(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】リン酸バナジウムリチウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/45 20060101AFI20241223BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20241223BHJP
【FI】
C01B25/45 M
H01M4/58
(21)【出願番号】P 2020218620
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深沢 純也
(72)【発明者】
【氏名】畠 透
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓馬
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-034877(JP,A)
【文献】特開2017-160107(JP,A)
【文献】国際公開第2014/006948(WO,A1)
【文献】特開2011-096641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/45
H01M 4/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナシコン(NASICON)構造を有するリン酸バナジウムリチウムの製造方法であって、
一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下である下記一般式(1):
LiVOPO
4・xH
2O (1)
(式中xは0~2の整数)
で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の粒子表面に、リン酸二水素リチウム(LiH
2PO
4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物が付着している炭素源付着粒子を調製するA工程と、
該炭素源付着粒子を、酸素含有雰囲気中で加熱処理することにより、反応前駆体を得るB工程と、
該反応前駆体を、不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気で500~1300℃で焼成し、リン酸バナジウムリチウムを得るC工程と、
を有
し、
前記反応前駆体の炭素含有量が、バナジウム原子に対する炭素原子のモル比(C/V)で、0.3~0.6であることを特徴とするリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
【請求項2】
前記炭素源付着粒子における、前記加熱分解により炭素が生じる有機化合物の含有量が、バナジウム原子に対する炭素原子のモル比(C/V)で、0.6より大きいことを特徴とする請求項1に記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
【請求項3】
前記A工程は、一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下の前記一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物と、リン酸二水素リチウム(LiH
2PO
4)と、前記加熱分解により炭素が生じる有機化合物と、を含有するスラリーを噴霧乾燥する噴霧乾燥処理を有する工程であることを特徴とする請求項1
又は2記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
【請求項4】
前記B工程において、前記炭素源付着粒子を加熱処理する温度が、270~370℃であることを特徴とする請求項1~
3いずれか1項記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
【請求項5】
前記A工程が、
五酸化バナジウム、リン酸及び還元糖を水溶媒中で混合して混合スラリー(1)を調製するA1工程と、
該混合スラリーを加熱処理して溶液化し、還元反応溶液を得るA2工程と、
加温下に該還元反応溶液に水酸化リチウムを含有する溶液を添加して、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物、リン酸二水素リチウム(LiH
2PO
4)及び前記加熱分解により炭素が生じる有機化合物を含有するスラリー(2)を調製するA3工程と、
該スラリー(2)をメディアミルにより湿式粉砕処理して、湿式粉砕処理スラリー(3)を調製するA4工程と、
該湿式粉砕処理スラリー(3)を噴霧乾燥処理して、前記炭素源付着粒子を得るA5工程と、
を有する工程であることを特徴とする請求項1~
4いずれか1項記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
【請求項6】
前記A2工程において、前記混合スラリー(1)を加熱処理する温度が、60~100℃であることを特徴とする請求項
5記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
【請求項7】
前記A3工程において、前記還元反応溶液の加熱温度が、40~100℃であることを特徴とする請求項
5又は
6記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
【請求項8】
前記A1工程において、前記還元糖の混合量が、五酸化バナジウムのバナジウム原子に対する炭素原子換算の炭素原子のモル比(C/V)で、0.6より大きく2.0以下であることを特徴とする請求項
5~
7いずれか1項記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
【請求項9】
前記A4工程後に得られる前記湿式粉砕処理スラリー(3)中の固形分の平均粒子径が2.0μm以下であることを特徴とする請求項
5~
8いずれか1項記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
【請求項10】
前記反応前駆体は、更に、Me源(MeはV以外の原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素を示す。)を含有することを特徴とする請求項1~
9いずれか1項記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池や全固体電池の正極材として有用なリン酸バナジウムリチウムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯機器、ノート型パソコンの電池としてリチウムイオン電池が活用されている。リチウムイオン電池は一般に容量、エネルギー密度に優れているとされている。また、ハイブリット自動車や電気自動車としての利用も期待さている。そして、リチウムイオン二次電池は自動車用途で用いられる場合、従来のものと比べて、温度や充放電電流の条件が過酷になる。
【0003】
リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)等のナシコン型リン酸塩は、高温においても安全性が高くなることから、自動車用途等のリチウム二次電池、全固体電池等の正極活物質として注目されている。
【0004】
リン酸バナジウムリチウムの製造方法としては、例えば、リチウム源、バナジウム化合物及びリン源を粉砕混合し、得られる均一混合物をペレット状に成形し、次いでこの成形品を焼成する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、下記特許文献3には、酸化バナジウム(V)を、水酸化リチウムを含む水溶液に溶解し、さらにリン源と炭素及び/又は不揮発性有機化合物を添加し、得られる原料混合溶液を乾燥して前駆体を得、この前駆体を不活性雰囲気にて熱処理してLi3V2(PO4)3と導電性炭素材料との複合体を得る方法が提案されている。
【0005】
また、本出願人も先に、下記特許文献4で、リチウム源、5価又は4価のバナジウム化合物、リン源及び加熱分解により炭素が生じる導電性炭素材料源とを水溶媒中で混合して原料混合液を調製する第1工程と、該原料混合液を加熱して沈殿生成反応を行い、沈殿生成物を含む反応液を得る第2工程と、該沈殿生成物を含む反応液をメディアミルにより湿式粉砕処理して、粉砕処理物を含むスラリーを得る第3工程と、該粉砕処理物を含むスラリーを噴霧乾燥処理して、反応前駆体を得る第4工程と、該反応前駆体を不活性ガス雰囲気中又は還元雰囲気中で600~1300℃で焼成するリン酸バナジウムリチウム炭素複合体の製造方法を提案した。また、本出願人は下記特許文献5で、バナジウム化合物、リン源及び加熱分解により炭素が生じる導電性炭素材料源を水溶媒中で、好ましくは60~100℃で加熱処理して反応を行った後、加熱処理後の液に、更にリチウム源を添加して反応を行い、得られる反応液を噴霧乾燥して反応前駆体を得、該反応前駆体を不活性ガス雰囲気中又は還元雰囲気中で焼成してリン酸バナジウムリチウムを製造する方法等を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2001-500665号公報
【文献】特表2002-530835号公報
【文献】特開2008-052970号公報
【文献】国際公開第2012/043367号パンフレット
【文献】国際公開第2014/006948号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、リン酸バナジウムリチウムを、自動車用途等のリチウム二次電池、全固体電池等の正極活物質に用いる場合に、電池性能を向上させ、或いは取り扱いを容易にするために、比表面積が低く、且つ、粒度分布がシャープなものが要望されることがある。
【0008】
しかしながら、上記のような、従来のリン酸バナジウムリチウムの製造方法では、高比表面積のリン酸バナジウムリチウムが得られ易い。例えば、特許文献4及び特許文献5のリン酸バナジウムリチウムの製造方法によれば、粒度分布がシャープでBET比表面積が10m2/gを超えるものが得られるが、BET比表面積が10m2/g以下のもので、粒度分布がシャープなものが得られ難い。
【0009】
従って、本発明は、X線回折的に単相であり、BET比表面積が10m2/g以下と比表面積が低く且つ粒子分布がシャープなものを得ることができるリン酸バナジウムリチウムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の本発明により解決される。
すなわち、本発明(1)は、ナシコン(NASICON)構造を有するリン酸バナジウ
ムリチウムの製造方法であって、
一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下である下記一般式(1):
LiVOPO4・xH2O (1)
(式中xは0~2の整数)
で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の粒子表面に、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物が付着している炭素源付着粒子を調製するA工程と、
該炭素源付着粒子を、酸素含有雰囲気中で加熱処理することにより、反応前駆体を得るB工程と、
該反応前駆体を、不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気で500~1300℃で焼成し、リン酸バナジウムリチウムを得るC工程と、
を有し、前記B工程で得られる反応前駆体の炭素含有量が、バナジウム原子に対する炭素原子のモル比(C/V)で、0.3~0.6であることを特徴とするリン酸バナジウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明(2)は、前記炭素源付着粒子における、前記加熱分解により炭素が生じる有機化合物の含有量が、バナジウム原子に対する炭素原子のモル比(C/V)で、0.6より大きいことを特徴とする(1)のリン酸バナジウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明(3)は、前記A工程は、一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下の前記一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物と、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)と、前記加熱分解により炭素が生じる有機化合物と、を含有するスラリーを噴霧乾燥する噴霧乾燥処理を有する工程であることを特徴とする(1)又は(2)のリン酸バナジウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明(4)は、前記B工程において、前記炭素源付着粒子を加熱処理する温度が、270~370℃であることを特徴とする(1)~(3)いずれかのリン酸バナジウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明(5)は、前記A工程が、
五酸化バナジウム、リン酸及び還元糖を水溶媒中で混合して混合スラリー(1)を調製するA1工程と、
該混合スラリーを加熱処理して溶液化し、還元反応溶液を得るA2工程と、
加温下に該還元反応溶液に水酸化リチウムを含有する溶液を添加して、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び前記加熱分解により炭素が生じる有機化合物を含有するスラリー(2)を調製するA3工程と、
該スラリー(2)をメディアミルにより湿式粉砕処理して、湿式粉砕処理スラリー(3)を調製するA4工程と、
該湿式粉砕処理スラリー(3)を噴霧乾燥処理して、前記炭素源付着粒子を得るA5工程と、
を有する工程であることを特徴とする(1)~(4)いずれかのリン酸バナジウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明(6)は、前記A2工程において、前記混合スラリー(1)を加熱処理する温度が、60~100℃であることを特徴とする(5)のリン酸バナジウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明(7)は、前記A3工程において、前記還元反応溶液の加熱温度が、40~100℃であることを特徴とする(5)又は(6)のリン酸バナジウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明(8)は、前記A1工程において、前記還元糖の混合量が、五酸化バナジウムのバナジウム原子に対する炭素原子換算の炭素原子のモル比(C/V)で、0.6より大きく2.0以下であることを特徴とする(5)~(7)いずれかのリン酸バナジウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0019】
また、本発明(9)は、前記A4工程後に得られる前記湿式粉砕処理スラリー(3)中の固形分の平均粒子径が2.0μm以下であることを特徴とする(5)~(8)いずれかのリン酸バナジウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0020】
また、本発明(10)は、前記反応前駆体は、更に、Me源(MeはV以外の原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素を示す。)を含有することを特徴とする(1)~(9)いずれかのリン酸バナジウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法によれば、X線回折的に単相であり、BET比表面積が10m2/g以下と比表面積が低く且つ粒子分布がシャープなものを得ることができるリン酸バナジウムリチウムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1のA3工程で得られたLiVOPO
4・2H
2OのX線回折図。
【
図2】実施例1のA3工程で得られたLiVOPO
4・2H
2OのSEM写真(1000倍)。
【
図3】実施例1のA3工程で得られたLiVOPO
4・2H
2OのSEM写真(5000倍)。
【
図4】実施例1のA5工程で得られた炭素源付着粒子のX線回折図。
【
図5】実施例1で得られたリン酸バナジウムリチウム試料のX線回折図。
【
図6】実施例2で得られたリン酸バナジウムリチウム試料のX線回折図。
【
図7】実施例1で得られたリン酸バナジウムリチウム試料のSEM写真。
【
図8】比較例1で得られたリン酸バナジウムリチウム試料のSEM写真。
【
図9】実施例1で得られたリン酸バナジウムリチウム試料の粒度分布図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法は、
ナシコン(NASICON)構造を有するリン酸バナジウムリチウムの製造方法であって、
一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下である下記一般式(1):
LiVOPO4・xH2O (1)
(式中xは0~2の整数)
で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の粒子表面に、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物が付着している炭素源付着粒子を調製するA工程と、
該炭素源付着粒子を、酸素含有雰囲気中で加熱処理することにより、反応前駆体を得るB工程と、
該反応前駆体を、不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気で500~1300℃で焼成し、リン酸バナジウムリチウムを得るC工程と、
を有することを特徴とするリン酸バナジウムリチウムの製造方法である。
【0024】
本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法は、ナシコン(NASICON)構造を有するリン酸バナジウムリチウム(以下、単に「リン酸バナジウムリチウム」と呼ぶ。)の製造方法である。
【0025】
本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法を行い得られるリン酸バナジウムリチウムは、下記一般式(2):
LixVy(PO4)3 (2)
(式中、xは2.5以上3.5以下、yは1.8以上2.2以下を示す。)
で表わされるリン酸バナジウムリチウム、あるいは、一般式(2)で表わされるリン酸バナジウムリチウムに、必要により、Me元素(Meは、V以外の原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素を示す。)がドープされて含有されているリン酸バナジウムリチウムである。
【0026】
一般式(2)中のxは、2.5以上3.5以下、好ましくは2.8以上3.2以下である。yは、1.8以上2.2以下、好ましくは1.9以上2.1以下である。
【0027】
リン酸バナジウムリチウムがMe元素を含有する場合、ドープされるMe元素は、Sr、Ba、Sc、Y、Hf、Ta、W、Ru、Os、Ag、Zn、Si、Ga、Ge、Sn、Bi、S、Se、Te、Cl、Br、I、Na、K、Mg、Ca、Al、Mn、Co、Ni、Fe、Ti、Zr、Bi、Cr、Nb、Mo及びCuから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらのうち、Me元素としては、Mg、Ca、Al、Mn、Co、Ni、Fe、Ti、Zr、Bi、Cr、Nb、Mo及びCuから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0028】
本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法は、A工程と、B工程と、C工程と、を有する。
【0029】
(A工程)
本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法に係るA工程は、一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下である一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の粒子表面に、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物が付着している炭素源付着粒子を調製する工程である。
【0030】
なお、本発明において、炭素源付着粒子は、(i)一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下である一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の粒子が単分散した状態の単分散粒子の粒子表面に、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物が付着したものであっても、あるいは、(ii)一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下である一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物が二次粒子を形成し、該二次粒子の粒子表面に、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物が付着したものであっても、あるいは、(iii)前記(i)と(ii)の両方の形態を含むものであってもよい。
【0031】
本発明では、A工程において、一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下である一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の粒子表面に、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物を付着させた炭素源付着粒子を調製することにより、C工程の焼成で、少ない炭素量でX線回折的に単相のリン酸バナジウムリチウムが得られ易く、また、生成されるリン酸バナジウムリチウムとして粒子分布がシャープなものが得られ易くなる。
【0032】
A工程に係る一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物は、一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下、好ましくは0.1~1.5μmである。一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の一次粒子の平均粒子径が、上記範囲にあることにより、生成されるリン酸バナジウムリチウムとして粗粒子が生じ難くなり、粒度分布がシャープなものが得られ易く、また、少ない炭素量でX線回折的に単相のリン酸バナジウムリチウムが得られ易くなる。一方、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の一次粒子の平均粒子径が、上記範囲を超えると、生成されるリン酸バナジウムリチウムとして粗粒子が混入し易くなり、粒度分布がシャープなものが得られ難くなる。なお、リチウムバナジウムリン複合酸化物の一次粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)観察から、任意に抽出した200個の粒子の粒子径(Heywood径における長径)の平均値として求められるものである。
【0033】
一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物は、公知の化合物であり、例えば、五酸化バナジウム、リン源及び還元作用を有する有機化合物を水溶媒中で60~100℃で五酸化バナジウムの還元反応を行った後、次いで、この還元溶液に、水酸化リチウムを添加して60~100℃で反応を行う方法、リン酸、五酸化バナジウム、水酸化リチウム及び還元作用を有する有機化合物を原料として水熱合成する方法(例えば、特開2010-218829号公報参照。)等が挙げられ、更に、必要により粉砕処理することにより、一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下の一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物を得ることができる。
【0034】
A工程で調製される炭素源付着粒子において、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物に粒子表面には、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)が付着している。一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の粒子表面に付着しているリン酸二水素リチウム(LiH2PO4)は、B工程で、一部又は全量が非晶質のリン化合物(LiH2PO4、LiPO3等)やリン酸リチウム(Li3PO4)になり、更にC工程において、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)とB工程で生成された非晶質のリン化合物及び/又はリン酸リチウムは一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物と反応して、一般式(2)で表されるリン酸バナジウムリチウムを生成する。
【0035】
A工程で調製される炭素源付着粒子において、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物に粒子表面には、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)に加え、加熱分解により炭素が生じる有機化合物が付着している。加熱分解により炭素が生じる有機化合物としては、B工程で炭素源付着粒子を加熱処理する際に、一部は系外に除去され、又は炭素が単離し、あるいは、C工程で反応前駆体を焼成する際に加熱分解し、炭素が単離し、炭素に変換されるものが用いられる。また、この単離した炭素は、C工程の焼成時にバナジウムの酸化の防止に必要な成分となる。
【0036】
加熱分解により炭素が生じる有機化合物としては、B工程及びC工程を経て、炭素に変換されるものであれば、特に制限されないが、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の粒子表面に、均一に加熱分解により炭素が生じる有機化合物を付着させることができる点で、水溶媒に溶解するものが好ましく、還元糖が特に好ましい。還元糖としては、例えば、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、スクロース等が挙げられ、これらのうち、ラクトース、スクロースが優れた反応性を有する反応前駆体が得られる点で、好ましい。
【0037】
なお、加熱分解により炭素が生じる有機化合物のうち、五酸化バナジウムの還元性を有する有機化合物、例えば、還元糖は、後述するA1~A5工程を有するA工程の好ましい形態において、五酸化バナジウムの還元剤としても用いられてもよい。その場合、A1~A5工程を有するA工程では、炭素源付着粒子には、五酸化バナジウムの還元反応に用いられた後の「五酸化バナジウムの還元性を有し且つ加熱分解により炭素が生じる有機化合物」、例えば、還元糖が、五酸化バナジウムの還元反応の還元剤として使用されて生じた反応変換物が、付着していてもよい。つまり、A工程が、A1~A5工程を有する工程の場合、炭素源付着粒子には、加熱分解により炭素が生じる有機化合物として、五酸化バナジウムの還元には使用されなかった「還元糖等の五酸化バナジウムの還元性を有し且つ加熱分解により炭素が生じる有機化合物」と、五酸化バナジウムの還元反応に還元剤として使用されて生じた「還元糖等の五酸化バナジウムの還元性を有し且つ加熱分解により炭素が生じる有機化合物」の反応変換物と、が付着している。
【0038】
A工程で調製される炭素源付着粒子における、加熱分解により炭素が生じる有機化合物の付着量は、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の粒子表面に、均一に加熱分解により炭素が生じる有機化合物が付着し、C工程の焼成においてバナジウムの酸化を抑制することができる点で、炭素源付着粒子中のバナジウム原子に対する炭素原子換算の炭素原子のモル比(C/V)で、0.6より大きいことが好ましい。また、その一方で、A工程で調製される炭素源付着粒子における、加熱分解により炭素が生じる有機化合物の付着量は、加熱分解により炭素が生じる有機化合物に由来する炭素が、B工程での酸素含有雰囲気中での加熱処理により、効率よく低減されて、その含有量を調整し易くなる点で、炭素源付着粒子中のバナジウム原子に対する炭素原子換算の炭素原子のモル比(C/V)で、好ましくは0.6より大きく2.0以下、特に好ましくは0.7以上1.7以下である。
【0039】
A工程は、一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下の一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物と、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)と、加熱分解により炭素が生じる有機化合物と、を含有するスラリーを、噴霧乾燥する噴霧乾燥処理を有する工程であることが、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の粒子表面に、均一に、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物を付着させることができる点で、好ましい。
【0040】
一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下の一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物と、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)と、加熱分解により炭素が生じる有機化合物と、を含有するスラリーで用いる溶媒としては、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物に対して、不活性であり、且つ、不溶性又は難溶性であり、且つ、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物を溶解できるものであれば、特に制限されないが、工業的に有利となる点で、水、又は水及び水と親水性の有機溶媒の混合溶媒が好ましい。
【0041】
また、A工程で調製される炭素源付着粒子が、前記(ii)又は(iii)の形態の場合には、一次粒子の平均粒子径が2.0μm以下である一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物が二次粒子を形成し、該二次粒子の粒子表面に、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物が付着した炭素源付着粒子の平均粒子径(二次粒子径)は、SEM観察から求められる平均粒子径で5~100μm、好ましくは10~50μmであることが、取り扱いが容易で、反応性に優れた反応前駆体となる観点から好ましい。なお、炭素源付着粒子の平均粒子径(二次粒子径)は、SEM観察から、任意に抽出した200個の粒子の粒子径(Heywood径における長径)の平均値として求められるものである。
【0042】
A工程としては、以下のA1工程~A5工程を有する工程であることが、工業的に有利に優れた反応性を有する反応前駆体が得られる点で、好ましい。つまり、A工程としては、
五酸化バナジウム、リン酸及び還元糖を水溶媒中で混合して混合スラリー(1)を調製するA1工程と、
混合スラリーを加熱処理して溶液化し、還元反応溶液を得るA2工程と、
加温下に還元反応溶液に水酸化リチウムを含有する溶液を添加して、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物を含有するスラリー(2)を調製するA3工程と、
スラリー(2)をメディアミルにより湿式粉砕処理して、湿式粉砕処理スラリー(3)を調製するA4工程と、
湿式粉砕処理スラリー(3)を噴霧乾燥処理して、炭素源付着粒子を得るA5工程と、
を有する工程であることが好ましい。
【0043】
A1工程は、五酸化バナジウム、リン酸及び還元糖を水溶媒中で混合して混合スラリー(1)を調製する工程である。
【0044】
A1工程において、五酸化バナジウム及びリン酸の混合量は、リン酸中のP原子に対する五酸化バナジウム中のV原子のモル比(V/P)で、0.50~0.80、好ましくは0.60~0.73であることが、最終生成物として単相のリン酸バナジウムリチウムが得られ易くなる点で、好ましい。
【0045】
A1工程に係る還元糖は、A2工程において五酸化バナジウムの還元反応を促進し、また、A2工程を行い得られる還元反応溶液が撹拌可能な良好な粘度を有する反応溶液とするのに必要な成分となる。また、A2工程で還元に使用されなかった還元糖に由来する炭素源は、C工程の焼成の際に、バナジウムの酸化を抑制する成分となる。
【0046】
A1工程に係る還元糖としては、前述した還元糖が挙げられ、例えば、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、スクロース等が挙げられ、これらのうち、ラクトース、スクロースが優れた反応性を有する反応前駆体が得られる点で、好ましい。
【0047】
A1工程において、還元糖の混合量は、五酸化バナジウム中のV原子に対して、炭素原子換算の炭素原子のモル比(C/V)で、好ましくは0.6より大きく2.0以下、特に好ましくは0.7以上1.7以下である。A1工程における還元糖の混合量が、上記範囲にあることにより、経済性に優れ、A2工程での還元反応溶液の溶液化ができ、還元糖が均一に付着された炭素源付着粒子が得られる。一方、A1工程における還元糖の混合量が、上記範囲未満だと、A2工程において五酸化バナジウムが還元されて溶液化したものが得られ難く、また、A5工程で、還元糖の量が不足し、均一に還元糖が付着した炭素源付着粒子が得られ難くなる傾向があり、また、上記範囲を超えると、B工程で還元糖の量を調製するのに多大な時間を要するため工業的に有利でない。
【0048】
A1工程における、五酸化バナジウム、リン酸及び還元糖は、製造履歴は問われないが、高純度のリン酸バナジウムリチウムを製造するために、可及的に不純物含有量が少ないものであることが好ましい。
【0049】
A1工程で用いる水溶媒としては、水、又は水及び水と親水性の有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。
【0050】
A1工程において、五酸化バナジウム、リン酸及び還元糖を水溶媒へ添加する順序、混合手段は、特に制限されるものではなく、上記各原料が均一に分散した混合スラリー(1)となるように行われる。
【0051】
A2工程は、A1工程で得られる混合スラリー(1)を加熱処理して溶液化し、少なくとも五酸化バナジウムの還元反応を行って溶液化し、還元反応溶液を得るA2工程である。本発明者らは、五酸化バナジウムとリン酸が、還元糖の存在下に反応し、VOPO4或いはその含水物が生成されるので(例えば、特開2011-96640号公報、特開2011-96641号公報、特開2019-34877号公報等参照)、A2工程で得られる還元反応溶液は、VOPO4或いはその含水物と、余剰の還元糖及びリン酸二水素イオン(H2PO4
-)等のリン酸に起因したイオンが水溶媒に溶解したものであると考えている。
【0052】
A2工程における加熱処理の温度は、60~100℃、好ましくは80~100℃である。A工程における加熱処理の温度が、上記範囲にあることにより、大気圧下に有利に実施することができる。一方、A工程における加熱処理の温度が、上記範囲未満だと、反応時間が長くなるため工業的に不利であり、また、上記範囲を超えると、加圧容器を使用しなければならず、工業的に有利でない。
【0053】
A2工程では、溶液が濃青色の透明な液体になることを目視で観察することにより、還元反応の終了を確認することができる。
【0054】
A2工程における加熱処理の時間は、特に制限されず、一般に0.2時間以上、好ましくは0.5~4時間であり、上記範囲の時間加熱処理すれば、満足のいく還元反応溶液を得ることができる。
【0055】
A3工程は、A2工程を得られる還元反応溶液を加温した状態に保持しながら、還元反応溶液に水酸化リチウムを含有する溶液を添加して、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物を含有するスラリー(2)を調製する工程である。
【0056】
A3工程において、還元反応溶液に水酸化リチウムを含有する溶液を添加することにより析出する一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物は、板状の一次粒子が二次粒子の集合体を形成しており、SEM観察により求められる板状の一次粒子の平均の厚さが1~20nm、好ましくは3~15nmであり、SEM観察から求められる二次粒子の平均粒子径が0.5~20μm、好ましくは1~15μmである。なお、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の板状の一次粒子の平均の厚さと、二次粒子の平均粒子径は、SEM観察から、任意に抽出した200個の粒子の平均値として求められるものである。
【0057】
A3工程で生成する一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物は、A4工程において、メディアミルで湿式粉砕処理されることにより、容易に、微細な一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物に粉砕されて、微細な一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物を含有するスラリー(2)が得られる。
【0058】
A3工程に係る水酸化リチウムを含有する溶液は、水酸化リチウムを水に溶解させた溶液である。
【0059】
水酸化リチウムを含有する溶液中の水酸化リチウム濃度は、5~20質量%、好ましくは10~15質量%である。水酸化リチウムを含有する溶液中の水酸化リチウム濃度が上記範囲にあることにより、還元反応溶液への添加操作が容易となり、水酸化リチウムを含有する溶液の添加に伴う発熱を制御しながら製造効率を高めることができる点で、好ましい。
【0060】
水酸化リチウムを含有する溶液の添加量は、A2工程を行い得られる還元反応溶液中のP原子に対する水酸化リチウムを含有する溶液中のLi原子のモル比(Li/P)で、0.70~1.30、好ましくは0.83~1.17となる添加量である。水酸化リチウムを含有する溶液の添加量が上記範囲にあることにより、最終生成物として単相のリン酸バナジウムリチウムが得られ易くなる点で、好ましい。また、A3工程においては、水酸化リチウムを含有する溶液を添加した後の「一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物を含有するスラリー(2)」のpHが、3~7、好ましくは4~6、特に好ましくは4~5となるように、水酸化リチウムを含有する溶液を添加することが、最終生成物として単相のリン酸バナジウムリチウムが得られ易くなる点で、好ましい。
【0061】
A3工程において、水酸化リチウムは、製造履歴は問われないが、高純度のリン酸バナジウムリチウムを製造するために、可及的に不純物含有量が少ないものであることが好ましい。
【0062】
A3工程では、A2工程を行い得られる還元反応溶液を40~100℃、好ましくは60~100℃に保持しながら、水酸化リチウムを含有する溶液を、還元反応溶液に添加する。A3工程において、水酸化リチウムを含有する溶液を添加する温度が、上記範囲未満だと、析出が不均一となり、一方、上記範囲を超えると、水酸化リチウムを含有する溶液の煮沸により操作性が悪くなる傾向がある。
【0063】
また、A3工程において、水酸化リチウムを含有する溶液の添加は、安定した品質のものが得られる点で、一定速度で添加することが好ましい。
【0064】
また、A3工程において、水酸化リチウムを含有する溶液を添加した後、還元反応溶液と水酸化リチウムとの反応を完結させるため、必要により引き続き熟成反応を行うことができる。
【0065】
熟成反応を行う温度は、40~100℃、好ましくは60~100℃であることが、均一な組成の粒子が得られる点で、好ましい。また、熟成反応時間は、特に制限されるものではないが、通常は0.5時間以上熟成反応を行えば、満足のいくスラリー(2)が得られる。
【0066】
A4工程は、A3工程を行い得られたスラリー(2)をメディアミルにより湿式粉砕処理して、湿式粉砕処理スラリー(3)を調製する工程である。
【0067】
A4工程を行うことにより、微細な一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物を含有する湿式粉砕処理スラリー(3)を得ることができる。この微細な一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物から得られる反応前駆体は、反応性が優れ、また、C工程の焼成で、X線回折的に単相のリン酸バナジウムリチウムが生成し、粒子分布がシャープなものが得られ易くなる。
【0068】
A4工程において、メディアミルにより湿式粉砕の対象となるスラリー(2)の固形分濃度は、10~40質量%、好ましくは15~30質量%であることが、操作性が良好であり、また、効率的に粉砕処理を行うことができる点で、好ましい。このため、A3工程を行った後、必要により、スラリー(2)の濃度が上記範囲となるように固形分濃度を調節してから、A4工程において、湿式粉砕処理することが望ましい。
【0069】
そして、A4工程では、スラリー(2)を、メディアミルにより湿式粉砕処理する。この方法を採用することで、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物をより微細に粉砕することができるので、一層優れた反応性を有する反応前駆体を得ることができる。
【0070】
メディアミルとしては、ビーズミル、ボールミル、ペイントシェーカー、アトライタ、サンドミル等が挙げられ、ビーズミルが好ましい。ビーズミルを用いる場合、運転条件やビーズの種類及び大きさは、装置のサイズや処理量に応じて適切に選択すればよい。
【0071】
メディアミルを用いた処理を一層効率的に行う観点から、湿式粉砕の対象のスラリー(2)に分散剤を加えてもよい。分散剤としては、各種の界面活性剤、ポリカルボン酸アンモニウム塩等が挙げられる。湿式粉砕の対象のスラリー(2)中の分散剤の濃度は、0.01~10質量%、好ましくは0.1~5質量%であることが、十分な分散効果が得られる点で、好ましい。
【0072】
A4工程では、メディアミルを用いる湿式粉砕処理を、固形分の平均粒子径が、レーザー散乱・回折法で2.0μm以下、好ましくは0.1~1.5μm、特に好ましくは0.2~0.5μmとなるまで行うことが、優れた反応性を有する反応前駆体が得られる点で、好ましい。
【0073】
A5工程は、A4工程を行い得られる湿式粉砕処理スラリー(3)を、噴霧乾燥処理して、炭素源付着粒子を得る工程である。
【0074】
A5工程を行い得られる炭素源付着粒子は、前記(ii)又は前記(iii)の形態の炭素源付着粒子であることが、反応性に優れた反応前駆体となる点で、好ましい。
【0075】
炭素源付着粒子を構成する一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の一次粒子の平均粒子径は、A4工程を行い得られる湿式粉砕処理スラリー(3)中の固形分の一次粒子の平均粒子径と同程度となる。
【0076】
液の乾燥方法には噴霧乾燥法以外の方法も知られているが、本発明においては噴霧乾燥法を選択することが有利であるとの知見に基づき、この乾燥方法を採用している。詳細には、A5工程において、噴霧乾燥法を用いることにより、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の粒子表面に、均一に還元糖及びリン酸二水素リチウム(LiH2PO4)が付着し、また、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の粒子が密に詰まった状態の造粒物が得られることから、C工程の焼成で、少ない炭素量でX線回折的に単相のリン酸バナジウムリチウムを生成させ易くなる。
【0077】
噴霧乾燥法においては、所定手段によって液を霧化し、それによって生じた微細な液滴を乾燥させることで造粒物を得る。液の霧化には、例えば、回転円盤を用いる方法と、圧力ノズルを用いる方法がある。A5工程においてはいずれの方法を用いることもできる。
【0078】
噴霧乾燥法においては、霧化されたスラリーの液滴の大きさと、それに含まれる粉砕処理物の粒子の大きさとの関係が、安定した乾燥や、得られる乾燥粉の性状に影響を与える。詳細には、液滴の大きさに対して粉砕処理物の原料粒子の大きさが小さすぎると、液滴が不安定になり、乾燥を首尾よく行いづらくなる。この観点から、霧化された液滴の大きさは、5~100μmが好ましく、10~50μmが特に好ましい。噴霧乾燥装置へのスラリーの供給量は、この観点を考慮して決定することが望ましい。
【0079】
噴霧乾燥装置における乾燥温度は、熱風入口温度を180~250℃、好ましくは200~240℃に調整し、粉体の温度を90~150℃、好ましくは100~130℃となるように調整することが、粉体の吸湿を防ぎ粉体の回収が容易になることから好ましい。
【0080】
A5工程を行い得られる炭素源付着粒子は、乾燥により、X線回折分析において、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の式中のxが2のものと、式中の結晶水の一部除去されたものとの混合物となる場合があるが、本発明では該混合物も好適に用いられる。
【0081】
(B工程)
本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法に係るB工程は、A工程で調製した炭素源付着粒子を、酸素雰囲気で加熱処理することにより、反応前駆体を得る工程である。
【0082】
本発明では、B工程を行い、炭素源付着粒子の粒子表面に付着している炭素原子の量を調節することにより、C工程を経て、比表面積が低く、且つ、粒子分布がシャープなリン酸バナジウムリチウムを生成させることができる。
【0083】
B工程では、反応前駆体の炭素含有量が、反応前駆体中のV原子に対する炭素原子のモル比(C/V)で、0.3~0.6、好ましくは0.35~0.55となるまで、加熱処理を行うことが好ましい。反応前駆体の炭素含有量が、上記範囲にあることにより、C工程での還元が十分に起こり、また、炭素量が適切な量であるためリン酸バナジウムリチウムのBET比表面積が低くなる。一方、反応前駆体の炭素含有量が、上記範囲未満だと、C工程での還元が不完全となり、また、上記範囲を超えると、炭素量が過剰となりリン酸バナジウムリチウムのBET比表面積が高くなる傾向がある。
【0084】
B工程では、加熱処理を、酸素含有雰囲気下に行う。B工程において、加熱処理を行う際の雰囲気中の酸素濃度は、5vol%以上、特に好ましくは10~30vol%であることが、加熱分解により炭素が生じる有機化合物を高効率で酸化処理し、炭素含有量を上記範囲に調製し易くなる点で、好ましい。
【0085】
B工程において、加熱処理の温度は、炭素含有量の制御が容易となる点で、270~370℃が好ましく、290~360℃が特に好ましい。加熱処理の温度が、上記範囲未満では、炭素原子の含有量の低減が難しくなり、また、上記範囲を超えると、一気に炭素含有量が減るため、炭素含有量の調製が難しくなる傾向がある。
【0086】
B工程では、加熱処理の時間が長くなるほど炭素含有量を少なくすることができるので、上記範囲の炭素含有量となるように十分な時間をかけて加熱処理を行うことが好ましいが、加熱処理の時間が8時間以上になると、C工程後に得られるリン酸バナジウムリチウムが硬い焼結体となって、粉体として回収することが難しくなる。B工程では、通常は、1時間以上8時間未満、好ましくは2~5時間の加熱処理の時間で、満足のいく反応前駆体を得ることができる。
【0087】
なお、B工程を行い得られる反応前駆体は、B工程での加熱処理により、X線回折分析において、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物と、それ以外に、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)の一部或いは全量が非晶質のリン化合物(LiH2PO4、LiPO3等)及び/又はリン酸リチウム(Li3PO4)となって含有される場合があるが、本発明では、そのようなものであっても問題なく用いることができる。
【0088】
(C工程)
本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法に係るC工程は、B工程を行い得られる反応前駆体を、500~1300℃で焼成し、X線回折的に単相のリン酸バナジウムリチウムを得る工程である。
【0089】
C工程における焼成温度は、500~1300℃、好ましくは600~1000℃である。C工程における焼成温度が、上記範囲未満だと、単相になるまでの焼成時間が長くなり、また、上記範囲を超えると、リン酸バナジウムリチウムが融解する。
【0090】
C工程における焼成雰囲気は、バナジウムの酸化を防ぎ、且つ、溶融を防ぐという理由から、不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気である。C工程で用いられる不活性ガスとしては、特に制限はなく、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられる。
【0091】
C工程において、焼成時間は特に制限されず、一般に2時間以上、特に3~24時間焼成すれば、X線回折的に単相のリン酸バナジウムリチウムを得ることができる。
【0092】
C工程では、焼成を行い得られるリン酸バナジウムリチウムを、必要に応じて、複数回の焼成に付してもよい。
【0093】
本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法において、リン酸バナジウムリチウムの結晶構造を安定化し、また、電池性能をいっそう向上させることを目的として、必要により、Me源(Meは、V以外の原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素を示す。)を、本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法に係るA工程において、炭素源付着粒子中にMe源を含有させるか、あるいは、炭素源付着粒子とMe源を含有する混合物を調製して、該混合物を用いてB工程を行うことにより、反応前駆体中にMe源を含有させ、次いで、C工程を行うことにより、一般式(1)で示されるリン酸バナジウムリチウムにMe元素がドープされて含有されたものが得られる。具体的には、炭素源付着粒子中にMe源を含有させる方法としては、A1工程からA5工程の噴霧乾燥を行う前までの間の何れかの時期にMe源を添加する方法が挙げられる。
【0094】
Me元素は、一般式(2)で示されるリン酸バナジウムリチウムのLiサイト又は/及びVサイトに置換されて存在する。
【0095】
Me源中のMeは、V以外の原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素であり、好ましいMe元素としては、Sr、Ba、Sc、Y、Hf、Ta、W、Ru、Os、Ag、Zn、Si、Ga、Ge、Sn、Bi、S、Se、Te、Cl、Br、I、Na、K、Mg、Ca、Al、Mn、Co、Ni、Fe、Ti、Zr、Bi、Cr、Nb、Mo、Cu等が挙げられ、これらは1種単独又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0096】
Me源としては、Me元素を有する酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩等が挙げられる。なお、A1工程からA5工程の噴霧乾燥を行う前までの間に、Me源を混合する場合、スラリー中に溶解させて存在させてもよく、固形物として存在させてもよい。
【0097】
一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物を含有するスラリー(2)中に、固形物としてMe源を存在させる場合には、平均粒子径が100μm以下、好ましくは0.1~50μmのMe源を用いることが、優れた反応性を有する反応前駆体が得られる点で、好ましい。また、A1工程からA5工程の噴霧乾燥を行う前に、Me源を混合する場合には、Me源の混合量は、ドープさせるMe元素の種類にもよるが、多くの場合、スラリー(2)中のP原子に対するV原子とMe原子の合計のモル比((Me+V)/P)が、0.5~0.80、好ましくは0.60~0.73となり、V原子に対するMe原子のモル比(Me/V)が、0より大きく0.45以下、好ましくは0より大きく0.1以下となる混合量が好ましい。
【0098】
このようにして、本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法を行い得られるリン酸バナジウムリチウムは、X線回折的に単相のリン酸バナジウムリチウムであり、BET比表面積が10.0m2/g以下、好ましくは3.0~8.0m2/gであることが好ましい。また、本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法を行い得られるリン酸バナジウムリチウムは、SEM観察により求められる一次粒子の平均粒子径が、0.3~1.5μm、好ましくは0.4~1.2μmであり、且つ、粒度分布がシャープなものであることが好ましい。
【0099】
本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法を行い得られるリン酸バナジウムリチウムの炭素含有量は、0.01~1.0質量%、好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0100】
本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法では、得られるリン酸バナジウムリチウムに対して、更に必要に応じて解砕処理、又は粉砕処理し、更に分級を行ってもよい。
【0101】
また、本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法では、必要に応じて、C工程終了後に、導電性炭素と混合又は粒子表面を導電性炭素で被覆処理してリン酸バナジウムリチウム炭素複合体として用いることもできる。
【0102】
また、本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法を行い得られるリン酸バナジウムリチウムは、リチウム二次電池、全固体電池等の正極活物質での用途に用いられる。
【0103】
本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法では、B工程を行うことにより、一般式(1)で表されるリチウムバナジウムリン複合酸化物の表面に付着している炭素を減らし、バナジウム原子に対する炭素原子のモル比(C/V)を適切にすることができる。そのため、本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法では、C工程を経て得られるリン酸バナジウムリチウムは、粒子表面が丸みを帯びた形状となる。これらのことにより、本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法では、リン酸バナジウムリチウムの比表面積を低くすることができる。また、本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法では、A工程において、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び加熱分解により炭素が生じる有機化合物が付着しているリチウムバナジウムリン複合酸化物の一次粒子の平均粒子径を、2.0μm以下、好ましくは0.1~1.5μmとすることにより、粗大粒子の存在が極めて少なくなるので、B工程及びC工程を経て得られるリン酸バナジウムリチウムの粒子分布をシャープにすることができる。
【0104】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0105】
(実施例1)
<A1工程>
5Lビーカーにイオン交換水2Lを入れ、これに85%リン酸605gと五酸化バナジウム320gとラクトース(乳糖)96gを投入し室温(25℃)で攪拌することにより黄土色の混合スラリー(1)を得た。
【0106】
<A2工程>
得られた混合スラリー(1)を80℃で3時間、攪拌下に加熱し還元反応を行い、濃青色な透明な反応溶液を得た。
【0107】
<A3工程>
反応溶液を80℃に保持したまま、次いで、水酸化リチウム・1水塩220gをイオン交換水1.5Lに溶解させた水酸化リチウム溶液を調製した。反応溶液を70~80℃の温度範囲に保持しながら、水酸化リチウム溶液を40分で一定速度にて反応溶液に添加し、沈殿物を含むスラリー(2)を得た。続いて室温(25℃)までスラリーを放冷した。沈殿物をサンプリング後、濾過、乾燥しXRD測定したところLiVOPO
4・2H
2Oのピークと一致した。
得られたLiVOPO
4・2H
2Oは、SEM観察により求められる板状の一次粒子の平均の厚さが5nm、SEM観察から求められる二次粒子の平均粒子径が6μmであった。得られたLiVOPO
4・2H
2OのX線回折図を
図1に、また、SEM写真を
図2(1000倍)及び
図3(5000倍)に示す。
なお、LiVOPO
4・2H
2Oの一次粒子の平均の厚さと、二次粒子の平均粒子径は、SEM観察において、任意に抽出した粒子200個の平均値として求めた。
【0108】
<A4工程>
次いで、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を27g仕込み、スラリーを攪拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだメディア攪拌型ビーズミルに供給し、湿式粉砕を行った。レーザー回折・散乱法により求められる湿式粉砕後のスラリー(3)中の固形分の平均粒子径は0.5μmであった。また、固形分は、SEM観察から求められる一次粒子の平均粒子径は0.5μmであった。
なお、固形分の一次粒子の平均粒子径は、SEM観察において、任意に抽出した粒子200個の平均値として求めた。
【0109】
<A5工程>
出口温度を120℃に設定した噴霧乾燥装置に湿式粉砕後のスラリー(3)を供給し、炭素源付着粒子を得た。
炭素源付着粒子のSEM観察から求められる平均粒子径(二次粒子径)は20μmであった。
得られた炭素源付着粒子を線源としてCuKα線を用いてX線回折測定を行ったところ、該炭素源付着粒子は、LiVOPO
4・2H
2OとLiH
2PO
4を含むものであった(
図4参照)。
また、得られた炭素源付着粒子の残存炭素量を、TOC全有機炭素計(島津製作所製TOC-5000A)にて測定することによりC原子の含有量として求めた。残存炭素量は4.1質量%であった。
なお、炭素源付着粒子の平均粒子径(二次粒子径)は、SEM観察において、任意に抽出した粒子200個の平均値として求めた。
【0110】
<B工程>
得られた炭素源付着粒子をムライト製匣鉢に入れ,大気雰囲気下(酸素濃度20Vol%)、300℃で4時間加熱処理して反応前駆体を得た。得られた反応前駆体をX線回折分析した結果、LiVOPO4と痕跡量のLi3PO4ピークを含むものであった。なお、LiH2PO4の明確なピークはX線回折分析で検出されなかったが、LiH2PO4が非晶質のリン化合物(LiH2PO4、LiPO3)になったものと考えられる。
また、得られた反応前駆体の残存炭素量を、TOC全有機炭素計(島津製作所製TOC-5000A)にて測定することによりC原子の含有量として求めた。残存炭素量は3.0質量%であった。
【0111】
<C工程>
得られた反応前駆体をN
2雰囲気下750℃で4時間焼成した。次いで、焼成物を気流粉砕機で粉砕を行い、粉砕物を得た。X線回折分析した結果、単相のリン酸バナジウムリチウム(Li
3V
2(PO
4)
3)であることを確認した(
図5参照)。これをリン酸バナジウムリチウム試料とした。
【0112】
(実施例2)
B工程において、加熱処理時間を2.5時間とする以外は、実施例1と同様に反応を行ってリン酸バナジウムリチウム試料を得た。
また、得られたリン酸バナジウムリチウム試料のX線回折分析した結果、何れも単相のリン酸バナジウムリチウム(Li
3V
2(PO
4)
3)であることを確認した(
図6参照)。これをリン酸バナジウムリチウム試料とした。
【0113】
(比較例1)
B工程を行わないこと以外は、実施例1と同様に反応を行ってリン酸バナジウムリチウム試料を得た。
また、得られたリン酸バナジウムリチウム試料のX線回折分析した結果、何れも単相のリン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)であることを確認した。これをリン酸バナジウムリチウム試料とした。
【0114】
なお、表1中、炭素含有量は、炭素源付着粒子中のV原子に対する炭素原子換算の炭素原子のモル比、及び反応前駆体中のV原子に対する炭素原子換算の炭素原子のモル比を示す。
【0115】
【0116】
<リン酸バナジウムリチウム(LVP)試料の物性評価>
実施例及び比較例で得られたリン酸バナジウムリチウム試料について、BET比表面積、一次粒子の平均粒子径、二次粒子の平均粒子径、及び残存炭素量を測定した。なお、一次粒子の平均粒子径、二次粒子の平均粒子径、及び残存炭素量の測定は、下記のとおり行った。
(一次粒子の平均粒子径)
SEM観察において、任意に抽出した粒子200個の平均値として一次粒子の平均粒子径を求めた。また、実施例1及び比較例1で得られたリン酸バナジウムリチウム試料のSEM写真を、
図7及び
図8にそれぞれ示す。
(二次粒子の平均粒子径)
レーザー散乱・回折法によりD
50を求めた。また、併せてD
90も測定した。また、実施例1で得られたリン酸バナジウムリチウム試料の粒度分布図を
図9に示す。
(残存炭素量)
TOC全有機炭素計(島津製作所製TOC-5000A)にて測定した。
【0117】
【0118】
表2より、実施例のものは、比較例1と比べて、BET比表面積が小さくなっており、且つ、D50とD90の差が小さく、粒度分布がシャープなものであることが分かる。