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  • 特許-靴を製造するための方法 図1
  • 特許-靴を製造するための方法 図2
  • 特許-靴を製造するための方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】靴を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 35/00 20100101AFI20241223BHJP
【FI】
B29D35/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020527071
(86)(22)【出願日】2017-11-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2017080434
(87)【国際公開番号】W WO2019101339
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-10-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】511264353
【氏名又は名称】プーマ エス イー
【氏名又は名称原語表記】PUMA SE
【住所又は居所原語表記】Puma Way 1,91074 Herzogenaurach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】テンリュウ、シエン
【合議体】
【審判長】北村 英隆
【審判官】柿崎 拓
【審判官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0129200(US,A1)
【文献】実開昭62-9905(JP,U)
【文献】特表2001-522915(JP,A)
【文献】特公昭49-39616(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴(1)を製造するための方法であって、
a)アッパー(2)およびソール(3)を製造するステップと、
b)前記アッパー(2)および前記ソール(3)を接合し、かつ接合した前記アッパー(2)および前記ソール(3)を、気密になるように閉鎖可能である可撓性収容要素(4)に挿入するステップであって、靴型(10)は前記アッパー(2)内に配置され、前記アッパー(2)および前記ソール(3)は、前記アッパー(2)と前記ソール(3)との間を適当に調整するための前記アッパー(2)及び前記ソール(3)を保持する凹状保持部分に設置され、前記凹状保持部分はまた、前記可撓性収容要素(4)に挿入される、ステップと、
c)前記収容要素(4)が、前記接合したアッパー(2)およびソール(3)を前記収容要素(4)内で押し付けるように、前記収容要素(4)を気密閉鎖しかつ前記収容要素(4)を真空排気するステップと、
d)前記収容要素(4)内の前記アッパー(2)および前記ソール(3)を互いに連結するステップと、
e)前記収容要素(4)を通気し、かつ前記収容要素(4)の連結した前記アッパー(2)および前記ソール(3)を取り出すステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記収容要素(4)は弾性材料のバッグであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記収容要素(4)はプラスチックバッグであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記収容要素(4)は、前記収容要素(4)を開放しかつ閉鎖するための閉鎖要素(5)を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記閉鎖要素(5)は気密性ジッパーであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ソール(3)は数個の部分(6、7)から成り、前記部分(6、7)は、請求項1に記載のステップb)を行う前に互いに連結されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記部分(6、7)間に接着剤が施されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載のステップc)による真空排気は、前記収容要素(4)を真空排気ポンプと連結することによって行われることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記収容要素(4)と前記真空排気ポンプとの連結は、前記収容要素(4)に設けられる弁要素または管受口(8)を介して行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載のステップd)による前記アッパー(2)と前記ソール(3)との連結は、前記アッパー(2)と前記ソール(3)との間の接触帯にマイクロ波放射(9)を加えることによって行われることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロ波放射を加えることは、15~60秒で行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載のステップd)による前記アッパー(2)と前記ソール(3)との前記連結は、前記アッパー(2)と前記ソール(3)との間の接触帯において前記アッパー(2)および/または前記ソール(3)の材料を溶解させること、および溶解した前記材料を前記アッパー(2)および/または前記ソール(3)の隣接した材料と融合させることによって行われることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アッパー(2)および前記ソール(3)の接合前に、前記アッパー(2)と前記ソール(3)との間に接着剤が施されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記接着剤は、請求項1に記載のステップd)の間に少なくとも部分的に溶解されるホットメルト接着剤であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載のステップd)とステップe)との間に、連結した前記アッパー(2)および前記ソール(3)を、30~120秒冷却させることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴、特に運動靴を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、靴具の製造には、かなりの投資費用を投じる必要があり、これによって、靴の製造が対応して高費用になる。1側部のアッパーおよび他側部のソールは、連結プロセスが行われる前に互いに密着させなければならない。これは、アッパーとソールとの間の適当な幾何学的調整の上で行われなければならず、これによって工具システムに対して対応する費用が生じる。
【0003】
特許文献1は、アッパーおよびソールが配置される膜の使用を開示している。さらにまた、膜の内部は、アッパーおよびソールを連結するために真空排気される。同様の方法は特許文献2から既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第99/24498号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2017/0129200号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、具体的には工具費の大幅な低減を可能にする、靴を製造するための方法を提供することである。これにもかかわらず、アッパーとソールとの間の良好な連結を目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるこの目的の解決策は、方法が、
a)アッパーおよびソールを製造するステップと、
b)アッパーおよびソールを接合し、かつ接合したアッパーおよびソールを、気密になるように閉鎖可能である可撓性収容要素に挿入するステップであって、靴型はアッパー内に配置され、アッパーおよびソールは、互いの間を適当に調整するための凹状保持部分に設置され、この保持部分はまた、可撓性収容要素に挿入される、ステップと、
c)収容要素が、接合したアッパーおよびソールを収容要素内で押し付けるように、収容要素を気密閉鎖しかつ収容要素を真空排気するステップと、
d)収容要素内のアッパーおよびソールを互いに連結するステップと、
e)収容要素を通気し、かつ連結したアッパーおよびソールを取り出すステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
収容要素は好ましくは、弾性材料のバッグであり、具体的に、好ましくはポリエチレン製のプラスチックバッグとすることができる。
【0008】
収容要素は、収容要素を開放しかつ閉鎖するための閉鎖要素を備えることができる。この閉鎖要素は気密性ジッパーとすることができる。
【0009】
ソールは数個の部分から成り得、該部分は、上記のステップb)を行う前に互いに連結される。ここで、部分間に接着剤を施すことができる。
【0010】
上記のステップc)による真空排気は、収容要素を真空排気ポンプと連結することによって行われ得る。収容要素と真空排気ポンプとの連結は、収容要素に設けられる弁要素または管受口を介して行われ得る。
【0011】
上記のステップd)によるアッパーとソールとの連結は、好ましくは、アッパーとソールとの間の接触帯にマイクロ波放射を加えることによって行われる。マイクロ波放射を加えることは、ひいては、15~60秒、具体的には、20~40秒で行われるのが好ましい。
【0012】
上記のステップd)によるアッパーとソールとの間の連結は、アッパーとソールとの間の接触帯においてアッパーおよび/またはソールの材料を溶解させること、および溶解した材料をアッパーおよび/またはソールの隣接した材料と融合させることによって、行われ得る。そのように、溶接プロセスは行われる。
【0013】
代替的にはまたはさらに、アッパーおよびソールの接合前に、アッパーとソールとの間に接着剤を施すことを考慮に入れることができる。接着剤はひいては、上記のステップd)の間に少なくとも部分的に溶解されるホットメルト接着剤とすることができる。
【0014】
上記のステップd)とステップe)との間に、連結したアッパーおよびソールを、好ましくは、30~120秒冷却させることができる。冷却は、ある特定の時間の周囲条件でこの収容体を靴に設置することによって行われ得る。
【0015】
最終的に、靴を適当に成形するために、少なくとも上記のステップb)~e)の間に靴型がアッパー内に配置されるようにすることは有益である。
【0016】
すなわち、真空バッグは、アッパーおよびソールを互いに押し付けることで、これら部分が互いに密接し、次いで対応する連結プロセスによって連結可能にするために使用される。
【0017】
種々のソール部分(ミッドソール、アウターソールなど)は、ソールがアッパーと接合され、かつ両方の要素が述べたバッグに入れられる前に、(例えば、接着剤によって)互いに事前に連結可能である。
【0018】
有益には、述べたプロセスを使用することによって、構成要素をバッグに入れる前のこれら構成要素の大規模な洗浄プロセスは余分になる。また、連結される構成要素の粗化プロセスは通常必要ではない。
【0019】
アッパーとソールとの連結がマイクロ波放射によって行われる場合、連結されなければならない表面に接着剤を付けることは有益であり得る。このことは、有益には、連結されなければならない2つの材料が同じ材料から作られる場合、余分になる。この限りにおいて、好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)が使用される。
【0020】
提案された解決策の具体的に得られる利点は、アッパーとソールとの連結のためにマイクロ波放射で真空排気された収容要素(バッグ)の組み合わせが、低い工具費用および製造費での構成要素間の迅速かつ安定した連結をもたらすことである。
【0021】
アッパーおよびソールが(例えば、マイクロ波放射によって連結される前に)互いの間を適当に調整されたままにすることを徹底するために、述べた部分を一時的に連結するためにクリップまたはテープを使用することは役立ち得る。この連結を行うための別の可能性は、構成要素を一緒に保持し、かつ収容要素への挿入も行われる凹状保持部分(例えば、深絞り部分)の使用である。
【0022】
収容要素の真空排気時に、部分(アッパーおよびソール)は収容要素における真空により押し付けられる。(例えば、マイクロ波放射による)その後の連結プロセスによって、構成要素は互いにしっかりと連結される。
【0023】
説明した方法の使用は、工具費用が非常に低い、すなわち、必要とされる工具が基本的に、真空収容体および真空ポンプに限られるという大きな利点を有する。
【0024】
さらに、プロセスの取り扱いは、非常に容易であり、それほど教育を受けていない要員でも行うことができる。
【0025】
アッパーとソールとの間の該当する領域全てにおいて等しい接触圧が得られる。
【0026】
また、ソールにアンダーカットがあるソール(例えば、ヒールキャップが取り付けられたサッカー用ソール)は、アッパーと容易に押し付けられ得る。
【0027】
図面において、本発明の実施形態が示される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】まだ分離されているアッパーおよびソール、ならびに弾性バッグを示す図である。
図2】接合されたアッパーおよびソールがバッグに挿入されることを示す図である。
図3】アッパーおよびソールの連結プロセスの間に真空排気されるバッグを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1において、この図の左部分にアッパー2およびソール3が示されており、ここで、2つの構成要素2、3はまだ互いから分離している。構成要素2、3は両方共、各プロセスによって別々に製造され、後述されるように、連結プロセスの始めにくっつけられる。
【0030】
アッパー2の所望の形状を維持するために、靴型10はアッパー2に挿入される。
【0031】
また、ソール3は目下第1の部分6および第2の部分7から成る。より具体的には、第1の部分6はソールの基体であり、第2の部分7は部分6内の対応する凹部に設置される挿入物である。このことは図1に概略的にのみ示されている。当然ながら、ソール3全体を形成するためにソールの基部と共に種々の成形部分または挿入物を使用することが可能である。ソールの一部分は例えば、ゴム材料から成り得、例えば、ホットメルトフィルムの使用による、またはセメント被膜による、ホットメルト粉体被膜プロセスによって、ソールの基部と連結可能である。該部分は発泡または非発泡のものとすることができる。
【0032】
具体的には、ミッドソール要素はいくつかの(後にアウターソールを形成する)ゴム要素と組み合わせ可能である。配置構成全体は、アッパーとのその後の連結プロセスの間にその部分を共に保持する(深絞り)把持具に設置可能である。
【0033】
ソールを形成する種々の部分に関して、発泡TPU、EVA、ポリウレタン、または他の材料から作られるプリモールド部分を考慮に入れることができる。ソール要素に設置され、かつ適した連結方法によってソール要素と連結される(特に発泡TPUから作られる)遊離ビーズも考慮可能である。ここで、述べた把持具は具体的に適している。
【0034】
アッパー2およびソール3を、図1の矢印によって指示されるように接触させる。
【0035】
さらにまた、(まだ緩く)組み合わせられたまたは接合された部分2、3は、ポリエチレン(この材料はマイクロ波放射に影響されない)から成る、この場合はプラスチックバッグである収容要素4に入れられる(図1の大きな矢印を参照)。
【0036】
収容要素4は、構成要素2、3が要素4に入れられた後、収容要素4を気密閉鎖するために1つの開放端に閉鎖要素5を有する。これが行われた後、閉鎖要素5は閉鎖されるため、構成要素2、3は収容要素4内に気密収容される。
【0037】
この状況は図2に示されている。ここで、アッパー2およびソール3は、互いに幾何学的に調整され、かつここでは閉鎖要素5によって閉鎖される収容要素4に入れられる。アッパー2は靴型10によって支持される。
【0038】
ここで、真空排気プロセスは図3に示されるように行われる。収容要素4は、(図示されない)真空ポンプとの流体接続に適している弁要素または管受口9を有する。図3には、ここで、弾性材料から成る収容要素4は収容要素4内の真空によりアッパー2およびソール3を押し付けることが指示されている。
【0039】
ここで、図3の数個の矢印によって指示されるマイクロ波放射は、アッパー2とソール3との間の接触領域に加えられて、両方の構成要素をしっかりと連結する。それによって、アッパー2とソール3との間の接触帯における材料は、構成要素間に深い連結が生じるように溶解可能である。
【0040】
そのように、完成した靴1がもたらされる。ある特定の時間冷却した後、閉鎖要素5は開放され、それによって、収容要素4の内部を通気することができる。その後、靴1を収容要素4から取り出すことができる。
【0041】
バッグ(収容要素)4は再利用可能であるため、具体的には、製造プロセスの費用を低くすることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 靴
2 アッパー
3 ソール
4 収容要素
5 閉鎖要素
6 ソールの部分
7 ソールの部分
8 弁要素/管受口
9 マイクロ波放射
10 靴型
図1
図2
図3