122と、棚番123と、表示順124と、更新日時125とが少なくとも関連付けられた情報である。ここでは、棚情報120には、棚ID121、棚名122、棚番123、表示順124、および、更新日時125などの項目が少なくとも存在する。
【0049】
棚ID121は、器具セット8を保管する棚2の棚番3(
図1参照)ごとに付された固有のIDである。棚ID121は、数字やアルファベットなどによって構成された文字列であり、棚2の棚番3ごとに異なるものである。棚名122は、棚2の名称のことである。棚名122は、例えば作業者などによって棚2に対して任意に付けられるものである。棚番123は、棚2に付された棚番号のことであり、棚2の棚番3(
図1参照)のことである。本実施形態では、棚ID121から、
図1に示す棚2の棚番3が特定される。
【0050】
表示順124とは、
図1に示す棚2および棚番3の一覧を表示する際の順番のことである。例えば表示順124の昇順または降順で、棚2および棚番3の一覧が表示される。更新日時125は、棚情報120が更新された日時である。ここでは、更新日時125に関連付けられた棚ID121、棚名122、棚番123および表示順124の何れかの項目が変更されたとき、その変更された日時が更新日時125に記される。
【0051】
図6に示すように、滅菌テーブルTB30は、器具セット8に対する滅菌情報130が記憶されたテーブルである。滅菌情報130は、例えば滅菌ID131と、セットID132と、セット名133と、棚ID134と、ユーザID135と、ユーザ名136と、滅菌有効期限137と、が少なくとも関連付けられた情報である。ここでは、滅菌情報130には、滅菌ID131、セットID132、セット名133、棚ID134、ユーザID135、ユーザ名136および滅菌有効期限137などの項目が少なくとも存在する。
【0052】
滅菌ID131は、
図2に示す滅菌工程15において滅菌処理された器具セット8に付される固有のIDである。ここでは、滅菌ID131が付された器具セット8は、滅菌処理されたと判断される。滅菌ID131から器具セット8を識別することが可能である。セットID132は、滅菌ID131が付された器具セット8に付されているセットIDのことである。セットID132は、器具セット情報110のセットID111(
図4参照)に対応している。
図6に示すセット名133は、滅菌ID131が付された器具セット8のセット名のことである。セット名133は、器具セット情報110のセット名112(
図4参照)に対応している。なお、セットID132およびセット名133の何れか一方は省略されてもよい。
【0053】
図6に示す棚ID134は、滅菌ID131が付された器具セット8が保管される棚2の棚番3に付されたIDのことである。棚ID134は、棚情報120の棚ID121(
図5参照)に対応している。
図6に示すユーザID135は、滅菌ID131が付された器具セット8を滅菌処理した作業者のIDのことである。ユーザ名136は、滅菌ID131が付された器具セット8を滅菌処理した作業者の名前(名称)のことである。ここでは、ユーザID135およびユーザ名136は、ユーザマスタテーブル(図示せず)に記憶されたユーザ情報(図示せず)に対応している。ユーザID135からユーザ名136を一意的に決定することができる。そのため、ユーザID135およびユーザ名136の何れか一方は省略されてもよい。
【0054】
滅菌有効期限137は、滅菌ID131が付された器具セット8に対して行われた滅菌処理の有効期限である。滅菌有効期限137は、滅菌ラベル20(
図1参照)が発行されたときから所定の期間後の日付に設定される。この所定の期間とは、滅菌処理の種類や、滅菌処理された器具セット8を構成する1つまたは複数の医療器具5の種類などに基づいて設定されるものである。
【0055】
図7に示すように、保管履歴テーブルTB40は、
図2に示す保管工程16において保管された器具セット8の履歴情報である保管履歴情報140が記憶されたテーブルである。保管履歴情報140は、例えば保管ID141と、棚ID142と、棚名・棚番143と、セットID144と、滅菌ID145と、再入庫情報146と、入庫日時147と、ユーザID148と、ユーザ名149とが少なくとも関連付けられた情報である。保管履歴情報140には、保管ID141、棚ID142、棚名・棚番143、セットID144、滅菌ID145、再入庫情報146、入庫日時147、ユーザID148、および、ユーザ名149などの項目が少なくとも存在する。
【0056】
保管ID141は、保管工程16において器具セット8が保管されたとき、保管された器具セット8に付される固有のIDである。保管ID141は、数字やアルファベットなどによって構成された文字列であり、器具セット8が入庫されるごとに発行されるIDである。そのため、1つの器具セット8が循環サイクル10を循環して、保管工程16で保管されるごとに、異なる保管ID141が発行される。よって、1つの器具セット8に対して複数の保管ID141が付されることがあり得る。
【0057】
棚ID142は、保管ID141が付された器具セット8が保管される棚2の棚番3(
図1参照)の棚IDのことである。棚ID142は、棚情報120の棚ID121(
図5参照)に対応している。
図7に示す棚名・棚番143は、保管ID141が付された器具セット8が保管される棚名と棚番のことである。ここでは、棚名・棚番143は、棚名[棚番]で表記されている。棚名・棚番143は、棚情報120の棚名122(
図5参照)および棚番123(
図5参照)に対応している。
図7に示すセットID144は、保管ID141が付された器具セット8に付されているセットIDのことである。セットID144は、器具セット情報110のセットID111(
図4参照)に対応している。
図7に示す滅菌ID145は、保管ID141が付された器具セット8が滅菌処理されたときに付された滅菌IDのことである。滅菌ID145は、滅菌情報130の滅菌ID131(
図6参照)に対応している。
【0058】
図7に示す再入庫情報146は、保管ID141が付された器具セット8が再入庫であるか否かの情報である。例えば、関連付けられた器具セット8が再入庫ではなく、最初の入庫(ここでは初回入庫)の場合には、再入庫情報146には、「1」が設定される。一方、関連付けられた器具セット8が再入庫であり、2回目以降の入庫の場合には、再入庫情報146には、「2」が設定される。ただし、再入庫情報146の具体的な数値や文字は、医療現場ごとに適宜設定することができ、初回入庫が「1」に限定されないし、再入庫が「2」に限定されない。
【0059】
入庫日時147は、保管ID141が付された器具セット8が入庫された日時、すなわち器具セット8が棚2の棚番3に保管された日時のことである。ユーザID148は、保管ID141が付された器具セット8を入庫した作業者のIDのことである。ユーザ名136は、保管ID141が付された器具セット8を入庫した作業者の名前(名称)のことである。ここでは、ユーザID148およびユーザ名149は、上記のユーザマスタテーブル(図示せず)に記憶されたユーザ情報(図示せず)に対応している。ユーザID148からユーザ名149を一意的に決定することができるため、ユーザID148およびユーザ名149の何れか一方は省略されてもよい。
【0060】
次に、
図2の保管工程16で器具セット8が入庫されるときの保管管理装置60の処理手順について
図8のフローチャートに沿って説明する。
【0061】
本実施形態では、まずステップS101では、所定の棚2の棚番3(
図1参照)に入庫する1つまたは複数の器具セット8を保管管理装置60に登録するために、
図3の表示部63は、
図9に示すように、表示装置50に
図9に示す入庫登録画面DP10を表示する。入庫登録画面DP10は、保管工程16において器具セット8を所定の棚2の棚番3に入庫して保管する際に使用される画面であり、保管管理装置60に対して器具セット8の入庫先を登録する画面である。
【0062】
このように入庫登録画面DP10を表示装置50に表示した後、
図8のステップS103では、
図3の棚取得部67は、器具セット8の入庫先の棚2の棚番3に付された対象棚ID26(
図1参照)を取得する。ここでは、
図1に示すように、対象棚ID26は、読取装置30で読み取られる。作業者は、器具セット8を入庫する際の入庫対象となる棚2の棚番3に付された棚識別標識25に、読取装置30の読取部(図示せず)をかざす。このことで、棚識別標識25に記録された対象棚ID26が読取装置30によって読み取られる。このことで、棚取得部67は、対象棚ID26を取得することができる。なお、棚取得部67が取得した対象棚ID26は、記憶部61に記憶される。
【0063】
本実施形態では、対象棚ID26が取得された後、
図5の棚マスタテーブルTB20の中から、対象棚ID26と一致する棚ID121を抽出し、抽出した棚ID121に関連付けられた棚名122および棚番123を抽出する。そして、表示部63は、
図9に示すように、抽出した棚名122および棚番123を入庫登録画面DP10に表示する。
【0064】
次に、
図8のステップS105では、作業者は、対象棚ID26が付された棚2の棚番3に入庫する器具セット8を登録する。ここでは、まず
図3の滅菌取得部65は、入庫対象の器具セット8の対象滅菌ID22(
図1参照)を取得する。
図1に示すように、対象滅菌ID22は、読取装置30によって読み取られる。作業者は、入庫対象の器具セット8に付された滅菌ラベル20の滅菌識別標識21に、読取装置30の上記読取部をかざす。このことで、滅菌識別標識21に記録された対象滅菌ID22が読取装置30によって読み取られる。このことで、滅菌取得部65は、対象滅菌ID22を取得することができる。なお、滅菌取得部65が取得した対象滅菌ID22は、記憶部61に記憶される。
【0065】
このように滅菌取得部65によって対象滅菌ID22が取得された後、
図8のステップS107では、対象滅菌ID22が付された器具セット8の入庫先が適切であるか否かを判定する。本実施形態では、器具セット8ごとに、どの棚2のどの棚番3に入庫して保管するのかの入庫先が予め設定されている。ここでは、
図6に示すように、滅菌テーブルTB30の滅菌情報130の棚ID134が、滅菌ID131が付された器具セット8の適切な入庫先の棚2の棚番3のIDである。
【0066】
そこで、本実施形態では、
図8のステップS107において、まず
図3の棚抽出部81は、対象滅菌ID22と一致する滅菌ID131に関連付けられた棚ID134を、
図6に示す滅菌テーブルTB30から抽出し、抽出した棚ID134を抽出棚IDとする。次に、
図3の棚判定部82は、上記抽出棚IDが、ステップS103において、読取装置30が読み取って棚取得部67によって取得された対象棚ID26と一致しているか否かを判定する。ここで、上記抽出棚IDと対象棚ID26とが一致した場合には、対象滅菌ID22が付された器具セット8の入庫先が適切であると判定される。この場合には、次にステップS111に進む。
【0067】
一方、ステップS107において、棚判定部82によって上記抽出棚IDと対象棚ID26とが一致しないと判定された場合には、対象滅菌ID22が付された器具セット8の入庫先が不適切であり、棚間違いであると判定される。この場合、次にステップS109に進む。ステップS109では、
図3の棚間違い通知部83は、作業者に棚間違いを通知する。この棚間違いの通知方法については、特に限定されるものではない。
【0068】
本実施形態では、棚間違い通知部83は、
図10に示すように、表示装置50に棚間違いである旨を通知する棚間違い警告画面DP20を表示する。棚間違い警告画面DP20は、例えば入庫登録画面DP10の上に重ねられるように表示される。棚間違い警告画面DP20には、「棚の棚番が一致しません。棚名と棚番を確認してください。」などの棚間違いメッセージM20が表示されると共に、OKボタンBT20が表示される。作業者は、棚間違いメッセージM20を見ることで、読取装置30で読み取られた対象滅菌ID22が付された器具セット8の入庫先の棚2の棚番3が適切ではないことを知ることができる。また、作業者が操作装置55を介してOKボタンBT20を押すことで、棚間違い警告画面DP20は、閉じられる。
【0069】
なお、本実施形態では、
図8のステップS107において、棚間違いであると判定されたとき、対象滅菌ID22が付された器具セット8は、後述の入庫リストLS10(
図13参照)には、追加されずに、
図8のフローチャートを終了する。
【0070】
本実施形態では、滅菌取得部65によって対象滅菌ID22が取得された後、
図8のステップS111では、対象滅菌ID22が付された器具セット8に施された滅菌処理が滅菌有効期限内であるか否かを判定する。本実施形態では、上述のように、器具セット8に滅菌処理が行われて滅菌ラベル20(
図1参照)が発行されたとき、器具セット8の滅菌処理に対する滅菌有効期限が設定される。この滅菌有効期限は、滅菌処理の種類や、器具セット8を構成する1つまたは複数の医療器具5の種類によって設定されるものである。本実施形態では、
図6に示すように、滅菌テーブルTB30の滅菌情報130の滅菌有効期限137に、滅菌ID131が付された器具セット8に対する滅菌処理の有効期限が設定されている。
【0071】
そこで、本実施形態では、ステップS111において、まず
図3の期限抽出部86は、対象滅菌ID22と一致する滅菌ID131に関連付けられた滅菌有効期限137を
図6の滅菌テーブルTB30から抽出し、抽出した滅菌有効期限137を抽出滅菌有効期限とする。次に、
図3の日付取得部87は、現在の日にちである現在日付を取得する。本実施形態では、保管管理装置60には、現在の日時に関する日時情報が設定されている。日付取得部87は、上記日時情報に基づいて現在日付を取得する。
【0072】
次に、
図3の期限判定部88は、上記抽出滅菌有効期限が上記現在日付と同じ、または、上記現在日付よりも後であるか否かを判定する。ここで、上記抽出滅菌有効期限が上記現在日付と同じ、または、上記現在日付よりも後である場合には、対象滅菌ID22が付された器具セット8に対する滅菌処理の有効期限が過ぎていないと判定される。なお、本実施形態では、滅菌処理の有効期限が過ぎていないと判定されることは、対象滅菌ID22が付された器具セット8に対して適切に滅菌処理されており、滅菌済みであると判定されることと同義である。この場合、次にステップS115に進む。
【0073】
一方、
図8のステップS111において、期限判定部88によって、上記抽出滅菌有効期限が上記現在日付よりも前である場合には、対象滅菌ID22が付された器具セット8の滅菌処理の有効期限が過ぎており、滅菌期限切れと判定される。この場合、次にステップS113に進む。ステップS113では、
図3の期限切れ通知部89は、作業者に滅菌期限切れを通知する。この滅菌期限切れの通知方法については、特に限定されるものではない。
【0074】
本実施形態では、期限切れ通知部89は、
図11に示すように、滅菌期限切れである旨を通知する滅菌期限切れ警告画面DP21を表示装置50に表示する。滅菌期限切れ警告画面DP21は、例えば入庫登録画面DP10の上に重ねられるように表示される。滅菌期限切れ警告画面DP21には、「滅菌期限切れの器具セットです。」などの滅菌期限切れメッセージM21が表示されると共に、OKボタンBT21が表示される。作業者は、滅菌期限切れメッセージM21を見ることで、読取装置30で読み取られた対象滅菌ID22が付された器具セット8の滅菌処理の有効期限が過ぎていることを知ることができる。また、作業者が操作装置55を介してOKボタンBT20を押すことで、滅菌期限切れ警告画面DP21は、閉じられる。
【0075】
なお、本実施形態では、
図8のステップS111において、滅菌期限切れであると判定されたとき、対象滅菌ID22が付された器具セット8は、入庫リストLS10には、追加されずに、
図8のフローチャートを終了する。滅菌期限切れであると判定された場合、
図2の滅菌工程15に戻り、器具セット8に対して滅菌処理が行われ、新たな滅菌ラベル20が発行される。そして、新たな滅菌ラベル20が発行された後、保管工程16が再度行われる。
【0076】
本実施形態では、滅菌取得部65によって対象滅菌ID22が取得された後、
図8のステップS115では、
図3の判定部69は、対象滅菌ID22が付された器具セット8が再入庫であるか否かを判定する。判定部69は、器具セット8が再入庫であるか否かを判定するために、対象滅菌ID22と一致する滅菌ID145が保管履歴情報140(
図7参照)に存在するか否かを判定する。ここでは、判定部69は、
図7に示す保管履歴テーブルTB40に記憶された保管履歴情報140の滅菌ID145に、対象滅菌ID22と一致するIDが存在するか否かを判定する。
【0077】
本実施形態では、対象滅菌ID22と一致する滅菌ID145が保管履歴情報140に存在している場合、対象滅菌ID22が記録された滅菌識別標識21の滅菌ラベル20(
図1参照)が発行されたときの滅菌処理が行われた後に、対象滅菌ID22が付された器具セット8が少なくとも1回は既に入庫されたことを意味する。すなわち、対象滅菌ID22が付された器具セット8は、一度払い出しをされたにも関わらず、手術・診察工程11で使用されることなく、かつ、新たな滅菌処理が行われずに、再入庫されることを意味する。このように、対象滅菌ID22と一致する滅菌ID145が保管履歴情報140に存在している場合には、判定部69は、対象滅菌ID22が付された器具セット8は、再入庫であると判定する。このように再入庫であると判定された場合、次に
図8のステップS117に進む。
【0078】
ステップS117では、
図3の通知部71は、対象滅菌ID22が付された器具セット8は、再入庫であることを通知する。再入庫であることを通知する通知方法については、特に限定されるものではない。本実施形態では、通知部71は、
図12に示すように、表示装置50に再入庫である旨を通知する再入庫警告画面DP30を表示する。再入庫警告画面DP30は、例えば入庫登録画面DP10の上に重ねられるように表示される。再入庫警告画面DP30には、「再入庫です」などの再入庫メッセージM30が表示されると共に、OKボタンBT30が表示される。作業者は、再入庫メッセージM30を見ることで、読取装置30で読み取られた対象滅菌ID22が付された器具セット8が再入庫であることを知ることができる。また、作業者は、操作装置55を介してOKボタンBT30を押すことで、再入庫警告画面DP30は、閉じられる。本実施形態では、
図8に示すように、ステップS117の後、ステップS119に進む。
【0079】
一方、ステップS115において、判定部69によって対象滅菌ID22と一致する滅菌ID145が保管履歴情報140(
図7参照)に存在していないと判定された場合、対象滅菌ID22が記録された滅菌識別標識21の滅菌ラベル20(
図1参照)が発行されたときの滅菌処理が行われた後に、対象滅菌ID22が付された器具セット8が初めて入庫される(言い換えると、初回入庫である)ことを意味する。すなわち、対象滅菌ID22が付された器具セット8は、手術・診察工程11で使用された後、滅菌工程15で滅菌処理されていることを意味する。このように、対象滅菌ID22と一致する滅菌ID145が保管履歴情報140に存在していない場合には、判定部69は、対象滅菌ID22が付された器具セット8は、再入庫ではなく、初回入庫であると判定する。
【0080】
ここで、判定部69によって再入庫ではないと判定された場合、通知部71は、対象滅菌ID22が付された器具セット8に対する再入庫の通知を行わない。すなわち、
図12のような再入庫警告画面DP30は表示装置50に表示されず、
図8のステップS117の処理は行われることなく、ステップS119に進む。
【0081】
本実施形態では、ステップS119では、
図3のリスト追加部73は、
図13に示す入庫リストLS10に対象滅菌ID22が付された器具セット8を追加する。ここでは、対象滅菌ID22が付された器具セット8が再入庫であるか否かに関わらず、入庫リストLS10に器具セット8が追加される。入庫リストLS10は、表示部63によって入庫登録画面DP10に表示されるリストであり、読取装置30を介して取得された対象棚ID26が付された棚2の棚番3に入庫される器具セット8のリストである。
【0082】
入庫リストLS10には、セット名151と、再入庫情報152の項目が含まれる。セット名151は、対象滅菌ID22が付された器具セット8のセット名である。本実施形態では、
図6に示す滅菌テーブルTB30の滅菌情報130から、対象滅菌ID22と一致する滅菌ID131を抽出し、抽出した滅菌ID131と関連付けられたセット名133を抽出する。この抽出したセット名133は、対象滅菌ID22に対応したセット名である。ここでは、対象滅菌ID22に付された器具セット8が入庫リストLS10に追加されたとき、リスト追加部73は、入庫登録画面DP10に表示された入庫リストLS10のセット名151の項目に、上記の抽出したセット名133を追加して表示する。
【0083】
本実施形態では、入庫リストLS10の再入庫情報152は、入庫リストLS10に追加された器具セット8が再入庫であるか否かを表示する項目である。例えば入庫リストLS10に追加された器具セット8が再入庫である場合には、リスト追加部73は、再入庫情報152にチェックを入れることで、再入庫であることを入庫リストLS10に付加する。本実施形態では、対象滅菌ID22と一致する滅菌ID145が保管履歴情報140(
図7参照)に存在して、対象滅菌ID22が付された器具セット8が再入庫であると判定された場合、再入庫情報152にチェックが入れられる。なお、再入庫情報152にチェックを入れる処理は、通知部71によって行われてもよい。
【0084】
本実施形態では、入庫リストLS10には、入庫リストLS10の各行に対応した削除ボタンBT11が設けられている。ここでは、作業者が操作装置55を介して削除ボタンBT11を押すことで、削除ボタンBT11に対応した行の器具セット8が、入庫リストLS10から削除される。
【0085】
本実施形態では、対象棚ID26に付された棚2の棚番3に、複数の器具セット8を入庫する場合には、複数の器具セット8に付された対象滅菌ID22を連続で、読取装置30で読み取ることができる。この場合、複数の器具セット8に付された対象滅菌ID22を読取装置30で読み取るごとに、
図8のステップS105~ステップS119の処理が順に実行される。そして、対象滅菌ID22が読取装置30で読み取られ、滅菌取得部65によって対象滅菌ID22が取得されるごとに、対象滅菌ID22が付された器具セット8が入庫リストLS10に追加される。
【0086】
ここでは、対象棚ID26に付された棚2の棚番3に入庫する器具セット8の全てを入庫リストLS10に追加した後、作業者は、
図13に示すように、入庫登録画面DP10に表示された終了ボタンBT10を、操作装置55を介して押す。終了ボタンBT10が押されると、入庫リストLS10に追加された器具セット8について、対象棚ID26に付された棚2の棚番3に入庫されたことが確定する。ここでは、
図7に示す保管履歴テーブルTB40に、入庫リストLS10に追加された器具セット8に関する保管履歴情報140が追加されることで、対象棚ID26に付された棚2の棚番3に器具セット8が入庫されたことが確定する。
【0087】
終了ボタンBT10が押されると、
図3の履歴追加部75は、入庫リストLS10に追加された各器具セット8に関する保管履歴情報140を保管履歴テーブルTB40に追加する。ここでは、履歴追加部75は、入庫リストLS10の各器具セット8に対して自動で固有の保管ID141を発行する。履歴追加部75は、対象棚ID26を棚ID142に追加する。履歴追加部75は、対象棚ID26に関連付けられた棚名122および棚番123を棚マスタテーブルTB20の棚情報120(
図5参照)から抽出し、当該抽出した棚名122および棚番123を、棚名・棚番143に追加する。履歴追加部75は、対象滅菌ID22に関連付けられたセットID132を滅菌テーブルTB30の滅菌情報130(
図6参照)から抽出し、当該抽出したセットID132を、保管履歴情報140のセットID144に追加する。
【0088】
履歴追加部75は、対象滅菌ID22を滅菌ID145に追加する。再入庫情報146には、対象滅菌ID22が付された器具セット8が再入庫か否かの情報が追加される。例えば入庫リストLS10において、再入庫情報152の項目にチェックが入れられていない場合には、履歴追加部75は、初回入庫であるとして、再入庫情報146に「1」を追加する。一方、入庫リストLS10において、再入庫情報152の項目にチェックが入れられている場合には、履歴追加部75は、再入庫である、言い換えると2回目以上の入庫であるとして、再入庫情報146に「2」を追加する。
【0089】
履歴追加部75は、終了ボタンBT10が押されたときの日時を入庫日時147に追加する。履歴追加部75は、器具セット8を入庫した作業者のユーザIDおよびユーザ名を、それぞれユーザID148およびユーザ名149に追加する。本実施形態では、入庫登録画面DP10を表示装置50に表示するとき、作業者のユーザIDを入力する。このときの作業者が入力したユーザIDが保管履歴情報140のユーザID148に追加され、作業者が入力したユーザIDに対応したユーザ名が保管履歴情報140のユーザ名149に追加される。
【0090】
以上のように、入庫リストLS10に追加された器具セット8に関する保管履歴情報140を
図7に示す保管履歴テーブルTB40に追加した後、作業者は、入庫リストLS10に追加された器具セット8を、対象棚ID26が付された棚2の棚番3に入庫する、すなわち保管する。このようにして、保管工程16における器具セット8の入庫が完了する。
【0091】
本実施形態では、
図3の集計表示部93は、
図14に示すような再入庫集計画面DP40を表示装置50に表示する。この再入庫集計画面DP40は、器具セット8ごとに再入庫の回数をカウントして、グラフや表などを用いて表示するものである。作業者は、再入庫集計画面DP40を見ることで、どの器具セット8に再入庫が頻繁に発生しているかを知ることができる。
【0092】
ここでは、保管管理装置60は、
図14に示すような再入庫集計情報160を作成する。再入庫集計情報160は、例えば
図7に示す保管履歴テーブルTB40の保管履歴情報140などに基づいて作成される。
【0093】
本実施形態では、
図3のカウント部91は、保管履歴情報140の中から、再入庫情報146が再入庫、すなわち再入庫情報146が「2」である保管履歴情報140を抽出する。次に、カウント部91は、セットID144ごとに、再入庫の回数をカウントする。ここでは、カウント部91は、再入庫情報146が再入庫である保管履歴情報140のうち、セットID144が一致する保管履歴情報140の数、すなわち保管履歴テーブルTB40の行の数をカウントする。
【0094】
本実施形態では、
図14に示すように、再入庫集計情報160は、診療科161と、セット名162と、棚名・棚番163と、再入庫回数165とが関連付けられた情報である。ここで、セット名162には、保管履歴情報140のうち、再入庫情報146が再入庫である再入庫情報146に関連付けられたセットID144に対応したセット名が追加される。このセットID144に対応したセット名は、例えば
図3の器具セットマスタテーブルTB10の器具セット情報110から取得される。診療科161には、セットID144が付された器具セット8が使用される診療科が追加される。本実施形態では、図示を省略するが、器具セット8のセット名またはセットIDと、診療科とが関連付けられた器具・診療科マスタ情報が予め記憶されている。再入庫集計情報160のセット名162に関連付けられた診療科を上記器具・診療科マスタ情報から抽出し、当該抽出された診療科が、再入庫集計情報160の診療科161に追加される。
【0095】
再入庫集計情報160の棚名・棚番163には、再入庫情報146が再入庫である再入庫情報146に関連付けられた棚名・棚番143(
図7参照)が追加される。再入庫回数165には、上述した
図3のカウント部91によってカウントされた器具セット8に付されたセットID144ごとの再入庫の回数が追加される。
【0096】
本実施形態では、
図14に示す再入庫集計画面DP40には、再入庫一覧表T40および再入庫グラフG40が配置されて表示される。再入庫一覧表T40は、器具セット8と、器具セット8の再入庫回数165とを関連付けた表である。再入庫一覧表T40には、再入庫集計情報160が表示され、診療科161と、セット名162と、棚名・棚番163と、再入庫回数165とが関連付けられて表示されている。
【0097】
再入庫グラフG40は、再入庫一覧表T40に表示された再入庫集計情報160に基づいたグラフである。再入庫グラフG40では、再入庫回数165ごとの器具セット8の数をグラフ化して表示されている。再入庫グラフG40に関するグラフの種類は特に限定されない。ここでは、再入庫グラフG40は、再入庫回数ごとの棒グラフである。
図14の上の再入庫グラフG40では、再入庫回数が1である器具セット8が1つ存在しており、再入庫回数が3である器具セット8が3つ存在している。
【0098】
なお、本実施形態では、器具セット8は、複数の医療器具5で構成された複数器具セット8aと、1つの医療器具5で構成された単包器具セット8bとに区分けすることができる。そこで、再入庫集計画面DP40では、複数器具セット8aと、単包器具セット8bとに分けて、再入庫一覧表T40および再入庫グラフG40が表示されてもよい。
図14の一例では、上側に複数器具セット8aに関する再入庫一覧表T40および再入庫グラフG40が表示され、下側に単包器具セット8bに関する再入庫一覧表T40および再入庫グラフG40が表示されている。
【0099】
本実施形態では、再入庫集計画面DP40は、検索機能を有している。例えば作業者が指定した所定の検索期間181、所定の検索セット名182、または所定の検索棚183の検索棚番184に基づいた、器具セット8と再入庫回数とが関連付けられた再入庫集計情報160による再入庫一覧表T40および再入庫グラフG40が再入庫集計画面DP40に表示されてもよい。ここで、所定の検索期間181は、例えば週単位であるが、日単位であってもよいし、月単位であってもよい。検索期間181は、例えばプルダウンメニューで構成されている。検索セット名182、検索棚183、および、検索棚番184は、作業者が入力するテキストボックスによって構成されていてもよいし、プルダウンメニューで構成されていてもよい。
【0100】
本実施形態では、再入庫集計画面DP40には、検索ボタンBT40が配置されている。作業者が操作装置55を介して検索ボタンBT40を押すことで、集計表示部93は、検索期間181、検索セット名182、および、検索棚183の検索棚番184で指定した条件に基づいた再入庫一覧表T40および再入庫グラフG40を再入庫集計画面DP40に表示する。
【0101】
本実施形態では、
図3の集計表示部93は、
図15に示すような保管履歴集計画面DP50を表示装置50に表示することが可能である。保管履歴集計画面DP50には、保管履歴一覧表T50および入庫率グラフG50が表示されている。
【0102】
保管履歴一覧表T50は、
図7の保管履歴テーブルTB40の保管履歴情報140に基づいて作成された表である。保管履歴一覧表T50には、再入庫であるか否かに関わらず、所定の条件(例えば所定の期間)に合った器具セット8が表示される。保管履歴一覧表T50は、診療科171と、セット名172と、棚名・棚番173と、再入庫情報174とが関連付けられた情報である。診療科171は、
図14の再入庫集計情報160の診療科161と同様の手順で取得される。セット名172と、棚名・棚番173と、再入庫情報174とは、
図7の保管履歴テーブルTB40のセットID144に対応したセット名と、棚名・棚番143と、再入庫情報146とから取得される。再入庫情報174において、再入庫の場合、すなわち再入庫情報146が「2」の場合には、チェックが入れられている。
【0103】
入庫率グラフG50は、保管履歴一覧表T50に基づいて作成されたグラフである。入庫率グラフG50では、保管履歴一覧表T50に表示された器具セット8のうち、保管履歴一覧表T50の全部の器具セット8が入庫された合計回数(延べ回数)に対する初回入庫の回数(延べ回数)の割合と、保管履歴一覧表T50の全部の器具セット8が入庫された合計回数(延べ回数)に対する再入庫の回数(延べ回数)の割合とを示した円グラフである。このことで、所定の条件を基にして、全体の器具セット8が入庫された合計回数のうち、初回入庫の回数の割合が分かることができる。また、所定の条件を基にして、全体の器具セット8が入庫された合計回数のうち、再入庫の回数の割合が分かることができる。
【0104】
なお、
図15に示す保管履歴集計画面DP50においても、
図14に示す再入庫集計画面DP40と同様の検索機能を有している。ここでは、作業者が操作装置55を介して検索ボタンBT50を押すことで、検索期間181、検索セット名182、および、検索棚183の検索棚番184で指定した条件に基づいた保管履歴一覧表T50および入庫率グラフG50が表示される。
【0105】
以上、本実施形態では、
図3に示すように、医療器具5の保管管理装置60は、メモリー60aと、少なくとも1つのプロセッサ60bとを備えている。メモリー60aは、保管履歴情報140を記憶している。
図7に示すように、保管履歴情報140は、1つまたは複数の医療器具5をまとめた器具セット8が保管されたときに器具セット8に付される保管ID141と、器具セット8に対して滅菌処理されたことを示す滅菌ID145とが少なくとも関連付けられた情報である。少なくとも1つのプロセッサ60b(
図3参照)は、滅菌取得処理と、判定処理と、通知処理とを実行可能に構成されている。滅菌取得処理は、
図3の滅菌取得部65によって実行される。滅菌取得処理では、
図8のステップS105のように、入庫対象の器具セット8に付された対象滅菌ID22を取得する。判定処理は、
図3の判定部69によって実行される。判定処理では、
図8のステップS115のように、対象滅菌ID22と一致する滅菌ID145が保管履歴情報140(
図7参照)に存在するか否かを判定する。通知処理は、
図3の通知部71によって実行される。通知処理では、
図8のステップS117のように、判定処理において、対象滅菌ID22と一致する滅菌ID145が保管履歴情報140に存在すると判定されたとき、対象滅菌ID22が付された器具セット8が再入庫であることを通知する。
【0106】
本実施形態では、
図1に示す対象滅菌ID22は、滅菌工程15(
図2参照)において器具セット8が滅菌処理されたときに付されるIDである。滅菌処理は、手術・診察工程11において手術や診察などで使用された器具セット8に対して行われるものであり、同じ器具セット8であっても、滅菌処理が行われるごとに新たな対象滅菌ID22が付される。ここで、滅菌取得処理で取得した対象滅菌ID22と一致する滅菌ID145が保管履歴情報140に存在している場合、一度払い出された器具セット8が手術や診察で使用されず、かつ、滅菌処理されずに、再度入庫されることを意味する。よって、対象滅菌ID22と一致する滅菌ID145が保管履歴情報140に存在すると判定されたとき、対象滅菌ID22が付された器具セット8が再入庫であると判断することができる。そして、通知処理において、対象滅菌ID22が付された器具セット8が再入庫であることを通知することで、再入庫である器具セット8を作業者が分かり易くなる。
【0107】
本実施形態では、通知処理では、
図3の通知部71は、対象滅菌ID22が付された器具セット8が再入庫であることを示す再入庫メッセージM30を含む再入庫警告画面DP30(
図12参照)を表示装置50に表示する。このことによって、作業者は、
図12に示すように、表示装置50の再入庫警告画面DP30を見ることで、対象滅菌ID22が付された器具セット8が再入庫であることを知ることができる。よって、作業者は、対象滅菌ID22が付された器具セット8が再入庫であることを視覚的に分かり易くすることができる。
【0108】
本実施形態では、
図3のメモリー60aは、
図7に示すように、保管履歴情報140が記憶された保管履歴テーブルTB40を記憶している。このことによって、保管履歴情報140は、データベースのテーブルで管理されているため、保管履歴情報140の追加、削除、変更を容易に行うことができる。
【0109】
本実施形態では、
図7に示すように、保管履歴情報140には、滅菌ID145と、器具セット8を保管する棚2の棚番3を示す棚ID142と、器具セット8が再入庫であるか否かを示す再入庫情報146とが更に関連付けられている。少なくとも1つのプロセッサ60bは、棚取得処理と、履歴追加処理とを実行可能に構成されている。棚取得処理は、
図3の棚取得部67によって実行される。棚取得処理では、
図8のステップS103のように、器具セット8を保管する所定の棚2の棚番3に付された対象棚ID26を取得する。履歴追加処理は、
図3の履歴追加部75によって実行される。履歴追加処理では、自動で付された固有のIDを保管ID141とし、滅菌取得処理で取得された対象滅菌ID22を滅菌ID145とし、棚取得処理で取得された対象棚ID26を棚ID142とし、判定処理において対象滅菌ID22と一致する滅菌ID145が保管履歴情報140に存在すると判定されたときに、再入庫ありを再入庫情報146とした保管履歴情報140を作成し、
図7に示す保管履歴テーブルTB40に追加する。また、履歴追加処理では、判定処理において対象滅菌ID22と一致する滅菌ID145が保管履歴情報140に存在しないと判定されたときに、再入庫なし(ここでは、初回入庫)を再入庫情報146とする、
【0110】
このことによって、
図7に示すように、保管履歴情報140において滅菌ID145と再入庫情報146とが関連付けられている。再入庫情報146を含む保管履歴情報140は、棚取得処理で対象棚ID26が取得され、かつ、滅菌取得処理で対象滅菌ID22が取得されたタイミングで、作成されて保管履歴テーブルTB40に追加される。作業者は、保管履歴情報140の再入庫情報146を確認することで、どの滅菌ID145が付された器具セット8が再入庫であるかを容易に知ることができる。
【0111】
本実施形態では、
図7に示すように、保管履歴情報140には、滅菌ID145と、器具セット8を判別するためのセットID144とが更に関連付けられている。少なくとも1つのプロセッサ60bは、カウント処理と、集計表示処理とを実行可能に構成されている。カウント処理は、
図3のカウント部91によって実行される。カウント処理では、セットID144ごとに、再入庫情報146が再入庫である保管履歴情報140をカウントすることで、再入庫回数165(
図14参照)を算出する。集計表示処理は、
図3の集計表示部93によって実行される。集計表示処理では、セットID144ごとに、カウント処理で算出されたセットID144が付された器具セット8に対する再入庫回数165が示された再入庫集計画面DP40(
図14参照)を表示装置50に表示する。このことによって、作業者は、表示装置50に表示された再入庫集計画面DP40を見ることで、再入庫されることが多いセットID144が付された器具セット8を知ることができる。よって、再入庫されることが多い器具セット8が含まれる手術計画の器具セットを見直すことで、器具セット8の再入庫を減らすことができる。その結果、保管された器具セット8の払い出しを効率よく行うことができる。
【0112】
本実施形態では、
図1に示すように、保管管理システム100は、医療器具5の保管管理装置60と、表示装置50と、操作装置55と、読取装置30とを備えている。器具セット8には、対象滅菌ID22が記録された滅菌識別標識21が付されている。読取装置30は、作業者によって操作され、滅菌識別標識21を読み取ることが可能である。保管管理装置60の滅菌取得処理では、滅菌識別標識21を読取装置30で読み取ることで、対象滅菌ID22を取得する。このことによって、作業者は、入庫対象の器具セット8の滅菌識別標識21を読取装置30で読み取るという簡単な方法で、保管管理装置60は、対象滅菌ID22を取得することができる。
【0113】
本実施形態では、
図1に示すように、器具セット8を保管する所定の棚2の棚番3には、対象棚ID26が記録された棚識別標識25が付されている。読取装置30は、棚識別標識25を読み取り可能に構成されている。保管管理装置60の少なくとも1つのプロセッサ60bは、棚取得処理と、表示処理と、リスト追加処理とを実行可能に構成されている。棚取得処理では、
図8のステップS103のように、
図3の棚取得部67は、棚識別標識25を読取装置30で読み取ることで、対象棚ID26を取得する。表示処理は、
図3の表示部63によって実行される。表示処理では、
図8のステップS101のように、棚取得処理で取得された対象棚ID26に入庫される器具セット8のリストである入庫リストLS10が配置された入庫登録画面DP10(
図9参照)を表示装置50に表示する。リスト追加処理は、
図3のリスト追加部73によって実行される。リスト追加処理では、
図8のステップS119のように、滅菌取得処理において、対象滅菌ID22が取得されたときに、対象滅菌ID22が付された器具セット8を入庫リストLS10(
図13参照)に追加する。更に、リスト追加処理では、判定処理において対象滅菌ID22と一致する滅菌ID145が保管履歴情報140に存在すると判定されたとき、対象滅菌ID22が付された器具セット8が再入庫であることを入庫リストLS10に付加する。ここでは、
図13に示すように、入庫リストLS10の再入庫情報152にチェックを入れることで、対象滅菌ID22が付された器具セット8が再入庫であることを入庫リストLS10に付加する。
【0114】
このことによって、対象棚ID26が付された棚2の棚番3に入庫される器具セット8の入庫リストLS10に再入庫である情報を付加することで、作業者は、入庫リストLS10を見ることで、これから入庫する器具セット8のうち、どの器具セット8が再入庫であるかを一目で分かることができる。
【符号の説明】
【0115】
2 棚
3 棚番
5 医療器具
8 器具セット
22 対象滅菌ID
26 対象棚ID
30 読取装置
50 表示装置
55 操作装置
60 保管管理装置(医療器具の保管管理装置)
60a メモリー
60b プロセッサ
100 保管管理システム
140 保管履歴情報
141 保管ID
142 棚ID
145 滅菌ID
146 再入庫情報