(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】刈取計画装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20241223BHJP
【FI】
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2020219559
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】畦崎 明徳
(72)【発明者】
【氏名】小藤 寛士
(72)【発明者】
【氏名】伊吹 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文宏
(72)【発明者】
【氏名】渡部 克彦
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-113123(JP,A)
【文献】特開2016-081309(JP,A)
【文献】特開2016-101145(JP,A)
【文献】特開2019-033720(JP,A)
【文献】特開2017-010161(JP,A)
【文献】特開2020-054289(JP,A)
【文献】デジタルソリューション最前線,はいたっく 通巻603号 ,株式会社日立製作所,2017年08月01日,第15-16頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の生育状況に基づいて、前記植物の刈取適期を予測する適期予測部と、
気象情報に含まれる日の出・日の入の時刻から、刈取作業が可能な作業可能日時を設定する作業可能日時設定部と、
前記適期予測部により予測される刈取適期および前記作業可能日時設定部により設定される前記作業可能日時に基づいて、前記植物の刈り取りの計画を立てる刈取計画部と、を含み、
前記刈取計画部は、前記計画を立てた後、前記計画に影響を及ぼす状況の変化に応じて、前記計画を変更し、
前記計画に影響を及ぼす状況は、前記植物の刈取作業の進捗状況であり、
前記刈取計画部には、前記刈取作業の進捗状況が入力される、刈取計画装置。
【請求項2】
前記刈取作業の進捗状況は、刈取作業を行う刈取機から、前記刈取機および前記刈取計画装置と通信可能に接続されたサーバを介して、前記刈取計画部に入力される、請求項1に記載の刈取計画装置。
【請求項3】
前記刈取計画部は、前記刈取適期および前記作業可能日時に加え、刈り取られた前記植物から収穫される収穫物を乾燥させる乾燥機の情報に基づいて、前記計画を立てる、請求項1または2に記載の刈取計画装置。
【請求項4】
前記乾燥機の情報から、刈取作業日の刈取可能収量を計算する刈取可能収量計算部、をさらに含み、
前記刈取計画部は、前記刈取適期および前記作業可能日時に加え、前記刈取可能収量計算部により計算された前記刈取可能収量に基づいて、前記計画を立てる、請求項3に記載の刈取計画装置。
【請求項5】
植物の生育状況に基づいて、前記植物の刈取適期を予測する適期予測部と、
気象情報に含まれる日の出・日の入の時刻から、刈取作業が可能な作業可能日時を設定する作業可能日時設定部と、
前記適期予測部により予測される刈取適期および前記作業可能日時設定部により設定される前記作業可能日時に基づいて、前記植物の刈り取りの計画を立てる刈取計画部と、
刈り取られた前記植物から収穫される収穫物を乾燥させる乾燥機の情報から、刈取作業日の刈取可能収量を計算する刈取可能収量計算部と、を含み、
前記刈取計画部は、前記刈取適期および前記作業可能日時に加え、
前記乾燥機の情報および前記刈取可能収量計算部により計算された前記刈取可能収量に基づいて、前記計画を立て、
前記刈取計画部は、前記計画を立てた後、前記計画に影響を及ぼす状況の変化に応じて、前記計画を変更する、刈取計画装置。
【請求項6】
前記作業可能日時設定部は、気象情報に含まれる天候の予報および日の出・日の入の時刻から、前記作業可能日時を設定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の刈取計画装置。
【請求項7】
前記作業可能日時設定部は、気象情報に含まれる天候の予報および日の出・日の入の時刻から、前記適期予測部により予測される刈取適期を含む所定期間において前記作業可能日時を設定する、請求項6に記載の刈取計画装置。
【請求項8】
前記刈取計画部は、前記刈取適期および前記作業可能日時に加え、刈取作業を行う刈取機の情報に基づいて、前記計画を立てる、請求項1~7のいずれか一項に記載の刈取計画装置。
【請求項9】
前記刈取機の情報から、刈取作業に使用する前記刈取機に優先順位を付ける優先順位決定部、をさらに含み、
前記刈取計画部は、前記刈取適期および前記作業可能日時に加え、前記優先順位決定部により付けられた前記優先順位に基づいて、前記計画を立てる、請求項8に記載の刈取計画装置。
【請求項10】
植物の生育状況に基づいて、前記植物の刈取適期を予測する適期予測部と、
気象情報に含まれる日の出・日の入の時刻から、刈取作業が可能な作業可能日時を設定する作業可能日時設定部と、
前記適期予測部により予測される刈取適期および前記作業可能日時設定部により設定される前記作業可能日時に基づいて、前記植物の刈り取りの計画を立てる刈取計画部と、
刈取作業を行う刈取機の情報から、刈取作業に使用する前記刈取機に優先順位を付ける優先順位決定部と、を含み、
前記刈取計画部は、前記刈取適期および前記作業可能日時に加え、
前記刈取機の情報および前記優先順位決定部により付けられた前記優先順位に基づいて、前記計画を立て、
前記刈取計画部は、前記計画を立てた後、前記計画に影響を及ぼす状況の変化に応じて、前記計画を変更する、刈取計画装置。
【請求項11】
前記作業可能日時設定部は、気象情報に含まれる天候の予報および日の出・日の入の時刻から、前記作業可能日時を設定する、請求項10に記載の刈取計画装置。
【請求項12】
前記作業可能日時設定部は、気象情報に含まれる天候の予報および日の出・日の入の時刻から、前記適期予測部により予測される刈取適期を含む所定期間において前記作業可能日時を設定する、請求項11に記載の刈取計画装置。
【請求項13】
植物の生育状況に基づいて、前記植物の刈取適期を予測する適期予測部と、
前記適期予測部により予測される刈取適期および刈取作業が可能な作業可能日時に基づいて、前記植物の刈り取りの計画を立てる刈取計画部と、を含み、
前記刈取計画部は、前記計画を立てた後、前記計画に影響を及ぼす状況の変化に応じて、前記計画を変更し、
前記計画に影響を及ぼす状況は、前記植物の刈取作業の進捗状況であり、
前記刈取計画部には、前記刈取作業の進捗状況が入力される、刈取計画装置。
【請求項14】
気象情報に基づいて、前記作業可能日時を設定する作業可能日時設定部、をさらに含み、
前記刈取計画部は、前記刈取適期および前記作業可能日時設定部により設定される前記作業可能日時に基づいて、前記計画を立てる、請求項13に記載の刈取計画装置。
【請求項15】
前記刈取作業の進捗状況は、刈取作業を行う刈取機から、前記刈取機および前記刈取計画装置と通信可能に接続されたサーバを介して、前記刈取計画部に入力される、請求項13または14に記載の刈取計画装置。
【請求項16】
前記刈取計画部は、前記刈取適期および前記作業可能日時に加え、刈り取られた前記植物から収穫される収穫物を乾燥させる乾燥機の情報に基づいて、前記計画を立てる、請求項13~15のいずれか一項に記載の刈取計画装置。
【請求項17】
前記乾燥機の情報から、刈取作業日の刈取可能収量を計算する刈取可能収量計算部、をさらに含み、
前記刈取計画部は、前記刈取適期および前記作業可能日時に加え、前記刈取可能収量計算部により計算された前記刈取可能収量に基づいて、前記計画を立てる、請求項16に記載の刈取計画装置。
【請求項18】
前記刈取計画部は、前記刈取適期および前記作業可能日時に加え、刈取作業を行う刈取機の情報に基づいて、前記計画を立てる、請求項13~17のいずれか一項に記載の刈取計画装置。
【請求項19】
前記刈取機の情報から、刈取作業に使用する前記刈取機に優先順位を付ける優先順位決定部、をさらに含み、
前記刈取計画部は、前記刈取適期および前記作業可能日時に加え、前記優先順位決定部により付けられた前記優先順位に基づいて、前記計画を立てる、請求項18に記載の刈取計画装置。
【請求項20】
前記刈取計画部は、前記計画において、複数の前記刈取機の刈取作業の手順を前記刈取機ごとに設定する、請求項8~12、18、19のいずれか一項記載の刈取計画装置。
【請求項21】
複数の前記刈取機は、能力が互いに異なる前記刈取機を含む、請求項20に記載の刈取計画装置。
【請求項22】
複数の前記刈取機のうち、一または複数の前記刈取機は、前記植物が生育する圃場の外周領域およびその内側の中央領域の両方で刈取作業が可能な設定であり、他の一または複数の前記刈取機は、前記中央領域で刈取作業が可能な設定である、請求項21に記載の刈取計画装置。
【請求項23】
前記計画を表示器に表示させる情報を出力する表示出力部、をさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の刈取計画装置。
【請求項24】
前記表示出力部は、前記刈取作業の進捗状況を前記表示器に表示させる情報を出力する、請求項23に記載の刈取計画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の刈り取りを計画する刈取計画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の基幹作物である水稲は、ほぼ100%が機械収穫されている。その中でも、コンバインによる収穫面積割合が大部分を占めている。コンバインは、刈取性能が年々向上しており、その刈取性能の向上は、作業負担の軽減および作業時間の短縮に貢献している。
【0003】
一方、食料・農業・農村基本計画により、大規模経営体への農地集積が加速している。大規模経営体では、管理圃場数の増加および作付面積の拡大に伴い、水稲の刈取時期の管理が大きな負担になってきている。すなわち、水稲を収穫適期に刈り取らないと、青未熟粒や胴割米が発生するので、大規模経営体では、各圃場の水稲をなるべく収穫適期に刈り取ることができるように、どの圃場の水稲をいつ刈り取るかの計画を立てなければならない。その計画には、各圃場に生育する水稲の収穫適期だけでなく、刈取予定日の天候、コンバインや収穫後の籾を乾燥させる乾燥機の稼働状況も考慮する必要がある。そのため、多数の圃場を管理する大規模経営体では、各圃場の水稲を刈り取る計画を立てるのが難しく、それが管理者の負担になっている。また、計画を立てても、水稲の生育状況や刈り取りの進捗状況によっては、その計画を見直さなければならず、計画の変更が管理者のさらに負担となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、管理者の負担を軽減できる、刈取計画装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る刈取計画装置は、植物の生育状況に基づいて、植物の刈取適期を予測する適期予測部と、適期予測部により予測される刈取適期および刈取作業が可能な作業可能日時に基づいて、植物の刈り取りの計画を立てる刈取計画部とを含み、刈取計画部は、計画を立てた後、計画に影響を及ぼす状況の変化に応じて、計画を変更する。
【0007】
この構成によれば、植物の生育状況に基づいて、植物の刈取適期が予測される。そして、その予測された刈取適期および刈取作業が可能な作業可能日時に基づいて、植物の刈り取りの計画が立てられる。そのため、植物が生育している場所を管理する管理者が植物の刈取適期を予測する必要がなく、また、植物の刈り取りの計画を立てる必要もない。さらには、刈り取りの計画が立てられた後、その計画に影響を及ぼす状況が変化しても、その変化に応じて計画が変更されるので、管理者が刈り取りの計画を変更する作業を行う必要がない。
【0008】
よって、管理者の負担を軽減することができる。
【0009】
また、植物が作物である場合、管理者は、作付け時に刈取計画が予測できるので、どの圃場にどの品種の作物を作付けするかという作付け計画を立てやすい。
【0010】
刈取計画装置は、気象情報に基づいて、作業可能日時を設定する作業可能日時設定部をさらに含む構成であってもよい。
【0011】
この構成では、作業可能日時についても、管理者が設定する必要がないので、管理者の負担をさらに軽減することができる。
【0012】
刈取適期および作業可能日時に加え、刈取作業を行う刈取機の情報に基づいて、植物の刈り取りの計画が立てられてもよい。
【0013】
また、植物の刈り取りの計画では、複数の刈取機の刈取作業の手順が刈取機ごとに設定されることが好ましい。
【0014】
この場合、管理者が複数の刈取機による刈取作業の手順を決める必要がないので、管理者の負担をさらに軽減することができる。
【0015】
複数の刈取機には、能力の互いに異なる刈取機が含まれてもよい。
【0016】
たとえば、複数の刈取機のうち、一または複数の刈取機は、植物が生育する圃場の外周領域およびその内側の中央領域の両方で刈取作業が可能な設定であり、他の一または複数の刈取機は、中央領域で刈取作業が可能な設定であってもよい。
【0017】
複数の刈取機の能力が異なっていても、刈り取りの計画が自動で立てられるので、管理者が各刈取機の能力を考慮しつつ刈り取りの計画を立てる必要がなく、管理者の負担を大きく軽減することができる。
【0018】
計画に影響を及ぼす状況は、植物の刈取作業の進捗状況であり、刈取計画部には、刈取作業の進捗状況が入力されることが好ましい。
【0019】
この構成では、刈取作業の進捗状況に応じて、刈り取りの計画が自動で変更されるので、刈取作業に計画から進みや遅れが発生しても、管理者が刈り取りの計画を変更する作業を行う必要がないので、管理者の負担が増えることを防止できる。
【0020】
刈取作業の進捗状況は、計画に従って刈取作業を行う刈取機から、刈取機および刈取計画装置と通信可能に接続されたサーバを介して、刈取計画部に入力されてもよい。
【0021】
また、刈取適期および作業可能日時に加え、刈り取られた植物から収穫される収穫物を乾燥させる乾燥機の情報に基づいて、刈り取りの計画が立てられてもよい。
【0022】
刈り取られた植物から収穫物が収穫された後、乾燥機の空きを待つことなく、乾燥機で収穫物を乾燥させることができる。これにより、収穫物の品質の向上を図ることができる。
【0023】
刈取計画装置は、刈り取りの計画を表示器に表示させる情報を出力する表示出力部を備えることが好ましい。
【0024】
刈り取りの計画が表示器に表示されるので、管理者が刈り取りの計画を把握しやすい。
【0025】
表示出力部は、刈取作業の進捗状況を表示器に表示させる情報を出力してもよい。
【0026】
その場合、表示器には、刈り取りの計画とともに、刈取作業の進捗状況が表示されることが好ましい。これにより、管理者は、刈り取りの計画と刈取作業の進捗状況とを比較して、計画からの刈取作業の進みまたは遅れの原因を考察し、その考察結果を刈取作業の改善に活かすことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、植物の刈り取りの計画およびその変更に要する手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る刈取計画装置を含む刈取計画システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】刈取計画装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】各圃場グループに対して刈取作業を行う日を割り当てる処理について説明するための図である。
【
図4A】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その1)である。
【
図4B】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その2)である。
【
図4C】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その3)である。
【
図4D】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その4)である。
【
図4E】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その5)である。
【
図4F】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その6)である。
【
図4G】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その7)である。
【
図4H】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その8)である。
【
図4I】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その9)である。
【
図4J】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その10)である。
【
図4K】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その11)である。
【
図4L】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その12)である。
【
図4M】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その13)である。
【
図4N】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その14)である。
【
図4O】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その15)である。
【
図4P】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その16)である。
【
図4Q】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その17)である。
【
図4R】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その18)である。
【
図4S】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その19である。
【
図4T】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その20)である。
【
図4U】刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図(その21)である。
【
図5】刈取計画の全体を表示する刈取計画全体表示画面の一例を示す図である。
【
図6】日別の刈取計画を表示する日別刈取計画表示画面の一例を示す図である。
【
図7】機械別の刈取計画を表示する機械別刈取計画表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0030】
<刈取計画システム>
図1は、本発明の一実施形態に係る刈取計画装置2を含む刈取計画システム1の構成を示すブロック図である。
【0031】
刈取計画システム1は、たとえば、多数の圃場を管理する大規模経営体などの管理者に好適に用いられて、その管理者が管理する各圃場に生育する作物の刈り取りの計画(以下、単に「刈取計画」という。)を一括して行うシステムである。対象となる作物は、たとえば、収穫物の収穫のために刈り取りが必要となる作物であり、以下では、水稲を想定しているが、水稲に限定されない。
【0032】
刈取計画システム1には、刈取計画装置2、サーバ3、コンバイン4および端末5が含まれる。刈取計画装置2およびサーバ3は、刈取計画システム1を提供するシステム提供者の所有物であり、コンバイン4および端末5は、刈取計画システム1を使用する管理者の所有物である。管理者は、水稲の刈り取りに使用可能な複数台のコンバイン4を所有している。
【0033】
刈取計画装置2は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリなどを備えている。メモリには、HDD(ハードディスクドライブ)やフラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが含まれる。刈取計画装置2は、サーバ3および端末5と通信可能に接続されている。
【0034】
刈取計画装置2には、作物の生育に関する情報(生育情報)が外部から入力される。生育情報には、たとえば、リモートセンシングにより取得される作物の生育状況の情報や、作物の生育期間中の追肥の情報などが含まれる。リモートセンシングは、人工衛星や無人航空機(ドローン)などに搭載した観測機器により地表の情報を取得する技術である。
【0035】
また、刈取計画装置2は、インターネットに接続されており、刈取計画装置2には、たとえば、気象庁が発表する気象情報がインターネット経由で入力される。
【0036】
さらに、刈取計画装置2には、各コンバイン4からサーバ3を経由して、コンバイン4による作業の履歴を示す履歴情報が入力される。履歴情報には、たとえば、コンバイン4の走行軌跡、刈り取りの進捗、籾の収量(収穫した籾の分量)および食味などが含まれる。
【0037】
刈取計画装置2は、生育情報および気象情報に基づいて、各圃場の作物の刈取適期を予測するとともに、刈取作業が可能な日時を選択する。そして、刈取計画装置2は、各圃場の刈取適期および刈取作業可能日時に基づいて、刈取計画を立てる。刈取計画装置2は、刈取計画を一旦立てた後に、刈り取りの進捗に進みまたは遅れが生じたり、気象情報が変更になったりした場合、刈取計画を立て直す(再計画する)。刈取計画装置2の詳細については、後述する。
【0038】
サーバ3は、刈取計画装置2と通信可能に接続されるとともに、各コンバイン4と通信可能に接続されている。刈取計画装置2で刈取計画が立てられると、刈取計画装置2からサーバ3に刈取計画が送信される。サーバ3は、刈取計画装置2から受信した刈取計画を各コンバイン4に送信する。そして、刈取計画に従って、コンバイン4により作物の刈り取りが行われると、コンバイン4からサーバ3に履歴情報が送信される。サーバ3は、コンバイン4から受信した履歴情報を刈取計画装置2に送信する。また、サーバ3は、履歴情報を解析して、各圃場での作物の刈り取りに実際に要した時間や圃場間の移動に実際に要した時間などを求め、その解析結果を刈取計画装置2に送信する。
【0039】
各コンバイン4には、たとえば、全体の統括的な制御のためのECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)と、個別の具体的な制御のための複数のECUとが搭載されている。各ECUには、CPUおよびメモリを内蔵したマイコン(マイクロコントローラ)が備えられている。メモリには、不揮発性メモリおよび揮発性メモリが含まれる。各ECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる通信用のバス(伝送線路)に接続されている。また、各コンバイン4のキャビンには、メインECUに対する入出力用のバーチャルターミナル(VT)11が備えられている。
【0040】
複数台のコンバイン4の中には、自動走行が可能な機種が含まれる。自動走行が可能なコンバイン4は、自動走行のための機能処理部として、自車位置算出部12、経路設定部13および自動走行制御部14を実質的に有している。また、コンバイン4は、その他の機能処理部として、作業制御部15および履歴情報管理部16などを実質的に有している。これらの機能処理部は、ECUが実行するプログラム処理によってソフトウエア的に実現されるか、または、論理回路などのハードウェアとして設けられる。
【0041】
自車位置算出部12には、衛星測位モジュールおよび慣性測位モジュールが接続されている。衛星測位モジュールは、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)衛星からの測位信号(GNSS信号)を受信し、自車位置の算出のための測位データを出力する。慣性測位モジュールは、3軸ジャイロ加速度センサおよび磁気方位センサを備えており、自車の瞬時の走行方向を示す位置ベクトルを出力する。自車位置算出部12は、衛星測位モジュールから入力される測位データから自車の位置および方位を算出し、慣性測位モジュールから入力される位置ベクトルを用いて、その算出結果を補正する。
【0042】
経路設定部13は、コンバイン4の自動走行による走行経路を設定する。すなわち、コンバイン4の自動走行による刈り取りは、圃場の外周領域を除く中央領域を対象とし、経路設定部13は、たとえば、その中央領域でU字状の旋回を繰り返して走行する経路を設定する。そのため、コンバイン4の自動走行による中央領域での刈り取りは、コンバイン4の手動走行による圃場の外周領域の刈り取り、いわゆる周囲刈りの後に行われる。手動走行は、コンバイン4に搭乗した作業者の操縦操作による走行であってもよいし、作業者(管理者)の遠隔操作による走行であってもよい。
【0043】
自動走行制御部14は、経路設定部13により設定された経路に沿ってコンバイン4が走行するように、左右一対の走行装置(たとえば、クローラ)を制御する。
【0044】
作業制御部15は、コンバイン4の自動走行または手動走行による刈取作業時に、水稲の穀稈を刈り取る刈取装置および刈り取った穀稈から籾を離脱させる脱穀装置を制御する。
【0045】
履歴情報管理部16は、履歴情報を管理する。すなわち、コンバイン4では、籾を貯留するタンクに各種のセンサが配設されており、収穫される籾がタンクに貯留されつつ、各種センサにより、籾の収量が検出され、また、その収穫された籾(米)のタンパク質および水分の含有量が食味として検出される。履歴情報管理部16は、その検出される収量および食味をコンバイン4の走行軌跡と関連づけてメモリに記憶させる。そして、履歴情報管理部16は、サーバ3からの要求に応じて、または、自発的に、メモリに記憶されている履歴情報をサーバ3に送信する。
【0046】
端末5は、たとえば、タブレット、スマートフォンまたはディスプレイを備えるパソコンである。管理者が端末5を操作することにより、刈取計画装置2で立てられた刈取計画の表示データを端末5で受信することができる。端末5では、刈取計画装置2から受信する表示データに応じて、刈取計画の全体、日別の刈取計画または機械別(コンバイン4別)の刈取計画が表示される。
【0047】
<刈取計画装置>
図2は、刈取計画装置2の構成を示すブロック図である。
【0048】
刈取計画装置2は、不揮発性メモリからなる記憶部21を有している。記憶部21には、収穫された籾を乾燥させる乾燥機の情報(乾燥機情報)、管理者が所有しているコンバイン4の情報(所有機情報)、圃場で生育させる品種の情報(品種情報)、ならびに、圃場の位置およびサイズを示す圃場マップが記憶されている。
【0049】
刈取計画装置2は、機能処理部として、収穫適期計算部22、収穫適期マップ作成部23、作業可能日時設定部24、優先順位決定部25、刈取可能収量計算部26、刈取計画部27および表示出力部28を実質的に有している。これらの機能処理部は、ECUが実行するプログラム処理によってソフトウエア的に実現されるか、または、論理回路などのハードウェアとして設けられる。
【0050】
収穫適期計算部22は、気象情報を定期的に受信し、各圃場の水稲の出穂後の積算温度(毎日の平均温度の合計)を計算する。そして、収穫適期計算部22は、各圃場の水稲の出穂後の日数および積算温度の推移から、各圃場および水稲の品種別に収穫適期を定期的に計算する。
【0051】
収穫適期マップ作成部23は、各圃場で生育させている品種が早生品種、中生品種および晩生品種のいずれであるかの情報が含まれる品種情報を記憶部21から読み出して、その品種情報と収穫適期計算部22により計算された収穫適期とから、各圃場の収穫適期を特定し、その特定した収穫適期を圃場マップに当てはめることにより、圃場ごとに収穫適期を示す収穫適期マップを作成する。収穫適期計算部22では、収穫適期の計算が定期的に行われるので、収穫適期マップは、収穫適期の計算結果に応じて適宜更新される。
【0052】
作業可能日時設定部24は、気象情報を定期的に受信し、気象情報に含まれる天候の予報および日の出・日の入の時刻から、各圃場での収穫適期を含む所定期間において刈取作業を行うことができる日時を設定する。すなわち、作業可能日時設定部24は、所定期間において晴天が予想される日の日の出から日の入までの時間を作業可能日時として設定する。
【0053】
優先順位決定部25は、所有機情報を記憶部21から読み出して、その所有機情報から、刈取作業に使用するコンバイン4に優先順位を付ける。所有機情報には、管理者が所有する各コンバイン4について、刈取条数、購入日、現在までの稼働時間および自動走行が可能か否かの情報が含まれる。管理者は、所有機情報のうちのいずれを優先するかを設定することができ、優先順位決定部25は、その設定された内容に従って、刈取作業に使用するコンバイン4に優先順位を付ける。
【0054】
たとえば、3台のコンバイン4をコンバインA,B,Cとして、コンバインAが6条刈りであり、コンバインBが5条刈りであり、コンバインCが4条刈りであって、刈取条数の多いものが優先される設定である場合、コンバインA、コンバインBおよびコンバインCの順に優先順位が付けられる。また、コンバインAの購入日が2016年8月22日であり、コンバインBの購入日が2015年7月15日であり、コンバインCの購入日が2018年9月10日であって、購入日の新しいものが優先される設定である場合、コンバインC、コンバインAおよびコンバインBの順に優先順位が付けられる。さらに、コンバインAの現在までの稼働時間が98時間46分であり、コンバインBの現在までの稼働時間が131時間5分であり、コンバインCの現在までの稼働時間が2時間13分であって、稼働時間が長いものが優先される設定である場合、コンバインB、コンバインAおよびコンバインCの順に優先順位が付けられる。
【0055】
刈取可能収量計算部26は、乾燥機の処理能力および稼働状況(空き状況)の情報が含まれる乾燥機情報を記憶部21から読み出して、その乾燥機情報から刈取作業日の刈取可能収量を計算する。
【0056】
そして、刈取計画部27は、収穫適期マップ作成部23により作成された収穫適期マップ、作業可能日時設定部24により設定された作業可能日時、優先順位決定部25により決定されたコンバイン4の使用の優先順位および刈取可能収量計算部26により計算された刈取可能収量から、水稲の生育が行われている全圃場について、各圃場の水稲を刈り取る刈取計画を立てる。また、刈取計画部27は、刈取計画を一旦立てた後に、収穫適期マップ、作業可能日時、コンバイン4の使用の優先順位などが変更になると、その変更後の情報を用いて、刈取計画を変更する。
【0057】
表示出力部28は、刈取計画部27により立てられた刈取計画の全体、日別の刈取計画または機械別の刈取計画を端末5に表示させるための表示データを作成して出力する。表示出力部28から出力される表示データを端末5が受信することにより、刈取計画の全体、日別の刈取計画または機械別の刈取計画が端末5に表示される。なお、表示出力部28から出力される表示データをサーバ3を介してコンバイン4のバーチャルターミナル11が受信することにより、バーチャルターミナル11に刈取計画の全体、日別の刈取計画または機械別の刈取計画が表示されてもよい。
【0058】
<作業日割当処理>
図3は、各圃場グループに対して刈取作業を行う日を割り当てる処理について説明するための図である。
【0059】
管理者が管理する圃場が設けられた一帯は、複数のエリアに分けられて、各エリアに含まれる圃場は、グループ化されている。同一の圃場グループに含まれる圃場では、同一の品種の水稲が作付けされて生育する。
【0060】
刈取計画部27は、刈取計画を立てるときに、各圃場グループに対して刈取作業を行う刈取作業日を割り当てる。刈取作業日を割り当てるため、まず、各圃場グループについて、刈取作業日の候補日に優先順位が付けられる。候補日の優先順位は、収穫に最も適した最適日が第1位とされ、その最適日の前2日が最適日側から第2位および第3位とされる。また、最適日の後2日が最適日側から第4位および第5位とされる。さらに、最適日の前3日から本日の翌日まで遡る各日が最適日側から第6位以降とされ、本日の翌日までの各日に順位が付けられてもまだ所定順位まで付けられていない場合、最適日の後3日以降の各日に最適日側から順に順位が付けられる。
【0061】
本日の日付が2023年9月18日であるとして、たとえば、圃場グループ1の圃場での水稲の収穫に最も適した最適日が2023年9月26日である場合、2023年9月26日が優先順位の第1位とされ、2023年9月25日および24日がそれぞれ優先順位の第2位および第3位とされる。また、2023年9月27日および28日がそれぞれ優先順位の第4位および第5位とされ、9月23日、22日、21日、20日および19日がそれぞれ優先順位の第6位、第7位、第8位、第9位および第10位とされる。さらに、9月29日および30日がそれぞれ優先順位の第11位および第12位にとされる。
【0062】
圃場グループ2の圃場での水稲の収穫に最も適した最適日が2023年9月27日である場合、2023年9月27日が優先順位の第1位とされ、2023年9月26日および25日がそれぞれ優先順位の第2位および第3位とされる。また、2023年9月28日および29日がそれぞれ優先順位の第4位および第5位とされ、9月24日、23日、22日、21日、20日および19日がそれぞれ優先順位の第6位、第7位、第8位、第9位、第10位および第11位とされる。さらに、9月30日が優先順位の第12位にとされる。
【0063】
圃場グループ3の圃場での水稲の収穫に最も適した最適日が2023年9月28日である場合、2023年9月28日が優先順位の第1位とされ、2023年9月27日および26日がそれぞれ優先順位の第2位および第3位とされる。また、2023年9月29日および30日がそれぞれ優先順位の第4位および第5位とされ、9月25日、24日、23日、22日、21日、20日および19日がそれぞれ優先順位の第6位、第7位、第8位、第9位、第10位、第11位および第12位とされる。
【0064】
そして、各圃場グループについて、優先順位の高い候補日から順に刈取作業日に決定される。ただし、一の圃場グループに着目したときに、第2位以降で次に優先順位の高い候補日が他の圃場グループの候補日と重なり、その優先順位よりも他の圃場グループの候補日の優先順位の方が高い場合、他の圃場グループの候補日が刈取作業日に決定され、一の圃場グループについては、その次に優先順位の高い候補日が刈取作業日に決定される。
【0065】
たとえば、圃場グループ2の優先順位第2位の候補日(2023年9月26日)は、圃場グループ1の優先順位第1位の候補日と重なるので、その候補日は、圃場グループ1の刈取作業日に決定され、圃場グループ2については、優先順位第3位の候補日(2023年9月25日)が刈取作業日に決定される。そして、圃場グループ1の優先順位第2位の候補日は、圃場グループ2の刈取作業日に決定されているので、圃場グループ1については、優先順位第3位の候補日(2023年9月24日)が刈取作業日に決定される。
【0066】
また、圃場グループ3の優先順位第2位および第3位の候補日(2023年9月27日および26日)は、それぞれ圃場グループ2の優先順位第1位の候補日(2023年9月27日)および圃場グループ3の優先順位第1位の候補日(2023年9月26日)と重なるので、圃場グループ3については、優先順位第4位の候補日(2023年9月29日)が刈取作業日に決定される。
【0067】
以降、同様のルールにて、圃場グループ1,2,3の刈取作業日が決定される。
【0068】
<刈取作業日の刈取計画>
図4A~
図4Uの各図は、刈取作業日ごとに刈取計画を立てる手法について説明するための図である。
【0069】
たとえば、圃場グループに圃場「10」~「21」が含まれるとする。各圃場「10」~「21」には、外周領域と中央領域とが設定されるので、外周領域を各圃場「10」~「21」の番号の末尾に「-1」を付して表し、中央領域を各圃場「10」~「21」の番号の末尾に「-2」を付して表す。たとえば、圃場「11-1」は、圃場「11」の外周領域を表し、圃場「11-2」は、圃場「11」の中央領域を表す。
【0070】
また、以下の説明では、3台のコンバイン4をコンバインA,B,Cとして刈取作業に使用する場合を例にとる。コンバインA,B,Cの使用の優先順位(優先順位決定部25により決定された優先順位)は、コンバインAの優先順位が最も高く、コンバインBの優先順位がコンバインAの次の順位であり、コンバインCの優先順位が最も低い設定とする。また、コンバインA,Bは、圃場の全領域の刈取作業に使用することができ、コンバインCは、外周領域の刈り取り、つまり周囲刈りに使用できず、中央領域の刈取作業のみに使用できる設定とする。
【0071】
刈取作業日の刈取計画を立てるため、まず、一部の刈り取りが完了した圃場、つまり外周領域の刈り取りが完了した圃場があるかが確認される。たとえば、圃場「10-1」の刈り取りが完了している場合、圃場「10」が一部の刈り取りが完了した圃場であることが確認され、
図4Aに示されるように、刈り取りが行われていない圃場「10-2」がコンバインAによる刈取作業対象の候補として候補リストに挙げられる。そして、圃場「10」に近い圃場で周囲刈りが行われていない圃場が選択され、その選択された圃場の周囲刈りに要する時間と圃場「10-2」の刈り取りに要する時間との和が中央領域の刈取作業のみに使用できるコンバインCの現時点で使用が予定されている時間未満であるか否かが判断される。このとき、コンバインCの現時点で使用が予定されている時間が0であるから、その判断が否定されて、
図4Bに破線で示されるように、圃場「10-2」がコンバインAによる刈取作業対象の候補から外される。
【0072】
圃場「10」以外に一部の刈り取りが完了した圃場が存在しないので、次に、
図4Cに示されるように、圃場「10」以外のすべての圃場「11」~「21」が候補リストに挙げられる。そして、
図4Dに示されるように、圃場「11」~「21」が面積の小さい順にソートされて、圃場「12」,「15」,「17」,「20」,「21」,「13」がこの順にコンバインAによる刈取作業対象の候補リストに挙げられる。
【0073】
その後、乾燥機の空き状況が確認されて、刈取作業対象の候補リストの先頭の圃場「12-1」での刈取作業により収穫される籾を乾燥機で処理可能であるか否かが判断される。このとき、乾燥機の状態は、
図4Eに示されるように、圃場「12-1」での刈取作業で収穫される籾のみが処理対象であり、その籾の収量は乾燥機が処理可能な収量(刈取可能収量)よりも少ないので、処理可能と判断される。
【0074】
次いで、
図4Fに示されるように、コンバインAによる圃場「12-1」での刈取作業に要する時間が計算されて、圃場「12-1」の刈取作業を所定の作業時間(たとえば、午前10時から午後6時)内に終了させることができるか否かが判断される。そして、圃場「12-1」の刈取作業を作業時間内に終了させることができる場合、
図4Gに示されるように、圃場「12-1」の刈取作業がコンバインAのタイムテーブルに載せられる。
【0075】
その後、
図4Hに示されるように、圃場「12-1」の刈り取りを行うことが決定されたので、刈取計画の対象の圃場から圃場「12-1」が外される。そして、候補リストが更新されて、更新された候補リストの先頭の圃場「15-1」での刈取作業で収穫される籾を乾燥機で処理可能であるか否かが判断される。乾燥機での処理が可能である場合、コンバインBによる圃場「15-1」での刈取作業に要する時間が計算されて、圃場「15-1」での刈取作業を所定の作業時間内に終了させることができるか否かが判断される。圃場「15-1」での刈取作業を作業時間内に終了させることができる場合、圃場「15-1」での刈取作業がコンバインBのタイムテーブルに載せられる。
【0076】
圃場「15-1」の刈り取りを行うことが新たに決定されたので、刈取計画の対象の圃場から圃場「15-1」が外される。その後、一部の刈り取りが完了した圃場があるかが確認される。このとき、圃場「12」,「15」は、周囲刈りが既に予定されているので、一部の刈り取りが完了した圃場として、圃場「10-2」とともに、圃場「12-2」,「15-2」がコンバインCによる刈取作業対象の候補として候補リストに一旦挙げられる。しかし、コンバインCによる作業開始時点では、圃場「12-1」,「15-1」での刈取作業が完了していないので、
図4Iに示されるように、圃場「12-2」,「15-2」がコンバインCによる刈取作業対処の候補から外される。
【0077】
その後、候補リストに残っている圃場「10-2」での刈取作業で収穫される籾を乾燥機で処理可能であるか否かが判断される。このとき、
図4Jに示されるように、圃場「10-2」での刈取作業で収穫される籾を乾燥機で処理することが可能である。この場合、つづいて、コンバインCによる圃場「10-2」での刈取作業に要する時間が計算されて、圃場「10-2」での刈取作業を所定の作業時間内に終了させることができるか否かが判断される。圃場「10-2」での刈取作業を作業時間内に終了させることができる場合、
図4Kに示されるように、圃場「10-2」での刈取作業がコンバインCのタイムテーブルに載せられる。
【0078】
次いで、一部の刈り取りが完了した圃場があるかが確認される。この時点で、圃場「12-1」での刈取作業が終了しているので、圃場「12-2」がコンバインAによる刈取作業対象の候補として候補リストに挙げられる。そして、圃場「12」に近い圃場で周囲刈りが行われていない圃場「14-1」が選択され、その選択された圃場「14-1」の周囲刈りに要する時間と圃場「12-1」,「12-2」での刈取作業に要する時間との和が求められる。また、圃場「15-1」での刈取作業も終了しているので、コンバインCにより、圃場「10-2」での刈取作業に続いて圃場「15-2」での刈取作業が行われた場合が想定されて、圃場「10-2」,「15-2」での刈取作業に要する時間が求められる。その後、圃場「12-1」,「12-2」,「14-1」での刈取作業に要する時間が圃場「10-2」,「15-2」での刈取作業に要する時間未満であるか否かが判断され、この判断が肯定される場合、圃場「12-2」での刈取作業で収穫される籾を乾燥機で処理可能であるか否かが判断される。乾燥機での処理が可能である場合、コンバインAによる圃場「12-2」での刈取作業を所定の作業時間内に終了させることができるか否かが判断される。圃場「12-2」での刈取作業を作業時間内に終了させることができる場合、
図4Lに示されるように、圃場「12-2」での刈取作業がコンバインAのタイムテーブルに載せられる。
【0079】
圃場「12-2」の刈り取りを行うことが新たに決定されたので、
図4Mに示されるように、刈取計画の対象の圃場から圃場「12-2」が外される。その後、一部の刈り取りが完了した圃場があるかが確認されて、圃場「15-2」がコンバインBによる刈取作業対象の候補として候補リストに挙げられる。そして、圃場「15」に近い圃場で周囲刈りが行われていない圃場「14-1」が選択され、その選択された圃場「14-1」の周囲刈りに要する時間と圃場「15-1」,「15-2」での刈取作業に要する時間との和が求められて、その和がコンバインCによる圃場「10-2」での刈取作業に要する時間未満であるか否かが判断される。この判断が否定される場合、圃場「15-2」が候補リストから外される。
【0080】
圃場「15-2」以外に一部の刈り取りが完了した圃場がないので、
図4Nに示されるように、圃場「12」,「15」以外のすべての圃場「11」~「21」が候補リストに挙げられる。そして、コンバインBによる圃場「15-1」での刈取作業が終了した時点で、コンバインBが所在している圃場「15-1」から最も近い圃場「14-1」が選択されて、圃場「14-1」での刈取作業で収穫される籾を乾燥機で処理可能であるか否かが判断される。乾燥機での処理が可能である場合、コンバインBによる圃場「14-1」での刈取作業を所定の作業時間内に終了させることができるか否かが判断される。圃場「14-1」での刈取作業を作業時間内に終了させることができる場合、
図4Oに示されるように、圃場「14-1」での刈取作業がコンバインBのタイムテーブルに載せられる。
【0081】
圃場「14-1」の刈り取りを行うことが新たに決定されたので、
図4Pに示されるように、刈取計画の対象の圃場から圃場「14-1」が外される。その後、一部の刈り取りが完了した圃場があるかが確認されて、圃場「14-2」,「15-2」がコンバインCによる刈取作業対象の候補として候補リストに挙げられる。そして、コンバインCによる圃場「15-2」での刈取作業が行われた場合に、圃場「15-2」での刈取作業で収穫される籾を乾燥機で処理可能であるかが確認され、また、コンバインCによる圃場「15-2」での刈取作業を所定の作業時間内に終了させることができるかが確認される。そして、それらの両方の確認が取れた場合、
図4Qに示されるように、圃場「15-2」での刈取作業がコンバインCのタイムテーブルに載せられる。
【0082】
圃場「14-2」については、コンバインBが圃場「14-2」での刈取作業を行った後、その圃場「14-2」から最も近い圃場「16-1」での刈取作業を行う場合に、それらの刈取作業に要する時間がコンバインCでの圃場「10-2」,「15-2」での刈取作業に要する時間を超えるので、候補リストから外される。
【0083】
その後、圃場「14-2」以外に一部の刈り取りが完了した圃場がないので、
図4Rに示されるように、圃場「12」,「14」,「15」以外のすべての圃場「11」~「21」が候補リストに挙げられる。そして、
図4Sに示されるように、コンバインBによる圃場「14-2」での刈取作業が終了した時点でコンバインBが所在している圃場「14-2」から近い順に、候補リストに挙げられた圃場「11」~「21」がソートされる。このソート後、刈取作業対象の候補リストの先頭の圃場「16-1」での刈取作業により収穫される籾を乾燥機で処理可能であるか否かが確認され、また、コンバインBによる圃場「16-1」での刈取作業を所定の作業時間内に終了させることができるかが確認される。そして、それらの両方の確認が取れた場合、圃場「16-1」での刈取作業がコンバインBのタイムテーブルに載せられる。
【0084】
次いで、
図4Tに示されるように、圃場「12」,「14-1」,「15」,「16-1」以外のすべての圃場「11」~「21」が候補リストに挙げられて、コンバインAによる圃場「12-2」での刈取作業が終了した時点でコンバインAが所在している圃場「12-2」から近い順に、候補リストに挙げられた圃場「11」~「21」がソートされる。このソート後、刈取作業対象の候補リストの先頭の圃場「11-1」での刈取作業により収穫される籾を乾燥機で処理可能であるか否かが確認され、また、コンバインAによる圃場「11-1」での刈取作業を所定の作業時間内に終了させることができるかが確認される。そして、それらの両方の確認が取れた場合、
図4Uに示されるように、圃場「16-1」での刈取作業がコンバインAのタイムテーブルに載せられる。
【0085】
その後、同様にして、午後1時以降のコンバインA,B,Cのタイムテーブルが作成されていく。そして、刈取作業により収穫される籾を乾燥機で処理できない状態になるか、または、刈取作業を作業時間内に終了させることができない状態になると、刈取作業日の刈取計画が完了となる。
【0086】
<刈取計画全体表示>
図5は、刈取計画の全体を表示する刈取計画全体表示画面の一例を示す図である。
【0087】
刈取計画全体表示画面では、管理者が管理しているすべての圃場について、各圃場で生育されている水稲の品種が表示される。また、各圃場について、刈取計画(刈取作業の実施が計画されている日)とともに、刈取作業の実績(進捗状況)が履歴として表示される。これにより、管理者は、すべての圃場での刈取計画を把握しやすい。また、刈取計画と刈取作業の進捗状況とを比較して、計画からの刈取作業の進みまたは遅れの原因を考察し、その考察結果を刈取作業の改善に活かすことができる。
【0088】
<日別刈取計画表示>
図6は、日別の刈取計画を表示する日別刈取計画表示画面の一例を示す図である。
【0089】
日別刈取計画表示画面では、その左側半分の領域に、圃場マップが表示され、右側半分の領域に、圃場マップに表示された圃場A~Gでの刈取作業に使用する各コンバイン4(コンバインA,B,C)のタイムテーブルが表示される。これにより、管理者は、刈取作業日当日の刈取計画を容易に把握することができる。
【0090】
<機械別刈取計画表示>
図7は、機械別(コンバイン4別)の刈取計画を表示する機械別刈取計画表示画面の一例を示す図である。
【0091】
機械別刈取計画表示画面では、圃場マップが日別刈取計画表示画面よりも大きく表示され、その圃場マップ上に1台のコンバイン4の走行軌跡の予定が表示される。そして、圃場マップの右側には、そのコンバイン4のタイムテーブルが表示される。これにより、管理者は、1台のコンバイン4による刈取作業の計画を容易に把握することができる。また、他のコンバイン4の刈取作業の計画についても、機械別刈取計画表示画面を切り替えることにより確認することができる。
【0092】
<作用効果>
以上のように、作物の生育状況に基づいて、作物の刈取適期が予測される。また、気象情報に基づいて、刈取作業が可能な作業可能日時が設定される。そして、その予測された刈取適期および設定された作業可能日時に基づいて、作物の刈取計画が立てられる。そのため、作物が生育している場所を管理する管理者が作物の刈取適期を予測する必要がなく、また、作物の刈取計画を立てる必要もない。さらには、刈取計画が立てられた後、その刈取計画に影響を及ぼす状況が変化しても、その変化に応じて刈取計画が変更されるので、管理者が刈取計画を変更する作業を行う必要がない。よって、管理者の負担を軽減することができる。
【0093】
また、管理者は、作付け時に刈取計画が予測できるので、どの圃場にどの品種の作物を作付けするかという作付け計画を立てやすい。
【0094】
刈取適期および作業可能日時に加え、刈取作業を行うコンバイン4の情報に基づいて、作物の刈取計画が立てられる。具体的には、作物の刈取計画では、複数のコンバイン4の刈取作業の手順がコンバイン4ごとに設定される。これにより、管理者が複数のコンバイン4による刈取作業の手順を決める必要がないので、管理者の負担をさらに軽減することができる。
【0095】
また、前述の実施形態のように、複数のコンバイン4のうちのコンバインA,Bは、作物が生育する圃場の外周領域およびその内側の中央領域の両方で刈取作業が可能な設定であり、コンバインCは、中央領域で刈取作業が可能な設定であっても、刈取計画が自動で立てられるので、管理者が各コンバイン4の能力を考慮しつつ刈取計画を立てる必要がない。そのため、管理者の負担を大きく軽減することができる。
【0096】
また、刈取作業の進捗などに応じて、刈取計画が自動で変更されるので、刈取作業に計画から進みや遅れが発生しても、管理者が刈取計画を変更する作業を行う必要がないので、管理者の負担が増えることを防止できる。
【0097】
さらには、刈取計画では、乾燥機の情報が考慮される。これにより、籾が収穫された後、乾燥機の空きを待つことなく、乾燥機で籾を乾燥させることができる。これにより、籾(米)の品質の向上を図ることができる。
【0098】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することも可能である。
【0099】
たとえば、前述の実施形態では、水稲を刈り取るコンバイン4を刈取機の一例として取り上げたが、刈取機は、大豆や枝豆などの野菜を刈り取って収穫する機器であってもよい。また、刈り取りの対象は、作物に限らず、雑草などの植物全般に広げることが可能である。
【0100】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0101】
2:刈取計画装置
3:サーバ
4:コンバイン(刈取機)
22:収穫適期計算部(適期予測部)
24:作業可能日時設定部
27:刈取計画部
28:表示出力部