(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】車両緊急通報装置及び車両緊急通報システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20241223BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20241223BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
G08G1/01 A
G08G1/13
G08B25/04 C
(21)【出願番号】P 2021008006
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄太
(72)【発明者】
【氏名】金田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】シム チユイチユアン
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-180431(JP,A)
【文献】特開2018-204475(JP,A)
【文献】特開2019-092070(JP,A)
【文献】特開2008-210337(JP,A)
【文献】特開2019-003487(JP,A)
【文献】特開2019-040458(JP,A)
【文献】特開2010-177851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G08B 19/00 - 31/00
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
G06Q 10/00 - 99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両との間で通信を行い、少なくとも前記車両を識別する識別情報及び前記車両の走行位置を示す位置情報を含む車両情報を、前記車両毎に所定の時間間隔で取得する車両情報取得部と、
前記車両情報取得部との間の通信が途絶した通信途絶車両を検出する通信途絶車両検出部と、
前記通信途絶車両との通信が、所定時間が経過するまでの間に復帰しない場合に、前記通信途絶車両は通信不能車両であると判定する通信状態判定部と、
前記通信不能車両と異なる他の車両であって、前記他の車両から前記車両情報取得部が取得した位置情報が、前記通信不能車両の通信途絶直前の位置情報と同一である前記他の車両を計数する他車両計数部と、
前記他車両計数部による計数値が所定値よりも小さい場合に、前記通信不能車両について緊急通報を要すると判定する緊急通報判定部と、
を備えた車両緊急通報装置。
【請求項2】
前記緊急通報判定部は、前記他車両計数部による計数値が所定値よりも大きい場合に、前記通信不能車両について緊急通報を要しないと判定する、請求項1記載の車両緊急通報装置。
【請求項3】
車両に搭載され、少なくとも前記車両を識別する識別情報及び前記車両の走行中の位置を示す位置情報を含む車両情報を送信する通信装置と、
前記通信装置との間で通信を行う車両緊急通報装置とを備え、
前記車両緊急通報装置は、
前記通信装置との間の通信により、前記車両情報を前記車両毎に所定の時間間隔で取得する車両情報取得部と、
前記車両情報取得部との間の通信が途絶した通信装置を含む通信途絶車両を検出する通信途絶車両検出部と、
前記通信途絶車両との通信が、予め定めた時間が経過するまでの間に復帰しない場合に、前記通信途絶車両は通信不能車両であると判定する通信状態判定部と、
前記通信不能車両と異なる他の車両であって、前記他の車両から前記車両情報取得部が取得した位置情報が、前記通信不能車両の通信途絶直前の位置情報と同一である前記他の車両を計数する他車両計数部と、
前記他車両計数部による計数値が所定値よりも小さい場合に、前記通信不能車両について緊急通報を要すると判定する緊急通報判定部と、
を備えた車両緊急通報システム。
【請求項4】
前記緊急通報判定部は、前記他車両計数部による計数値が所定値よりも大きい場合に、前記通信不能車両について緊急通報を要しないと判定する、請求項3記載の車両緊急通報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両緊急通報装置及び車両緊急通報システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両事故等の緊急時に、緊急通報センターを介して最寄りの警察や消防へ自動的に通報すると同時に、車両からGPSによる位置情報等のデータを緊急通報センターへ送信する車両緊急通報システムが知られている。車両緊急通報システムでは、事故状況により運転者等の音声通話が不可能な場合や意識喪失状態であっても、GPSによる位置情報等のデータを含む緊急情報が緊急通報センターを介して警察や消防へ送信される。
【0003】
ところで、緊急通報システムでは、通報に際して、移動体通信ネットワークを介して車両から緊急通報センターへ緊急情報が送信される。したがって、例えば、移動体通信ネットワークの通信圏外を走行している場合や、車両に搭載された通信設備の不具合により通信不能となった場合には、車両から緊急情報を緊急通報センターに送信することができない。
【0004】
このため、例えば、特許文献1には、通信不能車両が存在する場合に、通信不能車両の周辺に存在する車両に対して、車外を撮像した画像を送信するように依頼し、受信した画像を用いて通信不能車両の状態を通信管理サーバーで把握することにより、通信不能車両が緊急事態であるか否かを把握する緊急通報システムが開示されている。
また、特許文献2には、通信圏外を走行する車両において、当該車両と通信が不能になってからの経過時間が一定時間以上である場合に、安否確認対象者として当該車両に関する所定の情報を通知先に通知する通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-251968号公報
【文献】特開2019-185426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1の技術では、サーバーが通信不能車両の周辺に存在する車両に画像の撮影及び送信を依頼し、撮影された画像を受信することから、通信管理サーバーと各車両との間の通信データ量が多く、システムの規模が大きくなる。また、通信不能車両が通信圏外を走行する場合や、通信不能車両の周辺に他の車両が存在しない場合或いはこの緊急通報システムに対応した装備を搭載した車両が存在しない場合には、通信不能車両は緊急通報の対象とならない。
特許文献2の技術では、車両が通信圏外を走行しているか否かを判定するために、通信圏外エリアを特定する処理を行っており、通信圏外エリアが特定できなかった場合には、通信システムによる安否確認等の対象とされない。
【0007】
本発明は、このような状況に対処することを課題としている。すなわち、簡易な構成で、通信不能状態となった車両に対する緊急通報の要否を判定することなどを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明による車両緊急通報装置は、以下の構成を具備するものである。
すなわち、本発明の一態様は、複数の車両との間で通信を行い、少なくとも前記車両を識別する識別情報及び前記車両の走行位置を示す位置情報を含む車両情報を、前記車両毎に所定の時間間隔で取得する車両情報取得部と、前記車両情報取得部との間の通信が途絶した通信途絶車両を検出する通信途絶車両検出部と、前記通信途絶車両との通信が、所定時間が経過するまでの間に復帰しない場合に、前記通信途絶車両は通信不能車両であると判定する通信状態判定部と、前記通信不能車両と異なる他の車両であって、前記他の車両から前記車両情報取得部が取得した位置情報が、前記通信不能車両の通信途絶直前の位置情報と同一である前記他の車両を計数する他車両計数部と、前記他車両計数部による計数値が所定値よりも小さい場合に、前記通信不能車両について緊急通報を要すると判定する緊急通報判定部と、を備えた車両緊急通報装置を提供する。
【0009】
また、本発明の他の態様は、車両に搭載され、少なくとも前記車両を識別する識別情報及び前記車両の走行中の位置を示す位置情報を含む車両情報を送信する通信装置と、前記通信装置との間で通信を行う車両緊急通報装置とを備え、前記車両緊急通報装置は、前記通信装置との間の通信により、前記車両情報を前記車両毎に所定の時間間隔で取得する車両情報取得部と、前記車両情報取得部との間の通信が途絶した通信装置を含む通信途絶車両を検出する通信途絶車両検出部と、前記通信途絶車両との通信が、予め定めた時間が経過するまでの間に復帰しない場合に、前記通信途絶車両は通信不能車両であると判定する通信状態判定部と、前記通信不能車両と異なる他の車両であって、前記他の車両から前記車両情報取得部が取得した位置情報が、前記通信不能車両の通信途絶直前の位置情報と同一である前記他の車両を計数する他車両計数部と、前記他車両計数部による計数値が所定値よりも小さい場合に、前記通信不能車両について緊急通報を要すると判定する緊急通報判定部と、を備えた車両緊急通報システムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する車両緊急通報装置及び車両緊急通報システムによると、簡易な構成で、通信不能状態となった車両に対する緊急通報の必要性を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両緊急通報装置を含む車両緊急通報システムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両緊急通報装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両緊急通報システムが用いられる具体例を示す参考図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両緊急通報システムが用いられる具体例を示す参考図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両緊急通報システムが用いられる具体例を示す参考図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る車両緊急通報システムが用いられる具体例を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
本発明の実施形態に係る車両緊急通報システム1は、
図1に示すように、車両20に搭載された通信装置21との間で通信を行う車両緊急通報装置10を備えている。車両緊急通報装置10は、複数の車両20と定期的に通信を行って車両20毎に各種情報を取得しながら、必要に応じて緊急通報を行う車両緊急通報システムを実現する。
【0014】
本実施形態では、特に、走行中の車両20が通信不能状態となった場合において、当該車両20について緊急通報の要否を判定する車両緊急通報システムについて説明する。なお、説明の便宜上、
図1においては車両20を1台のみ示す。
【0015】
図1に示すように、緊急通報センターに配置される車両緊急通報装置10は、車両情報取得部11、通信途絶車両検出部12、通信状態判定部13、他車両計数部14、緊急通報判定部15、及び記憶部16を備えている。
【0016】
図1に示す例において、車両情報取得部11は、車両20と所定の時間間隔で通信(定期通信)を行い、車両20に対し、少なくとも当該車両20を識別する識別情報と、その車両20の走行位置を示す位置情報を含む車両情報の送信を要求する。車両情報取得部11が車両20から取得した車両情報は、例えば、当該車両情報を取得した時刻とともに記憶部16に記憶される。
【0017】
通信途絶車両検出部12は、複数の車両20について、車両情報取得部11と車両20との通信状態を監視し、車両情報を取得できなくなった、すなわち、通信が途絶した車両20を通信途絶車両として検出する。
【0018】
通信状態判定部13は、通信途絶車両との通信が、所定時間Tが経過するまでの間に復帰するかを監視し、通信が復帰しない場合に、通信途絶車両は何らかの理由で通信が不能となった通信不能車両であると判定する。通信不能車両となる理由としては、例えば、車両に搭載された通信装置の不具合や、車両が通信ネットワークの通信圏外エリアを走行している場合、車両事故等による車両や通信装置の損傷等の様々な理由が含まれる。
【0019】
他車両計数部14は、通信不能車両と異なる他の車両であって、他の車両から車両情報取得部が取得した位置情報が、通信不能車両の通信途絶直前の位置情報と同一である他の車両を計数する。なお、通信不能車両の通信途絶直前の位置情報と他の車両の位置情報とが同一とは、必ずしも完全に一致する情報である必要はなく、例えば、通信不能車両と他の車両とが共通する道路の共通する地点を通過したことが判別できる程度であればよい。
【0020】
また、他車両計数部14によって他車両を計数する期間は予め定めることができ、例えば、当該通信不能車両の通信途絶から通信不能車両と判定されるまでの所定時間Tと同一とすることができる他、所定時間Tよりも短い時間とすることもできる。
【0021】
緊急通報判定部15は、他車両計数部14による計数値が所定値Nよりも少ない場合に、通信不能車両について緊急通報を要すると判定する。また、緊急通報判定部15は、他車両計数部14による計数値が所定値Nよりも多い場合に、通信不能車両について緊急通報を要しないと判定する。
【0022】
記憶部16は、上記各部が行う演算処理に必要なプログラムや各種データを記憶する。記憶部16に記憶されるデータの一例としては、通信が途絶してから通信不能車両と判定されるまでの所定時間Tや、緊急通報判定部15において緊急通報の要否を判定する際に計数値と比較される所定値Nなどがある。ここで、所定値Nは、位置情報が含まれる地点毎に当該地点における平均的な交通量から予め定められる値である。また、記憶部16は、車両20との通信により車両情報取得部11が取得した複数の車両情報などを記憶する。
【0023】
車両20には、車両緊急通報装置10と通信ネットワークを介して通信を行う通信装置21が搭載されている。通信装置21は、位置検出センサ211、記憶部212、通信部213、及び制御部214を備えている。
【0024】
位置検出センサ211は、例えば、GPS衛星などを利用して通信装置21の現在位置、つまり、通信装置21を搭載した車両20の現在の位置を検出する。
記憶部212は、通信装置21の制御プログラムや、通信装置21が搭載された車両20を識別するための識別情報を記憶する。
【0025】
通信部213は、通信ネットワークを介して車両緊急通報装置10と通信を行い、車両緊急通報装置10からの要求に従って、車両20の車両情報を車両緊急通報装置10に送信する。
【0026】
制御部214は、記憶部212に記憶された制御プログラムに従って通信装置21を制御する。制御部214は、位置検出センサ211によって検出された位置情報と、記憶部212に記憶された識別情報とを対応付けて当該車両の車両情報として、通信部213を介して車両緊急通報装置10に送信する。
【0027】
続いて、このように構成された車両緊急通報システムにおける処理フローについて
図2のフローチャートを用いて説明する。
図2は、車両緊急通報装置10における処理を示すフローチャートである。車両緊急通報装置10において、車両情報取得部11が、車両20と所定の時間間隔で通信を行い、車両20から送信された車両情報を取得する(ステップS101)。通信途絶車両検出部12は、車両20と車両情報取得部11との通信状態を監視し、車両情報取得部11と定期通信を行っている複数の車両20中、通信が途絶した通信途絶車両を検出する(ステップS102)。
【0028】
通信途絶車両が検出されると、通信状態判定部13が、所定時間Tの計時を開始して(ステップS103)、車両情報取得部11と通信途絶車両との通信状態を監視し(ステップS104)、所定時間Tが経過するまでの間に通信が復帰しない場合に、その通信途絶車両は通信不能車両であると判定する(ステップS105)。
【0029】
他車両計数部14は、通信不能車両とは異なる他の車両であって、通信不能車両が通信途絶直前に車両情報取得部11に送信した位置情報と同一の位置情報を送信した他の車両を計数する(ステップS106)。
【0030】
他車両計数部14は、他車両を計数した結果、計数値が所定値Nよりも大きい場合、すなわち、計数した他車両が所定値Nに対応する車両数よりも多い場合には、緊急通報不要と判定する(ステップS107)。
他車両計数部14は、他車両を計数した結果、計数値が所定値Nよりも小さい場合、すなわち、計数した他車両が所定値Nに対応する車両数よりも少ない場合には、緊急通報要と判定する(ステップS108)。
【0031】
なお、緊急通報が必要であると判定された場合、車両緊急通報装置10は、当該車両が通信途絶直前に送信した位置情報に基づいて、緊急通報対象の車両情報等を救助要請先等に提供することにより、当該車両の救助を要請する。
【0032】
続いて、車両緊急通報システム1が用いられる具体例について説明する。
【0033】
(車両が通信圏外エリアを走行することにより通信不能となる場合)
図3及び
図4を用いて、車両が通信圏外エリアを走行することによって通信不能となった場合の緊急通報装置における緊急通報の要否の判定処理について説明する。
【0034】
図3は、一台の車両20Aが走行している場合の例を示している。車両緊急通報装置10は、走行中の車両20Aと定期的に通信を行い、車両20Aに対して車両情報の送信要求を行う。車両20Aは車両緊急通報装置10からの要求に応じて、所定の時間間隔で、自己の識別情報とその時点での走行位置を含む車両情報を車両情報取得部11に送信する。
【0035】
図3に示すように、車両20Aは、通信圏外エリアに入ると車両緊急通報装置10との通信が途絶してしまい、車両情報取得部11に対して車両情報を送信することができなくなる。車両20Aは、この通信が途絶する直前、すなわち、通信圏内エリアから通信圏外エリアに入る直前のB1地点付近で、B1地点を示す位置情報を含む車両情報を送信した後に、通信圏外エリアに入っている。
【0036】
つまり、車両情報取得部11は、車両20AからB1地点を示す位置情報を取得した後に、その後の位置情報を取得していないことになる。従って、通信途絶車両検出部12は、車両20AがB1地点を通過した後の定期通信時に車両情報を受信していないことを検知して、車両20Aを通信途絶車両として検出する。
【0037】
通信状態判定部13は、車両20Aについて、B1地点を通過した時刻から所定時間Tが経過するまでの間、車両20Aと車両情報取得部11との間の通信が復帰するか否かを監視する。通信状態判定部13の車両20Aに対する通信状態の監視と併行して、車両情報取得部11はB1地点の周辺を走行する他車両と通信を試みる。
【0038】
通信状態判定部13は、車両20AがB1地点を通過してから所定時間Tが経過すると、車両20Aが通信不能車両であると判定する。他車両計数部14は、通信不能車両となった車両20Aと異なる車両であって、車両20Aの通信途絶直前の位置情報、つまりB1地点を示す位置情報と同一の位置情報を送信した他の車両を計数する。
図3の例では、B1地点を示す位置情報を送信した他の車両が存在しないため、他車両計数部14の計数値は0となる。
【0039】
緊急通報判定部15は、他車両計数部14による計数値が0であるため、通信不能車両である車両20Aについて緊急通報を要すると判定する。
このように、本実施形態によれば、例えば、通信圏外エリアに入ったことによって通信不能状態となり、通信不能車両が自ら緊急通報を行うことができず、かつ、救助を求められる車両が周辺に存在しない場合であっても、当該車両の周辺の状況を把握することで緊急通報の要否を判定することができる。
【0040】
図4は、複数の車両20A,20B,20C,20D・・・が走行している場合の例を示している。車両緊急通報装置10は、走行中の各車両20A,20B,20C,20Dと定期的に通信を行い、各車両20A,20B,20C,20D対して車両情報の送信要求を行う。各車両20A,20B,20C,20Dは車両緊急通報装置10からの要求に応じて、所定の時間間隔で、それぞれ自己の識別情報とその時点での走行位置を含む車両情報を車両情報取得部11に送信する。
【0041】
図4に示すように、車両20A,20Bは通信圏外エリアに入ったことによって車両緊急通報装置10との通信が途絶してしまい、車両情報取得部11に対して車両情報を送信することができなくなる。車両20A,20Bは、通信が途絶する直前、すなわち、通信圏内エリアから通信圏外エリアに入る直前のB1地点付近で、B1地点を示す位置情報を含む車両情報を送信している。
【0042】
つまり、車両情報取得部11は、車両20A,20BからB1地点を示す位置情報を取得した後、その後の位置情報を取得していないことになる。従って、通信途絶車両検出部12は、車両20A,20BがB1地点を通過した後の定期通信時に車両情報を受信していないことを検知して、車両20A,20Bを通信途絶車両として検出する。
【0043】
通信状態判定部13は、車両20A,20Bそれぞれについて、B1地点を通過した時刻から所定時間Tが経過するまでの間、車両20A,20Bと車両情報取得部11との間の通信が復帰するか否かを監視する。通信状態判定部13の車両20A,20Bに対する通信状態の監視と併行して、車両情報取得部11はB1地点周辺を走行する車両20C,20Dから車両情報を定期的に取得している。
【0044】
通信状態判定部13は、車両20AがB1地点を通過してから所定時間Tが経過すると、車両20Aを通信不能車両であると判定する。他車両計数部14は、通信不能車両となった車両20Aと異なる車両であって、車両20Aの通信途絶直前の位置情報、つまりB1地点を示す位置情報と同一の位置情報を送信した他の車両を計数する。
【0045】
図4の例では、車両20Bは、すでにB1地点を示す位置情報を送信しているので、他車両計数部14は、車両20Bを、同一の位置情報を送信した他の車両として計数する。
図4の例においては、通信状態判定部13によって車両20AがB1地点を通過した時刻から所定時間Tを計時している間に、車両20C,20DもB1地点を通過し、車両20C,20DもB1地点を示す位置情報を送信した車両として他車両計数部14によって計数される。
【0046】
その後、車両情報取得部11は、順次B1地点を通過する他の車両からB1地点を示す位置情報を受信し、受信毎に他車両計数部14が計数値を加算する。他車両計数部14による他車両の計数は、例えば、通信状態判定部13によって車両20AがB1地点を通過した時刻から所定時間Tが経過するまで継続することができる。
【0047】
緊急通報判定部15は、他車両計数部14による計数値が所定値Nよりも多いとして、通信不能車両となった車両Aについて緊急通報を要しないと判定する。なお、緊急通報判定部15によって緊急通報の要否を判定するための所定値Nは、その地点、本例の場合ではB1地点での平均的な交通量から予め定められ、予め記憶部16に記憶されている。
このように、本実施形態によれば、例えば、通信圏外エリアに入ったことによって通信不能となった場合であっても、通信不能であることのみをもって緊急通報対象と判定することなく、周辺を走行する車両の状況を把握して、適切に緊急通報の要否を判定することができるので、不必要な緊急通報を抑制することができる。
【0048】
車両20Bについても、同様に車両20BがB1地点を通過してから所定時間Tが経過した時点で車両20Aを通信不能車両であると判定され、他車両計数部14がその後にB1地点を示す位置情報を送信した車両を計数する。通信状態判定部13によって車両20BがB1地点を通過した時刻から所定時間Tを計時している間に、車両20C,20DもB1地点を通過し、車両20C,20DもB1地点を示す位置情報を送信した車両として他車両計数部14によって計数される。その後、車両情報取得部11が、図示しない他の車両から順次B1地点を示す位置情報を受信すると、受信毎に他車両計数部14が計数値を加算する。以降、上記した処理が繰り返される。
【0049】
ここで、
図4の例では、車両20A,20B,20C,20Dは、通信圏内エリアから通信圏外エリアへ向かって走行しており、何れの車両もB1地点を示す位置情報を送信した後に、通信が途絶して通信途絶車両となる。このように、複数の車両の全てが同一の位置情報を送信した後に通信途絶車両となったことから、B1地点以降の車両20A,20B,20C,20Dの進行方向が通信圏外エリアであると推定することができる。
【0050】
すなわち、車両緊急通報装置10が、地図情報上に通信圏外エリアに関する情報を保持していなくとも、20A,20B,20C,20Dから送信された位置情報等に基づいて、通信圏外エリアを推定することができる。そして、車両緊急通報装置10の記憶部16に予めダイナミックマップ等の地図を保持させておき、推定した通信圏外エリアを反映させても良い。
【0051】
(車両が不具合により通信不能となる例について)
図5及び
図6を用いて、走行中の車両が車両自体または車両に搭載した通信装置の不具合により通信不能となった場合の緊急通報装置における緊急通報の要否の判定処理について説明する。
【0052】
図5は、一台の車両20Bが走行している場合の例を示している。車両緊急通報装置10は、走行中の車両20Bと定期的に通信を行い、車両20Aに対して車両情報の送信要求を行う。車両20Bは車両緊急通報装置10からの要求に応じて、所定の時間間隔で、自己の識別情報とその時点での走行位置を含む車両情報を車両情報取得部11に送信する。
【0053】
図5に示すように、車両20Bは、事故や通信装置に故障等が生じたことによって車両緊急通報装置10との通信が途絶してしまい、車両情報取得部11に対して車両情報を送信することができなくなる。車両20Bは、この通信が途絶する直前、すなわち、通信不能となる直前のB2地点付近で、B2地点を示す位置情報を含む車両情報を送信している。
【0054】
つまり、車両情報取得部11は、車両20BからB2地点を示す位置情報を取得した後に、その後の位置情報を取得していないことになる。従って、通信途絶車両検出部12は、車両20BがB2地点を通過した後の定期通信時に車両情報を受信していないことを検知して、車両20Bを通信途絶車両として検出する。
【0055】
通信状態判定部13は、車両20Bについて、B2地点を通過した時刻から所定時間Tが経過するまでの間、車両20Bと車両情報取得部11との間の通信が復帰するか否かを監視する。通信状態判定部13の車両20Bに対する通信状態の監視と併行して、車両情報取得部11はB2地点周辺を走行する他車両との通信を試みる。
【0056】
通信状態判定部13は、車両20BがB2地点を通過してから所定時間Tが経過すると、車両20Bを通信不能車両であると判定する。他車両計数部14は、通信不能車両となった車両20Bと異なる車両であって、車両20Bの通信途絶直前の位置情報、つまりB2地点を示す位置情報と同一の位置情報を送信した他の車両を計数する。
図5の例では、B2地点を示す位置情報を送信した他の車両が存在しないため、他車両計数部14の計数値は0となる。
【0057】
緊急通報判定部15は、他車両計数部14による計数値が0であるため、所定値Nよりも計数値が小さいことから、通信不能車両である車両20Aについて緊急通報を要すると判定する。
【0058】
このように、本実施形態によれば、例えば、通信圏内エリアであっても、何らかの不具合によって通信不能状態となった車両について、当該車両の周辺の状況を把握することで緊急通報の要否を適切に判定することができる。例えば、通信不能車両が自ら緊急通報を行えず、かつ、交通量が少ないエリアや時間帯等、通信不能車両の運転者等が自ら救助を求められない場合であっても、緊急通報システムによって適切に救助要請を行うことができる。
【0059】
図6は、複数の車両20A,20B,20C,20D・・・が走行している場合の例を示している。車両緊急通報装置10は、走行中の各車両20A,20B,20C,20Dと定期的に通信を行い、各車両20A,20B,20C,20D対して車両情報の送信要求を行う。各車両20A,20B,20C,20Dは車両緊急通報装置10からの要求に応じて、所定の時間間隔で、それぞれ自己の識別情報とその時点での走行位置を含む車両情報を車両情報取得部11に送信する。
【0060】
図6に示すように、車両20Bは、事故又は通信装置の不具合等により車両緊急通報装置10との通信が途絶してしまい、車両情報取得部11に対して車両情報を送信することができなくなる。車両20Bは、通信が途絶する直前のB2地点付近においてB2地点を示す位置情報を含む車両情報を送信した後に、何らかの不具合が生じて通信が途絶している。
【0061】
つまり、車両情報取得部11は、車両20BからB2地点を示す位置情報を取得した後に、その後の位置情報を取得していないことになる。従って、通信途絶車両検出部12は、車両20BがB2地点を通過した後の定期通信時に車両情報を受信していないことを検知して、車両20Bを通信途絶車両として検出する。
【0062】
通信状態判定部13は、車両20Bについて、B2地点を通過した時刻から所定時間Tが経過するまでの間、車両20Bと車両情報取得部11との間の通信が復帰するか否かを監視する。通信状態判定部13の車両20Bに対する通信状態の監視と併行して、車両情報取得部11は車両20A,20C,20Dから車両情報を定期的に取得している。
【0063】
通信状態判定部13は、車両20BがB2地点を通過してから所定時間Tが経過した時点で車両20Bを通信不能車両であると判定する。他車両計数部14は、通信不能車両となった車両20Bと異なる車両であって、車両20Bの通信途絶直前の位置情報、つまりB2地点を示す位置情報と同一の位置情報を送信した他の車両を計数する。
【0064】
図6の例では、通信状態判定部13によって車両20BがB2地点を通過した時刻から所定時間Tを計時している間に、車両20C,20DもB2地点を通過し、車両20C,20DもB2地点を示す位置情報を送信した車両として他車両計数部14によって計数される。
【0065】
その後、車両情報取得部11は、順次B2地点を通過する他の車両からB2地点を示す位置情報を受信し、受信毎に他車両計数部14が計数値を加算する。他車両計数部14による他車両の計数は、例えば、通信状態判定部13によって車両20BがB2地点を通過した時刻から所定時間Tが経過するまで継続することができる。
【0066】
緊急通報判定部15は、他車両計数部14による計数値が所定値Nよりも多いとして、通信不能車両となった車両20Bについて緊急通報を要しないと判定する。ここで、所定値Nは、本例の場合ではB2地点での平均的な交通量から予め定められ、予め記憶部16に記憶されている。
【0067】
このように、車両が何らかの不具合によって通信不能状態となった場合であっても、通信不能であることのみをもって緊急通報対象と判定することなく、周辺を走行する車両の状況を把握して、適切に緊急通報の要否を判定することができるので、不必要な緊急通報を抑制することができる。
つまり、上記した簡易な構成で、通信不能状態となった車両に対する緊急通報の必要性を判定することができる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1:車両緊急通報システム,10:車両緊急通報装置,11:車両情報取得部,12:通信途絶車両検出部,13:通信状態判定部,14:他車両計数部,15:緊急通報判定部,16:記憶部,20,20A,20B,20C,20D:車両,21:通信装置,211:位置検出センサ,212:記憶部,213:通信部,214:制御部,