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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】作業支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20241223BHJP
【FI】
G06Q50/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021006395
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2022110778
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】宮郷 正澄
(72)【発明者】
【氏名】小栗 武己
(72)【発明者】
【氏名】朝賀 浩
(72)【発明者】
【氏名】川面 怜哉
(72)【発明者】
【氏名】貞富 博一
【審査官】石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113705(JP,A)
【文献】特開2019-101603(JP,A)
【文献】特開2006-191243(JP,A)
【文献】特開2001-282349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物上に情報を投影する情報投影装置と、
前記加工対象物に実施される作業内容に基づいて前記加工対象物を複数のエリアに分割したエリア分割情報と各エリアに関連付けられた作業内容情報とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された情報に基づいて、分割された前記エリアごとに当該エリアに関連付けられた前記作業内容情報及びエリア分割表示体を投影させるように前記情報投影装置を制御する投影情報制御部と、
前記加工対象物及び作業者を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置が取得した撮像データに含まれる前記加工対象物に対する前記作業者の指差し動作に基づいて、前記複数のエリアから1つのエリアを選択するエリア選択部と、を備え、
前記投影情報制御部は、前記各エリアに、予め設定された順番で前記作業内容情報を投影させ、前記エリア選択部によってエリアが選択された場合に、前記予め設定された順番に関わらず、選択されたエリアに、当該エリアに関連付けられた前記作業内容情報を投影させるように前記情報投影装置を制御することを特徴とする作業支援システム。
【請求項2】
前記エリア分割情報は、作業者による作業動作が共通するエリアで、又は、作業が実施される順番で、前記加工対象物を複数に分割していることを特徴とする請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項3】
前記エリア分割情報は、作業動作が共通するエリアで前記加工対象物を複数に分割しており、さらに、前記エリア内の異なる部位で所定の作業動作が繰り返される場合に、当該エリアを更に前記部位ごとに分割し、
前記投影情報制御部は、前記所定の作業動作が繰り返されるエリアにおいて、作業が実施される順番で前記部位ごとに前記作業内容情報を投影させることを特徴とする請求項2に記載の作業支援システム。
【請求項4】
記情報投影装置によって前記作業内容情報が投影されている場合に、前記撮像装置が取得したデータに基づいて、前記作業内容情報が投影されているエリアと、前記作業者が作業を実施しているエリアとが一致しているか否かを判定する判定部と、を備え、
前記投影情報制御部は、予め設定された順番で各エリアに前記作業内容情報が投影されている状況で、前記判定部が不一致であると判定した場合に、不一致であることを知らせる情報を前記加工対象物上に投影させることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の作業支援システム。
【請求項5】
前記投影情報制御部は、前記作業内容情報に含まれる取扱部品及び/又は作業動作が異なる場合に、前記情報投影装置によって投影される色の表示を変更することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業支援システムに関し、特に、情報投影装置によって加工対象物上に作業内容情報を投影して作業支援を行う作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品の生産ラインでは、作業者が製品の組付けを行う際に、作業ミスの発生を防止するための種々の対策が講じられている。
【0003】
このような対策の一つとして、作業者が製品の構成部品を組付ける際に、作業現場に設置されたディスプレイに組付け作業に使用する工具や作業手順を表示させて、作業の支援を行うシステムが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、作業現場に設置されたパソコンのディスプレイに作業内容を表示する作業支援システムが開示されている。この作業支援システムは、製品の機種・型式や構成部品の情報が格納された第1のデータベースと、各製品を製造する際の作業手順や作業に用いられる工具の情報が格納された第2のデータベースと、工具のイメージ図データが格納された第3のデータベースと、製品全体のイメージ図データが格納された第4のデータベースと、作業指示情報生成部と、入力装置と、ディスプレイと、を備えている。このシステムでは、入力装置を用いて作業者が製品を指定する情報を入力すると、作業指示情報生成部が、入力された情報に基づいて、各データベースに格納されたデータから製品の作業手順等を示す作業指示情報を生成する。生成された情報は、作業現場に設置されたディスプレイに表示される。
【0005】
特許文献1に記載の作業支援システムでは、作業者がディスプレイに表示された工具を用いて、表示された作業手順に従って作業を行うことで、作業者が誤った工具を用いたり、手順を間違えたりすることによる作業ミスの発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-262745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ディスプレイに作業内容の情報を表示させると、作業者は、作業中に加工対象物とディスプレイとの間で視線が移動することになり、ディスプレイを目視している間は、作業者の視線が作業位置から外れることになる。このように作業者の視線が移動すると、作業に集中できないという問題がある。特に、1つの加工対象物に対して作業箇所が分散して複数ある場合には、ディスプレイに表示された作業位置が、加工対象物上のどの位置であるのかを把握するのに時間がかかり、さらに、各作業箇所に対して内容の異なる作業を実施する場合には、視線を移動させながら新たな作業内容を把握することが難しかった。
【0008】
それ故、経験の浅い作業者は、視線がディスプレイに向いていると、手元の作業に集中できずにミスを起こしやすくなり、視線が作業位置に集中していると、ディスプレイの情報を見逃してしまうという問題があった。また、熟練した作業者は、ディスプレイを見ずに身体で覚えた手順で作業を行ってしまい、思い込みなどからミスが発生する懸念があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、作業者が作業位置から視線を移すことなく、作業支援を受けながら作業を実施することができる作業支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る作業支援システムは、加工対象物上に情報を投影する情報投影装置と、前記加工対象物に実施される作業内容に基づいて前記加工対象物を複数のエリアに分割したエリア分割情報と各エリアに関連付けられた作業内容情報とを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された情報に基づいて、分割された前記エリアごとに当該エリアに関連付けられた前記作業内容情報及びエリア分割表示体を投影させるように前記情報投影装置を制御する投影情報制御部と、前記加工対象物及び作業者を撮像する撮像装置と、前記撮像装置が取得した撮像データに含まれる前記加工対象物に対する前記作業者の指差し動作に基づいて、前記複数のエリアから1つのエリアを選択するエリア選択部と、を備え、前記投影情報制御部は、前記各エリアに、予め設定された順番で前記作業内容情報を投影させ、前記エリア選択部によってエリアが選択された場合に、前記予め設定された順番に関わらず、選択されたエリアに、当該エリアに関連付けられた前記作業内容情報を投影させるように前記情報投影装置を制御することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、加工対象物を複数のエリアに分割したうちの1つのエリアに、情報投影装置によって当該エリアに実施される作業内容情報及びエリア分割表示体を投影することができるので、作業者は、加工対象物上で作業内容情報が投影されたエリアを作業位置であると容易に把握することができ、このエリアに投影された作業内容を視認しながら作業を実施することができる。これにより、作業者は、加工対象物内に複数の作業位置が存在するような場合でも、作業位置から視線を外すことなく作業支援を受けることができ、作業ミスの発生を効果的に防止することができる。
また、この構成によれば、加工対象物において作業を実施するエリアを作業者が指定して、当該エリアに実施される作業内容情報を投影させたり、作業後に、作業者が指定したエリアに作業内容情報を再投影させて作業内容の確認を行ったりすることができるので、作業ミスをより効果的に防止することができる。
また、この構成によれば、作業者が指差しをする簡易な動作で加工対象物上のエリアを指定することができる。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、前記作業支援システムにおいて、前記エリア分割情報は、作業者による作業動作が共通するエリアで、又は、作業が実施される順番で、前記加工対象物を複数に分割していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、情報投影装置によって、加工対象物上の1つのエリアに作業内容情報が投影された際に、作業者は、作業動作が共通するエリア、又は、所定の順番に沿って作業が実施されるエリアを瞬時に識別することができる。
【0014】
また、本発明の一実施形態は、前記作業支援システムにおいて、前記エリア分割情報は、作業動作が共通するエリアで前記加工対象物を複数に分割しており、さらに、前記エリア内の異なる部位で所定の作業動作が繰り返される場合に、当該エリアを更に前記部位ごとに分割し、
前記投影情報制御部は、前記所定の作業動作が繰り返されるエリアにおいて、作業が実施される順番で前記部位ごとに前記作業内容情報を投影させることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、作業動作が共通するエリア内で、異なる部位に、作業者が所定の作業動作を繰り返し行う場合に、作業が実施される順番で部位ごとに作業内容情報が投影されるので、正しい順番で作業が実施されるように作業支援をすることができる。これにより、例えば、部品を組付ける順番を誤ることで加工誤差が生じてしまうような場合に、作業者が正しい順番で部品を組付けるように誘導することができる。
【0020】
また、本発明の一実施形態は、前記作業支援システムにおいて、前記加工対象物及び作業者を撮像する撮像装置と、前記情報投影装置によって前記作業内容情報が投影されている場合に、前記撮像装置が取得したデータに基づいて、前記作業内容情報が投影されているエリアと、前記作業者が作業を実施しているエリアとが一致しているか否かを判定する判定部と、を備え、前記投影情報制御部は、予め設定された順番で各エリアに前記作業内容情報が投影されている状況で、前記判定部が不一致であると判定した場合に、不一致であることを知らせる情報を前記加工対象物上に投影させることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、各エリアに予め設定された順番で作業内容情報が投影される状況において、作業内容情報が投影されたエリアと、作業者が作業を実施しているエリアとが一致していない場合に、作業者にその旨を知らせて、情報が投影されているエリアに作業が実施されるように促すことができる。
【0022】
また、本発明の一実施形態は、前記作業支援システムにおいて、前記投影情報制御部は、前記作業内容情報に含まれる取扱部品及び/又は作業動作が異なる場合に、前記情報投影装置によって投影される色の表示を変更することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、作業者は、情報投影装置によって投影される色の表示が変更することで、作業中に、取扱部品や作業動作が変更したことを容易に認識することができるので、作業ミスをより効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る作業支援システムによれば、加工対象物を複数のエリアに分割したうちの1つのエリアに、当該エリアに実施される作業内容情報及びエリア分割表示体が投影されるので、作業者は、作業位置から視線を移すことなく、作業支援を受けながら作業を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る作業支援システムの概略説明図である。
図2】作業支援システムの構成を示すブロック図である。
図3】エンジン構成物である複数のコンロッドを複数の部位で分割する例を説明する図である。
図4】作業支援システムにおいて、制御装置が実行する制御処理を説明するフローチャートである。
図5】他の実施形態の作業支援システムの構成を示すブロック図である。
図6】作業支援システムの変形例を示す図1と同様の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る実施形態の作業支援システム10の概略説明図であり、図2は、作業支援システム10の構成を示すブロック図である。作業支援システム10は、情報投影装置20によって加工対象物上に作業内容に関する情報を投影することで、作業者12に対して作業支援を行うシステムである。図1に示す例では、加工対象物の一例として車両搭載用のエンジンを構成するエンジン構成物14を記載している。
【0027】
本実施形態の作業支援システム10は、エンジン構成物14に情報を投影可能な情報投影装置20と、作業者12及び作業台13に載置されたエンジン構成物14を撮像可能な撮像装置30と、これらの装置と電気的に接続された制御装置40と、を備える。
【0028】
情報投影装置20は、制御装置40から送信される電子的情報(文字情報や画像情報など)を対象物上に映像として投影する機能を有するものである。情報投影装置20としては、例えば、DLP(Digital Light Processing)プロジェクタや液晶プロジェクタなどのプロジェクタを用いることができる。作業支援システム10は、情報投影装置20及び制御装置50により、平面のスクリーンに映像を投影するだけでなく、曲面や立体物の表面に映像を投影する、いわゆる、プロジェクションマッピング技術を利用して、立体物であるエンジン構成物14の表面に、エンジンを組付ける際に使用する工具や、組付け作業の手順などの作業内容情報を投影する。
【0029】
図1に示す例では、情報投影装置20として1つのプロジェクタを用いているが、プロジェクタの数は2つ以上であってもよい。図1では、情報投影装置20によって情報が投影される情報投影領域22を二点鎖線で示している。情報投影装置20によって投影される情報は、制御装置40の投影情報制御部48によって制御される。
【0030】
撮像装置30は、画像を撮像可能なものであり、例えば、動画を撮像可能なカメラを使用することができる。本実施形態では、撮像装置30として、撮像対象となる領域を異なる2方向から同時に撮像するステレオカメラを使用しており、このステレオカメラにより、対象物までの距離を計測可能にしている。撮像装置30は、作業現場において、加工対象物であるエンジン構成物14と、エンジン構成物14に対して作業を実施している作業者12とを撮像可能な位置に設置される。
【0031】
撮像装置30は、エンジン構成物14とともに、少なくとも作業を実施している作業者12の手の動きが撮像可能となる位置に設置されていればよいが、作業中に作業者12の姿勢の状態が撮像可能となるように、エンジン構成物14とその周辺の作業領域とを撮像可能な位置に設置されることが好ましい。本実施形態では、図1に示すように、情報投影装置20による情報投影領域22とその周辺の領域とが、撮像装置30の撮像範囲内に含まれるように設置している。
【0032】
制御装置40は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、中央処理装置(CPU)や特定用途向け集積回路(ASIC)等の情報処理部、RAMやROM等の記憶部等を有して構成される。制御装置40は、中央処理装置が記憶部に記録されているプログラムを読み出して実行することで、各種機能実現部(例えば、制御部、演算部、処理部等)として機能する。図2に示すように、本実施形態の制御装置40は、情報入力部41と、記憶部42と、エリア選択部46と、作業完了判定部47と、投影情報制御部48と、を備える。
【0033】
制御装置40の情報入力部41は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、他の装置との入力接続部など、制御装置40に対して情報の入力を可能とするものである。入力部41を介して入力された情報は、記憶部42に格納したり、データ処理部で処理したりすることができる。
【0034】
制御装置40の記憶部42には、各種処理を実行するプログラムが記憶されているとともに、情報投影装置20によって投影される情報に関するデータが記憶されている。本実施形態において、記憶部42は、分割エリア記憶部42Aと、作業内容記憶部42Bと、を備える。分割エリア記憶部42A及び作業内容記憶部42Bの各情報は、情報入力部41を介して設定することができる。
【0035】
分割エリア記憶部42Aは、エンジン構成物14に実施される作業内容に基づいてエンジン構成物14を複数のエリアに分割したエリア分割情報を記憶している。エリア分割情報において、エリアを分割する基準となる作業内容とは、例えば、作業者による作業動作が共通するエリアで複数に分割する、作業が実施される順番で複数のエリアに分割する、又は、共通の工具を用いるエリアで複数に分割する等が挙げられる。
【0036】
本実施形態では、エンジン構成物14を作業動作が共通するエリアで複数に分割している。エリア分割情報に含まれる作業動作が共通するエリアの一例として、図1では、エンジン構成物14において、オイルの拭取り作業をするオイル拭取りエリア24にドットを付している。さらに、本実施形態においてエリア分割情報は、作業動作が共通するエリア内の異なる部位で所定の作業動作が繰り返される場合に、当該エリアを所定の作業動作が行われる部位ごとに分割した分割部位情報を含んでいる。
【0037】
図3では、作業が共通するエリアにおいて、異なる部位で所定の作業動作が繰り返される例として、エンジン構成物14である複数のコンロッド16を示している。複数のコンロッド16-1,16-2,16-3,16-4はパレット15の上に並んで配置されている。作業者12は、各コンロッド16の半円形状の表面16aに、これに対応する半円形状のコンロッドメタル(図示せず)を取付ける。なお、図2では理解しやすいように、第1のコンロッド16の表面16aにドットを付している。このように、1つのエリアにおいて異なる部位に取付け作業を繰り返して行う場合に、分割エリア記憶部42Aは、各コンロッド16を分割部位情報として記憶する。
【0038】
作業内容記憶部42Bは、分割エリア記憶部42Aで分割された各エリアに実施される作業内容に関する情報を各エリアに関連付けて作業内容情報として記憶している。作業内容記憶部42Bに記憶される作業内容情報は、各エリアの作業の順番、各エリアで使用する部品や工具、エンジンの組付け作業で実施される各エリアの作業内容及び作業の手順などのデータを含んでいる。
【0039】
投影情報制御部48は、記憶部42に記憶された情報に基づいて、エンジン構成物14上に、分割されたエリアごとに当該エリアに関連付けられた作業内容情報を投影させるように情報投影装置20を制御する。投影情報制御部48は、情報投影装置20により作業内容情報とともにエリアを分割する枠(エリア分割表示体)をエンジン構成物14に投影させることができる。
【0040】
また、投影情報制御部48は、エリア分割情報で規定されたエリアにおいて、分割エリア記憶部42Aに分割部位情報が設定されている場合に、当該エリアにおいて、作業が実施される順番で分割された部位ごとに作業内容情報を投影させる。例えば、図3に示す例では、図3の右側から左側に向かって第1のコンロッド16-1、第2のコンロッド16-2、第3のコンロッド16-3及び第4のコンロッド16-4の順で作業内容情報が投影されるように、情報投影装置20を制御する。
【0041】
また、本実施形態の投影情報制御部48は、作業内容情報に含まれる取扱部品及び/又は作業動作が異なる場合に、投影される色の表示を変更するように情報投影装置20を制御する。例えば、所定の作業エリアにおいて、使用するボルトが数種類ある場合に、ボルトの種類が変更する度に、ボルトを示す色を変更する構成とすることができる。また、エンジン構成物14に対する部品の取付け作業とオイル拭取り作業とで、作業内容を示す色の表示を変更する構成とすることができる。
【0042】
エリア選択部46は、撮像装置30が取得した撮像データに含まれるエンジン構成物14に対する作業者12の所定の動作又は所定の姿勢に基づいて、エリア分割情報で規定された複数のエリアから1つのエリアを選択する。エリア選択部46は、例えば、作業者12が指差し動作をした場合に指差しの先にあるエリアを選択する、作業者12の身体の向き及び視線の方向からエリアを選択する、又は、エンジン構成物14に対する作業者12の手の位置からエリアを選択する、などにより、複数のエリアから1つのエリアを選択することができる。
【0043】
本実施形態のエリア選択部46は、作業者12の指差し動作に基づいてエリアを選択している。以下の説明では、エリア選択部46がエリアを選択するための作業者12の指差し動作を所定のエリア選択動作と称する。
【0044】
投影情報制御部48は、エリア選択部46によって1つのエリアが選択された場合に、情報投影装置20によって、エリア選択部46が選択したエリアに、当該エリアに関連付けられた作業内容情報を投影させる。
【0045】
作業完了判定部47は、所定の条件を満たしている場合に、作業が完了したと判定する。本実施形態では、分割された全てのエリアに対して、作業内容情報の投影が完了した場合に、作業完了と判定する。
【0046】
次に、図4を用いて、本実施形態の作業支援システム10において制御装置40が実行する処理について説明する。
【0047】
作業支援システム10が起動すると、制御装置40は、撮像装置30から撮像データを取得する(ステップS11)。次に、エリア選択部46は、撮像データに含まれる作業者12の所定のエリア選択動作に基づいて、分割エリア記憶部42Aに記憶された複数のエリアから、1つのエリアを選択する(ステップS12)。投影情報制御部48は、情報投影装置20によって、選択されたエリアに、当該エリアに関連付けられた作業内容情報を投影させる(ステップS13)。
【0048】
選択されたエリアに対する情報投影が終了すると、作業完了判定部47は、作業完了条件を満たしているか否かを判定し(ステップS14)、条件を満たしており、作業が完了したと判定された場合には(ステップS14:Yes)処理を終了する。作業完了条件を満たしていない場合(ステップS14:No)、すなわち、作業内容情報の投影が完了していないエリアがある場合には、エンジン構成物14上に、エリア選択を指示する情報を表示させる(ステップS15)。その後、ステップS12へ移行して、その後の処理を継続する。
【0049】
本実施形態の作業支援システム10では、エンジン構成物14を複数のエリアに分割したうちの1つのエリアに、当該エリアに実施される作業内容情報を投影することができるので、作業者12は、エンジン構成物14に対して、作業内容情報が投影されたエリアを作業位置であると容易に把握することができる。また、このエリアに投影された作業内容を視認しながら作業を実施することができる。これにより、各作業位置において、作業位置から視線を外すことなく作業支援を受けることができるので、作業ミスの発生を効果的に防止することができる。
【0050】
また、この作業支援システム10では、エンジン構成物14が、作業者12による作業動作が共通するエリアで複数に分割されているので、作業者12は、エンジン構成物14上の1つのエリアに作業内容情報が投影された際に、作業動作が共通するエリアを瞬時に識別することができる。また、これにより、作業エリアとその作用内容を容易に把握することができる。
【0051】
また、この作業支援システム10では、作業動作が共通するエリア内で、異なる部位に、作業者が所定の作業動作を繰り返し行う場合に、作業が実施される順番で部位ごとに作業内容情報が投影されるので、正しい順番で作業が実施されるように作業支援をすることができる。例えば、同一の部品を異なる複数の部位にそれぞれ取り付ける場合、取付ける順番を誤ることで、加工誤差が大きくなって製品不良に繋がることがあるが、部品が正しく取付けられる順番で、それぞれの部位に作業内容情報を投影することで、作業者12が正しい順番で部品を取付けるように誘導することができる。
【0052】
また、本実施形態の作業支援システム10では、エリア選択部46によって選択されたエリアに作業内容情報を投影するようにしているので、作業を実施するエリアを作業者12が指差し動作によって指定して、指定したエリアに実施される作業内容情報を投影させることができる。また、作業後に、作業者12が指定したエリアに作業内容情報を再投影させて作業内容の確認を行うことができる。このように、作業者12が指定したエリアに情報を投影させることで、作業ミスをより効果的に防止することができる。また、本実施形態では、作業者12が指差しをする簡易な動作でエリアを指定することができる。
【0053】
また、投影情報制御部48は、作業内容情報に含まれる取扱部品及び/又は作業動作が異なる場合に、情報投影装置20によって投影される色の表示を変更するので、作業者12は、投影される色の表示が変更することで、作業中に、取扱部品や作業動作が変更したことを容易に認識することができる。
【0054】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
例えば、本発明に係る作業支援システム10は、投影情報制御部48が、各エリアに、予め設定された順番で作業内容情報を投影させる構成とすることができる。かかる場合、エリア選択部46を備えていない構成とすることができる。エリア選択部46を備える場合には、予め設定された順番に従って各エリアに作業内容情報が投影されている状況において、エリア選択部46によってエリアが選択された場合に、設定された順番に関わらず、選択されたエリアに作業内容情報を投影させることができる。選択されたエリアに作業内容情報が投影された後は、再び、予め設定された順番に戻って、作業内容情報の投影が完了していないエリアから順に、作業内容情報が投影させることができる。
【0056】
また本発明に係る作業支援システム10は、さらに、図5に示す他の実施形態のように、制御装置40が、作業内容情報が投影されているエリアと、作業者12が作業を実施しているエリアとが一致しているか否かを判定する判定部44を備える構成であってもよい。
【0057】
判定部44は、投影情報制御部48により、予め設定された順番で各エリアに作業内容情報が投影されている状況(すなわちエリア選択部46によるエリア選択が行われていない状況)において、撮像装置30が取得した撮像データに基づき、複数のエリアの中から作業者12が作業を実施しているエリアを特定し、特定された作業実施エリアと、情報投影装置20によって作業内容情報が投影されているエリアとが一致しているか否かを判定する。判定部44は、例えば、作業者12の身体の向き及び視線の方向から作業実施エリアを特定する、エンジン構成物14に対する作業者12の手の位置から作業実施エリアを特定する、などにより、複数のエリアから1つの作業実施エリアを特定することができる。
【0058】
判定部44によってそれぞれのエリアが不一致であると判定された場合、投影情報制御部48は、情報投影装置20によって、エンジン構成物14上に不一致であることを知らせる情報を投影させる。不一致を知らせる情報は、例えば、エンジン構成物14全体を点滅表示する、又は、特定された作業実施エリアに警告表示をする、等とすることができる。
【0059】
判定部44を備えた作業支援システム10では、各エリアに予め設定された順番で作業内容情報が投影される状況において、作業内容情報が投影されたエリアと、作業者12が作業を実施しているエリアとが一致していない場合に、作業者12にその旨を知らせて、情報が投影されているエリアに作業が実施されるように促すことができる。
【0060】
また、本発明に係る作業支援システム10は、情報投影装置20によって、エンジン構成物14上に、エリアを分割した枠を表示させる構成とすることができる。図6は、エンジン構成物14上に、エンジン構成物14を複数のエリアに分割した格子状の枠26を投影させた例を示している。情報投影装置20は、枠26で区分されたエリアごとに作業内容情報を投影することができる。図6に示す例では、作業者12が指差し動作によって指定したエリア27に作業内容情報が投影されている。
【0061】
また、本発明に係る作業支援システム10において、情報投影装置20は、プロジェクタに限られず、視覚的に加工対象物上に情報を投影できる装置であればよく、例えば、作業者12と加工対象物との間に設置された透明又は半透明な透過型ディスプレイ上に映像等の情報を投影する透過型ディスプレイ装置であってもよい。透過型ディスプレイ装置は、例えば、拡張現実用のスマートグラス等のメガネ型のウェアラブル端末とすることができる。情報投影装置としてスマートグラスを使用する場合、作業者はスマートグラスを装着した状態で、メガネ型のレンズ(すなわち透過型ディスプレイ)越しに加工対象物を視認することができ、さらに、この加工対象物に重畳するようにレンズに作業内容情報をAR(Augmented Reality:拡張現実)表示させることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 作業支援システム
12 作業者
14 エンジン構成物(加工対象物)
20 情報投影装置
30 撮像装置
40 制御装置
42 記憶部
44 判定部
46 エリア選択部
48 投影情報制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6