(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】プリント回路基板を検査するための検査ニードル、検査プローブ、及びフライングプローブテスタ
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20241223BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
G01R1/067 G
H05K3/00 U
(21)【出願番号】P 2020540268
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019051148
(87)【国際公開番号】W WO2019141777
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-11-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】102018101031.1
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018125666.3
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】523419325
【氏名又は名称】アーテーゲー ルーサー アンド メルツァー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ヴァイス
(72)【発明者】
【氏名】オレー・ユスチュク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ヴァインデル
【合議体】
【審判長】中塚 直樹
【審判官】小島 寛史
【審判官】喜々津 徳胤
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-264672(JP,A)
【文献】特表2006-525497(JP,A)
【文献】特開2012-21804(JP,A)
【文献】特開2003-185695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R31/28
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路基板の穴部内の導電層を測定するための検査プローブであって、
前記検査プローブは、検査ニードル(19)と、前記検査ニードル(19)が
前記穴部の底部に接触しているかどうかを判定するタッチセンサ部(20,21)とを備え、
前記検査ニードル(19)は、シールド(24)によって囲まれた導電体を備え、
前記検査ニードル(19)は、前記検査ニードル(19)を静電容量測定装置に電気的に接続する接続端部(22)と、測定中に前記穴部内に挿入され
て前記穴部の底部に接触する測定端部(23)とを有し、
前記導電体に接続された静電容量測定体(26)は、前記測定端部(23)において、前記シールド(24)の外側に配置され、前記穴部内の前記導電層と静電容量結合を形成する、検査プローブ。
【請求項2】
前記タッチセンサ部(20,21)は、前記検査ニードル(19)を支持するばね弾性マウント(16,17)と、前記ばね弾性マウント(16,17)の撓みを検出するセンサとを備えている、請求項1に記載の検査プローブ。
【請求項3】
前記ばね弾性マウント(16,17)の撓みを検出するための前記センサは、光学センサである、請求項2に記載の検査プローブ。
【請求項4】
前記検査プローブ(12)には、前記検査ニードル(19)及び/または前記ばね弾性マウント(16,17)が撓んでいない状態で寄りかかる停止部(13)が設けられている、請求項2または請求項3に記載の検査プローブ。
【請求項5】
前記測定体(26)は、絶縁層によって囲まれている、請求項1~4のいずれか1つに記載の検査プローブ。
【請求項6】
前記測定体(26)は、中空の円筒形状である、請求項1~5のいずれか1つに記載の検査プローブ。
【請求項7】
前記測定体(26)は、前記シールド(24)の外側に配設された前記導電体の1以上の巻回部である、請求項1~5のいずれか1つに記載の検査プローブ。
【請求項8】
前記検査ニードル(19)は、前記シールドを形成する導電性の管(24)を備え、
前記導電性の管(24)の内部及び前記測定端部には、前記導電体と絶縁層とを有するケーブル(25)が導かれ、
前記ケーブル(25)は、前記静電容量測定装置に接続するために、前記接続端部(22)で前記管(24)から突出し、
前記ケーブル(25)は、前記管(24)周囲の1以上の巻回部である前記測定体(26)を形成するように、前記測定端部(23)で突出している、
請求項1~
5及び7のいずれか1つに記載の検査プローブ。
【請求項9】
前記導電性の管(24,28)は、前記管(24,28)の軸方向において、出口開口部(30)が傾斜形状に形成されるように、測定先端部(27)の領域で傾斜形状に切断され、
前記ケーブル(25)は、前記出口開口部(30)を通じて配線されている、
請求項8に記載の検査プローブ。
【請求項10】
プリント回路基板を検査するためのフライングプローブテスタであって、
前記プリント回路基板(4)の予め決められた接点の近傍に移動可能なように、予め決められた検査領域内で自由に移動可能な少なくとも1つの検査フィンガ(2)を備え、
前記検査フィンガは、請求項1~9のいずれか1つに記載の検査プローブを備えている、フライングプローブテスタ。
【請求項11】
前記フライングプローブテスタ(1)は、複数の前記検査フィンガ(2)を備え、
前記検査フィンガの1つ以上は、前記プリント回路基板(4)の予め決められた接点に電気的に接触するための検査ニードル(10)を有している、
請求項10に記載のフライングプローブテスタ。
【請求項12】
ベアプリント回路基板の穴部内の導電層を測定するための方法であって、
フライングプローブテスタが使用され、
前記フライングプローブテスタは、前記ベアプリント回路基板(4)の予め決められた接点の近傍に移動可能なように、予め決められた検査領域内で自由に移動可能な少なくとも1つの検査フィンガ(2)を備え、
前記検査フィンガは、検査ニードル
と、前記検査ニードルが前記穴部の底部に接触しているかどうかを判定するタッチセンサ部とを備え、
前記検査ニードルは、シールド(24)によって囲まれた導電体を備え、
前記検査ニードル(19)は、前記検査ニードル(19)を静電容量測定装置に電気的に接続する接続端部(22)と、測定中に前記穴部内に挿入され
て前記穴部の底部に接触する測定端部(23)とを有し、
前記導電体に接続された静電容量測定体(26)は、前記測定端部(23)において、前記シールド(24)の外側に配置され、前記穴部内の前記導電層と静電容量結合を形成し、
外部の信号発生器(35)によって生成された周波信号は、前記ベアプリント回路基板の
前記導電層、又は、
前記導電層に延びた少なくとも1つの導体トラックに印加され、
前記ベアプリント回路基板の少なくとも1つの他の導体トラック(33)は、電気的接地に接続され、
前記静電容量測定体(26)を備えた前記検査ニードルが前記穴部内に挿入され、
前記穴部の底部に接触し、
前記静電容量測定体(26)の位置が検知されるのと同時に、前記静電容量測定体(26)のその周囲に対する静電容量が測定され、
測定された前記静電容量に基づき、検知された位置の近傍に
前記導電
層があるかどうかが判定される、方法。
【請求項13】
前記フライングプローブテスタは、請求項10または請求項11に記載のフライングプローブテスタである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記静電容量を測定するために、少なくとも1kHzの周波数を有する
前記周波信号が、測定される及び/または前記測定体(26)が適用される前記穴部の近傍の導電部を有した導体トラックに印加される、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記測定体(26)の近傍に
前記導電
層があるかどうかの判定が、適切な穴部の静電容量プロファイルとの比較により行われる、請求項12~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記他の導体トラック(33)は、前記ベアプリント回路基板に渡って延在する導体トラックである、請求項12~15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記静電容量を測定するために、電流測定装置が使用され、
前記電流測定装置の入力側は、前記電流測定装置に適用される電気的接地の電位を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記周波信号が、
前記穴部の領域内の複数の前記導電層に印加され、
前記
周波信号は、前記測定体(26)によって検出される、
請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
複数の前記
周波信号は、異なる周波数を有する発振信号であり、
異なる前記
周波信号は、測定において、前記異なる周波数に基づいて識別される、
請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板の穴部内の導電層を測定するための検査ニードル、そのような検査ニードルを備えた検査プローブ、及びそのような検査ニードルまたは検査プローブによってプリント回路基板を検査するためのフライングプローブテスタに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板が製造されるとき、プリント回路基板は、初めに、いわゆるクーポンを有して製造される。クーポンは、予め決められた導体トラックを備えたプリント回路基板の領域であって、その領域で測定を行うことができる。プリント回路基板が適切に製造されているかどうかを検査するための測定が行われた後、クーポンは、プリント回路基板の残りの部分から分離される。プリント回路基板の残りの部分は、電気部品を備え、電気製品に使用される1つ以上のいわゆる使用領域またはパネルを有している。
【0003】
クーポンでは、異なる電気的特性が測定され得る。クーポンは、特別な導体トラックを有している。特別な導体トラックでは、例えば、製造工程で高周波に適した導体トラックを製造するための要件が満たされていたかどうかが容易に判定され得る。クーポンの導体トラックは、負荷検査を行うためにも使用され得る。負荷検査は、クーポン上の個々の導体トラックを破壊することもできる。クーポンの導体トラックは、その後の製品では使用されないので、特定の検査手順に対して特に最適化され得る。
【0004】
しかし、クーポンにおけるすべての測定が使用領域の導体トラックに転用できるわけではない。使用領域内の導体トラックは、クーポンの導体トラックと異なる寸法を有することが多い。そのため、クーポンにおける測定結果は、必ずしも使用領域の導体トラックに転用可能であるとは限らない。
【0005】
長い間に渡り、使用領域の導体トラックに高周波信号を印加する測定プローブも、高周波特性を検査するために存在している。このような高周波測定は、導体トラックの接触が電気的に適合した方式で起きるときにのみ、確実に行われ得る。反射が生じてしまうと、欠陥の実際の位置を特定することが困難である。さらに、高周波測定は、接点の近傍に接地基準点を常に必要とする。したがって、対応する測定ヘッドの設計には、コストがかかる。
【0006】
バックドリルされた(back-drilled)穴部内の導電層を測定するために、導電性エラストマーを有するテストヘッドが米国特許第9459285号明細書によって知られている。前記テストヘッドは、導電層を機械的に感知し、電気的に測定できる。
【0007】
また、米国特許第8431834号明細書からは、プリント回路基板に追加の導体トラックを設けることが知られている。この追加の導体トラックと実際の導体トラックとの間でのインピーダンス測定は、バックボーリング(back-boring)が十分に深く形成されたか、または深すぎるかを検証するために使用され得る。この種の追加の導体トラックを設けることは、非常に費用がかかり、多層プリント回路基板のコストを大幅に増加させる。
【0008】
米国特許出願公開第2015/047892号明細書は、バックボーリング(back-boring)中に導体トラックとの電気的な接触を測定し、それに応じてドリルを制御できるように、ドリルがプローブとして同時に使用される方法を開示している。
【0009】
米国特許第9341670号明細書、米国特許第9488690号明細書、及び米国特許第9739825号明細書は、プリント回路基板の穴部内のいわゆる「スタブ」を測定するために使用され得る方法及び装置を開示している。このようなスタブは、プリント回路基板の穴部内の導電層の残りまたは切れ端(stumps)であり、一般的に導体トラックに電気的に接続されている。このようなスタブを除去するために、プリント回路基板の穴部には、バックドリルと呼ばれる2回目の削孔を行うことが多い。このバックドリルは、一般的に銅の層である導電層によって個々の層を被覆する間に意図せず生じたスタブを除去できる。しかしながら、このバックドリルは、導体トラックの所望の電気的な接続も遮断し得る。前記の装置は、プリント回路基板のバックドリルされた穴部に挿入される容量性プローブを備え、容量性プローブの静電容量が測定される。バックドリルされた穴部内に存在する他の導電性材料は、静電容量によって検出される。このようにして、バックドリルの欠陥を検出することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、米国特許第9341670号明細書に記載された方法に従って、プリント回路基板のバックドリルされた穴部を、容易に、より確実に、かつ非常に正確に測定可能であって、プリント回路基板の穴部内の導電層を測定するための検査ニードル、対応する検査プローブ、及びフライングプローブテスタを作製することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の有利な実施形態は、各従属請求項に開示されている。
【0012】
プリント回路基板の穴部内の導電層を測定するための本発明に係る検査ニードルは、シールドによって囲まれた導電体を備えている。前記検査ニードルは、前記検査ニードルを静電容量測定装置に電気的に接続し得る接続端部と、測定中に前記穴部内に挿入され得る測定端部とを有している。
【0013】
前記検査ニードルは、前記導電体に接続された静電容量測定体が前記測定端部において前記シールドの外側に配置され、前記穴部内で前記導電層と静電容量結合を形成し得ることを特徴とする。
【0014】
前記検査ニードルの前記導電体がシールドされており、前記静電容量測定体のみが他の導電体と静電容量結合を形成できるので、前記検査ニードルは、前記導電層に関係して測定された静電容量に基づいて、前記静電容量測定体の位置を非常に正確に検知できる。
【0015】
前記測定体は、前記測定体と他の導電体との間で電気的な接触が生じ得ないように、絶縁層によって囲まれていることが好ましい。
【0016】
前記測定体は、中空の円筒形状であり得る。
【0017】
また、前記測定体は、前記シールドの外側に配設された前記導電体の1以上の巻回部であり得る。
【0018】
前記測定体は、1.5mmの最大直径、特に1mmの最大直径、好ましくは0.75mmの最大直径を有することが好ましい。
【0019】
前記測定体は、前記検査ニードルの軸方向に、0.5mmの最大長、好ましくは0.25mmの最大長、特に0.15mmの最大長を有することが好ましい。
【0020】
前記測定体がより小さいほど、前記検査ニードルによって検知される位置の分解能がより高くなる。
【0021】
一方で、前記測定体が延在する領域が大きいほど、前記穴部内の前記導電層に対する静電容量結合が大きくなり、測定される信号がより強力になる。前記導電層を検出するためには、位置分解能と静電容量結合とを両立させる必要がある。
【0022】
前記検査ニードルは、前記シールドを形成する導電性の管を備えることができる。前記導電性の管の内部には、前記導電体と前記絶縁層とを有するケーブルが導かれている。前記ケーブルは、静電容量測定装置に接続されるために、前記接続端部で前記管から短く突出し得る。前記ケーブルは、1以上の巻回部である前記測定体を形成するように前記管の周囲に配設されるために、前記測定端部で短く突出し得る。
【0023】
これは、前記検査ニードルの非常に単純な設計であるが、それにも関わらず、非常に正確な測定を可能にする。前記ケーブルは、前記導電性の管の周囲に2、3、4以上の巻回部を有して巻かれ、前記測定体を形成することが好ましい。
【0024】
プリント回路基板の穴部内の導電層を測定するための検査プローブには、上述の検査ニードルが設けられ得る。また、前記検査プローブは、前記検査ニードルが他の物体に接触しているかどうかを判定するタッチセンサ部を備えている。
【0025】
前記タッチセンサ部は、ブラインドホールの深さを測定するのに使用され得る。当該測定では、始めに、前記検査プローブが検査される前記プリント回路基板の表面に接触する。次に、前記検査プローブは、前記ブラインドホールの底部に接触する。それらの接触がそれぞれ検出され、検査プローブの位置が検知される。2つの位置の差から、前記ブラインドホールの深さが得られる。
【0026】
実際の静電容量測定は、可能な限り非接触で行われるべきである。そのため、前記タッチセンサ部は、必要に応じて、前記検査ニードルが他の物体に接触しないように前記検査ニードルを動かすために、他の物体に接触していないかどうかを判定するためにも使用され得る。
【0027】
前記タッチセンサ部は、前記検査ニードルを支持するばね弾性マウントと、前記ばね弾性マウントの撓みを検出するセンサとを備えることができる。
【0028】
前記ばね弾性マウントの撓みを検出するセンサは、光学センサであり得る。前記光学センサは、様々な方法で実現され得る。例えば、光源は、前記ばね弾性マウントに直接配置されるか、または、光ファイバによって間接的に配置され得る。前記光源の出力した光は、光学センサによって検出される。前記ばね弾性マウントが撓んだときには、光円錐が光学センサから離れるように移動する。このことは、明るさの変化によって検出可能である。同様に、光電ビーム(photoelectric beam)を設けることも可能である。
【0029】
前記検査プローブには、前記検査ニードル及び/または前記ばね弾性マウントが撓んでいない状態で寄りかかる停止部が設けられ得る。このようにして、前記検査ニードルの位置は、撓んでいない状態で、前記検査プローブに対して明確に定められる。また、前記検査プローブの位置が既知ならば、この位置に基づいて、前記検査ニードル及び前記測定体の位置を推定することも可能である。
【0030】
プリント回路基板、特にベアプリント回路基板を検査するためのフライングプローブテスタは、前記プリント回路基板の予め決められた接点の近傍に移動できるように、予め決められた検査領域内で自由に移動可能な検査フィンガを備えていることが好ましい。前記検査フィンガには、上述の検査ニードルまたは上述の検査プローブが設けられ得る。
【0031】
前記フライングプローブテスタは、複数の前記検査フィンガを備えることができる。複数の前記検査フィンガは、前記プリント回路基板の特定の接点に電気的に接触するための前記検査ニードルを有する1つ以上の追加的な前記検査フィンガを備えている。
【0032】
別の態様によれば、本発明は、プリント回路基板の穴部内の導電層を測定するための方法に関する。
【0033】
この方法には、上述の検査ニードル、上述の検査プローブ、または上述のフライングプローブテスタが使用される。静電容量測定体を備えた前記検査ニードルが、前記穴部内に挿入される。この場合には、前記静電容量測定体の位置が検知されるのと同時に、前記静電容量測定体のその周囲に対する静電容量が測定される。測定された前記静電容量に基づき、検知された位置の近傍に導電体が存在するかどうかが判定される。
【0034】
前記静電容量測定体の位置と、前記静電容量測定体を伴って測定される静電容量との同時検知により、前記導電体の位置を決定することが可能である。また、前記静電容量測定体は、前記穴部の内表面にある前記導電層をより確実に検出できるように、小さい穴部にも挿入され得る。
【0035】
実際の静電容量の測定に加えて、上述のタッチセンサ部を使用して、測定されるブラインドホールの深さを導出することも可能である。このブラインドホールの深さの測定は、静電容量の測定前、測定中、または測定後に行われ得る。
【0036】
静電容量を測定するために、少なくとも1kHzの周波数を有する電気信号が印加される。例えば、少なくとも2kHzまたは少なくとも4kHzのより高い周波数も使用され得る。測定信号は、前記検査ニードルの前記導電体及び前記静電容量測定体に印加され得る。測定される導電体の一部に接続された導体トラックでは、そこに誘起された前記測定信号が感知される。しかしながら、前記測定信号は、前記導電体に接続された前記導体トラックに印加され、前記静電容量測定体によって感知されることが好ましい。前記導電体の前記測定信号は、前記静電容量測定体に誘起され、それに応じて測定装置によって検出され、評価され得る。このことは、前記導電体が異なる前記穴部に配置された多数の導電部に接続されているときに、特に有利である。そのとき、前記検査フィンガは、前記導電体に必ず配置され、前記検査プローブは、複数の前記穴部内の導電体を次々に感知できる。
【0037】
前記測定体の近傍に前記導電体があるかどうかを判定するときには、適切な前記穴部の静電容量プロファイルとの比較が行われ得る。「適切な穴部」とは、その内表面の所望の領域に、前記測定信号が印加される前記導電体に接続された前記導電層が設けられる一方で、その内表面の他の領域には、前記導電層が設けられていない穴部である。したがって、比較に基づいて、前記穴部の内表面の前記導電層の位置が決定され得る。測定された静電容量プロファイルが予め決められた静電容量プロファイルと一致しているとき、前記穴部は、適切である。すなわち、前記導電層は、所望の箇所にのみ設けられている。しかし、ずれが存在するときには、特定の場所で前記導電層が欠落しているか、または、前記導電層が存在しないはずの箇所に前記導電層が設けられていることが意味される。
【0038】
本方法では、前記穴部が原則として前記プリント回路基板の表面に対して垂直に形成されるので、前記検査ニードルは、検査される前記プリント回路基板の表面に対して常に可能な限り垂直に保たれる。このようにして、前記検査ニードルは、各穴部と軸方向に整列しており、前記検査ニードルが前記穴部の内表面に衝突するリスクは、わずかである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明は、図面に示す例示的な実施形態に基づき、以下に詳細に説明される。
【0040】
【
図1】
図1は、フライングプローブテスタの斜視図である。
【
図2a】
図2aは、本発明に係る検査ニードルを有する検査プローブの斜視図である。
【
図2b】
図2bは、本発明に係る検査ニードルを有する検査プローブの斜視図である。
【
図2c】
図2aは、本発明に係る検査ニードルを有する検査プローブの側面図である。
【
図3】
図3は、テストチップ付き検査ニードルの詳細な断面図である。
【
図4】
図4は、プリント回路基板のめっきスルーホール内の導電層を測定するための測定装置を示した模式図であって、断面図で描かれたプリント回路基板と、電気的接地に接続された接地導体トラックとを含む図である。
【
図5】
図5は、プリント回路基板のめっきスルーホール内の導電層を測定するための測定装置を示した模式図であって、断面図で描かれたプリント回路基板と、電気的接地に接続されていない接地導体トラックとを含む図である。
【
図6】
図6は、めっきスルーホール内の導電層を非接触で測定するための
図4及び
図5の測定装置の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、フライングプローブテスタ1により実現される(
図1)。フライングプローブテスタ1は、複数の検査フィンガ2を備えている。各検査フィンガ2には、導体トラックにおいて測定信号を印加または感知するために、検査されるプリント回路基板4に電気的に接触可能な検査プローブ3が設けられている。
【0042】
この種の検査プローブ3は、例えば、国際公開第03/048787号に記載され、この文献は、この観点で参照される。
【0043】
例示的な本実施形態では、フライングプローブテスタは、複数のガイドレール6が配置された2つの横断ユニット5を備えている。横断ユニット5は、検査されるプリント回路基板4を収容可能な検査領域を横切って延在している。各横断ユニット5は、長方形の貫通開口部を有する枠体を形成している。2つの横断ユニット5は、それらの貫通開口部が互いに同じ高さになるように、支持材7上に垂直に立っている。プリント回路基板4を収容するための検査領域は、横断ユニット5の貫通開口部を通じて延在している。例示的な本実施形態では、各横断ユニットは、横断ユニット5の各側面に2本ずつ、4本のガイドレール6を備えている。横断ユニットの各側面において、一方のガイドレール6は、貫通開口部8の上方に配置され、他方のガイドレールは、貫通開口部8の下方に配置されている。
【0044】
各ガイドレール6は、その上に摺動する形式で配置された少なくとも1つのスライダ9を備えている。各スライダ9は、1つの検査フィンガ2を支持している。例示的な本実施形態では、2つのスライダ9が各ガイドレール6に設けられている。しかしながら、基本的には、1つのガイドレール6に2つ以上のスライダ9を設けることもできる。
【0045】
検査フィンガ2は、一端部でスライダ9に枢動的に固定されている。フライングプローブテスタのこのような設計は、例えば、国際公開第2014/140029号から推測され得る。この観点において、この文献の全体を参照する。
【0046】
検査プローブ3は、スライダ9から離れた端部、すなわち検査フィンガ2の自由端部に配置されている。各検査プローブ3は、接触先端部11と共に、接触されるプリント回路基板4の方向に配向した検査ニードル10を備えている。接触先端部11をプリント回路基板の表面上に配置するか、または、接触先端部11をプリント回路基板4の穴部内に挿入するために、検査フィンガ2は、検査プローブ3と共に、プリント回路基板4に対して向かう方向及び離れる方向に移動可能である。
【0047】
本発明によれば、少なくとも1つの、またはいくつかの検査フィンガ2は、プリント回路基板4の穴部(特に、ブラインドホール(blind holes))で非接触的に静電容量を感知する検査プローブ12(
図2a~
図2c)をそれぞれ備えている。このような検査プローブ12は、プリント回路基板であるベース板13を備えている。
【0048】
ベース板13には、爪体(detent body)14が設けられている。爪体14は、2つの爪アーム(detent arm)15を有している。2つの爪アーム15によって、検査プローブ12は、検査フィンガ2の1つに戻り止め(detent)の形式で取り付けられ得る。
【0049】
2つのばねアーム16,17は、爪体14に固定されている。2つのばねアームの一方は、ベース板13に対して直接載置され、ベース板13と爪体14との間に挟み込まれている。他方のばねアーム17は、ベース板13から離れる方向に向いた爪体14の表面に対して、2本のねじによって締結されている。
【0050】
ばねアーム16,17は、互いに平行に配向されている。上方から見ると、ベース板13とばねアーム16,17とは、爪体14から始まり、2つのばねアーム16,17がそれぞれ短く突出した自由端部18に向かうテーパ状である。ばねアーム16,17のこれらの端部において、各検査ニードル19は、弾性を有するばねアーム16,17と爪体14と2つのばねアーム16,17を結合する検査ニードル19の一部とが平行四辺形を形成するように、固定されている。2つのばねアーム16,17の自由端部は、ベース板13から離れて枢動可能である。そのため、検査ニードルは、検査プローブ12に弾性的な方式で支持される。以下では、ベース板に直接載置されたばねアーム16をベースばねアーム16と呼び、ベース板13から離れているばねアーム17をフリーばねアーム17と呼ぶ。このように、ベース板13は、ベースばねアーム16に対する停止部を構成し、検査プローブ12の本体による支持に対する検査ニードル19の動作の停止部を構成している。
【0051】
上方から見ると、2つのばねアーム16,17は、略三角形の枠体を形成している。フリーばねアーム17には、ベース板13に向けられた測定タグ20が配置されている。
【0052】
ベース板13には、光電ビーム装置(photoelectric beam device)21が設けられている。光電ビーム装置21は、光源と光センサとを備え、ばねアーム16,17が撓んでいないときに測定タグ20によって遮断される光電ビームを生成する。ばねアームが撓んでいるときには、測定タグ20が光電ビームから外れるように移動する。その結果、光センサが輝度の増加を検出する。このようにして、光電ビーム装置21は、測定タグ20と共にタッチセンサ部を構成し、検査ニードル19が他の物体に接触することによってばねアーム16,17が撓んでいることを検出する。
【0053】
検査ニードルは、接続端部22と測定端部23とを有する。接続端部22の領域において、フリーばねアーム17は、検査ニードル19に接続されている。検査ニードル19は、ばねアーム16,17が撓んでいない状態、すなわちベースばねアーム16がベース板13に対して寄りかかっているときに、検査ニードル19がベース板13の平面に対して垂直に配置されるように、ベースばねアーム16に接続される。
【0054】
検査プローブ12及び対応する検査フィンガ2は、検査ニードルが検査フィンガ2に取り付けられたときに、ばねアーム16,17が撓んでいない状態で、検査領域及び検査領域に配置されたプリント回路基板4に対して垂直に配置される。
【0055】
検査プローブ12にある検査ニードル19は、ベース板13に対して短くはみ出している。検査ニードル19は、金属管を有している。当該金属管は、導電性であって、好ましくは最大で0.2mm、特に好ましくは最大で0.18mmの外径を有する。ケーブル25は、絶縁層によって囲まれた導電体を有し、金属管24内に導かれている。例示的な本実施形態では、ケーブル25は、ベース板13にある導体トラックに接続され、静電容量測定装置(図示せず)に電気的に接続されている。ケーブル25の導体は、測定端部23において、静電容量測定体26に接続されている。静電容量測定体は、管の周囲に配設された金属の環状体であり、管と電気的に絶縁されている。静電容量測定体26は、絶縁層が設けられた金属リングであり得、ケーブル25の導体と電気的に接続されている。しかしながら、静電容量測定体26は、ケーブル25の1以上の巻回部で構成されることもできる。
【0056】
金属管24は、ケーブル25をシールドするのに役立つ。このことにより、静電容量測定体26のみがその近傍に配置された導電体と静電容量結合を形成でき、静電容量測定体26の他の導電体との静電容量結合のみがケーブル25によって感知される。
【0057】
検査ニードル19の測定端部23には、測定先端部27が設けられている。この測定先端部は、他の物体に機械的に接触する場合にのみ使用される。測定先端部は、非導電性の材料で構成されるか、または、絶縁層を有してもよい。例示的な本実施形態では、測定先端部27は、プリント回路基板の接点に電気的に接触するためには使用されない。
【0058】
しかしながら、本発明では、測定先端部は、プリント回路基板の接点との電気的な接続を生成するために使用可能なように、導電体としても実現され得る。このような導電性の接触先端部が静電容量測定体26に電気的に接続されているときには、接触先端部も、静電容量測定体26が測定される導電性の物体と形成する静電容量結合に考慮され得る。
【0059】
測定先端部27の例示的な実施形態は、カニューレ管28で構成されている。カニューレ管28の一端部は、はんだ接続部29によって、導電的な方式で管またはシールド24に機械的に接続されている。はんだ接続部29の領域において、カニューレ管は、例えば0.3mmの直径を有する。カニューレ管は、その軸が測定先端部27の方向に向いており、測定先端部27の領域では、例えば0.2mm以下の直径を有する。測定先端部の領域では、カニューレ管28が傾斜形状に切断され、傾斜形状に延びた出口開口部30が得られる。
【0060】
ケーブル25は、管24及びカニューレ管28を通じ、出口開口部30からカニューレ管28を出る。測定先端部27の領域では、ケーブルは、カニューレ管28の周囲に3回巻かれ、静電容量測定体26を形成している。
【0061】
測定先端部27自体は、導電性であり、管24に導電的な方式で接続されている。
【0062】
このような導電的な方式の測定先端部は、例えば、検査ニードル19が導電性の表面部と非導電性の表面部とを有する較正面と接触できるので、検査ニードル19の位置及び検査ニードル19が固定されている検査フィンガ2の位置を較正することが可能であるという利点を有する。
【0063】
図3に示す検査ニードル19は、製造が容易であり、非常に小さな測定体26を有しているので、位置分解能が良い。
【0064】
フライングプローブテスタ1によってプリント回路基板のブラインドホールの内側の導電性被覆を測定するための典型的な測定手順は、以下のように行われる。
【0065】
本発明に係る検査プローブ12が備える検査フィンガ2は、その高さを導出するために、検査されるプリント回路基板4の表面に機械的に接触する。
【0066】
検査ニードルを備える検査プローブは、測定先端部27がプリント回路基板4のブラインドホールの底部に接触するまで、測定されるプリント回路基板4のブラインドホールに挿入される。タッチセンサ部によって、ブラインドホールの底部に接触した時点の検査プローブ12の位置が検知され、この位置と、検査プローブ(より正確には、その測定先端部27)がプリント回路基板の表面に接触した位置との高さの差に基づいて、ブラインドホールの深さが導出される。
【0067】
ブラインドホール内に配置された静電容量測定体26によって、静電容量測定体26とブラインドホール内に配置された導電体との間の静電容量が測定される。当該測定では、この導電体に接続されたプリント回路基板の接点に接触している他の検査フィンガ2によって、予め決められた測定信号がこの導電体に印加される。測定信号は、少なくとも1kHzの周波数、特に少なくとも4kHz、または少なくとも10kHzの周波数を有することが好ましい。
【0068】
このことによって静電容量測定体26に誘起された信号は、ケーブル25を介して静電容量測定体26によって感知され、測定装置に中継される。この方法によって測定された信号の振幅は、静電容量測定体26とそれに隣接する導電体との間に生じた静電容量を導出するのに使用される。同時に、静電容量測定体26の位置が検知される。静電容量測定体26の位置は、検査プローブ12の位置によって予め定められている。検査プローブ12の位置は、対応する検査フィンガ2の動作によって規定され、フライングプローブテスタ1において既知である。静電容量測定体26がブラインドホール内を移動している間に、位置と静電容量との同時検知を行うことによって、静電容量測定体26がその周囲に対して帯びる静電容量を位置依存的に導出することができる。このことによって、静電容量のプロファイルが作成される。これに基づいて、ブラインドホールの内表面が導電体によって被覆されているかどうかを推定することが可能である。
【0069】
フライングプローブテスタ1は、本発明に係る検査プローブ12をそれぞれ有する複数の検査フィンガ2を備えていることが好ましい。このことによって、複数のブラインドホールまたはスルーホールを同時に測定することができる。同時測定中には、周波数が異なる測定信号が使用されることが好ましい。このことによって、対応するバンドパスフィルタと共に、ある測定から他の測定に対するクロストークを防止することができる。
【0070】
各ガイドレール6には、プリント回路基板の接点に電気的に接触するための従来の検査ニードル10を有した検査プローブ3を備える少なくとも1つの検査フィンガ2と、本発明に係る検査プローブ12を備えた別の検査フィンガ2とを設けることが好ましい。また、ガイドレール6に、従来の検査プローブ3を備えた2つの検査フィンガ2と、本発明に係る検査プローブ12を備えた別の検査フィンガ2とを設けることも、有利であり得る。
【0071】
しかしながら、本発明は、結合された横断ユニット5上に配置されない複数の分離した横梁を有する従来のフライングプローブテスタにも使用され得る。この種のフライングプローブテスタでは、各横梁に、本発明に係る検査プローブ12を備える少なくとも1つの検査フィンガ2と、従来の検査プローブ3を備える1つ以上の検査フィンガ2とを設けることが同様に有利である。
【0072】
このように、本発明に係る検査プローブにより、ブラインドホールまたはスルーホールの寸法を正確に決定することが非常に容易にでき、同時に、ブラインドホールまたはスルーホールの内表面が導電体で被覆されているかどうかを判定することが非常に容易にできる。
【0073】
さらに、本発明に係る検査プローブ12は、従来のフライングプローブテスタにおいて使用できる。他の機械的な改造は、必要とされない。フライングプローブテスタは、適切な測定信号を印加でき、本発明に係る検査プローブ12によって生成された測定信号を処理でき、かつ、本発明に係る検査プローブ12を備えた検査フィンガ2の動作を制御できる適切な制御プログラムを備えてさえいればよい。
【0074】
以下では、プリント回路基板38の穴部37内のめっきスルーホール31の測定方法を説明する。めっきスルーホール31は、穴部の内表面に導電性の被膜を施したものである。プリント回路基板38を製造するときには、まず穴部の全体に被膜が施される。次に、穴部は、予め決められた部分で、穴部37の被膜が再び除去されるような深さまで、2回目のバックドリルが行われる。このことに関連して、バックドリルが十分に深くないような方法で行われたとき、または、バックドリルが深すぎて、穴部内の被膜の縁部が所望の位置に対して少しだけオフセットするような方法で行われたときには、不良が生じ得る。また、2回目の穴が1回目の穴に対して少しだけオフセットすることにより、2つの穴は、同心でなくなり得る。その結果、被膜の薄い不要な筋部が、穴部の領域に残存し得る。筋部は、穴部の中心軸に略平行な方向に延在する。このような筋部は、2回目の穴が1回目の穴に対してやや傾斜しているときにも生じ得る。
【0075】
プリント回路基板38は、導体トラック33の間に複数の層32を有している。大きな導体トラックと小さな導体トラックとが存在する。原則として、いわゆる接地導体トラックは、プリント回路基板の最大の導体トラックであり、しばしば複数の層32に渡って延在し得る。以下に説明する測定方法では、接地導体トラックは、電気的接地34に接続されている(
図4)。各接地導体トラックの代替として、より小さく、電気的接地34に同時に接続される個々の複数の導体トラックも使用され得る。以下の説明において、「接地導体トラック」という用語は、電気的接地に同時に接続でき、プリント回路基板38の広い領域に渡って(特に、複数の層に渡って)枝分かれ可能な1つ以上の導体トラックを説明するために使用される。この電気的接地34に対する接続は、フライングプローブテスタの接触フィンガを導体トラックに対して配置することによって生成されることが好ましい。この接触フィンガは、電気的接地に接続された導電性の接触先端部を備えている。
【0076】
検査プローブ3が穴部に挿入されると、静電容量測定体26は、周囲の導電体と静電容量を形成する。本方法の目的は、この静電容量、より正確には静電容量測定体が穴部に挿入されたときの静電容量の変化を測定することにある。
【0077】
この目的のために、信号発生器35を使用して、電気的接地に対する発振信号をめっきスルーホール31に印加する。この測定信号は、めっきスルーホール31に沿って流れ、めっきスルーホール31と静電容量測定体26との間の静電容量C1を介して、静電容量測定体26に流れる。そこから、ケーブル25を介して電流測定装置36に流れる。電流測定装置26では、静電容量測定体26がめっきスルーホール31の近傍に移動したときの電圧及び静電容量C1、より正確にはその静電容量の変化が測定される。
【0078】
めっきスルーホール31と隣接する導体トラックとの間では、寄生容量C2が生成される。寄生容量C2は、主に、めっきスルーホールと接地導体トラックとの間で生成されるときに関係する。接地導体トラックが接地していないとき、この寄生容量は、他の導体トラックに測定信号を引き起こす。当該測定信号は、静電容量結合(静電容量C3)を介して接地導体トラックに伝達される。その結果、静電容量測定体では、静電容量測定体26とめっきスルーホールの外側に位置する導体トラックとの間の静電容量結合(静電容量C4)を介して、測定信号が観測される(
図5)。その結果、測定体26とめっきスルーホール31との間の静電容量C1、または、測定体26と他の1つの導体トラックとの間の静電容量C4のどちらを測定しているかを正確に判定することが不可能になる。
【0079】
以下では、
図4及び
図5の測定装置の機能を等価回路図(
図6)に基づいて説明する。この等価回路図は、以下の要素を有する:測定体26、めっきスルーホール31、電気的接地34(切替え可能な接地フィンガ)、信号発生器35、電流測定装置36。
【0080】
コンデンサC1は、めっきスルーホール31と測定体26との間の結合部である。
【0081】
コンデンサC2は、上記の説明で定義したように、めっきスルーホール31と接地導体トラックとの間に位置している。コンデンサC3は、接地導体トラックと他の導体トラックとの間の結合部である。コンデンサC4は、導体トラックと測定体26との結合部である。導体トラックと測定体26との結合は、接地導体トラックによって直接行われてもよく、または、接地導体トラックに結合された他の導体トラックの静電容量C3によって行われてもよい。接地導体トラックと測定体26との間に直接的な結合が生成されるときには、コンデンサC3は、排除される。このことは、コンデンサC3が等価回路図において破線で示すように短絡される理由であって、以下の考察で考慮される必要がない理由である。
【0082】
接地導体トラックの電気的接地に対する接続部34は、等価回路図(
図6)ではスイッチで描かれている。
図4の測定装置ではスイッチが閉鎖され、
図5の測定装置ではスイッチが開放される。
【0083】
接地導体トラックが電気的接地に接続されていないとき(
図6のスイッチ34が開放されているとき)には、次のようになる。
【0084】
コンデンサC2(,C3)とコンデンサC4とは、コンデンサC1と並列に接続されている。コンデンサC2(,C3),C4で構成される直列回路がコンデンサC1よりも大きいときには、めっきスルーホール31と測定体26との間の総容量は、主にコンデンサC2(,C3),C4の直列回路によって決定され、電流測定装置36で測定される電流は、主にコンデンサC2(,C3),C4で構成される直列回路によって決定される。
【0085】
接地導体トラックが電気的接地に接続されているとき(
図6のスイッチ34が閉鎖されているとき)には、コンデンサC2とコンデンサC3との間の接続部は、電気的接地に接続される。
【0086】
電流測定装置36は、電流・電圧変換器であり、演算増幅器39と測定抵抗40とを備えている。演算増幅器は、例えばAD549型である。電流測定装置36の出力部には、電流測定装置の入力部に流れる電流に比例した電圧信号Umが存在する。
【0087】
演算増幅器の入力部の一方は、測定体26に接続され、他方の入力部は、電気的接地に接続されている。測定抵抗40を介した演算増幅器の入力側と出力側とのフィードバックは、演算増幅器39の2つの入力部を電気的接地の電位に保つ。
【0088】
このようにして、コンデンサC3,C4がそれぞれ電気的接地の電位にある2点間に位置しているので、コンデンサC3,C4を介して電流が流れない。したがって、コンデンサC3,C4は、測定上に現れない。
【0089】
信号発生器35の電圧信号は、コンデンサC2の一方側に存在し、コンデンサC2の他方側は、電気的接地に接続されている。そのため、このコンデンサを介して電流が流れる。この電流は、電気的接地に直接流れるので、測定装置では測定されない。この電流は、信号発生器35による電力出力には影響するが、信号発生器35による電圧出力には影響しない。コンデンサC1に存在する電圧信号Uと、コンデンサを介して流れる電流Iは、既知である。このため、接地導体トラックが電気的接地に接続されているときには、電圧信号U及び電流Iは、他の静電容量C2,C3,C4によって影響される測定なしにコンデンサC1の静電容量を導出するのに使用され得る。
【0090】
この結果、接地導体トラックを電気的接地に接続することにより、測定体26とめっきスルーホール31との間の静電容量結合C1は、正確に測定され得る。静電容量結合C1の容量が導出され、めっきスルーホール内の欠陥の幾何学的な大きさについて、情報を収集することが可能になる。
【0091】
この方法は、非常に正確であるので、信号発生器の信号をスルーホールに延びた単一の導体トラックに印加するように変更可能である。その結果、この信号に基づいて、当該導体トラックに対する測定体の静電容量結合を検出することができる。この方法により、スルーホール内での測定体の位置が決定され、当該導体トラックが測定信号をめっきスルーホールの領域に正しく伝導していることを判定することができる。
【0092】
通常、検査されるプリント回路基板の位置に対する検査プローブの位置は、検査プローブ12の接触先端部をプリント回路基板の表面に接触させることにより、較正される。この機械的較正は、電気的較正によって置き換えられ得る。電気的較正が行われるときには、スルーホールに隣接する導体トラックに発振信号が印加され、その信号が検査プローブによって(より正確には、検査プローブの測定体によって)検出される。
【0093】
この方法は、異なる周波数の複数の測定信号を異なる導体トラック及び/またはめっきスルーホールに印加するようにも変更可能である。測定中、異なる周波数は、識別される。この変更は、例えば、可変バンドパスフィルタが電流測定装置36よりも前に設けられ、当該可変バンドパスフィルタが1つの測定信号の周波数をそれぞれ含む各周波数帯に接続されているときに、行われ得る。この変更により、複数の導体トラックがめっきスルーホールによってシールドされていない限り、スルーホール近傍の複数の導体トラックを検出できる。
【符号の説明】
【0094】
1 フライングプローブテスタ
2 検査フィンガ
3 検査プローブ
4 プリント回路基板
5 横断ユニット
6 ガイドレール
7 支持材
8 貫通開口部
9 スライダ
10 検査ニードル
11 接触先端部
12 検査プローブ
13 ベース板
14 爪体
15 爪アーム
16 ばねアーム(ベースばねアーム)
17 ばねアーム(フリーばねアーム)
18 自由端部
19 検査ニードル
20 測定タグ
21 光電ビーム装置
22 接続端部
23 測定端部
24 管
25 ケーブル
26 静電容量測定体
27 測定先端部
28 カニューレ管
29 はんだ接続部
30 出口開口部
31 めっきスルーホール
32 層
33 導体トラック
34 電気的接地
35 信号発生器
36 電流測定装置
37 穴部
38 プリント回路基板
39 演算増幅器
40 測定抵抗